【2/5】憧れの1人暮らしで隣人に恋したback

【2/5】憧れの1人暮らしで隣人に恋した


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8:
第9章 304号室
俺は川田さんの専属AD状態になった。
身を粉にして働いた。
余計な事は考えるな!
俺は川田さんのしたい演出の手助けをするのが仕事だ。
社内の視線など気にするな!
いまの俺には働くことしか出来ないのだ。
そんな感じで1ヶ月が過ぎた。
川田さんもまぁまぁ俺を信用してくれている様子だ。
川田さんの仕事は良く言えば大らか。
悪く言えば適当だった。
この時期になると携帯に電話が入ってきて
「ごめ?ん。二宮。俺酔っぱだから原稿書いてて」等と
とても南さんには報告出来ないような仕事を頼んでくる。
マジっすか!?とよく心の中で呟いたものだ。
157:
俺は自分なりに原稿を書いた。
隣のデスクの南さんの目を盗んで。
それをパソコンで南さんに送信する。
返事が来る。
「お前文章下手ね(笑)やっぱ俺が書くから待ってろ」
随時がそんな調子だった。
川田さんは俺によく言った。
「本は読めよ。二宮。文章をパクれるまでに読み込めよ」
それから俺は本を買い漁った。
台本の練習もした。
川田さんがちゃんと台本を書いている時でも自分なりの台本を書いて川田さんに見てもらった。
川田さんも添削をして返してくれた。
通常業務に加え、ディレクターになるための修行。
俺の帰宅は早くて24時になった。
泊り込みもしばしばだ。
そんな生活が続けば
当然まりあや油田とは疎遠になる。
161:
ここにいる住民は仕事より可愛いおにゃのこを100%選ぶのに・・
二宮・・あんた漢だ
165:
普通の社会人は隣がかわいいおにゃのこでも仕事を選ぶよ
174:
業界用語に「消え物」という言葉がある。
これは撮影で使った商品をスポンサーに返さず
スタッフが持って帰ってもよい物を指す。
食品が圧倒的に多い。
家庭用品やレアポスターも案外ある。
例えばキムタクのFMVのポスターがあったとしよう。
こんな物も消え物だ。
通常は家電量販店などしか手に入れることは出来ない。
商業用のPOPなどにしてもそうだ。
よくネットオークションでレアポスターが出品されているが
俺は業界人が消え物を流していると考えている。
ある日インスタントカレーの消え物が出た。
「川田さん。カレー持って帰りますか?」
川田さんは
「いらね。俺ボンカレーしか食わね。貧乏人のお前にやる」と言ってくれた。
カレーといえば。
やっぱりまりあだ。
177:
やっとまりあの話題キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
182:
カレー食いたくなってきた
205:
俺は消え物のカレーをどっさりと袋に詰め込んで帰宅した。
20時。
バイトが無ければまりあが家にいてもおかしくない時間だ。
とりあえず301号のインターホンを押した。
油田もインタントカレーの類は好きそうだ。
2?3個あげよう。
しかし油田は留守の様子だ。
仕方ないよね。
全部まりあにあげよう。
俺は302号のインターホンを押した。
しばらく応答がない。
「留守かな?」諦めかけた時だった。
「はい?」まりあの声が聞こえた。
「俺です。光輝です。カレーのおすそ分けなんですが・・・」
「あ・・・。光輝くん。ちょっと待ってね」
そういえば2週間ほどまりあに会っていなかった。
まりあの顔が見られる。俺は少しドキドキしながらドアが開くのを待った。
214:
ヤツがいたの?
222:
まさか、本当に油田が?
263:
ガチャっとドアが開く・・・。
「これ撮影の余り物なんだけど、もし良かったらまり・・・」
!!!!!?????
「やぁやぁ。どうもどうも」
目の前には油田が立っていた。
「お久です。二宮さん」
「・・・・・・・・・(アングリ)」
後ろからまりあが登場した。
「光輝くん久しぶり?。元気だった?」
「・・・・・・・・・・・」
「上がって上がって」
「今カレー作ったところなんだ♪」
カレー・・・ですか?
267:
やはり油田w
279:
油田うぜーーwww
299:
気づくと俺はまりあの部屋のリビングにいた。
となりにはオタクがいた・・・。
なにがどうなっているんだ??
「まぁ。おひとつどうぞ」
呆然とする俺にビールを注いでくるデブ。
なぁ?デブよ・・・。
お前が恋の勝者なのか?
まりあがカレーを2つ持ってリビングにやってきた。
「召し上がれ!」
召し上がれと言う言葉を初めて生で聞いた。
まりあは確かに可愛い。
そして目の前のカレーも美味そうだ。実に・・・。
「実にうまいですよ。まりあちゃんのカレーは」
うるせーデブ。
お前は俺の持って帰ってきた消え物のカレーでも食ってろや!
引用元: ・憧れの1人暮らしで隣人に恋した
43:
まりあはリビングで自分のカレーを入れている。
「君ねー。油田くんさぁ」
俺は隣で汗をかきながカレーを頬張るオタクに話掛けた。
「なんですか?」
その上目遣いをやめろ!
「なんでさぁーいるかなぁ?君がここに?
なぜ君がここでカレーを食ってんのかなぁ?」
油田はフフフ・・・。と不気味に笑うと
「有閑倶楽部ですよ。有閑倶楽部」と意味不明の言葉を並べた。
「なによ?ユウカンクラブって?」
「嫌だなぁー。二宮さん知らないんですか?巨匠一条ゆかりのマンガですよ。」
後になって分かったが最近ドラマ化され「有閑倶楽部」という少女漫画のことらしい。
「そのユウカンクラブがなぜカレーなのよ?」
油田はまたしてもフフフ・・・と笑いながら
「お礼ですよ。有閑倶楽部を貸してあげたお礼です」
54:
イカンだろ!まりあよ。
有閑倶楽部のお礼かなにか知らないが
こんな足の臭いオタク1人の部屋に呼び込むなんあまりにも無防備すぎるだろ!
心の中でそう呟いていると、張本人のまりあが俺の横に座った。
「いただきま?す」等と言ってのん気にカレーを食べようとしている。
俺が仕事にかまけている間に事態がここまで深刻になっているとは・・・。
これは注意せねばイカンな。
年長者として・・・。
社会人として・・・。
そして恋のライバル(油田なのが情けない)を蹴落とすために!!
「あのねー君たちさぁ・・・」
「そうそう!光輝くん何時に帰ったの?」
へ・・・?
「何度も呼びに行ったんだよ。光輝くんの部屋に」
え・・・。そうなの?
隣のデブはそ知らぬ顔をしてカレーを食っている。
「うんうん。光輝くんもカレー好きそうじゃん。でも丁度タイミング良かったね♪」
今日のところは注意はやめておいてやるか。
55:
油田はデトロイトメタルシティのカミュさんで脳内変換されてる
56:
>>55
カミュさんこんなしゃべらねーだろww
57:
油田がメガネを曇らせながらカレー食ってる姿想像したら吹いたwwww
59:
69:
>>59
おれの油田のイメージまさにこいつだww
72:
ある日俺が出社すると同期の渡辺が近づいてきた。
一応渡辺の説明も必要かもしれない。
技術部の渡辺はカメラマン志望である。
ほとんど毎日ロケに出ているの制作部の俺と顔を会わす機会は少ない。
この業界全般にいえることだが化粧をしない。
特に技術部の渡辺は化粧が落ちてしまうし先輩から嫌味を言われるのであろうか?
化粧をした姿を見たことがない。
いつもGパンにTシャツ。
そしてノーメイクだ。
入社初日には俺に涙を見せた渡辺。
きっと気が弱い子なんだろうな?
そんな想像をしていたが、とんでもない!
人一倍気が強く。
業界向きである。
今にして思えばあの涙は悔し涙だったのかもしれない。
事実あれ以降は渡辺が泣いている姿を見ていない。
73:
75:
>>73
こらwwwwww
76:
>>73
お前じゃねえってww
77:
>>73
タイミングばっちりすぎるだろwwwwww
78:
顔は美人である。
女らしい素振りは全くみせないが
まりあが可愛いタイプ。大塚愛とすれば
渡辺はキツイ系の美人。柴崎コウといったところだ。
その渡辺が声を掛けてきた。
「今日はロケ?」
「ないよ。お前は?」
「私もないよ。かなり久しぶりにね」
「ふーん。技術ってロケない時なにしてるの?」
「機材の点検とか勉強」
そんな他愛の無い会話の最中に渡辺が言った。
「今日は何時終わり?」
「決まってないけど8時くらいかな」
「そんじゃ飲みに行こうよ。相談あるんだ」
「いいよ。んじゃ帰り技術部に寄るわ」
こうして渡辺と飲みに行くことになった。
90:
大塚愛に柴咲コウ・・・
>>1がうらやまし過ぎる・・・
96:
会社の帰り近くの居酒屋に入った。
ちなみに俺は渡辺に対して女を感じない。
これは人それぞれの好みの問題だろう。
「相談ってなによ?」
「二宮くんの部屋って会社に近いよね」
会社まで3駅。間取りや家賃をザックリと伝える。
「なにお前?引っ越すの?」
「うん。考えてるんだ。私いま実家だしね。通勤に1時間掛かるし」
この業界は朝が早い事が多い。
ロケだと6時に会社発という場合もある。
確かに1時間も掛かれば前日に会社に泊まることもあるだろう。
始発では間に合わない場合もあるのだ。
「やっぱお風呂には入りたいじゃん。女だしね」
渡辺の言うことはもっともだ。
「それでさぁ。今度の休み二宮くんの家行っていい?」
「なんで?」
「家賃と間取りの相場知っておきたいんだ」
それは別にいいが。
そんな物が見たいのか?
