オタサーの女帝「この者を処刑せよ!」オタク「ぶひいいいいいいいっ!!!」back

オタサーの女帝「この者を処刑せよ!」オタク「ぶひいいいいいいいっ!!!」


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1:
執事オタ「いかがでしたか、女帝様」
オタサーの女帝「ふむ……なかなかの食事だった」
オタサーの女帝「食後のワインをもらおうか」
執事オタ「かしこまりました。おい、女帝様におワインを!」
オタク「は、はいぃ……」
オタク「どうぞ」
オタサーの女帝「んん……?」
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3:
オタサーの女帝「なんだこれは!? なぜマグカップにワインを入れる!?」
オタク「す、すみません! 自分はいつもそうやって飲むんで……」
オタサーの女帝「まったく……」グビッ
オタサーの女帝「!? この下劣な味……! イオンとかにも売ってる安物のワインではないか!」
オタサーの女帝「マグカップに入れれば、私の舌をごまかせるとでも思ったか!?」
オタク「ひいい……えぇと、家にあったのを持ってきたんですが……」オロオロ…
オタサーの女帝「ええい、もういい!」
オタサーの女帝「処刑だ! この者を処刑せよ!」
オタク「ぶひいいいいいいいいいいっ!!!」
 
5:
オタク「お慈悲を……なにとぞお慈悲を!」
オタサーの女帝「ならぬ」
オタサーの女帝「処刑オタク、後は任せたぞ」
処刑オタ「お任せあれ……」ニィィ…
オタク「嫌だ、嫌だぁぁぁっ!!!」
 
6:
処刑オタ「ひょっひょっひょ、最近は処刑の機会が多くなって、嬉しいわい」
処刑オタ「では今日は入荷したばかりの≪ファラリスの雄牛≫を試してみるか」
オタク「ぶひっ! やだっ! やめてくれぇぇぇっ!」
ゴオォォォォォ……!!!
オタク「ぶひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいっ……!!!」
 
8:
オタサーの女帝「また下らぬ者を処刑してしまった」
オタサーの女帝「ところでミリオタ、兵士たちの調練は進んでいるか?」
ミリオタ「はっ! 我らオタサー軍はまさしく世界最強の軍隊です!」
オタサーの女帝「格闘オタ、警備は頼んだぞ」
格闘オタ「ガハハッ、任せて下さいよ!」
オタサーの女帝「武器オタ、核開発は進んでいるか?」
武器オタ「ええ……もうまもなくです。オタサー軍が核を保有する日も近いでしょうな」
 
9:
オタサーの女帝「核開発さえ済んでしまえば、もはやどの国も我らに手出しできなくなる」
オタサーの女帝「我らオタサーが日本を支配する日も近いな」
オタサーの女帝「ハッハッハッハッハ……!」
ハーッハッハッハッハ……
……………
…………
……
 
11:
東京都某所――
エリート女(ここが、日本で最も高い成功率を誇ると言われる殺し屋のアジト……)
エリート女(みすぼらしい雑居ビルだけど、殺し屋のアジトなんてこんなものかもしれないわね)
エリート女(さっそく入ろ――)
「入れ」
エリート女「!?」ビクッ
エリート女(なぜ!? なぜ私が来たことが分かったの!?)
 
12:
エリート女(この人が殺し屋……見た目は普通の男に見えるけど……)
殺し屋「ずいぶん若いが、お前さんは政府の高官か」
エリート女「ええ、私の言葉は政府の言葉と思ってくれていいわ」
殺し屋「女をよこしたのは、いざとなったら“女の武器”を使ってでも依頼を受諾させるってことか」
エリート女「…………」
殺し屋「まぁいい、用件は?」
エリート女「標的は……この女よ」スッ
エリート女「通称“オタサーの女帝”……!」
殺し屋「…………」
 
13:
エリート女「元々この女が所属してるサークルは、典型的なアニメオタクサークルだったらしいわ」
エリート女「だけどいつからか、この女は武闘派オタクを集め、勢力を拡大し」
エリート女「オタサーを100万人以上の巨大組織に変貌させた」
エリート女「中でも≪ミリオタ≫≪格闘オタ≫≪武器オタ≫は“3オタ”とも呼ばれ」
エリート女「女帝から特に重用されてるみたい」
エリート女「そして今、彼女らは東京ビッグサイトを占領し、ここを拠点にして活動しているわ」
エリート女「ウワサでは核開発さえ進めているという……」
エリート女「このオタサーは今や東洋のISISといえるぐらいの危険組織になってしまっているの」
 
