ワシやオオカミが暮らす廃倉庫で居候を始めたバカだけどback

ワシやオオカミが暮らす廃倉庫で居候を始めたバカだけど


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待ってたよ!
6:
待ってた
11:
おーついに続きが来たか、書籍化おめでとう
14:
ああ、あの倉庫に居候してたのか
あと書籍化おめでとう!
15:
本買ったぜ!
初めてスレ見た2日後の出版だったんでおどろいたぜ!
モロッコ行きたくなったぜ!
31: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)00:33:39 ID:JLu
さて、アマンの秘密基地(アマンの住む廃倉庫があまりにも男のロマンあふれる空間だったのでそう名付けた)との日々について書く前に、アマンが憧れている民族「カザフ族」について少し書こうと思う。
カザフ族はその名の通り、もともとカザフスタンにたくさんいる民族で、イヌワシでの狩猟をして生活を営んでいた人々だ。
しかし、ソ連の影響を強く受けたカザフスタンでは現在イヌワシを用いた狩猟の文化はほとんど消滅してしまっている。
テレビのドキュメンタリーによく出てくるイヌワシ使いのカザフ族の人々は大体がモンゴルに住むカザフ族で、モンゴルはソ連の影響をあまり受けなかったお陰で文化が残っていたという訳だ。
ここキルギスにも同様の理由でイヌワシ狩猟の文化は少しだけ残っており、アマンはその伝統を絶やさぬよう努力したいという一心で、イヌワシのアイマックと共に生活をしていた。
アマンは由緒正しいカザフ族ではないし、アマンの家系でイヌワシを飼っているのはアマンだけだった。
しかし、文化を守りたいというアマンの話を聞くうちに、おれはアマンが誰よりも「カザフ族」に近い存在なんじゃないかと思えてきた。
「偽物は本物に憧れ近付こうとする分、本物よりも本物だ」という言葉があるが、アマンについてはその通りかもしれない。
そんな訳で、おれはアマンさえ許してくれるならアマンの廃倉庫で数週間暮らし、アマンとイヌワシとの生活を知り、手伝いたいと考えるに至った。
32: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)00:47:19 ID:JLu
さて、夕方ナリン(キルギスの南にある町)でアマンと再会!
アマンは少し痩せたようだったが、雰囲気は全く変わっていなかった
アマン「さぁ行くぞ!」
ナリンの郊外にある、アマンが暮らすアリシュ村へ
ちなみにこの時点ではアマンや動物たちとしばらく暮らしたいとは一切言っていないし、今日の予定なども全く言っていない
荷物は必要なもの以外全て、馬との冒険で出会ったナリン在住の知人に預けていた
持ってきたのはリュックが一つとテントだ
見かけによらず気さくなアマンの性格上、少なくとも生活費の援助などをすれば気前良く秘密基地に泊まらせてもらえるとは思ったけど、何しろあの母親がすぐ近くにいるから、テント泊はできるようにしておくべきだ
キルギスに来た頃は初夏だったが、季節はすっかり秋になり、かなり寒さが厳しくなってきていたので、できれば野宿はしたくないが……
秘密基地へ着くまでの間、それとなくアマンに探りを入れてみる
おれ「アマン、えぇと、お母さんは大丈夫そうか…?」
アマン「あぁ! ちゃんと話したぜ! ごめんなさいってさ!」
ほんとかよ……
憎しみの化身のようだったあの母親がごめんなさいと言う姿が想像できない…
まぁ、ともあれ、秘密基地に到着
現在アマンの馬は遠出しているらしく、今いるのはイヌワシのアイマックと、白くて大きい犬のハン、そして……
おれ「うわ、アマン! これ、犬じゃないな!」
アマン「あぁ、オオカミだぜ! 野生のを捕まえたんだ!」
檻のような場所に入れられている2匹のオオカミ
野生のオオカミを見たのは初めてだ
かっこいい…
そして、夕方になると2匹で遠吠えしていたので更にかっこよかった
アマン「まずGo(おれの海外での通名だ。本名の豪太郎からきている)は、ハン(大きな白い犬)と友達になって欲しいから、エサやりをしてくれ」
ある程度知能のある動物と仲良くなるにはまずはエサやりだ
おれが敵ではないと伝える必要がある
…友達という表現からしても、アマンは動物に対する考え方もかなりおれと近いようだ
1頭しかいない馬に名前を付けるのはともかくとして、それ以外の動物に名前を付けているキルギス人はアマン以外には出会ったことがなかった
ほとんどの人が20代前半で結婚することは人としての責務だと考えているキルギスにおいて、30超えて独りで暮らす男もアマン以外にはほとんど出会ったことがない
……ほんと、面白い男だ
35:
クレイジー冒険者だ
36:
わくわく
39: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)01:33:17 ID:JLu
そして、アマンの住まい、廃倉庫の中へ
アマンは廃倉庫の中に超快適な自室を持っている
本当にまるで秘密基地だ
アマンの部屋へ入ると、テントやタコ足配線が増えていて、以前来たときより更に快適になっているようだった
アマン「よしGo!飯にしよう!」
おれ「任せろアマン!事前に袋ラーメン二人分買ってきてるぜ!」
これは以前馬と冒険していた頃にアマンの秘密基地で食べたメニューだ
アマンの好物だという事は知っていた
アマン「お前、いい男だな!(多分「いい奴だな」って言いたかったんだと思うw)
ただラーメンは明日にしよう!今日はうまいのがあるんだ!」
そう言い、アマンが持ってきたのは肉と玉ねぎ、そして中華麺を傷めたような料理だった
一口食べてみる
……?
