【モバマス】イヴ・サンタクロース「高峯のあの事件簿・プレゼント/フォー/ユー」back

【モバマス】イヴ・サンタクロース「高峯のあの事件簿・プレゼント/フォー/ユー」


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1:
サンタクロースとトナカイを名乗るテ口リストが大型ショッピングモールを占拠し、喫茶店のマスター相原雪乃が人質に取られてしまう。
前話
安斎都「高峯のあの事件簿・夏と孤島と洋館と殺人事件と探偵と探偵」
あくまでサスペンスドラマです。
設定はドラマ内のものです。
それでは、投下して行きます。
2:
メインキャスト
高峯のあ 探偵、高峯ビルのオーナー
木場真奈美 助手その1
佐久間まゆ 助手その2
相原雪乃 高峯ビル2階にある喫茶店St.Vのマスター
安部菜々 喫茶店St.Vの店員
槙原志保 喫茶店St.Vの店員
高橋礼子 警察署長
柊志乃 刑事一課長
和久井留美 刑事、和久井班班長
大和亜季 刑事、和久井班
新田美波 刑事、和久井班
ヘレン
松山久美子 科捜研所属
梅木音葉 科捜研所属
イヴ・サンタクロース テ口リスト
3:

さぁさぁ、イーグルさん達よりい、私の大好きなトナカイさん達?。
号令のお時間です?。
ナーウ、ダッシャー、ダンサー、プランサー!
あらあら?、元気なのは良いですけど、ケンカはダメですよ?。
オン、賢いコメット!カワいいキューピッド!ムキムキなドンダー!
良いお返事ですよ?。
姉御肌のヴィクセン、赤鼻のルドルフ、元気ですかぁ??
オッケーですぅ。最後はブリッツェン!
はーい、全員集合です?。準備は良いですかー?
サンタとトナカイの目的地は一緒、今回は建物に立てこもり!
今日は何の日?
そう、クリスマス!みんな?、号令!
ダッシュアウェイ、ダッシュアウェイ、ダッシュアウェイオール!
ステキなクリスマスを届けに行きますよ?!
序 了
4:

大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
相原雪乃「美味しいですわ」
相原雪乃
喫茶St.Vのマスター。今日は茶葉の買い付けに来た。ただいま、敵情視察中。
雪乃「チェーン展開しただけあって、緑茶も和風スイーツも侮れませんわね……」
白菊ほたる「へくちっ……」
白菊ほたる
雪乃の二つ隣の席に座っている少女。喫茶店で待ちぼうけしている。
雪乃「冷房が強いような気がしますわね……あら?」
ほたる「上着はかばんに入って……入ってませんでした……」
雪乃「館内放送、クリスマスキャロルでしょうか?まだ8月ですのに」
ほたる「外に行こうかな……ずっと座ってたら店員さんに悪いでしょうから……」
館内放送『ピンポンパンポーン』
雪乃「あわてんぼうさんがいらっしゃるのですね、きっと」
館内放送『みなさん?、メリークリスマス!』
5:
ほたる「え……?」
雪乃「女性の声ですが……」
館内放送『サンタクロースから良い子と良い子から大人になった皆様にお願いです?』
ルドルフ「やぁ。目が合ったね」
ルドルフ
トナカイの一人。顔はマスクで見えないが、細身で長身の男性のようだ。マスクの鼻の部分が赤く塗られている。
館内放送『今から占拠しちゃいますよ?。声をかけた以外は急いで逃げてくださいねぇ?』
ルドルフ「そういうわけで、君は席に戻ってくれるかな?」
ほたる「……ひっ」
ルドルフ「そんなに怯えなくても……傷ついちゃうよ。そこのお姉さん?」
雪乃「わ、私でしょうか……?」
ルドルフ「そう。誕生日は?」
雪乃「え?」
ルドルフ「誕生日は何月何日かな?君は座ってて、俺が銃を持ってる悪い人なのはわかるよね?」
ほたる「……はい」
雪乃「2月14日ですけれど……」
ルドルフ「ふーん……バレンタインデーだからライバルだ。じゃあ、君も残ってね。その子と仲良くお茶でもしてて」
雪乃「えっと……よろしくお願いしますわ」
ほたる「え、あ、はい……」
ルドルフ「ほらほら、他の人は逃げないと閉じ込められちゃうよ!」
パーン!
ほたる「ひっ……」
雪乃「大丈夫ですわ、慌てないでくださいな……」
ルドルフ「ドンダーかな、威嚇の空砲だよね。これで逃げるさが上がったかな?」
雪乃「あの、あなたは」
ルドルフ「うーん、そうだね、世間的にはテ口リストと呼ばれてるけど……」
イヴ・サンタクロース「ルドルフ?、女の子とお話中ですか??」
イヴ・サンタクロース
白髪と黄金色の瞳が特徴的な女性テ口リスト。どこか楽し気な表情をしている。
ルドルフ「俺はルドルフ、トナカイだよ。綺麗なサンタさんに仕えてるんだ」
6:
イヴ「こんにちは?」
雪乃「……こんにちは」
イヴ「お二人とも、寒くはないですかぁ?」
雪乃「寒さ……冷房は効いているようですが」
イヴ「ルドルフ、上着を二人に持ってきてあげてくださいねぇ。今日はクリスマスですから、10℃くらいの予報ですよ?」
ほたる「何を言ってるんでしょう……」
雪乃「わかりませんわ……」
ルドルフ「そこはアウトドア用品店みたいだね。待ってて」
イヴ「トナカイさん達?、お客さん達が十分に逃げたらシャッターを閉めてください?」
雪乃「あ、あの!」
イヴ「どうしましたぁ?」
雪乃「あなたは何をしているの、でしょうか」
イヴ「銃器と爆弾を使って、ショッピングモールに立てこもるんですっ!」
雪乃「あっけらかんと言いますのね……」
イヴ「それじゃあ、楽しいクリスマスを過ごしてくださいね?」
7:

高峯ビル・2階・喫茶St.V
喫茶St.V
相原雪乃が経営する喫茶店。本格派の紅茶はもちろん、軽食やデザートも美味。
安部菜々「これでお店は閉店、っと」
槙原志保「ナナさーん、コーヒーが入りましたよー」
安部菜々
喫茶St.Vの従業員。メイド喫茶の店長が雪乃の知り合いだったことが縁で転職した。
槙原志保
喫茶St.Vの従業員。昔からウェイトレスをしていたが、雪乃とお店を気に入りSt.Vで働くようになった。
菜々「はーい。今日のお昼は」
志保「ビーフシチューと残りのサンドウィッチですっ。ナナさん、タマゴとツナのどっちがいいですか?」
菜々「そうですねぇ、ナナはタマゴにします。あっ、今日のコーヒーはカフェオレなんですねぇ♪」
志保「深い味なので牛乳と相性が良いんです。紅茶はマスターが帰ってきてからのお楽しみです♪」
菜々「美味しそうですねぇ。いただきまーす」
志保「いただきます!」
菜々「マスター、良い紅茶を手に入れましたかねぇ?」
志保「マスターだから、絶対にそうですよ」
菜々「そうでした、だってマスターですからねっ」
志保「ショッピングモールにお店を構えている知り合いの所に行ってるんですよね」
菜々「楽しみですねぇ。きっと美味しいんだろうなぁ……」
志保「でも、ランチタイムが終わったところでお店を閉めて良かったんでしょうか?」
菜々「志保ちゃん、マスターがせっかくお休みをくれたんですよ!」
志保「そうでした、しっかり休まないとですね!」
8:
菜々「そうですよっ!予定はあるんですか?」
志保「パフェを食べに行きますっ」
菜々「いつも通りじゃないですかっ」
志保「いつも通りが一番休めるんです。ナナさんは?」
菜々「ナナはワイドショーを見て、お洗濯して、お昼寝するんです」
志保「わぁ……休日らしくて、最高です!」
菜々「そうですよね、あっ、テレビをつけましょう。ワイドショーの時間です」
志保「ナナさん、私思うんです」
菜々「急にかしこまって、どうしたんですか?」
志保「このお店、良いですよね。移転して立地も良くなりましたし」
菜々「今更何言ってるんですかぁ。だって、マスターのお店ですよ」
志保「その通り、なんたってマスターのお店ですから!」
菜々「マスターと言えば、まずは名前です。相原雪乃ですよ、相原雪乃」
志保「名前も良いですね。でも、髪です。あの長さであの美しさ、仕事中も様になります」
菜々「髪の毛、はわぁ……確かに。でも、この喫茶店は軽食も自慢です!」
志保「マスターは料理も得意で、本当に凄いですっ」
菜々「紅茶は正真正銘のエキスパートですからねぇ。マスターの紅茶は絶品です、国宝です」
志保「でも、それだけじゃないんですっ!コーヒーも他の飲み物も研究を欠かしませんからね!」
菜々「努力家なんですよねぇ。お嬢様育ちとは思えません」
志保「ご両親から借りたお金を返しきって、ここを自力で買ったんですよね」
菜々「経営も出来ちゃうんですよぉ。しかも、ずっと黒字ですっ!」
9:
志保「声も良いです」
菜々「わかります……お客さんがずっとここにいたくなるような」
志保「優しくて」
菜々「それでいて元気をくれるような」
志保「お嬢様らしい天真爛漫さを残していて」
菜々「人の話をよく聞いてくれるんですよねぇ。志保さん、ナナは主張したいことが!」
志保「なんでしょう?」
菜々「マスター、メイド服似合いそうですよね?」
志保「ふっ……」
菜々「どうして、鼻で笑うんですかぁ!?」
志保「ナナさん、わかってませんよ」
菜々「どういうことですか」
志保「私達がウェイトレスやメイド衣装を着る側なんですよ!マスターに使用人の服装をさせるなんて!今の職に誇りはないんですか!」
菜々「はっ……!」
志保「もちろん、マスターの素晴らしいスタイルをもってすれば似合わない衣装などありませんけれど!今度、着てもらいましょう!」
菜々「志保さん……ナナが間違ってました!でも、メイド服は家から持ってきます!」
志保「サイズは直せますか!?ピチピチもいいですけど」
菜々「お裁縫は何年か前の17歳の頃から得意ですよぉ!」
志保「そういえば、ケータイで調べていたんです。このドレスとか、どうでしょうか」
菜々「……志保ちゃん、ノーです」
志保「どうしてですか、絶対に着こなせますよ」
菜々「マスターの良さは自然とにじみ出る柔らかさです。こんな露出の多い服装では、直接攻撃力が高すぎますっ!」
志保「はっ……!」
菜々「志保ちゃん、冷静に。マスターの魅力はそんなことしなくてもいいんですよぉ」
志保「ナナちゃん、間違ってました。抱き付きたくなるほど、いつも魅力的なのに」
菜々「わかってくれればいいんです。仕事中には腰に抱き付かないように」
志保「でも、本当に、良い人の元で働けて幸せです……」
菜々「わかる……」
10:
志保「……あら?」
菜々「どうしました、テレビなんか指さして」
志保「マスター、ですよね」
テレビ『犯人と思われるグループが動画サイトにあげたものには、人質の姿が見られます』
菜々「え、えぇぇぇ!」
テレビ『犯人の情報と要求は明らかにされていません。一刻も早い解決が望まれています』
志保「そんな!」
菜々「立てこもり犯の人質に……マスターが」
志保「あんなことやこんなことをされるに決まってます!」
菜々「早く助けないと!」
志保「でも、どうしたら」
菜々「まずは、武器!」
志保「モップで良いですか!」
菜々「ウサミンマジカル掃除機!」
志保「合言葉は!」
菜々「心にあい!」
志保「由愛と悠貴!」
菜々「装備は」
志保「ウェイトレス姿で良いですか!?」
菜々「ナナとウサミンメイドの戦闘服はメイド服ですから、大丈夫です!」
志保「そうだっ、味方を集めましょう!」
菜々「上の階に頼りになる人がいるじゃないですかぁ!」
志保「善は急げですっ!」
菜々「行きますよっ!」
11:

高峯ビル・3階・高峯探偵事務所
高峯探偵事務所
高峯のあが経営する探偵事務所。防音構造のため、2階の騒動は聞こえていない。
高峯のあ「……よし」
高峯のあ
探偵。ここ数日ソファーと一体化しつつ、ケータイで出来るゲームに熱をあげていた。
木場真奈美「終わったか?」
木場真奈美
のあの助手1。最近、副業でアイドルへレッスンをすることが多いとのこと。
のあ「ええ、真奈美はヒマなのかしら」
真奈美「のあに言われたくはないな」
のあ「探偵業はいつ仕事が入るかわからない、だからこそ暇な時間は全力に使うのよ」
真奈美「はいはい。ところで、佐久間君が心配してたぞ」
佐久間まゆ
のあの助手2。お料理とあみものが好きな優しい女の子。同級生とお出かけ中。
のあ「何を?まゆは出かけたのかしら?」
真奈美「佐久間君は高森君達と図書館で夏休みの課題をやるそうだ。心配してるのは、のあがずっとソファーに寝ころびながらゲームをしていることだ」
のあ「大丈夫よ。目標値はクリアした」
真奈美「それなら、生活態度を改めたまえ。興味本位に聞くが、何をやっていたんだ?」
のあ「真奈美、知らないの?」
真奈美「目的語がないぞ」
のあ「これよ」
12:
真奈美「これは知ってる。実際のアイドル楽曲が収録されているリズムゲームだ」
のあ「みくにゃんの楽曲が収録されているの。そして、今週はみくにゃんウィークだったわ」
前川みく
愛称はみくにゃん。サインはとてもカワイイのよ、とっても。幾らでも欲しいわ。
真奈美「課題曲をやるとポイントが貯まって、順位次第で商品が貰えるやつか」
のあ「ええ。1位になるとサイン入り色紙が貰えるの」
真奈美「つかぬ事を聞くが。のあは何位だ?」
のあ「愚問ね。NoaNyaN0222は全国1位よ。終了時刻は今日の21時だけど、逃げ切れるでしょう、ケタが違うわ」
真奈美「のあ、貯金をつぎ込んでいないよな?」
のあ「もちろん、仮想通貨を売った金額以上は入れていない」
真奈美「金と暇をフル活用してるな」
のあ「使えるものは使うわ。それがファンの務めよ」
真奈美「やりすぎだと思うがなぁ」
のあ「フム……」
真奈美「どうした、神妙な声を出して」
13:
のあ「首と指、それに肩と腰も少し痛いわ」
真奈美「原因は明白だろう。運動でもしたらどうだ、最近ランニングもしてないだろう」
のあ「走っていたわ」
真奈美「意味が違う」
のあ「まずはストレッチからするとしましょう」
コンコン!
