吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」back

吸血娘「死なないハゲってさ、不老不死ってより不毛不死だよね」屍男「…」


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ええな
28: 以下、
おもしろい
29: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:52:18.52 ID:Sq07Y5wLo
ワイワイ ガヤガヤ
屍男(気が付いたら…路地裏のゴミ捨て場で目が覚めた)
屍男(その前のことは何も覚えていない…自分の名前も、出身も)
屍男(…これは“記憶喪失”というやつなんだろうな。自分の過去だけが綺麗に丸ごと抜けている)
屍男(これからどうする。警察にでも行って事情を話せば保護してもらえるか?)
屍男(…いや、警察は駄目だ。なぜかは分からんが、嫌な予感がする)
30: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:53:30.90 ID:Sq07Y5wLo
屍男(…しかし、動かないと埒があかない。いずれにせよ、このままホームレスのような生活を続けるわけにもいかん)
屍男(人が集まるこの駅前なら、俺のことを知っているやつに声をかけられるかと思ったが…もう日が暮れてしまった)
グゥゥ
屍男(腹が減ってきたな。今日はここで一晩過ごし、明日になっても見つからなかったらおとなしく病院にでも行くか)
「うっ、なんだあのハゲの周り、めっちゃくっせえぞ」
「うわ!ハゲだ!ハゲ菌がうつる!」
屍男「…」
31: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:55:01.11 ID:Sq07Y5wLo
チッチッチッチッチッチッチッチッ
屍男(深夜の0時か。さすがにもう人はいないな)
屍男(…そろそろ寝るか。こんなところで横になると死体と間違われて通報される可能性がある…少し場所を変えるか)スッ
「ちょっといい?そこの髪がない人」
屍男「…なんだ、俺のことか?」
「そうよ、こんなところで何をしているの?」
屍男「…いや、何でもない。もうここを離れるところだ」
屍男(長居し過ぎたか、怪しまれると厄介だな)
32: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:56:21.64 ID:Sq07Y5wLo
「ふーん…そう」ジロジロ
屍男(…なんだ、この女は)
屍男(よく見ると…他の人間とは違う雰囲気がある。妖艶…蠱惑的…まるで魔女だな。薄気味悪ささえ感じる)
屍男(格好を見るに、娼婦か何かか?まさか商売の相手を探しているんじゃあるまいな)
魔女「アナタ…もしかして、記憶喪失だったりする?」
屍男「」ピクッ
屍男「…お前は、俺を知っているのか?」
33: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:57:20.16 ID:Sq07Y5wLo
魔女「残念、会ったこともないわね。でも…」
魔女「アナタに何が起きたかは…知っているかも」チラッ
屍男(この女は…なぜ俺のことを)
屍男(…考えても仕方ないか。今はこの女が一番の頼りだ)
屍男(…勘だが、こいつは何か特別な気配がする)
屍男「…あぁ、そうだ。俺には記憶がない」
屍男「お前は医者か、エスパーか?どちらにしても、俺が何者なのか教えてほしい」
魔女「いいわ、ここで話すのもなんだし、ちょっと場所を移しましょうか。着いてきなさいな」スタスタ
34: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:58:13.23 ID:Sq07Y5wLo
カランカラン♪
魔女「そこら辺にでも座っててちょうだい。お茶を出すわ」
屍男(…ここは古本屋か?どんな所に連れ行かれるのかと思ったら…意外とまともな場所だな)
屍男(この女の店…にしては似合わないな)
魔女「はい、レモンティー。口に合うかどうかは知らないけど」
屍男「…さっそく本題に入っていいか。お前はなぜ、俺が記憶を失っていると一目でわかったんだ?」
魔女「うーん…そうねぇ…」
魔女「じゃあ気付いてないみたいだし、正直に言ってあげるわ。あんまり取り乱さないでね」
35: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 20:58:59.03 ID:Sq07Y5wLo
魔女「アナタ、もう死んでいるのよ。人間じゃない、だからすぐ分かったの」
屍男「………は?」
36: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:00:04.96 ID:Sq07Y5wLo
魔女「気付いてなかったでしょ、自分が死んでいることに」
魔女「そりゃ駅の前で、死体が意味深な顔をして辺りの人間をチラチラ見てたら…人を探してるか、今夜のディナーを見極めているかのどっちかしかないわよ」
魔女「普通の怪物は私の目を見たら真っ先に警戒するし、アナタの態度を見ると何も知らない、蘇ってからそう日が経ってないアンデッドってことはすぐ分かったわ」
魔女「蘇生した直後は記憶が混乱して、ボーっとしてるしね」
屍男「…待て、勝手に話を進めるな。俺が死んでいるだと?」
屍男「笑えない冗談だ。死体が動くわけがない…俺を馬鹿にしているのか?それともイカれているのか」
魔女「そう言うと思ったわ。じゃあ論より証拠を見せてあげる」チャキッ
37: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:00:56.84 ID:Sq07Y5wLo
バンッ!!!!!!
屍男「!?」ドンッ
屍男(なっ…拳銃っ…撃たれッ...)
ドサッ
屍男「」
屍男「」
屍男「…??」ピクッ
屍男(…痛みがない?)
魔女「ほら、銃で心臓を撃ち抜かれても生きてるでしょ。これでも普通の人間だっていうの?」
魔女「これが現実、アナタは一度死んで蘇ったゾンビくんってワケ」
38: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:01:59.95 ID:Sq07Y5wLo
屍男(ど、どうなって…撃たれた傷は!?)バッ
ジュゥゥゥゥゥゥッ
屍男「に、肉が集まって再生しているだと…」
魔女「おぉ、再生のスピードはっやーい」
屍男「何がどうなっているんだ…?ぐぅっ」グッ
屍男「俺は……もう本当に……死んで、いるのか......?」
魔女「目の前で手品を初めて見た子供みたいなその顔…髪があったら男前なのにもったいない」
39: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:05:56.27 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...」
魔女「まあショックなのは分かるけど、そんなに悲観することじゃないわよ。第二の人生だと思えば気楽なものよ?」
魔女「ほら、ゾンビ映画のゾンビ達も肉食べてる時はすごく楽しそうだし」
屍男「...俺はなぜ死んだんだ」
魔女「さぁ?そんなこと私に言われても
分からないわよ。全知全能の神じゃあるまいし」
屍男「...記憶はいつか戻るのか?」
魔女 「そうね、そのうち戻るんじゃないの。今は蘇った反動で脳が混乱してるだけだと思うし」
40: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:08:21.54 ID:Sq07Y5wLo
屍男「...俺みたいな境遇のやつは他にもいるのか」
魔女「えぇ、死者が蘇ったら主に二つに分類されるわ」
魔女「一つは『幽霊(ゴースト)』こ死の実感がない、つまり事故とか病気とかの突然死をした人がなりやすいわね」
魔女「幽霊の特徴は肉体がないこと、それに視える人にしか見えない。こっり暮らすなら最適の存在よね」
魔女「他にも足が付いてるのとか、自由に移動が可能なタイプもいるけど...ここら辺は話すと長くなるからとりあえず飛ばすわ」
魔女「そしてもう一つは『怪物(モンスター)』アナタはこっちに当てはまる」
41: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:12:45.54 ID:Sq07Y5wLo
魔女「怪物は死を実感しながら死ぬとなりやすいって言われてるわ。殺人とか、自殺とか…個人的な経験だと性格にクセがある人が多いわね」
魔女「怪物の特徴は蘇った肉体そのもの。超人的な怪力になったり、足がくなったり、ワープしたり…まさにモンスターって感じ」
魔女「まあジェイソンみたいなのを想像すればいいわ。大体はあんな感じだから」
屍男「」グッ
グシャッ
屍男「...なるほどな、少し力を入れただけでカップが砕けた。ハルクにでもなった気分だ」パラパラ
42: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/14(土) 21:14:11.69 ID:Sq07Y5wLo
魔女「ちょっと、勝手にカップ壊すのやめてくれる?」
屍男「…フッー、つまりアレか。俺は…誰かに殺されたということか」
屍男「そして蘇ったと…くだらんホラー映画じゃあるまいし…馬鹿みたいな話だ」
屍男「…一つ、気になることがあるんだが」
魔女「なに?」
屍男「この頭…髪が抜けたのも蘇った影響なのか?」
魔女「いや、それは違うと思う」キッパリ
屍男「…」
屍男「…あぁ、そうか」
44: 以下、
ハゲはきにしてるんだ
かわいいな
45: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:02:59.09 ID:AFSOJReDo
魔女「しかしまあ、怪物になったのは運が悪かったかもね。幽霊なら実体がないから好き放題出来たのに」
魔女「いくら死んでるといっても、怪物は元のベースが人間だからどうしても睡眠と食事が必要になるのよね。幽霊はただ浮いてるだけでいいんだけど」
屍男「…どうすればいいんだ。俺はこれから…」
屍男「名も故郷も親も知らずに、化け物になった状態で生きろと?そのまま死んでた方がまだ楽だろう」
屍男「…姿も髪が抜けて、この有様だ」
魔女「だから髪がないのは元からだって」
魔女「まあそうねぇ…このままだと本当に野垂れ死んじゃいそうだし、アナタが良ければ記憶が戻るまでここに住んでもいいわよ?あ、もちろん仕事はしてもらうけど」
46: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:04:05.32 ID:AFSOJReDo
屍男「…いいのか?お前は」
屍男「会ったばかりの死人を家に招き入れるなんて…余程のお人好しか間抜けだぞ。正常な判断とは思えない」
魔女「家を提供してあげるって言ってるのに、普通そんなこと言う?」
魔女「別に理由なんてないわよ。ただ、困った時はお互い様ってだけ」
魔女「貸しは作っておいて損はないからね。いつか倍返し貰えればいいし」
屍男「…お前は本当に何者なんだ?人間なのか、それとも怪物というやつなのか」
魔女「さあ?そんなのどうでもよくない?」
魔女「アナタが直面してる状況と比べたら…私の正体なんて些細なものよ」
47: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:05:35.61 ID:AFSOJReDo
…………………………………………………
……………………………
屍男「…」ポンポン
屍男「…ここの本はこっちの本棚か」
屍男「…虫に食われているな。これはもうダメか」ペラペラ
屍男(あれから二週間か。成り行きであの女の店で働くことになったが…)
屍男(なんだこの本屋は、オカルト系の怪し気でインチキ臭い本しかないぞ)
屍男(…しかも半分くらいは何の言語で書かれているか分からん。状態も悪いし何年前の白物なんだ)
屍男(これだと客も来ないはずだ。今までに来た奴なんて数えるほどしかいない…)
屍男(…いや、問題はその客の方か)
48: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:06:50.39 ID:AFSOJReDo
屍男(時々来る客の中でも、本には目もくれずに店の奥に入っていくやつらがいる)
屍男(その客には触れるなと言われているが…あれは間違いなく、一般人ではない。気配で分かる)
屍男(そして、そいつらの共通点は馬鹿でかい荷物を持っているということだ。俺の勘だとアレは…)
魔女「おーご苦労、ご苦労。だいぶここら辺も片付いてきたわね」
