自衛艦隊これくしょん―抜錨! 第1輸送隊―back

自衛艦隊これくしょん―抜錨! 第1輸送隊―


続き・詳細・画像をみる


自衛艦で艦これ風擬人化モノ。第一輸送隊、及び呉基地配備部隊がメインです。
作品の都合上、オリキャラが多数を占めます。
なお実際の組織、事件、艦艇、地名、その他この作品に描かれたすべてのものはフィクションであり、現実とは一切合切関係がありません。
なお設定はがばがばな日常系です。
2:以下、
 呉は昔も今も海軍の街です。戦前には呉鎮守府が、今は海上自衛隊呉基地に、呉地方総監部がおかれています。
 呉基地は実は、所属する艦艇が日本で一番多い基地なんです。私もたくさんの仲間に囲まれて、毎日日本の海を守るお手伝いをしています。
 どんな仕事かと申しますと、簡単に言えば運び屋さんです。箒には乗りませんが、いろんなものをあっちこっちに運んでおります。
3:以下、
 ご紹介が遅れましたね。私は第1輸送隊のLST-4001、おおすみ型輸送艦一番艦のおおすみです。以後お見知りおきを。
「ね?さ?ん?」
 おや、だらけ切った声が部屋の奥から聞こえてきました。私のことを姉と呼ぶのはこの世にただ二人。
「ね?さ?ん?、早く?」
 この姉をなめ切ったような声はその内の一人です。
4:以下、
おおすみ「……もう、なんですか、しもきた!」
しもきた「ねーさんさー、テレビのリモコン知らなーい?」
おおすみ「そんなことで一々呼ばないでください! こっちは仕事中なんですから!」
しもきた「仕事?? 硫黄島にはくにさきが行ってんじゃん。何言ってんの?」
 くにさき、と言うのは三番目の妹です。今荷物を届けに硫黄島に行っています。
おおすみ「総監から頼まれた、呉基地の艦娘のPRビデオです。youtube? とかいうのに上げるんですって」
しもきた「YouTube?」
5:以下、
おおすみ「そうそう。ま、第1輸送隊は長女である私が撮りますから、あなたはそのままだらだら寝ていて結構ですよ。ほら、こんな感じです」
しもきた「……え、これネットに流すなの?」
おおすみ「ええ。私たちの任務を解説するんです。internetと言うのは世界中の人が見られるというのでさすがに気合いが入りますね」
しもきた「ねーさん、こんなクソ固いもん誰も見ないから。絶対」
おおすみ「ええー。でもいいんですよ、自衛隊は固いぐらいが」
しもきた「宮城地本のTwitterとか知らないの? 今は自衛隊も柔らかくいかなきゃ」
おおすみ「柔らかくって……。そんなのでマスコミや市民の皆様からのあらぬ疑いをかけられたりしませんか? 『お前ら空母だろ』とか『侵略に使う気だろ』とか……」
しもきた「今時そんなこと言う奴の方が少ないって。て言うか私らが空母だったらいずもとかどうなんのさ」
おおすみ「それは常々思ってます。うちのかがさんがいつF-35Bを飛ばしだすかヒヤヒヤ……、っていうのはいいんです! 今はPR動画ですよ! 文句つけるならあなたが撮ったらどうです?」
しもきた「ええーそれはめんどい」
おおすみ「ほら、すぐにそう言う。だから私が作ってるんですよ。文句言わずに付き合いなさい」
しもきた「でもなー、あのクソダサな感じがうちのPRビデオってのも嫌だし……。ねーさんさ、なんかビデオ撮ったらなんかある?」
6:以下、
おおすみ「隊対抗で、一番面白い動画を取った隊には、総監からご褒美があるそうです」
しもきた「マジで!? 何で黙ってんのそういう事!」
おおすみ「ご褒美につられるなんて不純です! 自衛艦として己の職務の」
しもきた「こうしちゃいられないね! あの総監、独身で金だけは有り余ってるだろうからきっと超豪華なご褒美のはずだし……。くにさき帰ってきてから三人で撮ろう! それでうちら第1輸送隊が優勝かっぱらってやるんだ!」
おおすみ「ええぇ、やっぱりそういうのはよくないような……」
しもきた「いいじゃんたまには。ねーさん固すぎるんだからたまには柔らかくしないと。そんなんだから胸も固」
おおすみ「は?」
しもきた「すみません」
7:以下、
??????????????
くにさき「たっだいまー!」
おおすみ「おかえりなさい、くにさき。輸送任務お疲れ様」
くにさき「おおすみお姉ちゃーん!」
おおすみ「くにさきー!」
しもきた「……帰って来るたびに抱きしめんのそろそろやめたら?」
 何を言うのでしょうこの子は。無事に母港に帰るという事のありがたみが理解できていないようですねぇ。
8:以下、
くにさき「それよりお姉ちゃんたち、PRビデオってどういう事?」
しもきた「総監がすごいご褒美上げたくなるような第1輸送隊のビデオを撮ろうって話。さっそく作戦会議だ」
 いつになくしもきたがやる気です。まったくこの子ったら。
くにさき「みんなでビデオ撮るんでしょ? なんか楽しそー!」
 くにさきはいっつもこんな感じですね。ザ・平常運転。
 かくいう私も、すこしだけ楽しみです。姉妹そろって何かをする、なんてことはそうそうありませんし。
しもきた「まずどんなビデオをとるかって話なんだけどさ」
おおすみ「やはり、私たちの任務を皆様にお伝えすることが必要でしょう。そうだ! 輸送任務にカメラを持って行って……」
しもきた「却下。あのね、ねーさん。そういうのは興味持ってくれた人が調べたら出てくるからいいの! 今から撮るのは、総監からご褒美がもらえるようなビデオなんだからさ」
おおすみ「せめて本音は隠しましょうよ……」
9:以下、
くにさき「じゃあ私撮りたいのがあるんだけど!」
しもきた「はい、くにさき」
くにさき「三人で踊るってのはどう? 『LOVEするフォーチューンビスケット』の曲に合わせて」
しもきた「微妙にブームが過ぎたもんぶっこんで来るな、くにさきは」
くにさき「ええー、ダメ? じゃあLOVEダンスとかはどう? すごい流行ってたし」
しもきた「それもちょっと前の話じゃん……。でもブームに乗っかるっていいかもね」
