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鞠莉「Chocolate……」曜「泥棒?」


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ダイヤ「ええ、そうですわ」
鞠莉「コンビニやスーパーの片っ端からチョコレートというチョコレートを買い尽くすアイツ?」
曜「スイーツの名店からチョコレートベースのスイーツを買い尽くすアイツ?」
ダイヤ「どなたですの、その方々……」
鞠莉「名前からそんなの想像しちゃった☆」
ダイヤ「微妙に具体的ですのね……」
ダイヤ「そうではなくてですね、近頃この浦女で起こっている事件ですわ」
曜「この浦女で……」
鞠莉「事件?」
曜「どんな事件なんですか?」
ダイヤ「簡単に言ってしまえば、この校内に持ち込まれたチョコレートが盗まれる……と、言ったところですわね」
鞠莉「そのまんま過ぎるじゃない、退屈なネーミングねぇ」
ダイヤ「現時点の被害総数が5個や10個だったら、そんな事件になることなんてないんでしょうけれども、ね」
曜「……と、いうと?」
ダイヤ「校内根こそぎ、ですわ」
2:
ダイヤ「板チョコやチロルチョコはもちろん、ラングドシャのチョコクッキーやチョコチップクッキー」
ダイヤ「とりあえずチョコレートっぽいものは全部、盗難にあっているのです!」
鞠莉「へーそうなんだー」
曜「お腹空いてるのかな?」
ダイヤ「せっかくお話しているのですから、もうちょっと興味持っていただいてもよろしいのではないですか!?」
鞠莉「だって、名前の通り過ぎるんだもの」
曜「もうホンの少しでも捻りがあればよかったのにね」
鞠莉「例えば?」
曜「んー……『チョコレートの行方?カカオの香りは事件の香り?』とか」
鞠莉「……曜には荷が重かったみたいね」
曜「ええ!? ダメだった!?」
鞠莉「そうね、30点ってところかしら?」
曜「赤点じゃん!」
ダイヤ「人の話を聞いていますの!?」
鞠莉「はいはい。 それで、本題はなんなの?」
ダイヤ「はぁ……もう少しスムーズに話を進めさせていただきたいのですが」
3:
ダイヤ「本題は、この事件に……」
鞠莉「事件の犯人をとっちめればいいのね!?」
曜「そういうことなら、私たち二人で全前進!」
ダイヤ「いえ、違いますわ」
ようまり「えっ」
ダイヤ「むしろ逆で、この事件とは一切関わっていただきたくないのです」
鞠莉「私、理事長なのよ!? ほっとけるわけないわ!」
ダイヤ「確かにそうですが、恐らく犯人は生徒でしょう」
ダイヤ「だからこそ学校側の鞠莉さん達ではなく、生徒を束ねる生徒会長として、この事件を処理しなくてはなりません」
曜「目星はついているんですか?」
ダイヤ「……まぁ、概ね、と言ったところは」
曜「それなら、その犯人を監視して犯行現場で現行犯逮捕だ!」
ダイヤ「頭の頭痛が痛い、ってくらいの言葉の重複加減ですわね」
ダイヤ「犯人の目星をつけているとは言いましたが、10人前後に絞り込んだ、といった程度ですのよ」
鞠莉「じゃあこっちもAqoursメンバー総動員するわよ!」
ダイヤ「メンバーをそんな危険な目に合わせるわけにはいきませんわ」
6:
曜「それじゃあ、鞠莉ちゃん!」
鞠莉「ウチのボディガード連中を10人ばっかり引き抜いてきて……!」
ダイヤ「そんなことしたら目立ちますわよ!」
ダイヤ「そもそも、首突っ込むなって忠告しに来たんですのよ!? ちゃんと話聞いてますの!?」
鞠莉「そこが気になるのよ。 どうして曜と私に関わるなって、ワザワザ言いに来るワケ?」
ダイヤ「事件に関わるというのは、何も犯人を探すことだけが関与ではありませんわ」
曜「……被害者も事件の当事者、ってことですか」
ダイヤ「さすがは曜さん、どこかの金髪とは違って話が早いですわ」
鞠莉「ダイヤ、ケンカ売ってるの?」
ダイヤ「馬鹿と惚気は休み休みにしてもらえます? お二人が事件に巻き込まれないよう、心配しているんですのよ?」
曜「巻き込まれるって言っても、学校にチョコ持ってこなければ……あっ」
鞠莉「なるほど、ね」
ダイヤ「お気づきですか?」
ダイヤ「もうじきバレンタイン・デーだと」
鞠莉「つまり、ダイヤは曜と私に対して『盗まれたくなければバレンタインチョコは学校で渡すな』って忠告したいわけね」
ダイヤ「平たく言えばそうなりますわ」
7:
鞠莉「ホンット、回りっくどくてわかり辛いわねえ」
ダイヤ「そういう性分ですの」
曜「忠告、ありがとうございます」
ダイヤ「それでは、私は次もありますので」
鞠莉「次?」
ダイヤ「ええ。 全校集会でこの事件のことを公表するわけにはいきませんので、近々にチョコを持ってきそうな人にピンポイントで声をかけていますの」
曜「え? 公表したほうが、犯人に対して抑止力になるんじゃ……」
鞠莉「違うのよ、曜。 ……ねぇダイヤ、生徒会長って面子がそんなに大事かしら?」
ダイヤ「別に、生徒会長の面子なんて大したことではありませんの」
ダイヤ「『黒澤家』の名に恥じることのない働きをするまでですわ」
鞠莉「あっそ。 精々馬に蹴られない程度に頑張ってね」
ダイヤ「私を蹴るじゃじゃ馬が、鞠莉さんと曜さんでないことを願いますわ」
パタン
8:
曜「……鞠莉ちゃんとダイヤさんって、たまに大人っぽい会話するよね?」
鞠莉「そう? ただの皮肉と憎まれ口よ?」
曜「そうだとしても、やっぱり仲良しってのがよくわかるよ」
鞠莉「そりゃ、親友だからね」
曜「……ちょっと、妬けちゃうかも」
鞠莉「なーに言ってるのよ、マリーのステディは曜なのよ? もっと自信もっていいんだから!」
曜「えへへ、ありがとう!」
曜「ちなみに教えてほしいんだけど、ダイヤさんが言ってた『黒澤家の名に恥じることのない』ってのは、どういう意味だったの?」
鞠莉「ダイヤが『黒澤』ダイヤだから、よ」
鞠莉「ダイヤの来歴に『生徒会長在任中、校内を騒がす事件が起こった』って事実を残したくない、ってのがダイヤの考えね」
曜「あ、そっか。 全校集会で『事件がありました』なんて言ったら、ダイヤさんの経歴に傷がつくってことなんだね」
鞠莉「その通りよ。 まったく、無駄にプライドばっかり高いんだから」
曜「家督を継ぐっていうのは、そこまで気にすることなんだね……おっきな家柄ってのも、大変だなぁ」
曜「ところで、忠告あったけど……」
鞠莉「え? あんなもの、無視するに決まってるじゃない」
9:
曜「せっかくダイヤさんが理事長室まで足運んでくれたのに!」
鞠莉「事件のことはあんまり詳しくないけど、被害者は生徒なのよね?」
曜「それっぽい口ぶりだったよね」
鞠莉「それなら、この理事長室に置いておけば万事オーケーよ!」
鞠莉「この部屋は校外に出しちゃいけないようなヤバイ書類とかもあるくらいだし、セキュリティ対策はバッチリなのよ!」
曜「うーん……大丈夫なのかなぁ」
鞠莉「マリーの特大手作りチョコレートを持ってくるから、当日はおっきめのカバンで来てちょうだい」
曜「あはは! 私も手作りするけど、今の話聞いちゃったら……日曜日に渡そうかなぁ」
鞠莉「あ、それいいじゃない!」
鞠莉「日曜日は曜のチョコレートを一緒に食べて、14日は私のチョコを一緒に食べる」
鞠莉「ね、どう?」
曜「ちょっと太りそうかも……大丈夫かなぁ」
鞠莉「Aqoursの練習もあるんだし、ちょっとくらい大丈夫よ♪」
曜「えへへ、それじゃお言葉に甘えよっかな!」
鞠莉「それなら、日曜日は……」
10:
---
バレンタインデー 当日の放課後
曜(重っ……!)
