【モバマス】姫川友紀「その手に掴むもの」back

【モバマス】姫川友紀「その手に掴むもの」


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2:
P(…? 今、ノックと一緒に女の子の声がしたような…お客さんかな)
P「はいはーい、どちら様でしょう」
「お邪魔します」
P「あれ、君は確か…」
「どうも、お久しぶりです。友紀さんのPさん」
――

4:
【近所の公園】
ワーワー
姫川友紀「ほらほらー! もっと腰低くしないと、またトンネルだぞー?」カーン
「おねーちゃん、つよく打ちすぎだってばー」
友紀「弱音を吐くなぁ! そんなんじゃ甲子園はまだまだだぞ!」
「おれたち高校生じゃないんだけど」
「こうしえんはもう終わったよぉ」
友紀「まだ春のセンバツもある! 来年の夏に向けた闘いは、もう始まってるんだよ!」
友紀「闘魂を、込めろぉーー!!」カキーン
??「……あ! 見つけた」
5:
「友紀さーん!」
友紀「んん? あたしのノックを受けたがってるのは誰…」クル
秋月涼「お久しぶりです、友紀さん」
友紀「……涼?」
涼「はいっ」
友紀「涼だ! うわぁ、ビックリした!」
涼「えへへ、また会えましたね」
6:
友紀「ほんと、久しぶりだねぇ!」
涼「半年ぶり…いや、もっとでしょうか」
友紀「うんうん! 元気だった?」
涼「えぇ、元気です! ……元気、ですけど」
友紀「?」
涼「友紀さん、何をしてるんですか?」
7:
友紀「何って、ノックだよノック! 受けてく?」
涼「え、遠慮しておきます…」
友紀「そっかー」
涼「…どうして、ノックなんてしてるんです?」
友紀「ふっふっふ……この辺の野球少年たちに有名な"ご近所やきゅうおねえさん"とは、ズバリあたしのことなのさ♪」
涼「は、はぁ」
友紀「たまにこうして、練習に付き合ってあげてるんだよっ」
「練習試合にも、前に飛び入りしたよねー!」
友紀「ああ、そんな日もあったねぇ!」
涼「何をしてるんですか……」
8:
「おねーちゃん、この人だぁれ?」
友紀「あたしの友だち! 秋月涼…涼ちゃんっていうんだ!」
涼「ど、どうも」
「なんか見たことある気がするなー」
「りょーちゃんも野球するの?」
涼「いや、私は…」
友紀「参加してっても良いんだよっ」
涼「あ、いえ、その…今日は用事が」
友紀「用事?」
涼「はい。友紀さんに、ちょっとお話があって来たんです」
9:
友紀「あたしに?」
涼「もし、忙しいようなら……いつか、また、出直しますけど」
友紀「ううん! そんなことないよ」
「おねーちゃん行っちゃうのー?」
友紀「ごめんね、今日はここまでってことで! また今度!」
「またねー」
「りょーちゃんも、ばいばーい!」
涼「ば、ばいばい」
友紀「じゃあ、ベンチにでも座ろっか!」
涼「はい!」
10:
――

