彼女達との思い出back

彼女達との思い出


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57: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/05(月) 11:22:19.87 ID:4rIlbJtc0
卒業し、就職先の手配したアパートに引っ越すまでの間、春休み中の優子と頻繁に出かけた。
そして、体を重ねた。また、他の友達とも出かけた。
絵里奈とも、何度かデートした。
でも、絵里奈とは手をつないで出歩き、帰り際にキスをするだけ。
それ以上は踏み込まなかったし、踏み込む隙もなかった。
そんな日が続き、とうとう、引っ越す日が来た。
優子「これから頑張ってね。」
僕「ああ。また一からやりなおしだ。向こうでも頑張るよ。」
お互い、ドライだ。
だから、直前まで、お互い、これから訪れるであろう解放感を待ちわびていた。
某駅の新幹線改札口。
最終便があと10分で行ってしまう。
僕「じゃあな。着いたらたぶん連絡するわ。」
優子「うん。別にいらないよ。」
僕「そうか。元気でな。」
僕は、ふいに後ろを向き、改札口を通り、一気に階段を駆け上がった。
僕は、泣いていた。
少しだけ、振り返った。
優子は、改札口の前で、座り込んで、俯いて泣いていた。
どうしてかはわからない。
今まで身近だったものが、急になくなる喪失感。
ああ、僕は、優子から離れるんだ。
そして、優子は、僕の就職先のことも碌に教えられず、僕から離されたんだ。
そのことに、たった今、気づいた。
あふれる涙。
あんなに喧嘩したのに、あんなに煩わしかったのに、正直、体だけが目当てだったのに、
その瞬間、僕は、大切なものを失うという意味を、知った。
58: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/05(月) 11:22:59.35 ID:4rIlbJtc0
アパートに着くと、優子からたくさんのメールが来ていた。
「まさか、自分が泣くとは思わなかった。」
「自分でもわからない。パニックになっているどうしていかわからない」
「いつでもいい。連絡が欲しい」
「行かないでほしい。帰ってきてほしい。」
「帰ってきてくれるなら、他にはなにもいらない」
僕はすぐに電話をした。
優子はずっと泣いていた。
僕「ごめん」
優子「謝らくていいから、帰ってきて」
僕「それはできなよ。僕は、会社に就職して、それから」
優子「そんなこと知らない。帰ってきて」
僕「ごめん」
優子「目の前から、あなたがいなくなった。」
僕「ごめんなさい。」
優子「分かってた。就職先の相談もなかったし、就職先の場所を聞いた時、大事にされてないことくらい知ってた。」
僕「ごめん」
優子「それならそれでいいと思ってた。あなたなんていなくていいと思ってた」
僕「ごめん」
優子「帰ってきて!もうわがまま言わないから・・・帰ってきて!」
僕は夜通し謝った。
優子は許してくれなかった。
僕は、この日から、毎日、電話をかけ、何時間も謝り続けた。謝る日々は、3か月続いた。
僕には、彼女しかいない。
彼女のために、僕は一生懸命働こう。
そして、彼女を、迎えに行こう。
彼女と、結婚したい。
僕「優子、聞いてくれ」
優子「・・何?」
僕「僕は、今の会社でキャリアアップしたい。」
優子「うん。」
僕「そのために、5年。5年は今の会社で頑張る。」
優子「うん。」
僕「それまで、会ってくれるのなら、毎週、会いに行く。」
優子「・・・うん。」
僕「もしこっちに遊びに来てくれるなら、その費用は僕が全部出す。」
優子「・・・うん。」
僕「だから・・・」
優子「・・・だから?」
僕「この関係が、5年続いたら・・・」
優子「・・・続いたら?」
僕「結婚してほしい。」
優子「・・・・」
僕「返事は、今じゃなくてもい」
優子「待ってる。それまで、私も待ってる。私も、もっといい子になれるように頑張る。ずっと、一緒にいていいの?」
僕「・・・ああ!いいよ!じゃあ、今週末、会いに行くから!」
優子「・・・うれしい・・・・ありがとう・・・」
こうして、僕と優子の遠距離恋愛が、始まった。
59: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/05(月) 13:57:50.67 ID:4rIlbJtc0
僕の就職先は、上場企業で、僕は研究職として入社した。
新入社員は数百人いる。
最初の3か月は、社員研修ということで、営業職・研究職等全員が本社に集められ、ビジネスマナーや業界のルール等を徹底的に教え込まれる。
10人ずつくらいに班分けされ、その班で行動。研修期間中に採点されて、最終結果で優秀な班にはそれなりの厚遇が待っていた。
