旅芸人「遂に魔王が蘇った!」back

旅芸人「遂に魔王が蘇った!」


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旅芸人「そして復活間も無く、その軍勢率いて泉の国を襲ったという!」
旅芸人「嗚呼!嘆かわしい!強大な軍事力持たぬ泉の国、激しい攻撃に三日と持たず陥落したと……」
青年「何の芝居だ、あれ?」
友「お前、本当に知らないのか?魔王が復活したんだよ!」
青年「何それ、マジで?」
友「マジでマジマジ、ガチマジで」
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2: 以下、
青年「じゃあ泉の国は……」
友「そいつも本当だ。綺麗な国だったのになぁ……今じゃ見る影もないらしい」
青年「見る影?拠点にはされていないのか?」
友「どうも見せしめの侵略らしいんだが、まあ効果は絶大だな。どこの国も震え上がっているって話だ」
友「本当に世間知らずだな……巷で一番の話題、というか大問題なんだぞ」
青年「……ここ数日、山で狩りしてたんだよ。昨日は豪勢に猪鍋して一人で盛り上がってたんだよ」
3: 以下、
青年「にしても魔王とか……もう数百年現れていないんじゃなかったのか?」
友「授業じゃそんな話だったなぁ。今学者連中がそっちの議題で話し合ってるそうだ」
青年「眼前の問題を無視してか。能動的じゃないな」
友「じゃあ俺達は能動的にどうするよ?」
青年「……実際問題、各国の軍がどうにかできるレベルなのか?」
友「いくつかの国は諦めモードらしい」
青年「こりゃエスケープ一択かなぁ」
4: 以下、
友「逃げる?北の大陸にか?」
青年「北なら魔族の血も濃いだろうから、多少は抗戦できるんじゃないか?」
青年「ほら、昔は北が魔族で南が人間の領地だったろ?血の濃さの比率もそれになっているらしいし」
友「そりゃあそうだが、向こうだって純血の魔族なんていないって話だ」
友「能力的にどうなんかねぇ。過去の栄光にすがり過ぎな気がしてならない」
友「それに海にはでっかい海獣がいるんだろ?船を沈められる話なんて珍しくないぜ」
5: 以下、
青年「じゃあどうすんだよ。死ぬまで命乞いでもするのか?」
友「今、国が傭兵的なの募集しているんだ」
青年「一稼ぎする気か?死んだら元も子もないんだぞ」
友「そこでだ。お前の家系って勇者の血筋なんだろ?一旗上げようぜ!」
友「勇者の末裔のPT!ってな」
青年「無視されたのはこの際いいとして、血筋は親が言っていただけなんだからな?」
青年「だいたい、俺達は兵士でなければ剣士ですらないんだぞ」
友「何で弱気なんだよ、剣術の成績は俺とお前で独走だぜ?」
7: 以下、
青年「実戦経験無いのに強気なお前がおかしいんだよ!」
友「はっはー!これでも結構本気な試合をしているからな!」
友「お前に関して言えばしょっちゅう狩りをしているんだから、別に問題なくねぇか?」
青年「動物狩るのと戦闘を同一視するのはどうかと思う」
友「じゃ現場で慣れればいいだろ。お前勇者ね。俺戦士ー」
青年「え、何書いてん、馬鹿、役場に持っていくな!」
8: 以下、
戦士「俺戦士ー」
勇者「……」
戦士「お前勇者ー」
勇者「何これ、マジで?」
戦士「マジマジ」
勇者「何か、お役人さんから称号まで頂いたんだが」
戦士「各地の宿屋や道具屋を少し安く利用できるとの事」
勇者「うお、超いいじゃんその特典!」
戦士「ただし、しっかりと魔物討伐を行っていないと称号剥奪の上、税金が増すらしい」
勇者「まあ、当然と言えば当然なペナルティーだな」
9: 以下、
戦士「さてどうする?出発は明日?」
勇者「……魔王城って泉の国に近いのか?」
戦士「真っ先に狙われただけはあるな。泉の国より更に西にあった廃墟が魔王城だそうだ」
勇者(そういえばそんな話だったっけか……)
勇者「とりあえず出発は明日。今日は親に手紙を出しておく」
戦士「あ、近いんだったか?」
勇者「いや、そうでもないけどできれば逃げてと。後勇者にされたから、しばらく実家にも下宿先にも帰れない旨を」
10: 以下、
勇者「手紙も出したし、準備もしたし……当面の事を考えるか」
勇者「教科書開くとか懐かしいな。今じゃ実技ばっかだからなぁ」
勇者「まずはこっちの国から調べていくか」
勇者「大きな所で銅の国、盾の国、黄金の国、塀の国、石の国か……」
勇者「黄金はサムラーイという兵士がいるが……どちらかというと対人特化らしいからなぁ」
勇者「塀の国は防衛メインの国家だし、ここはいいかな」
勇者「後は軍事力があるのは銅と盾か。腕の立つ人も多そうだし行ってみてもいいなぁ」
勇者「待てよ、俺ら二人とも剣使う事考えると、魔法が使える人も仲間に入れたいところだよな……」
勇者「魔法で考えると石の国……中堅どころで風の都市と雲の都市ぐらいか」
12: 以下、
勇者「北の大陸は……あ、そういえば、世界史も世界地理も蹴ったんだ」
勇者「どうするか?明日あいつに聞いてみるか?いや、あいつも蹴って別の学科学んでいたような」
勇者「まあいいか。聞いてから判断して遅いって事もないだろうし」
勇者「しっかし北の大陸か……行こうとする日が来るなら修得しておけばよかったな」
勇者(魔法で考えれば、やはり魔族のが有利なんだろうなぁ……)
勇者(そもそも、向こうの大陸の軍と手を組めば、魔王なんて倒せるんじゃないのか?)
13: 以下、
戦士「よっしゃ、今日こそは出発だ!」
勇者「それはいいが、行き先とか決まっているのか?」
戦士「……」
勇者「……?」
戦士「よっしゃ、今日こそは出発だ!」
勇者(見切り発車!!)
14: 以下、
勇者「まあいい……戦士って世界史とか世界地理って修得してたっけ?」
戦士「そんなもん、俺が選ぶと思うのか?」
勇者「ですよねー」
勇者「ああ、本格的に困ったぞ。無知に程なく近い大陸に行ってどうするんだ俺達」
戦士「どうにかなるべ」
勇者「そうだよね、なるようになるよね。不安を覚えないお前の度胸は本当に羨ましいよ」
15: 以下、
勇者「とりあえず、軍事力を持つ国に行って仲間でも見つけるぞ」
戦士「これ以上剣の数増やしてどうするんだ?」
勇者「そこは俺も思ったよ。ただ、泉の国をほんの数日で落とした相手なんだぞ?」
勇者「二本ではどうにもならんだろ?」
戦士「それ言っちゃあ、勇者とかより軍隊のが有能になっちまうぜ」
戦士「昔はたった一人で魔王に挑んだ勇者なんて、珍しい話じゃないんだぞ?」
勇者「駄目だこいつ、早く何とかしないと」
16: 以下、
勇者「いいか、あれは飽くまで伝承とか昔話だ。事実に近い話もあるだろうが……」
勇者「所詮は誇張された話に過ぎないんだよ」
勇者「だいたい、魔族の血も入っていないで雷を降らすとか、岩石の魔物を両断するとか」
勇者「そんな人外の力、俺は持ち合わせちゃいないのさ」
戦士「お前、そりゃいくらなんでも罰当たりだろ。もう少しご先祖様を敬えよ」
19: 以下、
勇者「家系図もないのに何を信じろと」
戦士「あったら信じるのか?」
勇者「捏造と疑う」
戦士「……お前も大概だな」
勇者「もうこの話は終わりだ。何時まで経っても出発できない」
勇者「当面は銅と盾の国で戦士、石と雲の国で魔法使える人を見つけるぞ」
20: 以下、
草原
勇者「……なんだあの怪鳥」
戦士「でけえなぁ……あれなら食事に困らなさそうだ」
勇者「そうじゃなくて、あんな鳥見たこと無いぞ!」
戦士「あれが魔物じゃねーの?」
勇者「魔物って言ったら、もっとこうゴブリンだとかオークだとか……」
戦士「それは北の大陸の魔物だろ。魔王が率いる魔物は普通の動物を元にした形だって教わったろ」
21: 以下、
勇者「初戦闘か……」
戦士「……流石の俺もちょっとだけ緊張してきt」
勇者は茂みから弓を引き絞った!
頭部へ痛恨の一撃!勇者達は怪鳥を倒した!
勇者「何だ、これなら狩りより楽だな」
戦士「……」
23: 以下、
勇者「さっきから不満そうだが何かあったか?」
戦士「いや、さ。お前勇者なんだから剣で戦おうよ、剣で」
勇者「距離あったんだから弓矢でいいだろ。見たろ、あの魔物避けもしなかったぜ」
勇者「これならしばらくは楽だな。狩り慣れている」
勇者「ほら、肉も焼けたし食おうぜ」
戦士「旅立ち初日、三戦とも弓矢で狩猟しただけってのもなぁ……」
25: 以下、
勇者「では、新たな旅路その成功を願いまして、乾杯っ」
戦士「乾杯っ」
戦士「晩飯食うとき必ず乾杯するよな」
勇者「何か昔からの取り決めで、先祖代々やっているらしい」
勇者「まあ、俺もそれが身についてしまった一人なんだが」
戦士「まさか一人で食ってても乾杯を?何て言っているんだ?」
勇者「あー……適当に今日一日生きてこられた事を祝ったりにとか、明日の平和を願ったり?」
戦士「適当なのになんで一日を重く受け止める内容なんだ」
27: 以下、
勇者「お、鳥見っけ」
戦士「魔物なのにえらい格下げには同情を禁じえない」
勇者「うっせ、あんなのただの獲物だろ」
戦士「そしてまた弓矢を出す」
勇者「狩りだからな。よし、もらtt」
怪鳥「ギエエエエエエエ!」
怪鳥は仲間を呼んだ!
狂犬A、B、Cが現れた!
戦士「うへぇ、囲まれた!」
勇者「ば、抜刀ーー!」
28: 以下、
戦士「銅の国の領土……次の町まであとどのくらいだ?」
勇者「後五日ぐらいだな」
戦士「やばいな、薬草も食料も心許ないぞ」
勇者「俺もそう思う……いや、引き返せる距離でもない。決行だ」
勇者「薬草は難しいが、食料なら少し我慢すれば魔物がでてくるだろう」
四日後
戦士「……敵、すくな……も、無理」
勇者「……見誤、た」
29: 以下、
勇者「……っは!」ガバ
戦士「……スー」
勇者(宿屋……?銅の国の領土内に辿り着いた?)
勇者「いや、明らかに行き倒れたはず……誰かに助けられたか?」
勇者「起きろ、おい」バシバシ
戦士「……スー」
勇者「峰打t」
戦士「うおーーーっはようございますっ!」
30: 以下、
戦士「久々に叩き起こされるかと思った……」
勇者「既に叩いたぞ」
戦士「お前の場合柄で全力で叩くから嫌なんだ!」
勇者「だったら、素手で叩いた時点で起きてくれ」
戦士「それができれば座学時代、青痣作る生活をしていなかったさ」
勇者「自覚はしていたのか……」
戦士「その話はもういい!思い出すだけで痛い!」
戦士「そんな事よりここは何処なんだよ」
勇者「これから外に出てそれを調べる所だ。さ、行くぞ」
31: 以下、
商人「おや、目が覚めたかい?」
勇者「あなたは……あなたが俺達を助けて下さったのですか」
戦士「行商人に助けられた勇者一向……うう、惨めだ」
商人「まあ、称号持ってなかったら助けなかったけどね」
勇者「……」
戦士「称号持ちを助けると報奨金が出るそうだ」
勇者「嫌な世の中になったもんだ」
32: 以下、
戦士「おまけに治療費とられたな……」
勇者「路銀が心許無いな」
戦士「こういう時こそ役場にいくぞ」
勇者「え、借金生活?」
戦士「いや、魔物から引っぺがした収集物があるだろ」
戦士「称号を持っている人物からなら、あれを買い取ってくれるんだ」
勇者「討伐報酬、みたいなものか」
勇者「待てよ、そしたら普通に素材になる物は役場に渡さないで、店に売った方が良さそうだな」
戦士「抜け目ねーなぁ。まあ、その通りなんだがよ」
33: 以下、
勇者「一気に資金が潤いました、と」
戦士「ふひゃひゃひゃひゃ、今宵はフルコースじゃああ!」
勇者「装備と物資に充てた上で残っていればな」
戦士「……お前、本当に堅実だよな」
勇者「お前の優先順位がおかしいだけだ」
34: 以下、
勇者「それと酒場だな」
戦士「流石に一杯くらいひっかけるか」
勇者「それもいいが、仲間になりそうな人も探さないとだからな」
戦士「情報収集において定番ですな」
勇者「だな……いや、うちの国じゃそんな感じじゃなかったよな」
戦士「そこら辺は役場が管理していたからなぁ……」
35: 以下、
勇者「……無しか」
戦士「考えてみれば、称号とか貰えるのにわざわざ待ちに徹する人はいねーよな」
勇者「いや、それでも人が足りなくて旅にっていう人くらいいても」
戦士「それ、どんだけコミュニケーション能力が低いんだよ」
勇者「あるいは対人恐怖症か」
戦士「……」
勇者「……」
戦士(俺らの仲間になる奴っているのか……?)
勇者(あれ、俺ら地雷探してる?)
36: 以下、
勇者「……城の兵士とか仲間にならないかな」
戦士「兵士を出したくないからの称号だろ」
勇者「よくよく考えたら、優秀な魔法使いって普通に国とかの仕事就くじゃん?」
勇者「魔王討伐の旅に加わるような魔法使いって……」
戦士「俺ら、初めっからかなりの袋小路にいるよな」
戦士「さて、そんな俺らにどんな選択肢がある?」
勇者「諦めない。ここからだと一番近いのは石の国だ」
37: 以下、
戦士「お、依頼がでてるぞ」
勇者「いきなり何の話だ?」
戦士「この張り紙だよ」
勇者「へぇ……うちの国では見かけないな」
戦士「役場が管理していたからな。運送とか収獲とかの簡単な手伝いやお使いだったが、これからは魔物の討伐依頼とかが増えるだろうな」
戦士「ほれ、早討伐依頼だ」
勇者「洞穴の蝙蝠の魔物駆除か。魔法が無い上に暗所じゃ、俺らにはできないな」
戦士「まあ、依頼する人物や内容によって報酬もまちまちだから、美味しい内容があればこなせばいいだろう」
39: 以下、
勇者「お、薬草が自生してるぞ」
戦士「いや、そんなのどうでもいいから早く行こうぜ」
勇者「回復魔法が使えない俺らには生命線だろ。採取一択だ」
戦士「背に腹は変えられないってか。で、どの部分を採ればいいんだ」
勇者「葉が厚いこいつは根っこ。できれば太いのがいいが贅沢言わず全部使おう」
勇者「採ったら洗って日陰干し。こっちの赤い花が咲いているのは人差し指以上の長さの葉だ」
勇者「こいつは採ったらそのまま日干しだ」
戦士「あー思い出した。粉末状にして混ぜるんだったか」
勇者「吸水すると凄いぬめりを帯びるから、罠や潤滑油の代わりにも使われるな」
戦士「……零したり漏れたら一大事なんだよな」
勇者「調合の授業中にお前がこの粉を舞い上げた時は、どう吊るし上げようかと考えたものだ」
40: 以下、
勇者「〜♪〜♪」
戦士「勇者が鼻歌交じりに薬草採集ってのもなぁ……」
戦士「あ?なんだこの太い蔓、切っちまうか」ブチ
戦士「え、動い、あれ?」ガサガサ
ラフレシアが現れた!!