友紀「はい、スポドリ!」
涼「あ、ありがとうございます」
友紀「いやぁー、良い汗かいたなぁー!」ゴクゴク
友紀「……っぷはぁっ! うまい!」
涼「ふふ。運動した後って、いつもより美味しく感じますよね」
友紀「お、分かってるじゃん!」
涼「何だろう、身体に染み渡るっていうか」
友紀「汗をかいたらその分、ちゃんと水分取らないとね!」
11:
涼「この公園には、よく来るんですか?」
友紀「うん! さっきみたく少年たちに混じったり……後は、みんなと遊びに来たり」
涼「事務所のみなさんと?」
友紀「そうそう。よく誘ってるんだよね、キャッチボール!」
涼「…ふふ」
友紀「ん? どしたの」
12:
涼「友紀さんのPさんが、言った通りだったので」
友紀「へ?」
涼「さっき事務所に寄ったんです。……でも、友紀さんいなくって」
友紀「そ、そうだったんだ」
涼「そうしたら『多分ここの公園で誰かと野球やってるだろ』って、Pさんが教えてくれたんです。正解でした」
友紀「あちゃ?、ごめんね……」
涼「いえいえ。それと、伝言が1つあります」
友紀「伝言?」
13:
涼「『こっちが良いって言うまで、今日は事務所に戻って来ないこと』って」
友紀「えっ」
友紀「……え、えぇっ?! なんで、なんで…?」
涼「ふふ、どうしてでしょうね」
友紀「どうして…? あたし、なにか怒らせるようなことしちゃったかなぁ……」
涼「あ、大丈夫です。怒ってた訳じゃなくって」
友紀「じゃあ?」
涼「色々と、準備があるみたいですよ」
友紀「準備…」
14:
友紀「何の準備……? ね、ねぇ、なんであたし帰っちゃだめなのかな」
涼(『今日が何の日かすら覚えてないかもしれないから、ちょっと脅かしてみると良いよ』、なんてことも言ってたけど。本当に大正解だ…)
涼「……あっははは」
友紀「ちょ、ちょっと! 笑ってないで教えてよぉ」
涼「す、すみません……ふふっ、面白くって、つい」
友紀「あたしは面白くない…」
涼「実は、私の用事とも被ってるんですけどね」ゴソゴソ
15:
涼「はいっ! 友紀さん」
友紀「へ? なに、この包み」
涼「お誕生日、おめでとうございます」
友紀「たんじょうび…?」
友紀「……あーっ!! 今日、あたしの誕生日かぁ!」
涼「やっぱり気付いてなかったんですね…」
16:
友紀「うわわ…、貰っちゃっても良いの?!」
涼「はい、どうぞ」
友紀「ありがとー! ……ハッ。準備ってもしかして」
涼「事務所でちょっとしたパーティをするための、準備の時間が欲しいそうですよ」
友紀「そうだったんだ…そういうことかぁ…」
涼「ふふ。みんなでお祝いなんて、雰囲気の良い事務所ですね」
友紀「昨日、事務所でこっそり缶ビール開けたのがバレたのかと思ったよ……良かったぁ」
涼「あはは…それは……」
17:
友紀「それにしても、あたしにナイショにすることないのに」
涼「い、一応教えるつもりはあったって言ってましたけど」
友紀「そりゃあ、気付いてなかったあたしもあたしだけどさー。言ってみれば、あたしは今日の主役でしょ? ヒーローインタビューだよ?」
涼「ヒーロー?」
友紀「主役を差し置いてパーティの準備なんて楽しそうなことしちゃって!」
涼「友紀さんがいない方が都合が良いからでは…?」
友紀「プロデューサーってば全く! 今夜は、朝までつきあってもらわなきゃ」プンスコ
18:
友紀「とにかく、ありがとね!」
涼「どういたしまして」
友紀「……開けても良いかな?」ウズ
涼「良いですよ?」
友紀「わあい!」
友紀「…おぉー! キャッツのタオルと、リストバンド!」
友紀「え、え? なに? 涼ちゃん、もしかして野球知ってる? キャッツのファンだったの?!」
涼「あ、いえ、野球自体はそんなに。友紀さんがキャッツ好きって聞いてたので…」
友紀「そっかそっか、なるほど」
涼「なんだかすっごく普通のものになっちゃいましたけど…」
友紀「そんなことないよっ! 嬉しいなぁ!」
19:
友紀「早使うね!」スッ
涼「…ふぅ、良かった」
涼「チョコにしようか悩んだんです、本当は」
友紀「チョコ?」
涼「イベントの時にお世話になったお礼も兼ねて、何かプレゼントしよう…って決めてて。またチョコを作ってプレゼントにしようかなって思ったんです」
友紀「お礼だなんて、そんな…」
涼「改めて、友紀さん。あの時は、お世話になりました」
友紀「う、う?ん……お礼を言われるようなことは、何もしてないんだけどなぁ」
涼「私、たくさん学ばせていただきましたよ?」
20:
涼「一度決めたら、迷わずとことんやりきること。ファン1人1人に応える気持ちが大事だってこと。それから…」
友紀(む、むず痒い…!)
涼「…あの旅でまた1つ、強く成長できました。本当に、感謝しているんです」
友紀「そ、そっか」
涼「友紀さんがグイグイ引っ張ってくれたからこそ、旅行もお渡し会も上手くいったんだと思います」
涼「だから、お礼を言わせてください。ありがとうございます」
友紀「……うん。そこまで言われたら、どういたしましてだね!」
21:
涼「……だけど、やっぱり形に残る物の方が良いかなと思って。今日はなんとかバレンタインってことで、変な意味になってもいけないですし」
友紀「そっかぁ」
涼「大した物じゃないですけど、喜んでもらえたのなら良かったです」
友紀「すっごく気持ちのこもったプレゼントだよ? ありがとう!」
涼「……」
涼「それと、友紀さん。今日は……、」
22:
友紀「涼はっ?」
涼「へ?」
友紀「涼の誕生日は、いつなの?」
涼「わ、私ですか…」
友紀「うん! 貰ったんだから、あたしも何かプレゼントしたいなーって」
涼「そんな、お気になさらず…」
友紀「気にするの!」
涼「いや、でも」
友紀「でもじゃない!」
23:
涼「…えーっと」
友紀「はーやーくー!」
涼「……あ、」
友紀「あ?」
涼「明日、なんです」
友紀「そっか! 明日ね? 明日、あし、た……」
友紀「あした?」
涼「はい」
24:
友紀「今日は、何日だっけ」
涼「9月の14日……って、友紀さんの誕生日でしょう」
友紀「そ、そっか。あたしのたんじょうび」
涼「はい」
友紀「で、明日が」
涼「15ですね」
友紀「誰が誕生日だって?」
涼「私です」
友紀「たんじょうび…」
25:
友紀「…ちょっとぉ!」
涼「うわあ?!」
友紀「何でもっと早く言ってくれないの!?」
涼「ひえぇ……そ、そんなこと言われても」
友紀「危ないところだった……! みすみす見逃し三振するところだったよ……!」
涼「その、あまり気にしないでですね」
友紀「こうしちゃいられない!」
涼「えっ」
26:
友紀「今から一緒に、プレゼント買いに行くよっ!」
涼「え、ええぇ!?」
友紀「ホームランを届けるんなら、本人の好みに合わせて狙い打ちした方が良いに決まってるもんね!」
涼「いやあの、ほんと大丈夫なので…」
友紀「もらってばっかりは、あたしの主義じゃない! 欲しくないの?」
涼「貰えるのなら、うれしい…ですけど」
友紀「それに、事務所に戻っても、なんだか準備中なんでしょ?」
涼「それは、まぁ」
友紀「しばらく戻れないんなら、あたしも都合が良いし!」
涼(僕の都合は???!!?)
27:
友紀「ね、何が欲しい?」
涼「いきなり言われても…」
友紀「おねえさんが何でも買ってあげるよ」
涼「うわぁ、そこはかとなくアブナイ雰囲気が」
友紀「なにが?」
涼「あ、いえ……何でも」
友紀「何も無ければ、家に余ってる応援グッズ一式にしちゃうけど」
涼「えぇ…。嬉しいような、嬉しくないような…」
28:
涼「そ、そんなすぐには出てきませんよ」
友紀「ふーん。あたしだったら、いっぱい思いつくのに」
涼「…例えば、何ですか?」
友紀「そうだなぁ。まず、新しいユニフォームは外せないよねっ!」
涼「ユニフォーム……。あ、ステージ衣装のことですか?」
友紀「違う違う、キャッツのユニフォームだよ」
涼「え…」
友紀「新しいシーズンが始まるとね、毎年違ったユニフォームを着て選手はプレイするわけ」
友紀「ホーム用とビジター用でも違ったりしてさ。新しいのは、やっぱり揃えたくなるんだ!」
涼「そ、そうなんですか」
29:
友紀「それと、新しいバッティンググローブかなぁ」
涼「ばってぃ…?」
友紀「打席に入る時の手袋! あるのとないのとじゃ全然違うんだよ?」
涼「へぇー」
友紀「そうだ、グローブ磨くセットも新しくしなくちゃ。クリームにオイルでしょ、それに……」
友紀「あぁっ! ねこっぴーのパーカーが先週発売したんだった! あれ、着てみたいんだよなぁー」
涼「あはは……見事に野球ばかりですね」
涼(キャッツのグッズをプレゼントして、正解だったかも?…)
友紀「当然! あたしあるところに野球あり、だもんね」
30:
涼「欲しいものがそんなにあるなんて、すごいなぁ」
友紀「へへっ。アイドルやるんなら、これくらい貪欲にやらなきゃ!」
涼「貪欲…」
友紀「絶対打つぞ!って、ガツガツ喰らい付いていかないと」
涼「……なるほど」
友紀「涼には、そういうのないの?」
涼「と、いうと」
友紀「趣味とか好きなことで、これだけはハズせない! っていうの」
涼「趣味かぁ……うーん」
31:
涼「料理は、よくしますね」
友紀「……料理」
涼「はい。お休みの日には下ごしらえもして、けっこう本格的に。よく作りすぎちゃって困っちゃうんですけどね」
友紀「へ、へえ?……」
涼「大根のお味噌汁とか、上手にできると柔らかくてとっても美味しいんですよ?」
友紀「そうなんだ……みそしる……」
32:
涼「友紀さんは、お料理したりするんですか?」
友紀「ふぇぁ?! あたしは……ま、まぁ、やるよ? うん」
涼「そうなんですか! 自分で1からしっかり作るの、楽しいですよね」
友紀「う、うん! た、楽しいよね、クッキング! ええと…おにぎりでしょ、おつまみに、チョコも…」
友紀「……レモンのはちみつ漬けって、料理に入る?」
涼「え? ま、まぁ、入れても良いと思いますけど」
友紀「だ、だよねーっ! セーフセーフ! あたし、料理できてる! よし!」
33:
涼「……あ、そういえば」
友紀「?」
涼「料理で思い出したんですけど。エプロン、買わなきゃいけないんだったな…」
友紀「エプロン?」
涼「はい……前から使っててもうボロボロだったんですけど、洗濯したら破れちゃって」
友紀(エプロンって、ぼろぼろになるまで使うものなんだぁ)
涼「一応、縫えば使えないこともないんですけど。どうせなら新しくしようかなって思ってたところだったんです」
友紀「…ほほう」
34:
友紀「なら、決まりで良いんじゃないかな」
涼「良いんですか?」
友紀「うん! こんなに良いもの貰ったんだから、あたしにも何かプレゼントさせてよ!」
涼「……なら、お言葉に甘えることにしようかな」
友紀「よーし決定! そうと決まれば、ダッシュで行くよ?」
涼「…」
35:
涼「……本当に、大丈夫かな」
友紀「何が?」
涼「一緒に外出してるのなんて見られたら、友紀さんに迷惑じゃないかなって思って」
友紀「へ? 迷惑って?」
涼「えっと…パパラッチでもされて、アイドルなのにデートしてるなんて変な噂にでもなったら……」
友紀「…女の子2人で遊びに行くのって、そんなに変かなぁ」
涼「……ハッ」
36:
涼(ぎゃおおおん! や、やってしまったあぁぁ!)
涼「ぁいや! その、事務所が違うのに一緒に遊ぶのは、おかしいかなと思ったというかっ 何というかっ!」
友紀「そう?」
涼「あ、あはは…」
友紀「……」
涼(うわあぁ やばい! 友紀さん、絶対変な目で見てるよぉ…!)
37:
友紀「別に、大丈夫だと思うけど」
涼「…え」
友紀「あたしだって、他の事務所の人ともよく飲みに行ったりするよ?」
涼「そっ、そうですか!?」
友紀「うん。楓さんとか、美優さんとか」
涼「それくらい、普通なんですか!」
友紀「フツーフツー」
涼「そうなんだぁ、あー、良かったなぁ!」
38:
友紀「それに、涼ちゃんは女の子なんだよね?」
涼「は、はい」
友紀「何かあっても、女子2人で遊んでるようにしか見えないって!」
涼「ですよねっ」
友紀「だから大丈夫、大丈夫!」
涼「そうですね、心配しすぎてました……あは、あはは…」
涼(あ、危ない危ない…なんとかなったかな)
39:
涼(……ん、あれ?)
涼「友紀さん、今なんて…、」
友紀「それじゃあ気を取り直して! 行こっか、涼ちゃん!」
涼「ぎゃおおん! …ひ、引っ張らないでぇ?……!」
――

