国王「どうか我が国をお救い下さい!」ゴリラ軍師「ウホホッ!」back

国王「どうか我が国をお救い下さい!」ゴリラ軍師「ウホホッ!」


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1:
城――
兵士「陛下、大変です!」
国王「どうしたのだ?」
兵士「隣国の軍勢が、我が国へ進撃を開始致しました!」
国王「な、なんだと!?」
兵士「すでに敵は国境まで迫っており、このまま侵入してくることは間違いないでしょう」
国王「おのれ……隣国め、ついに牙をむいたか!」
               
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3:
国王「将軍はどうしておる?」
兵士「軍を率いて、国境近くの砦で守りを固めております」
兵士「しかし、あの砦は守りに適しておりませんし、なにより隣国軍の方が兵力は上です」
兵士「いかに将軍が優れた武人でも、隣国軍を跳ね返すのは至難かと……」
国王「うむ……そうだな」
国王「将軍の勇猛さに知略が加わらなければ、この国は滅びることとなろう」
国王「こうなっては仕方あるまい」
国王「ゴリラ軍師殿のお力を借りるしかない!」
               
          
5:
兵士「ゴリラ軍師殿……まさかあの伝説の!?」
国王「そうだ、森の奥深くで暮らす、“森の賢者”とも称される伝説の軍師のことだ」
国王「先代王の時代から、あの方には何度も我が国の危機を救ってもらっている」
兵士「ならば私が森へ――」
国王「いや、ここは余自ら出向かねば失礼にあたろう」
国王「おぬしは砦に戻り、このことを将軍に伝えてくれ」
兵士「かしこまりました!」
               
          
7:
森――
国王「…………」
国王(たしか、このあたりに住まわれていたはずだが……)
国王「――いた!」
国王「ゴリラ軍師殿!」
ゴリラ軍師「ウホ?」
               
          
13:
国王「ゴリラ軍師殿、お久しぶりです」
ゴリラ軍師「ウッホッホ、ウホホホッ」
国王「実は我が国に、隣国が攻め寄せて参りました」
ゴリラ軍師「ウホホホッ」
国王「隣国軍を撃退するには、どうしてもあなたのお力が必要です」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホ」
国王「どうか我が国をお救い下さい!」
ゴリラ軍師「ウホホッ!」
               
          
15:
砦――
斥候「敵軍は、まずは奇襲強襲に特化した少数部隊でこちらを攻撃する模様です」
斥候「しかし、その小部隊がどこにいるのか……まだ把握できておりません」
将軍「そうか……」
将軍(小部隊で先制攻撃を仕掛け、我らが崩れたところを本隊で一気に叩くつもりだな)
将軍(狙いは分かっていても、どこから攻撃が来るか読めなければ意味がない)
将軍(ゴリラ軍師殿はまだか……!)
兵士「将軍! ゴリラ軍師殿がやってきました!」
将軍「おおっ、丁重にお迎えしてくれ!」
               
          
18:
ゴリラ軍師「ウホホホホホ」
将軍(おおっ、なんと見事なゴリラなのだ。神々しさすら感じる)
将軍「あなたが伝説のゴリラ軍師殿ですか」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホホホホ」
将軍「私がこの軍の将です。あなたの知略で、我々を導いていただきたい!」
ゴリラ軍師「ウッホホ、ウホウホ」
将軍「ではさっそく、ご相談したいことがございます」
               
          
20:
将軍「……というわけで、敵軍がこの砦の左右どちらかに潜んでいるようなのです」
ゴリラ軍師「ウホホ」
将軍「ゴリラ軍師殿は、どちらに潜んでいるとお考えになられますか?」
ゴリラ軍師「ウ」
将軍「右ですか!」
将軍「ようし、砦の右側に兵を出す! 敵の先行部隊を叩き潰すのだ!」
兵士「ははっ!」
               
