拳志郎「波紋法だあぁぁ?」【後編】back

拳志郎「波紋法だあぁぁ?」【後編】


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2:
寄宿宿の外、弁当屋へ向かう路地裏:
ジョージ 「ふぅ―――、マリオ兄ィには悪いけど、解放されてホッとしたよ」
ショウゴ 「まったくだ……なんなんだ、アイツは。細かいことをグチグチと……部屋など、寝れるスペースがあれば、どうだっていいではないか」
ジョージ 「……実は、僕もそう思う……」
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493:
ショウゴ 「まぁいい。せっかく外に出たんだ。ちょっと息をつくか」
ジョージ 「賛成だ」
二人は、インド人がひしめく路地を歩いて行った。
息をつくといっても、二人の間での共通の話題など、たった一つしかない。
拳法についてだ。
ジョージ 「……なぁ、ショウゴ……」
ショウゴ 「なんだ」
ジョージ 「いい機会だから、聞いてみたかったんだ『君たちはいったい何者なんだい』?」
ショウゴ 「……俺たちは、拳法家だ。俺たちは拳に生き、拳に死す……」
ジョージ 「そうじゃあない、いや……君たちが『拳法家』なのは、わかっている。知りたいのは、キミ達の使う拳法のことさ……知りたいのは、南斗聖拳、元斗皇拳、それに 北斗神拳のことさ……」
494:
ショウゴ 「何が知りたい……聞いても、話すとは限らんが……」 フン
ジョージ 「教えてくれ、君たちの使うどの流派も、すべて恐ろしい力を持っている。なのに何故、世に知られていないんだ」
ショウゴ 「強力すぎるからだ……広く知れ渡れば、危険すぎる。だから秘密にされた」
495:
ジョージ 「その『強力な拳』が使える人は、どれくらいいるんだい?」
ショウゴ 「……そりゃあ言えんな」
ジョージ 「どんな修行をすれば、こんなに恐ろしい力を得られるんだ?」
ショウゴ 「言えんな」 テクテクテク
ジョージ 「キミ達は、どのくらいの規模の集団なんだ?これほどの拳法を身につけるには、それこそすべてをなげうって修行しなければならないはずだ……キミ達の集団は、何を生活の糧しているんだ?」
ショウゴ 「言えんな」 テクテク……
496:
ジョージ 「💢……キミ達の拳法の流派どうしの関係を知りたい……互いに交流はあるのかい?……『どの流派が強い』?」 ムッ
ショウゴ 「ほぉ……」 ニヤリ
ショウゴ 「俺を、挑発する気だな……まぁいいだろう。まず初めの質問の答えは、YESだ」 テクテクテク
497:
二人は、話をしながらインドの泥だらけの狭い路地を進んで行った。
周囲は、雑多な人々がひしめき合っている。壁際には、いくつかの屋台が並んでいた。ときおり、道行く人が屋台に立ち止り、なにやら買い求めている。
ジョージ 「へぇ……それで、教ええくれよ……だれの流派が強い?……イヤ、誰が強い?……」
ショウゴ 「拳力は甲乙つけがたいな……『北斗神拳』と『南斗聖拳』は表裏一体。陰と陽の関係だ。そして、『元斗皇拳』は一時期は我らをしのぐとまで言われた拳法よ……」 ギュッ
498:
ショウゴ 「だが、いま我らが戦ったら、おそらく勝つのは拳志郎だ……俺の南斗聖拳では、まだ奴の使う北斗神拳に勝つことは出来ん……表裏一体と言われながらも、我が南斗は、ながらく北斗の陰に甘んじてきたのは、事実……」
ジョージ 「君が使うのは、確か南斗蒼鸞拳って言ったっけ……南斗聖拳には、さらにいくつもの流派があるのかい?」
ショウゴ 「そうだ。南斗聖拳は108派に別れておる。そのなかで、『南斗6聖拳』と呼ばれる6つの流派が、他の流派を束ねている。南斗蒼鸞拳は、その『南斗6聖拳』の一つよ」
499:
ジョージ 「素朴な疑問なのだけど、108派もあって、どうして一つの流派だと言えるんだい?」
ショウゴ 「すべての南斗は、祖が同じ……我が、南斗蒼鸞拳が源流よ……南斗は一つの共通の源流から発展した拳よ」
ジョージ 「なるほど……で、六聖拳の他の流派は、なんていうんだい?」
ショウゴ 「孤鷲拳、水鳥拳、紅鶴拳、白鷺拳、そして鳳凰拳だ。南斗108派は、其々の業を極め、この5つの流派に集約されていく……そして、最後には我が蒼鸞拳に返る……」
500:
ジョージ 「南斗聖拳は、北斗神拳を破ることを目指しているのかい?」
ショウゴ 「そうだ…俺が旅に出たのも、南斗が北斗に勝つための修行よ……南斗は、俺が……南斗蒼鸞拳、慈母星のショウゴが……」
俺は、北斗の後ろは歩かぬ。
ショウゴは決意に満ちた目で、そう語った。
501:
30分後、宿舎(ドミトリー):
ガチャ
ジョージ 「ただいま、買ってきたよ」
マリオ 「お帰りッ!助かったよ」
拳志郎/クーラ 「ちっ……」
ジョージ 「んん?……はいよ、これが注文のカレー、ターリーさ」
502:
マリオ 「ターリー?このいっぱいカレーが入っている盆のことかい?……ずいぶん色とりどりのカレーが、小椀に入っているんだね」
ジョージ 「そうさ。ターリーって言うのは、大皿にナンと幾つかの小椀を乗せた、インドの伝統的料理のことだよ。とにかく食べてみてくれ」
マリオ 「へぇ……これが、本場の『カレー』ですか」
マリオは、興味津々 というようにテイクアウトのカレーを受け取った。
ナンをちぎると、鉄皿の上に並べられている幾つかの小椀に入ったカレーに浸してみた。それを、ゆっくりと口に入れる。
次の瞬間、マリオは大きくむせた。
503:
マリオ 「ブッッ。かっ……辛い……」
拳志郎 「ウワッハッ……なれねぇと、こっちの喰いモンは辛いよなぁ……」 パンパン
拳志郎 「おっと、いくら辛くても絶対生水は飲むなよ……代わりに茶を飲め」 モグモグ
マリオ 「こっ……コーヒーは、無いのかい?」 ゲホッ
拳志郎 「ねぇよそんなもの。ほら、茶を飲め、茶を」
504:
クーラ 「ねぇ、マリオさん。食べながらでいいからさ、もう少し話してよ……アンタとジョージの子供時代の話をさ」
マリオ 「……うっ」 チラッ……
ジョージ 「なっ……マリオ兄ィ」
ジョージ 「ちょっと、僕がいない間に、いったい何を話していたんだ?」
505:
クーラ 「大したことは話してないわ……アンタとマリオさん……それに、リサリサ……さん?彼女との恋のさや当てなんかを、チョット聞いただけね」
クーラが、しれっと答えた。
ジョージ 「マリオッ!」
ジョージがマリオの襟をつかみあげた。その耳は、根本まで真っ赤だ。
マリオ 「いいじゃあないか、それに、勝ってエリザベスを手に入れたのは、キミだ」
マリオ 「キミが恥ずかしがる話じゃない」
506:
ショウゴ 「ほぉ……マリオ、つまり貴様は『負け犬』だった。というわけだな?」 ニヤリ
ショウゴ 「貴様は、かつて女を巡ってジョージとやりあい、負けたと」 ニヤニヤ
クーラ 「コラッ!失礼なことを言うんじゃないッ!ショウゴォォッ」 バシュッ
ショウゴ 「ああ……すまん」 (鼻血)ボタボタ ……
507:
マリオ 「まぁ、それは本当だからね」
『負け犬』と呼ばれたマリオは、いたってクールに肩をすくめた。
マリオ 「俺がとあるご婦人を巡って、ジョージと争ったのは、事実さ。結局そのご婦人が、ジョージを選んだこともね」
拳志郎 「……」
508:
マリオ 「でもね、俺には、そのご婦人に勝るとも劣らない素敵な彼女がいるんだッ!」 ぱぁぁ―――ん
マリオのクールな顔が、一転した。満面の笑みを浮かべ、そそくさと懐から写真を取り出す。
そこに映っているのは、マリオと、その家族だ。
マリオ 「ほら、これが俺のママさ。見てくれよ。そしてこれが奥さん。二人とも、美人だろ? そしてこれは……」 ペチャクチャ
509:
マリオ 「これは、長女のレペッカ、かわいいだろ?それから、長男のファビオ コイツはしっかり者だ、賢い次女のクララ……それから、この赤ん坊が、シーザーだッ……」
クーラ 「シーザー……すごい名前をつけたわね」
マリオ 「そうだろうっ!だけど俺には分かっているんだ。コイツは大物になるってね……決して、名前負けしない男に、この子はなるはずさッ」
そのとき、クーラの視界に、そそくさと部屋を出ていくジョージ、拳志郎、そしてショウゴの三人が見えた。
510:
クーラ(しまった……)
結局、一度火がついてしまったマリオの一族自慢は、日が暮れるまで延々と続いたのであった。
511:
数時間後
………
……

マリオ 「ハハハハ八ッ」
マリオ 「どぅだ、この子かっわいいだろぉおッ?愛くるしいだろっ!完璧だろッ!……」
クーラ 「……そうね、とってもカワイイワ……」 ゲッソリ
ハハハハッ
マリオは大きく伸びをした。
512:
マリオ 「まだ話したりないけど、少しおなかが減ったね……ちょっと休憩しようかッ」
クーラ 「ええ……」
マリオ 「部屋もすっかり暗くなってきたね……明かりをつけよう」 スチャ
マリオ 「ええと、ランプは……ああ、こんな隅っこにあったのか」 ボッ
マリオ 「窓を少し開けよう。夜風が入るぞ……」
マリオ はランプを持ったまま、部屋のベランダに続く ドアを開いた。
513:
銃声 ”タァ――ンッ“
マリオ 「クッ……うぉっっ」
クーラ 「マリオッ!」
518:
クーラ 「ハッ……狙撃された?」 
ランプを消す音 “フッ”
クーラ 「マリオッ……大丈夫かッ? しっかりしろ……」
519:
マリオ 「くっそ……ってッ」
鉄球 “ギュルギュルギュルッッ”
マリオ 「イッテェ……弾丸は、なんとか皮膚の上で、止めたよ。僕は、大丈夫だ」
マリオの手のひらには、鉄球が回っていた。その手を自分の心臓に持っていき、皮膚の上で止まっていた弾丸を、ほじりだす。
マリオ 「突然狙撃された……だが、これはいったい、どういうことだ?君たち、なんか恨みでも買っているのか」
520:
クーラ 「そりゃあ、私たちに恨みを持っている人なんて、ゴマンといるだろうけど……」
第2弾 “タァ――ンッ!タァ――ンッ”
クーラ,マリオ 「クッ……」 シャッッ
521:
ドアの開く音 “ガチャッ”
拳志郎 「どうしたッ」
ジョージ 「マリオ兄ィッ……今のは?」
ショウゴ 「うるせぇ―ゾ。静かにしろッ」
マリオ 「来るなッ!」
第3弾“タァ―――ン!”
522:
ショウゴ 「クッ……」 ポタポタポタ……
拳志郎 「おい、大丈夫か??」
ショウゴ 「フン……油断したわ……左腕を撃たれた……だが、こんなかすり傷、どうってことないワ」
クーラ 「なに、イキガッテルのよ、いいから傷口を見せなさい」 グイッ
ショウゴ 「ウグッ……」
クーラ 「ほら、痛いんじゃない。どれ……」 ジィ――
ショウゴ 「余計なお世話だッ!そんな女々しい治療など、不要ヨ」
クーラ 「はぁ?なに寝言を言っているの?」
523:
ショウゴ 「ふざけているのは貴様だッ!この南斗蒼鸞拳のショウゴ、こんなかすり傷での治療など、不要っ」 バァ――ン
クーラ (イラッ…)
ジョージ (面倒なヤツだな……)
ジョージ 「ショウゴ……わかった……だから、ちょっと落ちついてくれ」
ショウゴの肩をたたく音 “ポン”
ザ・ソーンの針 “チクリ”
524:
ショウゴ 「なっ……」 バタン …… グゥ――
ジョージ 「クーラ……ショウゴを眠らせたから、早く傷口を見てくれ」
クーラ 「サンキュー ジョージ……助かったわ……それで、このバカの怪我の具合はどうかしら?」 ジィ―――
クーラ 「うん……大丈夫ね。弾丸は、ショウゴの筋肉だけをきれいに貫通して反対側に抜けている。神経とか、腱とか、骨とかには被害がないわ」
525:
ジョージ 「拳志郎、これはもしや……」
拳志郎 「おお、『奴ら』の襲撃かもな……おりゃあ、偵察してくる。ここは任せたゼ」 ダッ
ジョージ 「おっ、オイ……拳志郎のヤツ、窓から飛び降りたぞ……まったく、無茶苦茶な奴だ……」
526:
拳志郎が着地した音 “ダァッッ!”
地面を蹴りこんだ音 “ザシュッ”
拳志郎 「よし、物陰に隠れたぞ」
銃撃 “タァ――ンッ”
拳志郎 「オォ――ッと、危ないねェ……」 ニヤッ
527:
そこは、日中にジョージとショウゴが昼飯を買いに出かけた、路地裏だ。
日中は人ごみにあふれていた路地は、今は人っ子一人いなかった。
いや、先ほどまでは誰かがいたのだろう。
周囲にはゴザが敷かれ、コップや、皿、紙屑などが散乱していた。
銃声を聞いて、大慌てで隠れたのだ。
その証拠に路地の隙間を覗き込むと、おびえた目が、奥からチラリと見えた。
528:
拳志郎 (さて、どこから撃ってきやがる……) ソロリ……
拳志郎 (………)  クンクン……
拳志郎 (そこかッ) ダッ!
拳志郎は、スラム街の狭い道を一気に駆け抜けるッ
目指すは、先ほど銃が発射されたらしき、物見やぐらだッ!
529:
ザシュッ
グイッ……
拳志郎 (ふっ……軽身功だ。奴らには目にも止まらない動きだったろうぜ) ギュッ グリッ
スタッ
拳志郎は宙を舞い、物見やぐらに飛び乗った。
拳志郎 「チッ……もぬけの殻かよ」 クンクン
拳志郎 (ぬっ?これは……)
物見やぐらの上のステージには、踏みつぶされたタバコの吸殻が山となって散らかっていた。
そのタバコの匂いに混じり、うっすらと硝煙のにおいが漂っていた。
530:
ドアの開く音 "バタン"
ジョージ 「拳志郎……どうだった?」
拳志郎 「……逃げられた。見事な引き際だぜ。きれいさっぱり、姿をくらませやがった」 ドガッ
クーラ 「そう、じゃあ、誰が襲ったのかわからないの?」
531:
拳志郎 「ああ、わからねぇ。奴ら、プロだぜ……だが、面白いものを見つけだぜ。ほらよ、ジョージ」 ポイッ
ジョージ 「オイオイ……」 キャッチ
ジョージ 「!?なんだい……これは?」
拳志郎 「こりゃあ、拾ったモンだ……俺たちを襲ってきたポン助どもの隠れ場からよ……」
ジョージは、黙り込んだ。拳志郎から受け取った物を、ポケットにしまう。
532:
クーラ 「ねぇ、聞いてよ二人とも……また襲われるかもしれないわ。ショウゴは怪我しているし、これ以上、ここにいるわけにもいかないわよ……」
拳志郎 「そうだな。ここを出るぞ」
拳志郎 「マリオ、おめーは動けるのか?」
マリオ 「俺は、ゼンゼン大丈夫だ」
マリオ 「だが、こんな時間にどこに行くって言うんだ?外国人の俺たちが、どこかに行くあてなんて、あるのかい?」
533:
拳志郎 「ああ……それは問題ない」
拳志郎 「俺たちがここ数か月、ボディ・ガードをしてやっている奴がいる……そいつのところに行く」
マリオ 「ボディ・ガ―ド?」
拳志郎 「ああ、そうだ。敵が多い奴だからな……よし、手荷物をまとめたら出発だ」
ジョージ 「ちょっとまて、ショウゴはどうする? ザ・ソーンを解除して、自分で歩かせるかい?」
クーラ 「そのまま眠らせたまま、担いでいきましょうよ……起こすと、メンドクサイわ」
拳志郎 「俺も、クーラに賛成だぜ……担いで行こうや、なぁジョージェ……」
ジョージ 「ボクは、ショウゴをかつぐのは、嫌だ」
534:
クーラ 「あら、レディに荷物を持たせる気じゃあないわよ、ねぇ……」
ジョージ 「……拳志郎、お前がショウゴを、運べ」
拳志郎 「オイオイ、俺だってごめんだぜ……こりゃあ、『漢の勝負』で、きめるしかねぇだろ」
拳志郎の拳 “グイッ”
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
535:
ジョージ 「……」
マリオ 「……」
コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ" コ"
拳志郎 「……行くぜ」
ジョージ マリオ 「オウッ!!」
拳志郎 ジョージ マリオ 「じゃんけん、ポイッ!!」
536:
観光ではなく修行を兼ねた拳法家の旅だ。
一行の中に、大荷物を持っているものはいなかった。
荷造りはあっという間に終わり、一行は夜のデリーの町へ飛び出した。
先ほど拳志郎が外へ出た時と同様に、夜の街には人っ子一人いない。
暗い夜道を、一行は走る。
537:
(漢の勝負に負けた)ジョージ 「クッ……重い……」
(漢の勝負に勝った)拳志郎 「ほら、ジョージ……てめぇ、ちんたら走ってんなよ」
(漢の勝負に勝った)マリオ 「ケン……そりゃあ、言いすぎだろ……」
(漢の勝負に負けた)ジョージ 「💢……いや、いいよ。ショウゴなんて、軽いモンだ……」 ハ――……ハ――……
(勝負をしていない)クーラ 「ほら、三人ともベチャクチャ話しながら走ってるんじゃあないわよッ!」
541:
タタッ
ジョージ 「マリオ兄ィ、足元に気を付けなよ……」 クルッ
タッタッタッ……
ジョージ 「インドの路地には、色々なものが『落ちている』からね、間違って踏むと嫌な思いをするよ」
グニュッ
マリオ 「……できれば、もう少し早くいってくれると、助かった……」
ジョージ 「あ……ゴメンよ、マリオ兄ィ……」 ポリポリ
542:
マリオ 「ところで、俺たちはこれからどこへ行くんだ?教えてくれないか」
ジョージ 「ああ……」
ジョージ 「これから行くのは、トキシムって名前の男のところさ」
マリオ 「トキシム?インドの人かい?どっかで聞いたことがあるような……」
ジョージ 「……」
543:
マリオ 「「ジョージ……その、トキシムって人は、どんな人だ?」 ピタ……
ジョージ 「トキシムさんは……革命家だよ……ニューデリーに来てからであった……彼は、インドを我が大英帝国から独立させることを目指している……非暴力による、革命さ……」
マリオ 「!?なんだってぇ……それで、大英帝国からの独立を夢見る男に、『大英帝国軍人』のキミが、何をしている?」
ジョージ 「ボクは、クーラの頼みで、『ある計画が実行に移されるまでの間』、トキシムさんの身辺警護に協力している……マリオ兄ィを待つ間、やることもなかったしね」
マリオ 「……いいのかい?それで」
544:
マリオは驚いた。ジョージは栄えある大英帝国の軍人だ。それが、大英帝国からの分離独立を主張する一派に協力している。これは、軍法会議モノの裏切り行為だ……
ジョージ 「……もちろん、これで『いいのさ』」
ジョージ 「正直、どう考えても理は彼らの上にある……間違っているのは、我が大英帝国さ」
マリオ 「キミが納得しているのなら、俺は何も言えない。だが、本当にそれでいいのか?」
ジョージ 「……ボクは、何があっても僕が思うまま、『自由に生きる』。これが、今の僕がしたい事さ……」
545:
マリオ 「……」
ジョージ 「マリオ兄ィ……『ローラット法』のことを、知ってるかい?」
マリオ 「いや、詳しいことは知らない」
ジョージ 「インド総督に、『逮捕令状なしの逮捕・裁判抜きの投獄を行う権限』を与える法律さ……もともとは、インド総督はこの間の世界大戦のときに、自治権の拡大を約束していたんだ。戦争に勝つためには、インドの協力を得ることが必須だったからね……」
マリオ 「……」
ジョージ 「それが、戦争が終わったとたんに手のひら返しさ……やり口の汚らしさに、反吐がでるよ……」
ジョージの手 “ギュッ……”
ジョージは、先ほど拳志郎が手渡してよこした、『襲撃者の残した遺留品』である、イギリス陸軍支給の煙草のケースを握りしめていた。
546:
やがて、一行はトキシム……と言う男がいるであろう路地についた。
路地の入口には、大男が二人、立っていた。
拳志郎 「よぉ、馬鹿デカ兄弟」
大男1 「何用だ……貴様ら」ムゥ―――ン
クーラ 「……実は、ドジったのよ」(……拳志郎、アンタが話すとこじれるから、引っ込んでなさい)グイッ
547:
ラーガ 「なんだと」 ギロ
クーガ 「キサマら……我らが『ことを起こす』まえの大事な時期なのは、知ってるであろう?まさか、下手を撃ったのではないだろうな? まさかとは思うが、『敵』につけられたり、していないだろうな?」
マリオ (敵?どういう事だ?)