おおすみ「ブーム……、あ! あれはどうですか? お盆で前を」
しもきた「ダメ」
おおすみ「えー」
しもきた「たまに真面目な顔してとんでもないもん言うよな、ねーさんって」
おおすみ「駄目ですかね?」
しもきた「懲戒免職と引き換えでいいなら。艦娘に免職制度があるかは知らんけど」
おおすみ「それは嫌ですねぇ……」
くにさき「そうだ! 流行りでいいやつあったよ!」
しもきた「ホントに!? コンプライアンスとか大丈夫なのか?」
くにさき「うん! しかも三人でできるやつ」
くにさき「でかした! ポンコツねーさんとは違うな! 流石私の妹!」
おおすみ「私の妹でもあるんですけどね、二人とも」
しもきた「で、どういう奴なんだ!?」
くにさき「えっとねー、まずおおすみお姉ちゃんと、しもきたお姉ちゃんが……」
10:以下、
????????????
 ♪?
くにさき「第1輸送隊って、何隻いるか知ってる??」
 白いブラウスと黒いタイトスカートに身を包んだくにさきが、軽快な洋楽とともに前に出ます。それに合わせて、後ろに控える私とおおすみは、シャツを脱いでくるりと後ろを向きました。
くにさき「3・隻!」
 私の背中には3が、しもきたの背中には隻の文字が大きく書かれています。あ、地肌ではありませんよ、シャツの上に、です。
くにさき「あー、輸送艦に生まれてよかったー!」
 ここでバーンと、くにさきの決め台詞。私たちもカメラ目線でポーズを決めて、
11:以下、
しもきた「……よし、こんなもんか」
 微妙な顔をしているしもきたが、カメラを止めました。
くにさき「どーう!? すっごいよくない!?」
しもきた「なんでだろう、忘年会の芸だし感がぬぐえない」
おおすみ「まあ、流行りの芸人をまねしたらそうなりますよねー」
くにさき「そー言われてみるとそうかもー……、ご褒美もらえそうじゃないなー」
おおすみ「やっぱり真面目な奴の方が……」
しもきた「いや、この路線は間違ってない!」
くにさき「やっぱ踊ろうよー! そうだ! チューチュードレインっていうのが」
 しばらく姉妹でのお見苦しい言い合いが続きました。その内、誰ともなしに、とある疑問が浮かびます。
 他の隊の人はどんな動画を取っているのだろう、と。
12:以下、
おおすみ「……確かに気になりますね」
しもきた「きっとあれだよ。第4護衛隊とかすっごい派手な奴取ってるんだよ。なんせ最新のDDHいるんだし」
くにさき「掃海隊の人とか気になる!」
おおすみ「……見に行ってみます?」
しもきた「だな」
くにさき「スパイ大作戦、だね!」
 我々姉妹三人は、お互いを見合わせてにやりと笑いました。
 しっかし、しもきたとくにさきの悪い笑顔、よく似てますねー、流石は姉妹。私? いやいや、純真真面目な私がこんな顔するわけないじゃないですかー。
しもきた「……ねーさんとくにさき、笑い方が気持ち悪いぞ」
くにさき「しもきたお姉ちゃんとおおすみお姉ちゃんこそ」
 ええー……。
13:以下、
 まあその辺はほっておいて、私たちはさっそく偵察に向かいます。最初は護衛艦寮です。
 呉基地には、第4護衛隊群隷下の第4護衛隊と、地方配備部隊の第12護衛隊の方々が暮らしています。
 第4護衛隊にはなんと自衛隊の最新型DDH、いずも型ヘリコプター搭載型護衛艦のかがさんがいらっしゃるんですよ!
 そんなわけで、まず最初にお伺いするのは第4護衛隊の皆さまの所です。
14:以下、
しもきた「……いた、かがの部屋に集まってるみたい」
くにさき「一階だからそこの窓から見れるよ!」
おおすみ「かがさん、怒ったら怖いらしいのでそっと見ましょう……」
私たちは物音を立てないよう、そ?っと覗きこみました。
15:以下、
 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いなづま「かがさん! その、もう一回自己紹介をお願いするのです!」
かが「いずも型ヘリ空母二番艦、かがです」
さざなみ「だからかがさん! それアウトですって!! 垢バン案件!」
さみだれ「もう何回目ですか?」
かが「ここは譲れません」
いなづま「そこは譲ってほしいのです……」
さざなみ「こんなんじゃPRビデオ撮れない?」
………………
16:以下、
おおすみ「大変そうですね……」
しもきた「うん、ここは大丈夫そうだな。この調子だとロクな奴撮れなさそうだし」
くにさき「下手したらお蔵入りかも……」
 私たちはそっと窓際を離れました。いなづまさんやさみだれさん、さざなみさんに、心の中で幸運を祈っておきましょう。
しもきた「よし、気を取り直して、こっちだ。次は第12護衛隊の連中!」
くにさき「第12護衛隊もこっちから見れるっぽいよ!」
おおすみ「まあ、あそこは平和にやってるでしょう、どれどれ……」
17:以下、
 第12護衛隊は地域配備部隊、護衛艦隊の直接指揮下にある部隊です。配備されておるのはDD、つまり汎用護衛艦のうみぎりさんと、DEこと沿岸護衛艦のあぶくまさんにとねさん。
うみぎり「いいっすか! うちら第12護衛隊は今、例の広報動画によって総監から試されてるっス!」
とね「それは言い過ぎではないか?」
あぶくま「言いすぎですよね」
18:以下、
うみぎり「いや、よく考えるっス。とね、あなた何年生まれっすか?」
とね「吾輩か? 吾輩は1991年、……は!」
うみぎり「やっと気づいたっすね」
あぶくま「……どういう事?」
うみぎり「あぶくま型6番艦のとねですら30年選手。うちとタメっす。つまり、この第12護衛隊は下手すれば平均年齢が呉基地でも最高齢!! 全員アラサー!」
あぶくま「な、なんてことでしょう!?」
とね「くっ、最近やけに潜水艦の連中がきゃぴきゃぴしとると思っとったら」
うみぎり「第5潜水隊なんて人間ならみんな小学生っすよ……」
あぶくま「うう、潜水艦め……」