魔女「やっぱり男の人がいると助かるわ。女の子一人だと本の整理もままないからねぇ」
屍男「…女の子という年齢はとうに過ぎてると思うが」
魔女「何か言った?」
屍男「…何も」
49: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:08:17.68 ID:AFSOJReDo
魔女「で、そろそろ記憶が戻ったりした?」
屍男「…いや」
魔女「え〜まだ戻ってないわけ?それはちょっとおかしいわね…」
魔女「普通は数日から一週間で、頭が整理されて生前のことを思い出すはずなんだけど...」
屍男「…どうなっているかはこっちが聞きたい。本当に戻るのか?」
魔女「二度と戻らないってことはないでしょ。記憶自体は頭の中にちゃんと入ってるはずだし、気長に行くしかないってことね」
屍男「…そうか、待つしかないか。ところで一つ、こちらも聞きたいことがある」
屍男「ここはいつから死体安置所になったんだ?」
魔女「…え?」
50: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:09:06.48 ID:AFSOJReDo
屍男「隠しても無駄だ。俺も同じ死体なんだからな。死体の臭いは僅かな死臭で分かる」
屍男「それをお前が関わるなと言った客が運んでいることも知っている。理由を聞かせてもらいたい」
魔女「…」
屍男「こちらも居候の身だ。詮索はしたくないが、これはあまりに常軌を逸している」
屍男「返答次第では…こちらも黙っているわけにはいかない」
魔女「…それってつまりこういうこと?」
魔女「私が、人を殺して、その死体で何かしていると」
屍男「…あぁ、そうだ」
51: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:10:09.02 ID:AFSOJReDo
魔女「...」
魔女「はぁーあ…ばーれちゃった」
魔女「まあ半分正解ってところね。勘違いしないでほしいけど、私は死体を弄り回す趣味なんてないわよ。生きてるなら話は別だけど」
魔女「いいわ、着いてきなさい。真実を教えてあげる」スタスタ
屍男「…」
魔女「なに?警戒してるの?」
魔女「安心しないさいよ。バレたから口止めなんて古典的なことやらないから」
52: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:11:15.07 ID:AFSOJReDo
スタスタ…スタスタ…
屍男(…店の奥にこんな地下へ進む階段があったのか。まるで秘密基地だな)
屍男(しかしこの臭いは…奥に進めば進むほど、死臭がはっきりする。一人や二人の量じゃないぞ)
カチャッ
魔女「はい、この部屋よ」ガチャ
屍男「…なんだ。この部屋は…」
ゾォォォォォォォォォォォォォォォォォ
屍男(見渡すとまず視界に入るのが、台に乗せられた多数の死体…状態は損傷が激しいものから、ほぼ無傷のものまで様々だ)
屍男(そしてその中央にあるのが巨大な水槽、いや鍋なのか?中には液体が入っていて、沸騰している水のように煮え立っている。どう見ても人体に悪影響を及ぼす色と臭いだ)
53: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:13:01.17 ID:AFSOJReDo
屍男(最高に狂ってる光景だ…常人ならこの場を見るだけで卒倒するだろう)
屍男(…まさか、自分が呑気に本の整理をしていた部屋がこんな地獄だったとは)
屍男「…おい、これは一体どういうことだ?お前は…ここで何をしている」
屍男「こんなものが世間にバレたら逮捕どころの話じゃないぞ...歴史上ナンバーワンのクレイジーでイカれてる最高のサイコ犯罪者だ」
魔女「別に私はそこまで狂ってないわよ。異常が日常になってるだけ、すぐ慣れるわ」
魔女「で、ここで何をしているのかって話だけど…この死体の顔に見覚えはある?」
死体『』
屍男「…そいつ鼻から下がないぞ」
54: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:13:55.58 ID:AFSOJReDo
魔女「あら?ごめんなさい。分かりにくかったわね、じゃあこれは?」
死体『』
屍男「…記憶のない俺が人の顔を覚えてると思うか?」
魔女「えぇ、コレは結構有名人だったしね。ニュースでよくやってたから見覚えがあっても不思議じゃない」
魔女「ほら、これが生前の写真。これなら誰か分かるでしょ」ペラッ
屍男「…ん?」ピクッ
屍男「待て、こいつは確か...殺人犯で手配中の男じゃなかったか?老人を二人殺したとかいう...」
55: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:15:58.09 ID:AFSOJReDo
魔女「正解、一週間前に二人のお爺さんを殺して、その犯行の様子をSNSに公開したゲス野郎」
魔女「表では今でも逃走中ってシナリオになってるわね。ま、捕まることは永遠にないでしょうけど」
屍男「…なぜそいつが死体になって転がっているんだ」
魔女「何となくもう察してるんじゃないの?極悪人が殺されるなんて理由は一つしかないじゃない」
屍男「…復讐か」
魔女「だいせいかい〜誰から依頼されたかは企業秘密で言えないけど、こいつは依頼されて殺されたのよ」
魔女「自業自得ってやつよね。人から恨まれることなんてするもんじゃないわ」
56: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:16:42.57 ID:AFSOJReDo
魔女「ここにある死体もみんなそう、殺人鬼から強姦魔に放火魔…麻薬王から頭のネジが外れたやつまで悪人のオールスター」
魔女「まるでクズの博覧会…標本にして飾ったらお金取れるレベルだと思うわ」
屍男「…するとあの死体を運んでたやつらは」
魔女「アナタ…いえ、私達の同類よ。人の姿をしているけど、みんな怪物や人外の化け物」
魔女「私が仕事を紹介して、彼らが実行し、達成したら報酬を払う…まあどこにでもあるビジネスよ」
屍男「...」
屍男「…はぁ、一体何なんだ」
57: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:18:15.65 ID:AFSOJReDo
屍男「いきなり目が覚めたら記憶を失っていて、娼婦のような恰好をした女に自分は死人だと告げられ、そいつの店に住むことになり...」
屍男「あげくの果てにはその女が実は殺し屋の元締めだと?そろそろ頭がパンクしそうだ…この世界はフィクションで出来ているのか」
屍男「…その鍋は何だ?まさか死体を溶かすとでも言うんじゃないだろうな」
魔女「おっ、ご名答」
魔女「ふんっ」グッ
グイッ
ドボンッ…
ジュッ…グツグツッ...グツグツッ…
魔女「この液体は私が作った特別製、人間の細胞を一つも残さずにこの世から消滅させる」
魔女「死体っていう証拠がないと殺人は立証できないって、かの有名な殺人犯も言ってたでしょ?」
58: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:19:14.20 ID:AFSOJReDo
屍男「…」
魔女「で、どうするの?」
魔女「これが死体を運んでたワケ、私の正体は復讐代行兼殺し屋」
魔女「いくら悪人を殺してると言ってもそれが善だとは思っていない。結局は全部お金のため、我ながら小悪党やってると思うわ」
魔女「アナタはこの事実を知って…どう行動をするのかしら?」
屍男「...」チラッ
死体『』
屍男「…」ゴクリ
ズキッ
59: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:20:08.05 ID:AFSOJReDo
屍男「…ッ」グッ
屍男(なんだ?頭が...)
魔女「どうしたの?頭を押さえて」
屍男「…何でもない」
屍男「俺がお前達の所業を知ってどうするかだったな…俺は」
屍男「…特に何もしない。好きにしたらいい」
魔女「えっ」
60: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:20:55.67 ID:AFSOJReDo
屍男「…なんだ、その反応は」
魔女「いや…ちょっとゾンビくんのキャラと違うなと思って」
魔女「私の目だと、こんな汚れ仕事は嫌いなタイプだと思ってたから」
屍男「...勝手に俺を判断するな。俺は…」
屍男「この世界には消えていい存在もいると思っただけだ。殺してるのは市民に危害を加えてるやつらなんだろ?」
屍男「なら…そんな屑は死んだ方がいい。貴様達が見境なく人を襲っているというなら話は違ってくるがな」
魔女「…ふーん」
61: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/15(日) 18:21:46.04 ID:AFSOJReDo
魔女「私もそうだけど、どうやらアナタも元から相当ぶっ飛んだ思想を持っているようね。記憶がないのもそこから来ているのかも」
魔女「いや、これはどちらかと言うとアッチ系の…」
屍男「…?どういうことだ?」
魔女「ううん、何でもない。さすがに考え過ぎか…とにかく、アナタが敵に回らなくて良かったわ」
魔女「せっかく仲良くなってきたのにもう殺し合うなんて…勿体ないですもんね」ニコッ
屍男(…食えない女だ)
64: 以下、

こんなもの見たらそりゃ髪も抜けますわ
65: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:51:50.74 ID:+2aT8+rko
…………………………………………………………
……………………………………………
屍男「…」キュッキュッ
屍男(ここの店の秘密を知ってから数日が過ぎた。あれから特にこれといった変化はない)
屍男(しかしよく死体の山の真上で商売なんて出来るものだ。案の定売れてないがな)
屍男「…よし、ここは綺麗になったな」キュッ
スゥッ…
屍男「…ん?」
屍男(…客か、珍しいな。しかもまだ子供か)
66: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:52:55.75 ID:+2aT8+rko
「...」ペラペラ
屍男(...背丈を見るにまだ小学生、いや中学生か?読んでる本のタイトルは…『呪い大百科』)
屍男(…まあここに来るやつが全員化け物ってわけでもないからな。呪いだの占いだのに興味を持つ年齢だろうし、そこまで不思議でもないか)
「…これでいっか」スッ
屍男(…ちょっと待て、なぜ本をもって出口に向かう?まだ会計が終わってないぞ)
屍男(これは…まさか万引きというやつか)
屍男(…さすがに止めた方がいいか。店番も頼まれてるしな)
67: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:54:08.78 ID:+2aT8+rko
屍男「おい、待て」
「...」
屍男「売り物を持ってどこに行くつもりだ?金を払うのが先だろう」
「…ハァ?お前、誰に向かって口聞いて…」
吸血娘「...っ!」ピクッ
屍男(…やはり中学生くらいか。平日の昼間からブラブラしているのは学校をサボっているからか)
屍男(少し、他の子供と違うように見えるが…まあ見るからに不良っぽいからな。そのせいか)
68: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:55:31.37 ID:+2aT8+rko
吸血娘「...」
屍男「…どうした、ジッと固まって」
屍男「何も問答無用で警察に突き出そうとは思ってない。金さえ払えばこちらも事を荒立たせるつもりはないからな」
吸血娘「…ハゲ」ボソッ
屍男「…」
屍男(…失礼な子供だな。最近の若いのはみんなこうなのか)
屍男「いいから代金を払え。今の発言も含め、今回は見なかったことにしてやる」
69: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:56:27.99 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ハァ?何でただの死体が私に命令してるの?私を誰だと思っているんだ」
屍男「」ピクッ
屍男(こいつ…まさか)
屍男「…俺が死体だとわかるのか?」
吸血娘「んなもん見れば誰だって分かるわ。だって臭いし、目が死んでるし、おまけに毛根も死んでるし」
吸血娘「というかお前誰?あのビッチに雇われたの?」
屍男(…あの女のことも知っている。やはりこの子供も…)