97:
wktkせざるをえないな
107:
その夜は適当に仕事の愚痴で盛り上がり解散した。
次の休みは意外に早く一致した。
日曜であった。
俺はともかく渡辺が日曜に休める機会はそうそうない。
その日、俺は自宅近くの駅まで渡辺を迎えに行った。
降りてきた女はまるで別人だった。
化粧をしている。
しかもスカートなんか穿いていた。
俺は大げさではなく別人だと思った。
「二宮くんごめんね」
そう声を掛けられるまで全く気づかなかった。
余談だが、渡辺が家に来ることを川田さんに話した時。
「あの綺麗なねーちゃんか?ちゃんとカケ(ヤルという業界用語)よ!」
とアドバイス?をくれた。
俺は「間違ってもありませんよ?。だって女感じませんもん。アイツに」等と笑っていたが・・・。
今日の渡辺は女の子にしか見えない。
117:
お前ら油田馬鹿にしてるけど、リアルでお前らは油田ポジションだぞ
俺は油田を応援している
119:
>>117
だな、こういう話きいてても絶対主役になんてなるわけがない
キモオタ役やうざい役が俺らなんだよな・・・・なに夢みてるんだろ
121:
>>119
やめろよ・・・
ここでくらい現実忘れさせろよ・・・
123:
「そ・・・そんじゃ行こうか?」
あれ・・・?俺おかしい・・・。
なんか渡辺相手に緊張してない?
「うん」といって俺に並んで歩く渡辺。
あまり近づかないでくれ。
お前相手にドキドキしたくないの。
「二宮くん。お昼食べた?」
「え・・・まだ」
「そんじゃーさぁ・・・」
「あそこで食べない?あのカレー屋さん」
先を見ると・・・。そこはまりあのカレー屋さんだった。
「え・・・あそこ?」
「うん。私カレー食べたい」
「そうなの・・・?そうね」
なぜ緊張するんだ!?俺!
俺は同期とカレーを食うだけだ。
たとえまりあがいたとしてもやましい事など一つもない。
しかもまりあは彼女でもなんでもない。
それにバイト出てるかどうか分からないじゃん。
俺と渡辺はカレー屋のドアをくぐった。
142:
「いらっしゃいませー」
テーブルを拭いている女の子が言った。
顔を見るまでも無い。
声が既にまりあなのである。
渡辺と入店した俺を見て
まりあはしばしキョトンとしていた。
「・・・いらっしゃいませ」
もしかして驚いてる?驚いてる?
「ああ。この子同じマンションの子。新田さん」
苗字で紹介をした。
でもそれが普通だと思う。
「こんにちは」
渡辺は業界人らしくキビキビした挨拶をする。
「どうも・・・」まりあもキョトンとした顔で返事をする。
「で・・・。これがの同・・・」
渡辺を紹介しようとした瞬間。
「ここに座ろう!」と渡辺に引っ張られた。
まりあも厨房に消えて行く。
渡辺を紹介するタイミングを失った。
146:
やるな渡辺wwww
やられたな二宮wwww
149:
なんという渡辺ふらぐ
150:
「注文は何になさいますか?」
無機質な声を出すまりあ。
なんかムスッとしてない?
渡辺は「うずら玉子カレー」を注文した。
悪くない。確かにそれも悪くはない。
しかし俺は「納豆、フライドチキンカレー」を注文した。
やっぱこれだよね。
「少々お待ち下さい」
厨房に消えるまりあ。
やっぱりムスッとしてるよ。
しばらくするとまりあがカレーを2皿持ってきた。
俺たちのテーブルに置くと「ごゆっくりどうぞ」と言ってまた厨房へ。
間違いない!まりあは不機嫌だ!
151:
いまさらだけどスレタイの隣人って渡辺さんの方か
154:
>>151
渡辺は隣の隣だよ
159:
>>154
303 二宮
304 空き部屋では?
171:
ちょっと整理しとくね
301 油田
302 まりあ
303 二宮(>>1)
304 空き部屋(渡辺入居予定)
305 俺
175:
>>171
勝手に入居すんなwwwwwwww
161:
カレーを食おうとする俺。
????
納豆が入ってないじゃん。
俺はまりあを呼んだ。
「あの。納豆が入ってません・・・」
まりあはカレー皿をサッと手に取ると奥の厨房へ消えた。
カレーに納豆を乗せて戻ってくると
「どうもすみませんでした」と言って厨房へと戻る。
怖い。怖いよ。まりあ
さすがに俺もウブがるつもりは無い。
これは嫉妬なのか?ヤキモチでは?等と考えなくもない。
という事はだ・・・。
まりあは俺のことが好きなのか・・・?
「なにこれ?。グロい?。食べ物じゃないよね」
渡辺が俺のカレーを見て大笑いしていた。
163:
渡辺wwww
165:
油田は遊ばれてたわけだな・・・
180:
だとすれば・・・。
だとすればだ・・・。
この目の前の女。
同期渡辺をどうにかせねば!!
そんな俺の思いも露知らず。
渡辺は「ちょっと食べていい?納豆カレー」とはしゃいでいる。
食ってもいいから。
いかにもカップルみたいなマネはやめてくれ!
「やっぱ不味いね?」
うんうん。そうか。そうか。そうですか。
俺はまりあに告るタイミングなどを考えていた。
まさかとは思うが油田の動きにも万全の注意が必要だ。
俺と渡辺はカレーを完食すると席を立った。
会計もまりあだった。
「1750円です」
財布を出す俺・・・。しかし
「今日は奢るね」といって渡辺が先に2000円を出した。
だからそういうマネをやめろと言っとるんだ!
196:
「ちょ・・・渡辺それはマズいって!!」
しどろもどろする俺。
「いいから♪いいから♪」
お前が良くても俺が・・・。
「250円のお返しです」
まりあもお釣り用意してるし!
俺と渡辺は店を出た。
まぁ多少の誤解を生んでしまったが間違いない!
あれはヤキモチだ!いや・・・そのはず・・・だ。
俺と渡辺はマンションに到着した。
まずは外観を眺める渡辺。
「へぇー。綺麗だねー」と感心してくれた。
この物件は俺の入居前に外観塗装を施していた。
物件の説明をしていると
マンションから陰気臭い男が出てきた。
油田だ!!
200:
あぶらだ嗚呼嗚呼嗚呼ああああああああああああああああああああ
203:
ちょwwww
油、二宮がマンションの下を通る時に毎回出てきやがるwwww
211:
油田は俺の嫁
214:
>>211
俺はお前の嫁だったのか・・・
216:
ニヤニヤとしながら近づくオタク男。
「やぁやぁ。二宮さん。お盛んですなぁー」
その話方をやめい!
渡辺が不気味がるだろ。
「俺の会社の同期で渡辺」
とりあえず油田にも紹介する。
「こんにちは」
元気に挨拶をする渡辺。
しかし俺の後ろに隠れ気味になったのは気づいていますよ?
「ほほぉー」メガネを軽く持ち上げて品定めするように渡辺をジロジロと見る油田。
まるで質屋のオッサンみたいだ。
ニヤリと笑うと。「では・・・」と言ってどこかに消えて行った。
「あの人は?」渡辺が聞いてきた。
「住人・・・」とだけ答えた。
223:
油田と違って俺らは自分がきもいのわかってるだけマシだな
224:
>>223
だな、しかしそれゆえ人とまともに話せないってのはどうなんだろ
226:
エレベーターで3階フロアに到着した。
手前から油田の301号。
まりあの302号。
そして俺の303号。
しみじみと思った。
最初引っ越してきた時は不安一杯だった。
1人で残してきたおふくろも心配だった。
でも2ヶ月程度経った今・・・。
俺ちゃんと1人暮らしが出来てるよ。
おふくろも安心してくれるよね?