真奈美「おや、お客様だ」
菜々「失礼しますっ!」
志保「お邪魔します!」
真奈美「菜々君じゃないか、どうした?」
のあ「……モップと掃除機を持ってどうするつもりよ。掃除はいらないわよ、真奈美とまゆがちゃんとしてくれてるわ」
真奈美「少しは掃除も手伝ってくれ。のあの物が大半なんだから」
菜々「まゆちゃんと真奈美さんが立派なことは、ナナ達も知ってます!」
真奈美「いや、本当にどうした、様子がおかしいぞ?」
志保「ナナちゃん、のあさん達は状況を理解してないみたいです!」
菜々「一刻を争うのに!説明してる時間はありませんよ!」
のあ「時間はなくても説明してちょうだい」
志保「マスターが捕まったんです!」
真奈美「何の話だ?」
菜々「だから!一刻も早く助けに行かないといけないんですよ!」
のあ「真奈美、仕事の依頼のようだけど断っていいかしら」
真奈美「断るのは得策じゃないと思うぞ。なぜなら」
菜々「あー埒が明きません!場所はわかってます!突撃ですよ!」
のあ「状況がつかめないけど、モップと掃除機で解決できる事態じゃなさそうね」
真奈美「止めないと誰かの仕事が増えるぞ」
のあ「わかったわ。雪乃は大切な店子よ、もちろん協力するわ」
志保「本当ですか!?」
菜々「さぁ、武器を持ちましょう!」
真奈美「ただし、のあの言うことは聞いてくれ」
のあ「私からは4つ。1つ、手に持っているものを床に置きなさい。2つ、そこのソファーに並んで座りなさい。3つ、真奈美が持ってくる飲み物で落ち着きなさい。4つ、何があったか冷静に話しなさい」
真奈美「ということだ。落ち着いてくれ」
14:

清路警察署・科捜研
松山久美子「このご時世とはいえ、日本でテ口リストの立てこもり事件とはね……」
松山久美子
科捜研所属。常に白衣着用の美女。科捜研のテレビは新調されたから、オペラ鑑賞に最適だそうよ。
梅木音葉「久美子さん……」
梅木音葉
科捜研所属。久美子の後輩らしく常時白衣着用。対策本部にテ口リストの映像を渡してきた。
久美子「音葉ちゃん、映像渡してきた?」
音葉「はい……何か新情報は」
久美子「特には。警察よりテレビとネットの報性がまだ早い状況ね」
音葉「犯人からの映像の追加もないようです……」
久美子「動画、どこから投稿されたかわかってた?」
音葉「はい。ショッピングモールのWifiからケータイショップのタブレットで撮影されたようです……」
久美子「内容は犯行声明よね。何人か人質を取り、それ以外の人は追い出した」
音葉「映像はゆっくりと一周して、様子を映すだけ……」
久美子「犯人も人質も何人か映ってたわね」
音葉「画面に動画を出します……どうぞ」
久美子「この声、女の子?」
音葉「撮影している人物が話しているようですが……どちらでしょうか……」
久美子「この子がサンタ?」
音葉「はい……赤い服装の人物が映っています……」
久美子「人質じゃなくて犯人なのよね、このサンタ」
音葉「なぜ堂々と映っているのでしょう……少し進めます」
久美子「人質、顔を完全に覆うマスクで武装したテ口リストも映ってる」
音葉「どうして……上着を着ているのでしょう……?」
久美子「んー……あ、音葉ちゃん、ちょっと止めて」
音葉「どうしましたか……?」
久美子「そこのカフェ、拡大できる?」
音葉「今のタブレットは無駄に高画質ですから……あら」
久美子「雪乃さんよね、St.Vのマスター」
音葉「そのようですね……お怪我はないようですが……」
ヘレン「クミコ、オトハ、すぐにその店に案内なさい」
ヘレン
科捜研に堂々と入ってきた女性。かなり貫禄を備えるが、同程度の怪しさも放っている。
15:
音葉「……」
久美子「……」
ヘレン「どうしたのかしら、科捜研の女はスピードが取り柄でしょう?」
久美子「申し訳ありませんが、どちら様でしょうか」
ヘレン「ノープロブレム、信じなさい」
久美子「そう言われても」
音葉「名前を何故知ってるのでしょうか……」
ヘレン「職員の名前と顔を把握することは、円滑な捜査に必要なこと。当然よ」
久美子「凄い人なのかしら」
音葉「凄い雰囲気は漂っていましたが……」
高橋礼子「松山さん、梅木さん、私から説明を」
高橋礼子
清路警察署署長。警視庁のキャリアからドロップアウトしてきた、気品と豪傑を併せ持つ女性警察官。
久美子「署長!お疲れ様であります!」
礼子「彼女に協力してあげてちょうだい。いいかしら?」
久美子「署長のお言葉なら、もちろんです」
音葉「もちろんですが……彼女はどなたなのでしょうか」
礼子「紹介するわ、ヘレンよ」
久美子「警察関係者なのですか?」
礼子「ええ。テロと国際的な組織犯罪を専門とする調査官よ」
久美子「調査官殿とお呼びすれば?」
ヘレン「ヘレンと呼ぶといいわ。さぁ、案内なさい」
音葉「呼び捨ては少し……」
ヘレン「私はヘレンであり、つまりヘレンよ。気にせず呼びなさい」
音葉「お望みであれば……従いましょう」
久美子「なんだか、凄い人に巻き込まれたような」
音葉「そのようです……」
久美子「あの署長、一つだけ質問を」
礼子「言ってみなさい」
久美子「ありがとうございます。事件が起こった後に調査官殿がこの場にいるのは、何故でしょうか」
音葉「もしや……事前情報があったのでは」
ヘレン「答えるわ。彼女が日本に来ていたことは把握していなかった」
久美子「なら、何を知ってたのですか?」
礼子「話は後で。いいわね」
久美子「はいっ」
音葉「承知しました……」
礼子「ヘレン、そっちは任せるわ」
ヘレン「任せなさい、このヘレンの名にかけて必ず解決するわ」
16:

高峯探偵事務所
のあ「状況は把握した。落ち着いたかしら」
菜々「はい……ちょっと慌てすぎました」
志保「私もです……」
のあ「よろしい。私達が状況を判断できる材料は」
真奈美「報道と」
のあ「犯人が投稿した動画だけ」
真奈美「相原君であることは間違いなさそうだ」
志保「はい、間違いありません」
のあ「あなた達が見間違えることはないでしょうね」
真奈美「だが、問題は」
のあ「私達がどうこう出来る問題じゃないことね」
菜々「そ、そんなぁ……」
志保「無事かどうかだけでも確かめられませんか!?」
真奈美「和久井警部補にでも連絡してみるか?」
のあ「大忙しでしょうね。出ないでしょうね、出ても一言だけで終わるのが関の山」
真奈美「そうか」
のあ「だから、嫌がらせも兼ねて連絡してみましょう」
真奈美「のあにとって和久井警部補は何なんだ」
17:
のあ「あら、出たわ」
志保「マスターは無事ですか!?」
和久井留美『探偵さん、なにかご用かしら』
和久井留美
刑事一課和久井班巡査部長。非常時にも関わらず、声は冷静。
のあ「あら、ヒマなの?」
留美『犯人から要求もないし、人質は全員無事のようだから。それに、今回はただのお手伝いよ』
のあ「人質は無事なの?」
留美『外へ逃がされた客の話だと手荒なマネはしていないようね。残りの情報は動画だけ』
のあ「フム。情報はあまりない、と」
留美『そういうこと。あなたとお話できる時間はあるのよ』
のあ「なるほど」
留美『それに見知った顔がいたから、電話が来そうだから構えてたの』
のあ「雪乃がいるのを把握してるのね、頼もしいわ」
留美『それで、サンタについての情報でも教えてくれるのかしら?』
のあ「残念。電話してみただけよ」
留美『そう。とりあえず、相原さんはおそらく無事よ』
のあ「わかった。伝えておくわ」
留美『何かわかったら伝えて』
のあ「ええ。お元気で」
真奈美「状況は」
のあ「進展もしてない代わりに、雪乃は無事よ」
菜々「本当……ですか?」
のあ「残念ながら、確証はないわ」
志保「そうですか……」
真奈美「これから、どうするんだ?」
のあ「とりあえず、情報収集でもしようかしら」
真奈美「どうやって?」
ヘレン「お困りのようね」
18:
のあ「……どちら様かしら」
真奈美「自然と入ってきたな」
志保「えっと、いらっしゃいませ?」
菜々「お帰りなさいませ、お嬢様?」
真奈美「どっちも不正解だと思うが、おそらく」
ヘレン「喫茶店の店員はそこの二人ね」
久美子「ヘレン、そんなに慌てなくても」
音葉「こんにちは……高峯さん、木場さん」
真奈美「久美子君に音葉君」
ヘレン「ヘレンよ、よろしく」
菜々「あ、はい、よろしくお願いします」
志保「えっと……」
ヘレン「ユキノ・アイハラを助けに来たわ」
菜々「本当ですか、ヘレンさん!」
ヘレン「ヘレンの名にかけて嘘をつかないわ」
のあ「久美子、彼女は」
久美子「署長の知り合いの調査官なんだって」
真奈美「調査官?」
ヘレン「ここの家主は、あなたね」
のあ「ええ。その通りだけど」
ヘレン「ご協力を願えるかしら?」
のあ「雪乃の無事が確保できるのであれば」
ヘレン「犯人は人質を殺して突入の口実を与えるほどマヌケではないわ」
のあ「それで、何をしようとしているのかしら」
ヘレン「ユキノに協力してもらうわ」
志保「マスターに、ですか?」
ヘレン「ディスプレイ、マイク、スピーカー、それとレコーダは用意できるかしら」
のあ「そこのテレビとPCで動くものなら」
ヘレン「充分よ。先ほどオトハから聞いたのだけれど、防音室だそうね」
のあ「その通りだけれど」
真奈美「音葉君にそのことを言ったか?」
音葉「言われてはいませんが……わかります」
ヘレン「オーケー。ここをヘレンの調査本部とするわ」
19:
真奈美「いいのか?」
のあ「私は構わないけれど。真奈美、まゆにしばらく帰らないように連絡しておいて」
真奈美「わかった。ヘレンに言われた器材の準備もしよう」
音葉「器材準備はお手伝いします……」
のあ「ヘレン、質問をしていいかしら」
ヘレン「場所を借りる身、何でも質問なさい」
のあ「どうして、警察に協力しないのかしら」
久美子「さっきから聞いてるけど、答えてくれないのよね」
ヘレン「場所は変わった。答えましょう、理由は2つ」
のあ「2つ、と」
ヘレン「犯人が警察と会話し始めるのは時間の問題よ。その際に、犯人の目から離れるためよ」
のあ「フム。独自行動といったところね」
ヘレン「2つ目は警察に、私の情報を流さないためよ」
久美子「え?」
ヘレン「クミコとオトハは信頼できるわ。ナナとシホも態度を見ればわかるわ」
菜々「えっとぉ……」
志保「もしかして、お邪魔ですか……?」
ヘレン「いいえ。あなた達の声だけで、一人の人質が安心する」
のあ「警察に内通者がいると?」
ヘレン「今回の立てこもりで協力している可能性はないとは言えない」
20:
久美子「初耳なんだけど……のあさん、知ってた?」
のあ「ウワサだけよ。ヘレン、それなら私と真奈美は信頼できるのかしら」
ヘレン「逆に問うわ、モリアーティとホームズは同一人物なのかを」
のあ「他人の妄想で、誰かの見解を汚すべきではないわ」
ヘレン「では、それでいいでしょう」
のあ「あなたには別の答えがありそうだけれど」
ヘレン「語るべき時ではないわ。シホ!」
志保「はい!お呼びですか?」
ヘレン「ユキノは紅茶のエキスパートだそうね、紅茶をいただけるかしら」
志保「わ、わかりましたっ」
菜々「あの、ヘレンさん!」
ヘレン「ナナ、落ち着きなさい。必ずうまく行くわ」
菜々「いえ、それは信じますけど、その、何をするんですか?」
ヘレン「簡単よ」
のあ「簡単?」
ヘレン「ユキノに電話をかけるのよ」
21:

清路警察署・刑事一課和久井班室
大和亜季「警部補殿、質問をしてもよろしいでありますか」
大和亜季
刑事一課和久井班所属。階級は巡査部長。大事件を前に士気は高まるが、おあずけ状態。
留美「私達が主役を張ることはないわよ」
亜季「やはり、そうでありますか」
新田美波「でも、お仕事は来ますよね?」
新田美波
刑事一課枠班所属。階級は巡査。生真面目で集中が持続する性格は海洋学者の父譲りだとか。
留美「心構えはしていて。何が起こるかはわからないから」
亜季「了解であります」
美波「対策室の様子はモニターに映ってますので、見ていてくださいね」
留美「見てはいるわ、安心して」
亜季「先ほど資料を頂いたであります。どうぞ」
留美「犯行グループについて、ね」
亜季「どこの誰かが情報を提供したかわかりませんが、犯行グループは特定できているようであります」
留美「署内とは限らないでしょう。警察組織の誰か」
美波「えっと、主犯の名前は」
留美「サンタクロース。館内放送や動画でも名乗っていたわ」
亜季「自称イヴ・サンタクロース。年齢不詳、出身はおそらくグリーンランド、母国語の他に英語、韓国語、アラビア語とそれに」
美波「日本語が話せるみたいですね」
留美「テ口リストも語学力が必要な時代なのね」
亜季「フムン、トナカイになぞらえた部下が9人いるでありますか」
美波「ドンダー、キューピッド、コメット、ダッシャー、ダンサー、プランサー、ヴィクセン、ルドルフ」
留美「それとブリッツェン。彼、彼女かもしれないけど」
亜季「ドンダーとヴィクセンは先の中東での戦闘で死亡しているでありますか」
美波「あれ、でも犯人は10人だって」
亜季「既にメンバーを補充したようでありますな」
留美「ルドルフは恰幅の良い男性だった」
美波「だった?」
22:
留美「目撃情報だと細身の男性」
亜季「メンバーが変わってるのでありますか」
美波「なるほど……」
留美「主犯格はともかく他のメンバーを特定は出来なそうね」
美波「犯人が誰かわかったなら、対処はできそうですね」
亜季「いいや、むしろ逆かもしれませんな」
留美「サンタと言えばそのプレゼント」
美波「中東を中心に配ってるのは……」
亜季「オモチャやお菓子ではないようでありますな」
留美「そう簡単に動くわけにもいかないわけね」
23:

高峯探偵事務所
真奈美「セットアップは出来た」
ヘレン「オーケー。説明は理解できたかしら」
のあ「電波が遮断されているわけではない」
志保「でも、大丈夫なんですか?」
ヘレン「イヴ・サンタクロースは人質を邪険には扱わない。ましてや、子供には」
音葉「こちらも準備が出来ました……」
久美子「音声と映像を解析してみるわ」
真奈美「機材はあるのか?」
久美子「ここに」
音葉「耳には自信がありますよ……」
真奈美「なるほどな」
ヘレン「菜々、準備は出来たかしら」
菜々「は、はいっ!」
真奈美「マイクを入れるぞ」
ヘレン「かけてちょうだい、後は説明した通りに」
菜々「はっ、はい!」
24:

大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
雪乃「本当に冷えてきましたわね……」
ほたる「……」
雪乃「白菊さん、大丈夫ですか?」
ほたる「え……あ、はい……」
雪乃「あの人達、何をしてるのでしょうか……」
ほたる「わかりません……ごめんなさい」
雪乃「謝らないでくださいな。暗い気持ちになると更に辛いですわ」
ほたる「……でも」
プルルルル……
雪乃「わっ、こんな時に電話ですわ……」
ほたる「トナカイさん、こっちを見てないみたいです」
雪乃「菜々さんですわ……少しだけなら、もしもし」
菜々『マスター、ご無事ですか!?』
雪乃「菜々さん、無事ですわ。少し寒いですけれど」
菜々『良かったぁ……』
雪乃「犯人に気が付かれると困るので、切りますわ」
のあ『切らないでいいわ。マイクにしてちょうだい』
雪乃「のあさん、一緒にいらっしゃいますの?マイクにしましたわ」
真奈美『聞こえてるぞ。クリスマスキャロルが流れてるのか?』
雪乃「はい。あの、何をするのでしょう?」
のあ『犯人と立てこもりの状況について教えて欲しいの』
雪乃「まぁ……探偵みたいですわ」
のあ『可能な限りでいいわ。お願いできるかしら』
雪乃「わかりましたわ……私もこのまま待ち続けるのは不安ですの」
菜々『え、ヘレンさん、あ、はい。私が言うんですね。マスター、隣に誰かにいますか』
雪乃「白菊ほたるさんという中学生がいらっしゃいますわ」
のあ『彼女と現在の状況を話してちょうだい。黙って聞いてるわ』
雪乃「わかりましたわ。ほたるさん、お話しましょう」
ほたる「はい……聞こえてます」
25:
志保『マスター、お怪我はありませんか?』
雪乃「大丈夫ですわ。ほたるさん、室温はいかがですか」
ほたる「上着がないと……10℃って本当なんでしょうか……」
雪乃「他の人はご無事でしょうか」
ほたる「怪我をしてる人はいないみたいです……閉じ込められた中なら移動もしてますし……」
雪乃「何人かお茶を飲みに来ましたわ」
ほたる「犯人も……です」
雪乃「犯人さん達はショッピングモール全体を移動しているみたいですわ」
ほたる「人質を見張ってるのは……2階は2人だけです……」
雪乃「あっ、近づいて来ましたわ」
のあ『切らないで』
ほたる「……」
雪乃「どうしましたか?」
ブリッツェン「よう、元気か?」
ブリッツェン
イヴのトナカイのリーダー格。マスクで隠してない口元からして人相が悪い。
雪乃「えっと……ブリッツェンと呼ばれていましたわね」
ブリッツェン「正解だぜ、バレンタインの姉ちゃん」
雪乃「何をしてるのでしょうか、聞かせてくれませんか」
ブリッツェン「料理はするか?」
雪乃「私はしますけれど……ほたるさんは」
ほたる「私はあまり……」
ブリッツェン「テロと料理には余裕が必要だ。焦るとまずくなる、一緒だ」
雪乃「そうですの……?」
ほたる「わかりません……すみません」
雪乃「要するに、時間がかかりますの?」
ブリッツェン「そういうことだ。黒焦げにしたくないからな」
ほたる「……黒焦げ」
イヴ「ブリッツェン?」
ブリッツェン「サンタクロース様がお呼びだ。困ったことがあったら、相談しろよ」
イヴ「お外に行って、お話しましょう?」
ブリッツェン「了解」
26:
雪乃「お外に行って、お話?」
ほたる「行ってしました……ふぅ、びっくりしました」
のあ『雪乃、自由に動けるの?』
雪乃「はい、ショッピングモールの中央だけですけど」
ほたる「外には出して貰えません……」
のあ『雪乃、調べてもらえるかしら。人質と犯人のことを』
ほたる「危なくありませんか……?」
雪乃「大丈夫ですわ。皆様、お話した方が気持ちが安心すると思いますの」
のあ『通話は今の方法で。基本はメールで』
雪乃「わかりましたわ」
のあ『お願い』
27:

高峯探偵事務所
ヘレン「良い情報が得られたわ。真奈美、今すべきことは?」
真奈美「テレビだ。イヴ・サンタクロースが出てくる」
ヘレン「ザッツライト。菜々、感想を」
菜々「マスター、元気そうで安心しました」
のあ「気落ちはしていなそうね」
志保「なんだか楽しそうだったので、失敗しないといいんですけど……」
真奈美「非常時に心躍るのは功罪ともにあるが」
のあ「雪乃なら節度ない行動はしないでしょう」
ヘレン「久美子、他にわかったことは?」
久美子「冷房が10℃、雪乃さんといるのは白菊ほたるさんという中学生、犯人グループはショッピングモール全体を移動してる、人質は中央に集められてる」
音葉「ブリッツェンと名乗る人物の声が……録音出来ました」
ヘレン「以前のブリッツェンと同一人物でしょう。のあ、彼の声で気になることは」
のあ「声ではなく内容。ヘレン、黒焦げとは何かしら」
ヘレン「トリックスター、死のサンタクロース、それともうひとつ」
イヴ『良い子と良い子だったみんな?』
久美子「テレビ、中継が来たわ」
志保「本当に外に出てきました」
音葉「拡声器を持っていますね……」
真奈美「あの戦闘車、どこで仕入れたんだ?」
のあ「さぁ。裏にも一台あるわ」
イヴ『まずは、あちらをごらんください?。ブリッツェン?』
ブリッツェン『ドンダー、起動だ』
菜々「キャッ!」
志保「わっ!」
28:
真奈美「爆発したぞ」
久美子「屋上駐車場、車かしら」
イヴ『見ましたかぁ??見ましたねぇ?』
ヘレン「彼女と言えば、爆弾」
イヴ『コゲコゲになりたくなかったら、近づかないでください?』