曜(……さすがに、これだけのチョコ持って鞠莉ちゃんのところに行くのは気が引けるなぁ……)
曜(って言うか、チョコレート泥棒さんは根こそぎチョコ持っていくんじゃなかったの?)
曜(犯人に半分くらい引き取ってもらって……いや、それは渡してくれた子に失礼だもんね)
曜(花丸ちゃんあたりと一緒に食べようかな……さすがにこれ全部食べると、ちょっとどころじゃないくらい太る……)
曜(う?! どうすればいい……)
曜「あれ、ダイヤさん?」
ダイヤ「……曜さん、ですか」
曜(お……怒ってる、のかな?)
ダイヤ「あれほど、関与しないようにと言ったのに……」
曜「え? 私、鞠莉ちゃんには日曜日に渡したし、鞠莉ちゃんは理事長室においてたっぽいし」
ダイヤ「忠告、致しましたわよね?」
ダイヤ「盗まれたくなければバレンタインチョコは学校で渡すな、と」
曜「……まさか」
11:
曜「鞠莉ちゃん!?」
鞠莉「……曜……?」
鞠莉「その……ごめん……」
曜「うそ……でしょ?」
ダイヤ「理事長室が安全というのは、鞠莉さんの思い込みですわ」
ダイヤ「この事件が終息しない限り、この校内ではチョコレートにとって安全な場所なんて、ありませんわ」
曜「……私、ちょっと行ってきます」
ダイヤ「どちらへ行かれるというのですか? まさかお手洗いではないでしょう?」
曜「犯人を探して、鞠莉ちゃんのチョコ、返してもらいます」
ダイヤ「曜さん……! 事件に関与してはいけないと、何度言わせますの!?」
曜「すでに被害にあったんですよ! これ以上ない当事者じゃないですか!」
鞠莉「いいの、曜」
曜「良くないよっ!」
12:
ダイヤ「捜索は生徒会で行いますので、曜さんは動かないでくださいますか」
曜「そうは言っても!」
ダイヤ「仮に曜さんが犯人捜しに動いたと知れたら、それなら私も探す、私も一緒に、私も……」
ダイヤ「そうやって無数に増えていった無所属捜査員は、全校生徒の何割になると思いますか?」
曜「…………っ」
ダイヤ「少な目に見積もっても、およそ半数といったところでしょうね」
ダイヤ「統率者が不在の状態で浦女の半数が自分勝手に動けば、それだけ衝突が生まれやすくなります」
ダイヤ「衝突が生まれれば、ケンカも起きましょう」
曜「それは悲観的過ぎるんじゃないですか!?」
ダイヤ「最悪のケースを想定しただけですわ。 もっとも、私の手元に入ってくる情報が正しければ、もっと悪い事態になりかねませんが」
曜「それなら、生徒会を筆頭にして捜査隊を編成して……!」
ダイヤ「すでに対策本部は設置していますし、編成は生徒会メンバーのみですわ」
曜「それじゃあ私たちは、犯人が捕まるまで指咥えて待ってろって、ダイヤさんはそう言うんですか!?」
ダイヤ「それなら勝手に動いていただいて、生徒会はケンカが起きるまで指咥えて待ってろと、曜さんはそう仰るんですね?」
曜「それはっ……!」
13:
鞠莉「ちょっと、ダイヤ!」
ダイヤ「……言葉がキツくなってしまい、申し訳ありません」
ダイヤ「生徒会としても、それだけ今回の犯人には腹を立てているのです」
曜「私も、言いすぎました。 ごめんなさい」
曜「私……どうすればいいんですか?」
ダイヤ「今は、鞠莉さんを慰めてあげてくださいまし」
鞠莉「ダイヤ……」
曜「ダイヤさんは、犯人を?」
ダイヤ「犯人の捜査は生徒会のメンバーに任せています」
ダイヤ「私は被害者から事情聴取を担当していますわ」
ダイヤ「というわけで、鞠莉さん。 お話を聞かせてもらえますね?」
鞠莉「……ええ。 なんでも聞いてちょうだい」
ダイヤ「ご協力、感謝いたしますわ」
鞠莉「その前に、コーヒーでも飲まない? ずっとおしゃべりするのは、喉が渇くわよ」
曜「あ、私も手伝うよ」
ダイヤ「ありがとうございます。 いただきながら、確認をさせてくださいませ」
15:
---
鞠莉「はい、どうぞ。 それなりにいい豆使ってるんだから、味わってよね」
曜「なんだっけ、これ? なんか可愛い名前のヤツ」
鞠莉「コナのピーベリーね」
曜「そうそうそれ!」
ダイヤ「あの、あまり詳しいこと言われてもわかりませんので」
鞠莉「そ? とにかく美味しいから、まずは一口飲んでみて」
ダイヤ「……へぇ、コーヒーって苦いばっかりかと思ってましたのに、ちょっと見直しましたわ」
鞠莉「でしょ? 冷めないうちに終わらせちゃいましょ」
ダイヤ「そうですわね。 そんなにお手間を取らせるつもりはありませんので」
ダイヤ「まず、ちゃんとチョコレートは学校に持ってきましたの? 鞠莉さんなら家に忘れたってこともあるでしょう」
鞠莉「人をなんだと思ってるの、このオバサン!」
ダイヤ「それだけ吠えることができれば、緊張はしていないようですわね」
鞠莉「……アンタ相手に、緊張なんてすることないじゃない」
ダイヤ「ふふ、うれしいこと言ってくれますのね」
鞠莉「さっさと本題の聴取をしないさいな」
16:
ダイヤ「ええ、そうしますわ。 さて、被害にあったことに気が付いたのはいつ頃ですの?」
鞠莉「えっと……今からほんの30分くらい前、曜が来る前にチョコを用意しようとして、その時に……」
ダイヤ「紛失に気が付いた、ということですのね」
ダイヤ「チョコレートはどこに置いていましたか?」
鞠莉「紙袋に入れて、そこの机の上に置いていたわ」
ダイヤ「せっかく忠告したのに、持って行ってくださいと言わんばかりの場所に置きますのね……」
曜「紙袋は残ってるんだね……って、この袋!!」
ダイヤ「有名なんですの?」
曜「有名っていうか、めちゃめちゃ高いブランドの袋じゃん!」
鞠莉「ええ、曜とのデート用に用意した服を買った時のだけど……そんなに高かったかしら?」
曜「まぁ、普通の女子高生じゃ買えないだろうね……」
ダイヤ「ふん、金銭感覚はお嬢様ってことですの?」
曜「シャイ煮の時もびっくり金額だったもんね……」
ダイヤ「ということは、紙袋ごと盗んでしまうと、目立つから置いて行った……ということでしょうね」
鞠莉「目立つって、どうして?」
17:
ダイヤ「相変わらず察しが悪いですわね」
ダイヤ「普通の女子高生じゃ買えないようなブランドの紙袋を持っているというのは、それだけで印象に残りますわ」
曜「へー、犯人も頭切れるんだねぇ」
ダイヤ「犯人に感心しないでほしいのですが……」
ダイヤ「最後にチョコレートを確認できたのはいつ頃でしたか?」