70: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:58:02.52 ID:+2aT8+rko
屍男「…あぁ、そうだ。ワケあってここに住まわせてもらっている」
吸血娘「セフr」
屍男「違う」
吸血娘「反応はっや、まあいいや。そっか…そういうことか」
吸血娘「じゃあ私は急いでるから、またなハゲ」
屍男「おい待て、金を払えと言ってるだろうが」
吸血娘「あいつにツケといて、まあ返す気なんてないけど〜」
吸血娘「んじゃそういうことで〜」フリフリ
屍男「…なんなんだあいつは」
71: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 17:59:10.31 ID:+2aT8+rko
屍男「ということがあったんだが」
魔女「あぁ、ドラキュラちゃんね。あの子なら別にいいわ。うちのお得意様だし」
屍男「…ドラキュラ?」
魔女「正確に言うとヴァンパイア。人の血を啜る半不老不死の世界で最も有名な怪物…あ、怪物と言ってもアナタと違って死んでないわよ?あの子は先天性の方」
魔女「簡単に言うと人外ってやつね。こっちの世界なら、アナタみたいな死人よりこのタイプの方が断然多いわ」
屍男「…ヴァンパイアか。さすがに慣れたのかもうそこまで驚かなくなったな」
屍男「あの子供も人を殺しているのか?」
72: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:01:01.95 ID:+2aT8+rko
魔女「見た目は子供だけど、実年齢はそこまでじゃないわよ。もうお酒は飲める年頃だし」
魔女「仕事に関してはよくやってくれてるわ。暗殺って分野だとあの子の右に出る者はいないってくらいにね」
屍男「…そうか」
魔女「もしかして、あの子のことが気になってるの?ゾンビくんて意外とストライクゾーン広いのね」
屍男「…誤解を招く言い方はやめろ。俺はただ、ああいう子供が手を汚していることが気に入らないだけだ」
魔女「だからあれでも成人だって、まあそこら辺は種族の違いってやつだと思うけどね」
73: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:03:50.66 ID:+2aT8+rko
魔女「ヴァンパイアから見たら、結局は人間は食糧だってこと。人間は同種を殺すことに抵抗があるけど、あの子にはそれがないから割り切れるんでしょうね」
魔女「人間が家畜用の豚や鶏を殺すのと同じでね。目の前から死を極力まで排除している現代人からしたら残酷に思えるでしょうけど」
屍男「…」
魔女「価値観の違いってやつよ。じゃあ私はお風呂入って髪と死体をとかしてくるから食器洗っといてちょうだい」スタスタ
屍男(…価値観の違いか)
屍男(言葉で片付けるのは簡単だが、やはり異常だな…この世界は)
屍男(…ただ、少しだけ理解出来たような気がする)
74: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:04:37.71 ID:+2aT8+rko
▢▢▢▢ 翌日 ▢▢▢▢
吸血娘「でなーその男が私に言ったんだよ」
吸血娘「『け、警察!誰か助けてぇ!!!』ってね!」
吸血娘「自分は4人も殺しておいて警察に女の子みたいな声出して助け求めてやんの!身の程を知れってんの!アッハハハハハハハハハァ!!!!!」バンバン
屍男「…」
吸血娘「まあすぐぶっ殺してやったけどね。まったくああいうクズ共が相手だと何の迷いもなく殺れるから楽だわ」
屍男「…おい」
75: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:05:37.72 ID:+2aT8+rko
吸血娘「ん?なに?」
屍男「…なぜ今日もここにいる。そしてなぜ三時間もそこでくっちゃべっているんだ」
吸血娘「何でって、別に理由なんてないけど?ただの暇潰しだし」
屍男「…はっきり言うぞ。仕事の邪魔だ、帰ってくれ」
吸血娘「仕事って言ってもどうせ本の整理とか、掃除くらいしかやることないじゃん。せっかく退屈そうな顔してたから面白い話してやったのに」
屍男「…誰も頼んでない」
吸血娘「うるせぇ!このハゲ!お堅いのはこのハゲ頭だけにしとけ!」バシーン
屍男「...」ヒリヒリ
吸血娘「あー…気持ちいい!一度このハゲ頭を平手打ちしたかったんだよね!やっぱり殴り心地最高だわ!」バシバシ
76: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:07:02.91 ID:+2aT8+rko
屍男「...」イライラ
屍男(な、なんなんだこいつは…突然来たと思ったら、つまらん話と頭の話を延々と...)
屍男(さすがに腹が立ってきたぞ...グッ、押さえろ。相手はまだ精神的に未熟だ…我慢しなくては)
吸血娘「あっ、おいハゲ、ちょっとそこの本取って」
屍男「…どれだ」
吸血娘「そこの手前のやつ、表紙が黒いの」
屍男「これか?」スッ
ネチャッ
77: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:07:50.10 ID:+2aT8+rko
屍男「…なんだ?何か手に…」
吸血娘「アッハハハハハハハハハァ!!!!引っかかってやんの!その本の表紙の塗料はぐちゃぐちゃに溶けてて触るとくっ付くんだよ!」
吸血娘「しかもそれめっちゃくさいぞ…一度風呂に入っても取れないくらいに…まあ元から臭いし変わんないか!ぷぷっ」プププ
屍男「...」クンクン
屍男「」ブチッ
屍男「…いい加減にしろ。大人をからかうな」
吸血娘「アん?もしかして子ども扱いしてる?これでも二十歳なんですけど
78: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:09:00.79 ID:+2aT8+rko
屍男「ならもっと年齢に相応しい振る舞いをしろ。いつまでガキみたいな真似をしてるんだ」
吸血娘「だってヴァンパイアの歳だと二十歳なんて人生の十分の一にも満たしてないし、人間換算だとまだ8歳くらいだし」
屍男「そういう問題じゃないだろうが、同年代の人間を見てみろ、お前よりはずっと大人だぞ」
吸血娘「…んなこと言われても同じ歳の人間なんて話したことすらないし」
屍男「…?学校に行ったことはないのか」
吸血娘「ヴァンパイアが学校になんて行けると思う?豚小屋にオオカミを放り込むようなもんだろハゲ。少しはその何にもない頭働かせろ」
79: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:09:49.43 ID:+2aT8+rko
屍男「…お前、もしかして」
屍男「寂しい…のか?」
吸血娘「は、はぁ!?ち、ちげーし!全然そんなんじゃねーし!!」
吸血娘「ば、ばーか!あーほ!もう帰るわハゲ!頭洗って出直して来い!」ダッ
屍男「…」
屍男「といううことがあったんだが」
魔女「ほう」
80: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:11:32.57 ID:+2aT8+rko
魔女「あのドラキュラちゃんがねぇ…結構可愛いところあるんじゃないの」
魔女「確かに、あの子は自分と近い歳の人間との繋がりはなかったろうしね。周りは自分と同じモンスターか、獲物しかいなかっただろうし」
屍男「…あいつは今まで一人だったのか?」
魔女「...」
魔女「親は居たけど、あんまり仲は良くなったみたい」
魔女「ヴァンパイアは夜型の生活だから、人との繋がりは今まで仕事ぐらいでしかなかったのかも。後は同族の集会くらいか」
魔女「そもそもそのヴァンパイア自体が、今では少数の血統しか残ってないからねぇ…二、三世紀前はもっと数が多かったらしいけど」
魔女「ま、仕方ないか。彼女と同年代と言ったら、血液に一番脂がのってる時期だもん。仲良くなる前に出会ったら本能で襲っちゃうまであるし」
81: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:13:23.42 ID:+2aT8+rko
魔女「基本的に普通の人間には手を出さないから、自分から距離を取ってるところもあるんだろうね」
屍男「…そんな奴がなぜ俺にちょっかいをかけてくるんだ」
魔女「さあ?ゾンビくんって頭以外は男前だし、もしかしたら惚れられてるのかもね」
屍男「......」
魔女「冗談よ、本気にしないで」
魔女「まあ考えられる可能性としては…どこか同じ雰囲気を感じたのかもね」
屍男「…同じ雰囲気?俺とあいつがか?」
魔女「―――――」
魔女「そうね、二人は結構似てると思うわよ」
82: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/16(月) 18:14:32.83 ID:+2aT8+rko
屍男「…」
屍男「…そうか、あいつは今まで孤独に生きてきたんだな」
屍男「記憶を失い、何も寄り添うものがない今の俺と…確かに似ているかもしれん」
魔女「えっ?アナタには私がいるじゃない」
屍男「…お前には貸しがあるし、恩も感じているが、深い仲になろうとは思ってないしなるつもりもない」
屍男「はっきり言うと、なるべく関わりたくない」
魔女「酷くない?」
86: 以下、
今のところ魔女凄くいいやつだと思うんだが
ここまで嫌われるってことは第六感的に何か嫌なものを感じてるんだろうか
87: 以下、
見た目がトロールみたいなんじゃね
88: 以下、
娼婦みたい、露出が多いって書いてあるから
若くて美人だと思うぞ。ビッチ呼ばわりされてるし
89: 以下、
ハゲ弄りが凄い
おつ
90: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:02:06.34 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………
…………………………………………
吸血娘「私がぶっ殺したやつの中で一番強かったのは半魚人野郎だったなぁ」
吸血娘「あの時は初めて人間以外を相手にしたし、マジで死ぬかと思ったわ」
吸血娘「ま、最後は喉笛に噛みついて血吸ってやったけどね。味は予想通り生臭かった」
屍男「…そうか」
屍男(あれから毎日、こいつは店に来るようになった)
屍男(話す内容はやれ誰かをぶっ殺しただの、あいつは手強かっただの…低俗な話ばかりだが、聞いててそれなりに退屈はしない)
屍男(一人で過ごすより、二人の方が気が楽になるんだろう。こいつも…俺も)
91: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:03:08.16 ID:YQmGKLBxo
屍男「その半魚人とやらは比喩か何かか?まさか本物じゃあるまいな」
吸血娘「いんや本物だけど、そりゃヴァンパイアがいるなら半魚人がいてもおかしくないだろ。常識的に」
吸血娘「ほかにも狼男とか、翼が生えてるやつとか触手がうねうねしてるやつもいるぞ」
屍男「…それを世間では非常識と言うんだがな」
屍男「殺し屋というのは人だけではなく、そんな輩も相手にするんだな。気苦労が絶えんだろう」
吸血娘「依頼するのは人間だしね。たまに人殺しの中にもそういうやつらが混じってることもあるよ」
吸血娘「でも普通の人間相手にするのとあんま変わらんけどね。私ヴァンパイアだし、最上級の魔族だし」ドヤァ
92: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:04:05.22 ID:YQmGKLBxo
屍男「…同じ人外相手でも平気なのか。仲間みたいなものだと思うんだが」
吸血娘「ハァ?全然違うでしょ。あんな気持ち悪いやつらと一緒にしないでよ」
吸血娘「同じ人間じゃないってだけで、種族も思想も全然違うわ。そんなの気にしてたらゲロ吐くわ」
屍男「…そういうものか」
カランカラン♪
魔女「帰ったわよ…って、ドラキュラちゃん今日もいるの」
吸血娘「ゲッ」
93: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:05:13.02 ID:YQmGKLBxo
魔女「ここ最近毎日じゃない?そんなにこの店が気に入ったのなら、何か買っても罰は当たらないと思うけど」
吸血娘「誰がお前に金なんて落とすか!ファッキュー!」クイッ
魔女「あらお下品」
吸血娘「んじゃ、あのビッチも来たことだしもう帰るわ。また明日なハゲ」
屍男「…あぁ」
魔女「もう帰っちゃうの?夕飯ぐらいはご馳走してあげるのに」
吸血娘「誰がお前の作った飯なんて食えるか!絶対違法な薬品とか入れてるわ!」ダッ
魔女「失礼しちゃうわね。たまにしか使ってないわよ」
屍男(…ん?)
