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女「好きな人のためなら」


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ミカちゃん怖いよう

86: 以下、

心理描写が素晴らしい
87: 以下、

ナオが先輩と再開してからのミカが病んでく過程がとても気になります
88: ◆COErr5OWSM 2017/07/12(水) 20:14:46.92 ID:lo8oM5vv0
レスありがとうございます。
やはり木曜日に投下します、度々すみません。
>>87
描写が足りませんでしたね…
そこも書きたいんですけど修正してる内にどんどん長くなってきそうなので、省略させてください
ご想像にお任せします、すみません。
89: ◆COErr5OWSM 2017/07/13(木) 19:45:18.54 ID:86ZA2IUD0
それからの日々は最悪だった。彼女を怒らせるようなことをすれば、
躾と称して殴る蹴る、ビンタ、首を絞める、足を舐めさせるなどのことが待っていた。
普段のセックスでは、まるで獣のように犯してくる彼女の性欲に夜通し付き合わされる。
身体的疲労はどんどんたまっていった。
 
 それに加えて最近は、キスマークを私の身体中につけるようになる。チョーカーでは隠しきれない所につけるので言い訳に困る。
寝不足のせいで、バイト先で仕事を失敗することが多くなり、店長からクビを言い渡されてしまった。
友だちの誘いにも乗る気は失せ、そうすると当然距離はあいていく。講義は後方の席に座って一人で受けることが増えた
(何言ってるか全然わかんないや...)
 レジュメを配りパワーポイントに沿って進んで行くだけの授業は、貴重な睡眠時間となる。
騒々しくなってきたと同時に目を覚ます。
(あ、もうお昼休みか...)
 コンビニで買ってきておいた栄養ドリンクと菓子パン一個。最近はこれくらいしか食べる気力がなくなってしまった。
席を立ち人気のない所に向かおうとしたら肩を叩かれた。
「や…ナオちゃん」
「こんにちは、ナオさん」
 