鞠莉「お昼ご飯の時は無事だった、と思うわ」
ダイヤ「ということは、お昼からこの放課後までの3?4時間の間ですのね……」
ダイヤ「この部屋の鍵は?」
鞠莉「私が不在にしてる時は常にロックしてるわ」
ダイヤ「いえ、施錠状況ではなく所在のほうですわ」
鞠莉「紛らわしいのよ……んー、キーは私が常に携帯しているのが1本と、職員室に保管してあるマスターキーが1本、合計2本よ」
ダイヤ「この部屋の鍵が複製されている、という可能性は?」
鞠莉「この部屋のキーはディンプルキーよ? 複製には手間と時間がかかるわ」
曜「その手間暇かけて、重要書類よりもチョコを盗むなんて……!」
ダイヤ「そこまでして盗むのがチョコレートというのも信じられませんし、鍵の複製という線は薄いでしょうね」
19:
ダイヤ「職員室のマスターキーが使用されたということは?」
鞠莉「ないわね。 マスターキーの持ち出しは、理事長である私か、教頭の許可がいるもの」
ダイヤ「教頭先生は今日、出張のため不在でしたわね」
鞠莉「そ。 つまり、今日マスターキーを借りるには、私の許可が必要になるわ」
ダイヤ「寝惚けて貸し出した、ってことはありませんの?」
鞠莉「ホンットにアンタ、私に対して容赦ないわね」
ダイヤ「もっとも、鍵の貸出台帳に記帳がない以上、許可を取った形跡はありませんわね」
曜「あ、それじゃあ勝手に持って行ったとか!」
ダイヤ「マスターキーは職員室のキーロッカーに入っていますし、勝手に持ち出すのは不可能ですわ」
曜「誰もいない時間を見計らったとか!」
ダイヤ「どこの学校であっても、鍵の開いた職員室が無人になることはないでしょうね」
曜「じゃあ職員室の鍵を複製したとか!」
ダイヤ「用務員室に職員室の鍵はありますが、生徒が借りることは不可能ですわ」
曜「それならピッキングしたんだよ!」
ダイヤ「曜さん、思いつきでしゃべっていませんか?」
曜「……えっと、」
20:
鞠莉「曜は可能性を探っているだけよ?」
曜「そうそう! 私はどうにかして理事長室の鍵を開けたって可能性を……」
ダイヤ「……曜さん、どうかしました?」
曜「あ、いや。 ちょっと変なこと思っちゃって」
鞠莉「変なこと、って?」
曜「うんと、今の話を総合すると……」
曜「この部屋、チョコだけがあった密室だった、ってことですよね?」
ダイヤ「……今までの話だけでしたら、そうなりますわね」
曜「密室の理事長室から、チョコだけが消えた……」
鞠莉「曜! タイトルコール、カモン!」
曜「無茶振り!? え、え、えっと……」
曜「閉じられた理事長室?肖像画は見ていた? とか!」
鞠莉「やっぱり、荷が重いみたいねぇ」
曜「もう、それじゃやらせないでよー!」
ダイヤ「はいはい、イチャつくのは聴取が終わってからにしてもらえますか?」
曜「はーい。 ねぇ、そんなに変だった?」
鞠莉「そうね、火サスでも滅多に見ないくらいだったわ」
曜「火サスレベル!?」
21:
ダイヤ「はいはい、とりあえず聴取を進めますわね」
ダイヤ「……少し話は戻りますが、不在の時には施錠しているとのことですが、それはお手洗いの時でも、ですの?」
鞠莉「……そういえば、さっきトイレ行ったときはロックしてなかったかも」
ダイヤ「それは何時頃ですか?」
鞠莉「……気付く10分くらい前だったと思う」
曜「そこだよ! その時間に犯人はこの部屋に入って、鞠莉ちゃんのチョコを盗んだんだ!」
ダイヤ「断定するには早計ですわ、曜さん」
ダイヤ「鞠莉さん、チョコレートのサイズはどれくらいですの?」
鞠莉「私の曜に対する想いと同じくらいよ!」
ダイヤ「それでは聴取を終わりますが、」
鞠莉「冗談くらい通用するようになりなさいよ!」
鞠莉「だいたいこのくらいの、ハート型よ」
曜「でっか! カバンに入らないよ!」
ダイヤ「A3サイズくらいありそうですわね……」
ダイヤ「……ん? 大きい?」
鞠莉「もちろん、曜への想いと同じくらいだもの!」
22:
ダイヤ「ちなみに鞠莉さん、そのチョコレートの厚みはどれくらいでしたか?」
鞠莉「えっと、このくらい……5センチくらいよ」
曜「ぶ厚っ! めちゃめちゃ重そうだよ!」
ダイヤ「……そのチョコレート、もしかしたらこの部屋で一緒に食べようとしていた、とか」
曜「うん、そのつもり、だったんですけど……」
ダイヤ「……なるほど」
曜「わかったんですか!?」
ダイヤ「鞠莉さん、最後に確認します」
ダイヤ「本当に、お昼頃まではチョコレートは『無事』だったんですわね?」
鞠莉「…………ええ、『無事』だったわ」
ダイヤ「はぁ、わかりました」
ダイヤ「犯人はわかりませんが、手口は見えましたわ」
鞠莉「!?」
曜「え、本当!?」
ダイヤ「ええ。 これから説明いたしますわ」
24:
---
犯人は今日も、いつものように校内のチョコレートを手当たり次第に盗んでいました。
その犯行の意図は読めませんが、よほどチョコレートがお好きなのでしょう。
理由はともあれ、チョコレートを盗もうと校内を徘徊しているとき、理事長室から鞠莉さんが出ていくのが見えたのでしょうね。
鞠莉さんと曜さんは、校内じゃそれなりに有名なバカップル。
そして今日は2月14日、バレンタイン・デイ。
となれば、鞠莉さんと曜さんがいつもダベっている理事長室の中にチョコレートがあるのは、必然と言えますわ。
理事長室の中に誰もいないことを確認したのち、すぐに目標物を発見、確保。
しかし、そのチョコレートが大きく、これを持って移動するのは悪目立ちしてしまいますわ。
先ほど説明した通り、入っている紙袋ごと盗む、というのも目立つ行為ですわ。
うかうかしていると、鞠莉さんが戻ってきてしまうし、曜さんだって来るかもしれない。
時間は刻一刻と迫りつつあります。
焦った犯人が取った行動は……
バキッ、と、チョコレートを真っ二つ。
決して犯人が怪力だった、というわけではありません。
鞠莉さんは曜さんと二人で食べるため、チョコレートに溝を付けていたのでしょう?
二人で仲良く分けやすく、割りやすくするために。
こうして半分か、それよりも小さくしたチョコレートを持って、『失礼しました』とか白々しく礼をして、理事長室から何食わぬ顔して退室すれば。
戦利品を無事獲得した、というわけですわね。
私の推測は以上ですが、ご質問はございますか?