94: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:05:54.46 ID:YQmGKLBxo
魔女「さ、ドラキュラちゃんも帰ったことだし少し遅いけどディナーにしましょうか。今日は私が作るわ」
屍男「…」
屍男「いや、今日は俺が作る」
魔女「え?どうして?交代制って決めたのに」
屍男「当分、飯当番は俺がする。お前は休んでろ」スタスタ
魔女「えー…まあ休めるのはいいけどさ、正直ゾンビくんのご飯ってあんまり美味しくな」
屍男「絶対に俺が作る」
95: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:06:46.51 ID:YQmGKLBxo
…………………………………………………………
………………………………………
吸血娘「ハゲ、お前死んでからどれくらい経った?」
屍男「…急にどうした」
吸血娘「別に、気になっただけ」
屍男「ひと月と少しだな。そろそろこの生活にも慣れてきたところだ」
吸血娘「ふーん...」
吸血娘「なぁ、そろそろ生前の自分の手掛かりとか探さないの?ずっとこの埃くさい店の掃除ばっかしてるけど」
吸血娘「普通だったら最優先に自分の正体を探すと思うんだけど、そんなゆっくりしてて大丈夫なわけ?」
屍男「...」
96: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:08:23.82 ID:YQmGKLBxo
屍男「…最初の一週間は探した…が、何も有益な情報はなかった」
屍男「恐らく、この町は俺との関わりがほぼないのだと判断した。これ以上探すのは時間の無駄だ」
屍男「かと言って、他の地方に行くわけにもいかん…この店を離れたら俺はただの住所不定の無職だからな。そこまでする余裕はない」
屍男「だから今は現状維持だ…ここを離れて生活が安定したら旅でもして見つけるつもりだ」
吸血娘「…なんかお前って変だよな。まるで自分から逃げてるみたいだぞ」
屍男「…そうか?普通だと思うが」
吸血娘「私だったら真っ先に飛び回る。テレビのリモコンをなくしたのならともかく、自分の記憶だもん。そんな悠長な考え方はできない」
97: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:09:22.56 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「自分の過去とか気にならないの?親とか、友達とか」
屍男「…さあな、確かに気にはなるが、そこまでの執着はないな」
吸血娘「じゃあ自分を殺したやつのことは?確か路地裏のゴミ捨て場で目が覚めたんでしょ?」
吸血娘「自殺するにしては明らかに変な場所だし、殺されて誰かに捨てられた以外に考えられないじゃん」
屍男「...」
屍男「…それもあまり興味はないな。殺されたということは、それ相応の理由があったんだろう」
屍男「わざわざ犯人探しをするつもりはない」
98: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:10:26.77 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…」
吸血娘「そう、私だったら犯人を見つけ出して絶対殺すと思う。復讐としてね」
屍男「…それが正常だろうな」
吸血娘「はぁ〜〜〜とんだフニャチン野郎だな。どこまで無頓着なんだか」
屍男「…そういう言葉は使うな。下品だぞ」
吸血娘「…あっ、そういえばさ、さっき生活が安定したら離れるって言ってたけど、もしかしてここ以外に住居が見つかったらそっちに移るつもりなの?」
屍男「…あぁ、いつまでも一人暮らしの女と一緒というわけにもいかんからな。いや、その他の死体もいるか」
屍男「あいつから僅かだが、給料も貰っている。まとまった額が貯まったら出て行くつもりだ」
99: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:11:44.17 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「へぇ〜…ふ〜ん…」
吸血娘「…よし、決めた。ハゲ、今日はあのビッチ何時に帰ってくる?」
屍男「...?今日は遅くなるとか何とか言ってたが、それがどうした」
吸血娘「そ、じゃあ電話するか」ピッ
プルルルルルル…プルルルルルル…
吸血娘『あ、もしもし?私だけど』
吸血娘『今日からこのハゲ、私の家で引き取るから。ってことでよろしくぅ!』
屍男「!?」
屍男「ちょっと待て、何を言って…」
100: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:12:48.82 ID:YQmGKLBxo
吸血娘『は?急に言われても困る?うるさいなぁ…ほら、買い取り代を口座に入金したから確認して、これじゃ足りない?』
吸血娘「―――ん、変われって」ポイッ
屍男「おい、携帯を投げるな。危ないだろ」グッ
『もしもし?ゾンビくん?話はさっき聞いてたと思うけど、そういうことで今日からドラキュラちゃんと暮らすことになったから』
屍男『はぁっ!?』
屍男『おい、お前達は俺をペットか何かと勘違いしているのか?本人の承諾もなしに勝手に話を進めるな』
101: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:13:48.64 ID:YQmGKLBxo
『でもゾンビくんって居候でしょ?とやかく言える立場じゃないと思うんだけど』
屍男『…確かにそうだが、それとこれとは話が別だ。簡単に人を売買するな、こっちの事情も考えろ』
『え?もしかしてドラキュラちゃんのところに行くのが嫌なわけ?そんなに私と離れたくな...』
プツッ
屍男「…この蛇が」ポイッ
吸血娘「お前も投げてるじゃん」グッ
吸血娘「さっ、ってことで今日から私の家に引っ越しな。荷物さっさとまとめといてよ」
102: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:14:58.40 ID:YQmGKLBxo
屍男「...なぜ俺を買ったんだ」
屍男「あいつがふたつ返事でOKしたということは…決して少ない額ではなかったんだろう。そこまでする動機は何だ」
吸血娘「…別に、そろそろまともに使える眷属が欲しかっただけ。だってお前、こんな誰も来ないオンボロ店でも毎日掃除してるじゃん」
吸血娘「だから便利だと思ったの。まあハゲてるのはマイナスだけどな」
屍男「…こちらとしては、ここにいるよりは快適に過ごせると思うが…」
屍男「…その、いいのか。大の男を住まわせるなんて。家族もいると聞いたが」
103: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:15:34.49 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「…またあいつ余計なこと言いやがって」ボソッ
吸血娘「いいよ。今は私一人だけしかいないし。無駄に広いから部屋も困らないしね」
屍男「…しかしだな」
吸血娘「あぁもう!優柔不断だなこのハゲ!中途半端なのはその頭だけにしとけ!いいから荷物まとめろ!」ゲシッ
吸血娘「向こうに行ったら掃除やら洗濯やらもやってもらうんだからな!きびきび動け!」ゲシゲシッ
屍男「…分かった。分かったから蹴るな」
104: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:16:19.82 ID:YQmGKLBxo
……………………………………………………………………
.........................................................
吸血娘「ほら、ここが私の家」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたの。そんなまじまじと見て」
屍男「…いや、思ったより小さいと思ってな。ヴァンパイアというのはもっと貴族的なイメージを想像していた」
屍男「どんな豪邸か城が出てくるのかと思ったら…割と普通だった」
バシッ
吸血娘「今のご時世にそんな目立つもん建てられるかハゲ!このくらいでちょうどいいんだよ!」
吸血娘「というか見た目より中は結構広いんだからな!?いいからさっさと入れ!」ゲシッ
105: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:17:39.09 ID:YQmGKLBxo
チリンチリン♪
屍男「…確かに、悪くはないな」キョロキョロ
吸血娘「ここに荷物置いていいから。トイレと風呂の場所も教えるからついてきて」スタスタ
屍男「ここの家に一人で暮らしているのか?だいぶ持て余しているように見えるが」
吸血娘「そう、一人暮らしするには大きいよ。でも狭いよりマシでしょ」
屍男「親は今はどこにいるんだ?ヴァンパイアと言ってもそこら辺は人間と変わらないと聞いたが」
吸血娘「...」
106: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:18:30.13 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「母親は病弱だったらしくて、私を産んですぐに死んだよ」
吸血娘「父親もつい先月ね」
屍男「......」
屍男「…すまない」
吸血娘「いいよ、父親とはそんなに仲良くなかったし。むしろ家のスペースが空いて助かったくらい」
吸血娘「ほら、ここが風呂。シャワーの使い方分かる?こっちを回してここを押すとお湯で...」
屍男(…いくら親しくなかったと言っても唯一の肉親だったはずだ。精神的なショックは大きいだろう)
屍男(やはり寂しかったのか。孤独を恐れるのは人もヴァンパイアも変わらない…か)
107: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:20:24.34 ID:YQmGKLBxo
吸血娘「お前の作るご飯あんまり美味しくないな。なんか味が雑」モグモグ
屍男「…文句を言うな。ある材料で手早く作ったんだからな。それに俺はコックじゃない」
吸血娘「これならピザとった方が良かったわ。うん、マジで」モグモグ
屍男「…そのわりにはよく食ってるように見えるが」
吸血娘「ふぅ、食った食った。じゃあおやすみ〜」
屍男「…もう寝るのか、眠る時間には早いと思うが」
吸血娘「ふわぁ…ヴァンパイアは昼間はあんまり活動しないの。人間が夜に眠るのと同じでね」
吸血娘「私が寝てる間に掃除と洗濯やっといて...あ、下着は絶対に見るなよ。見たら殺すから…」スタスタ
108: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:21:18.77 ID:YQmGKLBxo
屍男「…」
屍男「…勝手なやつだ」
屍男「はぁ、しかしまた忙しい日になりそうだ。まさか今度はこの家に住むことになるとは」
屍男「片付けるならまずはリビングだな。洗い物も溜まってるし、窓も埃が大量にある。そのあとは二階で…」
屍男「…俺はメイドか。毎日掃除をしてるような気がするぞ」
屍男「...」
屍男「…一体、昔の俺はどこで何ををしていたんだろうな」
109: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/17(火) 21:24:55.41 ID:YQmGKLBxo
今日はここまで
魔女は嫌われているというより出来るだけ関わりたくないと思われていますね
何かそんなオーラが出てるんだと思います
110: 以下、
笑顔が怖いとかやろ
111: 以下、
胡散臭そうなやつとかも近寄りたくないよね
112: 以下、