うみぎり「とにかく、最近の若い連中の態度! あれは完全にアラサーをなめ切ってるっス! ここで一泡吹かせて、うちらがまだまだ若いってことを見せつけてやりましょう!」
とね「その言葉からすでに若さがないぞ、うみぎり」
あぶくま「戦う前から負けてます……」
うみぎり「何がいいっすかねー、パラパラとか華やかでいい気がしませんか?」
…………
19:以下、
おおすみ「……なぜでしょう、胸が痛みます」
しもきた「そりゃねーさんだけ二十世紀生まれ……」
おおすみ「進水ならあなたもおんなじでしょう!」
くにさき「お姉ちゃんたち声おっきいよ……」
おおすみ「うう、気を取り直しましょう。次はどこに行きますか?」
しもきた「そうだなー、場所的に近いのは掃海隊のとこじゃない?」
くにさき「……もしかして、あれかな?」
 くにさきが指さす先にいました。呉基地に停泊する第3掃海隊の皆さんです。
20:以下、
ぶんご「いいかい、あんたたち! あたいら掃海隊は自衛隊で最も歴史と伝統ある部隊だ! 海の安全を守る大事な役割を担ってる!」
 ビール箱に乗って演説するのは、うらが型掃海母艦のぶんごです。
あいしま「そうですねー。ウフフ」
みやじま「そーじゃなー」
 その前に座っているのが、すがしま型掃海艇のあいしまさんとみやじまさん。二人も第3掃海隊のメンバーです。ちなみに私たち第1輸送隊は掃海隊と同じ掃海隊群の隷下にあります。つまり同じ部署みたいなもんです。
 物陰から私たちが見ているとも知らず、ぶんごの演説は続きます。
ぶんご「しっか?し! 世間は護衛艦と潜水艦ばっかに注目しやがる! 掃海隊は地味な扱いだ! 本もドラマも映画も漫画も、あたしら掃海艦艇が主役の奴はぜ?んぜんない! この風潮は許されていいものか、いや駄目だ!!」
あいしま「そーですねー。あー、ぶんご様、なんとかわいらしい……」
みやじま「そーじゃなー」
 ぶんごの熱い演説を、あいしまさんはニコニコとした顔で聞いて……、いや、あれは楽しんでますね、小型カメラを構えているのがここからでも見えます。っていうかなんか変なセリフも漏れ聞こえているような……。
21:以下、
しもきた「なあ、おおすみねーさん、知ってるか?」
おおすみ「何を?」
しもきた「あいしまってさ、ぶんご好きこじらせて、パソコンにぶんごフォルダ作ってるらしいって」
おおすみ「じゃああの演説もフォルダ行きですね、きっと。まあ広報動画も撮れて一石二鳥では?」
 一方のみやじまさんは、何やら真剣に聞いて……、いや、右耳からイヤホンコードが伸びているのが見えました。
くにさき「確か、今カープが試合してたような……」
おおすみ「おっさんですか、彼女」
みやじま「……ちっ、なんじゃワレェそこで打つんが普通じゃろ」
 聞こえてる聞こえてる。愚痴がここまで聞こえてます。
しかしぶんごは気にせず、というか気づかずに演説を続けていました。
おおすみ「……今度飲みに付き合ってやりましょう」
しもきた「あー……、うん。もういいや、次行こう、次」
22:以下、
くにさき「あ、食堂の方にも人がいたよ!」
 くにさきに引っ張られるように基地の食堂へと向かいました。入口からそっと中をうかがうと、第101掃海隊の掃海管制艇、くめじまさんとゆげしまさんがのんびりとお茶を飲んでいます。
くめじま「ねーねーゆげー。総監が言ってたPRビデオどーするー?」
ゆげじま「そーね。お茶飲んでからゆっくり考えましょ」
くめじま「おーけーおーけー」
 二人はずずずっと緑茶をすすり、まったりとしておりました。
しもきた「……いいのか、あれは?」
おおすみ「まあ、動画撮影は任意ですし。参加しないところもあるでしょう」
くにさき「のんびりさんなんだねー」
23:以下、
かしま「うふふ、お三方、何をされているんですか?」
おおしま「ふにゃるぁっ!?」
しもきた「しゅわっつ!?」
くにさき「にゅるほっ!?」
おおすみ「か、かしまさん!?」
 いつの間にか背後には、練習艦隊直轄艦の練習艦、かしまさんがいらっしゃいました。
かしま「他の隊のPRビデオ撮影の様子を見てたんでしょう?」
おおすみ「まあ、はい……」
かしま「じゃあ、私たち練習艦隊のものも見てくれませんか?」
しもきた「え、いいの?」
かしま「はい。大勢の方に見られるというのは、私たち練習艦隊の本分ですし♪」
くにさき「やったー! じゃあお言葉に甘えて」
かしま「こちらにどうぞ、ウフフ」
24:以下、
 向かった先は練習艦寮。そこには練習艦、しまゆきさん、せとゆきさん、そしてやまゆきさんがいらっしゃいました。……いらっしゃったのですが
おおすみ「なんですか、しまゆきさん。その二次元から飛び出してきたみたいな服装は」
しまゆき「わたくし達の広報ビデオの衣装でございますわ! 今話題のバーチャルユーチューバーと言う奴ですのよ」
せとゆき「しまゆきお姉さまはキズナアイの格好です」
やまゆき「いい感じに仕上がったのですよ」
しもきた「コスプレ、か」
しまゆき「ええ。わたくし達練習艦隊は日本の顔として外国を巡りますの。ですからこうやってジャパニーズカルチャーを広めることなんて慣れっこですわ」
せとゆき「ちなみに私は振袖です」
やまゆき「やまゆきは十二単ですよ」
しもきた「しまゆきだけキレッキレの最先端歩いてるぞ」
くにさき「っていうか、なんかみんな気慣れてる感じだね?」
25:以下、
しまゆき「ええ。わたくし達、寄港先でこうやってコスプレをして、日本のホップカルチャーを広めているのですわ!」
せとゆき「同人誌なんかも配ってるんです。結構評判いいんです」
やまゆき「しまゆきお姉さま、最近は自作してるんですよ」
おおすみ「……日本という国が盛大に誤解されそうな気が」
かしま「いいんです。私たち練習艦隊は日本の顔ですが、それに色々な顔があっても。みなさんがこうやって練習艦としての務めを果たしてくれるのを見ると、私も感激です!」