クーラ 「そんなヘマはしないわ……わかっているでしょ。それに、私たちが襲撃を受けたのは、アンタ達のために警護をしていたからに、決まっているわ……アンタ達にも、責任の一端はあると、思わない?」
ラーガ 「……減らず口を……だが、いいだろう。トキシム様への面会を許そう。ついてこい」 スタスタ
548:
ラーガ 「……」 スタスタ
ラーガ 「……」 スチャッ

ラーガ 「トキシム様。用心棒ど……いえ、拳法家たちを連れてきました」
トキシム 「おお……ラーガ……いつ私が、身辺を守ってくれと頼んだのだ……だが、これも私の事を思ってくれてのこと。私のために骨をおってくれて、ありがとう」
マリオ (この男が、トキシム……ずいぶん、粗末な衣服を着たやっぽっちな男だな……それにしても、スゴイ格好だ)
549:
トキシムと呼ばれた男は、頭頂部をそり上げ、軽くウェーブのかかった銀髪を後ろ髪だけを伸ばすという、特異なヘアースタイルをしていた。赤い染料で頭頂部と頬に二本の筋を描いているのが、どことなく不気味であった。
トキシム 「拳法家の方々、ワザワザこの老人の為にご足労いただき、恐縮の極みじゃ」 ペコリ
トキシムが頭を下げると、ジャラリと手首につけた指輪が、音をたてた。
マリオ (なんだ、彼は……あの首にかかっているネックレスは、頭がい骨じゃあないか……)
550:
ラーガ 「いえ……この者どもは、今回はむしろ保護を求めてやってきたのです」
トキシム 「ほぉ……拳法家どのが、我らの保護を……?」 マジマジ
拳志郎 「よぉ、トキシムのオッサン……ちょいと、世話になるぜ」 ドガッ
ラーガ 「ケンシロウ、キサマ……口を慎めッ」
トキシム 「ラーガ……何をツマランことを……細かなことで、いちいち目くじらを立てるな」
551:
ラーガ 「ハッ……お言葉ながら……」
トキシム 「ラーガ……『ワシが良い』と言ったのじゃぞ……見れば怪我人がいるではないか……すぐさま治療を施すのじゃ」 ギロリ
ラーガ 「失礼しましたッッ」 シュタッ
ラーガ 「おい、ジョージ……ショウゴを連れて、こっちにこい。治療をしてやる」 グイ
ジョージ 「……わかった。頼むよ」 スタスタスタ
552:
トキシム 「さて、客人……歓迎しますが、できれば事情を話してもらえるかな」 クルリ
クーラ 「ええ……トキシム様、説明します。実は……」 カクカクシカジカ
553:
翌朝:
拳法家たちは、まるで自分の家のようにくつろいだ格好で、トキシムの館で朝食を喰らっていた。
クーガ 「……キサマら……」
拳志郎 「なんだぁ、クーガ……お前も食えよ、このサモサ、うめぇぞ……ほら」 ガシッ
クーガ 「キサマらっ!居候の身分で大概にしろッ!!」 ブンッ
ショウゴ 「クーガ、怒ってばかりだと、体に悪いぞ、やめておけ」
ジョージ 「食料を粗末にするなんて、感心しないな……」
クーガ 「誰のせいだッ!誰の!!」 ハ―ハ――
554:
ラーガ 「まぁ、いい……こうやって、お前たちが来たのも神の縁だ……どのみち、今日はお前たちを呼ぶつもりだったからな」
クーラ 「!?どういうこと?」
ラーガ 「お前たちに、仕事だ」
拳志郎 「おおっ、警護か……それで、今回はどこで、相手は誰だ?」
クーガ 「警護の対象は、トキシム様だ……今日、トキシム様は対立する教団の寺院に赴かれる……お前たちは、トキシム様の身を守れ……」
560:
………
トキシム 「客人……すまんが、クーガとラーガがうるさいからな……頼まれてくれるか?」
拳志郎 「『対立する教団』ねぇ……それで、どうしてそんな所にいこうってんだ?オメェ?」
クーガ・ラーガ・クーラ 「コラッ!なんだその口の聞き方はっ?」
拳志郎 「あぁ――――ん?俺の口の聞き方に、なんか文句あるのか?人間なんざ、どいつもこいつも、死んじまえば、ただのクソ袋じゃねーか」
クーラ 「アンタね……そんな屁理屈を言ってるんじゃね――っ。アンタには一般的な『大人としての立ち振舞い』ってぇのが、まるで足りないって言ってるのよッ!」
拳志郎 「あぁぁ?『大人としての立ち振舞い』だぁ?なんだそりゃ、食えるのか?」
クーラ (コノヤロ――) プルプル……
561:
トキシム 「ハッハッハッ……イヤイヤ、拳志郎の考え方は、正しいな……確かに死ねば、我もお前も、ただのクソ袋よ」
拳志郎 「おう……それで、その教団ってぇのは、なんてとこだ?」
トキシム 「これからワシがいくのは、シッ・シィ――ネ教団よ」
クーラ 「はぁ?『シッ・シィ――ネ教団』ですってぇ……アンタ、あの極悪非道のテロリスト教団のところに行こうってぇのぉッ!」
ジョージ (クーラ……君も口の利き方も酷いぞ……)
562:
トキシム 「なに、大したことじゃあ、ありゃせんヨ。ちょっと挨拶に行くだけヨ。確かに、奴らのところにゃ、少ぅしばかり血の気の多い子供が多いから、小うるさいがの……」
クーラ 「『ちょっと血の気の多い』ですってぇ」 ガシッ
クーラ 「奴らが何をやっているのか、アンタも知ってるでしょ! 『シッ・シィ――ネ教団』は血も涙もない、犯罪組織ですッ! 誘拐ッ! 殺人ッ! 金を積まれりゃ何でもやるヤツ等じゃないっ!噂じゃアヘンの密売にも手を出しているって、話よ」 バンッ!
563:
トキシム 「ほっほっほっ……わかっとるよ。だが、奴らも『大英帝国』を憎んでおり、『何らかの行動』を起こそうとしておる」
ジョージ 「……だから、『悪』とわかっていても『手を組む』のか?」 イラッ……
トキシム 「逆じゃ、奴らには『我らに手を出すな』『何もするな』と言いに行く」
ジョージ 「……」
トキシム 「あの愚連隊どもが暴れだしては、『大英帝国軍』の銃が、罪もない民衆に火を噴く口実をあたえるだけじゃ」
564:
ジョージ 「……」
拳志郎 「なるほど、面白そーな仕事じゃあね――か……引き受けたぜ」
ショウゴ 「……オイ、いつからウヌが、俺たちの代表になった?キサマ一人で勝手に話を受けるな」
クーラ 「ショウゴ……言いたいことはわかるけど、トキシム様にはずいぶん世話になったじゃない?それも、もとはと言えば、アンタの治療のためによ……断るなんて、不義理が出来るわけないでしょ」
565:
ショウゴ 「……フン、好きにしろ」 プイッ
クーラ 「じゃあ、手筈通りにやりましょう……ショウゴ、『ちょっと右手を撃たれた』だけのかすり傷なんだから、あんたにも働いてもらうわよ。……ショーコに戻って」
ショウゴ 「……」 スタッ
ショウゴは黙って路地の奥に隠れ、次の瞬間、ショーコの姿になって表れた。
ショーコ 「……これで、満足?」 ハァ――ン♡
566:
マリオ 「なぁっ? あれっ? ショウゴは何処に……あの子は……えっ????」 キョドキョド
ショーコ 「……」
ショーコのウィンク “パチッ”
マリオ「えぇぇっ?何だぁ?……こ、こりゃぁ……」 タラリ……
ジョージ 「……マリオ兄ぃ、『ショーコとショウゴ』のことは、あとで説明するよ……」 ポン
ショーコ 「初めまして、マリオ・ツェペリさん……私は、『ショーコ』よ、よろしくね」
マリオ「おっ……おう……」 タジ……
567:
拳志郎 「それで、クーラ、これからどうする」
トキシム 「わしゃあ、もう出るぞ」
クーラ 「……わかってるわ。私と、ショーコがトキシム殿の近くを警護するわ」
クーラ 「拳志郎、マリオ……それから、ジョージ……アンタ達は、私たちから少し離れたところを、身を隠しながらついてきて。私たちの周囲を警戒してね」
拳志郎 「おお、まかせとけや」 ポン
568:
トキシム 「さすが、頼もしいの……ところで、拳志郎、ジョージ、沐浴は済ませてきたかね?
ガンガーで沐浴を済ませんと、奴らの寺院には入れんぞ」
拳志郎 「……ああ、そいつは、バッチリ済ませてきたぜ……」 グッ
ジョージ 「……違いないね」
569:
………
とある屋根の上
潜んでいる男 「フフフ……、ようやくトキシムが出てきたか……奴さえ殺ッチまえば……クククク……ハッ?? ガブっ!」
マリオの鉄球 “ギャルリッ、ギャギャギャッ!”
潜んでいる男 「うぉつッ!何だぁ?いきなりワイヤーがッ……」 グルグルグル バタッ
570:
マリオ 「フッ……俺の鉄球は、俺の意思を自在に反映して回転する……こっちはかたづけたぜ、ジョージ、拳志郎ッ」 グッ
ジョージ 「さすが、マリオ兄ィ……ボクのほうも、済ませたよ」グッ
ジョージの足元に這いつくばる男 「Zzzzz……」
571:
ジョージは、マリオに向かって親指を立てて見せた。
マリオには、ジョージの足元に寝転がる男の周囲に『蔓薔薇のような像』が、微かに見えていたのだ。
マリオ (ザ・ソーンの眠り……出し惜しみしなくなったな……フフフ、少しはジョージも、自分の『血の定めと能力を受け入れられるように』なってきたのか……)
拳志郎 「よぉ……こっちに来いよ、『尋問』を始めるゼ」
572:
拳志郎の横でひざまづく男 「クッ……体が動かん……こ、このガシム様が……」
拳志郎 「よぉ……話せよ。『お前たちのリーダーは、誰だ?何処にいる?』」 ポン
ガシム 「誰が、話すか……」
拳志郎 「ああ、お前は話す必要はないね。だが、場所は教えてもらうぜ……」
573:
ガシム 「!?ハッ、なっ……なんだ?う……うでが、勝手に……」 グググッ……
拳志郎 「いま、頭顳(ずしょう)っちュー秘孔をついたぜ。お前の腕は、お前の意思とは別に動き、俺が質問した奴がいる方向を指し示す……」
ガシム 「くっ……くそぉっ」 ピタッ
574:
ジョージ 「……これは、不味いな」
拳志郎 「ああ、ヘタを撃ったぜ……」 ポリポリ……
その男、ガシムが指さしたのは、まさにトキシム達が目指していた、シッ・シィ――ネ教団の寺院であった。
マリオ 「!?突っ込むぞ、拳志郎、ジョージッ!!」 ダッ
575:
………
一方、トキシムとクーラ、ショーコの三人は、シッ・シィ――ネ教団の寺院の中の、一番奥の部屋に案内されていた。
同行していたクーガとラーガは、寺院のロビーで足止めされている。
三人の回りは、血走った男達で溢れていた。
576:
団員1 「まっ……マビィィ―――ゼェ、たっ、たまんねぇ……」
団員2 「うおっ、すげェイ――匂いだぁ………」
団員3 「アヘヘヘ……がっ、がまんできねェ――」 ガシッ! モミモミモミ……
577:
クーラ (ぐっ……私の体をモンできやがった……💢ふざけんなよ……だが、今暴れたら警戒されちゃう……ここは、我慢するしかないわね……だが、コイツ………後で絶対殺すッ!💢 💢)
トキシム 「こりゃ馬鹿ガキ、うちのモンに何をするんじゃ……」 グィ
団員3 「あぁ?邪魔すんなッ クソじじぃッ!おりゃあ、今からこのネーちゃんと『楽しむ』んだからょ」 バッ!
578:
トキシム 「ホッホッ……」 グニャリ ググッ グゥィ――ン
団員3 「うぉおっ……なんだこのじじぃ、まるでタコみてぇに手足がグニャグニャと伸びて……」
トキシム 「フォフォッ、この馬鹿ガキに、ちょっと『礼儀』を教えておこーかのうっ」 ギリギリ
579:
ショーコ (へぇ、このおじーさん、中々やりますね……手足、身体中の関節や腱を、自在に収縮させるなんて……)
団員3 「ガッ……い、息が……」 ガクリ
582:
団員の一人が、トキシムに絞め落とされた。残った二人の団員が、憤ってトキシムに駆け寄った。
サッカーボールキックを見舞うッ!
団員1 「てめっ、このじじぃッ!」 バッ
トキシム “グニャッ”
団員2 「死んだぞ、てめぇッ」 ドガッ
トキシム “グニャリ”
トキシム 「フォフォッ!」
583:
襲撃者たちの蹴りを、トキシムは驚異的な軟体によってぐにゃりと避けた。
トキシムが、頬を膨らませたッ
ヴァンッ
団員1 、団員2 「うぉぉぉッ! あっちィッ!」 バタバタバタ
ショーコ (こんどは、火を吹きましたわ……ホントに、もうなんでもありなのネ……)
584:
団員1 、団員2 「ひっ……こ、この化け物め……」
トキシム 「隙ありじゃ、喰らえッ!ダブルズームパンチッ!」 ドガッ
団員1 、団員2 「グアッ」 バタン
クーラ (さすがはラーマ・ヨガの達人ね……北斗・元斗・南斗相手ならいざ知らず、この程度の腕の奴らが相手なら、私たちの警護は必要ないわね……)
585:
ラーマ・ヨガ
――――――――――――――――――――――――
一般にインドに伝わるヨガの神秘性は広く知られるところであるが、その中でも 別名「黒ヨガ」と呼ばれ、その奇跡に近い数々の秘奥義で恐れられるのが、このラーマ・ヨガである。
その特異性は 骨の骨細胞組成さえも変え、自由自在に変形させることを可能にすることにある。
そして 黒ヨガと別称されるように、驚異の殺人 格闘技として発達した。
ひとりで千人の兵にも匹敵する戦闘力のすさまじさゆえに、時の藩主達に弾圧され、継承者は絶えたと伝えられている
――――――――――――――――――――――――
民明書房刊「インド人も吃驚!ヨガの奇跡」より
586:
トキシム 「いい加減にしろ、ウダ……トットト顔を出さんと、コイツら全員、ノシちまうぞ」 バァン
トキシムが見えを切ると、物陰から、なにか『キラキラする男』が、姿を現した。
590:
………
ウダ 「クックックックッ……何が『非暴力主義だ』笑わせるわ、トキシムのじじぃ……」 ザッ

トキシム 「きたか、ウダ………」
ウダ 「久しいな、トキシム。なんだ、お供を変えたのか?あのムサイ、バカデカ兄弟はクビにしたのか?……良いことだ。少しはじじぃも、『美』と言うものがわかってきたようだな」 ヴァァ―――ン!
591:
ショーコ 「こ、コイツ………」 ゴクリ
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
クーラ 「ま、まさか……、あの悪辣なシッ・シィ――ネ団の長が、そんな」 チラッ
ショーコ 「何みてんのよ、クーラ💢……」
592:
ウダ「ふっ、どうした女……わが美しさに、声も出ないか……」 ビシッ
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
クーラ 「……」(ううっ……うっわぁ――。アイツ、なんか自信たっぷりに、変なポーズとってる……突っ込むのも嫌だ……しかも、あんなゴツゴツ、ムキムキの体のくせに、チークを入れて、口紅を引いてやがる……ウッゲェ――)
593:
ウダ 「声も出ないか……まあ無理もないな、女。圧倒的な美を目の当たりにすれば、声もでなかろう」 ファサッ
トキシム 「相変わらずじゃの、ウダ」
ウダ 「で、エセ『非暴力主義』の男が、なんのようだ?」 ンン?
トキシム 「貴様と交渉にきた……確かに、我らはこれまでいがみ合ってきた。我らは相容れぬ……」
ウダ 「……続けろ」
トキシム 「だが、思想、価値観、行動は相容れないとは言えど、我らには共通の敵がいる……一時的に足並みをそろえることは、できよう」
ウダ 「なんだ貴様?何を言っている、さっぱりわからんな?何を考えている?」ハテ?
トキシム 「フム、少し長い話になるが………」
594:
ペラペラペラ……
トキシム 「………※※※※………」
クーラ (なっ……長いッ!さすが老人……話が長すぎるッッ!!) ウゲェ――
ウダ 「フム、話は聞いた……だがヤハリ気にくわんな……『非暴力・不服従』……そんな、お花畑な考えが通るのか?」 ニヤニヤ
595:
トキシム 「お花畑……悔しいが、世界の7つの海を支配する『世界最強の帝国』に、我らがインドが『戦って』勝てると思うほど、ワシゃあ、お花畑ではないのじゃ」 クッ
ウダ 「……確かに、奴らはちょっと強いな……だが、初めから負けを認め、奴らに降参してどうする?」 フン……
トキシム 「何を言っとる。ワシがやっとるのは、『非暴力・不服従』じゃ。暴力を否定してはいるが、奴らの言う事など聞かんワイ。それに、『非暴力』とは、やられっぱなしのことじゃあ無いぞ。降りかかる火の粉は、キッチリ振り払う……キサマもワシの力は、知っておろう?……」
596:
ウダ 「ようは、我らに『盾』になれ……と言うことだな、貴様らがお花畑の中を行進している間に、イギリス兵を足止めしろと」
トキシム 「……我らはイギリス政府に、『自治権を求める』ための行進をする……貴様らは、同じ時期にインド兵の気を引き付けるようなことをしなければ、それでいい……」
ウダ 「クッ………ク、クックッッ…………ハッハッハッ」
クーラ 「……むぅ、ウダから、殺気が…」
ショーコ 「トキシムどの……ここは一端引いて………」“ジャッ”
ウダ 「ウッヒャッヒャツッ!」
597:
バタンっ!!