 仲の良いキョウコとヒトミに声をかけられた。いつもなら元気に対応する所だが、今はそうもいかない。
「あぁ、二人とも、元気してる?」
(いつもどーり、いつもどーりに)
「もう見てられないわよ、今のあなた」
「そうだよナオちゃん、最近暗いよ……なにかあったでしょ?」
「んー?そんなことないよ。いつもこれくらいでしょ?」
「確実に私生活で何かあったでしょう。…その首、毎日のようにキスマーク付けてきているけど、関係しているの?
 言ったらカナさんが危なくなる。どうせ相談しても二人とも同性愛に引いて離れて行くに決まっている。
大切な友達に対してこんな風に思い込んでしまう程度まで、精神的疲労は溜まっていた。
90: ◆COErr5OWSM 2017/07/13(木) 19:53:16.10 ID:86ZA2IUD0
「そう?隈は酷くて講義もまともに受けられず、どんどん顔はやつれていくばかり。
普通の友達なら心配せずにはいられないわ。……お付き合いしている方と何かあったのでしょう。
何か力になれるかもしれないから、少し話しをして…」
 話しても分かってくれるのか。私が好きになったのは女の人、それも友達だった人。今苦しめられているのも女の人。
相談して役に立てるケースなんてあるものか。
「そこはさ、プライベートなことだから、放っておいてほしいかな」
「でも、ナオちゃん、相談したら気が楽になるかもしれないよ?」
「…っ、しつこいなぁ!私が悩んでる前提で話してるけどっ、そんなことないんだよ」
 キョウコはいきなり怒鳴られたことにオロオロした反応。ヒトミはいつもと変わらず冷静だった。
「そう。そこまで言い張るのなら私にも考えがある」
「…勝手にしたらいいじゃん。悩んでることなんてないから、無意味だけどね」
「ちょ、ちょっと待ってっ。二人とも、そんな険悪な感じにならずに、ねっ?」
 私はさっさとこの場から離れて、昼食をとるために勢いよく席を立った
(ぅ、わっ)
 世界が一瞬だけ斜めになった感覚。後ろの方向に何かの力で引っ張られたようだった。
そのままいけば転ぶところを、ヒトミに腕を支えられ体勢を整えることができた。
「……」
91: ◆COErr5OWSM 2017/07/13(木) 19:57:33.25 ID:86ZA2IUD0
「離してよ…躓いただけだから」
 何も言わずに手を離してくれた。もう一方の友人はまだ離したいことがあるとか何とか、
私を引き止める声を発していたが無視して進む。今振り替えれば絶対に泣いてしまうから。
(あんな態度、とったのに…)
優しすぎる友達二人に対しての罪悪感と共に、私はまた一人で昼食を食べた
 先輩からのLINEやツイッターでのメッセージ、電話の通知は今ではもうほとんど来ることがない。
ずっと無視されればそうなるのは当たり前だ。私はもう見捨てられてしまったのだろうかと不安になる。
(せめて少しくらい返信しないと、不審に思われる)
 そう思ってミカに許可を貰おうと決めた。今日も家に連れ込まれたので、そこで相談してみよう。
 しかし彼女の様子を見てそんな考えはすぐに消えた。今までに見た中で一番不機嫌だ。
今日は何も怒らせるようなことはしていないはず。
椅子に座ってブツブツと何かを呟いている。私はベッドの上で臆病に待っているしかなかった。
「あいつ……まさか……来るなんて………」
 何を言っているのかよく聞き取れない。本当に心当たりがないので、私以外の何かが原因だろう。
「私のもの……印……印…付けなきゃ…」
92: ◆COErr5OWSM 2017/07/13(木) 20:04:28.28 ID:86ZA2IUD0
 ゆらりと立ち上がってこちらへ向かって来る。手には手錠と結束バンド。
無抵抗で拘束されるのに慣れてしまっている自分がいるのに嫌悪感を抱く。
今日は覚悟をしておいた方がいいかもしれない。どうせ彼女の不満は私にぶつけられる。
 私をベッドの上に縛り付けた後ミカは何かを取りに行ってから馬乗りになって来た。
「今日ね、昼に、いたんだよ」
「…えっと……だれが…?」
「カナ」
「カナっ、えっ……」
 まさか、そんなことがあるのか。私に会うために来たのかどうか分かるわけもないのに、
心は熱く喜んでいる。しかしそれを表情に出してはいけない。
どうでもいいという気持ちに見せなければ。
「そう、なんだ」
「守らなきゃいけない…あいつから。だから仕方ないんだよ……」
 虚ろな目をしつつ取り出したのはカッターナイフだった。一瞬で全身から血の気が引く。
「分かりやすいように、まずは腕にね」
「まっ、待って!なんでっ……私、何もしてないっ」
 手首が擦れて赤くなるのも気にせず腕を振って抵抗する。
刃が左腕に当てられると、金縛りにあったように体が動かせ無くなった。
「ゃ、やだっ…お、お願い…っ…どうしたら…許してっ」
 最後まで懇願することは叶わず、腕の内側へゆっくりと一本の線が引かれた。
93: また明日です。ありがとうございました ◆COErr5OWSM 2017/07/13(木) 20:26:12.00 ID:86ZA2IUD0
「は、あぁっ、あぁあ」
 冷たい刃が私の皮膚と肉を突き破ってくる。線に沿って血の玉がぷくぷくと浮き出てきた。
顔は冷や汗と涙で歪んでめちゃくちゃになっている。彼女はそのあと続けざまに、計三本斜めに傷をつけた。
「はは…上手いでしょ。ミカの、ミの字だよ。こうしといたら、あいつから、守れる…」
 笑っている、しかしいつものように楽しんでいる感情が全てではないように見えた。
どこか焦っているようだった。
「ぃ…っ、ひくっ……いた、い…」
 リストカットより明らかに深く切り付けられただろう。この傷はおそらく一生残る。
彼女は私のTシャツを胸元まで上げてきた。先ほど“まずは”と言っていた。
今度はこちらに奴隷の印を刻まれてしまうのだろうか。
 抵抗は、もう諦めた。暴れると本当に殺されそうな雰囲気だし、かえって傷が増えそうだった。
「はあぁ…白くて、スベスベで…無駄な肉がついてない……彫刻みたい…」
 お腹に頬ずりして恍惚の表情を見せる。手には依然カッターが握られているままだ。
「誰かに…見せられないように……」
「っ、ぁは、っぁぁ、あ、ん」
 左の脇腹にもミカの印が刻まれた。
私はこれからこの傷をずっと背負っていくのかと思い絶望したが、不思議と涙は出なかった。
出し過ぎて既に枯れていた。
「はぁぁ……素敵だよ、ナオちゃん」
「ぅ…、ぁっ」
 傷ついた場所をゆっくりとなぞられる。満足したなら早く帰してほしい。
もうこのレベルまで来ると死への恐怖はだいぶ薄れてきてしまっていた。
 彼女はあれをしたことによりとても安心したようで、あの後は異常なほど優しく接してきた。
上機嫌な時は私にベタベタ触って帰るだけ。切りつけてから終始明るい彼女が帰った後、
傷をつけられた箇所を鏡で確認した。なぜか乾いた笑いが出た。
 
 シャワーを浴びる際、傷がしみることで嫌でも彼女の恐ろしい顔が浮かんできてしまう。
その度に涙が出てきて安心する。私はまだイかれていないと。
97: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:03:23.17 ID:DOR/zOiN0
ありがとうございます、遅れました。
続けます
98: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:10:12.42 ID:DOR/zOiN0
土日はミカと会うことはない。
シフトを少なくした分、土日入るようにしたそうだ。私に取っては貴重な休息の時間。
 
 とはいえ、最近は友達を誘うことはなくなったし、誘われることもなくなった。
ミカと会う機会を減らすため、また新しくバイトを始めてみたがダメだった。
大きな音がたてられると、誰かに怒られているみたいでパニックを起こしそうになってしまうから。
(だるいな…なにもかも)
 何もすることがないので映画を観て暇を潰すことが増えた。
面白い物でもつまらない物でも、少しの間だけ嫌なことを忘れられる。
 
