魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」2back

魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」2


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――冬の国、王宮
王子「ああ、けったくそわるい」
執事「はぁ」
王子「むかつくぜ」
執事「諸王国会議でございますか」
王子「……」
執事「聖王都がまたなにか?」
王子「どんぱちやれってさ」
執事「……さようでございますか」
王子「あらかた知ってるんだろう?」
執事「それはまぁ。洒落で諜報部を設置しているわけでもなく」
王子「要するに……」
執事「武勲と」
王子「そうだ」
執事「昨年来、魔族の侵攻は緩やかなままですからな。
 このままでは人間の世界を守るという錦の御旗の価値が
 ゆらぐと、そんなことを考える人もいるのでしょう」
王子「魔族の邪悪さと恐怖、人間の勝利をアピールしないと
 支援するための募金もままならない、と。
 遠回しにそう通達して来やがった」
魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
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勇者シリーズ
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67: 以下、
キタ
68: 以下、
きてくれた!
69: 以下、
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
71: 以下、
執事「聖鍵遠征軍の話はでましたか?」
王子「諸王国側からはな。
 だが、中央の連中はその気はないさ。
 どんなに言いつくろったって、
 過去の聖鍵遠征軍は失敗だったんだ。
 あれだけの軍隊と物資をつぎ込んで
 得られたのは魔界側の都市の一個や二個。
 そもそも聖鍵遠征軍のお題目であるところの
 “魔王城を落として世界に平和をもたらす”事を
 中央の連中だって望んじゃいない。
 戦争が無くなったらまた内輪もめだ」
執事「……」
王子「しかし、それは俺たちもおなじなんだけどな。
 戦争がなければ金が送られてこない。
 小遣いをもらって殺し屋をやっている。
 国ぐるみで傭兵の真似ごとだ。情けない話だ」
執事「若……」
王子「しかしなぁ。今回ばかりは」
執事「会議はどうなりました?」
75: 以下、
王子「まだ結論は出ていない」
執事「判りますなぁ……
 “魔族をやっつけろ、しかし聖鍵遠征軍を出す余力はない”
 となりますとな」
王子「諸王国軍の戦力を使って、
 手早く、しかも中央大陸に華々しい戦果のニュースを
 もたらせるような戦争だろう?
 そんな都合の良い戦争、そこらにほいほい
 転がってるもんかよ」
執事「氷の国、白夜の国、鉄の国の皆様はいかがで?」
王子「まぁ、難しい顔はしてたよ。
 ああ。白夜の国だけはやる気満々だったな」
執事「あそこは、聖王国の貴族の娘だかを新しい
 后に迎えてましたからな。大陸中央とのパイプを
 強化して強国の仲間入りを果たしたいと願って
 いるのでありましょうなぁ」
王子「そういうことなのか」
執事「さようでございます」
王子「会議はまだまだ続くだろうが」
執事「……」
76: 以下、
王子「おそらく、戦場は極光島だろうな」
執事「で、ございましょうな」
王子「極光島は南氷海にうかぶ、人間世界唯一の魔族の版図だ。
 ゲートを超えて魔界へ入らず魔族と一戦を交えるとしたら、
 あそこしかないだろう」
執事「ええ」
王子「あの島を魔族にとられたのは確かに痛手だったからな」
執事「まぁ、当時はここまで被害が大きくなるとは
 思えませんでした。お父様を責めなさるな。
 軍事拠点としての価値はさほどではありませんでしたしな」
王子「ああ。そうだなぁ」
執事「……」
王子「だが、あそこを押さえられたせいで海上運輸と
 南氷海の漁業は、大きな打撃を受けたよ」
執事「さようで」
王子「ああ! あのとき親父達に、魔界へ侵攻して
 都市の一個二個とるよりも、あの小さな島を守る
 勇気と智慧がありゃぁなぁ」
執事「詮方なきことかと」
79: 以下、
執事「軍の編成はどうなりますかね」
王子「なにぶん、島だからな。戦船が中心にならざるをえん」
執事「ふむふむ」
王子「戦船200艘、兵員7000といったところかな」
執事「いかがでしょうね」
王子「俺なら、やりたくはないな。
 人間の軍の優位点は連係攻撃と機動力、情報伝達、
 そして何より、数だ。
 海戦では肝心の数の優位性が失われる。
 7000人の兵士を殺す必要はない。
 船を200隻しずめればいいんだ。
 正気の沙汰の話じゃない」
執事「若ならば?」
王子「戦をしないよ。
 やるならば、勝ったあとにちょこっと海戦をやって、
 軍事的に圧倒したふりだけをするさ。
 そもそも勝利をするための方策がない状態で
 戦をやるのは馬鹿だけだ。
 その上今回の戦、意義も見いだせない。
 大陸中央で安全を貪っている聖王国に指示を出されたから
 しっぽを振って兵を送り込むだって?
 そんなことで勝てるなら苦労はないさ」
80: 以下、
――冬越しの村、村はずれの館、中庭
貴族子弟「どうやら決まりらしいな」
軍人子弟「この冬でござるか?」
貴族子弟「ああ、氷の国の王宮に叔父がいるんだが
 その叔父が知らせてくれた。どうやら大規模な
 海戦を行なうようだ」
軍人子弟「そうでござるか!
 最近は大戦もなかったでござるからね。
 海戦でござるか! となると、
 この近くでやるのではござらんか?」
貴族子弟「ああ、もちろんだとも。
 叔父もはっきりとは言わなかったが、このあたりにも
 動員令がかかるはずだと教えてくれた」
軍人子弟「憎き邪悪な魔族へと聖教会の鉄槌を
 下す時が来たでござるね!」
貴族子弟「君も行くのか?
 僕は叔父の船に乗せてもらうつもりだ」
軍人子弟「もちろんでござる。
 戦こそ武人の誉れでござるよ!」
82: 以下、
女騎士「整列っ」
貴族子弟「は、はいっ!」
軍人子弟「!!」
 ザザザッ
女騎士「浮ついた雰囲気だな」
貴族子弟「師範! お話はお聞きですかっ!?」
軍人子弟「拙者、血がたぎるでござるっ」
女騎士「まぁな。聞いてはいる。極光島だそうだ」
貴族子弟「極光島!」
軍人子弟「人間世界にしみ出した
 蛆のごとき魔族の根城でござるな。
 この大地に魔族は必要ないでござる」
女騎士「おい、ゴザル」
軍人子弟「はっ!」 ビシッ
女騎士「嘲りも侮蔑も戦場では不要だ。
 そんな心の動きは、生き残るための敵の一つと
 知った方がよい」
83: 以下、
女騎士「諸君らに今一度訊ねる」
貴族子弟「……」
女騎士「それは諸君らの父君が、なぜこんな田舎の
 学院に諸君らを預けたかと言うことだ」
貴族子弟「それは、もちろん高名な学士様、
 女騎士様がいらっしゃるからです」
軍人子弟「戦場で勇名をはせるためでござる」
女騎士「ちがう」
子弟2人「?」
女騎士「諸君らの父君がこの学院に諸君らを預けたのは
 ――大陸中央の進学校でも、修道会でもなく
 まさにこの学院に諸君らを預けたのは、諸君らを
 一回の雑兵や役人にするためではないぞ」
84: 以下、
南氷海はいろいろきつそうだな
86: 以下、
女騎士「諸君らは、ここで――あの腹立たしい胸をした
 ――学士に経済なる面妖怪奇な理論を学んでいるので
 あろう? 修道士からは実戦的な医術と農業の基礎を、
 そして私は剣や槍、馬術に限らず、こと戦の事に関して
 一通り以上を教授したつもりだ」
女騎士「それらは全て、一回の兵卒の身には過ぎたるもの。
 それは王の隣に立って戦を治めるための知恵と技だ。
 ――忘れるな。諸君らが身につけた、
 あるいは身につけようとしている技の価値を」
女騎士「中央の学院や修道会では、より洗練された、
 教会の教えに沿った知識を身につけられるだろう。
 社交術も華やかなパーティーで身につけられるに
 違いない。あるいはそれも有用な技であろうな。
 しかし、諸君らの父君はここを選んだ。
 なぜなら、この学院に諸君らを預ければ、
 少なくとも戦場で血気にはやり愚かしい蛮勇を
 振るうことは無かろうと思ったからでもあるし、
 ……“敵に勝つ”というよりももっと意義のある
 戦を学べると思ったからでもあろう。
 あるいは、諸君らの父君が、自分たちには身に
 つけられなかったと後悔する技が、それなのだ」
貴族子弟「はい」 びしっ
軍人子弟「はっ」 びしっ
87: 以下、
支援
88: 以下、
反論しないとか二人ともすっかり丸くなったな
89: 以下、
女騎士「ではどうだ? その知恵と誇りは、
 この戦争の知らせに子供のように騒げと言っているのか?」
子弟2人「……」
女騎士「目を見開け、耳を澄ませ、この世界の全てを
 勝つための知恵としろ。本当にこれでよいのかと疑え。
 なぜならば諸君らの肩には、もはや諸君らの命以上の
 多数の命と財産がのしかかっているからだ。
 魔族が悪? そのようなものは、戦にはない。
 勝者と敗者あるのみだ」
子弟2人「……」
女騎士「諸君らが戦に行くのならば、私は止めない。
 止める資格もないだろう。
 だが、諸君らが死ぬのを許すつもりはない。
 諸君らは死ぬにはあまりにも未熟だ。
 もし死ぬにしても、その瞬間まで諸君らは
 何を間違えたのかも判らず、
 きょとんとした表情で死ぬだろう。
 そのようなことを許すつもりはない。
 ……さぁ、教練を始めるぞ。今日は普段の
 3倍は厳しいぞ。覚悟するんだなっ!」
90: 以下、
わくわく
91: 以下、
――冬越しの村、村はずれの館
女騎士「なんてねー」
メイド姉「はい?」
女騎士「言っちゃってるんだけどねー」ごろごろ
メイド姉「はぁ……」
女騎士「偉そうに云っても、なんですか。
 わたしも代役教師だから、なんもいう権利ないよねー」
メイド姉「そうですか? 勇者様より遙かに立派に
 努めていらっしゃると思いますよ?」
女騎士「あいつはいい加減すぎるのよ」
メイド姉「ですねぇ」くすっ
女騎士「梨のつぶてもいいところでしょう。
 死んだと思ったら一年ぶりに現れてさ。
 引っ越してきたら修行の旅に出て一年も帰ってこないとか」
メイド姉「……」
94: 以下、
これで勇者が竜のところの娘つれてきたらすごいことになりそうだなw
95: 以下、
しえん
96: 以下、
勇者は一年も魔王と会ってないのか・・・
97: 以下、
女騎士「信頼されてるって思わなきゃやってられない」
メイド姉「でも、そう思ってらっしゃるんでしょう?」
女騎士「それは、まぁねー」
メイド姉「そこが素敵です」
女騎士「……」
 コトン
メイド姉「はい。甘いですよ?」
女騎士「これは何?」
メイド姉「加鼓亜のお茶ですよ? 元気が出ます」
女騎士「熱っ。でも、甘いわね」
メイド姉「これも当主様の実験植物です」
女騎士「そうなのか?」
メイド姉「ええ。水晶農園が出来てから、
 いろいろ実験がはかどるのだとおっしゃってます。
 これは植樹で持ってきたものですけれどね」
女騎士「あのキラキラした建物でしょ。面白いよね。
 あんな建物で、建物全て暖房するとはねー」
メイド姉「暖かい地方の植物も作れるそうで」
99: 以下、
魔王と勇者はいいカップリングだな。
100: 以下、
女騎士「でも、あれを立てるために修道会の
 財布は空っぽよ……。
 ああ、とんでもないことになってるなぁ」
メイド姉「そうですか?」
女騎士「とんでもないよ。大ピンチだよ」
メイド姉「でも、嬉しそうなお顔ですよ?」
女騎士「……そんなことはない」むっ
メイド姉「なら良いですけど」にこっ
女騎士「最近、メイド長に似てきたぞ?」
メイド姉「そうですか?」
女騎士「うん、似てきた」
メイド姉「そんなことないですよ。まだまだです」
女騎士「そうかな、仕草とかそっくりだよ」
メイド姉「何がなにやら、判らないですよ。
 文字も読めるようになったし、数学も覚えました。
 出来ることは沢山増えました。でも、わたし」
女騎士「?」
メイド姉「人間になれたんでしょうか……」
104: 以下、
しえ
108: 以下、
――魔界、開門都市、くすんだ酒場
勇者「へぷしっ!」
酒場の主人「なんだい、兄ちゃん。
 汚ねー汁まきちらさないでくれよ」
勇者「はん。こきやぁがれ。
 掃除もしてねぇような小汚い酒場じゃねぇか」
酒場の主人「ははは! 違いねぇ」
 聖鍵遠征軍兵士「ぎゃはははは!!」
 聖鍵遠征軍兵士「酒を持ってこい、この魔族!」
 聖鍵遠征軍兵士「早くしろ、殺すぞ、この女っ!」
 聖鍵遠征軍兵士「こんな肉が食えるかっ」
勇者「……」
酒場の主人「ああ、まったく大暴れだな、商売あがったりだ」
勇者「そうか? ……マスターだって人間だろう?」
酒場の主人「まぁ、そりゃそうだがよ」
勇者「ふむ」
酒場の主人「酒が飲みたきゃ、
 酒を買って外で飲めば良いんだ。
 酒場ってのは食い物や雰囲気も含めて売り物だからよ。
 あんな騒ぎは、ありがたかぁねぇな」
111: 以下、
 聖鍵遠征軍兵士「早くしろっての!」
 魔族娘「きゃっ!!」
 聖鍵遠征軍兵士「裸踊りでも見せてくれるのか?」
勇者「……」
酒場の主人「ち、しかたねぇなぁ」
 酒場の主人「お客さん。そういう事がしたいなら
 一本裏手の宿屋に行ってくれないですかね?」
 聖鍵遠征軍兵士「何だと、親父」
 聖鍵遠征軍兵士「誰のお陰でここの防衛や暮らしが
 成り立っていると思っているんだ!?」
勇者「おい」
魔族娘「は、はいっ。す、すみません。
 ぶ、ぶたないでくださいっ」
勇者「そんなことはしないよ」
 酒場の主人「いえ、めっそうもない。心得ております。
 いつもいつも、緑のお天道様とおなじくらい
 感謝しておりますよ」
114: 以下、
勇者「いつもあんな感じか?」
魔族娘「は、はい……」
勇者「この街は、まだ相当な数の魔族が残っているのか?」
魔族娘「……そ、そのぅ」
勇者(そりゃ、警戒もされるか……)
勇者「これを見ろ」 すっ
魔族娘「それは、魔王様の紋章。黒の手甲っ」
勇者「どうなんだ? この街の状況は」
魔族娘「それは、はい……魔、魔王様」
勇者「黒騎士と呼んでくれ」
酒場の主人「あー、やれやれ。商売あがったりだ」
勇者「なんとかなったのか?」
酒場の主人「ああ。済まないね、大騒ぎで。おや」
魔族娘 びくっ
115: 以下、
酒場の主人「あんたがこの娘をかばってくれたのかい」
勇者「ちょっと話をしていただけさ」
酒場の主人「ふふん」
魔族娘 びくびくっ
勇者「……」
酒場の主人「まぁ、いいさ。
 その娘もこんなに怯えちゃ仕事にならないだろう。
 おい! 奥で皿洗いでもしているんだな」
勇者「マスターは器量があるな」
酒場の主人「魔族だろうが何だろうが、
 同じメシを食ってりゃ使うべき使用人だ。
 勝手に壊されちゃたまらんね。
 虐めていいことなんか、一つもないよ」
勇者「……」
魔族娘「それじゃ、あの……」
勇者「おい、マスター。この娘、借りても良いか?」
酒場の主人「ほう?」
勇者「酒手ははずむよ。これでどうだ」 とさっ
酒場の主人「ふむ……」
116: 以下、
勇者自分でフラグ立てるなよw
118: 以下、
フラグが……
フラグが立った!
フラグが立ったぁ!
……立ったのか?