おれ「うまい! な、何だこの肉! なんか違うぞ! めちゃくちゃおいしい!」
アマン「だろ? それはな、牛の肉なんだ!」
キルギスではずっと羊の肉しか食べてこなかったからぴんと来なかったけど、言われてみれば確かに牛肉だ
……牛肉って、こんなにうまかったんだな
アマン「……で、Go。うちに何日いたいんだ? 10日か? 20日か?」
おれ「アマン、超能力者かよ……。まだおれなんも言ってないぞ……」
そう、おれはアマンに「改めて遊びに行ってもいいか?」というメールしか送っていない
普通に考えればアマンの願望であった可能性が高いけど、テントを持ってきたことで判断したんだろうか
……謎だ
おれ「……二週間くらいだ。アマンともっと仲良くなりたいし、アイマックや動物たちとも触れ合いたい」
アマン「わかった。おれがいるときもいないときも、秘密基地は好きに使っていいぞ」
なんと、アマンはあっさりとおれの居候を快諾してくれた!
アマンとの居候の日々の始まりだ!
と、ここでアマンのガラケーが鳴る
アマン「もしもし。…。あぁ。わかった、すぐ行く」
電話を切ったアマンはおれに申し訳なさそうに話を切り出す
アマン「すまん、今からナリンに行くことになった。帰ってくるのは明日の夕方だから、それまでここでくつろいでてくれ」
アマン、忙しそうだな……
アマン「あ、そうだ! 行く前に、もう一匹Goに紹介しないといけない奴がいたな
飼ってるってわけじゃないんだが……」
……?
40: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)02:01:23 ID:JLu
アマンに連れられて、廃倉庫の裏庭へ
ぼろぼろの壁で囲まれてはいるものの、雑草が生え放題で外も同然の空間だった
……寒い
辺りを見回すと、裏庭の端にうつぶせになり目を閉じる、白い中型犬の姿があった
アマン「Go、あいつだ! 最近ここに来たから一週間に一回くらい気まぐれに餌をやったりはするけど、飼ってるわけじゃない
うちにしばらく泊まるなら、世話するのもいいんじゃないか? もちろん名前もGoが好きに付ければいい」
おれとアマンが見守る中、その犬は全く動かず気だるそうに目を開け、こちらを見た後、また目を閉じて動かなくなった
なんだろう、病気……だろうか?
単純に腹が減っているんだろうか……?
この白い犬からは、全く生気を感じない
……これが、おれとこの白い犬との出会いだった
41:
新作待ってました!
狼たち可愛いな
42: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)02:12:17 ID:JLu
あの白い犬の事は少し気になったが、その後おれはアマンの部屋へ戻り、ナリンへ行くアマンを見送ることにした
おれ「また明日だな!」
アマン「ああ! あ、あとトイレは裏口から出て済ませてくれ。なるべく目立たないようにしてくれ。間違ってもおれの母親とは会わないように、気を付けてくれ!」
おれ「……あぁ、わかった!」
……さっき母親が謝罪してたっての絶対嘘じゃねーか!
おそらくアマンの母親にはおれが来ることを話していないんだろう
そしてアマンは外出し、おれはアマンの秘密基地で一人になった
アマンの母親、この感じだとまた会ったらシャベル振りかざしてきそうだな……
アマンがいない間、食事や水の調達はうまく工夫する必要がありそうだ
秘密基地をこっそり出てアリシュ村の店に行って食糧を調達すると、日本人が滞在してるって話がアマンの母親の耳に届くリスクがあるわけだけど、その程度ならセーフだろうか?
……まあ、なんにせよ、おもしろい!
アマンの母親から隠れて隠密行動を行う、二週間のサバイバル生活の、開幕だ!!
43:
アマンの母さんこえーw
謎の白い犬のことが気になるな
46:
他のシリーズとかは全部まとめで見てたからリアルタイムで見れて感動だ…相変わらず話が読みやすくて面白い!
49:
おー来たねGO!
もう南国にはいないのかな?
64: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)17:52:46 ID:JLu
>>49
冒険で疲れ切った体のまま無理やり海を堪能して帰って来た!w
今は師匠の下で修業中だ!!
53:
新たな冒険か
64: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)17:52:46 ID:JLu
>>53
キルギス編第二章なんだぜ!
54:
おまえか
57: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)13:28:42 ID:JLu
さて、次の日
この日、アマンは仕事で夕方まで帰って来なかったため、退屈にしていた
途中、足音から老人、おそらくアマンの父親がアイマックの部屋まで入ってきたことがあった
かなり緊張したが、老人はおれがいることには気付かなかったみたいだ
そういえば、昼間は観光客向けにアイマックを外に出すときもあるとアマンが言っていた
おそらくアマンの父親はそれでアイマックを迎えに来たんだろう
……この感じだと、アマンのお父さんは毎日ここに来てるのかもしれない
近いうちにおれがいるのばれそうだけど、まぁ仕方ないか……
今回は身軽だし、面倒になったらすぐに逃げよう
そう考え、おれはアマンの部屋で父親をやり過ごし、備蓄していた食料を食べて過ごす
ちなみにこの頃には既に書籍化の話が来ていたので、秘密基地で時間がある時は、書籍の構成を考えたり原稿を練ったりすることにした
夜、アマンが帰宅
アマン「Goすまん! ナリンにいる家族の家に顔出さないといけなくて、遅くなった!」
おれ「家族? お父さんとお母さんはそこにいるだろ? 兄弟か?」
アマン「いや、確かに兄弟もナリンにいるけど、嫁と子どもたちだよ!」
……は?
