モバP「凛が増えた」back

モバP「凛が増えた」


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1:
「プロデューサー、そろそろ起きないと。お正月休みだからってあんまりぐーたらしてたらだめだよ?」
そんな聞き慣れた声で目が覚めた。
「あ、やっと起きた。ふふっ、寝癖ついてるよ?」
寝癖?
ああ。昨日は年末特番を見てから風呂に入ってそのまま寝たし、ついちゃってるかもなぁ。
「ほら、いつまで横になってるつもり?」
促されるままに、むくりと起き上がると、ゆっくり頭が回り始めた。
ん……?
待てよ。この声はどこから?
辺りをきょろきょろと見回すも、声の主は一向に見当たらない。
いつもの俺の部屋だ。
「どうしたの? 何か探し物?」
声のした方向へ体をねじると、そこには小さい凛がいた。
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2:

「なんで?」
まず出てきた言葉はそれだった。
「さぁ、なんでかな」
返ってきたのはそんな言葉だった。
枕元にちょこんと座っている小さな凛を指でつまみ、ひょいと持ち上げる。
「わ。びっくりした」
どうやらよくできた人形というわけでもないらしい。
「ねぇ、プロデューサー。服、伸びちゃう」
むー、っとふくれて文句を垂れている小さな凛を手のひらに乗せて「ごめん」と軽く謝ると「わかればよし」なんて言いながら、今度は偉
そうに胸を張っている。
手のひらの上の小さな凛……そうだなぁ、小さい渋谷凛、小さいしぶりんだから……ちぶりんと呼ぶことにしようか。
ひとまず、状況を整理するためにちぶりんにいくつか質問をすることにする。
「いつから俺の部屋に?」
「さっきだよ。気が付いたらここにいた。ベッドから降りて帰ろうにも、あんな高さから降りたら怪我するし、仕方ないからプロデューサ
ーが起きるのを待ってたんだ」
「なんでちっさくなっちゃったんだ?」
「さぁ?」
「思い当たる節もないのか?」
「うーん。ないこともない、けど突拍子もないから」
「言ってみて」
「大きい私は、昨日熱出してさ。初詣、プロデューサー誘おうかなと思ってたのに残念だなぁ残念だなぁって昨日ずっと言ってたんだ」
「大きい凛が?」
「うん。大きい私が」
「じゃあ、記憶は共有してるのか」
「さぁ? 私はしてるけど、向こうはしてないかも」
「それはどうして?」
「だって、熱で寝込んでるはずだし」
「小さい凛は熱、平気なのか」
「うん、たぶん」
「それで、小さい凛が増えた理由は?」
「なんでだろ。プロデューサーに会いたかったからじゃないかな」
「……なるほど。ありがとう。ちょっと待ってて、とりあえず寝巻から着替えてくるよ」
「うん、わかった。寂しいから早く戻ってきてね」
3:

真っ先に洗面所へ向かい、冷水でバシャバシャと顔を洗う。
分かったことは凛が手のひらサイズのちぶりんになってしまった原因は不明であること。
ちぶりんは、おそらく本物であること。
しかし、本物とは決定的に違う点があることの三つくらいだ。
決定的に違う点とは何か、それは……どうにも素直すぎるという点だ。
大きい凛はあんなに、ばしばし感情を伝えるタイプではない。
故に、こう仮定する。
ちぶりんは本体の思ったこと考えたことが、そのままノータイムで口から出てしまうのではないか、と。
よし。大体、分かった。
いや、分からないことだらけだけど、今どういう状況なのかは理解した。
なるようになるだろう。
「ふー」と大きく息を吐き、寝巻を洗濯機へ突っ込んだ。
4:

着替えて部屋に戻ると、ちぶりんは相変わらずベッドの上にいて「おそい」とむくれている。
「ごめんごめん。なぁ、ちぶりん。いっこ提案があるんだけど」
「提案? それに、ちぶりんって何?」
「小さいしぶりんだから、ちぶりん」
「ふふっ、何それ」
「かわいくていいと思うんだけど」
「プロデューサーのセンスは置いといて、かわいいならそれでいいよ」
「うん。かわいいよ」
「そっか、そっか。ふふー」
かわいいと言われ、手のひらでぴょこぴょこ跳ねるちぶりん。
まずい。
素直な渋谷凛に耐性がなくて、こっちが辛い。
「それで、提案なんだけどさ」
「うん。何?」
「初詣、行かない?」
「やった。行く」
またしてもぴょこぴょこ踊るちぶりんだった。
5:

「外は冷えるから、コートのポッケに入って」
手のひらに乗せたちぶりんをコートの胸ポケットへ入れる。
「わ。暖かい」
「さっきまでカイロ入れて暖めといた」
「ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ行こうか」
靴を履き、とんとんとつま先を鳴らして家を出る。
目的地は近所の神社だ。
「どこ行くの?」
「近くの神社」
「有名なとこじゃなくて?」
「だって、混んでるし。嫌か?」
「嫌じゃないけど」
「なら決まりだ」
6:

昼前の街をてくてく歩く。
最初は俺が歩くたびに「おっとっと」だとか「わ」だとか声をあげていたちぶりんも慣れたようで、胸ポケットで大人しくしているようだ。
「変な質問だけど、乗り物酔いみたいなのは大丈夫?」
「うん、大丈夫。最初は揺れてびっくりしたけど」
「それならよかった」
しばらくして、ちぶりんが時折ポケットの中でぴょんと跳ね、なんとか頭を出して外の景色を覗いていることに気が付いた。
「外、見たいのか?」
「一緒に歩けないから、せめて景色だけでも、と思って」
「寒いの我慢できるならいいけど」
そう言って人差し指を胸ポッケに突っ込むと、ちぶりんはそれを掴む。
ゆっくりゆっくり引き上げて、手のひらに乗せてやった。
「すごいね。小さくなったみたい」
「みたいじゃなくて、小さくなってるよ」
「そういえばそうだった」
7:

神社には、ちらほらと参詣者がいた。
大して有名ではないにも関わらず、それなりに賑わっている様子を見て「日本人だな」なんて思ったが、自分もその内の一人であることに気付き、苦笑する。
「なにか面白いものでもあった?」
「ううん、別に。さて、お賽銭して帰ろうか」
「そうだね」
財布から5円玉を取り出して、ぽーんと投げ入れる。
その後に、作法に倣って二礼二拍手。
凛の病気がよくなりますように。
心の中でそう唱えて合掌を解いた。
「何をお願いしたの?」
「凛がよくなりますように、って」
「新年最初のお願いなんだから、もっと自分のことお願いしたらいいのに」
「まぁ、大抵のお願いは努力とかお金でなんとかなるものだから、神様に願うなら、こういうことかな、って」
「そっか。じゃあ私も、私が早く治りますように、にしとこうかな」
「二倍のさで治るかもな」
「ふふっ、だといいけど」
そうして、俺とちぶりんは神社を後にし、またてくてくと歩き始める。
少し歩き、大通りに出てタクシーを拾った。
タクシーに揺られている間、ちぶりんは終始無言だった。
8:

タクシーを降り、大きく伸びをする。
「着いたよ」
俺がそう言うと、もぞもぞと胸ポケットからちぶりんが顔を出した。
「あれ、ここって……」
「うん。凛の家、お見舞い」
「風邪、うつしちゃうよ」
「平気だよ」
「もう。知らないからね」
忠告を聞いてもらえず、むっとしているちぶりんをよそに俺はインターホンを押した。
「あれ、お留守かな」
「あ。初詣かも」
「じゃあ、待つしかないか」
「大丈夫」
ちぶりんはそう言って、店先に並ぶプランターの右から三番目を指差した。
「あれが、どうかしたのか?」
「あの下皿のとこにシャッターの鍵、隠してあるよ」
「教えちゃっていいのか?」
「んー。まぁ、プロデューサーだしいいかな」
プランターを持ち上げると、凛の言葉通り鍵があった。
がらがらがら、と大きな音をたててシャッターを開け店の中へ入る。
目指すは二階にある凛の部屋だ。
9:

階段を上がり、凛の部屋の前に到着する。
とんとんとん、とドアを軽くノックすると中から少し元気のない声が返ってきた。
「……プロデューサー?」
「え。なんで分かったの」
「……足音、かな」
「サイキック、凛も使えたんだな」
「分かるよ、プロデューサーの足音は」
「そうか。入ってもいいかな」
「ん……まぁ、今更メイクなんてできないし、いいよ。どうぞ?」
「それじゃあ、お邪魔します」
ドアを開くと、ベッドから起き上がっている凛がいた。
「ごめんね。パジャマで」
「ううん、こっちこそ、急に来てごめんな」
「ほんとにそうだよ。というか、どうして来たの?」
「凛が病気だって聞いたから」
「え。誰に?」
「あー、そっか。本体は寝てるって言ってたもんな……」
「本体? 何の話?」
「いや、ちょっとな……」
説明するより、見せる方が早いだろう。
そう思って、胸ポケットをまさぐる。
しかし、そこにはちぶりんはいなかった。
10:

やっぱり、白昼夢でも見ていたのかもしれない。
現実的に考えて、小さな凛が急に部屋に現れる、だなんておかしいもんな。
「どうしたの?」
「……なんでもない」
もういないのでは仕方ない、説明しようがないのだ。
「……変な話、してもいいかな」
さて、どうしたものかと思案していると、凛が口を開く。
「ああ、構わないけど」
「私さ、変な夢見たんだ」
「どんな夢?」
「小さくなって、プロデューサーと初詣行く夢」
「え」
「え、何? そんなびっくりした顔して」
「それ、夢じゃないかもしれないぞ」
11:

俺はきょとんとしている凛に今日起きたことを順に話し始める。
朝起きたら小さい凛がいたこと。
コートの胸ポケットに小さい凛を入れて街を歩いたこと。
初詣で凛の病気がよくなることをお願いしたこと。
タクシーに乗って、凛の家まで来たこと。
小さい凛が、シャッターの鍵の場所を教えてくれたこと。
全て話すと凛は「夢の内容と一緒だ」と呟いた。
となると、導き出される答えは一つ。
「夢だけど、夢じゃなかった……?」
「そのセリフ、実際に使うことになるとは思ってもみなかったよ」
「ああ、俺もだよ」
二人して、目をまんまるにして数秒見つめ合った後に、おかしくなってくすくす笑った。
12:

「……じゃあ、私はプロデューサーと初詣行ってきたんだ」
「そういうことになるのか」
「ありがとね。小さい私を構ってくれて」
「ああ、あの凛。ちぶりんもかわいかったよ」
「……あっちの方が、プロデューサー的には好きだったりするのかな」
「そりゃ、素直なのはありがたかったけどさ」
「……けど?」
「凛は凛だし、今のままで大丈夫」
「なんか釈然としないけど。分かった」
「そういえば、熱は?」
「ん。起きてからかなり楽だよ。昨日は起き上がれなかったくらいだし」
手を凛の額に当てる。
次いで自分の額へ当て、比べる。
うん。熱はないみたいだ。
「食欲、あるか?」
「ちょっとなら」
「色々、買ってきたからお昼にしようか」
「あ。お雑煮とおせちもあるよ?」
「それ、俺が食べちゃまずくないか?」
「平気だよ。いっぱいあるし、ね?」
「じゃあお言葉に甘えて」
13:

「着替えるから、先にリビングに行ってて」と言われ凛の部屋を追い出されてしまった俺はソファでぼーっとしていた。
寝正月の予定がなんだかおもしろいことになったなぁ、と自分が現在置かれている状況を思い返すと、笑えた。
「お待たせ」
「そんな洒落込んで、どうしたんだ」
「……んー。伝わらないかな」
「あー、なるほど」
「そういうこと」
「失礼しました」
「ほら、欲しいのは謝罪じゃないよ?」
「……うん、似合ってる。かわいいよ」
「70点、かな。なんて、ふふっ」
「はい、努力します」
「じゃあ、ご飯食べようか」
「そうだな。そういえば、ハナコいなくないか?」
「あ、ほんとだ。連れてったのかな」
「かもしれないな」
ソファから立ち上がり、ダイニングへ行き、向かい合って座る。
「今更だけど、あけましておめでとう。プロデューサー」
「おめでとう。今年もよろしくな」
「うん。一緒に頑張ろうね」
そうして、新年初の二人での昼食が始まる。
今年もいい一年になる、そんな気がした。
おわり
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