富豪「可愛がってあげよう」奴隷少女「愛情は不要よ」back

富豪「可愛がってあげよう」奴隷少女「愛情は不要よ」


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1:
奴隷商人「旦那、奴隷はいりませんかい」
富豪「奴隷?」
奴隷商人「へい、こいつなんですがね」
奴隷商人「ツラはなかなかなんですが、愛想がすこぶる悪くて、売れ残っちまってるんでさ」
奴隷少女「……」ジッ…
富豪「……!」
富豪(なんという眼力……! 私を買え、と心の底から訴えている……!)
富豪「分かった……いただこう」
奴隷商人「ありがとうございやす!」
富豪「さ、行こうか」
奴隷少女「……」
               
 
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・悟空「はああああああああ……! ダメだ、もっと力を振り絞らねえと!」
・悟空「クリリンの頭ってドラゴンボールの代わりになるんじゃねえか!?」
          
3:
―富豪の屋敷―
富豪「今日からはここが君の家だ」
奴隷少女「……」
富豪「私は君を奴隷扱いするつもりはない」
富豪「衣食住の保証はもちろん、娯楽や教育にだって不自由はさせない」
富豪「君は自由になったんだよ」
               
          
5:
少年「はじめまして」
少女「こんにちはー!」
富豪「君よりいくつか年下の少年と少女だ」
富豪「彼らは孤児だったのだが、私が引き取って、ここで暮らしているのだ」
富豪「二人とも生き生きしてるだろう?」
富豪「君にも彼らのような豊かな暮らしを約束しよう」
奴隷少女「……」
               
          
10:
富豪「さ、可愛がってあげよう。まずはキレイなお洋服でも……」
奴隷少女「愛情は不要よ」
富豪「え」
富豪「……どういう意味かな?」
奴隷少女「あなたの正体は知ってるわ」
富豪「!」
奴隷少女「あなたの正体は……大昔、闘技場で無敗を誇ったチャンピオン」
奴隷少女「引退後はトレーナーとして、数々の名格闘家を生み出した」
奴隷少女「そして今は稼いだ富で悠々自適の暮らしを送っている」
富豪「……ッ」
富豪「まさか君は――」
奴隷少女「そうよ、私はわざと売れ残っていたの。あなたに買われるためにね」
奴隷少女「否――あなたに鍛えられるために!」
               
          
11:
富豪「なにゆえ、このようなマネを……」
奴隷少女「勝ちたい相手がいるの」
富豪「何者だ?」
奴隷少女「闘技場の……現チャンピオン」
富豪「……!」
富豪(今、闘技場にはかつての私以上の連勝記録を誇るチャンピオンが君臨しているという)
富豪(この娘はそんな怪物に挑もうというのか)
富豪「……イバラの道を歩むことになるぞ」
奴隷少女「いい響きだわ」ニィィ…
富豪「そこまでの覚悟なら……これ以上何も言うまい」
富豪「もはや君を人とも女性(オンナ)とも思わん! 徹底的に虐げ、鍛え上げてみせよう!」
奴隷少女「応ッ!!!」
               
          
12:
富豪「さっそくこの“イバラの鞭”を特注で用意した」シュルルッ
富豪「長さ50mmの鋼鉄のトゲが無数についた極太の鞭だ……」ヒュバッ
富豪「今後、私はこれで君を教育……いや“飼育”する」
奴隷少女「分かったわ」
富豪「声が小さいッ!!!」ヒュオンッ
ビシィッ!
奴隷少女「……ッ!」
奴隷少女(痛い! 否、痛すぎるッ! だけどこれこそ私に必要なモノ!)
奴隷少女(これぐらいじゃなきゃ、あの人には勝てない!)
富豪(並の人間ならば、一発で悶絶死する痛みだというのに……)
富豪(なんという逸材……ふふふ、かつての情熱がよみがえってくるようだよ……)
               
          
14:
富豪「まずは腕立て伏せ……1000回だ」
奴隷少女「ふんっ、ふんっ、ふんっ!」グッグッグッ…
富豪「遅いッ!」
バシッ!
富豪「体をしっかり屈めろ! 地面にキスするようにな! 秒間10回はこなせるようにしろ!」
奴隷少女「応ッ!!!」
富豪「声が小さいッ!」
ビシィッ!
               