14:
ぶっ飛んでんなぁ
 
16:
エリート女「ここまで膨れ上がったオタサーは、もはや警察や自衛隊でもうかつに手は出せない!」
エリート女「こうなった以上、優秀な殺し屋であるあなたに女帝を暗殺してもらうしかないの!」
エリート女「カリスマである女帝さえ死ねば、オタサーは勝手に崩壊するでしょうからね……」
殺し屋「…………」
エリート女「お願い! 引き受けてちょうだい! あなたのナイフで女帝を討ってちょうだい!」
殺し屋「返事をする前に、一つ答えてもらおうか」
エリート女「なにかしら?」
殺し屋「あんたがオタサーの女帝を殺したい“本当の理由”を教えてもらおう」
エリート女「!」
 
17:
エリート女「ふふっ、全てお見通しなのね」
エリート女「実は……先日、オタサーに所属してた兄が処刑されたの」
エリート女「全身黒焦げになった兄が、私の実家にトランク詰めにされて送り届けられたわ」
エリート女「兄はたしかになんの取り柄もないオタクだけど、とても優しい人だったのに……」
エリート女「私は……兄を……お兄ちゃんを殺した女帝を許せない……許さない……!」
エリート女「ぶひっ……ぶひひひぃ……お兄ぢゃん……ぶひぃぃ……」シクシク…
殺し屋「いいだろう、引き受けよう」
エリート女「ありがとう……!」
 
19:
殺し屋「善は急げ、だ。さっそく仕事にかかるとしよう」
エリート女「は、はいっ!」
エリート女「でしたら地図を……」
殺し屋「不要だ」
殺し屋「東京ビッグサイトの場所なら知ってる」
エリート女(え、なぜ……!?)
 
20:
東京ビッグサイト――
ザワザワ…… ガヤガヤ……
エリート女「うっ……オタクの兵士でぎっちりと固められてる……!」
エリート女「これじゃとても潜入なんか……!」
殺し屋「いや、見たところ東棟の守りが手薄だな」
殺し屋「それに数は多いが、まだまだ訓練の行き届いてない兵士も多い」
エリート女(一瞬で警備の穴を見抜いた!?)
殺し屋「行くぞ」
エリート女「はいっ!」
 
21:
オタク兵A「どうだ?」
オタク兵B「異常なしだ」
オタク兵C「そりゃそうさ。こんだけ兵がいる中にやってくる敵なんかいるわけねえ」
オタク兵A「……だな」
ハハハ…… アハハハ……
殺し屋「中に入るには、あの三人の息の根を止める必要がありそうだな」
エリート女「ええ……」
殺し屋「一呼吸で……終わらせる」
ギュンッ!
 
22:
ドシュッ! ザシュッ! グサッ!
オタク兵A「うげっ!」ドサッ
オタク兵B「がっ……!」ドサッ
オタク兵C「ごぼっ……!」ドサッ
殺し屋「ふん」
エリート女(すごい、オタクとはいえ一瞬で三人を仕留めた……!)
 
23:
オタク兵D「貴様ら、何者だ!?」ジャキッ
殺し屋「!」
エリート女(しまった! もう一人兵がいたんだわ!)
 
24:
殺し屋「なにいってんだよう〜、俺はフィギュアオタだよぉ〜う」
殺し屋「この女……俺が作った超リアルなフィギュアなんだ」
エリート女「え!?」
オタク兵D「すっげぇ〜! 超リアルじゃん! 声も出るし!」
殺し屋「これをオタサーの女帝様に献上しようかと思ってさ」
オタク兵D「へぇ〜、だけどどうせなら男のフィギュアのがよかったんじゃないか?」
殺し屋「いや……あの人は百合っぽいところもあるし」
オタク兵D「そういやそうだな!」
殺し屋「ふぅ〜、芝居がうまくいったな」
エリート女(なんなの、この人!?)
 
26:
ビッグサイト内部――
ミリオタ「……なに? 東棟付近で何人か殺されていた?」
オタク兵E「そ、そうなんです! みんな一発で急所をやられてて……!」
オタク兵F「敵ですよねえ!? いかがいたしましょう!?」
ミリオタ「うろたえるな! 敵の狙いはそうやってお前たち見張りが浮き足立つことだ」
ミリオタ「冷静になって、侵入者を探すんだ」
ミリオタ「一度東棟の兵を集めて、不審者を目撃してる者がいないかも確認しろ」
オタクE&F「はいっ!」
オタクE「さっすがミリオタさん、的確な指示だぜ」
オタクF「ああ、ミリオタをこじらせすぎて、世界各国の戦場で暴れ回ってたらしいからな……」
 