しまゆき「かしまお姉さま! わたくし、お姉さまのような立派な練習艦を目指して頑張りますわ! あの夕日に向かって!!」
26:以下、
おおすみ「今、昼過ぎですけどね」
しもきた「……ま、楽しそうならいいんじゃない?」
くにさき「ここが一番参考になるんじゃないかなー?」
おおすみ「そうかもしれませんねぇ。いや、私はコスプレなんかしませんけど」
しもきた「何言ってんのさ。あたしらは常に空母のコスプレ」
おおすみ「やめなさい、しもきた」
くにさき「でもコスプレ楽しそうだなー。そうだ! てんりゅうさんのトコ行ってみない?」
おおすみ「てんりゅうさん? 訓練支援艦の?」
くにさき「うん! あの眼帯、なんのコスプレか聞いて参考にしようよ!」
しもきた「……いや、あれはコスプレじゃないんじゃ」
てんりゅう「おいこら、聞こえたぞ」
27:以下、
くろべ「こんにちは、輸送隊のみんな」
 噂をすれば、第1海上訓練支援隊のてんりゅうさんとくろべさんが立っていました。てんりゅうさんは何やら大きな段ボール箱を持っています。
てんりゅう「いいかくにさき! これはな、コスプレじゃなくて……」
くろべ「頭の角の方がよっぽどコスプレよね」
てんりゅう「いやお前にも似たようなの付いてんだろくろべ!」
おおすみ「それはそうと……、お二人は一体どうしてここへ? 練習艦寮ですよ、ここ」
かしま「あ! 私が呼んだの」
てんりゅう「かしまに新装備を渡しにな。ほら、これ」
かしま「ありがとうございます、てんりゅうさん!」
おおすみ「新装備と言うのは……?」
しもきた「練習艦隊に新装備ってあんまり聞かないような気がするんだけど」
28:以下、
てんりゅう「あ、いやそういうのじゃなくて」
かしま「今度の遠洋航海で着る新しい衣装、作ってもらってたのよ!」
てんりゅう「自信作だぜ!」
くろべ「頑張って作り込んだもんねぇ」
くにさき「訓練支援隊ってそんなことまでしてたんだ……」
おおすみ「そういえば……、お二人は取らないんですか? PR動画」
てんりゅう「え? ああ……。潜水隊とか護衛隊が張り切ってやってるだろ? 俺らはその取りまとめやら何やらの担当なんだよ。ま、実際やるのは総監の手伝いぐらいさけど」
くろべ「だから支援隊は別にいいかな?って思ってたの。隊のメンバーは二人だけだし」
しもきた「げんかい呼んだら? 隊は違うけど似たような艦種でしょ?」
てんりゅう「あいつは呼んでも来ねえだろ。人見知りだし」
くろべ「っていうわけなの」
くにさき「ちょっとさびしーなー。かっこいいてんりゅうさん達のビデオも見てみたかったのに」
てんりゅう「そうか? なら撮ってみてもいいかな……」
くろべ「…………。てんりゅう?」
29:以下、
てんりゅう「いや、ほら、あれじゃん! やっぱりさ、せっかくだし俺ら支援隊の活躍をさ、もっと知ってもらうってのもあり……」
くろべ「それで調子に乗って私のカメラ壊したのはどこのてんりゅう型訓練支援艦だったかしら?」
てんりゅう「いやその言い方ほぼ確定してんじゃねえか!」
くろべ「て?んりゅ?う?」
てんりゅう「うぐっ……」
くろべ「……フフ。もういいわ。ジョーダンよ。せっかくだし、私たちも撮りましょっか」
てんりゅう「え、いいのか?」
くろべ「もちろん。私も総監のご褒美気になるし」
てんりゅう「よしっ! それじゃあさっそく76mm射砲の射撃をっ!」
くろべ「いやそこはチャカ?の方が……」
30:以下、
おおすみ「……、私たちも帰りましょうか」
 てんりゅうさんたちが帰っていくのと一緒に、私たちも自分たちの部屋へと戻ります。まあ色々見て回れましたし、本来の目的である敵情視察もできたわけですからもう十分だろう、という事です。
しもきた「で、どーする?」
くにさき「さっぱり踊ろうよー! コスプレして」
しもきた「いや、ここはやっぱり流行りのアニメやゲームを……、セイバーとか」
 なんか問題発言が聞こえた気がしました。私は姉として妹たちを戒めます。
おおすみ「あのですね、私たちが撮るのはPR動画……。広報のために撮るんですよ。自衛隊の広報と言うのは、私たちの活動を知ってもらい、理解してもらい、国民の皆様の信頼を得るためにあるのです。そこを逸脱してしまっては……」
31:以下、
しもきた「ねーさんそろそろうざい」
おおすみ「うざっ!?」
 こ、言葉のハープーン攻撃!? う、我の被害甚大、至急艦隊に支援を……
しもきた「……ねーさん?」
 はっ! 危ない危ない。危うく大破するところでした。このご時世小破でも新聞をにぎわせかねません。落ち着いて落ち着、いて……。
 ううっ……、しもきたぁ。
くにさき「……、しもきたお姉ちゃん、謝った方がいいよ? おおすみお姉ちゃん泣きそうだよ?」
おおすみ「な、泣きそうじゃないですもん!」
しもきた「あ……、うん、ごめん、ねーさん」
 しもきたはぷいっと横を向いたまま、ぼそりと言いました。そんな謝罪でも姉の私としてはうれしいものです。
 ちょうど風のせいで出かけていた涙を袖で拭います。
32:以下、
おおすみ「では、改めてうちのビデオを……」
おやしお「おおすみさんっ!? ここにいたのですか!」
 部屋のドアがバーン、と開かれました。入ってきたのは第1練習潜水隊所属の練習潜水艦、おやしお型1番艦のおやしおでした。
おおすみ「おやしお、どうかされました?」
おやしお「どうしたもこうしたも……。少し潜水隊寮まで来ていただいてもよろしいですか!? 実は例のPRビデオに関して、すこし問題が」
しもきた「なんか張り切ってるんだよね、潜水隊」
おやしお「はい、ちはやさんがせっかくだから第1潜水隊群みんなで撮ろうとおっしゃったのですが、どんなビデオにするかで揉めに揉めちゃって……」
おおすみ「あらら……」
おやしお「私とみちしお、練習潜水隊とちはやさんが総出で抑えにかかってるんだけど、三人じゃなかなか……」
33:以下、