119: 以下、
魔族娘 びくっ
酒場の主人「この娘も気に入ってるみたいだね。
 あーかまわないよ。どうせ仕事にもならないし、
 外に出せばさっきの連中に嫌がらせをされるだろうさ。
 無理はさせちゃ困るがね」
勇者「ああ、ちょっと話を聞きたいだけさ」
酒場の主人「ははぁん、話ね。まぁ、いいさ。
 この娘の部屋は、裏手の安宿から月極でかりてるんだ。
 “お話”ならそっちへいってくんな」
勇者「ああ、好都合だ」
酒場の主人「お客さんの今晩の宿はどうする?」
勇者「部屋か? そのままとって置いてくれ」
酒場の主人「ああ。判った。夕食の時間になったら
 適当に切り上げてくれよ。
 持っていくなんてごめんだぜ」
勇者「は? ああ。腹が減ったらちゃんと来るよ」
酒場の主人「あはははは。
 まぁ、若いうちはメシよりあっちだわなっ! あははは」
122: 以下、
――魔界、開門都市、下級娼館
ぱたん
勇者「さて、と」
魔族娘 びくぅっ
勇者「あー。なんだ、そうびくびくしないで」
魔族娘「す、すいませんぅ?。ひ、ひどいことはっ」
勇者「しない、しない」
魔族娘「……え、うぅ」
勇者「部屋の対角線に移動されるとさすがにへこむな」
魔族娘「す、すいませんっ。その」 おどおどっ
勇者「あ、いやいいよ。酒飲む?」
魔族娘「いえ……その、飲めなく……いえ、
 その、飲み……ま……す……」
勇者「死にそうな顔で云わないでよ。飲まなくていいよ」
魔族娘「は、はい……」
勇者「んじゃ、お茶でももらってくれば良かったな」
魔族娘「あ、あります……」
124: 以下、
勇者「えーっと、あらかじめ云っておきますが」
魔族娘「はい」
勇者「痛いことはしませんから安心して」
魔族娘「えっ、そのっ。……う、うぅぅ」
勇者「なぜ泣く」
魔族娘「わ、わた、わた」
勇者「落ち着け」
魔族娘「わたし、その……へ、っ下手で……」
勇者「意味判らん」
魔族娘「じょ、上手……で、できなくて
 ご、ご、ご。ごめんなさい、ごめんなさい」
勇者「??」
魔族娘「痛がって……ばかり……で……よくな、
 良くなくて……ご、ごめんなさ……」
勇者「んー? ……あ! ああっ!!」
126: 以下、
やべぇ何かに目覚めそうw
127: 以下、
勇者が純情ボーイ過ぎて吹いたwwwww
129: 以下、
ゆうしゃはこんらんした!おどろきとまどっている!
130: 以下、
勇者wwww
131: 以下、
ここからどう勇者が回避するか見ものだなww
132: 以下、
コレだから勇者は
134: 以下、
――魔界、開門都市、下級娼館
勇者「わたくし大変失礼いたしまして
 落ち着いていただけましたでしょうか?」
魔族娘「は、はいぃ……」
勇者「いやほんと。俺のピンチメーターは
 火竜王のときの約30倍を記録した」
魔族娘「ごっ、ごめんなさいっ」
勇者「話進まないからごめんなさいは止めよう」
魔族娘「ご、ごめんなさいっ」
勇者「……」
魔族娘「……はぅ」
勇者「で、まぁ、簡単にまとめると……。
 この都市を仕切っているのは、聖鍵遠征軍、駐留部隊だと。
 やつらは市街地中央の宿舎から、この街すべてを
 管理……というか、まぁ、乱暴狼藉していると」
魔族娘「はい……」
勇者「どのくらいの数なんだ?」
魔族娘「……沢山。……ご、ごめんなさいっ」
137: 以下、
勇者「街の外の部隊は?」
魔族娘「……外、ですか?」
勇者「周辺の警戒とか、防備とか」
魔族娘「沢山です。……四つ、軍団があります」
勇者「ふむ」
魔族娘「交代で街に帰ってきます。街に帰ってくると
 暴れて、怖くて……ひどいこと、沢山します」
勇者(ふむ……つまり、街の外部。
 おそらく来る途中に見た四方の砦だな。
 そこに魔族の奪還軍を防ぐ軍勢を駐留させて
 中央のこの開門都市には治安維持軍を置いてるんだな。
 まぁ、当然の配置か。
 この都市だけにそこまでの人数は駐留させられないしな。
 メインの戦力は当然外側か。
 街に残った魔族はほぼ奴隷状態らしいから、
 警察力程度の戦力で足りるんだろうな。
 ――その治安維持軍の軍規は堕落しきってるみたいだけど。
 砦の戦力が一つ当たり2000、
 都市内部の治安維持部隊で1000ってところ。
 そのほかに、交代要員や休暇中の兵士1000が都市内部に
 いるって云う程度かな)
138: 以下、
魔族娘は俺の妹
139: 以下、
>>138
お義兄さん
140: 以下、
勇者「うーん」
魔族娘 おどおど
勇者「街の中にいる部隊と、そのー。外から帰ってくる
 兵隊は、なにがちがうんだ? 何か違いがあるのか?」
魔族娘「そのー、えっと、それは、違くて……」
勇者「ゆっくりでいいぞ」
魔族娘「ミブン? 街に残っている軍団は、
 ミブンが高いそうです。
 ……王様の親戚や、子供達なんだと、思います」
勇者(貴族が中心なのか……。
 街の中の安全なところで魔族相手にやりたい放題かよ)
魔族娘「宿舎にお金や……お酒……をあつめて
 毎晩、騒ぎを……魔族も、沢山捕らえられているそうです」
勇者(相当に悪い状況だな……。
 その気になれば、ゆるみきった貴族のバカ息子なんか
 1000だろうが2000だろうが消し炭に出来るけれど
 そうなったら周辺砦の1万近い軍勢が暴走するだろう。
 仮に人間の軍すべてを倒したとすれば、
 今度は魔族による民間人間に対する虐殺だ。
 人間全てを守るなんて到底出来ないぞ……)
145: 以下、
勇者「この街には、えーっと、さっきの酒場の
 親父みたいに、軍ではない人間も沢山いるんだろう?」
魔族娘 こくり
勇者「だよなー。相当多いのか?」
魔族娘「……多いです。酒場も、肉屋も、服も、
 野菜も、全部、人間のお店……魔族は、人間の
 半分くらいしかいないはずです」
勇者「魔族は奴隷なんだろう?」
魔族娘「ドレイ……わかりません……。
 でも、ひどい痛いことされて、仕事や、
 やりたくないこと……
 させられ……て……ます……」
勇者「そか」
魔族娘「負けたから……」
勇者「……」
魔族娘「魔族が負けたから、負けたのは、悪だから」
149: 以下、
勇者「魔族は、地獄だな」
魔族娘「……仕方ないです。負けたから」
勇者「これが……」
魔族娘「……」
勇者「これが勇者が勝ち取った戦果なのか……。
 俺たちが地竜王や妖将姫と戦って手に入れた
 魔族の拠点、開門都市はこうなる予定だったのかよっ。
 っていうか、人間が勝ったら魔界は全部こうなるのかよ。
 魔族が勝ったら、人間界は全部こうなってっ!」
魔族娘 ビクッ!
勇者「ちがっ。その、すいません」
魔族娘「は、はいっ」おどおど
勇者「……」
魔族娘「で、でも」
勇者「?」
魔族娘「東の砦の人は、あんまり乱暴……しないって。
 その代わり、街にもあまりきませんけど……。
 魔族なら、逃げたら東に向かえって……
 いわれてます……」
152: 以下、
勇者「んー」
魔族娘「く、黒騎士様?」
勇者「ん?」
魔族娘「お役に立てず、その……」
勇者「ああ、ないない。そんなことない。
 役に立った。情報が手に入ってありがたい」
魔族娘「はっ、はい。その……」
勇者「それにしても……。それだけじゃ……。
 いや、魔王なら金流れを追えって云うか……。
 情報が足りないな……。調査?
 街中でもうちょっと……」
魔族娘「そ、そのぅ……。粗末な物なのですが、
 く、く、黒騎士様さえ……よ、よろしければ」 そぉっ
勇者「脚 を ひ ら く なっ !!」
魔族娘「ひぃっ。す、す、すいませんっ!」
勇者「うわぁ、何で俺こんな事になっちゃってるんだよぅ!?」
155: 以下、
勇者とりあえず落ち着けw
156: 以下、
積極的
157: 以下、
――湾岸都市の商会、会議室
青年商人「ふぅーむ」
中年商人「どうだ? 性能的には精度があがったと
 銅の国の技術者も自慢していたがよ」
青年商人「いや、すばらしい。――生産の方はどうです?」
中年商人「何とか目処が立ったよ。三つの工房が
 協力してくれたからな。月産10個にはなる」
青年商人「ふむふむ。悪くはありませんね」
中年商人「苦労したよ。連中新しい技術に興味津々なのに、
 プライドだけは高くてね、まったく」
青年商人「もう一声」
中年商人「はぁ?」
青年商人「もう一声、作れませんかね。月産15」
中年商人「本気か?」
青年商人「ええ」
中年商人「そりゃまたどうして」
 とさっ
青年商人「南部諸王国からの報告書です」
160: 以下、
中年商人「これは……。戦か」
青年商人「そのようですね。極光島を奪い返すと」
中年商人「聖王都か?」
青年商人「聖王都と、今回は教会ですね」
中年商人「……」
青年商人「教会の方も何かと物いりなんですかね。
 魔族との戦いがないと、教会の求心力が
 低下してしまうとのことなんでしょうね……」
中年商人「金も集まらない、と」
青年商人「教皇選挙とのからみもあるでしょう」
中年商人「海戦かぁ。まぁ、商売の種にはなるがな」
青年商人「それはもちろん」
中年商人「それで羅針盤の増産か?」
青年商人「それもありますし、戦船の増産もはじめました。
 錫の国の造船ドックは押さえてあります」
中年商人「どう転ぶかね」
162: 以下、
青年商人「まぁ勝てば嬉しいですよ」
 ばさりっ
中年商人「海図か」
青年商人「極光島が確保できれば、西回りの交易路が
 開通できる。陸路に比べてかなり割安な輸送です」
中年商人「ああ、そうなるな」
青年商人「いま、南部諸王国の生産力はあがりつつある」
中年商人「お前の縄張りだな」
青年商人「ええ」こくり 「この流れを壊したくない」
中年商人「ふむ」
青年商人「それに、さる筋から南氷海の鰊(ニシン)を
 注文されています。相当な量の」
中年商人「どれくらいだ? いまでも鰊はあるだろう?」
青年商人「少なくともその5倍」
中年商人「鰊で宮殿でも建てるつもりか!?」
青年商人「鰊を麦に変える魔法だそうで」
164: 以下、
俺の妄想とまらねえええ
165: 以下、
中年商人「ああ、さる筋ってのはあれか、お前の姫君か」
青年商人「僕の星ですからね」
中年商人「お前が恋をするとはね。
 金貨と添い遂げるかと思ってたが」
青年商人「同床異夢なんて言葉もありますが
 彼女とだったら異なるベッドでも同じ夢を見られる」
中年商人「惚気か、敵わんな」
青年商人「しかし一方負けると、これは相当……」
中年商人「まずいか?」
青年商人「負ければ新しい戦艦の受注が増えるとか
 武器の追加発注が来るなんて云ううまみはありますがね」
中年商人「それもこれも、中央の。
 云ってしまえば教会の意向次第だろう?
 魔族がいる限り戦争をやめるわけにも
 行かないが、南部諸王国では政権交代が相次ぐと。
 そういうわけだな」
青年商人「どうなるかは判りませんがね」
中年商人「全ては、戦争次第か」
167: 以下、
青年商人はフルブライトなイメージ
168: 以下、
悪い虫は駆除せねばならん。
169: 以下、
でも惚れてる方が交渉は有利なんだよな
170: 以下、
――白夜の国、軍艦ドック
兵士達「……すごい数だな」
兵士達「しぃっ……」
兵士達「はじまるぞ」
 ザッザッザッ!
白夜王「諸君! 歴戦の勇士たる諸君!
 人間世界の守護の盾たる諸君っ!
 時は来た!!
 愚かなる魔族がこの母なる大地、
 光あふれる我が世界にその汚らしい手を伸ばしてから
 およそ15年!!
 我らが必死の防衛戦、我らが正義の戦は
 一進一退を繰り返し、ついには我らが光の領土
 極光島を失うに至った。
 われらが魔族の重要拠点、開門都市を制圧した時
 差し違えるようにして失ってしまった、
 大いなる失点であった」
王子「そりゃなにか? 俺の親父に喧嘩うってんのか、
 ああん!? このパーマ頭」
執事「若、若っ、聞こえてしまいます」
173: 以下、
追いついた!
支援させていただく
176: 以下、
白夜王「しかし時は来た! 聞け、勇士諸君よ!
 君たちの眼前にあるのは、世界から結集した
 軍艦である。その数200! 勇猛なる諸君が
 乗り込めば200の軍艦は、そのまま魔族の心臓に
 突き立てられた200の剣となろう!
 南氷海、極光島は魔族の精鋭、
 南氷将軍を僭称する盗人によって占拠されている。
 魔族の戦闘能力は確かに脅威である。
 大型魔族は様々な能力を持つだろう。
 しかし、数ではこちらが圧倒している。
 諸君らがその勇気を我に預ければ勝利は絶対である」
王子「おいおい、まじか? このおっさん
 船に乗せたら数なんて意味ねぇぞ」
白夜王「さあ、乗り込もう! 船出の時間だ。
 太陽は我らが勝利のために輝いている。
 魔族から極光島を取り返した暁には、
 大いなる恩賞が約束されるだろうっ。
 もっともはやく極光島にたどり着いた船には、
 船全員で金貨2000枚が支払われる。
 勇士諸君、その力を人間世界のために振るうのだっ!」
178: 以下、
――魔界、開門都市、略奪された神殿
カランッ
勇者「ここは、一層ひどいな……」
魔族娘「はい……。ここは、神殿です」
勇者「悪いな、案内頼んじゃって」
魔族娘「いえ、あの。沢山お金もらったから……。
 マスターは……その嬉しそうでした。あの……わたしも」
勇者「そうだ。魔族には神様、沢山いるんだろう?」
魔族娘「……ううう、そうです」
ザッザッ
勇者「そうか。人間には精霊様が1人だけだ。
 沢山いるといいよなー」
魔族娘「そうですか?」
勇者「神様に怒られた時、他の神様が匿ってくれるだろう?」
魔族娘「そう……かもしれません」
勇者「ふむふむ……。瓦礫が、すごいな……」
魔族娘「黒騎士さま……は、なんで……」
勇者「?」
179: 以下、
即興で書いてるんだろうけど、
それでも凄いな。
180: 以下、
>>179
ストックが1000スレ分あるらしいよ
183: 以下、
>>180
ねぇよ。全部リアルタイムだよっ!
おトイレ行くのも我慢してるよっww
188: 以下、
>>183
(トイレに)いっても…いいのよ?
187: 以下、
だまってろ
181: 以下、
魔族娘「なんで、人間なのに……魔王様の騎士ですか?」
勇者「あー。本当は騎士でも何でもないって云うか、
 説明が難しいんだけど……。
 つまり、なんというか魔王の物なんだ。俺は」
魔族娘「魔王様の?」
勇者「そう」 こくん
魔族娘「持ち物ですか」
勇者「そうそう」
魔族娘「じゃぁ、魔王様に……負けた……のですね」
勇者「へ?」
魔族娘「ちがう、ですか? ……ご、ごめんなさい。
 魔族は……魔族では、勝ったものが、負けたものを
 ……その、自由に……します……から。
 ま、間違えました……か?」おどおど
勇者「あ、ああ。そういうことか」
魔族娘「負けた……ですか」
199: 以下、
勇者「いや、それは違うな。
 ……いや、結果的にはそうなのか?