28:
ミリオタ「敵が来たとなれば……吾輩の出番が来るかもしれんな」
殺し屋「いや、お前の出番はここで終わりだ」
ミリオタ「!?」
ザクッ! ドサッ……
エリート女「やった! “3オタ”の一角、ミリオタを倒した!」
殺し屋「ミリオタの始末はかなり手間取ると思ったが……」
殺し屋「自分に自信があり、護衛を置かないタイプだったから助かった」
殺し屋「指揮官であるこいつの死体を隠しておけば、兵たちの動きを止めておけるだろう」ズルズル…
 
29:
格闘オタ「ガハハハハハッ!」
殺し屋「!」
格闘オタ「よくもミリオタを殺してくれたな!」
格闘オタ「まあヤツは兵士頼りの部分があったからな! 仕方ない結末でもある!」
格闘オタ「だがこのオレはそうはいかんぜ!」
格闘オタ「なにしろオレは格闘技オタクをこじらせまくった結果……」
格闘オタ「あらゆる格闘技を極めちまったんだからなァ!」ムキッ
格闘オタ「おりゃあああああああっ!!!」
スパパァンッ! バキッ! ドカッ! ガゴッ!
殺し屋「ぐうっ……!」
殺し屋(ボクシングや空手、ムエタイをうまく融合させたような打撃だ……!)
エリート女「殺し屋さんが防戦一方だなんて……!」
 
30:
殺し屋「ふっ!」シュッ
ガッ!
殺し屋「ナイフがほとんど刺さらん……」
格闘オタ「ふん、鍛え方が違うぜ」
殺し屋「いや、“ほとんど”なら俺の勝ちなんだ」
格闘オタ「あ?」
殺し屋「このナイフには、クジラとかを0.001mgぐらいで殺せる猛毒を塗っておいたからな」
格闘オタ「なんだと……!」ガクッ
格闘オタ「ち、ちくしょう……」ドサッ…
エリート女「さすが殺し屋さんだわ……圧倒的フィジカルを誇る格闘オタをも倒した……!」
 
31:
殺し屋「ここからはビッグサイト中枢に入る」
殺し屋「お前はもう帰れ。足手まといだ」
エリート女「でも……私は政府の人間、いえ死んだ兄のために最後まで見届けないと――」
殺し屋「心配するな、兄の仇は取ってやる」
エリート女「うん……分かった。だけど最後に一つだけ聞いていい?」
エリート女「あなたは何者なの?」
殺し屋「察しの通りだ」
殺し屋「オタサーの女帝が、≪オタサーの姫≫だった頃を知ってる者だ」
エリート女(やっぱり……!)
殺し屋「じゃあな……外で俺の成功を祈っててくれ」
 
32:
執事オタ「女帝様のもとへは行かさんぞ!」
処刑オタ「ひょっひょっひょ、処刑してやるわ!」
守護オタ「守護らねばならぬ!」
殺し屋(ミリオタ配下ではない、女帝親衛隊か!)
殺し屋(数は少ないが腕は立つ……!)
殺し屋(だが、ここを突破すればッ!)
ザシュッ! ズバッ! ザクッ!
殺し屋(オタサーの女帝がいる部屋にたどり着くッ……!)
 
33:
ギィィ……
殺し屋「やっと会えたな、オタサーの女帝」
オタサーの女帝「貴様か……久しぶりだな」
オタサーの女帝「そろそろ会える頃だと思っていた」
 
34:
オタサーの女帝って字面がなんかいい
 
36:
オタサーの女帝「オタサーに君臨し、今や日本を支配しようという私になんの用だ?」
殺し屋「お前を殺しに来た」
オタサーの女帝「……やはりな」
オタサーの女帝「だが、貴様の得物はナイフのはず……近寄らねば私は倒せんぞ」
オタサーの女帝「さぁ、来るがいい」
殺し屋「いわれなくてもいく――」
カチッ
殺し屋「!?」
ドゴォォォォォンッ!!!!!
 
37:
殺し屋「ぐっ……地雷……!?」ゴロゴロ…
武器オタ「かろうじてかわしていたか! だが、ここまでだ!」ジャキッ
ガガガガガガッ! ガガガガガガッ!
殺し屋「ぐわあっ!」
殺し屋「ちいっ!」シュッ
ザクッ!
武器オタ「ぐええっ……!」ドサッ…
殺し屋(“3オタ”のラスト、武器オタが残っていたか……! 重傷を負っちまった……!)
 