くにさき「多いもんねー、潜水隊のみんな」
おおすみ「入れ替わり激しいですもんね」
おやしお「おおすみは同期だし、頼みやすいかなって思ってお願いしたんですが」
おおすみ「結構ですよ! 姉妹そろって暇してますし」
おやしお「ありがとうございます!」
しもきた「でもさ、ねーさん。本気出してる潜水艦ってうちらにもどうにもできないんじゃ……」
おおすみ「よく考えなさい、しもきた。私たちの任務は戦闘ではないでしょう?」
しもきた「はぁ……?」
34:以下、
…………
ちはや「く、私の不用意な一言がこんなことになっちゃうなんて……、不覚」
みちしお「ほんと何考えてんのよ。おかげでみんな潜水隊名物「隠れドッチ」始めちゃったじゃない!」
ちはや「ううう……。寮の中でやらないでよぉ?。総監にバレたら大目玉だよぉ?」
いそしお「すきありぃっ!」
ちはや「ふぶっ!?」
みちしお「ち、ちはや!?」
まきしお「練習艦になって腕が落ちたんじゃない!? みちしお」
みちしお「ふごっ!?」
じんりゅう「うっふふー。ビデオの主役は私たち第一潜水隊だよん」
いそしお「目標の沈黙を確認したぞー!」
まきしお「うるさい連中から先に倒したから、あとは潜水隊同士の真剣勝負」
じんりゅう「さーさー、みんな、再潜航して次の獲物をやっちゃうぞー!」
いそしお・まきしお「「おおー!」」
…………
35:以下、
おやしお「みちしおさん!? みちしおさーん!」
おおすみ「……みちしおさんは?」
おやしお「駄目です。みちしおさんとちはやさん、共に沈黙しました……。事態は深刻なようです」
しもきた「そうはいっても、潜水艦寮が不気味なほど静かなんだけど」
くにさき「中で大騒ぎしてるとは思えないなー」
おやしお「きっと、潜水艦娘名物『隠れドッチ』をやっているのでしょう」
しもきた「なにそれ」
おやしお「かくれんぼとドッチボールを混ぜたような遊びです。一人一個ボールを持って、相手にボールを当てて最後まで生き残ったチームが勝ち、というルールなんです。潜水艦は隠れるのが得意なんで、こういう形の遊びをよくやってるのですが」
くにさき「じゃあますますみんなを探して集めるのは大変なんじゃ……」
おおすみ「そのためにわざわざ皆さんを呼んできたんから。大丈夫です」
 確かに海上自衛隊の潜水艦は練度技術ともに世界でも非常に高いレベルにあります。ですが、というかだからこそ、海自の「対潜」という技術も同じようにハイレベルだったりするんですよ?
36:以下、
けんりゅう「……あしおと聞こえた!」
くろしお「よーし、よぉやった、けんりゅう。のこのこ音たてて歩いてくるなんてアホやなぁ」
もちしお「やっちゃいましょうよ、けんりゅうさん、くろしおさん!」
くろしお「まあ待ち。ここは相手を完全に包囲してからや」
けんりゅう「わかった……!」
もちしお「了解ですっ!」
「誰を完全包囲するつもりですか?」
くろしお「げっ!?」
けんりゅう「うしろ?」
もちしお「うわっ!? マジっすか!?」
おおすみ「マジもマジ。大マジです。まったく、何してるんですか」
くろしお「な、なんでうちらの場所がわかったんや!?」
おおすみ「確かに、天井裏とは考えましたね。普段なら気が付かないです。ですが……」
37:以下、
 私はバーンと腕を広げます。
おおすみ「彼女たち、第1音響測定隊にかかれば丸裸なんですよ!」
ひびき「いや、本来はこういう任務じゃないんだけどね」
はりま「で、でも……、任されたからには、が、頑張ります!」
おおすみ「そんでもって、かがさんと、艦載機のSH60Kをお借りしました。現在ソノブイを寮内各所に設置し、情報の収集を行っています!」
かが「まったく、こんなことに私を駆り出すなんて……」
おおすみ「ソノブイから送られてくる情報はひびきさんやはりまさんが集めた情報を基に艦種を特定し、やかに確保しています。今頃しもきたやくにさきが……」
38:以下、
……………
しもきた「まったく、面倒かけさせないでほしいんだけど」
いそしお「なにぃー!?」
まきしお「こんな簡単に見つかっちゃうなんて……」
じんりゅう「ソノブイは反則でしょ?」
……………
くにさき「みーつけた!」
そうりゅう「見つかっちゃった」
うんりゅう「見つかってしまいましたか……」
はくりゅう「うーん、うまくやったと思ったんですけどねー」
せきりゅう「あらら、バレてしまいましたか?」
……………
39:以下、
おおすみ「と、いうわけで、第1潜水隊や第5潜水隊も確保できたそうです」
おやしお「ありがとうございました。放っておくといつまでも決着がつかない遊びでしたし、どうなってたことやら……」
おおすみ「お礼ならひびきさんやはりまさん、それにかがさんにお願いします。私はただ、彼女たちを連れてきただけですよ」
おやしお「ありがとうございました、みなさん」
ひびき「ニィエーザシタ。普段集めていたデータが役だったならよかったよ」
はりま「お、お役に立てたようで、何よりです!」
かが「まったく、こんなことにヘリ空母を使えるぐらい、今の時代が平和だってことはわかったわ」
おおすみ「本来使えないんで黙っといてくださいね? 訓練名目で処理しますが、バレたら怒られかねません。総監は寛容な方ですが、世間は総監ほど優しくないので」
かが「……ずっと思ってたけれど、あなたのその妙にスレた感じはなぜなのかしら?」
おおすみ「…………。全通甲板持ってたらなんでも空母に見えちゃうんですよ、みなさんは。揚陸艦なんて名前だったら侵略に」
しもきた「ねーさん、トラウマ自分から抉らなくていいから。かが引いてるから」
かが「大変だったのね、あなたも……」
くにさき「おおすみお姉ちゃんは(政治的な)修羅場を一杯くぐってきたから」
40:以下、
むろと「おやおや?みなさんここにいましたか?」
ひびき「あ、むろと」
はりま「ごめんなさい……、勝手にどこかに行っちゃって……」