          
15:
予想とちょっと違う!
               
          
16:
富豪「腕立て伏せが終わったら、腹筋だ!」
奴隷少女「むんっ、むんっ、むんっ!」グッグッ
富豪「全然ダメだぁぁぁっ! こんな腹筋ではボディブローを受けたら即嘔吐だ!」
バシッ! ビシッ! バシッ!
富豪「スクワット1000回!」
奴隷少女「はっ、はっ、はっ!」グッグッ
富豪「ちゃんとヒザ曲げろ! イカサマすんなァァァッ! フォーム大事ィィィィィ!」
バチッ! ビシィッ! バシィッ!
               
          
17:
富豪「走れッ!」
奴隷少女「ぬううううん!!!」ズドドドドドッ
富豪「遅いぞ、遅すぎるッ! 足を上げろッ! 腕を振れッ!」
富豪「私も現チャンピオンの噂は知っている!」
富豪「最低でも全力疾走でフルマラソン走り切れるくらいのスタミナがなければ話にならん!」
               
          
19:
富豪「バッファローの丸焼きだ……食え」ゴトッ
奴隷少女「いただくわ」ガブッ
富豪「なにかじりついてるンだ! 丸飲みしろッ!」
富豪「丸飲みしてそれを消化してこそ、純度の高い良質なタンパク質とカルシウムを得られるのだッ!」
奴隷少女「……ッ」モゴモゴ…
富豪「食ええええええええええええッ!!!」グイグイ
奴隷少女(これよ……これだわ。これが私が求めていたモノ……!)ゴクンッ
               
          
20:
富豪「夜は両手両足に100キロの鉄球をつけたまま眠ってもらう」
富豪「無論、立ったままでな。横になることは許さん」
奴隷少女「はい」ズシッ…
奴隷少女(私は奴隷……横になるのは死んでからで十分だものね)
奴隷少女「……ぐぅ、ぐぅ」
               
          
21:
少年「お姉さん……」
少女「お姉ちゃん……」
奴隷少女「……ん?」
少年「富豪さんにずいぶんシゴかれてるけど、大丈夫?」
少女「お布団持ってきたよ」フカフカ
奴隷少女「気遣いは無用よ」
奴隷少女「というより――私を気遣うのなら、私を虐げてちょうだい」
奴隷少女「いじめて頂戴! 虐げて頂戴ッ!!!」
この魂の叫びは――幼い男女の心に響いた!
               
          
22:
少年「はいお姉さん、夜食を持ってきたよ!」ウゾウゾ
奴隷少女(これは……山盛りのムカデ!!!)
奴隷少女(ありがたい……なんという……なんという気遣い……)バリバリムシャムシャ
少年「残さず食べてね」
少女「熱々のスープを持ってきたよ」グツグツ…
少女「おっと手が滑ったァァァ!」バシャァァァァ
奴隷少女「……」ビッショリ…
奴隷少女(これもいい……耐熱性をつける鍛錬になる……)
奴隷少女は二人の気遣いに心から感謝した。
               
          
23:
富豪「朝だ……とっとと起きやがれッ! このクサレ奴隷がッ!」
バシィッ!
奴隷少女「う、ぐ……」
富豪「なんだ? 不服か? なんなら今日は休むかね?」
奴隷少女「まさか……」ニィィ…
富豪(笑ってる……本心からッ!)ゾクッ
               
          
25:
富豪「この岩を持って、あの山を駆け上がって戻ってこい!」
富豪「もし一時間以内に戻ってこれなかったら……鞭打ち百発だ!」
奴隷少女「もし一時間以内に戻ってきたら……?」
富豪「鞭打ち千発だ」
奴隷少女「絶対一時間を切ってみせますわ」ニィィ…
……
富豪「――タイム57分45秒!」
富豪「初めてやるトレーニングなのに好タイムなんぞ出してんじゃねえッ!」
バシッ! ビシィッ! バシィッ! ビシィッ! ベチィッ!
               
          
27:
少年「ぼく、泥団子を作ってきたよ」
少年「100個全部食べてね」
奴隷少女「……」バリボリムシャムシャ
奴隷少女(大地の力が……私の中に芽吹くわ……)
少女「あたし、今日は肩を叩いてあげるね」
少女「このハンマーで!」
ガツンッ!
奴隷少女(肩といいつつ、首の後ろばかり強打してくる! 素晴らしい!)
               
