少年「薄氷の僕ら、無人駅」back

少年「薄氷の僕ら、無人駅」


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きたい
7 :以下、
綺麗な文章
8 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 08:56:57.38 VeV9Hfv90
青年「こんにちは」
(青年様、いらっしゃいませ。今日は暑かったでしょう)
青年「そうですね、日が照って……この前はすごい風で寒かったのに」
(春疾風、ですね。春に見られる強い風嵐の事です)
青年「春疾風。綺麗な音ですね!」
(そうでしょう。私も好きな言葉です。花嵐とも呼びますね)
青年「「花に嵐のたとえもあるぞ さよならだけが人生だ」……ある著者が訳した有名な言葉がありますね」
(素敵な言葉ですね。物悲しさと力強さがよく感じ取れます)
青年「はい。春は良いものですね」
(ええ。私も春は大好きです)
青年「春の夜の空気が好きなんですよ。あのほわほわした柔らかい空気が」
(春の夜はとても良いものですね……春眠、暁を覚えずとはよく言ったものです)
青年「よく聞きますね。夜桜を見に行ったりしていると、寝るのも遅くなりがちです」
(桜は綺麗ですが、体調にはご注意を。「花冷え」という言葉もありますから)
青年「花冷え……?」
(桜の咲く頃に、急に冷え込む空気の事です)
青年「それにも言葉があったんですね! 知りませんでした」
(言葉はそれこそ星のようにありますから)
青年「貴女のように色んな言葉を蓄えたいものです」
(ふふふ、期待していますよ)
9 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 09:04:14.38 VeV9Hfv90
ザアアァアァアァァ……
青年「こんにちは」
(こんにちは)
青年「さすがに雨が降ると冷えますね……」
(そうですね。でも、庭をご覧になって下さい。花の雨ですよ)
青年「ああ、桜に雨が」
(はい。風情があって私は好きですよ)
青年「桜の花びらからぽたりと落ちる雫の感じが、何とも言えない美しさですね」
(はい。あの桜はずっと昔からこうして咲いているのですよ)
青年「すごいですね。この雨の勢いならまだ散らなくて済みそうです」
(そうですね。こうしてしとどになっても耐え抜く強さを、私も身に着けたいですわ)
青年「しとど?」
(ひどく濡れるさまの事です。「しとしと」や「湿る」が語源の一種と考えられていますね)
青年「へえ……確かに、言われてみれば似ていますね」
(……あら、風鈴の音が澄んだ……もう雨が止みましたね)
青年「はい。草木の瑞々しい香りがしてきました」
(植物にとっては恵みの雨ですものね)
青年「……あ。虹が出ていますよ。初虹です!」
(初虹は夏と違い、日差しが柔らかいですから……きっと、とても淡い色をしているのでしょう)
青年(雨に「しとど」に濡れた桜。風鈴の音、初虹……すごく綺麗だ。でも)
青年(……金魚さんにも見せてあげられたらな)
10 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 09:16:21.72 VeV9Hfv90
青年「こんにちはー」
(こんにちは)
青年(もうすっかりこの道にも慣れた。僕は迷わず金魚さんがいる部屋に進む)
青年「この屋敷に来るとやはり落ち着きます。まるで実家みたいだ」
(貴方にとってこの屋敷が憩いの場であれるのなら、とても嬉しいですよ)
青年「今度泊まろうかなぁ、なんて」
(あら、構いませんよ?)
青年「えっ……」
青年(冗談で言ったものの、僕は予想外の返答に息を詰まらせた)
青年(何て言うか、僕と彼女には一定の距離感があって……)
青年(お互いがお互いの境遇を聞かない、踏み込まない空気が流れていた)
青年(だから、こうして泊まって良いなんて言われるとは思ってもいなかったわけで)
(……? あの)
青年「あ、っ失礼しましたっ! ぼーっとしてて!」
(くすくす……それで、如何無さいますか? いつでも構いませんよ)
青年「えーっと、じゃ、じゃあ明日で!」
青年(おいおい落ち着け馬鹿。焦りすぎだ!)