25:
---
曜「酷い……鞠莉ちゃんが作ったチョコを割るなんて!!」
ダイヤ「とは言え、手口はわかっても犯人がわからない以上、どうしようもありませんが……」
鞠莉「ダイヤ、アンタ……」
ダイヤ「まぁ、これで聴取は終わりに致しますわ」
ダイヤ「コーヒー、ごちそうさまでした」
ダイヤ「今頃、生徒会のメンバーが犯人を絞り込んでいることでしょうし、曜さんへのチョコレートは、私が取り返してみせます」
曜「よろしくお願いします、ダイヤさん」
ダイヤ「キチンと鞠莉さんから曜さんに渡してもらいたいので、見つけた場合は鞠莉さんにお返ししますわね」
鞠莉「……ありがとう、ダイヤ」
ダイヤ「ところで曜さん、今日はこの後、鞠莉さんをお借りしても?」
曜「え、どうしたんですか?」
ダイヤ「鞠莉さんに少しお話がありまして」
鞠莉「愛の告白でもするのかしら? でも残念、私には曜がいるわよ!」
ダイヤ「ふん、ご冗談を」
26:
曜「明日にはちゃんと返してくださいね?」
ダイヤ「ええ、チョコレート付きでお返ししますわ」
曜「あはは、頼もしいですね! 約束ですよ? それじゃ、また明日!」
鞠莉「ええ、また明日ね」
ダイヤ「……曜さんもいなくなったことですし、鞠莉さん」
ダイヤ「コーヒーのおかわり、いただけますか?」
鞠莉「……飲み足りないのかしら? それならまた明日来るといいわ」
ダイヤ「鞠莉さんが言い出したのでしょう? ずっとおしゃべりすると喉が渇く、と」
鞠莉「話って、何を話するの? 犯行の手口はもうダイヤが……」
ダイヤ「本当にあんな稚拙な手口だと思うんですの?」
鞠莉「……自分で立てた推理じゃない」
ダイヤ「ではおかわりをいただく前に、初めに先ほどの推理の粗探しから行いましょうか」
鞠莉「粗って、それじゃさっきのは……」
ダイヤ「曜さんを納得させるための口車、ですわ」
鞠莉「ますます最低になったわね、アンタ」
ダイヤ「ふん、なんとでも仰ってください」
27:
ダイヤ「その1。 思い出したのですが、この理事長室ってオートロックなんですよね?」
ダイヤ「それなら、お手洗いの際に施錠を忘れるもなにも、勝手に施錠されますわ」
鞠莉「…………」
ダイヤ「その2。 犯人がこの部屋でチョコレートを割ったというのなら、この部屋のどこかに割ったときの破片が散らばっててもおかしくありませんわ」
ダイヤ「さて、この綺麗に整理された理事長室に、そのような破片はありますか?」
鞠莉「…………」
ダイヤ「その3。 割りやすいようにチョコレートに溝を入れたといいましたが、あくまで推測でしかありません」
ダイヤ「それで、現物はどうなんですの?」
鞠莉「…………」
ダイヤ「黙っていては、私の否定を肯定しているのと同じことですわ」
鞠莉「結論は、何が言いたいの? ダイヤ」
ダイヤ「曜さんとの約束を果たしたい、と言っています」
鞠莉「……そう、それじゃあ犯人確保頑張ってちょうだい」
鞠莉「私はもう帰るから」
28:
ダイヤ「連れない親友ですのねぇ」
ダイヤ「はい、ご自分のカバンを忘れてはいけませんよ?」スッ
鞠莉「…………ありがと」
ダイヤ「それと、これで曜さんとの約束は果たしましたわ」
鞠莉「……どういうことかしら?」
ダイヤ「鞠莉さんのお手製チョコレートを鞠莉さんに渡した、と言っていますの」
ダイヤ「明日でも今晩でも、曜さんに渡してくださいな」
鞠莉「アンタ……!!」
ダイヤ「そう睨まないでくださいます?」
鞠莉「どこまで、知っているの?」
ダイヤ「何も知りませんわ」
ダイヤ「そのカバンの中に、『割れてしまった鞠莉さんのチョコレートが入っている』と想像しただけです」
鞠莉「それは……どうして……」
ダイヤ「否定なさらないのですね」
鞠莉「………っ」
29:
ダイヤ「どうして隠していたのか、正直に教えてくださいますか?」
鞠莉「……話さなきゃ、ダメ?」
ダイヤ「話さない場合、きっと鞠莉さんとは金輪際お話をすることはないでしょうね」
鞠莉「平たく言えば、絶交ってことよね?」
ダイヤ「小学生じゃありませんし、絶交だなんて言葉は稚拙ですわ」
鞠莉「はぁ……話してもいいけど、その前におかわりよね?」
ダイヤ「ええ、お手間お掛けします」
鞠莉「淹れながらだけど、教えてちょうだい」
鞠莉「どうしてダイヤは、私からチョコが盗まれていないって気が付いたの?」
ダイヤ「簡単なことですわ」
ダイヤ「この理事長室は、そんな簡単に侵入することはできませんし、この部屋で盗みを働くなんてもっての外です」
鞠莉「それじゃ、最初から盗まれてないって思ってたの?」
ダイヤ「いえ、ここ以外で盗難にあわれたのでは、と思っていましたわ」
ダイヤ「現に、鞠莉さんは『無事』という表現はするものの、一度も『無くなった』とは言っていませんし」
鞠莉「最後の確認が決め手、ってワケね」
30:
ダイヤ「薄々感づいていましたが、確信に変わったのはその時ですわ」
ダイヤ「それなら、この部屋にチョコレートはある、しかし曜さんに見せるわけにはいかないような状況になっているのでしょうね」
ダイヤ「例えば、割れてしまっていた、とか」
鞠莉「ほんと、アンタってば嫌味なくらい優秀よね」
ダイヤ「私は答えましたわ。 鞠莉さんからも教えてくださいますか?」
鞠莉「見せる前に……はい、コーヒー入ったわよ」
ダイヤ「ありがとうございます。 ……心なしか、先ほどと香りが違うようですが」
鞠莉「今度のはアンティグアっていう豆よ。 ピーベリーには一歩譲るけど、このあたりは好みの問題ね」
鞠莉「曜が好きなのよ、そのアンティグア」
ダイヤ「なるほど、酸味の後に甘味があって、コーヒーというのは奥が深いのですね」
ダイヤ「さて……問題のチョコレートは?」
鞠莉「…………はぁ。 仕方ない、か」スッ
ダイヤ「これがそのチョコレー……ト?」
ダイヤ「……なんというか、その」
鞠莉「……曜に渡す段取りしようと取り出した時に、バッキリと割れちゃったのよ」
31:
鞠莉「ダイヤはもう、結果を想像できていたんじゃないの?」
ダイヤ「……どの程度の被害状況なのか、そこまではわかりませんでしたわ」
ダイヤ「しかし、これは……」
鞠莉「ね? こんなの、見せるワケにはいかないじゃない?」
ダイヤ「ハートが見事に真っ二つですわね……」
鞠莉「お願いよ、ダイヤ! このチョコレートの修復、手伝って!」
ダイヤ「はぁ!? そのくらいご自分でなさい!」
鞠莉「なによ、ケチンボ!」
ダイヤ「ケチって、私はこれでも忙しいんですのよ! これから本当の犯人を追ったりしなければなりませんのに……!」
鞠莉「あ、そういえば、ダイヤ」
ダイヤ「今度はなんですの!?」
鞠莉「このチョコを修復して、曜に渡すとするじゃない?」
ダイヤ「ええ、さっさと直してさっさとイチャコラしてこればいいですわ」