何者かが飛び込んで来た音 “ドジャァァンン”
? 「ウォォォッ!」 ドガガガガッ
トキシム 「なんじゃと、マシンガンだとぉ?ウダ、計ったかッ!」
クーラ 「伏せてッ トキシムどのッ」 ガバッ
ショーコ 「ふっ、銀玉鉄砲が、それがどうした。鳳凰の構えッ!……鸞足ッ」 ザザザッ!
598:
ショーコは、両腕を高く掲げた。上半身を伏せて、まるで空を舞う鳳凰のようなポーズを一瞬とってみせる。
そして次の瞬間、マシンガンを持った男の懐へ飛び込むッ!神の踏み込みだッ!
ショーコ 「喰らえッ!鳳凰十字拳」 ザジュッ バリっ
? 「グアッ」
ショーコの手刀が、襲撃者の体を水平に斬るッ!
続く蹴りが、襲撃者の体を縦に切り裂くッ!
襲撃者は十文字に斬られ、地に伏した。
599:
ウダ 「ほほぅ……その踏込み、十字の傷……キサマ、『南斗鳳凰拳』を使うか……面白いッ」 ザザッ!!
クーラ 「やるのかッ!!」 グッ
ウダ 「フッ……伝衝裂波ッ!」 ザシュッ
物陰に隠れていた敵 「ウギィッッ」 ブシャッ……バタン
クーラ 「なっ……」
600:
ウダ 「こやつ等は、先程マシンガンを持った男が注意を引き付けている間に、侵入してきた男たちだ……たった今、俺が倒したがな……」
◆◆◆◆◆
扉が開く音 “バガッ”
ジョージ 「みんな、無事かッ?」 ダッ
拳志郎 「イヨッ……悪いな、何匹か見逃しちまった」
マリオ 「ハァ――、ハァァァ―――」 ゼーゼー
601:
クーラ 「アンタ達ねぇ……ボディガード失格よ」
ジョージ 「……クーラ、すまなかった。でも、君たちのことだからなんの問題もないと思っていたよ。フォローしてくれて、ありがとう」
クーラ 「………ま、まぁね……」 モジ
マリオ 「で、彼は『味方?』、それとも『敵?』」 ジッ……キュルルルルッ……
602:
ショーコ 「敵じゃあないと思うわ、そこに倒れている敵は、コイツが殺ったのよ……」
ウダ 「フッ……その小娘の言うとおりだ。少なくとも『今は敵ではない』」 クルッ
トキシム 「ほぉ……」
ウダ 「トキシムのじじぃ……忌々しいが、お前の計画に乗ってやる……決行は、いつだ?」
トキシム 「明日だ」
ウダ 「なっ、ずいぶん急だな……だがなんとかなるであろう……『決行の間』手下どもは、押さえておいてやろう」
603:
トキシム 「フム、よろしく頼むぞ……では、ワシらはそろそろ引き上げるとするか……」
ジョージ 「……わかった」 ゾロゾロ……
ウダ 「フン、さっさと出ていけッ……」
604:
…………
その夜:
ウダ 「……」 スチャッ
ウダが、自室でひざまづいていた。
その目の前には、ショーコが仁王立ちしていた。
605:
ウダ 「我が将……慈母星殿……ご壮健で何よりです」
ショーコ 「妖星、南斗紅鶴拳のウダよ……久しいな……貴様の方は、どうだ?順調か?」
ウダ 「ハッ……ブジ、この地に組織を作り終えました。我が主張が、じわじわとこの国に、浸透しつつあります」
ショーコ 「そうか……よくやった。妖星よ……」
ウダ 「ハッ、恐縮ですッ」
ショーコ 「ところでウダよ……貴様、その腕、なまっていないだろうな?」
ウダ 「はっ……確かめられますか?慈母星どの……」
ショーコ ――>ショウゴ 「フッ、いつでもかかってくるがよいわ……」
ウダ 「……いえ、戯れ言が過ぎました……お許しを……」 べコリ
606:
ショウゴ 「ダメだ……かかってこい」 ゲシッ
ひざまづくウダに、ショウゴの蹴りが飛ぶッ
ウダ 「ハッ……」 バシュッ
ウダは、ショウゴの蹴りをまともに受け、せき込み、悶えながらも手刀を放つッ
ザジュッ!!!
607:
ウダの放った手刀が衝撃波をうみ、ショウゴをおそうッ!
ガギィィッ!
ショウゴは、その衝撃波を片手で受け、握りつぶした。
ショウゴ 「ほぉ……なかなか……」
608:
ウダ 「ショウゴ様……わが拳が生み出す衝撃波を、片手で握りつぶされるとは……さらに腕をあげられましたな」 ペコリ
ショウゴ 「フッ、貴様の拳こそ、さらにくなってきたな」
ウダ 「はっ、恐縮です」
ショウゴ 「ワレはしばらく、奴らと行動を共にする……妖星ウダよ、キサマは他の『4星』と、『5車』を集めろ……」
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
612:
…………
ショウゴが帰ってから5時間後
ウダは一人、シッシーネ教団の寺院の中で物思いにふけっていた。
ウダ (思えば、俺が『秘拳』東斗仙道と、西斗月剣の探索に出たのも、慈母星と出会ったのが原因か……)
ウダ 「青鸞……最も美しい鳳凰をそう呼ぶ……ふっ……あのあどけなかったガキが、あそこまでの腕前に育つとはな……それに、あの『美しさ』……少し口惜しいが、奴こそ『我が主』にふさわしい」
613:
ウダ (今の慈母星は、天才だ……『南斗は青鸞を源流とし、108に別れ、鳳凰に導かれて強大になり……そして青鸞に帰る……』まさか、口伝を実現することができる才能の持ち主が、現れるとはな……今少し、今少しの時が慈母星に与えられれば、我が南斗聖拳の悲願、北斗神拳を倒せる器にまで、成長できる…………)
ウダ (だが、少し心配だな……いくら天才とはいえ、奴はまだ子供だ。一緒に旅をしている間に、北斗のヤツに情が移ったようなふしも見られたしな……マサカとは思うが、南斗の悲願を忘れていなければ良いが……)
614:
ウダ (ふぅ……やはり癪に障るが、トキシムのジジィのいう事を聞いてやるとするか……慈母星の顔を立ててやらねばな……すでに、使者は放った。あとは俺自身が動けばいいだけか………) スチャッ 
ウダ 「みな、集まれぃッ!」
615:
スチャッ
シッシーネ団員 「ウダ様、突然 我らを招集したのは、どんな理由で?」 タタタッ
ウダ 「うむ……お前たちを呼んだのは、突然だが……」
その時………
616:
壁が崩れた音 “ゴォォシャッ!!!”
ウダ/シッシーネ団員 「ゴホ……ゴホ……なんだ、一体? 壁が崩れただとぉ?」
突然寺院の壁が、崩れた。埃が舞い上がり、ウダとシッシーネ団員たちの視界を奪った。
そして埃が収まってきたとき、そこには『ホッケーマスク』をかぶった大男が、立っていた。
ホッケーマスクをかぶった男 「うひゃひゃひゃッ……」
617:
シッシーネ団員 「なんだ、キサマ……ここが泣く子も黙るシッシーネ教団の寺院だと知って、襲い掛かってきたのかッ」 バッ
ホッケーマスクをかぶった男 「あぁ、そうだよッ!」 ガボッ! ボゴッ!
シッシーネ団員 「ウグッ……」 バタッ
ホッケーマスクをかぶった男 「なんだキサマの兵は、ちゃんと鍛えてるのかぁ?……弱すぎるぞ、オイッ」
618:
ウダ 「ぬっ、なんだキサマはッ!」 バシュッ
ザジュッッ
ホッケーマスクをかぶった男 「ほっほぉぉう……雑魚どもの長など、未熟者かと思ったが、中々どうして早い拳を持っているじゃあね――か……この俺様の右腕を、吹っ飛ばすとはよぉ」
ホッケーマスクをかぶった男の腕が取れた音 べチュッ
619:
ウダ 「なんだコイツ?軽く放った伝衝裂波で、腕が吹き飛ぶだとぉ?」
ホッケーマスクをかぶった男 「ククククク……ハハハハッ」
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
ウダ 「何故だ?なぜ腕が吹き飛んだのに、血が出ないのだ?……そっ、それに……なんだ、この『肉が腐ったような』匂いは?」
ホッケーマスクをかぶった男 「フフフフ……知りたいか?ならば教えてやろうっ、この『ジャブ』様が、よぉ…………」
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
620:
ジャブ 「いでよ、ブロブッ!」
ジャブと名乗った男がそういうと、不意にウダの手足が、動かなくなった。
ジャブ 「へっへっへっ……南斗紅鶴拳のウダとかいったなぁ……キサマの肉体、そしてキサマの組織を、いただくぜ。俺の血肉としてやるぜェ……」 ガシッ
ウダ 「ウッ……アァ――――――――ッッ!」
621:
…………
翌朝:トキシム亭
ジョージ 「フぁぁゥ―――………さて、そろそろ起きるか。朝飯は何かな?」 ノビィ――
ドアを開ける音 “バタン”
階段を下りる音 “ドンドンドン……”
ジョージ 「おはよう、みんなッ」 ニカッ
マリオ 「ジョージィ……寝坊だぞッ!クーラも、ショーコも、もうとっくに起きて準備万端だぞ」 パシッ
クーラ 「まったく……今日は大事な仕事の日よ。気合入っているの?……ところで、拳志郎は?」
ジョージ 「ああ……拳志郎なら、まだ寝ていたよ」
622:
クーラ 「早く起こさんかッ!アンタも、拳志郎も、『後5分でしたくしなさいっ』」 パシッ
ジョージ 「わかったよ」 ボリボリ……
◆◆
拳志郎の部屋:
ジョージ 「……まったく、仕方がないなぁ……ほら、拳志郎、起きろよ」 パタパタ
拳志郎 「……ああ、もうくえねぇ………」Zzzz……
ジョージ 「やれやれ……ほら、起きろよッ!拳志郎」 ゲシゥ
拳志郎 「ぬおっ!」バッッ
623:
拳志郎 「ジョージィッ!テメェ何しやがるッ、ふつう、寝ている奴に『手加減抜き』で蹴りを入れるかぁ?普通よぉッ」 ゲシッ
ジョージ 「……拳志郎、もう起きろ。行くぞ。『仕事』だ……クーラが起きるのが遅いって、怒っていたぞ」
拳志郎 「…………はぁ……仕方がないねェ……」ボリボリボリ
624:
…………
クーラ 「拳志郎ッ!遅いぞっ」
マリオ 「時間が無い、さっさと行こう」
ラーガ・クーガ 「お前たち、遅いぞッ……もう、トキシム様は準備万端だぞ」
拳志郎 「悪い悪い、ちょっと野暮用があってな」 ペシッ
ショーコ 「何言ってるのよ、おおかた、枕に涎を垂らすのが忙しかったッて事でしょ」
625:
トキシム 「おお、拳法家の皆さん、今日は頼みましたぞ………ちょうど良かった。今、朝食をとっているところでの……何か、食ってくかね?」
ジョージ 「いや……いいのかい?」 スタッ
拳志郎 「おお、気前がいいな」 スタッ
マリオ 「……こら、ちょっとズーズーしくないか」 スタッ
クーラ 「まったく……あ、私はミルクを下さい」 タシッ
ショーコ 「ミルクッ?お子ちゃまなの?……私は、そこのバナナでいいわ」モグモグ
ラーガ・クーガ 「…………」
626:
………モグモグ、パクパク………
………ガヤガヤ………
クーラ 「ちょっと拳志郎、それ、私が目をつけていたヤツよ。勝手に食べないでよ」
拳志郎 「あぁ?ケチくせーこと、言うなよ。……それに、こりゃー『ボランティア』だぜぇ?こんなカロリーたっぷりなもん食って、お前のデッケーケツがこれ以上でかくなったら、大変だろう?だから俺が、代わりに食ってやっているんだよ」 パクッ
クーラ 「あら、親切にありがと………って、そんなわけネーだろッ!『ぶっ殺すゾ』」
拳志郎 「ブヒャャ……殺ってみろよ」
クーラ 「ウヌゥ――」 プルプルプル……
627:
マリオ 「拳志郎、クーラ、いい加減にしないか」 パクっ
拳志郎/クーラ 「……あ”ぁァ”―――ッ!」
マリオ 「君たちのいさかいの種を無くしてあげたんだよ。これこそ、ボランティアさ……」
拳志郎/クーラ 「ぬあんだとぉ――」 ゲシッ
マリオ 「ハッハッハッ、気にするなよ」 モグモグ ゴクッ
拳志郎/クーラ 「うるさぃッ! いいか、お前がわがまま言うんじゃあないっ!」
628:
ジョージ 「マリオ兄ィ、拳、クーラ……まったく」 ポリポリ
ショーコ 「まったくよ、三人ともいい加減にしなよ」 パクパク
拳志郎 「ちょっとまて、お前一人で食ってんじゃあねェ――」
ショーコ 「あら、気に障った?」 モグモグ……
クーラ 「いいわけないでしょ。だいたい、アンタはねぇ……」
ワイワイ……
ガヤガヤ……
629:
拳法家たちは、あっという間にテーブルに積まれた食料を平らげていく。
トキシム 「ウワッハッ……楽しいのぉ」
ラーガ・クーガ 「くっ、貴様ら…………」 ワナワナ
トキシム 「まぁ、そう猛りたつな。ラーガ・クーガよ。……今日は非暴力の行進じゃぞ。まるで戦にいくように気を昂らせてどうする」
ラーガ・クーガ 「はっ、しかし……」
トキシム 「せっかく拳法家どのが、気を鎮めておられるのだ、お前も見習え」
ラーガ・クーガ 「………」
630:
拳志郎 「イヤ、アンタ達が昂るのは、当然だ……安心しろよ、俺達も仕事はキッチリ果たすぜ」
ラーガ・クーガ 「なんだ、とぉ?」
拳志郎 「なんだ、気づいてないのかよ」
ラーガ・クーガ 「??」
マリオ 「……やれやれ」 バシュッ
鉄球が飛ぶ音 “グイッンンッ”
?? 「ウォッッ!」 ドサッ
631:
鉄球が食卓の近くの大木の枝に飛ぶ。
すると、二人の男が枝から落ちてきた。
二人とも頭を打ち、気を失っている。
……軍人だ。
ラーガ・クーガ 「な、何だとぉ……」
ジョージ 「……イギリス陸軍の雇った傭兵だな……僕らがここに来る前から、ずっとこの場所を見張っていたよ」
拳志郎 「もう少し泳がせておこうかと思ったが、コイツが急に殺気を出しやがったからな……」
ラーガ・クーガ 「……むぅ……」
632:
ショーコ 「気を失っているわ……意識を取り戻させて、ゴーモンするぅ?」 ワクワク
クーラ 「バカねえ、そんな必要ないわよ。だって、どこから来たか なんてわかっているでしょ――がぁ……英国軍に、介入の変な言い訳を作らせないためにも、このまま逃がすに決まってるでしょ」
ショーコ 「……あら、それじゃあ面白くないわよ。せめて、身ぐるみはいで、ニチョーメにでも転がしておこうよ」
クーラ 「……勝手にしなさい」
633:
トキシム 「さすがは『拳法家』どの、と言ったところだの……ところで、ジョージ殿、拳志郎どの、お二人に頼みがあるんじゃ」
拳志郎 「おうっ」
トキシム 「今回の仕事じゃが、ワシよりも、この行進に参加する民の安全を、優先してくれまいか」
ジョージ 「……わかった」
拳志郎 「じーさん……悪いが、そんなの当たり前だ」
634:
拳志郎 「じゃあ、マリオ、ジョージ、さっさと行こうぜ。今日は忙しいんだ」 ザッ
マリオ 「一番グスグズしていたのは、君だよ……まぁ、いいか。行こう」 ザッ
ジョージ 「ああ、そうだな」 クルッ
トキシム 「お待ちなさい、ジョージどの」
635:
ジョージ 「なんだい?」
トキシム 「……我らが相手をしているのは、貴方の母国じゃ」
ジョージ 「ああ、知ってるよ」
トキシム 「ここで抜けたほうが、良いのではないか……ここで抜けても、誰もお前を責めはせぬ」
ジョージ 「………」
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
ジョージ 「……ひとつ言っておく。僕は『自由』だ。僕は、僕の『やりたいこと』を自由にやるのさ」 プイッ
637:
…………
デリーのとある市街地:
パォ―――ン
パクパクパクパク
ワイワイ……
ガヤガヤ………
ジョージ 「スゴイ人だかりだな……まだ始まってもいないのに、こんなにも集まっているとはね」 キョロキョロ
マリオ 「……さっきみたいに、どこかに襲撃者が隠れているかもしれない。周囲の探索を始めようか」
拳志郎 「そうだな……じゃあ俺は、あの向こうッかわにあるデカイ建物からあっちの木までを調べるぜ」 スタスタスタ
638:
ジョージ 「じゃあ、僕はその向かって右側を調べよう」ダッ
マリオ 「俺はその反対だね。デカイ建物から、今立っているここまでを、カバーしよう」 ギャルッ
ジョージ 「よし、マリオ兄ィ……やろう」 ダダッ
639:
ガガッ
拳志郎 (………よし、思った通りだぜ。この建物の上からなら、どこだって探れるな) ジッ
ザジュ
マリオ (……みんなは、どこだ? ああ……ちゃんと配置ついたようだね。俺も……) キュルキュル
ダダッ
ジョージ (……注意を払え、人混みのなかに、本物の『殺気』をまとったヤツがいないか……建物の影に、隠れている軍人がいないか………) ギョロ
640:
ダッ
ジョージ (……奴らは、かならず人混みの中に紛れているハズだ……ムッ!)
ジョージが目にしたのは、一見どこにでもいる貧相な物乞いの男だった。
だが、その男のズボンの裾から、男が足首に縛り付けていた拳銃が、見えている。
ジョージ (させるかッ!) ダダッ
641:
物乞い風の男 「?!」 ガクッ Zzzzz……
ジョージ (やはり軍属か……殺しはしない。だが、まる一日は眠っていてもらおうか……このボクの、ザ・ソーンでね) サクッ
ジョージ (よし、次は何処だ?まだいるはずだ……)キョロキョロ
642:
ジョージ (そこかッ)ダダッ サクッ
女装をしていた兵士 「?!」 ガクッ Zzzzz……
ジョージ (なんだぁコイツは、なんで女装なんてしているんだ?趣味か?) サクッ
643:
ジョージ (さて、次は…………ムッ!マズイッッ) ダダダッ!
ジョージは、全力で走った。
そこには……その街角には、まさに民衆に向かって銃を取り出そうとしている、英国陸軍の一部隊が、控えていたのだッ。
644:
自分たちに銃口を向ける英国兵に気付いた途端、民衆が暴走し始めた。
われ先へと、必死に逃げようとする。
「うっ、うォ―――ッ。逃げろッ」
「きゃぁああ――」
「どだ、どけぇッ」
「ちょっ、押さないでッ」ここには子供がぁッ!」
「じゃッ、邪魔だぁッ!そこを、どけぇ」
「はっ、早く逃げないと……」
645:
整然と立ち並び、人込みに向かって銃を構える英国兵達に気がついた民衆は、一瞬にして、パニックとなった。
狭い空間にいた民衆が、押し合い、へし合い、少しでも遠くに離れようと、必死に逃げ始める。
ジョージは、走る。
ジョージ 「くっ、間に合わないか……イヤ、大丈夫か……」
646:
ジョージが到着する一足先に、英国兵の前に二人がたどりついていたのだ。
拳志郎 「この、ばかどもがっ」 トゴォンッ!
