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花丸「ぼたもちを作ってきたずら」


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花丸「今日は朝からAqoursの9人で練習……きっとみんな途中でお腹が空いてくると思うんだ」
花丸「そんな頃合いを見計らって、オラが丹精こめてこしらえたぼたもちを振る舞えば、みんな大喜びずら」
花丸「つぶ餡にこし餡、きな粉に青海苔……バリエーションも完璧だし」
花丸「特に、善子ちゃんには喜んで欲しいなぁ」
花丸「子どもの頃、うちのお寺でお祖母ちゃんが作ったぼたもちを一緒に食べたりしてたから……」
花丸「まあ、どうせ善子ちゃんはそんなこと覚えてないだろうけど」
花丸「それはそうと、作るのに夢中になり過ぎて約束の時間に遅れそうずら」
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2: 以下、
花丸「みんな怒ってないといいけど……」
バッタリ
善子「あっ、ずら丸」
花丸「!善子ちゃん。今から待ち合わせ場所に向かうの?」
善子「そうよ」
花丸「さては寝坊ずら」
善子「それはお互い様でしょ。何よ、そんなクーラーボックスなんか抱えて」
花丸「これは後のお楽しみずら。さ、みんなを待たせたら悪いし、急がないと」
パタパタ
3: 以下、
?待ち合わせ場所。
花丸「ああ、やっぱりもう勢ぞろいしてるずら」
善子「怒ってるかしら……?」
曜「あっ、来たきた」
梨子「おはようございます」
花丸「遅れて申し訳ないです」
善子「ふっ。謝る必要などないわ。私達と人間風情とでは、そもそもの格が……」
花丸「ほらほら、ちゃんと頭をさげるずら」
グイグイ
善子「ちょ、ちょっと……!」
千歌「あはは。だいじょぶだいじょぶ、私たちも今来たところだから」
ニコニコ
花丸「そ、そうだったんですか……?マルたち、だいぶ遅ちゃったと思ったけど」
千歌「そ、そんなことないよ。ね、みんな?」
果南「そ、そうだね」
ダイヤ「気にすることはありませんわ」
花丸「そうですか。安心しました」
花丸(よかった。やっぱりみんな優しいずら)
鞠莉「それじゃあmenberも揃ったことだし、さっそく練習に向かいましょうか」
ルビィ「ところで、今日はどこで練習するの?」
千歌「天気もいいし、また浜辺でやろうかなって」
ダイヤ「いいですわね」
鞠莉「そうと決まれば、Let's go?!」
4: 以下、
?一時間後。浜辺。
千歌「ふぅ。ちょっと疲れてきたね」
曜「休憩しよっか」
花丸「マルはもうへとへとずら……」
善子「わ、私も……」
梨子「そこの二人は特にお疲れみたいね」
果南「さすがにこの暑さだと、ちょっとこたえるかな」
ルビィ「……お姉ちゃん」
ダイヤ「なんですの」
ルビィ「ルビィ、ソフトクリームが食べたいよぉ……」
ダイヤ「は?まだ練習は終わってませんわよ。少し我慢しなさい」
ルビィ「でも、さっきから暑くて……」
梨子「確かに、ルビィちゃんの気持ちも分かるかな」
ダイヤ「そうは申しましても、コンビニまでは少し距離もありますし……」
花丸(き、来た……!この流れずら)
花丸「あ、あの……」
一同「?」
花丸「ぼ、ぼたもちなら……ありますけど」
5: 以下、
善子「ぼたもち……?」
花丸「マル、早起きしてみんなの分を作ってきたずら」
スッ
ルビィ「えっ……」
千歌「あ……」
一同「……」
シーン……
花丸(……え?)