          
30:
富豪「血に飢えたライオンを用意した……」
富豪「さて、こいつを倒せるかな?」
ライオン「ガルルルル……!」
奴隷少女「……」ジロッ
ライオン「!?」ビクッ
               
          
31:
ライオン「ガルッ」ゴロンッ
奴隷少女(い! たった0.001秒で腹を見せた! なんというスピード!)
ライオン「クゥ〜ン……」
富豪「てめえ、ライオンちゃん怖がらせてんじゃねえぞ!!!」
奴隷少女「ごめんなさいね」
バシィッ! ビシィッ! バシィッ! ベシィッ!
               
          
32:
完全に目的を見失っていそう
               
          
33:
ライオンかわいい
               
          
34:
修行は続き――
富豪「ミット打ち開始ィッ!」
奴隷少女「でやっ! だあっ! はあああっ!」
ドスッ! ボスッ! バスッ!
富豪(重いパンチだ……! 今まで育てた戦士の中でもっとも重いかもしれん! ――だが!)
富豪「こんなもんじゃチャンピオンは倒せねえぞ! 根性見せろ!」
奴隷少女「応ッ!!!」
少年「今日は泥団子じゃなくて石団子だよ」
奴隷少女「いただきます」ガリガリボリボリ
少女「煮えたぎった油を……おっと手が滑ったァ!」バッシャァァァ
奴隷少女(いい熱さだわ!)ジュゥゥゥ…
奴隷少女「……お手」
ライオン「ガルッ!」パシッ
               
          
35:
なんか楽しそうに見えるから不思議
               
          
36:
半年後――
バシィッ!
富豪「……」
富豪「フッ、もうイバラの鞭では君の体に傷一つつけられないな」
奴隷少女「これもあなたのおかげですわ」
奴隷少女は完成していた。
富豪「――機は熟した」
富豪「行こうか、闘技場へ!」
奴隷少女「……はい」
               
          
38:
―闘技場―
オーナー「オイオイオイ、バカにしてんのかい?」
オーナー「奴隷身分の戦士がいきなりチャンピオンに挑むなんて」
オーナー「いくらかつてのチャンピオンの願いとはいえ、聞けるわけがない」
オーナー「最低でも10試合以上はこなしてもらわないとねェ……」
富豪「……」
奴隷少女「……」
               
          
40:
オーナー「ま、一億ゴールドも払ってくれれば話は別だがね」
富豪「払おう」
オーナー「え」
ドザッ!!!
富豪「ざっと100億ゴールド……不服がおありかな?」
オーナー「〜〜〜〜〜〜!」
オーナー「分かりました……今すぐチャンピオンとの試合を組ませていただきます!」
富豪「感謝する」
奴隷少女「……」
オーナー(100億ゴールドをポンと払い、奴隷の娘もそのことについて何とも思ってない!!!)
オーナー(なんてイカれた連中だ……だが!)
               
          
43:
オーナー「……というわけなのです」
オーナー「数日後、その娘と試合をしていただけないかな、と――」
「数日後? なにを悠長なことを」
オーナー「へ? で、ですが……」
「組みなさい」
オーナー「……ッ!」
「試合を組めといってるのよ! 今すぐにッ!」
オーナー「は、はいっ!」
オーナー(やはり……チャンピオンの方が遥かにイカれている!)
               
          
44:
ワアァァァ……!
実況『只今より、急きょ行われることになったスペシャルマッチを開始いたします!』
少年「お姉さん……」
少女「お姉ちゃん……」
奴隷少女「二人には感謝してるわ」
奴隷少女「本当は私をいじめるのが嫌だったのも知っている」
奴隷少女「だから――決して他人をいじめない人間になりなさい」ギュッ…
少年「うん……!」
少女「お姉ちゃん、がんばって……!」
ライオン「クゥ〜ン……」
奴隷少女「ライオンも……ありがとうね」
富豪(ただ痛めつけられてたわけではない……)
富豪(彼女は身をもって、他人を痛みつけることの辛さ、苦しさを教えていたのだな……)
               