戦士「ああっと!!」
勇者「あれ、戦士の奴何処……お、いたいた」
戦士は逃げ出した!
しかしラフレシアは追走してくる!
戦士「たしけてポッパーイ!」
勇者「おわーーー!おま、なんて魔物を、来るなーーーー!」
戦士「え、ちょ、弓矢向け、ぎにゃーーーー!」トス
41: 以下、
勇者「おー湖だ」
戦士「大きい池というべきか、ちっこい湖というべきか」
勇者「どうする、先に進むか?」
戦士「今晩もラフレシアの花のゴマ和えなんだろ」
勇者「副食さえも主食。旅人はそうであるべきだって教わった」
戦士「ここで野営だ。釣るぞ、魚!食うぞ、蛋白質!」
勇者「思いのほか魔物がいなかったもんな」
42: 以下、
ゾンビドッグの群れが現れた!
戦士「いくら毒の沼地と墓地の近くで夜だからってこれはねーだろ!」
勇者「こいつら、意外と噛み付きが痛いんだよ、な!」
ゾンビドッグAが口を開けて襲い掛かる!
勇者は狙いを澄まし、ゾンビドッグAの首を刎ねた!
戦士の捨て身の一撃!ゾンビドッグDの頭を叩き潰した!
ゾンビドッグの群れは恐れ戦き逃げ出した!
魔物の群れを倒した!
戦士「お、ノーダメージ。パーフェクト!ボーナスは一万点だ!」
勇者「ふざけてないで収集できるもの漁っておくぞ」
戦士「ゾンビじゃなぁ……うげぇ、変な液体が、って何ぼーっとしてんだよ」
勇者「……この肉、腐っていない」クンクン
戦士「ば、やめろ、何考えているんだ、ふざけんな!」
44: 以下、
石の国・城下町
勇者「俺は役場に行ってくるな」
戦士「じゃあ、俺はここの店にいるなー」
戦士「……ありゃ、道具屋かと思ったら魔法職用の店か」
戦士(なにがどんな道具かさっぱりだがここで暇を潰すか)
戦士(……一人だけ鎧姿ってめっちゃ浮くのな)
魔法使い「はい、おじさん。今日の収獲分ね」
主人「お、いつもありがとねー。今日は結構取れたな。うん、これなら多く作れるな」
主人「明日またきなよ。これ作る薬を分けてあげるから」
魔法使い「本当ですか?それじゃあお言葉に甘えて楽しみにさせて貰います」
戦士(へえ……)
45: 以下、
勇者「今気づいたがここってお前が立ち寄る店じゃないよな」
戦士「店内に入ってから俺も気づいた」
戦士「だが、掘り出し物を見つけた感じだ」
勇者「お……まさか仲間を見つかったか?!」
戦士「いや、すげー可愛い子がいた」
勇者「……」
戦士「お前が遅いからストーキングして家の位置までばっちりさ!」
勇者「PTから除名していいか?」
47: 以下、
戦士「そう言うなよー魔法使いだったぞー」
勇者「うるさい。寄るな変質者!」
戦士「結構似たような事今までにもしてたのに、今回だけやけに冷たくないか?」
勇者「そりゃ、ストーキングまでしなかった……ああいかん、既に感覚がおかしいぞ俺。悪行にだいぶ慣れてきている」
戦士「今更だしもう戻れんよ。ところでその手荷物は何だ?」
勇者「夕飯を作っておいた。と言ってもあり合わせの素材と露店で何とかって程度だが」
戦士「すっげーいい匂いなんだが、本当にあり合わせのレベルなのか?」
48: 以下、
勇者「ここの酒場も無しか……」
戦士「あれ、さっきの晩飯は?」
勇者「ここのマスターに暖めてもらっている」
戦士「食う物持込とか嫌な客だな」
勇者「酒は注文しているんだから文句は言われなかったぞ」
戦士「店としてどうなんだろうなぁ。追い出されるよりかはいいけどさ」
49: 以下、
勇者「本日のディナーは肉と香草のグレープソース和えとなっております」
戦士「うひょーシェフ一押しの一品。いやいやいや、どこがあり合わせだよ」
勇者「味見していないけどな」
戦士「なら俺がしてやんよ。いっただっきまーす!!」
魔法使い「マスター届け物を……あら、珍しい料理をメニューに加えたのね」
戦士「うま!うま……あ、おい、さっき言った子だ」
マスター「それはそこの勇者さんが作ったそうだよ」
魔法使い「へえ、貴方達、毒の沼地の方から来たの?」
戦士「うま!うま……」ピク
勇者 [>escape ッピ
この戦いからは逃げられない!
52: 以下、
戦士「てっめーー!なにで作ったんだよこれーー!!」ギリギリ
勇者「お、落ち着け、あの肉は熟成肉といって正式に食材として認可されているんだ!」
魔法使い「ちなみにこの料理、ここじゃ普通にレシピ化されているわよ?」
戦士「ぐおぉぉ、カルチャーショックゥゥ……」
勇者「……うん、美味い美味い。あのゾンビドックは魔王復活以前からの、元からいた魔物なんだな」
魔法使い「そうだけど……味見もしていなかったの?」
勇者「まあ……毒見ならこれがするだろうと思って」
53: 以下、
勇者「君は国から称号とか貰っていないのかい?」
魔法使い「あら、旅へのお誘いかしら?」
勇者「見ての通り剣しかないからな。できる事なら魔法職が欲しいんだ」
戦士「そーそー。物理耐性とか高防御の相手がでてきたらさくっとやれるからなぁ」
魔法使い「うーん……ごめん、あたしは力になれないわ」
勇者「そっか、無理な事を言って悪かった」
戦士「この調子だと、周辺の町も駄目そうだなぁ……早々と風か雲に移るか?」
魔法使い「え……断っておいてなんだけど、引くの早すぎない?」
54: 以下、
勇者「町に残っている魔法使いなんて、そこでの仕事があるか訳ありだろうからね」
戦士「ぶっちゃけ探してはいるが、結構諦めはいってるんよ」
魔法使い「そう……ごめんね」
マスター「別にいいんじゃないかい?そりゃあ店の手伝いや材料集めとかはありがたいけど」
マスター「外で経験積んだ方が、よっぽどいい仕事に就けるだろうしさ」
魔法使い「手伝いの代わりがいもしないのに、そんな事言ってどうするんですか」
マスター「有望な君をこんな所で腐らすのは本心じゃないのさ。他の店の主人達もそう思っているよ」
戦士「国の中心地なのにこんな所だってよ」
勇者「城下町で暮らした事のない俺らはどうする、って話だよな」
56: 以下、
魔法使い「……分かったわ」
魔法使い「一つお願い事を聞いてくれたら、仲間になってあげるわ」
勇者「まさかの強制クエストか……」
魔法使い「依頼出せるほど裕福じゃないから許してよ」
戦士「俺らにできる事って結構限られるんだが、どんな内容なんだ?」
魔法使い「魔物の討伐よ」
勇者「……洞窟に行けとか言わないよな」
魔法使い「そんなのあなた達に頼まな……今更だけど勇者なのに魔法全く使えないの?」
57: 以下、
戦士「うちの国、称号取る際に試験とかないからな」
勇者「あ、正式には文武両道じゃないと駄目なのか」
魔法使い「か、回復手段はあるの……?」
戦士「回復手段がなかったらここまで来れなかっただろうな」
勇者「確実に一週間でくたばっていたな」
魔法使い「ほっ……流石にそうよね。いくらなんでも回復魔法・小ぐらい……」
勇者は薬草が詰まった袋をちらつかせた。
魔法使い「……」
魔法使いの勇者達への信頼度が下がった!
58: 以下、
戦士「で、脱線したが肝心の内容は?」
魔法使い「え……ええ、そうね。ここから南の森にとある薬草が自生している場所があるんだけど」
魔法使い「蜘蛛の魔物の巣窟になってしまっているの。これを完全に駆除してもらうわ」
勇者「炎系の魔法で焼き払うわけにもいかないのか。そもそもそんな所に蜘蛛の魔物が生息するものなのか?」
魔法使い「雑食の蜘蛛だからね。食うに困れば植物に頼る奴なのよ」
戦士「だが、薬草の収集ポイントなんだろ。国とかは動かないのかよ」
魔法使い「用途が調合すると、魔法使いの卵でも手が出せる魔力向上の薬になるのよ」
魔法使い「ただ、中級者とかはもっといい物があるものだから、国もそこまで重要視していないのよ」
勇者「初心者の為の道具なんてたかがしれた額だもんな」
戦士「大人の嫌な事情が垣間見えるぜ……」
59: 以下、
戦士「つっても、効果は微々たるものなんだろ?」
戦士「一旦薬草ごと焼き払っちまえばいいんじゃないのか?」
魔法使い「これだから近接職の考えは……」
勇者「よう脳筋。同じ火球魔法・弱でも魔法使いの卵と熟練者とじゃ全く異なる。これなーんでだ」
戦士「あー……魔力や技術で精度や効果が大きく変わるんだったっけか」
魔法使い「勇者君の例だと弾が上がる、火球が大きくなる、着弾時爆発するようになるわね」
戦士「爆発までするようになるのか。結構変わるんだな……」
魔法使い「そうよ、だから微々たる効果でも魔力を上げるのには意味があるのよ」
勇者「あとは魔法を唱える際に消費する魔力のタンクの大きさにも繋がるんだよ」
戦士「薬草による一過性の効果じゃ意味なくないか?」
勇者「まあな。そこは大きい効果を持たないと有難味は実感できないだろう。が、無より有ってやつだ」
60: 以下、
魔法使い「もう一つ駆除する理由があって……女王蜘蛛が出てくると困るのよ」
魔法使い「夜は眠るし基本大人しいんだけど、女王がいると夜行性になるわ集団で狩りを行うわで厄介なのよ」
戦士「ちょっとしたボスだな。てか随分詳しいな、勉強家め」
勇者「それって放置していていいのか?それこそ国が動くんじゃないのか?」
魔法使い「学んでおいて損は無いからね。あと、国は女王蜘蛛が出てきても軍でどうにかできると考えているのよ」
魔法使い「彼らは巣を作らないで直接狩るタイプだっていうのに」
戦士「……おいおい、俺らじゃ無理なんじゃないのか?」
勇者「いや、女王がいなけりゃ何とかなるだろ。早期決着でないと危険だが、君も一緒に戦ってくれるんだろう?」
魔法使い「もちろん。それと、数日前にはまだ女王はいなかったわ」
勇者「それじゃ今晩辺りにでも行ってみるか。駆除さえできれば日を改めたっていいんだろ?」
61: 以下、
夜・郊外
戦士「おい……」
魔法使い「うわ……ごめんなさい」
勇者「女王と言うだけあってでかいな。普通に人を捕食するんじゃないか?」
戦士「こりゃ無理だろ。戻って素直に軍を動かしちまえよ。あるいはいっそ焼き払うか」
勇者「小蜘蛛は倒せても、女王との戦闘となると……」
勇者「この魔物に関して、俺らよりよっぽど詳しいんだ。君の判断に任せるよ」
魔法使い「……」
魔法使い「逃げましょう。女王がいなければ各個撃破もできるけども、今は一匹でも攻撃すれば一斉に襲い掛かってくるわ」
勇者「だってよ」
戦士「問題は気づかれずに逃げ切れるかだな」
62: 以下、
勇者「慎重に下がれよ」
戦士「子供か、俺は」
魔法使い「どうか見つかりませんように……」ボソボソ
町人「っげ、なんだこれ!」
勇者「?!」
魔法使い「しまった……この事は公になっていないんだった」
戦士「わざわざ夜に収集かよ……げぇ、女王がこっちを向いたぜ!」
魔物の群れが襲い掛かってきた!!
63: 以下、
魔法使い「あなたは逃げて、軍にこの事を伝えてください!」
町人「わ、分かった!」
戦士「いいなぁ……俺らも走って逃げたいぜ」
勇者「この数を町に流れ込ませる訳にはいかないだろ。精々頭数潰して時間を稼ぐさ」
小蜘蛛Aが飛びついてきた!
勇者は盾で弾き飛ばした!
小蜘蛛Bの噛み付き!
勇者は蹴り離した!
小蜘蛛Cの体当たり!
勇者は身をかわした!
戦士は小蜘蛛Cの頭部を力任せに叩き切った!
戦士「大丈夫か!」
勇者「助かる!」
勇者(とは言え、多勢に無勢だ……スタミナが尽きるぞ、これ)
64: 以下、
魔法使い「氷矢魔法・弱!」
小蜘蛛Fに大きな氷の矢が突き刺さる!小蜘蛛Fは息絶えた!
魔法使い「氷石魔法・弱!」
小蜘蛛A、D、H、I、K、L、M、Nに氷の塊が降り注ぐ!
戦士「範囲魔法じゃ確殺は無理か!」
戦士は剣を大きく薙ぎ払った!
小蜘蛛D、Hを切り裂いた!
勇者(魔法使いの魔力が枯渇するまでそう長くないだろうな)
勇者(女王蜘蛛は足が遅いようだし、ここは……)
勇者「全力で逃げながら戦うぞ!小蜘蛛殲滅は諦めよう!」
65: 以下、
戦士「ぜぇ、ぜぇ……」
勇者「はぁ……はぁ……」
魔法使い「……ふう、二人は大丈夫?」
勇者「攻撃は防げているから毒もダメージも無いが……スタミナが」
戦士「走りながら戦うってしんどいな」
魔法使い「ごめんなさい……前線で戦えもしないのに、こんな事に巻き込んでしまって」
勇者「今は生き残る事に集中しよう。あとどれ位魔法が撃てる?」
魔法使い「単体なら四回。範囲は属性によるけど二回が限界ね」
戦士「どんだけ小蜘蛛がいるんだよ……おいでなすったぜ」
勇者「戦士は燃えそうな物をこの周辺に、広い範囲に集めてくれ。その間は俺が何とか防ぐ!」
勇者「魔法使いはどでかい炎の範囲魔法を頼むよ」
66: 以下、
戦士「お前はしばらく座って休んでおけ。こんだけ開けた場所なら横から奇襲されるより先に気づくだろ」
魔法使い「そんな……二人にばかり、それも彼に至っては」
戦士「休んでおけば少しは魔力が回復するんだろ?あいつはそれに賭けてるんだよ」
戦士「これで失敗したら全力で町まで撤退だ」
魔法使い「……そういう事であればお言葉に甘えさせてもらうわ」
戦士「……」
戦士(正直、休んでいられるのは羨ましい、とは言えないな)
67: 以下、
小蜘蛛BO、BY、CE、CDが飛び掛る!
勇者(無理だろおおおお!)
勇者は横に飛び退き攻撃をかわした!
勇者(抱えるほどの大きさが四つとか……盾で防がれるから重さで押してきているのか?)
小蜘蛛BQ、BXの噛み付き!
勇者は小蜘蛛BQの頭部を切り裂いた!小蜘蛛BXが鎧の隙間を噛み付いた!
勇者の身体に毒が流し込まれる!
勇者「っ……!」
勇者はキュアポーションを使った!蜘蛛の毒を解毒した!
勇者「……ふう」
勇者「いや、もたないだろこれ」
68: 以下、
勇者(下手に使うと魔法の効果が落ちそうで嫌だが……背に腹はっ)
勇者は粉末のキズ薬を撒き散らした!
勇者は水筒に残っている水を撒き散らす!粉末のキズ薬はぬめりだした!
追撃してきた小蜘蛛の群れはバランスを崩した!
勇者は矢継ぎ早に弓矢を放った!
小蜘蛛BO、BQ、BY、CA、CBの頭部を貫く!
勇者「勇者辞めてレンジャーにでもなろうかな……」
69: 以下、
勇者(小蜘蛛も20を切るくらいか……げ!)