マリオ 「お前たちは、自分のしていることが、わかっているのかッ!」 ギャルルッ
まるで赤子をひねるかのように英国兵を翻弄する拳志郎とマリオ、その様子を見て、ジョージはホッと足を止めた。
ジョージ (……よし、兵士のほうは、マリオ兄ィと、拳志郎が何とかしてくれそうだ。でも、コイツは……みんなのこの動きは、まっ、まずいッ……このままだと、誰かが転んだり、足を止めたら……人ごみに圧殺されるひとが出てくるぞ……僕は、こっちを何とかしないとッ)
647:
「うわぁぁ―――ン」
「おっ、おっ、お”か”ぁちゃん”、どごっ?」
「ドケドケドケドケドケッ!」
「逃げるんだょォーーッ!」
ジョージ 「やめろッ!落ち着くんだァ!!」
648:
ジョージ (だっ、だめか……みんな興奮していて、僕の声なんか聞こえない……どっ、どうする?一人一人止めていたら、間に合わない……)
ジョージ (僕のザ・ソーンは塔くまで行けるが、遅い……人が逃げる度より、何倍もだ。)
ジョージ (………) ジッ……
649:
ジョージ (やるしかないっ!今まで一度も成功してないが、もしかして、今なら) クォオオオオオ――――ッ
ジョージ (こうなれば、一か八かだ……『波紋』で、ザ・ソーンを成長させるッ!うまくいってくれよ……) コォォオオオオオォォオッ
650:
ジョージ 「ゴラァッ」 ボゴォツッ
ジョージが奇妙な呼吸をしながら、拳を振り上げる。
そして、全体重を乗せた撃ち下しの拳を、地面にたたきつけるッ!
ジョージ 「一か八かだッ 波紋ッ & ザッ ソーンッッ!」 コォオオォォオオ―――……
ドガッ
651:
キリキリキリっ
ビキッ……ビキビキビキッ!
「うわっ!ビッて来たッ」 グゥ……
「なんだァ……こんな時に、急に眠気が……」 Zzzz……
「!?ッッ」 グゥ……
ジョージ 「ハァ――、ハァ――……やったぞ」 ガクッ
652:
ジョージが振り下ろした拳から、銀色の棘の生えた蔦が、伸びていた。
ジョージのスタンド:ザ・ソーンの蔦だ。
その蔦から、山吹色の光がまるで稲光のように、光る。その蔦には、確かに『波紋』が込められている。
ノロノロと伸びていたスタンドの蔦が、波紋を受け、その動きを一気にめた。
653:
バジュッ
われ先へと逃げる群衆が、その蔦に触れると、人々は急に眼がトロンとなって、やがて床にしゃがりこみ、最後には皆、眠りについていった。
657:
…………
トキシム亭 外庭:
小さな子供 「おーい、トキジィッ!あっそぼうぜぇ〜〜〜」 ワチャワチャッ
トキシム 「おおぉ〜〜〜今日はなにをして遊ぶかの……」
ラーガ 「トキシム様ッ!」
トキシム 「……おっとっと、そんなに大声を出すなぃ……わかっとるよ、口うるさいのぅ……」
クーガ “ジロ……”
658:
トキシム 「やれやれじゃ……すまんのォダキ、今日はチト用事があってな……」 ポム
ダキ「え――、ケチくせーなぁ、ちょっとくらい、いいじゃんか」 ブゥ……
トキシム 「すまんのォ……」 ナデナデ
ダキ「じゃあ、そのご用がおわったら、遊んでよッ」
トキシム 「もちろんじゃ。楽しみにしちょるよ」
659:
ダキ「じゃぁねぇ―――」 タタタッ
ダキと呼ばれた、近所に住む少年が、トキシムとの微笑ましい会話を終え、駆けていった。
だがそのとき、不意に、物陰から大男が現れた。
男は、ダキの前に立ちふさがった。
クーラ 「クッ……しまった……」 グッ
クーラが動こうとする直前、男はダキを抱え上げた。
男は、目で、『じっとしていろ』とクーラとショーコを威嚇する。
ヒョイ
ダキ「なんだよ、オッチャン……」 バタバタ
660:
?? 「……オイガキ、オメェに聞く……オメェ、『兄貴』がいるか?」
ダキ「オゥッ! ウチのニーチャン、スッゲーンダぞ!……早くオレを話さないと、ニーチャンにやられるぞ、お前ッ」
?? 「……へぇェ――」 ポトリ
?? 「さっさと行きなよガキ……兄貴の言うことは、よぉくきくんだぜぇ〜〜」 ナデナデ
ダキ「……おっ、オウ……」
?? 「ウヘヘヘヘ……」
661:
クーラ 「アンタ……ダキ君だったね……ゆっくりこっちに戻ってきなッ……死にたくなければね……そう、いい子ね……こっちに来たら、もっと後ろに下がりなさい」
ダキ 「……うん、わかったよ」 トタタタ
トキシム 「おおぉ、良く戻ってきたな……じいと後ろに下がってような……」 ギュッ
クーガ 「トキシム様……あなたも我らの陰に……」
662:
?? 「おおぉぉ、ひっさしぶりだなぁ?オイッ?」
ショーコ 「アナタ生きていたのね……フフフフ……仕方ないわね。特別サービスで、もう一度、地獄を見せてあげるわ♡」
?? 「クックッ……拳法家どもめぇ……言ってろや……でかい口叩くがよぉ、お前ら、この銃の威力に、叶うのかよぉ」 チャッ
ラーガ・クーガ 「なんだ?我らに銃を向けるとは……この、卑怯者め……」 ワナワナ
ショーコ 「トキシムどの……ラーガ・クーガ………ここは、私たちに任せて、身を守ることだけを考えていてね」
663:
ラーガ 「くっ、おなごの影に隠れて、たまるか……」 ダッ!
クーラ 「ラーガ、ムチャよッ引きなさいッ」
ラーガ 「うぉおっ、女が、俺に命令するなッ!喰らえッ」 ブンッ
??「ハッ、死ねやぁッ! ブロブッ!」 ベチャッ!
ラーガ 「くっ……動けんッ」
?? 「そうだろうっ……この俺、ジャブ様の能力で、お前を固定したぜぇ……ウへへへへ……次はお前たち二人だぜェ〜〜〜」
664:
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ショーコ 「馬鹿な……キサマは、拳志郎にやられたはず」
クーラ 「まさか、地獄からよみがえったとでも言うの?」
ジャブ 「クククク……違ぃねぇ……おりゃあ、『あのお方』のお力で、よみがえったのよッ……しかも、新たな『力』をいただいてなッ!カァッ!」 ゲブッ!
665:
ジャブが拳を隣に立つ大木にぶつけた。
すると、大木が轟音を立ててへし折れた。同時に、ジャブの拳も砕ける。自らの力で、自らの手をベキベキとへし折りながらも、大木をへし折ったのだ。
クーラ 「何……コイツ……ええ……『大木をへし折る』なんて、全然大したことじゃあない……誰でもできる……でも、大したことじゃあないけど、コイツ……異常よ……自分の腕をベキベキに折りながら、平気な顔をしている……」
ショーコ 「……それに、何かしら?何処からか、『肉が腐った』ような、気持ちの悪い匂いがするわ……」
666:
ザシュッ!
突然、遠巻きにあたりに注意を払っていたラーガの足が、不意に切断された。
ラーガ 「うぁあああああ!」
クーガ 「兄者ッ!」
セン「ハッ……うるさいな、せっかく『動ける』ようにしてやったんだから、感謝しろよ……お前」
ショーコ ⇒ ショウゴ 「馬鹿な……キサマもか……」
現れたのは、南斗紅雀拳の使い手、センであった。
667:
セン 「ハッ……ショウゴさまぁっ……南斗正当血統の天才児様よォ……あの時は、良くもやってくれたなぁ? オォォッ?」
ショウゴ 「キサマのような屑星が、誰にモノを言っている?」
セン 「俺は、『生まれ変わった』んだよ、あの方のお力でなぁ……」 バシュッ
669:
……
ショウゴ 「フン……こんなものか?ムッ?」
セン 「うぉおおおおおおおおおおおおっ!」 バシュバシュバシュバシュバシュバシュッ!
センが左右に飛びつつ、ショウゴに無数の攻撃をしかけるッ!
670:
そして、ジャブとセンに続き、もう一人……『ひげ面の巨大な男』が現れた。
クーラ 「なんてこと……お前も、『生きていた』のか……」
ショウゴ 「チッ……」
ウィプル 「……南斗蒼鸞拳伝承者、ショウゴどの……元斗皇拳伝承者、クーラどの。『あのお方』の命により、貴様らを処刑する………だが、まずは…… 」
ウィプルは、スタンド:マスター・オブ・パペッツを出現させた。
ウィプル 「まずは、トキシム……死ぬのはキサマからだ」 ビシッ
671:
マスター・オブ・パペッツ 『ティュワッ』 ヴァシュ
グイッ
トキシム邸 “グラリ”
ダキ 「えっ?」
マスター・オブ・パペッツの鞭がトキシムの住む石造りの豪邸に巻きつき、引っ張り、傾け……そして倒壊させたッ!
何が起こったのか理解できず、ただ呆然としているダキの頭上に、ゆっくりと石造りの豪邸が降りかかってくるッ!
672:
トキシム 「ウォォォオオ―――、危ないッ!」 ダッ、ガバッ
ダキ 「えっ?……トキシムのオッチャン……何?」
トキシムが飛び込み、タキ少年の上に、覆いかぶさった。
その上に、巨大な石造りの建物が、崩れかかる……
クーラ・ショウゴ 「くっ!」 ダッ
ジャブ 「させるかよ」 ドガッ!
セン 「お前達の相手は、俺たちだぜ……」 ザジュッ
ショウゴ 「くっ、貴様ら」 ドガッ
セン 「ハハハハッ!遅いッ!そして軽いぜッ 南斗正当血統さまよぉ……」
クーラ (まずいわ……このままじゃ、あの子を助けに行けないわ……) グッ
673:
ショウゴとクーラは、足止めされている。
その隙に、ウィプルは、崩れかかるトキシム邸をさらに引っ張るッ!
ウィプル 「ふはははは……死ねやッ!小汚ない、血袋どもがっ!」
マスターオブパペット “グイッ”
トキシム邸 “ドガッ!ガラガラゴラ………”
ダキ 「うっ、うわぁぁ―――ッ!」
トキシム 「大丈夫……ジィが守ってやるぞ……」 ギュッ
ドゴッ
674:
トキシム (くっ、コイツはキツイワイ……だが、たとえわしの命にかけても、この子だけは、ダキだけは守る……守れるぞ)
おびえるタキをかばうトキシムの背に、ガレキが降り注ぐっ
トキシム 「大丈夫……大丈夫じゃ、心配ないぞ……」 ポム
ダキ 「うっ、うわぁぁ―――」
675:
クーガ・ラーガ 「とっ……トキシム様ッ」 ダッ
見かねた兄弟が、崩れ行く建物の下に飛び込むッ!
トキシム・ダキ 「…………!?ッ」
ラーガ・クーガ 「トキシム様、ご無事で……」 ガシッ
ラーガとクーガの二人が、建物を支えるッ
676:
トキシム 「……自分の身を犠牲にするなど……この、馬鹿ものが……ワシのことなど、なぜ放っておかなかった……」
ラーガ・クーガ 「ハハハ……貴方はこの国を立て直すのに無くてはならない
おかた……」 ガクガグ
ウィプル 「ククク……見上げた忠義じゃのう……じやが、無駄じゃ」
ウィプルが嘲笑い、大きく後方に手をふった。
すると、ウィプルの巨体の背後から5名の兵士が現れ、銃を連射するッ!
銃声 “ガガガッ!”
677:
ラーガ・クーガ 「!?ゴブッ」
トキシム 「ラーガッ! クーガッ!」
ダキ 「お兄ちゃんたちっ!」
ラーガ・クーガ 「だっ……大丈夫。ちゃんと支えていますよ……ゴブッ」
678:
ウイプル 「ウワッハハハハ……なかなかがんばるじゃあないかッ!だが、これでおしまいよ……止めだ……やれっ、キサマらぁッ」 
兵士 「イェスッ、サァ―――ッッ!!」 ガガガガッ!!
ラーガ・クーガ 「!?ッ………ウッ……」 ガクッ
679:
ショウゴ 「キサマラァッッ!」
セン 「おぉぉぅっとォォ、ヤラセネ―――ゾッ、お前の相手は、俺だからよぉ……ヨロシクッ」 チャッ
ショウゴ 「チッ……さっさとかかってこい、すぐに片づけてやる」(チッ……意外と手をかけさせよる……)
クーラ 「……こっちも、意外にジャブの奴の動きが早いわ……仕留めきれないッ」
680:
ラーガ・クーガ 「……………」 ブル……ブル……
ウィプル 「ほう……脳天ぶち明けたのに、まだ立っているのか?まだ、そのガレキを支えられんのかぁ? スッゲェ―――! スッゲェッッ! 忠義って奴かぁ?」 ウヒャヒャヒャッ……
ウィプル 「まあいい、野郎ども、もう一度だッ」
兵士 「イェスッ、サァ―――ッッ!!」 チャッ
ウィプル 「撃てぃッ!!」 バッ
ドガンッ!
ラーガ・クーガの額 “ブシュッ” 
ポタポタポタ……
681:
トキシム 「ラーガッ、クーガッ!もういいいッ、後はワシが体を張ってこの子を守るッ!お前たちは……もう、いい……」
ダキ「うっ、ウエェェ――――ンッ」
ラーガ・クーガ 「……」  “ブンブン……”
ジャブ 「おいウィプル……なぁにやってんだよッ!さっさと殺ッチめ――よ、この馬鹿野郎がッ」
ウィプル 「フン……わかってオルワ……キサマら、止めの銃撃だ……あのジジイと、ガキにもタップリ喰らわせてやれ……」
英国兵 「イィェッサァ―――――ッッ」 ジャキッ
682:
クーラ 「……チクショウ……やられたわ……これじゃあ、護衛の役が……」
ショウゴ 「馬鹿な……こんな雑魚どもに……」
683:
ギャルルルルルルッッ
ドガゴガボゴォッ!
兵士たち 「ガッッっ」 バタン
684:
トキシム 「ハッ……これは……」
ダキ 「えっ?………僕たち、助かったの?」
685:
ウィプル 「ああぁん?……なんじゃぁ、キサマは」
マリオ 「みんな、無事かッ?」 タタタッ
ショウゴ 「フン……マリオ、か」 ホッ……
マリオ 「このデカブツは俺が殺る……君たちは目の前の敵を頼む……」
686:
ウィプル 「フッ……生意気な……貴様は、何が起こっているか、気づく間もなく死ねぃッ」 ブッ
ウィプル 「出ろッ!マスターオブパペッツッ!!」 ブゥッ!
マリオ 「ハッ……これは、殺気ッ?来るのかッ」 バッ
バゴっ
687:
ウィプル 「ほうぅ?良くよけたな……もしや貴様も、『スタンド使い』か?」
マリオ 「『スタンド?』……」 (やはり、コイツもジョージと同じ不思議な力を持っているのか……)
ウィプル 「いや、違うな……クククク、貴様 やはり見えていないな……死ねッ!」 ザジュッ
688:
マリオ 「甘いッ」 クルッ
ウィプルのマスターオブパペッツが放った『スタンドの鞭』……
その一撃を、マリオは踊りを踊っているかのように回転して、華麗にかわした。
689:
ウィプル 「んんっ?かわしただとぉ……もう一度だ、喰らえぃッ!」 バシュッ
ウィプルのスタンド:マスターオブパペッツが、再び鞭を振るうッ
しかも、今度は両手の鞭を、同時に繰り出した。
その鞭は、マスターオブパペッツの手元で数十本に分裂した。
690:
マリオの左右、上下、そして正面から、数十本のスタンドの鞭が襲うッ
マリオ 「ウォオオオッッ!」 クルクルッ
マリオは、身をかがめ、まるでマリのように体を回転させ、スタンドの鞭の攻撃をすりぬけた。
691:
マリオ 「クッ、少し、かすったか?……だが、かすり傷だッ……そして、懐に入ったぞッ」 バシュッ!
ウィプルのふところに入り込んだマリオは、足首を、膝を、腰を、そして肩を、肘を、手首を『回転』させ、強烈な一撃を放つッ!
ウィプル 「ぐぉおおおおっ!!」 ゴボッ
692:
ウィプルが、ぶっ飛ぶ。
だが同時に、マリオもぶっ飛んでいく。
ぶっ飛んだマリオは、突然空中で不自然に止まり、地面に叩きつけられた。
マスターオブパペット 『グキィ』 バビュッ
マリオの体が、夜店でかった水風船のヨーヨーのように、何度も地面に叩きつけられるッ
693:
ウィプル 「や、やりおったな……うすぎたねー血の入ったゴミ袋にも劣る、下淺な人間ごときが……だが、所詮は我がスタンドを見ることもできん未熟者よ……」
マリオ (くっ、油断した……この、ぼんやりと見えているこの闘気が、スタンド………)
マリオ (だ、だめだ……体が動かせないぞ)
ウィプル 「ぶひゃひゃひゃ……『ドアの隙間に挟まれたヤモリのようにッ』『戦車にひかれた子猫のようにッ』ペッシャンコになってしまえっ!!」
694:
マリオ 「だが、問題なしだ」
695:
ギャルルッ
ボガッッ!
突然、ウィプルの脇腹がの一部が、『回転』していくッ!
その『回転』が、まるでキリで穴をあけたように、ウィプルの体をえぐっていくッ!
ウィプル 「なっ……なんだとぉ……Agyiiiiiiiiiiiッ」
696:
マリオ 「気がついてなかったのか?マヌケめ……この……『回転』させたシャボン玉に……」 ユラリ……
マリオ 「俺のは、邪道でね……5つの回転を操る……まず一つ目……『見えない回転』の味はどうだい?」
ウィプル 「Ugaaaaagaaaa……」 ヨロ……
697:
マリオ 「そして次に使うのが、『弾きあう回転』ッ」 ギャルルルルルッ!
マリオは、左手にもった弾丸サイズの小さな玉を投げつけた。
バチッッ
バチッ
ババチッ
698:
マリオが投げた弾丸は、ウィプルの周囲で互いにはじきあうッ!
弾丸は、ウィプルをかすめ、打ち抜き、そしてまた弾かれ、再び襲いつづけるッ
699:
ウィプル 「ウッゲェええええ……」
無数の小さな弾丸の回転に、連続して打ち抜かれ続け、ついにウィプルの肌が破れた。
すると、その傷口から、腐りかけた沼地の泥のそのもののような、気味の悪いネトネトした泥が、溢れ出す……
ウィプル 「ああぁ……」 バタッ
700:
マリオ (うっ……ひどい臭いだ……なんだ?これは)
マリオ (まるで、人の皮の中に、泥が詰まっていたような……)
マリオ (つまり……この『ウィプル』と言う男は、『すでに死んでいた』と言うわけか?)
マリオ (だが、今は日の当たる朝だ……これは……伝え聞くゾンビとも違う………一体なんだ?)
704:
同時刻:ショウゴ VS セン
セン「ぶひゃひゃひゃッ!くらえっ真南斗紅雀拳ッ」 ダッ
センは、地面を砕くほどの強烈な踏み込みから、猛烈な度でショウゴに襲いかかった。
その度は、まるで野鳥が舞うかの如しッ!
セン 「殺(と)ったぁッ!」 ババッ
ショウゴ 「何ぃッ……分身した?」
705:
センx 3 「三方からの連撃ッ!かわせまいッ」
ババッ
ババッ
ズバババッ
706:
ブシュゥッ……
ショウゴ 「………フン」
セン 「ば、ばかなあぁ……」 ガタッ
セン 「ははははっ……どうしてだ?」 ブルブルブル……
セン 「何でぇ……なんで俺の『手』が、砕けてんだよぉぉ―――」
707:
ショウゴ 「……その程度の、早いだけの手打ちの拳が、俺を貫けるものか」
セン 「へへへへ……」
ショウゴ 「未熟者が……あの世で基礎からやり直せ……」 ドガァァッ
708:
ショウゴが、『鉄拳』を打ち込む!