曜「ぼ、ぼたもちかあ」
果南「凄いねマルちゃん。こ、こんなの作れるんだ」
花丸「はい。うちでは昔から、よく家でぼたもちを作って……」
鞠莉「エ、excellent ……」
6: 以下、
千歌「あ、ありがと花丸ちゃん。でも、今はいいかな……?」
花丸「そ、そうずらか……?」
梨子「う、うん。また後でいただこうかな」
花丸「……ルビィちゃんはどうずら?」
ルビィ「ルビィも後で……」
ダイヤ「お、お気持ちは嬉しいのですけど」
曜「さ、さあさあ、休憩もそろそろ終わりにしよっか!」
花丸「え?でも、いま休憩し始めたところ……」
千歌「花丸ちゃんと善子ちゃんはまだ休んでてよ。かなり疲れてるようだし」
果南「じゃ、私達だけでランニングでもしてこようか」
ダイヤ「そ、そうですわ。それがいいですわ」
曜「じゃあ、そういうことで……!」
ソソクサー
7: 以下、
善子「あ……」
花丸「行っちゃったずら……」
善子「まったく、何だというのかしら」
花丸「……しょうがないずら。二人になっちゃったけど、一緒にぼたもちを……」
善子「え?あ、え、えーっと……」
キョドキョド
花丸「?どうしたの、善子ちゃん。今ならきな粉もこし餡も選び放題だよ」
善子「わ、私はその」
花丸「遠慮はいらないずら」
ズイッ
善子「む、向こうで食べてくるわ」
花丸「え?」
善子「ちょっと、一人きりになりたい気分だし。じゃ、これを頂くわね」
ムンズ
善子「じゃ、じゃあそういうことで」
ソソクサー
花丸「善子ちゃんも行っちゃった……」
ポツーン……
花丸「……」
花丸「どうも様子がおかしいずらね」
花丸「それにしても、ここは暑いずら……」
花丸「向こうの岩陰で休もうかな」
8: 以下、
※※※
花丸「はぁ」
花丸「何だか、思ったほど喜んでもらえなかったずら……」
花丸「心なしか、みんなの笑顔が引きつってたような気も」
花丸「タイミングが悪かったのかなぁ」
花丸「……」
ガヤガヤ
花丸(あれ?みんな戻ってきたみたい)
果南「……ふぅ。一周したくらいじゃ物足りないね」
曜「私もまだまだ行けるかな。みんなはどう?」
ルビィ「ルビィも頑張ルビィ……」
千歌「じゃ、もうちょっと走ろうか」
ダイヤ「そうですわね。それはそうと、花丸さんと善子さんはどこへ行ったのかしら」
鞠莉「そう言えば、姿が見当たりマセンね」
果南「どこかで休憩してるのかな?」
ルビィ「涼しいところで休んでるのかも」
一同「……」
千歌「……いやー、それにしてもビックリしたよね」
梨子「え?」
千歌「花丸ちゃんのぼたもちのことだよ」
9: 以下、
梨子「ああ、そうだね……」
曜「まさか、ぼたもちを持ってくるなんて」
花丸(……?)
ダイヤ「花丸さんにあのような特技があったことには驚きましたが」
千歌「……あれはちょっと食べられないよね」
花丸(……!)
鞠莉「ルビィがsoft creamを食べたいって言ったから、出してきたのかな?」
ダイヤ「まったく。あなたがいけないのですよ、ルビィ。突然あんなことを……」
ルビィ「だってぇ……」
千歌「まあ、アイスとかかき氷とかならね。でも、ぼたもちは……」
梨子「ちょっと無理だよね」
曜「私もキツいよ」
果南「さすがにあれはね……」
花丸(……!!)