40:
友紀「……と、いうわけで。そこそこ大きいショッピングモールに来ました!」
涼「どこ向いて喋ってるんですか?」
友紀「何でもない!」
友紀「エプロン、どこに置いてあるかなぁ」
涼「雑貨のところかな……あ、あそこに案内板がありますよ」
友紀「雑貨、雑貨…これ?」
涼「2階みたいですね」
友紀「よし、レッツゴー!」
涼「おー!」
41:
【キッチン雑貨コーナー】
友紀「おぉー、カワイイのいっぱいあるね!」
涼「そうですね。あ、このミトンいいなぁ」
友紀「ミトン! 良いよねぇ。フィット感といい、軽量感といい……」
涼「買っちゃおうかな」
友紀「一緒に買ってあげようか?」
涼「でも…」
友紀「良いの良いの! 2対2の大型トレードってことで、ね?」
涼「……ありがとうございます!」
友紀「さてさて、肝心のエプロン置いてある場所は…あっちだっ」
42:
友紀「涼ちゃんにはどんなのが似合うかな」
涼「うーん、緑とかは好きですけど」
友紀「緑、みどり……おっ、これとか」パッ
涼「ちょ、ちょっとかわいすぎないですか?」
友紀「あー、確かに。フリフリしすぎてるかな」
涼「もうちょっとシンプルな方が好きかも」
友紀「シンプルなやつ……むむむ」
43:
友紀「……これっ」スッ
涼「無地っ!?」
友紀「ちょ、ちょっとシンプルすぎたか…」
涼「すごいや、もはやただの布ぐらい何も描かれてない…」
友紀「次! 次のやつ!」
友紀「エプロン1つ選ぶのもむっつかしいんだなー……あっ!?」
涼「どうしたんですか?」
友紀「こ、これはッ」
44:
友紀「キャッツ公式、ねこっぴーエプロン、だと……!」
涼「ねこ…?」
友紀「しかも、地味に今年のバージョン…。なんてことだ…生きていたのか……」
涼「ええと、それもキャッツのグッズなんですか?」
友紀「うん! あたしの持ってるエプロンとは、別のやつみたい。ほら、ここのマークの位置が違ってて…」
涼「へ、へぇ」
涼(よく分からないけど…)
友紀「ヤバい、ヤバいよこれ……欲しくなってきた」
涼「あはは…」
友紀「涼ちゃんのエプロン買いに来たはずが、こんなものに出会えるなんて…」
45:
友紀(エプロンあんまり使わないから、持っててもしょうがないかな。…でも、欲しい)
友紀(いつか使う日のために、今買っておくのが正解かも。着る機会なんてあるか分かんないけど)
友紀(着てるの見たら、何て言うかな。新しいのだよって、気付いてくれるかなぁ……)
友紀(……って、いやいやっ! なんでプロデューサーに見せる必要があるの?!)
友紀(そりゃ、見てほしいのはやまやまだけど。別に、今それ関係ないし!)
友紀(っていうかエプロン姿見せるって何!? どんなタイミングでエプロン着て台所に立つっていうのさ!)
友紀(意味分かんない! 満塁のファーストゴロで1塁踏みに行くぐらい意味がわからないよ! あたしのばかっ! 何のための前進守備だ!?)
 ひめかわは こんらんしている ▼
46:
涼「あの、友紀さん?」
友紀「……ハッ。な、何かな」
涼「なんだか顔が赤いですけど、大丈夫ですか」
友紀「ぅぁ……へ、へーきへーき! 料理のイベントでは着ないといけないもんね、エプロン!」
涼「イベント?」
友紀「お仕事なら仕方ないよね、うんうん」
涼「…ええと。良く分かりませんけど、それよりも」
47:
涼「それ、買うんですか?」
友紀「う、うん。悩んでる」
涼「だったら、私にも貰えませんか」
友紀「え?」
涼「2つ買ってお揃いにしましょうよ」
友紀「でも……良いの?」
涼「はい! 友紀さんの好きな球団なら、私も興味あります」
48:
涼「それに、普通のじゃなくこういうものの方が、友紀さんから貰ったーって感じがあって嬉しいですから!」
友紀「そ、そう? 涼ちゃんがそう言うなら……」
涼「お願いします! …って、貰う側なのに、偉そうにすみません…」
友紀「……あはは。涼ちゃん、ほんといい子だねぇ」
友紀「うん、買っちゃおっか! 自分へのプレゼントだ!」
涼「はいっ」
友紀(……よしっ)
49:
アリガトウゴザイマシター
友紀「さて、目的はこれで達成した訳だけど…」
涼「まだ何かありますか?」
友紀「んー…せっかく来たのに、このまま帰るのも勿体ないなーって」
涼「なら、適当に回ってみましょうか」
友紀「だねっ! よーし、姫川探検隊、出発!」
50:
――