 やってきたのは敷設艦のむろとさん。ひびきさんたちが所属する第1音響測定隊を隷下に収める海洋業務・対潜支援群直轄艦を務める方です。
むろと「いえいえ?。もうすぐお夕飯なので呼びに来ただけですよ?」
おおすみ「そういえば、もう夕方ですね。申し訳ありません、みなさん。こんな時間まで突き合わせてしまって」
むろと「それにしても?、ソノブイまで使うなんて本格的ですね?。私に言ってくだされば?、そんなものなくてもよかったのに?」
しもきた「え?」
むろと「さ?行きますよ?。今日はボルシチで?す」
ひびき「本当かい? 私の舌に敵うボルシチなのかな?」
はりま「楽しみです……」
むろと「任せて下さい?。作るのはひびきちゃんですから?」
ひびき「え? 聞いてないよ?」
むろと「言ってませんから?。材料は揃えてますよ?」
 そういいながら、彼女たちは帰っていきました。
41:以下、
しもきた「なぁ、ねーさん」
おおすみ「なんですか、しもきた」
しもきた「むろとってさ、なんで私らがソノブイ使ったって知ってたんだろうな」
おおすみ「どこかで聞いてたのでは?」
しもきた「どこで? むろとの前では話してないけど?」
おおすみ「…………」
くにさき「むろとって敷設艦だよね? そういえば何を敷設してるんだろ。機雷?」
おおすみ「機雷ではありませんよ。それは掃海隊の仕事ですから。むろとさんが敷設しているのは……」
しもきた「ねーさん、くにさき、もうこの話はやめよう」
おおすみ「……奇遇ですね、私もそう思いました」
くにさき「?」
しもきた「世の中には知らない方がいいこともあるってことだよ」
おおすみ「私たちもご飯にしましょう。久しぶりにあそこに行きますか?」
…………
42:以下、
とわだ「へいらっしゃい! って輸送艦ズじゃない。久しぶりね」
おおすみ「ドラえもんズみたいに言わないでください」
 ここは基地内にあるコンビニエンスストア「青江マート」です。全国の海自基地でそこに配備されている補給艦さんが経営しており、呉ではこのとわださんが店を切り盛りしています。
おおすみ「お夕飯を頂きに来たんですが」
とわだ「いいわよ! はい、メニュー」
『青江マート』はコンビニと銘打ってはいますが、レストランコーナーもあります。イメージ的には高道路のSAみたいな感じです。基本料理上手が多い艦娘や、基地食堂にも負けないぐらい絶品の料理が食べられるんですよ。
43:以下、
おおすみ「じゃあ私は日替わりピザで。ポテトもセットでください」
しもきた「ダブルチーズハンバーガー頂戴!」
とわだ「……晩飯だぜぇ輸送艦ズ?」
おおすみ「いいんですよ、ピザは三色栄養素がすべてそろった完璧な食材ですし」
しもきた「ハンバーガーも同じく」
くにさき「私からあげ定食くださーい」
とわだ「おうおう、末っ子は普通で真っ当な感じだねぇ相変わらず。よしよし」
くにさき「わーい」
おおすみ「客の注文にケチつけないでくださいよ」
とわだ「へーへー。待ってなさい、アメリカンでスペシャルな奴作ってきてあげるから。くにさきちゃんには美味しいからあげ揚げてくるからねー」
44:以下、
 とまあしばらくして、私たちの頼んだ料理を持って来て下さりました。ピザはトマトソースにチーズとサラミ、ピーマンとタマネギがたっぷり乗ったまさしく理想の栄養バランスを備えたものでした。
とわだ「はい、いっちょあがり。たーんとお食べ!」
「「「いただきまーす」」」
とわださんはモグモグと食べている私たちの横に、椅子を引っ張って来て座りました。
とわだ「時に輸送艦ズさ、司令の言ってたPRビデオってもう撮った?」
おおすみ「いいえ、それで今日色々あって……」
とわだ「そーなの。私もさー、第1海上補給隊って私一人だけだし、どーしよっかなーって思ってて」
しもきた「レシピとか乗せたら? とわだの3分クッキング的な」
とわだ「あー、それもアリね。独身男性向けの簡単なやつとかなら受けも狙えるだろーし」
くにさき「それ私も見ていたい!」
とわだ「お、そーかそーか。じゃあとわだねーちゃん頑張っちゃおっかなー。くにさきちゃん何のレシピ知りたい?」
くにさき「うーん、切り干し大根の煮物!」
とわだ「……えらい渋いなー。姉二人の反動ここにきてるんじゃない?」
おおすみ「どういう意味ですかそれ」
しもきた「いいじゃん、切り干し大根」
くにさき「いいよねー」
45:以下、
とわだ「駄目とは言ってないけど。ま、いいよ。美味しい切り干しを、でも普通じゃつまんないな……。甘くしてみるか……。砂糖、いや、あえて生クリームを……、コーラもあり……?」
おおすみ「なしでしょう。何をどうあえるんですかそれ。劇物のレシピになってますよ」
とわだ「いや、これからの料理にはインパクトが必要だと思うのよ。ブロッコリーブッ指して上からドレッシングかける、みたいな」
おおすみ「その手のインパクトは平野さんだけでお腹いっぱいですから」
しもきた「そのうちここのメニューもすごいことになるんじゃない、この調子じゃ」
とわだ「それがさー、総監にそれだけはやめなさいって言われちゃってねー。せっかく考えたレインボーカレー披露しようと思ったのに」
くにさき「……総監、珍しくグッジョブだったね」
おおすみ「その、とわださんは普通に料理上手なんですから奇抜な方向にもっていこうとするの止めません?」
とわだ「いや、伝説の給糧艦、間宮さんを超えるためにはこのぐらいしないと」
しもきた「普通に超えて。奇抜さで超えないで」
とわだ「ちぇ」
しもきた「舌打ちしないでよ……」
とわだ「ところで、輸送艦ズは決まってるの? PRビデオ何撮るか」
46:以下、
おおすみ「それが……」
しもきた「ぜーんぜん」
くにさき「決まってなーい」
とわだ「あらら。大変ねー」
おおすみ「他人ごとだと思って……」
とわだ「他人事だもーん」
しもきた「あのさあ、とわだ。とわだのビデオのアイデア上げたんだからなんかアイデア頂戴よ。Give and takeってやつで」