10: 以下、
千歌「……じゃ、二人もいないことだし、もう二周くらいしてこよう!」
曜「ヨーソロー!」
ダイヤ「さあ。行きますわよ、ルビィ」
ルビィ「が、頑張ルビィ……」
タッタッタ
花丸(……)
花丸(ショックずら……)
花丸(……みんな、あんなに嫌だったなんて)
花丸(オラ、きっと喜んでもらえるものだとばかり)
花丸(こんなことになるなんて、思いもしなかったずら……)
花丸(……)
花丸(貰ってくれたのは、善子ちゃんだけ)
花丸(……そう言えば、善子ちゃんはどこへ行ったずら?戻ってこないけど)
花丸(確か、向こうの岩場の方へ……)
11: 以下、
?岩場。
花丸(……ここにも見当たらないずら)
キョロキョロ
花丸(おかしいなぁ。どこかですれ違ったのかな)
花丸(……あれ?)
花丸(何だろう?黒っぽいカタマリが地面に落ちてるずら)
花丸(善子ちゃんの落し物かも知れないずら。拾ってあげないと……)
花丸(……!?)
花丸(こ、これは……)
花丸(ぼ、ぼたもち?オラの作ったぼたもちずら……!)
花丸(ど、どうしてこんな所に……)
花丸(……!)
花丸(ま、まさか善子ちゃんも、オラのぼたもちを食べるのが嫌で、それで……)
花丸(今思えば、オラの目の前で食べるのを嫌がっていたのも不自然ずら)
花丸(そんな……そんな……)
花丸(オラ、善子ちゃんに一番食べて欲しかったのに)
花丸(酷いずら……あんまりずら)
12: 以下、
?5分後。浜辺。
善子(ずら丸は……どこかへ行ったようね)
善子(と、とにかく平静を装わなくては)
花丸「……善子ちゃん」
善子「ひっ?」
ビクッ
花丸「どこへ行ってたずら……?」
善子「ず、ずら丸、いつの間に……?ビックリさせないでよ!」
花丸「ぼたもちは……美味しかったずら?」
善子「え?え、ええ、まあ。そうね、なかなか美味しかった、かも……」
花丸「……どう美味しかったずら」
善子「ど、どうって……まったりとして、それでいて甘過ぎず……しつこ過ぎず……みたいな……?」
花丸「ウソつき」
善子「へ?」
花丸「ウソつきずら。善子ちゃんは大ウソつきずら!」
ボロボロ
13: 以下、
善子「!!ど、どうしたのよずら丸?私がいったい何をしたと……」
花丸「……向こうで見てしまったずら」
善子「み、見たってまさか」
花丸「マルのぼたもちが投げ捨てられていたずら。あんまりずら……」
善子「!!あ、あれは違うのよ。あれは、その」
花丸「もういいずら!!」
善子「っ……!!」
花丸「……もういいずら。悪いのは全部、ひとりよがりで舞い上がってたオラの方なんだから……」
フラ……
善子「ず、ずら丸……?」
花丸「別に、善子ちゃんだけじゃないずら。マル、さっき聞いちゃったんだ……みんなが、あんなぼたもちなんか食べられないって言ってるのを」
善子「え?Aqoursのみんながそんなことを……?」
花丸「考えてみれば当たり前ずら。こんなに暑いのに……ぼたもちよりアイスの方が食べたいに決まってるずら。それなのに、オラ、何も考えずに……」
善子「ず、ずら丸、あのね……」
花丸「全部マルが悪いんだ。だから……よいしょ」
善子「……?どうするつもりよ、そのクーラーボックス……?」
花丸「捨てて来るずら」
14: 以下、
善子「え!?」
花丸「ここに置いとくと、戻ってきたみんなが気まずい思いをするから……だから、全部捨ててしまった方がいいずら」
善子「待ちなさい!駄目よ、そんなこと」
ガシッ
花丸「善子ちゃん、離すずら……!」
善子「いいからよこしなさい!」
ガッ
花丸「あっ……」
善子「……」
ダダッ
花丸「善子ちゃ……」
花丸「……行っちゃったずら」
花丸「クーラーボックスごと持って行っちゃったけど、どうするつもりなんだろう……」
15: 以下、