女王蜘蛛が攻撃態勢に入った!
勇者目掛けて一直線に向かってくる!
勇者「女王が突進して来たぞ!戦士!」
戦士「もうちょい時間が、ってはええええ!」
勇者「女王の本気って所か?俺も後退する!魔法用意!」
勇者(もし、女王が小蜘蛛よりも能力が大幅に上回るとしたら、俺らじゃどうにもならないが……)
勇者の弓矢での攻撃!女王蜘蛛の頭部に命中!
しかし、女王蜘蛛は怯まない!
勇者(どうにもならないな)
70: 以下、
魔法使い「火炎魔法・弱!」
周囲を炎が包み込む!
小蜘蛛の群れを焼き払った!女王蜘蛛は炎に包まれた!
戦士「やったか!?」
女王蜘蛛は炎の中を突き進んでくる!
勇者「これ以上は無理だ、町まで撤退だ!」
勇者達は逃げだした!
女王蜘蛛は追走している!
73: 以下、
女王蜘蛛が勇者に追いついた!
勇者は攻撃に備え、盾を構えて迎え撃つ!
女王蜘蛛は体当たりをして勇者を跳ね飛ばした!
戦士「身構えててあんだけ吹っ飛ばされるのかよ……」
女王蜘蛛は倒れている勇者に狙いをつけて口を開けた!
勇者(なんて牙……噛み砕かれる!)
魔法使い「火球魔法・弱!」
魔法使いより放たれた火球は女王蜘蛛の頭部にあたる!
女王蜘蛛は怯み、足を止めた!
「な、こんな化け物が!」
74: 以下、
兵士A「おいおい、こんなのどう戦えってんだ!」
魔法使いA「絶対にあれを町にいれるな!ここで食い止めるぞ!」
僧侶A「こんな小規模の編成であれを……?無茶だわ……」
魔法使いA「やるしかないんだ!範囲魔力上昇・中、範囲俊敏上昇・中!」
兵士B「援護は任したぞ。兵士A、行くぞ!」
戦士「援軍、にしちゃ少ないな。小数精鋭か……?」
魔法使い「せめてもう一組いれば女王を囲めるのに……」
勇者「ぜぇ、はぁ、ぜぇ、はぁ……」
戦士「お、生きてた」
勇者「てめぇ……回収くらいしてくれよ……女王の目の前で、生きた心地しなかったぞ」
魔法使い「ご、ごめん……援軍に気を取られてた」
75: 以下、
兵士Aは女王蜘蛛の足を素早く切りつけた!
女王蜘蛛は兵士Aに噛み付こうとする!
兵士Bは女王蜘蛛の頭部を盾で叩きつけた!
女王蜘蛛は巨体を揺らし、兵士達を薙ぎ払う!
兵士Aは身をかわした!兵士Bは吹き飛ばされた!
僧侶は回復魔法・弱を兵士Bに唱えた!兵士Bのキズが回復する!
魔法使いAは火球魔法・中を唱えた!
魔法使い「……」
戦士「普通に一組で倒せる勢いだな」
勇者(今の所体当たり系の攻撃だけで済んではいるが……)
76: 以下、
兵士Aと兵士Bの連携!
兵士A「この一撃で!」
兵士B「こいつで!」
兵士A・B「終わりだっ!」
二人は女王蜘蛛の足に踊りかかる!
戦士「おお!」
魔法使い「俊敏性を殺ぐつもりなのね……どうやらこれが決定打となりそうね」
勇者(おかしい……女王は身構える様子がないぞ)
79: 以下、
勇者(これは俺達の慢心だ……正義では勝てない。勝つのは何時だって強者だ……)
兵士A「ぐあああああああああ!!」
女王蜘蛛は兵士Aを噛み付き、高々と持ち上げた!
鎧が噛み砕かれる音が、周囲の者に恐怖を与える!!
戦士「おいおい、マジかよ……!」
勇者「援護に入るぞ!」
女王蜘蛛は兵士Aを叩きつけると、兵士Bへと向き直った!
勇者は剣を突き出し、女王蜘蛛の目を深く抉った!
女王蜘蛛は回復魔法・中を唱えた!
女王蜘蛛のキズが回復する!
勇者「なっ!」
80: 以下、
戦士「何で魔法が使える事を事前に教えなかったんだ!」
魔法使い「あれは魔法なんか……まさか薬草の!?」
勇者(どちらにせよ、一旦彼らからこいつを離さないと……)
勇者は女王蜘蛛に飛び乗り、頭部に剣を突き立てた!
女王蜘蛛は大きく仰け反り、勇者をふるい落としにかかる!が、勇者はしがみ付いている!
魔法使いA「無茶だ!降りろ青年!」
戦士「あんの馬鹿!暴れ馬に乗ったつもりか!」
女王蜘蛛は勇者を振り落とそうと走り出した!
女王蜘蛛は逃げ出した!
81: 以下、
勇者「俺かお前か……スタミナが切れるまでのデスマッチだな」
勇者(能力的に考えれば、こちらが不利なのは目に見えるが諦めないぞ)
女王蜘蛛は回復魔法・中を唱えた!
剣に貫かれたままでは傷が塞がらない!
勇者「はは、継続してダメージが与えられるのは強み……」
勇者「城壁?不味い、町に突っ込む……逃げろーーー!」
門番A「今の声は……な、なんだあれは!」
門番B「逃げろ!こっちに来るぞ!」
82: 以下、
門番Bは身をかわした!門番Aは跳ね飛ばされた!
勇者「今の直撃だぞ……死んでませんように」
勇者「てか、城下町に着いちまった……どうする?いや、この騒ぎで魔法職の編成隊が出てこないか?」
「ば、化け物だ!化け物がいるぞ!」
「逃げろ!食い殺されるぞ!」
「誰か軍に……急げ!」
「槍だ!槍をもってこい!」
勇者「案外、何とかなりそう……おわ!」
勇者は女王蜘蛛の頭部を切り裂き転落した!
女王蜘蛛は回復魔法・中を唱えた!しかし魔力が足りない!
勇者「ここが正念場か……」
83: 以下、
女王蜘蛛は町人の方へと走り出した!
勇者は追いかけたが間に合わない!
女王蜘蛛は人の群れを薙ぎ払った!
「誰か助けて……!」
「こいつ、俺らを食う気……ぎゃああああああ!」
勇者は女王蜘蛛に切りかかる!
女王蜘蛛は身体を大きく揺らし、勇者を弾き飛ばした!
勇者「正面からじゃきついが……時間は稼ぐ!」
84: 以下、
勇者「ぜぇ……はぁ……」
勇者の身体を毒が蝕む!
女王蜘蛛は出血が止まらない!
勇者(これ以上は限界だ……)
「頑張れ兄ちゃん!後少しで魔法使いの部隊が来るぞ!」
勇者「よし……俺の勝……あっ」グラッ
勇者のオートバーサークが発動した!
我を忘れて魔物に襲い掛かる!!
85: 以下、
……
勇者「……?」パチ
勇者「……ここは?」キョロキョロ
戦士「おーやっと気づいたか。実に三日ぶりのお目覚めだぞ」
勇者「……そうか。っえ、三日?!」
戦士「お前、覚えていないのか……?」
勇者「オートバーサークが発動して、発狂したのは覚えているけど……人を斬ったりしていないよな?」
戦士「斬ったのは魔物だけだから安心しろよ」
勇者「それを聞いて安心したよ」
89: 以下、
魔法使い「あなた、見かけによらず化け物なのね……」
戦士「いや、オートバーサークってスキルを修得してれば皆あんな感じだ」
魔法使い「どういう効果なの?」
戦士「体力が一定を下回ると発動。効果が切れるまでの間、腕力、俊敏、自然治癒力が上昇し敵を攻撃し続ける。効果が切れたら気絶だ」
戦士「気絶するとか使い勝手悪いから俺は修得しなかったがな」
勇者「あの後どうなったんだ?」
戦士「軍の魔法使いの部隊が援護してたが、殆どはお前が倒したようなもんだぞ?」
戦士「止めで頭部を切り落としたんだが……切り上げて両断する様正に鬼の如し、と専らの噂だぞ」
90: 以下、
戦士「それと、お前後で国王と謁見な」
勇者「……え?なに?なんで?というか怖いんだが」
魔法使い「今回の一件で直々にお礼を言いたいそうよ」
戦士「負傷者は出たが死者は出なかったんだ。兵士Aも一命を取りとめたんだ」
戦士「兵士として復帰できるかは分からないそうだがな」
魔法使い「討伐隊にしても、町に侵入されてからにしても、あなたがいなかったら多くの死者が出ていた、て評価よ」
勇者「そういう事か……脅かすなよ」
91: 以下、
戦士「凄い報奨金だな……」
勇者「おまけに店じゃそうそう買えないような剣まで」
魔法使い「よかったじゃない。まさかあたしまで貰えるとは思わなかったけど」
勇者「これが目的じゃないから少し複雑だ」
戦士「いいじゃねーか。貰える物、くれた物は素直に頂こうぜ」
勇者「そうなんだけど……なんだかな」
魔法使い「貧乏性?」
戦士「いや、ただの小心者だな」
92: 以下、
「見ろよ、あの人じゃないか?」
「間違いない、彼があの魔物を倒した人だ」
「ありがとう!君達のおかげで助かった!」
「君がいなかったら食い殺されていたところだったよ!」
戦士「凄い歓声だな……」
「今やちょっとした英雄だからな」
勇者「……あ」
兵士B「まさか駆け出しの冒険者に助けられるとは夢にも思わなかったよ」
兵士B「だが礼は言わせて貰う。俺も相棒も君のお陰で命拾いしたよ」
兵士B「何かあったら声をかけてくれ。いくらでも力になろう」ポン
勇者「……」
魔法使い「どうしたの?」
勇者「こういうのもいいもんだな」
93: 以下、
戦士「名声がか?」
勇者「それもあるんだろうけど……なんだろうな。こういう風に人から感謝されるのって初めてだ」
魔法使い「これからはその感覚も薄れていくわよ」
勇者「え?」
魔法使い「これからはより多くの人をもっと助けていく」
魔法使い「そうでしょ、勇者様?」ニコ
魔法使いが仲間になった!
95: 以下、
戦士「さて、次はどうする?というより次はどんな仲間を探すかだよな」
魔法「何言っているのよ。だいたい決まっているじゃないの」
勇者「ああ、今回の戦いで痛感した」
戦士「火力か」
魔法「馬鹿っ!回復役に決まっているでしょ!」
戦士「回復薬ならいくらでもあるじゃねーかー。勇者は調合師の資格持っているし」
魔法「え!凄いじゃない!……違う!それじゃ即効性ないし、回復量も大きくないじゃない!」
勇者「俺が寝ている間に随分仲良くなったなぁ……」
魔法「ぐく、あんたの所為であらぬ誤解を受けたじゃない!」
勇者「仲がいい、と言っただけでそこまで拒絶しなくても……」
戦士「……流石の俺も傷ついたよ」
96: 以下、
戦士「じゃあ……風と雲は確実に回るのか?」
勇者「そこで仲間が見つからなければ北の大陸に行こう」
魔法「はい?」
戦士「どうかしたか?」
魔法「……今、北の大陸に行くって聞こえたんだけど?」
戦士「そりゃあ行く予定だったからな」
魔法「無理無理無理!何言ってるの!あなた達馬鹿じゃないの!?」
戦士「馬鹿は俺だけかと思っていたか?残念だったな。突拍子もない大馬鹿者はこいつだ」
97: 以下、
魔法「だいたい、何をどう考えたら北の大陸に行く事になるのよ!」
戦士「向こう、魔族の血、濃い」
勇者「魔法、強い、仲間、欲しい」
魔法「いやいやいやいや、おかしいでしょ!海には巨大な海獣がいるのよ?!」
勇者「旅立つ前にそんな話したな」
戦士「何気に懐かしいな」
魔法「感傷に浸っている場合!?国の船に乗るならまだしも、一介の市民には無理な話なのよ?!」
98: 以下、
勇者「泉の国を落とすような戦力を保有しているんだ」
勇者「こちらも相応の戦力は無いと戦いにならないだろ」
魔法「だからって北の大陸とか……」
戦士「でなけりゃ、称号のPTは無駄死にだ。魔王軍対連合軍の図式になるまではな」
勇者「より強い味方がどうしても必要なんだ……そこは分かってくれ」
魔法「……」
戦士「というのは建前で、きっとこっちの大陸で称号持ちでPTがない奴は地雷だろう、と」
勇者「じゃあ一か八か北の大陸で、化け物級の魔力持ち見つけちまおうぜ、と」
魔法(あたしの方が地雷踏み抜いた感がっ!)
100: 以下、
魔法(自分で言った手前、今更約束を反故にできないし……)
魔法(でも海を渡る……どう考えても自殺するようなものじゃない!)
魔法(魔王の出現の所為で、北に向かう大型船は出ていない事を分かって言っているようだし……)
魔法(風の都市と雲の都市で仲間が見つからなかったら……)
魔法「って、二つの国回る間も回復役無しなの?!」
勇者「いや、薬草だから全員が回復役だぞ?」
戦士「俺ら二人で盾になるからそうあせんなって」
魔法「もうやだ……なんでこんな地雷を踏み抜いたんだろう」
戦士「実は俺らが地雷らしいぞ」
勇者「現実とは残酷なものだ」
戦士「俺らに?魔法使いに?」
102: 以下、
魔法(ああ、遂に国を出てしまった……きっと生きては帰ってこれないんだろうな)
勇者「お……水場」
魔法(いや、弱気になるな!常に生き残る術を考えるんだ!)
戦士「鳥型の魔物も……どうする?食料は余裕があるように持ってきたんだろ?」
魔法(あわよくば何とかPTから抜ける方法も……!)
勇者は弓矢を放った!
矢は怪鳥の頭部を貫いた!
勇者「晩御飯ゲット」
戦士「上手に焼こうぜー」
魔法「……え?……え!……ええ!?」
105: 以下、
パチパチ
勇者「上手に焼けました、と」
魔法「称号を持つ人と行動するのは初めてだけど……多分、この勇者は珍しい方なのよね」
戦士「審査されたら間違いなく勇者にはなれないだろうな」
勇者「所詮、ごたついた時に作った上に見切り発車の称号だ」
勇者「追々いいように修正がかけられるだろうし、捕まる連中も出てくるだろう」
魔法「どういう事?」
勇者「称号持ちが優遇されすぎているのさ。役場で渡された報酬も良かった」
戦士「システムを作った連中は魔王を倒す為の投資、と思っているんだろうが」
戦士「全体のどの程度が本気で魔王を意識しているのやら」
勇者「金稼ぎとしてしか見ない連中もいるだろうし、うまく利用してぼろ儲けを企む奴らもいるだろう」
勇者「遅かれ早かれ、垂れ流した金を工面する為の財政で、暴徒と化す人もでてくるだろう」
106: 以下、
魔法「……それを防ぐ手立ては?」
勇者「称号廃止か軍を動かすか……軍が動かないのに称号廃止も、リスクが大きいんだけどさ」
戦士「大した報酬もないのに、わざわざ魔物を倒す奴はいないわな」
勇者「ともすれば、野良の魔物の戦力が増すばかり。何れ軍を出す状況になったとしても、これは防ぎたい訳だ」
魔法「難しいのね」
戦士「今すぐ軍を出せばまるっと収まるんだけどな」
勇者「ただ向こうも一国を落とす戦力があるからな」
勇者「そう考えると、やはりこういう少数精鋭で魔王討伐改め、暗殺のがいいのかもしれないな」
108: 以下、
魔物の群れが現れた!
狂犬A「ガウッ!」
勇者「狂犬PTか……余裕だな」
戦士「一気に片を……っは!」
子猫Aは勇者の足元でじゃれている!