 今日も夕方までベッドの上で時間を浪費し、その後映画を借りに行った。
帰りにアパートの階段を登って行くと、部屋の前に人影が見えた。
(……まさか、シフトを休んで来たとかじゃないよね)
 考えていても仕方がないので近づいて調べることにしようとしたが、やめた。
暗い中よく目を凝らして見てみたら、一番会いたいのに会ってはいけない人物がそこに佇んでいた。
99: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:17:04.70 ID:DOR/zOiN0
(なんで…なんでいるの?)
(どうする?逃げる?…でも、どこへ…。ネカフェとか、そこら辺へ行こうか?
何で私の家の前にいるの…?聞きたい、けど、これがバレたらどうなる?)
 
 半ばパニック状態になりながら対処を考えているうちに、もう近づかれてしまっていた
「そんな中途半端なトコで何やってんの」
(…カナさん……カナさん…カナさん、カナさんっ、カナさんっ…)
 視界に入れただけで動悸が激しくなった。
本物が目の前にいる。毎日夢見た光景でいずれ消えてしまう先輩は、今日は消えなかった。
「しばらく会わなかったねぇ。1ヶ月ちょっとくらい?
ナオずーっとLINE無視するんだもん。困ったよまったく」
 けらけらと笑いながら、今まで通りに接してくる。なぜ怒っていないのか、
なぜ何も聞いてこないのか、早く追い返さなければ。思考回路はコントロール不能だった。
私みたいなやつを情緒不安定というんだろう。
「ぁ、あっ……の…」
「ん?何て?」
 喉がヒクついて声が出ない。しっかりしなければいけない。ここで追い返さないと先輩が危ない。
「きょ、うは用事あるから、帰ってください…」
「用事って?そのDVD見ること?」
「そ、それだけじゃないです」
「後は何?」
100: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:21:46.10 ID:DOR/zOiN0
 何故食い下がるのか。これ以上近くにいられたら頭がどうにかなりそう。
下唇を目いっぱい噛んで感情が爆発することを抑える。
「もう、いいじゃないですか……。別に、カナさんには関係ないことですから」
「…そっか。心配だから用事終わるまで待ってる」
(なんで、なんで……!)
「だからっ!カナさんはっ、邪魔なんです!帰ってくださいよっ!
……っ、ていうか何で心配するんですか!?今までずっと連絡してこなかったくせに!」
 子供が泣きながら喋る時みたいで、自分でも滑稽だと思う。
このまま嫌われれば、もう会いに来ることはないかもしれない。
会えなくなるのは死ぬほど悲しいけれど、こうすれば安全なはずだ。
「それに…それにっ…カナさんのこと、ほんとはめんどくさく感じてたんですっ!
だから会え、会わないようにして清々しましたよ!あとは、あとはっ…ぁとは…」
 全然嘘の理由が出てこない。全部楽しかった思い出しかない。
「今のを要約すると、あたしに会えなくて寂しかったってことかな」
 もうダメだ。どうすればいいのか分からない。
膝から崩れ落ち、涙が溢れ出てきてくしゃくしゃになった顔を両手で隠した。
最近で一生分のどれくらいの涙を流したのか気になる。
101: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:25:29.55 ID:DOR/zOiN0
「…っば、ばかじゃないんですか……そんなこと、ないですから…っく」
「はいはい、分かったから。ほら立って」
 私の腕を引っ張って扉の前まで連れていき、早く鍵を開けるよう急かす。
「ねぇ早く。携帯に連絡しても無視されるだろうからって、
あたしずーっと待ってたんだけど?」
 ここでグダグダしていれば、周りに目立ってミカに知られるかもしれない。
観念して先輩を部屋に上げた。
 沈黙が続く。先輩はずっと何かを待っている。それはきっと私から話し始めることだ。
そうしないといつまでも居座るつもりでいそうだ。この状況をうまく誤魔化しきれる自信は少しも無い。
 それにしても、洗面所で手を洗いに行った時見た自分の顔は酷いものだった。
目と鼻は泣いたせいで赤くなっている。まともに彼女の顔を見ることができない。
まずはとにかく、さっきのことを謝らなければいけないだろう。
「ぐす、あの……さっきは、すみませんでした。
あんなこと、ほんとは思ってないんですけど、少し、ワケがあって……」
 視界には正座している太ももの上で、もじもじと落ち着きのない両手が映る。
「…それ、その首のやつも関係あるでしょ?」
「えっ?」
 少し気まずそうに私の首にある赤い印を指差す。
先輩に会ったショックで、キスマークのことなど完全に忘れていた。
慌てて自分の腕で首を覆うようにして隠す。休日は忌々しい首輪を外しているので丸見えだった。
102: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:29:48.88 ID:DOR/zOiN0
「あぅ……これはっ、虫に刺されて」
「いや無理があるでしょ…。
まぁ、あたしが何で来たかだけど……実は、あんたの友だちに相談されたからなの」
「えっ、だれが…」
「この間バイト先にいっしょに食べに来てた子達。あとでちゃんと謝りなよ?心配かけてごめんって」
