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【閲覧注意】死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?『絶対に入ってはいけない辻』
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7:
ナビの導く道
1/6
あれはもう三年くらい前になるかな。
俺と彼女で伊豆に泊まりで遊びに行ったときの話だ。
天気も良く西湘をドライブしながら伊豆方面へと向かった。
途中までは快適に進んだんだが、熱海を過ぎた頃からナビが
おかしくなっちまった。一応、目的地をインプットしてあったん
だが、グルグルと画面が回転している状態が続いた。
おかしいなぁ、壊れたか?
海沿いじゃなくて山越えルートにしたのは失敗だったか。
周りも何もなくひたすら1本の山道が続いているだけだった。
平日のせいか、対向車も後続車もない。
仕方が無いのでマップルを引っ張り出して、彼女にサポート
してもらう。俺も山越えルートは初めてだったんで道がよく
わからない。ゆっくり出てきたのでそろそろ夕方だ。あたりも暗くなりつつある。
まいったな、これじゃ時間通りに宿に着かないな。
携帯を見ると思いっきり圏外だ。。。
それでもひたすら山道を進むとYの字に分かれていた。
困ったことに標識が無い。路肩に車を止め、どっちだ?と二人
で問答。ナビの現在地は八王子を指している。。。(アホナビ!)
仕方が無いので右へ進むことにした。
これがすべての間違いだった。
58:
2/6
あたりはすっかり暗くなり車のライトなしでは本当の闇だ。
当然ながら街灯もない。しばらく進むと車がガタガタと揺れ始
めた。あれ?この道って舗装してないのか?今どき?
しばらくの間、緩やかな下り坂をガタガタと進んで行くと今度
は三叉路に出た。標識というか、随分古い感じの案内板が立っ
ていたが字が消えかかっててよく見えない。。。
どうする?
どうしよう・・・戻る?
ここでもしばらく問答。と、その時、目の前を1台の車が横切
った。その車は三叉路を右から左の道へと受け流すように進ん
で行った。久しぶりに自分達以外の車に出会った嬉しさからか、
俺らも勢いで左の道へ急発進した。きっとあの車に着いて行け
ば街まで出られる!勝手にそう思い込んで、前をゆく車を見失わないように進んだ。
しかし前の車、異常にい。どこかの豆腐店並みだ。どんな車
なのかとよく見る。白いセダンだがどこのメーカーか不明だ。
よほど足回りをいじってあるのか?色々と考えていると彼女が変なことを言い始めた。
ねぇ、あれって・・・どこのナンバー?
ん?ナンバー?ナンバーがどした?・・・
59:
3/6
確かにナンバープレートはあった。そして数字も書いてある。
しばらく見ていて何やら違和感を覚えた。ナンバーは問題ない
のだが、陸運局の地名?が見たこともない名前だったんだ。
何やら昔の略していない複雑な漢字3文字だ。3文字とも難しくて読めなかった。
あんな地名あったか?九州のほうかな?
えー・・・あんな名前聞いたことないじょ・・・
(翳欝嚢 ←こんなイメージ・・・)
そんな事を考えていたせいか、気がついたら前の車が見えなく
なっていた。あれ?どこかに曲がる道でもあったのかな?
キツネにつつまれたような奇妙な感じだったが、目印となる
車がいなくなってしまい、再び不安感がこみ上げてきた。
もはや先に進んでいいのか戻ったほうがいいのか、俺達には
わからなくなっていた。ナビは所沢を指していた。。。
と、遥か先に明かりが見えた。
やった、街だ!やっぱこの道で正解だったべ?
この時ばかりはホッと安心し二人で喜んだ。そして車を進める
と、さっき見えた明かりは民宿?の灯りだったことがわかった。
俺達は道を聞くために車を止め、二人で降りて民宿の中に入った。
中には親切そうなおばちゃんがいて、抜ける道を教えてくれた。
60:
4/6
お礼を言い、車に乗り込むと何か聞こえる。
ん?何だ?どこからか音楽が聞こえね? え、あ、ホントだ・・・
よく見ると民宿の隣に建ってる家?から聞こえてきているようだ
った。あれじゃ近所迷惑だな、とか言いながら民宿を後にした。
でもさー、あの民宿、すごく臭くなかった?
え?そうだった?俺、全然気がつかなかったわ。
アンタ、蓄膿だからね・・・なんか生臭かったよー魚みたいな。
そっかー、客用の仕込み中だったのかな?
その時だった。
目の前を何かが横切った。咄嗟に急ブレーキ。
鹿か?馬か?ヘッドライトに照らされて一瞬見えたような気が
するがハッキリとわからなかった。しかし白い何かだというの
は見えた。そして冷や汗をかいてる俺に彼女が言った。
ねぇ・・・ねぇ・・・あれ見て・・・
ん?何?どした?
彼女の指差す前方をよく見た。急ブレーキで立ち込めた土煙が
引き、視界が徐々に開けてきた。
あ・・・・
61:
5/6
言葉が出なかった。
目の前には大きな岩がいくつも転がっていた。きっと落石?が
あったんだと思う。でもさっきまでそんなものは見えなかった。
山道とはいえ、ここは直線に近かったから見えないはずがない。
きっとあのまま直進していたら、岩に突っ込んで。。。
しばらく彼女と口をあけてポカーン・・・
その時、車の後ろに人の気配がした。
バックミラーを見ると一瞬、白い人影?が見えたような気がした。
こりゃいかんってことで、すぐにもと来た道を引き返した。二人
ともさすがに只事ではないということを感じていた。もうどうして
いいかのさえ分からなかった。
恐怖に引きつりながら進むと、さっきの民宿の灯りが見えた。
助かった、とりあえずあそこに逃げ込もう!あまりの恐怖で髪が
全部白くなってんじゃないかと思うくらいだった。そして民宿の前で車を止めた。
そんな・・・あほな・・・
62:
6/6
そこは民宿じゃなくて俺達が泊まるはずのペンションだった。
よく見ると周囲には普通に民家がある。人の気配も普通にするし
車も普通に走っている。もちろん普通のナンバーの車だ。
しばらく彼女と無言でポカーンとしているとペンションの中から
従業員が出てきて誘導してくれた。当然、その夜は気持ちの整理
が着かずに二人とも楽しめなかった。
今では彼女と、あの時は狐に化かされたのかな?と言って笑い話になっている。
おしまい。
67:
>>62
なんとも不可思議な体験でしたね、
対向も後続も民家も無い暗い山道走ってるとすんげぇ不安になる
(舗装されてても一車線しかなかったりところどころ傷んでたりすると怖さ倍増)
先を行った車が異空間への水先案内なのかな、とか
落石へと続く抜け道を教えてくれた民宿のおばちゃんが主で
車の前に飛び出してきたモノ(もしかしたら白い人影と同一?)が助けてくれたのかな、
とか考えながら興味深く読ませていただきました。
73:
塩辛
初投稿。
ご飯のお友達、いかの塩辛。 美味しいですよね。
私も大好きでこれさえあれば何杯でもご飯食べれました。
今回書かせていただいたのはこの塩辛に纏わる話です。
実際に地名を出すわけには行きませんし風評被害を考えて
多少のブラフ入で私の聞いた怖い話を紹介します。
塩辛好きな方や長文苦手な方はスルーしてください。
とある地域ではいかの塩辛がかなりポピュラーで その地域の村人なら
誰でも作れてしまうほどでした。
塩辛は基本的にはいかを短冊切りしていかの内蔵と塩で
混ぜるだけの簡単な料理なのですが味は千差万別。
作り手次第で全く別物になってしまいます。
そんな地域の中でもダントツに美味しい塩辛の作り手がいたそうです。
仮にこの方を黄村さんとします。
この黄村さんの作った塩辛は凄く濃厚で文字通り他の塩辛とは
レベルが違うのです。ちなみに村人が作った塩辛でも市販されている
塩辛と比べ物にならない位美味だといえば
いかに黄村さんの塩辛が美味しかったかがわかってもらえると思います。
74:
当然評判を聞いた業者に市販製品の監修してくれ!や村長から
村起こしのために作り方を公表してくれ!という依頼が殺到しました。
それでも絶対に黄村さんは首を縦にふることはなくひたすら村人の為
だけに極少量のみ作られていた。決して村人以外には食べさせなかったのです。
実は数年前まで黄村さんはいわゆる村の新入りで家族そろって
村八分のような扱いをうけていました。
その状況に耐え、同じ村八分の仲間内で助け合いながら頑なに
村人との接触を避けていました。
ただ数年前にとある事件で家族を失って以来、人が変わったように
村人へ媚びへつらい、関わりだすようになった。
当然村八分にされていた人間ですし最初は邪険にされていたようですが
美味しい塩辛で村人と良い関係を築いていったのです。
そんな理由から黄村さんの塩辛は村人と黄村さんを繋ぐ大事なキーであり、
製法をばらしてしまうとまた村八分になると危惧して秘密にいるのだと皆が思っていました。
その根拠として仲良くしていた他の村八分をうけていた新入りの家族とは
表向きは仲良くしても決して塩辛は食べさせなかったのです。
76:
その後製法を頑なに秘密にする黄村さんを妬んだ村人が
とうとう事件を起こしてしまいます。
黄村さんの家に覆面をして押し入り包丁で脅して製法を吐かせようとしたのです。
結局最後には黄村さんは製法を皆に伝授する、ただ不公平にならぬよう明日の夜皆を集める。
貴方の正体に興味もないし詮索しないから殺さないでくれ、頼むから帰ってくれ、と。
確かに黄村さんが死んだ後に別の人間が同じものを作れば犯人だと
名乗るようなものですし犯人もそれならば…と思ったのでしょう、
そそくさと逃げていきました。
次の夜黄村さんの塩辛の秘密を教えてもらえると聞いて村人全員とは
言わずともたくさんの村人が集まった。
まず集まった村人にいつもの塩辛を振る舞い、楽しんでもらってから
製法を公開することになった。
黄村さんは脂汗まみれでぶるぶる震えながらずっとぼそぼそ
「嫌々…嫌々…」と呟き、体調がすごく悪いようでした。
ただ皆が塩辛を楽しんだのを見届けた黄村さんは汗まみれの蒼白な顔に
薄笑いをうかべ手際よく塩辛を作り始めた。
イカの内蔵をぐちょりギちゅぐちゃりぐちゃりぐちょりとつぶし
短冊切りにしたイカを混ぜ合わせていき最後に灰色の白子のような物を
入れ更ににちゃにちゃにちゅにちゃにちゃにちゅと混ぜ合わせました。
いたって普通の作り方でした。
77:
今のは白子か?と村人が聞くと黄村さんは蒼白な顔で
「それは脳です」 村人はざわつきました。
「お前らに苛め、むごたらしく殺された私の家族の脳ですあはあはあは」
実は村八分に堪えきれず娘と妻は数年前に自殺した事になっていたのですが
新入り仲間内では妻と子供は村人に偽装自殺させられていたと噂になっていました。
詳しい死の状況はとてもきけませんでしたが妻だけでなく幼い娘にまで
今でいうレ○プされたような痕跡があったそうです。
ですがろくに調べもせず「自殺」と断定されてしまっていたのです。
お葬式は新入りの仲間内で行われ、遺体も正常な状態でした。
恐らく黄村さんは殺された家族の身体を傷付けぬよう、鼻から鉄の棒を
差し入れ脳を引きずり出し、かきだし保存していたのでしょう。
その掻き出した脳を混ぜ込んだ特製の美味しい塩辛を村人に食べさせ続けていたのです。
そして最後に黄村さんは青白い顔で
「お前らをのろう…ぃぁぃ…ぁ…は…たぁ…ぃぁぃぁはあは…」
と言いながらその場で笑いながら絶命しました。
絶命間際まで「嫌々?」とずっと呟いていたそうです。
78:
その後黄村さんの遺体を調べると腹に真新しい縫い傷があり、
開くと肝臓がどこにもなかったそうです。
黄村さんの家には恐らく抜き出された肝臓(半分ほど)と家族の遺体から
掻き出したと思われる脳が少量保存されていました。
残り半分の肝臓は…恐らく…。
最後の言葉から迫害され殺害された家族の脳と自らの肝臓を
村人に食べさせることで何らかの呪いをかけようとしていたと思われます。
結局呪いがどうなったのかはわかりません。
ほとんどの村人は無事でしたが(当然精神に異常をきたす村人は多数
でたそうな)、その事件の後なぜかある家族と村長の息子がお腹が
いたいいたいイタイいたイタイいたいたいたいいたいイタイイタイいたい
とのたうち回りながら血を吐いて変死しました。
彼らの遺体を解剖すると全員横隔膜から下の臓器が全て混ぜ合わせられ
ていたかのようにピンクと赤黒い肉をぐちゃぐちゃと混ぜ合わせ
どろどろになったようになっていたそうです。
それはまるで塩辛のようだったそうです。
80:
塩辛が食べたくなってきましたね
106:
>>80
ワロタww
87:
天狗様
1/5
あれはもう20年くらい昔のことだったかな。
俺が小学生だった頃に田舎の婆ちゃん家に遊びに行った時の話だ。
婆ちゃん家は昔、蚕を飼っていたので古いがとても大きな家だった。
爺ちゃんは俺が生まれる前に亡くなったから、今では俺のお袋の弟
さん家族と婆ちゃんが暮らしている。婆ちゃん家は昔の家具とかが
たくさんあって、俺ら孫たちはその大きな家を探検するのがとても好きだった。
近くには流鏑馬?で有名な神社があり、そこは昔から天狗が現れる
という伝説があった。お袋は子供の頃そこで不思議なものを何回も見たらしい。
ちょうどお盆の時期だったと思う。真夏で暑かったのを覚えてる。
いつものように各家族の孫達が揃うとドタバタと家中を走り回り、
探検が始まる。俺が1番年上でお袋の妹の子供が1歳下。その次は
更にその下の妹の子供達2人で3?4歳下だった。お昼ごはんを皆で
食べた後、2時間くらいドタバタと屋内外で遊んだ。
1番下の孫2人は昼寝を始めたので、俺は1歳下の従兄妹を連れて2階
の物置(元・蚕部屋)へ行った。いつものように梁の上に登ったり、
昔の家具の上に登ったりして遊んでた。窓からは午後の日差しが差
し込み、ぼんやりと2階の中を照らしていた。
子供だった俺は家具の上から大きなダンボール箱が2個積んである
上に飛び降りてみようと思い、思い切ってジャンプした。ドスンと
箱の上に着地したが、すごい埃でゲホゲホ言いながら箱から降りた。
飛び降りた勢いで2個の箱は崩れ、中身が見えていた。何だろう?