 でも違うような……」
魔族娘「?」
勇者「ちょっと難しい関係なんだ」
魔族娘「そう、ですか……」
勇者「この像は?」
魔族娘「片目の神様、です……。竜族の……神様。
 その他にも、沢山信じてます。……魔界では
 強い神様……です」
勇者「へぇ、どんな神様なの?」
魔族娘「賢くて、強い……槍を持った……
 魔王様みたいな……神様だそうです」 びくびく
勇者「どうしたの?」
魔族娘「私みたいな下級魔族は……入っちゃダメなんです」
勇者「あはははっ。こんな廃墟で何を今更」
204: 以下、
魔族娘「こっちの二つは……」
勇者「砕かれちゃってぼろぼろだなぁ」
魔族娘「カラスの像です……。
 多分、昔はそうだった、はず……
 こっちは『記憶』、右が『思惟』……です」
勇者「そう言う名前なのかな?
 物知りだなぁ」
魔族娘「神様の……お手伝いで……あちこちに、
 おしらせを……する、係で……賢いです。
 カラスは、良い子……です」
勇者「あははは。そっか。使いっぱに伝令させるか。
 そりゃぁ、確かに魔王によく似てる」
魔族娘「?」
傷病魔族「死ね……死ね、人間は死ねっ」
勇者「……?」
魔族娘「あ……あの……あっちへ、いきましょう」
勇者「あの声は?」
205: 以下、
これは強敵登場フラグ
206: 以下、
魔族娘「あのぅ、こういった廃墟には、
 戦で不具になった……その、魔族の人が……
 棲み着くんです。ご、ごめんなさいっ……。
 か、隠す訳じゃ……無いんですけど……」
勇者「うん」
魔族娘「あの、人間の黒騎士様は……その
 い、いやな……気分かなと……。
 あっちへ、いきま……せんか?」
傷病魔族「死ねっ! 我らが神都を奪った
 放漫なる人間め! 悪魔の侵略者!
 何千回でも呪われろ、我らが生活を! 我らが平和を!
 襲い、奪い、侵した貴様らには腐った沼の蛆だけが
 ふさわしい! 死ねっ! 死んで償えっ!
 三千年にわたって呪われるがいいっ!!」
勇者「いや……」
魔族娘「でも」
勇者「いいんだ」
207: 以下、
違った!
208: 以下、
傷病魔族「あはははは! 死ね死ね死ねっ!!
 貴様らに二度と安息など無い! 奪われた死者の魂が
 安らぐことなど無いと知れ、永劫が消滅するまで
 人間世界など常闇に包まれるがいいっ!!」
魔族娘「……」
勇者「……」
 ざっざっざ……
魔族娘「あの、ご、ごめんなさい。あ、れは」
勇者「……」
魔族娘「あんなひと、ばかりじゃ。その……ないです」
勇者「やっぱりさ。違うよ。違ったわ。さっきのさ」
魔族娘「?」
勇者「俺は魔王の持ち物だけど、
 負けたから持ち物にされたわけじゃない。
 勝ったら全てを得る、勝ったら正義。何をしてもいい。
 負けたから持ち物になる。負けたら何をされても仕方ない。
 そういうのじゃない。
 そういうのじゃない事実が俺なんだ。
 俺は……『丘の向こうへ続く道』だ」
209: 以下、
やばい 勇者以外全部女のキャラに見えてきた
210: 以下、
ワッフルワッフル
211: 以下、
――冬越しの村、村はずれの館
メイド姉「今月分の賃借対照表です」
魔王「うむ」
メイド姉「現金流量が増大しながら不安定です」
魔王「しかたない。新規事業を連続開拓している状態だからな」
メイド姉「損益計算書上は問題ありませんが」
魔王「この世界は金融能力が低いからな。
 ヘッジにも限界があるという訳か」
メイド姉「ヘッジ? ……とはなんでしょう」
魔王「危機に対する保険、だな。経理上の」
メイド姉「はい……。うーん、困りますね」
魔王「『同盟』内部には銀行に似た信用貸し付けの
 機構があると聞いたな。銀行という概念もどうにか
 広める必要があるのだろうが……」
メイド姉「手が足りませんか?」
魔王「そうだな」
213: 以下、
ぱさり
メイド姉「これは?」
魔王「おお、それか。火箭だ」
メイド姉「火箭……?」
魔王「ああ、単純な機構の火矢の一種だ。
 燃えながら飛んでいって、当たると炎が広がる。
 これはナフサを用いたもので、広範囲に対する
 攻撃に効果が見込めるな」
メイド姉「……なふさ?」
魔王「難しかったか? まぁ、武器だ」
メイド姉「……」
魔王「どうした?」
メイド姉「やっぱり、武器も作るんですよね」
魔王「……ああ。備えないのは愚か者だ」
215: 以下、
メイド姉「当主様」
魔王「なんだ?」
メイド姉「その……」
魔王「?」
メイド姉「戦争って、何なのでしょう?
 なぜおきるのですか? なぜ終わらないのですか?」
魔王「それは随分、難しい問いだな」
メイド姉「すみません」
魔王「なぜだろうなぁ」
メイド姉「……当主様にも判らないのですか!?」
魔王「判らないよ。私をなんだと思っていたんだ?」
メイド姉「この世で判らないことがない方かと」
魔王「私には判らないことばかりだよ」
メイド姉「……」
216: 以下、
しえn
218: 以下、
魔王「戦争は争いの大規模な形の一つだ」
メイド姉「……」
魔王「争いというのは、摩擦だな。
 異なる二つが接触した時に生じる軋轢と反発
 作用と反作用のある部分が争いなんだ」
メイド姉「難しいです」
魔王「村に2人の子供がいて、出会う。
 あの子は僕ではない。僕はあの子ではない。
 2人は別の存在だ。別の存在が出会う。
 そこで怒ることの一部分が、争いなんだ」
メイド姉「でもっ! 出会ったからって、
 争いになる訳じゃありません。
 出会って素敵なことだってあるじゃないですか。
 助け合ったり、挨拶をしたり、友達になったり遊んだり」
魔王「そうだな。だから、争いは、
 そう言う素敵なことの一部分なんだ。
 本質的には同じ物なんだよ」
219: 以下、
魔王の言葉…悲しいな
支援
220: 以下、
メイド姉「そんなこと信じたくありませんっ」
魔王「わたしもだ」
メイド姉「……っ」
魔王「でも、私が学んできたことによれば、そうなんだ。
 戦争は沢山の人が死ぬ。
 憎しみと悲しみと、愚かさと狂気が支配するのが戦争だ。
 経済的に見れば巨大消費で、歴史的に見れば損失だ。
 でも、そんな悲惨も、出会いの一部なんだ。
 知り合うための過程の一形態なんだよ」
メイド姉「これが、出会いなんですか?」
魔王「そうだ」
メイド姉「辛くて悲しくてひもじくて寒いだけじゃないですか」
魔王「でも、そうなんだ」
メイド姉「……」
魔王「出会いは必然にも似た運命、
 もしくは運命に近似した必然だ。
 しかし、その結果は違う。
 だからせめて……あがきたい」
222: 以下、
魔王「戦争は争いの一形態だが、争いの全てが
 戦争ではない。もっと他の方法で腕比べをしてもいいし
 村の子供達が競って可愛い娘に花を届けるのも争いだ」
魔王「また、争いは関係の一形態だが、関係の全てが
 争いなわけではない。友好的な関係や支援関係だって
 この世にあるのは事実だ」
メイド姉「じゃぁ、なんで戦争なんか」
魔王「それはわからないが、存在するんだよ」
メイド姉「……なぜ。なぜ?」
魔王「私は、必要だからだと思う」
メイド姉「そんなものが必要だなんておかしいです」
魔王「『いずれ卒業するために必要』だと。
 逆説的だが、そう言う事象もあるのかも知れない。
 最初から大人として生を受けることが出来ないように」
メイド姉「……」
魔王「いずれにせよ、私には判らないことだらけだ」
224: 以下、
――極光島沖合、南部諸王国艦隊
兵士「快晴! 風向き良しっ!」
兵士「腕が鳴るな」
士官「この分なら朝焼けのうちに上陸だ。
 見ていろよ魔族め、人間の武力、思い知らせてやる」
兵士「斧の手入れは怠りないか」
兵士「ぬかりない」
士官「反射光が目に入る。炭と油を混ぜて、
 金属には塗っておけ」
兵士「わかりましたっ!」
 ごぼごぼごぼ
兵士「ん? 北東に大規模な気泡ッ」
艦長「なんだ? このような場所で……」
225: 以下、
勇者ちゃんと戻ってくるかな
226: 以下、
そういや勇者は魔法使いを捜してたんだったな
忘れてたよ
支援
227: 以下、
 ごぼごぼごぼ
 ごばっ! ざばっ! ざばばばぁんっ!!
兵士「てっ! 敵襲ぅぅぅっ!! 巨大烏賊ですっ!」
兵士「射てぇ! 射てぇ!!!」
士官「な、なん……だと……!?」
兵士「うわぁぁ!! 空だ、空にもいるっ!」
兵士「ハーピーだぁっ! 耳をふさげぇ!」
艦長「石弓隊っ! 頭上を狙えっ!
 斧隊は触手を切り落とせっ!!」
兵士「うわぁぁ! うわぁっ!」
兵士「離れろっ! こいつ離れやがれっ!」
士官「勇戦せよっ! 一歩も退くなっ!」
 ミシィ、ミシィッ!!
兵士「み、水の中から魚人が狙って」
兵士「ぎゃぁぁ!?」
230: 以下、
兵士「死ねっ! 貴様ら魔族は、魔界へと帰れっ!」
兵士「遊軍艦が魚人の切り込み攻撃を受けています!!」
士官「支援だ! 回頭っ! 回頭しろ、操舵手っ!」
操舵手「舵輪が効きませんっ!」
兵士「触手が、艦長っ!!」
 ミシィ、ミシィッ!!
艦長「この音は、船体全てからっ!?」
兵士「18番、沈没っ!!」
兵士「灼けるっ! くそぉ、こいつら。酸をっ」
士官「水をっ! 水を掛けてくれっ!」
兵士「斧じゃダメだっ! 火矢を射込めっ!」
艦長「ダメだっ! やめろっ!!
 遊軍艦を燃やすつもりかっ!?」
兵士「先行艦隊、壊滅っ!」
艦長「転進だっ! 船足を止めるなぁ!!」
240: 以下、
――南部諸王国軍、軍議
白夜王「……」
氷雪女王「戦船200隻のうち、かえってこれたのは15隻
 生き残ったのは500人足らず……と」
冬の王子「大敗、ですね」
白夜王「……っ」
鉄槌王「ふんっ。ワシは反対したではないか。
 水棲魔族への攻略無くして数で押し切ろうなどと
 自殺行為ではないかと」
白夜王「うっ、うるさいっ!!」
鉄槌王「うるさいとはなんだ!!
 貴様は大口を叩いていたではないか!!
 勇気があれば敗れることはないなどと。
 この様は何だ。指揮官のみおめおめと逃げ戻り」
白夜王「我は王族なのだっ、生き残る義務があるっ」
242: 以下、
しえn
243: 以下、
鉄槌王「それもこれも、貴様が旗艦を転舵させている
 あいだ身を挺してかばってくれた冬の国の戦船の
 おかげではないかっ!!」
白夜王「頼んだわけではないわっ!」
冬の王子「……ッ」
鉄槌王「心中、お察しいたす」
氷雪女王「冬の王は勇敢な方でした」
冬の王子「いえ、父らしい最期でした」
白夜王「はんっ! らしいもらしくないも無かろう。
 そもそもあの島が奪われたのも、冬の王がしっかりと
 防備を固めていなかったためではないか。
 命をかけてかばったくらいでその失点が
 消えるわけでもないわっ」
鉄槌王「貴様ッ。南部の武人の矜恃を何処へやった!?」
氷雪女王「そうです。あの当時、聖鍵遠征でわれら
 南部諸王国の兵力は殆ど出はからっていました。
 総力を挙げた侵攻作戦だったのです。
 それこそ、人間世界の防備がおろそかになるほどの」
249: 以下、
白夜王「それを云うならば、今回の作戦だって
 聖王国と光の教会からの提案によるもの。
 その提案を断れる南部諸王国かどうか、
 お前達も自分の胸に手を当てて考えてみるがいい。
 そうだっ!
 貴様もっ!
 貴様もっ!
 そこの小僧、お前もだっ!!」
白夜王「冬の王に罪がないというのなら、
 我の罪もないわっ。
 我は艦隊を率い、総意によって総大将を勤めたまで。
 その依頼は聖王国と光の教会からだったのだ。
 200の船が壊滅したからどうだというのだ。
 これでまた新しい船が手に入るではないかっ!」
鉄槌王「云わせておけば……」
 バンッ!!
冬の王子「黙れっ」
253: 以下、
白夜王 びくっ
氷雪女王「……王子」
冬の王子「父は父の信じるところ為し、
 その過程で命を落としたのだ。そのことで、白夜王。
 貴公を責める気持ちは私にも、冬の民の1人に
 至るまで持ってはいないっ」
白夜王「ほらみろ、そうではないかっ」
冬の王子「しかし、だからといって
 この海戦敗北の責任を免れえるはずもない。
 無策によって6000の将兵の命を散らしたのだ。
 その意味、この会議に集った王族であれば
 判らないはずは無いと考える」
白夜王「誰に向かって口をきいている、
 くちばしの黄色いひよっこがっ」
鉄槌王「この会議に出た時点で、各国の代表だ。
 わきまえよ、白夜王っ」
255: 以下、
白夜王うぜぇwww
256: 以下、
この白夜王海に沈めようぜ
257: 以下、
無能ってレベルじゃねーぞ白夜王w
258: 以下、
氷雪女王のイメージはメーテル
260: 以下、
白夜王「はっ! よかろう。貴様らがそう言うならば、
 どのような責任でもとろうさ。はん? なんだ?
 我の首でも欲しいのか? 我の首があれば、
 中央や教会が納得するとでも?」
鉄槌王「……」
氷雪女王「常識的に考えて、賦役か資金援助でしょうね」
白夜王「良かろう、払おうではないか。
 だがな、冬の。聞いておるぞ?」
冬の王子「何をです」
白夜王「冬の国が最近なにやら、湖畔修道会と1人の
 天才学者をおしたてて、巨大な利益を独占していると。
 何でも新しい作物や風車を通して、
 かの『同盟』までをも巻き込み、
 多額の戦費をたくわえているそうではないか」
冬の王子「農業に工夫を加えたのは事実だ」
白夜王「そのうえで、なお白夜の国からの資金援助を
 欲するというのか? 冬の国は金の亡者というわけだ。
 南海の槍武王の末裔が聞いてあきれるわっ!」
鉄槌王「……貴様ぬけぬけと」
266: 以下、
冬の王子「……潮時、か」
氷雪女王「?」
冬の王子「いえ、会議を続けましょう」
鉄槌王「そうだな。こうなっては善後策をうたねばならん」
氷雪女王「とはいえ、中央からの妖精を放置するわけにも
 行かないでしょう。このままでは財政にどのような
 圧力を掛けられるか」
冬の王子「使者はなんと?」
氷雪女王「追加の援助が必要であれば、戦船で払う、と」
鉄槌王「ふんっ。どうやっても戦争をさせなければ
 気がすまんようだな。自分たちは安全なところに
 隠れておれば、どんな命令でも出せるというわけだ」
氷雪女王「どれだけの犠牲が出ればよいのか」
冬の王子「聞いてください。会議の方々。
 中央や光の教会は意図は、戦意の高揚です。
 勝てば良し、もし負けたとしてもその被害をテコに、
 魔族の脅威を全世界に訴えて、次の聖鍵遠征軍を
 起こすつもりだとしか思えません」
270: 以下、
冬の王子「どちらにせよ、我らの手には選択権がない」
白夜王「それみろ。結局は狗にすぎん」
鉄槌王「……」 氷雪女王「……」
冬の王子「犬で結構。犬なりの意地の見せ方を
 白夜王にはお目に掛けるとしよう」
鉄槌王「まさかっ」
氷雪女王「いけませんっ」
冬寂王「いまを持って、冬寂王の名を継がせていただこう。
 この冬のあいだに、第二次極光島奪還作戦を決行する」
鉄槌王「本気なのかっ!?」
冬寂王「私は若輩ゆえ、何の発言権もなかったが
 その罪の重さは魂で感じている。
 ここでもう一度懺悔させていただきたい。。
 勇者を行かせたのは、
 勇者を葬り去ったのは我ら四人の罪だ。
 南部諸王国の罪なのだ。
 この世界から星が一つ消えたのは
 この会議が追うべき重責をたった1人の勇者に
 負わせたからだ」
271: 以下、
鉄槌王「……」 氷雪女王「……」
白夜王「たかが兵卒の1人ではないかっ!」
冬寂王「中央の太鼓持ちに成り下がった輩には判らぬ。
 王族には、王族なりの信義というものがあるのだ。
 それは時に非情であり……。
 ――我が父のように、背くこともある。
 その王族は一生の間恥を背負ってゆくのだ」
冬寂王「私は前王の子として、極光島を奪還し
 勇者が為すべきだった光の千分の一でも
 南部の王国にて肩代わりしなければならない」
白夜王「出来るかな、小童が」
冬寂王「その答えは戦場で証明しよう。失敬」
バタンッ!
