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曜「真っ暗な海の底へ」


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小さいときはいつも泣いてばかりで、千歌ちゃんになぐさめてもらってたっけ。
ぎゅっと私を抱きしめ、暖かな言葉をかけてくれる彼女を、私はいつからか好きになっていた。
「渡辺さん、次ラストね」
「あ、はい!ありがとうございます」
2:
…もったいないことをしてしまった。
大会まであまり時間がないのに、何をやっているんだろう。
集中しよう。目を閉じて、大きく深呼吸。
甲高いホイッスルの音を聞き、水面に向かって飛び込む。
大きなしぶきをあげて勢いよく泳ぎ出す。
あとはもうなんにも考えずに泳ぐだけ。
周りの音が遮断されて、暗闇に引きずり込まれていくようなこの感覚が、私のお気に入りだった。
3:
「うん、いいタイムだね。これなら次の大会もばっちり!」
「本当?よかった!じゃあ、あがるね。お疲れ様です!」
チームメイトたちへの返事もそこそこに、私はシャワー室へと向かった。
カーテンを閉めて栓を捻る。
ムワッと広がる湯気が私を包んでくれる。
4:
力なく床にへたれこんですすり泣く。
これが、私の日常になっていた。
ひとしきり泣いて気分が落ち着いたら、今度はゆっくりとお湯を浴びる。
すっかり冷えてしまった体に生気が戻るような気がして、とても心地よかった。
今日はこれからAqoursの練習に行って、みんなの衣装を進めて…それから、数学の課題も出てたっけ。
……うん。大丈夫。私はできる。
小さく呟いて、シャワー室を出た。
5:
部室前に着いて、中に入る前に大きく深呼吸。
今日も元気で明るい渡辺曜を演じよう。それをみんなが望んでいるから。私がそうありたいから。
「みんな、おはヨーソロー!」
「おはよう、曜ちゃん」
「あ、髪の毛濡れてるよ?」
「水泳部の方行ってたんだ!」
7:
「ずいぶんと多忙なのね…」
「いーのいーの!私が好きでやってることなんだし!」
「無理のしすぎはギルティよ?」
「わかってるって!」
大丈夫。今日もいつもの私だ。
きっと、誰にもバレることはない。
バレるわけにはいかない。
こんな弱い私、誰にも見せることなんて出来ないよ。情けない。情けないけど、仕方がない。
8:
みんなに当たり障りのない返事を返していると、視線に気付いた。
私の大事な幼なじみである、千歌ちゃんのものだった。
「千歌ちゃん、どうしたの?」
「……あのさ」
やけにもったいぶった言い方で、なにか悩みでもあるのかな、なんて考えていると、予想とはまったく違う言葉が返ってきた。
9:
「曜ちゃん、疲れてる?」
「えー、疲れてないよ?ほら、元気っ!」
その場で大きくジャンプをして元気だということをアピールする。…ちょっとわざとらしかったかな。
優しい千歌ちゃんのことだから、忙しい私に気を遣って言ってくれてるんだろうけど…。
「そっかぁ」
10:
真剣な顔が一気にいつもの笑顔に戻り、少し背筋が寒くなった。
きっと、誤魔化しきれてないよね。
ここで、千歌ちゃんの腕を掴んで、助けて…って言えば、助けてくれたかな。そんなこと、言えもしないけど。
「ほら、千歌ちゃん。練習行こ?」
11:
「うん、行こっか!」
「ヨーソロー!」
……これで、いいんだよ。
だって私は、かっこよくいなきゃ。
今までちゃんとやれてたんだから、大丈夫。私はできる。
すっかり体に染み付いたその呪いの言葉を誰にも聞こえないくらいの声量で、そっと呟いた。
12:
「はい、そこまで!」
「みんなお疲れ様。明日はお休みだからしっかり休養取るんだよ?」
…あ。明日、休みだったんだ。
よかった。多少楽になるなぁ。
次のライブ用にも少し考えておいた方がいいかな…ストックがあるのとないのじゃ、全然違うよね。