と思い中を見ると天狗のお面や団扇、お祭りの衣装?のようなものが入っていた。
88:
2/5
そういえば神社のお祭りの時に叔父さんがよくこの衣装を着て舞台
の上で踊っていたことを思い出した。箱の中には他にも色々と昔の
ものが入っていて興味津々だった。と、従兄妹が何か言った。
おにぃちゃん、ここに戸があるよ?
え?戸?おかしいな、婆ちゃん家は何度も探検してたがこんな所に
扉なんてあったっけ・・・確認したが確かにあった。恐らく飛び降りた
拍子にダンボール箱がズレて、隠れていた戸に気づいたんだな。
好奇心の塊だった俺は邪魔な箱をどかし、その戸を恐る恐る開けてみた。
そこは天井裏のような空間だった。何もなかった。いや、よく見ると
1番奥の壁に何か貼ってある。何だろう?貼ってあるものが何なのか
すごく気になった俺はとりあえず中に入って見てこようと思った。
従兄妹もついてきた。しかし床がおかしい。他の部屋のように頑丈な
感じではなく、薄い板のような感じだった。仕方ないので縦横に何本
も張り巡らされた梁の上を進んでいった。
その空間は高さもあまりなく、小学生の俺でさえ立って歩くのが困難
なくらい天井が低かった。壁には窓はなかったが、外からの光が透け
て入ってきており明るさは問題なかった。ようやく1番奥へ辿り着き、
貼ってあるものを確認した。それは1枚の御札だった。但しなぜか上下
逆さまに貼ってあった。そして更に不思議なことに貼ってあったのではなく、串で刺して固定してあった。
今思えば何であんなことをしてしまったんだろうと後悔してる。
89:
3/5
まだ子供だったんで何も考えてなかったんだろうな。俺はその串を
抜いて御札を手に取り、色々と観察してみた。かなり年季の入った物
であることがわかった。漢字で何か書いてあるが読めない。そして
串はよく見ると弓矢の矢のようだった。と、その時だった。
ドスン!・・・ドス、ドス、ドス・・・
何かの大きな音が聞こえてビックリした。従兄妹も驚いたようだ。
その音は大人が歩いているような音だった。誰か2階に上がってきたの
かな?そう思ったが何かがおかしい。よく聞くとその音は俺らが乗っ
ている床?の上を歩いている感じだった。床の下の部屋から何かで突っ
ついているのかとも思ったが、そんなものじゃなかった。明らかに歩い
ている音だった。天井を逆さまで。。。
天井を歩くって・・・なんだそりゃ???
マンガやアニメではそういうシーンは見たことある。でも聞こえてくる
音はそんな現実逃避を100%吹き飛ばすリアルなものだった。従兄妹は
怖くて泣いている。とりあえず「逃げないとヤバイ」ことだけは理解
出来た気がした。俺は剥がしてしまった御札と矢をポケットにしまい、
従兄妹の手を引いて梁づたいに入口まで戻り始めた。
出来るだけ音を立てずに進んだ。例の足音はどうやら床をあちこちを歩
き周っているようだ。まるで何かを探しているような感じで。と、その
時ポケットの中から矢が床に落ちてしまった。
カタン・・・
91:
4/5
しまった!と思うのとほぼ同時にドス ドスドス!と足音が近づいてきた。
確実に俺らの真下にいる。。。ハァーッハァーッという息遣いや爪?のようなもの
で床を引っ掻く音まで聞こえてきた。恐怖の限界だった。従兄妹は怖さの
あまり目を見開いて硬直している。と、床のある1点に何かが見えた。
穴だ・・・
それは床に開いた直径3cm程度の穴だった。どうやら真下にいるやつは
そこから必死に覗こうとしているらしい。入口まではあと10m程もある。
このままでは逃げ切れないかも知れない。。。そう思った俺は床に落ちた
矢を拾うとゆっくりとその穴に近づいた。今にも心臓が破裂しそうだった。
そして恐る恐るその穴を覗いてみた。
目が合った。
ぁhf@j;あjdhふじこ!恐怖で声にならない声を上げ気がつくと
俺はその穴に矢を刺していた。
ドスン!
ギィャァァァァァァァァ!ドタバタドタバタ!
真下にいた何かが、本当の床に落ちた音がした。今しかない!俺は従兄妹
の手を引き入口まで一目散に突っ走った。そして外に出るとすぐに戸を閉め
ダンボール箱で戸を隠した。怖さで二人ともしばらく無言で固まっていた。
窓から差し込む光は夕暮れ色になっていた。ほどなくして親から夕飯だから
降りてこいとの声が聞こえて我に返った。
92:
5/5
階段を下りながらポケットに手をやると、おかしなことに御札がなくなって
いた。泣いてる従兄妹を見てお袋が「また泣かしたの?仲良く遊びなさいよ」
と言った。みんなで食べた夕飯の味もよくわからなかった。一体アレは何
だったんだろう。。。あれだけドタバタ音がしてたのに誰も気づかなかった
のかな?従兄妹の家は夕飯後に帰った。うちは遠いので何泊かしてゆく予定
だった。俺はその晩は怖くて眠れなかった。
翌朝、婆ちゃんに聞いてみた。
すると婆ちゃんは、そんな部屋は知らないと言う。叔父さんも知らないと。
そんな馬鹿なと例の2階のダンボール箱の所へ連れて行った。しかし箱を
どけても戸はなかった。俺は頭が???な状態でしばらく昨日のことを力説
したが、やがて無駄なことだと理解してあきらめた。ただ、婆ちゃんがこんなことを言った。
この辺は昔は天狗様に連れ去られる人がおったったで。特に子供がな。んだで
神社でお祭りするようになったじゃのう。おまえもお参りしてくるといいで。
俺はお袋と神社へ行ってお参りした。お袋は俺の言ったことを信じたようで、
御札はありがたいものだから無闇にいじってはいけない、と教えてくれた。
お袋も小さい頃天狗に遭遇したが、なぜか連れ去られなかったと教えてくれた。
時が経ち、その従兄妹とは数年前に他の従兄弟の結婚式で会ったが、あの出来
事についてはすっかり忘れていたようだった。
今でもあの空間や床下にいたのは一体何だったのか・・・よくわからない。
おしまい。
94:
>>92
乙でした
天狗に悪戯でもされたんでしょうかね……?
98:
不気味なホテル
1/5
もう、5年か6年程前の話なんだけど……
僕の家族は旅行が好きなんだ。
好きって言っても、父が仕事忙しい人だから
そんな頻繁に行ってるわけじゃないけど
毎年必ず2,3回くらい旅行してたんだ。
その年も行ってきたんだ。
東京・横浜・千葉のいろんなところを巡る旅行ね。
2泊3日で、1日目の夜は東京の親戚の家に泊まって、
2日目の夜は横浜のとあるホテルで泊まる、ってことになってた。
僕の家族は、両親と僕と妹・それからまだ幼かった弟の5人。
ホテルの部屋は2部屋取って、両親と弟が3人で、
僕は妹と一緒の部屋で一晩寝て、翌日横浜の中華街行って帰る。
そんな感じだった。
ホテルの雰囲気は悪くなかったけれど、雲行きがあまりよろしくなく
一瞬、"不気味"と何故か感じていた。
チェックインを済ませ、9階だったかの部屋までエレベーターで上り
母に部屋のキーを渡されると、両親と弟は隣の部屋に入っていった。
99:
2/5
ご飯はホテル入る前に済ませたし、小腹が空いた時のためにお菓子等も
少しだが、一応買い込んである。
お風呂も済ませ、時計も10時を回った。さぁ、そろそろ寝ないと明日起きれない……
なのだが……僕は枕が変わると何故か寝つきが悪くなる。
ホテル泊まりが初めてじゃないとは言え、寝れないものは寝れないのだ。
今更だけど、当時の僕は中学生で妹は年子。
「ママ!おばけが怖いの、寝れないの!」なんて言う年頃でもない。
むしろ僕は幽霊だのお化け等を信じていない。
確かにホラー映画とかは怖いとは思うけど、あれは怖がるように作られているんだから
"怖い"と感じるのは別に普通なんだ。
決して「幽霊が怖いと思う」=「幽霊を信じている」ではないと思うんだ。
前置きがとても長くなってしまったけれど、本題に戻ると……
その日は、東京のいろんなところを見て結構疲れてた。
そのせいもあって、妹は11時頃にはとっとと夢の中だった。
何と無く、心細くてテレビをつけた。
面白いものはやってないかと思いチャンネルを回す。
すると面白そうなバラエティ番組が放送していたので、それを見ることにする。
…何故がベッドの前にある大きな鏡が気になる。
夜と鏡はあまり宜しくない組み合わせなので、鏡の自分と目を合わせぬように
恐怖心を紛らわすためにテレビに没頭する。
100:
3/5
鏡のことなどすっかり忘れていた。
幸運なことに、丁度スペシャルだったみたいで1時間では終わらず結構長いこと放送していた。
気が付けば時計は1時を過ぎた。
バラエティ番組がCMに入ると、よくわからないCMが流れた。
「なんだこれ?」と、何のCMか考えていると、あるホラー映画のCMだった。
バスに乗った男女2人、女が深刻な顔で男に何か相談している。
(相談している内容はもう覚えていない。)
女がふいに窓に目をやると、追い越すトラックに女の幽霊の顔がボウッと現れ
女が悲鳴を上げる…と、まぁこんな感じのCMだった気がする。
いつもならCMくらいでビビッたりしないのに、この時ばかりは本気でビビってしまった。
「せっかく恐怖感がなくなっていたのに…」
と、思いながら再び蘇った感情を消すために再びテレビに没頭するも、
蘇った感情はなかなか消えてはくれなかった。時間だけが過ぎていく……。
――コツン、コツン……コツ……
何かが窓に当たる音がした気がした。
風か何か…小石でも飛んできたんだろう。と、訳のわからない事を自分に言い聞かせる。
風がコツコツ言うわけもないし、真夜中に9階まで小石が飛ぶわけもない。
でもこのときはこう思うしかなかったんだ。そうしないと怖かったんだ。
3、4回鳴ると音はいったん止んで一安心…と、思った時だった。
101:
4/5
コツ、コツ…トントン、トントン……ドンドン…
何かが窓を叩く音がどんどん強くなってる…!!