          
47:
実況『まずは挑戦者である奴隷の入場です!』
奴隷少女「……」ザッ
ブーブーッ! ブーブーッ!
奴隷少女に紙クズ、ジュース、座布団、生卵、斧、果ては爆弾を投げつける観客達。
しかし、奴隷少女にかすり傷一つつけることはできない。
奴隷少女「いい感じの空気だわ……」ニィィィ…
               
          
49:
実況『チャンピオンの入場です!!!』
貴族娘「……」シュザッ
ワーワーッ! ヒューヒューッ!
豪勢なドレスに身を包んだ若い女性が登場した。
熱狂しすぎて失神する観客が続出する。
富豪「彼女が……現在のチャンピオン!」
富豪(貴族の身でありながら、闘技場に出入りし、無敗を誇る……闘技場の絶対女王!)
               
          
51:
貴族娘「……」
奴隷少女「……」
実況『チャンピオンと奴隷が睨み合っている! 緊張感が高まります!』
貴族娘「久しぶりね……」
奴隷少女「ええ、お久しぶりね、お姉様」
貴族娘「私に惨敗して家出したと思ったら……こんなところで会えるとはね」
奴隷少女「あの時の私とは違うわ」
富豪「……ッ!」
               
          
55:
富豪(なんと……二人は姉妹だったのか!)
富豪(だが……彼女は同じ貴族のままでは決して姉を越えられないと――)
富豪(あえて自ら奴隷身分に身を落としたのか!)
富豪(なんという勝利への執念!)
富豪(ならば見せてやれ……この半年で培った“奴隷力”を!)
審判「ファイッ!!!」
               
          
57:
貴族娘「キィエエエエエエッ!!!」
奴隷少女「ハァアアアアアアッ!!!」
ズガガガガガガガッ!
拳と足が超高で入り乱れる。
攻撃と防御の最善手を打ち続ける。
互いに一歩も引かない。
超ド級の姉妹喧嘩が幕を開けた。
富豪(互角……ッ! いやほんの僅か、僅かだが……奴隷少女が押している!)
               
          
58:
奴隷少女「むんッ!」
バキッ!
貴族娘「ぐぶっ……」
実況『噴火のようなアッパーカットが、チャンピオンの顎に命中ゥゥゥ!!!』
奴隷少女(私が押している!)
奴隷少女(そうだわ! 奴隷身分になり培ったハングリー精神が私にパワーをくれるんだわ!)
奴隷少女(これが私にあって――お姉様にないもの!)
奴隷少女(……勝てるッ!)
ドガッ! バキッ! ドズッ!
貴族娘「ぐっ! ぐううっ……!」
               
          
60:
貴族娘「……とまぁ、やられるフリはこんなとこでいいかしら」
奴隷少女「え」
ドグシャアッ!!!
実況『強烈なカカト落としで、奴隷少女がダウンを奪われたァァァッ!』
奴隷少女「あ、ぐぐ……」ピクピク…
貴族娘「奴隷は地面に這いつくばるのがお似合いよ」
富豪(たった一撃で……あのダメージとは……!)
               
          
63:
貴族娘「奴隷になったおかげでより強くなれた? 笑わせないでくれる?」
貴族娘「強者とは常に上を向いてなければならない、下々などに目もくれない」
貴族娘「最下層である奴隷身分に身を投じた時点で――あなたは“最強”になる資格を放棄したのよ」
奴隷少女「ぐ……ッ!」
貴族娘「……今こそ教えてあげましょう」
貴族娘「“貴族”は今でこそ柔和なイメージがあるけど……かつては“鬼族”と呼ばれていた」
貴族娘「圧倒的な権力や兵力を誇る者を、人々は“鬼”と恐れたのよ」
貴族娘「私は貴族でありながら、“鬼”と呼ばれていた頃の強さを取り戻した!」
貴族娘「受けてみなさい、この金棒ラリアットをォ!!!」ブオンッ
ゴキィッ!!!
奴隷少女「ぐは……ッ!」
強力無比なラリアットが、奴隷少女を直撃した。
               
          
64:
貴族娘「こんなものなの!? あなたの力ってのはこんなものなのォォォォォ!?」
貴族娘「オーッホッホッホッホッホ!!!」
ガッ! バキッ! ドゴッ! グシャアッ!
実況『メッタ打ち! メッタ打ちです! 肉が裂け、骨が砕ける音が聞こえます!』
奴隷少女(つ、強い……)
奴隷少女(やはり私ではお姉様に勝てないの……?)
奴隷少女(奴隷になったのは、単なる逃避に過ぎなかったの……!?)
少年「がんばれー!」
少女「おねえちゃーん!」
ライオン「ガルルルッ!」
奴隷少女(――違う!!!)
               