おれ「アマン、結婚してたのか……。 知らなかったぞ……」
独りで暮らしているから勝手に独身だと思い込んでいたけど、どうやらアマンにはしっかりと妻や子どもがいるらしい!
アマンによると、妻はアマンの秘密基地が好きでないらしく、ナリンに住んでいるとのことだった
いや……アマン、ここにいていいのかよ……
とは思いつつ、家庭よりも動物や男の趣味を優先するアマンはかっこいいと思うし、かくいうおれも妻ができたらこんな感じなんだろうなぁ
58: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)13:34:16 ID:JLu
アマン「よし、Go! 動物たちに肉をやるから手伝ってくれ!」
そう言ってアマンは大きな袋を開け、血生臭い大きな肉塊をたくさん見せてきた
ちなみにアイマックの食事はお預けだ
全力で狩りを行えるよう、普段から空腹にしておく必要があるからだ
大型犬のハンや狼たちに肉塊をやる
ハンも狼たちも、すごい食いつきようだ
餌をやってすぐにアマンは部屋へ帰って行ったが、おれは昨日の白い中型犬にも餌をやりに行くことにした
裏庭に行くと、昨日の白い犬が同じ場所に同じ姿勢で寝そべっていた
やはり生気がない
もしかすると、もう何日も食事をしていないのかもしれない
この辺りは最近では雪が積もるようになってきたので、何か食べて熱を生成しないと危険な状態かもしれない
白い犬の口元に肉塊を投げてみる
最初、犬はそのままじっとしていただけだったが、しばらくすると肉を少しだけ舐めたり転がしたりし始めた
そして、またしばらくしてからだるそうに起き上がり、ついに肉にかぶりついた
……食欲もあまりないようだが、ひとまず食べてくれて良かった!
60:
白わんこ、元気ないんか。。
61:
まさかマジで本だすとは思わなかった
アマン母と打ち解ける展開期待
67: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/24(土)18:05:00 ID:JLu
その後、アマンの部屋へ
アマンは明日の仕事の為にまたナリンに行かないといけなかったみたいだけど、しきりに嫌だ嫌だと言った後で、どこかに電話をかけ始めた
アマン「……そうだ、日本人の友達が来てるから。ああ、よろしく頼む」
電話を切ったアマンは外出用の上着を脱ぎ、嬉しそうに寝転がった
www
アマン、明日の仕事さぼったな…w
まぁともあれ、自由に生きているアマンに更に好感を覚えつつ、おれも就寝
朝、キルギス人の観光客が来たためオオカミやイヌワシの紹介をした
日本人とキルギス人は顔立ちが似ていることがあるので、おれは完全に現地人みたいな扱いを受けた
そしてその後、アマンが大量の生肉を持ってきたので、また動物たち皆に生肉を分け与える
ハンとオオカミたちに肉をやってから、おれはまたあの白い犬の所へ行き、餌をやった
犬は昨日よりはおれを認知しているようで、裏庭にやって来たおれに気付いて顔をあげた
生肉を投げると、犬は立ち上がってそれをくわえ、少し離れた場所へと移動を始めた
犬の体にはほとんど脂肪がなく、あばら骨が浮き上がっていて、胸部にはほとんど皮だけの乳房があった
……どうやらこの犬はメス犬だったようだ
さて、その後、アマンと一緒に出掛け、なぜかコクバルを観戦した
コクバルとはキルギスの人気スポーツで、馬に乗って行うラグビーのような競技だ
間近で見ると、本気で馬を走らせてぶつかり合う姿はなかなか迫力がある
みな、馬に乗って生き生きと楽しそうに走り回っていた
馬に乗って走ると風になれたような感じになれて気持ちいいからだろう
そして夕方、とうとうアイマックが狩りをするというのでアマンと一緒に外に出る
アイマックを解き放ち、「餌」とアイマックのご対面だ
さて、その「餌」、とは……
74:
>>66
ワロタ羨ましいのかね?
68:
犬?
78: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)03:22:35 ID:Rxm
>>68
あぁ、そうなんだ
69:
ネズミかなー
78: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)03:22:35 ID:Rxm
>>69
日本だとねずみをやるよな
でもカザフ族はイヌワシを何日も絶食させるから、小さなねずみじゃ栄養が足りないんだ
75:
豪快な話だなあ
おまえら今日はイナゴの佃煮でごはんをわっしわし食うぞおおお!
おまえら明日はライス、なんでわっしわしするう?www
77:
不思議ネットから辿ってきました
いやー・・こんな凄い男が実在するとは。驚いたなあ・・
職場と自宅を行き来する毎日、たまの休みも疲れきって惰眠を貪るだけの僕には本当に眩しく映った。
スレ主さん、貴方の本、買って読むよ。そんで次の休日は出掛けようと思う。行った事の無い場所で見た事の無い景色を見よう、そんな気分にさせてくれました。
貴方の冒険に善き出会いと幸運があります様に!応援しています
バカだけど旅人シリーズ
http://world-fusigi.net/tag/バカだけど旅人
78: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)03:22:35 ID:Rxm
↓アイマックの家
79:
うわー豪さんやー!