花丸(……)
花丸(戻ってこない……)
花丸(相変わらず、善子ちゃんは何を考えてるか分からないずら)
花丸(でも)
花丸(……オラの方は、善子ちゃんにどう思われてるのかなぁ)
花丸(思えば、幼稚園の時以来、10年くらい会っていなかった)
花丸(オラはあの時と同じ距離感で、善子ちゃんと接していたけど)
花丸(本当は嫌がられていたのかも知れないずら)
花丸(そんなオラの独りよがりの象徴が、あの捨てられたぼたもち……)
花丸(そう思うと、言い尽くせないほどやるせないずら。悲しいずら……)
16: 以下、
ガヤガヤ
千歌「いやー、よく走ったね」
ルビィ「つかれたよぉ……」
果南「お腹がぺこぺこだね」
花丸(!みんなが戻ってきたずら)
鞠莉「あれ、マル一人ですか?善子ちゃんは……」
花丸「……どこかへ行っちゃったずら」
ダイヤ「全く、しようがありませんわね」
曜「そんなことより、お腹がすいたよ!」
梨子「あれ?そう言えば、クーラーボックスは……」
花丸「それも、善子ちゃんが持って行ってしまったずら」
千歌「え?」
果南「どういうこと……?」
花丸「それは、マルにもよく……」
ルビィ「あっ、善子ちゃん戻ってきたよ」
17: 以下、
ダイヤ「……?何やら、足取りが重いですわね」
善子「……」
千歌「どうしたの善子ちゃん?なんだか歩き方がおかしいよ」
善子「別に……」
ゲプッ
曜「それはそうと、そのクーラーボックスって花丸ちゃんが持ってきたやつだよね?」
善子「そうだけど……ウップ」
千歌「じゃあ、早くこっちへ」
善子「いいけど……中身はもうないわよ」
果南「え?」
ダイヤ「は?」
善子「私が、全部食べてしまったから、中身は空……」
ゲプッ
18: 以下、
花丸「……!」
鞠莉「What?」
曜「ぜ、全部……?」
善子「ええ、そうよ。何か文句ある……?」
果南「も、文句って……」
ルビィ「ひどいよ善子ちゃん。ルビィたちも楽しみにしてたのに……」
花丸「え……?」
ダイヤ「非常識にもほどがありますわ。せっかく花丸さんが私たちみんなに作ってきて下さったものを、独り占めなどと……」
千歌「ひどすぎるよ、善子ちゃん」
善子「え?でも……」
花丸「そ、そうずら。みんな、ぼたもちなんか食べたくないって、さっき」
曜「え?」
19: 以下、
花丸「マル、聞いちゃったずら。あんなぼたもち、とても食べられないって……」
鞠莉「Oh……」
梨子「……そっか。あれを聞かれちゃったんだ」
花丸「ちょっとショックだったけど……でも、何も考えずに持ってきたマルも悪いずら。だから、みんな気を使ってもらう必要は……」
曜「千歌ちゃん。これはもう素直に白状するしかないよ」
千歌「……そうだね」
善子「白状?」
ルビィ「あのね、花丸ちゃん、善子ちゃん。実は……」
20: 以下、
※※※
花丸「ケーキ食べ放題……?」
ダイヤ「実は、私たち7人は待ち合わせ場所に早く着きすぎてしまいまして……」
千歌「花丸ちゃんと善子ちゃんが来るまでの間、どこかで時間を潰そうと思ってたらさ」
梨子「ちょうど近くのカフェでケーキの食べ放題をやっていて」
果南「それで、つい……ね」
善子「朝からケーキ食べ放題って……何て強欲な」
千歌「えへへ」
ルビィ「でも、さすがにお腹がいっぱいになっちゃって……そこにマルちゃんがぼたもちを」
果南「とてもじゃないけど、今これは食べられないなって」
鞠莉「それで、お腹をすかせようと、私達だけでrunningしてきたんです」
花丸「そ、そうだったずら……でも、それならそうと言ってくれれば」
曜「いやあ、花丸ちゃんと善子ちゃん抜きで食べ放題に行ったもんだから、何だか後ろめたくて」
善子「どうりで、私達が遅刻しても怒らなかった訳ね……」
千歌「ごめんごめん」