子猫Bは戦士の足元でじゃれている!
勇者「これでは……動けないっ!」
戦士「守りを固めるぞ!子猫がどくまで耐えるんだ!」
魔法「あなた達真面目にやりなさいよ!」
勇者「なら範囲魔法……お前もなに子猫を抱えているんだー!」
魔法「……テヘ☆」
戦士「ちょ、おま、あいたーーー!!」ガブ
109: 以下、
勇者「それじゃ、報酬を貰いに行って来るよ」
戦士「あいよ、俺らはここで待ってら」
魔法「案外なんとかなるものね……」
戦士「そりゃあ、元々は二人で石の国まで行ったわけだからな。もうそろそろで風の都市の領土か?」
魔法「真っ直ぐ進めば次の町からね」
戦士「もう一人……もう一人見つかるかねぇ」
魔法「見つからないと凄く困る……あら?」
戦士「あれは……初めて別のPTを見るな」
111: 以下、
勇者「お待た……なに見ているんだ?」
戦士「ほれ、別PT」
勇者「指を指すな。失礼だろ」
魔法「あ、こっち向かってきたわよ」
勇者「お前」
戦士「見た目、気が荒そうじゃなさそうだし大丈夫だろ」
113: 以下、
女勇者「もしかしてあなた達も称号を持っているの?」
男戦士「他のPTは初めて見るな」
勇者「ああ、こちらも初めて見るよ」
魔法(……ほっ)
男武道家「案外少ないのかもしれないな」
戦士「人が集まらない、って話は聞かないんだけどな」
男盗賊「そちらは三人PTなのか?」
117: 以下、
魔法「絶賛回復役募集中よ。そちらは女勇者さんが回復を?」
男戦士「……」
女勇者「……うん、そうだよっ」
勇者「満面な笑みをしつつ間があるのはどうかと思うよ」
男盗賊「まあ、回復魔法自体は使えるからなぁ」
戦士「うちの勇者様とは大違い」
魔法「本当にねぇ……」
女勇者「……苦労しているんだね」
勇者「少しでも魔法が使える者の同情はいらんっ」
118: 以下、
戦士「にしてもそっちは逆ハーレムか」
魔法「ちょ、失礼な事を……」
女勇者「おーほっほっほっ、守りなさいっ貢ぎなさいっ」
男武道家「姫、危険ですのでお下がり下さい」
男戦士「姫には指一本触れさせん」
男盗賊「姫、本日の稼ぎでございます」
戦士「……え、あ!俺の財布ーーーー!!」
勇者「……」
勇者「やばい、あっちのPTすげー楽しそう」
魔法「仮にもPTリーダーがなに言っているのよ」
119: 以下、
戦士「かくいうこちらも逆ハーレムでね」
魔法「……なんでこんな地雷PT選んだんだろう」
女勇者「いいや、分かっていないね。三人が男でなければ逆ハーレムとは呼べないわ!」
男戦士「お前も変なところで張り合うな」
勇者「……」
勇者「いいなあ……あっちのPT」
男盗賊「蚊帳の外なのに凄い嬉しそうだね」
勇者「うちのPTにはああいうノリがないからな」
120: 以下、
魔法「それでさー……うちの男二人はさー……」
女勇者「うんうん、分かる分かる」
戦士「まさか、晩飯まで一緒にするとはなぁ」
勇者「いいじゃないか。この先、何処で協力するかも分からないんだ」
勇者「親睦を深められるなら越した事は無いさ」
男武道家「こんなご時世だからな。背中を預ける時もあるだろうな」
男戦士「そちらは魔王討伐を本気で考えているのか?」
勇者「この先どうなるか分からないからな……戦力は揃えるつもりではいるよ」
男盗賊「やっぱそんなもんだよねー」
魔法「そうしたらあの二人は……!」
女勇者「そ、それは……っ。よし、次の時にはごにょごにょごにょ……」
戦士「なあ……俺は気が気でないんだが」
勇者「そんな酷い仕打ちをした覚え……ないんだがなぁ」
122: 以下、
男盗賊「ところで、そっちのメンバーはどういう間柄なんだー?あの子とは幼馴染とかー?」
男戦士「お前……初対面の相手に何という事を聞くんだ」
男盗賊「だってそういうの気になるじゃん?」
戦士「ウフッ、勇者君とは長い付き合いなのっ」
男武道家「なんと」
勇者「幼馴染とは言えないが彼是五年だな。あとお前、それ次やったら柄頭でぶん殴るからな」
勇者「魔法使いとは石の国で出会ってスカウトしたんだ」
男盗賊「へー……それって旅をする気がなかったんだよな。よくスカウトできたなー」
戦士「……文字通り死闘を繰り広げたもんな」
勇者「実を言えば、これ死んだなーとさえ思ったんだよな」
男盗賊(娘さんを下さい……)
男戦士(娘はやらん、か……)
男武道家(いいのかい、ほいほい家に上がってきちまって。俺は娘のどんな婿でも食っちまう男なんだぜ)
125: 以下、
戦士「こっちは話したんだし、そちらはどういった具合で?」
男盗賊「俺と男戦士は友達で、武道家は役場で知り合ったんだ」
男盗賊「で、勇者と戦士が幼馴染なのさー」
戦士「凄い嬉しそうに言ったな」
男盗賊「口じゃ否定ばっかだけど、本当は大好きな幼馴染の事が守りたい一途な馬鹿なんだよ」
男戦士「だからそういうんじゃないんだが……」
男盗賊「ほらね」
戦士「ちなみに二人が勇者を狙っては?」
男盗賊「俺お姉さまのがいいからねー」
男武道家「仲間の想い人を取るような真似はしない」
戦士「おお……漢だ」
127: 以下、
戦士「そういう事情かぁ……頑張って守れよ、ナイト様っ」
男戦士「こいつの無神経はどうにかならないのか?」
勇者「耐えられなくなったら殴っていいから」
男盗賊「長年の付き合いともなると、対応がドライになるね」
戦士「出会って一週間でこいつに殴られた記憶は今でも鮮明だぞ」
男武道家「まあ、こちらのPTは無茶はしないがモットーだから、そう身構える事はあまりないな」
戦士「……非情の訴えも無情に流された」
男盗賊「この間でっかい怪鳥に襲われたけどもね」
男戦士「武道家が身を挺して守りつつ、会心の一撃を浴びせ続けてなければ危険だったな」
勇者「今さらりと凄い事を言ったな」
戦士「そっちの武道家すげーな。格好良すぎだろう」
128: 以下、
女勇者「さーて、そろそろお開きにしよっか」
勇者「もうこんな時間……結構喋っていたんだな」
魔法「……」フラフラ
戦士「お前……どんだけ飲んだんだよ。いや、目が据わったまま頷き続けられてもこえーよ!」
男盗賊「そいじゃあ、お三方おやすみ〜」
勇者「おう、おやすみ〜。戦士、担いでいってやれよ」
戦士「……え、俺がこいつを?」
女勇者「あはははは、いやあ絡み上戸な上に面白い話ばかりで楽しかったよ」
129: 以下、
戦士「ふう……」
勇者「ナイト様、お勤めご苦労でありまする」
戦士「本当に俺で良かったのかよ?お前の方が波が立たないんじゃないのか?」
勇者「お前好みなんだろ?内心嬉しいくせに」
戦士「時々、お前の気遣いは分かり辛いから困る」
戦士「後でどうしてお前が、ってなったらフォローしてくれよ?」
130: 以下、
魔法「うう……頭痛い」
勇者「はい、二日酔いに効く薬だ」
魔法「ごめんね……あーもー恥ずかしいなぁ」
魔法「……どっちが運んでくれたの?」
勇者「単刀直入だな。どっちが良かった?」
魔法「運んでくれた事にお礼を言いたいだけよ。別にどっちでもいいわよ」
勇者「……」
魔法「まだ出会って間もないのに、そんな事で喜ばないわよ」
勇者(可哀相に……今のところ低好感度だぞ、戦士)
132: 以下、
女勇者「さて、それじゃああたし達はそろそろ行くよ」
戦士「一緒に行けばいいものを」
勇者「仕方が無いだろ。薬草採集の仕事を取ってきてるんだから」
勇者「俺達は仲間を探しつつだが、そっちは魔王目指して一直線か?」
女勇者「まだ経験は積まないとかなぁ。それに聞いた話だと、各地でボスみたいな魔物が現れてるらしいからねー」
勇者「魔王の時間稼ぎか、飽くまで侵略か……。どの道、残しておいて背中を狙われたんじゃ仕方がないか」
女勇者「うん、だからあたし達もしばらくは各地を放浪する予定だよ」
男戦士「そういう訳だから、生きていればまた会うだろう。必ず生きていろよ」
勇者「そっちもな」
男武道家「問題ない。俺が全員の矛と盾となる」
勇者「かっけぇ……」
戦士「それこなせない称号のはずなのに、こいつ見てると普通にできそうで困る」
133: 以下、
勇者「……武道家と勇者の線が濃厚そうだな」
戦士「俺もそう思う」
魔法「いい加減にしないと、流石のあたしも杖で殴るわよ……?」
女勇者「あはははは、なんだかんだでそっちも楽しそうなPTじゃない」
女勇者「でも、まあ……二人の予想はまず当たらないのよねぇ」
戦士「だが野営する事もしばしば。間違いが起こらない事もない、はず!」
魔法「戦士から殴って良い?」
勇者「戦士だけ殴っていい」
134: 以下、
男盗賊「……間違い、間違いか」ブツブツ
男戦士「……」
女勇者「だってさ。武道家君はどう思う?」
男武道家「問題ない。女に興味は無い」
戦士「おお……男前、え?」
勇者「……っは」
男武道家「……」ジー
戦士「……」
勇者「……」
男武道家「……」ジリ
戦士「……っ!」バッ
勇者「……っ!」バッ
135: 以下、
薬草採集中
勇者「今までで一番身の危険を感じた」
戦士「ああ、女王蜘蛛が可愛く見えるぜ」
魔法「流石に冗談でしょ」
勇者「こいつ……人の貞操の危機を良い事に適当な事を」
戦士「あの目はマジだ。冗談の余地がない」
女勇者「で、最後あれだけ凝視していたけど、あの二人についてはどういうご感想で?」
男盗賊「……俺らと初めて会った時と同じ目だったなぁ」ブツブツ
男武道家「ふむ……」
男武道家「いいじゃないか」ッキリ
勇者「……?!」ブルブル
戦士「……?!」ブルブル
魔法「どうしたの?二人して風邪でもひいた?」
136: 以下、
戦士「突撃、今日の晩御飯!」
勇者「今日は蝙蝠の姿焼きだ」
魔法「……本気で?」
戦士「今現在、焚き火で焼かれているのはどう見ても蝙蝠だぞ」
魔法「携帯食料あったわよね。そっち頂戴」
戦士「非常時用のを……全く我侭だな、ほれ」
魔法「あなた達野蛮人と同じじゃないのよ!」
勇者「……昔、実地訓練で潜った洞窟の地面が抜けて、数日彷徨う事があったんだ」
戦士「あー……一緒に組んだ時か」
勇者「あの時は生の蝙蝠を齧ったもんだが、それに比べれば今はどんなに人らしい食事か……」
魔法「何であなた達はそうもワイルドな人生なのよ?」
139: 以下、
戦士「風の都市の首都まであとどれくらいだ?」
勇者「三つほど町を越さないとだな」
魔法「ここから山岳地帯が続くのよね……」
勇者「しっかりと装備を整えないとな」
戦士「ここは害鳥駆除の仕事ばっかりだなぁ」
勇者「俺らには向かない内容だな」
魔法「弓矢あるじゃない」
勇者「飽くまで狩猟用だからな。影から射るのならいいが、駆除となると、ね」
140: 以下、
魔法「……」ジー
戦士「お、どうしたよ?」
魔法「ちょっとね」ジー
戦士「杖か……そういや、お前の杖ってだいぶ使い込まれているよな」
魔法「多少の補強をした程度で、結構長い事使っているからね……いい加減に替えないととは思っているんだけど」
戦士「ここのはどれも高いな」
魔法「周辺の山から魔力を高める石が採れるのよ。わざわざ効果の低い杖は作らないって話よ」
戦士「ふ〜ん。足りないのか?」
魔法「元々そんなに持ち合わせていなかったしね……」
戦士「そうか。これ、一本貰えるか?」
店主「まいど〜」
魔法「……いいの?」
戦士「俺の方はまだまだ現役でいける。それにがたがきても技術で補えるからな」
142: 以下、
勇者「ここから始まる山岳地帯の旅の無事を願いまして、乾杯」
戦士「乾杯!」
魔法「乾杯」
魔法「本当に変わった風習ね」
戦士「こいつの家独自だと思うぞー」
勇者「流石に自覚はしているからな」
魔法「でもやめないんだ」
勇者「……やめると逆に落ち着かない」
143: 以下、
魔法「……そろそろ新しい魔法書が欲しいなぁ」
勇者「首都に着くまで我慢だな」
戦士「魔法って、そうやって覚えるもんなんだっけか」
勇者「そりゃあ戦って身につくもんじゃないしな」
勇者「そこら辺考えると、戦士側は結構金がかからなくていい職だったりするんだよ」
魔法「……勇者は魔法使えないくせに、やけに詳しいのね」
勇者「……」
144: 以下、
戦士「こいつ、初めは魔法系の授業も受けていたんだよ」
魔法「あら、そうなの?」
勇者「……」
戦士「魔法の三大初歩だっけか?回復魔法・小、火球魔法・弱、解毒魔法・小でコケたんだよ」
魔法「あー……」
勇者「……」
魔法「元気だしなよ、意外といるのよ。魔力はあるのに魔法の才能が皆無の人って」
戦士「慰める気ねーだろ、それ」
149: 以下、
戦士「うおおーーー!鳥多すぎだろーーー!」
魔法「壁よろしくね」
勇者「頑張れよ肉壁」
戦士「ちくしょーー!遠距離攻撃がないからって!」
勇者「言うな、直ぐに片付けるか、あ」ヒュン
勇者が放った弓矢が戦士を襲う!
戦士「ぎゃああーーー!」トス
魔法「あら、誤射ね」
151: 以下、
戦士「おいおい、もう三日も山で野宿してるのに町に着かないのかよ」
勇者「あと少しの辛抱だから我慢しとけ」
魔法「一つ目の町までが距離あるのよね。ここさえ抜ければ後はスムーズよ」
勇者「明後日には町に着くだろうが……ここらへんから犬とかの魔物が増えるって話だ」
戦士「お、俺の出番だな」
勇者「魔物出現当初、さくっと食い殺された兵士が多いそうだ」
戦士「え……もしかして強いの?」
152: 以下、
パチパチ
勇者「上手に焼けました」
戦士「今晩は犬肉か」
魔法「束の間の一時ね」
勇者「……」
戦士「……」
魔法「……」
魔法「……死ぬかと思ったわ」
勇者「あれじゃあさくっと死ぬよな」
戦士「いきなり十匹の群れだもんな……」
153: 以下、
勇者「町だ……」
戦士「これで装備が整えられるな……」
魔法「防具がボロボロだものね……」
戦士「つーか俺の鎧、既に戦闘で使えるレベルじゃないんだが」
勇者「ここは鍛冶に特化しているからな。いっその事、装備は全部買い替えた方がいいだろうな」
戦士「……」
魔法「……」
勇者「どうした?」
魔法「大丈夫、なの?」
戦士「はは……足りるだろ、多分」
154: 以下、
勇者「……」ガチャガチャ
勇者「……」ガッチャガッチャ
勇者「……」ジー
魔法「さっきから鏡見て何やってんの、あれ?」
戦士「あいつの本性の一部だ」
魔法「……ナルシスト?」
勇者「ああ……素晴らしい。これだけの防御力もちつつ、機動力低下を極限まで抑えた造り……」
勇者「まだまだ安い部類のプレートアーマーだが……学生の時では手が出せなかった物を今装備して……」ウットリ
魔法「なにあれ?」
戦士「鎧大好きなんだよ。装備も装備者も」
156: 以下、
勇者「これから宿をとるか」ウズウズ
魔法「どう見ても、実戦に繰り出したい風体よね」
戦士「今日はもう寝るんだよ!とっとと宿屋に行くぞ」ズルズル
勇者「一戦、ただの一戦だけでも……一時間で現れなかったら諦めるから!」
魔法「……そのくらいならいいんじゃないの?」
戦士「その一時間で全力で町から離れて、戻るのに数時間かかったんだよ!」
魔法(戦士が問題有りなのは分かっていたけど……勇者も変なベクトルで大問題なのね)
157: 以下、
勇者「さあ、今日も張り切って旅を進めようじゃないか!」
魔法「超上機嫌ね」
戦士「あーこの状態久々に見たなぁ」
魔法「最後はいつ?」
戦士「一年前かな。銅の国の騎士が俺らの町を通っていった時だったな」
魔法「鎧繋がりなのね」
戦士「すっげー美人の騎士がいてさ。あいつが追っかけしそうになったのを止めるのに必死だったよ」
魔法「へー……勇者が女性にがっつくのって想像できない」
戦士「鎧装備者限定だがな」
魔法「歪んだ愛ね」
159: 以下、
狂犬の群れが現れた!