涼「靴売り場、ですね」
友紀「スパイク売ってるかなぁ」
涼「いやあ…流石に置いてないかと」
友紀「そっかー」
涼「スポーツショップにはあると思いますよ?」
友紀「あ、確かにそうだね。次はそこに行こっか!」
涼「はい。…あ、このシューズカッコいいなぁ」
友紀「ほぉー、涼ちゃんこういうのが趣味なんだね。あたしは……」
51:
――

涼「友紀さんは、スカートとかって穿きます?」
友紀「普段着では、あんまり…」
涼「あ、やっぱり」
友紀「動くのに邪魔だし、なんかスースーするのが気になるっていうか」
涼(わかる)
友紀「まぁ、着てみればそれなりに気に入ってくる時がほとんどなんだけどね」
涼(……わかる)
友紀「だから、こういうスカート売り場、しっかり見たことないんだ」
涼「なるほど…」
52:
友紀「ステージではけっこう着てるし、衣装の方は着慣れてきたつもりなんだけど」
涼「ぼ……私は、衣装もまだ慣れない時が」
友紀「そうなの?」
涼「蒸れるし、ちょっとこすれるというか、食い込むのが苦手で……」
友紀「あぁー…。たまにいるよね、食い込んでくる手ごわいのが」
涼「そうなんです! 私だけじゃなく、みんなそうなのかなぁ」
友紀「んー、今度みんなにも聞いてみよう」
53:
――

友紀「アクセサリーかぁ」
涼「友紀さん、こういうの好きですか?」
友紀「うーん。買うのはヘアピンと、たまにネックレスぐらいかな」
涼「…ヘアピン」
友紀「ピンだけは、けっこう数持ってるんだよ? あたし」
涼「そうなんだ…」
涼(プレゼント、その手があったのか……自分が普段使わないから、思いつかなかった)
友紀「チャラチャラいっぱい付けるの、あんまり好きじゃなくってね」
涼「ふふ、運動する時に邪魔だから、ですか?」
友紀「あははっ、そうかも!」
54:
友紀「涼ちゃんは?」
涼「そうですね……私もあんまり付けないので、自分で買ったことはないかもしれません」
友紀「お。ってことは、貰う側だな?」
涼「はい、ファンの方々からよく頂くんです、アクセサリー」
友紀「モテモテだねぇ、このこのー」
涼「あはは…」
55:
涼「でも、結局付ける機会が少ないから、ちょっと申し訳なくって」
友紀「それ分かるなぁ?。色々貰えるのはすごく嬉しいんだけどね」
涼「LIVEで衣装着る時に、付けれるものは少しでも付けるようにしてるんですけどね。腕輪とか、ブローチとか」
友紀「へぇ…」
涼「プレゼントちゃんと受け取ってます、ありがとうって。ファンの方に伝えられたら良いと思って」
友紀「な、なんて思いやりの心だ……」
友紀(その手があったか、なるほど。賢いなぁ)
涼「思いやりだなんて、そんな…」
友紀「アイドルの鑑だね。…おっと、これは」
56:
涼「腕輪、ですか?」
友紀「うん。ちょっと目に入ったんだけど、どうだろ」
涼「ひまわりの腕輪かぁ。良いですね」
友紀「あたし、ひまわり好きなんだ!」
涼「ふふ。夏っぽい感じ、ぴったりです」
友紀「でしょ?? "サンフラワー"ってユニットもやっててさ」
涼「ユニット…」
友紀「うん。早苗さんでしょ、夕美ちゃんに唯ちゃん、それに仁奈ちゃん! 良いチームだなって自分でも思うよ」
57:
涼「……実は私、ユニットって組んだことないんですよね」
友紀「あ、そうなんだ?」
涼「今までずっと、ソロの活動がほとんどでしたから」
友紀「あたしも、基本的には1人でやってくのが多いからなぁ」
友紀「でも、ユニット活動も良いものだよ? 他にも組んでる子は…智香ちゃんでしょ、晴ちゃん、幸子ちゃんに紗枝ちゃん、それから……」
涼「け、けっこういますね」
友紀「ふふ、まぁそれなりに。みんなと一緒に練習してステージに上がれるのって、それだけで楽しいし、心強いっていうかさ」
涼「ふむふむ」
友紀「何より、みんなで心を1つにできるって、なんだか嬉しいなって。やってて思った!」
58:
涼(ユニットか。事情が事情だし、正直あんまり考えたことなかったけど)
涼「……ちょっと羨ましいかも」
友紀「涼ちゃんもいつか、いいユニット仲間に会えるよ、きっと!」
涼「そう、だと良いですね」
友紀「あれ…なんか他人事?」
涼「そ、そんなことないですよ! ユニット、組めると良いなぁ」
友紀「……ま、いっか」
友紀「よし、次行こう!」
涼「はい!」
59:
――――――
―――

60:
友紀「お買いもの、終わりー!」
涼「見て回るだけでも、楽しかったですね」
友紀「色々目移りしちゃって、ちょっと首が…」
涼「あはは。私もです」
61:
友紀「大分時間潰したつもりなんだけどなぁ」
涼「連絡、ありましたか?」
友紀「うーん……電話もメールも来てない」
涼「そうですか」
友紀「呼ばれてないってことは、まだ帰っちゃダメってことだよね」
涼「ですね…」
友紀「……そうだっ、涼ちゃん、これからまだ時間ある?」
涼「はい? えぇ、大丈夫ですけど」
友紀「ちょっと行きたいところがあるんだよね」
涼「どこですか?」
62:
友紀「すっごく気持ちいいところ!」
涼「……えっ」
友紀「なんか、身体動かしたくなってきちゃってさ!」
涼「ちょ、あの、それって…」
友紀「さあ行くよ! 付いてきて!」
涼「ぎゃおおおん! ちょっとぉー!?」
――

63:
【バッティングセンター】
友紀「ヘイヘイ、カモーン! ピッチャーびびってるぅー!」キンッ
涼「……あの、友紀さん?」
友紀「ちょっと待って涼ちゃん、まだボール来るから!」
涼「あ、はい」
涼(気持ちいいところって…。どこかと思えば、バッティングセンターか…)
友紀「今日はオレ流ならぬ、あたし流 神主打法! ぃよいしょーー!」カーン!
64:
涼「……良い当たりだなぁ」
友紀「おっ、分かる?」
涼「あっいえ、何となく。ボテボテより、上に飛んでく方が良いのかなと思って」
友紀「ふふ、良いセンスしてるね……っとぉ!」カキーン!
テーレッテレー♪
涼「えっ?」
友紀「おっ、ホームラン! 1本目?!」
涼「当たった…」
65:
友紀「おじさーん、今のホームランあたしねーっ!」
「おぉーやるねぇ。はい、1回無料券」
友紀「すぐに使っても良いかな?」
「はいよ」
友紀「よっしゃー!」
涼「すご…」
友紀「やったね、バースデーアーチ! 今のホームランは、涼ちゃんに捧げる……よっ!」カキン!
涼「あっ、これも惜しい!」
66:
友紀「ちぇ、2打席連続とはいかなかったかぁ」
涼「上手なんですね、友紀さん」
友紀「まぁね?。ちっちゃい頃からずっとやってた、しッ!」キーン
涼「小さい頃?」
友紀「うん、お兄ちゃんとキャッチボールしたりね」
涼「へぇー…」
友紀「未来の日本代表、なんて昔は言われてたもんよ!」
涼「そうだったんですか」
涼「そんなに上手なら、野球部でも大活躍だったんだろうなぁ」
友紀「………っ、」
ボスッ
67:
涼(あれ、見逃しかな)
友紀「……う、うん。そう、だね」
涼「友紀さん、野球部だったんですよね?」
友紀「うん、入ってたよ。…マネージャーで」
涼「あれ? でもさっき、ずっと野球やってたって…」
友紀「…ぇと。選手としては、中学生ぐらいまで……だったかな。あんまり覚えてないや、あはは……」
涼「そうなんだ。すごいなぁ!」
涼(中学生っていうと、僕ぐらいの頃の話かな。僕、友紀さんぐらい運動できる自信ないよ……うん、すごいや)
友紀「………」
68:
涼「ボール、来ませんね」
友紀「……ぁ。そ、そっか、もう終わりか。ボーっとしてた」
涼「? どうかしたんですか」
友紀「ううん、何でもない!」
友紀「そ、それより……ほら! 次は涼ちゃんの番!」
涼「えぇっ、私?! 友紀さん続けてできるんじゃ…」
友紀「良いから良いから! 1回分奢ったげる」
涼「でも私、やったことないですよ?」
友紀「大丈夫、とりあえずやってみなって! 楽しいから!」
涼「そ、そうですか。じゃあ……」
友紀「ふぁいとっ」
69:
――