完璧ハゲなのか半端ハゲなのか気になる
113: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:40:43.39 ID:JIew2oDzo
▢▢▢▢ 一週間後 ▢▢▢▢
吸血娘「ふわぁ…ねむぃ...」ゴシゴシ
吸血娘「今何時だ…って、もう日が沈んでるじゃん。今日はよく寝たなぁ」
屍男「遅いぞ。もうとっくに食事の用意ができている」
屍男「夕食、いや朝食か。早く食え」
吸血娘「あむっ…一週間お前の作ったご飯食べて分かったことがあるわ」
吸血娘「これ、最初は割と普通でどんどん行けるけど、半分食ったあたりで手が止まる」モグモグ
屍男「…それは褒めてるのか?」
吸血娘「貶してるに決まってんだろハゲ。味付けがくどいってことだよ」モグモグ
114: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:41:49.89 ID:JIew2oDzo
吸血娘「ところでハゲ、お前今日はいつ風呂に入った?」
屍男「昼だが」
吸血娘「もう臭くなってるぞ。ちゃんと洗っとけ」
屍男「…そんなに臭うか?あの店にいた時はそこまで言われなかったんだが」クンクン
吸血娘「あのビッチは性根が腐ってるからな。ついでに鼻もひん曲がってるんだろ」モグモグ
吸血娘「ごちそうさま。はい、トマトはお前にやる」スッ
屍男「…相変わらずお前は野菜を残すな。何のために入れてると思ってるんだ」
115: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:42:55.45 ID:JIew2oDzo
吸血娘「だってトマトってクソ不味いんだもん。老婆の腐ってる血みたいな酸味がする」
屍男「…変な例えはやめろ」
吸血娘「さっ、今日は仕事あるしあいつんとこ行くか。会いたくないけど」
屍男「…仕事?」
吸血娘「あれ?言ってなかったっけ?今日は依頼が入ってるって」
屍男「…それは、あの殺しの仕事か?」
吸血娘「それ以外ないでしょ。私がカフェで働いてるように見える?」
屍男「...」
116: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:44:11.19 ID:JIew2oDzo
屍男「...どうしてもやるのか」
吸血娘「どうしてもって、そりゃ金がないとヴァンパイアでも生きていけない世の中だし」
吸血娘「強盗でも何でもやるってなら話は別だけどね」
屍男「...」
吸血娘「もしかして心配してるわけ?私が返り討ちに合わないかとか、どうか」
吸血娘「大丈夫だって、たかが人間に私が負けるわけないでしょ。あんまり舐めないでよね」
屍男(…心配なのは"今"じゃない。それから"先"のことだ)
117: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:45:06.78 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、もしかして人殺しなんてしちゃダメとか言いたいの?言っておくけど、私は人間じゃないんだからね」
吸血娘「だから人間の決めてる共食いの摂理なんて気にならないし、当てはまらない。現に人だって他の種族を殺して富を得てるわけじゃん?私がやってることも」
屍男「…いや、その点はいい。殺すのは悪人なんだろ…なら死んで当然のやつらだ」
屍男「…」
ズキッ
屍男「――――あぁ、そうだ。間違いない」
屍男「…ひとつ、頼みごとをしていいか?」
吸血娘「えっ?」
118: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:45:52.92 ID:JIew2oDzo
魔女「…で、これはどういうことなの?」
屍男「...」
吸血男「い、いやだって…こいつも一緒について来るって言うから」
魔女「ついて来るって…まさかゾンビくんも一緒にやる気?」
屍男「そうだ」
魔女「…」
魔女「ちょっと、ゾンビくんってこんな積極的なキャラだっけ?この件に関しては不干渉で通すと思ってたんだけど」ボソッ
吸血娘「私に言われても知らんし…何か急に来たいって言い出して、ついてくんなって言っても聞かないし...」
魔女「はぁ…ゾンビくんにはこっち側に来てほしくなかったのに」
119: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:46:36.07 ID:JIew2oDzo
魔女「ゾンビくん、本気でやるの?人殺しを」
屍男「…あぁ、覚悟はしている」
魔女「想像以上にきつい仕事よ?相手の命を狙ってるわけだから、向こうも本気で抵抗してくる。計画通りにとんとん拍子で進むことなんてないと思っていいわ」
屍男「…そうだな、だがもう決めたことだ。今更変えるつもりはない」
魔女「…」
魔女「…ドラキュラちゃんも何か言ったら?せっかくのお気に入りを危険に晒すかもしれないわよ」
吸血娘「いやまあ…私がいればそんなに危険じゃないだろ。こいつだって一応怪力と再生能力は持ってるんだし」
吸血娘「でも…単独だとそれだけじゃ危ないかも」
120: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:47:37.90 ID:JIew2oDzo
屍男「足を引っ張るつもりはないし、死ぬつもりもない。自分の身くらいは自分で守れる」
魔女「引く気はないってことね。分かったわ」
魔女「じゃあこれ、今日の標的の資料。一度行ったら分かることも色々あるでしょう…気を付けてね」
屍男「…助かる」
吸血娘「まあ私が大体片付けるから、お前は後ろでボーっとしてればいいよ」
吸血娘「さて今回のやつは…と、また殺人犯か。最近多いな」
魔女「過去に分かってるだけでも三人殺してるわ。二度目の殺人で捕まった時は精神鑑定に引っかかって減刑されてるみたいね」
魔女「で、出所した後すぐに何も面識がなかった一般人を殺害…多分、近いうちにヘマやってまた捕まるでしょうね。こういうタイプは」
121: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:48:16.34 ID:JIew2oDzo
屍男「...」
魔女「潜伏先はもう分かってるわ。後は一人になったところを狙って死体を持って来て頂戴」
吸血娘「うぃー、まだ一人だから良かったな。前は三人もいて運んでくるのが大変だったわ」
屍男「...」
吸血娘「ん?どしたハゲ。まさか今になってやめたくなった?なら帰っても」
屍男「大丈夫だ。問題ない」
屍男(この感情は...)
122: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:49:34.82 ID:JIew2oDzo
吸血娘「あ、そういやハゲ。お前車の運転できる?」
屍男「…多分、出来るんじゃないか?」
吸血娘「多分ってなんだよ。まあいいや。じゃあこいつの住処まで運転よろしく」スタスタ
魔女「車の持ち主の私には一言もないのね。汚さないでよ、あとトランクには触らないこと」
ブルルン…ブルルン…
屍男(…なるほど、身体が操作を覚えてるのを実感する。知識や記憶を忘れても、文字通りに身に付いた技術は覚えてるということか)
屍男「出すぞ。シートベルトを締めておけ」
吸血娘「それ私たちにいる?」
ブゥゥゥン!!!!!!
123: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:51:05.31 ID:JIew2oDzo
………………………………………………………………………………
……………………………………………………
吸血娘「ここがやつの根城のアパートか」
屍男「…どうやって殺すんだ?建物を見ると壁は薄そうだ。銃なんか使ったらすぐ通報されそうだが」
吸血娘「バカか、銃なんて使うわけないだろ。暗殺するんだから物音は最小限、目撃者0、証拠を残さないが最低条件だっての」
吸血娘「ハゲは部屋の前で待機して、終わったら鍵開けるから」
吸血娘「見せてあげる、私の能力…ヴァンパイアの力を」スゥッ
屍男「…ッ!?」
124: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:51:42.84 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ………
刺青男「...」
刺青男「ふぅ、まったくこのコカイン効きやしねぇな。とんだパチモンだ」
刺青男「上物があるっつうんで買ったのにとんだ詐欺だ。ノ野郎、すぐに金を返して…」
モクモクッ…モクモクッ…
刺青男「…アァ?なんかこの部屋煙たいな。炙ってねぇのに」
刺青男「チッ…クソが、窓開けるか」スッ
125: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:52:28.20 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ!!!!!!
刺青男「!?」ビクッ
刺青男(な…んだっ!?急に息が苦しくッ…)
刺青男「ゲハァッ!!」バタッ
刺青男「アッ…アッ…」ピクピク
刺青男(んだ…コレェ…さ、さっきやったコカインの副作用か…?)
刺青男(ざ、ざけんなよっ!あの野郎…い、今すぐ引きずり出して…!)
刺青男「アガッ…グアッ!?」ピクッ
刺青男「」ピクピクッ
刺青男「」ピクッ
刺青男「」シーン
126: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:53:21.14 ID:JIew2oDzo
スゥゥゥゥゥゥッ
吸血娘「よっと」スタッ
刺青男「」
吸血娘「死んだ?」ゲシッ
刺青男「」ピクッ
吸血娘「まだ生きてたか。まあいいや、どうせ血吸うんだし」スッ
ガリッ…
ギュッ…ギュッ…
吸血娘「…チッ、こいつ直前にキメてやがったな。まじぃ」ジュルッ
刺青男「」
127: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:54:12.26 ID:JIew2oDzo
スタスタ
カチッ
吸血娘「もう入っていいよ。終わったから」ガチャ
屍男「…」
吸血娘「さあ、早く死体袋に入れて撤収するよ。あー今日は楽だった」
屍男「…驚いたな。まさか自分の肉体を霧状にできるとは」
吸血娘「どう?ビビった?」
屍男「…あぁ、かなりな」
屍男(この能力があればごく僅かな隙間からでも侵入が可能、相手の呼吸器官に入れば騒音の一つも立てずに殺せるというわけか)
屍男(…確かに、暗殺には持ってこいだな)
128: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:55:19.76 ID:JIew2oDzo
ドサッ
屍男「…しかし大丈夫か?さすがにこの荷物は目立つぞ。アパートの住民に見られたらどうするんだ」
吸血娘「その時は私の力で記憶を消すから問題ないよ。そもそもこんな時間に誰も外に出ないでしょ」
屍男「記憶も消せるのか…便利なものだな」
吸血娘「何てったってヴァンパイアだからねぇ。他にも監視カメラとか写真に写ることはないから証拠も残ることはないし、最終手段として――――」
カチャッ
吸血娘「」ピクッ
屍男(何だ…後ろから物音が)クルッ
大男「ふぅ、スッキリした」ジャー
大男「…ん?なんだお前ら」
吸血娘(なっ…!?)
屍男(トイレにもう一人ッ…!)
129: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:56:04.99 ID:JIew2oDzo
大男「おい、ここで何をやってる?テメェら...」ギロッ
刺青男「」
大男「!?」ビクッ
大男「し、死んでるのかそいつ!?お、お前ら!そこを動くな!」
吸血娘(ぐっ、ミスった…まさかもう一人いたなんて…これなら"アレ"を飛ばせばよかった...)