13:
「曜ちゃん!」
「…千歌ちゃん?」
「もう。何回も呼んでたのに」
「え、嘘…ごめんね」
「考え事?」
「うん、まぁそんなとこ」
「ふふーん、なにか悩み事があるならこのちかちーが「大丈夫」
「食い気味だなぁ…」
14:
「ほんとに悩みなんかないって!…でも、ありがとね」
千歌ちゃんに向かって頬笑む。
やっぱり、心配させちゃってたんだ。
反省。
「…じゃあ、帰ろ?」
「うん、そうだね」
「梨子ちゃーん!」
「…あ」
15:
Aqoursの活動が始まってからいつも梨子ちゃんと三人。
別に、梨子ちゃんが嫌いなわけじゃない。いい子なのはよくわかってる。
……でも、やっぱりずるいって思っちゃうよ。なにも、ないくせに。
……私、今すごく最低なことを考えてた。梨子ちゃんはなにも悪くないし、才能だって、持ってる。それはわかってる。わかってる、けど…。
16:
「それでねー…って、曜ちゃん聞いてる?」
「き、聞いてる!聞いてるよ…果南ちゃんが寝ぼけて朝方にワカメを取ってた話でしょ?」
「そんな話してないよ!」
「ちょっと気になるかも…」
「そうじゃなくて!新曲のイメージをちょっと変えたいね、って話だよ」
「…イメージ?」
17:
「うん。今までは人魚のイメージだったでしょ?でもそこを――」
今から変更かぁ…うーん、もう結構進んでるからちょっと厳しいかも。
でも、幸い明日はお休みだし、なんとかなるよね。
「オッケー!了解であります!」
「ごめんね?いきなり…無理なら無理って言っていいんだよ…?」
18:
「だいじょーぶだって!まだ迷ってたところだったからからさ」
「って、もう二人とも降りるとこじゃない?」
「あぁ、うん。千歌ちゃん行こっか」
「……私今日沼津に用事あるから」
「じゃあ私は帰るね。バイバイ!」
19:
しばらく沈黙が続いた。
普段はあまり気にならないんだけど、なんだか気まずくて、なにか話題はないか必死で探してた。
そしたら、千歌ちゃんの方から声をかけてくれた。
「…私ね、本当は今日用事なんてないんだ」
「え?じゃあ、なんで…」
諦めていたはずなのに、少しだけ期待してしまう。
私と一緒にいたいから。って千歌ちゃんが言ってくれることを。
…そんな自分の汚らわしい考えに吐き気を覚える。気持ち悪い。
20:
「曜ちゃんってさ、昔から一人で悩みとか、抱え込んじゃうでしょ?だから私、不安で…曜ちゃんがどこか遠くに行っちゃうような気がして、怖かったんだ」
「…私にできることならなんだってする。だから、一人で抱え込まないで助けを求めてよ……仲間、でしょ?」
仲間、か…。
喜ぶべきなんだろうけど、私はいまいち喜べなかった。ほんと、つくづく最低だな…私。
21:
「…千歌ちゃん」
「曜ちゃん…!」
きっと、千歌ちゃんは私を好きになってくれない。ずっとわかってたことなんだけど、今度こそはっきりと、痛いほど伝わった。千歌ちゃんにとって私は仲間。それ以上でもそれ以下でもなかったんだ。
……だから、最低な私はもっと最低になればいい。もう、こんな気持ちを忘れられるように。
22:
「………好きだよ」
「え?」
「私、ずっと千歌ちゃんのこと好きだったの」
「どうしたのさー、曜ちゃん!私も「違うよ」
「千歌ちゃんの好きと私の好きは違うの」
「私の好きは手を繋ぎたいとかキスしたいとか、その先をしたいとか…そういう、好きだよ」
23:
「え…っと……あの…」
あはは…千歌ちゃん困らせちゃった。
そりゃそうだよ。ずっとそばにいた幼なじみにいきなり告白なんてされるんだから。
「なんで、私のこと…だって、私……取り柄なんかなにもない普通星人だよ…?」
「千歌ちゃんは普通星人なんかじゃない…輝いてるよ」
「小さいとき、私すぐ泣いちゃって…その度に千歌ちゃんが抱きしめて、慰めてくれて……それが何より嬉しかったんだよ」