涼「ぜ、全然打てなかった…」
友紀「うーん、腕だけのスイングになっちゃってたねぇ」
涼「すみません…」
友紀「謝ることないって! 練習すれば、上手く打てるようになるから!」
涼「うぅ」
友紀「次、あたしのスイング見てて? もっとこう腰を使ってだね……」
涼「はい、今ケージから出ま…」
ガッ
涼「あっ」
70:
涼(やば…、足元のでっぱりに躓いて……!)
友紀「体重は右足に残し…え?」
涼(目の前には友紀さんが……ぶつかる……っ!)
友紀「ちょちょっ、涼ちゃ、あぶなっ
むにゅ
友紀「ひゃっ…」
71:
涼(ゆ、友紀さんに受け止めてもらう形になってしまった)
涼(両手に、何か柔らかいものがふにゅっと…ってそんなことより!)
涼「ご、ごめんなさい友紀さん! 大丈夫ですか?!」
友紀「ぅ、うん…だいじょうぶ、だけ、ど……」
涼「すみません、足元躓いちゃって…!」
友紀「あ、あぁ、うん。そう、なんだ」
涼「…ホッ、怪我がなくて良かった」
友紀「……うん」
72:
友紀「…え、えーっと…」
涼「や、やっぱりどこか痛みますか?」
友紀「……ぁ、あたしの番かなっ! 打ってくる!」
涼「あ、はい。どうぞ」
友紀「よ、よーし…打つぞ?……」
友紀(今、触られたよね…?)
涼(やっぱり本物は、触り心地がちょっと良いんだなぁ)
友紀(ま、まぁ。涼ちゃんが相手なら、女の子に触られたみたいで割と平気、かな。うん)
73:
友紀「……って、そんなわけあるかぁっ!」グワラゴワガキーン
涼「わぁっ すごい打球」
テッテレー
涼「またホームラン…」
友紀「あぁぁああ、もうっ! なんかすっごいモヤモヤする!」
友紀「涼ちゃん!!」
涼「は、はいっ」ビク
友紀「今日はこれから、あたしの気が晴れるまで付き合ってもらうから!!」
涼「えぇっ?! それ、どういう…」
友紀「青春の、バカヤローーッ!!!」ガッキーン
――――
――