僕たちの班は、幸運にも、トップの採点を受けた。
僕はタイムテーブルを作成し、それぞれのみんなの希望配置先を聞き、研修の種類ごとにリーダーを決めた。
研修は、社会・会社の縮図だ。せっかくの機会なので、配属されるまでに予行演習をしようと提案し、みな、賛成してくれた。
研修期間はあっという間に終了し、それなりに充実した毎日だった。
人事部長に、呼ばれた。
部長「まあ、入って。」
僕「はい。失礼します。」
部長「君、研究職希望だったよね?」
僕「はい。大学で勉強したことを生かせる職種・・・」
部長「ああ、そういうのはいいから。実はね・・今回の研修を見ててね。君を・・・」
僕「はい?」
部長「経営企画室に配属したいんだが、いいかな?」
僕「・・えと・・・すみません。業務内容が分かりかねます。」
部長「要は、マーケティングや中長期戦略を立てる際の調査。主に、目先の利益より、今後の『金のなる木』を探す仕事だね。」
僕「大変興味がありますが、私でいいんでしょうか。」
部長「うん。誰でもいいんだ、最初は。もし、適性がなくても元々の研究職にいれてあげよう。研究職に着いた後、目先にとらわれないような考え方を持っていても不利にはならないよ。」
僕「聞くまでもなく推測できますが、なぜ私なのでしょうか。」
部長「まあ、君のいた班がトップだったのもある。あの班は、もともと成績優秀者を集めていた。」
僕「そうだったんですね・・・私がそこに入っていることに驚きました。」
部長「謙遜はいい。で、営業希望の子がね、今回の研修のトップ成績だったんだけれど、君のことを推薦していたよ。「彼のようなヤツと一緒に仕事がしたい」と」
僕「ああ。彼は優秀でしたね。私は、彼のやりたいことをサポートできるような体制をとっただけですが・・」
部長「昨今、潤滑油ですなんて言う新入社員が増えているが、君は、いい意味で潤滑油だよ。これからも、営業の役に立つようなバックアップを、経営という観点から考えてみてくれ。」
僕「・・こんな私でよければ、お願いします。頑張ります。」
僕は、本社の、経営企画室に配属された。
新入社員で配属されたのは僕ともう一人。もう一人も、同じ班にいた人だった。
彼とは今でも交流がある。
60: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/05(月) 14:18:23.36 ID:4rIlbJtc0
配属先について、優子に連絡を入れた。
ちょうど、先述の通り、許してもらった直後くらいだった。
優子は喜んでくれた。かっこいいねと。
(補助金は出るが)自腹でいろいろ参考書物も揃えた。
最初は、先輩のかばん持ちに近かった。
簡単な書類作成。現地視察。展示会。報告書を先輩の代わりに書く。
勉強することが多く、あっという間に夜。
報告書は一般的なソフトで作成だが、提案書やマーケティング資料はイラストレーターやページメーカー・フォトショップなんかも使って編集した。
また、データ解析はオラクルやアクセスなんかも使った。
その技術習得に加え、マーケティング等の理論の勉強。時にはCGのソフトまで使っていた。
当時はまだスマホもない。デジカメも普及するかどうかの時代だ。覚えることは山のようにあった。
それでもなんとか22時には帰宅し、それから優子に数時間電話。
朝起きて・・・を繰り返した。
週末は、基本的に優子に会いに行った。
正直、体力は限界だったし、貯金も全くなかった。
それでも、とても充実していた。
優子は、そんな僕を、いつも癒してくれた。
優子が長期の休みになると、僕のアパートに来てくれて、半同棲のような時期もあった。
僕の自由があるかぎり、優子に費やした。
同期であつまれば、優子を連れて行ったし、優子のイベントがあるときは、忙しかったが平日でも有給が取れれば会いに行った。
半年ほど、そんな生活が、続いた。
僕「僕たちにとって、この距離が、ちょうど良かったんだね。」
優子「そうだね。会う時に、充実して会える。会えない時は、他のことに集中できる」
僕「まさに、そう。僕は今幸せだ。ありがとう」
優子「こちらの方こそ、ありがとう。」
優子は、大手メーカーに就職が内定していた。
僕の休みに合わせて休める職種だった。
彼女は優秀だ。氷河期と呼べる時期に、数社から内定をもらっていた。
優子「あなたのおかげです。アドバイスが参考になりました!」
僕「優子の実力だよ。よかったな。」
こんな関係がずっと続けばいい。
そう思っていた。
68: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/06(火) 10:12:17.01 ID:mU3CoupcO
年末年始になり、帰省した。実家を宿にしたが、特に両親とは話をしない。