執事「若様……」
冬寂王「会議は決裂だ。……至急、女騎士へ使いを出せ」
執事「女騎士に?」
冬寂王「この戦には総司令官が必要だ」
274: 以下、
つかれたーQKしてきまふー
よーるごはーん
のっとってすみませんでしたー
278: 以下、
>>274
いやいやいやいやいや、
書き溜めなしでここまで書くなんて、すげーよ。
だから、また来てください。
281: 以下、
>>274
お疲れ様
284: 以下、
>>274
乙カレー
しっかりトイレに行くんだよ!
275: 以下、
ワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフルワッフル
279: 以下、
即興でこれはすさまじいと思ふ
保守
313: 以下、
ほう
360: 以下、

361: 以下、

383: 以下、
――大陸街道、関所
義勇軍兵「ああ、そうだ。俺も南氷海での戦いへ参加する」
若い傭兵「俺もだ、もし南氷海へ行くのなら一緒に行かせてくれ」
遊歴騎士「わがはいもそうだ。是非頼む」
関所の兵士「おおいな、今日だけで15人は通ったぞ」
関所の兵士「ああ、何時にない勢いだな」
義勇軍兵「今回の遠征は、とうとう若い英雄、
 冬寂王が立たれると聞いたんだ」
若い傭兵「ああ、槍武王の末裔、代々勇猛をもってなる
 冬の国の若い王が軍を挙げるときいたぞ」
遊歴騎士「しかも、将軍は若く美しい、あの伝説の
 女騎士だというじゃないか」
義勇軍兵「おお! 勇者の右の翼と呼ばれた!!」
若い傭兵「聞いたことがあるぞ!」
遊歴騎士「『黒点の射手』と呼ばれた左の翼、弓兵と並んで
 魔王軍の並み居る将軍をたった四人で次々と打ち破った
 勇者の仲間。伝説の英雄の一人だ!」
386: 以下、
義勇軍兵「実は俺の家族も後から来るんだ」
若い傭兵「そうなのか? 奇遇だな。俺もだ」
遊歴騎士「お前たち何を。戦場に家族づれだと?」
義勇軍兵「いや、そういう訳じゃないんだが」
若い傭兵「うむ。実を言えば、最近冬の国は豊かになったと
 聞いてな。商業も盛んになってきたとか」
遊歴騎士「そんな噂があるのか?」
義勇軍兵「ああ。農奴の税も、賦役や作物ではなく
 銀貨で治めても良いと云うことらしいんだ」
若い傭兵「俺もそう聞いた。銀貨で払って良いのならば
 傭兵の給金で払えるじゃないか? 俺たちの家族は
 やっと解放された農奴なんだ。冬の国へ行けば
 小さな畑でも手に入れるかもしれない」
遊歴騎士「そんなうまい話があるものか」
義勇軍兵「ダメで元々だ。どうせ戦って死んでいくしか
 俺たちみたいな半端者には残されていないんだ」
393: 以下、
遊歴騎士「まぁ、そうともいえるが」
若い傭兵「湖畔修道院の修道士が、紹介状を書いてくれたしな」
義勇軍兵「紹介状?」
若い傭兵「ああ、これをもってゆけば、
 馬鈴薯の種芋をくれるというんだ」
義勇軍兵「種芋? なんだそれは」
遊歴騎士「わがはいもしらんな」
義勇軍兵「小麦の種のような物らしい」
義勇軍兵「ふむ、すぐにくれればいいのに。道中食べれたろうに」
若い傭兵「いや、それをつかって、
 馬鈴薯を増やして欲しいと云うことなんだろう。
 俺たちの家族は、もうずっと長い間、
 自分たちの畑というものに憧れてきたんだよ」
遊歴騎士「その気持ちはわからんでも無いな」
義勇軍兵「なぁ、俺にもその紹介状はもらえるだろうか?」
若い傭兵「ああ。この紹介状をくれた修道士は、
 人数は向こうで相談してくれと云っていたんだ。
 家族が来たら俺と一緒に行ってみようじゃないか」
394: 以下、
支援
395: 以下、
――冬越しの村、夜の修道院
ばすん、どすん! ばたん!
女騎士「よし、こうだっ! この荷物めっ!」
女騎士「えいっ! えやっ!
 何で素直に荷造りされないんだっ! えやっ!」
こんこん
女騎士「開いている、済まないが今手を離せないんだ」
魔王「夜半、すまない。良いだろうか」
女騎士「あ? ああっと。す、すまない。学士様だったのか
 わたしはてっきり修道士かと」
魔王「いや、修道士殿に頼んでお邪魔させて貰ったのだ」
女騎士「そうだったのか」
魔王「……」きょろきょろ
女騎士「すごい有様だろう?」
魔王「もう、荷造りはされたのだな」
女騎士「もともと女らしさに欠ける性格でな。
 その気になれば旅支度など簡単に整ってしまう」
396: 以下、
ゴクリ…
397: 以下、
魔王「そうなのか。……よいかな?」
女騎士「ああ。すまないな散らかっていて。
 その寝台に腰を掛けてくれ」
魔王「……」
女騎士「……えいっ! とやっ!」
魔王「……」
女騎士「どうしたんだ? 学士様」
魔王「いや、なんだか慌ただしくてな」
女騎士「ああ。わたしの出発か?」
魔王「うん」
女騎士「指名頂いたことだし。せいぜい暴れ回ってくるよ。
 心配はしなくて良い。修道会の仕事はわたしなんか居なくても
 全て滞りなく回るようになっている。
 そもそも最初からわたし抜きでも回っていたんだ。
 わたしは運営にはとんと不向きだからな」
魔王「そうではない」
女騎士「……」
魔王「そうではないんだが」
399: 以下、
女騎士「なんだ、随分歯切れが悪いな」
魔王「……」
女騎士「わたしのことなら心配はいらない。
 確かに勇者に及ばないかもしれないが、
 そこらの魔族にやられるような鍛え方はしていないよ。
 あははははっ。
 たとえ船が沈んだって泳いで帰ってこれる。うん」
魔王「……」
女騎士「どうした?」
魔王「その……。この一年間、わたしの我が儘に
 さんざん付き合わせて」
女騎士「馬鈴薯のことか? 四輪作かな? 最初に云ったけれど
 それらはぜんぶ我が修道会の理念に照らして正しいから
 協力したんだ……。
 だから遠慮することなど無い。
 むしろ修道会一同、深く感謝している」
魔王「そうではなく、学院の指導だとか」
女騎士「ああ。剣と軍事教練か?」
魔王「そうだ」
401: 以下、
支援
403: 以下、
魔王は優しい子だな。
405: 以下、
ああもう魔王ナデナデしてあげたい
408: 以下、
女騎士「あれは良い運動になる。ストレス解消にも。
 それにね。適度な燃焼をさせないと脂肪が肉についてしまう。
 肥えてしまうからなぁ?」ちらっ
魔王「ううっ……。うう」
女騎士「言い返してこないのか。
 貧乳だの何だの。つまらないな。
 その点ではあの目が目メイドの方が手強いか」
魔王「その、女騎士殿は」
女騎士「うん?」
魔王「わたしは……その、幼いときから、ずっと……
 部屋の中で育ってな。狭い家ではなかったのだが。
 一人で……育ってな」
女騎士「貴族の出だったのね」
魔王「うん、そんなものなのだ……」
女騎士「それで?」
魔王「だから、同性の親しい人は一人しかいなくて。
 それはメイド長な訳だが」
女騎士「ふむ」
魔王「その、女騎士殿は。わたしにとって、いってみれば」
女騎士「……」
魔王「友達に一番近い存在だというように、
 わたしの推測では、先日、そう結論したのだ」
410: 以下、
女騎士「……」
魔王「もちろん、女騎士殿がどう思ってるかと
 わたしの推論は何の関係もなくてだな、
 これはいわばわたしの側の勝手な定義付けというか、
 境界条件の曖昧な主観的な分類に過ぎないのだとは
 判っているんだがな」
女騎士「……」
魔王「その女騎士殿が、将軍として戦場に出向く。
 この戦は何もわたしと無関係なわけではない。
 状況に照らせば、わたしの意志がバタフライ効果的に
 影響を及ぼしたことは想像に難くないのだ。
 しかし、それなのにわたしは……」
女騎士「……」
魔王「わたしは、まだ躊躇ってしまい、
 手を下せない事がいくつもあるのだ。
 わたしは、こんなにも愚かで弱い。
 毎日のように愚かになっていくような気さえする。
 ――例えば、硝石と黒色火薬がそうだ」
414: 以下、
魔王「それがあれば戦局は有利に展開できるのは判っている。
 死者の数を2桁オーダーで減らせる可能性もある。
 密かに冶金師への依頼も行い、研究も進めていた。
 でも、それでもどうしても踏ん切りがつかないのだ。
 それを手渡せば、戦には勝てるかもしれない。
 でも、それを手渡してしまったら、
 もう二度と戻れないのではないか。
 そう思うと、笑ってくれるが良い。
 手が震えそうになる」
女騎士「……」
魔王「あの日わたしは誓ったはずだった。
 勇者の手を取って。……どんなことでもすると。
 願いを叶えるためだったならば、
 たとえこの身体がこの命が
 どこともしれぬ道ばたで腐れ果てようと気にはしないと。
 幼いときから学んできた書物と情報海以外の
 何かを見るためにだったら
 どんな物だろうが生け贄に差し出しても良いと。
 ……でも。
 なぜだか判らないが、わたしはどんどんと
 弱くなってゆく。どのような技術でも渡してしまい
 その結果世界がどう変わるか見てみればいいのに。
 ……その勇気がでないんだ」
415: 以下、
気になって眠れない
417: 以下、
世界はひとつしかないからなあ
418: 以下、
魔王「これから、戦場へ赴く……友に。
 それは酷い仕打ちだと思う。酷い裏切りだと思う。
 わたしは女騎士殿と何の契約も交わしていない。
 修道会と技術頒布の契約を交わしただけだ。
 だから、わたしが女騎士殿に感じる
 この罪悪感は無意味な物なのだ。
 そのはずだ。
 しかし、それでも胸からぬぐえない」
女騎士「まぁ、要するに」
魔王「……」
女騎士「そのブラックパウダーとかいうのは
 特性の広域殺傷用魔法のような物でしょう?」
魔王「ああ」
女騎士「すごく強力で、すごく便利で、素人でも
 使えちゃうかもしれないけれど、いってみれば
 そういうものでしょう?」
魔王「そうだ」
女騎士「わたしはそんな物が無くても負けないから」
420: 以下、
魔王「それだけじゃない。……わたしは」
女騎士「……?」
魔王「女騎士殿に嘘をついているんだ」
女騎士「……」
魔王「ずっとみんなにも嘘をついている」
女騎士「……」
魔王「だから、今夜はここへ来たんだ。
 これもまたわたしが望んだことだから。
 かつて見たことのない『丘の向こう』のひとつだから。
 女騎士殿。
 わたしは……。
 わたしは魔王なんだ」
女騎士「……」
魔王「……」
女騎士「わたしが、湖畔修道会の修道院長だってしってるよね?」
魔王「ああ」
女騎士「光の精霊に仕えていることも」
魔王「もちろん知っている」
421: 以下、
はわわわわ
423: 以下、
これには女騎士も苦笑い
427: 以下、
女騎士「では、私、女騎士が
 聖なる光の精霊の信徒の一人として
 湖畔修道会の修道院長として
 魔王、あなたの告悔を受け入れましょう」
魔王「え?」
女騎士「あなたは友に嘘をついた。
 それを友と精霊に告白をした。
 あなたの罪は洗い清められた。
 何の問題も有りはしない」
魔王「魔王なのに……?」
女騎士「懺悔の内容は嘘をついたことでしょう?
 それとも、なに? 魔王であることに罪の意識があるの?」
魔王 ぶるぶる
女騎士「勇者を横取りしようとしたこと反省してるの?」
魔王 ぶるぶる
女騎士「じゃ、この件はそれで終了で良いでしょう。
 湖畔修道会はごちゃごちゃした儀礼苦手なのよ」
430: 以下、
女騎士かっけぇ!
431: 以下、
なんという男前な女騎士
勇者の評価は妥当であったか
434: 以下、
ぶるぶる可愛い
女騎士男らしい
439: 以下、
魔王「し、しかし!」
女騎士「いいじゃない。手早くて」
魔王「それじゃ……女騎士殿はっ」
(やー。わるいなぁ。女騎士よっ。
 俺ちょっとさ、また魔界へいってこなきゃならねんだわ!)
(そんでさ、申し訳ないけど、俺の代わりに
 剣の先生やっといてくれねぇ? ひよっこどもだから
 面倒くさきゃ毎日走らせておけばいいよ。
 逃げ足ってのはいつまでたっても重要だからさ)
(そんでさ)
(やー。いいづらいな、ほれ。あれだよ、察しろよ)
(うん、そうそう。あいつ魔王でさ?。
 痛っ!? ま、ま、まじ。や、やめて!? 両手剣は止めて!)
女騎士「何の問題もない」
(な、頼むよ。ほんと。土下座するから。
 あれは魔王だけど……。その、悪いやつじゃないんだ。
 頭はぶっ飛んでるし、常識ずれてるけどさ。
 義理堅い、約束を破るヤツじゃないんだよ)
女騎士「何の問題もないんだ」
440: 以下、
女騎士…
はあ、悲恋だなぁ…
442: 以下、
あれ?勇者カッコ良くね?