74:
《Side R》
涼「た、ただいま、公園…」
友紀「いやぁ、楽しかったねー!」
涼「そうですね…はは……」
友紀「いっぱい打てて、満足満足! ほんっと気持ちよかったよ!!」
涼(結局友紀さんは、あれから4回もホームランを打って大暴れだった)
涼(『今年の三冠王はいただきだ!』…なんて言ってたけど。三冠王って何だろう。ホームランをたくさん打てばなれるのかな)
友紀「んー、ちびっこ達はもう帰ってるかぁ」
涼「そうですね…って、まだやるつもりだったんですか」
友紀「いやぁ…流石にちょっと疲れちゃったし、もう無理だよ」
75:
友紀「さてと。買い物もしたし、いっぱい遊んだし。今日はここらで解散かな」
涼「ですね」
友紀「明日はどこ集合にする? プレゼント渡すの、またここで良いかな」
涼「明日ですか…」
友紀「それとも事務所にしよっか。今度は、あたしが涼ちゃんとこに遊びに行こうかな」
涼「……それも、良いですけど」
友紀「あ。でもあたし、朝はダメかもないかもしれない」
友紀「ほら、明日起きれる自信なくって。できれば、集合も午後からだと嬉しいんだけどな……」
76:
涼「…えっと、」
友紀「ん? どしたの」
涼「その、大変身勝手なんですけど」
涼「……貰うんなら、今が良いかな、なんて」
友紀「今? 別に構わないけど…。明日じゃなくって?」
77:
涼「……実は明日、大事なミーティングがあるんです」
友紀「大事な…」
涼「武田さんのこと、覚えていますか」
友紀「うん。『プロ野球ハイライト』の」
涼「『オールド・ホイッスル』ですよ…」
友紀「あっはは! 冗談冗談」
涼「…武田さんと、うちの社長と。私の今後を左右する、大事な決め事をするんです」
涼「番組への出演ももう決まってますし、これからのスケジュールも埋まってしまってて」
涼「だから、明日からは時間が取れなくって……」
友紀「…そうなんだ」
78:
友紀「じゃあ、はいっ」
涼「!」
友紀「へへ。1日早いけど…誕生日おめでと、涼ちゃん」
涼「…ありがとうございます。大事に使います!」
友紀「うん! ねこっぴーをよろしくね!」
涼「…あの、」
友紀「?」
涼「……。友紀さん、ちょっと良いですか」
79:
友紀「ど、どしたの? 急に改まって」
涼「今日会いに来たのには、理由があったんです」
友紀「…あ、うん。プレゼント、ありがとね!」
涼「あぁ、いえいえ、どういたしまして……って、それだけじゃなくて」
涼「誕生日もそうですし、バレンタインの時お世話になったお礼をしに来たっていうのも、もちろんあるんですけど」
友紀「お礼なら、さっき……、」
涼「1つだけ、謝らなければいけないことがあるんです」
友紀「…謝る」
涼「はい」
80:
涼「さっきも言いましたけど、明日からすごく大事な用事があるんです。私にとって、すごく大事な」
涼「もう少ししたら、私を取り巻く環境が色々変わって…しばらくドタバタするし、周りも騒がしくなると思うんです。きっと」
友紀「ふんふむ」
涼「今を逃したら、もう友紀さん達とは、しばらく会えなくなるような…そんな気がして」
涼「だから、今日直接会って伝えなくちゃ駄目だと思いました」
81:
友紀「……前にも、こんなことあったよね」
涼「はい」
友紀「それは、必ず謝らなきゃいけないことなの?」
涼「アイドルとして、そんなのは些細なことだからと。前に友紀さんは、私を止めてくれましたね」
友紀「…そうだったかな」
涼「だからこそ。今日の私は…アイドルじゃない、秋月涼として。友紀さんに伝えに来たんです」
友紀「涼として…」
82:
友紀「もしかして……アイドル辞めちゃう、とか」
涼「いえ。アイドルは、辞めません」
友紀「そ、そっか。良かった」
涼「…そうだな。まずはそちらの報告からしなきゃいけないですね」
涼「私、別のプロダクションに所属することになったんです」
83:
友紀「…移籍するってこと?」
涼「あっいえ、移籍ではなく……名義を残して掛け持ち、というか」
友紀「??」
涼「今後は、2つのプロダクションに在籍しながら活動することになる…というか。あんまり上手く説明できないんですけど」
友紀「球団に所属しながらプロ野球の選手会にも入る、みたいな感じかなぁ」
涼「ええと…? まぁ、そんな感じだと思います……多分?」
友紀「ふーん?」
84:
友紀「…ねぇねぇ、どこの事務所に行くの?」
涼「それは、」
友紀「涼ちゃんぐらいのアイドルなら、大手かな。765さんとか?」
涼「…」
友紀「あっ! もしかして…あたしたちのとこだったりして!」
友紀「謝るって、うちに来るの秘密にしてたから、とかかな?」
友紀「うちの事務所、ルームがあんまりおっきくないからなぁ。涼ちゃんが来たら、また狭くなっちゃうね! あははっ」
85:
涼「……すみません、友紀さん」
友紀「…うん」
涼「とても、とっても魅力的なお話なんですけど。…友紀さんの事務所ではないんです」
友紀「じゃあ?」
涼「まだ、言えません」
友紀「まだ…」
涼「正式に発表があるまでは、私の口からは…」
友紀「……そっか」
涼「きっと、ビックリさせてしまうから」
86:
涼「謝りたいというのも、それに関係してることなんです」
友紀「…」
涼「私、友紀さんに隠していたことがあるんです」
涼「友紀さんだけじゃありません。今まで私を見てくれていた人、みんなに」
友紀「……どんな、隠し事?」
涼「…それも言えません。今はまだ」
友紀「まだ、か」
涼「近い内に必ず、表沙汰になることなんですけど…上の偉い人たちから、箝口令が出てしまって」
友紀「…そういう業界だもんね」
涼「本当なら、この話題を出すことすらNGかもしれませんが…友紀さんなら内緒にしてくれると信じて、言いました」
涼「私からは何も言えないくせに、こんな話を持ち出してしまって…本当にすみません」
87:
涼「自分でも分かってるんです。曖昧にぼかして、今はただ謝ることしかできないなんて……そんなの、ズルいですよね」
涼「でも、どうしても謝りたかったんです。みんなに嘘をついて隠している自分が許せなくて」
涼「友紀さんやお世話になったみなさんに、本当の自分を隠したまま、もうずっと会えなくなるんじゃないかと思ったら……そっちの方が、絶対に後悔しそうで」
友紀「それで、わざわざあたしに会いに」
涼「あっ…えっと、プレゼントを渡したかったのも、本当なんです…。ついでとかではなくってですね……」
友紀「ふふ、分かってるよ。ありがと」
涼「本当に…すみませんでした」
涼「許してください、だなんて言いません。ただ、どうしても謝りたかった。それだけなんです」
友紀「そっか」
涼「……ごめんなさい」
88:
友紀「…許すもなにもさ、」
涼「え?」
友紀「別にあたし、怒ってなんかないけど」
89:
友紀「誰にだって、隠し事の1つや2つあるって」
涼「で、でも」
友紀「大切なのは、相手を大切に想う気持ちがあるかじゃないかなぁ」
友紀「謝りたいって気持ち、涼ちゃんからはしっかり伝わったよ」
友紀「あたしたち、友だちで、仲間でしょ?」
涼「友紀さん……」
友紀「だったら、気にすることなんて何もないんだよっ」
涼「…良いんですか?」
友紀「うん! 気持ちを真っ直ぐ投げ込んできてくれて、ありがとね涼ちゃん」
90:
涼「……どうしても都合が合わなくて、七海さんと裕美さんには、直接は会えませんでした」
友紀「なら、いつかあたしから言っておくよ」
涼「お願いします」
友紀「…1つだけ、良いかな」
涼「? 何でしょうか」
友紀「その新しい事務所ってさ…、」
91:
友紀「涼ちゃんは、行くの嫌?」
涼「っ!」
友紀「本当はやりたいことがあるのに、仕方なく……とかだったら。それは良くないよね」
友紀「涼ちゃんはそこでちゃんと、やりたいことできる? 心に嘘、ついてない?」
涼「……」
92:
涼「…嫌なんかじゃ、ありませんよ」
涼「むしろ、自分から進んで入りたいと思ったくらいなんです」
友紀「うん」
涼「私、夢がありました。憧れというか、目標というか…」
涼「アイドルになったのも、その夢を叶えるためだったんです」
涼「大変だったけど、自分なりに少しずつ進んできて……あと一歩のところまで来てるんです」
涼「夢を実現させるチャンスが、ようやく転がり込んできたっていうか」
友紀「…それが、その事務所なんだ」
涼「はい。このチャンス、逃す訳にはいかないんです」
93:
涼「……諦めたくない」
友紀「…っ!」
涼「きっとこれからも、辛かったり苦しいことはたくさんあるかもしれない。所詮は、叶わない夢かもしれない」
涼「みんなに受け入れてもらえるか不安もあるけど、それでもやりたいんです!」
涼「夢は、夢じゃ終われないから」
涼「…僕が背負う夢は、もう僕だけのものじゃないから」
94:
友紀「……そっか。なら、大丈夫だね」
涼「心配してくれて、ありがとうございます」
友紀「良いの良いの♪」
友紀「ねえ、涼ちゃん」
涼「はい?」
友紀「……いや、涼っ!」ガシッ
涼「は、はいっ」
涼(右手を、掴まれた)
95:
友紀「…」ギュ
涼「友紀さん?」
友紀「……」ニギニギ
涼(手を調べられている…?)
涼「あ、あの」
友紀「うん。良い手してるね、やっぱり」
涼「へ?」
友紀「大きくて、力強くて、ガッシリしてて……」
96:
友紀「これが…さっき、あたしの…っ」ゴゴゴ
涼「いだ、いだだだ! ちょ、友紀さ……?!」ミシミシ
友紀「……とにかく。立派な手だよ」
友紀「涼の手は、ちゃんと夢を掴める手だ」
涼「そう、でしょうか…あいてて……」
97:
友紀「大丈夫、涼ならできる。きっと叶えられるよ」
友紀「正直で、真っ直ぐで、すっごくいいヤツだもん。涼の頑張りは、きっとみんな見てくれてる!」
涼「はい…」
友紀「それに、アイドル応援団長の、このあたしがついてるんだからね」
涼「…えへ、頼もしいなぁ」
友紀「でしょ?? へへっ」
98:
友紀「涼の夢、あたしは応援する!」
涼「……ありがとうございます」
友紀「周りの目なんか気にしないで、強気でガンガンかっと飛ばしていけば良いんだよ!」
涼「大事なのは心、ですよね」
友紀「うんうん! 目指せ、アイドル界の二刀流! ってね」
涼(ッ!)
友紀「頑張るんだよ、涼!」
涼「…はいっ」
涼(友紀さん。あなたは、やっぱり……)
99:
――