それはもちろん油田の存在やまりあの存在が大きい。
いなくても暮らせるが楽しく暮らしているのはあの2人のお陰だ。
俺はドアにキーを差し込んで「どうぞ!」と言って渡辺を招き入れた。
232:
「うわー。綺麗にしてるじゃん」
渡辺の第一声だった。
まりあにも言われたが物が無いだけである。
TVとPC本棚が1つ。
あとはテーブルと座椅子。
大きい物ってそれくらいしかない。
「リビングも広いねー」
そうでしょ?そうでしょ?
それが自慢なんですよ!
渡辺は部屋をグルっと見渡すと「これ見てよ」と言ってVHSを出した。
ビデオデッキはあるがなんのビデオだ?
233:
ゴクリ・・・A∨か
234:
A∨だろjk
237:
考えることは同じかww
247:
それは渡辺がカメラの練習をしたビデオだった。
技術部の部屋が映し出される。
部屋を何回もパン(カメラを横に振ること)している。
そしてペットボトルにズームすると
何回もティルト(カメラを上下に振ること)をしていた。
「どう?」と聞いてくる渡辺。
どうもこうもこんな映像に評価はつけ難い。
しかも俺は制作だからカメラワークまでは分からない分野である。
「うまいんじゃない?」適当な返事をしておいた。
それでも渡辺は
「ここが難しいんだよ」
「やっぱズームに滑らかさがないよね」等と呟いている。
こいつ本当にカメラが好きなんだな。
俺の部屋にビデオまで持ってきてさ。
本気でカメラマンになりたいんだな。
俺は渡辺の姿を見てとてつもないひたむきさを感じた。
そして自分も頑張ろうと決意した。
259:
しかし30分もストーリーの無い映像は拷問だった。
渡辺は1人で盛り上がっていた。
やっと砂嵐が出た。
終わった・・・。
しかし次の瞬間、渡辺の口から信じられない言葉を聞いた。
「ねぇ。もう1回見ていい?」
家で見ろやっ!仕事熱心もほどほどにせいよっ!
と言えるはずもなく
「いいよ・・・」と言ってしまう俺。
こんな時の断り文句ってあるのか?
2度目の鑑賞が終わった時に渡辺が聞いてきた。
「ここ家賃はいくら?」
答える俺。
「それじゃ私も304号室に引越しするね♪」
え・・・・・??
261:
渡辺の本気キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
262:
304号室の渡辺さんktkr
263:
ふざけ!るなあああああああああああああ
271:
俺は内心焦りまくった。
コイツなぜ304号が空室だと・・・。ハッとした!
そうだこの前一緒に飲んだ時。
「俺の隣の部屋開いてるよ。304号。渡辺そこ住めよー」
タラリ・・・。
酔った勢いでそんなことを言った・・・ような気がする。
「間取りはここと同じなのかなぁ??」
もう住む気になっているし!!
しかし今はあの時と状況が違う。
今はシラフである。
しかもしかも・・・。
今日まりあは俺にヤキモチを焼いた(ハズ)なんだよー!
隣にその原因である女が引っ越してきて恋が成就するハズが無い!
「ちょっと待て。渡辺!」
どうにかして阻止せねば。
「304号なんて数字が悪い。4の付く部屋なんか住むもんじゃない」
「私そういうの気にしないから!大丈夫!」
「そうだ。さっき下で会ったデブのオタク。あいつ301号に住んでんだ。不気味だっただろ?」
「二宮くんの友達でしょ?平気だよ」
俺は渡辺が引越しを諦める理由を必死で考えた。
280:
この言葉しかない!俺は必殺技を繰り出した。
「会社の連中にバレたらどうするんだよ?
同期とはいえ、いくらなんでも男と女が隣に住んだら怪しむよ?世間は?」
「そのことなんだけどさぁ・・・・。内緒にしててね♪会社には」
ここでニコッと笑顔。
コイツ可愛い・・・。
いや。そんな場合じゃない。
「なんでよ?なんで会社に内緒なのよ?」
渡辺は悪びれる様子もなく
「安くなった交通費の分を家賃に回すからだよ」
な・・・なんと!
「だから実家住まいにしておいて、交通費多めに貰うの」
策士現る!
312:
客観的に見ていただければ
同期の知り合いがいるマンション(安心)
安くて間取りが良い
会社が近くて便利
渡辺が引っ越した理由はそれだけです
360:
俺と渡辺は部屋を出た。
304号の前で渡辺ははしゃいでいる。
「あー。憧れの1人暮らし♪」
確かに俺も同じこと思ったよな。
ここに越して来た日・・・。
渡辺の気持ち分かるわー。等と考えていた。
この時俺は純粋に
「部屋が押さえられてなければいいね」と思っていた。
しかし10秒後早くも考えは変わった。
チーン。エレベータが到着した音だ。
俺はドキリとした・・・。
ドキン・・・ドキン・・・。
油か?まりあか?
扉が開く・・・。
そこからはコンビニ袋を重そうに抱えたまりあが出てきた。
368:
ざわざわ・・・
371:
ぎゃああああああああああああああああ
376:
油か?まりあか?
本文ですら油になってるwwwwww
どんだけ~~
377:
>>376
馴染みすぎて気付かなかったwwww
379:
もうこれからは「油」でいいだろwwww
381:
まりあはまだ俺たちに気づいていない。
もうすぐ・・・もうすぐ・・・。
その可愛い瞳が俺たち2人をロックオンしてしまうのね。
ロックオン完了!
空気の流れが止まった。
立ち尽くすまりあ。フリーズする俺。
はしゃいでいる渡辺。
第一声を発したのは渡辺だった。
「あ!カレー屋さんだ。こんにちわ」
悪気は無いとはいえ「カレー屋」とか言って逆撫でするな!
「どうも」とだけ言って自分の部屋へスタスタと移動するまりあ。
でもコンビニ袋が邪魔でキーがなかなか取り出せない様子。
「袋俺が持ってるよ。まり・・・・新田さん・・・」
まりあとは呼べない。
渡辺は仕事の同期だ。
隣人に恋愛をしているというプライベートは知られたくない。
「けっこうですっ!!!」
そう言うとまりあはガチャガチャとキーを取り出して
部屋へと消えて行った。
382:
かわいすぎるぞこいつ
389:
逆にそこで新田さんて名字で行っちゃったのが渡辺との関係を疑わせちまったな・・・
392:
油を受けいれることが出来るくらいだから
心の広いおにゃのこだと思ったんだがww
女の嫉妬って恐いんだな・・・
397:
あ!カレー屋さんだ
むじゃきすぎwwww
かわいい・・・・やっぱ俺、渡辺も好きだ
399:
女は女に厳しいんだな
407:
俺は駅へ渡辺を送りながら考えた。
あれはまずいよな?
普通同期の女を部屋に入れるかな?
ヤッたと思われたかな?
渡辺の意向で方向を変更し不動産屋へ向かった。
俺にあの部屋を紹介してくれた不動産屋だ。
304号よ。どうか埋まっていてくれ!
俺の思いも届かず304号は見事に空き部屋だった。
喜ぶ渡辺。
「この物件はおすすめですよ!」
煽る不動産屋。
死んだ目の俺。
渡辺は大喜びで帰って行った。
俺は駅からの帰り道をトボトボと歩いた。
付き合っているなら言い訳も出来る。
今からまりあの部屋へ行って言い訳するのもアリだ。
しかし今はそんな関係でもない。
俺はマンションに到着した。
自分の部屋のドアの郵便受けに白い紙が挟まっていた。
???
その紙を開くとこう書かれていた。
「なんでまりあじゃなくて【新田さん】なんですかっ!?」
414:
あらーやっぱそこ勘違いされたよー
415:
まりあ可愛い。
けど、付き合ったら束縛や嫉妬が激しそうなタイプだwwww
434:
第10章 初ディレクション
当時の俺は仕事に夢中だった。
もう二度とミスはしたくない。
そして川田さんの演出を盗みたい。
これしか頭に無かった。
実際川田さんは演出においても大雑把であった。
手を抜くべきところは抜きまくる。
しかし重要なポイントは他のスタッフが疲れていようがなんだろうが必ず押さえる。
そしてそのポイントは必ず必要な部分なのだ。
俺は川田さんのフォローに必死になった。
この人は突然とんでもないことを言い出す。
「二宮?。その辺の民家からチャリパクってきて?。なんか急にチャリ使った演出がしたくなった」
え・・・。台本に無いじゃん!そんなの。とは思わない。
ディレクターが必要だと思えば必要なのだ。
そして俺の仕事は「チャリの入手」になるのだ。
そんなある日俺は南さんに呼び出された。
437:
まりあの複線どうなったんだよww
438:
ちょ
まりあへの言い訳なしか?w
448:
南さんは言った
「二宮ってディレクターやりたい?」
え・・・?
「今度川田ちゃんが別の仕事入っちゃってさぁ。お前ディレクターやる?」
そ・・・そんな簡単なものなのか!?