(明日ですね。丁度良かった。何のおもてなしも出来ませんが、心待ちにしています)
青年「は、はい! では明日の夕暮れ時に参ります!」バッ
(はい。お気を付けて)
12 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 09:19:09.45 VeV9Hfv90
サワサワ……
青年(思えば、夕暮れ時に風鈴屋敷を訪れるのは初めてだ)
青年(今はすこし肌寒い。上着を持ってきて正解だった)
青年(布団も無いだろうから、寝袋を用意してきたけれど)
青年(この気温じゃ、持って来すぎた、なんて事はなさそうだな)
青年(古いトンネルの中を夕陽が射している。その独特な色合いを見ていると、何となく切なくなる)
青年(風が桜の柔らかい葉を撫でる音がする。目を瞑ると心地良い音に包まれる)
青年(きっと僕だけが知っている、秘密の空間)
青年(そう思うと、何だか誇らしいような、妙な昂揚感が湧いてきた)
青年(そうして僕は、いつものように風鈴屋敷の扉を開ける)
13 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 22:10:55.90 VeV9Hfv90
青年「こんばんは」
(こんばんは。お待ちしておりましたよ)
青年(……困ったな、いざ泊まるとなると、話題が浮かんでこないぞ)
……チリン チリン……
青年「……思えば、この時間帯の空気って初めてです」
(そうですね。山の中ですから、帰りが遅くなるといけませんし)
青年「風鈴の音も、いつもと違う……」
(今の風は優しいものですからね)
青年(うわあ、何だか……眠くなってきたぞ……)ウトウト
(眠いようでしたら、少しお休みになって下さい)
青年「え……でも……」
(まだまだお話出来ますから。お気になさらずに)
青年「……すいませ……ん」
チリン チリン……
青年(この風鈴の音のせいかな……優しく僕を包んでくれる、みたいな……感じが……)
チリン……チリリン……
青年(駄目だ、思考が纏まらな……)
……チリ……ン……
14 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 22:16:17.83 VeV9Hfv90
青年(……んん)
青年「!」バッ
青年(うわあ、僕は寝てた……のか! すっかり夜になってる!)
青年「すいません、あの――」
青年「……あれ?」
青年(金魚さんが……居ない!?)
青年「あの!」
青年(金魚鉢はある、けれど……一体何処に行ったんだ?)
ちりん ちりんちりん 
青年(……誰も居ないと思ったら、この居慣れた屋敷が何だか不気味に感じてきた)
青年(空気がやけに冷たく感じる。誰かに見られているような気がする)
青年(月明かりのおかげで部屋の様子は見えるけれど……ちょっと一人は耐えれそうにない)
青年(一体、何処に――)
ぎしっ……
青年「……っ!」ドクン
青年(廊下に、誰かが……居る!)
青年(こんな所に来る物好きなんて……昼間はともかく、この夜に!? まさか!)
青年(ど、どうする……どうする!? 金魚さんはどうなったんだ!?)バクバク
青年(く、くそっ……腹をくくれ! 男だろ!)キッ
青年(僕は震える左の手首をきゅっと握り込むと、意を決して襖を勢い良く開けた)
青年「誰――」
青年「……えっ?」
15 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 22:20:14.59 VeV9Hfv90
「お目覚めになりましたか?」
青年(そこに立っていたのは、桜色の着物を着た、美しい白髪の女性だった)
青年(絹のような長い髪、静かに閉じられたその両目。彼女の周りには無数の泡が漂っている)
青年(まさか)
青年「金魚……さん?」
女「ええ。その通りです。驚きましたか?」
青年「っさすがにまあ……はい。驚きましたよ」
女「ふふふ。座りましょうか」
青年(僕は彼女に促されるまま、縁側に腰を下ろす)
女「私は満月の夜に限り、人の姿に成る事が出来るのです」
青年「なるほど……初めて貴女の声を聞きました。綺麗な声ですね」
女「ふふふ、私も初めてこうして、貴方に触れる事が出来ます」スッ
青年「!」
女「温かい手……まるで春の日差しのよう」ニコ
青年(突如金魚さんが両手を握ってきたので、僕は驚きのあまり固まってしまう)
青年(閉じていても分かる大きな目、すっと通った鼻、優しい笑みを浮かべる口。まるで人形のような綺麗な顔立ちだ)
青年(彼女の顔は、あまりにも完成されすぎていて……僕が見てはいけないもののように感じる)
女「さあ、庭をご覧になって下さい」
青年「……わぁ」
青年(風鈴屋敷の庭を、春の見事な満月が見下ろしている)
青年(庭には野生の様々な花が咲き乱れていて、それを月明かりが照らしている)
青年(この花々はずっと昔から咲き続けていたんだろうか)
青年(夜風に揺られ、風鈴が静かに鳴る)
青年(けれど、月明かりを浴びて心地よさそうにしている彼女が、何よりも美しくて)