445: 以下、
良き友だ
447: 以下、
女騎士「おい、魔王!」
魔王「お、女騎士殿……」
女騎士「こうなったら『殿』なんてつけるのは
 やめにして欲しいな」
魔王「……それは」
女騎士「たしかに、勇者はあなたと契約をした。
 あなたと勇者の間には特別な絆があるかもしれない。
 それはまぁ……。
 悔しいけれど、仕方ない。認める」
魔王「……」
女騎士「でもね、絆は一つじゃない。
 わたしは勇者に信頼されたんだ。それはわたしの宝だ。
 わたしは……わたしだって勇者を裏切らないっ」
魔王「女騎士殿……」
女騎士「だから心配なんてしないで。こんな戦で
 わたしが毛筋ほども傷つくなんてあり得ない。
 まだまだ降りるつもりはないんだからねっ」
456: 以下、
――冬の国、海岸資材集積地
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!」
開拓民「よーそー。ようそー」
開拓民「あげろー! もっとあげろー!!」
冬寂王「どうだ?」
士官「はっ! これは冬寂王! 云って頂ければ報告を
 お持ちしましたのに」
冬寂王「足が不自由な年寄りじゃねぇよ」
士官「作業は順調であります」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!」
冬寂王「よー!! 精が出るな!!」
開拓民「あんれ! 王様だよー!」
開拓民「王様だー!」
開拓民「冬寂王だー!」
冬寂王「すまねぇががんばってくれ! 夕暮れになったら
 宿舎に熱い酒でも届けさせるからな!」
開拓民「任せてくだせぇ、王様!」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい! 王様のために木を切るよ!」
458: 以下、
支援
459: 以下、
冬寂王「みんな表情に力があるな」
士官「王が回ってるお陰ですよ」
冬寂王「何ほどのことも出来てやしないさ。
 おお、丁度良いところに」
漁師「おお、王様。戻ってきました」
冬寂王「アレはどうなってる?」
漁師「近いですだ。今年も必ず」
冬寂王「どれくらいになるかね」
漁師「年越しをしてから、2週間ほどかと」
冬寂王「ふむ」
士官「野営地の拡充を検討すべきですね」
冬寂王「足りないか?」
士官「志願兵が……これは大陸中央部からですが
 思ったよりずっとやってきています。このままでいくと
 今の2倍の野営地があっても足りないかもしれません」
冬寂王「ふむ、そっちの手を先に打ってくれ。
 開拓民が必要なら、ふれを回せ」
冬寂王「で、あるならば外套と手袋が必要だ。
 指が氷っちまったら作業も何もないからな」
青年商人「その件はわたしが対応しましょう。
 『同盟』の名にかけて」
460: 以下、
ほいさ、支援
462: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、臨時作戦本部
執事「はっはっは。お久しぶりでございます。
 女騎士殿、お変わりないようで欣快に堪えません」
女騎士「爺さんもまったく変わらないな」
執事「ほっほっほ。女騎士殿もお胸のサイズが変わらないようで」
女騎士「斬るっ!」
執事「にょっほっほっほ。にょっほっほっほっほ」
女騎士「その妖怪じみた動きっ! いい加減にしろっ!」
執事「にょっほっほっほ。これは森の中で密かに動くための
 弓兵独特の穏行術ですよ、にょっほっほっほ」
女騎士「ええーい、だから爺さんは昔から苦手なんだっ!
 じっとしろっ! そのヒゲをさっぱりつるつるにしてやるっ」
執事「おや、まさかまだつるつるなのですか!?」
女騎士「??っ!!!」
463: 以下、
急にキャラが立ったw
464: 以下、
なん……だと……!?
467: 以下、
執事「にょっほっほ! まだまだこんな物ではありませんよ」
女騎士「ええーい! 器用に腰だけ分身するなっ!!」
執事「まだまだ増えますぞっ!」
冬寂王「あー。なんだ。本当に仲が悪いのか?」
女騎士「こ、これは冬寂王っ!」
執事「若っ。のぞき見とはちとはしたないですぞ」きりっ
冬寂王「……」じー
執事「こほん。女騎士殿、こちら冬の国の冬寂王でございます」
冬寂王「……」じー
女騎士「……なんだその変わり身」
執事「何のことでございますかな?」
冬寂王「爺はこうだったのか?」
女騎士「最初から最後までこうでした」
執事「な、なんのことですかなっ!?」
冬寂王「我が国物のがご迷惑をおかけして申し訳ない」
女騎士「いえ、仕方有りません。しつけをしてください」
執事「若っ!」
468: 以下、
ほんとおもしろい
472: 以下、
冬寂王「ともあれ呼集に快く応じてくださって
 感謝してもしきれません、女騎士殿」
女騎士「顔を上げください。一国の王ではありませんか」
冬寂王「いえ、我ら一同あなた方には返しきれないほどの
 借りがあります。そのせいで、爺など連絡を渋る始末で」
女騎士「そうなのか?」
執事「胸が育つ時間を猶予で差し上げたかったのです」
女騎士「斬るっ」
執事「にょっほ……こほん、こほんっ」
冬寂王「早で悪いのですが、こちらへ」
女騎士「は、その方が助かります」
冬寂王「これはこの近辺の地図になります」
女騎士「かなり正確ですね」
執事「わたしが直々に指図して作りましたからな」
冬寂王「だ、そうです」
女騎士「加齢臭がしますね」
執事「なっ!?」
冬寂王「では、戦略の概要を検討するとしましょう」
女騎士「お聞きしましょう。新しき英雄との噂
 我が友の二人の代わりに見届けさせて貰う所存です」
474: 以下、
さて、良い時間ですんで
寝ても良いですか? ですか?
トイレはちゃんと行ったから平気です。
もう子供じゃありませんからねっ!
477: 以下、
>>474
お漏らしフラグktkr

478: 以下、
乙だ
480: 以下、
乙、ゆっくりやすんでね?
482: 以下、
ほす
484: 以下、

488: 以下、



494: 以下、
ほす
510: 以下、
続き楽しみ
529: 以下、
――冬越しの村、降り込める雪
小さな村人「ほーぅい! ほぅい!」
中年の村人「寒いねぇ」
鋳掛け職人「まったくだぁよ」
小さな村人「今年の雪は大粒だなや」
中年の村人「ぽってりした感じだでなぁ。年が明けてから
 急に寒くなるかもしんねだなぁ」
鋳掛け職人「冬籠もりの準備は終わったけぇ」
小さな村人「ああ、今年はよくがんばっただぁよ」
中年の村人「うちでも、今年は倍もベーコンを作っただ。
 それなのに、豚は去年の3倍も居るだぁよ」
鋳掛け職人「ああ、カブなのかい?」
小さな村人「そうだねぇ。今年はイノシシも捕れたし」
中年の村人「何年ぶりだろう、こんなに豊作な冬は」
鋳掛け職人「良かったねぇ。うちもこの冬に、
 注文して貰った農具の直しを全部やっちまわねぇと」
小さな村人「豚っ子の小屋を少し手直ししてやんねぇと」
中年の村人「雪の中でか? そりゃいそがねぇと!」
530: 以下、
来てたのか
支援
532: 以下、
舞ってたぜ
533: 以下、
鋳掛け職人「そういえば、学士様が来てもう1年以上だなや」
小さな村人「ああ、そうだなや」
中年の村人「学士様には世話になっとるだなぁ」
鋳掛け職人「ああ、そうだそうだ。修道院が出来てから
 オラの所にもお客がたくさん増えただぁよ」
小さな村人「考えてみたら、村の人も増えただなや」
中年の村人「ああ、そうだ。今年のお祭りはきっと賑やかだぞ!」
鋳掛け職人「年越祭か?」
小さな村人「年越祭だ!」
中年の村人「ああ、楽しみだなやぁ!」
鋳掛け職人「一年で一番良い日だなや」
小さな村人「今年は戦に行ってる人もいるんだけども」
中年の村人「ああ、そうだ。修道院で、戦に行ってる人に
 年越祭の届け物を集めるっていってたなや」
鋳掛け職人「そうかぁ。ジョッキを送ったら使って
 もらえるだろか??」
小さな村人「鋳掛けさんのジョッキなら大歓迎だでよ!」
中年の村人「おら、ベーコンおくるべぇか。今年は沢山出来たし」
小さな村人「じゃぁ、おらも何か贈り物用意せんとなぁ」
535: 以下、
――冬越しの村、村はずれの館……年越祭の夕べ
メイド妹「?♪ ふふぅん?♪」
メイド長「料理の準備は?」
メイド妹「でーきました?♪」
メイド長「語尾を不必要に伸ばさない」
メイド妹「はぁい」うきうき
メイド長「まったく……。そんなに楽しみですか」
メイド妹「それは楽しみだよう!」
メイド長「よく判りませんね」
メイド妹「眼鏡のおねーちゃんは引っ越してきたから。
 年越祭はこの国では一番大きなお祭りだよ?」
メイド長「ふむ」
メイド姉「そうなんですよ?」
メイド長「ああ、メイド姉。書類整理はどうでした?」
メイド姉「はい。帳簿整理も、出納管理も一段落しました
 荷物にはタグを全てつけましたので、明日にでも、
 人手を借りられれば修道院の倉庫へ移せます」
537: 以下、
メイド長「ありがとう。それで……」
メイド姉「はい?」
メイド長「そんなに賑やかな祭りなのですか?」
メイド姉「賑やか、と云うのとは違いますが……。
 この地方の冬は厳しくて、ほぼ四ヶ月は
 ろくに屋外には出られません。
 長い冬の間は家畜の世話をするくらいしかないんですよ。
 もちろん、細工物をしたり、繕い物をしたり、
 夏の間に出来ないことはしますけれどね。
 長い冬の間、大人たちは、そういった細かい仕事をしながら
 退屈を紛らわせます。
 子供は新しいお話を覚えたり、羊の世話を覚えます。
 年頃になった女の子は絨毯を編むことを覚えたりしますね。
 それもこれも開拓民の話ですが……」
メイド長「……」
メイド姉「農奴はもっと惨めですが、それでも冬の寒さだけは
 平等です。長い間表にも出られず、じっと火を守って
 春を待つんですよ? そんな長い冬の間の最大の楽しみが……」
メイド妹「年越祭りなんだよ♪」
539: 以下、
メイド姉「新年を迎える日を挟んで四日間が年越祭です。
 ご馳走を作って、プレゼントを交換するんです。
 農奴はプレゼントを用意することは難しいですが、
 それでも精一杯のご馳走を作ります。
 このときばかりは、地主の方も振る舞いをして
 農奴にベーコンやエールなどを訳惜しみなく与えることも
 よく見られます。みんなで歌を歌ったり、運が良ければ
 吟遊詩人や旅人の珍しい話を聞いたりします。
 年越祭は、長い冬をすごすこの国の人の
 一番楽しみにしている日なんですよ」
メイド妹「眼鏡のおねーちゃん、眼鏡のおねーちゃん」
メイド姉「妹、メイド長様と仰い」
メイド長「お姉さんでかまいませんよ?」
メイド妹「おばさんって云うと怒る……」
メイド長「吊されたいんですか?」ちらっ
メイド妹「……え、えっと。眼鏡のおねーちゃん。
 踊りに行っても良いんだよね?」
メイド長「ええ、かまいませんよ。
 そう言うことならば、是非いってらっしゃい」
魔王「うむ、そうだぞ。行ってくるべきだな」
メイド長「あら、当主様。いらしてたんですか?」
540: 以下、
魔王「そうか、そのような素晴らしい祭りであったのか」
メイド姉「はい」
メイド長「どうされました?」
魔王「いや、さきほど村長と修道士が招待に来たのだが、
 生返事をしてしまったのだ」
メイド妹「えー。よくないよぅ」
メイド姉「こらっ」
魔王「もっともだ。良くない事だ。反省しよう」
メイド妹「当主のおねーちゃんも一緒に行こう?
 あのねー。男の子もいっぱい居るんだよ。
 おねーちゃんはおっぱい格好良いから、誘われるよ?」
メイド姉「こ、こ、こ、こらっ」
魔王「うーん。それはありがたい申し出だが
 遠慮しておくとしよう」 なで
メイド妹「えー」
魔王「メイド長」
メイド長「はい?」
魔王「後で村長の家に林檎酒を1樽とどけてくれないか?
 ほら、味見とか云って商人が送ってきたのがあっただろう」
542: 以下、
メイド長「よろしいのですか?」
魔王「いいだろう? わたしたちでは飲みきるものでもないし」
メイド妹「わたしあとで馬車頼んでくるよー!」
メイド姉「そうね。樽を運ぶのは私たちには無理ね。
 馬丁さんによろしくね」
メイド長「賄賂は空振りですよ、商人様。
 まぁ、商人様には泣いて貰いましょう」
魔王「?」
メイド妹・姉 こそこそ
メイド長「どうしたんです?」
メイド妹「ドジャーン!!!」
メイド姉「えっと」
メイド長「?」
メイド妹「年越し祭りのプレゼントで?っす!!」
メイド姉「大きな物は用意できなかったのですが……」
543: 以下、
支援
544: 以下、
メイド妹「当主のおねーちゃんには、これですー!」
魔王「これは……?」
メイド妹「ぶらぶら勇者様人形でーっす!」ぶんぶんっ
メイド姉「お恥ずかしい」
魔王「あはははは。すごいではないかっ! くれるのか?」
メイド妹「プレゼントですっ」
メイド姉「わたしからは、スズランの香水です。
 秋口から集めて作ったんです。修道院の資料にありまして……」
魔王「ああ。嬉しいぞ。ありがとうっ」
メイド長「あらあら、まぁまぁ」にっこり
メイド妹「眼鏡のおねーちゃんにはこれでーっす!
 二人で作りました?!!」
メイド長「え? わたしにもいただけるのですか?」
メイド姉「はい。新しい飾りエプロンなのですが」
メイド長「こんな……」
メイド妹「刺繍はスズラン、お姉ちゃん作っ! でぇす!」
魔王「わたしとおそろいだな?」
メイド姉「はいっ」
546: 以下、
メイド長「でも、こんな」
メイド姉「あっ。や、やっぱり。縫い目が不揃いですか?」
メイド長「とんでもない! でも……」
魔王「私たちはプレゼントなぞ、用意していないのだ。
 すまんな。祭りのことなど、すっかり失念していた」
メイド妹「そんなのいいよー♪」
メイド姉「ええ、お気遣いなく」
メイド長「……」きゅっ
魔王「しかし」
メイド姉「こんなに優しくて暖かいお屋敷で
 働かせて頂いてるんです。
 毎日プレゼントをいただいているような気持ちです」
メイド妹「わたしたち、すっごく幸せだよ?♪」
魔王「……お前たち」
メイド妹「それにねー。今年はね」じゅる
メイド姉「もぅっ」
メイド妹「えへへ?」
メイド姉「この子、もうお祭りのご馳走で頭が
 いっぱいなんです。これ以上幸せになったら、
 子豚さんになっちゃいますよ」
549: 以下、
――冬越しの村、村はずれの館……年越祭の夜
(勇者に膝枕してみたいっ!)
(よしきた)
――勇者
(勇者の頭、もふもふしてるぞ)
(魔王も良い匂いだぞ?)
――勇者に
(そうか? 太くないか?)
(寝心地良いぞ)
?♪ ??♪
魔王「……んぅ」
魔王「ん……。どうやら、うたた寝してしまったようだな」
魔王「今何時だろう、日は暮れているようだが……。
 だれかー……。だれか……。いないのか。
 村長の所へ行くとか言っていたものな」
550: 以下、
支援
勇者よ、空気嫁
553: 以下、
魔王「……」もそもそ
魔王「資料だらけだな」
魔王「んぅ……。背中が痛い。こんなところで
 寝てしまったからだ」
?♪ ??♪
魔王「……勇者か」
魔王「……」
魔王「もう一年も、だ」
魔王「……」
魔王「もう一年も、触れてない」
魔王「声が聞きたいんだ」
魔王「わたしは勇者の物なのに……」
魔王「勇者のものなのに」
557: 以下、
魔王「勇者、わたしは弱虫になってしまったよ。
 世界を変えることが恐ろしい。
 戦争とはこんなに恐ろしい物だったんだな。
 それではわたしもやはり、血に抗争の遺伝を
 流れさせる魔族の一人であったのだ。
 あんなに躊躇いなく流せていた血なのに……」
魔王「わたしは……。がんばっているぞ?
 勇者。
 勇者も頑張っているのか?