ブリッツェン『イヴ、時間だ』
ヘレン「私はそれを追って来た」
イヴ『戻りましょう、暑いです?』
ヘレン「さぁ……ミス・サンタクロース、お手並み拝見と行きましょう」
29:
10
清路警察署・刑事一課和久井班室
美波「課長、お飲み物をどうぞっ」
柊志乃「ありがとう……これは」
柊志乃
刑事一課課長。見かけによらず武闘派とのこと。署長の礼子とは同級生。
美波「トマトジュースですけど、お嫌いでしたか?」
志乃「ワインが良かったわね……あるかしら?」
美波「アルコールはちょっと……」
留美「バカなことを言わないでください」
志乃「リラックスは必要でしょう」
留美「大和巡査部長、本部に強制的に突き返しましょう」
亜季「え?」
留美「許可するわ」
亜季「課長殿、失礼するであります。おりゃ!」
志乃「最近の警察組織は上下関係が緩いのね……」
留美「課長に言われたくはありません」
亜季「あの、警部補殿」
留美「どうしたの」
亜季「課長殿の腰に突撃したでありますが、一歩も動かないであります」
志乃「ジュースくらいゆっくり飲ませてちょうだい」
亜季「新田巡査、ご協力を」
美波「はいっ、失礼しますっ」
留美「ところで、課長」
志乃「何が聞きたいのかしら」
美波「う、動きません……」
亜季「私はおろか新田巡査よりも軽いはずであります」
30:
留美「立てこもりの件、様子見ですか」
志乃「その通りね。礼子……署長も了解済みよ」
留美「弱腰だと謗られますよ」
志乃「それでストレス解消になるなら……良いこと」
留美「人質の安全を保障していて、要求も目的も不明なのはわかりますが」
志乃「わかってくれてるのね」
留美「爆弾が怖いですか」
志乃「いつも、正しい恐怖心を失わないこと」
留美「心得てます」
志乃「ごちそうさま。今回はバックアップを、同僚と私を信じなさい」
留美「わかりました」
志乃「部下二人はまだ修練が必要ね。自分で本部に戻るから大丈夫よ」
亜季「およ?簡単に引きはがされてしまいました」
志乃「大和巡査部長、鍛えるだけではなく技術も大切よ」
亜季「今度ご鞭撻を」
志乃「そうしたいところだけど、忙しいのよ……新田巡査」
美波「わっ、きゃあ!」
亜季「そんな簡単に人体を持ち上げるとは……」
志乃「ん……」
美波「お姫様だっこで顔を覗き込むのはやめてください……」
志乃「降ろすわ。お勉強もいいけれど、刑事の本分を忘れないで」
美波「は、はい」
志乃「またね……事態が急変したら飛んできてちょうだい」
留美「了解しました」
31:
美波「……ふぅ。やっぱり、まだ少し緊張します」
亜季「しかし、只者ではありませんな」
留美「当たり前でしょう。只者だったら、あの年の女性がよりにもよって刑事一課の課長になんかなったりしないわ」
亜季「それもそうでありますか」
美波「課長はバックアップで良いと言っていましたが」
亜季「ここで待っているだけなのは性分にあわないであります」
留美「そうね。ショッピングモールの配置図はあるかしら」
美波「はいっ、準備してあります」
留美「状況の確認と、もしも突入する場合を考えましょう」
亜季「フム」
留美「今必要とならなくても、いつか役に立つ日が来るわ」
美波「日々勉強、日々成長ですねっ」
留美「はじめましょう」
32:
11
大型ショッピングモール・3階・メインロード
メインロード
サンドウィッチを中心に取り扱うファーストフード店。通はピーナッツバターを注文するらしい。
雪乃「3階に来てみましたけれど……」
望月聖「……♪」
望月聖
人質に取られている中学生。ケータイのゲームに鼻歌まじりで熱中している。
雪乃「目があいましたわ。こんにちは」
聖「……こんにちは」
雪乃「何をしてらっしゃいますの?」
聖「外に出して貰えないから……ゲーム……歌……好きだから……」
雪乃「まぁ」
聖「……聞こえた?」
雪乃「お歌か、何かでしょうか。ケータイで聞いてるのはジャズですの?」
聖「花火……?」
雪乃「花火……そう言えば、揺れたような……」
聖「それだけじゃない……小さくて、でも、同じリズム……」
雪乃「小さな音……?」
プランサー「バレンタインの姉ちゃん、移動したな?」
プランサー
トナカイの一人。技術銃の持ち方からして左利き。
雪乃「……」
プランサー「そう怯えないでいい」
聖「うん……大丈夫……」
プランサー「クリスマスちゃん、サンタがこれを」
聖「カード……ありがとう……充分……」
雪乃「クリスマスちゃん、と呼んでますの?」
プランサー「誕生日が12月25日だそうだ。サンタが気に入ってるから、しばらくはここに居てもらう」
雪乃「あなたは、よろしいのですか?」
聖「……」
雪乃「ゲームに夢中ですわね……」
プランサー「夢中になっているうちに終わる。暇つぶしが欲しいなら、言ってくれ」
雪乃「……」
プランサー「会話が必要ならしてもいいが得意ではない……どうした?」
雪乃「先ほど、揺れませんでしたか」
プランサー「屋上で車を爆発させた」
雪乃「え……?」
プランサー「危険なことにはならない」
雪乃「そう言われましても……」
プランサー「安心してほしい」
雪乃「あなた達の目的は……」
プランサー「いずれわかる。こちらプランサー、任務に戻る」
雪乃「行ってしまいましたわ……」
33:
12
高峯探偵事務所
真奈美「犯人が自爆する可能性は」
のあ「ないと思うわ」
志保「でも、間違って爆発するとか」
のあ「ヘレン、意見は」
ヘレン「自爆も誤爆も可能性は低いでしょう」
のあ「どうしてかしら」
ヘレン「温度を下げている理由は?」
菜々「クリスマスにしたいから、じゃないですよね?」
真奈美「爆弾の方に何かあるのか」
ヘレン「イエス」
久美子「ヘレンがくれたデータを見てるんだけど、低温だと意図しない爆発を防げるそうよ」
のあ「逆を言えば、温度があがると誤作動するわけね」
真奈美「北国製とは限らないが、設計図は北国製ということか」
志保「あれ、でも……館内を冷やしているということは」
のあ「館内にも爆弾があるということ」
ヘレン「その通り。久美子、音葉、頼んでいたことはわかっていたかしら」
音葉「はい……屋上の爆発ですが」
久美子「これ、見てくれる?」
真奈美「爆発前か?」
音葉「ええ……爆発したのはここです」
ヘレン「建物の改修工事ね?」
音葉「はい……作業者は工事休みのため不在です……」
久美子「それなのに、車両が1台」
のあ「工事車両ではないわね」
真奈美「普通の乗用車だな」
音葉「それがこうなります……」
のあ「爆発した」
ヘレン「車両が細工されてるわね。音と炎が車両の爆発にしては大袈裟」
久美子「たぶん、そう。窓ガラスとか割れてないけど、天井だけ壊れてる」
のあ「つまり」
ヘレン「パフォーマンスね」
真奈美「そうなると、ガソリンも入ってなさそうだな」
音葉「しばらくしたら……鎮火するでしょう」
のあ「犯人グループは危害を加える気はなさそうね」
久美子「でも、主導権を握ってるのはあっちなのよね」
真奈美「押すにはリスクがいるが」
音葉「何もしないなら……リスクはありません」
久美子「刑事課の人達もそんな判断をしてそうね」
のあ「ヘレン、どうするの」
ヘレン「……」
34:
のあ「ヘレン?」
ヘレン「のあ、質問をしていいかしら」
のあ「いいけれど」
ヘレン「犯人の目的はわかるかしら?」
のあ「さっぱり、わからない」
久美子「本当にね。何がしたいのかしら」
真奈美「メッセージは明確なのに、目的がわからない、と」
のあ「入ってくるな、それ以外の要求事項もなし」
久美子「あれだけ派手にやってるのにね」
音葉「今はまだ……かもしれません」
のあ「外じゃないなら……」
真奈美「中か?」
久美子「つまり……」
菜々「つまり?」
ヘレン「雪乃に期待しましょう」
のあ「それしかなさそうね」
ヘレン「だけれど、待っているだけではヘレンが廃るわ。久美子、音葉、協力なさい」
真奈美「私達はどうする」
のあ「もちろん、雪乃からの連絡を待つのよ。志保」
志保「のあさん、どうしました?」
のあ「濃いコーヒーを貰えるかしら。目が覚めるような、不味ければ不味いほどいいわね」
志保「なっ……なんですってぇ!?」
菜々「のあさん、失言ですっ」
志保「こんな人の言うことには、コーヒーなんて持ってきません!カフェインたっぷりで目が覚める苦さのものを持ってきます!」
真奈美「エナジードリンクあたりかな」
志保「緑茶です!そのかわり、マスターのために働いてもらいますからね!」
35:
13
大型ショッピングモール・2階・メガネショップ
雪乃「焦げたようなニオイがしますわね……まさか」
上条春菜「いらっしゃいませ!もしかして、メガネ、お探しですか?」
上条春菜
メガネショップの店員。売り物のメガネの扱う手に、愛情があふれている。
雪菜「あら?」
春菜「どうしました?」
雪菜「ごめんなさいな。普通に営業しているようで、驚いてしまいましたわ」
春菜「人質なのはわかってますけれど」
雪菜「それに……焦げ臭いような気がしまして」
春菜「そうですか?あっ、これはですね……」
八神マキノ「春菜、レンズは出来たわ。後はお願い」
八神マキノ
メガネショップの店員。経営の勉強もしているらしい。
春菜「ニオイはレンズの加工が原因ですね」
雪乃「そうでしたの、安心しましたわ」
マキノ「こんな時にまたお客さん?」
雪乃「また、ですの?」
春菜「そうなんですよ。トナカイさん達が見に来ました」
マキノ「接客しろと言われたら、断れないもの」
春菜「5つお買い上げいただいて、お金も払っていただきました」
雪乃「まるで何もないようにお買い物してますわね……」
マキノ「春菜、あそこにいるトナカイは」
春菜「ヴィクセンですね。メガネには興味がないようです、似合いそうな話し方なのに」
雪乃「話し方とメガネに関係はないような気がしますわ」
春菜「メガネが似合いそうなハキハキとした女性の声でした」
マキノ「少し話をしても良さそうね。貴方、中の状況を調べてるわね」
雪乃「……はい」
マキノ「私も調べてるわ」
春菜「マキノさんの場合は、趣味も兼ねていますが」
マキノ「目的がわからないの。情報もほとんどない」
雪乃「外との連絡は取れていますか?」
マキノ「取れても意味がないわね」
雪乃「そうですわね……」
36:
マキノ「でも、このままも癪じゃない」
春菜「私はそんなに危ないことはしたくないです、なので」
マキノ「情報は集めてるけど、趣味にとどめるわ」
春菜「でも、メガネショップの店員としての意地は捨てません」
マキノ「おそらく、メガネが完成するまでは帰らない」
春菜「時間指定がありました」
マキノ「メガネを選んでいる時にマスクを外しているトナカイがいたわ」
雪乃「……本当ですの?」
マキノ「コメットというトナカイよ」
春菜「若い男性でした。おそらく日常生活でも常にメガネをしているはずです」
マキノ「でも、メガネ屋に出来るのはそれだけね」
雪乃「でも、時間がわかりましたわ」
マキノ「その通り。メガネ屋の範囲内で出来ることはしてみるわ」
春菜「はい。マキノさん、メガネ仕上げてきますね」
マキノ「……防犯カメラの映像、コメットの顔が映ってたわ。画像データは売り上げのフォルダに」
雪乃「……わかりましたわ」
マキノ「メガネがご必要な時はお声がけを」
37:
14
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
ほたる「あ……雪乃さん、おかえりなさい」
雪乃「ほたるさん、ただいま戻りましたわ」
池袋晶葉「君が相原雪乃か?」
池袋晶葉
人質の一人。ロボット創作のためにお買い物に来ていて、巻き込まれた。
雪乃「そうですわ。はじめまして」
晶葉「池袋晶葉だ。人質同士、仲良くしようじゃないか」
雪乃「ええ、お願いいたしますわ」
晶葉「ところで、頼み事があるのだが」
雪乃「お困りのことがありましたか?」
晶葉「温かい飲み物が欲しいんだ。トナカイ達はここで雪乃がくれると言っていた」
雪乃「まぁ、お任せくださいな。ほたるさんはいかがですか」
ほたる「いただきます……」
晶葉「雪乃はここの店員か?」
雪乃「違いますわ。これでも、自分のお店を持っていますの」
晶葉「ほう。それは立派だな。そうだ、トナカイがこれをくれた」
雪乃「これは、このお店のギフトカードですわ」
晶葉「代金替わりなんだろうな」
ほたる「強盗できるのに、お金を払うんですね……」
雪乃「不思議ですわね……ほうじ茶にしましょうか」
晶葉「うむ、そうしよう。手が冷えてしまって、工作ができん」
雪乃「工作?」
ほたる「オモチャとロボットを作ってるそうです」
晶葉「しかし、この温度だ。トナカイの装備が羨ましいな」
ほたる「薄手なのにとっても温かいそうですよ……」
晶葉「そうなんだ。私もあの手袋が欲しいが、断られた」
雪乃「手袋、あれですわね。交替の時間なのでしょうか」
ほたる「2階には初めて来たと思います……長い髪ですね」
晶葉「確かキューピッドと名乗っていた。オモチャ屋の手品グッズで見事な手品をしていたぞ。だが、コメットの方が上手だったな」
雪乃「こちらに来ましたわ」
キューピッド「はいはーい!パピっと登場☆」
キューピッド
トナカイの一人。先ほど投稿された動画に入っていた声の持ち主。
38:
雪乃「ぱぴっ?」
キューピッド「あたしのことはキューピッドって呼んでね、バレンタインのお姉さん♪」
雪乃「その呼び方は統一してるのですね……」
キューピッド「もしかして、紅茶?」
雪乃「いえ、ほうじ茶です。晶葉さん、ほたるさん、どうぞ」
晶葉「ありがとう」
キューピッド「うーん、ほうじ茶かぁ」
晶葉「うむ、ウマいぞ。これは雪乃のお店でも出してるのか?」
雪乃「出しておりませんけれど、新メニューは考えてますの」
キューピッド「バレンタインのお姉さん、お店をやってるの?」
雪乃「ええ、3人とアルバイト1人でやっている小さなお店ですの」
キューピッド「いいなー。あたしもカワイイ服でお仕事したいな」
雪乃「なら、どうして、その……」
キューピッド「テ口リストをやってるか?」
雪乃「……はい」
キューピッド「サンタさん、見た?」
ほたる「……見ました」
キューピッド「カワイイでしょ♪」
晶葉「その通りだな。日本ではまずお目にかかれないタイプだ」
キューピッド「サンタさんはあたしがあたしらしくいれる場所をプレゼントしてくれたんだ」
ほたる「……」
キューピッド「世界中にきっといる、あたしがあたしでいられないひとにその場所をプレゼントするお手伝いをしたいから、かな♪」
晶葉「自分らしくか。誰もが自分らしくを、貫けるわけではないからな」
雪乃「なら、どうして」
キューピッド「どうして?」
雪乃「テロや犯罪なのですか。方法は幾らでもあるはずですわ」
キューピッド「……幸せに育って来たんだね」
ほたる「……幸せ?」
キューピッド「あたしだって、サンタさんだって、そう思っていたかったな」
雪乃「……」
キューピッド「湿っぽい話はナシ!もう少しだけ、一緒にいてね。ばいばーい♪」
晶葉「あっちにも事情があるようだな」
ほたる「……やっぱり、そうなんでしょうか」
晶葉「だが、犯罪者は犯罪者だ。被害者の私達が心を痛めるのは筋違いだ」
ほたる「私も……そう信じたいな……」
雪乃「……」
晶葉「雪乃?優しいのは素晴らしいことだが、気に病むことではないぞ」
39:
雪乃「前にも言われたことがありまして。私は、その、良い家の出ですから」
晶葉「そんなの初対面でもわかるぞ」
雪乃「そうなのですか……?」
ほたる「はい……とっても」
雪乃「わからずに、傷つけてしまいますのでしょうか」
晶葉「そんなことはない、きっと雪乃は傷つけるよりも癒している人が多いはずだ。私の勘だがな!」
ほたる「……」
雪乃「そうだと良いのですけれど」
晶葉「キューピッドは行ったな。雪乃、連絡はいいのか」
ほたる「すみません……少しお話しました」
雪乃「謝らなくていいですわ。キッチンで連絡します、見ていてくださいますか」
晶葉「もちろんだ。私の妄想を一つ、伝えてくれないか」
雪乃「もちろんですわ」
晶葉「トナカイ達を観察していたんだが、どうやらダッシャーとルドルフを除いて人質がいる場所から順番で出入りしてる」
ほたる「見ました……屋上を経由してるみたいです」
晶葉「あと、キューピッド含めて機械や回路の知識がありそうだ。つまり」
雪乃「つまり……」
晶葉「犯人達は人質が見えない場所で、何か作ってたりしないか?」
40:
15
高峯探偵事務所
のあ「雪乃からの情報、記録出来たかしら」
久美子「オッケー。雪乃さんが確認した人質は、っと」
真奈美「白菊ほたる、望月聖、八神マキノ、上条春菜」
のあ「それと池袋晶葉」
久美子「ヘレン、この情報は警察に伝えていい?」
ヘレン「連絡済みよ」
久美子「さすが、仕事がはやい」
のあ「ヘレン、池袋晶葉が言っていたことだけれど」
ヘレン「良い観察眼を持ってるわね。人質から見えない場所がポイントである可能性はある」
音葉「そもそも……制御室は中心にありません」
久美子「空調と放送を最初に占拠したのよね、おそらく」
ヘレン「製造できるスキルもあるわ。ダッシャーにそれがないのも過去の情報通り」
真奈美「製造しているのは、爆弾か」
ヘレン「可能性は高いでしょう。でも、何かを作っているとは考えにくいわ」
のあ「なぜ」
ヘレン「ショッピングモールに材料があるとは考えにくい。それに人目を集める必要がない」
真奈美「それもそうだな」
久美子「コメットというトナカイの顔が映ってるけど、何か参考になる?」
ヘレン「後に有効活用させてもらうわ。でも、今一番欲しい情報じゃない」
真奈美「普通に買い物、そもそも普通じゃないか、買い物をしているがこれの目的はなんだ?」
ヘレン「暇つぶしか何かでしょう。もしくは、人質にストレスを与えないための方策」
のあ「本当の目的は、まだ見えないと」
ヘレン「考えなさい、人質は全てじゃないわね?」
のあ「ええ。あと7人か8人はいるようね」
ヘレン「結論を出すには早いでしょう」
のあ「同感」
ヘレン「しかし、考えるのを辞めてはだめよ。人が道を切り拓くには、思考の荒野を歩き続けるしかないのだから」
41:
16
大型ショッピングモール・1階・インフォメーションカウンター前
財前時子「貴方、逃げ遅れて人質にされたのかしら」
財前時子
人質の一人。インフォメーションカウンターのお仕事は、意外と向いていたらしい。
雪乃「止められてしまいましたわ。あそこにいるトナカイさんに」
時子「薬局でハンドクリームの試供品を試している奴?」
雪乃「ルドルフと名乗っていましたわ」
時子「赤鼻ね。止められた理由は何かしら、答えなさい」
雪乃「誕生日を聞かれましたわ。バレンタインはクリスマスのライバルらしいですわ」
時子「ハァ……ろくでもない理由ね」
雪乃「財前様はどんな理由ですの?」
時子「見かけによらずにクリスマスにこだわり派に違いません、だそうよ」
雪乃「まぁ」
時子「否定はしないわ。家族と過ごす時間も大切でしょう」
雪乃「うふふ、その通りですわね。去年はどちらに」
時子「南フランスの別荘よ。貴方は」
雪乃「去年はお仕事でしたの。雪景色のクリスマスが恋しいですわ」
時子「クリスマスは待てば来るわ。待てないほど、無粋じゃない」
雪乃「時計を回しても、来ませんのに」
時子「温度を下げた所で、ね」
イヴ「やっぱり、クリスマスが好きなんですねぇ?」
時子「急に出てこないでくれるかしら」
雪乃「びっくりしましたわ……」
イヴ「お菓子をプレゼントしますよ?。どうぞ」
時子「いわないわ」
雪乃「私も遠慮しますわ」
イヴ「そうですか?、大人は配る側ですよね、うんうん」
時子「勝手に納得しててちょうだい」
イヴ「トナカイさん達にあげましょう?。あ、ヴィクセン?」