バゴォッ
ショウゴの『鉄拳』が、センの胴体に風穴を開けるッ!
……だが、センは胴体を貫通するほどの重傷を負っても、なお平気な顔で立っていた。
セン 「……へへへへ………土手っ腹に穴が開いても、なんともねーぜ」ヨロ……
709:
セン 「だがよぉ……アンタも、けっこぉ――強かったぜぇ……惜しかったなぁ……アンタなら、もう少しで『北斗』のクソ野郎どもにも、手がととどいたかもなぁ」 クイッ
ショウゴ 「貴様……」 ゲシ
激高したショウゴが、片手でセンの首を掴みあげる!
セン 「ゲッ……ゲホッ……だがなぁ、もう俺たちは『待てねーんだ』よ……わかるか?俺たちは、アンタの成長を待つのは、止めたのさ」
710:
ショウゴ 「?キサマ、いったい何を言っている?」
セン 「うぉぉ――っ」 グイッ
センは、首をつかむショウゴの手首をつかんだ。ショウゴの手を、無理やり引きはがす。
セン 「はっ、そっから先を知る必要はねーぜ。死にゆく『元』南斗聖拳の将軍さまにはよぁ……」
鉄拳を作る事が出来る強力な握力の自分の手を、力任せに強引に引きはがされた……
だが、ショウゴは、顔色一つ変えなかった。
ショウゴ 「……その手を離せ、ゲロウが」 バッ
711:
セン 「ハッ、言ってろ。死ねやッ!」 バシュッ
ショウゴ 「……馬鹿が……」 ガッ
ショウゴ 「貴様こそ思い知るがよい……俺の『南斗蒼鸞拳』の進化をッ」
712:
ウアタタタタタタタァァァァ―――――ッッ!
ショウゴが、残像を伴うほどのさで、無数の『鉄拳』を撃ちだすッ!
ドガッ! ドドガッ! ドガ! ドガッ! ドガッ! ドガッッッ!
713:
セン 「ブギィィ―――ッ」 ボガボガボガッッ
無数の『鉄拳』が、センの体をえぐる
……そして、センは、ただの『泥の塊』になった。
714:
ショウゴ 「……フン……これが、拳志郎とジョージのヤツと旅をしている理由よ……この拳は、俺が奴の業を参考に、新たに編み出した拳……南斗百裂拳……とでも言おうか」
ショウゴ 「俺の拳は進化し続けておるわ……そして、やがて奴を……」 ギュッ……
715:
同じく同時刻:クーラ VS ジャブ
716:
ジャブ 「……な、なんだとぉぉ……」 ヴァシュッ!
クーラ 「あんまりスローで、ちょっと目をつぶっちゃったわよ……眠くなって」 フワァ――
717:
ブロブ 『ブシャァアアッ!』 バシュバシュッ
ジャブのスタンド、ブロブが粘液弾を撃つッ
同時に、ジャブが懐から取り出した、ヌンチャクをクーラに向かって叩きつけるッ!
718:
クーラ「千手羅行……流輪破ッ!」バシュゥ!
クーラは、両手を広げた。その手が白く光り……そして、無数の残像を作る。
残像の手が白い壁を形作り、ヌンチャクと、粘液弾を防ぐッ
719:
クーラ 「お返しッ!破の輪ッ」
カウンターとばかりに、クーラが巨大な闘気の手でリングを練り上げ、ジャブにぶつけた。
闘気のリングはジャブに命中し、そして爆発するッ!
ジャブ 「ば、ばかな」 ヨロ……
クーラ 「……なによ……少しは期待したのに……アンタ、まるで弱いじゃあない……」フン
720:
ジャブ 「くうっ……そんなハズはねぇ……あのお方がくれた新たな力……俺のスタンド……そっ、それがまったく通用しねぇ……」 ガクッ
ジャブ 「こっ、これじゃあよぉ……」ヨロ……
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
ジャブ 「これじゃあ、『奥の手』をつかわにゃならんじゃあね――かッ!」 ゲシッ!
ジャブが叫び、『両脇の下辺』を両手の親指でついた。
すると、その体が、筋肉がムクムクと膨れ上がっていく……
721:
クーラ 「なんですって?これはまさか……秘孔?」
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
ジャブ 「ウハハハハ……そうだ。教えてやるよ……この秘孔はよぉ……『北斗孫家拳』の秘孔だよぉおおッ……ウハハハハ、ついにやったぞぉっ!あのお方が下さった力のおかげで、俺にも経絡秘孔の秘伝をつかむことができたゼェ……」
クーラ 「へぇ……それで?」 フン
722:
クーラ 「アンタもしかして、我が『元斗皇拳』に、あんたのおままごとみたいな『北斗孫家拳』が通用すると思ってるの?かかってきなさいっ!」 クイッ
ジャブ 「………ウへへへへ」
ジャブ 「ウハハハハッ。やってられるかよッ!」 スタコラシュッ
意外っ? ジャブは、そそくさと拳志郎に背を向けると、猛然と逃げ出した。
クーラ 「……逃げた………逃げアシをめるために、経絡秘孔をついたっていうの?」 ポリ……
723:
クーラ (ハッ? トキシム様は?) クルッ
┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨ ┣¨
クーラ (ウッ……これは)
コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ” コ”
タキ 「ウッ……ウェエエ―――ン……ウッウッ」 シクシク……
トキシム 「………」
724:
クーラ 「マリオ……まさか……」
マリオ 「クーラか……無事でよかった。なぁ……見てくれよ、彼らのすさまじい死に方を……」
ラーガ・クーガ 「………」
振り返ったクーラが見たのは、立ったまま絶命している、ラーガ・クーガの兄弟であった。
二人は、動けないタキとトキシムを救うために、崩れかかったトキシム亭を支えたまま、絶命していた。
725:
ショウゴ 「ラーガ、クーガ……見事だ」
そういうと、ショウゴは二人の亡骸に向かって、手を合わせた。
726:
デリーのとある市街地:
パシュッ
ボタボタボタ……
拳志郎 「へぇ……やるじゃあねーか。俺の肌を切り裂けるなんてよぉ……」 ブンッ
727:
ウダ 「フンン……」 シャッ
拳志郎と、ウダが交錯するッ!
二人が距離を詰め、そして離れた。
ウダ 「チッ……」 ガクッ
拳志郎 「オイオイ……ちょっとばかし早いのは、拳だけかよ……その体さばきじゃあ、俺に触れることもできねーぜ」
728:
ウダの右肩: バシュッ!
ウダ 「クッ……一瞬の擦れ違いの間に、俺の肩を……見えなかった……」
拳志郎 「だが、拳だけは中々だったぜ……肩をやるのが精いっぱいで、秘孔まではつけなかった」 ジャッ
拳志郎 「とはいえ、もうお前の拳は見切った……かかってきな……次がお前の最後だ」 クイクィ
729:
ウダ 「抜かせ、この野郎ッ!伝衝裂波ッ」 バシュッ
ウダが振り下ろした手の先から、真空波が飛ぶッ
拳志郎 「やれやれ……」 シュッ
ウダ 「クッ……伝衝裂波の衝撃波をかわすだと……ならばこれを喰らえッ!南斗紅鶴拳奥義、血粧嘴ッ」 バシュッ!バシュッ!バシュッ!
ウダは、虎の爪を模したような構えから、無数の真空波を飛ばすッ!
730:
拳志郎 「……ハイハイ、ご苦労さん」スっスっスっ
だが、拳志郎は流れるような体さばきを見せ、すべての真空波をかいくぐる。
ウダの振り上げた両手の指に手を合わせ、秘孔をつくッ!
拳志郎 「喰らえ、五指烈弾ッ」 グサッ
ウダ 「うっ……うう……アぁ――――ッ!」
ウダの両手首 バギッ ブッシュ―――ッ!
731:
ウダの両手首がふっとび、血が噴水のように噴出した。
ウダ 「俺のウデェェがぁぁあああ――――――無くなっちまったぁ―――――――――!!」
拳志郎 「……北斗神拳の秘孔の一つだ。これで、お前のさ押しのウザったい手わざも、もう使えねーなぁ」
ウダ 「ヒヒ……イテェ……痛テェよ……」 シクシク
732:
拳志郎 「勝負あり……だな。これで、納得したか?俺とお前の実力の差によぉ」
ウダ 「あぁぁああああ……痛テェよォ……ひでぇ、あんまりだぁぁぁぁ…………………なぁんてぇなぁ?」 バシュッ
失ったウダの両腕……その傷口からどす黒い泥があふれだす。
その泥が、固まっていく。
泥は棒状に固まり、その先からさらに細い棒状に泥が複数伸びていき、指の形を作る。
やがて、泥を固めた腕が形作られ、失ったウダの両腕を補った。
733:
拳志郎 「おいおい……手が生えただとぉ……なんだそりゃ?お前はザリガニかなんかか?」
ウダ 「へへへへ……言っていろ……これこそが、あのお方の授けてくださった力……『ザ・ダート』の無敵の力よぉ……」
ウダ 「クラエッ!」
737:
ウダ 「『ザ・ダート (The Dirt) 』は俺様に、夢のような力をくれるんだッ!お前がかなうもんかよぉぉぉっ!」 ブヒャヒャハハッ
ウダ 「ブシュァッ!」 シャシャシャッッ
拳志郎 「うだうだと、うるせぇぞっ!!」 ダッ
738:
ウダの攻撃に合わせ、拳志郎が間合いを詰めるッ
ウダの拳がつくる真空波を、かわしていく。
そして、拳志郎の拳が、ウダの拳を迎撃するッ!
二人が、交錯するッ!
ドガッ
拳志郎 「……」
ウダ 「……」
739:
ウダ 二ィ…… 
ウダ 「アベシィぃッッ!」 バギャッ! バタン
ウダの背中が裂け、血が噴出した。
だが、倒れたウダの背中の傷からは、またしても泥が染み出てくる。そして泥が……傷口をふさぎ始める……
ニュルニュルニュル……
740:
ウダ 「ガガガ……やるな……だが、たとえどんな攻撃を喰らおうとも、俺は不死身ィィッ」 ヨロヨロッ
ウダ 「例え秘孔をつかれたとしても、耐え切ってやるわッ」
拳志郎は、再び立ち上がろうとしているウダに向き合った。
両手で円を描くような動きをして、気を溜める……
741:
ウダ 「お……おれは、あのお方に、屍生人(ゾンビ)としての永遠の命をいただいたのだッ!人の力を超える、我が力で粉砕されるがいいっ!拳志郎よッ」
拳志郎 「止めだ……くらえっッ 天将奔烈ッ」 バッ
溜めた気を、豪快に放つッ!
拳志郎 「どあぉおお――――ッ!」 ボコォォォ―――ッ
ウダ 「★@#!!!ッ!」 バジュ―――ッ……
742:
ウダ 「くっ……さすがは北斗……俺では、勝てぬという……の……ヵ…………」 バシュッ……シュゥゥゥ――――――――――――
サラサラサラ……
拳志郎 「こいつ……煙となって消えやがった……屍生人(ゾンビ)だとぉ…」
743:
スチャッ
ジョージ「拳……無事だったか……よかった」
拳志郎 「…おぉ――ジョージか……みんなを守ったところを『見ていた』ぜ、やるじゃねーか……オメー」 シュボッ
ジョージ 「『見ていた 』?何をだい」
拳志郎 「俺が見たのは、オメーが、ザ・ソーンに『光る拳』をのせて放ったあれだよ……」
744:
ジョージ 「…………」
拳志郎 「……で、掴んだのか?」
ジョージ 「…………あぁ、掴んだよ。僕がこれまで、『光る拳』を自由に使えなかった訳がわかった……」 バチバチバチ……
拳志郎 「そうか」
ジョージ「拳志郎……キミは母を知らないと言ったね。そして、僕は父を知らない……母は、僕の見た目が父そっくりだと言っていたけど……僕には、その言葉が本当かどうかわからない」
拳志郎 「ああ……俺は母を知らん。母の見た目もな……親父は何も語ってくれんぜ……だから俺は、俺が母に似ているところがあるのかどうかも、知らんぜ」
745:
ジョージ 「……それは僕もさ……僕も、父から何かを受け継いだのか、はっきりとは知らなかったよ……でも、確かに受け継いでいたんだ……父の『波紋』をね……それがわかった」
ザ・ソーンの茨 シュルシュルシュル……
バチッ
ジョージ「……子供のころから、この『茨』は僕の横にあった。僕にしか見えない『茨』……僕はずっと、『この【茨】が見えない人とは、本当の意味で仲間になる事は出来ない』と思っていたよ……」
ジョージ「……この『茨』が……『波紋』を閉じ込め、回して僕の体に溜め続けていたのさ……僕が生まれた時からね……」
746:
パチン
ジョージ 「ある意味、父は僕の横にずっといてくれていたんだ……僕の横に、ずっと立って(スタンド バイ) くれていたんだ……」
拳志郎 「そうか、そりゃあよかったな……で、その使い方を掴んだ……そうだな?」
ジョージ 「ああ、掴んだよ」
747:
拳志郎 「ヨシ……で、いつやる?」
ジョージ 「いつでもいい、と言いたいけれど、チベットについてからにしよう。僕たちには、まだやることがある……そうだろ」
拳志郎 「あぁ、そうだな……ところで、マリオの奴はうまくやっているかね………俺たちゃあ、トキシムのジイサンと約束しちまったから、ここを離れられねー……だから、あっちをアイツに任せなきゃならね――ンだからよぉ」 パハァー
ジョージ 「大丈夫、マリオ兄ィなら、うまくやってくれるさ。それに、クーラも、ショウゴも、かなりの使い手だし……心配ないよ」
拳志郎 「そうか……わかったぜ、ところでコッチではチョイと『奇妙』な事が起こったぜ……見ろよ……ここに、ウダの野郎がいたんだ……だが、俺がぶったおしたらよぉ……」
748:
ジョージ 「……」
拳志郎 「ウダの野郎、消えちまったよ。シューシュー煙を上げてよォ……」
ジョージ 「?!ッ なん……だってぇ………」
749:
拳志郎 「消えたのさ……まるで、薪が煙を上げて、灰も残らず燃え尽きちまうみて――に、シューシュー煙を上げてよォ……」
拳志郎 「そういやぁ、コイツ……変なこと言ってたなぁ……永遠の命だとか、屍生人(ゾンビ)だとかよぉ……ジョージ、おめー何か『心当たり』はねーか?」
ジョージ 「『心当たり』……あるさ……もちろん……」
750:
拳志郎がシッ・シィ――ネ教団のウダと闘った前日:
マリオがインドに到着から数日後:
マリオが乗ってきたものとはまた別の飛行船が、デリーの飛行場に到着していた。
751:
飛行船のドア "ガチャっ"
?? 「ふぅ……やっと着いたか……しかし、なんて匂いだ……酷い国だな……」
?? 「ヤサカ……香水を……」
男の背後に立っていたヤサカと呼ばれた少年が、香水の瓶を取り出した。
752:
インド方面軍大将「お疲れ様ですッ!ヨーマ指令ッ」 ビシッ
兵士1 「お待ちしておりましたッ」 ビシッ
兵士2 「粗末ですが、精いっぱいの宿舎を用意しましたッ!ご案内しますッ」 ビシッ
ヨーマ 「フム……ご苦労……だが、余計な気遣いは無用だ、すぐに任務に入る。情勢を報告せよッ!」
757:
インド方面軍大将・兵士1・兵士2「ハッッ!」
インド方面軍大将「ヨーマ指令のために、車を用意しろッ!報告の為に指令室へお連れするッ」
ヨーマ 「……アーサム インド方面軍大将……違うぞ、行くべきなのは『指令室』ではない……現場だ。現場を案内しろ……聞いているぞ、現地のクソにも劣る類人猿共が、生意気にも我らにたてついているんだろぉ?報告など、移動中にしろ」
アーサム 「ハッ……では、彼らが『行進の準備』をしている様子をお見せします。オイ、車の行先を変えろッ!」
758:
インド方面軍兵士1・兵士2「イェッサァ――!」
ヨーマ 「早くしろ、時は金なり……だ」
アーサム 「かしこまりましたッ」 ガチャッ
ブォオオオ――――ン
ブルルルル……
759:
ヨーマ 「まったく、臭い国だ……車まで臭いよるわ」
アーサム 「……恐縮です」
ヨーマ 「ヤサカ……香水を……」
ヤサカ 「ハイ……ヨーマ師匠……」 プシュッ……プシュッ
ヨーマ 「フー……少しはましになったか……」
アーサム 「……恐縮です」
760:
ヨーマ 「まぁいい、話せ」
アーサム 「はっ、報告しますッ!………………」
  
アーサム 「……………と、言うわけなのですッ!」
ヨーマ 「フム……一言でいえば、住民の反乱に手を焼いている……という事だな」
アーサム 「申し訳ありませんッ」
761:
ヨーマ 「まぁいい、まずは『敵』をこの目で見る事だ」
インド方面軍兵士1 「大将ッ、指令ッ、つきましたァッ」
アーサム 「指令……あれです。あれが『土くれ』どもの、集会です」
アーサムが指差した先には、数千の群集が集まっていた。群衆の前には、1人の男が立っていた。群衆は、その男の話を淡々と聞いている。
その先頭には、巨人といってもよい二人組の男と、二人のゴージャスな美女に囲まれた一人の貧相な男がいた。貧相な男が、群衆に話しかけている。
762:
アーサム 「指令……奴ですッ!あの男が、トキシム……この集団の指導者です」
ヨーマ 「フム……では、さっそく『掃討』を、開始せよ」
アーサム 「そ、『掃討』とは?」
ヨーマ 「……意味が分からぬわけはあるまい……根絶やしにせよ」
763:
アーサム 「なっ……お言葉ですが、奴らは何も暴力的な行動を起こしておりませんッ!奴らに銃を向ける理由がございませんッ!」
ヨーマ 「反乱分子の首魁が、目の前にいるのだ。何をためらっておるッ!」
アーサム 「……し、しかし………あそこには、女子供もいるのです……」
ヨーマ 「アーサム大将……司令である私の命は、女王陛下のお言葉と同等とこころえよ……」
アーサム 「ハッ」
764:
ヨーマ 「やれ」
アーサム 「……拒否します」
ヨーマ 「最後警告だ……我が命令を実行に移せ。我が意に沿わなければ、どうなるか、わかっておるだろう?」
アーサム 「……女王陛下の名に懸けて、拒否します」
765:
ヨーマ 「………………………わかった。アーサムどの……そこまでの強固な意思……貴公の意思を尊重しよう。いままで、ご苦労であった」 グサッ
アーサム 「あぁぁ!……」 ガクッ
ヨーマ 「フッ……苦い血だ……」 ジュルルルルッ
ドロリ……ニュルニュルニュル……
766:
………
………
………
アーサム 「………」ムクリ
767:
ヨーマ 「どうだ、気分は」
アーサム 「サイコ―デス……ナンナリト、ゴメイレイヲ………」
ヨーマ 「……こうなるのがわかっていて、なおも逆らった『生前のキサマ』に敬意を表そう……今日は奴らの掃討は、やめてやる……だが、明日だ……明日の早朝から、『掃討』を開始せよ」
アーサム 「ハッ……」
ヨーマ 「……見るべき個所が、もう一か所あるな……今晩、例のヤツのところに連れて行け……」
768:
――――――――――――――――――――
タタタタタッ
ジョージ 「ハァ……ハァ……もう少しで、クーラ達のところにつくぞ」
拳志郎 「おお、マリオのヤツ、ちゃんとやっているだろうな?……ムッ……」
ピタッ……
拳志郎/ジョージ 「くっ……何てことだ……」
769:
クーラ 「ジョージ……拳志郎ぉ………」
クーガ・ラーガ 「………」
駆け付けた二人が見たのは、トキシム亭の壁を支え、立ったまま絶命しているクーガとラーガの姿であった。
ショウゴ 「拳志郎、ジョージ……来たか……称えてやってくれ……俺たちの、仲間の雄姿を……二人とも、見事な死であった……」
770:
拳志郎 「……馬鹿な、クーガ・ラーガ……お前たちよぉ……」 ドガッ
マリオ 「二人とも済まない、彼らを守りきれなかったよ……」
ジョージ 「……いや、マリオ兄ぃは悪くないよ……敵が強かったんだ」
マリオ 「そんな、気休めを言わないでくれ……」
771:
トキシム 「……いや、『拳法家』どの達が苦に病むことは無い……攻めらるるべきはただ一人、このトキシムよ………せめて、奴らの夢……『我が母国』の独立のために、この命を燃やし尽くすことを誓おう……それが、こやつ等の忠誠へのせめてもの……」 グッ
トキシム 「せめてもの、手向けよ……」
ショウゴ 「………」
772:
拳志郎 「……」ポキッ
ジョージ 「………」ゴキゴキッ……
タバコをの火をつける音 シュボッ
拳志郎 「……ぷはぁーー………ほらよ、一本ずつやるぜ………ラーガ、クーガよぉ」 トン
773:
拳志郎 「おい、ジョージよ……俺は『用事を思い出した』から、チョイと出かけるゼ……だがよぉ……オメ―は別についてこなくても、いいゼェ……」
ジョージ 「……奇遇だね、僕にも『用事がある』のさ……君こそ、別に付き合ってくれなくていいからね……」
拳志郎/ジョージ 「フッ……」 ザッ
774:
マリオ 「……待てよ、二人とも……オレも行こう」
クーラ/ショウコ 「……ワタシ達もよ、いい、『みんなで』落とし前をつけるわよ」
ジョージ 「………覚悟はできているようだね……わかった……一緒に行こう……」
トキシム 「……『拳法家』どのっ!わっ、ワシは……」 ガタッ
775:
拳志郎 「へっ……トキシムさんよぉ〜〜……アンタの『戦場』は、そこじゃないだろ……戦う場所を、間違えんなよ」
トキシム 「……」
クーラ 「トキシム様……あなたは、あなたにしかできない事を行ってください……ワタシ達は、ワタシ達が特異な方法で、戦うだけです……」
トキシム 「………スマン……………」 ガクリ
拳志郎 「『約束』するぜ、アンタの分まで、落とし前をつけといてやるぜ」
ジョージ 「……そろそろ乗り込もうか、『インド方面イギリス軍司令部』へ……」
拳志郎 「オウッ」
776:
――――――――――――――――――――
半日後 イギリス帝国インド方面軍 基地から、3km南方
拳志郎 「へっ……お前と初めて会った時を、思い出すなぁ、ジョージよォ……」
ジョージ 「あの時も、ムチャしたよな……真っ正面からマハラジャの城に乗り込んでさ」
クーラ 「そうね、私がアンタとあったのも、その城だったわね……」
クーラ (クリスピアンッ……どうか、無事で……)
ショウコ 「……フフフフ、楽しい旅だったわね…………みんな、無事で会いましょうね」
マリオ 「そろそろだ……見つからないように、注意しろよ……」
ザザッ……
777:
ジョージ 「よし、ここからは予定通り二手に別れよう……クーラ、ショウコは、僕とこの建物を探索する……マリオ兄ィと、拳志郎は、向こうに……」
拳志郎 「気張れよ、オメーら………」
拳志郎の拳 グイッ
クーラ 「はぁ?誰に向かって口利いてるの?この、『伝承候補者』クン……アンタこそ、頼んだわよ」
クーラの拳 ゴツッ
マリオ 「みんな、手はず通り……またここで落ち合おう」
マリオの拳 ガッ
ショウゴ 「敵は『イギリス帝国軍』……相手にとって不足なしだ」
……プルルンッ……
ショーコ 「………ウフフ………どうってことないわよ。だって、私たちが協力したら、『無敵』よぉ……サクッと片付けて、チベットへ行きましょう」
ショウゴ/ショーコの拳 タッ
ジョージ 「あぁ………行くゾッ」
ジョージの拳 ガキイッ!
