女「寒いなぁ…」男「そっか」back

女「寒いなぁ…」男「そっか」


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1:
冬が好きだ。
何よりも寒いのが。
手袋にマフラーだってできる。
寒いのを口実に抱きついても許される。
夏場はそうはいかない。
だから冬が好き。
寒いなぁ…とぼそっと呟いた。
君はどうしてくれるんだろう?
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2:
女「ねえねえ、男は冬って好き?」
男「うーんどうだろう。寒いのは嫌かな」
女「そっか…ちょっと残念だな」
男「でも冬は好きだよ?星も綺麗だし雪も降るから」
女「よかった。そうだ、今日流星群来るじゃん」
男「そっか、そうじゃん。見に行くの?」
女「ちょっと迷ってるんだよねー」
分かりやすく「誘え」ってアピール
男「あははっ。じゃあ行こうか?」
女「うんっ!」
男「何時ぐらいからだっけ?」
女「んーとね…確か11時ぐらいからだったかな」
男「じゃあ10時ぐらいに待ち合わせしようか?」
女「いいよ。場所は?」
男「神社の近くのとこでどう?」
女「分かった。それじゃまた後でね」
男「うん」
3:
天体観測デートだ やったね
男も私もお互いに好きだって分かってるのに
全く告白をしようとしないで
ズルズル仲良しのままなんだよね
そろそろ告白してくれないかなぁ…
いや、別に私が告白しても良いんだけど…
女「早いね…まだ9時半だよ?」
男「女だってそうじゃん」
女「確かにそうだね…行こっか」
男が早めに来てる、それだけで嬉しくなる
女「ねえねえ、少し神社に寄っていかない?」
男「神社?」
女「うん。私、夜の神社ってわりと好きなんだ」
男「いいよ、寄っていこう」
神頼みもたまには良いよね?
4:
女「良いよねーこういう雰囲気。なんて言うんだっけ?」
男「ホラー、かな?」
女「なんか違うと思うよ?」
男「なんだろうね…まあ雰囲気は確かに良いね」
女「でしょでしょ!ほらお参りしよ」
男「お参りまですんのかい…」
チャリンチャリン
ペコペコ
パン!パン!
男、女「………………」
ペコッ
女「何をお祈りしたの?」
男「お祈りしたことを言ったら叶わなくなるってばーちゃんが言ってたから言わない」
女「何それ?」
男「分かんない。迷信かもね」
女「なら教えてよー」
男「やだ」
つまんないの 教えてくれても良いのに
5:
男「ここ、2人で来るのは久しぶりだね」
女「誰かと来たりするの?」
男「友だちと来たり1人で星を見に来たりね」
女「へぇ…、あ、そこ滑るよ」
男「おっと、ありがと」
手、繋ごうか?なんて期待してないもん
女「ふぅ…やっと着いたね」
男「そうだね…大丈夫だった?」
女「うん…あーちょっと寒いかな」
男「良かったらコート着る?」
女「大丈夫。ありがとね」
遠回しに言うんじゃダメなのかな
6:
男「ね、街めっちゃ綺麗だよ」
女「うわぁ…ほんとだ…すごい」
男「嫌なこととかあるとさ、たまに来るんだよね」
女「そんな場所、私に教えて良いの?」
男「んー女なら良いかなって」
ずるいよそんなの…期待しちゃうじゃん…
女「あのさ…それってどういうこと?」
男「あっ…うーん…お好きなように」
お好きなように?
女「良いの?ほんとに好きなようにとっちゃうよ?」
男「うん、いいよ」
女「それってさ…あ…」
男「ん?」
女「今、流れ星が見えたの」
男「なんかお願いできた?」
女「そんな暇ないよ。気づいた時には消えちゃったもん」
怖気づいちゃった
肝心なとこで、って意味で私らしいな
神さまと流れ星にお願いしたら流石に叶うかな
7:
男「そっか。次はお願いできると良いね」
女「男はなんてお願いする?」
男「うーん…願いが叶いますようにってお願いしようかな」
女「なにそれ?」
男「さっきお参りした時の願いだよ。女は?」
女「じゃあ私もそうする」
男「真似すんなよー」
女「えへへ。あ、また」
男「うそ、見逃した…あっ見えた」
女「けっこう来るね」
男「そうだね。うわぁ…綺麗」
女「ほんと綺麗」
あんまり綺麗だったからお願いし忘れちゃった
8:
男「あー首痛い…」
女「私も…」
男「そろそろ帰ろっか?」
女「もう少し夜景見てても良い?」
男「あ、じゃあ俺も見る」
気を使ってくれたんだろう 優しいな
女「あのね…ほんとはね」
男「うん?」
女「言おうと思ってたことがあるんだ」
男「言いたいこと?」
女「うん。けっこう前から言おうと思ってたんだけど…」
男「………」
女「私ね…男のことが…」
男「はっ…はくしょん!」
女「ど、どしたの…?」
男「なんか冷えたみたい…ごめん、それでなんだっけ?」
女「ううん、やっぱなんでもない」
男「ん、そっか」
9:
男も薄々感づいてはいたんだろうな
私と付き合いたくないのかな
なんで遮ったんだろう
さっき怖気づいたバチが当たったのかな
わざわざあんな小芝居まで打って