ヴィクセン「サンタクロース殿、おつかれさまです!」
ヴィクセン
トナカイの一人。きっぱりハッキリとした口調。
42:
イヴ「休憩しましょう、お菓子をどうぞ」
ヴィクセン「お気持ちだけで。そろそろ帰ってくるブリッツェンにでも渡してあげてください」
イヴ「甘くておいしいのに?」
ヴィクセン「いえいえ。サンタクロース殿、私ちゃんとやれてますか?」
イヴ「もちろんです?、がんばりましょうね?」
ヴィクセン「はいっ!」
イヴ「それじゃあ、良いクリスマスを?」
ヴィクセン「失礼しますね」
時子「良いクリスマスって今の事かしら。それとも、12月のことかしら」
雪乃「さぁ……わかりませんわ」
時子「いずれにせよ、不愉快なことに変わりないわ。何も出来ないのが、更に不愉快ね」
雪乃「あの、財前様?」
時子「何か聞きたいことでもあるのかしら」
雪乃「館内放送などはここでは動かせないのですか」
時子「ここはあくまでカウンター。制御室を盗られた時点で、季節外れのクリスマスキャロルすら止められない」
雪乃「フム……」
時子「だから、不思議ね」
雪乃「不思議なことがありましたの?」
時子「私という職員を捉えている理由がないのよ。身代金を要求しているわけでもなく」
雪乃「確かにそうですわね。なら、本当に先ほど言った理由なのではないでしょうか」
時子「クリスマスにこだわりがあるから?バカらしいわね」
雪乃「あらぬ考えが浮かぶほどに、目的がわかりませんわね」
時子「それは同感ね。理解したいとも思わないけれど」
雪乃「財前様、他の人質は1階にいらっしゃいますか?」
時子「そこのチョコレートショップに店員と友人3人組、ペットショップに小学生がいるはずよ。人質を把握して何かするつもりかしら」
雪乃「お話を聞くだけですわ。それで、少し気分が楽になるならば」
時子「フン、貴方みたいな人も必要ね。お願いするわ」
雪乃「財前様、最後に気になっていることを聞いていいでしょうか」
時子「構わないわ」
雪乃「まさかお仕事中もその態度なのでしょうか……?」
時子「違うに決まってるでしょう。笑顔も優しい声も出せるわよ」
雪乃「安心しましたわ。怯えてしまう人はいませんのね」
時子「相原雪乃、正直は美徳だけれど言わなくていいこともあるわ」
43:
17
大型ショッピングモール・1階・チョコレートショップ・シレド
チョコレートショップ・シレド
日本発祥のチョコレートチェーン店。チョコレートドリンクも豊富。
宮本フレデリカ「チョコ食べるー?」
宮本フレデリカ
シレドのアルバイト店員。金髪でフランス生まれの日仏ハーフとのこと。
雪乃「売り物ではありませんの?」
フレデリカ「アタシが売って、アタシにプレゼントしてもらったから違うんだよ?」
雪乃「どういうことでしょう?」
椎名法子「ダンサーっていうトナカイが買いに来たんだ」
水本ゆかり「私達にくださいました、差し入れだそうです」
中野有香「チョコレートは甘くて栄養もあって、元気が出るッス!と言っていました」
椎名法子
人質の一人。彼女のお気に入りのドーナッツ屋は、残念ながら、人質がいる場所にはない。
水本ゆかり
人質の一人。彼女曰く、危険な感じはしませんから大丈夫だと思います、とのこと。
中野有香
人質の一人。あまり危機感のない法子とゆかりを守ろうと肩に力が入っている。
雪乃「そうでしたの。いただいても、よろしいでしょうか」
フレデリカ「どうぞー。フレちゃん、おススメはこれだよ。はい、あーん」
雪乃「えっと……」
フレデリカ「遠慮しないのがコツだよ、はい」
雪乃「では、いただきますわ」
フレデリカ「おいしー?」
雪乃「美味しいですわ」
フレデリカ「フフーン、フランス人のママが大好きなんだ、さすがでしょー?」
雪乃「自然な甘みがありますわね、砂糖ではないような」
フレデリカ「カカオをブレンドして、甘さを出してるんだって。全部、店長の受け売りだけど」
法子「こだわってるんだー」
雪乃「勉強になりますわ」
法子「ねぇねぇ、チョコレートドーナツはないの?」
フレデリカ「あるけど、アタシだけじゃつくれないんだー、ゴメンね」
ゆかり「残念でしたね、法子さん」
フレデリカ「待ってればいいことあるよ。リラックス、リラックスー」
雪乃「皆様、落ち着いてますわね」
有香「そんなとんでもない!」
フレデリカ「ウーン、映画だと思えばヘーキ?」
ゆかり「危険な感じはしませんわ」
法子「チョコもお詫びにくれたから、良い所もあると思うんだー」
フレデリカ「だから、ダイジョーブだよー♪」
有香「あたしがしっかりしないと……」
雪乃「気張り過ぎもよくありませんわ」
44:
有香「でも、トナカイ達は危ないんです」
雪乃「危ない、のはわかりますが」
フレデリカ「さっきも言ってた、空手だっけ?」
有香「あたしも少しだけ武道をたしなむのですが、3人ほど只者ではない人がいます」
雪乃「どなたでしょうか」
有香「一人はダンサーというトナカイです」
法子「さっきチョコをくれた人だ」
有香「動き方も筋肉の付き方もトップアスリートでした、もしかして武道家だったのでは、と」
フレデリカ「そう言えば、サンタさんのことをシショーって呼んでたよ」
有香「次はプランサーというトナカイです」
雪乃「先ほどお会いしましたわ。確かに機敏な印象を受けましたわ」
有香「銃器に自信があるようですが、手にバンテージを巻いています」
ゆかり「格闘技の際に着ける包帯だそうで……」
有香「最後に、ダッシャーというトナカイです」
フレデリカ「ダッシャー、ってそうだよねー」
雪乃「ダッシャーは、ダッシュから来てますもの」
有香「危険です。言動も動きも粗暴ですが、絶対に強いです、オレ様が最強だぜ、です」
法子「そうなの?」
ゆかり「そうは思いませんけれど……」
有香「二人はもう少し危機感を持ってください!」
雪乃「ダンサー、プランサー、ダッシャーですわね。覚えておきますわ」
有香「はい」
雪乃「でも、心配しすぎはいけませんわ」
フレデリカ「そうだよー」
有香「フレデリカさんに言われても」
雪乃「犯人に警戒されるかもしれませんわ。そうなったら、もっと危険ですわ」
有香「……確かに」
雪乃「今の所、危害を加えるつもりはないようです」
ゆかり「ええ……だから、平気です」
法子「でも、ずっとはいられないよね」
フレデリカ「きっとねー。アタシもみんなもずっと閉じ込められるのは、イヤだよね」
ゆかり「食事も問題ありませんし、ゆっくりしていましょう」
フレデリカ「ここにいればヘーキだよ、たぶん。サンタとトナカイは、何もしないよー」
有香「それは、何となくはわかってはいるのですが」
雪乃「でも、犯人を信じて待つしかありませんわ」
法子「うんうん。だから、ゆかゆか、お話してよ?」
有香「やっぱり、そうなりますか。相原さんもお気をつけて」
雪乃「何か気づいたことがあったら、教えてくださいな」
45:
18
大型ショッピングモール・1階・ペットショップ入口付近
橘ありす「ここからは外も見られませんし、出られません。見張りもずっといます」
橘ありす
人質の一人。安全だとわかったのか、雪乃に冷静に状況を伝えてくれる。
雪乃「あそこにはずっとあの方が?」
ありす「はい。ダッシャーと呼ばれていました」
雪乃「あの方がダッシャー……」
ありす「向こうの手芸店にいるのがダンサーです。上からエスカレーターで降りて来た筋肉質で大きな人がドンダーです」
雪乃「出口の見張りをしているのは、ずっと同じトナカイですの?」
ありす「他のことは何もしてないです。たまに交替しますけど、短い時間です」
雪乃「よく観察していますわね」
ありす「ずっと見ていると怒られますよ」
雪乃「後ろを向いてますわ」
ありす「何故か、気づくんです。ほら、今も」
雪乃「不思議な人ですわね。橘さんは、こちらで何を」
ありす「タブレットとケータイを没収されてしまったので、暇つぶしをしています。動物の観察です」
雪乃「トナカイさん達を、ですわね」
ありす「それもですが、ペットショップにいる動物もです」
雪乃「橘さんはどうして人質に?」
ありす「逃げようとしたら、ブリッツェンというトナカイに止められました」
雪乃「何か理由は言っていましたか?」
ありす「君達はあまり怖がってなさそうだから、とか」
雪乃「そうなのですか、確かに橘さんは落ち着いてますわね」
ありす「……恥ずかしいんですけれど、最初はずっと怖かったです。態度にも出ていたと思います」
雪乃「なら、どうして」
ありす「多分ですが、小春さんが怖がっていなかったからだと考えてます」
雪乃「小春さんというのは一緒に来たお友達ですわね」
ありす「はい。小春さんの感じてることは私には深くはわかりません」
雪乃「小春さんはどちらに」
ありす「ペットショップの奥にいます。危ないので出口に近いここにいることにしています」
雪乃「わかりましたわ。私からもお話を聞いてみますわね」
ありす「お願いします。あの、相原さん」
雪乃「どうしました?お飲み物くらいならご用意できますわ」
ありす「先ほど見かけたのですが、トナカイは話してくれるんですか?」
雪乃「理由はわかりませんが、人質を無碍に扱っていませんわ」
ありす「わかりました。話してくれそうなトナカイを探してみます」
雪乃「疑ったり、嫌悪を向けたらきっと気づきますわ。だから、世間話だけにしてくださいな」
ありす「わかってます」
46:
19
大型ショッピングモール・1階・ペットショップ奥
古賀小春「悪い人達じゃないですぅ?」
小関麗奈「アンタは、そればっかりね……」
古賀小春
人質の一人。のんびりとした性格の女の子。ペットのヒョウくんはお留守番。
小関麗奈
人質の一人。なかなかイタヅラが決まらない小春は強敵らしい。
小春「本当ですよぉ」
レイナ「雪乃だっけ、聞かなくていいわよ」
雪乃「いいえ、何でもお話は聞いてみましょう」
小春「きっと、れいなちゃんが好きなイタヅラですよ?」
レイナ「イタヅラの領域こえてるでしょうがッ!さすがのアンタでもわかるでしょ!」
雪乃「小春さん、イタヅラではないと思いますわ」
小春「でも、きっとそうですよぉ」
レイナ「はぁー、その感覚がわかんないわよッ!」
小春「だから、きっとれいなちゃんがイタヅラしても許してくれますよ?」
レイナ「小春……アタシでも分別は出来るわ、そんなことしたらマルコゲハチノスになるわよッ!」
小春「クリスマスだから、楽しい方がいいですよぉ」
雪乃「クリスマスにちなんでいたら、許してくれるかもしれませんわね」
レイナ「アンタも……いや、確かにそうね。クラッカーでも鳴らしてやろうかしら……オモチャ屋があったわ……フッフッフ……」
雪乃「小春さんは、どうして悪い人じゃないと思いますの?」
小春「このお店のわんちゃん達、みんな大人しいんですぅ」
雪乃「確かに、爆発もあったのに静かですわ」
レイナ「プランサーとブリッツェンだっけ、その二人が扱い方を心得てたわ」
小春「お顔は見えないけど、きっと優しい表情でしたぁ」
レイナ「あと、サンタも慣れてたわね。ホンモノのトナカイも飼ってんじゃないの」
雪乃「ペットショップを含めても扱うことが出来る自信があったのですね」
小春「だから、本当は優しい人なんですぅ」
レイナ「優しい奴が爆弾と銃を使うわけないッ!」
雪乃「……」
レイナ「雪乃、まさかアンタも小春と同じこと言うんじゃないでしょうね」
雪乃「お二人とも、プレゼントを頂きましたか?」
47:
レイナ「プレゼント?そんなの……ん、小春なんか貰ってたわよね?」
小春「はい?、これですぅ」
雪乃「ペンダント、クリスマスらしいデザインですわ」
レイナ「アタシもそう言えばオヤツを貰ったわ」
雪乃「あの人達は、こんなことをしていてもサンタクロースを名乗っていますわ」
レイナ「そうね、トナカイの名前もちゃんと由来通りらしいじゃない」
雪乃「やっぱり、サンタクロースでありたいのではないでしょうか」
レイナ「とは言ってもねぇ。人質閉じ込めて立てこもって、誰に何をあげるつもりなのよ」
雪乃「それは……わかりませんけれど」
レイナ「わかんないなら、小春に聞いてみればいいのよッ。小春、なんかわかるんでしょ」
小春「わかりませんけどぉ、うーん……」
雪乃「……」
小春「うーん……やっぱり、わからないですぅ」
レイナ「結局、わからないわけねッ」
小春「でも、きっと悪いことじゃないんです?。サンタさんが言ってました」
雪乃「何か言っておられましたの?」
小春「クリスマスの夜は、静かで穏やかな家族と過ごす夜にしないとですからぁ、って」
48:
20
高峯探偵事務所
のあ「雪乃によれば、これで人質全員だそうね」
久美子「全部で14人」
真奈美「共通点は、と」
久美子「女の子から若い女性。男性と老人はゼロ」
菜々「どうしてなんでしょう?」
ヘレン「聞いてみれば良いわ」
のあ「なるほど。志保、雪乃にメールでも送っておいてちょうだい」
志保「わかりました。でも、マスターが人質になる理由はやっぱりないですよね?」
真奈美「ああ」
久美子「それは他の人質も同じじゃない?」
ヘレン「そうとは限らない」
のあ「人質の誰かがキーだと」
ヘレン「それを推測の域から外すために、調査中よ」
真奈美「協力することは」
ヘレン「ノー。個人情報は科捜研にも見せられないわ」
のあ「その調査法、いいのかしら」
久美子「ヘレンの調査権を逸脱してないって」
真奈美「捜査官の権限があるのか」
のあ「考えるのは辞めてたけど、凄い人なのかしら」
音葉「……なんと!」
久美子「音葉ちゃん、珍しく驚いてどうしたの?」
音葉「ごほん……失礼しました……」
ヘレン「音葉、ショッピングモールの警備システムにアクセスできたのね」
久美子「音葉ちゃん、そんなことしてたの?」
真奈美「システムを乗っ取ろうとしたのか?」
音葉「いいえ……そこまで大仰では……」
のあ「それなら、目的は」
ヘレン「監視カメラの映像が欲しかった」
音葉「その通りです……ですが」
のあ「ですが?」
音葉「出来ませんでした……これを見てください」
49:
志保「パスワード、ですか?」
音葉「パスワードと音声認証を要求されています……」
のあ「犯人のものでしょうね」
ヘレン「フム……つまり、犯人は音声認識デバイスを持っていると」
音葉「その通りです……おそらく、USB等の物理デバイスを用いてシステムの操作を制限したようです……」
久美子「制御室に侵入しても、システムを奪い返せないと」
ヘレン「テ口リストも用意周到ね、でも驚くほどじゃないわ」
真奈美「何か、別のことがあるのか」
音葉「ええ……テ口リストのプログラムはただのロックです……」
のあ「ランサムウェアのような、その程度と」
音葉「しかし……管理システムとPCは完全に乗っ取られています……」
久美子「音葉ちゃん、どういうこと?」
音葉「信じられませんが……乗っ取りに用いたデバイスとプログラムを足掛かりにハッキングされています……」
のあ「……誰が何のために?」
音葉「それは……わかりませんが」
久美子「うーん、仲間なのかしら」
ヘレン「デバイスの脆弱性からシステムに入っているなら、テ口リストの協力者でしょう」
のあ「ますます目的がわからない」
ヘレン「制御室で何かを動かした形跡はないでしょう?」
菜々「マスターは何も言ってませんでした」
ヘレン「ディテクティブ・ノア、考えられることは?」
のあ「データを集めている。有益な情報と言えば、カメラの映像くらいしかないわ」
ヘレン「オーケー、ならテ口リストに黙ってそれを集めてるのはなぜ?」
のあ「協力者ではない。あくまで、興味と」
ヘレン「そこから導かれる答えは簡単、火事を起こしたくないなら引くしかない」
真奈美「つまり、ここからは何も出来ないと」
ヘレン「イエス。音葉、久美子と一緒に警察が手に入れた情報を集めなさい」
音葉「わかりました……」
ヘレン「雪乃、言ってたでしょう」
のあ「色々言っていたけれど、ヘレンが気になることは」
ヘレン「サンタクロースの本懐よ」
真奈美「プレゼントの話か」
ヘレン「ええ、そしてイヴ・サンタクロースと言えば」
久美子「爆弾?」
ヘレン「それに関わるはず、きっとよ」
のあ「真奈美」
真奈美「どうした?」
のあ「爆発事件の資料、見直すわ。手伝って」
真奈美「わかった」
ヘレン「それともう一つ、クリスマスとは」
志保「家族と過ごす穏やかな夜、とかマスターが言ってました」
ヘレン「夜、日が落ちるまでがタイムリミットでしょう」
50:
21
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
雪乃「ただいま戻りましたわ」
晶葉「雪乃か、おかえり」
ほたる「……」
晶葉「解決の糸口は掴めそうか?」
雪乃「いいえ。でも、皆さまご無事のようですわ」
晶葉「それは良かった……と言いたいところなんだが」
雪乃「まさか……何か悪いことでも」
晶葉「そこまで心配する必要はないんだが……ほたる?」
ほたる「……」
晶葉「ほたる、聞こえてるか?」
ほたる「はっ、あの……はい」
晶葉「こんな感じだ」
雪乃「ほたるさん、大丈夫ですか?」
ほたる「……ごめんなさい」
雪乃「謝ることはないですわ」
ほたる「きっと……私が悪いんです」
雪乃「……ほたるさん、お話してくださいませんか」
ほたる「……」
雪乃「お願いしますわ」
ほたる「昔から……運が悪くて」
雪乃「はい」
ほたる「今だって……隣にいただけの雪乃さんに迷惑を」
雪乃「そんなことありませんわ。困っている人は今その場所にしかいませんの」
ほたる「……でも、それならどうして私は巻き込まれているのですか」
雪乃「それは……」
ほたる「やっぱり……私が悪いんです」
雪乃「違いますわ」
ほたる「そんなの……嘘です!」
雪乃「本当ですのよ……私はそんなこと思ってませんわ」
ほたる「優しい言葉をかけられても……本心は違うことだって、今までもたくさん……」
雪乃「ほたるさん……」
ブリッツェン「どうした、困ったことがあったか」
51:
晶葉「いつの間に」
ブリッツェン「人を見るのが仕事だからな。何を言い合ってた?」
雪乃「いいえ、何でもありませんわ。お気遣いありがとうございますわ」
ブリッツェン「バレンタインの姉ちゃんはそういう気遣いが出来るみたいだが、今は無用だ。何を言ってたんだ?」
ほたる「……私のせいだって」
ブリッツェン「……へぇ」
ほたる「皆を巻き込んでしまったって」
ブリッツェン「……」
ほたる「……ごめんなさい」
ブリッツェン「丁度良かった、コメット!こっちに来てくれ」
コメット「どうした」
コメット
トナカイの一人。ゴーグルの下にはメガネもあるようだ。手先は器用じゃないか、と晶葉談。
ブリッツェン「この子、見てくれるか」
コメット「どうした、顔色が悪いぞ……見せてみろ」
雪乃「貴方に、でしょうか」
コメット「これでも医者だった、その誇りは捨ててない」
ブリッツェン「口は悪いが、本心だぜ。いいか?」
晶葉「私は信じても良いと思うが。でも、医者からテ口リストになるワケがわからない」
コメット「金のためだ。これでいいか」
ブリッツェン「これも本心だぜ」
晶葉「まぁ、私はそれでいいか。雪乃はどう思う?」
雪乃「ええ、ほたるさんは良いですか」
ほたる「……はい」
コメット「失礼する」
ほたる「……」
コメット「冷えたわけではなさそうだな」
ブリッツェン「俺から、さっきのことを否定させてもらう。悪いのは俺らだ」
雪乃「……」
ブリッツェン「意識的に人質に取った。100%、俺らが悪いんだ」
コメット「脈を……フム」
ブリッツェン「だから、怨むなら俺らを怨め」
ほたる「……でも」
ブリッツェン「気持ちはわかるぜ。俺も運が悪くて色んなことを諦めた奴を見てきた」
コメット「君、彼女はいつからこの様子だ?」
晶葉「何時と言われると、最初からか?」
52:
ブリッツェン「誰かのせいに出来なくて、運が悪いとしか思えないのは優しいからだ」
雪乃「そうかもしれませんわ」
ブリッツェン「いいか、これは俺らがやってる俺らの身勝手な犯罪行為だ。それを神様のせいにされるのは納得いかないからな」
コメット「その通り。君から恨まれても、僕には否定はできない」
ブリッツェン「どうだ?」
コメット「おそらく、ストレスだ。彼女は気負いやすいタイプなんだろう」
ブリッツェン「そうか。イヴ、聞こえてるか。ああ、2階のカフェまで来てくれ」
コメット「ブリッツェンが考えている対処が正しいと思う」
ほたる「……」
雪乃「どうして、貴方達はこんな態度を」
ブリッツェン「何が、だ?」
雪乃「悪い人なら、人質に気など使いませんわ」
コメット「抽象的だな」
ブリッツェン「悪い人じゃなくても、犯罪者なんだ。人の心じゃなくて、法が人を裁くんだよ」
イヴ「ブリッツェン?、どうしましたぁ??」
ブリッツェン「イヴ、相談がある」
イヴ「なんですかぁ?」
ブリッツェン「人質を解放しよう」
晶葉「へ?」
コメット「彼女は体調がすぐれない。今すぐに外へ」
ほたる「え……?」
イヴ「わかりましたぁ。じゃあ、付き添いの方もつけましょう」
雪乃「なら、晶葉さんを」
晶葉「わ、私か?雪乃の方が適役だろう」
ブリッツェン「バレンタインの姉ちゃんは、もう少しいてくれ」
イヴ「ブリッツェンの言う通りですぅ。バレンタインさんは居てくださいねぇ?」
晶葉「そ、そうか。雪乃、譲ってくれたのか……いや、ここで言う言葉は違うな。ほたるは任せてくれ」
雪乃「お願いしますわ、晶葉さん」
53:
イヴ「あと、レイナちゃんも解放します?。クラッカーは好きですけどぉ、今は危ないので?」
ブリッツェン「了解」
イヴ「コメット、他に開放してあげたい人はいますかぁ?」
コメット「そうだな、メガネ屋は平気だろうから……提案がある」
イヴ「どうぞ?」
コメット「ドーナッツ娘が気にかかる」
ブリッツェン「平気そうに見えたが、違ったのか?」
コメット「彼女自身は平気だ。最年長の方がこのままだと倒れるぞ」
雪乃「中野さんのことでしょうか……」
イヴ「そうですね?、私も同じ考えですぅ。解放しましょう」
ブリッツェン「3人全員か?」
イヴ「それはダメです?、最年長の二つ結びの子だけ残してください?」
晶葉「いや、何でだ?どうして、2人は解放して1人だけ残す?」
ブリッツェン「……」
イヴ「答えると思いましたか?」
晶葉「いや……失言だった」
イヴ「私達は悪い人なんですよ、それは覚えていてくださいね?」
雪乃「……」
コメット「私は任務に戻る」
イヴ「お願いします?。ブリッツェン、人質解放の手順はわかりますねぇ?」
ブリッツェン「もちろんだ。キューピッドに動画を出させる、ドンダーと俺が正面玄関から人質を解放する。いいか?」
イヴ「良く出来ましたぁ?。おふたりは私に付いてきてくださいねー」
晶葉「わかった。ほたる、行こう」
ほたる「はい……雪乃さん」
雪乃「私は平気ですわ。だから、心配しないでくださいな」
ほたる「ありがとうございます……」
雪乃「解決したら、私のお店にいらっしゃってくださいな」
ブリッツェン「……」
イヴ「さぁ、夏に戻りますよ?」
54:
22
高峯探偵事務所
キューピッド『それじゃ、待っててね♪』
のあ「人質の解放?」
真奈美「唐突だな。ヘレン、前例は?」
ヘレン「立てこもり事件すら前例はなし」
のあ「ますます妙ね」
菜々「マスターの解放は」
ヘレン「雪乃は残されたようね」
のあ「メールが来ている、解放されないそうよ」
志保「そうですか……」
真奈美「テレビだ、様子が流れている」
のあ「人質は正面玄関から解放された」
ヘレン「解放されたのは?」
久美子「白菊ほたるさんと池袋晶葉さん、どっちも雪乃さんと同じカフェにいた子達ね」
真奈美「それと、椎名法子と水本ゆかりに小関麗奈かな」
のあ「雪乃のメールと一致してるわ」
ヘレン「解放の理由は」
久美子「雪乃さんによると、ほたるさんは体調が悪そうだから」
音葉「メールを画面に映します……」
菜々「他は、うーん、よくわかりませんね……」
真奈美「ただの気まぐれ、ではないだろうな」
久美子「雪乃さんが残されたのは、どうしてかしら」
ヘレン「雪乃がサンタクロースの本当のターゲットの可能性は」
志保「そんな訳ないです!」
ヘレン「良家のご息女が理由になるでしょう」
菜々「え、そんなまさか。確認してみますっ!」
志保「あっ、ナナさんっ、私も行きます!」
久美子「行っちゃったけど」
のあ「ヘレン、可能性は」
ヘレン「ないでしょうね。サンタクロース一派はお金には困ってないわ」
真奈美「無駄に怯えさせたのか」
ヘレン「あくまでも予測、彼女達が小さな可能性を否定してくれるわ」
55:
久美子「それで、人質の話に戻っていい?」
のあ「気になることでもあるのかしら」
久美子「雪乃さんは解放されなかったけど、一緒にいた白菊さんと池袋さんは解放された」
真奈美「それなら、中野有香だけ残されてる」
のあ「小関麗奈も同じね、橘ありすと古賀小春は残された」
久美子「解放された彼女達の共通点は、何かあるかしら」
音葉「年齢……でしょうか」
真奈美「望月聖が残ってる。更に年下の橘ありすと古賀小春もだな」
久美子「年齢じゃないとすると」
のあ「店員は解放されてないのね」
音葉「雪乃さんによると……怯えていないからだとか」
のあ「人質を取る必要はあるけれど」
真奈美「数は必要としていない?」
のあ「最初からそうなんでしょう」
ヘレン「のあと同意見よ」
のあ「ヘレン、あなたの考えは」
ヘレン「人質の場所という観点では、どうかしら」
久美子「場所ね、どの階にも人質は残ってるわね」
ヘレン「考えるのよ、その必要は」
音葉「ありません……何故なら」
久美子「見張りの配置を考えないといけないから?」
ヘレン「イエス。その手間をかけてまで、解放する人を制限する理由は」
真奈美「フム……」
ヘレン「更にヒント。雪乃が動いてるのは見逃がしてるわ。なぜか」
久美子「犯人と人質が常にいるってことよね」
音葉「はて……」
のあ「犯人だと誰かの行動を止められない」
ヘレン「ええ、犯人ではなく人質が必要ということ」
56:
真奈美「わからない、説明してくれ」
のあ「あの場にいる誰かが、犯人と関係がある」
久美子「わかった、関係を隠すため」
真奈美「犯人と関係していたら疑われる」
のあ「同じ人質と思われるために、人質の前では行動を起こせない」
ヘレン「ザッツライト。人質を取った理由がもう一つわかったでしょう」
真奈美「警察や他者を近づけさせないため」
のあ「それと、中にいる誰かの行動を制限するため」
ヘレン「その誰か、明らかにしてみせるわ」
のあ「必要な情報は」
ヘレン「おそらく中にはないけれど、雪乃に聞いてもらいたいことが一つ」
音葉「それは……なにでしょう」
ヘレン「人質に取られた理由よ」
真奈美「フム……連絡してみるとしよう」
ヘレン「のあ、頼みがあるわ」
のあ「なにかしら、ヘレン」
ヘレン「爆発と小火が関わる事件、私にも教えなさい」
のあ「わかったわ」
ヘレン「久美子、音葉、解放された人質に刑事が話を聞くだろうから、情報を回してもらって」
久美子「了解」
のあ「だけど、疑問は残るわ」
ヘレン「犯人が何をしているか、それはわかっていない」
のあ「ええ。サンタクロースの隠し事、って何かしらね」
57:
23
清路警察署・刑事一課和久井班室
亜季「人質が解放されたでありますが」
美波「現場に向かいますか?」
留美「そうしましょう。準備を」
美波「わかりましたっ!」
留美「ただし、目的は人質に話を聞くことじゃない」
亜季「それならば、犯人確保でありますか」
留美「逃走経路を潰す手伝いは出来るでしょう」
美波「なるほどっ、車を回してきます!」
留美「お願いするわ」
亜季「興味本位でありますが、警部補殿は人質を解放した理由は何だと考えますか?」
留美「妄想だけれど」
亜季「それで問題ないであります」
留美「逃走時の迷惑事を防ぐため」
亜季「体調不良だと動画では言っておりましたが」
留美「それだけとは思えないわ」
亜季「む、ということは、犯人は事態が急変する可能性があると思っているでありますか?」
留美「私はそう考えてる」
亜季「それを引き起こすのは警察でありますか?」
留美「課長はそんな無能じゃないわ」
亜季「なら、その原因は何だと考えてありますか」
留美「さぁ?爆発するんじゃない、爆弾か人質か犯人かはわからないけれど」
58:
24
大型ショッピングモール・2階・メガネショップ
マキノ「人質にされた理由?」
雪乃「はい」
春菜「えっと、あれ?マキノさん、どうでしたっけ?」
マキノ「理由なんて聞いてないわ」
春菜「そもそも、トナカイに突然止められましたね」
マキノ「ええ。理由は一つ考えられるわ」
雪乃「お聞かせいただけませんか?」
マキノ「メガネを作らせるために、店員を残した」
春菜「はい、それしか考えられませんね」
マキノ「私達を残した理由なんて、今の所これぐらいしか考えられないわ」
雪乃「あの、お誕生日は聞かれませんでしたか?」
春菜「誕生日なんて聞かれてませんし、私達には何にも聞いて来ませんでした」
マキノ「貴方は聞かれたのかしら?」
雪乃「はい」
マキノ「ちなみにだけど、カウンターの財前時子の誕生日は4月18日よ」
雪乃「調べてますの?」
マキノ「趣味だもの。他に誕生日が理由の人はいるのかしら?」
雪乃「3階にいます、望月聖さんはクリスマスだそうですわ」
マキノ「変ね」
雪乃「変、でしょうか?」
マキノ「どうして、貴方が残されるのかしら」
春菜「そう言えば、私達は平気そうだから残されたと」
雪乃「私も平気そうだから、ではないのでしょうか」
マキノ「池袋晶葉ではなく貴方を明確に選んでるわ」
雪乃「あの、ということは」
マキノ「貴方が自分の知らない理由を持っているのかもしれない」
雪乃「わかりましたわ。他の人にも聞いてみますわ」
マキノ「……トナカイが見えないわね」
春菜「あれ、2階にはいませんね?」
マキノ「1階に集まってるわ。こっちに来なさい」
春菜「何か話してますね。あっ、こっちを向きました」
マキノ「向いたけれど、私達に興味はなさそうね」
雪乃「いったい何を話してるのでしょう……」
マキノ「解散したわ。私達も戻りましょう」
春菜「無駄に疑われたくはありませんからね」
雪乃「私は、1階に行きますわ。人質にされた理由を聞いてみますわ」
春菜「あっ、コメットさんが来ましたよ」
マキノ「ちょうど良かったわ」
59:
コメット「時間だ」
春菜「メガネ、出来てますよ」
コメット「確かに受け取った。メガネ屋、聞きたいことがある」
マキノ「お答えします」
コメット「店内は全て把握してるか?」
春菜「もちろんですっ!棚の奥まで全て!」
コメット「大した自身だな、信じるぞ」
春菜「どうぞ、信じてください!」
コメット「それと、お前」
雪乃「私、ですの?」
コメット「もう調べなくていい。なぜなら、時期にわかるからだ」
雪乃「え……?」
コメット「僕達には近づくな」
春菜「行ってしまいましたけれど」
雪乃「どういうことでしょう……?」
マキノ「サンタとトナカイは、何かを探してるの?」
雪乃「探してる?」
マキノ「集まっているということは」
春菜「なるほど、見つかってないということですか」
雪乃「何を、でしょう」
マキノ「それは……わからないけれど」
春菜「メガネも取りに来ましたし」
マキノ「時間はなさそうね」
60:
25
幕間
大型ショッピングモール・1階・エスカレーター付近
イヴ「ふふふん、ふふふん、ふふふふふーん♪」
ブリッツェン「……」
イヴ「ブリッツェン、こっちをじっと見てどうしたんですかぁ?」
ブリッツェン「っと、悪い、ホントいい顔で笑うよなって」
イヴ「見てもいいことありませんよ?獣と人間は違うんですよぉ?」
ブリッツェン「テ口リストなんかじゃなくて、本当にサンタだけをやりゃあいいのに」
イヴ「サンタは誰も救えませんよ。ねぇ……わかるでしょ、ブリッツェン」
ブリッツェン「わかっちゃいるけど、さ」
イヴ「警察もですよねぇ」
ブリッツェン「……そうだな」
イヴ「ブリッツェン、最期までがんばりましょうねぇ」
ブリッツェン「付いて行くさ、最期まで」
イヴ「今年こそは、皆が幸せなクリスマスだと良いですねぇ」
ダンサー「師匠!」
ダンサー
トナカイの一人。失意の時に、目指せ一攫千金!とスカウトされたらしい。
61:
イヴ「ダンサー、師匠じゃなくて、サンタですよぉ」
ダンサー「そうでしたッ!」
イヴ「ダンサー、連れてきましたかぁ?」
ダンサー「もちろんッス!」
小春「サンタさん、こんにちはぁ」
イヴ「ようこそ、お越しくださいましたぁ」
ありす「私達に何か、ご用ですか」
イヴ「うふふ、大丈夫ですよぉ」
ありす「な、なにをするつもりですか!?」
ダンサー「とって食べたりしないッスよ」
イヴ「お二人は、3階に移動してください」
小春「わかりましたぁ」
ありす「え、素直過ぎです……小春さん、待ってください。理由を聞かないんですか?」
ブリッツェン「理由を教えるか?」
イヴ「危ないからですよぉ、いいですね?」
小春「はぁい。靴屋さんをありすちゃんと一緒に見に行きます?」
ありす「危ないって……」
ダンサー「言った方が良いと思うッス」
ブリッツェン「そうだな。ペットショップは正面入り口に近い」
イヴ「私達のソリもありますよぉ」
ブリッツェン「警察が突入するか、もしくは」
イヴ「私達の爆弾が爆発するかもしれないので、離れてください」
ありす「明確に言われるのも困りますね……」
小春「ありすちゃん、本当ですよぉ。ケガしないように言ってくれてるんですぅ」
ありす「……わかりました」
イヴ「ありがとうございますぅ。エスカレーターで上がってくださいねぇ」
ブリッツェン「イヴ」
イヴ「ダンサーは探索に戻ってください?、どうしました、ブリッツェン?」
ブリッツェン「バレンタインの姉ちゃんが降りて来た。どうする?」
イヴ「小春さん達の方を見てるので、心配で様子を見に来たんでしょう」
ブリッツェン「お引き取り願うか?」
イヴ「うーん、決めましたぁ。一緒にお話しします」
ブリッツェン「わかった」
イヴ「ブリッツェン、ルドルフはどこですかぁ?」
ブリッツェン「あそこだ」
イヴ「相談を始めてくださいねぇ。情報は入ってますよね?」
ブリッツェン「ああ。覚悟は決めておく」
イヴ「行ってきますぅ?。財前さん?、一緒にお話ししましょう?」
ブリッツェン「……さて、『鬼神』様にお伺いでもたてるとするか」
幕間 了
62:
26
大型ショッピングモール・1階・インフォメーションカウンター前
雪乃「小春さん達は上に行ってしまいましたわね……」
イヴ「雪乃さん、こっちへどうぞ?」
雪乃「何故、呼ばれてるのでしょう……」
時子「雪乃、こっちに来なさい」
イヴ「どうぞどうぞ?」
雪乃「財前様、どういたしましたの?」
時子「このサンタに付きまとわれてるの」
イヴ「お話しましょう!」
雪乃「急にどうして……?」
時子「私が知るわけないでしょう」
イヴ「さぁさぁ」
雪乃「……わかりましたわ」
時子「ハァ?」
雪乃「断ることは出来ないはず、ですわ」
イヴ「やっぱり、雪乃さんはわかってますねぇ。さて、あそこの二人も呼びましょう?」
雪乃「行ってしまいましたけれど」
時子「帰ってくるわね、面倒だわ」
雪乃「あの、財前様」
時子「どうしたの」
雪乃「サンタクロースはお仕事を終えてますわ、おそらく」
時子「トナカイ達に働かせて、自分はお喋り。気楽な身分ね」
雪乃「戻って来ましたわ」
イヴ「宮本さんと中野さんもオーケーですぅ。ほら、早く?」
有香「押忍、でいいんでしょうか……」
フレデリカ「わかんないけど、いいんじゃない?」
イヴ「みなさん、集合しましたねぇ。行きましょう?」
雪乃「どちらに、ですか?」
イヴ「2階のカフェに行きましょう?」
有香「1階にも座る場所はありますけれど」
イヴ「行きたいから行くんですよぉ?」
時子「……」
イヴ「ダッシャー、オヤツをあげますから、一緒に来てください?」
63:
27
大型ショッピングモール・正面駐車場入り口付近・警察対策本部
亜季「警部補殿、こちらを」
留美「資料ね」
美波「想定される脱出プランとルートに」
亜季「交通封鎖を準備している地点が示されているであります」
留美「フムン……新田巡査、感想は」
美波「私達の想定をほぼ同じです」
留美「私達が出る幕はなさそうね」
亜季「せっかく現場に出張ってきましたのに」
留美「大人しく降伏してくれないかしら」
美波「それは、考えにくいですね」
亜季「警部補殿、もしも警察の網を破るとしたら」
留美「脱出経路は少ないわ。正面か裏の駐車場を突破するか、もしくはあそこ」
美波「屋上駐車場の出口、ですか?」
留美「表と裏にある戦闘車を手放すとは思えないけれど、屋上に備えている可能性はあるわね」
亜季「なるほど。では、仮にここを突破したとしたら」
留美「どうやって逃げるか?」
亜季「その通りであります。警察は十二分に揃ってるであります」
留美「例えば、狭い路地を使うとかね。人数も多いわ、別行動は厄介ね」
美波「なるほどっ」
瀬名詩織「でも……それには条件があります」
瀬名詩織
いわゆる白バイ隊員。美しいと評判の白バイ乗り。
美波「瀬名さん、お疲れ様ですっ!」
亜季「待機でありますか?」
詩織「はい……もしもの時は犯人を追います」
64:
留美「それで、条件とは」
詩織「土地勘が優れた人間が必要です……」
亜季「そう言えば、彼らは日本国外でほとんど活動してるのでありましたな」
留美「つまり、どういうことかしら」
詩織「おそらく、強硬手段に出ると思います」
留美「それが一番大変ね。そうではなく、個々での、そうね、バイク等で逃亡した場合は」
詩織「問題ありません……」
亜季「問題ない?」
詩織「バイクならば、土地勘のない人間を袋小路に追い詰めるなど簡単です……」
留美「大した自身ね、猟犬みたい」
詩織「誇りがなければ……白バイには乗れませんから」
美波「わぁ、凄いですねっ!」
亜季「うむうむ、感服したであります」
詩織「柊課長によろしくとお伝えください」
留美「ご健闘を」
詩織「失礼します……」
亜季「犯人、何時どうやって動くでありましょうか」
留美「わからない。だから、準備をしておくだけよ」
65:
28
清路市立図書館・玄関前
清路市立図書館
清路市が運営する図書館。蔵書ももちろんだが、自習室や会議室が多くあり便利。
まゆ「もしもし、のあさん、今お電話大丈夫ですかぁ?」
のあ『もちろんよ。どうしたのかしら?』
まゆ「夕ご飯の時間なので、お勉強は終わりにしたんです」
のあ『ごめんなさい、もうそんな時間なのね』
まゆ「まだお仕事中ですかぁ?」
のあ『ええ。家は大混雑ね』
まゆ「それなら、ゆっくり時間を潰してから帰りますねぇ。まゆ、得意ですよぉ」
のあ『……いいえ、帰って来なさい。まゆも助手だから、ここにいても問題ないわ』
まゆ「ふふっ、もちろんですよぉ。お夕飯のお買い物をしてから、帰りますねぇ」
のあ『菜々、志保、夕飯をお願いしても。ええ、ありがとう』
まゆ「菜々さんと志保さんがいるんですかぁ?」
のあ『今日は代わりに家事をしてもらうわ。まゆ、まっすぐ帰って来なさい』
まゆ「わかりましたぁ」
のあ『本当は迎えに行けるといいのだけれど。お友達によろしく、と伝えて』
まゆ「はぁい。お仕事がんばってください」
のあ『ええ。待ってるわ』
高森藍子「高峯さん、忙しそうでした?」
高森藍子
まゆのクラスメイト。課題はすぐに終わったが、この時間までまゆに付き合ってくれた。
66:
まゆ「お待たせしましたぁ。私も家に帰ります」
今井加奈「良かった」
今井加奈
まゆのクラスメイト。メモとスケジュールは大切です!