"これは怖い!これは怖い!!"
そう思ってテレビを消した。部屋の電気はつけっぱなしだった。
布団をかぶって、若干震えながらも羊を数え自分を無理矢理寝かしつけた。
「起きなさい!あと30分したら、バイキング行くよ!」
ハッと目が覚めた時は既に朝だった。なかなか起きない僕たち姉妹を
母が起こしにきたのだった。
「ちゃんと着替えて、荷物まとめて、カーテン開けて、ゴミは捨てて
部屋を綺麗にしてから来るのよ。遅れると置いて行くよ。」
と、言うと母は部屋から出ていった。
目が覚めると夕べの出来事なんて綺麗さっぱり忘れていた。
ただ、あーっねむ。まだ寝てたいなぁ?…と、ぼんやりしながら身体を起こす。
妹は寝つきもいいが寝起きもいい。
サッと起きるとササッと身支度を始め、部屋を出る準備をする。
遅れまいとダルイ身体を起こし、フラフラしながらカーテンを開けた。
102:
5/5
見なければよかった。
本気で思った。
寝ぼけた頭が一瞬にして冷める光景だった。
窓には無数の手跡が残っていた。それも、内側ではなく外側の窓に……
このホテルにはベランダがない。ベランダどころか、足場がない。
それに窓は押すタイプというのか…45度くらいしか開かない窓で
とてもじゃないが人がそこから出ていくのは無理だった。
それだけじゃない。その手跡は何故か小さいものだった。
中学生にしては小柄の僕の手も結構小さいものだったが、それ以上に小さい。
まるで、幼稚園児か小学校低学年の子の手くらいの大きさで…
でも何故か指紋がついてない。手跡はついてるのに指紋がついてない。
どう考えても説明のしようがない出来事に、血の気がひいて寒くなった。
今思い返しても、寒いのだが…それでも幽霊は信じない。いや、信じたくない…。
……という、僕の実際にあった体験談です。釣りでも作り話でもないです。
むしろ作り話であってほしいと、逆に思うくらいです。
死ぬほど怖い、というわけじゃないからもしかしたらスレチかな……?
そうでしたらすみません。
でも、体験した僕からしたら死ぬ程洒落にならない体験でした。
105:
怖いなふつうに
109:
念
ほんとアホらしい。くそ生ぬるいわ。
洒落ならん話あるで。
昔な、10年以上前同棲しとった女がおったんよ。
俺はまだ未成年、そいつは5つ上の普通のOL。
俺は高校卒業して働いとったんじゃけどなかなか続かず現場作業のバイトを転々としとった。
ちょっとクセのある女だったどそれなりに楽しく1LDKのマンションで貧乏生活送っとった。
ケンカも滅多にせんかったし、こいつと結婚するだろうな?なんて漠然と考えとった。
110:
夏のある晩な、パンツ一丁で寝とったんじゃけどジワーって股が生温く濡れた感触がして
「やべっおねしょしてしもうた!」って思ったんよ。
でも前の日飲み会で遅かったしマジ疲れとったから「もうええわ」ってそのまま寝ようとしたんよ。
でもなんかおかしいの?思って起きたらそいつ俺の真上で天井の梁から首吊って死んどった。
ゲロやら糞やらわからんけど茶色い赤黒い汁で布団中びしょびしょ。
111:
首伸びきってベロだら?ん、目剥きだしてジローっと俺の事睨みよる。
俺は全く動けんでそのまま1日近くぼけーっとゆらゆらしよるそいつを見とった。
夜になって俺のバイト先のツレが無断欠勤した俺を心配して家に来て
そのまま警察やらなんやらの手続きを全部してくれた。
女が勤め先のおっさんと二股かけとって妊娠したみたいなんよ。
んでどっちの子かわからんもんじゃけえで俺にも秘密で堕ろしたらしい。
その事気に病んどったって後から聞いた。
112:
その晩から眠ると女が出てくるんよ「●●くん、ごめんねごめんね」って。
そのうちに起きとっても出てくるようになった。
部屋の隅っこでジッとこっちを見とる。
エレベーターで一緒に入ってくる。
そいつが耳元で常にしゃべりかけてくるようになってきた頃
俺は鬱で入院する事になった。
わかっとるんよ、幻覚って。でも俺には見えてるんだもん本当に。
幽霊ってなに?怨念や意識が形になったものならば、
俺の目の前から消えない幻覚自体があいつの恨みや無念の塊だよね。
ちなみに浮気相手のおっさんもその後自殺した。
自責の念に堪えられなくなったんじゃろう。そいつも俺みたいに幻覚見よったんかもしれん。
俺は一生こいつから、こいつの残していった念から逃げられない。
127:
>>112
そういえば学生時代の後輩が4つ上のOLと同棲してたんだけど強引に別れて他の女と結婚したんだ
後輩にとっては金づるだったみたいだけど、その後その女が自殺した
後輩は自殺したと聞いても俺には関係ないですよとか言って笑ってたな
ところが生まれた子供2人とも奇形で、それが原因でカミさんはノイローゼ?なって精神病院に入院
後輩は夜毎に自殺した女が俺の部屋に来るとか言い始めて結局仕事止めてニート状態
今は親が後輩と子供の面倒見てるらしい
まあこれが自殺した女の祟りなのかどうかは判らないけどな
144:
絶対に入ってはいけない辻
1/7
あれは俺が小学生の頃だから、もう20年も昔の話だ。
今回は少し長いっす。
俺の出身は北関東の寒村で、周りは田んぼと山だらけだった。
だから子供の頃は田んぼで藁の束を積んで秘密基地を作ったり
河で魚を取ったりして遊んだもんだ。村の人たちも皆いいひと
ばかりで、田舎ならではの良さがある村だった。
そんなよくある田舎の村だったが、たった1度だけ、村全体が
恐怖に陥った出来事があった。今日はその事件を書いてみる。
その村には「絶対に入ってはいけない辻」というものがある。
辻とは言っても小さな丘のような所で、幅3m、奥行き10m、
高さ1mほどの大きさだった。そしてその辻の上には、小さな
石碑と半鐘?(時代劇の火事とかで登って叩く鐘)のようなもの
があり、周りは田んぼに囲まれていた。
理由はわからないが、親や婆ちゃん(父方の)からは、あそこで
遊んじゃいけねぇよ、といつも言われていた。何でもあそこを
いじったりすると血の雨が降る、という言い伝えがあるそうだ。
確かに子供の俺から見ても不気味なふいんきがビンビン感じられる場所だった。
それは2月の寒い日のことだった。
145:
2/7
俺と友達は凧揚げをすることにした。この地域は冬はいつも
大風が吹いてるから凧揚げにはもってこいだったんだ。いつも
のように近所の田んぼで揚げていると、かなり乗りがいい。
釣竿のリールに糸を巻いて凧につないでるんだが、ぐんぐん凧が昇っていった。
こりゃすげーや、あんなに小さくなっちまったぜ!
俺は喜んでリールを緩め、どんどん高く凧を飛ばしていった。
しかしこの日は風が強すぎた。ブチッという音と同時に凧が回転
しながら遠くへ飛んでいった。アチャー・・・まいったな・・・
俺は友達のかっちゃんと凧を探しに走った。と、ほどなくして
先を進むかっちゃんの声がした。「あったぞ?」俺は見つかって
よかったと安心したが、それはすぐに不安へと変わった。。。
どうする?
う?ん・・・どうしよ・・・
凧は例の辻の半鐘に引っかかっていた。風でバタバタと揺れている。
今までここは通り過ぎることはあっても、登ったりしたことはない。
しかも親達からは絶対入ってはいかんと言われている。そのことは
かっちゃん家も同じだった。太陽はまだ高かった。しばらく悩んで
いたが、かっちゃんが「長い棒で引っ掛けて取ろう」と提案した。
俺はいいアイデアだと思い早二人で棒を探した。
146:
3/7
棒は意外と早く見つかった。かっちゃんがやると言い、少し離れた
所から凧に向かって棒を伸ばした。半鐘までの高さは3m弱といった
ところか。何度か突っついたが、全然取れる様子もない。頭にきた
かっちゃんは足元の石ころを投げつけた。カーン・・・半鐘に当たった。
錆付いた半鐘からはその外見からは想像もつかない程良い音がした。
ダメだな、取れないや。
と、その時、凧が半鐘から外れ空高く飛んでいっちまった。それも
すんごい勢いで。。。さすがにあれは追っても無駄だと子供の俺で
もすぐにわかるくらいの勢いだった。高かったので悔しかった。
諦めて二人で帰ろう、ということになったが急に天気が悪くなり始
め、雨が降ってきた。幸い俺の家もかっちゃん家も近い。バイバイ
してすぐに家に着いた。と、ほぼ同時に大雨。しかも雷?まで鳴って
きた。2月に雷?ありえねーとか思いながらも、まさかさっきのが
原因じゃないよな・・・とちょっと不安だった。
何やら外が騒がしくて目が覚めた。
なんだ?こんな時間に。。。時計を見たら午前零時半だ。親はすでに
起きて外で近所の人に何事か聞いてるようだった。戻ってきた父親は
血相を変えて「おい、かっちゃんがいなくなったんだと」と言った。
俺は「えっ!?」と驚いた。騒がしかったのは村の皆でかっちゃんを
探しているからだった。何でも昼間遊びに行ったきり帰ってこなかっ
たらしいが、親父さんが夜勤で帰宅が遅かったから気がつかなかった
ようだ(母親は亡くなっている)。
おまえ、何か知らないか?
「・・・」俺は怖くて黙っていた。
147:
4/7
結局その晩、かっちゃんは見つからなかった。あの時、確かに自宅の
方向へ走っていく姿を俺は見た。一体どこへ行ったのか。。。翌日、
警察と村人で捜索が始まった。俺は子供心に怖くてどうしようと悩ん
だが、このままじゃかっちゃんが本当にいなくなる気がしたので親に
言った。「バカヤロー!」俺は親父の平手で吹き飛んだ。「あそこに
は入るなといつも言ってただろう!」俺は泣きながら謝るしかなかった。
親父は早、村の人たちにそのことを告げ相談を始めた。
しばらくして村のご意見番というか不思議なちからを持った婆さんが
きて「家の周りに小便を撒いて玄関に塩を盛るように」と言った。その
婆さんの不思議なちからは何度か見たことがあり、俺も小さい頃に疳の
虫がひどかったので、その婆さんに直してもらった記憶がある。
手首に細い紐を巻いて指先をこすられたと思ったら、爪と指の間からクネクネ
と動く正体不明の生き物?が出てきた。それが疳の虫なんだという。
婆さんはそのクネクネを引っ張って巾着袋に入れて封をした。子供なが
らに不思議な婆さんだなと思っていた。外見はナウシカに出てきた予言の婆さんにそっくりだった。
こりゃ大変なことになっちまったね・・・死人が出なきゃいいが・・・
婆さんは村人全員に今すぐ家に帰り、今日は一歩も外へ出ないようにと
伝えた。あの辻にだけは触れちゃぁなんねぇ。昔からあそこを崩そうと
したりすると必ず死人が出たんだよ。そりゃぁすごい祟りが起こるんだ。
婆さんは俺を脅した。俺は泣きながら震えているしかなかった。
いいかい?次に祟られるのはおまえだ。今夜はずっと目を閉じているんだ。
絶対に何が起こっても目を開けちゃぁなんねぇ、いいね?婆さんはそうと
俺の髪を何本か抜き、うちの仏壇で念仏を唱え始めた。
148:
5/7
俺は両親に囲まれてずっと目をつぶっていた。時間ももう遅い。寝てしま
えば楽なんだろうが、緊張でまったく眠れない。婆さんはずっと念仏を
唱えている。と、バチンという音とともに電気が消えた。親父がブレーカー
を上げるも電気がつかない。停電か?仕方ないので仏壇用のローソクに火
をつけたようだ。すると婆さんが「むっ」と言い念仏をやめた。
カーン・・・カーン・・・
何やら遠くから鐘の音が聞こえた。。。
来たね・・・婆さんはそう言うとガサゴソと何かをいじっているようだった。
俺は目をつぶっているので何が起こっているのかわからない。ただ、鐘の
音がだんだん近づいているような気がした。
カーン・・・カーン・・・
俺は怖くなった。しっかりと両親の手を握っていたが汗でぬるぬるしてい
るほどだった。両親も震えている。婆さんは相変わらずガソゴソとしてる。
と、うちの前で鐘の音が止まった気がした。ずっと目を閉じてるから聴覚
が敏感になっていたんだと思う。途端に玄関の戸がガタガタと言い始めた。
ヒィッ!俺と親は怖くて悲鳴を上げた。玄関はしばらくガタガタしていたが
じきに止んだ。と、今度は屋根の上を何かが歩いている音がした。時折、
ヒ?ッヒヒヒヒというような不気味な声が聞こえてきた。しかも複数の声だ。
149:
6/7
いいかい?目をつむったまま声も出しちゃぁダメだからね?