狂犬A、Bが勇者に飛び掛る!
勇者「そこだ!」
身構えていた勇者は腕を突き出した!
狂犬A、Bの牙では鎧を貫けなかった!
勇者「……」ニヤニヤ
戦士「こりゃあ、町までが楽になるな」
魔法「あなた達の装備はそのまま戦力に換算されるのは正直羨ましいわ」
戦士「なんだ、僻みか?」
魔法「あたしの生存率にも関わるから文句は無いわよ」
160: 以下、
勇者「あれだけ死ぬんじゃないかと思っていた群れもこの通り」
戦士「俺はそれ以上に、ほんの二日で次の町な事に不満なわけだが」
魔法「仕方ないじゃないの」
勇者「山を降りれば麓の町。そこから出てしばらくすると風の都市の首都だ」
戦士「おーやっとか」
勇者「流石に山道は疲れるからな。ゆっくり休みつつ、仲間探しをしよう」
魔法「……」
魔法(普通に旅してて、何も対策が練られていない!)
161: 以下、
勇者(流石に山奥だと役場はないんだよなぁ……)
勇者(収集品も無限には持てないし、下手に売れば二束三文にしかならないし)
勇者(路銀が心許無いな……何か良さそうな依頼、おっ)
戦士「ここの香草炒め旨いな」モグモグ
魔法「この一帯は美味しい香草が多いって話よ」モグモグ
勇者「ただい……」
勇者(この二人、これで本当に特別仲がいいって訳じゃないんだよなぁ)
162: 以下、
戦士「お、また仕事取ってきたのか?」
勇者「前に女勇者が言っていたボスかもしれないな」
魔法「本気でやるの……?」
勇者「依頼を承諾した者だけじゃないみたいだ。討伐したら報告、て形式だから依頼書をもらってきたんだ」
戦士「で、ボスってのはなんだ?」
勇者「大狼だそうだ。岩のような大きさで、周辺に常駐していた兵士でPT組んだが全滅だとさ」
魔法「本気でやるの?ねえ、無理でしょ?!それ!!」
戦士「獣か……火は効くな」
勇者「予め薪とか用意してトラップ満載で挑むか」
魔法「あー……あたしの人生終わった」
164: 以下、
勇者「本当に岩程の大きさだな」
戦士「あんだけ大きけりゃ人間が餌だな」
魔法(終わった、詰んだ、死んだ)
勇者「……だが変だな」
戦士「あー周辺の血痕か?兵士達が与えた傷なんじゃね」
勇者「いや、あの狼はこの山の固有種で、大きいものはあれくらいになるはずだ」
戦士「それが魔物になっちまったと」
勇者(魔物とされる生き物は、犬や鳥の動物が元になっているが……)
勇者(その魔物達は、魔王がいない時には存在が確認されていないという)
勇者(固有種そのものが魔物化ってありえる事なのだろうか……)
165: 以下、
勇者は武具防具を全て外した!
戦士「あ、おい……」
勇者「魔法使いは炎の魔法を唱える準備をしていてくれ。飽くまで念の為な」
魔法「ちょ、馬鹿、何をしてるの……」
大狼「グルルル……」
勇者「枝を踏み抜いて……ちょっと痛いが我慢してろよ」ブシュ
大狼「ガウ!……グルルルルル!」
戦士「おいおい、今にも噛みつきそうだぞ」
魔法「魔法って言われたって、あれじゃあ勇者ごと燃やしちゃうわよ……」
勇者「この痛み止めって狼に効くのか……まあ、ないよりましか」
勇者は大狼の手当てを行った!
167: 以下、
大狼「ハッハッハッ」パタパタ
戦士「こんだけ大きいと、尻尾振りまくってても可愛さが感じられねーよ」
魔法「……」ナデナデ
勇者「牙にも爪にも異常が無い所を見ると、依頼の魔物は別にいそうだな」
魔法「この子を魔物と勘違いして兵士が襲ったんじゃなくて?」
勇者「いくらこの大きさでも、金属に身を包んだ兵士と戦闘になれば、爪とかに傷がついてもおかしくないが」
戦士「何もないとなると、戦闘したとは思えないか」
勇者「とは言え、こいつを怪我したままなのに放置するのもなー……」
魔法「勇者って動物好き?」
戦士「鷹師もできるし、犬で狩猟もできる。ブリーダーとしての資格持っているんだよな?」
勇者「あー実家にいた頃に取ったな。証明証どこやったっけかな」
魔法「職業選択間違っているわよ絶対。……て、待って、その話勇者がいくつの時よ?!」
168: 以下、
大狼「グルル!ガウ!ガウ!」
勇者「……っげ、おいでなすった!」
戦士「魔法使いは後ろに下がれ!」
魔法「……え?え?」
大狂犬「オオォォォォン!!」
大狂犬が現れた!!
勇者「狂犬の大型か。間違いなくこいつだな」
戦士「思ったよりは小さいな。こりゃ何とかなるな」
魔法「いや、どう見ても強そう……あ、突っ込んでくる」
172: 以下、
勇者と戦士は攻撃に備えて身構えた!
大狂犬は勇者に体当たりをした!
勇者「ごふっ!」
勇者は遥か後方に吹き飛ばされ!
戦士「何とか持ち堪えるから勇者の介抱を!」
魔法「分かったわ!大丈夫、勇、あ……」
勇者は気絶している!
戦士「どうかしたか!」
魔法「詰んだわ、これ」
176: 以下、
魔法使いは氷矢魔法・弱を唱えた!
しかし、大狂犬の厚い体毛で刃が通らない!
魔法「え……効いてない?」
戦士「うおおおお!」
戦士は剣を大きく振りかざし、渾身の一太刀を放った!
しかし、大狂犬の厚い毛皮に阻まれて、浅く斬る事しか出来ない!
戦士「……」
魔法「……」オロオロ
戦士「\(^q^)/」
魔法「え、ちょ、諦め早、それ以前に何それ!」
178: 以下、
大狂犬の体当たり!戦士は身を翻して攻撃をかわした!
魔法使いは火球魔法・弱を唱えた!
魔法使いより放たれた炎の玉が、大狂犬の胴を捕らえた!
魔法「……どうにもダメージが与えられないわね」
戦士「不味い事になったもんだ、よっと」
大狂犬の体当たり!戦士は身を翻して攻撃をかわした!
182: 以下、
戦士(一撃でも当たったら、一気に畳み掛けられるんだろうな……)
戦士(かといって鎧きたまま避け続けるなんて無理だし……)
大狂犬の体当たり!戦士は避けきれない!
戦士「ぐお!」
魔法「戦士!」
大狂犬は跳ね飛ばされた戦士に追撃すべく、突進してきた!
大狼が大狂犬に噛み付いた!大狂犬はよろめいている!
戦士「お、おお……」
魔法「まさかの援軍ね……戦士が復帰するまで何とか持ち堪えて」
185: 以下、
戦士「ぜぇ……ぜぇ……」
大狼「グルルル」
大狂犬「ガルルル」
魔法(……これじゃああたし達は、狼の援護をしているようなものね)
戦士(正直、俺らじゃどうにもならんぞ、これ)
大狂犬「ガァウ!」
大狂犬は大狼に噛み付いた!大狼は苦しそうにもがいている!
戦士(足の傷で差がついちまってるな!)
戦士は大狂犬に斬りかかる!
しかし、大狂犬の厚い毛皮に阻まれて、浅く斬る事しか出来ない!
弓矢が大狂犬に右目に突き刺さる!
大狂犬が怯んだ隙に、大狼は間合いをあけた!
戦士「やっとか……遅いんだよ、お前は」
勇者「悪かったな、どのくらい寝てたんだ?」
187: 以下、
勇者(ここまで大きいと体毛が鎧のような効果があるんだろうな……)
勇者「顔を集中して狙うぞ!魔法使いは火球魔法の準備を!」
戦士「じゃあ俺らは死にに行きますか」
大狼「グルル!ガウ、ガウ!」
勇者「頼もしい奴らだな……一気に片をつけるぞ!」
勇者と戦士は武器を構えて大狂犬に立ちはだかった!
189: 以下、
……
勇者「ほくほく」
戦士「すげー金と鉱石の数。これ全部、大狂犬の討伐報酬か?」
勇者「ボスクラスだったからな。にしても、大狼を味方にできなかったら勝てなかっただろうなぁ」
魔法「あれが全力だったら大狂犬を倒せていたんじゃない?」
勇者「どうだろうな……。狂犬は基本、他の生き物の縄張りを荒らす事を考えると」
勇者「今まで大狼がほっといたのは疑問だし、足の傷もここ最近のようだし」
戦士「一対一じゃ勝てないから挑まなかった、てか?」
勇者「恐らくはな。まあ、大狂犬の肉を煮込んで作った栄養満点の餌も食わせたし」
勇者「あいつが復活すれば、この辺りの狂犬の数も減るだろう。一件落着だ」
魔法「……あれ、変ね。このPTって勇者の称号の人いないんだっけ?」
190: 以下、
勇者「ぜぇ……ぜぇ……」
戦士「はぁ……はぁ……くそっ」
魔法「麓の町にとーっちゃく!というか二人とも、どうするの?その鉱石とお金」
勇者「くそ、金も重いもんだな」
魔法「そりゃあ、そんだけ大袋を担いでいればね」
戦士「鉱石が……」
魔法「いや、あなたはもう馬鹿としか言いようが……諦めて売りさばけばいいのに」
勇者「鉱石が取れる場所で売ってもそんなに値がいかないんだよな」
戦士「どっか……遠くで鉱石の希少価値が高い所でと思ったが……くそぅ」
192: 以下、
勇者「よーし、首都まで一気に行くぞ」
戦士「おー!」
魔法「あれ?お金は?」
勇者「役場で小切手に変えてもらえた。この金額なら国内の何処の役場でも現金に戻せるって」
魔法「へ〜。で、鉱石は」
戦士「……ん」
戦士は小魔石の短剣を取り出した。
勇者「あえてか……」
魔法「二束三文なら、と吹っ切れたのね」
戦士「……お前にやるよ」
魔法「いいの?」
勇者「魔石つきの短剣であっても、俺らには短剣としての恩恵しか得られないからな」
戦士「持ってりゃ魔力上昇の効果得られるんだろう?」
魔法「そりゃそうだけど……まあ、ありがとうね」
194: 以下、
風の都市 城下町
勇者「おー……風車が多いな」
戦士「あれで麦を挽くんだっけか。便利なもんだよな」
魔法「……それで、これからどうするの?」
勇者「五日間お休みって事で各自自由でいいだろう」
勇者「路銀もあるし、このくらい問題ないからな」
戦士「久々にゆっくりと羽を伸ばすとするか」
勇者「だな」
魔法「無駄に散財するのだけは止めなさいよ」
勇者「任せろ、いくら渡していくら使ったかをしっかり記録する」
戦士「こいつ何気に家計簿とかつけてるんだ。現在進行形で」
魔法「……なんかもう、称号に対するツッコミをいれるのが面倒になってきたわ」
195: 以下、
勇者の休日
勇者「……あー所持品がくたびれてきたな」
勇者「道具袋を繕って、水筒も新しいのを作るか……」
勇者「あ、戦士のもきっと……面倒だし、魔法使いのも作るか」
勇者「弓も傷んできたし、伐採しにいくには丁度いいか」
勇者「矢はどうするか……今の懐考えると作るより買った方がいいよな」
勇者「……」
勇者「時間はあるし作ればいいか」
197: 以下、
勇者「……」チクチクヌイヌイ
勇者「……」コーンコーン
勇者「……」ギーコギーコ
勇者「……」キリキリキリ
大工「親方ぁ、随分腕のたつ新人っすねぇ」
親方「いや、ありゃぁ木工作業台を借りに来た冒険者だ」
199: 以下、
戦士の休日
戦士「流石は首都だな。魔法を優先する国でも闘技場があるのな」
戦士「弓とか扱えない以上、俺には本当にこの剣しかないからな……」
戦士「よっしゃ、三日はみっちりと鍛えこんで、二日はゆっくり休むか」
受付「では、こちらが賞金になります」
戦士「……」
戦士「今日、大会だったんだなぁ」
戦士「……」
戦士「あれ、総当りで全抜きしてたのか俺っ!?」
201: 以下、
不良A「へへ、にーちゃん金が重そうだな。俺らが貰ってやるぞ」
不良B「大人しくしてりゃあ痛い目みないんだぜ?」
不良C「おらぁとっとと寄越しな!」
戦士「……」
兵士「ご協力感謝します!」
戦士「さらに重量が増えた……特訓しようとしたんだよな、俺」
戦士「今日は重量超過で走りこむか?」
203: 以下、
魔法使いの休日
――勇者「魔法書買うんだろ、そのくらい持っておけよ」
――魔法「あたしだけ、多めに貰うのは気が引けるんだけどねぇ……」
――勇者「その分、より強力な魔法で援護してくれれば俺も戦士も万々歳だ」
魔法「うふ、ふふふ……」
魔法「まさか二冊も買えるなんて。古本屋があって助かったわ」ドサドサ
魔法「まだ午前中……今日一日……うふふふふ」ドキドキワクワク
205: 以下、
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
戦士「おーい、晩飯食いに行くが、お前も行かないかー?」コンコン
魔法「え、あ!もう夜?!」
211: 以下、
勇者「では、無事風の都市の首都に着いた事を祝いまして、乾杯!」
戦士「かんぱーい!」
魔法「乾杯」
勇者「ここのパンは美味いな」
戦士「挽くのが人力じゃないから、効率が上がって生産量もはんぱないみたいだしな」
魔法「それだけじゃないけど……まあ量、質共に高いのは確かね」
勇者「すみませーん、白身魚の香草焼き一つ」
戦士「あー俺は鶏の手羽先焼き一つ」
魔法「あ、あたしハーブキノコサラダを一つ」
212: 以下、
戦士「いやぁどの料理も美味いな」
勇者「この店は大当たりだな。チーズグラタン一つ」
戦士「ガーリックトーストとラムで」
勇者「後、白身魚とホタテのワイン蒸しとウィスキーで」
魔法「あなた達どれだけ食べるつもりよ……あたしはもう注文するほどじゃないわよ?」
戦士「食える時は食わないとな」
勇者「食とは生命活動の一端であり、最高の娯楽である。これが我が家の教訓だ」
魔法「どんな教訓よ」
勇者「よって俺は食事に関して一切手を抜かない。作るのも食べるのも」
戦士「ある意味崇高なんだが内容がな……」
勇者「あ、道具袋とか新調しといたから渡しておくよ」
魔法「え、わざわざ買ったの?」
戦士「こりゃあ作ったなぁ」
213: 以下、
勇者「今日は何するかなぁ」
勇者「装備の手入れはだいたい終わったしなぁ……」
勇者「……一人でこなせる依頼とかあるか?」
勇者「薬草採集か……行ってくるか」
採集地周辺に巨大な怪鳥が集まっている!