80: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)03:23:18 ID:Rxm
つづき
アイマックの獲物は小さな黒い犬だった
イヌワシは力が強く、爪も鋭いのでキツネやオオカミを狩ることができる
子犬くらい朝飯前だろう
生きている犬を、イヌワシに捕食させる
それは、ペットとしての犬の地位が確立している日本の感覚ではかなり残酷なことだが、こちらの世界では当然のように行われることだ
キルギスでは一般家庭で羊を日常的に屠殺しているし、動物にやる餌が最初生きていたとしても誰も気にしないだろう
少し犬が可哀想だとは思ったが、おれが何とかできる問題ではない
かく言うおれだって、これまで大小さまざまな動物をこの手で殺して肉を頂いてきているから、人のことを言えた立場ではない
黒犬は、びくびくしながらアイマックの出方を伺っている
……かなりグロテスクな狩りになるかもしれない
……と、思っていたがこの日、アイマックはあまりお腹がすいていなかったようで、犬に興味は示すものの攻撃をしなかった
結局、仕方ないのでその日アイマックにはヤギの頭部が与えられた
黒犬は命拾いしたが、安心したのも束の間で、その後黒犬はオオカミと同じ檻に入れられることに
大丈夫だろうか……
オオカミたち、優しくしてやってくれよ……
84:
いつのまに書籍化されてたんだスゲーなあ
85:
まさかリアルタイムで読めるとはなあ
続き楽しみや!
87:
オオカミってか、コヨーテっぽいな
88: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)18:50:29 ID:Rxm
>>87
北アメリカにいるやつか!
確かに、小型のオオカミだからかなり近いな!
89: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)19:16:01 ID:Rxm
つづき
次の日の朝、用事があったためナリンへ
用事……というか、書籍の編集さんと通話をする為だった
アマンの秘密基地、めちゃくちゃ電波状況悪いんだよなぁ……
ナリンの町まで出れば、3G回線も高だし、カフェへ入ればWifiもある
実は当時、複数の出版社から書籍化の打診が来ていたし、「納得ができるクオリティの書籍にならなそうなら断る」とも考えていたんだけど、この日の話し合いではページ数や内容についてある程度納得のできる話し合いができた
その後、ナリンにいたアマンと合流
アマンは生まれて初めてスマホを買ったらしく、うきうきだった
アマンは機械にとても弱かったため、スマホの設定やテザリングのやり方を細かく説明したことでかなり感謝された
居候させてもらっていてアマンには世話になっているから、動物の世話以外でも力になれたのは嬉しい
夜、寝袋を床に敷きその上で寝ようとするおれを見たアマンが、
「床で寝ると寒くて病気になるから絶対だめだ!ずぼらせず寝袋に入ること!」
と言ってきた
これまで野宿ばかりで寝方なんて適当だったから病気に何て絶対ならないけど、アマンは心配してくれているんだろう
やっぱりアマンは優しくていい奴だ
次の日
朝、アマンが羊を屠殺するとのことで、その手伝いをすることにした
羊の四肢を交差させて縄で結び、暴れる羊を押さえつけて、喉を切り裂き首の骨を折る
その後、毛皮を再利用する為に丁寧に体から剥がし、肉を部位ごとに仕分けていく
もう手慣れた作業だ
こちらの世界で肉を食べるためには、動物の屠殺のやり方を学ばなければならない
まだ動いている温かい心臓をバケツに放り投げた時に、日本でもこういうのはあるのか?とアマンに聞かれたので、いや、日本にはこういうの全然ないよ、と答える
日本では、肉となる動物たちがどうやって死んでいるのかを知らなくても美味しい肉を食べることができる
さて、今日もアイマックに餌をやる日とのことだった
実はおれは、アイマックにアクションカメラを装着したいと考えていた
Youtubeなどにも上がっているが、飛行中のワシやタカの背中にカメラを付けて撮影された動画は迫力満点で、とてもかっこいい映像だ
だから、おれはイヌワシに超軽量のアクションカメラを装着する為に、カメラやアタッチメントなどを秘密基地に持ってきていた
しかし、いざカメラを装着しようとした時に、アイマックがめちゃくちゃ嫌がったので中断することに
アマン自身はカメラ装着企画にめちゃくちゃ乗り気だったので、何とか撮影したいところだ
その後、カメラの土台をかなり小さく、刺激が少なくなるように切ったり縫ったり改良して再挑戦するも、先ほどではないにしろやはり嫌がったため断念
かなり残念だが、まぁ、アイマックが嫌がっているなら無理強いはできないよな……
90: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)19:49:14 ID:Rxm
その後、観光客が来て、オオカミを見学していった
前から思ってたけど、大型犬のハンは、おれとアマン以外に対してめちゃくちゃ憎しみを持った感じで唸り、吠える
何か嫌な思い出でもあるんだろうか
そしてアイマックに餌やり
今日は観光客がいたので、肉塊をアマンが持ち、それをアマンが遠くから飛んできて受け取るという形式だ
めっちゃかっこよかったけどシャッター度の設定ミスったwww
その後、アマンは町へ行き、夜に秘密基地へと帰ってきた
「おれは家に豪がいてくれてめちゃくちゃうれしいんだ。誰もいない家ってのは酷いもんだ。だからすごく嬉しいんだぜ?」
そんなことを、ウォッカ臭い口で言っていた
次の日
アマンの実家(秘密基地のすぐ近くで、アマンの母親が住んでいる家)に娘のアジナイと息子のイスラムが来ていた
アマンは二人にかまうのが忙しかったようで、ほとんど秘密基地に来なかった
例の黒犬はすっかりオオカミたちと馴染んだようだ
水や食事の際も、オオカミたちに全取りされることなく十分量食べられているみたいだ
とりあえずはオオカミたちに襲われていないようで、よかった……
夜、ようやくアマンが帰ってきたと思ったらすぐにナリンの友人か同僚から電話がかかってきたようで、アマンだけナリンに行くことに
アマンのいない秘密基地にもかなり慣れてきたなぁ、なんて思いながら就寝
次の日、おれが世話をすることになっているあの白い犬にご飯をあげようと思い、裏庭まで行くと、犬がしっぽを振ってこちらに向かってきた
おれが餌をくれる人だってことを理解し、懐きつつあるようだ
これまではおれに興味なさげに肉を受け取るだけだったが、今日は機嫌がいいんだろうか?