「やらないなら別の人間探すけど」
返事なら決まってるだろがっ!
「やります!一生懸命やりますのでやらせて下さい」
こうして俺の初ディレクションは決まったのである。
なんともいい加減なものだ。
ロケは3日後。俺はこの仕事に全てを掛ける。
尺(O.A時間)が60秒のパブリシティである。
某ピアノ会社の展示場に赴き
そこの支配人がオススメする
数台のピアノをアピールするのもだ。
462:
俺は川田さんに電話をした。
「川田さん。俺・・・俺とうとう・・・初ディレクターです!」
川田さんはあまり関心が無いのか
「そか。おめっとさん」と言うだけだ。
しかしこの興奮は止まらない。
「俺・・・川田さんのお陰で・・・初めて。初めて」
「いや・・・ムサ苦しいって・・・」
「ありがとうございます川田さん!」
「え・・・。俺なんもしないけど。ああ良かったな」
それから俺は今回の作品のあらましを川田さんに説明した。
「なんか注意点ありますか?」
「へ・・・?なんもないよ。そんなクソみたいな仕事・・・」
「お願いします。なんかお願いします」
川田さんはう?んと唸って一言
「カメラマンには60秒以上カメラ回してもらえ。んじゃなんとかなるわ」
俺は「ありがとうございます!ありがとうございます!」と言って電話を切った。
アホである。
465:
心なしか川田さんが冷たい気がする・・・
468:
俺も川田だったら
さすがにこれは う ざ い
ただ内心うれしい
470:
ロケ日まで3日。
俺は毎日23時まで台本を書いた。
何度も何度も書き直した。
ちなみに今の俺なら30分で書ける台本である。
当時はウブだったのだ。
そして技術クルーは会社でも怖いと評判の大宮さん。
そして音声は偶然にも渡辺だった。
渡辺はロケ車の中で「初ディレクター頑張ろうね!」と言ってくれた。
展示場に到着する。
支配人に挨拶だ。これも制作の仕事。
「ディレクターの二宮です」
少し恥ずかしい。
でも嘘は言っていない。
支配人がオススメのピアノを教えてくれた。
どれも年代物であろうか。
その重厚さはひしひしと伝わってきた。
大宮さんが無言で撮影に入る。
こうなると渡辺も必死だ。
少しでも助手の動きが遅いと怒鳴る。
それが大宮さんなのだ。
474:
ADとディレクターってやることがあまりに違うと思うんだが
(末端のAD=アシスタントなんて名前だけでただの雑用)
新卒がディレクターとかやらせて貰えるもんなの?
簡単な撮影とはいっても。
479:
>>474
お。業界人?
この仕事は今にしてはクソだったからねww(でも大事な仕事だよ)
ある程度台本が書けてカメラマンが30分も回してくれたらだれでも繋げる(編集)できるよ
488:
>>479
サンクス。
製作会社っていっても方向性も規模も様々だし違いがあるのは当然なんだが、少し気になった
476:
撮影が熱を帯びてくる・・・。
大宮さんは年代物のピアノを相手に格闘している様に見える。
渡辺も必死だ。
大宮さんが次に何を求めてくるか?
それを頭の中で考え大宮さんの一挙手一投足を見逃さないよう神経を集中している。
俺だって同じだ。
たとえカメラマンが怖い大宮さんだって自分の演出をしたい!
後悔だけはしたくない。
自分なりの言葉で欲しいカットを必死に大宮さんに伝える。
緊迫した状態で撮影が進む。
その時・・・。
入り口の方でで陽気な声が聞こえた。
振り向くと川田さんがいた!
「撮影のスタッフですー」と受付の人に説明している。
なんで?なんで川田さんがここに?
だってこの人は別の撮影があるじゃん。
だから俺にお鉢が廻ってきたんだろ?
川田さんが言った。
「俺の撮影が早く終わって暇だったから来ちゃった」
478:
テストだな・・・こりゃ
480:
川田さん・・・あんたカッコよすぎるぜ
481:
上司ってホント大切だなぁ
482:
その変わり雑用に従事してたら出来ないかな?
俺は自分の時間削って台本の練習したし
川田さんの撮影は全神経を集中して演出を盗んだ。
ただの雑用係はDになれない。
これ俺の持論
491:
「川田さん・・・・」
俺は泣きそうになった。
本当は不安で一杯だったんだ。
川田さんのようなベテランならクソみたいな仕事かもしれないけど俺はすごく不安だったんだ。
「二宮に仕事盗られたなぁ。明日から生活苦しいべ」
照れ隠しをしているのだ。
川田さんはフリーだ。
正規の仕事でない以上はここまでの交通費だって自腹だ。
そして・・・
俺がこのままディレクターになってしまえば仕事を1つ失う。
それでも俺を心配して駆けつけてくれたのだ。
俺は必死になって頑張った。
川田さんに見てもらうために。
一度は廃人になった俺を蘇生させてくれた川田さんに報いるために。
493:
川田さんにほれました
ツンデレきまぐれ上司萌え
497:
撮影中川田さんは黙って俺を見ていた。
いちいち口出しをしないのもいかにも川田さんらしい。
川田さんは以前に言っていた。
「撮影はな。ディレクターが主役なんだぜ。
カメラマンじゃないディレクターが主役の舞台なんだよ」
技術系の人間が聞いたら「ちょっと待て」と言いそうな言葉であるが川田さんは俺の舞台をただ見守ってくれた。
俺の舞台に土足で踏み込むマネはしなかったのである。
撮影終了。全てを出し切った。
カメラマンに臆することなく欲しいカットは全て注文した。
やったぞ!俺はやったぞ!
俺はしばしこの感動を噛み締めていた。
川田さんが俺に近づいてきた。
「お祝いしなきゃな。キャバ行っとく?」
498:
渡辺の前で平気でキャバとか言ってくれちゃう川田師匠wwwwwwww
502:
俺はその日の夜、川田さんとキャバでお祝いをしほろ酔い気分で帰宅した。
マンションのゴミ置き場に人影が。
ドキッ・・・。まりあだ!。
「ども・・・こんばんわ。ゴミ捨て?そうだ明日ゴミの日だよね。
俺もゴミ出ししなきゃ」
意味不明な言葉しか出て来ない。
まりあはそんな俺に冷めた視線を向けて。
一言「そうだね。」
重いぞ。空気重いぞ・・・。
それもそのはずである。
例の紙切れの一件以来まりあとは会っていなかった。
なんとなく会い辛かったのだ。
仕事も忙しかったし・・・。
なにより
「なぜ新田なんですかっ!?」
の上手い返事が思いつかなかったのだ。
513:
2人でエレベーターを待つ。
タイミング的に別々の方がおかしい。
無言・・・。
何か話さないといけない。
この重い空気にも耐えられないしなにより仲直りしたい。
でも俺が謝るのもなんか変だ。
「そ・・・そうだ。今日俺さぁ。初めてディレクターしたんだ」
こんな話題しか思い浮かばない。
驚いた顔で俺を見るまりあ。
「たった60秒なんだけどさぁ。撮影で緊張しちゃってさ・・・」
まりあの反応が変わった。
「え。すごじゃん!ディレクターなんて!放送はいつなの??」
今でもこういった反応は苦手です。
ディレクターなんてただの映像オタクにしか過ぎません。
俺からすれば知らない人に物を売りつける
営業さんのほうが宇宙人です。
「え・・・と。一週間後の19時54分」
パブリシティとはこういう変な時間に放送されているのだ。
「すごい!すごい!」
自分のことのようにはしゃぐまりあ。
やっぱり可愛すぎるな。お前
516:
>>513
素直な子やのう
612:
「その日だとバイトないから、私の部屋で一緒に放送観ようよ!」
マ・・・マジっすか!?
もう怒ってないのですか?
何があっても行きますよ!
「いいの?お邪魔しちゃって」
顔がニヤけてくるのが自分でも分かる。
頑張れ俺の顔面。
「うんうん。もちろんだよ。みんなで観ようよ!」
うん。うん。観よう!観よう!みんなで。
へ・・・?みんな??
「油田くんも誘っておくからさ♪」
油田・・・ですか。
その子いらない子・・・。
「60秒だとすぐ終わるから録画して何度も見ようね!」
「う・・・うん。そうだね」
なんにしても仲直りのキッカケにはなりそうだ。
公私ともにいいことづくめで怖い。
別れ際に言ってみた。
「おやすみ。まりあ」
「おやすみなさい。光輝くん」
あの笑顔が帰ってきた!