優子の家に挨拶に行き、優子とイケメン弟(長瀬智也似、以下智也)を連れ出す。
僕「智也君久しぶり!髪色レインボーになってる!」
智也「久しぶりっす。僕さんも髪色変わったんスね。」
僕「先輩の影響かな。うちの部署、そういうのに寛容なんだよ。」
智也「イイっすね。俺またバイト先の店長に怒られて。。」
僕「姉ちゃんから聞いたよ!ダメだよ勝手に店長の車持って帰ってきたら!」
智也「だって彼女がどうしてもカーセックs」
優子「トモ!変な話してないで前向いて運転しなさい!」
僕「あはは後でまた続き聞かせてくれよ!」
僕たちは郊外の居酒屋で飲み明かした。
智也「ねえ、2人って結婚すんの?」
優子「こら!」
智也「いいじゃん聞かせてよ。」
僕「このまま進めばねー」
智也「うわw今からにいちゃんって呼ぶことにする!」
僕「ヤメロw」
智也「そうだ連絡先交換してイイっすか?」
僕「いいよ。これからもよろしくね」
年始になり、京介・堅、絵里奈、玲奈と会った。
70: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/06(火) 11:32:12.83 ID:mU3CoupcO
堅「久しぶりー」
僕「久しぶり。どう、元気にしてる?」
堅も京介も、地元を離れて就職した。就職してすぐのGWに会って以来だった。
京介「まあぼちぼちだな。お前音信不通すぎるんだよ今まで何してたんだ?」
僕「ごめんごめん。ちょっと忙しくてさ。連絡はしたかったけど。。」
2人とも、残業は皆無だった。2人とも研究職。会社第一主義ではないし、社会人を満喫している風だった。色々話をし、次のGWもまたどこかに行こうと話をした。
絵里奈「最近、本当に連絡くれないよね。。私、暇なんだけど。。春休み長すぎる!」
僕「学生時代しかそんな休みはないんだから、今のうちに遊んでおかないと!!」
絵里奈「その、遊んでくれる人が、目の前にいて、遊んでくれないって言ってるんですけど?」
僕「え?僕?彼氏でしょそういう役目は。」
絵里奈「え?彼氏?この2年くらいいないけど。。」
衝撃だった。絵里奈はずっと彼氏持ちだと思っていた。僕は少しだけ動揺した。
僕「ええ。。なんか衝撃。。」
絵里奈「私も春から就職だし。。その。。春休みの間。。そっちに。泊まりに。。行きたいんだけど。。」
一年前なら間違いなく喜んだ。でも、この時の僕は、そうじゃなかった。
僕「僕は、彼女がいるし、さすがに泊めることはできないな。」
この時は、本音だった。
絵里奈は、初めて、悲しそうな顔をした。
絵里奈「ちょっとみんな聞いてよ!私が先輩の家に泊まりたいって言ってんのに、こいつ彼女がいるから無理とか言うんですけど!ありえなくない?私のことなんだと思ってんの?」
僕「おいおい落ち着けって。」
絵里奈「信じらんない!来るなとか」
僕「そうは言わないよ。みんなで遊びに来ればいいじゃん。案内するよ。でも社会人になってからな。」
絵里奈「なんで?」
僕「春までは本当に忙しいんだ。毎日10時くらいまで仕事だし。」
絵里奈は不満そうだったが、GWに一緒に遊びに来ることになった。
71: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/06(火) 12:01:15.06 ID:mU3CoupcO
正月が明けて、会社に行くと、辞令が出ていた。同じ部署に配属されていた同期(田村淳似、以下淳)が異動になっていた。
僕「あれ淳、異動願い出したん?」
淳「この前のミスが響いて、開発に行けってさ。まあ俺も開発希望だったしな。」
僕「大したことじゃないと思ったけど、いろんな部署に迷惑かかって、発売も少しだけずれたもんなぁ。でも厳しすぎないかそれ。あんなの、新人に任せていい案件じゃなかったよね。」
淳「案件の規模が分からず、自信満々に進めた結果だよ。フォロー助かった。お前はここで頑張りなよ。また連絡するな。」
そう言って、淳は机周りの整理を始めた。
会社は怖い。そう思った。
昼前に、社長がフロアに来られて、新年の挨拶をされた。
社長「我が社は今、困難な情勢にある。それもこれも、皆が真面目にやらないからである。君たちは、3人いればこなせる仕事を、5人でやっている。ボーナスは今後出さない。もっと営業の要望を叶える仕事をしなさい。」
その後、部長に呼ばれた。
部長「まあ、社長があんな感じだ。うちの部署もこれから厳しくなるな。淳くんの補充はナシ。君が案件を引き継いでくれ。」
僕「キャパを超えると予想できますが。。」
部長「そうだな。だから、君の抱える案件は、これから全て課長を通すように。申請書としてあげるんだ。やってもいい案件だけ判子を押す。その他は部長命令の下、やってはいけない。」
この頃、いろんな先輩のサポートや営業所からのサポートをしていたが、毎日のレベルで様々な案件を処理していた。