「よ、曜ちゃん…」
24:
「…ごめんね、困らせちゃって。伝えたかっただけだから……返事とか、いいからね」
不器用な笑顔を彼女に向ける。
すると、眉をハの字にして私の眉間を指でツンツンと突いた。
「な、なに…?」
「泣きそうな顔してるくせに、何言ってるの」
「し、してない!」
「してるよ…後悔するならなんで言おうと思ったの?」
25:
「……バス、もう一周してもいい?」
「いいよ」
「…海、見たいな」
「ん……」
「……千歌ちゃん、ごめんね」
「謝られるようなことされてないけど…?」
「迷惑かけて、困らせちゃって、ごめん」
26:
「私は嬉しかったけどね。曜ちゃんの本音、少しだけでも聞けて」
ずるいよ、そんなの。
大好きな人にそんなこと言われて嬉しくないわけないじゃん。
嬉しいよ。嬉しいけど…ずっと、胸の中がモヤモヤしてる。……私は――
「曜ちゃん着いたよ、降りよ」
「…あ、うん」
27:
「内浦の海ってすごい綺麗だよね」
「あ、あのね…千歌ちゃん」
「ん?」
「あ…いや、なんでもない!」
「もう。ここまで来てそれなの?」
千歌ちゃんが肩を力強く掴んで抱き寄せられる。
ちょっと痛いくらいだけど、嬉しかった。
28:
「私じゃ……助けられないの…?」
「……私ね、泳ぐの好きなんだ」
「え…うん……?」
「潜ったときに、周りの音がなんにも聞こえなくて、目を開けてもほとんど何も見えないの」
「その感覚が好きなんだよね」
「潜ってる間だけは…みんなからの期待とかないでしょ?……だからかな」
29:
「……曜ちゃん、やっぱり期待が重荷になってたんだ」
「ん……まぁ、贅沢言うなって怒られちゃうかもだけど…」
「ごめんね、ずっと無理させてて」
「千歌ちゃんのせいじゃないって…」
「曜ちゃんがつらいならやめてもいいんだよ…?」
「それはできないよ!」
つい、大きな声を出してしまった。
やめるわけにはいかない。
だって。だって、さ。
30:
「……なんで、できないの?」
「なんにも残らないよ…」
「…え?」
「なんでもこなしちゃう明るく元気な渡辺曜がいなくなったら……もう、なんにも…」
「からっぽな私なんか…誰も……」
「そんなことない!」
「あるよ!千歌ちゃんになにがわかるの!?」
31:
「たしかに…私は曜ちゃんの気持ち、わからないけど!それでも、曜ちゃんのこと一番に思って……」
「そんなの信じない!」
「なんで!?」
「千歌ちゃんの一番は梨子ちゃんでしょ!?私なんかいらないんだ!」
32:
その瞬間、千歌ちゃんの顔がひきつるのがよくわかった。
私、大切な人を傷つけて…何やってるんだろ。そんな顔、しないでよ。
最低。本当に、こんな私…死んじゃえばいいのに……。
耐えきれなくなって、彼女を突き飛ばして逃げるように走り去った。
後ろから私を呼ぶ声が聞こえたけれど、振り向くことはできなかった。
44:
バスに乗る気分にもなれなくて、そのまま家まで走って帰った。
いくら毎日鍛えてるとはいえ、さすがにキツかった。
よかった。今日はママ、いないんだよね。すすり泣く必要もないんだ。
……玄関を閉めたら安心したのか、それとも限界が来たのか。そんなのどっちでもいいけど、体から一気に力が抜けて立っていられなくなった。
あぁ……もう、何も考えたくない。
このまま溶けてしまいたい。
そこで、私の意識は途切れた。
45:
気がつくと私はさっきまで千歌ちゃんといた海にいた。
夢を見てるんだってすぐにわかった。
何故なら、海の中にいるのは紛れもない、私の後ろ姿だったから。
ひざの辺りまで水に浸かった私は、とくに何をするでもなくただ、一点を見つめていた。
ゆっくりと、水位が上がっていくのを見てることしかできなくて。少しずつ水に沈んでいく自分を眺めるだけだった。私は――
46:
「……私、寝てたんだ」
あれ?私、確か玄関で…。
なのに、なんでベッドに?