最高に可愛いあの笑顔が。
614:
いらない子wwwwww
616:
俺は自分の部屋に入ると
「よっしゃーー!!」とガッツポーズをした。
次の日から俺は編集作業に入った。
いくら撮影が無事済んでもここで気を抜けば元も子もない。
まずはオフライン編集。
簡単にいうと撮影した映像を大体の順番に並べて簡易編集機でザックリと60秒前後にまとめる。
またの名を仮編集という。
今なら2時間もあれば余裕で終わるこの作業を俺は丸2日を掛けてこなした。
自分が納得いくまで何度も何度もやり直した。
これが俺のデビュー作になるのだ。
いい加減な出来では
今度いつディレクションをさせてもらえるか分からない。
そしてこれはお茶の間に流れるのだ。
不特定多数の人間が目にする。
誰も注目なんかしないかもしれない。
でもその時間そのチャンネルをつけている人間は数万人いる。
(視聴率は1%で数万単位になる。地方により違うが)
誰かは真剣に観てくれるかもしれない。
そしてなによりまりあが観てくれる。
まりあには俺が全力で作ったものを観て欲しい。
俺はオフライン編集に没頭した。
そして次の日オンライン編集(本編集)に臨んだ。
これは自社では出来ない。
ポストプロダクション(編集屋)で行う。
618:
撮影が成功してもオンラインでダメになることもある。
逆もまたしかり。
つまりこの作業で作品の良し悪しは決まるのだ。
ポスプロにはプロの編集マンがいる。
自分のしたい演出を必死で言葉にして伝える。
たかが60秒のパブでなにを必死に・・・。
編集マンはそう思ったかもしれない。
しかし関係ない。最後の最後で後悔してたまるか!
621:
無事に画が繋がった。
ここに別撮りしていたナレーションを被せる。
これで全体像は完成だ。
最後の最後。MA作業で作品は完成する。
MAとはBGMやSE(効果音)そしてナレーションを入れる作業である。
今回ナレーションは編集で入れたのでOK
SEはプロに任せた。
そして選曲マンが今回の作品に合いそうなBGMを5?6曲用意してくれた。
その中から俺が1曲を選ぶ。
ディレクターの醍醐味ともいえる瞬間だ。
BGMは作品全体の雰囲気を作る大切なものだ。
慎重に選になる。
俺の選んだ曲を映像とMIXする。
これでとうとう俺のデビュー作が完成したのだ。
「プレビューしますね」MAマンが言う。
緊張の一瞬だ。
完成作品が目の前の画面に映し出された。
60秒の時間があっという間に過ぎていく。
MAマンが訊ねてくる「どうでしょうか?」
俺は万感の思いを込めてこう言った。
「OKです」
638:
編集からMAまで付き添ってくれた
南さんが拍手をしてくれた。
「初ディレクターお疲れ!いい作品になったな」
俺は南さんにペコリを頭を下げ
「トイレ行ってきます」と言って部屋をでた。
俺はトイレで1人泣いた・・・。
仕事というのは本当に辛い。逃げ出したい時もある。
しかし・・・
ほんの一瞬
ほんの一瞬だけ
仕事をやっていて良かったと思う瞬間が訪れる。
だから社会人は頑張れるのかもしれない。
おふくろ・・・。
俺ちゃんと自分で一つの仕事完成させたよ!
南さん・・・。
俺にチャンスをくれて(人がいなかっただけだが)ありがとうございます。
川田さん・・・。
あなたに出会えたことに感謝します。
640:
>>638
おれも働いてこんな体験したい…でも社会怖い…
641:
余談だが俺はマスゴミと言ってTVマンが叩かれる度に悲しくなる。
特に報道が多いと思うが
東京(なんだかんだ言っても業界の頂点はここ)でゴールデンの報道番組をやっている人間は一握りだ。
俺から言わせれば天才だ。
精神もタフだ。
その人たちもこの日の俺のような経験を何百回としてあの場にいる。
しかし過剰演出も悪いが「マスゴミ」の一言で片付けられると少し切なくなってくる。
給料の高い安いはあってもTVマンの最後行き着くところはみんな「視聴者を楽しませたい!」なのだ。
これ以上この話をするとスレも荒れそうなので余談を終了します。
ごめんね
643:
なんか、仕事情熱あっていいな…
644:
ポスプロの帰り
TV局にテープを納品して本当の意味でこの仕事が完了した。
あとはしっかり流して下さいよ!
変なことまで祈ってしまう。
ご機嫌で会社に戻ると志村の姿を見つけた。
あの事件以来、社内で何度も志村に会ったが俺が挨拶をしても目も合わせてもらえなかった。
俺は志村に近づいた。
やっぱり怖い。
でも俺はどうしても志村に言いたいことがあった。
652:
「志村さん。少しお時間ありませんか?」
志村はびっくりした表情を浮かべている。
まさか俺から挨拶以外の言葉を聞くとは思ってもいなかったのだろう。
「なによ?」
表情は一瞬で冷めたものに変わった。
「今日僕が作ったパブが完成しました。
たった60秒のものですが、もしよろしければ1度プレビュー(試写)して貰えませんか?」
俺はポスプロから貰った社内試写用のVHSを差し出した。
「パブ?君が作ったの?」
「はい」
志村が失笑した。
「なんで俺がそんなつまらないもの観るの?
60秒のパブなんて演出した内に入らないからさ」
「・・・・・・」
「んじゃ俺忙しいから」
そう言い残し志村は俺の前から消えて行った。
653:
志村ー!それ嫉妬!嫉妬!!
654:
カスだな志村
認めろよ
661:
俺は自分の席に座った。
いいのだ。これで。
俺が志村にプレビューをお願いしたのは自分の中でのけじめに過ぎない。
「俺は潰れなかったですよ!」
それを分かって欲しかっただけだ。
あの事件以降、志村を恨んだことは1度もない。
志村だって必死なのだ。
なにより俺のミスで迷惑を掛けた事実は変わらない。
いいのだ。これで。
俺はその後テープが擦り切れそうになるまで自分の作品を観た。
何度も巻き戻して観た。
そしてその夜は自宅に戻ってからおふくろに電話をした。
664:
「はい。二宮です」
おふくろの声だ。
なぜかやっぱり安心する。
「俺だよ。おふくろ」
「どうしたんだい?仕事でなにかあったかい?」
例の事件以降、俺が連絡をすると心配そうな声になるおふくろ。
ごめんね。
「ううん。今日俺ね。ディレクターの仕事をしたよ」
「でれくたーかい?」
「うんうん。60秒のね。簡単なCMみたいなものだけどさ」
「そうかいそうかい。光輝はずっとでれくたーになりたかったんだろ?」
「うん。まだなってはいないけどね。とりあえず1本だけだよ」
おふくろが涙声になった。
「良かったね。天国のお父さんにも報告しなきゃね。
光輝が立派なでれくたーになったってさぁ」
「あはは。全然立派じゃないけどね」
俺は放送日時を伝えて電話を切った。
おふくろはビデオ録画すると言ってはりきっていた。
ビデオなんて操作できないだろ?
おふくろ・・・。
665:
カーチャン…
671:
くそ、目からあふれ出るこれは何だ!?
673:
>>671
目ヤニだ
678:
二宮はこれ思い出しながら書いてるの?
683:
>>678
うん。多分ブラックの人も同じだと思うけど「だいたいこんな会話だった」だよ。
言葉の一語一句まではさすがに覚えてないww
正確性をもとめたら全ての会話に「○○○」というような事を言ったと記憶している。
を入れないとダメだからww
684:
ちなみに時間軸も若干ズレるよ。
「あれは入社すぐぐらいだったかな?」
「暑い日だったから夏前かな?」
ってな感じで思い出している。
一応念のため
685:
ちなみに、この今書いてる時期は入社して一年目のいつくらいの時期?
691:
>>685
2?3ヶ月だな。
そろそろ暑くなってきた記憶あり
687:
雑談よりも本編を頼む
689:
第11章 渡辺のお引越し
今日はまりあの部屋で放送を観る日だ。
この日ばかりは南さんも
「早く帰って自宅のTVで観ろ。全然印象が違うぞ。それも勉強だ!」と言って定時退社を認めてくれた。
俺は駅に着くとコンビニに入った。
ジュースや適当なお菓子を買い込んだ。
まりあにばかり負担を掛けちゃいけないね。
俺は一旦自室に入り着替えて302号に行った。
インターホンを鳴らす。
この瞬間はいつもドキドキした。
今日はどんな可愛いまりあが出てくるのだろうか?
俺と確認するとドアはすぐに開いた。
「いらっしゃーい」そう言って出てきた
まりあはワンピース姿だった。
その可愛いさ・・・いい加減にしろよ!
699:
「お酒買ってあるよ。放送のあと乾杯だね」
そう言いながら俺を招き入れるまりあ。
おいおい。
こりゃ新婚カップルじゃねーかよ!
リビングに入ると
「いやぁ。どうもどうも」
手を上げている油田がいた。
貴様はいつも俺より先にいるんだな?おい!!
「まぁまぁ座って下さいな」
テメーの部屋じゃねーだろが!!
