【少女終末旅行】つながり【SS】back

【少女終末旅行】つながり【SS】


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少女終末旅行です。地の文ありです。
2: 以下、
がたごと、がたごと。ケッテンクラートは走る。
じゃりじゃり、じゃりじゃり。ガラスを踏んだ音がする。
かたかた、かたかた。詰んだ荷物の音がする。
びゅーびゅー、びゅーびゅー。建物の間を風が吹き抜ける音がする。
ぐーぐー、ぐーぐー。ユーの眠る音がする。
がたごと、がたごと。塔に向かって。
じゃりじゃり、じゃりじゃり。入り組んだあてのない道を行く。
びゅーびゅー、びゅーびゅー。向かい風は私の服に突き刺さる。
ぐーぐー、ぐーぐー。ユーはいつも通りだ。
がたごと、じゃりじゃり、びゅーびゅー、ぐーぐー。
がたごとじゃりじゃりびゅーびゅーぐーぐー。
----------------------------------------------------------------------------
3: 以下、
無数に連なる廃墟は、私とユーと、この音達を吸い込んでは、無に変える。
音は無音になり、私とユーは、存在を廃墟と同じ、空虚に変える。
それがいつも通り、普段の日常。なんて、言ったらいいんだろう。本風に言い換えるなら。
言い換えなければ、バカみたいに寒い風を、私一人が耐え忍んで、ケッテンクラートを運転する。
その後ろで、私のことなんか気にしないで、バカみたいに眠るユーと、揺れる荷物、履帯が踏み潰すガラスの音と、じゃりの音。
これがいつも通り、普段の日常。
がたごと、じゃりじゃり。びゅーびゅーぐーぐー。
がたごとじゃりじゃり、びゅーびゅー、ぐーぐー。
がた、ごと、じゃり、じゃり、びゅー、びゅー、ぐー、ぐー。
4: 以下、
私が読んだ本に書いてあった。昔の人は、音楽を聴いて、リラックスしてたって。
リラックスすると、段々呼吸はゆっくりになって、頭が回らなくなって、しまいには体は風邪をひいたみたいに、熱を帯びるらしい。そして眠くなる。
こうとも書いてあった。
昔の人は、音楽を聴いて、高翌揚していたって。高翌揚すると、段々呼吸は荒くなって、頭の回転がくなって、しまいには体は風邪をひいたみたいに、熱を帯びるらしい。そして眠くなる。
私はため息をついた。廃墟が吸い込む前の音達を間近で受ける私には、その大昔の人たちの教えをしっかりと感じている。
がたごとじゃりじゃりびゅーびゅーぐーぐー。
もしかしたら、ユーもその教えを身に受けているから、いつも眠っているのか。そう考えると妙に納得できた。でもムカつくのはムカつく。
がたごとじゃりじゃり、びゅー、びゅーぐーぐー。
眠い。眠いけど、寝たら建物にぶつかる。後々のことを考えると、そっちの方がもっと面倒だ。
がたごとじゃり、じゃり、、びゅーびゅーぐーぐー。
5: 以下、
寒い。
がたごとじゃりじゃり、、びゅーびゅー、ぐーぐー、、。
眠い。
がたごと、、、じゃりじゃり、、びゅーびゅー、、ぐー、、ぐー、、、、。
がた、、、、ぐー、、、。
、、じゃ、、、びゅー、、。
、、、。
私は、落ちる。眠りの、底へ。深く、深く、誘われていく。
ユーリ「ねぇちーちゃん」
チト「.....うぁ!?」
急に現れたユーの声に私は驚いて、思わずブレーキペダルをおもいっきり踏んだ。
それに驚いたユーも大きな声をあげ、私のブロディヘルメットにぶつかると、鈍い音を響かせる。
ごつんと、新しい音は廃墟が吸い込んで、また無に変えた。
ユーリ「もうちーちゃん!危ないって!」
チト「....ユーだって急に大きな声、出さないでよ」
それでなに。と私は振り返って言うと、ユーは空を見上げて、手を伸ばした。白い吐息と一緒に言葉が紡がれる。
6: 以下、
ユーリ「雪、降ってきそーだなーって思って」
私も空を見た。灰色の空模様に、灰色の雲がもくもくと現れ始め、すぐにでも雪が降り始めそうだった。でも今に始まったことじゃない。