吸血娘(仕方ない、今すぐ霧になって…)
ダッ
ボキッ
吸血娘「…へ?」
130: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:56:52.00 ID:JIew2oDzo
大男「」プラーン
屍男「…」ガシッ
吸血娘「…えっ?」
吸血娘「えっ…ちょっ…お、お前、何してんの?」
屍男「…首の骨を折った。これなら音が漏れる心配はないだろう」
大男「」
吸血娘「い、いやそうじゃなくて…なんで殺したの?見られただけなら記憶を消すだけでいいんだけど…」
屍男「…やつは拳銃を構えていた。もし後一秒でも遅れていたら、発砲していた可能性がある」
屍男「それに…恐らくこいつは殺しても問題ないはずだ。そこで転がってる刺青の男の仲間だろう」
131: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:57:35.16 ID:JIew2oDzo
吸血娘「た、確かに見るからに一般人じゃない顔つきだけどさ…普通即殺る?」
屍男「…おかしいか?」
吸血娘「ちょっと、ね」
吸血娘「…ま、まあいいや。殺しちゃったもんは仕方ないし、血吸っとくか」
吸血娘「あ、でも死体袋一つしかないもんなぁ…入るかこれ」
ギュッギュッ
吸血娘「入らねぇ」
132: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:58:23.90 ID:JIew2oDzo
吸血娘「…どうしよ。さすがに一人抱えて戻るのはリスク高いな」
屍男「…」
吸血娘「まず一つを袋に入れてトランクに閉まって、また戻ってくる?いやでもなぁ…あいつにトランクは使うなって言われてるし」
吸血娘「かと言って、車内に置いとくのは誰に見られてもおかしくないし...うーん、考え過ぎ?でもなぁ」
屍男「…ひとつ、提案があるんだが」
吸血娘「ん?何かアイデアある?」
屍男「そこの刺青の男…食べてもいいか?」
吸血娘「は?」
133: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/19(木) 23:59:08.76 ID:JIew2oDzo
屍男「大男の方は量が多くて時間がかかるが、刺青の方ならすぐ終わりそうだ」
吸血娘「…え?ちょ、ちょっと待って。食べる?こいつを?」
屍男「…あぁ、食える気がする」
屍男「以前、あの地下室で死体を見た時に…気のせいだと思ったんだが、なぜか食欲が湧いた。目の前にご馳走があるような感覚だ」
屍男「正直に言うと、今でもその死体を見てると腹が減ってくる。恐らく怪物の特性のようなものなんだろう」
吸血娘「お、おう…」
134: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 00:00:47.80 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「本当に食べられるの?いくら血を抜いてるって言っても、人間丸ごとって何十キロもあるんだけど」
屍男「…行ける気がする」
吸血娘「そ、そうか…じゃあ食べれば?でもあんまり食い散らかさないでよ。証拠残したくないんだから」
屍男「…血抜きが済んでるなら問題はない」スッ
刺青男「」
屍男「…」カパッ
屍男(…常軌を逸しているな…死体を食うとは。正しくこれが本当の共喰いだ)
屍男(…一番恐ろしいのは、死体を喰うことにそこまで抵抗がないことだ。今まであまり実感はしなかったが、自分が怪物になっていると改めて理解する)
屍男(…記憶を失う前の俺が見たら、どう思うんだろうな)
135: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 00:01:40.96 ID:RMpcRGXOo
ガリッ…
グチャッ…ガリッ…
グッ…ペチャッ…
屍男「…終わったぞ。そこの大男を詰め込んで撤収だ」
吸血娘「…本当に全部食べた」
吸血娘「いや…血を吸う私が言うのもなんだけどさ、ドン引きだわ...」
吸血娘「というか普通食べる?自制心とか、道徳心とかで止まるだろ…死体食うのはないわ。うん」
吸血娘「骨までムシャムシャ食べて一人丸ごとこの世界から消すって…お前の胃袋どうなってるんだよ…キモ」ボソッ
屍男「…お前にだけは言われたくない」
141: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:35:21.22 ID:RMpcRGXOo
……………………………………………………………
………………………………………………
吸血娘「ってことがあったから、死体が違うけどまあいいよね」
魔女「...」
魔女「事情は大体分かったけど、そのゾンビくんはどこに行ったの?姿が見当たらないけど」
吸血娘「フライドチキン買いに行かせた。あいつがムシャムシャ食ってるの見てたらお腹減ったから」
魔女「そう」
魔女(初仕事、一瞬の判断が迫られるところで冷静に人を殺める方法を導き出し、実行した)
魔女(しかもいくら怪物になったとはいえ、ほんの少し前まで人間だった者が容赦なく人を貪り食らった)
魔女(尋常じゃないわね)
142: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:36:27.07 ID:RMpcRGXOo
魔女「…あら?」
魔女「この大男の顔、どこかで見たことあると思ったら...」ペラッ
魔女「…やっぱり、ギャングの売人じゃない。お薬専門の」
吸血娘「どうりで血が不味いと思った。なら殺しても問題なかったね」
魔女「まあそうだけど…コイツが所属してたギャングがちょっと問題なのよね。最近活発になってる組織の一つだし」
魔女「向こうは面子が全てだからねぇ…顔に泥塗られたってことが分かったら血眼になって犯人を捜すわよ」
吸血娘「別に。この手の輩に手を出すのは初めてじゃないし、あんなの普通の人間と何も変わらないじゃん」
143: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:37:42.90 ID:RMpcRGXOo
魔女「今まではアナタの力で何も残さずにやってきたけど、今回はゾンビくんもいたからねぇ」
魔女「ヴァンパイアは被写体の対象になることはないけど、ゾンビくんだけなら話が別だし…万が一って可能性もないことはないでしょう?」
吸血娘「…もし仮に見つかったとしても、それがどうしたの?"狩人"ならともかく、ただの頭が悪い人間の集団に私が後れを取るって言いたいわけ?」
魔女「ヤり慣れてるドラキュラちゃんならいいけど、ゾンビくんも標的になりえるのよ。正体がバレるとしたら彼の方だと思うし」
魔女「いくら不死身の肉体って言っても限度はあるわ。私にだって彼を無力化させる方法はいくつも考えられる」
魔女「…アナタはもう一人じゃないのよ。少しはパートナーのことを考えてあげなさい」
144: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:38:38.84 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「…っ」ギリッ
魔女「はぁ、ちょっと言い過ぎたわ。脅かすようなこと言ってごめんね」
魔女「これ、今日の報酬。ゾンビくんの初任給ってことで少し上乗せしといたから、二人で遊ぶなり美味しいもの食べるなりしてきなさい」
吸血娘「…もう帰る」バシッ
魔女「最後にひとつ」
魔女「記憶を失ってもゾンビくんはゾンビくんよ。もしそれ以上を求めるなら…後がつらいことになるわよ」
吸血娘「…何言ってるか全然分かんない」バタン
魔女「…」
145: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:39:53.14 ID:RMpcRGXOo
ガチャッ
屍男「…遅かったな。先に帰ってたぞ」
吸血娘「あのババアのが長かったんだよ。まったく年寄りは長い話が好きだね、ほんと」スタスタ
吸血娘「ところでチキンは?」
屍男「テーブルの上だ」
ガサガサッ
吸血娘「んー♪んまっ!夜はこういう油っこいものが食べたくなるよなぁ!」
屍男「…不健康だな」
吸血娘「ほらハゲ、お前にも一本やるよ」ポイッ
屍男「食べ物を投げるな。行儀悪いぞ」バシッ
146: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:41:12.87 ID:RMpcRGXOo
屍男「…」パクッ
屍男「…」ボリボリッ
吸血娘「…」ジー
屍男「…何を見ているんだ」
吸血娘「いや、フライドチキンも骨まで食べるんだなって」
屍男「…そんなどうでもいいことを考えていたのか」
吸血娘「…」
吸血娘「なぁ、ハゲ。お前本当にこの仕事やっていくの?今回限りじゃなくて」
屍男「…あぁ、そのつもりだが」
147: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:42:35.82 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「…そうか。私はどうでもいいけど、あのビッチはちょっと心配してたぞ。私はどうでもいいけど」
吸血娘「傷を負っても霧になれば治る私はいいけど、お前は再生っていう手順が必要なんだぞ。絶対安全とは言い切れない」
吸血娘「そこまでのリスクを冒しても…続ける気なの?」
屍男「…」
屍男「…正直に言うが、俺が今日参加したのは…別にお前が心配だったとか、守りたいとかそういう類いの感情じゃない」
屍男「ただ、この手で悪党を殺したかったんだ。なぜかは分からんが奴等の所業を聞くと…腸が煮えくり返るような、決して高潔ではない感情が湧いてくる」グッ
吸血娘「...」
148: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:44:22.47 ID:RMpcRGXOo
屍男「人を殺すという行為は正常ならもっと深く、重い、罪深い行為なんだろうな。だが、今日あの大男を殺めた時や、刺青の男を食った時は…何も感じなかった」
屍男「むしろ清々しい達成感すら感じた…これが怪物になった影響かどうかは知る由もないが、異常ということは確かだ」
屍男「何か、言葉で表すのが難しいんだが…悪を殺すことに使命感があるような気がする。我ながら狂気に歪んだ思想だ」
屍男「だが…この感情は確かだ。記憶を失い、全てを忘れ、何も残ってない空っぽの俺に残ったのは…殺意だけだ。正義もクソもない、純粋で真っ直ぐな殺意がな」
吸血娘「...」
屍男「…幻滅したか?」
149: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:45:18.71 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「ごめん、後半何言ってるかよく分かんなかった。もう一回言って」
屍男「...」
吸血娘「とにかく、お前は悪いやつをぶっ殺したいってこと?それの何が変なの。人間ってみんなそう思ってるんじゃないの?」
吸血娘「私だって、普通の人間を手にかけるのはさすがに悪いと思うけど、仕事の相手となったら容赦はしないよ。これの何が変なの?」
屍男「…だから、言葉で例えるのが難しい...」
吸血娘「あーもう!!!!まどろっこしいんじゃボケェェ!!!!!!」ドンガラガッシャーン
150: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:46:11.65 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「もっと分かりやすい言い方にしろよ!んなジジババみたいな遠回しの小難しい話し方はやめろ!!腹立つ!」
吸血娘「結局お前は何がしたいんだよ!」
屍男「…憎むべき悪をこの世から根絶」
吸血娘「言い方ァ!!!!」
屍男「…悪党をぶち殺したい」
吸血娘「それでいいんだよ、分かりやすいじゃん。最初からそう言えよ、時間がもったいない」
吸血娘「何か自分が特別だと思ってるみたいだけど、口に出さないだけでみんなお前と同じことを考えてるからな?勘違いすんなよ」
151: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:47:09.78 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「私もいつも被害者には同情するし、犯人を殺すときは仇を討ってあげるみたいに思ってる時もある」
吸血娘「感情ってそういうもんじゃないの?そりゃ悪いヤツが相手なら殺意だの敵意だのがバリバリ出るよ」
屍男「…そういうものか」
吸血娘「うんうん、だからお前は変じゃない。ただの動いて喋る死体だ。自信持て」
屍男「…馬鹿にされてる気がする」
吸血娘「じゃ、いろいろモヤモヤしたものがスッキリしたことだし…ん!」スッ
屍男「…なんだ?その拳は」
152: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:47:40.56 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「何って、こうやって拳を合わせるんだよ。よくアニメとかコミックであるだろ」
吸血娘「これから一緒に仕事やるんだろ?パートナーならこれぐらいはやるでしょ」
屍男「…あぁ、あれか。何となく分かる
屍男「…これでいいのか?」スッ
コンッ
吸血娘「お前、手冷たいな」
屍男「…死体だからな」
吸血娘「で、拳合わせた後は何すればいいの?」
屍男「…俺に聞くな」
153: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:48:27.04 ID:RMpcRGXOo
吸血娘「まあいいや!記念にピザ食お!ピザ!」
吸血娘「つーことでハゲ!ピザ買ってきて!ダッシュで!」
屍男「…今、何時だと思っているんだ。どこの店も閉まってるぞ」
吸血娘「24時間営業のピザ屋があっただろ!早く買ってこい!」
屍男「…人使いが荒いヴァンパイアだ」
吸血娘「お前は人じゃなくて死体だろ!ハゲ!」
154: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/20(金) 22:50:21.37 ID:RMpcRGXOo
…………………………………………………………
………………………………………
………………………
シャワアアアアアアアアアアアアアアアアアア…
屍男(…もうあの目覚めた日から半年経ったのか)
屍男(あいつの家に住み始めて、仕事を続けていたが…記憶の手掛かりは一切見つからない)
屍男(…まあ今となってはもうそこまで重要なことでもないがな)
屍男「…少し長風呂し過ぎたな。そろそろ出るか」キュッ
160: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 17:56:47.72 ID:Bd82ooWmo
屍男「出たぞ」フキフキ
吸血娘「お前、風呂長すぎ。何分入ってるんだよ、ファストフードなら全品作って出せるくらいの時間だぞ」
吸血娘「あ、もしかして育毛運動でも」
屍男「してない」
屍男「俺はもう寝るぞ、寝る時は電気を消しておけよ。前も付いてたんだからな」スタスタ
吸血娘「へいへいわぁーってるって」フリフリ
屍男「…本当に分かっているのか」
161: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 17:57:35.92 ID:Bd82ooWmo
ジリリリリリリリリ!!!!!!