婆さんはそう言うと家の中央の柱に何かを打ち付けていた。と、何かの気配
がする。。。すぐ近くに何かがいる。。。両親は気がついていないようだ。
でも声を出してはいけない。うう、でも何かが俺の近くで匂いを嗅いでる
ような感じだ。気持ち悪い。とてもじゃないがこの世のものとは思えない。
両親は気づいていないようだった。俺は恐ろしさと緊張で失神寸前だった。
見 ぃ ? つ け た ぁ
確かに聞こえた。
と同時に俺は完全に気を失ってしまった。
翌朝、俺は外の騒がしい声で目が覚めた。
いたぞー 見つかったぞー たくさんの人がそんな感じで叫んでいた。
部屋の中を見回すと両親はいない。婆さんもいない。俺は昨夜のことを思い
出して再び怖くなった。と、視線を部屋の中央へ向けると何か違和感がある。
昨夜、婆さんが何かをやっていた場所だ。よく見ると中央の柱(大黒柱)が
真っ黒に焦げている。。。一体何があったんだろ。。。と、外にいたお袋が
家の中に入ってきて、俺に言った。ねぇ、かっちゃんが見つかったんだって!
俺はすぐに飛び起きて外へ出た。ちょうど親父が帰ってきた。俺はそこで色々聞いた。
かっちゃんは近所の豚小屋の中でなぜか裸で寝ていたらしい。命に別状はない
が、俺とバイバイしてからの記憶がないらしい。ただ、手には火傷を負って
いたようだと言う。俺はというと、昨夜失神した直後に柱が燃え上がり、その
まま鐘の音も消え無事、朝を迎えられたと聞いた。婆さんが俺の髪を祈祷用の
人形に入れ、その柱に打ち付けたことによって、家の守り神の大黒柱が身代わ
りになって助かったんだという。
150:
7/7
婆さんは?と聞くとかっちゃんの体を清めに行っているそうだ。どうやら昨日、
玄関をガタガタしたのも屋根の上で暴れたりしたのも彼なのだそうだ。きっと
取り憑かれていたんだろうということだった。その後かっちゃんは街の病院へ
運ばれたが元気になり帰ってきた。但し記憶は消えたままだそうだが・・・
この事件を通して、子供ながらに自然には立ち入ってはいけない場所があるん
だなとしみじみ痛感した。
時が経ち、今、その辻の周辺には高のインターチェンジが出来た。北関東
自動車道という高らしい。俺は田舎を離れて数年経つが、今でも帰省すると
あの時のことを思い出す。親の話では高のルートもわざわざあの辻を迂回
して作られたということだった。確かにもし、工事であの辻が破壊されてたら
この高の建設計画もどうなっていたか・・・考えると恐ろしくなる。
ちなみにこの事件の1年ほど後、前回の天狗の事件に遭遇した。
おしまい。
166:
>>150
乙でした
昔から触れてはいけないという物にはそれなりの理由があるのですね…
152:
乙
お払いをするとき返事をしてはいけないやらそっちを見てはいけないだのは知ってるけど
目も口も開けてはならんというのは初めて読むかな あと小便撒くのも
153:
どうも。
うろ覚えだが、その婆さんが言うには河童とか物の怪?は人間の
小便が嫌いで、かけると怒って逃げ出すそうな・・・
俺は見たことないけどその婆さんやお袋は昔、河童も見たらしい
183:
宿直のバイト
数年前、大学生だった俺は先輩の紹介で小さな診療所で宿直のバイトをしていた。
業務は見回り一回と電話番。あとは何をしても自由という、夢のようなバイトだった。
診療所は三階建てで、一階に受付・待合室・診察室兼処置室、二階に事務室・会議室・炊事場、
三階に宿直室があった。宿直室は和室で,襖がドア代わり。階段はひとつ。
小さいとは言っても患者のカルテやなんかは扱ってるわけで、診療所はALS●Kで警備されていた。
宿直の大まかな流れは以下の通り。
夜9時に診療所に着き、裏玄関(表玄関は7時半には完全に施錠される)の外からALS●Kの警備モードを解除する。
入って見回りをして、三階の宿直室に入る。
宿直室にもALS●Kの管理パネルがあるので、入ったら再びALS●Kを警備モードにする。
警備のセンサーは一階、二階はほぼ隈なく網羅しているが、宿直室にはないため、宿直室内では自由に動ける。
管理パネルにはランプがついており、異常がないときは緑が点灯している。
センサーが何かを感知するとランプが赤く変わり、ALS●Kと責任者である所長に連絡がいく
ことになっている。ドアや窓が開けられると警報が鳴る。
部屋に着いて警備モードに切り替えれば、あとは電話がない限り何をしてもいい。
電話も、夜中にかかってくることなんて一年に一回あるかないかくらいだった。
だからいつもテレビ見たり勉強したり、好き勝手に過ごしていた。
184:
ある日の夜。いつものように見回りをして部屋に入って警備モードをつけてまったりしてた。
ドラマを見て、コンビニで買ってきた弁当を食べて、本を読んで、肘を枕にうつらうつらしていた。
テレビはブロードキャスターが終わって、チューボーですよのフラッシュCMが入ったところだった。
何気なく目をやった管理パネルを見て、目を疑った。ランプが、赤い。
今まで、ランプが赤かったことなんて一度もない。
え?なんで?と思ってパネルを見てると、赤が消えて緑が点灯した。
まともに考えて、診療所の中に人がいるはずがない。
所長や医師が急用で来所するなら、まず裏玄関の外からALS●Kの警備を解除するはずだ。
また外部からの侵入者なら、窓なりドアなりが開いた瞬間に警報が鳴るはずだ。
故障だ。
俺はそう思うことにした。だいたい、もし本当に赤ランプがついたなら、所長とALS●Kに連絡がいって、
この宿直室に電話がかかってこないとおかしい。それがないということは、故障だということだ。
そう思いながらも、俺はパネルから目を離せずにいた。緑が心強く点灯している。
しかし次の瞬間、俺は再び凍りついた。また、赤が点灯した。
今度は消えない。誰かが、何かが、診療所内にいる。
俺は、わけのわからないものが次第にこの宿直室に向かっているような妄想に取りつかれた。
慌てて携帯を探して、所長に電話した。数コールで所長が出た。
185:
所「どうした?」
俺「ランプが!赤ランプがついてます!」
所「本当か?こっちには何も連絡ないぞ」
俺「だけど、今もついてて、さっきはすぐ消えたんだけど、今回はずっとついてます!」
所「わかった。ALS●Kに確認するから、しばらく待機していてくれ。また連絡する」
所長の声を聞いて少し安心したが、相変わらず赤が点灯していて、恐怖心は拭い去れない。
2分ほどして、所長から折り返しの電話があった。
所「ALS●Kに確認したが、異常は報告されてないそうだ」
俺「そんな!だって現に赤ランプが点灯してるんですよ!どうしたらいいですか?」
所「わかった。故障なら故障で見てもらわなきゃいけないし、今から向かう。待ってろ」
何という頼りになる所長だ。俺は感激した。
赤ランプはそのままだが、特に物音が聞こえるとか気配を感じるということもないので、俺は少しずつ安心してきた。
赤ランプがついただけで所長呼び出してたら、バイトの意味ねえなwとか思って自嘲してた。
しばらくすると車の音が聞こえて、診療所の下を歩く足音が聞こえてきた。
三階の窓からは表玄関と裏玄関そのものは見えないが、表から裏に通じる壁際の道が見下ろせるようになっている。
見ると、電気を煌々とつけて所長が裏玄関に向かっている。
見えなくなるまで所長を目で追ってから数秒後、「ピーーーーーッ」という音とともにALS●Kの電源が落ちた。
所長が裏玄関の外から警備モードを解除したのだ。
俺は早く所長と合流したい一心で、襖を開けて廊下へ出た。廊下へ出た瞬間、俺は違和感を感じた。
186:
生臭いのだ。何とも言えない、イヤな匂いがたちこめていた。
また恐怖が頭をもたげてきたが、さっき確かにこちらへ向かう所長を見たし、1階に所長が来てるのは間違いないので、
俺は廊下の電気をつけて、階段へ向かった。
診療所の階段は各階に踊り場があって、3階から見下ろすと1階の一番下まで見える構造になっている。
階段の上まで来て、1階を見降ろした。
1階はまだ電気がついておらず、俺がつけた3階の電気が1階をうす暗く照らし出している。
生臭さが強くなった。1階の電気のスイッチは裏玄関を入ってすぐのところにある。
所長は、なんで電気をつけない?早く電気をつけて、姿を見せてくれ!
さらに生臭くなった時、不意に一階の廊下の奥から音?声?が聞こえてきた。
それは無理やり文字化すれば、
「ん゛ん゛?ん゛??う゛う゛う゛?゛ん゛」
という感じで、
唄とも、お経とも取れるような声だった。
ここに来て俺は確信した。1階にいるのは、所長じゃない。
頭が混乱して、全身から冷たい汗が噴き出してきた。しかし、1階から目が離せない。
生臭さがさらに強まり、「ん゛ん゛?ん゛?」という唄も大きくなってきた。
何かが、確実に階段の方へ向ってきている。
187:
見たくない見たくない見たくない!!
頭は必死に逃げろと命令を出しているのに、体がまったく動かない。
ついに、ソイツが姿を現した。
身長は2メートル近くありそうで、全身肌色,というか白に近い。
毛がなく、手足が異常に長い、全身の関節を動かしながら,踊るようにゆっくりと動いている。
ソイツは「ん゛?ん゛??う゛う゛?」と唄いながら階段の下まで来ると、上り始めた。
こっちへ来る!!逃げなきゃいけない!逃げなきゃいけない!と思うが、体が動かない。
ソイツが1階から2階への階段の半分くらいまで来たとき、宿直室に置いてあった俺の携帯が鳴った。
俺は「まずい!!」と思ったが遅かった。
ソイツは一瞬動きを止めた後、体中の関節を動かしてぐるんと全身をこちらに向けた。
まともに目が合った。濁った眼玉が目の中で動いているのがわかった。
ソイツは口を大きくゆがませて「ヒェ??ヒェ???」と音を出した。
不気味に笑っているように見えた。
次の瞬間,ソイツはこっちを見たまま、すごい勢いで階段を上りはじめた!