青年(心臓が静かに激しく鼓動する。それは嫌な感覚では無い)
女「……ふふ」
青年(ああもう、分かった。分かったよ)
青年(――僕は、この金魚さんに恋してしまったんだ)
16 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 22:35:58.30 VeV9Hfv90
女「どうかなさいましたか?」
青年「いいえ。ただ自分の事を少し知れただけです」
女「?」
青年「ああ、此処は素敵ですね。まるで夢の中みたいだ」
女「……もっと素敵にしてみましょうか」
青年「え?」
女「えいっ」
青年(彼女はそう言うと、白魚のような指先を桜の方に向けた)
青年(その指先から放たれた無数の泡は、正確に桜の花弁一枚一枚に飛んで行き……)
青年「おお、おおお……!」
青年(すっぽりと包み込んでしまった。それらがふわふわと宙を舞っている)
青年「まるで……桜の星空みたいだ」
女「この程度の事しか出来ませんが……素敵でしょう?」
青年「はい! とても幻想的です……!」
女「お気に召していただけたようで」
青年(彼女がそう言った瞬間、ぱんっと音がして泡が一斉に破裂した)
青年(花びらがまるで花火の終わり際のように、ひらひらと舞い降りる)
青年(こんなに美しいのに……彼女は直接目で見る事は出来ないのか)
女「この景色を人に見せるのは、本当に久しぶりです」
青年「他にも人が来たんですか?」
青年(せっかくだ、踏み切った質問をしてみよう)
女「はい、式神使いの女性です。今でもたまにいらっしゃいますよ」
青年「ああ、風鈴を作ったって言う、あの」
女「はい。彼女のおかげで、随分と感知が楽になりました」
青年「へえ、会ってみたいなぁ」
女「三人でお話したいものですね」
青年「そう言えば、前こんな事がありまして……」
青年(勇気を出して踏み込んだおかげで、その後の会話は一気に弾んだ)
青年(金魚さんの事も少し知れた。名は女と言うらしい)
青年(ああ、来てよかったなぁ)
17 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/06(木) 22:37:20.48 VeV9Hfv90
青年(その日から、風鈴屋敷の扉が開く事は無くなった)
18 :以下、
ええな
19 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/07(金) 20:49:36.71 7WOomEqS0
青年(今日は雨が心の底から腹を立てているかのような、凄まじい雨が降っている)
青年(もう梅雨入りらしい。こんな雨だと、どうしても気分が沈む)
青年(僕は彼女を……怒らせてしまったのだろうか?)
青年(外出する気分にならないのか、図書館もかなり空いている)
「……」トン
青年「?」クル
「ちょっと、良いかな?」
青年(誰だろう、この女性は)
「金魚姫についてなんだけれど……向こうの席に行こうか」
青年「……!」
20 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/07(金) 20:55:13.12 7WOomEqS0
式神使い「初めまして。式神使いと言います」
青年「! 金魚さんから話は聞いています。風鈴を作った方ですね」
式神使い「うん。彼女の事はよーく知っているよ」
青年(不思議な感じの人だ。細身の身体、艶のあるショートヘア。全てを見透かすかのような目をしている)
式神使い「さて、私が君に接触したのは、お願いがあるからなんだ」
青年「お願い?」
式神使い「彼女の心に入って、掛けられた呪いを外してほしい」
青年「心に……!?」
式神使い「彼女の呪いは厄介でね、よりによって「恋」をキーとしているんだ」
青年「……つまり、それは」
式神使い「あまりこういう事に干渉したくないんだけれど、時間が無いからね。許してほしい」
式神使い「今の彼女は自分の心に怯え、他者を拒絶している」
式神使い「もう生きる気力が無く、ゆっくりと死に向かっているんだ」
式神使い「心に介入するのはかなりの危険性を伴う。それを踏まえて」
式神使い「君にしか解けない呪いなんだ。彼女の友人として頼む。協力してくれないか?」
青年「……」
青年(唐突に告げられた彼女の心、そして、死に向かっているという事実)
青年(僕の頭の中は、外の天気みたいにぐちゃぐちゃになったまま、形づいた思考を探している)
青年(僕、は……)
青年「……はい」
青年(結局、何かを見つける事が出来ないまま、そう返事をしてしまった)
21 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/07(金) 21:00:17.30 7WOomEqS0
青年(次の月曜日に、満月が出る前に風鈴屋敷で。そう告げられた)
青年(金魚さんに掛かっている呪いを外すには、「恋」を鍵としている)
青年(それは、僕の心の事なのか)
青年(それとも……?)