時間は19時30分。放送まで30分弱だ。
3人でしばしの雑談。
実は俺はこの時かなり緊張していた。
本当に放送されるのか?
俺なんかが作った作品が・・・?
19時50分。放送まで4分。
ここでまりあがビデオをセットした。
口数が減ってくる一同。
701:
油田wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
708:
放送まで
3分・・・・。
2分・・・・。
1分・・・・。
俺「・・・・・・・・・(ドキドキ)」
ま「なんか緊張するね♪」
油「待ち遠しいですなぁ」
そういって油田がテーブルに肘を付いた瞬間。
ザーーーーーー。
TV画面が砂嵐になった。
へ・・・?何これ放送事故??
「えっ!!」俺とまりあは同時に声を上げた。
「あっ!!」と1人別の声を上げる油田。
画面の右上は21CHを表示している。
そんな局あるの?
710:
油!このくそボケエエエエエエエエエエエエエエエエ
711:
油田wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
714:
これはKYwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
715:
油ぁああああてめえwwwwww
718:
油わざとだろwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwしねwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
722:
728:
「すすす・・・すみません。肘が・・・リモコンに当たったみたいで・・・」
油田ぁぁぁーーー。貴様という男は!!!
相当テンパッっているのかリモコンを適当に押しまくる油田。
「ちょ・・・。油田。頼む!!頼むから早く戻してくれ!!」
「えっーと。何チャンネルでしたっけ?えっーと・・・」
「60秒しかないんだ。油田。急いでくれ!頼むから!」
TV画面が見覚えのある映像を捉えた。
「そこ!油田!!そこで止めて!」
俺の体感では冒頭20秒以上は進んでいた。
テープが擦り切れる程みた映像だ。
すぐに分かる。
733:
確信犯だろ油田wwww
740:
油田…わざとだろ
754:
あっという間に俺の処女作はTV画面から消え去った・・・。
そこは既にカレーのCMに支配されていた。
シーーーーーーン。
室内が静まりかえる。
「そ・・・そうだ。ビデオ!ビデオ撮ってたんだ。
やっぱ便利だよね。ビデオ」
まりあが慌てて停止から巻き戻しのスイッチを押す。
まりあの気遣いが痛々しかった。
そこに映し出された映像は俺が100回くらい観た映像だった。
そこにLiveの興奮は無かった。
またカレーのCMが流れる。
シーーーーーーーーーーーーン。
またしても室内は静まりかえった。
757:
え・・・
758:
油…
762:
しかしカレーに縁があるなwwww
763:
しかし俺が一生懸命に作ったデビュー作は無事お茶の間に放送さたようだ。
心の奥底から込み上げる感動を全身で受け止めていた。
右の拳は握りしめていたに違いない。
「すごいね・・・。ほんと」
まりあがポツリとそう言った。
「私の目の前にいる光輝くんの頭の中で考えたことが
映像という形になって、こうしてTVに映し出されているんだ・・・」
聖母マリア様降臨!
君はなんという才女なんだ。
そしてなんて可愛いことを言うのだ。
若い人は感受性が豊かだね。やっぱり。うんうん
俺はチラリともう1人の若者を見た・・・。
「短すぎて何がなんだかよく分かりませんでしたなぁ」
そう言いながら俺のグラスにコポコポとビールを注いでいる。
貴様は・・・・。
なにはともあれ俺たちは乾杯をした。
771:
油田UZEEEEEEEEE
773:
油空気よまなすぎwwwwwwww
781:
油田にキレていいだろwww
783:
ビールが進む。
まりあは何度も何度も巻き戻して俺のデビュー作を観てくれた。
その度に「すごいねー」と言ってくれた。
仲直りは完璧に成功したみたいだ。
この2人といるとやっぱり楽しい。
年齢も大差無く、俺も浪人や留年があれば2人と同じまだ大学生だった。
会話をしていても同じ感覚で笑える。
こんなに楽しい時間をマンションの住人と共有できる奇跡に感謝していた。
飲み始めて1時間程度。
場はすっかり盛り上がった。
今なら言える!このタイミングしかない!
「あのさぁ。ちょっと2人に報告があるんだけどさぁ」
「なになに?」
まりあも酒が入ってテンションが高い。
「2人もこの前ここで会った女の子。
あれ会社の同期の渡辺っていうんだけどさ・・・」
まりあと油田が動きを止めて俺を見つめる。
「なんかアイツ304号に引っ越してくるみたい。あはは」
シーーーーーーーーーン。
再び室内に沈黙が訪れた。
799:
>>783
あはは じゃねーwwwwwwwwww
794:
タイミングちげえwwww
796:
なぜこのタイミングだとおもったのか
806:
二宮くん
同じ映像業界の人間としてもう我慢できん
頑張れ!
ごめんね
今は本編やってるおじさんからの言葉だよ
頑張ってね
814:
>>806
本編というと映画ですね。
TVの人間はフィルム用語に弱いっすww
そっちは大変な業界だと思います。
俺も頑張りますよ!
846:
>>814
その通り
俺もTVのパブリから入って今は本編やってますww
CMも深夜バラエティーもやったよww
報道だけはやらないって
俺は決めてたけどねww
事故で死んだ人間の卒業アルバムを放送する人間にはなりたくなかったからねww
二宮君が言ったとおり
マスゴミって言葉は俺も嫌いだなww
808:
「ななな・・・なんですと!」
最初に反応したのはデブだった。
「渡辺さんというと、あの綺麗な顔立ちで少しすました感じの美人ですね?」
「そ・・・そうだね。それが渡辺だね」
「いつ引越してくるのですか?」
「うーん。近々。おそらく数週間以内には」
「やりますなぁ。二宮さんも。いやー。実に羨ましいですなぁ。二宮さんも」
ちょっと・・・。
黙っててくんない?デブ。
俺はまりあの顔の顔を見た。
ビールの入ったグラスを握り締めてフリーズしている。
下を向いていて表情が分からない。
怖い・・・・。
ひとりではしゃぐオタクの声を遮ったのはまりあだった。
「さぁ。そろそろお風呂入ろーっと。明日学校早いしね。
男子の皆さんは出て行ってくださーい!」
え・・・まだ21時だけど・・・。
「はいこれビデオ。あげる。家で見て下さいね」
俺はまりあにデビュー作のVHSを渡された。
「二宮さん家で飲み直ししましょうか?フヒヒ」
俺は気づくと楽園からオタク部屋へと移動していた。
812:
なんで誤解を解かないんだ?
826:
あぁ・・・渡辺トラブルメーカーすぎwwwwwwwwwwwwwwwwww
860:
「オーライ!オーライです!!」
次の日曜日。
マンションの駐車場で大声を張り上げている俺がいた。
TシャツにGパン。
頭にはタオルをガテン巻きしている。
「ストーーーーップ!!」
赤帽の車に指示を出す。
なぜ俺は引越し等の行事になったら張り切ってしまうのだろう・・・。
この日は渡辺が304号に入居する日であった。
渡辺はわざわざ俺の休みを狙って引越してきた。
人手を確保するためだ。
通常の引越し業者ではなく赤帽を頼むあたりは
いかに引越し費用を安く抑えるかという渡辺の魂胆が見え隠れする。
862:
「ごめんね。二宮くん。せっかくの休みに」
いやいや。それを狙っていたんでしょ?あなた。
「別にいいよ。暇だし」
今日の渡辺はいつもの渡辺だった。
ノーメイクにTシャツGパン。
引越しだから当たり前なのだがお陰でドキドキすることは無さそうだ。
なんといってもここはまりあのテリトリーである。
迂闊な行動はとれない。
俺は赤帽のオッサンと洋服ダンスやTV等の大物を運ぶ。
渡辺は鞄に詰め込んだ衣類などを細々と運んでいた。
30分程度引越しが進行したところで302号からまりあ出てきた。
俺は焦らない。
今日は同じフロアでの引越しだ。
この後どうせ油にも会うであろう。
「こんにちわ。これからヨロシクお願いします」
渡辺がまりあに挨拶をする。
さて・・・どんな反応を返すのか?
864:
「こちらこそヨロシクお願いします。
分からないことがあったら何でも聞いて下さいね♪」
まりあもニコニコと挨拶を返した。
いける!今日はご機嫌な様子だ。
便乗して俺も話掛ける
「まり・・・。新・・・。新田ちゃんは今からバイト??」
一瞬ためらってしまった。
「まりあ」と呼ぼうとして渡辺の存在が
「新田さん」と呼ぼうとしてまりあの存在が頭の中で交錯した。
脳内で一瞬にして出した折衷案が「新田ちゃん」だったのだ。
それにしても新田ちゃんってなんなんだよっ!!