くにさき「そーだそーだ!」
とわだ「ええー。何でよ。でも、うーん、そうねぇ」
おおすみ「なんだかんだ考えてくれるんですね」
とわだ「ま、そりゃ補給艦だからね。アイデア補給、的な?」
しもきた「なんか思い浮かんだ?」
とわだ「うーん、ま、ここは普段のあなた達でいいんじゃない?」
くにさき「普段の、私たち?」
47:以下、
とわだ「そーそ。私たち艦娘が何をしてるかって、自衛隊以外の人はあんまり知らないでしょ? そういう人たちに興味持ってもらいましょーって言うのがビデオの趣旨なんだし」
しもきた「でもそれじゃあ普通じゃない? 他の隊はみんな派手ですごそう感じ……、だと思うし」
とわだ「そう? 私にはあなたたちの仕事も派手ですごいように見えるわよ?」
おおすみ「そうですかね?」
とわだ「ええ、海自唯一のLCAC積んでるドック型輸送艦じゃない! いずももひゅうがもできないわよ?」
しもきた「なるほど……、エアクッション艇で攻めるか……」
とわだ「それに、一生懸命やってれば素晴らしいビデオになるはずよ。小手先の小細工なんかに頼らなくってもね」
くにさき「とわだ……」
しもきた「いや、今さっき小手先の小細工に頼ろうとしてたよね、とわだ?」
とわだ「あれは違うわよ。抜本的な改革」
おおすみ「でも、そうかもしれませんね。私たち、小細工に頼り切っていたかもしれません」
しもきた「……かもね」
48:以下、
 とわださんの助言もあり、私たちのビデオの方針は決まりました。それは日常です。輸送任務に従事している時や、休暇で姉妹や友人とおしゃべりしている様子なんかをビデオで撮影していきました。
 編集は最小限。ありのままの第1輸送隊を見てもらうべく、自然体で撮影に臨みました。
 我々からすれば特に派手なことはありませんが、完成品をとわださんやおやしおに見てもらうと、とても好評でした。
 これでいけるかもしれない、そんな確信を持ちつつ、ついに結果発表の日を迎えたのです。
49:以下、
おおすみ「もうすぐ発表ですね……」
くにさき「みんな集まってるねー。講堂が狭く感じちゃう」
しもきた「ご褒美はうちご褒美はうちご褒美はうち……」
総監「えー、今日は忙しいところ集まってくれてありがとう。さっそく呉基地のPR動画コンテストの結果を発表する」
50:以下、
てんりゅう「よし、まず第三位!」
くろべ「じゃかじゃかじゃかじゃかじゃか、じゃーん」
てんりゅう「第1海上輸送隊!」
とわだ「っしゃやったー!!」
総監「とわだの「おふくろの味の作り方」は大人気だったぞ。地元のTV局からも取材が来たぐらいだ」
とわだ「やったね、さすが私! これが補給艦の実力じゃー!」
総監「一人しかいないから不参加かと思ってたが、なかなかいい動画だった」
51:以下、
てんりゅう「そして、第二位だ!」
くろべ「じゃかじゃかじゃかじゃかじゃか、じゃーん」
てんりゅう「第101掃海隊!」
くめじま「おー。やったねぇ、ゆげー」
ゆげしま「いやいや、くめちゃんが主役だったじゃーん」
総監「『101の久米島旅行記』、ゆるい雰囲気と島の方々との交流が好評だった。おめでとう」
くめじま「おおー、褒められちったよ、私の退職旅行だったってのに」
ゆげしま「いいじゃんいいじゃん、ところでしれー、ご褒美って何?」
総監「ああ、基地食堂と『青江マート』で使える食券500円分だ!」
くめじま「…………。ありがとー」
ゆげしま「……おもったよりしょぼい」
52:以下、
てんりゅう「そして栄えある第一位!」
くろべ「じゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃかじゃか、じゃじゃーん」
てんりゅう「第1輸送隊!」
しもきた「来たああああああっ!!」
くにさき「やった―――!!」
おおすみ「え、ええ!? やった!」
総監「第1輸送隊の動画は大人気だったぞ。再生数も多かったし、特におおすみがな」
おおすみ「わわ、私ですか!?」
しもきた「やったじゃんねーさん!」
くにさき「おおすみお姉ちゃんすごーい!」
おおすみ「え、えへへ。そりゃあ、まあ長女ですし?」
53:以下、
総監「ああ、真面目な顔してるシーンでずっとお米をほっぺたに付けてたのが大ウケしてな」
おおすみ「…………。は?」
総監「狙ってやったんだろう? いやぁなかなか面白かった。ほらこれ」
・・・・・・……
おおすみ(ほっぺに米粒)『私は輸送艦おおすみ。物や人をあらゆる場所に運ぶのが仕事です』
おおすみ(ほっぺに米粒)『離島の基地に物資を運んだ際、隊員の皆様は笑顔で私を出迎えてくださいます』
おおすみ(ほっぺに米粒)『陸自さんとの共同訓練もあります。今日はヘリの着艦訓練。一瞬も気が抜けません』
…………
54:以下、
おおすみ「え、は? え?」
しもきた「…………」
くにさき「……あーあ」
おおすみ「う……、う……」
総監「どうしたおおすみ? 一躍ネットの人気者だぞ?」
おおすみ「わ」
総監「わ?」
おおすみ「笑いものじゃないですか――――――っ!!」
総監「ぶべっ!?」
 私は総監に張り手をかますと、そのまま逃げだします。今すぐここから消え去りたい! 穴があったら入りたい! 海溝あったら潜りたいっ!!
55:以下、
くにさき「あ、おおすみお姉ちゃーん!!……行っちゃった」
しもきた「……ちなみにご褒美って何?」
総監「うう……、退役で販売終了した、あさしお型潜水艦ボールペン10セットだ」
くにさき「……しもきたお姉ちゃん、おおすみお姉ちゃん探しに行こう?」
しもきた「そーだね。わざわざあんなん撮るんじゃなかった。みんな、かいさーん」
総監「え、ちょっとしもきた!? ご褒美は!?」
しもきた「私のアカウントからメルカリで売っといて」
総監「ええ!? あ、ちょ待てよ――! 三色ボールペンだぞ―――っ!!」
56:以下、