部長は、その全てに申請書を出せと言っているのだ。
僕「そう言う命令ならば、今後そうします。」
僕の仕事は、予想通り、増えた。
76: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 00:24:40.73 ID:gXmY7ffH0
部長の指示を受けて申請書を出して作業をするようになってからは、僕の仕事の比率は営業所の支援が大半を占めるようになった。
つまり、部署内のサポートの仕事は激減した。
?メイン:営業所サポート
?サブ:課長のサポート
?サブ:一人の先輩のサポート
これくらいになった。
課長は本当に多忙だ。
週の半分以上は出張でいない。
また、出張のないときはだいたい会議だ。
課長「よし、じゃあ、週明けまでに、この資料をまとめておいてくれ。私はこれから出張だから。」
僕「はい。では、○○のようなイメージで作ればいいですか。」
課長「そうすると、△△のあたりで矛盾してくるだろうから、○△の資料を参考にして。」
僕「となると、□の部分にしわ寄せが・・・」
課長「とりあえず作って。メール飛ばしておいて。出張先で確認してまた電話するから。」
僕「はい。」
こんな打ち合わせを会議室で行い、自分のデスクに戻る。
そうすると、だいたい、各営業所から問い合わせの電話ありのメモ書きが何枚か貼ってある。
折り返す。
営業所からの依頼は様々だ。
その電話内で済むものも多い。ちょっと調べてメールを送ったり電話だけで終わることもある。
その電話を切ると、また問い合わせありのメモ書きが何枚か追加される。
そうやって電話をすると、電話だけでは処理できない案件が出てくる。そうなると、課長に申請書を出さなければ作業できなくなる。
申請書を作成し、課長に渡す。課長が出張でいないときは、部長に渡す。
大体の案件は似通っているので、提案書や展望書などのフォーマットに適当に落とし込めばなんとかなる。
フォーマットは、あまりにも問い合わせが多かったので、何種類か作って流用することにした。
今思えば、おそろしく拙く、ミスも多かった。
それでも、営業所の方達は喜んでくれた。
なんでも、客先の要望に、いち早く提案書などを持っていくことが大事なんだそうだ。
内容は正直二の次。客先は、自分たちの意見が反映され、自分たちのためにいち早く動いてくれる営業マンが好きなんだと。
流石は営業マンだ。あんな資料でよくもまあ客先へいけるものだ。
そう。僕の資料は、絶望的にセンスがなかったのだ。自分でも、イヤになるほどだった。
僕がそういう悩みを抱いたとき、参考にする先輩がいた。
それが、?に挙げた先輩だ。(沢村一樹似、以下沢村さん)
僕「沢村さんお疲れ様です。」
沢村「ん?お疲れ様。どうした?」
僕「□△の案件なんですが・・・参考になるような提案書がないでしょうか。場所を教えてもらえれば自分で調べます。たたき台が出来たら見てほしいです。」
沢村「んー、俺が作ってやるよ今から。ちょっと時間あるし。」
僕「え、いいんですか。ありがとうございます。」
沢村さんは、僕だったら1週間は悩んでかかるであろう資料のたたき台を、いとも簡単に、解説付きで、わずか1時間で作り上げてしまった。
しかも、僕が作るよりもわかりやすく、視覚に訴える。
沢村「こんな感じかな。あとは同じように作ってみなよ。あとで添削してやるから。」
僕「本当に助かりました。ありがとうございます。相変わらずのセンスに脱帽です。。」
沢村「お前はさ。難しく考えすぎなんだよ。お前の資料は読んでて疲れる。」
僕「そうでしょうか。もし具体的に気づくことがあるのでしたら、指摘してください。」
沢村「お前は、顧客のニーズが分かってないよ。顧客が求めてるのは、うちの会社の製品を買ったら、うちと契約したら、うちに投資したらどんないいことがあるのかを知りたい。」
僕「はい。」
沢村「言い換えると、向こうはその道のプロだ。正直、うちの提案書なんかなくたって大体の事情は知ってる」
僕「まあそうですね。」
沢村「顧客はな。自分の思った通りの提案書が出てくることを望んでるんだよ。わかるかな。」
僕「そんなもんでしょうかね。」
沢村「お前の書類は、必ずリスクの説明が入るんだよ。そんなの、顧客は望んでない。新規の案件だぞ?顧客を不安にさせてどうするんだよ」
僕「しかし、過去には同様のリスクが存在したわけで、ちゃんとそのあたりを説明した方が・・・」
沢村「新規の案件で、これから何が起こるかわからないものに、過去の事例を、新人の私見で盛り込むことの方がリスクだと俺は思うよ」
僕「確かにそうです・・・」
沢村さんの仕事は早い。そして、非常に美しい。
正直、退屈な会議が多い。
しかし、退屈な会議でも、沢村さんの提案する時間だけは、だれもが釘付けになる。