俺は弾かれたように動けるようになった。とは言え逃げる場所などない。
俺はとにかく宿直室に飛び込んで襖を閉めて、押さえつけた。
189:
しばらくすると階段の方から「ん゛??ん゛?う゛?」という唄が聞こえてきて、生臭さが強烈になった。
来た!来た!来た!俺は泣きながら襖を押さえつける。頭がおかしくなりそうだった。
「ん゛??ん゛?ん゛??」もう、襖の向こう側までソイツは来ていた。
「ドンッ!」
襖の上の方に何かがぶつかった。俺は、ソイツのつるつるの頭が襖にぶつかっている様子がありありと頭に浮かんだ。
「ドンッ!」
今度は俺の腰のあたり。ソイツの膝だ。
「ややややめろーーー!!!!」
俺は思い切り叫んだ。泣き叫んだと言ってもいい。
すると、ピタリと衝撃がなくなった。「ん゛?ん゛?」という唄も聞こえなくなった。
俺は腰を落として、襖から目を離すことなく後ずさった。
後ろの壁まで後ずさると、俺は壁を頼りに立ち上がった。窓がある。
衝撃がやみ、唄も聞こえなくなったが、俺はソイツが襖の真後ろにいるのを確信していた。
生臭さは、先ほどよりもさらに強烈になっているのだ。
俺はソイツが、次の衝撃で襖をぶち破るつもりだということが、なぜかはっきりとわかった。
俺は襖をにらみつけながら、後ろ手で窓を開けた。
190:
「バターーン!!」
襖が破られる音とほぼ同時に俺は窓から身を躍らせた。
窓から下へ落ちる瞬間部屋の方を見ると、俺の目と鼻の先に、ソイツの大きく歪んだ口があった。
気がついたときは、病院だった。
俺は両手足を骨折して、頭蓋骨にもひびが入って生死の境をさまよっていたらしい。
家族は大層喜んでくれたが、担当の看護師の態度がおかしいことに俺は気づいた。
なんというか、俺を怖がっているように見えた。
怪我が回復して転院(完全退院はもっと先)するとき、俺はその看護師に聞いた。
すると看護師は言った。
「だってあなた、怪我してうなされてる日が続いていたのに、
深夜になると、目を開けて、口を開けて、楽しそうに唄を歌うんだから。
『ん゛ん゛?ん゛??う゛う゛う゛?ん゛』て」。
194:
肝試し
1/7
あれは俺が小学生に上がったばかりだから、もう20年以上昔の話だ。
この前の辻事件を書いてて思い出したが、俺の住んでた村には結構、
そういった怪奇スポットがいくつかあった。今回も少し長めです。
今回は夏に行われたお化け大会の時の恐怖体験ついて書いてみる。
場所は近くの神社。そこはうっそうとした林の中にあり、昼間でも
怖くて一人では近づきたくない場所だった。ルールは簡単。ひとり
ずつ本堂の奥にある祠の前に置いてある箱からゴムボールを1個持ってくるだけだ。
しかし小さかった俺には死ぬほど怖かった。街灯は無いので真っ暗。
皆、懐中電灯を片手に震えながらボールを取ってきた。奥の方では
悲鳴が聞こえる。上級生がお化けの役になって、下級生を驚かして
いるからだ。中には怖くて途中で引き返してくる子もいた。そうい
う子には上級生が一緒に行ってあげてボールを取ってきた。
いよいよ俺の番だ。
心臓が口から飛び出るくらいバクバクしている。半ばヤケクソ状態
で先へと進んだ。本堂までは50m位だったが本当に真っ暗だった。
緊張で懐中電灯が左右にブレる。と、俺の視界左横に何かが見えた。
人魂だ。ゆらゆらと俺に付いて飛んでいる。俺はまったく気にせず先へ進んだ。
195:
2/7
前にもちょっと書いたが小さい頃の俺はそういうものが普通に見え
ていた。なので人魂程度ではたいして驚かなかった。ようやく本堂
に着いた。左の脇道から裏へ回る。と、お化けの格好(狼男?)をし
た上級生が飛び出てきた。ヒィ!あまりに突然だったので悲鳴を上
げた。人魂より人間の方が怖い。俺は先へ進んだ。
次に出てきたのは鹿のお面をかぶった鹿男だった。ヒヒーンと鳴い
ている。俺は無視するように祠へ向かうと箱からボールを取った。
と、頭上から白い服を着た人形が垂れ下がってきた。さすがに、
これには腰を抜かした。ブランブランと揺れている人形をしばらく
見ていたが、ハッと我に返り本堂の逆サイドから帰ろうとした。
あまりの怖さに泣きべそをかきながら走った。そして本堂の脇を抜
ける時、誰かが本堂の外廊下に座っているのが見えた。お化け役の
上級生かと思ったが体は俺と同じくらいの大きさだ。着物を着て、
おかっぱ頭。女の子のようだった。手には赤い毬?を持っていた。
(先に行った子かな?何でこんな所に座ってんだ?)
俺は無視してその子の前を走り抜け、そのままスタート地点まで戻
った。俺はゼェゼェ言いながら係の子にボールを渡した。
あれ?何だこれ? おい、こんなの入れてあったか?
196:
3/7
俺は何のこっちゃ?と思ったが、渡したボールを見て愕然とした。
それはボールではなく、毬だった。それもあの子が持っていたのと
同じ赤い毬だった。俺は確かにあの時、箱から黄色いゴムボールを
取り出したはずだ。それがいつの間にか毬に替わっていた。。。
俺は訳がわからなかったが係の子達はまぁいいかと言って収まった。
ほどなくして全員の順番が終わり、お化け大会は終わった。もちろん
最後に集合した子供たちの中に、あのおかっぱの子はいなかった。
翌日、あの子がどうしても気になった俺は友達を誘って神社に行ってみた。
今考えれば、やめておけばよかったと後悔してる。
夕方だがまだ明るく友達もいたので全然怖くなかった。本堂の周りを
一周してみたが、これといって変わったものはなかった。付き合って
くれた友達は、ひ?ちゃんというあだ名で彼は昨夜、ここで人魂では
なく大きなUFOが飛んでゆくのを見たそうだ。人魂もUFOも同じ
周波数帯にいるのか?俺は子どもながらに、ふ?んと思った。
二人で神社の周りをアレコレと散策していると、ビシッ!という何か
が突っ張るような音がした。ん?何だ今の?音はひ?ちゃんにも聞こ
えたようだった。視線を回してみるが誰もいない。俺は祠のあたりを
調べたが特に何も異常はなかった。と、本堂の正面を調べに行った
ひ?ちゃんから俺を呼ぶ声がする。正面に行くと彼は本堂の正面の戸から中を覗いていた。
197:
4/7
どした?
シーッ・・・あれ見てみろよ。
俺も同じように格子の隙間から中を覗いた。
中には大きな神棚がありご神体祭られている(フタが閉じていたので
ご神体は見えなかったが)。と、その神棚に向かって小さい子供が座っ
ているのが見えた。咄嗟に昨日の子だ!と気がついた。しかし、どう
やって中に入ったのか、鍵は外からかけられているではないか。
何だあの子?どこんちの子だ?
何も知らないひ?ちゃんは、あの子が近所の子だと思ったらしい。
俺は必死に昨日のことを説明しようとしたが、なぜか声が出ない。
それどころか体が思うように動かなくなっていた。つまんないから帰
ろうぜ?と彼は言うと俺を置いてさっさと鳥居(昨日の大会の出発地点)
に向かって歩き始めた。俺は(ま、まってくれよ・・・)と心の中で叫ん
だが、まったく気づく様子もなく行ってしまった。
と、そこにビシィッ!という音が聞こえた。さっきより大きい音だ。
目線を本堂内に戻すと、あの子が両手で何かをしているようだった。
ビシィッ!それは両手で何かを引っ張った際に出る音だと気づいた。
と、その時、おかっぱの子がこっちに振り向いた。
顔がない
198:
5/7
えっ!?
昨日は暗く、うつむいてたから気がつかなかったのか・・・!?俺は完全に
パニックになりかけていたが、とにかく鳥居のほうへ・・・この神社の敷地
から外に出なくては!と思い、うまく動かなくなった体を引きずるよう
に本堂の階段を降り、庭の石畳を鳥居方向へと進んだ。ひ?ちゃんは
かなり先まで行ってしまっている。。。と、本堂の戸が開く音が聞こえた。
ギィイィィ・・・
俺は振り返らなかった。いや、恐ろしさで振り返れなかったんだと思う。
ズリッ・・・ズリッ・・・重くなった足を引きずりながら、おかぁちゃん、おか
ぁちゃん、と泣きながら叫んだ。
一緒にあそぼ・・・
確かに聞こえた。おかっぱの子が言ったんだと思う。正確には聞こえたと
いうか心に響いたというか。。。しかし恐怖でいっぱいの俺は、とにかく
逃げたい一心で先へ進んだ。いや、これも正確には進んでいなかった。。。
俺は見てしまった。自分の足元を。重いと感じていた原因を見てしまった。
俺の両足には真っ赤な糸?がフォークで絡め取ったパスタのようにぐるん
ぐるんに巻きついていた。えっ!?何これ! その糸はおかっぱの子から
伸びていて俺の足をがんじがらめにしていた。そしてさっきから聞こえてた
ビシッ!という音はその子が赤い糸を引っ張ってる音だったのだ。。。
俺は「もうダメだ・・・」と思い諦めた。明らかに小学1年生に出来る範疇を
越えていた。
ここで一緒にあそぶんだよ・・・ずっと一緒に・・・
199:
6/7
そう聞こえたと同時に、ズルズルと本堂の中へ引っ張られてゆく感じがした。
俺は仰向けに倒れ、空を見ていた。フフフッ・・・フフフッ・・・というおかっぱの子の笑
い声と引きずられる音だけが響いた。まるでここだけ時間が止まっているか
のようだった。俺は諦めた。怖さより、もうこれで親や友達に会えなくなる
ことが悲しかった。そして本堂の中に体が入る瞬間、何かがひっくり返った。
バサァァァッ
ひっくり返ったのは俺だった。視線が前後上下左右に揺れまくった。一体、
何が起こっているのかわからなかった。気がつけば本堂を上から見下ろして
いる感じだった。えっ!?俺は足が軽くなったのがわかった。何だこれ!?
と思う間もなく、急降下してそのまま鳥居がある入口のほうまで一気に飛ん
でいった。あろうことかすぐ目の前には、ひ?ちゃんの背中が見える。
俺はそのまま映画のスローモーションのようにゆっくりと地面に足をつけた。
瞬間、時間の流れが正常に流れ始めたのがわかった。俺は振り返ろうとした
が、地面の底から響いてくるようなおぞましい声が聞こえたので固まった。
おぉぉのれぇぇぇ・・・邪魔をしおってぇぇぇぇ・・・
何のことかわからなかった。俺は振り返らずそのまま鳥居の外まで出たほう
がいいと思い、ひ?ちゃんと走った。無事、外へ出るとひ?ちゃんはずっと
俺がそばに付いてきてると感じてたと言った。俺は起こった事を彼に話した。
彼はふ?んと鼻くそをほじりながら聞いていたが、こんなことを言った。
じゃぁさ、それって誰かがおまえを助けてくれたのかもな。
え?誰かって誰だ?
200:
7/7
日が沈みかけていた。俺は泣きべそをかきながら家に帰り、お袋に話した。
お袋は「それは天狗様が守ってくれたんだね」と言い、おかっぱの子につい
ては、あそこの神社の裏には無縁仏のお墓があるから、たぶんそこに埋まっ
とる子なんじゃないかと言っていた。翌日、俺とお袋はお菓子とおもちゃを
持って、その無縁仏のお墓にお供えした。ゴムボールも3個置いてきた。
たぶん鞠遊びがしたかったんだろうな、と思ったからだ。
それ以降、友達とその神社へはたまに遊びに行ったが、何事も起こらなかった。
ただ、たまに近所の人があそこでボールが跳ねる音がした、と言ってることが何度かあった。
今回の事件では俺は天狗の姿を見ていない。でも俺が3歳くらいの時、じつは
自宅で天狗を見ているんだ。その時は本当に怖かった。3際の頃の記憶で覚え
ているのなんて、その天狗のことと釣堀に落っこちたことだけだ。それは機会
があったらまた書くことにする。
おしまい。
201:
>>200
いろいろな経験してるんですね、すごい。
俺は零感だから、うらやましい。
実際、見たらかなりビビるだろうけど。
次の話、期待して待ってます。
259:
飛び込み多発路線
1/7
あれは今から5年くらい前の話だ。
子供の頃の話が続いたんで今日は社会人になってからの
恐怖体験を話そうと思う。田舎には田舎の、都会には都会
の怖さってもんがある。これはその顕著な例だったと思う。
俺は某ゲーム会社で働いている。通勤にはY浜線を使って
いたが、これが結構「飛び込む」ことで有名な路線だ。
しかし俺自身は幸運にもそれらに遭遇することはなかった。
この日までは・・・
その日はいつものようにお昼前に起きて電車に乗った。俺
の会社はフレックスなので何時に出勤してもいいんだ。駅
に着くとちょうど電車がきた。時計を見るとお昼の12時40
分だった。お?空いてる空いてる。電車には誰も乗ってい
なかった。いつものようにi-Podで音楽を聴き始める。
朝はJAZZと決めている。鼻歌まじりで外の風景を眺めてい
たが、何か違和感がある。天気は快晴。春先で穏やかな日
差しに包まれている。しかし動感がない。。。というか止
まってる1枚の写真を見ている感じだった。と、そのとき
電車が駅を通り過ぎた。
え?