          
67:
ボゴォッ!!!
拳が貴族娘の顔面にめり込む。
貴族娘「ぐほ……っ! ――ぬうっ!?」グラッ…
貴族娘(まだ……やれるというの……!?)
奴隷少女「……」
今、瀕死の奴隷少女を支えていたのは――
最強になりたいという願望や、憧れの姉への対抗心ではなく、
寝食を共にした富豪、少年、少女、ライオンの期待に応えたいという“想い”であった。
すなわち、彼女がこれまで否定し続けてきた“愛情”であった!!!
               
          
68:
奴隷少女「お姉様、行きますわよ」
貴族娘「来なさいッ!」
バキィッ!!!
ドゴッ! ボゴッ! グシャッ! ガスッ! ベキッ!
ガッ! ボグシャッ! ガンッ! ドッ! ドゴォッ!
ズガッ! メキッ! ベシィッ! ガゴッ! ガシュッ!
ワアァァァァァ……!
実況『両者、ノーガードで殴り合っている! 血と汗が闘技場中に飛び散るッ!』
少年「す、すごい……!」
少女「どっちも笑ってる!」
ライオン「ガルルル……」ビクビク
富豪(どちらも殴り合いながら、タイミングを計ってる)
富豪(次だ――)
               
          
70:
富豪(次で決まる!)
バッ!!!
貴族娘が天高く跳躍した。
貴族娘(受けてみなさい……貴族という高みから放つ最大最強の一撃を――)
貴族娘「!?」
               
          
72:
貴族娘(高い……! 私よりもッ!)
奴隷少女「アン・ドゥレー・トロワ!!!」
ドゴォンッ!!!
奴隷身分の少女が、貴族の嗜みバレエのような美しい蹴りを放ち――
鬼と化した貴族の娘は地面に墜落した。
ズガァァァァァンッ!!!
               
          
73:
貴族娘「ゴホッ、ゲホッ……」
貴族娘「……私の負けよ」
奴隷少女「お姉様……」
貴族娘「強く……なったわね」ニコッ
奴隷少女「はいっ……!」
抱き合う姉妹。
観客たちは見た――
闘技場という灼熱地獄に、堂々と咲き誇る百合の花!!!
               
          
75:
……
富豪「お姉さんとは、もっと会話しなくてよかったのかね?」
奴隷少女「ええ、一度抱き合っただけで十分よ」
富豪「そうか……」
富豪「ところで君は、お姉さんを打倒するという当初の目的を果たした」
富豪「やはり、貴族に戻るのか?」
奴隷少女「……」
少年「お姉さん……」
少女「お姉ちゃん……」
ライオン「ガルル……」
               
          
76:
奴隷少女「……いいえ、貴族には戻らないわ」
富豪「!」
奴隷少女「私は生半可な決意で貴族から奴隷になったわけじゃないもの。それに――」
奴隷少女「私はあなたたちの“家族”になりたい」
奴隷少女「……ダメかしら?」
富豪「もちろんいいとも!」
少年「ワーイ!」
少女「やったーっ!」
ライオン「ガオーッ!」
               
          
79:
富豪「君は晴れて闘技場チャンピオンになった……」
富豪「挑戦者が続々とやってくるだろうし、きっとお姉さんもすぐさまリベンジに来るだろう」
富豪「これからもビシビシ稽古するぞ!」
奴隷少女「応ッ!!!」
少年「だけど、これからはぼくたちと遊んでね!」
少女「もうお姉ちゃんをいじめるのはお断り!」
ライオン「ガルッ!」
奴隷少女「そうね……だって私たち、家族なんだもの!」
おわり
               
          
80:

               
          
81:
全米が泣いた
               
          
82:
友情努力勝利の揃ったSSだった
               
          
83:
いい話だった
               
          
84:
良かったよ
               
          
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