21: 以下、
ダイヤ「それはそうと。これはどういうことですの、善子さん」
善子「え……」
ダイヤ「私たちは、浜辺を三周ほど走ってきて、程よくお腹が空いてきた頃合い……花丸さんのぼたもちを楽しみにここまで戻ってきたのですわ。それなのに、あなたときたら……」
曜「そうだよ。私たちも悪かったかも知れないけど、全部一人で食べちゃうなんて……」
花丸「そ、そうずら。善子ちゃん、どうしてそんな……」
善子「……アンタが短気を起こして、全部捨てちゃうなんて言うからでしょ、ずら丸。もったいないじゃないの」
花丸「で、でも、オラのぼたもちなんて食べたくなかったんじゃ」
善子「別にそういうワケじゃ……」
花丸「じゃあ、どうして投げ捨てたりしたずら……?それに、食べてないのに食べたなんてウソを……」
ダイヤ「まあ、そんなことをしたんですの?」
善子「だから、それは誤解よっ……!」
22: 以下、
ルビィ「誤解?」
善子「あれはただ、手が滑っただけだってば……食べようとしたところに急に鳥が飛んできて、それでびっくりして……」
曜「ああ、善子ちゃんならありそうだね。そういう事」
善子「よ、余計なことは言わなくていいから」
ダイヤ「でも、それなら正直にそう言えばよかったのではありませんこと?」
善子「……だって、悪いじゃない。せっかく作ってきてくれたものを落っことじたなんて」
花丸「ほ、本当に……?マルのぼたもちが食べたくないわけじゃなかったずら……?」
善子「……だ、だったら全部食べたりしないでしょっ」
花丸「善子ちゃん……」
鞠莉「何だかよく分からないけど、とりあえず誤解は解けたようデスね」
ルビィ「それにしても、けっこうたくさんあったと思うけど、あれを全部食べちゃうなんて……」
果南「よほど美味しかったのかな?」
花丸「……」
23: 以下、
善子「ま、まあまあといったところね。あらゆる愉悦を知り尽くしたこのヨハネの舌には、少しばかり刺激が足りなかったけれど」
花丸「マズくはなかったずら……?」
善子「だ、だから、まあまあだって言ってるでしょ……」
花丸「良かった……!」
ホッ
善子「な、何よ。嬉しそうに」
花丸「だって、善子ちゃんに一番喜んで欲しかったから」
善子「っ……!」
花丸「まだマル達が小っちゃかった頃、うちのお寺でよく一緒にぼたもちを食べたずら。きっと、善子ちゃんは忘れちゃったと思うけど……」
善子「……当たり前でしょ。そんなの、覚えてるワケないじゃない」
花丸「だよね」
善子「……」
24: 以下、
花丸「もちろん、Aqoursのみんなにも食べて貰いたかったけど、また今度作ってくるずら」
善子「……全く。覚えてないのは誰の方よ」
ボソッ
花丸「え?」
善子「な、何でもないわよっ」
曜「?」
果南「とにかく。次に作ってきてくれる時は、ちゃんとお腹を空かせて待ってるから」
ダイヤ「楽しみにしておりますわ」
千歌「?それはそうと、お腹が空いてるよぅ……」
鞠莉「じゃあ、何か食べに行きましょうか」
果南「賛成!」
曜「あ、ごめん。今日はちょっと早く帰らなきゃいけないから、私はやめとくね」
千歌「え?そうなんだ」
花丸「善子ちゃんはどうするずら……?」
善子「わ、私ももう食べられないから……」
ゲプッ
曜「じゃ、私たち二人はお先に失礼するであります!」
千歌「お疲れー」
25: 以下、
-30分後。
千歌「いやー、それにしても今日は疲れたよ?」
果南「いつも以上に走り込んだからね」
梨子「それはそうと、今日はゴメンね。せっかく花丸ちゃんが作ってきてくれたのに」
花丸「!!そんな……オラは全然気にしてないずら。また今度作ってくればいいし……」
ルビィ「楽しみにしてるね」
ダイヤ「それにしても、昔から仲がよろしいのですね。花丸さんと善子さんは」