青年(期待してしまう自分が嫌だ。僕は頬をぴしゃりと叩く)
青年「しっかりしろ。金魚……女さんを助けないといけないんだ」
青年(そうだ。余計な事は考えなくて良い)
青年(彼女を救う事に全身全霊を込めるんだ……!)グッ
22 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/07(金) 21:06:22.20 7WOomEqS0
青年「……ふぅ」
青年(前と同じように、日没の少し前にこのトンネルへとやってきた)
青年(おそらく僕は、前泊まった時よりも緊張している。ずっと両手が震えてるんだもんな)
青年(駄目だ駄目だ、こんなザマじゃ、余計な気を回させてしまうぞ)
青年(左手を胸に当てて、心に水面を思い浮かべるんだ)
青年(今は鼓動で激しく揺れている、それを静かに……静かに……)フゥゥ
青年(……落ち着いた。もう大丈夫だ)
青年「さて」
式神使い「あ、もういいかな?」
青年「うわっ!?」
式神使い「さっきから一人で挙動不審だったから……」
青年「早く話しかけて下さいよ……恥ずかしい」
式神使い「くくっ。まあ良いさ。もう大丈夫だろう?」
青年「……はい」
式神使い「じゃあ、入ろうか。開けるよ……下がって」
23 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/07(金) 21:15:28.23 7WOomEqS0
青年(屋敷内はびっくりするほど静かだ。まるで時が止まっているかのようだ)
青年「……! 風鈴が鳴っていない?」
式神使い「……まずいな。反応すらしないのか……予想よりも深刻だぞ」
式神使い「さて、準備を始めるよ」
青年(女さんは意識を失っている)
青年(彼女の尾びれの付け根には、白と黒の糸で紡がれた紐が結ばれている)
青年(僕はと言うと、その……裸で身体中に何らかの印を描かれている)
青年(まさか服を脱いでと言われるとは思わなかった。何だこの状況)
青年(だが、そんな事は言っていられない。だって、目の前の式神使いさんは……)
式神使い「……!!」
青年(すごい顔で印を描き続けているのだから。集中力が凄まじい)
青年(液体はお香のような匂いと、血のような臭いがする。何で出来ているんだろうか)
青年(そうこう考えているうちに、全ての印が描き終わったようだ)
式神使い「……さて、最後の説明をするよ」
式神使い「この紐は特別製でね、これを君の小指に繋ぐ」
式神使い「そして、満月の力に呼応して彼女が変化する時に……君は意識を失い、彼女の中に入る」
青年「……はい」
式神使い「中がどうなっているかは分からない……どうするべきかは、君が決めるんだ」
青年「大丈夫ですか、顔色が……」
式神使い「少し、休ませて……もらうよ……」ゼェ
式神使い「君なら、大丈夫さ……」
式神使い「頼んだよ……出来るだけ、早く……」
青年(そうして、この部屋で起きている者は僕だけになった)
青年(そのまま二十分ほど経っただろうか、満月の光が部屋を照らし始めた瞬間)
青年「ぐっ……!?」
青年(僕の身体が、一気に熱を帯び始めた。まるで、血がマグマになったかのように……)
青年「あっ、かはっ……!!」
青年(そうして、僕は意識を失った)
24 :◆XkFHc6ejAk 2017/07/08(土) 16:28:54.47 LFUUUkX40
青年「……!」
青年(これが、彼女の心の世界……ひんやりとして澄みきった、綺麗な空気だ)
青年(目の前には青々とした竹、竹……見渡す限りの竹林だ)
青年(真ん中には石の階段がずうっと続いている。……先は、ちょっと見えない)
青年(これを登りきるのか……)
青年「……よし、行こう!!」
25 :以下、
正直金魚には人間の姿になって欲しくなかった
人と金魚の恋の話みたいな感じが良かったのに結局は人の姿じゃないとダメなのか
最初が良かっただけにすごく残念
26 :以下、

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