鞠莉「でもね、このチョコレートは泥棒に盗まれたってことにしてあるじゃない?」
ダイヤ「ええ、そうですわね……あ」
32:
鞠莉「これを曜に渡すってことは、ダイヤ率いる生徒会が見事犯人を見つけて確保したってことよね?」
鞠莉「そうなれば、誰が犯人だったか聞かれるじゃない?」
ダイヤ「……そこまで、考えてませんでしたわ」
鞠莉「アンタってホントに中途半端に優秀よね!?」
ダイヤ「ああでも言って泥棒のせいにしないと、鞠莉さんが本当のことを言えないではないですか!」
鞠莉「そうだとしても、勝手に泥棒のせいにしたのはダイヤなんだから、なんとかしてよね!」
ダイヤ「元はと言えば鞠莉さんが無計画に大きいチョコレートを作って、挙句自分で壊したのが原因ではありませんか!」
鞠莉「でも曜を勘違いさせたのはダイヤなんだからね!」
ダイヤ「だったら勘違いさせないように、『本当は壊しちゃったんだ☆』とか言えばよかったんですのよ!」
鞠莉「この破損っぷりで、そんなの言えるわけないじゃない!」
ダイヤ「無駄に事を大きくしたのはご自分でしょう!? ご自身で解決!」
鞠莉「解決できるんなら……解決?」
ダイヤ「……鞠莉さん? あの、妙に目がキラキラしているのですが」
鞠莉「解決してやろーじゃない!」
ダイヤ「は?」
鞠莉「ふっふっふ……見てなさい、ダイヤ」
ダイヤ「何をなさるおつもりですか!?」
鞠莉「私が犯人をとっちめて、無能なアンタたち生徒会と違って、浦女の理事長は有能なんだってことを証明してみせるわ!」
34:
ダイヤ「認められませんわ! 動くのであれば、せめて私たち生徒会と一緒に行動してください」
鞠莉「……まぁいいわ。 人員は多いほうが便利かもしれないしね」
ダイヤ「なんですの? 人海戦術が通用するような相手ではないと思いますが」
鞠莉「ただ闇雲に校内を散歩するだけの作戦を人海戦術と呼ぶの? 情けないったらありゃしないわね」
ダイヤ「おかげで犯行が未然に防がれていることをお忘れなきよう」
鞠莉「そんないたちごっこ続けてたら、いつまで経っても犯人には届かないわ」
ダイヤ「そうおっしゃるくらいでしたら、鞠莉さんには犯人に届くための策はあるんですの?」
鞠莉「もちろんよ。 人手が必要になるのは、作戦の最終段階だけど、ね」
ダイヤ「……?」
鞠莉「家庭科室って今空いてる?」
ダイヤ「料理部が使っていなければ、恐らくは」
鞠莉「じゃ、空けてきて。 これから、犯人を捕まえるためのお料理をしましょう?」
ダイヤ「はぁ? 不祥事でもないのに部活を生徒会が止めるなんて、前代未聞ですわよ」
鞠莉「それならダイヤが一番目なのね。 やったじゃない!」
ダイヤ「まったく……」
ダイヤ『デルタより各隊、家庭科室の利用状況を報告せよ。 繰り返す、家庭科室の利用状況をデルタに報告せよ』
鞠莉「……なに、それ?」
35:
ダイヤ「今回のような緊急時には、生徒会メンバーには無線機を持たせていますの」
ダイヤ「携帯電話で連絡取るよりも、相互の連絡がわかりやすくて助かるのよ」
鞠莉「ふぅん……なるほど、使えそうね」
S『シーエアラ、遠方に付き他の隊に任せたい、シーエアラ遠方、送れ』
K『こちらキロ、今向かっている、キロ向かう、送れ』
R『ロメオ、到着した。 家庭科室は不在。 繰り返す、家庭科室は不在、送れ』
ダイヤ『こちらデルタ、家庭科室不在了解した。 各隊、作戦を継続せよ。 繰り返す、作戦継続。 通信終わり』
ダイヤ「というわけで、どうぞご利用くださいまし?」
鞠莉「……今の人たち、本当に生徒会?」
ダイヤ「ええ、もちろんですわ」
鞠莉「なんていうか、もっと訓練された、」
ダイヤ「生徒会のメンバーですわ。 さ、向かいましょうか」
鞠莉「……ちょっと待って、こっちも材料を用意させるわ」
鞠莉「もしもし、私よ。 これから読み上げる物、10分以内に浦女まで持ってきて」
鞠莉「バター100g、小麦粉、砂糖、粉砂糖を……1袋、生クリーム200cc、卵2個」
鞠莉「それと……」ゴニョゴニョ
鞠莉「以上よ、よろしくね」ピッ
37:
ダイヤ「……何をするつもりですの?」
鞠莉「なにって、決まってるじゃない、犯人を捕まえるのよ」
ダイヤ「いえ、家庭科室で何をなさるんですの?」
鞠莉「家庭科室ですることと言えば一つじゃない」
鞠莉「お料理よ!」
ダイヤ「……あの、お料理することと犯人を捕まえることが繋がらないんですが」
鞠莉「曜ならきっともう察しているわよ」
鞠莉「『そっか、チョコで犯人をおびき寄せてからとっ捕まえるんだね!』って、ちょっとズレた回答をくれるはずね」
鞠莉「正確には、チョコレートケーキを食べた後の犯人をとっ捕まえるのよ」
ダイヤ「……まさか、口の周りが汚れているとか、そんなつまらないことではないでしょうね?」
鞠莉「それこそまさかよ。 そんな単純な手段、思いつきもしなかったわ」
ダイヤ「それではどうやって……」
鞠莉「ふっふっふ……それはマリーにおまかせデース☆」
38:
---
N『こちらノーベンバー、被害ひとつ。 繰り返す、被害ひとつ、送れ』
B『ブラボー、被害ふたつ確認。 繰り返す、被害ふたつ、送れ』
F『こちらフォックストロット、被害ひとつ。 あ、めっちゃ高いチョコじゃんあれ! ……繰り返す、被害ひとつ、送れ』
ダイヤ『デルタからロメオ、応答せよ』
R『こちらロメオ、送れ』
ダイヤ『マイクは家庭科室でなにをしていますの? 送れ』
R『えっと……なんか、フツーに料理してるっぽいです、送れ』
ダイヤ『どんな料理ですの? 送れ』
R『あれって、パウンドケーキの手順っぽいよね? ブラボーは涎垂らしてます、送れ』
B『垂らしてないから! 変なこと言うのやめて!? 送れ!』
ダイヤ『ロメオとブラボー、同じ場所にいますの? 無駄な動きは控えろと言ったはずですわ。 送れ』
R『……ブラボー、すっごい勢いで走っていきました、送れ』
T『タンゴ、被害ひとつ確認。 これで何個目でしたっけ? 送れ』
ダイヤ『ヒトマルマルを超えたくらいでしょうか……送れ』
39:
I『こちら本部、インディア。 先ほどのタンゴの報告でマルフタヒトヨンの被害はハチハチですね、送れ』
ダイヤ「ふぅ……見過ごすわけにはいかない量ですわね」
ダイヤ「さて、鞠莉さんはそろそろ出来上がった頃でしょうか?」
ダイヤ『こちらデルタ。 ロメオ、マイクの料理はまだかかりそうですか? 送れ』
R『こちらロメオ、もう少しかかりそうです。 送れ』
ダイヤ『デルタ了解、こちらも家庭科室に向かいます、通信終わり』
ダイヤ「まったく、出来上がるまでどっか行け、だなんて……」
ダイヤ「鞠莉さんの作戦がわからなければ、生徒会として協力しようがありませんのに……」
ピリリリリ ピリリリリ ピッ
ダイヤ「……もしもし、鞠莉さん?」