 ヒトミの言っていた考えとはこういうことか。本当に、本当に優し過ぎる友達だ。
「はい……」
「…で、えーっと…その、首のやつは彼氏さんに付けられたものなの?」
 彼氏、普通はそう考えるのが当たり前なのに、やはり悲しくなってしまう。弱々しく首を横に振る。
「ん?じゃあ誰に?」
「……ぉ……なの、…です」
「…?ごめん、聞き取れなかった。もう一回」
「ぉ、女の子っ、に、付けられたん、です」
 告白する声は気まずさからどんどん尻すぼみになっていった。先輩は一瞬間を空けてから反応する。
「……結構驚いた。もしかして、この前相談した件の子?」
「違います…。それに、あの……」
103: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:35:51.50 ID:DOR/zOiN0
 言えない。私が女の子と関係を持っていることに引かれていないのはまだ良かった。
この関係を説明するにはどうすればいい?全て説明すれば、汚れた人だと思われるに違いない。
事態の重さに離れていってしまうかもしれない。
「言いにくいんだったら、答えたいことだけ答えて。あたしが知りたいこと聞くから」
 こんなことをカミングアウトされたら普通混乱するだろうに、
冷静に私を気遣う事ができる先輩には、何を言ってももう大丈夫かもしれないと思わざるを得なかった。
 性的な部分についてはできるだけ曖昧に話してミカとの関係を説明した。
もちろん、きっかけは話していない。
「け、軽蔑しましたよね……こんな私…っ」
 話していくうちに先輩の眉間にどんどんシワがよっていった。
「あの……」
 何も言わないでいる先輩はすごく怖い。
この間をどうしたらいいものかと思っていたところへ、頭に手が伸ばされた。
叩かれると思いつい反射的に肩をすくめてしまう。
「ごめん」
 そう言って私の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「な、なんでカナさんが…」
104: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:44:46.16 ID:DOR/zOiN0
「こんなに大変なことになってるとは思わなくて、
ナオの気まぐれで私と距離空けたのかと思ってた。軽く考えてた、だからごめん」
「そ、そんな…カナさんは何も悪くないですっ」
「けどね、申し訳ないと思うのと同時に、あんたに怒ってる」
 当たり前のことだ。今もこうして先輩を巻き込んでしまっている。
もし先輩がミカに襲われでもしたら、私は、私の心は一体どうなってしまうだろう。どんな行動を起こすだろう。
「なんか勘違いしてそうだから言っとくけど、何で私に相談しないんだーと思って怒ってるの」
「……でも、相談したら、嫉妬したミカちゃんが、何するか」
「あのねぇ、あたしのこと舐めすぎじゃない?」
 今度は乱暴に撫でられた。
「相手が男ならまだしも、女でしょ?
聞いた限りじゃムキムキのマッチョなわけでもないだろうし、簡単にやられはしないと思うよ。
でも…さっき聞いたような状況じゃ、冷静な判断ができないのも無理ない。よく、耐えたね」
 先輩に頭を引き寄せられて優しく抱かれた。
すぐに目頭が熱くなってぼろぼろと涙が流れていく。
私の涙腺はちゃんと機能しているのだろうか。
「ひっ、ぅ….うぅぅ、カナさんっ」
「……よしよし、よしよし…あたしにできることなら協力するから」
 今までずっと冷え切っていた心が、一瞬で温められるのを感じる。
いい匂いだし、柔らかい。全てを包み込んでもらっているような気分になった。
105: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:50:58.00 ID:DOR/zOiN0
「……カナさん」
「どーした?」
 抱きしめられてしばらくした後、アブナイ考えが一瞬頭の中に浮かんだ。
その一瞬が与えた影響は余りにも大きすぎる物だった。
 もう、全てを先輩で上書きしてもらいたい。見て欲しい、触れて欲しい、感じて欲しい。
「これ……」
「えっ…ど、どうしたの……この傷…」
 酷く動揺している。私を見て心を乱してくれているという事実に、体は熱を持った。
左腕に付けられた印を見せ、先輩の手をその上に持って来させる。
傷はまだ塞がりきっておらず、少し引っ掻くだけでまた血が出てきてしまうだろう。
「さっき話した子に、付けられたんです」
「そんな…これ、ひどい……」
 私の腕をとって驚きと悲しみの表情を浮かべる。ここまできたら、私の思いはもう止められなかった。
「…お願いがあります。ここを……傷付けてもらいたいんです」
「……へ…?」
「カナさんに付けられた傷なら、受け入れられます」
「や、ちょっと…!」
106: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:54:39.96 ID:DOR/zOiN0
 返答を待たずに先輩の手をとった。かさぶたになり切っていない柔らかい部分を
愛しい人の爪が削っていく。作りかけの皮はいとも簡単に壊されていった。
「ナ、ナオっ…こんなこと…!」
「あっ…はぁっ…っ…お願いですっ、このまま…んっ」
 