まゆ「こんな時間まで付き合ってくれて、ごめんなさい」
加奈「謝ることないよ、ねっ、風香ちゃん?」
浅野風香「うん。皆と一緒に図書館で遊ぶことなんてないから」
浅野風香
まゆのクラスメイト。読書好き。自分でも小説を書いていることは今井加奈しか今の所知らない。
まゆ「ありがとう」
加奈「あっ、バスの時間!行こう、風香ちゃん」
風香「ま、待って。またね、まゆちゃん、藍子ちゃん」
藍子「またね。今度は学校かな」
まゆ「ばいばい……」
藍子「まゆちゃん、私達も帰ろう?」
まゆ「うん、藍子ちゃん」
67:
29
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
雪乃「あの……」
ダッシャー「あ?」
ダッシャー
トナカイの一人。粗暴な口調と態度だが、イヴの命令には従っている。
雪乃「お座りになってはいかがでしょうか。お飲み物もご用意しましたわ」
ダッシャー「いらねェよ。アンタ、オレ様が戦闘中なの忘れてねェか?」
雪乃「わかってはいますわ」
イヴ「ダッシャー、座っても良いですよぉ?」
ダッシャー「一歩遅れたら、命を取られる。終わるまで休むつもりはねェからな」
イヴ「ダッシャーは、いつも真面目ですねぇ」
有香「真面目……なのでしょうか」
時子「私にはそうは思えないけど」
イヴ「雪乃さん、こっちへどうぞぉ」
雪乃「はい」
イヴ「みなさ?ん、チョコレートドリンクは持ちましたかぁ?」
フレデリカ「お代は貰ってるから、遠慮しないでいいよー」
有香「押忍、こんなオシャレで甘そうな飲み物は緊張します」
時子「この状況に緊張しなさいよ……」
イヴ「それでは、かんぱ?い」
雪乃「えっと、乾杯?」
イヴ「うーん、美味しいですぅ」
フレデリカ「どうかな?」
時子「……あら」
有香「私はあまり飲んだことがないので自信がないですけど」
時子「良いじゃない。ギドギドに甘くして味を誤魔化すものだと思ってたわ」
フレデリカ「でしょー、フレちゃん、バイト選びのセンスある?」
時子「貴方もそんなに怯えてないで飲みなさいよ。辛気臭さは味が落ちるわよ」
有香「押忍、やっぱり美味しいんですね」
雪乃「ええ」
イヴ「それじゃあ、自己紹介からしましょうか?」
時子「……なんでもいいけれど」
イヴ「それじゃあ、誰から始めましょうかぁ?」
有香「……ドキドキします」
フレデリカ「それって、ワクワクそれともビクビク?」
有香「どちらでしょう、わかりません……」
68:
時子「テ口リストの親玉と同じテーブルにいるのがそもそもオカシイわ」
イヴ「決めました?、やっぱり言い出しっぺからですよね?」
有香「そ、そうですか」
イヴ「その前に名前だけは皆で言いましょう。私はイヴ・サンタクロースですぅ。次の人、どうぞ」
有香「お、押忍。中野有香、18歳です」
ダッシャー「オマエ、18なのかよ。中坊だとばっかり」
有香「な、確かに背も低いですが」
イヴ「ダッシャー、失礼ですよ。こんなにカワイイのに?」
有香「フォローしてません、よね……」
フレデリカ「宮本フレデリカだよー。下のチョコレートショップでアルバイトしてるんだ」
時子「財前時子よ。ここの職員よ、これでも」
雪乃「相原雪乃ですわ。小さな喫茶店をやっておりますの」
イヴ「それでは、私から自己紹介をしますぅ。質問はいつでもどうぞぉ」
有香「聞いておかないと、よし……あ、あの!」
イヴ「さっそく質問ですかぁ?せっかちさんですねぇ?、どうぞ?」
有香「本名なのですか?」
イヴ「もちろんですぅ?」
時子「サンタクロースは、セントニコラウスが訛って行ったと聞いたことがあるわ」
フレデリカ「そうなの?苗字じゃなかった?」
時子「苗字として名乗るには、酔狂すぎるでしょう」
イヴ「名乗るべき、立派な名前じゃないですかぁ」
雪乃「それはそうですけれど……」
イヴ「私はサンタクロースですよぉ。産まれた時からずっと、今もですぅ」
有香「サンタクロースというお仕事なのですか?」
イヴ「はい。サンタクロースの仲間達には色々な仕事があるんですよぉ」
雪乃「そうなのですか?」
69:
イヴ「はい。世界中の良い子達へお手紙を返したり、プレゼントの資金を調達したり、プレゼントを寄付してもらったり、サンタクロースのお話を伝えたり、ケーキを作ったり、トナカイを保護したり、イベントに参加したり、色々ですぅ」
フレデリカ「そうなんだ、会社みたいだねー」
有香「サンタも大変なんですね」
イヴ「皆の笑顔が見れるのは楽しいことですからぁ、大変じゃありません?」
フレデリカ「じゃあ、サンタの何のお仕事をしてたの?」
イヴ「主にはプレゼントを選んで配るお仕事ですよぉ。世界中に行きましたぁ?」
雪乃「財前様……聞くチャンスでしょうか」
時子「無碍にはしないでしょう、おそらく」
イヴ「雪乃さん、どうしましたか??」
雪乃「質問してもよろしいですか」
イヴ「もちろんですぅ」
雪乃「その……ご配慮が足らない質問でも」
イヴ「どうぞぉ、隠し事なくお話をするっていいですよねぇ」
雪乃「サンタクロースが人質をとって、立てこもり事件を起こす理由がわかりませんわ」
有香「え……」
イヴ「……」
雪乃「テロ行為と爆弾を配ることは、私にはサンタの仕事とは思えませんわ」
時子「……雪乃、思い切りが良すぎるわよ」
ダッシャー「おい、サンタ」
イヴ「ダッシャー、問題ないですよぉ。お話すると決めたのは、私ですからぁ」
ダッシャー「……」
イヴ「私が駆け出しのサンタだった頃、こんなことがあったんですよぉ」
70:
30
高峯探偵事務所
真奈美「鷹富士神社周辺での事件が気になるのか?」
ヘレン「ええ」
のあ「爆弾は佐藤心が製造したもの、だったわね」
ヘレン「その通り。のあ、爆弾の三要素は?」
のあ「三要素?」
ヘレン「その三要素で、使う側を縛るのよ」
菜々「ただいま戻りました!」
のあ「雪乃の実家に何か連絡は」
菜々「誰からもありませんでした」
のあ「そう、一安心ね」
菜々「マスターから何か連絡はありましたか?」
真奈美「今の所はない」
のあ「もしかしたら、連絡できない状況なのかしら」
志保「大丈夫だといいんですけど……」
のあ「三要素についてだけど」
ヘレン「回答を」
のあ「爆弾を提供する側が制限するものね。それならば、材料、製造法、それと」
ヘレン「わかっているようね。最後は起爆装置」
真奈美「フム。どれかが欠けてもいけないのか」
のあ「佐藤心の場合は」
ヘレン「彼女は製造法を知っていたわね」
のあ「でも、材料の調達経路は不明」
真奈美「製造法については、あのサンタからなのか?」
ヘレン「ええ。製造法を教えられた人物は少ないでしょうね。そもそも、教えられて誰もが出来るものじゃない」
のあ「佐藤心は、残念だけど、器用だったものね」
真奈美「製造法を知っていても、材料がなければ成立しない」
のあ「材料があっても、佐藤心もいない以上はそう簡単には爆弾は増やせない」
真奈美「完成した爆弾を手に入れるという手段もあるが」
のあ「起爆装置がなければ、利用すらままならない」
久美子「なるほど」
ヘレン「爆弾を直接手に入れた人物は、その実は操られている」
音葉「サンタクロースに、ですか……?」
71:
ヘレン「佐藤心が製造していたもので、気になるものが一つ」
のあ「何かあったかしら?」
ヘレン「爆弾ではないもの」
真奈美「爆弾じゃない?」
のあ「空き地」
音葉「発火装置が……ありました」
ヘレン「その通り。爆発事件では追いきれなかった」
真奈美「確かに、爆発事件は最近聞かないな」
のあ「ヘレン、次の指針は」
ヘレン「音葉、久美子、小火や不審火についてデータを頂戴。プレゼントの在りかを追うわ」
72:
31
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
イヴ「いつものようにプレゼントを配ってたんですよぉ」
雪乃「……」
イヴ「でも、誰も喜んでくれませんでした。中野さん、どうしてでしょう?」
有香「えっと、好みのプレゼントじゃなかったから……なんて贅沢でしょうか」
イヴ「正解ですよぉ。私のプレゼントは求められていませんでした」
雪乃「……」
イヴ「どうして、と聞いてしまいました。サンタは子供の前に姿を現してはいけないのに、です」
フレデリカ「……」
イヴ「簡単だったんですねぇ。オモチャやお菓子は欲しくても、喜べないだけだったんですぅ」
雪乃「それは、どういうことでしょうか」
イヴ「だから、世界を変えてくれる爆弾を配らないといけないんですよぉ」
時子「……そんなわけ、ないでしょうが」
イヴ「子供達は未熟だけど、愚かじゃありません」
ダッシャー「……」
イヴ「愚かじゃないから、私のおためごかしにも気づいてたんですねぇ……」
雪乃「……」
イヴ「その日だけは幸せでいて欲しいなんて、サンタクロースのワガママだったんです」
時子「……世知辛いサンタね」
イヴ「本当に穏やかなクリスマスには何が必要か、私は決めました」
雪乃「それが、爆弾なのですか」
イヴ「皆が幸せになれるクリスマスを、それが私の使命です」
有香「……爆弾で幸せになれる、のでしょうか」
イヴ「幸せな高台から優しい歌が聞こえたって、あの子達は幸せになれませんよ」
有香「いえ……そんなつもりで言ったわけでは……」
73:
イヴ「もうこれまでの誰かが責任を取ってくれないなら、私がやるんですよ?」
雪乃「他のサンタクロースもそれを望んでいますの?」
イヴ「そもそも、恵まれない人を救う聖人が私達なんですよぉ」
時子「聖人、ねぇ……」
イヴ「暴力で救える人がいるのなら、それが使命なんですぅ」
フレデリカ「……」
イヴ「今も昔も皆のために、穏やかなクリスマスのためにがんばってるんですぅ」
雪乃「私達のため、ですの?」
イヴ「本当ですよぉ。でも、この国は良いんです」
時子「良いって、何がよ」
イヴ「この国は爆弾を必要としてる人が少ないんですぅ」
有香「必要としてる人なんて、いるんでしょうか」
イヴ「いるんですよぉ。だから、私がここにいるんです」
時子「貴方がいなければ、こんなことにはなっていないじゃない」
イヴ「なら、このショッピングモールごと爆破されて夏休みの子供達が被害にあっても良かったんですかぁ?」
有香「え?」
時子「待ちなさい、何を言ってるのかしら」
イヴ「質問しますねぇ」
有香「質問、ですか?」
イヴ「最後の爆弾、どこにあるんですかぁ?」
74:
32
高峯探偵事務所
ヘレン「掴んだわね」
久美子「これは、私でも見える。みんな、画面を見て」
真奈美「何かわかったのか?」
久美子「音葉ちゃん、さっきの画面出して」
音葉「はい……こちらです」
のあ「地図」
真奈美「この辺りだな」
音葉「これに……爆発事件と不審火を重ねます」
菜々「大きいのが何個かあるんですね」
志保「テレビで見ました、凄い火事でしたよ」
のあ「渋谷生花店と鷹富士神社の多発事件は除きましょう」
音葉「はい……」
のあ「これだけではわからない」
ヘレン「音葉、さっき言ったものを表示なさい」
音葉「はい……どうぞ」
菜々「あれ?」
志保「このビルに印が付いてます」
菜々「あっ、マスターの自宅にも!」
真奈美「後は、今事件が起こっているショッピングモールにもか」
久美子「見てわかる通り、人質の勤務場所と住所。学生は学校も」
音葉「ここだけの秘密です……」
真奈美「高峯ビルの周りは特に事件はないな」
のあ「事件が起こってるショッピングモール、そこから北側と南西側」
ヘレン「その意味は」
音葉「線で結びます……」
のあ「この3角形の周辺で不審火が発生しているでしょう」
久美子「私でもそう見える」
ヘレン「サンタクロースは顧客との接触を嫌っていたわ」
のあ「北側は専門学校かしら」
真奈美「南西側はただのアパートだな」
ヘレン「仲介者がいるのなら、なおのこと爆弾の所有者も特定しにくい」
のあ「もしかして、同じ人物?」
ヘレン「そうよ、ディテクティブ」
のあ「相原雪乃が残された理由も」
ヘレン「そうでしょうね」
真奈美「この専門学校に通って、アパートに住んでいて、ショッピングモールに通う……いや、違うな」
菜々「働いていてる、ってことですか」
志保「アルバイトとか」
真奈美「なるほど、それだ」
75:
音葉「え……!」
久美子「音葉ちゃん、どうしたの?」
音葉「久美子さん……見てください」
のあ「ヘレン、この点は」
真奈美「フランス語学校みたいだな」
のあ「それで、雪乃と誕生日が同じ人質はいるのかしら」
ヘレン「いるわ」
のあ「それなら、彼女がサンタクロースの目的よ」
真奈美「誰だ?」
ヘレン「宮本フレデリカ」
のあ「彼女が爆弾を利用しているなら」
真奈美「冷房の理由も、立てこもりの理由も、人質の理由も説明がつく」
ヘレン「冷房は万が一の誤動作を防ぐため」
のあ「立てこもりの意味は逆。人を近づけさせないため」
真奈美「人質は警察を近づかせないためと」
ヘレン「爆弾を与えた人物の動きを封じるため」
のあ「見えてきたわね」
久美子「音葉ちゃん、相手は悪趣味みたいね……」
音葉「本当に……」
久美子「ヘレン、ちょっと聞いて!」
ヘレン「冷静に。報告なさい」
久美子「ショッピングモールのシステムにアクセスしてるハッカー、いたでしょ」
音葉「監視カメラの映像を一台だけ、アクセスできるようにしてきました……こちらを」
志保「マスター!?」
久美子「加えてサンタと」
菜々「さっきのあさんが言ってた人が!」
のあ「なんで、一緒に座ってるのかしら……」
真奈美「あまり良いムードには見えないな」
ヘレン「サンタと宮本フレデリカから離れさせるわ」
久美子「どうやって?」
のあ「ヘレン、電話をかけるわ」
ヘレン「こちらの情報が漏れるのは構わない。許可するわ」
のあ「わかったわ。出なさい、雪乃……」
76:
ヘレン「久美子、音葉、警察に連絡を」
久美子「わかったわ」
真奈美「サンタは接触を良しとしていなかったはずだ、なのに」
音葉「もう、同じ席についています……」
ヘレン「サンタとトナカイが動く、その時まで猶予はないわ」
77:
33
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
時子「最後の爆弾を私達に聞くわけ?」
有香「さっぱり、意味がわからないのですが……」
時子「貴方達が爆弾を設置したんじゃないの?」
イヴ「私は用途を決めないんですぅ。雪乃さーん?」
雪乃「はい?」
イヴ「着信がありませんかぁ?」
雪乃「え……その」
イヴ「どうぞ、出てください?」
有香「外と連絡を取っていたのですか?」
イヴ「そうみたいです?」
雪乃「……わかりました。失礼します。もしもし」
のあ『雪乃、今すぐそこから離れなさい』
雪乃「そうもいきませんわ」
イヴ「お電話を変わってくれますかぁ?」
雪乃「お電話を変わって欲しいと」
のあ『変われと?』
イヴ「選択肢はありませよ?」
雪乃「ああ!」
イヴ「こんばんは?、ヘレンさんですかぁ?」
のあ『はい?』
78:
イヴ「あれ、そろそろ出てくる頃なのに。でも、関係者ですよね?」
のあ『否定はしないわ』
イヴ「警察さんじゃないみたいですねぇ。私達の目的はわかりましたかぁ?」
のあ『わかったわ。目的は爆弾の解体』
時子「雪乃、電話の相手は」
雪乃「喫茶店のビルのオーナーさんですわ」
イヴ「正解ですぅ。爆弾は残り一つになりましたぁ」
のあ『終わって、ないの?』
イヴ「電話の向こうが騒がしいですねぇ。そうですよ?」
のあ『なら、雪乃を解放なさい』
イヴ「どうして?」
のあ『犯人がそこにいて、爆弾もそこにある可能性が高いから』
イヴ「後半はどうしてそう考えたんですかぁ?」
のあ『犯人がまったく動かないこと、手元かそれに類するところにあると考える』
イヴ「同じ意見ですぅ」
のあ『だから、犯人から離れさせなさい』
イヴ「それはどなたですかぁ?」
のあ『宮本フレデリカ。まだ人質のままでしょう』
イヴ「さすがヘレンさんですねぇ。ブリッツェン?、チョコレートショップの探索は終わりましたかぁ?」
のあ『不用意な言動は辞めなさい』
イヴ「私達の爆弾は別にあるので、突入しないでくださいねぇ、ばいば?い」
のあ『待ちなさ……』
イヴ「通話終了ですぅ。雪乃さん、お返ししますねぇ。電源はオフにしておきましたぁ」
雪乃「あ、はい、ありがとうございます」
イヴ「ブリッツェン、そうですかぁ、ありませんでしたか?」
フレデリカ「……」
イヴ「宮本フレデリカさん、最後の爆弾はどこですか」
79:
有香「へ?」
フレデリカ「フーン」
時子「……」
イヴ「爆弾は何かを手に入れるためで、破壊するためじゃないんです」
フレデリカ「んー、どういうこと?」
イヴ「悪い子からは没収ですぅ?。返してください」
フレデリカ「でも、スイッチはここにあるよ?」
有香「え、ええ!」
ダッシャー「……」
フレデリカ「はいはい、みんなストップー」
時子「この状況で、留まれと?」
フレデリカ「どこに爆弾があるかわからないのに、動いちゃうの?」
雪乃「つまり……」
イヴ「ここにあるって、ことですよねぇ」
フレデリカ「そーゆうこと」
イヴ「交渉しましょうかぁ」
フレデリカ「交渉?」
イヴ「プランサー、準備を」
有香「プランサー?」
イヴ「プランサー、迅ですねぇ。さぁ、」
フレデリカ「ふんふん、なるほどねー」
イヴ「さてさて、命をベットしてもらいます」
フレデリカ「それは、そっちもだよ?」
イヴ「わかってますよぉ。さぁ、皆さんでお話しましょう?」
80:
34
高峯探偵事務所
菜々「ど!」
志保「う!」
菜々「しま!」
志保「しょう!」
久美子「この二人、実は余裕があるんじゃない?」
のあ「雪乃のケータイは取り上げられた」
真奈美「電源は」
のあ「切られた」
志保「犯人が近くにいるのに」
音葉「映像は見えていますが……」
久美子「何か話しているみたい」
真奈美「のあ、読唇術は」
のあ「画質が悪いわ」
菜々「なんとか連絡できる手段はないでしょうか……」
のあ「ヘレン」
ヘレン「サンタクロースが一度上を見たわ」
真奈美「上になにかあるのか?」
ヘレン「狙撃手」
のあ「スイッチを撃たなかった理由は?」
真奈美「人質の命を優先した」
ヘレン「そうでしょう」
久美子「ヘレン、サンタクロースのこと評価してない?」
ヘレン「しているわ。ルパン・ザ・サードという物語が日本にあるように」
志保「誰かを守りたいというのは、信じてもいいですか」
ヘレン「ええ」
久美子「ヘレン、何か隠してないかしら?」
ヘレン「今この場で話す必要はないこと」
音葉「……そうですか」
真奈美「だが、状況は変わった」
のあ「爆弾はもうひとつ、サンタクロースの手元はない」
真奈美「人質の中から犯人は出て来た」
久美子「起爆装置を奪うか」
ヘレン「爆弾の無力化は必須」
のあ「雪乃はもちろん、一緒にいる財前時子と中野有香の安全を確保したい」
真奈美「どうやって?」
81:
のあ「最後の爆弾、どこにあるのかしら」
真奈美「トナカイ達は見つけられてないぞ」
久美子「警察の突入は?」
ヘレン「止めてるわ」
菜々「止められるんですねぇ……」
ヘレン「犯人を自棄にするわけにはいかない」
志保「どうしましょう……」
真奈美「サンタを信じるか」
のあ「そういうわけにもいかない」
ヘレン「ディテクティブ、中に連絡する手段は?」
久美子「残った手段は、なにかある?」
音葉「いえ……」
真奈美「連絡を取って、何をするんだ?」
ヘレン「爆弾犯が設置する場所なら、サンタよりも知ってるわ」
真奈美「解体は、トナカイが出来るようだからな」
ヘレン「音葉のような耳が良い人物が良いわね」
久美子「このレベルは簡単にはいるとは思えないけど……」
音葉「褒められました……嬉しい……」
ヘレン「まだ間に合うわ」
のあ「……いるじゃない」
真奈美「どうした、のあ?」
のあ「連絡手段を取り上げられてない人物」
真奈美「誰だ?」
のあ「望月聖。3階にいるはずよ」
82:
35
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
イヴ「爆弾の在りかを教えてください」
フレデリカ「イヤだよー」
有香「で、ですよね」
雪乃「どうしましょうか……」
時子「残念だけど、出来ることなんてないわよ」
雪乃「さっきからずっとこの調子ですわ……」
時子「交渉は苦手ではなさそうだけれど」
有香「相手が悪い、と思います」
イヴ「そうですよねぇ。じゃあ、世間話にしましょう」
フレデリカ「うんうん、それがいいよ」
イヴ「どちらのお生まれですかぁ?」
フレデリカ「パリだよ?」
イヴ「フランス語は話せるんですかぁ?」
フレデリカ「ボンジュール、シルブプレ、アデュー♪」
イヴ「私の方が話せるくらいですね。皆さんはどうですか?」
雪乃「えっと……少しでしたら」
時子「旅行くらいは」
有香「なんだか、凄い人達ですね……」
イヴ「だから、語学学校に放火したんですかぁ?」
フレデリカ「なんの話か、フレちゃんわかんなーい」
イヴ「爆弾でなければ、あなたの場所は作れませんでしたか?」
時子「場所ね……」
イヴ「そんなことないはずです」
フレデリカ「……」
イヴ「皆さんはどうですか?大切な人はいますか?場所はありますか?」
有香「友達も道もあります」
時子「さぁね、他人にはわかるものでもないわ」
雪乃「私にも大切な従業員がおりますわ」
イヴ「どうですか?」
フレデリカ「パパとママは世界一だよ?」
イヴ「お友達はどうですかぁ?」
フレデリカ「とっても楽しいかも」
イヴ「ですよねぇ」
フレデリカ「うーん、だから、やっぱり、わかんないんだー」
雪乃「わからない……?」
83:
フレデリカ「どこをどう見ても宮本フレデリカに見えるかな?」
時子「見えるわ。一度顔と名前を覚えれば忘れない」
フレデリカ「でも、それっていいこと?」
イヴ「いいことですよぉ。あなたをあなただと絶対にわかってくれる人がいっぱいいるんですよぉ」
フレデリカ「もしかして、宮本フレデリカじゃない誰かにもなれたんじゃないかな?」
イヴ「誰か、ですか」
フレデリカ「最高じゃない日本人のパパと日本人のママから産まれてたら、もっと何にでもなれたかも」
イヴ「……」
フレデリカ「そう思うでしょ?」
時子「父も母も変えられないわ」
雪乃「そうですわね……」
フレデリカ「サンタさんは?サンタになること以外の夢を見れる子供になりたかったでしょ?」
イヴ「いいえ。私はサンタクロースです、それ以外の道はありません」
フレデリカ「バレンタインデーが誕生日だから、みんなチョコをくれるんだー」
有香「嫌いなのですか?」
フレデリカ「ううん、大好き。バレンタインのお姉さんは?」
雪乃「私、ですか」
フレデリカ「そう。バレンタインに産まれてなかったら、違った?」
雪乃「そうかもしれませんわね」
フレデリカ「チョコレートショップで働いてるなんてこと、なかったかも」
雪乃「……」
フレデリカ「ウーン、とね……その、つまり」
イヴ「自分を、嫌いになったのですか」
フレデリカ「そうかも。気づいたら、宮本フレデリカにしかなれない私がいたんだもん」
雪乃「……」
フレデリカ「わかんなくなっちゃった。わかんない、ここにいるワタシはなんだろ?」
イヴ「贅沢な悩みです」
フレデリカ「わかってるよー。だから、爆弾でいいんだ」
84:
イヴ「爆弾でいい、ってなんですか?」
フレデリカ「与えられたものがなくなれば、変われるかな、って」
雪乃「まさか……」
イヴ「爆弾は近くにあるんですかぁ?」
フレデリカ「うん」
イヴ「他の爆弾は隠されてはいましたが、比較的見つけやすい場所にありました」
フレデリカ「うんうん、本命は一つだから。フレちゃんは一途!」
有香「爆弾が近くに……」
イヴ「この場所で起爆させてもいいのですか?」
フレデリカ「もちろん。どれくらいの爆弾かは、サンタさんは知ってるでしょ?」
雪乃「最初から、自分を巻き込むつもりでしたの……」
イヴ「自分を自分たらしめるものを消すために」
フレデリカ「そうだよー。だから」
時子「辞めなさ……」
フレデリカ「押しちゃおっと。ポチっとな」
85:
36
大型ショッピングモール・2階・和風カフェ
ガシャーン!