下手くそなくしゃみだったな
男「今日はありがとね」
女「私こそ。ありがと」
男「じゃ、また明日ね」
女「うんまた明日ー」
結局、最後まで言えなかったな
チャンスだったのにね
10:
男「おはよ」
女「ん、おはよう。今日寒いね。午後から雪だってさ」
男「らしいね。雪ってちょっとワクワクしない?」
女「あーわかる。なんか子どもに戻った気がするよね」
雪ってなんであんなにワクワクするんだろう
男「あー…ちょっと降ってんね」
女「今から少し弱まるみたいだしこのまま帰ろうよ」
男「そうしよっか」
さく、さく
積もり始めた雪を踏みしめる
なんとなく気持ちが昂る
男「積もり始めてるね。何センチぐらい積もるかな?」
女「10センチぐらいってニュースで言ってたよ」
男「そんなに…。雪だるまとか作れるね」
女「この年になって雪だるま?…うん、ちょっと良いかも」
男「小さい頃に作ったの覚えてる?」
意外だった 男がそんなこと覚えてるなんて
11:
女「うん。次の日に溶けちゃってて私が泣いた時でしょ?」
男「そうそう。今度は泣かないよね?」
女「どうだろう。悲しかったら泣くかもね」
悲しいのは別な理由だけど
女「はーっ」
男「真っ白だね」
女「うん…そうだね」
男「どうかした?」
女「ううん…寒いなぁって思ってさ」
男「ちょっと待ってて…えーっと…あった、はい」
女「これ…?」
男「ネックウォーマー。あったかいよ?」
女「ありがと…うん、あったかい」
期待してたのと違ったけど
これはこれであったかくて
なんだか満たされた気持ちになった
12:
男「そのネックウォーマーさ、ほんとにあったかいんだよね」
女「あ、これ私が去年あげたやつ?」
男「そうそう」
女「大事にしてくれてたんだね…ありがと」
男「いやまあそりゃ…うん…」
お茶を濁すような言い方が引っかかったけど
特になにも言わなかった
男「女?急に立ち止まってどうしたの?」
女「あのさ…」
男「うん?」
女「男はさ、この前お参りした時の叶った?」
男「あー…いや、叶いそうで叶ってないんだ」
女「ふーん…私もなの」
男「私もって?」
女「叶いそうで叶わないの」
13:
あれ、どうしたんだろう
口が勝手に動き出した
ネックウォーマーのおかげかな
男「へぇ…叶うと良いね」
女「男こそ」
男「…………」
女「…………」
男、女「「あ、あのさ!」」
男「あっごめん…お先にどうぞ」
女「こっちこそごめん…。今、たぶん同じこと考えてたよね」
男「どうだろうね?」
女「同時に言ってみない?」
男「いいよ。じゃあ…せーの!」
男、女「「この前のお願い教えあわない?」」
男「あははっ…あははは!」
女「あはは!!やっぱそうなんだ?」
ああよかった
不思議な安堵感に包まれた
14:
男「女はなんてお願いしたの?」
女「男から教えてよ」
男「あー………」
女「ほら早く」
ほぼ確信に変わったからわざと言ってみる
男「その前にさ、ちょっと良い?」
女「良いけどなに?」
男「うん…いやぁ…少し待ってもらえる?」
女「うん」
期待しちゃうじゃん
やめてよそんなの
男「お待たせ。女ってさ、好きな人いる?」
女「いるよ」
男「その人に告白されたらどうする?」
女「即オッケーだと思うな」
男「じゃあ好きじゃない人からされたら?」
女「うーん…たぶん断るかな」
男「そっか……」
女「うん…」
すごい緊張する
こんなに緊張することは人生で何度もないね
15:
男「じゃあさ…俺が告白したら…?」
女「男が…?………試しに告白してみてよ」
男「試しに?」
女「ほらほら」
男「………ずっと好きでした。付き合ってください」
女「………うん…!」
ああやっと
やっと男と付き合える
そう考えたら涙が溢れてきた
男「ほんとに…?」
女「遅いよバカ…ずっと待ってたんだよ……」
そのまま男に抱きついてしばらく泣いた
雪はいつの間にか止んでいた
女「それでなんてお願いしたの?」
男「そりゃ…女と付き合えますようにって…女は?」
女「私は男と付き合えますようにって…2人して同じことお願いしてたんだね」
男「みたいだね」
やっぱりか、と思いつつ安心する
よかった 本当によかった
16:
女「あのさ…少し寒いなぁって思うんだけど」
手を彼に差し出して言う
男「そっか」
その手を握って彼のポケットに入れてくれた
今までで一番あたたかいポケットだった
そのまま歩きながら言う
女「来年はさ、なんてお願いするの?」
男「どうしよっか?」
そんな質問、答えるまでもない
そんな風に彼の手が私の右手を握ってきた
少し立ち止まって見つめ合う
男「………」
女「………」
男「…あははっ」
女「…えへへっ」
そしてそのまま歩き出した
こんな日常が続きますようにってお願いしながら。
おわり
17:
以上です。
今回から酉を付けてみました。どこかで見たら暖かく見守ってください。
お付き合いいただきありがとうございました。
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