続き・詳細・画像をみる


第一巡選択希望 住みたい地方都市

竹内由恵の私服センスがひどいwwwwwwwwww (※画像あり)

銀河鉄道999とかいう美人にモテモテな不細工ガニマタ主人公の漫画wwwwww

【キン肉マン】231話 友情の真価!!スグル到着でカレクックの友情パワー発動はどうなる!?

お前を嫁にもらう前に 言っておきたい事がある

【元号】“新元号”は官房長官発表で検討、安倍首相明らかに 「 日本人の生活の中に深く根ざすものにしたい」

【悲報】ネットで知り合った女性と会った結果…やって来たのがコイツ…(画像あり)

【炎上芸人】ウーマン村本 『(自分の発言に)責任なんか持たねーよ。人の発言が気になってしょーがない自分を捨ててしまったバカへ 』

Switch『シノビリフレ』追加キャラクター「紫」1月18日に配信決定!

仲の良かった友達がいつのまにか結婚式をしていてショック。Facebookで知りなくなんてなかった

日本初のボウリング場ができたのが江戸時代だったこと

後輩がネトゲで知り合った女と結婚して、かれこれ五年くらいたつ。どうせ奴隷のように搾取されているんだろうなとずっと思っていた。

back 過去ログ 削除依頼&連絡先