雪乃「きゃっ……」
有香「……あれ?」
時子「無事なようだけれど」
イヴ「ダッシャー、お手柄ですぅ?、よしよし」
フレデリカ「あらら、スイッチが?」
ダッシャー「サンタが近くにいるのに撃つわけねェだろ。オレ様なら、そこらへんのカップで充分だ」
イヴ「スイッチは回収です?」
雪乃「助かりましたの……?」
イヴ「あれ?」
フレデリカ「ざんねーん、偽物でした?」
ダッシャー「チッ、ただのアホじゃねェのかよ!」
イヴ「そんな?、待ってください!」
フレデリカ「待たないよ?」
イヴ「そうだ、プレゼントをあげますぅ」
フレデリカ「悩みを解決できる?」
イヴ「それは難しいかもしれませんけど、お菓子ならありますよ?」
時子「ポケットからクッキーが出て来たけれど」
フレデリカ「いらなーい」
有香「他にはないんですか!?」
イヴ「それじゃあ、昔話とか。むかしむかし、あるところに」
フレデリカ「うん。もういいよね」
雪乃「ま、待ってくださいませ!」
フレデリカ「待つのは損。それじゃあ、今度こそ!」
有香「わっ……!」
86:
フレデリカ「あれ?」
ダッシャー「間に合った!」
イヴ「コメット、流石ですぅ」
ダッシャー「逃げるぞ、サンタ!」
フレデリカ「え、そんなぁ……」
イヴ「プレゼントをあなたにあげましょう?。顔をあげてください、宮本さんの娘さん?」
フレデリカ「どうして、どうしてさせてくれないの?」
イヴ「次のクリスマスを差し上げます。きっと、父と母が御導きくださるでしょう」
フレデリカ「……意味わかんない」
イヴ「ゆっくりお話してみてください、愛しのお嬢さん。ダッシャー!」
ダッシャー「おら、よっと!」
イヴ「さようなら?、メリークリスマス!」
有香「2階から飛び降りましたよ!?」
雪乃「無事みたいですわ」
有香「やはり、只者ではありませんね……」
フレデリカ「クリスマス……?」
時子「この子はなんか呆然としてるけど」
雪乃「そういえば、ケータイは……ありましたわ」
コメット「君達!」
雪乃「コメットさんですわ」
コメット「3階に上がれ、いいな!」
雪乃「えっと、どうしてですの?」
時子「行ってしまったけれど」
有香「メガネ屋さん達はエスカレーターで上に移動してますね」
マキノ「は……上……!」
雪乃「何か言ってますけれど……」
時子「マキノが焦ってるなら、急いだほうがいいわ」
有香「押忍!雪乃さん、行きましょう!」
フレデリカ「話……?」
時子「フレデリカ、行くわよ」
フレデリカ「なんで?」
時子「知らないわよ。貴方も助けようとしてたんだから、私がそれを辞める理由はないでしょうが!」
マキノ「追いついたわね!」
雪乃「何があるんですの?」
イヴ「ルドルフ!先陣を切ってください?」
マキノ「あいつら、脱出用の爆弾を1階で爆発させるつもりよ!」
87:
37
高峯探偵事務所
のあ「……」
真奈美「……」
志保「スイッチは押したのに……」
久美子「爆発しないということは」
菜々「間に合いましたぁ!」
志保「ナナさん、やりました!」
菜々「志保ちゃん、ナナ、涙が出てきそうです」
真奈美「ファストフード店の調理施設の中とは」
のあ「チョコレートショップの近く、真上だった」
久美子「なおかつ同じ設備があるのね」
音葉「しかも……温度が低い場所でした」
真奈美「宮本フレデリカは知っていたわけか」
のあ「だから、複雑な場所に隠すことができた」
音葉「素晴らしい耳でした……電話越しではわかりませんでした……」
ヘレン「グレイト。望月聖、礼を言うわ」
聖『どういたしまして……』
ヘレン「コメットというトナカイは」
聖『下に行っちゃった……』
久美子「脱出するつもりよね?」
音葉「そうだと思います……連絡を」
聖『ゲーム……続けていいかな……?』
のあ「ゲーム中毒は良くないわ」
真奈美「のあが言えることか?」
ヘレン「少しだけ我慢してちょうだい。また、会いましょう」
聖『うん……』
ニャーニガニャン……
のあ「雪乃から電話が来たわ。雪乃、無事かしら」
菜々「マスター、ご無事ですかぁ!?」
雪乃『大丈夫ですわ!それより、お知らせしたいことが』
のあ「言ってみなさい」
雪乃『脱出用の爆弾を爆発させるそうですわ!皆様と3階に避難しておりますの!』
ヘレン「私から警察に連絡するわ。久美子、対策本部につなぎなさい」
久美子「わかったわ!」
88:
ヘレン「屋上の脱出もないでしょう」
のあ「雪乃、人質は無事かしら」
雪乃『皆さんご無事ですわ』
のあ「もう少しだけ我慢してちょうだい。子供もいるようだから、皆を頼むわ」
雪乃『わかりましたわ。また、かけ直しますわ』
のあ「ええ」
ヘレン「正攻法でくるわ。爆発に驚かずに、冷静に対処を。日本のポリスなら出来るでしょう?」
ドーン!
菜々「爆発しました!?」
のあ「爆発音はどこから」
音葉「正面駐車場の装甲車です……囮だったのですね……」
真奈美「脱出経路は裏からか!」
久美子「警察は人員を移動中!」
ヘレン「サンタクロースは派手なギミックを好むわ。まだ、何かあるはず」
音葉「派手……」
真奈美「裏側の戦闘車からも出てこないぞ?」
のあ「まさか、こっちも?」
ドーン!
久美子「まさかのそうみたい!爆発したわ」
真奈美「表でも裏でもないなら」
音葉「裏の爆発も囮……本命は表側です」
久美子「あっ!」
のあ「敷地を区切る壁が壊れてるわね」
真奈美「しまった、別の道が出来たぞ」
音葉「動きました……見えますか」
ヘレン「トレーラー……やるじゃない」
真奈美「運搬用のトラックか?」
久美子「搬入口って、あんな場所にあるのね」
のあ「軒下ね、死角になってた」
ヘレン「爆破した壁を突破したわ」
真奈美「このままだと」
菜々「隣のパチ○コ屋さんに突っ込んでいかないですか?」
久美子「そうよね、それだと、あっ!」
ヘレン「最初の交通封鎖を回避する」
のあ「逃げ切れる自信がありそうね」
ヘレン「当然。何故ならこのヘレンが追うほどの大物なのだから」
89:
38
大型ショッピングモール・正面駐車場入り口付近・警察対策本部
亜季「おお、トレーラーが爆走しているであります」
留美「用意周到ね」
美波「警部補、どうしますか?」
亜季「追うでありますか?」
留美「追えないに決まってるでしょう」
美波「そうですか……」
留美「テロ対策班は?」
美波「ショッピングモールに突入準備中です」
亜季「その後、安全確認」
留美「了解。安全確認後に私達も中へ」
亜季「戦闘車は燃えているでありますが」
美波「燃え移ってはいないようです、安心しました」
留美「2台も無駄に出来るなんて、資金が潤沢なのかしら」
美波「犯人のトレーラー、止まったみたいですっ!」
亜季「テレビ局のヘリからの映像があそこに」
留美「トレーラー、後ろが空いてるわ」
亜季「つまり、瀬名殿の言う通り」
美波「分かれて離脱しました」
留美「バイクね、白バイ隊員に期待しましょう」
美波「はいっ、あっ、見えましたっ!」
亜季「既に一台は先行してるでありますな」
留美「しかも、路地裏。ルドルフは、赤鼻で道を照らすトナカイだものね」
美波「そんなところまでなぞらえて……」
留美「赤鼻のトナカイを、このために雇ったのなら」
亜季「この周辺を知っている人物の可能性が高いと」
留美「そういうことね」
美波「警部補、安全確認を開始したそうです」
留美「さて、やるべきことをやりましょうか」
亜季「了解であります」
美波「わかりましたっ」
90:
39
高峯探偵事務所
久美子「あらら」
ヘレン「フッ……」
真奈美「逃げ切り濃厚だな」
のあ「そのようね」
久美子「最初のトレーラーで大勢は決まってた」
真奈美「後は二輪車で各自逃走」
久美子「ルートは決めてあったのかしら」
真奈美「そうだろうな」
のあ「どれがサンタクロースだったのかしら?」
真奈美「わからない」
久美子「このバイク、もう乗り換えたのかしら?」
ヘレン「でしょうね」
のあ「事故とかはあるのかしら?」
音葉「報告ありません……」
ヘレン「爆弾の利用は」
久美子「ないみたい」
真奈美「正々堂々と逃げ切ったな」
音葉「ショッピングモールのシステム……解放されていますね」
ヘレン「高峯のあ」
のあ「ヘレン、何かしら」
ヘレン「この調査室は役目を終えたわ」
のあ「そう」
ヘレン「ヘレンの仕事は遂行されたわ」
真奈美「人質は無事だった」
久美子「被害は最小限に抑えられた」
のあ「目的は明らかになった」
ヘレン「解散としましょう。感謝するわ、のあ、真奈美」
のあ「どういたしまして」
ヘレン「それと、菜々と志保も」
菜々「いえ、お礼を言うのはこちらです」
志保「ありがとうございました!」
のあ「サンタクロースはどうするの?」
ヘレン「いつかまた会うわ、その時に」
真奈美「出てくるだろうな」
ヘレン「のあ、慈善事業はしているかしら」
のあ「しているけれど」
ヘレン「サンタと名乗る必要はないわ」
のあ「言いたいことがわからない」
91:
ヘレン「人を救う聖者のやり方なんて、幾らでもあるでしょう」
のあ「結論だけ言ってちょうだい」
ヘレン「近くにいるわ」
のあ「サンタクロースが?」
ヘレン「久美子、音葉、警察署へ戻りましょう」
久美子「わかったわ」
音葉「わかりました……」
ヘレン「最後に言っておくけど」
のあ「何か」
ヘレン「別にサンタだけを追ってるわけじゃないの。ヘレンの使命は多いのよ」
のあ「そんなこと思ってないけれど」
ヘレン「グッドラック」
久美子「あ、待って」
のあ「……」
菜々「行ってしまいましたねぇ」
志保「はい」
真奈美「なぁ、のあ」
のあ「どうしたの?」
真奈美「やっぱり、見逃してないか?」
のあ「誰が何を?」
真奈美「ヘレンがサンタクロースをさ」
のあ「かもしれないわね。でも、探偵には関係ないこと」
真奈美「そうかもしれないが」
のあ「私の依頼者は?」
真奈美「そこの二人だ」
のあ「雪乃を迎えに行きましょうか」
真奈美「そうだな。車を用意してくる」
菜々「それなら、ナナ達も」
のあ「真奈美と私で行ってくるわ。あなた達にはお願いを」
志保「お願い?」
のあ「食事の準備を」
菜々「もちろんですっ!」
志保「満腹至極フルコォスでご用意しますっ」
のあ「お願い。それにしても……」
菜々「何かリクエストでも?」
のあ「まゆ、遅いわね。帰ってきたら、出迎えてあげて」
志保「わかりました、マスターのことお願いします」
のあ「ええ」
92:
40
大型ショッピングモール・3階・メインロード
留美「店内に破壊された様子はなし」
亜季「空調は元通りのようでありますな」
美波「警部補」
留美「人質と話せそうかしら」
美波「一人を除いて」
留美「宮本フレデリカ?」
美波「はい。連れていかれてしまいました」
亜季「捜査官殿によると犯人グループと繋がっていたとか」
留美「いずれにせよ、詳細はこれからね」
ありす「あの……」
留美「新田巡査、こちらの方は?」
美波「橘さんです。お話を聞いても大丈夫だそうです」
ありす「刑事さんですか?」
留美「刑事一課の和久井です」
亜季「同じく大和であります」
留美「どうなさいましたか?」
ありす「イヴ・サンタクロースから、刑事さんに渡してほしいと言われました」
留美「そのバッグに?」
ありす「はい。少し重いのですけど」
亜季「爆弾でありますか?」
ありす「それじゃないと言ってました。紙だと思います」
留美「紙ね……大和さん、開けてみて」
亜季「了解であります。橘殿、お借りするであります」
留美「体調は大丈夫かしら?」
ありす「問題ありません。他の人も大丈夫です」
留美「サンタは刑事に渡してほしいと言ってたのかしら?」
ありす「はい。警察官、特に刑事さんに渡してほしいとか言ってました」
留美「理由については」
ありす「言ってませんでした」
亜季「警部補殿」
留美「何だった?」
亜季「メモがあります。どうぞ」
美波「ふむふむ……へ?」
93:
留美「寄付だそうよ」
ありす「寄付、ですか?」
亜季「中身は確かに紙でありますな、ただし現金であります」
ありす「お金だったんですか?」
留美「理由はわからないけれど」
美波「賠償金のつもりでしょうか?」
留美「さぁ」
亜季「どうするでありますか?」
留美「警察で適切に判断するわ。橘さん、ご協力感謝します」
ありす「どういたしまして……光栄です」
留美「後は警察の仕事よ。聴取の段取りは?」
美波「今日は連絡先と簡単な聴取だけとのことです」
留美「よくがんばったわね。今日はゆっくりお休みなさい」
ありす「そ、そんな、別に褒められなくても良いです」
留美「褒められるだけに値する行動を取ったわ、だから素直に受け取って」
雪乃「あら、和久井様」
留美「お疲れ様、体調は大丈夫かしら?」
雪乃「大丈夫ですわ。お気遣いありがとうございます」
留美「それは良かった。帰りはどうするの?」
雪乃「のあさんと真奈美さんが迎えに来てくださいますわ」
留美「そう、なら安心ね……あの子は?」
聖「?♪」
雪乃「望月聖さんですわ。爆弾を見つけてくれましたの」
亜季「聞いているであります」
雪乃「ずっとゲームをしてますけれど、彼女も元気ですわ」
留美「みくにゃん?」
亜季「はい?」
留美「……まぁ、いいわ。大和巡査部長、新田巡査」
美波「はいっ」
留美「異常もないようだから、さっさと終わらせましょう」
亜季「了解であります」
留美「相原さん、落ち着いたら喫茶店に行くわ」
雪乃「まぁ、ぜひお待ちしておりますわ」
94:
41
幕間
とある路地裏
ルドルフ「あの白バイ諦めたかな、おっと!」
詩織「そこのバイク、止まりなさい」
ルドルフ「やれやれ、これはお手上げだね。ほら、止まったよ」
詩織「ルドルフと呼ばれていたトナカイですね……?」
ルドルフ「そうだよ」
詩織「与えられた任務は」
ルドルフ「逃走手段を考えて、皆を逃がすこと。成功したかな」
詩織「その通りですね……あなたがここにいること以外は」
ルドルフ「でも、俺はこれ限りだよ?情報もほとんど持ってないし」
詩織「わかっています……ですが、追った理由があります」
ルドルフ「理由なんてあるかな」
詩織「一番良いドライバーでしたから」
ルドルフ「え、勝負したいから追って来たの?」
詩織「私は……勝ちましたね?」
ルドルフ「うん、完敗だった。振り切れそうもなかった」
詩織「それで……満足です。失礼します」
ルドルフ「見逃すということは、誰かと繋がってる?」
詩織「さようなら……帰りは法定度遵守をお願いします」
ルドルフ「助かっちゃったけど……やっぱり、悪いことなんてしないほうがいいね」
幕間 了
95:
42
高峯探偵事務所
まゆ「遅くなっちゃいました……」
菜々「まゆちゃん、お帰りなさいませ!」
まゆ「菜々さん、ただいま帰りましたぁ」
菜々「遅かったですねぇ、寄り道でも?」
まゆ「藍子ちゃんと歩いて帰ったら、こんな時間になっちゃいました」
菜々「友達とおしゃべりしながら帰るのっていいですねぇ。でも、のあさん達が心配しちゃうのであまり遅くなりすぎないでくださいね」
まゆ「わかりました。そう言えば、事件は解決したみたいですねぇ」
菜々「はい、マスターも無事でよかったです」
まゆ「雪乃さん、戻ってきたんですかぁ?」
菜々「はい。皆さん、お揃いです」
のあ「まゆ、お帰り」
雪乃「お邪魔してますわ」
まゆ「雪乃さん、ご無事ですかぁ?」
雪乃「ええ。ご心配をおかけしました」
菜々「さ、座っててください。もう少しでお夕飯の準備できますからねぇ」
まゆ「菜々さん、お手伝いしましょうか?」
雪乃「私も手伝いますわ」
菜々「これはお礼ですから、マスターもまゆちゃんも座っててください」
まゆ「それじゃあ、お願いします」
菜々「任せてくださいっ!志保ちゃん、盛り付けしましょうかー?」
雪乃「座っているのも、落ち着きませんわ」
のあ「堂々としてればいいのよ」
真奈美「のあみたいにふんぞり返ってみたらどうだ」
雪乃「こうでしょうか……?」
のあ「そこまでふんぞり返ってなんかいないわよ」
まゆ「真奈美さんもキッチンから追い出されてしまったんですか?」
真奈美「彼女達はプロだからな、私の出る幕はなかった」
のあ「デザート付きだそうよ」
まゆ「まぁ。楽しみです」
雪乃「菜々さんと志保さんには心配をおかけしましたわ」
96:
のあ「まぁ、慌てふためいていたけど、もう解決したことよ」
雪乃「そうですわね。改めて、ありがとうございました」
のあ「私は良い店子を失いたくなかっただけよ」
雪乃「協力してくださった、白菊さんと池袋さんを後日ご招待したいと思っていますの。皆様もお時間があったら、いかがでしょうか?」
真奈美「予定があえば参加させてもらおう。のあはどうだ?」
のあ「事務所にいる時は声をかけてちょうだい」
雪乃「新しい紅茶を振る舞いますわ。まゆさんもいらっしゃって?」
まゆ「はい、のあさんのお供をします」
のあ「雪乃、聞いていいかしら」
雪乃「はい」
のあ「どうして、サンタクロースはこんなことをしたと思う?」
真奈美「元は自分の爆弾ではあるが」
のあ「被害者も犯人も出さなかった。どうしてかしら」
雪乃「真意はわかりませんけれど、きっとクリスマスのためですわ」
まゆ「クリスマス?」
雪乃「穏やかなクリスマスのために、爆発が起こらない方が良いと決めたからだと思いますわ」
のあ「そのために立てこもり事件も起こして、大逃走劇をするかしら」
雪乃「どんな犠牲を払ってでも、しなければいけないと、思い込んでいたのかもしれませんわ」
のあ「狂信的ね」
雪乃「よほどの聖人か悪人でなければ、行動になんてしないと思いますわ」
真奈美「サンタクロースはどっちだ?」