友紀「……もうこんな時間かぁ」
涼「あ…そうですね。日が暮れちゃう」
友紀「そろそろ、あたしも帰って良い頃かな?」
涼「えぇ、きっと」
友紀「今日ぐらいは、事務所でビールもおっけーだよね♪」
涼(昨日も飲んだんじゃあ…)
涼「…帰る前に、Pさんに連絡してみると良いんじゃないでしょうか」
友紀「うん、そうする! 楽しみだなぁ?」
100:
涼「それじゃあ、私も帰ろうかな」
友紀「……そうだね」
涼「はい」
友紀「今日は、本当にありがとね。涼ちゃん」
涼「……こちらこそ、ありがとうございます。とっても楽しかったです」
友紀「へへっ。武田さんとか、夢子ちゃんにもよろしく」
涼「分かりました。お2人にも、どうかよろしく伝えてください」
友紀「まっかせて!」
101:
涼「では、お元気で」
友紀「またねー♪」フリフリ
涼「また…」
テクテク…
涼「…」
涼「……っ」ピタ
102:
涼「…友紀さん!」クル
友紀「お?」
涼「聞いてください、友紀さん! 私……ううん、」
涼「僕は! これからも、僕の夢を追い続けますっ!」
友紀「!」
103:
涼「何があっても負けません!」
涼「今よりも、もっともっとカッコよくなりたいからっ」
友紀「…うんっ」
涼「夢を諦めた人、見失いかけてる人……そんな、誰かの力になりたいから!」
友紀「うん、うん!」
涼「絶対にあきらめない! 必ず、トップになってみせます!!」
友紀「よく言った!」
涼「だから、見ててください!」
104:
涼「今度は、もっとカッコいい僕として! いつかまた友紀さんに会いに来ます!」
友紀「うんっ!」
涼「その時は! 一緒にキャッチボール、してくれますかーっ?!」
友紀「もっちろん! いつでもおいでー!」
涼「ありがとうございます!」
友紀「待ってるからねー!」ブンブン
涼「それじゃあ!」
友紀「ファイトー! 涼ーーッ!!」
タタタ…
105:
友紀「強い子だな、本当に」
友紀「…」
友紀「手、か」
友紀「良いなあ……」
…pipipipi
106:
pipipi…
友紀「…電話」
友紀「プロデューサーから」
友紀「………」
ピッ
友紀「もしもーし。あ、プロデューサー! お疲れさま」
友紀「そろそろ戻って良いの? ちょうど良かった、今行こうと…」
友紀「…ぅえ、迎えに来る? ……う、うん。そっか…。えっとね、今公園で……」
――

107:
《Side Y》
P「…あ、いた」
友紀「おそーい」
P「悪い悪い、ちょっとちひろさんに捕まってな」
友紀「ちひろさん? なんで?」
P「領収書出せって。少しぐらいなら、経費で落とせるかもしれないんだと」
友紀「…なるほど」
108:
友紀「何を買ってたのかなぁ? うん?」
P「いや何って……食べ物とか、飲み物とか」
友紀「ケーキもある?」
P「それは、これから取りに…。もしかして、秋月さんから聞いた?」
友紀「うん! 準備終わるまで帰って来るなって」
P「良かった。ちゃんと会えてたんだな」
友紀「で、ビールはあるの?」
P「お前なぁ…」
友紀「どうなの? ねえねえ!」
P「……500を1本。今日だけな」
友紀「うわーい! やったー!!」
P「どんだけ喜ぶんだよ」
109:
友紀「それを聞いちゃ、うかうかしてられないね! 早く事務所に戻らなきゃ!」タッ
P「あっおい、待てって」
友紀「はやくはやくぅー!」タタタ
P「走ってもビールは逃げないぞー」
P「…って、足はえー……」
110:
――