 先輩の顔はいくつかの感情が混ざっている微妙なものに見えた。困惑、同情、軽蔑、恐怖。
今の私は、この人にどう思われているかなどはどうでもよいことだった。
先輩に傷を付けられているという事が何よりも大事だった。
「っ…はぁ……あは…」
 ついさっきまで消し去りたかった傷痕は、一瞬で宝物になった。
まだ足りない。全てを先輩に捧げたい。そのまま自分の服をめくって、
腰の近くの脇腹にある傷も上書きしてもらおうと思ったが、腕に力を込められてしまった。
「なに、してんの…ばか……っ」
「なにって…カナさんに協力してもらってるんですよ」
「こ、こんなの、ナオを痛めつけてるだけ……いっ」
 先輩の手首をつかんでいる手はそれを離さないように強く握る。
話が、違う。
107: ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:57:16.99 ID:DOR/zOiN0
「さっき、言ってたじゃないですか」
「いっ、ナオっ…痛いっ」
「協力してくれるって……!」
「ぅうっ…わ、分かったから、離してっ」
 今は、明らかに恐怖の感情しか見られない。
「っ、はぁ……ぁ、あぁ…んっ」
 幸福感が心を満たす。ミカに傷つけられた時とは何もかも違う感覚だった。
先輩の細くしなやかな指が自分の血で汚されているのを見て、体中の血が沸き立つ。
「……っ」
 苦虫を噛み潰したような顔だ。それに比べて、私はこの溢れそうな気持ちを隠すのに精一杯だった。
108: 夜再開します。 ◆COErr5OWSM 2017/07/15(土) 01:59:56.14 ID:DOR/zOiN0
 幸せそうに笑ったら、気持ち悪がられてしまうから。
113: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:37:25.44 ID:z73y8B/Z0
「……本当に、さっきはどうかしてました、すみません…」
「いや……もう謝らなくていいって。……でももう、あんなことはしたくないよ…?」
「はい……それは…」
 自分でも一体何回謝ったか分からない。
確実に何かに飲まれて暴走してしまっていた。
「それで、これからのことだけど…早行動に移すべきだよ。
具体的には、ナオが暴行を受けてる証拠を確保したほうがいいと思う」
「でも、どうやって……?あ、カナさんが危ない目にあう方法は絶対嫌ですからね」
「えぇ?あたしなら」
「絶対ダメです!カナさんに何かあったら……生きていけないです」
「そんな大げさな…」
 冗談で言っているつもりは全くない。
「じゃあどうする……。うぅん……。ナオはどうしたいの?」
 私はこのことを大ごとにしたくないと言った。かなりデリケートな問題だし、
周りの人に迷惑をかけたくない。関わる人間をなるべく少なくしたい。
実際は一番事態から遠ざけたかった人物を協力させてしまっていることに落ち込む。
「いいの?そうすると、やり方は限られてくると思うけど」
114: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:41:57.87 ID:z73y8B/Z0
「はい、大丈夫です。……実は、思いついたことがあるんですけど」
 提案した作戦を聞いた先輩は激怒したけれど、私は引かない。
知られてしまった今、私が一番頑張らなければいけないのだから、
この方法を閃いた時はこれがベストだと思った。かなり開き直っていた。
 もっと自分の体を大事にしてだとか、他に方法があるはずだとか騒がれた。
二人して引かないとこのままではいつまでも時間がかかりそうなので、私は妥協案を提示する。
これに対しても反対されてしまった。しかし私にはもう折れる気が無いと察したのか、
先輩は口を尖らせながら提案を受け入れた。
 私の身を案じてのことなのだろうが、これは一人でやりたかった。
先輩に見られていたら、どんな精神状態になるか自分でも分からない。
 決行は明後日の月曜日。
115: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:45:24.32 ID:z73y8B/Z0
「ただいまぁ」
「……おかえり」
 私の家に来る時はこのようなやりとりを強制されるようになった。
いつも通り彼女は何か怒ることがない限り、ニコニコした表情をしている。
「珍しいね?ナオちゃんから家に来て欲しいだなんて」
 彼女とリビングに入った時点で作戦開始だ。完璧に怒らせなければいけない。
「さぁて、今日はどんなことしようか
「あの、もう……そういうの嫌…」
 ミカをはっきりと拒絶する。最近反抗することがなかったからか、珍しく困惑の表情を浮かべている。
「……は?なに、いきなり」
「だから、もうミカちゃんとはこういうことしたくないって言ってるの」
 怯んだのはほんの一秒程度で、すぐに体勢を立て直す。
「あぁ、今日は、きつくやられたいんだ」
「ち、違うっ。本気で嫌なんだってば」
 彼女はもうスイッチが入っていた。身近にあるものを思い切り蹴飛ばし大きな音を出す。私の苦手な音だ。
「っ、……ミカちゃんに飽きちゃったから、終わらせたいの。次は、もっと優しい人と付き合いたい……
「……全っ然躾が足りないみたいだね」
 彼女がテキパキ準備をしているのを止めようと手を伸ばすが、また大きな音を出される。
どうしても体が震えて力が出なくなってしまう。怯んでいる隙を突かれて目隠しと手錠を手際よく付けられてしまった。
「あぅっ…く、何を…」
 彼女に軽く押されて尻餅をつく。その後何が飛んで来るのかと待ち構えていたが、何も来ない。
116: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:51:11.66 ID:z73y8B/Z0
(……?)
 何の気配もしない。確かに今までそこにいたはずの彼女の存在が感じられなかった。
「ミ、ミカちゃん?ねぇ、これ外してよ。普通に話し合いしようよ……」
 無反応。その後何度も話しかけてみたが、何も返ってこない。
これでは作戦が失敗してしまう。彼女にアクションを起こしてもらわなければ。
 