雪乃「……私が決めてはいけないと思いますの」
のあ「そうかもしれないわね」
真奈美「ああ、裁くのはヘレンが捉えた時だろう」
のあ「法に基づいて処分されるでしょう、彼女の行為を裁くのは私達がしてはいけない」
雪乃「私もそう思いますわ」
真奈美「ショッピングモールで爆発事件は起こらなかったのは事実だ」
のあ「そして、起こしたことしか裁くことはできない」
雪乃「はい。それと、探偵の真似事をして思いましたわ」
まゆ「どうでしたか?」
雪乃「のあさん達を見てましたから、少し興味がありましたけれど」
のあ「そう」
雪乃「私には、向いていませんわ」
のあ「同感ね。可能ならば、ここでお店を続けてちょうだい」
97:
雪乃「もちろんですわ、こちらこそお願いいたします」
まゆ「当分は、美味しい紅茶には困らないですねぇ」
志保「みなさーん、出来ましたっ!」
菜々「乾杯の一杯も持ってきましたよぉ」
雪乃「菜々さん、志保さん」
菜々「マスター、どうしました?」
雪乃「これからも私と私のお店を、よろしくお願いしますね」
志保「もちろんですっ!一生懸命働きます、寝パフェ配達もします!」
のあ「……それはいらないわね」
雪乃「でも今は、無事に帰って来た主賓ですわ。もてなしてくださいますの?」
菜々「もちろんです!誠心誠意、ウサミンの全てを込めて!」
雪乃「ふふ」
菜々「ナナも少しだけ、シャンパンを……ふふふ」
のあ「いただきましょうか。改めてお帰りなさい、雪乃」
雪乃「ありがとうございます、のあさん」
菜々「みなさん、飲み物は持ちましたか?さぁ、乾杯しましょう!」
真奈美「ああ」
志保「ナナさん、乾杯の挨拶をお願いします」
菜々「わかりましたっ!のあさん達に感謝とマスターの無事を祝って、かんぱ?い!」
98:
43
幕間

都心迷宮の奥
イヴ「今回は助かりましたぁ」
大石泉「……」
大石泉
雇われたハッカー。過剰に供えられたPCとディスプレイに囲まれている。
イヴ「若いのに凄いですぅ。そうだ、トナカイさんになりませんかぁ?」
泉「……」
イヴ「お断りですかぁ。じゃあ、質問させてくださいねぇ」
泉「……」
イヴ「どうして、あなたがショッピングモールをハッキングする必要があったんですか?」
泉「……」
イヴ「喋れない、わけじゃないですよねぇ?」
泉「声は出せるから……話せないだけ」
イヴ「今なら大丈夫です、お話しましょう?」
泉「……」
イヴ「……助けてあげられるかも」
泉「……」
イヴ「……弟さんも一緒に」
泉「え……?」
イヴ「だって、サンタですからぁ」
99:
桐生つかさ「おいおい、大事な従業員を困らせないでくれ」
桐生つかさ
P社の高校生社長。同年代に向けた仕事を同年代に与えている。
イヴ「もう少し二人で話していたかったのにぃ」
つかさ「泉に何を聞いてたんだ?」
イヴ「どうしてハッキングしたんですかぁ?」
つかさ「確かにアンタの依頼はそこまで要求してなかった」
イヴ「目的は」
つかさ「金になりそうなものを探してた」
イヴ「ありました?」
つかさ「ないな、汚職してる奴でも脅して警察に匿名で届けてやろうかと思ってたのにさ」
泉「……」
つかさ「ま、監視カメラの映像だけでも満足してもらえんだろ」
イヴ「誰が満足するんですか?」
つかさ「そりゃあ、アタシの雇い主に決まってんだろ」
イヴ「知ってますよぉ、古澤さんですよね?」
つかさ「なんだ、知ってるのか」
イヴ「はい?。アナタだったら、交渉もしなかったと思いますよぉ」
つかさ「なんでだ?」
イヴ「爆弾は良い子にしか配らないとの約束でしたぁ。でも、違いました」
つかさ「アタシが見る目がないとか言うなよ。アタシが彼女を選んだわけじゃねぇから」
イヴ「え?古澤さんが悪い子に渡ったから、来てほしいって」
泉「……」
つかさ「だから、あの人が選んだんだよ」
古澤頼子「その通りですよ」
古澤頼子
ほぼ足音もなく現れ、みすぼらしい木のイスに腰を下ろした。
100:
イヴ「こんばんはぁ」
頼子「こんばんは。仕事の引継ぎが長引いて遅れてしまいました」
つかさ「監視カメラのデータは泉から貰ってくれ」
泉「……これ」
頼子「ありがとうございます。お二人とも報酬に上乗せしておきます」
つかさ「ありがとよ。アタシは帰る」
頼子「お疲れ様でした」
イヴ「古澤さん、どうしてあの子に爆弾と発火装置を?」
つかさ「じゃあな」
頼子「また、連絡します。理由を聞きたいのですか?」
イヴ「変えるために、本当に必要だったとは思えません」
頼子「なら、必要なかったのですよ」
イヴ「必要ない?」
頼子「爆弾がそこにあったから、間違えただけでしょう」
イヴ「……」
頼子「困り眉をしても意見は変わりませんよ。子供なんてそんなものでしょう?」
イヴ「そうかもしれませんねぇ。だから、止めに行ったんですぅ」
頼子「自爆してしまえば、楽になったのに」
イヴ「なんてこと言うんですかぁ、ちゃんと間にあいましたよぉ」
頼子「なら、見ましたか?」
イヴ「何を?」
頼子「縋るものを失った人がどうなるか、ですよ」
イヴ「そんなことありませんよぉ。今年は素敵なクリスマスになるんですから?」
頼子「聖人のようなことを言うのですね」
イヴ「サンタクロースですからぁ」
頼子「そうでしたね。悪から資金を巻き上げるのも同じ気持ちですか」
イヴ「何のことですか?」
頼子「サンタクロースの組織は広範囲すぎます。資金の流れは完全には追いきれませんでした」
イヴ「私はお金なんて必要ないですよぉ?」
頼子「あなたが必要でなくても、多くの人が必要としています」
泉「……」
頼子「テ口リストや独裁者に偽物の爆弾を送り付けて稼いだお金、どうするつもりですか?」
イヴ「もちろん、プレゼントを買うんです?」
頼子「サンタクロース、救いを求める人は何時救われたいと思っていますか?」
イヴ「話題が変わり過ぎてついていけません?」
101:
泉「……」
頼子「必ず助かるとして、それは何時だと思っていますか?」
イヴ「思っているのは、今です。いつもそうです」
頼子「その通りです、サンタクロース」
イヴ「でも、すぐには助からない人だっています。助けられない人も」
泉「……」
頼子「その時を、あなたが操作していいのですか?」
イヴ「何のことですかぁ?」
頼子「あなたがため込んでいるプレゼントは今この時に配られるべきです」
イヴ「そうは思えません?」
頼子「あなたの資金が恵まれない子供を救うのです、不幸な大人となってしまう前に」
イヴ「まさか、こんな地下の部屋でサンタクロースを捕まえられると、思ってますかぁ?」
頼子「信頼していますよ」
イヴ「だって、どこから攻め……」
102:
44
泉「きゃあ!」
頼子「銃をイメージしましたか?」
イヴ「ちっ……矢、曲がってきましたか……何これ、鉄ですかぁ……」
頼子「冥途の土産は、自分で見つけてください」
泉「だ……大丈夫ですか!?」
頼子「泉さん、戻ってください」
泉「……でも、血が酷い……口からも」
頼子「もしや、あなたもサンタクロースから救われようとしましたか?」
泉「……そんなこと」
頼子「図星ですか。もう一度お願いします、戻ってください」
イヴ「戻った方がいいですよぉ、今は……」
泉「……はい」
頼子「一瞬で心臓だけは避けましたね、でも肺を貫いた矢は抜けない」
イヴ「サンタクロースを捕まえようとする……悪い子は、一杯いますから、反応が早いんですよぉ……」
頼子「あなたが死亡したことは、どのように連絡されるのですか」
イヴ「ブリッツェンに、任せてます……」
頼子「手間が省けました」
イヴ「聞きなさい……いいですかぁ……」
頼子「恵まれない子供を救った聖人のお言葉です、お聞きしましょうか、泉さん?」
泉「……」
イヴ「トナカイさん達に、手を出したら……」
頼子「出したら?」
イヴ「呪ってみせますからぁ……」
頼子「呪いですか。ふふっ、面白いです」
イヴ「それと……爆弾を与えてしまった、子供に……」
頼子「翠さん、慌ててどうしましたか」
103:
水野翠「……うるさいです」
水野翠
射手。姿すら見えない角度から彼女を射抜いた。しかし、表情は怒りに満ちている。
泉「……!」
頼子「せっかく、贖罪の言葉を吐こうとしていたのに。息の根を止めてしまうなんて、もったいない」
翠「こんな私達に言った所で、何の救いにもなりません!」
泉「……私が聞いてれば届けられたのに」
翠「サンタクロースなんてふざけた存在に、私が失敗するなんて!」
頼子「怒ってはいけませんよ、死者は労わるものです」
翠「くだらない存在ごときに、怒ってなんかいませんわ!」
頼子「なら、どなたに?」
翠「絶対に心臓を貫くはずだったのに、これでは失敗です!」
頼子「いずれは死にゆく状態でした、結果は出ています」
翠「結果がよければそれでいいのですか!?なんて甘い!」
頼子「……もちろん、そんなわけありません。水野翠」
翠「なんですか!」
頼子「お行儀の悪いこと。聞きなさい、よろしいですか?」
翠「はい」
頼子「あなたは失態を犯しました」
翠「……はい」
頼子「次は心臓を射抜きなさい。さもなければ、あなたを殺します」
翠「……わかりました。次は必ず、射抜きます」
頼子「精進なさい」
翠「稽古に戻ります。今日は申し訳ありませんでした」
頼子「完璧な結果で返してください。言葉など慰めにもなりません」
翠「はい。失礼いたします」
頼子「手のかかる性格で困りますね」
泉「この死体、どうするの……?」
頼子「あなたが処理してください」
泉「え……」
頼子「冗談ですよ、私は契約以上のことをあなたにさせるつもりはありません」
泉「……」
104:
頼子「服と矢は処理して、ダンボールにくるませて河川敷にでも放置しておけばいいでしょう。そうだ、ダンボールを装飾するのはいかがでしょう?沙紀さんに任せましょうか」
泉「……」
頼子「化粧師も来てくれるといいのですが……どうしましたか?」
泉「……2学期までには帰れるんだよね」
頼子「弟さんが助からなくてもいいのなら」
泉「……そっか」
頼子「期待していますよ。この都心迷宮の奥底なら、あなたを邪魔する人なんていないのですから」
泉「……」
頼子「今日は帰ります。欲しい物があったら言ってください」
泉「……わかった」
頼子「それでは、さようなら」
泉「さくらと亜子、ここまで来てくれないかな……なんて、ね……」
幕間 了
105:
45
数日後
高峯探偵事務所
真奈美「そうか。相原君がお礼を言いたがっていたよ、日本に来た時は寄ってくれ」
のあ「真奈美……は通話中ね」
真奈美「ああ、また会える日を楽しみにしている」
のあ「誰からかしら」
真奈美「ヘレンだった。のあは私に何か用事か?」
のあ「ヘレンから?用事は、私のケータイの居場所を探してる」
真奈美「ソファーに投げていたじゃないか」
のあ「あったわ。それで、ヘレンからは何?」
真奈美「イヴ・サンタクロースが遺体で見つかった」
のあ「……詳しく」
真奈美「殺害されて、身ぐるみをはがされてダンボールに入れて放置されていたらしい。ダンボールはカラフルに装飾されていた」
のあ「西川保奈美みたいね。関係あるのかしら」
真奈美「それはわからない。それと」
のあ「まだ続報があるの?」
真奈美「ブリッツェンというトナカイが自首した」
のあ「もしかして、サンタを殺したの?」
真奈美「違う。第一発見者で、この前の犯行を自白したらしい」
のあ「一度に二つ言わなくてもいいのに、警察も大忙しじゃない」
真奈美「しかも、元警察官らしいぞ」
のあ「三つねぇ、それは留美達がさぞかし困っているでしょうね」
106:
真奈美「そうだろうな。しかし、殺害される意味がわからない」
のあ「トナカイ達と仲違いしたわけではないのね」
真奈美「そのようだ。殺害犯はトナカイにはわからないみたいだな」
のあ「それなら、爆弾を流していたブローカーがいるでしょう」
真奈美「トナカイは知らない、そう供述してる」
のあ「フム……」
真奈美「サンタクロースは死ぬべきだったか?」
のあ「言ったでしょう、法で裁かれるべきだったわ」
真奈美「だが、法では裁かれなかった」
のあ「私法で裁く人物が裏にいるのは事実よ。その目と対峙する覚悟はしておいて」
真奈美「わかってる」
のあ「ヘレンは元気にしてたかしら」
真奈美「いつも通りだった。これから海の向こうへ飛ぶそうだ」
のあ「相容れない境界線は引いていたなら、サンタに対する感傷にひたる理由もないでしょう」
真奈美「そうだな」
のあ「話は終わりかしら」
真奈美「宮本フレデリカは爆弾を入手したが、ブローカーが誰かを知らなかった」
のあ「解決はまだ先そうね」
真奈美「ヘレンの話はこれまでだ」
のあ「そう、イベントの結果でも見ることにするわ」
真奈美「お、前川君のサイン色紙が手に入るんだったな」
のあ「ええ、問題な、ほへっ、え?待って?どうして?」
真奈美「珍しいな、どうした?」
のあ「この数字、いくつ?」
107:
真奈美「自分でわかるだろうに、これは……2だな」
のあ「嘘でしょう、なんで、おかしいわ、え、ちょっと待って、えぇ、そんなぁ……」
真奈美「動揺しすぎて、変な声が出てるぞ」
のあ「いえ、冷静になるのよ……私は頭脳明晰な高峯のあでしょう……」
真奈美「自称するのか」
のあ「いや、考えてみなさい、事件発生してからイベント終了まで最高難度のマスター++で理論値近く出し続ければ……」
真奈美「本当に冷静になったな」
のあ「更に10倍ポイントアップアイテムを使い続ければいけるわね」
真奈美「納得したのか?」
のあ「私よりも上手のプレーヤーがいただけよ。時間とお金、何よりもテクニックが私と段違いの素晴らしいプレーヤーみたいね」
真奈美「それは残念だったな」
のあ「ええ。HolyMoon1225さんは知らないみくにゃんファンだけれど、色紙を大切にしてくれることを祈るわ」
真奈美「聖なる月、クリスマス……気のせいか」
のあ「真奈美、ライブ映像でも見ましょう。素晴らしいみくにゃんとみくにゃんのファンが作り上げたものを」
真奈美「私は遠慮する。ところで、提案があるのだが」
のあ「何かしら」
真奈美「前川君のサイン色紙を私のツテで手に入れようか」
のあ「真奈美はここから追い出されたいのね、いいでしょう」
真奈美「すまない、いつもならしない失言だった。ここにはいさせて欲しい」
のあ「許すわ。発言には気をつけなさい」
真奈美「ああ。人の価値観なんてそれぞれだからな」
のあ「そう。人の悩みも違うわ」
真奈美「善意だって、誰かの悪になりうる」
のあ「悪をなしても、善の心はあるかもしれない」
真奈美「難しいな」
のあ「いつだって、人の世は難しいわ」
真奈美「そうだな」
のあ「だから、みくにゃんは聖なる道しるべよ。さぁ、一緒に見ましょう」
真奈美「結局、そこか……まぁ、今日は付き合おう」
のあ「真奈美がいるなら、やはり単独5thかしらね。いえ、ここはあえての合同ライブかしら……」
エンディングテーマ
The brightNess
歌 高峯のあ、木場真奈美、佐久間まゆ

製作 tv○sahi
108:
次回予告
描かれたサインを辿り、都心という巨大建造物の奥へ滑り抜ける。
次回
大石泉「高峯のあの事件簿・都心迷宮」
109:
オマケ
撮影終了後の一幕
イヴ「ヴィクセンはいませんかぁ??」
雪乃「お疲れ様ですわ」
イヴ「お疲れ様です?」
雪乃「ヴィクセン役の方は見ておりませんわ。同じ更衣室も使っていないようですの」
イヴ「当たり前ですよぉ。だって、男の子ですからぁ」
雪乃「確かにどちらもいらっしゃる名前でしたわ」
イヴ「親戚のお姉さんがモデルだそうですよ?。アクションのために男の子を配役したみたいですぅ」
雪乃「そうなのですね。イヴさんは、どうしてその方をお探しに?」
イヴ「それはもちろん、ナデナデするためですよぉ。ダッシャーもナデナデしてあげたのに、依怙贔屓はいけませんからぁ」
雪乃「仲がよろしいのですね」
イヴ「ブリッツェン?、別の所を探しに行きましょ?」
ブリッツェン「ブモッ」
雪乃「あら、本物のブリッツェンさんですわ。こんにちは」
ブリッツェン「ブモッブモッ!」
雪乃「まぁ、凛々しいお顔ですわね。イヴさんをお守りくださいな」
ブリッツェン「ブモモ!」
110:
P達の視聴後
PaP「見たわね?」
CoP「見ましたけれど、具体的にお願いします」
PaP「私のイヴちゃんよ、ほーら、カワイイでしょう!」
CoP「カワイイが一番先なんですか、カッコイイとか凛々しいとかじゃなくて?」
PaP「そうね、でも最後はカワイイになっちゃうでしょ?だから、カワイイのよ!」
CoP「言わんとすることはわかりますが」
PaP「Cu君はそう思うでしょ、ね?」
CuP「ええ……同感です。まゆも最終的には愛しいが根源ですから」
PaP「ほら、あなた、少数派よ?」
CoP「別に否定しているわけではありませんが」
PaP「さーて、もう一度見ましょうか」
CuP「賛成です」
CoP「マジですか?」
PaP「イヴちゃんを見るべきところを見ているかどうか、先輩として指導しないとね!」
CuP「高森さんに影響されるかわいいまゆ……そうだ、新たな可能性を見つけないと……」
CoP「しまった、致命的に人選を間違えてたな、これは……」
おしまい
111:
あとがき
せっかく真夏のクリスマスなので、
誕生日とクリスマスプレゼントが同じになってそうな人にお祝いを。
高峯のあの事件簿も折り返し。
次回は、
大石泉「高峯のあの事件簿・都心迷宮」
です。
それでは。
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