友紀「ケーキだぁ!」
P「ちょっと小さかったか…? 人数分大丈夫かな」
友紀「大丈夫だって! ほら、後は帰るだけだよ!」
P「待て待て、ケーキ持ってるんだから。流石に歩いてだろ」
友紀「……ん、そっか」
P「焦らなくて良いんだよ、ゆっくりで」
友紀「はーい」
111:
P「…げ、もう薄暗い」
友紀「日が暮れるの、早くなったよね」
P「だな。この時間、こないだまではまだ明るかった気がするのに」
友紀「秋だねえ………っくしゅっ」
P「寒い? 上着いるか」
友紀「ううん、平気!」
P「なら良いけど」
友紀「きっと誰かがあたしのウワサしてるんだね。ほら、誕生日だし!」
P「なんだそりゃ」
112:
P「風邪ひくなよ? 涼しくなってきたのは良いけど、薄着じゃもう肌寒いくらいなんだから」
友紀「涼しい…」
友紀「秋の月に涼しい、か。ふふ、この時期にぴったりだね」
P「ん? 月はまだ出てないぞ」
友紀「なんでもなーいよっ」
P「ああそう」
113:
P「…で、ユッキは今日何してたのさ」
友紀「うん、涼と遊びに行ってたんだ!」
P「りょう? ……あぁ、秋月さんか」
友紀「涼もね、明日誕生日なんだって。知ってた?」
P「へぇ。いや、知らなかった」
友紀「2人でプレゼント選んだりしたの!」
P「どうせだったら、うちに寄ってケーキでも食べていけば良かったのに」
友紀「…ううん。明日から、ちょっと忙しいみたいだし」
P「そっか」
114:
友紀「これね、涼から貰ったプレゼント!」
P「おー、リストバンドだ」
友紀「かっこいいでしょ? タオルも貰ったし、早使っちゃった」
P「似合う似合う。その袋も?」
友紀「これは……自分にプレゼント!」
P「欲張りなやつめ」
友紀「へへへ。プロデューサーは、何をくれるのかなぁ」
P「……あげないって言ったら?」
友紀「FA移籍してやる」
P「大袈裟…」
友紀「誠意は言葉じゃなくってね…」
P「冗談だよ。一応用意してるから、後でな」
友紀「わーい!」
115:
P「それにしても、珍しいね」
友紀「なにが?」
P「名前。呼び捨てにしてるの、初めて聞いた」
友紀「あぁー、そうだねぇ…」
P「秋月さんと何かあったの?」
友紀「……ふふっ。それは、プロデューサーにもナイショ」
P「ふーん?」
友紀「女の子には、秘密があるものなんだよ♪」
116:
P「……何か変なモンでも食ったか」
友紀「どういう意味?!」
P「だって、そんな女子力に溢れた言葉、普段は使わないでしょ」
友紀「あ、ひっどーい! あたしだって正真正銘、花も恥じらう乙女座の女なんだよ?」
P「いや、それは知ってるけど…」
友紀「……ふんっ。今日はいつもより、女の子の気分なだけだし」
P「女の子の気分、ねぇ」
友紀「ふーんだ」
117:
P「なに、少しは女の子扱いした方が良い感じ?」
友紀「…普段はしてないような言い方だね」
P「そんなつもりでもないけどさ」
友紀「良いもん、どうせあたしなんか」
P「なんなら、手ぇぐらい繋いでやろうかなって」
友紀「……っ」
118:
P「ははは、なんちゃっ…
キュッ
P「……て?」
119:
友紀「…」
P「あの、ユッキさん?」
友紀「左手、空いてたから」
P「お、おう」
友紀「今日くらい良いでしょ」
P「……別に良いけど」
120:
友紀「…」ニギ
P「…」
友紀「……良いなぁ、男の人の手」ボソ
友紀「あたしも欲しかったなぁ」
友紀「…なーんて」
121:
P「……ほんと、大丈夫かお前」
友紀「…大丈夫だよ」
P「つらいなら、少し休んでいこうか?」
友紀「平気。遊びすぎて、ちょっと疲れちゃっただけだから」
P「疲れてるなら尚更、」
友紀「大丈夫だってば」
P「…そ」
友紀「うん」
122:
P「……まぁ、何があったのかは聞かないけどさ」
友紀「そこは聞いてよぉ」
P「あ、聞いても良いなら聞くぞ」
友紀「あー…やっぱりダメ。ナイショ」
P「どっちだ…」
123:
P「…その、」
友紀「?」
P「何て言うか…アレだ。えーっと」
P「…んん??…」
友紀「な、なに唸ってるの」
P「……よしっ」
124:
P「俺は今から、超恥ずかしい独り言を言います」
友紀「う、うん」
P「できれば、耳を塞いでもらえると助かる」
友紀(手繋いでて塞げないんだけどな)
P「…なんでセンチになってんのかは知らないけど」
P「友紀が女の子で良かったって。俺はずっと思ってるから」
友紀「…へ」
125:
P「男だったら、野球の道に進んでたのかもしれない。もしかしたら今頃、プロで活躍してたりして」
P「でももしそうだったら、今のお前とは会えてなかったし、こうして誕生日祝うなんてこともなかったと思う」
P「俺は今こうして横にいてくれる、女の子の友紀が好きだから。この出会いには感謝してるわけ…」
P「…で、だな……」
友紀「…」
P「……っだぁぁあ恥ずかしい!」
友紀「な、なな…っ、」
126:
P「何だコレめっちゃ恥ずかし……」
友紀「す すすっ、すきって…」
P「…待て、もしかしたら今の超キモかったんじゃないか?」
友紀「あうぅぅぅ……っ」
P「落ち着け俺…。深呼吸、深呼吸」フー
友紀「あ、あたしも。吸ってー……」
P「…なんか、すまん。急に変なこと言って」
友紀「う、ううん…」
P「聞かなかったことにしてくれても、構わないから」
友紀「…」
127:
友紀「……ふ、ふーん、そっかそっかぁ」
友紀「プロデューサー、あた、あたしが…す、すきなんだ」
P「いや、ちがっ、お前がってそういうことじゃなくて、」
友紀「…きらい?」
P「…嫌いじゃない」
友紀「じゃあ好きってことだね」
P「いやほら、好きっていうのはだな、お前が男じゃなく女だからというところに係ってるのであって」
友紀「へえ?、ふーん」
P「話をちゃんと…っ」
友紀「好きかぁ、へぇ…」
P「……もういいやそれで」ハァ
128:
P「だから耳塞げって言ったんだ…」
友紀「いやぁ?聞いちゃったものはねぇ」
友紀(女の子で良かった、だって)
友紀「ふふ。そっかぁ」
友紀「……うん、ありがと。えへへっ」
P「…おう」
129:
P「……なあ」
友紀「んー?」
P「もう手離して良いか」
友紀「なんで?」
P「すげー恥ずかしいから」
友紀「んー…」
友紀「ダメー♪」ダキッ
P「ちょっ」
130:
友紀「あたしも、プロデューサーのこと好きだよっ!」
P「だから、そういう意味じゃ」
友紀「あたしのはそういう意味だから!」グイ
P「どういう……っておい引っ張んな、危ないから!」
友紀「ぎゅーっ」
P「力強すぎだろ! 放せっ」
131:
友紀(……公園で待っている間、ずっと考えていたことがある)
友紀(涼の手が、夢を掴む手なら。あたしの手は何のためにあるんだろう、って)
友紀「ね、プロデューサー。聞いて?」
P「聞くけど…これ、歩き辛くない?」
友紀「つらくない!」
友紀(今ちょっとだけ、その答えが分かった気がするよ)
132:
友紀「あたしさ、野球が好き」
P「お、おう。知ってるけど」
友紀(あたしの手では、どうしても届かなかった夢があって)
友紀「でね? 今はアイドルも好き!」
P「……何だ突然」
友紀「プロデューサーのことも好きだし、ファンも仲間も、みんなまとめて全部大好きだよ!」
友紀(でもだからこそ、今この瞬間がある。だったら…っ)
友紀(だったら。きっとこの手は、好きなものを掴むための手なんじゃないかって。そう思った!)
133:
友紀「こうして好きがどんどん増えてくのって、すっごく幸せなことだなって思うんだ」
友紀「プロデューサーに会えて、ほんとに良かったよ! 好きをいっぱいくれて、ありがとね」
P「わかった、分かったから。一旦離れて…」
友紀「放さないっ」ギュ
P「いっだだだっ! 腕もげる!」
友紀(バットにマイク、ビールでもプロデューサーでも、何でもバッチ来いだよ)
友紀(1度掴んだ"好き"……あたしはもう、手放すつもりはないからね)
友紀「覚悟しててよ? 絶対、ぜーったい離さないから」
友紀「離れたくないってそっちからも言わせるぐらい、あたしのこと、もっと好きになってもらうからさ!」
友紀「これからもこうしてずーっと、あたしとバッテリー組んでいてほしいなっ! プロデューサー!」
134:
P「……よくもまぁ、恥ずかしげもなく言えるなお前」
友紀「恥ずかしくなんかないよ? だって本音だもん」
P「さいですか」
友紀「うんっ」
友紀「…なんでこっち見ないの?」
P「見れるかバカ」
友紀「あ、もしかして、照れてる?」
P「うるさい。照れてない」
友紀「やーい照れてるー! 珍しいー♪」
P「しょ、小学生かお前は…」
135:
P「……そっちこそ、覚えとけよ」
友紀「んー?」
P「さっき移籍するとかなんとか言ってたけど、そんなの知らん」
P「FAだろうがポスティングだろうが、お前には絶対させてやらないから。いいな」
友紀「…」
136:
友紀「え、ちょ、今何て言ったの…?」
P「は?」
友紀「ごめん、周りの音でよく聞こえなくって」
P「……知らん!」スタスタ
友紀「うぁっ、ちょっとー!」
P「くっそぉ…。バカ、あほ、野球脳、たらし、ガサツ、バカ、声でかい、それから……、」
友紀「なんか悪口言われてる気がする!?」
P「うっさい! 帰るぞ、ほら」
友紀「待ってよぉ……とりゃっ」
P「ええい引っ付くな!」
友紀「良いじゃん、くっついてた方があったかいし!」
P「さっき寒くないって言ってたろ」
友紀「急に冷えてきたのっ」
P「嘘つけ」
友紀「あーさむいさむい! 今日は寒いなー♪」
P「やれやれ…」
P「……まぁ、寒いなら仕方ないか。うん」
おしまい
13

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