38:
オタサーの女帝「まさか、“3オタ”を全て倒すとはな」
オタサーの女帝「しかし、代償は大きかったな。その傷、もはや動けまい」
殺し屋「ぐっ……!」
オタサーの女帝「私も護身用に銃を持っている。今の貴様を始末するぐらいは容易い」チャッ
殺し屋「なぜだ……!」
殺し屋「なぜお前はそんなにも変わってしまったんだ……」
オタサーの女帝「……貴様のせいだ」
オタサーの女帝「まだ私が≪オタサーの姫≫で、貴様が≪アニオタ≫だった頃……」
 
41:
〜回想〜
ある小さなオタサーにて――
『ジュース飲みます?』 『このアニメ面白いんだよ!』 『はいっ、プレゼントあげる!』
オタサーの姫『みんな、ありがとー!』
チヤホヤチヤホヤ… キャッキャッ…
アニオタ『…………』
 
42:
アニオタ『お前さぁ、最近チヤホヤされていい気になってんじゃないか?』
オタサーの姫『いい気になんかなってないわよ』
アニオタ『どうだか。さっきだって、みんなに言い寄られてニヤニヤしやがって……』
オタサーの姫『なによ、妬いてるの?』
アニオタ『妬いてるわけねーだろ!』
オタサーの姫『ウソばっかり。男の嫉妬ってみっともないよ』
アニオタ『なんだとォ!? もういい、俺はこのサークルやめる!』
アニオタ『みんなで一人の女のご機嫌をうかがうサークルなんてうんざりだからな』
オタサーの姫『ちょ、なによそれ!』
オタサーの姫『ふん、いいわよ! だったら私はもっともっとチヤホヤされてやるわ!』
オタサーの姫『そんでもって、オタサーの女帝になってやる!』
アニオタ『勝手にしろ!』
 
43:
殺し屋「……そんなこともあったな」
殺し屋「あれから元々アウトロー系のアニメが好きで、通販でナイフを買ったりもしてた俺は」
殺し屋「それをさらにこじらせて、殺し屋になり……」
殺し屋「お前は宣言通りオタサーの女帝になったってわけだ」
オタサーの女帝「そういうことだ」
オタサーの女帝「私がこうなったのは、全て貴様のせいなのだ!」
オタサーの女帝「貴様がサークルを去らなければ、私はっ、私はっ……!」
オタサーの女帝「だが、もう済んだことだ。ここで貴様にトドメを刺せば、全てに決着がつく!」ジャキッ
 
46:
殺し屋「俺が生み出した怪物は……俺の手で倒す!」ダッ
オタサーの女帝「なにっ!?」
オタサーの女帝「貴様はもう、満身創痍のはず……!」パンッ パンッ
殺し屋「ぐうっ!」ビシッ ビシッ
殺し屋「ここは東京ビッグサイト……俺も元はアニオタだ、ここでなら普段の数倍のパワーを出せる!」
オタサーの女帝「しまった……! 地形効果っ……!」
グサッ……!
オタサーの女帝「ぐ、は……っ!」
殺し屋「すまない……」
 
47:
武器オタ「よ、よくも女帝様を……!」
武器オタ「こうなれば、せめてここの自爆装置を作動させて……!」ポチッ
武器オタ「オタサーの女帝、ばんざぁぁぁぁぁい!!! ――ぐふっ!」
ゴゴゴゴゴ……! ゴゴゴゴゴ……!
殺し屋(武器オタ、まだ生きてたのか……)
殺し屋(もうまもなく、ここは爆発する……)
 
49:
ゴゴゴゴゴ……! ゴゴゴゴゴ……!
オタサーの女帝「に、逃げろ……」
殺し屋「逃げたくても……もうさすがに動けねえ」
殺し屋「それに昔、愛した女と一緒に死ぬのも、悪く、ない……」
オタサーの女帝「ふ、ふふ……そうか……そういってくれるか」
オタサーの女帝「私はな、本当は……貴様だけの姫になりたかった……」
殺し屋「俺もだ……俺はあの時、本当は嫉妬してたんだ……」
殺し屋「お互いもう少し素直だったらなぁ……」
オタサーの女帝「仕方ないさ、なにしろ二人ともオタサー所属だ。恋愛はヘタクソに決まってる」
殺し屋「へへへ……だな」
 
52:
アニオタ「もしも、生まれ変わったら……今度はちゃんと……恋人同士になろう」ガシッ
オタサーの姫「うん、そうしよう……!」ギュッ…
ゴゴゴゴゴ……!
ズガァァァァァンッ! ドゴォォォォォンッ! ドッグワァァァァァンッ!!!
………………
…………
……
 
5

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