778:
五人が輪になり、その輪の中心に向けて、互いの拳を突き合わせた。
そして、駆けるッ!
779:
――――――――――――――――――――
拳志郎・マリオ組
拳志郎 「マリオよぉ………準備はできたか?」 ぷはぁーー
マリオ 「ふっ、君こそ………タバコは満喫したかい?」
拳志郎 「おぉ、行くぞ……俺たちの役目は、陽動だ……覚悟できてるかぁ?」
マリオ 「ふっ、もちろんさ」 グイッ
780:
マリオ 「あそこに、戦車があるだろ………あれを使おう」
ザザッ
マリオ 「よし、ここまでは上手く潜り込めたな」
拳志郎 「ぉーー………ところでオメー、戦車の操縦ができるのか?俺りゃあ、車の免許も持ってねーぞ」
マリオ 「オレだって、そんなの、できるわけがない……でも、まぁ何とかなるさ」
拳志郎 「ノープランかよ、やるねぇ……おっ、だれか来たか……」
781:
戦車兵 「フぇ……夜勤かよ……ったく」 ゴソゴソ
戦車兵 「おぃいいっと、キーは何処だ……おっ、ここか?」ゴソゴソ
マリオ 「フッ……好都合だね……運が良すぎて、変な気分だ」 ブンッ
ドゴッ
戦車兵 バタン
782:
拳志郎 「よぉっし、これで、戦車のキーが手に入ったな……で、どうするんだ?これは」
マリオ 「……知らないが、あちこち押せば、動くんじゃあないか?」
拳志郎 「ちがいねぇ……どれ、ポチッと」 ガシャッ
ぶるんッ
拳志郎 「おぉぉ……エンジンがかかったぜ……さすが俺だ……よし、じゃあアクセルペダルは、………これかぁ?」 ガッ
拳志郎 「動かないな……これはどうだ?」 ガシュッ
783:
ガリっ……
拳志郎 「おぉっ」 ガシガシ
ドルルルルルルッ!!!!!!!!!!!!!!!!!
拳志郎 「よぉっし、動いたぜ。さすが俺様だな」
784:
マリオ 「………なぁ、拳志郎………動いたは、いいけど、これ………暴走しているぞッ」
拳志郎 「うぉおおおおっ!やべぇ、脱出だッ」 ガッ
戦車 ドゴゴゴゴゥ ガシッ
暴走した戦車が、隣の戦車に突っ込んでいくッ!
785:
ドガッ
バゴッ
ギャルギャルギャルッ
ガッ
マリオ 「……なんてことだ。あっという間に大惨事だ……」
拳志郎 「大成功じゃあねーか……陽動としては、よぉ………マリオ、やっちめーよ」
マリオ 「………了解」 ギャルギャルギャルッ!
786:
マリオが鉄球をなげる。……続けてもう1つ、『火打ち石』で作った球を、投げつけるッ
 
カチッ
ボゥッ
………
ドッッガァアアアアアンンッ!!!!
マリオ 「ウハハハハ、炎の回転だッ。戦車がまき散らした燃料に引火させたッ」
拳志郎 「やるねぇ……いい火だ。葉巻に火をつけるのに、ちょうど良いぜ……」 ボッ
マリオ 「……なぁ、拳志郎………まるで、炎に突っ込む虫みたいに、英国兵が来るよ……」
拳志郎 「けっ、おあつらえ向きって奴だな……マリオ、死ぬなよ」
マリオ 「フッ、お前もな、拳志郎」 ガッ
790:
ジョージ・クーラ・ショウゴ/ショーコ組
スィ―――ッ
ジョージ 「……よし、ここだ……みんな上がるよ……」 ジャバっ
グシャッ グチョッ
791:
クーラ 「うぇぇ、湿地の泥に足を取られるぅ……もう、気持ち悪いわッ………こんな、ドロドロの水のなかを泳がされた上に、なによこの泥はッ」
ショウゴ 「ふッ………女々しいぞ。ウダウダ言わずに、黙って行動しろ」
クーラ 「はぁ………チッ………なんでアンタなのよ………これがショーコのヤツだったら、私の何倍もうるさかったはずよ……くっ、要領よく、逃げやがったのね」
ショウゴ「……ハッ、違いないな……」
ジョージ 「二人とも……これで体をぬぐってくれ……そしたら、行くよ………」 ポイ
792:
ゴシゴシ……
クーラ 「はぁーー、これでようやく人心地着いたわーー」
ショウゴ→ショーコ  プルンっ
ショーコ 「潜入せいこうねッ、行きましょ」
クーラ 「くっ………泥水から上がったとたん、ショーコになりやがった………」
793:
ジョージ 「……今頃、拳志郎とマリオ兄ィが陽動をかけてくれているところだ………見つからないように、注意して動こう」
ビィ―――――ッ!!!!
拡声器からの怒鳴り声 《警報ッ、警報ッ、襲撃者あり、特化第三特隊を駐車場に終結させよッ》
ビィ―――――ッ!!!!
クーラ 「あら、どうやらマリオと、拳志郎が何か始めたようね」
ジョージ 「そうだな。急ごう……拳志郎のことだから、堂々と正面突破してここまでやってこようとするはずだ……帝国陸軍を引き連れてね……だから、それまでに勝負を付けないと、メンドーなことになるからね」
クーラ 「そうね、急ぎましょ」
794:
……
……
ジョージ 「よし、この先しばらく人の気配はないよ……巡回の見回りが来る前に、ここを渡りきってしまおう……わたったさきで、あの、建物の隅に隠れる……イイね」
ショーコ 「………」
クーラ 「わかった」
ジョージ 「よし、まずあの茂みまで這っていくよ……それから走る……イイね」 ゴソゴソ
795:
クーラ 「ふえぇ……また、泥をはいずりまわるのか……んんっ?」
クーラ 「ねぇ、ショーコ……なに立ち止まっているのよ……そりゃあ、泥にまみれるのは嫌でしょうけど、しかた無いでしょ……さっさと行くわよ」
ショーコ 「……」 ブンブン(首を振る音)
クーラ 「ちょっと?」
ショーコ 「クーラ………悪いけれど、私には『ちょっと他のところに行く』用事があるの……だから。悲しいけれど……アナタ達とはここで、お別れなの」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
796:
クーラ 「……何……ですって?」
ショーコ 「じつはねっ、南斗の将としての務めを果たさなきゃあいけないの」
クーラ 「はぁ?アンタ、何バカなこと言っているの?こんな時に……」
ショーコ 「あら、私は本気よ」
クーラ 「……裏切るってワケ」 ギュッ
ショーコ 「違うわよ……ただ……やらなきゃならない事があるってだけ……アンタ達の邪魔にはならない……と思うわ……」
797:
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ジョージ 「………」ジツ
クーラ 「証拠もなしに、その言葉を信じろと?」 グイッ
ショーコ 「クーラ……ワタシの言葉を、疑うの?」 ジッ
クーラ 「はっ、調子いいね」 ギュッ
ジョージ 「………」
798:
ジョージ 「……まってくれ、クーラ………ショーコ……僕は、信じているよ」
クーラ 「ちょっ、ジョージ……」
ジョージ 「いいんだ。僕は、信じる……だから君も、納得してくれ」 ポン
クーラ 「正気?……はぁ……わかったわよ……ショーコ、さっさと行っちまいな」 プイッ
ショーコ 「ジョージ……」
ショーコ→ショウゴ ムキッ
ショウゴ 「助かる……恩にきるゾ」 ダッ
799:
………
クーラ 「ねぇジョージ……本当によかったの?ショーコのヤツを勝手に行かせて」
ジョージ 「あぁ……あれはもう、止められなかった……それに、僕らに迷惑はかけないって言葉に、ウソはなかった……それは、わかったんだ」
クーラ 「ふぅん……まぁいいわ、もともとあんな変態はあてにしていなかったし……アイツについてのアンタの判断も……信じるよ」
ジョージ 「ありがとう……」
クーラ 「いいわよ……でも、これで『アンタと私』しかここにいないわ……気を付けていかないとね」
ジョージ 「ああ、わかっている」
クーラ 「………」
ジョージ 「………僕らもそろそろ行こうか」
クーラ 「ええ……そうね……」
ジョージ 「よし、スリーカウントで走るぞ……1,2,3ッ!」 ダッ 
ダダダッ
800:
クーラ 「よし、無事にここまでこれたわね。この後はどうするの」
ジョージ 「この先は、ちょっとした庭園になっている……監視の目をすり抜けながら、この庭園を抜けるよ」 ガサッ
クーラ 「わかったわ」
ガサガサ
ザッ
ゴソゴソ………
茂みを潜り抜け、息を殺して監視の兵の目をすり抜け……庭園を抜けること一時間、ついに二人は、めざす建物の前に着いた。
801:
クーラ 「ふぅ……ようやくついたわね」
ジョージ 「ああ、ここが、『英国陸軍インド方面軍指令棟』さ」
クーラ 「何か黒いし、重苦しい雰囲気の建物ね……」
ジョージ 「警備も厳重だ。むやみに動かないでくれよ」
802:
クーラ 「……」
ジョージ 「? クーラ、どうした?」
クーラ 「ねぇジョージ、考えたんだけど……2人で一緒に動けば、人目につくわ……だからここからは、『別行動』をしない?」
ジョージ 「……いいのかい?」
クーラ 「ええ。それがいいの……ところで、ワタシは、正面から行くわよ」
ジョージ 「では僕は……上から行く」
ジョージはそういうと、壁にそっと手を当てた。
803:
ジョージ 「ザ・ソーン。出でよッ」 ギュワワワワ――――ンッ!
ジョージの手から、茨の腕が出現した。茨は、ゆっくりとした度で、建物の壁を這うように登っていく。
ギュッ
ジョージ 「よし……これでいいか。行くよ、クーラ」 ギュッ グイッ
ジョージは、壁に這わせたスタンド:ザ・ソーンを両手で引っ張り、少しづつ壁を登って行った。
804:
クーラ 「……じゃあね、ジョージ」 ボソッ
その背中を、クーラはじっと見ていた。そして、ジョージの姿が消えたころ……クーラは、クルリと建物から背を向けた。そして、庭園に戻っていく。
ジャッ
クーラ 「さぁ、出てきなさいよ……この私、『元斗皇拳』のクーラが、相手をしてあげるわ」
805:
ガサ
?? 「気づいておったのか……」
クーラ 「ふぅ……この気の質……元斗の人間として、こんな『斬るような質の気』を受けて、気づかない人間はい無いわ……ねぇ、『南斗聖拳』のヒト……」
?? 「ふっ、さすがは元斗皇拳伝承者さまってことか」
現れたのは、二人組の男であった。
1人は山のように巨大な、大男。もう一人は、両肩に星条旗の入った肩パットを付けた、少し頭が軽そうな男だ。
?? 「オレ達……『山』のフィドウと、『星』のバリンがお相手をさせていただく」
806:
クーラ 「五車星……そう、南斗一派も、本気なのね……」 クイッ
クーラ (……それにしても、コイツ……こんなでかい図体でこれまでどこに隠れていたってワケぇ?)
807:
――――――――――――――――――――
同時刻: 拳志郎/マリオ組
ガガガガガッ
拳志郎 「うぉぉおっ、勝手な事をしやがって」 ガッ ダダダダッ
マリオ 「拳志郎、こっちだッ。この戦車の陰にこいッ」 クイッ
拳志郎 「おお、助かるぜ」 ジャッ
マリオ 「……拳志郎、どうだ?帝国陸軍の兵士は」
健志郎 「あぁ、さすが……世界最強の軍隊だけのことはあるねぇ……中々、手ごわいぜ……しかも、コイツラ全員、あのウダの奴と同じだ……アイツら、ただ『人の皮』をかぶっているだけだ。中身は、『泥』だぜ……」
マリオ 「そうか……」
808:
拳志郎 「ちっ、泥人形なんて、なんとでもなるがよぉ……だが、無敵の暗殺拳とかいっても、やっぱりマシンガンには、かなわねェからよぉ……」
マリオ 「拳志郎……このまま、遮蔽物に隠れていても、じり貧だ……何か行動を変えないと」
拳志郎 「そりゃあ、そんなことは、わかってるがよぉ」
マリオ 「……俺に、考えがある」
拳志郎 「へぇ、オメ――、ようやく本気になったかよ」
マリオ 「ああ……少し、任せてくれ」 ギュルルルルッ ギャルルルルッ
811:
ギュルルルルッ ギャルルルルッ
マリオは、小さな独楽を一つ、手のひらの上で『回転』させていた。
マリオ 「俺が操る回転は、五つ……『見えない回転』、『弾きあう回転』、『炎の回転』……そして、これから俺が見せるのが4つ目の回転だ………『操作する回転ッ』」 ギャルルルルっ!
マリオは、両手で回転させていた小さな独楽を、自分の右肩に乗せるッ!
独楽 ギャルルルッルルッ!
拳志郎 「ウッゲェ……独楽がマリオの右肩に潜っていったぜ……なんだありゃ?」
812:
マリオ 「うぉおおおっ」 ムクムクムク
拳志郎 「なんだぁ?マリオの体が一回り大きくなりやがった……ムッ………もしかして、この効果は『穿腕孔(せんわんこう)』とおなじか?こりゃあ、おれの知らねェ『経絡秘孔』の撃ち方ってワケなのかぁ?」
マリオ 「………そうだよ……君の秘孔ほどの威力は無いけれど、この独楽は、『回転』の力でいくつかの秘孔を活性化させられるのさ……今、俺がうったのは『穿腕孔』ッ!わずかな時間だけ、肉体を強化する秘孔だッ」 ドジャウッ!!
マリオ 「そして、この強化された状態で俺が放つ、『弾きあう回転』を味わえっ!」 バシュッ!
マリオが、次から次へと小さな弾丸を弾き飛ばしていくッ。強化された指がはじいた弾丸は、通常では届かない遠方まで届くッ
バシュッ
バシュバシュッ!
813:
英国兵1 「なっ!何だッ」 ゲボッ
英国兵2 「うぎゃぁっ!撃たれたぞッ!」 ドボドボドボ……
英国兵達 バタン
ドロッ
拳志郎 「おぉ……やるじゃあねーか……だが、ありゃあ……」
地に伏した英国兵達の傷跡から、泥が染み出た。泥が、英国兵士たち覆うと、兵士たちは再び立ち上がった。
泥だらけの英国兵 ユラッ……
マリオ 「やはりか……『弾く回転』は、一発の破壊力が弱い……泥人形に致命傷を与えるまでには、至らないか」 ダシュッ!
814:
マリオが駆けるッ! マリオは、驚異的なスピードで走り、一瞬で英国陸軍の懐に近づいていくッ!