チト「いつも降ってるようなもんだから、気にしなくてもいいだろ」
いつも空から落ちてきては、降り積もる雪。年がら年中降っていて、寒くて仕方ない。
ユーリ「危機回避だよちーちゃん。風邪ひいたら死んじゃうし、早め早めの対策を....」
珍しく真面目な顔をしたユーはそう言った。そして偉そうに腰に手を当て鼻を鳴らした。
チト「....まぁそれもそうだな」
その通りだと思った私は、ユーの意見に珍しく従うことにした。
私はケッテンクラートのスロットルを少しだけ強める。
かといって、そんなにく走らせるわけじゃない。無駄に燃料を消費させるのと、その場しのぎの暖をとることの釣り合いがとれないからだ。
7: 以下、
ユーが鼻歌を始めた。
がたごと、ふーんふふーん、じゃりじゃり、ふーーんふーん、かたかた、ふーん、びゅーびゅー、ふーーんふん、ぐーぐー。
廃墟は無機質な物の音を吸い込んでも、ユーの出す間抜けで、ばらばらなリズムは吸い込めないみたいだ。
鼻歌で空虚は存在を掴み取り、灰色は青色に。そんな色のついた鼻歌は、形になって空に上がっていっては、色んなところに存在をくっつけている様子が想像できたからだ。
右に左に、時に行き止まりを後退したり、階段をゆっくりのぼる。
ここはどう、と聞いては、違うと言われ、あっちはよさそうと言うと、それも違うと言われる。
あっちにこっちに、存在打ち付ける。
灰色にくすんだ外壁は虹色に。
どんよりとした空模様は真っ青に、そして赤と緑の雲が流れて行く。
車輪が踏みつけた跡は黄金色に。
私たちの進む道は、ただの無色。だけど私たちが通った道は色とりどりの色模様が広がる。そんな想像。
ユーリ「ちーちゃん!あそこがよい!」
チト「わかった」
8: 以下、
私たちが進む先にある、ぽつんとたたずむプレハブ小屋の小さな建物。
その小屋の前には丸い、剥がれた赤色に挟まれた白の線が施された、看板みたいなのが立っていた。
ユーリは私のヘルメット叩いてそこがいいと言った。
やかましく頭を叩くから、仕方ないけど、見るからに頼りない、壊れてしまいそうなその小屋の隣にケッテンクラートを止め、私は中を覗く。
中を覗く、と言ってもその小屋は入り口を大きく解放していた。
解放していたというか、扉はなく、誰でもすぐに入ることができるようだった。
中には大きな椅子があった。破れていて、同じく赤色だった赤は、くすんでいた。
ユーリ「どうよちーちゃん。風情があるでしょ」
チト「まぁ、もう降りそうだし、ここでいいか」
私は椅子に腰を下ろした。柔らかかったけど、埃が舞って咳き込んだ。
そしてユーも私の隣に座った。いちいち動作が大きくユーだ。もちろんおもいっきり飛んで座ったから、埃が舞い、私はまた咳き込む。
9: 以下、
チト「....おい」
ユーリ「ごめんごめん!いやーそれにしてもいいところ見つけたねぇ」
チト「....そうだな」
ぐーぐーと、ユーのもう一つの音がなった。いびきと同じこの音は、腹が減ったという音だ。ユーは私を見つめると。
ユーリ「ちーちゃんお腹すいた」
そう言い立ち上がる。そして歩き出してケッテンクラートのがある方へ向かって行く。
どうせやることなんて、わかってる。でも私もユーと同じでお腹が空いている。
いつもの空腹は、いつもより空腹だ。だから止めない。
戻ってきたユーはレーションの入った袋と、カメラを持ってきて、にこにこしている。
チト「なんでカメラがいるんだよ」
ユーリ「なんとなく?カメラが私を呼んでいたのさ」
自分でも疑問だったくせに、適当に理由をつけて納得したようで、満足そうだ。
そしてゆっくりと私の隣に座ると、レーションの入った袋を開ける。
ぽつり、ぽつり。新しい音。でも聞き覚えのある音だ。
ぽつり、ぽつり。ぐーぐー。
10: 以下、
チト「雨だ」
ユーリ「あれぇ雪じゃないの?」
チト「雨だな」
ユーリ「そのうち雪に変わる。私の勘がそう言っている」
はいちーちゃんと言って私にレーションを渡した。