花丸「……幼稚園の頃は、たくさん遊んだずら。でも、善子ちゃんはあまり覚えてないみたいだけど」
鞠莉「Why?どうしてそう思うの?」
花丸「マルが昔の思い出を話そうとしても、いっつも訳の分からないことを言ってはぐらかすずら。今日だって、子どもの頃一緒にぼたもちを食べたことを覚えてないって言ってたし……」
鞠莉「なるほどね。でも、それは多分、善子がshyなだけだと思うな?」
花丸「シャイ……?」
鞠莉「Yes。マルから見てワケが分からないように見える善子の言動も、彼女なりのテレカクシ、だったりするかもね」
花丸「照れ隠し……そうなのかなぁ?オラにはよくわからないけど……」
花丸(……)
花丸(そう言えば、今日だってよくわからないことだらけずら。オラのぼたもちが嫌じゃなかったんなら、どうして一緒に食べてくれなかったのかなぁ。一人で食べたいとか言って……)
花丸(オラ、善子ちゃんが食べてくれるところを見たかったのに……)
26: 以下、
-同じ頃。バスの中。
曜「-大丈夫?いくらなんでも食べすぎじゃ……」
善子「……平気よ」
ウップ
曜「全然そうは見えないんだけど……それにしても、あれを一人で食べちゃうなんてね」
善子「だってしょうがないじゃない。ずら丸のやつ、みんな捨てるだなんて言い出すから……」
曜「だからって、ね」
善子「……何が言いたいのよ」
曜「ねえ。善子ちゃんと花丸ちゃんって幼馴染なんだよね。幼稚園の頃からの」
善子「別に、腐れ縁というだけよ。ここ何年かはあまり接点もなかったし、まさかこんな形で一緒になるとは思ってもみなかったけど……」
曜「嬉しくないの?」
善子「わ、私は別に……」
曜「本当は覚えてたんでしょ?」
27: 以下、
善子「……は?」
曜「子どもの頃の話。花丸ちゃんに、覚えてないって決めつけられて、ちょっとムッとしてたよね」
善子「……見間違いじゃないの。私は何も」
曜「素直じゃないなあ」
善子「しつこいわねっ……」
曜「まあ、難しいよね。幼馴染って」
善子「……」
曜「ずっと同じ時間を過ごしてきたように思っても、お互いにとって大切な思い出は少しずつ違っていたり。ほんの些細なすれ違いで、すごく寂しく感じちゃったり」
善子「……誰の話してるのよ」
曜「……別に。一般論、かな」
善子「思い出が同じじゃないって……そんなの、当たり前じゃない。しょせんは別々の人間なんだもの」
曜「そうなんだけどさ。それってやっぱり、寂しいなって」
アナウンス「-次は上土?、上土。お降りになる方は……」
善子「……バスが着いたわよ」
曜「うん……」
28: 以下、
-バス停。
曜「じゃ。また明日ね」
善子「そうね。さよなら」
善子「……」
善子(素直じゃない、か……)
善子(別にそういうわけじゃないんだけど、何だか気恥ずかしかったのよね)
善子(……だって、私は何もかも覚えてるんだもの)
善子(あの日、ずら丸のお祖母ちゃんが作ったぼたもちを食べた後)
善子(いつか大きくなったら、お祖母ちゃんより美味しいぼたもちを作って、私に食べさせてくれるって……そうずら丸が言ったのを)
善子(そして私がこう言ったのを。約束だよって……ずっと覚えてるからねって)
善子(そんなことを思い出しながら食べたら、きっとしんみりするに決まってる……それをずら丸に見られたくなかったから、一人になっただけなんだけど)
善子(今にして思えば、一緒に食べてあげればよかったなぁ……)
ブルルル……
善子(……?ずら丸からのメールだわ)
-さっきはごめんね。マル、やっぱり善子ちゃんのことを分かってなかったみたい。でも、いま思い出したんだ……だから、今日の埋め合わせは必ずするね
花丸
善子(思い出したって……やっぱり、私の様子がおかしかったことに気づかれちゃったのかな?)