 褒めて欲しいぞ」
勇者「おう。――偉いぞっ。魔王」
魔王「勇者ッ!?」 がたんっ
勇者「おっす」にこっ
魔王「勇者、勇者っ! 勇者っ」
勇者「お、なんだよっ」
魔王「このうつけ者っ。一年物間どこをほっつき
 回っていたんだっ。糸の切れた凧とはお前のことだっ」
勇者「痛っ、痛いぞ、魔王。ぼこぼこ殴るなっ」
魔王「えい。この程度では飽き足らない!」
勇者「わぁった。ごめん。すみませんっ。
 わたくしが悪ぅございましたぁ?」
魔王「謝罪に誠意が足りないっ!!」
558: 以下、
畜生もげろ
559: 以下、
やっとか……
562: 以下、
勇者「だ、だ、だいたいなっ!」
魔王「ふんっ」
勇者「ちゃんと報告書は届けていたじゃないかっ」
魔王「あんなものは報告書とは言わん。絵日記というのだ!」
勇者「え、え、絵日記!?」
魔王「その。か、顔を見せに来ても良いではないかっ」
勇者「仕方ないだろうっ。こっちはこっちで忙しかったんだよ。
 いまだって『開門都市』の件でてんやわんやなんだ。
 北の砦に物資を運ぶ方法で頭を痛めているしっ」
魔王「何故そんなことをしてるんだ」
勇者「魔王が言ったんだろうっ。強硬過激派の芽を
 そいでおけって! 忘れたのかよっ」
魔王「勇者のでたらめな超絶破壊魔法で
 やってしまえば良いではないか」
勇者「出来るわけ無いだろっ」
魔王「……?」
勇者「みんな生きてるんだ。がんばってるんだぞ。
 毎日毎日少ない手持ちと、なけなしの希望でさ。
 そんなのいっしょくたに壊すなんて、出来るわけ無い」
563: 以下、
不幸フラグっぽいなw
564: 以下、
駄々こね駄肉まおーさまかわいい
565: 以下、
魔王「勇者……」
勇者「妖精の女王だって、森歌族だって」
魔王 ぴくっ
勇者「竜の公女だって、鎧族の娘だって、酒場の子だって」
魔王 びきびきっ
勇者「みんな、一生懸命なんだもんよ。勇者だからって
 壊して良いなんて事、あるわけない」
魔王「そんなことを云って、本当はもてもてで
 娘たちに囲まれて鼻の下を伸ばしておったのではないか!?」
勇者「そっ。そんなことはナナナ無いぞ! 断じてないっ」
魔王「そうなのか? 本当にそうなのか!?」
勇者「えー。その件につきましては誤解があるのでしたら
 前向きな調査の上説明して差し上げたく」
魔王「その調査には是非串刺しを取り入れるべきだな」ぎらっ
勇者「そ、そ、そんなこと云ったって……あっちから……」
魔王「なにか?」ぎろっ
勇者「そ、そうじゃなくてだなっ!」
567: 以下、
ニヤニヤがとまらない
568: 以下、
勇者フラグ立てすぎワロタ
571: 以下、
勇者「魔王だってなんだよ。若い公子とか、都の貴族とか
 エリート商人かなんかかららぶらぶ光線出されてたん
 じゃないのかよっ」
魔王「あっんの、メイド長めっ。口止めしておいたのに」
勇者「え? マジなの?」
魔王「……」
勇者「……」
魔王「あ、あれはだなっ! 決してやましいものではなく
 いわば決闘にも似た交渉の場での出来事でだなっ!!
 そもそも高度な交渉というのは妥協と駆け引き、
 決意と損益が火花を散らす戦場と言っても良い場所でっ」
勇者「……」 ずぅぅぅん
魔王「勇者っ。なんだそのざまはっ
 沼地にはまった石巨人のような顔をしおって!」
勇者「いや、だって」 ずぅぅぅん
魔王「ええい、この軟弱者っ」
575: 以下、
勇者「軟弱とは何だよっ。俺頑張ってたのにっ!
 ぷにぷに魔王めっ!!」
魔王「ぷっ!? ぷにぷにっ!? ぷにぷにと云ったか!
 この口かっ! この口かっ!」ぽかぽかっ
勇者「痛いっ、やめれっ!」
魔王「わたしはこれでも毎日すとれっちとか体操してたのだ!
 逆立ちだって頭をつけば出来るようになったのだ!」
勇者「お前魔王のくせに何でそう、みみっちい努力が得意なんだよ」
魔王「みみっちい云うな!
 全ての野望は一歩目の努力から始まるのだ!」
勇者「このバカ魔王っ!」
魔王「アホ勇者っ!」
勇者「ひきこもりめっ」
魔王「放浪うつけ者っ!」
?♪ ??♪
勇者「……はぁ、はぁ」
魔王「……むぅー」
?♪ ??♪
勇者「やめよう」
魔王「うむ」
577: 以下、
勇者「……これ、なんだ?」
魔王「これか、これは村長の家から流れてくるらしい」
勇者「年越祭の、音楽か?」
魔王「そうだろう」
?♪ ??♪
勇者「明かりつけて良いか?」
魔王「いや、ダメだ。白衣はしわしわだし、寝癖があるのだ」
勇者「自分でばらしてたら意味ないじゃないか」
魔王「そんなことはない。予告編と本編では衝撃が違う」
勇者「あー。もうっ!」
魔王「?」
勇者「ま、魔王はいつでも美人で、その……素敵だよっ」
魔王「え、ええっ!? な、な、なにをっ」
勇者「べつにっ」ぷいっ
魔王「ううううう」
勇者「――ご馳走食べに行かなくて良いのか?
 年越祭なら、子豚の丸焼きやら、酒やら、マスのはいった
 香ばしいパイやら、香草包みやら、キノコのオムレツも
 出るだろう?」
魔王「いい。ここにいる」
勇者「じゃぁ……あー。えー……。一曲、どうだ?」
578: 以下、
?♪ ??♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「こ、こ、これでいいのか?」
勇者「もうちょい胸を張って」
魔王「こうか?」
勇者「上等」
?♪ ??♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「あ、足を踏んでも赦すんだぞ? 真っ暗だから」
勇者「いや、雪明かりで見えるよ」
魔王「それはそうだけど」
勇者「白くて、キラキラして、きれいだ」
?♪ ??♪
 ――1/2turn right step left back.
魔王「……優しい曲だ」
勇者「古王国の輪舞曲だって聞いたことがある」
581: 以下、
?♪ ??♪
 ――Touch left next to right & Clap.
勇者「そこで右へ半歩」
魔王「こうか? こうか?」
勇者「上手いじゃないか」
魔王「もっとましな服を着ておくんだった」
勇者「誰も見てないよ」
?♪ ??♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「だ、だって。あっ」
勇者「大丈夫か?」
魔王「すまん」
勇者「魔王は良い匂いだな」
?♪ ??♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.
魔王「目が回りそうだ」
勇者「輪舞曲は苦手か? ターンが多いからなぁ」
魔王「そうじゃない……けど」
583: 以下、
すごく美しい光景なんだろうな
584: 以下、
?♪ ??♪
 ――right step foward. right step foward.
勇者「これ」
魔王「これは……私が使っていた櫛だ」
勇者「魔王城へも行ったんだ」
?♪ ??♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「この櫛は小さな頃から使っていたんだ。
 無くしたかと思っていた……」
勇者「大事に使っていたっぽい感じだったからさ。
 もしかしたらと思ってな」
魔王「うん……」
?♪ ??♪
 ――1/2turn right step left back.
勇者「安上がりで悪いけど、それが年越祭のプレゼント」
魔王「……勇者」
勇者「ん?」
魔王「プレゼント、無い。……わたし用意してないんだ」
587: 以下、
?♪ ??♪
 ――Touch left next to right & Clap.
勇者「気にするなよ。礼を期待してやってるわけじゃない」
魔王「それはそうだろうが……」
勇者「魔王は俺のものなんだよな?」
魔王「もちろん」
勇者「それを聞きに帰ってきたんだよ」
?♪ ??♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「どうしたんだ? なにか辛いことでもあったのか?」
勇者「いや、頭が悪くてさ。俺。回り道して」
魔王「……」
勇者「勇者の頃は、出てきた敵を順番に倒していれば
 みんなに褒めてもらえたんだ。勇者なんて簡単なものだよな」
?♪ ??♪
 ――left step foward. 2turn left step right back.
魔王「勇者」
勇者「ん?」
魔王「わたしも、やっぱり勇者に、その……」
588: 以下、
何か今めちゃくちゃ人恋しい
589: 以下、
?♪ ??♪
 ――right step foward. right step foward.
魔王「あの、そのぅ、だな。
 勇者にあげられる価値あるものなんてだな」
勇者「……え、あ?」
魔王「何でこのような時に限って、
 手のひらが汗でペとぺとするのだっ」
?♪ ??♪
 ――1/4 turn left step left.
魔王「うううう。……静まれ我が魔心臓よ。
 そは決戦の時ぞ、ゆ、ゆ、勇者っ」
勇者「ま、ま、魔王? すごい気迫だぞ?」
?♪ ??♪
 ――1/2turn right step left back.
魔王「ゆ、勇者。えっと……」ぎゅっ
勇者「それじゃステップ踏めないって魔王。
 ……魔王?」
590: 以下、
wkwktktk
591: 以下、
?♪ ??♪
魔王「勇者とくっつくのも、一年ぶりだ」
勇者「こっちだって」
?♪ ??♪
魔王「その……勇者が良ければだな。持ち主として
 褒美を取らせてもだな、もちろんまだまだ駄肉で
 ぷにってる訳で褒美というか罰ゲームかもしれないという
 疑いはなきにしもあらずなのだがいやそれは
 横に置いて報償というものは信賞必罰と云ってだな」
勇者「えっとその」
魔王「勇者……?」
勇者「……」
魔王「……」
?♪ ??♪ ……♪ ……
魔王「お、音楽終わってしまったな!!」 ばっ
勇者「そ、そうだなっ!! 離れないとっ」 ばばっ
魔王「……うううー」
勇者「……」 わたわた
魔王「――も、もうちょっとだったのにっ」
594: 以下、
――冬越しの村、雪明かりに照らされる一室
魔王「行くのか?」
勇者「ああ。魔王と会えたから、勇気百倍さ」
 かちゃ、がちゃ。
魔王「みんなとは、良いのか?」
勇者「魔王は随分人間くさくなったな」
魔王「弱くなったのだ」
勇者「それはこっちも同じだ」
魔王「今度は程なく会えような」
勇者「ああ。一月もかけず、『開門都市』を攻略する」
魔王「出来るのか?」
勇者「魔王と話したからな。糸口は見えたよ」
魔王「こちらも見えてきた」
勇者「次に会うのは」
魔王「戦火の交わるところになるだろうな」
勇者「おっし、準備できた!」
魔王「勇者」
勇者「おうっ」
魔王「構えて遅れは取るまいぞ?」
勇者「心配無用。……俺は魔王の剣にして道だ」
しゅわんっ!!
魔王「君は……わたしの光だよ」
596: 以下、
あああああああいいなあこういうの
597: 以下、
うっひょおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおう
600: 以下、
勇者「心配無用。……俺は魔王の剣にして道だ」
ヒロイックエイジ思い出した
625: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、冬の国野営地
義勇軍兵「ほーうい!」
志願兵「交代だ! 差し入れをもってきたぞ」
兵士「ありがたい、なんだ?」
義勇軍兵「ナッツとベーコン入りの黒パンだよ」
志願兵「豪勢だなぁ!」
兵士「年越祭の残り物だそうだよ」
義勇軍兵「そうなのか? 祭りのご馳走もたっぷりだったのに」
志願兵「自分はあんな祭りは初めてでした」
兵士「ああ、今年はひときわ豪勢だったよ」
義勇軍兵「そうなのか?」
兵士「うん。我が国は、少しずつ暮らし向きが
 良くなってきているようだ。
 ねぇ、そうでありますよね! 士官殿」
士官「うむ、そうだなぁ。……ええい、ちゃんと
 見張りをせんかっ!」
義勇軍兵「はっ!」 がしゃ
兵士「はぁっ!」 がしゃん!
士官「まぁ、今のところ敵軍も見えないが」
義勇軍兵「こちら側の陸地へは攻めてこないのでしょうか」
士官「過去の大規模進行の記録はないが、
 人間軍がここに野営地を築いていることは
 向こうも承知だろう。油断は禁物だ」
626: 以下、
支援
627: 以下、
義勇軍兵「それにしても……」
志願兵「ん?」
義勇軍兵「いいのかな。俺たち、ここでもう二週間だぞ」
志願兵「ああ、そうだな」
義勇軍兵「確かに寒い中、厳しい訓練をさせられているけれど
 それだけで戦に勝てる訳じゃないだろう?
 こうやって、ただ飯を食っていて良いのかなぁ」
志願兵「お偉方には、お偉方の考えがあるんだろうさ」
兵士「船が足りないんじゃないか?」
義勇軍兵「ふむ」
志願兵「そうなのか?」
兵士「ここにある船じゃ、半分も乗せられない。
 おそらく船が到着するのを待っているんだろう」
女騎士「見張り、ご苦労!」
士官「敬礼っ!」
 ザザザッ
女騎士「ここが耐えどころだ。気を抜くな」
義勇軍兵「はっ!」
女騎士「訓練はどうだ?
志願兵「剣の使い方を教えて貰いましたっ!」
女騎士「戦場で己を生き延びさせるのは、常に己だからな。
 わたしも守ってやることは出来ない。腕を磨けよっ!」
628: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、臨時作戦本部
冬寂王「……補給物資は? ふむ」
執事「斥候が戻りました。まだ動きはないそうで」
女騎士「なかなかに、焦れるな」
冬寂王「将軍でもそうか?」
女騎士「将軍と呼ばないで欲しい。臨時の肩書きだ」
執事「にょほほ。誰に恥じることない胸ですのに」
女騎士「斬られたいか」ぎろり
士官「よろしいでしょうかっ!」
執事「む、入れ」
士官「お客様がお見えですっ」
冬寂王「客?」
士官「紅の学士、と名乗っております。荷馬車隊と一緒でして」
女騎士「学士殿か。来て頂けたんだなっ」
執事「おお」
冬寂王「噂の天才的学者殿か? かねてから一度お会いしたいと
 は思っていたのだが、なぜ戦場へ?」
女騎士「王よ、学者だとは思わない方が良いぞ」ぼそり
631: 以下、
魔王「わたしは紅の学士を名乗るもの。お初にお目にかかる」
執事「こ、これはっ」
女騎士(まさか、魔の気配に気付かれるのかっ!?
執事「にょほー。たいそうな胸でございます」
女騎士 がっ
執事「?っ!」
冬寂王「挨拶痛み入る。わたしが冬の国の冬寂王だ。
 もっとも即位したての若造だがな」
魔王「いいや、王の器量は冬越し村にまで響いてきている」
冬寂王「実績がないゆえ、期待感だけがあるのだ」
執事「お茶でも入れますかな」
魔王「ありがたい」
冬寂王「ところで、どのようなご用件で?
 我が国の農業を支えてくれている方だと伺っている。
 是非一度お目にかからねばと思っては居たのだが
 無理難題を積み上げられてしまってな。
 ご挨拶も出来ぬままだった。申し訳ない」
魔王「ご丁寧に。すまないことだ。
 ところで、王よ」
冬寂王「なんだろう?」
魔王「勝つつもりなのだろうな?」
634: 以下、
冬寂王「無論」
魔王「是が非でも?」
冬寂王「あの島を取り戻すことは、
 今の南部諸王国には必要なのだ」
魔王「どのような意味合いで?」
冬寂王「南部諸王国の、誇りを取り戻す」
魔王「ふむ」
冬寂王「現在の南部諸王国は、
 云われるままに戦をする使い走りのような
 国とも言えないような国でしかない。
 あの島を取り返せば、わずかとは言えいくつかの交易路が
 安定をするはずだ」
魔王「……」にやり
冬寂王「金のために将兵の命を掛けるとそしられようが」
魔王「いや、良い。理解は浅いが十分だ」
女騎士「まったく……」
635: 以下、
執事「若に対して無礼な!」
女騎士「弓兵。私たちの出る幕じゃない」
魔王「無礼はわびよう」
女騎士「もしかしてブラックパウダーですか?