魚のレーション。青空の下、冷たい川辺で洗濯をした時の、あの魚を真似た、レーション。
残念だけど味は魚味じゃなくて、レーション味。
砂糖の甘さだけで素っ気なく、魚を初めて食べた時の、あの味には遠く及ばない。
その魚のレーションの頭の部分を口に咥え、ウィンクをして、カメラを自分に向けていた。
その間抜けなユーに、間抜けさを足した姿を見た私は、思わず聞いてしまう。
チト「何してるんだユー」
ユーは魚を口から外して、わかってないな、とでも言いたげな顔をして、ため息を吐いた。
ユーリ「こうやって食べてる自分を記録に残そうとしてるんだよ」
11: 以下、
チト「いやそれはわかるんだけどさ。なんでそんなことする必要があるんだってこと」
ユーリ「....お腹空いた時にさ。あーこれ美味しかったなぁー、とか思ったり、この時の私はご飯食べてたなーって、記録見るたび思い出せば、お腹も膨れると思った。うん!そう思った!」
チト「今適当に考えただろ」
はい、とユーはそう言って私にカメラを押し付けてきた。
カメラ。カナザワの、カメラ。白くて板みたいなのに、使おうとすると中からレンズが飛び出してくる、器械。たくさんの記録が中には残っている。
カメラを渡してきたユーは、さっきと同じ様にレーションを口に咥えて、ウィンクをしている。
準備万端なユーの姿に、結局私が撮るのかと思うと、何だかムカついてしょうがないから、カメラをユーに押し返して。
チト「自分で撮れ」
そう言ってやると。ユーはカメラを起動してまた私に押し付けてきた。
ユーリ「えーだって撮れるわけないもん!ピント合わせるの大変だし、それに自分を自分で撮るなんてバカみたいじゃん!カメラは人を撮るためにあるんだよ!?」
12: 以下、
チト「でもユーを撮って後で見返しても、私はお腹は膨れない。だったら撮る意味ないだろ」
押し返す。
ユーリ「じゃあちーちゃんも撮ればいいじゃん!」
押し付ける。
チト「あーもうめんどくさい!撮らないものは撮らない!」
そう大きな声で言いながら、カメラを押し返した。そして私は椅子に足を乗せた。
そして寒さを凌ぐために小さく縮こまる。私はレーションを食べた。
レーション。イシイが食糧生産施設の場所を教えくれたからできた、レーション。砂糖多めで幸せもたくさん詰まった、甘くて、しっとりとした、レーション。
もぐもぐ、もぐもぐ。
もぐもぐ、、、もぐもぐ、、、。
私は急に静かになった隣に、急に不安になった。
さすがに言いすぎたかな、と思いつつ視線だけをユーに向けた。
やっぱり、少し悲しそうな顔をしている。いたたまれない。
チト「....撮らないけど、ピントが合ってるかどうかは教えてやる」
灰色は虹色に。どんよりとした空模様は青色に変わり、青と赤の雲が流れていく。空虚から存在を塗りたくる。
13: 以下、
ユーリ「やった!じゃあお願いねちーちゃん!」
カメラの画面を私に向けた。画面には、改めて口にレーションを咥えて、ウィンクをするユーがボケて映っている。
画面越し、それも表情も、何もかもぼやけてて見えないのに、ユーの笑顔が画面からは見えた。
少しずつ、絞りを回す。それに合わせては徐々にピントが合ってきて、被写体の像が明らかになってきた。
チト「ボケてないよ」
こんがり焼けてたのに、今ではしっとりとした魚のレーションを口に咥え、ウィンクをする、今日何度もみた、ユーのウィンクと笑顔がしっかりと映っている。
ユーリ「自分を撮る.....。自分撮り.....。自撮り....」
チト「略すな」
カシャ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
14: 以下、
今日はここまでです。話は書き終わっているので適当な時間に。眠いので寝ます。
15: 以下、
ユーリ「てってんくらーと」
ざーざー。
チト「ケッテンクラート」
ざーざー。ぽた、ぽた。
ユーリ「ケッテンクラート....」
ざーざーぽたぽた。ざーざーぽたぽた。
チト「そう、ケッテンクラート」
ユーリ「てってんくらーと」