社長ですら、沢村さんを知っていた。
沢村さんは、天才だった。
そして、頭の回転がかった。先見の目もあった。
だから、自然と、僕は、沢村さんの弟子のようになり、いつしか、沢村さんの部下のような立場になっていった。
77: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 00:50:11.09 ID:gXmY7ffH0
そんな沢村さんだが、沢村さんにも欠点はあった。
彼の提案することは奇抜で、だれもが納得できる内容で、誰もが引き込まれる。
だから、誰もがその案件に飛びつくのだが、提案の根拠となる資料は、一切ない。
彼は感覚のみで作業をし、裏付けのない資料で利益計算をする。
なので、契約後・進行後に辻褄が合わないことがあるのだ。
なので、僕が、裏付け調査や確固たる根拠を探すサポートをした。
僕には、そういうサポートの方が向いているらしい。
お客様「君、沢村さんが褒めてたよ。」
僕「え?私をですか?」
お客様「うん。彼の知識は凄いと。彼に聞けば、間違いなく納得できる資料が出てくるってさ。」
僕は、沢村さんの役に立っているんだ。
そう思うと、嬉しかった。
営業所からの問い合わせは、定時までしかない。
僕は、定時までは営業所からの応対やサポートをし、定時過ぎてから課長と沢村さんのサポートをするという毎日を送っていた。
沢村さんも、いつも夜遅くまで働いていた。
彼の周りには、いつも女性がいた。
同じフロアの子であったり、他部署の子であったり。
沢村さんは、本当にモテた。そして、変態だった。
爽やかに女性を見送り、僕に呟く。
沢村「あいつ、いいケツしてるよな。このコーヒーを、あのケツに、流し込んでやりたい!」
僕「ええ・・趣味悪いですよ・・・」
沢村「ああ・・そうして・・あの子の表情が・・・苦悶のそれに変わって・・・ウヒヒ」
僕「ひどい・・・」
沢村「そうだお前、うちのマンションに引っ越して来いよ。」
僕「え、あのマンション高そうですからやめときますよ」
沢村「大丈夫だよ。会社に申請すれば家賃全部持ってくれるから。」
僕「そうなんですか!このご時世、通りますかね?」
沢村「俺が通してやるから気にすんなよ。あそこはいいぞ。防音がしっかりしてる。」
僕「それは魅力的ですね。」
沢村「ああ。防音は大事だぞ!悲鳴が外に漏れない!」
僕「ええ・・・」
帰宅は、午前様になることも出てきた。
このころは、仕事が楽しくてしょうがなかった。ただ、他部署の同期が定時付近で帰宅しているのを見ると、うらやましくもあった。
気づけば、毎晩のようにしていた優子への電話もだんだん短くなり、いつしか数日に1回の電話になり、メールでやり取りする程度になっていった。
そして、会う頻度も、毎週だったものが、隔週になり、月1になった。
優子は、気が付けば大学を卒業し、社会人になっていた。
毎日はあっという間に過ぎ、GWがもうすぐ来ようとしていた。
78: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 01:15:32.82 ID:gXmY7ffH0
GWは完全にオフにできた。嬉しかった。
沢村「俺はタイで過ごすわ。あっちは物価が安いからな。豪遊できるぜ」
僕「いいですねぇ。行ってらっしゃい!」
沢村「ああ・・お前も連れてってやりたい・・・(自主規制)の楽園に・・」
僕「・・・・ええ・・・」
淳「俺は帰省だ。お前は帰省するのか?」
僕「いや。まだ引っ越したばかりだし、片づけもあるしな。友達や彼女は来てくれるんだってさ。」
僕は、沢村さんの住むマンションに引っ越していた。
間取りもいいし、快適だ。
僕「なんなら、淳もこっちに引っ越して来いよ。駐車場代も会社が持ってくれるし、こっちの方が得だと思うよ。」
淳「ああ、そうか・・・こっちの方がジムも近いしなぁ。考えておくよ」
それぞれが、それぞれの思惑で、休みを過ごす。
優子が遊びに来てくれた。久しぶりだった。
僕「優子!会いたかったよ!」
優子「私も!ゆっくりしようよ。」
僕「ああ。どこか行きたいところある?一緒に行こう。」
優子「とりあえずは、ご飯食べよう!作りたい!」
僕「いいね!買い出しに行こう」
優子は上機嫌だった。
優子、愛している。
僕は、料理をしている優子を後ろから、そっと抱きしめた。
僕「優子、愛してるよ。」
優子「・・・」
顔を覗き込むと、真っ赤だった。
僕「どうしたの?」
見ると、ちょっと小刻みに震えていた。
僕「?」
優子「ねえ・・・どうしよう・・・」
優子は、僕の手を、自分のスカートの中に、入れた。
その下着越しでも、ぐっしょりと濡れているのが分かる。
優子「今、あなたに・・抱きしめられただけで・・・こうなっちゃった・・・」