なんにせよ可愛い
さて、この日でこの白い犬との距離がかなり縮まったので名前を付けることにした
「アク」(キルギス語で「白い」)と名付けようと思い、アマンにそのことを説明する
おれ「アマン、『アク』って名前はどうだ? 日本語だと『シロ』。
日本では犬に見たまんま『シロ』名付けることがあるんだ。だから、キルギス語で白いって意味の『アク』はどうだ?」
アマン「『シロ』! いい響きだ! 気に入ったぞ!」
どうやらアマンは「アク」ではなく「シロ」をあの犬の名前として認識したらしい
おれ「いや……『シロ』、じゃなくて『アク』がいいんだけど……」
アマン「だから『シロ』だろ? アク(白い)って意味の言葉なんだろ?」
……しまった
「アク」も「シロ」も同じ意味だし、アマンもおれもロシア語はそこまで流暢に話せないので認識に違いが出来てしまった
その後、アマンはあの犬のことを「シロ」と呼ぶようになった
キルギス出身の犬に日本語の名前というのはおれとしては変な感じだけど、アマンが気に入ってるならそれが一番かもしれない
というわけで、この犬の名前は「シロ」になった!
93:
>>90
ちょw
飛んで来るのアイマックw
91: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)20:04:20 ID:Rxm
さて、その夜
アマンは秘密基地に帰って来るなり、おれに
「アイマックがどこに行ったか知らないか?」
と聞いてきた
そういえば、全開餌やりの様子をカメラで撮って以来、アイマックを秘密基地で見かけなくなった
おれ「いや、おととい外で餌やってたの見たのが最後だったぞ?
アマンもいたじゃないか
基本的にアイマックを動かせるのはアマンしかいないんだから、むしろアイマックの居場所はアマンしか知らないだろ」
おれがそう返答すると、アマンは頭を抱えた
……え、もしかして逃げたのか? アイマック……
前回餌をやった時もアマンはアイマックを自由な状態で外に放置して仕事に行ったが、その時はアマンのお父さんがアイマックを繋いでくれていた
おれとしてはそれが普通なんだと思っていたが、餌をやった後は基本的にアイマックを放置しているということか……
……逆に、よくそれで逃げなかったな、アイマック
なんにせよ、アイマックが行方不明になってしまったのは間違いないらしい
そのため、明日からアイマックの捜索を始めることになった
そしてその後、とりあえずアイマックの事は一旦忘れようとアマンが言い出したのでそれに従い、夕食の準備をする
アマンの友達だというサルタンとアイベックが来て、皆でアヒルの肉を囲むことに
めちゃくちゃうまい!
食事中、アマンが
「ボトル空けたいんだ、飲めるなら飲んでくれよ!」
としきりにウォッカを進めて来るので、コップ3杯ほどウォッカをイッキした
キルギスではウォッカをイッキすると、誰かの幸せや一族の繁栄を願える、みたいな風潮があるようだ
逆にちびちび飲むとそれが出来ないので、おれはアマンの幸せを願う為に全部イッキすることにした
……まぁ、ボトル空けたいって割にはアマンたち全然飲んでないから、おれを酔わせたいんだろう
でも、おれがこの程度で酔うと思ったら大間違いだぞw
この日はアマンの友達二人も泊まるようで、その後少し話し、就寝
92:
きたきたー!!
本当妊娠中からめっちゃ楽しみにしてたー!
もう産まれちゃったけど、寝かしつけしてから読んでるよー!
続き楽しみー!!
94: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)20:30:36 ID:Rxm
その次の朝、6時半に起きてアマンと一緒にアイマックを探す
アイマックの名前を呼びながら耳を澄まし、遠くの畑や山々の中にアイマックの姿がないか目を凝らす
そして、7時半。時間切れだ。アマンは仕事に行かないといけない
夕方、アマンの仕事が終わってからもう一度探したが、アイマックを見つけることはできなかった
実はアマンの家には以前2匹イヌワシがいたらしいが、そのうちの1匹が同様の理由で逃げ、結局その後見つからなかったらしい
アイマック、大丈夫だろうか……
餌が取れなかったら、ちゃんと戻って来いよ……
そしてそのまた次の日
昼、仕事から早めに帰ってきたアマンと一緒にアイマックを探す
昨日は一日中仕事だったこともありあまり探せなかったけど、今回は本格的に探すとのことだ
……というわけでアイマックを引き付ける「餌」をおれが管理しつつアマンと共に移動することになった
いやお前かよ!