チト「一秒もたってないのに忘れるな」
ユーリ「いっつも思うんだけどさ、あれ、ずっと外に出しっぱだよね」
ざーざーぽたぽた、もぐもぐ。
チト「....そういえばそうだな」
ざーざー、ぽたぽた。もぐもぐ、もぐもぐ。
ユーリ「風邪ひいたりしないのかな?」
チト「しない」
雨脚が強くなってきた。ユーが言うには雪に変わるらしいけど、そんな絶対ありえないくらい降り続いている。それで私たちは相変わらず、ちびちびとレーションをかじっては、外を見つめる。
ユーリ「でもケガはするよね」
チト「してない」
ユーリ「壊れてるじゃん。たまに」
チト「....まぁ壊れてるな」
ざーざーぽたぽた、もぐもぐもぐもぐ。
16: 以下、
ユーリ「ケッテンクラート、ここに運ぼうよ」
覚えてたのか。そう思ったけど、細かいことをいちいち気にしてたら、ユーの全てが気になってしまう。そこは流しておいて、私は最後の一口を口に放り込む。
チト「ここ、狭くて運べない」
二人とこの椅子だけでもう窮屈なここに、ケッテンクラートは運べない。
さすがに鈍感なユーも、それには気がついたみたいで、残念そうな顔をして、レーションをかじり続ける。
まぁでもユーの言うことは、よくわかる。いつも外に出しっぱなしだ。
私達もいつも外で寝てるようなもんだけど、ケッテンクラートと違って、雨ざらし、雪ざらしってわけじゃない。
かわいそうだな。素直にそう思った。
膝の上に置いていたカメラを椅子に置くと、ユーは不意に立ち上がった。
チト「....今度はなんだ」
ユーリ「ここに運べないなら、せめて....レーションだけでも食べさせてあげよう!」
雨に濡れてまで、ケッテンクラートにレーションを食べさせることを決意したのか、小さくガッツポーズをしたユーは、同意を求めるように、私を見た。
17: 以下、
チト「どうやって」
ユーリ「ほら、燃料入れるところから」
チト「壊れるからやめろ」
ユーリ「ちーちゃんは血も涙もないの!?」
チト「いやケッテンクラートを殺そうとしてる方が血も涙もないぞ」
ユーリ「じゃあ私がケッテンクラートを同じものを食べる!」
どうしてそうなった。そう思った頃にはもう遅く、ユーは雨の中に向かって走っていった。
私も急いで立ち上がりユーの後を追いかける。
チト「おいレーションもったいないからやめろ!」
ユーリ「えーなんでー?もしかしたら、魚級に美味しくなるかもしれないんだよ?」
すぐにずぶ濡れになったユーは、燃料の入ったタンクを抱えて、こっちに戻ってきていた。
雨の中では食べないらしい。私は雨を遮るように手をかざして、そんな賢いユーにこう言った。
18: 以下、
チト「お前ガソリンの味しらないだろ」
ユーリ「ちーちゃんは知ってるの?」
チト「修理中に何度か口に入ったからな」
ユーリ「レーションにつけて食べたことはないでしょ?」
チト「....結果は見えてるけど、まぁ勝手にしろ。あと残すなよ。もったいないから」
ユーリ「あい」
廃墟に戻ってすぐ、私はずぶ濡れになったコートを脱いだ。ユーはコートを脱ぐことよりも、燃料缶の蓋を開けようとしていた。
きゅぽん。
チト「ほんとのやるのか?」
ユーリ「もち。同じ釜の飯を食うってね?」
ふーん、ふふーん。ぽちゃ。
ユーはレーションを燃料の中に、躊躇いもなく突っ込んだ。そして数を数え始めた。そして五秒だった時、ユーはレーションを引っこ抜いて、珍しそうに上に持ち上げた。
ユーリ「なんかきらきらしてるー」
ぽたぽた。
チト「早く食え。垂れてる燃料が勿体無い」
ユーリ「いただきます!」
もぐもぐ。もぐもぐ。
チト「うまいか?」
もぐもぐ、もぐもぐ。ごくり。
ユーリ「うんまずい!」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
19: 以下、
ケッテンクラート。私たちが塔を目指す時に渡された乗り物。ずっと一緒だ。でも遅い。
ユーは私にこう言った。なんの前触れもなく。振り続ける雨を見ながら。
物って死ぬの?