 そう思い立ち上がろうとした瞬間、バチンと何かで床を叩く音が部屋に響いた。
「きゃっ!……ミカちゃんっ、お願いだから、暴力は……」
(何かしなる音がしたような……もしかして、ムチ…?)
 部屋には自分の呼吸音しか聞こえなくなった。恐怖で呼吸が乱れる。
何も来ないことが逆に不安を煽っていく。行動しようとすると床にムチのようなものが叩きつけられるので、
いつ自分の方に飛んで来るか気が気でなかった。視界は封じられているので音に敏感に反応してしまう。
「はーっ……はーっ…」
 また心臓が握り潰されそうな感覚に陥る。先輩のことを思う時とは似て非なるものだった。
もうかなり限界は近い。先輩に合図を送ってしまいそうになった瞬間、顔に手を添えられた。
「ひっ、いやぁっ!やぁっ」
「ふふ……ナオちゃん…目隠し、外してあげるから…鏡見てごらん?」
「んぅ」
 頬をつかまれ無理やり鏡の方を向けさせられる。その顔は確かに恐怖で塗り潰されていた。
しかしそれと同時に、頬を赤く染めてもいた。瞳の奥は何かに飢えている。
「っふふ、んふふ、あははははっ」
「……ぁ、ぁ」
117: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:54:35.78 ID:z73y8B/Z0
「ナオちゃんは、生まれつきのドMなんだよ」
「ち、ちがう、こんな……こんなの、私じゃない……」
「でも見てよ?泣いてるけど悦んでる顔。いじめられて嬉しいです、
いじめられたいですって顔。本当にかわいいね……」
「あ、ぁぁ……う、う…」
 ショックを受けて言葉が出ないということを初めて経験する。
大げさだな馬鹿にしていた表現が自分に起こるとは思わなかった。
今まで様々な暴行を受けてきたが、その時自分がどのような顔をしているかは分からなかった。
酷い事実を思い知らされた。
「……あーもう我慢できない。やっていい?絞めていい?いいよね?やるよ?」
 最初から答えを待つ気は無い様で、すぐ首に手がまとわりついてきた。
「か、ぁ……っ」
 今までで一番強く絞められているかもしれない。合図を出すならここしかないけれど、
少しも声を出すことができない。このままやられ続けたら、本当に死んでしまうかもしれない。
その時頭の中では、その瞬間一体どんな感覚になるのか、少し気になってしまっていた。
 それとほぼ同時のタイミングで、クローゼットの扉が開かれる。
118: ◆COErr5OWSM 2017/07/18(火) 23:57:46.63 ID:z73y8B/Z0
「…明らかに、やりすぎ」
 首を絞めているミカは、ずっと遠ざけていたはずの対象が
突然登場したことに驚きの表情を隠せていない。
「はぁ…!?何でお前がここに…っ」
「…ナオがこういうことはもうしたくないって言うから、協力してるの。証拠としてビデオに撮ってた」
 隠れていた理由を述べながら彼女に詰め寄る。
困惑していた彼女は、後退りながらもすぐさま体制を立て直す。
「うっっざいんだけど……ほんとに殺したいこいつ…」
「刑罰については全く知らないからなんとも言えないけど、
警察が見たら絶対黙ってはいないと思う。首思いっきり絞めてたし」
「ふん、同意の上でそういうプレイをしてたんだっての…。ね、ナオちゃん?」
 同意した覚えは無い。ミカのお仕置きが怖いが首を横に振る。
「違うみたいだよ。……変なマネはしないでよ、本当に」
 先輩は先程から抑揚の無い低い声で話している。
本気で怒っている様子に、それ程心配してくれているのかと、こんな状況ながら嬉しく思ってしまう。
「ミカさんは…ナオの弱みに付け込んで、自分の欲求を満たすことしか考えてない。
それも最低のやり方で。この子は混乱して冷静な判断はできなかっただろうし、
心も体も疲れきってる。……もう解放してあげてほしい、お願い」
「ナオちゃんのことは私が一番知り尽くしてる。これから慣れていく段階なんだから、邪魔しないでよ……!」
「あなたがそうでよくても、相手はそうと限らない。
互いの気持ちがどれだけ通じ合ってるか、それが大事。……ナオ、あんたはどうしたいの」
 私は、最初からずっと同じことしか考えていない。
「……カナさんと、一緒にいたいです…」
119: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:01:18.91 ID:YXe5aSfo0
 