260:
2/7
この電車は各駅停車だ。なんで通り過ぎたんだ?俺の最寄
り駅は小さいので各駅停車しか止まらない。それが他の駅
を通り過ぎることなどあり得ないのだ。おかしいな、運転
手が間違えたのか?よく考えたら乗ってから車内アナウン
スもなかった気がした。俺はキョロキョロ見回したが電車
は普通に走っている。少し不安になったが、ほどなく次の駅に電車は停まった。
プッシューーー・・・ッ バタン
コツコツコツ・・・
扉が開き後の車両に人が乗ってきた音がした。俺は思い過
ごしかと安心した。そして電車は次の駅でも停車した。結
構大きな駅だ。しかしおかしなことに扉が開いても誰も乗
ってくる気配がない。ホームには結構な数の人が並んで立
っている。ん?なんでみんな乗ってこないんだ?
おかしなことに皆、電車が来る方向を見ている。まるで早
く電車が来ないかな、といった表情だ。いやいや、来てる
じゃん。みんな早く乗ろうよ。と思っていると誰かが同じ
車両に乗ってきた。うん、そうだよね。みんなも早く乗れ
ばいいのに。しかし結局、同じ車両に乗ったのは一人だけ
で電車は動き始めた。
この駅で降りとけばよかった・・・
261:
3/7
多少の違和感はあったが、あまり気にもせず気を取り直し
て音楽を聴いていた。しばらくぼんやりしていたが、ふと
目線を右方向に移すと視界にさっき乗ってきた人が映った。
女子高生かな?黒い制服をきた女の子だった。無言でうつ
むいている。床には大きなバッグを置いているようだった。
あんなに大きな荷物じゃ大変だな、などと思って目線を戻し外を見ていた。
ボトッ・・・
何か音がした。ん?何の音だ?俺はキョロキョロ見回した。
特に異常はない。気のせいかと思い視線を女子高生に向け
た。あれ?心なしか彼女の荷物が大きくなっている気がし
た。おかしいな、荷物あんなに大きかったっけ。。。しば
らくボーッと見ていたが何か違和感がある。しばらくして
その理由がわかった。
瞬間、全身の毛が逆立った。
262:
4/7
俺の人生でこの時ほどヤバイと思ったことはなかった。お
そらく前回の神社事件以上のレベルだった。彼女の大きな
荷物だと思っていたものは、血だった。よく見ると右足が
切断されていて床に転がっている。どす黒い血がじっとり
と流れ出して徐々に広がっているのだ。黒い制服というの
も元は白いらしく、血で黒く見えていたのだった。
俺は後の車両の乗客も見てみた。首がなかった。この時初
めて事態の異常さと相当な危険度を感じた。全身からいや
な汗が噴き出た。とにかく降りなければ!俺は次に停車し
てドアが開いたら即効で逃げようと思った。ほどなくして
電車は次の駅に停まった。
ん?なんだこの駅?
見たこともない駅名だった。というか目の焦点がよく合わ
ず駅名がよく見えない。しかも一向にドアが開く気配がな
い。ほどなくして電車が動き始めた。俺は咄嗟に窓から飛
び出ようと思ったが、窓がビクともしない。しかしよく考
えたら「まともではない場所」で外に出たら逆に危険な気
もした。生きて帰れなくなるからだ。
女子高生を見た。両足ともなかった。血が噴き出ている。
と、後のほうから何やら音が聞こえた。
ガラガラガラ・・・バタン!
263:
5/7
車両連結部のドアを開け閉めしているような音だ。その音
がだんだん近づいてきているような気がした。ヤバイ、何
かが来る!言葉では言い表せないような劣悪な波動?を感
じて俺は先頭車両のほうへ移動した。女子高生の前を通り
過ぎた。視線を向けずにいたが、すでにバラバラだったのがわかった。
そして1番先頭の車両に着いた。空気が異様に冷たい。俺
は運転席のドアを開けようとしたがビクともしない。とい
うか運転手がいない。。。と、電車がトンネルに入った。
外は真っ暗だ。え?トンネル?当然、この路線にはトンネ
ルはおろか高架すら無い。車内の電気が消え非常用の赤色灯?になった。
バタン!
咄嗟に振り向くと連結部のドアを開け車掌?が入ってきた。
さっきからこっちへ向ってたやつだ。暗くて顔が見えない。
手には金属製の長いアイストングス(氷を挟む道具)のよ
うなものと、黒い大きな布袋を持っている。袋の中では何
かがゴソゴソと動いている。。。
ヤバイ・・・見つかった!
264:
6/7
どんどんと車掌がこっちに近づいてくる。本能が逃げろと
言ってるが体が動かない。情けないことに失禁寸前だった。
車掌は無言で接近してくる。もうダメだと思った瞬間、俺
の体を車掌がすり抜けた。
え・・・?
と、同時に強烈な、しかも妙に懐かしい匂いがした。
「まだ早えーよ」
そう聞こえたかと思うと、車掌は運転席に入って行った。
パァァァァ・・・ン
いきなりすごい日差しが車内に入ってきた。眩しくてしば
らく目が開かなかった。
新○浜ぁ?新○浜です。市営地下鉄をご利用の方は・・・
265:
7/7
アナウンスで俺の降りる駅名が流れた。ほどなく駅に着き、
俺は茫然としながらもなんとか降り、ヘナヘナとホームの
ベンチへ座り込んだ。一体今のは何だったのか・・・夢だ
ったのだろうか・・・時計を見ると1時10分だった。電車に
乗ってからちょうど30分。いつも通りだ・・・
数年ぶりに起こった「あっち側の出来事」にヘトヘトになり
ながらも、あの車掌について考えた。乗客はわかる。たぶん
飛び込んだ人達だ。しかしあの車掌だけはどうしても納得が
いかなかった。あの匂い、ふいんき、あれはまさに俺自身だったんだ。
どういうことだ?俺は将来、あっち側の車掌になるのか?そ
れに「まだ早い」と聞こえたが・・いつか俺が飛び込むとい
うことなのか?ふと足元の靴を見たら裏にベットリとドス黒
いものが貼りついていた。すぐに靴屋で新しい靴を買い、それは捨てた。
幸い今は勤務先が変わり、Y浜線は使っていない。しかし今
でも一体あれは何だったんだろうと謎のままだ。
おしまい。
268:
線は違うが御徒町で見つかっていない轢死体もその車掌が回収したんだろうか?
270:
どうも。
御徒町方面の路線は俺はあまり使わないんですけど・・・
アレにもやっぱ管轄とかあるんですかね?明らかに回収要員ぽかったけど・・・
俺も駅でJRの人が回収してるの見たことありますよ。大変なお仕事ですよね。
271:
>>270
処理に若い兄ちゃんたちバイトで雇うとか本で読んだけど、
ダイヤ狂ってる状態でそんな余裕なく社員自ら死体処理してるのかわからない。
偶にひいた車両に生首くっついてて、目と目が合うとか…
それと車内アナウンスでも特定の言葉を使うこともあるらしい。
俺と父は間柄悪くて母親から言づてに聞いたんだけどしばらく肉食えねっていってたね。
322:
孫玉
ほいじゃ投下。長めなので苦手な方はご注意ください。
東北某県の山奥にある実家にまだ住んでいた頃の話なんだけど
その地域では俺の一族が大地主だったらしく、
祖父に対して近所の連中がぺこぺこしてるというなんとも嫌な感じで、
正直俺は余り実家のことが好きじゃなかった。
んでそんな俺の実家には蔵がある。
家宝が云々とか言われているけど、なんのことはなく
ようは他方からの貢物を収めている。
そんな中でひときわ大切にされている玉があった。
用途は一切不明、黒ずんだ金属(何の金属かはわからん)製らしき玉で、
模様装飾その他は一切なし。
振るとカラカラ言った(子供の頃振って祖父に血を吐くほど殴られた)
なんなのかよくわからなかったけどただ
「最も大事な物、絶対に触るな」とだけ言われてきた。
絶対に触るなって言っても別に呪いがどうこうではなく、祖父曰く
「孫が入っておる。いつ生まれるかわからんから刺激はするな」とのこと。
どうやらその家の主に代々伝わる話があるらしく、それに関係しているらしい。
俺の父親は知っていたが俺はまだ知らなかったので、
気味が悪いとは思っていたが別にどうすることもなかった。
後で父親に聞いた話だと「孫」っていうのはその地域の土着神みたいなもの。
普通土着神っていうのはその地域に住んでいるものだけど、
「孫」は特別で、村が出来て人が住んでから他方の神様を持ってきたんだと。
その連れてきた人間っていうのが家の家系の1代目ってわけだ。
なんで「孫」っていうのかとか何故変な玉に入っているのか
生まれるってどういう事かとか、そういうことはわからんとのこと。
324:
>>322続き
そして去年の夏に心臓発作で祖父が死んだ。
俺と父親は家を出てきていたので当然家を継ぐことはなく、
つまりはこれで家主はいなくなるわけだ。で祖父の葬式のために実家に帰った。
俺はふとあの玉が気になって(言っちゃうと家を出てからずっと気になってた)
蔵に行ってみた。
そしたらあの玉が割れていた。綺麗に真っ二つ。
しかも割れてはじめてわかったんだがその玉はどうやら木製。
裏側に木目があって表面はなんかの塗料だったらしい。
当然そんな重いもんでもなく持ってみると軽い。
しかし子供の頃こっそり持ったあれは確かに金属の重さだった。
つまり「孫」には結構な重さがあったってこと。
なんだかぞっとして俺はその蔵から逃げ出した。
葬式を終えて今の家に帰ってから半年ほどして、
あの村で人死にが大量に出たと聞いた。
あっちでは呪いやら祟りやら言っていたが、俺は
なんとなくそれは違うような気がする。
だって家主が死んですぐ「孫」が生まれるなんておかしいから。
俺は「ああ、祖父で足りたんだなあ」と思った。
一体あの玉から何が生まれてしまったのかは知らない
でもまあ、もう俺はあそこには帰らないから知る必要もないかと思っている。
東北にでかけるときは何がいるかわかりませんのでご注意を。
28:
仏壇守り (創作)
その仏壇は部屋の中央、入り口正面の壁際にあった。
衣装ダンスを二周りほど大きくしたその黒い箱の両脇には、デスクが二つ箱に向けて置かれていた。
これらは総務1課長、2課長の席である。
彼らの部下達は、仏壇に向けて机を並べていた。つまり課長席とは90度向きが異なる。そして1課、2課の間は通路になっているため、部屋を開けるとまっすぐに仏壇を見据えることになる。あるいは見据えられることになる。
仏壇は格別に色の濃い黒檀で、表面に精巧な彫り物が施されているが、金具は取っ手と蝶番以外何もなく。全くの黒一色である。
そしてその扉は閉ざされている。常に閉ざされている。
この部屋の部署に配属された者は最初にこう言われる。
「決して触れるな。決して聞くな。決して語るな」
こうしてこの部屋には線香も花も供えられない仏壇があるのだった。
島崎も異動するなりそう言われ、最初こそ面食らったものの、慣れてしまえばどうということもなかった。課長の席の向きが変だが、課長に書類を見せている間にこの課で一番かわいい(だから一番前の席なんだろう、課長め)三波さんが隣に見れてかえっていいくらいだ。
雑務に追われ、たまには同僚と飲んで、ごくごくたまには合コンもして、そして最後には寂しく一人ワンルームマンションに帰る日々だった。
雑務と言いながら時には至急に対処しなければならない仕事もあり、そういう仕事が溜まって残業になることもある。
「お先、明日までな」と課長に言われて、島崎がひとりぼっちになったのは9時を回ったころだった。
「これ、徹夜じゃねぇの」
他人事みたいに言ってみて、却ってひとりげんなりする。そんなのやってられない。
(続く)
29:
(続き)
11時になる頃、一段落というよりも仕事に飽きて、ゆっくり伸びをした時、例の仏壇が見えた。
会社に仏壇?
日常の喧騒が消え去り、闇夜をわずかに電灯が照らすのみの今初めて気付く。なんだってこんな異常な事を今まで見過ごして来たのだろうか。自分自身の思考の不可解さに首の周りが気持ち悪く感じられた。
そっと席を立つ。
仏壇の前に立つ。自分の背より高いそれは、ひどく精神的に圧迫してくる。
軽く、ゆっくりと、触れてみる。
しばらくそのまま動かない。何もない。当たり前だ。
今度はじっくり撫でてみる。ひんやりと冷たい。そう言えば細かい彫刻に埃が積もっていない。誰かが掃除しているのか?あんがいあの掃除のおばちゃんだったり。
「決して触れるな。決して聞くな。決して語るな」
そらぞらしく抑揚を込めて呟いてみる。
「だいたい目障りなんだよな。部屋のど真ん中にありやがって」
両手が取っ手の鉄の輪に触れる。
開かずの仏壇。中身には全く興味が沸かなかったが、今まで開いたところを見たことがない仏壇を今日、こんな日に開けてみるのは面白いと思った。
しかし見た目が随分古めかしい。開けないんじゃなくて、もう開けられないんじゃないのか?