屍男「…」パチッ
屍男「...」スクッ
吸血娘「Zzz...」グースカ
屍男「…結局付けっぱなしか」ピッ
屍男「しかもまたソファで寝て…仕方ない」グッ
吸血娘「Zzz…」ズルズル
ポイッ
吸血娘「Zzz…イテッ…んー…Zzz...」ドンッ
屍男「…ベッドまでくらい自分で歩け」
162: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 17:58:25.50 ID:Bd82ooWmo
……………………………………………………………………
…………………………………………………
屍男「…」ペラペラ
魔女「あら?ゾンビくんがうちの本を読んでるなんて珍しいわね」
屍男「…客が来ないからな。暇潰しだ」
魔女「なら他のところで働いてもいいのに。わざわざまたここに来るなんてよっぽど私のことが恋しかったのかしら?」
屍男「…記憶喪失の俺を雇うところなんてあると思うか?もしあったら是非教えてほしいものだが」
魔女「それでも、夜の仕事やってるんだし別にここで働く必要はないんじゃない?」
屍男「…」
屍男「…家で何もせずにぐうたら過ごすのは性に合わないんでな」
163: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 17:59:52.16 ID:Bd82ooWmo
屍男「それに、ここにある本は市場に出回ってるそれとはかなり異なる。もしかしたら記憶に関することも書いてあるかもしれない」
魔女「ふーん…私としては店番してくれると助かるからいいんだけどね。死体溶かしたり、調合する時間も増えるし」
屍男「…一つ、聞きたいことがあるんだが」
魔女「何かしら?」
屍男「…なぜ、ここまで大量に殺して警察は黙っているんだ」
魔女「いきなり仕事の話ね。急にどうしたの」
屍男「俺がこの仕事を始めてからだけでも、殺した犯罪者の数はそこまで多いとは言えないが、決して少ないと言える数でもない」
屍男「しかも、殺しをやってるのは俺だけじゃない。ここに死体を運んでくる連中の数と今までの年数も入れたら…どんな馬鹿でも異常事態だと分かるはずだ。誰かが犯罪者を消してるとな」
164: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:00:45.84 ID:Bd82ooWmo
屍男「…しかし警察が勘付いてる様子も報道も見られない…おかしいんじゃないか」
魔女「…ゾンビくんはどう考えてるわけ?」
屍男「…お前が内部と通じていて、事件を揉み消していると思っている」
魔女「ぷっ」
屍男「…何がおかしい」
魔女「ご、ごめんなさい…ちょっとおかしくて、そんな真剣な顔で言うもんだから」プルプル
魔女「…残念だけど、私は無関係よ。最も警察やらが介入してこない理由はいくつか見当がつくけど」
165: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:02:15.78 ID:Bd82ooWmo
魔女「考えられる候補は三つ。気付いていないか、追えないか、黙認しているか」
屍男「…三つだと?」
魔女「まず一つは私達の存在自体に気付いていない。まあこれは余程向こうがおバカさんじゃないとあり得ないわね」
魔女「私がこの商売を始めて二年は経つわ。いくら証拠を残してないと言っても、消えてるのは事実なんだし、ゾンビくんの言う通り普通は違和感を持つ人が誰かいるはずよ。この国の番犬が相当なおまぬけさんじゃない限りは」
魔女「そして二つ目は私たちの存在自体は察知しているけど、動けない。私としてはこの説を押すわ」
屍男「...」
魔女「ドラキュラちゃん達は人間と違って、超常的な力を操る。いくら警察の捜査能力が優秀だとしても、それは人間相手の話だからね」
166: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:03:38.99 ID:Bd82ooWmo
魔女「それに加えて、ドラキュラちゃんみたいに画像媒体や映像媒体に干渉できる子は少なくない…あ、これは個人情報だから言っちゃダメか。忘れて」
魔女「とにかく、人間が追跡可能な範囲を超えてるってこと。ヘマをしない限りは捕まる心配はないと思うわ」
魔女(…まあこれに関しては、その筋の専門家に気付かれると不味いんだけどね)
魔女「そして最後は私達の存在を察知していて、証拠も掴んでいるけど手が出せない状態。つまり、殺しを黙認しているってことね」
屍男「…待て、それに関してはあり得ない。向こうにメリットがないだろ」
魔女「確かに、いくら犯罪者と言ってもそれを捕まえるのがあの人達の仕事…割に合わないと思うわ」
魔女「でもね、もし彼らの中で怪物や幽霊、人外といった存在が触れてはいけない禁忌…タブーになってるとしたら?」
167: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:05:05.49 ID:Bd82ooWmo
屍男「…どういうことだ」
魔女「そのままの意味よ。警察は秩序を維持する組織、でもこれは人間社会での話…つまり人間じゃない者には手出しできないってこと」
魔女「例えば幽霊が人を殺したとして、その幽霊に法律が通じると思う?出来るわけないわよね。そういうことよ」
魔女「法の力で縛られるのは人間だけ、ドラキュラちゃんやゾンビくん達が関わってる事件は不審死や行方不明と言った原因不明の未解決事件として無視せざるおえない…どう?」
屍男「…馬鹿馬鹿しい。なんだそれは。つまり国が、いや世界自体が人ならざる者の存在を認めていて、尚且つそれに触れないようにしているのか?」
屍男「出来の悪い陰謀論だな…矛盾がいくつもあるが、もし仮にその話が事実ならこの社会は腐ってるも同然だ。人間ではない者が好き勝手に暴れても誰にも裁かれないということじゃないか」
168: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:06:44.54 ID:Bd82ooWmo
屍男「…そんな理不尽な話があってたまるか」
魔女「…裁く、ね」ボソッ
魔女「あら、裁いてくれる人ならいるじゃない」
屍男「それは一体誰だ?」
魔女「神様♪」
屍男「……...」
屍男「…アホらしい、俺はもう帰るぞ。閉店の時間だからな」
魔女「え?閉店まであと30分くらい残ってるんだけど」
屍男「どうせ客なんて誰も来ないだろ」スタスタ
169: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:07:18.75 ID:Bd82ooWmo
魔女「なら、ドラキュラちゃんに伝言頼まれてくれる?」
魔女「今日もお仕事お願いできる?ってね」
屍男「」ピクッ
屍男「…今日もあるのか?昨日殺してきたばかりだぞ」
魔女「普通は二日連続なんてないんだけどねぇ…今回は事情がちょっと特別で、早急に片付けないといけないのよ」
魔女「その分、報酬は弾むつもりよ?無理なら他の人に頼むからいいけど」
屍男「…分かった。伝えておく」
170: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:08:15.73 ID:Bd82ooWmo
ガチャ
吸血娘「おかえり」ムシャムシャ
屍男「…もう起きてたのか。珍しいな」
吸血娘「たまには早起きしてもいいでしょ。あ、このゴミ捨てといて」ヒョイッ
屍男「…自分のゴミくらいは自分で片付けろ」
屍男「あの女からの伝言だ。今日もまた依頼があるそうだが…どうする?」
吸血娘「え、今日もあんの」
171: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/21(土) 18:08:42.18 ID:Bd82ooWmo
吸血娘「二日連続って初めてだな…何か言ってた?」
屍男「…特別だのどうとか、断っても問題はないらしいが」
吸血娘「んーそっか、でもこういう特殊なターゲットだと大抵いつもよりは報酬がいいんだよねぇ」
屍男「…あぁ、それはあいつも言っていたな」
吸血娘「よし、じゃあやるか。どうせ退屈してたところだし」
屍男「…いいのか?そんな簡単に引き受けて」
吸血娘「いいのっ、最近はマンネリな食事ばっかりだったからね。少しはスリルがないとやりごたえがないよ」
175: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:52:41.17 ID:NOYNXeaSo
カランカラン♪
吸血娘「うぃーっす、来たぞ」
屍男「...」
魔女「待ってたわ。じゃあさっそく、今日の仕事の内容を説明するわね」
魔女「今日の標的はこれ、顔に見覚えはあるかしら?」スッ
吸血娘「あるわけないだろ。誰だこのおっさん」
屍男「…俺もだ」
魔女「ま、そりゃそうね。じゃあ『ヘヴンズ・ドア』って名前はご存知?」
吸血娘「何かの漫画で見た気がする」
屍音「…俺もだ」
176: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:53:52.52 ID:NOYNXeaSo
魔女「そっちじゃないんだけど…まあいいわ」
魔女「この男は『ヘヴンズ・ドア』という名前のカルト団体の教祖様」
吸血娘「あぁ、宗教ね」
屍男「...」
魔女「単刀直入に言うとこの団体、近いうちに集団自殺するらしいのよ。死んで天国に旅立つっていうよくあるやつ」
魔女「だからその教祖を殺して、自殺を止めるってのが今回の仕事の依頼」
吸血娘「なんだ、ただの人間相手か。結構普通だなぁ…全然難しくないじゃん」
屍男「…いいのか?教祖を殺しても」
177: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:55:27.30 ID:NOYNXeaSo
屍男「信者の思想は理解出来ないが、教祖を殺してもすぐ後を追う可能性もある。殺せば解決するというのは少し安直過ぎると思うが」
魔女「それもそうなんだけど…だからと言って他に止める手立てがないのよね。言葉が通じる相手でもないし」
魔女「この手の宗教に洗脳されてる人ってのは大体は集団催眠に近い状態になってることが多いのよ。みんなが教祖を神と同一視して、崇めているのを見てるうちに自分もその一因になっている」
魔女「だから、まずは教祖が絶対の神じゃないってことから証明しないといけない。自分達と同じように暴力で簡単に死ぬちっぽけな存在ってことを分からせないとね」
魔女「…まあトップを殺したところで状況が変わらないって可能性も否定出来ないけど」
魔女「だから今回の仕事は死体を処理しなくていいわ。下手に消すと先に行ったとか変な想像されるのも困るからね」
魔女「この銃で頭を撃ち抜いてそのまま帰ってきて」スッ
178: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:56:17.69 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「集団自殺ねぇ。みんなで死んで何がしたいんだか。命を粗末にするやつが天国なんて到底行けると思えないんだけど」
魔女「銃はゾンビくんに預けるわ。安全装置の外し方は知ってる?」
屍男「…あぁ、何度か使ったからな。問題ない」
吸血娘「ちょっと待て、なんで私じゃないんだ」
魔女「だってドラキュラちゃんって道具使って殺すの嫌いでしょ。いつも血吸ってるし」
吸血娘「…それはそうだけど、何かハゲに劣ってるみたいでムカつく」