新田ちゃんは俺をキッと睨むと無言でエレベータの中へと姿を消した。
このままでは本当にマズいな。
渡辺には話しておくべきだ。
865:
いきなりまりあと会ってしまったのか
869:
駐車場で次の荷物を運ぶ準備をしていると後方から
「やぁやぁ。ご精がでますなぁ」
という声が聞こえてきた。
目の前には俺と全く同じ格好をしたデブが立っていた。
油田だ。
「僕も微力ながらお手伝いしましょう」
本当に微力そうだな。
渡辺が挨拶をする
「これからヨロシクお願いします。・・・えっと」
「301号の油田」俺が紹介する。
「すみません引越しのお手伝いまで・・・油田さん」
渡辺が恐縮する。
デブはいや?っと頭を掻いて
「靖男って呼んで下さい。年も近いことですし」
テメーーー!!気持ちワリーんだよっ!!!
874:
あ・・油田靖男・・?
881:
油田って
キモオタだけど社交性は二宮よりあるよなww
887:
時系列
1982年、二宮誕生。
1999年、二宮グレる。
2001年4月、大学入学。
2005年3月、大学卒業。
2005年4月、二宮、引越と就職。
2007年1月、二宮、親友とモトカノの婚約を知る。
2008年、まりあと悟が結婚(予定)
まりあと悟が婚約したのが2006年だろうから、二宮とまりあの交際期間は短かったのか。
889:
でしゃばるつもりはないんだけど、長編小説とかって巻頭にあらすじあってよみやすくしてるし
これまだ続きそうだし、あったほうがいいかなーとか思ったので。
でもケータイの人にはうざいんかな。
まあ使うかどうかは二宮がきめてちょ
俺こういうのまとめた事ないのでうまい人補足改変お願いします。
-----------------------
このスレは、二宮が人生で初めて付き合ったまりあとのお話です。
・二宮は寂しがりだからROMってないで感想かいてあげてくだしあ
・ただし二宮が描きづらく感じる事もあるので先読みは自重の方向で
二宮 光輝(>>1):303号室。
新田 まりあ:302号室。スレタイの隣人。後に二宮と交際するが2008年に悟と結婚予定。
油田 靖男:301号室。
渡辺:304号室。二宮の同僚。二宮に恋愛感情は全くなし。
悟:二宮の親友。
赤松:いやな上司
志村:いやな上司(フリーランス)
田畑:変人の上司
南:アホの上司
川田:キャバ好きの上司(フリーランス)
903:
仕事で行き詰ってこんなの作ってしまった・・・。
マンションフロアの見取り図
うまくできねーーー!!!
905:
テンプレサンキューです。
志村&川田さんは上司っていうのとチト違うかも。
会社の人間じゃないから・・・。
あと田畑さんは「先輩」のほうがピッタリかな
910:
>>905
志村と川田も「先輩」の方がいいのかな?
911:
>>910
テレビ1年でラジオ7年やっているが、
テレビ1年のときに付いたフリーのDは、俺の場合なんだかんだで師匠扱いかな?
敬うとは違うから微妙なんだが。
912:
>>910
あの人らは俺にとって何者にあたるのだろう。
上司よりは先輩かな。やっぱり
意味合いとしては「業界の先輩」だけど
908:
まりあ部屋は正確に言うと隣ではなく向かい隣?と言うのかなか?
マンドクセーから隣で統一した。
今後も隣でいきます
939:
部屋に荷物を入れる作業は意外と早く終わった。
1人暮らしの引越しだけに大した量の荷物では無い。
赤帽が帰った後、俺と油田は304号の整理を手伝った。
15時頃片付けのメドがたったところで
「後は1人で出来るから平気だよ」
渡辺のその言葉で一旦解散となった。
「今日はお寿司を出前するから、二宮くんと油田さんも来てね」
手伝いのお礼というわけだ。
ちなみに渡辺が「靖男」ではなく「油田さん」と呼んだところに注目したい。
「そうそう。302号の・・・。新田さん?彼女も呼びたいんだけど」
渡辺としては同じフロアで同年代のまりあと仲良くなっておきたいのであろう。
「いいですねぇ。それはグッドアイディアです」
油田は女2人に囲まれて寿司など食った経験はないのであろう。
そのシチュエーションを想像して興奮している様子だ。
ちなみに俺もそんな経験は無い(寿司以外ならギリギリある)
941:
19時に304号に集合するという事で一旦解散した。
果たしてまりあはいつ帰ってくるのだろう?
カレー屋のバイトは割と早い時間に終わるはずだ。
19時までには戻ると思う。
部屋でゴロゴロと時間を潰す。
やっぱり言っておくべきだな。
俺は決心して304号に行った。
そしてインターホンを押す。
「はい?」
当たり前だが渡辺の声だ。
なぜか新鮮な気がした。
「二宮だけど。ちょっといいかな?」
ドアがガチャっと開いて渡辺が顔を出した。
「どうしたの?」
不思議そうな顔をする渡辺。
「廊下でいいや。話があるんだ」
俺は部屋を整理中の渡辺を気遣った。
「あのさ。302号の新田さん。新田まりあさんなんだけど」
「うんうん。」
「俺さぁ。彼女のこと・・・好きなんだよね」
渡辺は驚いた顔で俺を見つめた。
942:
「そうなんだぁ。でもどうして突然私に??」
そう聞かれると上手く答えられない。
「いや。後々になってどうせバレるじゃん。だから今言ってみた」
この話は俺と渡辺が同期の枠を超えてしまう話だった。
完全にプライベートの領域だ。
俺はなんとなく嫌だったのだ。
会社とプライベートは分けたいタイプだったのだ。
「いいじゃんいいじゃん。彼女可愛いし」
渡辺は笑いながらそう言った。
「応援してあげるよ。今日お寿司に来てくれるといいね」
「うん・・・」
「それじゃ19時だよ!」そう言って渡辺が部屋に戻りかける。
「ちょっと待って渡辺!」
「ん?」
「俺・・・。新田さんのこと・・・まりあって呼んでる」
「うん。それが?」
それ以上は特に無いです。
渡辺の前でまりあと呼ぶために、一応言っておいただけだ。
「なんにもない。それだけ」
渡辺は笑顔を見せて304号へ戻った。
944:
よし!これでまりあの誤解を解けばOKだ。
ボーッと空を見ながら俺はマンションの廊下でまりあの帰りを待った。
30分ほどしてマンションの下にまりあの姿を見つけた。
もうすぐエレベータで上がってくるな。
しばらくするとチーンというエレベーターの到着音がした。
まりあが廊下にいる俺に気づく。
少し驚いた様子だ。
「お疲れ。まりあ」
まりあは「どうも」とだけ言って部屋のキーを取り出そうとした。
「ちょっと待って!」
俺はまりあを呼び止めた。
946:
「今夜7時からなんだけど、304号でお寿司を食べるんだ。
渡辺がまりあもどうぞ!って言ってるから一緒に行こうよ」
まりあは少し考える素振りを見せたが
「私はいい・・・」と言った。
「なんで?お寿司だよ?お寿司」
その瞬間まりあが右手に持っていた
某カレーチェーンのビニール袋を俺の目の前に差し出した。
「私はバイト先で貰ったカレーを食べるのでいいですっ!!」
なんだそりゃ?
「お寿司なんか食べたくありませんっ!!」
この言葉にはさすがにカチンときた。
まりあは好きな女だけど、渡辺だって大事な同期だ。
渡辺の好意に対して、今のまりあの態度はあまりにも失礼だ。
「んじゃカレーばっかり食ってたらいいじゃん!」
とうとう言ってしまった。
「言われなくてもカレーばっかり食べますっ!!私はカレーが大好物なんですっ!!」
そう言って俺を一睨みすると、まりあは302号へ入って行った。
渡辺より気が強い!俺もムカついて自室に帰った。
949:
>>946
これはwwwwwwwwもう少し女心わかれよwwwwwwwwww
986:
とはいうものの・・・。
俺は後悔し始めていた。
やっぱりアレはちょっと言い過ぎた気がしないでもない。
それに、もしあれがヤキモチだとしたら・・・。
その分、まりあは俺を好いてくれているという事になる。
みんなが304号で楽しくお寿司を食べている時に1人でカレーを食べるまりあを想像した。
・・・切ない。
俺は時計を見た。
18時45分。まだ間に合う。
謝りに行こう。
その時ピンポーンとドアホンが鳴った。
誰だ?