善子(別に謝ってくれなくてもいいのに……)
29: 以下、
-翌日。部室。
花丸「善子ちゃん。昨日は悪かったずら」
善子「な、何がどうしたって言うのよ。私は別に」
花丸「ううん、謝らせて欲しいずら。オラは善子ちゃんのことを何も分かってなかったって言うのに、善子ちゃんはぼたもちを残さず食べてくれて……」
善子「……」
花丸「だから……作り直してきたずら」
スッ
善子「!?またぼたもち……?」
花丸「ぜひ善子ちゃんに食べて欲しいんだ」
善子「そ、そんなに言うなら頂くけれど」
パク
善子「!??こ、これは……?」
花丸「気に入ってもらえたずら?」
善子「な、何が入ってるのよ?」
花丸「タバスコを入れてみたずら」
善子「タバ……スコ?」
30: 以下、
花丸「オラ、すっかり忘れてた。善子ちゃんの味覚が人と変わっているのを……だから、きっと昨日のぼたもちは口に合わなかったと思うんだ。でも、今日こそ喜んで貰えるはずずら」
善子「いや、これはさすがに……」
花丸「こっちにもまだたくさんあるずら」
善子「それも全部タバスコ入り?」
花丸「もちろん!」
善子「きょ、今日は本当に遠慮させて貰うわ。餡子とタバスコはいくらなんでも」
花丸「またまた。鞠莉さんも言ってたずらよ。善子ちゃんのそういうのは照れ隠しだって」
善子「いや、これは」
花丸「遠慮はいらないずら!」
ズイッ
善子「や、やめ……」
善子(ずら丸って、やっぱりズレてるわ……!何が思い出したよ。全然的外れじゃないの)
善子「本当にこれはムリ……」
花丸「……なんてね」
31: 以下、
善子「え?」
花丸「冗談ずら。これは普通のぼたもちだよ」
善子「冗談……?」
花丸「うん、冗談。……と言うか、お仕置きかな」
善子「何よ、お仕置きって」
花丸「昨日、善子ちゃんはウソをついたから。子どもの頃のことなんて覚えてないって」
善子「……!」
花丸「本当は覚えてるずら?」
善子「だ、だったらあんたの方こそお仕置きよ、ずら丸。だって、私との約束を……」
花丸「うん。だから、謝らせて欲しいんだ」
32: 以下、
善子「!!ずら丸……」
花丸「オラ、すっかり忘れてた。あの日、善子ちゃんと約束したことを……昨日、みんなと別れてからやっと思い出したずら。だから……」
善子「も、もういいから」
花丸「でも……」
善子「私も、ずら丸にちゃんと言わなかったわけだし。そ、そんなことより」
スッ
花丸「え?」
善子「そっちのぼたもちは、ちゃんと作ったやつなんでしょう?」
花丸「あ……うん。そうだけど」
善子「だったら……今から約束を果たしましょう」
花丸「!……うん!」
善子「屋上は……空いてるかしら」
花丸「天気もいいし、きっと風も気持ちいいずらよ」
善子「そうね。まるで-」
善丸「-二人で約束した、あの日みたいに」
33: 以下、

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