屍男「…遊びじゃないんだぞ」
179: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:57:32.33 ID:NOYNXeaSo
魔女「あとこれも、教団が暮らしてる宿舎までの地図と建物内の見取り図」
魔女「教祖の男はこの部屋にいると思うわ。もしいなかったら…アドリブで何とかして頂戴」
吸血娘「敷地広くない?家…じゃないよなこれ」
屍男「…公共施設のように見えるな」
魔女「それ、人里離れてる廃校になった小学校をその教祖が買ったのよ。教団が暮らせるように改装したらしいわ」
魔女「現に今ではここに50人近い信者が集団生活してるらしいし」
屍男「…なるほどな。一筋縄ではいかなさそうだ」
吸血娘「そう?私の力があれば楽勝だと思うけど」
180: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:58:19.19 ID:NOYNXeaSo
魔女「二人とも気を付けてね。正直、この教団に関しては分からないことが多いのよ」
魔女「私が知ってる情報もこれでほぼ全て、世界中に派生組織がいくつもあるってことは分かってるけど全容がつかめない」
魔女「挙げ句の果てには…神をこの世に降臨させるとかいうよく分からないことも企ててるみたいなのよねぇ。まあこれはさすがに妄想だと思うけど」
吸血娘「完全にイカれてるじゃん」
屍男「…まともではないことは確かだな」
魔女「中で何をやってるか分からないから不気味なのよねぇ…もしかしたらオカルト染みたことにも手を出してるかもしれないから、用心は怠らないで」
181: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 21:59:24.59 ID:NOYNXeaSo
ブゥゥン
吸血娘「ビッチはあんなこと言ってたけど、よく考えたら結局はただの頭のおかしい集団だよね。髪を降臨させたがってるやつならここにもいるし」
吸血娘「とても私たちの相手になるような力はないよ」
屍男「…武装はしていても、猟銃程度だろうしな。訓練をされてるわけでもないし戦闘力はそこまで高くないだろう」
屍男「…だが、一つの信念を持った集団というのは厄介だ。何をやらかすか分からん」
吸血娘「どゆこと?」
屍男「自分の命を捨ててでも成すべき目標を持ったやつらが何十人もいるんだぞ。やろうと思えばテロでも暗殺でも何でも出来るはずだ」
屍男「…こちらの想像を飛躍してる考えを持っているからな。相手の動きを予測して殺す俺達から見たら天敵に近い存在だ」
182: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:00:11.89 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「でも所詮は人間じゃん。ハゲならともかく、ヴァンパイアの私が負けると思うの?」
屍男「…まあ人間の範囲であればお前を倒すことは不可能だろうな」
屍男「…人間だけならな」
吸血娘「?」
吸血娘「あ、見えてきたぞ。あの建物がそうじゃないの」
屍男「…車を止めるぞ」クイッ
吸血娘「そこから見える?教祖がいる部屋は三階の西側の部屋らしいけど」
屍男「…電気は付いてないな」
吸血娘「まあもう真夜中だしね。寝てるか」
183: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:00:47.83 ID:NOYNXeaSo
屍男「…どうする?そのまま行くか?」
吸血娘「うん、もし寝てるならこっちも楽だしね。サクッと殺しに行きますか」
サッサッサッ
プーーーーーン
吸血娘「人の気配は…ないな。予定通りに裏口から侵入するか」スッ
カチッ
ガチャ
吸血娘「ほい、開いたぞ」
屍男「…本当に便利だな。その霧は」
184: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:02:18.33 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「えーっと…信者達が寝泊まりしてるのがこの先の一階と二階だな。三階には教祖以外の人間はいないか」
屍男「…好都合だな。銃声は響くだろうが、距離があるなら気付かれないかもしれん」
吸血娘「どうでもいいけどさぁ…普通こういうのってサイレンサーとか付いてるんじゃないの?めっちゃ音出るんじゃないのその銃」
屍音「…このサイズだと22口径だろうな。そこまでは大きくないはずだ」
吸血娘「気が利かないビッチだわ…もしバレたらどうすんだよ」
スタスタ スタスタ
屍男「…!」スッ
吸血娘(え、なに?急に止まって)
屍男「...」クイッ
185: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:02:46.71 ID:NOYNXeaSo
監視カメラ『』ジー
吸血娘(あぁ、カメラね。私と一緒ならカメラに映ってもノイズで姿が見えないから大丈夫っと)グッ
屍男「...」フリフリ
屍男「…」グルッ
吸血娘(えぇ!?わざわざ迂回すんの!?)
吸血娘(め、めんどくさ…どんだけ慎重なんだよ)
コツッ…コツッ…
屍男「...」
吸血娘(ここが三階か。あそこの奥の部屋だな)
186: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:03:30.52 ID:NOYNXeaSo
吸血娘(部屋にいるかどうか確認する)グッ
屍男「…」コクッ
プーーーーーン
吸血娘(人間の呼吸音が一つ、体温は…40代から50代の中年の男か。当たりだな)
吸血娘(ビンゴ、今から鍵を開ける)クイッ
屍男「...」
スッ
カチッ
ガチャッ…
187: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:04:12.09 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「…」
屍男「…」
「…」スースー
吸血娘(寝てるね、後は任せた)
屍男(…分かっている)
「…」ピクッ
「…時間だ」スッ
吸血娘(やばっ!起きた!)
屍男(…どうする)
188: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:04:52.32 ID:NOYNXeaSo
教祖「...」チラッ
教祖「なんだ、貴様らは」
吸血娘「おっと、あんまり大きな声出さないでよね。これ、見えるでしょ?」
屍男「...」チャキッ
教祖「―――強盗か?それとも私を殺しに来たのか?この薄汚れた悪魔が」
吸血娘「」イラッ
吸血娘「あくまァ?私だって自分が善人だとは思ってないけどさ、アンタここの信者共を道連れにして集団自殺するつもりなんでしょ」
吸血娘「んなゴミクズ野郎に悪魔呼ばわりされたくないわ。むしろ人を惑わしてるアンタの方が悪魔だよ」
189: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:05:49.55 ID:NOYNXeaSo
教祖「――――ハハッ」
教祖「私が惑わしている?いいや、違うな。我が兄弟たちは自ら望んで父や母の元に行こうとしているのだ」
教祖「我々はこの旅路を成功させなければならない。天の国への扉の鍵を開けるのが私の使命、天命なのだ」
吸血娘「…だーめだ。完全にぶっ飛んでるわ。聞くだけ時間の無駄だな」
吸血娘「もうさっさと終わらせて帰ろう」
屍男「…あぁ」チャキッ
教祖「待て、なぜ分からないのだ?今から我々が行う儀式はとても重要なものだ。この世界にとっても」
190: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:06:38.59 ID:NOYNXeaSo
教祖「貴様達は勘違いをしている。これは自殺という罪深い行為ではない。天の扉を開く儀式だ」
教祖「肉体は滅びても、魂は天の国へと渡る。そこは楽園だ、慈悲深き父や母と共に永遠に生き長らえる」
教祖「扉を開けば、この世界にもその恩恵が溢れるはずだ。なぜ邪魔をする?」
屍男「…言ってることがよく理解出来ないが、確かなことが一つある」
屍男「お前は善人ではない。ただの異常者だ」
教祖「――――どうしても、私を殺すのか」
屍男「…お祈りの時間はもう済んだか?」
191: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:07:33.71 ID:NOYNXeaSo
教祖「分かっていないな。私を殺しても何も止まらない。既に始まっているのだから」
教祖「私の死は終わりではない。先人達のように、この骸が、きっと彼らの旅路の道しるべになる」
教祖「後悔するだろう。いつか我が兄弟の爪と牙が、貴様達の肉を喰らい、抉るその刹那に、自分の愚かさを」
教祖「アーメ――」
バンッ!!!バンッ!!!
教祖「」
屍男「…」
吸血娘「終わったね」
192: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:08:06.57 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「最後にこいつ何か取ろうとしてたな、なんだこれ?」
屍男「…マイクじゃないか。恐らく校内に放送して助けを呼ぼうとしたんだろう」
吸血娘「人間くさいっていうか、小物っぽい最後だったな。結局は命乞いまでしてたし」
屍男「…早く撤収するぞ。銃声で人が来るかもしれん」
吸血娘「分かってるって…」
ヒラッ
吸血娘「…ん?何か落ちた?」
193: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:11:04.96 ID:NOYNXeaSo
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
 1978 ○
 1987 ×
 1993 ×
 1994 ×
 1997 ×
 2000 ×
   To the next level.
■■■■■■■■■■■■■■■■■■
194: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:11:51.08 ID:NOYNXeaSo
吸血娘「…なにこれ?」
吸血娘(数字と○×が書いてるけど…意味不明の暗号じゃん。まったく分からん)
吸血娘(…まあ深い意味はないか。頭のおかしいやつの部屋にあるだし、これを書いたのも頭がおかしいやつなんだろ)
吸血娘(早くここから出るかっ!気持ち悪っ!)
195: ◆gqUZq6saY8cj 2017/10/22(日) 22:12:45.31 ID:NOYNXeaSo
ブゥゥン
吸血娘「誰にも見つからなかったね。いやぁ楽な仕事だった」
屍男「...」
吸血娘「なんだどうした、暗いな。頭の輝きがなくなってるぞ」
屍男「…いや、これで良かったのかと思ってな」
吸血娘「なんで?依頼は成功したし、何も問題はないだろ」
吸血娘「私たちが関わるのはここまで、ここから先はあそこの信者が決めることだよ」
屍男「…そうだな」
屍男(あの教祖が最後に残した言葉…『既に始まっている』か)
屍男(…考え過ぎか)
197: 以下、

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