すっと手を引く。と簡単に開いた。
中には・・・何もない。いや、ひとつだけある。位牌だ。
もうここまで来ると何も怖くない。手に取って見てみる。何も書いていない。
無記名の位牌が壇上に1つ。隅から隅まで眺めたが、巨大な空間にあるものはそれだけだった。
なんとなく白けた島崎は扉を閉め、仕事に戻った。徹夜にはならず最終電車で帰れた。
(続く)
30:
(続き)
翌日島崎は異動を言い渡された。
昨日の仕事を意気揚々と渡したところでのカウンターパンチだ。しかも北海道の聞いたこともないような名前の支店だ。
「か、課長、俺が何を?」
「それは君が一番分かっているんじゃないの?」
今日中に荷物をまとめるようにと冷たく言われて追い払われた。
三波さんを見るといつもの笑顔で返してくれただけだった。
独身者だからといってあんまりだ。組合か?裁判か?机に向って怒りを煮詰めこんでいると、知らない宛名のメールが来た。
「3F東端の喫煙室」
それだけの内容だった。
しかし何か頭の隅にまとわりついてくるような気がした。
3Fの喫煙室。
島崎は煙草を吸わないので、煙まみれの異常な部屋にげんなりした。
なんとなく席に座っていると向こうが声をかけてきた。
伊藤と書かれた社員章をぶら下げたその男に促されて部屋を出ると、煙のいくらかも外にあふれ出た。それを通りがかりの女子社員が煙たそうにはたいていく。
「喫煙者は今では最悪の悪役だよ」
伊藤はそういって口だけで笑った。かけているメガネは分厚すぎるのか、レンズに直接目を描いたジョークグッズのように見える。
連れられた小部屋には、テレビやビデオデッキらしきものから編集機器まであるようで、まるでテレビの編集室みたいだ。うちの会社とは畑違いもいいところだが。
その部屋の真ん中のクッションのよくきいた席に伊藤は座り、島崎にはパイプの丸イスを勧めた。
ひどい無精ひげを掻きながら話し始めた。
「君もこのままでは納得いかないだろう。まず俺だが、単なる観察者だ。つばめの巣作り、アサガオの成長、超新星を観察する奴もいるらしいな。この辺りでは明るすぎて無理だろうが」
「いらついていて気長に付き合ってられないんだが」
「まあ待ちなって、話には順序ってのがある」
(続く)
31:
(続き)
伊藤がリモコンの1つを操作する。
するといくつも積み重ねられたテレビの1つが点灯する。映っているのは、
「あんたの部署だ」
確かにその通り、天井の片隅から部屋全体を映している。そして例の仏壇が見える。しかし社員の姿が見当たらない。いや、一人だけ机に向って仕事をしている社員がいる。その席はそう、島崎本人の席である。
テレビ内の島崎は大きく伸びをして、席を立った。
そしてゆっくり仏壇に近づいていく。
これは昨日の夜の映像だ。
やはり今朝の異動は仏壇が関係しているのか?しかしなぜ?
「もう1つも見てみよう」
伊藤が別のリモコンを操作すると、今映っているものの左側のテレビが点灯する。
こちらは真正面に仏壇が映っている。このアングルだと部屋の出入り口の真上にカメラがあることになる。そんなところにカメラがあったか?島崎は見た記憶はない。いや、確か空調のフィンがあったはずだ。その中に?
やがて左側のテレビにも島崎が映り、仏壇の前で立ち止まった。
そして仏壇の扉がゆっくり開かれる。
「ここからだ」
伊藤が左側の画面を指差す。
すると、仏壇の内部から黒い靄のようなものがあふれ出してきた。
それは重みがあるかのように床に溜まり、島崎の足のところで両脇に分かれてさらに先へと流れだす。
画面を見ていた島崎が驚いて右側のテレビを見る。
こちらではそんな黒い靄など見えず、ただ緊張感もなく仏壇を覗き込んでいる島崎が見えるだけである。
もう一度左側を見ると、二つの流れになった黒い靄は、先端が合流するところだった。1つになった流れはしばらく続き、突如三つ又に流れが変わる。
「ああ」
思わず島崎が呻いた。
三つ又になった流れはそれぞれ、右手、頭、左手の形になったのだ。根元の二つの流れはちょうど足に見える。島崎がそれに気付いた時、靄の動きが変わった。
右手に当たる部分が床に手を付き、そこから靄全体が前に進んだのだった。腹ばいのまま手足を前後させ前に進んでいく。その動きはヤモリか何かのように見えた。
(続く)
32:
(続き)
「こっちのカメラは特注でね。人間に見えない波長の光も捉えるんだ。まあ、それだけじゃなくて特別なチューニングを施しているけどね。ま、人には見えないものが見える」
島崎には伊藤の言葉がほとんど頭に入ってこなかった。仏壇からはさらに黒い靄が流れ出している。2体目だ。
全く同じ経過を辿って画面から消えていく黒い人型の靄。そして3体目が姿を表していた。
永遠に続く悪夢のように思えた現象は、画面内の島崎が仏壇の扉を閉めた事であっけなく終わりを遂げた。
「都合3匹」
伊藤がそう言いながらテレビを消した。そして机の上に置いてあった書類を三枚島崎の方へ投げかける。
会社向けの訃報だ。全然知らない部署の奴ばかりだ。
「死亡時刻と死因と死亡場所、死亡状況を見てみな」
・上野純平 加工食品事業部開発部主任 11時30分 窒息死 第3実験室 他の開発部員と製品開発作業中に突然昏睡状態に、救急隊員の到着時には既に死亡。
・高原幸太郎 ゲノム作物事業部副事業部長 11時42分 動脈瘤破裂 事業部長室 事業部の重役会議で発言中に即死。
・川辺喜一 瑞鶴警備派遣 11時35分頃 脳挫傷 巡回中に行方不明。他の警備員が捜索の結果、コンクリート製柱に頭部からぶつけた状態で発見。
島崎は眩暈がしてきた。
確かに時計を見ていたから覚えている。仏壇を開けたのは11時過ぎ。仏壇から這い出した黒いモノは3体、死人が3人。偶然で片付けるわけには・・・
「あいつらが憑き殺したんだ」
伊藤はあっさりと言う。
「つまり、俺のせいだっていうのか?」
伊藤が3つ目のリモコンを手に取った。
また1つテレビが点灯する。そこに映っているのはゲノム作物事業部の事業部長室だ。
事業部長を中心に年配の社員達が集まっている。副事業部長の高原がグラフや表の表示されたスクリーンを前に話をしている。
そこに例の黒い靄が、猿のように腰を曲げて二本足で歩いて現れる。当然誰も気が付かない。
黒い人型は高原に近づくと、ゆっくりと手を高原の胸に差し入れた。
途端に高原が胸を押さえて倒れる。他の連中が慌てて高原に駆け寄る。
そこで伊藤は画面を止めた。
(続く)
34:
(続き)
まさか、本当に?島崎はゆっくりと伊藤を見る。「知らなかった」で済まされる事なのか?
伊藤は眉と肩を上げてみせた。
「ま、事故だわな。代々そういう扱いにしている」
内心ホッとした自分が情けなくなる。
「左遷で済むだけマシって訳か。しかし、線香を上げに行く時間もないのか?」
異動先へは明日朝に発たねばならない。
「当たり前だ。仏壇と怪死は決して結びつけられてはならない。そう決まっている。お前さんも今見た事は忘れるか、墓まで持って行くかしてくれないと困る。俺が」
「今まで何度こんなことが?」
「俺がここに配属になって5年。その間、同じ事をやらかした間抜け・・・失礼、は8人だな。人間誰しも開けるなと言われたら開けたくなるわな。しかし、あれをあそこから動かす訳にはいかない」
「動かすとどうなる?」
「余計ひどい事になる。3年前にあんたの上司の前の前の奴が『撤去する!』と叫んでな。そうやって腕を振り上げた状態で死んだんだそうだ。その後、息子に娘さん嫁さん父さん母さん、半年間で全員死んだそうだ」
「ひどいな」
「ひどいだろ?それを見続ける俺の身にもなってみろよ。こんな仕事を5年もさせやがって、ひどい会社だぜ、まったく」
そう言うと不貞腐れたようにイスにもたれ掛かる。
「大体この特注カメラを何で取り付けてると思う?何かあったら偉いサンだけ逃げようって魂胆だったのさ。だから重役室にはこのカメラが付いている。
ひどい会社だぜ。ただ、オペレーターが報告しなけりゃそれも分からない。ま、偶然早く帰っていて報告できなかったってことも、あるんじゃないの?」
伊藤がキキキと笑った。
島崎は未だ頭の中が混乱していて伊藤の言葉が頭に入ってこない。だから伊藤が、自分自身今回の一件を防げる立場にあったのを棚に上げ、タブーを犯した本人に
どうにもならないこんなものを見せ付けて楽しんでいる悪趣味に気付けなかった。
「ま、死ぬわけじゃなし、異動先でも頑張んな」
伊藤に肩を叩かれて意識が戻る。
「あ、ああ、ありがとう、教えてくれて」
ふらふらとした足取りで部屋を後にする島崎。
(続く)
36:
(続く)
「死ぬわけじゃなし、か」
島崎が部屋を出た後で伊藤はそう呟き、リモコンを手に取った。
高原の死を写した画面が再生される。
倒れた高原に駆け寄って跪く社員達と反対に、黒い人型がゆっくりと背筋を伸ばした。
そしてやはりゆっくりと周囲を見回し、来た時と同じように部屋を出て行った。
「事の張本人が無事で済む訳ないだろ?せいぜい周りに迷惑をかけないように、誰もいない営業所に飛ばすわけさ。ひどい会社だぜ、まったく」
そう言いながら伊藤は陰険な笑みを浮かべキキキと呟いた。
(終)
40:
あ、題名が抜けてました
「仏壇守(ぶつだんもり)」
です。
連投スマソ
41:
>>40
乙でした。
47:
幻肢痛
おはようございます。
二年前に職場の機械に中指を
巻き込まれて、第二関節から
潰れて切れたのね。
痛いを通り越すってみんな体験
した事あまりないと思うけど
口では言い表しにくい、びりびりした感じ。
潰れてしまったんで、くっつける事は
出来なかったんだが
半年ほどで断面も塞がり、短い中指が完成したわけw
痛みも無くなった一年目、
たまぁ?に、無いはずの指先に激痛w
これにはマジで焦った。
ネットで調べたら、医学的に解明されてるらしい。
まぁ、それで安心していたわけだが
最近、祖父が急死する1時間前に
無いはずの中指に、強い力で握られた
感触を未だ怖くて忘れられん。
みんなに伝わるか分からんが
思わず怖くて書き込んでみる。
48:
>>47
無くなった手脚が痛むのは幻肢痛だよね
幻肢痛はともかく、お爺様が亡くなる前に握られる感覚って
不謹慎かもしれないが面白いな、初めて聞いた
ともかく、乙です
110:
手招き
小学5年生の頃の話
その日は林間学校でした。皆で作るご飯、お泊まり、とくれば後は肝試し
男3女3の六人グループで森の中を懐中電灯だけで散策して宿舎に戻る
といったありふれたヤツでした。その森は地元では自殺の名所と名高く、昼間でも足を踏み入れたくない場所です
よりによって私はしんがりをつとめるハメになりました。
途中で先生たちが潜んでいて、度々私たちを脅かして来ました。これが意外に怖かった
そしてゴール近くの目印である小川と小さな橋に差し掛かった頃、私はこの日一番の恐怖を味わいました。
何かにつられるように橋のそばにある大木を見上げると、
明らかに首吊り死体と思われるモノが静かに揺れていました
前をいく友達は気付いていない様子。私はきっとアレも先生達がしかけたモノに違いない。
と思い込んでその場を足早に後にしました
と、宿舎の明かりが見え始め、皆の緊張の糸が緩みきった頃に
最後の脅かし役が近くのサトウキビ畑からヌルっと現れました
白い着物をきたソレはうつむいていて顔は見えませんでしたが、こっちへおいで、と手招きをしていました
今までとは質の違う脅かし方で妙に不気味でした。
私達は、ワーキャー言う事もなくその場を走り去り宿舎に駆け込みました
最後のが一番怖かったね?と話ながら、先生たちに文句を言うと、先生たちの顔色が変わりました。そんな役いない。と
担がれてると思った私は先にゴールしていたグループや
後から来たグループにも話をしましたが、誰も見ていない…
うすら寒くなってきた私は、じゃあ橋のそばの首吊りは?と先生達に聞きました
それがトドメになったように、先生たちは肝試しを中止しました
後日、ユタのおばさんが家に祈祷をしにきました。手招きの話をすると
それはこんな感じだった?と招き猫の要領で、手を動かしました
私がうなづくと、それは「こっちへおいで」じゃなくて、「こっちへ来るな」って意味だよと言っていました。
111:
>>110
ユタって事は沖縄か。
114:
>>110
そういや、東洋と西洋とでは、手招きと追い払う時の手の動きが逆らしいね
126:
覚醒
三年の夏までは俺よりも頭悪いくらいだったのに、秋くらいに何故か覚醒。
気持ち悪いくらい頭良くなった奴がいた
同じバスケ部だったんだけど、勉強だけじゃなくて、
ある日を境に何かが乗り移ったみたいに上達していた。引退してたから意味は無いんだけど
本人も本気で気持ち悪がってて、「宇宙人に改造されたんじゃないか」と自分で言ってた
それで何を思ったのか三年の秋に、
俺と一緒に行く予定だった県外の私立大学から地元の国立へ進路変更した
そこは結構な難関なのに一発合格。しかも特別待遇
そいつは「何か怖いなww」って言ってた
で、俺は予定通り県外へ出て、ここ一年ぐらいそいつとは連絡していなかった
それで先週、そいつの訃報が入った
一年前までは病気なんて全然しないような奴だったのに、死因は心不全
殆ど原因不明らしい
大学へ入ってからもそいつの覚醒っぷりは凄かったらしくて、何かいろんな賞とかとってたらしい
その賞金や、貯めてたらしいバイト代とかが全部遺されて、
二十歳そこそこの癖に遺産相続やらまで行われた。何か知らんけど俺はバットとアンプをいただいた
127:
そういうのが全部遺書みたいに纏められてて、何だか不気味だった
自殺じゃないのかって疑われてたようだけど、調べてもやっぱり自然死としか言いようがない、
みたいなことを言われたらしい
俺の貯金は妹の学費に、とか、二十歳の大学生が書いて遺しておくか?