マリオ 「だが、クラエッ」 ギャルルルルっ
キョリを詰めたマリオが、鉄球を放つッ
鉄球x2 ギャルルルルっ
二つの鉄球が、英国兵を次から次へと吹き飛ばして行く。
拳志郎 「よしッ!うまく隙を作ったじゃねーか」 ダッ
同時に拳志郎が、英国兵の前に駆け寄る。
拳志郎「喰らえや、北斗百烈拳ッ!ウワタァ―――」 ドガガガガガガッ
英国兵 「ぶっぎゃああ――――――ッ!」
815:
拳志郎 「ふぅ……」
マリオ 「………」
拳志郎とマリオ、二人は悠然とたたずんでいた。
その周囲には、泥の塊に埋もれた銃と、英国兵の制服が散乱していた。
英国兵士はすべて地に伏している。だがジョージと拳志郎は、まだ闘争中のテンションをたもったまま、闘気を放ちづづけているッ
拳志郎 「やれやれ……ご苦労様だねェ」 クイクイッ
マリオ 「……早くかかってこい」 ギャルッ
?? ユラリ
拳志郎 「おお、コイツは少し、期待できるかぁ?ちょっとは(拳法を)使えそうな身のこなしじゃあねーか。テメェ……」
?? 「拳志郎……さすが、南斗紅鶴拳のウダを倒しただけのことはあるな……だが、勘違いしないでもらおうか……」
816:
拳志郎 「あぁ?勘違いって、何をだよぉ?」
?? 「だがウダは……奴は南斗六聖拳の中で最弱っ!我が南斗孤鷲拳で葬ってくれるわッ」
拳志郎 「へぇ……」
?? 「オレの名は、フウゲンッッ!南斗孤鷲拳のフウゲンよ。かかってこいッ!」
拳志郎 「ふぅ……なんか最初は手ゴワイかと思ったが、良く観るとなんつーか……カマセ感が出まくっているガキだな……」 ハァ……
817:
クーラ 「!?ッ」シュッ
フィドウ 「ゴブッ!……ドグァッ」 ドガァツ
クーラの一撃をまともに喰らったフィドウは、吐血しながらも倒れない。
逆に、その巨体から必殺のラリアットを繰り出すッ!
クーラ 「クッ……体勢が崩れたところに……よけきれないわッ」
フィドウ 「女だからと、手加減などせんぞ。死ねィ!グギャアアアッ」 バゴッッ!
フィドウのラリアットをまともに喰らったクーラが、ぶっ飛ぶ。
クーラ 「ガッ……クッ」 ヨロ……
818:
まだヨロヨロしているクーラの目の前に、バリンが立ちふさがった。
バリン 「へぇ……フィドウの旦那のラリアットを喰らって、まだ立てるなんて、やるじゃないッ」 バシュバシュバシュ!
バリンが、ジャブからの、ワン・ツーコンビネーションを放つッ!
クーラ(チッ、手が早いッ……避けられない!)
ボコボコボコボコッ!
クーラ 「ゲッ……調子に、乗りやがって」 バシュッ
バリン 「おっと、まだ立てるのかよ……だが……」 クイッ
バリン 「遅いぜッ!」
クーラの攻撃をかいくぐったバリンは、アッパーカットを放つッ!
819:
まともに顎を跳ね上げられたクーラが、一瞬意識を失う。
そこに、フィドウの強烈なぶちかましが襲い掛かるぅ!!
ぶちかましを受けたクーラは吹っ飛ばされ、その勢いで立木をへし折った。
クーラ ゲブゥッ!
フィドウ 「……ほう、まだ立つか……だが、悲しいかな貴様はもうただのサンドバックよ……」
バリン 「ヘッ……あれを受けて『立つ』なんて、思ったよりやるじゃない。だがアンタは、俺達5車星にはかなわねーぜ……『山』のフィドウと、『星』のバリン様にはよ」
フィドウ 「……おなご相手に二人係とは、不本意ではあるが……だが、貴様にはもう『万に一つ』の逆転のチャンスもないワ……おとなしく、我らが『主』の粛清を受けるがよい」
820:
クーラ 「……」
バリン 「あっ?なんだ?何か話したいことがあるのなら、ハッキリ話せ……このアマ」
クーラ 「『主』?アンタたち5車星の『主』って………じゃあ、『慈母星』が裏切ったってこと?」
フィドウ 「……」
バリン 「ヘッ……我が『主』を、あんなしみったれた『専守防衛の拳』の主と一緒にするなよ」
クーラ 「……そう……ならば、何の遠慮もいらないわね……」 ギラ……
821:
――――――――――――――――――――
ショウゴ 「待て、うぬ……こそこそ隠れとらんで、いい加減に姿を現したら、どうだ?」
??「……なんだ、六番目か……だが、よく我の追跡に気が付いたな……」」
ショウゴ 「なんだと……オウショウ……キサマ……」 ギロ……
オウショウ 「フン……生意気な……おい、ショーコはどこだ?『鳳凰拳』の師匠さまに挨拶せんか」
ショウゴ 「……」
オウショウ 「……」
ショウゴ → ショーコ
ショーコ 「オウショウ……あんた、なんでここにいるの」
822:
オウショウ 「ケッ、かわいげのねぇ女だ……『なんでここにいる』かだってぇ?わかっているだろうが……『北斗』のヤロウをぶっ殺すためだ」
ショーコ 「それは、ワタシの役目よ……将星……あんたはお呼びじゃあないわよ♡」
オウショウ 「我が宿星は将星ッ、我が拳は南斗鳳凰拳ッ……、南斗108派の最上位に君臨する帝王の拳よ!………慈母星、守りを固めるだけの臆病者の拳こそ、ひっこんどれッ」
ショーコ 「ハイハイ……」
オウショウ 「確かにキサマも、我が南斗鳳凰拳を教えてやったワ……だが、サワリだけよ……加えて、おれは今新たな力を手に入れたのよ……キサマは、我が帝王の体に毛ほどの傷もつけることは出来んわッ!」 バシュッ!
ショーコ シュッッ
823:
オウショウ 「ほほう……天翔十字鳳を身につけておったか……かろうじてだが、我が極星十字拳を避けるとはな……良く修めた」
ショーコ 「師匠づらするんじゃないわよ……お返しよッ♡ 鳳凰旋脚ッ」 ザシュッ ドガッ
オウショウ シュルッ!
ショーコ (クッ、早い……ワタシの蹴りをすり抜けるなんてッ)
824:
オウショウ 「クククク……なんだ、そのスローな動きは……がっかりだぞ。喰らえ、極星十字拳ッ!」ズバッ
ショーコ 「ハッ……逆十字鳳ッ」 バジャッ
バシュッ
ボタボタ……
ショーコ→ショウゴ 「クゥっ……」 ボタボタボタ
オウショウ 「クククク……やるではないかショーコ。我が極星十字拳の踏み込みに合わせて、逆十字鳳を放って背後に逃げるとはな……しかも、おれにも置き土産を置いていくとはな」 ザバッ ボタボタボタ……
825:
オウショウ 「だが、無駄よ……言っただろう。俺は新たな力を手に入れたと」 ドロドロドロ……
オウショウの傷口から泥がしみだして、傷をあっという間にふさいでいくッ!
オウショウ 「フハハハハ……この一撃で限界か、ショーコよ……後は臆病者の蒼鸞拳の防御の陰で、びくびく震えるだけかぁ??……まあいい……鳳凰の羽ばたきをうけて死ねッ!『鳳翼天翔』」 ドオォッ
オウショウが両手を、素早く振り上げる。まるで鳳凰の羽ばたきの様な、その拳圧による圧倒的な『戦気の奔流』が、ショウゴを襲うッ!
ガズィッ
826:
オウショウ 「……フン……南斗蒼鸞拳……亀のように閉じこもっているバカリの臆病者の拳……だが、『固い』な……『鳳翼天翔』を正面から受け止めおるか」
ショウゴ ゲボッ……
オウショウ 「ハッ、吐血しているではないか……やせ我慢をしおって……そうだ。いかに貴様が『固い』とはいえど、『鳳翼天翔』を受け止めたのだ。貴様の体はもうボロボロのはずだ」
ショウゴ 「フン……ここからが本番だッ……かかってこい」 クイッ
830:
……イギリス帝国インド方面軍、司令棟……
薄暗い廊下はガランとしており、人の気配もなかった。その廊下に面した窓ガラスに、外からそっと手が当てられた。
手にグイッと力がこめられると、ガラスがパリッと割れた。だが不思議なことに、割れたガラスが手に張り付き、下に落ちない。割れた窓から、1人の大柄な男が忍び込んだ。

スチャッ
ジョージ (………不思議だ………なぜこの司令部には人の気配が無い……)
スタンド:ザ・ソーン バチバチバチ………
ジョージ (何故だ……僕のスタンド:ザ・ソーンをこのフロア中に張り巡らせたのに、反応がない……)
831:
ジョージ (どこだ……どこにいる……) バチバチバチバチ……
ジョージ (おっと、手のひらに込めた波紋を解かなくては……割れたガラスがくっついたままだった…………… ) カタッ
ジョージ (……いつまでもここでグズグズしていられる時間はない…………どこだ……どこにいる……) キョロキョロ……
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ジョージ (だが何だ?この……『まるで吹雪の中、防寒着なしで外をさ迷っている』かのような、この非人間的な冷気は………)
832:
その時……
ジョージの視界に、ゆっくり、ゆっくりと廊下を歩いてくる人影が見えた。
グチョリ……
ピタ
ベタ
ピタ
ジョージ (むっ………) ピトッ
833:
虚ろな目をした兵士「ううぅ……あぁぁぁ………」 ドボドボドボ……
虚ろな目をした兵士が立ち止まり、口から何やら溢れさせ、足元にはいた……それは泥だ。腐った泥だ……
ジョージ (これは、酷い………彼はもう、『助からない』か……) スタッ
虚ろな目をした兵士 「?!ッ」
ジョージ 「コォッ」 ドガッッ!
ジョージの波紋が、兵士の体に穴をあけるッ!
834:
虚ろな目をした兵士 「……なんの、マネだ?」 ベチャッ ガチャッ
だが次の瞬間、兵士の体から泥が浸み出て、傷口をふさぐ。
兵士が、銃を構えるッ!
虚ろな目をした兵士 「死ねィ!死んで、あったかい血液をあふれさせせセヤガガガガれぃっ!」 ガチャッ
ジョージ 「クッ!ならばっ」 バチバチバチッ
ジョージは、兵士が銃の引き金を引くよりも早く、再び兵士の懐に飛び込むッ!
ザ・ソーンの茨を腕にまとわりつかせ、兵士の頭部を殴りつけるッ!
波紋を帯びた茨が、兵士に食い込むッ!
835:
虚ろな目をした兵士 「アギッ!」 バタリ
ベチャッ
シュワ――――
ジョージの拳を喰らった兵士の頭部が、ぶっとぶ。
……兵士は倒れ、泥が傷口からあふれ出した。泥は廊下に広まり、そこら中から煙を吐き……やがて、消えた。
ジョージ (やはり、思った通りだ。…ザ・ソーンと波紋を組み合わせれば………この泥の怪物となった人たちにも、僕の攻撃は効く… ……)
ガチャッ
不意に、ジョージの目の前の扉が、開いた。
836:
バシュッ
ジョージ 「?!」 ギャルッッ
ジョージ (……何かが飛んできたと思ったら、これは……投げナイフか?)
??「へぇ、今のを避けるのか……」 スタッ
ドアの奥から現れたのは、拳志郎とほぼ同年代の長髪の男だッ!
ジョージ 「キミは……君は泥人間ではないようだね……」
?? 「ヤサカ……お前を殺(ヤ)る前に名乗っておこう……オレの名前は『西斗月剣』のヤサカ……」
837:
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ジョージ 「西斗月剣?なんだそれは……聞いたことが無いな……」
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
ヤサカ 「……おい、本気か?キサマ、我が拳と双璧をなす『東斗仙道』の使い手のくせに……」
ジョージ 「僕は、劣等生でね……」
ヤサカ 「そうかよ……ならば少し、『西斗月剣(拳)』の事を説明してやろう……いいか、『太陰星』それが、わが宿星よ……『西斗月剣(拳)』は、キサマら『東斗仙道』の宿星『太陽星』と双となり、かつては天を二分した拳よ……」
ジョージ (東斗仙道……波紋法のことか……そういえば昔、ストレイッツオ叔父が、波紋法の事を仙道と言っていたのを聞いたことがあるぞ……コイツの言っていることが正しいとすると……波紋法と北斗神拳、南斗聖拳、元斗皇拳……それにコイツの言う西斗月拳には何らかの関係があるってことか……)
ヤサカの独白が続く……
ヤサカ 「……だが、時は経ち、いつしか我らは歴史の闇に消えていった……北斗・南斗・それに元斗の拳に、我らの拳を伝えてな……そうだろ?お前も、わかっているだろ?」
838:
ヤサカ 「我らの拳が、奴らに盗まれたことを……」
ジョージ 「……」
ヤサカ 「ふっ……だんまりか……」
ジョージ 「……で、君は……なぜここにいるの?」
ヤサカ「フッ……気功の源流……秘拳、東斗仙道の男よ……話してやろう……我が望みは、西斗月剣をこの世に再興させ、そして……北斗を撃つことッ!
ジョージ 「なんだって?」
ヤサカ 「東斗の……キサマ、俺と手を組まないか?ともに、奴らを倒すのだッ」
ジョージ 「馬鹿なことを……だが、拳志郎と闘いたいのなら、堂々と挑めばいい……僕は止めないよ。そんなことより、そこをどいてくれッ!……僕は、君の背後にいる人物に用があるッ!」
ヤサカ 「ダメだ……オレはまだヨーマから西斗の秘拳を学び終えてはおらぬ……だから東斗の男よ……ここは、貴様が引け……」
839:
ジョージ 「……勝手だな……断るッ」
ヤサカ 「勝手……だとぉ……オレの一族の二千年の宿願を継いだオレの思いを、勝手……だとぉ?」 ブルブル……
ジョージ 「ああ。勝手だ……だがそんな勝手な理由で僕を止めようったって、そうはいかないよ……僕には、いかなければならない『理由』があるッ!それに『拳志郎』は僕の強敵(トモ)だ……北斗を敵視する君の味方は、出来ない」ジャリッ
ヤサカ 「はっ、そうかいッ!我が西斗月剣は、戦場の拳ッ……北斗神拳に経絡秘孔の秘儀を伝えた源流の秘拳ッ!思い知るがいい……その、真の力をッ!」 ザシュッ
ヤサカが、連続突きを放つッ!
840:
ジョージ 「!?ッ」
だがジョージは、被弾しなかった。ヤサカのすべての突きを避けきった!
ジョージ 「中々やるなッ……案外鋭い拳だ。だが、まだまださも、重さも、足りないな」
ヤサカ 「アァアア―――ン?ホントか、ホ・ン・ト・カァぁ?」
ブスッ
ジョージ 「?!ッ」 ガク
ひざまずくジョージの肩に、鉄の串が突き立っているッ!
ヤサカ 「暗器、鶴嘴千本(かくしせんぼん)……先ほどの拳はおとりよ……本命は、この千本による点穴よ」
ジョージ 「くっ、気づかなかった。してやられた……」ガクガク……
ヤサカ 「はっ……まだ話せるのか、大したものだ。だが、『お前の命はあと5秒』だ。5秒で、ボンだ」 ククク……
841:
ジョージ 「……」
ヤサカ 「ひとぉ――つ……ふたぁ―――っ、みぃ―――つっ………」
ヤサカ 「よぉ―――ッ」(コイツ……人生の終わりだと言うのに、妙に冷静だな) 
ジョージ 「コォオオッ!」 
ジョージの肩に刺さった鉄串 ヌルッ……
ダッ!
立ち上がったジョージが、高タックルを放つッ
迎撃に跳んできたヤサカの蹴りを掴み、組み合うと同時に、足を狩りに行くッ!
842:
ヤサカ 「?!ッッ」 クルッ
ジョージ 「こんな、半端な点穴で、僕の秘孔を突けるとでも?」
ヤサカ 「なんだとォ……コイツ、筋肉の収縮で千本を抜きやがった。しかも……経絡秘孔が効かない……だとぉ?」
ジョージ 「キミのような少年を殴り飛ばすのは、気が進まないが……ゴラッッッ!」
バババババッ!!!
ヤサカ 「チッ」 ガキキキィイイ――――ンッ!
ジョージ 「躱すか……だが、甘いッ」 ダッ
ヤサカ 「おおっとぉッ」 (あっぶねぇ―――なんて、早いタックルだ……)
ジョージ 「まだまだッ!」 クイッ
タックルをかけたジョージの体が、回転した。前転しながら、ジョージのかかとがヤサカの顎を狙うッ!
843:
ヤサカ 「!?チッ」 ガッ
ジョージ 「やるッ! 今のを素手で受け止めずに、千本を使って受け止めに行くなんて」
ヤサカ 「……そりゃあ、コッチのセリフだ。なんだぁ、オメェ……千本が、折れちまった……普通なら、てめーのアキレス腱がブチ切れているハズなのによぉ……」
ジョージ 「そんな、鉄の棒っきれで、僕の体に傷がつけられるとでも?」 ギュウンッ
ジョージが、正拳突きをヤサカに打ち込む。
ヤサカは、とっさに千本を十字に組み、ジョージの拳を受け止める。
ジョージ 「このまま、押し込むッ!いくら防御していても、僕の拳が触れれば、君はもうおしまいだッ!」 バチバチバチッ
ジョージの拳から、ザ・ソーンの茨が出現した。
茨が少しずつ、ヤサカに伸びていく……
844:
ヤサカ 「………フッ」 スッ
ヤサカはとっさに力を抜き、ジョージの拳をかわした。
そのままトンボをきって、後方に跳ぶ。
ヤサカ 「ハハハハッ!こりゃあ、スゲ―や……」ヒョイッ
そして、ジョージに背を向けて走り出した。
ジョージ 「!? 何故だ。何故背を向ける?」
ヤサカ 「ジョージ……確かに東斗仙道の力、見せてもらったぜェッ!俺はここで引く……オレの宿願、北斗神拳の壊滅までは、無駄なリスクは払いたくないものなぁッ」
ジョージ 「なんだ、コイツは……」
ヤサカ 「ジョージ、最後に一つ忠告しておいてやるぜ……逃げろッ!キサマでは、ヨーマにはかなわんッ!」
タタタタタッ
845:
ガクッ
ジョージ 「……なんだ、アイツは……だが、中々強かったな……あの千本、波紋の力で何とか秘孔への刺激を止めたが……ダメージは残った、か……」
ヨロ……
ジョージ 「………さて、行くか……」ヨロ、ヨロ……
ガチャリ
扉を開けたその先は、天井まで届く本棚で埋め尽くされた一室であった。高級な木材をふんだんに使った床、家具……そして、巨大な執務机が、ジョージの目の前に見えていた。
そして、どことなく黴臭いような、ヘドロがたまっているような、腐った匂いが滓のように漂っている。
執務机の先には、こちらに背を向けた大柄な男が座っていた……
??「来たか……」クルリ
846:
ジョージ 「ハッ……ヨーナ指令……イギリス空軍第1航空団予備役、ジョージ・ジョースター大尉でありますッ!!」ビシッ
ヨーナ 「フフフ……間違っているぞ。イギリス空軍の誇るエース(撃墜王)の一人、“スター”:ジョージよ……キサマは予備役ではないッ、まだ現役だ。私は貴様の予備役への編入を、許可していないからな……」
ジョージ 「…………指令……、信じたくありませんでした。まさか、まさかアナタが……」 コォオオオオオ―――ッ……
┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨┣¨
ヨーナ 「“スター”:ジョージ・ジョースターよ……我とキサマの一族の間には、確かに浅からぬ縁(えにし)がある。知っていたか?」ユラリ……
ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ
847:
ヨーナ 「知っているかね、”スター”・ジョージよ……ウィンドナイツ・ロット(風の騎士たちの町)……中世時代に騎士たちの訓練場として作られた町のことを……」
ジョージ 「ああ………スピードワゴンおじさんと母さんから、聞いたことがある……」
ヨーナ 「ウィンドナイツ・ロット、我が主、ディオ様と貴様の父親が戦った土地………そこは元来、北斗に潰された我ら月氏の民の生き残りが行きついた、安息の地だったのよッ!そしていつしか我が一族は、かの地に埋葬され、歴史の闇に消えた……」
ジョージ 「………」
ヨーナ 「我は西斗月剣の高弟、ヨーナ……2000年もこの地で眠っていた我を、よみがえらせてくれたのがディオ様よ……2000年もの眠りから覚めるのに時間がかかりすぎ、ディオ様と波紋の一族との戦いには、間に合わなかったがなぁ!」
ジョージ 「まさか、アナタ……いや、貴様が、ディオの下僕っ!ゾンビ(屍生人)だったとはッッ!」
ヨーナ 「Gyiaaaaa……」 ドガッ!