鞠莉『シャイニー☆ こっちの準備は完了よ、とりあえず家庭科室まで来てちょうだい』
ダイヤ「ええ、今向かっています。 ところで、作戦は……」
鞠莉『こっちに来たら説明するわ。 全部、ね』
ダイヤ「それでは、よろしくお願いしますね」ピッ
40:
---
ガラッ
鞠莉「来たわね、ダイヤ」
ダイヤ「呼び出しといてそれですか?」
ダイヤ「それで、何を作っていたんですの?」
鞠莉「これよ」
ダイヤ「……パウンドケーキ、ですか? チョコレートの」
鞠莉「そうよ。 さっき割れちゃったチョコを使った、チョコパウンドね」
ダイヤ「これで犯人をおびき寄せるのはわかりますが、しかしどうやって……?」
鞠莉「一口食べる? あ、一口だけだからね?」
ダイヤ「鞠莉さん! 今は犯人を確保するための……!」
鞠莉「ま、一口食べてみればわかるわよ」ヒョイ
ダイヤ「ほんとうですの……?」パクッ
ダイヤ「………!!」
鞠莉「ね? わかった?」
41:
ダイヤ「これ、お酒ですの!?」
鞠莉「そ、香りづけのラム酒ね。 ただ、ちょーっと香りが強すぎちゃったかもしれないけど?」
ダイヤ「こそこそしていたのは、このラム酒だったわけですわね」
鞠莉「学校にお酒持ってこいって指示してるのがダイヤにバレたら、面倒じゃない」
ダイヤ「まさかこれで酔わせて、犯人を特定するつもりなんですの……?」
鞠莉「BINGO! これなら人探しのターゲットにもなって、人海戦術も効果的になるってもんじゃない?」
ダイヤ「……しかし、犯人は校内で食べるとは限りませんわ」
鞠莉「そうね、当然それも考慮して……こんなのも用意しているのよ」
鞠莉『生菓子だから、早めに食べてね♪』
ダイヤ「パウンドケーキって、生菓子なんですの? 焼いてあるように見えるんですが」
鞠莉「ええ、焼き菓子ね。 でもこうやって書いてあれば、早めに食べようって思うのが人間の心理よ」
ダイヤ「……そういうもの、でしょうか?」
鞠莉「大丈夫、きっと上手くいくわ」
鞠莉「……ところでダイヤ、肝心なもの忘れたんだけど」
ダイヤ「なんですの?」
鞠莉「ラッピング、どうしよっか?」
ダイヤ「……はぁ、とことん詰めが甘いですわね……」
鞠莉「テヘペロ☆」
42:
ダイヤ『デルタから各隊、誰か適当なラッピング用の包装紙かなにかありませんか?』
鞠莉「結局、生徒会頼みなのね?」
ダイヤ「忘れ物した誰かさんのせいですわ」
K『こちらキロ、赤い包装紙ならあります、送れ』
S『こちらシーエアラ、水色と、アルファが黄色を持っています、送れ』
ダイヤ「頼れる仲間ですから、頼らなければなりませんわ」
鞠莉「……楽しそうに生徒会やってんのね」
ダイヤ『こちらデルタ、キロの赤い包装紙がいいですわね、送れ』
K『キロ、了解。 生徒会室に置いとくね? 送れ』
ダイヤ『デルタ、了解。 各隊、作戦行動に戻れ』
ダイヤ『それと全員に作戦変更の連絡をしたいので、いったん生徒会室に戻ってください。 各隊、送れ』
43:
I『インディア了解。 送れ』
R『ロメオ了解、送れ』
N『ノーベンバー了解、送れ』
K『キロ了解、そのまま生徒会室にいます、送れ』
S『シーエアラ了解、送れ』
B『ブラボー了解、送れ』
T『タンゴ了解、送れ』
A『アルファ了解、送れ』
F『フォックストロット了解、送れ』
ダイヤ『各隊、了解。 通信終わり』
ダイヤ「さて、ラッピングを済ませれば作戦は最終段階ですわ」
鞠莉「そうね……これで曜に不必要な言い訳をしなくても済むわ」
ダイヤ「もともとの原因は鞠莉さん本人でしょうに……」
鞠莉「まだ言うの? 犯人のせいにしたのはダイヤよ?」
ダイヤ「ですからもっと丁重に……いえ、これ以上は平行線ですわ」
ダイヤ「犯人確保できたら、こんなやりとりは不要ですもの」
鞠莉「そのためには、生徒会メンバーに頑張ってもらわなきゃね」
ダイヤ「まずは生徒会室で、作戦の指示をお願いします」
鞠莉「ま、酔っぱらってるヤツを探すだけの単純なオシゴトだけどね」
ダイヤ「それを伝えるんですのよ、皆さんに」
鞠莉「任せといて!」
45:
---
ダイヤ「さて、皆さん集まりましたわね」
鞠莉「9人もいたのね……」
ダイヤ「私とマイクを含めて11人ですわね」
ダイヤ「それぞれの苗字か名前の頭文字を暗号として当てていますのよ」
B「私だけはキロとイニシャル被ってるから二文字目だけどね」
R「ブラボー? 私語は厳禁だからね」
ダイヤ「それでは……」
ダイヤ「本作戦の内容を理事長、マイクから説明してもらいます」
鞠莉「え? 私?」
ダイヤ「ええ、そうですわ。 発案がマイクなのですから」
鞠莉「もう、コードネームなら『マリー』でいいのに……」
ダイヤ「それではほとんど本名ではありませんか」
鞠莉「ま、いいわ。 コホン……」
46:
鞠莉「みんな、作戦はいたって簡単よ」
鞠莉「一つ、3年A組にこのマイクお手製の『ラム酒たっぷり☆シャイニーケーキ』がすでに設置済みです」
鞠莉「二つ、どこかのタイミングで犯人が勝手に持っていきます」
鞠莉「三つ、各隊が巡回中、3年A組にケーキがないことを確認します」
鞠莉「四つ、一緒に添える置手紙により、犯人がそれを食べます」
鞠莉「ここからが本作戦開始です」
鞠莉「五つ、後は校内で酔っ払いを探すだけ」
鞠莉「作戦本部はここ生徒会室として、私は……マイクは本部にて待機、無線通信に参加します」
鞠莉「以上! 質問は!」
F「あの……そんな簡単にいくかな?」
I「今のまま無作為に探し続けるよりは、よっぽどマシじゃない?」
F「ですよねー! ですよねー!」
47:
鞠莉「他はないみたいね」
ダイヤ「マイク、作戦名は?」
鞠莉「えっ」
鞠莉「えーと、そうね、えーと、」
鞠莉「開かれた扉?ラム酒の香りに誘われて?、とか」
ダイヤ「それでは作戦名『未成年飲酒取締』開始! 各隊、散会!」
IRNKSBTAF『了解!!』
鞠莉「せっかく考えたのに!」
48:
---
S『こちらシーエアラ、まだフェーズ3です、送れ』
鞠莉『頻繁に見回っていては、犯人も寄り付けないわ。 もう少し間隔空けて、送れ』
A『アルファ、被害ひとつ確認、繰り返す、被害ひとつ。 送れ』
鞠莉『マイク、了解。 ひとつ、っと。 送れ』
ダイヤ『こちらデルタ。 アルファの現在地は? 送れ』
A『被服室です。 演劇部の子が被害にあったみたいですね、送れ』
ダイヤ『……まだ3年の教室には遠いですわね、了解、送れ』
N『こちらノーベンバー、もしかして犯人は複数人いるのでは? 送れ』
鞠莉『……そういえば、その可能性を考えていなかったわね。 どうする、デルタ? 送れ』
ダイヤ『組織的であったとしても、一人捕まえられたら芋づるですわ、送れ』
鞠莉『ふぅん? そんなもんなの? 送れ』
ダイヤ『手荒な真似はしませんので、ご安心を。 送れ』
鞠莉「手荒な真似って、怖いこと言わないでよ……」