 告白紛いのことを言ってしまったと、思わず赤面する。
「……っ…なんでよ、なんであんたなの…。なんで私じゃダメなの…」
 彼女は純粋に悔しがっていた。それに対し先輩は努めて平静に返す。
「多分……会った順番とか、そういう些細な事かも…。
ミカさんが先にナオと会ってたら、全然違うことになってたかもしれない」
 
 激昂して暴れるだろうという私の予想に反して、
彼女はうなだれて静かに泣いた。
「ここまで……ここまでしたのに………私は…」
 彼女の様子を見て、そうさせている原因は自分にあるとわかっていながら、少しだけ哀れだと思った。
理由や形はどうあれ、ミカは本気で私のことが好きなのだということを感じ取れた。
「……」
「……」
 しばらくの間沈黙が続いた。先に行動を起こしたのはミカで、ゆっくりと立ち上がる。
先輩は私をかばうように位置取り身構えてくれた。
120: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:08:09.43 ID:YXe5aSfo0
「…もう……いい……帰る…」
 先輩と2人で拍子抜けする。念の為部屋の中の凶器になりそうなものは全て外に出していた。
予想外の展開に、ここからどうなるのか考えを巡らせていると、ミカは私たちの様子を見て鼻で笑った。
「……いいよ…心配しなくて。あんたのこと、殺してやりたいって思うこともあったけどさ、
実際そんなこと出来るわけないし……。これ以上、どうしようもないから…」
 
 赤く腫れた目で私を一瞥する。その瞳の中に執着心や嫉妬、怒りの感情は見られなかった。
「もう近付かない。……全部捨てるよ、ナオちゃんと関連するものは。……バイバイ」
 短くそう言ってからスタスタと玄関の方へ向かって行く。
このまま別れるのは嫌だと思い、咄嗟に口を開いて別れの言葉を告げる
「ミカちゃん…私…殴られて痛かったし、怖かったよ。
色々束縛強過ぎると思うから、次付き合う人には優しくしてあげて……?」
 私以外の人物は口を開けて唖然としている。無理もない。
今まで痛めつけられてきた相手を心配するなど、自分でもおかしいことだと思っている。
それでも、放って置けなかった。
「また、明日……」
「…ほんとに、ばかでしょ……」
何と言ったかほとんど聞き取れなかったけれど、帰り際手を振ってくれたのでよしとしよう。
複雑な表情ではあるものの、何か諦めがついたような顔をした彼女を見送った後、隣から深い溜息が聞こえてきた。
121: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:13:59.61 ID:YXe5aSfo0
「わ、わかってますよ……何であんなことしたのかですよね」
「そうだね…あほナオ」
「で、でもほら、なんだかほっとけないし、後腐れなく別れた方が復讐とかされなさそうですし……」
「…もう好きにして。はーっ疲れた。怒りと恐怖を抑えるの大変だったよほんとに」
「え…カナさんも怖かったんですか」
 相当怒っていたのは分かったが、怖がっているそぶりは見えなかった。
「あったりまえでしょ…。相手はムチとか手錠とか持ってるやつなんだから、
ブチ切れたら何して来るか…あ、そういえばそれ」
 私の手首を指差す。展開に夢中で手錠を外すしてもらうことをすっかり忘れていた。
「あっ手錠……鍵無かったらどうしよう」
「そん時は一生そのまま」
「えぇ……」
 先輩に拘束されて、そのままでいるのも悪くないと少しだけ思ってしまった。
探していたら玄関の脇にある棚の上に置いてあった。先輩に外してもらう。
 
 擦れて赤くなった手首をさする。
外してくれたのが先輩だからか、ようやく解放されたという実感が強く湧いた。
「っ…あれ、ごめんなさいっ…」
「今はいいから……泣いてスッキリしちゃいな」
 首に抱きついてだらしなく泣く。
彼女の服に涙でシミを作ってしまっているが、今は何も文句を言われない。
122: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:16:47.97 ID:YXe5aSfo0
「ぅぅぅ、ふ、くう…ごめんなさい、ぃ」
「今だけは許したげるから、思う存分どーぞ…辛かったね……」
 この前のように背中をポンポンとたたかれる。子供じゃないんだからと言いたいけれど、
体全部が湯たんぽで温められているようですごく気持ちいいので大人しくしておく。
「ねぇ、そろそろいいでしょ…?」
「も、もうちょっと」
 泣き止んで十分以上経ってもまだ離れない。
せっかくの機会なのだから長く触れ合っていたい。今は後ろからお腹に手を回して先輩を抱いている状態。
「……暑いんだけど」
「照れてるんですか…?か、かわいい、です……」
 先輩の香りを至近距離で感じるのは本当に危険だ。頭がクラクラしてしょうがない。
「…っ」
(なんか、変な気分になっちゃいそう)
「こ、こらっ」
「全然くさく無いですからっ。い、いい香りです、ほんと」
「あー恥ずい恥ずい……早く終わって…」
 五分ほどこうしたやり取りを繰り返した後、先輩は前を向いたままおももむろに口を開いた。
「さっき言ったこと、覚えてる?」
「えっ?」
123: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:19:36.20 ID:YXe5aSfo0
「あたしと一緒にいたい、そう言ったでしょ」
「あ……は、はい」
「どういう意味で言ったの?」
 なんてプレッシャーの強い質問だろう。こっちこそ、どういう意味で質問しているのか聞きたい。
先輩は体をひねってこちらを向く。顔と顔の距離が半端なく近い。恥ずかしくて顔を逸らしても、ズイッと近寄って来る。
「本当は分かってるんじゃないんですか……」
「100%じゃない。だから、あんたの口から直接聞きたい」
 