どうせ油田か渡辺であろう。
俺はドアホンに出ずそのまま玄関を開けた。
そこにはまりあが立っていた。
シュンとして下を向いている。
「どうしたの?まりあ」
まりあは
「ごめんなさい・・・」と呟いた。
俺は意外な言葉を聞いて少しオロオロとした。
「いや。俺もごめん。なんか・・・。ごめんね」
988:
するとまりあが恥ずかしそうに言った。
「まだ間に合うかな?・・・お寿司」
まりあは渡辺の部屋へ行くと言っているのだ。
「大丈夫!大丈夫!用意してあるよ」
渡辺のことだ。
お寿司は4人前用意しているに決まっている。
あいつは女だが男前なヤツなのだ。
(引越し費用はケチッたが)
俺とまりあはそのまま部屋を出た。
少し早いが304号に行こう。
「渡辺彩」しっかりとネームプレートをはめていた。
こういうのは性格なんだろうな。
まりあは用心のためかネームプレートを付けていない。
油田は苗字だけ。
俺は渡辺と同じでフルネームだ。
こういうことは、しっかりしないとなんだか落ち着かないタチである。
インターホンを押す。
「はーい」
「俺。二宮です」
すぐにドアが開いた。
まりあに気づく渡辺。
「新田さんも来てくれたんだ。良かったー。お寿司8人前も買っちゃったから」
8人前ですか!!??
「どうぞ。上がって」
渡辺に促されてリビングへと入る。
・・・・・・・・・・・。
「やぁやぁ。どうもどうも」
聞きなれたデブの声。
貴様いい加減にしろよっ!!
まりあの部屋ならまだしも、渡辺の部屋くらい時間通りに来い!!
991:
靖男みなぎり過ぎだろwwwwwwww
992:
油田wwwwwwwwwwwwwwwwww
1000:
え・・・。1000頂いちゃっていいですか?
引用元: ・憧れの1人暮らしで隣人に恋した パート3
18:
実はこれ仕事編とまりあ編が密接に関係してるよね。
仕事で引越し→まりあと出会う。
仕事で失敗→すき焼きで親密に。
同期の引越し→まりあ嫉妬。
仕事成功→まりあと仲直り。
何気に二つのパートはメビウスの輪
19:
偶然かも知れないが、もし両パートがリンクしない些細な出来事を意図的に排除させてるとしたら、やっぱ二宮の文章はうまいな。
ちゃんと読み物としてまとめてる
23:
>>18
>>19
そこまで読み取ってくれて感謝。
昨日寝る前にまとめ見たけど脱字多いよね。
注意しているつもりなんだけど
部屋の間取り10帖だから1DKじゃくて1(L)DKだしね。
正しくは。
こういうミスに気づくと仕事がらかイラッとしたりしますww
仕事行ってきますノシ
78:
しかもビール飲んでねーか??テメー!!
「さぁ。新田さんはここに座って!二宮くんはこっちね!」
そう言いながら渡辺はさり気なく席を指定した。
まりあと油田を近づけず、なおかつ俺とまりあが隣になる席だ。
なるほど渡辺が言った「応援するね」はこういう意味なのか。
渡辺は近所の回転寿司屋で購入したであろう、8人前の寿司を広げた。
そして(なぜか)油田が乾杯のとって宴が始まった。
寿司・カレー・すき焼き・・・。
ここに越してきてからみんなで食べたものだ。
うん。悪くない。
油田・まりあ・渡辺。
3階フロアも気が付けば全員同世代でくつろげるメンバーが集まっていた。
引越して来た日はまさかこんな生活になるなんて、想像もしていなかった。
このままみんなでずっと楽しく暮らせればいいな・・・。
俺はそんなことを願っていた。
しかしそんな俺の願いはアッサリと崩れさる。
親友の手によって・・・。
しかしそれはまだ後のお話。
84:
場が盛り上がってくる。
酒がまわってきた油田は饒舌になってきた。
「ところで彩さんは・・・」
あ・・・彩さんだぁ!!??
「おっとこりゃ失礼!」
と言って自分の後頭部をピシャリッと叩くデブ。
「いいですよ!彩で」
渡辺がすかさずそう言った。
「そうですかぁ。それでは今後は彩さんで」
不気味にニヤリと笑うオタク。
計算だ・・・。
計算に違いない・・・。
この流れは渡辺の返答まで予測した油田の緻密な計算による流れなのだ。
きっとまりあの時もそうだったに違いない!
コイツは侮れない・・・。
この分野では完全に俺の敗北だ。
「彩さんはなぜカメラマンを目指したのですか?」
コイツ・・・。
俺にはそんなこと、聞いたことも無いくせに!!
渡辺は律儀に答える
「子供の時にね。
風の谷のナウシカを観て感動したの。
それから映画に興味を持って・・・。
それでいつの間にかカメラマン志望」
そう言って照れくさそうに笑った。
へぇー。
渡辺はアニメがきっかけなのか。
人それぞれなんだな。
90:
>>84
渡辺かわいいな
95:
「ナウシカですかぁ」
油田が語り出した。
「あれは実に名作ですなぁ。
冒頭のシーンでですなぁ。
実はちびまる子ちゃんのTARAKOが声優出演しているのです」
更に講釈は続く。
「実は秘話がありましてね。
巨神兵のシーンです。
あれはエヴァンゲリオンの庵野秀明が原画を描いたのですよ」
と自慢気に語ったあと
コップに残ったビールをグイッと飲み干し一言。
「どうです?」
一同。
シーーーーーーーーン。
渡辺は油田のグラスにビールを注ぎながら
「へ・・へぇー。そうなんだ。勉強になるねぇ・・・。二宮くん」
別に。
油田はヤレヤレというゼスチャーを見せ
「困ったものですなぁ。映像業界の人がこんな事も知らないなんて」
ほっとけっ!!
103:
>>95
豚うぜーーーwwwwwwwwwwwwww
106:
二宮に質問なんだが、これって実話?
なんか物語としてしっかりしていて驚くんだが。。。。。
実話をある程度脚色した感じ?
110:
>>106
その辺りについて一度話しておきますか。
脱線しますが。
116:
前スレでも言いましたが
会話部分は「大体このような会話をした」です。
一語一句正確ではもちろんありません。
脚色とは違いますね。
事実を捻じ曲げていませんし話を大きくもしていません。
しかし俺は「そんな正確な部分まで?」と言われることを結構覚えていますね。
例えば
>>84
「おっとこりゃ失礼!」
と言って自分の後頭部をピシャリッと叩くデブ。
この時の油田の行動ですが。
完璧に覚えています。
このレスでは軽くスルーしていますが。
実際見た時は「こいつおもしれーーーーー」と思いました。
俺には印象的な行動だったのです。
実際には大笑いもしました。
ただ後頭部か額かまでは曖昧です。
でもここで
「おっとこりゃ失礼!」
と言って自分の後頭部かおでこをピシャリッと叩いたデブを記憶している。
とは書けないので、最終的には俺の文章になります。
俺は自分でも意外でしたが案外人の動きまで覚えていますね。
モチロン忘れている事の方が多いけど
全て覚えていて、全ての行動まで詳細に伝えたら。
多分いまは100スレ目くらいになっていたと思います。
これでOKでしょうか?
112:
>>110
実話かそうでないかはあまり重要だと思わないが
脱線する話なら一区切りついた時、章の間とかでいいと思うよ
121:
その時、携帯の着信音がした。
渡辺の携帯だった。
「あ・・・私だ!会社からだ!」
そう言って急いでキッチンに消える渡辺。
いま逃げたよね?君。
それにしても携帯か・・・。
俺はこの時まりあの番号はおろかメールアドレスも知らない。
これは由々しき事態といえよう。
しかし今はチャンスだ!
「そうだ。携帯といえば俺まりあの携帯番号知らないや」
軽くジャブを入れてみる。
油田戦法の変形といえよう。
「そうだね。私も光輝くんの番号知らないや。赤外線送るね!」
あっさりOK!!
油田戦法使えるっ!!
まりあがピンクの携帯を差し出してきた。
チクショーー!!携帯まで可愛いなぁ!!チクショーー!!
俺もグリーンの携帯を差し出す。
もうすぐ君の携帯のデータが、僕の携帯に侵入してくるんだね・・・。
その瞬間、俺の左側からグレーの不気味な携帯が飛び出してきた。
ん???
何ちゃっかりまりあのデータ傍受しようとしてんだっ!!デブッ!!!
「次は光輝くんが送ってきてね♪」
か・・・川田さん。
俺とうとうここまで来ましたよっ!!
とりあえず心の中で川田さんに報告をしておいた。
124:
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww
125:
油田TUEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEeeee
130:
俺も油田みたいにできたら彼女できるのかな・・・?
油田は俺の師匠
132:
油みたいにされるのってどうなんだろ実際
ウザがられそうじゃね・・・?
133:
>>132
俺が女だったらウザイ
まぁ、ひとそれぞれだろ常識的に考えて
135:
>>132
もう家に来てるしいいんじゃね?
引用元: ・憧れの1人暮らしで隣人に恋した パート4・【3/5】憧れの1人暮らしで隣人に恋した※12:53 公開予定
・【4/5】憧れの1人暮らしで隣人に恋した※13:24 公開予定
・【5/5】憧れの1人暮らしで隣人に恋した※13:53 公開予定
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