前回アイマックの餌になり、アイマックがあまり腹をすかせていなかったというだけの理由で生かされている、はかない餌担当、黒犬
……かわいそうだけど、「連れていきやすくて良く鳴くイキのいい餌」となればこいつになってしまうんだろう
アイマック、見つかって欲しいような欲しくないような……
とりあえず黒犬を引きながらアマンと一緒にアイマック探しに出発!
当たり前のようにシロもついてきた
昨日辺りから、シロはおれが行くところどこにでもついてくるようになった
裏庭と外は繋がっているので、シロがその気になればどこにでも行ける
初めてシロと出会った時は裏庭のすみっこでずっと寝ていたのに、最近は裏庭のドアのところで常に待機している
どうやらおれのことを気に入ってくれたらしい、嬉しい
……でもトイレ(野外)はついてこなくていいからなw
95:
面白そうやな
ワアはホワイトファングとかアラスカ魂とかオーロラの下でとか好きやったから興味ある
97:
アイマック....
100: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)23:52:30 ID:Rxm
>>97
当時はアマンもだいぶ凹んでたな
99:
動物に懐かれやすいんだね
うらやましい
100: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)23:52:30 ID:Rxm
つづき
さて、そしてアマンとおれ・シロ・黒犬とアマンで手分けしたり固まってアイマックを探すこと1時間、アマンのスマホが鳴る
電話に出るアマン
10分以上話し込んでいたかと思うと電話を切り、おれに話しかけてきた
アマン「Go、アイマックが見つかった。大きな川を挟んだ向かいの村の村人が保護して預かっているらしい」
おれ「よかったじゃん! で、どうするんだ?
この辺りに橋はないから、向こうの村に行くには30kmくらい迂回しないといけないだろ?
アイマックを餌で釣ってこっちまで飛んでこさせるか?」
アマン「いや、その村人はアイマックにたくさん餌をやったらしいから、今飛んでこさせるのは無理だろう。兄さんに車で回収に行ってもらえるよう頼むよ。」
アイマックが見つかった
手を叩いて喜ぶべきことなのに、アマンの顔は暗かった
どうしてだろう
聞いても答えてはくれなかったけど、アイマックを保護した村人から何らかの見返りを要求された可能性が一番高いだろうか
こちらの国ではイヌワシには日本円で数十万円の価値がある
保護した村人が黙秘して転売すれば多額の現金を得られていたことを考えると、それなりの見返りを要求することは自然かもしれない
アマンの兄は明日の朝アイマックを回収に行くとのことだったので、その後は特に大きな出来事はなく、就寝
101: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/25(日)23:58:39 ID:Rxm
朝、寒さで目が覚める
昨日よりもたくさん雪が積もっている
……と、ここで食料が底をついていることに気付いた
アマンとシェアしたりしなかったりだから気付かなかった
なので、秘密基地を出てアマンの母親に見つからないようこっそりと村の雑貨屋へ
やはりシロもついてきた
今日はかなり寒い日だが、シロはいつにも増して元気そうだ
キルギスで最も寒い地域のナリン付近で生まれ育っただけあって寒さに強いんだな、シロは
シロとしばらく歩いていると、でかい犬がついてきた
アマンの両親が飼っている大型犬だ
……いやお前も来るのかよ!
秘密基地の動物ではないから餌とかやったことないんだけど、なんでついてくるんだろうか……
その後、雑貨屋で食べ物を買い、震えながら帰宅
やはり寒いのは苦手だ
雑貨屋で買った食べ物で遅めの朝食をとっていると、アマンが来て「ちょっと見てみろ」とおれを部屋の外に連れ出した
外へ行くと、アマンの飼いワシ・アイマックが悠然と仁王立ちしていた
おれ「アイマック!! アマン、良かったな!」
いやぁ、おれがいる間に見つかってよかった……
ちなみにあと数日でアマンの家から出発し、次の冒険に向けて準備する予定だった
そのことをアマンに話すと、もっと長くいてもいいんだぞ? と言ってくれたけど、まぁいつまでも世話になるわけにはいかない
この辺りが潮時だろう
その後アマンはすぐに仕事に行ったので、この日は特に大きな出来事もなく、書籍の原稿を書いたり、書籍用の写真や動画の整理なんかをして過ごした
102:
どんだけ動物に好かれとるんだ
103:
すげえな、憧れるな
話変わるが何故この過疎板でやろうと思った?
もっと人口いる板のほうが宣伝なると思うけど
109: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)03:02:36 ID:KIe
>>103
おれ自身まとめ民だからおーぷんに詳しくないのが主な理由だなw
より適した板があるなら教えてくれ
人口多いのっておんJとかか?
猛虎弁で語らないと相手してもらえないんじゃないのか?