 そんなものが無くても、わたしは負けたりはしないと
 云ったじゃないですか」
魔王「いや、ちがう。もってきたのは、塩だ」
冬寂王「……っ!」
女騎士「塩……」
執事「どこでそれを……」
魔王「馬車に6台分ほど用意してある。何かの役に立つかとな」
冬寂王「あなたは……」
魔王「……」
冬寂王「50里の彼方にいて、我が手の内を読むか」
女騎士「そうゆうことがある人だから」
執事「学士とは……そこまで……」
魔王「勝つつもりでいるのなら、あるいはと思っただけだ」
636: 以下、
魔王もフラグ立ててんなw
637: 以下、
塩にwktkするなんて初めてだ(笑)
639: 以下、
清めるために使うのかと
640: 以下、
冬寂王「この戦に何を望まれる? その塩の代価は?」
執事「報償ですか? それとも宮殿の地位?」
魔王「地位は、とりあえず……そうだな。
 登城が出来る程度の肩書きがあれば面倒がないな」
冬寂王「よし、許そう。だがそれだけだとも思えない」
魔王「時間が所望だ」
冬寂王「時間……?」
魔王「あるいはそれは戦場において黄金よりも
 価値があるやもしれないが」
冬寂王「……」
魔王「わたしは勝利を求めたことはない。
 だから勝利では足りない部分を司ろうと思う。
 そのためには時間が入り用だ。
 長くて一昼夜」
冬寂王「ありえんっ。奇襲が成立せんではないかっ」
魔王「それでも方策はある。女騎士殿ならばな」
執事 ちらっ
女騎士「まぁ、学士様が言うんなら有るんでしょう」
641: 以下、
おいこの駄肉かっけえぞ
642: 以下、
――魔界、開門都市、中央砦
遠征軍士官「……ま、まただっ!?」
遠征軍士官「こ、ここもだぁ」
遠征軍士官「呪いだ、呪われたんだっ!」
遠征軍士官「呪いなどである者か、これは暗殺者だ!」
遠征軍士官「それにしたって、ほんの五分だぞ?
 ったた五分目を離しただけで、小隊一つが……」
遠征軍士官「こ、これは……」
遠征軍士官「ひからびて死んでる」
遠征軍士官「こっちは、炭化してるぞ」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタゲタ」
遠征軍士官「気が狂ってる!?」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ! 夜、夜が来る!
 月、月がふくれて、蒼く笑う。来る、やつが来る!
 ゲタゲタゲタゲタ! ゲタゲタゲタゲタ!」
遠征軍士官「な、なんだっていうんだ!?」
 ギャァァァアアア!!!
遠征軍士官「こんどは第三見張り鐘楼だ! 急げッ!」
643: 以下、
うおぉ・・・
645: 以下、
ダダダダッ!
遠征軍士官「な、なんだこれは」
遠征軍士官「何でこんな泥とぬかるみが……ヒッ! ひぃっ!」
遠征軍士官「こっこんなっ」
遠征軍士官「呪いだ。人間業じゃないっ」
勇者「……フフフ。フフフハハ」
遠征軍士官「だっ、誰だ!?」
遠征軍士官「で、出てこいっ! 我らは地上最強の
 聖鍵遠征軍だぞ! で、出てこいっ!!」
勇者「……腕が無くても、しゃべれるだろう?」
 ギンッ! ズザンっ! ザガッ!!
遠征軍士官「ギャ、ギャァ!」
遠征軍士官「黒い、黒い悪霊だっ! 亡霊騎士だぁぁ!!!」
遠征軍士官「退けッ!」
遠征軍士官「退却だ、相手は悪霊だ!! 呪いが現れた!」
遠征軍士官「ゲタゲタゲタゲタ!!」
遠征軍士官「ああああ! 無数の死者が!? 悪魔だぁ!!」
646: 以下、
勇者wwwwwwwどんだけ万能なんだ
647: 以下、
勇者「ふんっ。腰抜けばかりだな」
羽妖精「黒騎士サマッ! カッコイー!」
勇者「あいつらがよわっちーだけだ。
 それにしてもこれ、すごい顔な」
羽妖精「アハハハッ! 妖精ハ幻術、得意! エヘン!」
勇者「ああ、上手いぞ! この調子で、手分けして
 あちこちに幻を掛けるんだ」
羽妖精たち「「「「ハーイ!」」」
勇者「とびっきりの怖い幻で行くんだぞ?」
羽妖精「怖イ?」 羽妖精「怖イ!」 羽妖精「怖ーイ♪」
勇者「それから、夢魔鶫はいるか?」
夢魔鶫「御身の側に」
勇者「司令室一帯に夢の回廊を作り上げろ。
 思い上がった貴族どもに毎晩の悪夢を送り込んでやれ」
夢魔鶫「仰せのままに」
650: 以下、
――魔界、開門都市、貴族たちの豪華な寝室
司令官「ぎゃぁぁぁぁ!!??」
司令官「はぁ……。はぁ……はぁ……
 ゆ……夢? 夢、なのか……?」
司令官「なんて……なんて夢だ。
 あんなに無数の手が……死者が……
 た、たかが魔族じゃないか。光の精霊の正義は
 我らにあるのだ。あんな家畜、いくら殺そうが……。
 さ、酒だっ! 酒をもてっ!」
魔族奴隷「御、御酒でござい……ます……」
司令官「獣臭い手で触れるな下郎っ!!」
 どがぁ!
魔族奴隷「きゃぁんっ!」
651: 以下、
司令官「だ、だから俺はいやだったんだっ!」
 ガチャン!
司令官「こんな辺境! 地獄の都市! なにが占領地だ!
 何が栄光だ! こんな所、流刑地ではないかっ!」
司令官「おれは聖王家につらなる、霧の王国の血を
 引いているのだぞ。何でこんな獣臭い魔族の都市に
 ひきこもっておらねばならぬのだ!
 そ、そうだっ。俺の功績は世に並ぶものとてない。
 聖王国へ帰れば栄耀栄華も思いのままだというのにっ」
魔族奴隷「やめてっ! ら、乱暴はっ」
司令官「黙れ! この二等魔族っ、動物もどきめっ!
 貴様らがっ! 貴様らが居るから俺は帰れんのだっ!」
司令官「瀟洒な夜会もない、美しく着飾った淑女も居ない。
 こんな田舎の砂埃にまみれた陰鬱な都市で、一生を
 おえるなどゆるされるものかっ!!」
 がちゃん!!
遠征軍士官「指令っ!」
654: 以下、
司令官「何事だっ!」
遠征軍士官「またです! また死霊騎士が現れました!」
司令官「なにっ」
遠征軍士官「こんどは街中に繰り出していた休暇中の
 将官数名がその……」
司令官「報告せんかっ!」
遠征軍士官「水たまりで、溺死したと……」
司令官「……っ!!」
遠征軍士官「そ、それでその……士官たちが」
司令官「なんだというのだ」
遠征軍士官「これは魔族の呪いだと。中には帰国申請を
 出す者すらいる始末で」
司令官「ええい! 何を抜かす! 今までさんざん
 飽食の限りを尽くしてきたではないか!!
 帰りたいと抜かすヤツには、魔族の娘でもあてがえ!
 酒と金を掴ませろっ」
遠征軍士官「その、それは、どこから……」
司令官「街から奪えば良かろうっ!」
656: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、海岸線、深夜
漁師「来ました、王様!」
冬寂王「有無、見えておる」
執事「本当に来ましたな!」
冬寂王「時期の読みもぴたり、だ。でかしたぞ」
漁師「いやぁ、こんなこと、ここらの漁師だったら
 あったりまえだでよぉ」
冬寂王「年越祭が終わってしばらくすると、
 一週間ほどだけ、だったな」
開拓民「うわぁ、でっけぇ!」
開拓民「でっけぇなぁ!」
漁師「そうですだ。おれたちゃ、
 あれをこう呼んでます、王様。
 ――流氷 と」
冬寂王「よし、うかつに船で近づくな。つぶされるぞ!
 アンカーを打て! ロープを掛けろ!
 岸に引き寄せるのだ!
 氷の固まり同士をつなげたら、ロープを張り、
 結合部に海水を掛けろ!! 流氷をつなげるのだ!」
657: 以下、
開拓民「判りました、王様っ!」
開拓民「ほーぅい! ほーぅい!!」
漁師「おでは小型船で、他の流氷城もみてくるだぁよ」
冬寂王「たのんだぞ」
執事「わたしも斥候を飛ばしましょう」
開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」
若い傭兵「ほーぅい! ほーぅい!」
兵士「おーせぃ! おーせぃ!」
女騎士「結合部に海水を掛ける! 班を組織しろ!
 周辺には十分注意を払い、石弓兵は空中を監視!!」
冬寂王「海水を掛けたら塩をまくのだ!
 1時間もすれば凍り付く! 
 手袋を忘れるな! 二時間ごとに休憩を取るのだっ」
開拓民「おらたちは大丈夫だよ、王様!」
開拓民「王様こそ天幕で温かくしていてくだせぇ」
冬寂王「わたしの方が若いではないか! あははは」
開拓民「まったくだなぁ! あはは!
 王様には負けてらんねーべや!」
開拓民「ほーぅい! よーそろー! ロープを引けぇ」
冬寂王「橋を架けるぞ。流氷の橋を。いや、橋とはいわない。
 この海峡を……騎馬の駆ける戦場としよう」
658: 以下、
おお無理矢理陸戦にしやがった
659: 以下、
連環の計だと・・・
660: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、極光島沖合、早朝
女騎士「重装歩兵団、整列っ!」
 ザザッ
王国軍兵士「「「「はっ!」」」」
女騎士「これより第二次極光島奪還、上陸作戦を開始する!
 重装歩兵団諸君、中央を突破し、極光島湾岸部に橋頭堡を
 築くのだ! 流氷の末端部は脆い。中央500歩分を隊列の
 目安とせよ!」
王国軍兵士「「「「はっ!」」」」
女騎士「中佐、上陸後一隊を率い、湾岸部西方の岩山を
 占拠せよ! 物見の監視体制と、防空拠点としたい」
王国軍中佐「拝命いたしました!」
女騎士「石弓部隊、先行して空中および水中を監視せよ。
 この流氷、船ほど簡単に沈みはしないが、それでも
 水棲魔族を甘く見るな! もし現れた場合は撤退を繰り返し、
 射撃しながら後続を待て!
石弓傭兵「「「「はっ!」」」」
661: 以下、
おいおい、どれだけでかい流氷の橋をかける気だw
662: 以下、
女騎士「義勇兵のおのおの方!」
義勇兵「「「おー!」」」」
女騎士「おのおの方には、ソリの防衛と、運搬警護をお願いする。
 このソリは頑丈に作られている。また中型のものでも馬車
 数台分の長さをもっている上、鉄の板で補強が為されている」
女騎士「替えの鎧や馬などを運ぶと同時に、それらの
 ソリは簡易型の防御柵、いや、小型の砦となるように
 設計されている!
 水棲魔族や大型魔族などが現れた場合、それらのソリを
 盾として戦うのだ。
 義勇軍槍兵と石弓兵を連携させれば、大型魔族や飛行魔族で
 会っても十分対応可能だ。
 重ねて云う。これは海戦ではないっ!
 我らが人間の得意とする陸戦である!
 個の力で戦う必要はない! 兵を回転させよ。
 遊軍を頼れ。信頼が我らの力だ!」
兵たち「「「「おおおおー!」」」」
女騎士「第一目標、湾岸部! 橋頭堡を築き
 補給線と陣地を確保するぞ。今回は、奇襲はお預けだ!
 勝つべくして勝つ! 諸王国軍の力、見せてやれ!!」
663: 以下、
あらあらまぁまぁ
664: 以下、
支援
666: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、極光島上陸部
王国軍兵士「押せ! 押せ!」
王国軍兵士「第三隊、前へ!」
伝令「後方右翼に大型魔族! 巨大烏賊です!」
将官「義勇兵と軽装歩兵に任せろ!
 この場所を死守すれば後続は来る! 退くな! 王国のために!」
王国軍兵士「「冬寂王のためにっ!!」」
王国軍兵士「「我らが姫騎士将軍に勝利を!!」」
うわぁぁぁぁ!!
伝令「左翼、後退! 蜥蜴人族、およそ1000!!」
将官「重装歩兵第四隊、押し出せ! 突進力を止めよ!!」
王国軍兵士「行くぞ! 第四隊の勇猛を精霊にお見せするのだ!」
王国軍兵士「大槍構え! 突撃ィッ!!」」
667: 以下、
うほ
668: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、簡易司令部
女騎士「はぁっ……はぁっ……。だれか! だれかある!」
兵士「はっ!」
女騎士「伝令、斥候を20出せ! 橋頭堡は確保した。
 通信体制を確立させよっ。
 何もなくとも20分ごとに使いを出せ!」
兵士「はっ!」
女騎士「換えの馬を頼む。こいつの汗を拭いてやってくれ。
 何度もわたしを助けてくれたからな」
馬 ぶるるるんっ
冬寂王「騎士将軍! 戦況は?」
執事「タオルですぞ」
女騎士「上陸作戦に成功、橋頭堡確保。岩山についても
 抵抗戦力はほぼ制圧、占拠に移っています。
 大型魔族の撃破は12」
冬寂王「12か……前回目撃された数のほぼ全てだな」
女騎士「どれくらい余剰戦力がいるか判りません。
 決して油断できる数字はありませんけれどね」
670: 以下、
冬寂王「して、損害は?」
女騎士「ざっと見たところ、500弱」
執事「なんと!」
冬寂王「大成功ではないか、ここまでの戦果を挙げられるとは」
女騎士「だがしかし、ここまでです」
冬寂王「……」
女騎士「ここまでは中央突破力と兵種連携で損害を減らして
 前線を押し上げることが出来ました。首尾良く、極光島に
 橋頭堡も確保できて、いま工兵にソリを解体させて
 防備柵への組み替えをさせていますが……」
女騎士「極光島には天然の洞窟も多く、また山城は
 堅固な要塞。そこに魔族の猛者、南氷将軍が居るのならば
 籠城作をとってくるでしょう。
 もちろん、包囲しているのはこちら。
 勝つことは出来るでしょうが、ここからは時間のかかる
 包囲線になるでしょうね。
 消耗戦となれば、こちらの被害も無視し得ません。
 そもそもそう言った戦いとなれば、水に潜り、
 闇に溶けることが出来る魔族の方が有利です。
 でも、まー」
671: 以下、
執事「まぁ?」
魔王「戦には勝った。もう勝ちは決まったのだろう?」
女騎士「おおざっぱには」
魔王「その先はわたしの出番だ」
冬寂王「学士殿」
魔王「さて、古来城攻めとは難しいものだ。力押しで
 解決するためには、攻城側は守備側の三倍の兵力を
 要するという。わたしの見たところ、魔族の残存
 兵力は約8000。私たちとより4000は少ないが
 倍の差はない。勝てはするが、双方大きく消耗する」
女騎士「甘さのない読みだと思うな」
魔王「問題点は?」
女騎士「なるべく訓練を施したとは言え、こちらの兵の
 練度のばらつきだ。特に義勇軍兵は、単独で敵の正面に
 立たせたくはない。それからさっきも云ったが、
 持久戦にも不安が残る。夜襲や攪乱を使われれば
 こちらが不利だ」
執事「では」
女騎士「魔族は巻き返しが図れると思ってこの状況に
 乗っているとも云える」
675: 以下、
冬寂王「聞いていても簡単な状況とは思えないんだが」
女騎士「まったくです。本当ならここからが
 本番。ここはスタート時点ですからね。
 ここから胃の痛くなる神経戦の始まりなんですが」
執事「学士様には策がある、と」
魔王「うむ」
冬寂王「どのような?」
女騎士「……」
魔王「もう、手は打った」
冬寂王「?」
バタン!!
伝令「伝令! 伝令でございます!!」
冬寂王「かまわん! 報告するが良い!!」
伝令「極光島のさらに南、魔界への大陸から軍勢出現ッ!!
 その数1万以上ッ! み、み、み、味方ですっ!!」
魔王「なんの芸もない。――援軍だ。この数の圧力で
 南氷将軍は降伏……はせんだろうが、逃亡する」
677: 以下、
――魔界、開門都市、作戦会議室
司令官「げ、限界だっ!!」
将官「……」
東の砦将「そんな声荒げなくたってよぉ」
司令官「そなたは外部の砦にいるから判らないのだ!
 この都市は悪夢だ。毎晩のように死霊が……。
 街中には邪悪な死者の呪いが横行してるのだぞっ!」
東の砦将「そんなこと云ったって、
 魔族娘のぼいんぼいーん☆にきゃっきゃうふふで
 街中に居座ったのはあんたら近衛隊じゃねぇですか」
司令官「傭兵風情がっ!」
東の砦将「へぇへぇ、俺たちゃ傭兵ですがね。
 それがなにか?」
司令官「ぐぅっ!」
東の砦将「大体、夢見にびびるってのは一人前の
 男としていかがなものでござんしょねぇ」
678: 以下、
さすが東さんだわ
679: 以下、
東さんかっこいい
680: 以下、
司令官「これ以上は士気の限界だ。
 わ、わ、我々は撤退を行う!」
将官「司令官殿っ!」
東の砦将「おおっと、そいつはどんなもんですかい?