ざーざー。ぽたぽた、ぽたぽた。
チト「そりゃ死ぬだろ」
私たちだってそのうち死ぬ。どうやって死ぬのか知らないけど、死ぬ。
餓死、溺死、焼死、落下死、圧死。ありとあらゆる死に方が、私達には用意されている。
このどれかに当てはまらなくて、勝手に死ぬこともあるけど。今の私達に一番身近な死は、数えきれない。
ユーリ「じゃああの喋る器械も、そのうち?」
チト「うん。でも私達よりかは、長生きするだろうね」
私達よりは長生きする。物の死に方は、私達の死に方よりも、少ないし、何より物は頑丈だから。そのことをユーに教える。
20: 以下、
ユーリ「じゃあケッテンクラートも?」
チト「ケッテンクラートも」
ユーリ「このレーションも?」
チト「レーションも」
ユーリ「この銃も?」
チト「銃も」
ユーリ「カナザワも?イシイも?」
チト「そうだな。みんなみんな」
みんなみんな。そのうち死ぬ。
ざー、ざー、、、。ぽたぽた、、、ぽた、ぽた。
ユーリ「じゃあ私達も?」
ざー、、、、、、ざー、、、、ざー、、、。
チト「....どうした急にしおらしくなって」
ユーリ「私たちってさ、物に生かされてるなって思って」
チト「物に生かされてる?」
ユーリ「そう、物に」
21: 以下、
ユーリは起動したままのカメラをいじる。絞りのピントを意味もなく、合わせては、ぼかしたり。
ユーリ「私達の代わりにケッテンクラートは歩いて、私達の代わりに、レーションが犠牲になって私達を生かしてる。それに、私達の代わりにこの服が寒さを受けてる。頭だって、このヘルメットが代わりに守ってくれてる」
代わりに、代わりに。ユーリは私達の持ってる全ての物の名前を言う。
ユーリ「ちーちゃんはさ。物はそのうち死ぬって言ったよね。じゃあ、物が死んで、私達二人だけになっちゃったらさ。私たちって」
生きていけるのかな。
チト「........」
、、、、、、、、、、、、、。
チト「わからん」
ユーリ「そだね。わかんないね」
22: 以下、
魚のレーション。青空の下、冷たい川辺で洗濯をした時の、あの魚を真似た、レーション。
カメラ。カナザワの、カメラ。白くて板みたいなのに、使おうとすると中からレンズが飛び出してくる、器械。たくさんの記録が中には残っている。
レーション。イシイが食糧生産施設の場所を教えくれたからできた、レーション。砂糖多めで幸せもたくさん詰まった、甘くて、しっとりとした、レーション。
ケッテンクラート。私たちが塔を目指す時に渡された乗り物。ずっと一緒だ。でも遅い。
私達は、物に生かされていた。でも私はこう思っていた。
私は、自分と、ユーの二人だけで生きていると。
困難も苦難も、辛い時も怖い時も、私はユーと二人で生きていたと。
23: 以下、
いいや違う、物の元を辿れ。私たちがあてのない旅に出たのは、誰のおかげだ。ケッテンクラートを渡したおじいさんのおかげだ。
ふざけてカメラで遊んで、暇つぶしをできているのは、誰のおかげだ。カナザワのおかげだ。
こうしてレーションを食べて、生きていられるのは、誰のおかげだ。イシイのおかげだ。
そもそも、この旅の終着点はよくわからんけど、塔に向かう目標だって、私が決めたわけじゃない。
私達は、何も選択していない。色んな人に用意してもらった物と目的を使って旅をしている。
私達は、生きていない。本当だったら、もう死んでいるんだ。
チト「.....私たちってさ、よく生きてるよね」
ユーリ「そだね。運がいいのか悪いのか。まぁどっちでもいいや。それにちーちゃん言ったよね。物は私達よりも早く死なないって」
チト「そう言ったな....」
24: 以下、
ユーは椅子に大きく腕を広げ、たくさん白い息を吐いた。
ユーリ「私達より後に死んじゃうなら、別に問題ないよね」
なんてユーらしい答えなんだ。そうだな。物はそうは簡単に死なない。私達より、後の死ぬ。