……寝起きだから頭がうまく回らない。
寝汗もすごいし…シャワー、浴びようかな。
重い体を無理やり起こして、ノブに手をかける。私が回すより先に、ノブが回った。
ドアの先にいたのは――大好きな、千歌ちゃんだった。
「千歌ちゃん…なんで……」
47:
「……ごめん。勝手に入っちゃった。玄関、開いてたし」
「だって、私……千歌ちゃんに、ひどいこと…」
「さっきも言ったでしょ?曜ちゃんの本音聞けて嬉しかった、って」
「醜い私……知られたく、なかったのに。あんなこと言うつもり、なかったのに」
もう、口から出る言葉を止めることはできなかった。今まで押さえ付けていた感情が溢れ出して止まらない。
48:
「私は頑張って、努力して…千歌ちゃんの隣にいるために、いろんなことで一番になって、かっこよくいよう、って…」
「なのに……梨子ちゃんが千歌ちゃんの家の隣に引っ越して来て…私の居場所がなくなったみたいで…」
「ずっと、嫉妬してた…なにもしてないくせに、ずるいって」
「私の方が……ずるくて、汚い…のに…っ」
49:
「私以外を…見てほしくない、って……」
「……ごめん。それは無理だよ…」
「わかってる…こんなの私のエゴだから」
「……千歌ちゃん、今何時?」
「今?20時過ぎかな」
「終バス終わってるね」
「そだね…だからさ、今日泊まってもいい?」
50:
その言葉にひどくイラついた。
わかってないの?私は千歌ちゃんのこと汚らわしい目で見てる、って。襲われるかもしれないとか、考えないの?
「……本気で言ってる?」
「うん。だめ?」
もう今の私に理性なんて残ってなかった。本能のまま、千歌ちゃんを押し倒す。
「私、こういうことするかもしれないよ」
「…曜ちゃん」
51:
この後のことなんかどうだっていい。
むしろここで千歌ちゃんに拒絶されて、嫌われたかった。…まぁ、受け入れられるなんて考えは最初からないんだけど。
「よ、ちゃ…」
やっぱり。すごく怯えたような顔してる。よかった。拒んでくれて…。
「なんてね、ほら…自転車出すからさ、後ろ乗りなよ」
「ま、待って…!」
52:
千歌ちゃんはなにか言いたいみたいだったけど、これ以上は私の決意が鈍ってしまいそうだったから、聞こえないフリをした。
「曜、ちゃん…疲れてるでしょ?千歌がいるのが嫌ならひとりで帰れるから……」
「やめて」
「あ…ごめ……っでも、でもね」
53:
私……千歌ちゃんにこんな顔させたかったはずじゃないのに。大好きなはずなのに…今は正直、顔も見たくない。すごく自分勝手で…どこまでも最低な女なんだな、私って。
「……ごめん。自転車…貸すから」
「あ…うん。ありがと……明日、返しにいくから」
「…うん。じゃあね」
「……バイバイ」
54:
結局、顔を見ないまま帰らせた。
…これで、よかったんだよね。
もうこれ以上は耐えきれない。もう、私は頑張れない。
ごめんね、千歌ちゃん。最後まで私のワガママで…。
……まだ早いけど、歩いていけば結構遅い時間になりそうだね。
はぁ。こんな終わり方かぁ。
今さら何言ったって仕方ないんだけど。
足、重いけど……行こう。
千歌ちゃんはちゃんと家に帰れたかな。…確認する手段なんかないけど。
55:
今度は先に回らないノブに手をかけてドアを開ける。
ひどく重く感じた。
適当な靴を選んで外に出る。
さすがに、この時間は肌寒いね。
肌を刺す冷えた空気が気持ちいい。
ゆっくり、ゆっくり背景を目に焼き付けながら歩いていく。
このお店ではこんなもの買ったなあ、とかこの公園でよく遊んだなあ、とか。
56:
私の記憶にはどれも千歌ちゃんが一緒にいた。
それほど、私にとって千歌ちゃんは大きな存在だったんだ。
だからこその結果、なのかな。
後悔はもうない。躊躇もきっと、ない。あとは少し勇気を出すだけ。
……大丈夫。私はできる。
もう何度呟いたかわからないその言葉を小さく呟く。きっとこれが最後になるから。
58:
私がその場所に着いたのは、もうそろそろ日付が変わる頃だった。
ゆっくり歩いたせいか、あまり疲れはない。
大きな満月がとても綺麗で、最後に見るにはふさわしい景色だな、と思う。
飛込みの選手である私らしい最後。
さぁ。一世一代の飛込みをしよう。
大きく勢いをつけて―私の得意技。
前逆宙返り3回半抱え型!
きっと今までで一番うまくできた。
観客は、誰もいないけど。
入水してから、そのまま私は体の力を抜いた。
不思議と怖くはなかった。
大好きな海の中だからかな?
むしろ―――
59:

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