 仮にもこの都市は人間世界全てが総力を結集して落としたと
 云っても良い、魔界の重要戦略拠点だ。
 そいつを放り投げて司令官が逃げ出すってのは
 そりゃー軍律違反もいいところでしょうがよ」
司令官「?っ!!」
将官「貴公も口を慎め! 総司令官をなんだと心得る!」
東の砦将「へいへい。だが軍律は、軍律だ」
司令官「え、え、え……援軍だっ!」
将官・東の砦将「はぁ?」
司令官「これは援軍なのだ」
東の砦将「どこから援軍が来てくれるんです?
 援軍要請でも出したんですか? まさか?
 戦らしい戦もしてないのに?」
681: 以下、
こういう男キャラはいいな
683: 以下、
司令官「ちがう! 聞けば先日、極光島を舞台に
 白夜王が奪還作戦を繰り広げたというではないか!!
 白夜王は優れた指導力を発揮し勇戦したのだが
 頼むに足りない無能な南部諸王国の王侯に
 足を引っ張られたせいで苦い敗北を喫したという」
東の砦将「ああ、それなら俺も聞いてますけどね」
将官「白夜王は司令官の叔父上と
 縁続きになられたとか」
東の砦将「あー」
司令官「ええいっ! それは関係ない! これは人類全体の
 沽券に関わる重大事なのだ! かかる決戦とも云うべき
 戦を前に、わが遠征軍が手をこまねくわけには行かぬ。
 全軍をもって、極光島へと援軍に向かう!」
東の砦将「ばっ、ばっ、バカか、あんたっ!?」
将官「しぃーっ」
司令官「ええい! うるさい! これは総司令官たる
 わたしの命令だ! わたしの命令と云うことは、
 聖王国、ひいては光の精霊の命令に等しいっ!!」
684: 以下、
援軍の正体はこれかw
686: 以下、
司令官は捨てよう
687: 以下、
これで開門都市が空くな
688: 以下、
東の砦将「だからってこの都市を放っておく訳にも
 いかんでしょうが! この都市には軍の物資を
 扱うために軍属ではない人間の商人だって沢山
 いるんだぞ!? 彼らの安全をどうするっ!!」
司令官「黙れ、黙れ! そんな奴らは裏切り者だ!
 魔族と交流しているような劣等民を守るために
 尊い遠征軍の血を流せるものかっ!!」
東の砦将「……」 めらっ
司令官「そんの輩、勝手に来たのだ、勝手に死ねば
 良いではないか。いや、いっそ都市に火をかけるか。
 むざむざ魔族に都市を明け渡す必要もないだろうっ
 そうだっ!」
東の砦将 ダンッ!!
司令官「ひっ!? 」
東の砦将「……」 ギラッ
司令官「な、なんだ? 文句でもあるのかっ! 貴様!
 ううう、貴様なぞに、貴様なぞにっ!!」
690: 以下、
司令官「そうだ、そこまで文句があるなら、
 貴様がやれば良いではないかっ!」
東の砦将「はん!?」
司令官「き、貴様が司令官だ! 貴様がこの街を守れば良かろう!
 それだけ大口を叩くからには貴様はこの街を
 治められるのだろう? あ? 歴戦の傭兵様なのだろう?」
東の砦将「……わかった」
司令官「そうかそうか、貴公が誓約をするのだとなれば、
 我も安心して援軍を出せるというもの! あははははは。
 この先この都市を万が一魔族に奪い返されるようなこと
 あれば全て貴公の責任であると。そう心得よっ!!」
東の砦将「我が砦の将兵に、民間人のために命を惜しむような
 不届きものは一人もいはしないっ」
司令官「いいや、極光島にいるのは魔族の猛将、南氷将軍と
 聞いた。わたしはあくまで全軍をもって援軍に向かうぞ。
 この魔界のような訳のわからぬ地を、兵を減らして移動
 するバカは居はせぬわっ!」
東の砦将「?っ!」
司令官「ははは! 同じ軍のよしみ、500ほどは置いて
 行ってやる。それでどうにかするが良い! 傭兵めっ!」
692: 以下、
ダッダッダ、バタン!!
東の砦将「あーあ、んったくよぉ」ボリボリ
副官「大将、大変なことになっちまいましたね」
東の砦将「ん? まったくだ。やりきれんな」
副官「どうしやす?」
東の砦将「どうもこうもない。仕方がねぇ、四方砦は
 全て退去だ。守るだけの兵力はねぇ。全員都市に
 よびよせちまえ」
副官「はっ!」
東の砦将「それから街の有力商人を呼び寄せろ。
 街に住む魔族の主立ったメンバーも、そうだな、
 合わせて10人位招くんだ。
 付近の有力魔族にも特使を送り出せ」
副官「え? どうするんですか!?」
東の砦将「兵力がないんだからしかたねぇだろう。
 頭下げて頼むんだよ。臨時の自治政府だ。
 今日をもって、この開門都市は人間の領地じゃねぇ。
 交流都市として自治してくっきゃなかろうがよ」
694: 以下、
東△
697: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、橋頭堡天幕
伝令「報告ですっ! 極光島城塞から、
 魔族軍出撃しました! その数、おおよそ7500!!」
女騎士「全軍だな」
伝令「魔族軍、南方樹氷、謎の援軍に向かって高で進軍中!!」
女騎士「伝令ご苦労っ!!」
魔王「早かったな」
女騎士「おそらく、援軍と我らが合流して、連携行動に
 出るのを嫌ったんだろう。突破するのなら今が最後の
 チャンスだ」
魔王「果断な決断だが、予想範囲内だ」
女騎士「魔族7500と援軍1万弱か」
魔王「どうなるかな」
女騎士「その援軍は、聖鍵遠征軍なのだろう?
 で、あれば練度も装備も、人間界最高のはず」
699: 以下、
しゅぃんっ!
勇者「そりゃどうかな? 存外だらしない奴らかもしれないぜ」
魔王「勇者!」
女騎士「帰ってきたのかっ」がしっ
魔王「……ごほんごほんっ」じぃ
勇者「え、えと。まぁなっ! こんなタイミングで良かったか?」
女騎士「ああ、ばっちりだ。だがどうやって聖鍵軍を
 呼び寄せたんだ?」
勇者「それよりも、タイミング合わせるために迷わせたり
 足止めしたりしたからな、結構疲労してるぞ、あいつら」
魔王「それでは、戦力は拮抗するやもしれんな」
バタン!
伝令「謎の援軍と魔族先端が接触! 援軍の軍様は縦に
 長く伸び、先頭は少数! 蹴散らされてゆきます!」
勇者「な?」
女騎士「遠征軍ともあろうものが情けないっ」
魔王「助けに行かないとまずそうだな」
女騎士「とはいえ、島の向こう側だ、時間がかかる」
魔王「それくらいは持つだろう、いくら何でも」
700: 以下、
ゴオォォン!!
勇者「なんだっ!?」
バタン!
伝令「伝令!! 伝令!! 一騎の巨大な魔族が
 こちらの陣営に向かってきます! 南氷将軍を名乗っています!
 軽装歩兵の一隊が壊滅ッ!!」
女騎士「退かせろっ!」
伝令「はっ!」
魔王「しんがりを自ら務める気か」
勇者「暑苦しいヤツだ」
女騎士「指揮官としての矜持だろうな」
魔王「だが、救援に向かうには倒す必要がある、か。
 出来れば魔族の被害も出さず、逃走させたかったのだが……」
勇者「仕方ないだろう。信念があるヤツなんだ。
 おれがいって、ちょっと捻ってくるよ」
女騎士「……いや」
勇者「へ?」
女騎士「それは、わたしの役目だ。
 ここは任せてくれないか? 勇者。
 武人の最後の願いだろう」
702: 以下、
疲れまひた。QKしてくるでござる。
極光島攻略作戦、萌えねー。
垂れ流しSSでもうしわけありません。
703: 以下、
乙?
705: 以下、
中々読ませてくれる
普通におもれぇ
707: 以下、
乙カレー
最後の方の展開はほんのり燃えた
708: 以下、
たしかに萌えない
だが燃えるからいい
721: 以下、
支援
724: 以下、

726: 以下、

730: 以下、
ほす
750: 以下、
――第二次極光島攻略作戦、夕暮れの戦地
南氷将軍「はぁあぁっ!」
女騎士「はっ!」
 ギンッ! ガギンッ!
南氷将軍「ははは! 嬉しいぞ! この勝負を受けてくれてなっ!」
女騎士「勝てる勝負、捨てる気はないっ!」
王国軍兵士「す、すごいぞ!」
騎兵将官「大地がめり込み、崩れるほどだ……」
南氷将軍「大言壮語しよる、これはどうだっ!」
 ドガァンっ!!
女騎士「遅いっ!」
 ヒュバッ!!
南氷将軍「我は天下無双! そのような攻撃、効かぬ」
女騎士「天下無双が聞いて呆れるっ」
753: 以下、
南氷将軍「なんだと?」
女騎士「退くなら追うな、と命を受けている」
南氷将軍「っ! 愚弄するかっ!」
 ギンッ! ガギンッ!
南氷将軍「敵に情けを受けるこの南氷将軍ではないわっ!
 食らえ、“凍える吹雪”っ!!」
 ひゅごぉぉぉっ!!
女騎士「勇者直伝っ! 岩盤返しっ!!」
 ずだんっ! ダダダダダンッ!!!
王国軍兵士「ば、ば、ばけもんだっ!」
騎兵将官「だがなんて可憐なんだっ」 「え?」
南氷将軍「はははははは! 見事、さぁいくぞっ!」
女騎士「良かろう。引導を渡してやろうっ!」
南氷将軍「軽いわっ! 所詮女か、しゃらくさいっ!」
女騎士「女扱いしてくれるのは嬉しいが……」
758: 以下、
 ギィィン!!
王国軍兵士「噛み合った!?」
騎兵将官「五倍は体重差があるんだぞ……」
 ギリギリギリギリ
南氷将軍「やるではないかっ」
女騎士「非常識が身近にいると、これしきは身につく……
 い、く、ぞっ! せいやぁぁぁ!!」
 ザカッ!
南氷将軍「っ!?」
女騎士「まだ、まだっ!」
 ザシュ! ザシャッ! ヒュバッ!!
王国軍兵士「なんて、なんて早さだ」
騎兵将官「姫将軍はこんなに強かったのかっ!!」
女騎士「いえぇぇええーい、やぁっ!」
南氷将軍「……ぐふっ」
 ドサンッ!!
王国軍兵士「勝った……」
騎兵将官「勝ったぞ!」
王国軍兵士「「「俺たちの、勝ちだぁ!!」」」
759: 以下、
魔王も女騎士も勇者にはもったいないな…
765: 以下、
>>759
勇者は勇者で単騎で軍を殲滅出来る化け物だぞ
760: 以下、
姫将軍つえええええ
絶壁だけど
761: 以下、
この絶壁…なんという戦闘力…!?
763: 以下、
――冬越しの村、早春
小さな村人「本当なのけ?」
中年の村人「本当だなやっ」
狩人「そうか、凱旋かぁ!」
小さな村人「ガイセンってなんだぁ?」
中年の村人「馬鹿だなぁ。戦に勝って帰ってくることだぁよ」
狩人「女騎士様も、学士様も帰ってくるって言うことだよ!」
メイド妹「こーんにーちは?♪」
メイド姉「こんにちは」
小さな村人「おんやまぁ。館の姉妹さんだなや」
中年の村人「おめでとうだなや!」
狩人「おめでとうだなや!」
メイド妹「はいっ!」
メイド姉「ありがとうございますっ」
小さな村人「いつ帰ってくるだなや?」
中年の村人「もう戦は終わったんだべ?」
狩人「馬鹿だなや。マゾクっちゅーのが居なくなんない限り
 戦は終わったりしないんだなや。今回は、極光島っていう
 のをとりもどしたっちゅー話だぁよ」
766: 以下、
小さな村人「そうなのけ?」 ほけぇ
中年の村人「でも、女騎士さんは、軍の将軍になって
 お話の英雄みたいに活躍したっておら聞いただよ」
メイド妹「そうなんだよ♪」
小さな村人「さっそく吟遊詩人さんが歌さ作ってただ!
 格好良かっただよぉ?」
中年の村人「酒場にきとるんけ?」
狩人「酒場も二つになって、随分大きくなったべぇ」
メイド妹「あのね、あのね!」
メイド姉「当主様たちは、今から冬の王宮に向かうそうですよ」
小さな村人「王様のところだべか?」
中年の村人「ああ、きっとご褒美をもらえるだべよ」
メイド妹「きっとねー。ごちそうがでるんだよー」じゅる
メイド姉「もうっ……。何でこんな食いしん坊に
 なっちゃったのかしら……」
メイド妹「えへへへ?♪」
小さな村人「何はともあれ、今年も春だぁよ!
 ああ、ここは良い村になっただなやぁ」
769: 以下、
――冬の王宮、爵位授与式
吹奏楽隊 ?♪ ??♪
冬寂王「すまんな、こんな儀式に付き合わせて」
女騎士「いえ」
魔王「かまわん」
冬寂王「そなたらは目立つのは苦手なのだろうが
 これも王族のもってる義務の一つでな」
女騎士「心得ております」
魔王「万民に威を示すことも責務であろうな」
執事「準備万端整ってございます」
冬寂王「さぁ、行こう」
 ぎぃぃぃぃっ!
 来駕の万民 わぁぁぁ!!!! わぁぁぁ!!!
773: 以下、
吹奏楽隊 ?♪ ??♪
冬寂王「我が民、我が祖国よっ!」
 来駕の万民 わぁぁぁ!!!! わぁぁぁ!!!
冬寂王「諸君らの働きに感謝する。極光島奪還は成った!
 これもひとえに諸君らの忠誠、赤心によるものだと心得る。
 こののち、極光島の防備に関してまた難しい計画があり
 それについては諸君ら、文武百官の力を借りることも
 あるだろう。また、このたびの戦役に恩賞も行わねば
 ならぬ。この冬寂王、力を貸してくれた諸君を決して
 粗末には扱わぬ」
 女騎士「まだまだ貧乏国ですけどね」
 魔王「それでもマシになる途中の貧乏国だ。それに、
 なんだ。身も蓋もない言い方だが、貧乏だからと
 云って恩賞を値切っていては人が居着かぬ」
 執事「まこと身も蓋もない話でございますなぁ」
冬寂王「今宵は小さいながらも宴を用意した。
 楽しんで欲しい! 乾杯だ!」
775: 以下、
白夜王の肩身の狭いことwww
777: 以下、
冬寂王「杯を手に聞いて欲しい、この王宮に今日は客人を
 迎えている。知っている者も多いとは思うが、かつて
 勇者とともに魔界を駆け抜け、人界に大きな貢献をなした
 三人の生きた伝説、その一人、女騎士殿だっ」
すっ
女騎士「ご紹介預かった、女騎士だ」
冬寂王「女騎士殿はこたびの戦役において、前線司令官
 という非常に重い役目を担って頂いた。
 さらには一騎打ちにて南氷将軍を仕留めるという
 まさに英雄に相応しい貢献もして頂いた。
 実を言えば
 我が国の将軍を打診したのだが、断られてしまったよ」
来駕者 あははははは!!
冬寂王「いやいや、もちろん冬の国が貧乏なせいもあるの
 だがな! だがしかし、女騎士殿は湖畔修道会の指導者
 と云う責任有る立場についておられる。
 湖畔修道会は、南部にとって無くてはならない組織だ。
 我が国一つにその御身を縛り付けることは、精霊の意にも
 そむくことになろう!
 しかし、我が国の、人類の恩人であることには変わりない。
 女騎士殿は、我が国の名誉伯位である!
 みなのものもそう心得よ!」
778: 以下、

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