          
23:
敵陣地――
敵兵「申し上げます!」
敵兵「奇襲をかけるための先行部隊が反撃を喰らい、敗走いたしました!」
敵将軍「なに!?」
敵将軍「うむむ、奴らにあの部隊がどこにいるかを見抜く索敵能力があったとは……」
敵将軍「ならば次の手だ!」
敵将軍「奴らが立てこもる砦近くの平原に陣取るぞ!」
               
          
24:
砦――
兵士「将軍、敵軍が砦近くの平原にて陣を構えております!」
将軍「ふむう、ここは一戦交えて、隣国軍の出鼻をくじきたいところだが……」
兵士「となれば、我が軍の精鋭である騎兵隊を向かわせますか?」
将軍「それがもっともだ……と思うが、念のためゴリラ軍師殿に判断を仰いでみるか」
将軍「ゴリラ軍師殿、歩兵隊と騎兵隊、どちらを出撃させるべきですか?」
ゴリラ軍師「ホ」
将軍「歩兵ですか! ……分かりました、歩兵隊出撃!」
               
          
26:
騎兵だったら何て言うつもりだったんだw
               
          
27:
ワァァァ……! ワァァァ……!
歩兵A「あいつら、平原に馬をひっかけるためのヒモを仕掛けてやがったぜ!」
歩兵B「騎兵隊が出撃してたら、危うく全滅するところだったな!」
歩兵C「さっすが、ゴリラ軍師様だ!」
歩兵A「ここは俺たち歩兵の晴れ舞台だ! 大暴れしてやろうぜ!」
ガキンッ! ザシュッ! キンッ! ザンッ! キィンッ!
               
          
28:
将軍「戦況は?」
兵士「我が軍が優勢です!」
兵士「しかし、兵力は敵の方が上ですので、油断はできません!」
将軍「もう一押し、が欲しいところだな」
将軍「ゴリラ軍師殿、ここで兵の士気をさらに上げたいのですが、どうすべきでしょうか?」
ゴリラ軍師「ウホホホホ」ボコボコボコ
将軍(胸を叩いている……なるほど!)
将軍「後方支援の者は、太鼓を叩いて最前線の兵士たちを鼓舞するのだ!」
               
          
29:
ドンドコドンドン! ドコドンドンドン! ドンドンドコドン!
ワァァァ……! ワァァァ……!
兵士「太鼓のおかげで、こちらがみるみる敵軍を追い詰めていきますよ!」
将軍「さすがゴリラ軍師殿だ」
将軍「今日のところはこれで攻撃をしのげた、と見てよさそうだな」
ゴリラ軍師「ウッホウッホ」ボコボコボコ
               
          
31:
砦――
ワイワイ…… ガヤガヤ……
将軍「戦いは明日も続く! 今日のところはゆっくり休んでくれ!」
兵士「将軍」
将軍「どうした?」
兵士「先ほどの戦いで、重要な情報を知っていそうな敵軍の兵士を捕虜にしたのですが……」
兵士「どんなに責め立てても何も吐かないのです」
将軍「気になるな……分かった、すぐに向かおう」
               
          
32:
捕虜「情報なんて何も知らん! くっ、殺せ!」
兵士「このとおり、口が堅いのです」
将軍「たしかにこいつは、何か重要な情報を持っていそうではあるな」
将軍「ゴリラ軍師殿、いかがいたしましょう?」
ゴリラ軍師「ホホ」
将軍「……頬を叩くんですね! その手があったか!」
               
          
33:
将軍「どっちの頬にすべきでしょう?」
ゴリラ軍師「ウホホ」
将軍「右頬ですね! 分かりました!」
将軍「知っていることがあるなら、全て吐いてしまえ!」ベチッ
捕虜「……わ、分かった! 右の頬を叩くのだけはやめてくれ!」
捕虜「全て吐く……全て吐くよ!」
兵士(さすがゴリラ軍師殿、捕虜の拷問もお手の物とは……)
               
          
34:
さすがゴリラ軍師だぜ!
               