だから、ケッテンクラートが壊れて、私たちが歩くこともない。
カメラが壊れて、記録も記憶もなくなることはない。
レーションが底を尽きて、空腹に喘ぐこともない。
それは、私達よりも後に起こることだから。もしも前後が逆になることは、ない。そう思いたい。
そうなってしまったら。無防備で、生かされていた私達は、どうなるんだろう。その不安をユーに話した。するとユーは、いつもの調子でこう言うんだ。
ユーリ「その時は、また誰か助けてくれるでしょ」
チト「....誰も助けてくれなかったら?」
ユーリ「その時は!」
ユーは立ち上がって私の手を引いた。急にそんなことをされたら、私はバランスを崩して倒れそうになった。でも倒れない。
ぽたぽた。ぽたぽた。
ユーの笑顔。いつも通り。バカみたいに明るいその顔。
ユーリ「ちーちゃんが好きなあれだよあれ。片方が支えるあれ。ちーちゃんが倒れそうになったら、私が支える」
今度はユーはバランスを崩して私を引っ張る。ユーは私より全部がでかい。支えきれずにユーの上に倒れこむ。
ユーリ「私が倒れそうになったらちーちゃんが支える。どう!?かんぺきでしょ!」
チト「倒れてるんだけど」
ユーリ「まぁなんとかなるでしょ」
チト「またそれ....」
でもまぁ、あんまり考えることじゃない。それは遠い先の話だ。私はユーの柔らかい胸に顔を埋める。暖かい。
チト「でもまぁ、ユーの言う通りだな。倒れそうになったらどっちかが支える。そうすれば、私たち二人が終わるまで、終わらないよな」
ユーリ「そう!そんな感じ!」
たぶん終わる時は、ユーと一緒だろう。私は一人じゃ生きられない。ユーも同じだ。一人じゃ生きられない。
この世界を旅すると決めた時。この世界に生まれついた時から、私とユーは、一つの存在なんだから。
とくん、とくん、とくん、とくん。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
25: 以下、
おしまいです。
26: 以下、

28: 以下、
終末少女のSS増えろ
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1512663272/
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岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
遊星「またD-ホイールでオナニーしてしまった」……サティスファクション!!
遊星「どんなカードにも使い方はあるんだ」龍亞「本当に?」パワーカードだけがデュエルじゃないさ
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」ただでさえ天使のミクが感情という翼を
アカギ「ククク・・・残念、きあいパンチだ」小僧・・・!
クラウド「……臭かったんだ」ライトニングさんのことかああああ!!
ハーマイオニー「大理石で柔道はマジやばい」ビターンビターン!wwwww
僧侶「ひのきのぼう……?」話題作
勇者「旅の間の性欲処理ってどうしたらいいんだろ……」いつまでも 使える 読めるSS
肛門「あの子だけずるい・・・・・・・・・・」まさにVIPの天才って感じだった
男「男同士の語らいでもしようじゃないか」女「何故私とするのだ」壁ドンが木霊するSS
ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」読み返したくなるほどの良作
犬「やべえwwwwwwなにあいつwwww」ライオン「……」面白いしかっこいいし可愛いし!
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