ヨーナが机を蹴とばすッ!
巨大な机が、轟音を立ててジョージに襲い掛かるッ
848:
ジョージ「ウォオオオッ!」ガシィツッ
ジョージは避けないッ、ガードを固め正面から机を受け止めたッ!。
バギィィッ!
机が粉みじんに吹き飛んだッ!
ジョージは、ただガードしていただけではなかった。ザ・ソーンを高圧電線のように全身に張り巡らせ、波紋の力を流していたのだ!
ジョージ 「来いッ!ヨーナッ!もう貴様を、同じイギリス帝国軍の司令として認めぬッ!女王陛下の為、そして、貴様に苦しめられたインドの民衆の為、僕がお前を撃つッ!」
849:
ヨーナ 「我を討つ……とな。威勢がいいな……」 ニヤリ……
ジョージ 「くらえっ!」 ダッ!
ジョージ 「ゴラゴラゴラゴラッ!」ドバドバドバドバッ
ジョージがラッシュ(連撃)を放つッ
ヨーナが、両手を広げる。
その手が高で動き、まるで1000もの手が宙に浮かんでいるように見えるッ
ヨーナ 「はっ、東斗仙道ッ!修行が足りんゾッ」 バシュバシュバシュバシュッ!
850:
ジョージ 「クウッ……早いッ!……僕の攻撃が、すべて防がれるなんてッ」
ヨーナ 「ハッ……油断したなッ」 ドゴォオオッ!
一瞬棒立ちになったジョージに向かって、ヨーナが正拳突きを放つッ!
ジョージ 「ゴボォォッ!!!」 バァ―――ンン!!
ジョージは、かろうじてその正拳を肩で受け止める……その体が、ぶっ飛ぶッ!!!
ガラガラガラッ!
ジョージ(クッ……なんてパワーとスピードだ……これが、西斗の拳法家が『屍生人』のパワーを手に入れた結果か……まるで、『恐竜』と闘っているようだ……)
ヨロ……
851:
――――――――――――――――――
一方その頃、拳志郎とマリオは……
フウゲン ピクピク……
拳志郎 「はぁ――――――」ガックリ
悠然とたたずむ拳志郎とマリオ。その足元に、南斗孤鷲拳のフウゲンがボロボロになって、倒れていた。
拳志郎 「やっぱりてめーは、ただのカマセヤロウじゃねぇ――か。ちゃんと修行していたのかよ、このヴォケッ!張り合いが無さ過ぎて、眠っちまうぞッ」
フウゲン 「ば……馬鹿な……」
852:
拳志郎 「だいたいよぉ、南斗孤鷲拳ってぇのは、南斗の中でもけっこうイケてる流派のはずだロ!それが、『こんなもの』かよっ!俺は、南斗随一の刺突を味わえると、楽しみにしていたのによぉ……しかもてめぇ、『泥人形』に身を落としたくせに、こんなものなのかよォ」
フウゲン 「……くっ、化け物め………」
バタリ
マリオ 「拳志郎、こんな奴はもういい。先を急ごう……ジョージが心配だ……」
拳志郎 「そうだな、ジョージの奴、暴走してヘタをうっているかもしれねーしな」
タッ
853:
タタタタッ
マリオ 「……ムッ……?」
クーラ 「……あら、拳志郎とマリオ……無事だったのね」
拳志郎 「よぉ……オメ―の方は、ケッコー苦戦したみてーじゃねぇか」
マリオ 「大丈夫か?血だらけだ……」
クーラ 「大丈夫よ……ちょっと、苦戦しちゃったのよ……コイツラに……でも、なんてことないわ」
クーラが指差す先には、南斗5車星のうちの2星、星のバリンと山のフィドウの二人が、倒れていた。
854:
拳志郎 「へぇ……5車星最強の山と星を同時に相手にしたのか、やるじゃあねーか」
クーラ 「フフフ……ありがと。でも、わたし……もう限界……」ズリ……
マリオ 「………わかっているよ。あとは僕たちに任せて、君は脱出してくれ」
クーラ 「言われなくても……これ以上アンタ達には付き合えないわよ……さっさと行って」 パタパタ
マリオ 「ああ、後は任せておいてよ……」
拳志郎 「オウっ、お前……良くやったぜ」
クーラ 「ハッ……アンタ達にそんなこと言われたら、気持ち悪いわ……さっさとイキな」
マリオ 「……わかった。君も気を付けて………」
タタタタッ
クーラ 「拳志郎、マリオ……頼んだわよ……」
ズリ・ズリ……
855:
タタタッ……
ピタッ
走り出した拳志郎が、立ち止まった。
拳志郎 「クーラ……よぉ」クルッ
クーラ 「……何よ」
拳志郎 「おまえの弟……クリスピアンだが……」
クーラ 「……」
拳志郎 「もう、傷が癒えているころだ……だが、もしお前が病院に戻った時、奴がまだ意識を取り戻していなかったら、秘孔『王柱』を突け……目を覚ますはずだぜ」
クーラ 「……わかったわ……」
ダダダッ
クーラ (ありがとう……拳志郎……)
ズリッ……ガクッ
856:
拳志郎 「お前もか……」
ショウゴ 「……………北斗の……」
ヨロッ
マリオ 「くっ、ひどい傷だ……大丈夫か?」
ショウゴ 「……大丈夫だ」
ヨロ……ヨロ……
拳志郎 「……」
ショウゴ 「……北斗……俺は、ついに『南斗聖拳』をこの手で掴んだ。南斗鳳凰拳の使い手を、破ることによってな」ガシッ
拳志郎 「そうか……『成った』のか………」
ショウゴ 「そうだ……なぁ、知っているか?蒼鸞もまた鳳凰の一つなのだ……鳳凰が『成った』いま、俺は金翅となったのだ……」
ゲボッ
ショウゴが、血を吐いた。
857:
マリオ 「……ショウゴ、お前……」
ショウゴ 「……何でもない……け……拳志郎……来いッ!」
クィツ
拳志郎 「………わかった」グイッ
ショウゴ 「拳志郎……俺と闘えッ!……俺は、南斗の宿願を果たすために作られた存在よッ。貴様を倒すことが、俺の存在意義」
グッ
ショウゴは手を合わせた。
マリオは、その手の形を見たことがあった。
それは北斗天帰掌……戦いに倒れても決して相手を恨まないという意を示す、北斗の作法だ。
858:
拳志郎 「……おぉ、いいぜ……」 グッ
拳志郎もまた、ショウゴに向かって北斗天帰掌の形に、手を合わせた。
マリオ 「ちょっとまてッ!お前たちは今……戦うのか?」
拳志郎 「俺は、全然かまわないぜ」
ショウゴ 「……来い……」
マリオ 「だが、ジョージが心配じゃあないのかッ……それにショウゴだって、ひどい傷だ……万全の状態じゃあないっ!」
拳志郎 「マリオ……お前のいう事はわかる。だが俺にはショウゴの……南斗の思いも受け止めるべきだ……コイツも、俺にとっては強敵(トモ)だ。強敵の思いは、俺には重い……」
ショウゴ 「…………」
859:
拳志郎 「コイツは今が、100%のベストコンディションだ……オレには、わかる……」
マリオ 「拳志郎ッ、まて、考え直せッ」
ガシッ
拳志郎 「ジョージは……強いッ。アイツなら、持ちこたえられるはずだ……マリオ……お前は、行ってやれ」
スッ
マリオ (だめか、拳志郎がこうなってしまっては……拳をかわす以外に、この場を収める方法は無いか………)
ショウゴ 「グオォォッ」
ドガッ!
ショウゴが、拳志郎に拳を打ち込もうとしたッ!
だがその拳を、マリオが受け止めるッ!
ショウゴ 「マリオ……キサマ……」 
拳志郎 「おいおい……」
860:
マリオ 「……………ショウゴ……お前に聞く。それは今か?……本当に今が、お前が賭けてきたものを出すべき時か?」
ショウゴ 「………」
マリオ 「答えろ……」
ショウゴ 「……当然………と言いたいところだが、俺も今のこの国の惨状には思うところがある……行け………拳志郎。そして帰ってきたら、俺と死合え……」
クッ
拳志郎 「わかった……フッ」
クルリッ
シュワワワワ……
ショウゴ→ショーコ
ショーコ 「……そうよ、ジョージはワタシが狙ってるのよッ。アンタたち、しっかり助けなさいよ………」
パチッ
マリオ 「……ああ、任せてくれ………」
ダダダッ
ショーコ (アンタたち、無事に帰ってくるのよ……フフフ………)
ズルッ……
861:
タタタタタ……
マリオ 「よし、ついたぞ………ここが、英国陸軍司令部のある建物……だ」
拳志郎 「さぁて、やるか……乗り込むぞ」
ポキポキポキ
マリオ 「ああ、行こう」
ギャルルルルッ
拳志郎 「おお、気ぃ張れよ……マリオッ」
ドガァアアアアンンッ!
突然、建物の壁にひびが走り、砕けた。
割れた壁を突き破り、甲冑をまとった2人の男が拳志郎とマリオの前に現れたッ!
862:
二人の男は、それぞれ鉄の塊のような重厚な甲冑をかぶっていた。
?「Gzyiiiiiii!俺の名は、ウィンザレオッ!獅子王ウィンザレオッだッ!!」
??「Byaaaaaxtu !我が名はアイクマン……稲妻の騎士アイクマンよっ!」
獅子王ウィンザレオと名乗る男は、巨大な斧を……
稲妻の騎士アイクマンと名乗る男が、槍を構えた。
それはまるで鉄塊のような、おおざっぱな、巨大な……武器だ。
拳志郎 「へへへ……少しは歯ごたえのありそうな奴が来たな……」
マリオ 「こら……そんなに嬉しそうな顔をするなよ……そんな余裕はないだろ」
拳志郎 「ハッ……そんなこと言っているが、お前……嬉しそうだぞ」
マリオ 「………」
863:
拳志郎も、マリオも二人の事は知らない……
中世時代、騎士を修練する町だったウインドナイツ・ロットでは、77の輝輪(リング)と言われる地獄の訓練があった。
それは、重い甲冑をつけたま崖や川を越えて10Kmにおよぶ町の北東山道を登る訓練であった。その途中、77人の敵と殺し合い、対戦相手が身に着けている腕輪や足輪を証拠の戦利品として身につけたまま先に進まねばならない……と言うものだ。
勝ち抜くにつれ、体は少しずつ重くなり、最後の77人目との戦いでは合計76個、重量にしておよそ100kgを身につけて戦うことになる。
その重さから、ほとんどすべての挑戦者が途中で殺され、ウインドナイツ・ロットの長い歴史の中でも、この修練をやり遂げたものはたったの5人と言われていた。それは……
•1327年 獅子王ウィンザレオ
•1389年 イナズマの騎士アイクマン
•1408年 独眼のカイネギス
•1563年 タルカス
•1563年 黒騎士ブラフォード
この五人だ。その内の二人、獅子王ウィンザレオとイナズマの騎士アイクマンが、拳志郎とマリオの前に、立ちはだかっているのだ。
867:
トニオ 「イギリスの歴史上の英雄が、俺たちの前にいる……」
拳志郎 「……へっ、腕がなるぜぇ」 ポキポキ
トニオ 「拳志郎……君は素手だ……武器を持った相手との戦いは、俺に任せないか?」
拳志郎 「あぁぁ?オメェー、美味しいところを持っていこうって言うのかよ?」 ダッ!
拳志郎は、巨大な斧を持った獅子王ウィンザレオに向かって、駆けるッ!
拳志郎 「おりゃあッ!」 ヴァシュッ!
拳志郎の一撃ッ!
ウィンザレオの腹に、拳志郎の拳が命中するッ!
ウィンザレオ「……フン」
だが、ウィンザレオは微動だにしない。
拳志郎 (オイオイ……確かに秘孔を突いたはずだが……ケッ、泥が秘孔をふさいでやがるのか?)
868:
ウィンザレオ 「…ゴミカスがッ!」
逆に、ウィンザレオの巨大な斧の一撃が、拳志郎を襲うッ
ザシュッ
ヴゥヮッン
拳志郎は、とっさに後方に飛び下がり、斧の連撃を回避する。
ウィンザレオ 「ウォォォツ!」
ウィンザレオは宙を飛び、斧を拳志郎めがけて振り下ろすッ!
拳志郎は、巧みなステップで回り込み、斧の一撃をかわすッ!
ガャウウ――ンッッ!!
目標を外した斧は足元の地面にぶつかり………床石を砕き割るッ
メシッ……
バリッッ
突然床が砕けちり、四人は地下の空間に向かって、落ちていくッ
869:
墜ちていく拳志郎とマリオの周囲に、ガレキが降り注ぐ。
拳志郎 「……はっ、やるじゃねーか」タタッ
マリオ 「くっ、高い……回転で、衝撃を和らげるしかないか」 クルッ
二人は空中でガレキを蹴って移動し、ガレキを回避していく。
一方、ウィンザレオとアイクマンの二人は、スイカほどもあるガレキが頭にぶつかっても、まったくダメージを受けた様子が無かった。
ウィンザレオ 「……アイクマン、俺の獲物をとるなよ………」 グッ
アイクマン 「……」 ギュッ
マリオ 「しかし、なんてむちゃくちゃな奴だ。斧の一撃で床を砕くなんてッ……」
降り注ぐ瓦礫にはばまれ、マリオの視界から、拳志郎達の姿が消えた。
870:
落下していくマリオに、アイクマンが狙いを定める。
アイクマンは自らも落下しつつ、『稲妻のような』槍の一閃をマリオに振るうッ
マリオ 「グオッ!」 ザシュッ
避けきれなかったマリオの左肩に、槍が突き立つッ!
マリオ 「ゲブッ!」 グイッ
マリオ (なっ、なんて度だッ!よけきれないぞ……次にあの攻撃を喰らったら、死ぬッ)
アイクマン 「ブヒャヒャヒャヒャッ!死ねィッ!……500年前のように、俺の槍に突かれて、歓喜で悶え苦しみながらッシネイィ!」
マリオ (クッ!) タッ
マリオは、とっさに自分の周囲に舞っているガレキをアイクマンに向かって蹴り飛ばす。
その反動を利用して、再びアイクマンから距離を取るッ!
アイクマン 「させぇるかよぉッ」 ギュルルルルルッッ
アイクマンが槍をしごく。
その槍が高で回転を始めるッ!
アイクマン 「クラエッ!我が通り名、『イナズマの騎士』の由来となったこの技で、貴様をぶち抜いてやるわッ!」
871:
グルルルルルルルッ
ギュルルルル
マリオ (ううぅッ!何かやばいぞッ!奴の手の中の槍が、回転を始めたッ!輝き始めたぞッ!)
ギラギラッ!
あまりの高回転により、槍の表面がまるで鏡のように周囲のぼんやりとした光を集め、反射するッ!
ギラギラッ
マリオ (まっ、まぶしいッ!ただでさえ高の突きが、良く見えないッ……まずいぞ、ガレキの陰に隠れるんだ……) ガッ
アイクマン 「無駄だッ! 喰らえッ!覇極流奥義、旋峰塵ッ」
ギャルルルルッ
とっさに、宙を舞う瓦礫の陰に隠れたマリオ……だが、アイクマンの槍は、まるでジャガイモに串を通すかのように、ガレキを貫き、マリオを襲うッ!
ギャルルルルッ!
マリオ 「グォォォオオオオッ!!!!」 グサッ
872:
アイクマン 「ククククッ!手ごたえありッ」 ダッ
地面に着地したアイクマンが、笑うッ!
アイクマン 「ギャハハハハッ!身の程知らずのヒヨッこの現代人共がッ……さて、あと残り1人を、ウィンザレオと協力して殺るか……あ奴ら、どこにいる?」
アイクマン 「……おお、あそこか……まだ、ウィンザリオの奴も決着を付けていないようだな……楽しんどるのか? だが、まずはこの槍を投げつけてやるか……」 グイッ
バシュッ!!
アイクマン 「………」
アイクマン 「なんだ?なぜ槍が飛んで行かぬ?ぬっ?」
その時、アイクマンは槍を持っていたはずの自分の腕が、ちぎれているのに気が付いた。
アイクマン 「なっ?なんだ?」キョロキョロ
ギャルルルルッ!
バシュッ!
アイクマン 「ガッ!……バカな……今度は、俺の右ひざがぶっ飛んだ……痛みは無い……どいう事だ?」
マリオ 「まだ気が付かないのか」スタッ
873:
アイクマン 「むっ、キサマ……」 ギロリ……
マリオ 「……ハァ……ハァ………」ヨロ……
アイクマン 「キサマ……確かに槍で貫いて、地面にたたきつけてやったハズの、貴様がなぜ……」
マリオ 「フッ……かっ、簡単だ。空中で、ガ……ガレキの陰に隠れたのには、理由があったのさ……キサマが必ず、ガレキを貫いて攻撃する……そう思ったから、俺はあらかじめ瓦礫の陰に鉄球を押し付けていた……キサマが貫いたと思ったのは、俺じゃない。この、鉄球だ……」 ドサッ
マリオは、そういうとズタぼろに崩れた鉄くずを、地面に投げ捨てた。
それは、鉄球の慣れはてだ……
マリオ 「そして、回転の力で、地面に衝突した衝撃は逃がした……」
アイクマン 「きっさまぁぁぁ!もう一度だッ!もう一度地獄へ送ってやるわッ!喰らえ……覇極流ッはきゃ……?……はきぃぃ……あきぃくりぃ……あッ」
バシュッ!
その時、アイクマンの顎が、ぶっ飛んだ。
マリオの投げた鉄球が、命中したのだ。
874:
マリオ「これが、最後の回転だ………く……喰らえッ!」
バシュバシュバシュバシュッ!!!!!
アイクマンの周囲に漂っていた小さな回転……その弾が、次から次へとアイクマンを襲うッ!
アイクマン 「あびぃつッ!!!あでぇぇぇっ!ひでっ!!!」 ぶっ!
アイクマンがのけぞった隙に、マリオが懐に潜り込むッ!
マリオ 「止めだッ!」 クルッ 
回転の力を込めたマリオの掌底が、アイクマンの頭を吹っ飛ばすっッ!!!!
バシュッ!
マリオ 「……」
マリオ 「ハァ……ハァ……」
875:
その頃……
ダシュッ!
拳志郎 「ああ、ちょっぴり足がしびれやがるな……まぁ、無理もねぇか。ちょっとばかし、高かい所から墜ちたからな」 ピリピリ……
拳志郎 「……さて……」キョロキョロ
ウィンザレオ 「*$&&&@*!!」 ヴゥヮッンッ!
瓦礫を吹き飛ばし、埋もれていたウィンザリオが立ち上がった。
ウィンザリオは、手にした斧をめまぐるしく動かしながら、拳志郎に襲い掛かるッ!
拳志郎 「ウワッハハハハッ!良かったぜェ、おめえが無事でよォッ……これでようやく楽しめるゼェッ!」 ダッ
拳志郎は巧みにフットワークを使いながら、暴風のような斧の攻撃をかわすッ
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