鞠莉『マイク、了解。 通信終わり』
鞠莉「ふぅ……本部って、案外暇なのねぇ」
鞠莉「この部屋、コーヒーないんだもの。 つまらないわよねぇ」
49:
R『ロメオ! こちらロメオ! 作戦本部、応答して!』
鞠莉「あら、緊急事態?」
鞠莉『こちら本部、マイク。 どうしたの、ロメオ』
R『フェーズ3終了、繰り返す、フェーズ3終了! 送れ!』
鞠莉「!?」
鞠莉『無くなってたのね!? 送れ!』
R『そりゃもう跡形もありません! 送れ!』
鞠莉『各隊に通達! 本作戦はフェーズ3が完了した! 同時にフェーズ4も終了したものとして、本作戦をフェーズ5へと進行する!』
鞠莉『みんな、頑張って酔っ払いを探してね! 通信終わりっ!』
鞠莉「さぁて、楽しくなってきたわよ……!」
50:
---
ダイヤ『こちらデルタ、デコイの包装紙を発見した! 場所は中庭! 送れ!』
鞠莉「中庭って、ずいぶんと目立つところで堂々と食べるのね……!」
鞠莉『マイク了解、各隊、中庭近辺を集中的に捜査すること! 送れ!』
鞠莉「……中庭?」
鞠莉「いくらなんでも、持って行ってから移動して食べるまで早すぎる……?」
鞠莉「3年生の教室のある3階から中庭まで結構距離あるはずだけど……」
A『デルタ、それって本当? あ、こちらアルファ、送れ』
ダイヤ『こちらデルタ、本当もなにも、さっきまで見た包み紙ですわよ、見間違えたりなんてしませんわ。 送れ』
A『いやね、屋上にいるんだけど、こっちにも同じ包装紙があるんだよね、送れ』
ダイヤ『……まさか、この包装紙……』
ダイヤ『やられましたわ! 包装紙、半分以下のサイズですわ! 送れ!』
B『こちらブラボー、どこか別な場所で食べて、包装紙が散らばったってこと? 送れ』
F『フォックストロット、きっとそうだろうね。 捜査に勘づいての攪乱か、ただの迷惑行為かはわかんないけど。 送れ』
鞠莉「…………屋外で食べた、ってこと?」
鞠莉「ううん、教室で食べてから外に投げ捨てた、ってことも考えられる……」
鞠莉「でもそれって、『捜査の攪乱』って目線であって、犯人はこっちが追っていることに気が付いていないとしたら……?」
鞠莉「……Oh my godness、読み違えていたかもしれないわ」
51:
鞠莉『こちらマイク、各隊、さっきの中庭近辺中心の捜査は中止とし、校内を重点的に捜査せよ、送れ』
鞠莉「こんな状況、どうやって指示出せばいいのよ!?」
T『こちらタンゴ、まだ被害が増えてます! 被害ひとつ、繰り返す、被害ひとつ、送れ』
鞠莉「……! どうして!?」
ダイヤ『こちらデルタ、落ち着きなさいマイク! タンゴ、場所は? 送れ』
T『図書室です、送れ』
ダイヤ『フェーズ3が終わる前の被害が今わかったってだけかもしれませんわ。 まだ組織的犯行と断定するのは早計ですわ、送れ』
鞠莉「……、そうね、落ち着かなきゃ」
鞠莉『こちらマイク、図書室被害ひとつ、了解。 送れ』
I『こちらインディア、ふらついている女生徒発見! 犯人かと思われますので、尾行します! 送れっ!』
鞠莉『インディア、場所は!? 送れ!』
I『えっと、2階廊下です、送れ!』
鞠莉『そのまま尾行して、確定次第確保! 送れ!』
?『……我慢できません! イェーガー、確保に動きます!』
鞠莉「え!? ちょ、誰?」
52:
ダイヤ『イェーガー!? どちら様ですの!? 送れ!』
?『シーエアラって人から無線機を借りた、一般生徒だよっ!』
ダイヤ『はぁ!?』
F『イェーガーって、Jだよね? Jってジュリエットじゃなかった? 送れ』
B『Yじゃないの? 送れ』
T『ヤンキーって名乗るのがイヤだったとか? 送れ』
ダイヤ『貴女達はもう少し緊張感もてませんの!? 送れ!』
?『えっ、イェーガーってYじゃなかったの!?』
鞠莉「……、この声!?」
鞠莉『帰ったんじゃななかったの……』
鞠莉『曜!』
曜『コードネーム、イェーガー改めヨーソロー、無事に犯人確保!』
曜『って、この子……!』
鞠莉『曜! そこから動かないで! ダッシュでそっち行くから!』
ダイヤ『ああもう! ちゃんと名前と符合守ってくださいまし! 各隊、2階廊下集合、通信、終わり!』
53:
---
鞠莉「曜! 帰ったはずじゃ……!」
曜「鞠莉ちゃん……ごめん、気になって戻ってきたんだ」
曜「そしたらなんか面白そうなことしてるし、私に内緒で犯人捜ししてるし!」
曜「って、それよりも!」
鞠莉「犯人……貴女だったなんてね?」
花丸「あぅ……世界がマルを中心に回るずら……」
鞠莉「効果てきめん、ねぇ」
I「あはは、私、水持ってくるね」
鞠莉「インディアだったわよね? お願いするわ」
ダイヤ「はぁ、はぁ……花丸さん、だったんですか?」
鞠莉「シャイニーケーキ食べたんだから、きっとそうね」
曜「ケーキ……?」
54:
ダイヤ「曜さんの言い分はまたあとで聞きますわ」
ダイヤ「それよりも、花丸さん。 まずは場所を移動しましょうか。 立てますか?」
花丸「あ、うん……なんとか」
曜「花丸ちゃんが鞠莉ちゃんのチョコを……」
鞠莉「曜、個別の話はあとで、ね? まずは全体の話を聞かないと」
I「デルタ、水持ってきたよ」
ダイヤ「ありがとうございます。 インディアは、まだ戻らない他の隊との合流を優先してください」
I「はーい」
ダイヤ「花丸さん、お水ですわ。 ゆっくり飲んでくださいませ」
花丸「んぐっ……んぐっ……ぷはー」
鞠莉「いい飲みっぷりねぇ」
ダイヤ「さて、生徒会室まで移動しましょうか」
花丸「は、はい……」
55:
---
ダイヤ「さ、お掛けになって」
花丸「おー、ふっかふかー!」
曜「すっかりいつも通りだね……」
ダイヤ「さて、どこからお話を聞きましょうか……」
花丸「あの、皆さん顔が怖いずら……」
ダイヤ「花丸さん、『チョコレート泥棒』事件はご存知ですか?」
花丸「あの黒くて甘い未来なお菓子をコンビニから買い占める人ですか?」
鞠莉「そのネタ、もうやっちゃった☆」
花丸「そんなー!」
ダイヤ「鞠莉さんはちょっと黙ってくださいますか!?」
ダイヤ「それで、本当にご存知ないのですね?」
花丸「う、うん。 そんな怖い人、知らないずら」
曜「ふぅん。 怖い人、ねえ」
ダイヤ「曜さんも、早とちりするかもしれませんので、口は閉じたほうがよいかと」
曜「……うん」
ダイヤ「それでは、この浦女で最近起こっている、チョコレートが盗まれるって事件に聞き覚えは?」
56:
花丸「あ、そういえば善子ちゃんが今のお昼ご飯の時に、そんなこと言ってたよ」
花丸「リトルデーモンたちからの献上品がどうの、って」
花丸「マルとルビィちゃんで昨日、善子ちゃんにチョコあげようって一緒に買ったんだけど、それがなくなってたみたい」
曜「え……?」
ダイヤ「…………なるほど」