勇者(騙されたっ!)
216: 以下、
「おい、あれ昨日の優勝者じゃねーか?」ヒソヒソ
「大会は昨日で終わ……まさか、ここに試合にきたのか?」ヒソヒソ
「おいおい、民間の間じゃあいつに勝てる奴いねーんだろ?マジ何しにきたんだ?」ヒソヒソ
「え、俺らサンドバック?」ヒソヒソ
「兵士にでも声かけろよ。早くどっかいかねーかな。いつ参戦するか気が気でないんだが」ヒソヒソ
戦士「……」
魔物の群れが現れた!
戦士「どーせ対人よりこっちがメインだもんねー、あははははは!」
戦士「ちくしょー!ちくしょーーー!折角の活躍を仲間は知らないし、世間は冷たいぃぃぃ!!」
戦士はバーサークを修得した!
219: 以下、
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「あ、お昼ご飯……ま、いっか」ペラ
221: 以下、
怪鳥Aの攻撃!勇者は身を翻して攻撃をかわした!
勇者「探索用の装備だからきっつい、が!」
勇者はパワーショットを放った!
引き絞られた矢は怪鳥Bの頭部を貫いた!
勇者「仕立てたばかりだ。最大威力で戦えるぞ」
怪鳥C「クエェェェェェ!」
怪鳥Cは仲間を呼んだ!
暴れ大牛が現れた!
勇者「あ、弓じゃ勝てないのきた」
222: 以下、
戦士「おおおおおおおお!」
戦士はバーサークを発動させた!自然治癒能力停止、腕力、俊敏が劇的に向上した!
戦士「殲、滅!」
戦士は魔物の群れを薙ぎ払う!魔物の群れを倒した!
戦士「もっとだ、もっと強い魔物は……あ?」
勇者は逃げてきている!怪鳥A、Cと暴れ大牛が追いかけてきている!
勇者「おお、強運!助かった!」
戦士「ぶち、殺す!!」
勇者「え?」
225: 以下、
戦士「おおおおおおおお!」
戦士の懇親の一撃!怪鳥Aの首が宙を飛ぶ!
勇者はおっかなびっくり弓矢で援護をした!暴れ大牛の足を止めた!
戦士「どりゃああぁぁ!」
戦士は盾で殴りにかかる!怪鳥Cは首がひしゃげて息絶えた!
勇者は恐怖で身を竦めている!暴れ大牛は戸惑いまごついている!
戦士「くた、ばれ!!」
戦士は目にも留まらないさで斬りかかる!暴れ大牛の頭部はバラバラに切り裂かれた!
戦士「WRYYYYYYYYYYYYYY!」
勇勇勇者「……」」」ガクガクブルブル
戦士のバーサークの効果が切れた。
戦士はハイテンションになっている。
勇者は戦意喪失状態になった。
227: 以下、
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「ふぅ……」スス
魔法「アップルティーは庶民の味方よねぇ……」スス
229: 以下、
……
勇者「さあて、そろそろ休暇も終わりか……」
戦士「そろそろ本目的に入るか」
魔法「……っは!」
勇者「残念ながら、昨日探し回っていたがやはり無理だったよ」
戦士「休暇終了と共に雲の都市に移動か?」
勇者「そうなりそうだな……お、行商人の馬車が入ってきたな」
戦士「目ぼしいものでもあるといいな」
魔法「……あれ、荷馬車に女勇者さん達がいるような」
231: 以下、
女勇者「やっほー」
勇者「っ!……やっほー。どうしたんだ?ドナドナか」
男戦士「まさか。荷馬車に乗せてもらってこちらに来たんだ」
男盗賊「いやーおかげで山を越えずに済んで助かったよね!」
戦士「……」
魔法「迂回しているのに五日の差なのね」
男武道家「お前達、敢えて山を登ったのか……」
232: 以下、
勇者「まあ、途中大狂犬倒したし良しとしよう」
女勇者「おー、ボスクラスかい?」
勇者「ボスはボスでも野良だったがな。そちらの戦果は?」
女勇者「洞窟に巣食っていたのを二体ほどね」
魔法「早いペースね」
戦士「俺らより強いんだろうな、向こう」
男戦士「単純の頭数の差だろう。見た感じお前達も、中々強そうに感じるぞ」
男武道家「うむ、特にそちらの戦士は見違えるくらいの成長を……」ゴクリ
戦士「……」
戦士はバーサーク発動の構えを取った!
234: 以下、
勇者「それにしても装備を変えたんだな」
女勇者「君もね。あはは、まさか御互い鎧姿になっているとは思わなかったよ」
勇者「そうだな……ところで、今後の装備は重装か?」
女勇者「うーん、今のところはそうだけど、軽量装備にするかちょっと迷っ……」
勇者「重装備だ!世を救うには重装備を用いて、敵の攻撃を受け止め反撃するしかないんだ!」
魔法「しま、戦士、取り押さえて!」
勇者「重装備の君は美しい!重装備の君は素晴らしいぃ!」
戦士「まだ大丈夫だ、あれ」
勇者「頼む、後生だ!重装備であってくれぇぇぇ!」
魔法「手遅れたら駄目なのよ!」
男盗賊「そっちの勇者、魔物と入れ替わったの?」
戦士「あれがあいつの本性だ」
236: 以下、
女勇者「……」
魔法「今の彼は気にしなくていいからね?」
女勇者「え、ああ、うん、ありがとう」
勇者「……」
戦士「勇者の簀巻き1セットコンバイン」
男武道家「一体、何が彼を狂わせたんだ?」
戦士「鎧姿の女勇者だな。あ、問題なのはあいつであって君の責任じゃないぞ」
女勇者「ああ、うん、ありがとう」
男盗賊「……さっきから様子がおかしいけど、そんなに向こうの勇者が怖かった?」
女勇者「んー……いや、あんなに熱烈に告白されるのは初めてで」
男盗賊「おお!」
男武道家「ほう」
男戦士「なに」ピク
魔法「けれども歪んだ愛」
戦士「まあ、あいつなら案外上手くいきそうだとは思うがな」
237: 以下、
勇者「眼が覚めたら簀巻きでした」
戦士「そりゃあな」
勇者「猿轡まで噛まされていました」
戦士「そりゃあな」
勇者「私刑にあったのか体中が痛いです」
戦士「そりゃあな」
勇者「俺暴走していた?」
戦士「そりゃあな」
238: 以下、
戦士「まあ、女勇者は可愛いからなぁ。あれで重装備なら仕方が無い」
魔法「仕方が無いじゃすまないんだけど」
勇者「反省はしている。努々注意するから許してくれ」
戦士「いざという時の為に、超軽量の鎧でも作っておくか?」
魔法「どう活用するのよ」
戦士「お前が着て矛先を変える」
魔法「人柱?!」
240: 以下、
勇者「昨日は本当に申し訳ない」
女勇者「確かに驚いたけど、気にしなくていいよー」
男戦士「……」
男盗賊「……」ニヨニヨ
女勇者「一応確認したいんだけど、昨日の言葉に本心はあるの?」ボソボソ
男戦士「……!」ピク
勇者「……相手の事もよく知らずに言うべき言葉じゃないと俺は思っている」ボソボソ
勇者「好感はあるが伝えるべき言葉はまだない、はず。だから……虫がいいとは思うが無かった事にしてくれ」ボソボソ
女勇者(うーん、硬派な人なんだなぁ……)
男戦士「……っほ」
男盗賊「……」ニヨニヨ
戦士「面白い状況だ」
男武道家「そうだな」スス
戦士「来るな!」
241: 以下、
女勇者「それにしても相変わらず三人なんだね」
勇者「残るは雲の都市だけなんだよな……」
女勇者「港町にでも行ってみたら?」
魔法「っちょ!」
女勇者「魔法は学んでいるけど、家業の漁師の手伝いで残っている人って結構多いと思うんだ」
魔法「あ……なるほど」
勇者「えーと……雲の都市の領土内に港はないのか」
戦士「港町巡って、雲の都市に行って、また港に戻ってくるのか。手間だな」
勇者「北の大陸は飽くまで最終手段だからな。弾があるうちはそちらを目指そう」
魔法「ありがとう!ありがとう!!」ボソボソ
女勇者「任せて!」ピース
242: 以下、
勇者「結局、ここでは見つからなかったか」
戦士「ま、そう簡単に仲間がいたら苦労はしないよな」
魔法「じゃあ港町を巡るの?」
勇者「そうだな……北に抜けて港町を東に巡る。そして、そのまま雲の都市だな」
戦士「女勇者達は西に行くって言っていたから、当分会う事は無いな」
魔法「あら、残念なの?」
戦士「安心しているんだよ」
243: 以下、
さて一旦でここでおやすみ。予定としては
スレが残ってれば10:00くらいよりちょこっと再開
日付が変わるか変わらないくらいに再開
11日夕方くらいから再開、で終わらしたいが……これでまだ半分
260: 以下、
魔法「なんか、木の幹に変な傷が目立つんだけど」
戦士「……ここらへんの魔物の情報って調べたか?」
勇者「いや……暴れ大牛がいるぐらいしか」
魔物が現れた!
人食い熊「ガアァァ!」
魔法(見るからに特攻型……あたしは一撃も貰わないよう、回避に専念しないと!)
戦士(熊かよ、パワー特化はきっついな。防御してても直撃したら吹っ飛ばされるよな)
勇者(山の神様有難う!いただきます森の王者!)
262: 以下、
勇者「山の神様の贈り物に感謝して、乾、杯!!」
戦士「乾杯!」
魔法「乾杯。随分ハイテンションね」
勇者「本日のメニューはぁぁぁ、ヒグマの煮物ぉぉ!」
魔法「……人食い熊よね?」
勇者「胃を掻っ捌いてみたが、ドングリやコクワと綺麗なもんだったぞ」
戦士「そりゃあいい。食ってみようぜ」パク
魔法「……どう?」
戦士「何だろう、噛むと香りと旨みはあるんだが、表現できない味なんだ」
勇者「……なるほど、確かにコレは言葉に困るな。上品な味ってこういう事なんだろうな」
魔法「……あら本当。こういう動物って普通臭みがあると思うんだけど」
勇者「肉食は臭いっていうな。そうするとこいつは相当のベジタリアンだった訳か」
263: 以下、
勇者「今日はここらで野営かな」
戦士「だなー。薪拾ってくる」
魔法「あ、それなら勇者、少し付き合ってよ」
戦士「なぬ」
勇者「……何かあるのか?」
魔法「新しく覚えた魔法を一度も使えていないからね。まだ魔力に余裕があるし、試し撃ちしたいのよ」
戦士「あーがんば」
勇者「……俺は盾って事か」
264: 以下、
魔法使いは氷矢魔法・中を唱えた!
巨大な氷の矢が狂犬Aを貫いた!
魔法使いは火球魔法・中を唱えた!
巨大な炎の塊が狂犬Bを飲み込み、爆発した!
狂犬C、Dはいきりたって襲い掛かる!
勇者「よっと」
勇者はシールドバッシュを放った!狂犬C、Dはスタンしている!
魔法使いは火炎魔法・中を唱えた!
紅蓮の炎が辺りを焼き払う!!狂犬C、Dは燃え尽きた!
勇者「つえー……」
魔法「他にも三種類、新しい魔法も覚えたんだけどね」
勇者「それは試さないのか?」
魔法「慣れるまでは魔力の消費が激しいからまた今度ね」
265: 以下、
勇者「この川を進んでいけば港町だな」
魔法「日も傾いてきたし、今日中に着ける距離じゃないわね」
戦士「今日も野営か……」
勇者「早めに寝床を確保して釣りでもするか」
戦士「ここ最近、肉ばっかだからな」
魔法「熊、熊、熊、牛、鳥……」
勇者「1熊で何食も補えるから有難い」
戦士「その例えは山の神様に怒られるだろう」
266: 以下、
勇者「おー久々の潮の香りだ」
戦士「あー俺、海とか初めてだわ」
魔法「あら?勇者って別の所に……そういえば実家がどうのって言ってたっけ」
勇者「海がある町じゃないが、近くではあったからな」
戦士「お、見ろよ。すげーでっけー船があるぞ。見に行こうぜ」
勇者「おー本当だ。そういえばこの港って風の都市の軍も配置されているんだっけか」
魔法「海軍の船、とかかしら?」
魔法「あら?びっくりするくらい嫌な予感。どうしましょう」
267: 以下、
水夫「ああ、これかい?北の大陸に向かう船さぁ」
水夫「今こんな状態で、物資とかも安定しないからなぁ。安全性を高める為に交易に軍の船を使う事になったんだとよ」
水夫「お前らも北の大陸に行きてぇ、てのか?」
水夫「これからは一ヶ月に一回は定期的に出航するだろうから、帰れねぇなんて事はないと思うがどうするよ?」
戦士「だってさ」
勇者「こりゃあ絶好のチャンスだよな」
魔法(馬鹿なっ……まさかのタイミング……こんな偶然がっ……無慈悲なまでのっ……!)グニャァァ
268: 以下、
勇者「船に乗るのは俺も初めてだなー」
戦士「おまけに軍のだぜ。これなら海獣も怖くない」
魔法「……そうよね、よくよく考えたらこれはプラスよね、ふふふ」
戦士「お前……危険だから、が排除されているんだから北の大陸行きは喜べよ」
戦士「南には無い魔法書とかもあるかもしれないし、見聞は広められるだろう」
魔法「成る程、戦士の言うとおりね……よし、気持ちを切り替えて、いざ北の大陸!」
勇者「ま、気持ち切り替えても、俺達は船に揺れられているだけなんだけどな」
戦士「降りてからが本題だものな」
269: 以下、
海獣クラーゴンが現れた!
勇者「おっと、俺らの出番か!」
戦士「海獣か……ある意味魔物だが、魔王の手下じゃないんだよな」
魔法「触手からの強力な一撃は骨が折れるそうよ、気をつけて!」
勇者達が得物を構えて突き進む!
その行く手を黒い影達が阻んだ!
勇者(軍の魔法部隊か?)
水夫A「てめぇぇぇらぁぁ、船を守り抜くぞぉぉ!!」
水夫ALL「おおおぉぉぉぉぉ!」
戦士「なん……だと……」
勇者「気迫で分かる。俺らより強いぞ!」
魔法「水夫って戦うものなのかしら?」
270: 以下、
水夫Aは槍をしごいて躍り出る!
水夫Bは大斧を振り上げ走り出した!
水夫Cは大弓を引き絞った!
勇者「何という脳筋PT!!」
クラーゴンは触手で薙ぎ払う!
水夫Aはかわした!水夫Bは弾かれた!水夫Cには届かない!
戦士「直撃で弾かれただけなのか……」
水夫Aは槍を深く抉る様に突き出した!水夫Cは弓矢を放った!
クラーゴンは怒り、反撃してくる!
水夫Dは睡眠魔法を唱えた!クラーゴンはまどろんでいる!
水夫Dは雷撃魔法・中を唱えた!
上空を雲が渦巻き、海獣に目の眩む制裁が落とされる!