 もう逃げられない。
「私は、好き…大好きです。カナさんが好きです」
 この際全部言わないと後悔するだろうと、半ば諦めつつ告白する。
「頭の中、ほとんどカナさんで埋まってるんです…。初めて恋した相手で、女の子だけど好きになって……」
 以前相談した時には話せなかったことも明らかにする。
「ミカちゃんと体だけの関係になったのも、カナさんとそういうことしたいから、
なんです。私の好きはそういう“好き”なんです…」
124: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:22:55.47 ID:YXe5aSfo0
 
 しばらく待ってみても反応が返ってこない。不安でしょうがなく思って、
上目遣いに先輩を見ると顎に手を当てて真剣な表情をしていた。
「ふぅん……じゃ次、あたしのどこが好きなの?」
「つ、次、えっ…」
 まさかここで掘り下げられるとは思わなかった。
「えと、その...」
「はっきりと、正直に」
(面接みたい…)
「ま、まず顔は、すごく好きです」
「顔"は"?」
「か、顔もですっ。あと、身体つきもすごく良いと思…」
(…あれ?私今なんて言った?)
 
 先輩は目を細めて口を真一文字に結んでいる。
好きな理由を答える時に最低の答えを述べてしまったことに気付く。
「あ、あの、今のは違くて」
「違うの?」
「いや、違くないですけど、あっ、違うけど違わな……あ、あれ……?」
 自分でも何を言っているか分からなくなってきた。
 
「あの…あの…それだけじゃないです。他にもいっぱいあるんです…」
125: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:27:35.17 ID:YXe5aSfo0
「そうなの?聞かせて?」
(うぅ…)
 イジワルする時の小悪魔フェイス。その顔も好きだ。
「普段自分でかわいいって言っておきながら、
褒められると照れちゃう所…料理が上手な所…面倒見がいい所…頑張り屋さんな所…
お姉ちゃんらしさと子供らしさを両方持ってる所…」
(まぁ、要するに…)
「全部すき……です」
 これで断られても、後悔は無い。
同性の友達に告白されたという爪痕を、先輩の中に残せたら上出来。
「なるほどね……じゃあ、しばらく一緒にいてあげる」
「一緒に……?」
「うん、一緒にいる」
「な、なんでですか。この間カナさん、同性の友達から告白されたら困るって……」
「あぁー、確かに言ったね。」
 それに、と付け足して話し出す。
「今のあんた、ほっとけないし、自暴自棄になられても困るし」
(それって、なんだか、憐れみのような…)
 そう思ってしまうとどうしても暗い顔になる。
「こら、勘違いするな」
126: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:31:07.00 ID:YXe5aSfo0
「あぃたっ」
 
 ネガティヴ思考をデコピンで中断させられる。
「あんたに好きって言われて、嫌な気はしなかった、それじゃあだめ?」
 だめなわけない。ほっぺたをつねって現実かどうか確かめる。
「いひゃい……」
「何やってんの。ハイ早く答えてー、いーち、にー」
「えっ」
 カウントダウンされると焦る。深呼吸してから、はっきりと改めて言う。
「嫌じゃない、ありがとうございます…」
 顔は太陽みたいに赤くて熱い。恥ずかしくて目をそらしそうになったけど、
そうしたら怒られそうなので頑張って目を合わせ続けた。
「ん、よろしい」
 ふにゃっと照れながら笑う目の前の人の可愛さに耐えられず、思い切り抱きついた。
「カナさんっ」
 どゎぶ、とか女の子にあるまじき声が聞こえたような気がするけど気にしない。
 今までは、好きな人のために耐え続けていた。
これからは好きな人と近くにいられる。先輩、多分私は何があっても一生あなたのことが好き。
私は好きな人のためなら、先輩のためなら何でもできる。
127: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:31:54.09 ID:YXe5aSfo0
 
 それに、”一緒にいる”と言ってくれた。
128: ◆COErr5OWSM 2017/07/19(水) 00:33:38.98 ID:YXe5aSfo0
一応終わりです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
感想やご指摘などがありましたら気軽に書いていってください。
129: 以下、
よかった乙
ミカと共依存でズブズブになるのも見たかった
130: 以下、
カナさんがもっとひどいヤンデレになるオチ想像してたらそんなことなくて良かった

131: 以下、

良かった
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