          
35:
右の頬になにがあるんだよwww
               
          
36:
捕虜「実は……我が軍は夜襲作戦を立てている!」
将軍「夜襲だと!?」
兵士「しかし、昼間に退却したばかりだというのに……」
捕虜「昼間、あっさりと撤退したのも戦略のうちなのさ」
捕虜「油断して砦で休んでるあんたらを、全滅させるためのな!」
将軍「…………!」
将軍(危ないところだった……)
将軍(捕虜からこの情報を聞き出せていなければ、この国の命運は尽きていた……)
               
          
38:
将軍「大至急、休んでいる者たちを守備につかせろ! 寝てる者は叩き起こせ!」
兵士「ははっ!」
将軍「しかし、これでもまだ敵軍が有利だろう」
将軍「なにか打つ手はないのか……」
ゴリラ軍師「ホウ」
将軍「砲!?」
将軍「そうか、この砦には大砲が一門だけある! あれを使えば……!」
将軍(ゴリラ軍師殿は、私以上に我が軍のことを把握しておられる……!)
               
          
41:
将軍がいちいち面白い
               
          
42:
兵士「敵軍が夜の闇に紛れて、迫ってきております! かなりの数です!」
将軍「大砲の準備はまだか!?」
砲手「準備できました!」
将軍「よし!」
砲手「しかし、大砲の弾は貴重です。あまり乱発することはできません」
将軍「たしかに……何発撃つかは重要だな」
将軍「何発ぐらい撃つべきでしょうか?」
ゴリラ軍師「ホウホウホウ」
将軍「三発ですね!」
               
          
43:
将軍「よぉーし、敵軍をひきつけて、大砲を発射するんだ」
砲手「はいっ!」
将軍「一発目、発射!」
砲手「点火!」
ドゴォン!
ズガァァァァァンッ!!!
               
          
44:
敵隊長「なんだなんだ!? 今の轟音は!?」
敵兵「大砲です! 奴ら大砲を撃ってきました!」
敵隊長「夜襲が読まれていたというのか……! いったいどうして……!」
ドゴォォォォォンッ!!!
敵隊長「うわぁぁぁっ!」
敵兵「ひいいいっ!」
バゴォォォォォンッ!!!
敵兵「どんどん撃ってきますよ!」
敵隊長「く、くそっ! このまま連発されたらこっちが危ない! 撤退、撤退だぁっ!」
               
          
45:
兵士「夜襲を防ぐことに成功しました!」
将軍「ふう、どうにかなったな」
将軍「しかし、やけにあっさり撤退したものだな」
兵士「立て続けに三発の大砲を放ったことで、こちらが大量に大砲を持っていると勘違いしたもようです」
将軍「なるほど……またしてもゴリラ軍師殿の采配があたったというわけだ」
将軍「だが、まだ勝利が決まったわけではない」
将軍「日が昇れば、再び決戦になるだろう。それが文字通り、勝負を決める戦となる!」
兵士「ははっ!」
ゴリラ軍師「ウッホッホ」
               
          
46:
ゴリラ無双(智略で)
               
          
47:
次の日――
兵士「敵軍が再び現れ、全軍で陣形を敷いております」
兵士「昨日のように罠を張っている様子もありません」
将軍「真っ向勝負というわけだな」
将軍「逆にいえば、向こうはそれだけ兵力に自信があるというわけだ……」
将軍(こちらはどういう陣形で臨むべきか……)
               
          
49:
ゴリラ語の読解力がやばい
               
          
50:
将軍「ゴリラ軍師殿、これがいよいよ最後の激突となるでしょう」
ゴリラ軍師「ウホホッ」
将軍「さて……この決戦、我が軍はどういう陣形にすべきでしょう?」
ゴリラ軍師「ホォーゥオー!」
将軍「鳳凰の陣形……!」
将軍(我が国の古の名将が生み出したといわれる、伝説の陣形じゃないか!)
               