関西出身だけどそれはちょっとなぁ……
104:
ごめん スレちだと思うが
今 本 読み終わったぜ
5chのスレも読んでいたんだが
ラテの所では涙が止まらなかったよ
色々 書きたいこと聞いてみたいことたくさんけれど
今は今の旅 挑戦 を楽しんでください
そして 本にまとめてくれてありがとう
応援しています
109: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)03:02:36 ID:KIe
つづき
さて、次の日
帰ってきたアイマックに餌をやることに
以前と同じショー形式だったのでアイマックの迫力満点の飛行が見ることができ、今回は写真もそこそこ上手く取ることができた
その後、おれはアマンと一緒に買い物をしにナリンへ
街中でアマンと一緒に買い物をしていると、護送車のような車を運転しているアマンの友達に遭遇
アマンによると彼はマフィアで働いているようだ
めんどうだし、関わりたくない
しかしその後、そのマフィアの男もアマンの家に泊まることになり、他の友達もやって来たので秘密基地はキャパオーバーに
仕方ないのでおれは廃倉庫の中でテントを張り、シロと一緒に寝ることにした
もうこの頃にはシロはかなりおれに甘えるようになってきていた
廃倉庫の屋内とはいえ寒かったので、おれとシロはくっついてあたたまることにした
……廃倉庫での日々は残すところ数日
シロとも、もうすぐお別れだ……
おれがいなくなってからも、しっかり生きるんだぞ……
せめて今だけでもシロを幸せな気分にしてやろうと、おれはその日、寝るまでシロの背中を優しく撫で続けた
111:
>>109
2枚目すこ
110:
シローちょっと心配。。。
フラグか!?っていつも思っちゃうー
118: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)22:44:19 ID:wZt
>>110
せっかく元気になったんだから、幸せになって欲しいな、シロには……
112: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)18:18:58 ID:wZt
さて、次の日
オオカミたちの檻へ行くと、あの黒犬がいなくなっていた
昨日までオオカミたちと過ごしていたのに、どこへ行ったんだろう
なんだか嫌な予感がしたので一旦引き返し、アマンに事情を尋ねる
すると、アマンはこともなげに一言、こう言った
「あぁ、オオカミたちが食っちまったんだ」
……ああ。
そりゃそうか……
これまで何とか生き延びて来られたのは運が良かっただけだし、仕方がない
おれにはどうすることもできなかったしな……
オオカミやイヌワシ、大型犬を養う為には大量の肉が必要なので、仕方がない
そしてその後の数日間は、アマンがかなり忙しいようだったのでほとんど会えず
……もう少し秘密基地でアマンやシロと時間を過ごしたいけど、時間切れだ
おれも次の冒険があったので長居はできない
そうこうする内にとうとうおれが出発する日がやってきた
早朝、出発直前
アマンと朝食を食べている時に、アマンがこんなことを言ってきた
アマン「ああ、そう言えばあの『シロ』な!
養うつもりはないけど、今まで通り気が向いたら餌をやるよ
オオカミたちの餌にもなるしな」
アマンの言葉に頭を抱える
……ああ、今まで通りじゃダメだろう
今まで通りの頻度ということは3-4日に一度メシがあるかどうかということになる
運が悪ければ餓死するだろう
しかも、オオカミの餌だって!?
冗談じゃないぞ……!
……とは思ったが、おれにはどうすることも出来ない問題だから、仕方がないとしか言いようがない
113:
アマン......
Goさんが名前を付けて、自分も『シロ』と覚えたのに、餌という認識なのか....
118: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)22:44:19 ID:wZt
>>113
これでもアマンはかなり動物好きな方なんだ、こっちでは……
114:
おおう シビアすぎる
118: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)22:44:19 ID:wZt
>>114
現実ってのはほんと残酷だなぁって思うぜ
115:
自分達の常識が世界の常識とはいかないからしゃーない
とはいえ自分は強くないから他の世界の『常識』を突きつけられたら病むわきっと
118: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)22:44:19 ID:wZt
>>115
そう、育ってきた世界が違うから仕方ないんだよな
116:
生きるためには何かの命を奪わなければいけないし、自分だってそうしてるけど…
ああ、つらい
118: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/27(火)22:44:19 ID:wZt
>>116
考えれば当たり前の事だけど、日本ではあまり「命」が身近じゃないからきついよな……
119:
キルギスにもマフィアはいるんだね
123: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)08:30:14 ID:ICr
>>119
キルギスは実はけっこう治安悪いんだよなぁ……
暴力的な奴の割合はモロッコやエジプトより多いなw
120: まみ 2018/03/27(火)23:14:19 ID:Qi6
文化の違いで物語を読んでるような気分になっちゃう。シロを好きになりかけてるからシロが心配…
124: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)08:32:45 ID:ICr
つづき
思えば出会った時のシロはがりがりにやせていて、ずっとうつ伏せだった
おれが最初に肉の塊をやった時も、うつ伏せのままあまり興味を示さず、しばらくは軽く舐めるだけだった
今思えばあれは、絶食期間が長かったせいで噛む気にならなかったのかもしれない(数日絶食したことある人なら分かると思うけど、歯って使わないとすぐに弱るし、いきなり固形物は食べられない)
もしかしたら、シロはあの時、うつ伏せになりただただ死を待っていたのかもしれない
シロ、今後生きていけるんだろうか……
……まぁ、全く餌がないこの辺りで野生よりはマシと言える状況だし、仕方ない、よな
おれが代わりにシロの面倒をみてやることなんて、できるわけがないんだから
おれは金持ちではないし、とてもじゃないけど日本に連れ帰る(狂犬病のせいで1年弱の時間と100万円近くの費用がかかる)ことはできない
引き取ることは、できない
考えてもみて欲しい
家もない完全にアウェーの外国人滞在者が、犬なんか連れてしまったら身動きが取れなくなる
日本に連れ帰ることもできないのに、おれに何ができるっていうんだ
無理だ
この状況で何も考えずにシロを引き取るなんて、バカすぎる
……小さな黒犬のことが頭をよぎる
あいつ、オオカミに食われちゃったんだよな…
次はシロの番、ということか
アマンは動物に関してこの国では破格の優しさを持っているけど、それでも自分で名付けた動物以外は餌としか認識していないようだった
特にこの朝の会話で、アマンがシロを餌程度にしか見ていないことがよく分かった
でも、無理なんだ、ごめんな…
ビザの有効期限もあと10日ほど
時間もない
弱いものは淘汰されるこの世界で、アマンに愛されることが出来なかったシロはそれ相応の扱いをされるけれど、おれがどうこうできることじゃないだろう……
死ぬとは限らないし、アマンは一応「今まで通り気が向いたら餌をやる」とは言ってるし……
強く生きろよ、シロっ!!