花丸「あの、その事件の泥棒さんって……?」
ダイヤ「その方を今探していますの」
ダイヤ「次に、3年生の教室にあったチョコレートケーキを食べた理由は?」
花丸「マル、もらったチョコしか食べてないずら! そんな人様の食べ物に手を出すほどいやしくないよ!」
鞠莉「ダイヤ、どういうこと?」
ダイヤ「いえ、もうちょっと、話しを聞いて……」
F『こちらフォックストロット、本部! 応答願う!』
ダイヤ「申し訳ありません、ちょっと失礼します」
ダイヤ『こちらデルタ、本部。 フォックストロット、どうかしましたか? 送れ』
花丸「おー、未来……ずら?」
曜「どっちかって言うと、時代を逆行してる感はあるよね」
57:
F『1年教室で被害ひとつ、繰り返す! 被害ひとつ! 送れ!』
ダイヤ「やっぱり、そうでしたのね」
ダイヤ『デルタ、了解』
ダイヤ『事件は終わっていませんわ。 各隊、捜査を続けられよ。 通信終わり』
鞠莉「終わってないって、どういうことよ!」
ダイヤ「聞いての通りですわ」
ダイヤ「花丸さんは犯人ではなかった、それだけです」
花丸「マル、犯人なの!?」
ダイヤ「いえ、その疑いが強かったんですが、その容疑も晴れましたわ」
花丸「ほっ……助かったずら」
ダイヤ「それで、チョコレートケーキは貰い物だったわけですよね?」
花丸「うん、そうずら」
ダイヤ「どなたからもらったか、わかりますか?」
花丸「ううん、知らない人だったんだけど」
ルビィ『スクールアイドルやってるから、きっと花丸ちゃんのファンなんだね!』
花丸「って、ルビィちゃんが」
58:
ダイヤ「その方からもらったケーキを食べて、酔っぱらったと」
花丸「あれが酔払うってことなのかなぁ。 初めて食べる味だったから、美味しくてついつい食べきっちゃって」
花丸「そしたら、マルを中心に世界が回りだして、クラクラして、曜さんに飛びつかれて……」
ダイヤ「今に至る、ということですわね」
鞠莉「ケーキを渡した相手が何年生かわかるかしら?」
花丸「コート着てたから、リボンの色がわからなかったずら……」
ダイヤ「他に、相手の特徴か何かわかりますか?」
花丸「うーん、あんまり特徴がなかったような……」
花丸「って、もしかしてマル、その泥棒さんに直接会ってたってこと!?」
ダイヤ「断定できませんが、恐らくその可能性が一番高いかもしれませんわ」
花丸「その泥棒さん、どのくらい盗んでるんですか?」
ダイヤ「……数えてはいませんが、とにかくいっぱい、ですわね」
花丸「そんな!」
花丸「マル、ちょっと学校内を見回って、マルに渡してくれた人を探してくる!」
ダイヤ「いえ、それはやめたほうがいいですわ」
花丸「どうして!?」
59:
ダイヤ「顔を覚えていないのでしょう? それなら、探しても見つかりませんわ」
花丸「見たら思い出すかも!」
ダイヤ「犯人は生徒会で追っています」
鞠莉「あとプラス私もね」
曜「臨時で私も!」
ダイヤ「曜さんは勝手に加わっただけですわ」
ダイヤ「……ですので、一般生徒はこれ以上の手出しは無用ですわ」
花丸「……はい、わかりました」
ダイヤ「もう暗くなってきますし、そろそろお帰りください」
花丸「うん、それじゃあ……失礼しました」ペコ
ダイヤ「はい。 これまでのご協力、感謝いたしますわ」
花丸「善子ちゃんの盗まれたチョコも、取り返してくれますか?」
ダイヤ「……約束はできませんが、善処しますわ」
花丸「はいっ! よろしくお願いします!」パタン
鞠莉「……結局、犯人はわからず仕舞いね」
ダイヤ「今回、花丸さんは犯人に利用されただけの、いわば被害者だったわけですわね」
ダイヤ「誰かさんの作戦がそのまま裏目に出た、と」
鞠莉「それは結果論でしょ。 そのまま犯人が捕まえられたかもしれないじゃない」
ダイヤ「……それもそうですわね」
60:
鞠莉「なんか……ヤケに素直じゃない?」
ダイヤ「ここで鞠莉さんにきつく当たっても、ただの八つ当たりですもの」
曜「ダイヤさん……」
ダイヤ「そういえば、曜さんにも約束していましたわね」
ダイヤ「犯人を捕まえて鞠莉さんのチョコレートをお返しします、って」
ダイヤ「申し訳ありませんが、そのお約束は果たせそうにもありませんわ」
曜「いえ、構いません。 って、鞠莉ちゃんのチョコが惜しくないわけじゃないんですけど……」
曜「ここまで大きな事件になってるって知らなかったから」
ダイヤ「犯人については、またこちらで……生徒会で対策を立てますわ」
ダイヤ「曜さんと鞠莉さんも、今日はお引き取りください」
鞠莉「力になれなくてごめんね、ダイヤ」
ダイヤ「構いませんわ。 もともと生徒会の仕事ですし」
曜「それじゃダイヤさん、あの……頑張ってくださいね」
鞠莉「また明日ね」
ダイヤ「お気遣い、感謝いたしますわ。 ……お気をつけて」
61:
---
曜「結局、犯人わからなかったね」
鞠莉「そうね……」
鞠莉「捕まえられるって、思ってたんだけど……」
曜「……ね、鞠莉ちゃん! 事件のことでずっと気に病んでても仕方ないしさ」
曜「これから鞠莉ちゃんの家行っていい?」
鞠莉「もちろんいつでもウェルカムだけど、急にどうしたの?」
曜「えへへ……さっき帰りに、これ買ったんだ!」
鞠莉「チョコ、の割れたヤツ?」
曜「うん。 こういう割れチョコって、製品にできないヤツの詰め合わせなんだけどさ」
曜「これって結構高いチョコばっかり入ってるから、これで一緒にチョコケーキ作れたら美味しいかなって思って」
鞠莉「ええ、ナイスアイディアね!」
曜「スポンジから作る? それともチョコクリーム?」
鞠莉「時間はかかるけど、スポンジから作りましょ」
鞠莉「幸い、材料はあるわけだしね」
63:
曜「そうそう、花丸ちゃんが食べたって言うケーキ、なんて言ったっけ?」
鞠莉「え……ええと、パウンドケーキよね?」
曜「そうだっけ? 私にはシャイニーケーキって聞こえたけどなー」
曜「ってことは、たぶん鞠莉ちゃん手作りのパウンドケーキってことだよね?」
鞠莉「ち、違うの、曜! これにはワケがあってね!?」
曜「そうだよね、私よりも先に犯人が食べるケーキを、鞠莉ちゃんが作るわけないもんね?」
鞠莉「うぅ……いや、理由が……」
曜「……あはは、冗談だよ」
曜「ただ、ちょっと妬いちゃっただけ」
鞠莉「妬くって、誰に?」
曜「鞠莉ちゃんのケーキを、私よりも先に食べた花丸ちゃんに」
鞠莉「あら……ずいぶん可愛い嫉妬してくれるのね?」
曜「たまにはこういうワガママも言いたくなっちゃうよ」
鞠莉「この前も言ったけど、曜はもっと自信をもっていいのよ」
鞠莉「私の恋人は曜なんだから、ね?」
曜「……ありがとう、鞠莉ちゃん」
64:

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