          
51:
ゴリラ軍師、実は普通に話せるだろ?
               
          
53:
将軍「分かりました……」
将軍「私も将のはしくれ、鳳凰の陣形は知っております」
将軍「すぐさま兵士たちに鳳凰の陣形を取らせましょう!」
ゴリラ軍師「ウホホッ、ウホホホッ」ボコンボコン
将軍(おお……ゴリラ軍師殿が興奮しておられる。この戦……勝てる!)
将軍「全軍に今から私が指示するとおりに陣形を作れ、と伝えろ」
兵士「はっ!」
               
          
54:
ワァァァ……! ワァァァ……!
キィンッ! ドシュッ! ギンッ! ザシィッ! キィン!
兵士「隣国軍の方が数が多いにもかかわらず、我が軍が優勢です!」
将軍「さすがは鳳凰の陣形、といったところか」
将軍(伝説とはいえ、今では実用性がない陣形といわれていたが、そんなことはなかった)
将軍(ゴリラ軍師殿はそのことをちゃんと見抜かれていたのだな……)
               
          
55:
敵兵「我が軍が劣勢です!」
敵将軍「くっ、計算外だ! まさか奴らがこれほどの底力を持っていたとは……!」
敵将軍「こうなれば……最後の手だ!」
敵将軍「敵の将軍に二人きりで話し合いたい、と書状を送れ!」
敵兵「話し合い? そんなことをしてどうするおつもりですか?」
敵将軍「決まっているだろう?」ニヤ…
               
          
59:
敵将軍「やぁ、将軍」ニコニコ
将軍「…………」
敵将軍「このたびの戦、我が国が負けを認めよう」
敵将軍「侵略行為についても反省している」
敵将軍「というわけで、和平の条件について貴公と話し合いたい。さ、こちらへ来てくれ!」
将軍「……いかがでしょう?」
ゴリラ軍師「ウホ」
将軍「やはり嘘ですか」
敵将軍「なんで分かったの!?」
               
          
61:
敵将軍「ち、ちくしょう! のこのこ近づいてきたところを短剣で刺してやろうと思ったのに!」
将軍「この卑怯者がぁっ!」ブンッ
ザシュッ!
敵将軍「ぎゃはぁぁぁ……っ!」ドザッ
               
          
62:
敵隊長「将軍の騙し討ち作戦が失敗したぞ! 逃げろぉっ!」
ワァァァ……! ワァァァ……!
兵士「隣国軍が撤退していきます!」
将軍「うむ、この戦……我が軍の勝利だ!」
ワアァァァァァ……!
               
          
64:
将軍「隣国軍を撃退できたのは、全てあなたのおかげです」
将軍「ありがとう、ゴリラ軍師殿!」サッ
ゴリラ軍師「ウホホホッ」ガシッ
将軍「いだだだだだだだだっ!」ミシミシミシ…
ゴリラ軍師「ホッ」パッ
将軍「痛かった……!」
兵士「だ、大丈夫ですか!」
将軍(私も握力には自信があるのに、危うく握手した手を潰されるところだった……)
将軍(知略もパワーも備えた軍師……それがゴリラ軍師殿なのだな)
               
          
65:
城――
国王「ゴリラ軍師殿、我が国存亡の危機を救っていただき、本当に感謝しています」
国王「あなたのために山ほどの金銀財宝を用意しました。どうか森へお持ち帰り下さい」
ゴリラ軍師「ウホホホッ」パシッ
ゴリラ軍師「ウッホウッホウッホ」モグモグ…
国王「…………」
国王(金銀財宝には目もくれず、バナナ一本だけ持って森へ帰ってしまった……)
国王(なんと欲のないお方よ……)
国王(これからもどうか我が国の平和を守って欲しい……森の賢者、ゴリラ軍師!)
― 完 ―
               
          
68:
とてもよかった
               
          
69:
おもろかった
               
          
70:
ワロタ
               
          
72:
おもしろかった

               
          
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