魔法「やだあの水夫、ガチムチですっごいごつい杖持って魔法使ってる」
271: 以下、
水夫A「てめぇらぁぁケリぃつけっぞおぉぉぉ!」
水夫ALL「おおおぉぉぉ!」
水夫の心が一つに!
水夫Aは槍で触手を絡めて動きを封じた!水夫Bは大斧で触手を薙ぎ払った!
水夫Cはクラーゴンの眼球を弓矢で潰した!水夫DはPTマナドレインを唱えた!
水夫A、B、Cの魔力が水夫Dに集まる!
水夫Dはパワーチェンジを唱えた!全ての魔力が力に変わる!!
水夫D「消えよ!」
クラーゴンに痛恨の一撃!
水夫D「滅びよ!」
クラーゴンに痛恨の一撃!
水夫D「息絶えよ!」
クラーゴンに痛恨の一撃!
水夫D「微塵に、砕けよぉぉ!」
クラーゴンに痛恨の一撃!クラーゴンは体液を撒き散らしつつ、甲板から吹き飛ばされた!!
戦士「すげぇ……」
勇者「日夜海獣が巣食う大海に生きる、正に海の漢……憧れる」
魔法(魔石が散りばめられた、純魔法用の杖で殴り倒した事にツッコミを入れては駄目なのかしら?)
273: 以下、
戦士「ここが北の大陸の港町」
勇者「案外、変わらないものだな」
魔法「わぁ、羽が生えた人とか結構いるのね」
勇者「有翼人種は南じゃ珍しいからなぁ……ってあれじゃあ天使だな」
戦士「そういえば、こっちの大陸って魔王については知らないのか?」
水夫「噂程度にしか広まっていねーな」
戦士「あんたらや、大陸を行き来する行商人が頑張ってくれりゃあな」
水夫「北と南での友好が特別強くあるわけじゃねーからなぁ」
勇者「国にもよりけりだろうが……今の所は動きはなしか」
水夫「そういうこった。南とは勝手が違うんだ。お前らも気ぃつけろよなぁ」
274: 以下、
勇者「ある程度、所持金を変えてきたぞ」
戦士「通貨が違うのは苦労しそうだな」
魔法「仕方が無い事よね」
勇者「……そういえば、魔法使いって世界地理に詳しい?というか北の大陸詳しい?」
魔法「別にそんな事はないけど。あ、あなた達まさか、予備知識なしで……」
勇者「お勉強からかー」
戦士「仕方が無いなぁ」
魔法「久々に地雷だと感じたわ」
275: 以下、
勇者「南とはだいぶ違うんだな」
戦士「名称に統一性が見られないな」
魔法「小さい国って位置づけも曖昧ね。むしろ何処も同じくらい大きい国と考えるべきかしら」
勇者「よし、情報を取りまとめるぞ」
戦士「俺でも分かるようにな」
勇者「……近接としては、山岳都市、火の国、農商国家、要塞都市」キュッキュッキュッ
勇者「魔法が強いのが、水の都市、樹海の国」キュッキュッキュ
勇者「文武両道なのが剣の国と砂炎の国」キュッキュッ
勇者「ここは農商国家の領土内だな」キュキュッ
戦士「……流石に表まで書いてくれなくても分かるぞ」
277: 以下、
魔法「水、樹海、剣、砂炎で考えると、樹海と剣が近いわね」
戦士「やや樹海よりだな。どうするんだ?」
魔法「あたしは剣の国がいいと思うのよねぇ。樹海とか明らか遭難しそうじゃない」
勇者「いや、ここに書いてある通り、遭難者続出なのは昔の事で、首都までの道はしっかりしているみたいだぞ」
戦士「樹海なんだな」
勇者「何ていうか、森の中って森林浴で癒し効果抜群だろ?きっと回復魔法使える奴もいるだろう」
魔法「……なんという無茶苦茶な理屈」
332: 以下、
戦士「……魔物でねーな」
勇者「そりゃあ北の大陸だからな」
魔法(折角覚えた魔法……忘れそうね)
勇者「やばい。これは暇だぞ」
戦士「馬でもありゃぁいのにな」
勇者「CAN YOU SPARE SOME RATIONS 〜?」
戦士「CUZ I SURE NEED A DRINK...」
勇戦「I MOVE SO SLOW I WISH I HAD A HORSE〜」
勇者と戦士のテンションが上がった! <イッツナーイキャ ナイキャ シー!
魔法使いは意味が分からず、首を傾げている。 デインジャイン フォロゥ ミー!>
333: 以下、
行商人「悪いが、取引があるからここまでだよ」
魔法「いえいえ、樹海の国まで運んでくださいありがとうございました」
行商人「はは、なぁに良いって事よ」
勇者「……」
戦士「……」
勇者と戦士のテンションは下がった! <ヘー ゼニーバディー ヒーシーンマイコープス...
魔法「なにいじけているのか知らないけど、さっさと仲間を探すわよ」
335: 以下、
勇者「探すって言ってもな。ここの地図見たか?」
魔法「あたしは見ていないけど……戦士は?」
戦士「いや、勇者が地図受け取っていたから俺も見ていないな」
勇者「超広範囲だ。といっても、近隣の村も町を含めて首都のような扱いみたいだが……」
勇者「居住区、商業区等が集まるこの周辺もかなり広範囲となっているようだ」
戦士「おいおい……これ、酒場とか何軒もあるんじゃないか?」
魔法「考えたくも無いわね……」
勇者「長期戦覚悟だな」
337: 以下、
勇者「くそっ、効率が悪いな!」
戦士「酒場行く度に、マスターや客に捕まって話を聞かせる羽目になるとは」
魔法「食事代は浮くけどね」
勇者「南の大陸の奴が珍しいのは分かるが……三日かけて半分しか回れていないのか」
戦士「夜だとちょっとした軟禁状態になりそうだもんな」
魔法「昼間限定で回っているんだものねぇ」
戦士「まあ、長期戦覚悟なんだろ?」
勇者「……大事な発表です。結構、普通に飲み食いしたし、狩りょ、魔物との戦闘がない所為で、食費は酒場でのみ浮く中、ずっと宿屋の世話になっています」
戦士「お前、今までの戦闘も狩猟の一貫だったのか」
勇者「路銀がやばいです」
戦士「ほー……えっ!」
魔法「ちょ、なんですって?!」
339: 以下、
戦士「おいおい、どういう事だよ!少しも残していないのか!?」
勇者「多少は残っているが、これはいざという時の為のものだ」
魔法「いくらなんでも、いきなりすぎじゃない?」
勇者「……そりゃあ、少し装備周りで散財はしているし、残し過ぎかもしれない。だがよく考えてくれ」
勇者「ここは北の大陸なんだぞ?」
戦士「……?……。……あ」
魔法「収入が……一切ない?」
340: 以下、
樵「いやぁ……この時期に人手が得られるとは運がいいよっ」
戦士「はは……まあ、木材や道具の運搬くらいしかできないがな」
樵「伐採も手伝ってみる?木の切り方も教えようか?」
戦士「いや、長期的に働く訳じゃないから、あまり投資はしないでくれ」
勇者「ダブルベリーのパフェ、レッドハーブミルクお待ち!」
勇者「キノコと香草炒め、クコの実ジュース、フルーツサラダお待ち!」
支配人「う〜ん、これは何という逸材だろうか……」
料理長「彼、普通に雇用した方がいいんじゃないんでしょうか?」
支配人「南の大陸の冒険者らしくてね……重大な任務の途中で、短期雇用しかできないんだ。残念だなぁ……」
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「……」ペラ ペラ
魔法「魔法使える人が飽和している国は暇ねぇ……」スス
344: 以下、
料理長「あ、今日はそのメニューであがりなよー」
勇者「分かりました!」カチャカチャ
勇者「桑の実ソースかけバニラアイス、イワナシとモミジイチゴのヨーグルト和え、お待ち!」
勇者「お疲れ様でした!お先に失礼しますっ!」
料理長「はい、勇者君これ」
勇者「袋?中身はドライフルーツですか……」
料理長「連日お疲れ様、それで少しは疲れが取れるだろう」
勇者「いえいえ、このくらいでしたら。ですが、折角なので頂かせて貰います」
349: 以下、
勇者(参ったな、バイト生活ばかりで本目的を忘れそうだったぞ……)
勇者(今日は食料もあるし……こいつを片手に少しぶらつくか……)
勇者(ま、そう見つかる訳でもないか……お、占いやってるのな)
勇者「一つ占ってもらえますか?」
占い師「趣味程度の占いでよろしければ構いませんよ」
勇者「それで金取られるのか……」
町人「な、おい、お前!」
占い師「構いませんよ。あなたは旅のお方かしら?ここで会ったのも何かの縁。お望みの事占って差し上げましょう」
勇者「あ、俺なんか嫌な奴だな。すみません、今度ちゃんとした客として来ます」
占い師「ふふ、お気になさらずに。どうぞお掛けになって下さい」
351: 以下、
占い師「仲間、ですか?」
勇者「自分は南の大陸の者なのですが、魔王が復活してしまいまして……。それで回復魔法が使える方を探しているのです」
占い師「飽くまで私の占いはきっかけを与えるもの。あなたの望みでは、回復魔法が使える人を探すくらいしかできません」
勇者「そうですか……。いや、そうだな。そう簡単に見つからないからここまで来たんだ。何を甘えているんだ、俺は」
占い師「ですが」
占い師「私なら回復魔法も使えて、あなた達の旅にも同行する事もできますよ」
勇者「えっ?よ、よろしいんですか?!」
町人「え……ええ!そんな、巫女様が旅に?!」 
「なん……だと……!」
「兵士だ!兵士を呼べ!巫女様をお守りする部隊を組織しろ!」
「お、俺も旅に出るぞーー!」
「なら俺も同行して巫女様をお守りするぞ!」
勇者(有難い!有難いが……なんかとんでもない方向に話が流れている!てか巫女って?!)
353: 以下、
巫女は町人と出張った国王と兵士長を宥めた!周囲は沈静化した!
巫女「騒々しくしてしまい申し訳ございません」
勇者「いや……それより、もしやこの国の重要な方なのですか?」
巫女「皆が敬い慕って下さっているだけですよ。重要だなんてとてもとても」
巫女「その辺りは立ち話ではあれなので、何処か落ち着ける時にでも」ボソボソ
勇者「はあ……」
「お前!巫女様に近づきすぎだぞ!」
「くそ、なんて羨ましい奴なんだ!」
「許せねぇ!断じて許せねぇ!!」
「だけども巫女様が認めた方なんだよなぁ……」
勇者(異常な支持率というべきか、狂信的な信者がついているというべきか)
355: 以下、
勇者「ただいま」
戦士「おー……え、そちらは?」
魔法「あら、ひょっとして転生の巫女様かしら?」
巫女「ええ、その通りです。そちらの方は、この国の?」
魔法「あ、いえ、噂を聞いたものでして。それで……その巫女様がどうしてこのような場所に?」
巫女「特別身分がある訳ではないので、そう畏まらないで下さい」
勇者「えーとだな、この方は回復魔法が使えて、旅の同行も了承してくれたんだ」
戦士「……お前、いつの間にナンパするようになったんだ?」
勇者「そんなつもりじゃなかったんだが……ありえない事の成り行きでな」
357: 以下、
勇者「もしよろしければ、さっきの話を聞かせて頂いてもよろしいでしょうか?」
巫女「そうですね、ここでしたら落ち着いて話も出来ますし」
巫女「そちらの方が仰いました転生の巫女の事ですが……文字通り転生すると捉えて頂ければ」
魔法「……本当なのですか?」
巫女「ええ、五十年に一度ほどくらいで」
戦士「人間や魔族の血の濃さによって成長もだいぶ違うからなぁ……いい年になるのか?」
巫女「そうですね……だいたい、若さのピークを少し過ぎるくらいでしょうか」
魔法「あ、ちょっとだけ羨ましい」
勇者「転生って事は一度亡くなるのですか?」
巫女「その言い方ですと正しくないですね。……そうですね、若返るもしくは幼くなる、が正しいでしょうか」
巫女「転生前に人も寄らない山奥に行き、多少成長したところで、またこの国に戻るというのを繰り返しています」
勇者「なんていうか……人生をループさせているみたいで少し怖いな」
巫女「皆、私のような異形を優しく受け入れてくださるので、苦しみはありませんよ」
358: 以下、
巫女「それでは、出発は三日後で?」
勇者「働いている所から給料が出る関係で……」
戦士「一応給料日に、雇用更新の確認もしてもらう事になっているからなぁ」
巫女「……有志の方が資金援助して頂けると思いますが」
勇者「い、いや、そういうのには頼りたく無いから……一応、勇者なんで」
巫女「そうですか?それでは三日後にまたこちらに窺いましょう。それまでにこちらも準備しておきますね」
勇者「分かりました……それと、これからよろしくお願いします」
巫女「ふふ、こちらからも宜しくお願いしますね」バタン
勇者「……つ、疲れた」
戦士「だが、大物だな。魔力0の俺でも、とんでもない魔力を感じたぞ」
魔法「でも……なんていうか気がやられそうね」
勇者「だなぁ……」
360: 以下、
戦士「街の外でいいのかよ」
勇者「あの巫女様がそうお望みだから……なんだ、凄い歓声が聞こえるぞ」
魔法「巫女様の門出に際して、盛大なパレードでもやっていそうね……」
戦士「ある意味、国の象徴みてーだもんな。ありゃ人込みにいたら刺されたんじゃないか?」
勇者「それ、笑えない冗談だぞ」
魔法「でも否定できないわね」
勇者「……彼女をここに戻すまで、この国には近寄れないな」
戦士「というか仕事先大丈夫だったか?」
勇者「ホールでの仕事だったら、確実に刺されてたなぁ」
魔法「裏方でよかったわね」
362: 以下、
巫女「遅くなり大変申し訳ございません」
勇者「いえいえ。それより一度休憩をいれましょうか?」
巫女「いえ、それよりもお願いしていた荷物はどちらに?」
魔法「二つともこちらにありますが……一体中に何が?」
巫女「着替えますので少々お待ち頂けますか?」
戦士「ああ……そんな格好じゃ動き辛いもんな」
勇者「では、俺らはここで待っていますね」
巫女「お待たせしました」
勇戦魔「……」
勇者(え……大弓?)