僕は、包丁を取り上げ、優子を抱きかかえた。そのままベッドに放り投げる。
僕「もう我慢できない。優子、脱げ」
優子「ちょっとww久しぶりなんだから優しく」
僕「知らん!自分で脱がないなら・・脱がしてやるww」
優子「キャー変態、ちょっとどこ触って・・・くすぐったい・・ちょっと・・・あっ・・ん・・・もう・・もっと・・」
優子の足先から、指の先まで、撫でた。そして、下を這わせた。
彼女の全てが欲しかった。
彼女のぬるぬるぐしょぐしょになったアソコは、いとも簡単に僕のアレを受け入れ、挿入と同時に彼女はのけ反り、ビクンビクンと波打った。
僕も、数秒で果てた、初めてだった。
優子「あたまが・・・ボウっと・・・する・・・動けない・・」
僕「寝てなよ。僕がご飯作るから」
優子は裸のまま毛布に包まり、僕が料理をするのを見ていた。
僕は、幸せを感じていた。
まさか、その翌日、この幸せに亀裂が入るなんて、想像もしていなかった。
79: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 01:40:47.67 ID:gXmY7ffH0
翌日は、観光して回った。
費用は、僕が出した。
夕ご飯は、レストランで済ませた。
そのレストランで、事件は起きた。
僕「優子、提案があるんだけれど。」
優子「何?」
僕「今までは、僕が社会人であったし、優子は学生だったわけじゃない?」
優子「そうだね。今までは学生って立場だったから、甘えまくってた」
僕「そうなんだよね。これからは、対等な立場になる。」
優子「うん。」
僕「実は・・僕は今、あまり貯金がないんだ。遠距離恋愛の費用は僕が全部出していたし、この場所に引っ越ししたり、会社の付き合いもゼロじゃないし。」
優子「つまり?」
僕「言いにくいんだけど・・これから二人で会ったり、何かした時は、一部だけでも負担してもらえないだろうか?」
今思えば情けない提案だけれど、当時の僕は切実だった。
これから結婚などを視野に入れれば、貯蓄は必要だ。今のままでは、全く貯蓄ができない。
優子「ええ・・イヤよ。今まで払ってくれたのに、急に負担しろって言われても・・」
僕「優子は地元に就職したから、実家から通ってるわけだし・・・金銭的余裕はあるんじゃないの?」
優子「え?あるよ?そのために実家から通えるところにしたんだもの。」
僕「僕は、この一年、貯蓄できずにいたわけで、その大半の理由は優子と付き合うためで・・」
優子「それは、あなたが提案したことよ?いい?私は社会人になったの。これからやりたいこともあるし、将来への不安もある。貯蓄はできるうちにしたいの。」
僕「僕も去年全く同じことを考えてたよ・・」
優子「なら私が貯蓄したいのもわかるよね?それに、私もこれから休みが取れなくなるよ?社会人の付き合いって多いのよ?」
僕「うん。多いよ。僕は、それを断ってきたんだよ?そして。この一年、正直白い目で見られることも多かったよ?あいつは付き合いが悪いって。」
優子「なら、私が社会人の付き合いを大事にしていきたいっていうこともわかるわよね?」
僕「え・・・」
絶句した。
僕は、優子が社会人になれば、僕のこの一年間の苦労・大変さが本当の意味で身に染みてわかってくれるものだと思い込んでいた。
ああ、毎週会いに来ることってこんなに大変なことなんだ。
ああ、毎晩電話することって、こんなに大変なことなんだ。
ああ、貯金せずに遠距離を頑張るって、こんなに大変なことなんだ。
僕の優子への愛情が、こんなに深いものなんだ。
そう、理解してくれるものだと思い込んでいた。
この時、自分の中で、何かが壊れた。
優子「正直、私は今まで、籠の中の鳥だったわ。社会に出てよくわかった。社会に出たら、やりたいことが山のようにある。」
僕「・・ああ。全くの同意見だよ」
優子「私には可能性がたくさんある。遠距離恋愛でその可能性が減ってしまうのなら・・」
僕「減ってしまうのなら?」
聞いてはいけない。
この先は聞いてはいけない。
僕「減ってしまうのなら、なんだよ!!」
優子「私は、あなたと一緒には歩いていけなくなるわよ!」
彼女は、そのまま何もしゃべらなくなった。
そして、部屋に帰ると、荷物をまとめ、帰っていった。
80: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 02:07:46.35 ID:gXmY7ffH0
翌日は、なにもやる気が起きなかった。
優子からの連絡は、ない。
僕はふてくされて、そのまま寝て過ごした。
その翌日、堅と絵理奈、玲奈が遊びに来た。
本当にうれしかった。
僕「まあ上がってよ。」
堅「引っ越ししたばかりって感じだな。ほれ、お土産。」
地元のお酒を買ってきてくれた。
京介は職場に呼び出されて来れなくなったらしい。