自然死なのに?
何か凄い怖い
あいつなんで死んだんだろう
141:
>>127
こういう話好きだ
175:
虫の入った瓶
学生時代の話です
友人Aの部屋に行くとガラス瓶が9つ置いてあった
1つの瓶には凄く大きなゴキブリが1匹、1つの瓶には大きなムカデが2匹、
他の瓶には名前が知らない大きな虫が数匹ずつ入っていた
1匹ずつ入っている瓶には文字が書かれた紙が入っており、複数匹入ってる瓶には入っていない
瓶の中に入った紙には知り合いBの名前が書かれた紙もあった
その内に1つの瓶で共食いが始まり、「飼っているのなら共食いする前に餌を入れてやればいいのに」と言うと「共食いさせる為に餌をやらないんだ」とAが言った
1匹だけになるとAが誰かの名前を書いた紙を入れた
なぜ紙を入れるのかは聞いても教えてくれなかった
後日、Bが授業中や放課後に奇声を上げ妙な行動をとるようになった
「虫が入ってきた」と服を脱ぎ出したり、叫んだりするが虫はどこにも見当たらなかった
そのうち、Bは殺虫剤を持ってくるようになって周りに撒いたり、Bの周りに置くタイプの虫除けを置くようになった
Bは水から虫の卵が入ってくると言いご飯を食べず風呂も入らず、
寝ると虫が食べに来ると言って眠らず窶れていった
その後、Bは学校を休み入院した
もしかしたらAの瓶に関係があるのではないかと思うと凄く怖い
176:
>>175
虫を共食いさせて行って最後に残った一匹って・・それもろ蟲毒じゃん。
立派な呪いの一つです。
212:
PCに映った女性
私は小学低学年のころから霊感というか霊を見ることが多いのです(過去50回以上は見ています)
といっても直接見たことは数回しかなく、鏡・ガラス・水の反射で見えることがほとんどです
これは昨日の深夜3時頃のことです
何時ものようにPCで仕事をしていたのですが左側にある
予備のPCのOFF状態のモニターに顔が移っていることに気付きました
最初は自分の顔だと思い気にもせずに3分くらい仕事に没頭していたのですが
その顔が突然、クルっと横を向いたんです(私は目を動かしただけで横を向いてません)
ギョッとしてよく見ると自分の顔ではなくて髪の長い女性の横顔でした(私はショートなので明らかに髪の長さが違います)
私の上半身に被るような感じで私以外の女性の肩から上が映っていたのです
髪は肩程度で顔はグレー、目の部分が真っ黒、顔が不自然に斜めに傾いていたのが印象的でした
次の瞬間女性が後ろ向き(私から見れば正面)になり同時に頭痛に襲われ意識が朦朧となりました
今までは一時的に憑依されても自力で振り払えたので
今回も大丈夫だろうとお経を唱えたのですが頭痛は治まりません
さらに顔面をかきむしられ首や耳の辺りも強く握られ「うぅぅぅぅ」という喘ぐような声が耳元で・・・
その瞬間に私は気を失いました
気付いたのは明け方5時過ぎくらい、頭痛は治まっていたけど首を捻ったのか首から肩にかけて痛みがありました
顔を洗いに洗面所へ行ってみると顔・首・耳のあたりが
真っ赤に腫れていて首の周りにはハッキリと手形が付いていました
喉に何か詰まっているような気がして唾を吐いたらかなりの
量の鮮血が混じっていて同時に喉と首に激痛が・・・
PCに映った女性の顔は横顔だけでしかもグレーだったので断言はできませんが思い当たる事はあります
先月高校時代のクラスメート(交通事故で即死)の葬儀に出席したのですが、
その時遺族の人から事故の衝撃で首が折れていたと聞いています
その子とは卒業後は同窓会で合うだけの付き合いでしたが
葬儀で見た遺影の髪の長さ・形が昨日PCに映った女性とそっくりだったのです
まだ首の痛みは完治してないけどなんとかこの投稿を書き上げて投稿させていただきました
213:
>>212
こえぇぇ
212と仲が悪かったわけでもないのにそんなことを・・・?
他にも過去の恐ろしい経験があるならまた書いて欲しいな
215:
>>212
意識を失うほどの頭痛ってかなりヤバイと思うよ
ひょっとして脳の病気かもしれないから病院行った方がいいよ
308:
足
うちはパン屋やってて、創業50年ぐらいになるのかな。
今は俺が跡継ぎ候補。
父親にケツ叩かれながら、修行しています。
パン屋は朝が早い、なんて言うけど、既に朝じゃないからな。まだ夜。
2時位に起きて用意するんだ。
最近は生地の用意任されてるから、俺1人だけがキッチンに立ってるわけ。
これ、一ヶ月前くらいかな?草木も眠る丑三つ時にドアの外に誰か立ってるんだよ。
上半分だけシャッター閉めてさ、下は俺が潜り抜けられるぐらいだけ開けてるんだけど。
足だけ見えるわけよ。
不気味な話なんだけどね。
そいつ何をするでもなく、気付くといなくなってる。
気になっては居たんだが、こっちも商売だしな。営業外の時間に構ってる暇は無いし。
ところが、最近になるとねこっちもアイツ来てるか気になっちゃってさ。
ついついふっとドアの方見ちゃうんだよ。
で、足があると「今日もか?」なんて習慣みたいになってるよ。
家族も元気だし、大した事故もしてないし、店もいつもと同じだしな。
一昨日ね、父親に話したんだよね。
「足が店に来てるぞ」ってね。
父親が「寝ぼけてるのか?」ってそれだけ言って終わったけどな。
昨日か、また生地の仕込みをしている時だったかな。
「足、いるかな?」ってパッと見たんだな。
そしたらいたんだよ。
足。
でもさ、昨日は髪の毛が少し垂れ下がってるのも見えたんだ。
あいつは一体なんなんだろうな。
310:
>>308
最初は髪は見えなかったわけだよね
伸びた・・・?それかその時は屈む姿勢になってたのかな・・・
どっちにしても怖いし、そのうち顔見えたら怖いからどうにかした方が
いいんじゃないか
461:
MD
3年前の話です。確か、高校に上がる前の春休みでした。
私はボランティアサークルに所属していて、
年の離れた人とも交流があるのですが、
その中の一人にバトン部に入っている高校生がいました。
ある日、彼女がミーティングの帰りに言ったのです。
「○○、オカルトって興味ある?」
私は「ん? ユーレイとかの話ッスカ?」と食いつきました。
後日、ミーティングで1枚のMDを渡されました。
(当時はMDだったんですね。懐かしい)
彼女は言うのです「これ、呪いのMDね」
内心では冷笑しながらも、とりあえず家で聴いてみる事にしました。
発表会で使う曲を選んでいたらしく、
内容はトランス、ヒップホップ、マーチといかにもな音楽です。
ラベルに書いてあるのは、丸い女性らしい文字で10曲のトラック名。
462:
ところが。
11曲目があったんです。
私は彼女に電話をかけました。不通でした。
少しビクつきながらも、そのまま流します。
アップテンポのトランス。クラシック好きですが、ノレなくもない。
その、3分43秒。(1、2秒の誤差はあるかもしれませんが)
「キュラキュラ」とカセットを巻き戻す音が。
いきなり、曲調が変わりました。
トランスからインドとかアラブとか、あの辺りの民族音楽に。
「びっくりした……」
私のMDコンポにはカセットデッキが付いていません。
少し落ち着いて考えれば、巻き戻し音なんて鳴るハズがないじゃないですか。
「担がれた……」
多分、編集したんだろうな。(当時はAudacityとかを知りませんでしたが)
苦笑しながらベロを停止に傾けます。(コンポはshape製の2004年ぐらいの奴です)
463:
……」
止まらない。
未だにシナプスが反転しそうなコードの音楽が流れ続けるんです。
接触不良を疑い、リモコンから停止させようとします。
「……なんで?」
怖くなった私はイジェクトボタンを連打しました。
当然のように、反応無し。
この時点で4分21秒です。モニタを凝視していましたから確実です。
ゴン……
ゴン…… ゴンゴン ゴンゴンゴンゴン!
何かを打ちつけるような音が鳴って、ノイズが流れました。
(あれは絶対にPCの打ち込みなんかじゃありません。生音でした!)
かなりいテンポの打ち込み。
音からイメージすると、コンクリに頭を打ちつけているような。
(そんな状況でそんな音を聞いた事は無いけれど、パニックになってて)
464:
それで、気付いたんです。体が動かない事に。
指は真っ白になっていて、ベッドの縁を握っていました。
私にこんな握力があったのか?
と思う程強く握っていて、ベッドの縁は少し歪んでいます。(木製なので)
本格的に怖くなって、体に力を入れるのですが全く動きません。
その時、聴覚だけは鋭敏で、コンポからすすり泣きが聞こえてきたんです。
耳をふさぎたいのですが、手は動かない。
泣き声はだんだん大きくなっていって、ついには叫び声が。
誰か助けて! と声を上げたいのですが、喉すら動きません。
465:
7分49秒。
再生が停止して、コンポが勝手にMDを吐き出して、GOOD BYEの表示。
爪の食い込んだ掌は血を滲ませていました。
「何かあった!?」
弟が私の部屋のドアを開けて飛び込んできました。
私は弟にすがり付いて泣きました。
今では殺意が湧く事がある弟ですが、あの時ばかりは感謝しています。
あの時、弟がとびこんで来た理由は、私が叫んでいたから、だそうです。
私の耳に聞こえた声は、もちろん私の声ではありませんでした。
466:
その出来事を彼女に伝えると、「ね? 凄かったでしょ?」と笑われました。
「私、あんな曲入れたつもり無いんだけどね。ちょー怖い」
選曲で集まった時、友達は泣き始めたそうです。
何よりも怖いのは渡してくれた彼女が私に楽しげに渡したことでした。
サディスト極まれり、といったところでしょうか。
以来、私のコンポは電源を入れてもつくことがなく、捨てました。
MDは怖いので粉々にハンマーで割ってから燃えるゴミに出しました。
さすがに、また戻ってきたなんてフランス人形みたいな事はありませんが、
寒がりになった気がします。
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