戦士(どう見ても……レンジャー)
魔法(弓を携えた立ち振る舞いが自然……これが彼女の本来の姿……)
363: 以下、
巫女「流石にこの姿で巫女というのもあれね」
戦士「狩人かレンジャーだな」
巫女「ちゃんと回復魔法も使えるわよ?あ、じゃあ、僧侶で」
戦士「どこの世界に弓を持った僧侶がいるんだよ!」
僧侶「ここ、ここ」
魔法「どうしよう!どこからツッコミをいれればいいのかしら!」
勇者「流しちまえ。全部にツッコミいれてたら日が暮れる」
365: 以下、
勇者「……今までの口調は巫女だからか?」
僧侶「いやぁ、転生の巫女として祭り上げられたら、それらしく振舞わないと悪いかなぁと」
戦士「……どんだけ昔から生きているんだ?」
僧侶「ん〜、ちょっと人には言いたくなくなる年齢ね」
魔法「正にどれだけ昔から……」
勇者「まあいいさ。取っ付き易くなっただけでも大助かりだ」
僧侶「仲間が見つかって喜んでいた割には、随分困っていたみたいね」
勇者「それは……だってなあ」
366: 以下、
勇者「それじゃあ、農商国家の港町に向けて出発しますか」
僧侶「あ、ちょい待ち」
僧侶「占うだけ占わせて」
勇者「今更占う事はないんだが……」
僧侶「ちょっと気になる事があってね……」ゴソゴソ
魔法(……よくあの水晶球が、割れずに済んだわね)
僧侶「……」
僧侶「……うっわ、揃いも揃って……」ボソリ
僧侶「さ、行こうかしら」
戦士「……何が見えたんだ」
勇者「不安しかないな」
367: 以下、
僧侶「あ、一箇所寄りたい所あるんだけどいいかしら?」
勇者「遠いのか?」
僧侶「農商国家の領土内よ。ある祠があって……そこに伝説の魔剣があるのよ」
戦士「なんか急に話が飛躍してきたな」
魔法「戦士や勇者に扱えるのかしら」
僧侶「……恐らく勇者にしか扱えないわ」
勇者「その心は」
僧侶「占いの結果よ」
勇者(……趣味程度だよな、それって。しかも明らかにいい結果を見た表情じゃなかったし)
371: 以下、
勇者「樹海の国より鬱蒼とした所だな……」
僧侶「祠自体は何百年も前に建てられた物で、それ以降一切手を加えられていないからね」
戦士「伝説があるのに忘れ去られたって所か?」
僧侶「様々なトラップが張り巡らされていたのよ」
魔法「え……じゃあ今も危険なの?」
僧侶「流石に何百年も機能するものじゃないわ……こうして森の一部になった頃にはただの祠よ」
勇者「それだけ厳重に収められている魔剣ってどんなものなんだ?」
僧侶「……昔話になるけどもいいかしら?」
374: 以下、
僧侶「遥か昔、魔力から物質を生成できる魔族がいたのよ」
僧侶「魔石なんてレベルじゃない。武器や防具を生み出し、猛威を振るっていたわ」
僧侶「ある事件を境に、その種族はたった一人になったのよ」
僧侶「でもその一人は世界の行く末を見守る……心正しい者だった」
僧侶「自らの命さえも引き換えに、最強と呼ぶに相応しい剣を残そう」
僧侶「何らかの災厄を前に、人々が絶望に陥る前にその災厄を断ち切れるそんな剣を……」
僧侶「今では歴史にも残っていない古い時代の事よ……」
魔法「そんな魔族……聞いた事が無いわ」
僧侶「そりゃあね。何しろ猛威を振るっていたのは、魔王が頻繁に現れていた時代だったそうだもの」
戦士「うん?ちと曖昧なのか?」
僧侶「流石にそこまでは生きていないわよ……この話自体、大部分が人伝に聞いたものだしね」
375: 以下、
勇者「……ちょっと待った。それとその剣が俺にしか扱えないってどういう理屈だ?」
僧侶「飽くまで占った結果であって理由までは分からないわ。志が同じとかじゃないの?」
戦士「いつからそんな崇高になっちまったんだ?」
勇者「そりゃあ魔王は意識しているが、世界だとか考えた事ないんだがなぁ……」
魔法「とりあえず二人とも試せばいいじゃない」
戦士「二人とも扱えなかったりしてな」
勇者「そりゃあいい、とんだ笑い話だ」
僧侶「この二人っていつもこんな調子なの」
魔法「……まだいい方ね」
380: 以下、
勇者「祠自体は小さいな……」
戦士「本当に剣を収める為だけの建物だな」
魔法「……これが魔剣」
戦士「神々しいな……聖剣のが正しいんじゃないか?」
僧侶「魔剣よ。一人の魔族の命と引き換えに生成された……魔剣、魔王殺し」
戦士「……物騒な名だな」
僧侶「試された事は無いけれど、それだけの力を持つのは事実だわ」
魔法「触れると分かるわ……これだけの魔力。その種族って実は魔王なんじゃないのかしら」
僧侶「……そうね。魔王だったのかもしれないわ」
勇者「……全ては古の物語、か」
戦士「んじゃあ、真打は後にしてまずは俺からな」
382: 以下、
戦士「ぜぇ……ぜぇ……」
戦士は魔剣を鞘から抜く事が出来ない!
戦士「くそ……なんだよこれ」
魔法「まあ……当然あたしも無理ね」グイグイ
勇者「で、俺の番か……あ」スポ
勇者は魔剣を鞘から引き抜いた!強大な魔力が勇者の身体を包み込む!
勇者は身体の底から力が湧き上がるのを感じた!
戦士「……」
魔法「……」
勇者「……」
勇者「……」シャーー ッチン
戦士「いや鞘に収めるなよ」
384: 以下、
勇者「抵抗も無く抜けたんだが……」
僧侶「良かったじゃん」
魔法「良かったじゃない」
戦士「良いじゃねーか」
勇者「感動も何も無いんだが……」
僧侶「感動なんていらないでしょ」
魔法「感動の為に伝説の武器は存在しないわ」
戦士「そいつで魔王倒して感動すりゃあいーじゃねーか」
勇者「……リアリストどもが」
385: 以下、
町人「次の南の大陸行き?一ヵ月後だよ」
僧侶「暇ねぇ」
魔法「あたしは新しい魔法書が買えたから文句はないわ」ペラ ペラ
戦士「よし、今日は久々に稽古しようぜ」
勇者「ふあぁ……おー」
戦士「お前が寝不足とは珍しいが……手加減無用で攻撃手段は剣のみな」
勇者「最近夢見が……て、剣のみって……まあいいけどさ」
僧侶「……」
魔法「……」ペラ ペラ
僧侶「……どっちが好きなの?」
魔法「別にどちらもないけど?」ペラ ペラ
僧侶(あの二人……そんなに株が低いのか)
勇者「く……参った」
僧侶「あら戦士が勝った」
魔法「戦士が……勇者に勝るだと……?!」
388: 以下、
魔法「以外に強いのね」
戦士「先祖代々受け継がれてきた剣術があるからな。剣で負けた事ないんだぜ!」
勇者「じゃあ次は近接格闘ありでいこうか」
戦士「あ、ちょ、ま」
僧侶「格としては勇者が上なの?」
魔法「そうねぇ……うん、何というか勇者はスキルの幅が広いから何か凄い、いや何でもできるイメージがあるかな」
僧侶「なるほどねぇ……じゃあ南の大陸に行ってからは、そういう認識をさせる場面が多くあると期待していいのかしら」
魔法「期待しなくても多いけれどもね」
戦士「……」ボロッボロ
勇者「すまーん!やりすぎた!僧侶ヘルプー!」
僧侶「体術有りでここまで引っくり返るのか……回復魔法・中!」
389: 以下、
勇者「ベーコンレタスバーガー、バナナミルクジュースお待ち!」
僧侶「聞き覚えがあると思ったら……ここでバイトしていたのね」
勇者「怒られるから厨房を覗くなよ」ジュージュー
僧侶「……」
勇者「フィレステーキ、オークジンジャーお待ち!」
僧侶(これで称号が勇者……魔法使いの言う事が少し分かるわ)
勇者「ツナサラダとミートパイ、ベジタブルサンドとアップルパイ、えーローストベアーミートとリンゴジュースお待ち!」
僧侶「あー、どうもどうも」
勇者「……節約はしてくれよな?」
391: 以下、
従業員「おーい、その荷物置いたら休憩なー!」
戦士「了解っす!」
僧侶「おー若人、精が出るね」
戦士「……そりゃどうも」ドサドサ
僧侶「そうふて腐れるなよー。使いっ走りしてきたんだから。はい」
戦士「あ……昼飯か。サンキューな」
僧侶「それじゃああたしは魔法使いの分も届けてくるね」
戦士「おーう頼んだー」
392: 以下、
魔法「で、この材料を混ぜると出来上がりです」
店主「はー……この花から魔力を上げる薬が作れるとはなぁ」
僧侶「お……と、まだお邪魔かな」
魔法「あら、どうかしたの?」
僧侶「昼食届けにきたんだけども、少し早かったかなぁ」
店主「お、じゃあ魔法使いちゃんは休憩に入ってなよ。君も一緒に昼をとっていくといいよ」
僧侶「それではお言葉に甘えて失礼しますね」
僧侶「勇者って料理人なの?」
魔法「否定はしないけど勇者よ」
396: 以下、
「許し……るもの……魔物の王よ!」
「剣……者よ……」
「……望むよう……悔いの無いように……」
「……生きていた……魔族に責任が……」
勇者「……」ガバ
勇者「またこの夢か……」
勇者(気持ち悪いものじゃないが……だんだん喋っている内容が明確になっていくな)
勇者(魔剣を手に入れてからずっと……どう見てもこれの所為だよな)シャーーー
勇者(誰かの記憶……?魔剣を生成したという魔族か?)ッブォン ッブォン
勇者(魔物の王よ……か。魔王の事だよな。あなたは勇者だったのか?)スリスリ
397: 以下、
僧侶「あら、今日は仕事はお休みなの?」
勇者「流石に毎日はダメだってさ」ペラ
僧侶「残念そうね……」
勇者「北の大陸のレシピも学べるし、料理をするのは好きだからな」
僧侶「あーそう。で、レシピの本でも読んで暇つぶししているのね」
勇者「いや、動物性毒物辞典。一応調合師の資格はあるが、動物性の解毒は弱いからなぁ」ペラ
僧侶「そ、そう……弓の整備とかできるなら見てもらいたいんだけどなぁ」
勇者「何でも出来るわけじゃないが、貸してみろ」パタン
僧侶「どうかしら?」
勇者「……これなら弦を張り替えるだけで済むな。よし、今すぐ取り掛かるよ」
僧侶「ありがとねー」
406: 以下、
勇者「……」ガチャガチャ
僧侶「ねえ……どうして勇者になったの?」
勇者「あー……かくかくしかじか」ガチャガチャ
僧侶「かくかくうまうま。志も何もあったもんじゃないわね」
勇者「仕方が無いさ。だが、一応は魔王を目指してはいるぞ」ギュッギュ
僧侶「だからこんなところまで来た、と」
勇者「そんなところだ、よっと。はい、完成だ。ただもうしばらくしたら新調した方がいいぞ」
僧侶「あー結構長いからなぁ……」
409: 以下、
僧侶「……ねえ、あの魔剣を抜いてあたしに持たせてくれない?」
勇者「お、面白そうだな。それで扱えたりして」スラーー
僧侶「……」
僧侶が魔剣を握ると刀身は光沢を失った!
勇者「ここまで露骨に無理って反応だとは」
僧侶「……」ギュ
勇者「……刀身を抱き締めると服が切れるぞ」
僧侶「……そうだね、うん、有難うね」
勇者が魔剣を握ると刀身は輝きを放った!
410: 以下、
勇者「さーて、今日で北の大陸ともしばらくお別れだな」
戦士「戻ってくる気か」
勇者「お前、僧侶を放置する気か。魔王を倒したら帰るんだから当たり前だろ」
戦士「ああ……って、魔王を目指すのか」
魔法「あ……その懸念を忘れていた」
勇者「俺はそのつもりだが他に目的地ってあるか?」
僧侶「いいんじゃない?魔剣もあるんだし」
勇者「だ、そうだ」
戦士「流石の俺でも少し不安だ」
魔法「今度こそ死んだかも……」
411: 以下、
魔物の群れが現れた!
勇者は魔剣を引き抜き、薙ぎ払う!
轟音と共に凄まじい斬撃が放たれた!
魔物の群れは両断された!周辺の木々は両断された!
勇者「……」ガクガク
戦士「……」ブルブル
魔法「これは……正に魔王をも殺す勢いね」
僧侶「……魔力の塊だから、使えば使うほどに消耗していくんだった。絶対に魔王まで使っちゃ駄目だからね」
412: 以下、
勇者「それじゃ、俺は役場に行ってくるよ」
戦士「おーう。俺らは先に宿に向かってるな」
僧侶「役場に何をしに?」
魔法「倒した魔物の収集品をお金に換えるのよ。討伐報酬みたいなものね」
魔法「……あ、僧侶の冒険者の登録ってまだじゃない?」
戦士「お、そりゃ何を言われるか分かんねぇな。僧侶は勇者に付いて行ってくれ」
413: 以下、
僧侶「という訳で付いてきたわよ」
勇者(その格好で僧侶って……一発で拒否られそうだな)
受付「ではここに希望する職位をお書き下さい」
僧侶「……はい」ペラ
受付「……。実技審査があるので、こちらへどうぞ」
僧侶「ふぅん、職業名がそのまま称号になるって変わった考え方ね」
勇者「よく別の称号にされなかったな……」
414: 以下、
勇者「では、南の大陸での新たな旅の安全と成功を願いまして、乾杯!」
戦士「乾杯!」
魔法「乾杯」
僧侶「かんぱ〜い」
僧侶「……北にいた時ははしゃいでいただけかと思ったけど、普段からなのね」
魔法「家の仕来りだそうよ」
僧侶「ふふ」
勇者「……そんなに可笑しかったか?」
僧侶「というよりは……似たような事をしていた馬鹿を知っててね」
戦士「案外、お前のご先祖様なんじゃね?」
勇者「だとしたら……世間は狭いな」
僧侶「繋がりがあるかは知らないけど、つい懐かしくなっちゃってね」
415: 以下、
魔法「僧侶の事、どう思う?」
戦士「藪から棒にどうした?いい奴じゃないか?」
魔法「そうじゃなくて……なんであたし達についてきたかって話よ」
戦士「さあなぁ……皆何かしらのしがらみがあるんだ。俺達が踏み込むべき事じゃないだろう」
魔法「彼女は恐らく……数百年は生きているはずよ」
戦士「そりゃまあ、二、三百は生きているとは思っているが」
魔法「今、そこまで寿命がある人はそうはいないわ」
魔法「親しい知り合いに置いていかれ……それでも尚生き続けて……魔王討伐の旅に同行した」
戦士「……」
魔法「おまけに、北の大陸で忘れ去られた魔剣の事も知っていた」
魔法「少し、怪しくないかしら?」
戦士「……手元にあるカードじゃ、僧侶は打倒魔王を胸に秘めてるとしか言えないわな」
魔法「そうなんだけどもさぁ」
416: 以下、
僧侶「……」
勇者「……俺らみたいな青二才じゃ、あんたの心は埋められないとは思う」
僧侶「……え?」
勇者「だけども、俺らはもう仲間なんだ。だから、どんなに頼ってくれても構わないんだからな?」
僧侶「急にどうしたのよ?」
勇者「時折悲しそうに見えるんだよ。それがなんか悲壮にも思えるんだ」
勇者「きっと、共に居たかった相手はもういないんだとは思うが」
勇者「俺達ならまだしばらくは、共に居られるからさ」
僧侶「……ありがとう、ごめんね。変に気遣わせちゃって」
418: 以下、
(天秤……審判だ)
「我が声を……者。我が剣を……者」
「お前が……かどうか……見定めさせ……」
「他者が……悪意を……生きていた……」
「お前は……何を望む?」
勇者「……」パチ
勇者「声が一人増えたぞ……?」
勇者(いや、そもそも最後のお前は何を望むって、凄いはっきりと聞こえた)
勇者(途中が聞き取れなかった訳じゃない。声の方が溜めて言っていた)
勇者「俺に話しかけているのか。これは……」
419: 以下、
魔物の群れが現れた!
勇者「狂犬PTか」
戦士「今の俺らにゃ楽勝だな」
僧侶は矢継ぎ早に弓矢を放つ!
狙い違わず、全ての矢は狂犬達の眉間に突き刺さった!
魔法「……」
戦士「おい……プロなんてレベルじゃねーぞ」
勇者「ありのまま今起こった事を話すぜ!期待の回復役が魔物を瞬殺したんだ!」
勇者「へヴィストライクだとかシールドスマイトだとかそんなチャt(ry」
420: 以下、

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【イヤゲモノ】姑ってなんで腐ったものや賞味期限が切れたもの平気でくれてそれでいて恩着せがましくするんだろう

男「てめえ、ビール瓶でブン殴ってやる!」女「いやぁぁぁ!」

雲母←これ、「きらら」って読むのな

ゼノギアスのヴェルトールカッコイイな

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