僕たちは、観光もそこそこに飲み始めた。
くだらない会話で、馬鹿笑いをする。
この時間が、僕をいやしてくれた。
気が付けば深夜になっていて、全員がゴロ寝していた。
なぜか、玲奈が僕に抱き着いて寝ていた。僕はそれをそっと外すと、堅の方へ押し込んだ。
玲奈は、パッと目を開けた。玲奈は、起きていた。
僕「起きてたのか。」
玲奈「うん」
僕「ほら、寝るならあそこで寝なよ。」
玲奈「いいじゃんここでも。ここで寝て不都合でもあるの?」
僕「うーん・・そうじゃないけど・・」
玲奈はニヤリと笑った
玲奈「絵理奈と二人になりたいの?w」
僕「GW前までなら否定したw」
僕と玲奈は椅子へと移動し、缶ビールを開けた。
そして、優子とのことを話した。
玲奈「はっきり言っていいですか?」
僕「うん。」
玲奈「その彼女、やめときなよ。打算的すぎるよ?信用されてないよ。」
僕「まさか玲奈にそんな説教されるとは・・」
玲奈「先輩、イケメンなんだし、仕事熱心だし、すぐ新しい彼女もできるよ。なんなら絵理奈を今ここで襲っちゃえばそれで」
僕「お前は・・自分の友達を何だと・・・」
玲奈「それを言うなら、先輩にとって、絵理奈はなんなんですか?いっつもいっつも一緒にいたがるくせに、彼女がいるから何とかとか」
僕「うっ」
玲奈「絵理奈だって、バカじゃないですよ?いままで先輩にされてきたこと、何とも思ってないとでも?」
僕「・・・言葉もありません・・・」
玲奈「堅君が知ったら、どう思うんですかね?」
僕「・・説教なら聞きたいくない。寝るわ」
玲奈「だいたい、こんな状況にあって、襲わない方が失礼というか・・その・・」
あれ?何か状況がおかしい。
玲奈の顔が近づく。
これは、ヤバイ。
それだけはいけない。手を出してはいけない。
この時、玲奈に彼氏がいるかどうかまでは知らない。でも、親友が気にかけている子にまで手を出したら、それは人として終わっている。
僕の手は、なんとか、彼女を押し留めようと動こうとした。
きっと、数日前なら、拒否して張り倒していた。
でも、その日、僕は、近づいてくる玲奈の顔を、遠ざけることが出来なかった。
と、玲奈がニヤっと笑った
「私が、キスすると思ったんでしょwそんなことするわけ」
最後までは聞かなかった。
僕は、遠ざかろうとする玲奈の顔を両手で抑え、そのままキスした。
81: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 02:27:58.90 ID:gXmY7ffH0
玲奈は試したのだ。冗談で済ませようとしただけだ。
本当は冗談のつもりだった。でも、先輩が本気にして、成り行きでキスしてしまった。そういう筋書きが欲しかったのだろうと思う。
玲奈は少しだけ抵抗するそぶりをしたが、すぐに僕の顔を両手で抱え、包み込むようなキスをしてきた。
僕は、そのまま、手を腰に回す。
そして、僕の腰を、玲奈の腰に擦り付ける。
僕のアレは、はち切れそうになっていた。
玲奈がそれに気づき、目を開け、キスをしたまま、顔を横に振った。
「それはダメ」と言いたかったのだろう。
僕は、無視し、玲奈のジャージ(そういえばいつの間にか着替えていた)を下した。
玲奈は抵抗する。
「あんまり騒ぐと、堅も絵理奈も起きてくるんじゃないかな?」
玲奈の顔が赤くなる。
僕は、薄暗い中、玲奈の真っ白な太ももを直視した。
舌で、太ももを、なぞる。
玲奈「ちょっと・・・先輩・・ダメですって・・・んっ・・・」
そのまま、舌を、下着にまでもっていく。
玲奈の両手は、僕を拒もうと、必死で押し返してきた。
僕は、ガラ空きになった胸を、両手で揉んだ。柔らかな感触が両手に返ってくる。
玲奈「ダメです!本気で叫びますよ!」
僕「叫べば?」
玲奈はそれを聞き、力を緩めた。
玲奈「楽しいですか?こんなことして。」
僕「楽しくはないな。興奮してる。できれば、玲奈も楽しんでくれる方がイイな。楽しもうよ。」
玲奈「・・・秘密に・・・してくれますか?私・・・純情なキャラで通してるんです・・」
僕「パンツぐしょぐしょで何言ってんだよ。わかった誰にも言わない。」
玲奈は、急に態度を変え、激しく求めてきた。
薄明りの中でも、玲奈は、美しかった。
最初で、最後。僕は、彼女の中を、突き上げた。音だけは、立てないように気を付けた。
興奮した。
背徳感に、完全に、負けた。
あの時は、どうかしてた。
いまだに、後悔している。
行為の後、二人でシャワーを浴びた。その間中、抱きしめあった。
そして、体をふいた後、念を押した。
「二人だけの秘密だ。二度と関係を持たない。」
これだけは誓える。
この後、玲奈には特別な感情を持ったことは一切ないし、関係を持ったこともない。
そしてもう一つ言える。
僕は、クズだ。