そう考え、自分を無理やり納得させ、シロに最後の挨拶に行く
125:
オオカミって犬食うんだな...
128: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)16:39:04 ID:ICr
>>125
肉食だしなぁ……
オオカミたちの普段の餌の量もけして多くはなかったから、空腹で追い込まれてたか、イライラしてたのかもな
126: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)12:22:48 ID:ICr
そう考え、自分を無理やり納得させ、シロに最後の挨拶に行く
たっぷり餌をやり、立ち去ろうとすると、シロが甲高く悲痛な声で吠えた
今まではおれが立ち去るとき、シロはクーンクーンと寂しそうに鳴くだけだったけど、今回だけはこれまでと違っていた
怯えたり怖かったりするときの甲高い声だったので、最初はどこかに挟まれたり怪我したりしたのかと思って思わず戻ってみたけど、外傷はなく、何の問題もなかった
……ほんと、動物って驚くほど賢い
おれと会うのはこれが最後だって、シロはきっと分かっているんだ
後ろ髪を引かれる思いをしながらも、アマンに急かされたためタクシーに乗り込みナリンへ
シロ、ばいばい……
そしてアリシュ村を発ち、ナリンに到着
アマンと別れの挨拶をし、アマンは仕事へ、おれは預けさせてもらっている荷物を取りにナリンの知人の家へ
アマンともこれでお別れだ
次にキルギスに来るときまで会うことは無いだろう
おれの、廃倉庫でのアマンとイヌワシ、オオカミたちとの奇妙な居候生活は、こうして終わりを告げた
131: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)18:19:04 ID:ICr
本編つづき
……そして、その二時間後
おれはナリンでタクシーに乗り込み、運転手にこう告げる
おれ「運転手さん、このタクシー貸し切りで!
金は出すからアリシュ村まで往復してくれ。ちょっと運びたいものがあるんだ」
……もう迷いはない
……ほんと、議論の余地なくおれはバカだ
大事なものをアマンの家に忘れてきてしまっている
……たとえ茨の道になるとしても、あとで後悔するよりはずっとマシだ!
さあ、行こう!!
こうして、おれはタクシーでアマンの秘密基地へと戻って行った
つづく
132: 1◆0sA8GVLJwJ07 2018/03/28(水)18:21:43 ID:ICr
今回の話はここまで!
次回は七月ごろの公開予定だ!
無駄に次回予告やってみるw
【次回予告】
現地の人々全員が「不可能だ」と評した冒険に、挑戦……!
・20kgの荷物を背負い、動物を操りながら徒歩で野宿旅!
・感染症で冒険中断!?
・野生のオオカミに怯える日々
・冒険の途中で新たな仲間が?
・「誘拐婚」、修羅場に遭遇
・悪漢に捕まり、廃車両に監禁……
・マイナス14度の氷に閉ざされた世界で、夏用テントと秋用の寝袋を使い野宿!
「まともな防寒具、持ってないんだけど……」
【リアルRPG譚】
キルギス編第三章
コンセプト:『羊飼い』
2018年7月公開予定!
お楽しみに!!
133:
シロとの冒険を選んだんだな
再開を楽しみにしてるぜ 
134:
キルギスの誘拐婚 有名なやつか!
たのしみにまってるよー
※豪太郎さんの旅シリーズはこちら!(タイトルに必ず「バカだけど」が付くのでこのタグ名にしました)
バカだけど旅人シリーズ
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コメント
1 猫田ニャン太 :2018年03月28日 23:03 ID:Kfgt1FmW0*
(ФωФ) ニャー
イヌワシは憧れるね?。
2 不思議な
この人ほんとすごいね
こういう生き方してみたいなあ
3 不思議な
たぶんシロを救いに戻ったんだよな。。
思わず上体前屈みに起こしちまったぜ。
男前すぎる。
4 不思議な
ワシを一人称かと思って打ち間違いかと疑ってしまった
5 不思議な
なんというかシロが最後まで幸福でありますように
6 不思議な
動物たちみんな緊張感があって良い表情をしているね。
人に飼いならされた気の抜けた動物には出せない表情ですよ
働く動物たち、闘う動物たちといっても良いかもしれない。
7 不思議な
ワシもアップル製の時代か(違
8 不思議な
絶対書籍買いにいこう…
9 不思議な
今楽天ポチってきました
10 不思議な
書籍発行おめでとうございます
早Kindleでポチった
シロー!!
続報待ってます
11 不思議な
シロを救ってやってくれ。。マジ頼む
もうこの旅人にとっては過去の出来事だけどさ、現在進行形のように祈ってるよ。
12 不思議な
ほんと面白いわ
13 不思議な
思ったこと
イヌワシは保護されたんじゃなく捕獲されたんだろうな
レスで唐突の妊娠アピールまーんだな
白は餌になるのは仕方ないよね、間に合うな!白食われちまえ!
14 不思議な
引用文 偽物語からであってる?
15 不思議な
犬ぞりって北極だっけ?南極だっけ?人間がちゃんと犬にご飯をあげないと、一番弱った奴がみんなに食われるって読んだことがある。
16 不思議な

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