84: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 16:15:00.50 ID:q8PQdfB40
翌日、何食わぬ顔で、観光をした。玲奈は少し、僕に近づきたがっていた。
堅は、絵里奈に近づきたがり、絵里奈は堅に近づいていた。(すみません、前回の書き込み、漢字間違ってましたね・・)
僕は、言い表せない苛立ちを覚えた。
皆の感覚が、大学生とは違ってきている。
僕だってそうじゃないか。
人は、時が経てば、考え方は変わる。人の感情だって変るものだ。
その夜、僕は、酔ったふりをして、絵里奈に抱きついた。絵里奈は、嫌がった。
続いて、玲奈と堅を、同時に抱きしめ、二人をぴったりとくっつけ、離れなれないようにした。
ただの嫌がらせだった。
僕はそのまま、寝た。もう、どうでもいい。
真夜中、目が覚めた。
電気が点いたままだ。絵里奈が、一人、座って飲んでいた。
堅と玲奈は、抱きつたまま寝ていた。
僕「ああ・・頭痛い・・・」
絵里奈「・・起きちゃったんだ。ごめん。うるさかった?」
僕「僕、飲みすぎるとすぐ起きちゃうから、違うと思う。」
絵里奈に新しいビールを渡し、ぬるくなった方を貰って飲んだ。
僕「ふー。なんだか疲れた。何やってるんだろう、僕。」
絵里奈「私たちが来て・・・迷惑だったの?」
僕「まさか。来てくれて助かったし・・・う・・うれしくて・・」
絵里奈「・・なんで泣いてるのよ・・意味わかんない。」
いろんな感情が渦巻いていた。
僕「そうだよなぁ。僕、仕事のしすぎで疲れてるのかな。性格まで変わってしまった気がするよ。」
絵里奈「そんなとこないよ。僕君は、目の前のことに情熱を注いで、興味のあることには時間もお金も惜しみなく使う。」
僕「ああ・・・その通りだ。」
絵里奈「向上心の塊みたいで、そのくせ、妙に子供っぽいところも、何も変わってないよ。」
絵里奈は、そっと、僕にキスしてくれた。
僕「・・・そんなキスが・・したかった・・・」
絵里奈は、僕が眠りにつくまで、膝枕をしてくれた。
翌朝、すっきりした気持ちで3人を見送った。
僕「気を付けて帰れよ。また今度集まろうな。次は、お盆かな。堅の働き先だな。みんなで行くよ」
堅「いいね。みんなで来てよ。」
玲奈「じゃあ先輩、またね」
僕「ああ!仕事忙しそうだけど、ちゃんとメシ食えよ!」
絵里奈「今度は、ちゃんと相手してもらうからね!」
僕「わかったわかった。また連絡するよ!」
僕のGWは終了した。
GW過ぎると、優子との連絡は激減した。
連絡しても、何を言っても、揚げ足を取ってくる。
なんだか、嫌いになる理由を探しているようだった。
優子「私も忙しいの!今だって、ようやく帰ってきたところなのよ?こんな夜中にかけてこないでよ!」
僕「・・僕、まだ会社で働いてるんだけど・・・ちょっと休憩中に電話をしているわけで・・」
優子「こんな時間まで働いて、何やってんの?仕事の能力ないんじゃないの?」
僕「えっ。だから、5年間は仕事に打ち込んで・・・」
優子「趣味とかないわけ?仕事するしか能がないの?」
僕「・・もう、いいよ・・・」
優子「いいって何?私の貴重な時間を奪っておいて、いいってどういう意味?」
僕は、限界を感じた。この日を境に、お盆まで、連絡を取らなかった。
優子からも、連絡はなかった。
そんな時、意外な人物から電話が来た
僕「もしもし?どうしたの?」
智也「久しぶりっす。ちょっといいですか?」
智也。優子の弟だ。
85: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 16:54:50.29 ID:q8PQdfB40
智也「どうしても、我慢できなくて。」
僕「・・・一応、聞こうか。」
智也「姉ちゃん、たぶん浮気してますよ。」
僕「そっか・・・まあそうなるよな・・・」
智也「え?僕さんも気づいてたんスか?」
僕「いや、最近、妙によそよそしかったから。。。」
智也「え?そうじゃなくて・・・」
僕「・・・え?」
智也「最近のことじゃなくて、今年に入ってすぐぐらいから、たぶん浮気してますよ、姉ちゃん。」
僕「・・・」
絶句した。
どうやら、年明けから、優子がたまに車で送り迎えをしてもらっているらしい。
誰だろうと思っていたら、春先から、毎朝出社する時に、同じ人が迎えに来ている。
家を出て、少し歩いたところに車が止まり、隠れるようにその車に乗っていくと。
最近は、あまり隠すつもりがないらしい
断片的な情報を取りまとめると、どうやら、同じ会社の先輩らしい。
就職活動中に企業訪問で知り合い、それから親しくなったようだった。
智也「本当なら、僕さんには内緒にしたかったんスけど・・・どうしても姉ちゃんが許せなくて・・スンマセン」
僕「あはは。そうか。だからか。なんかすっきりしたよ。ありがとう。教えてくれて」
智也「・・やっぱり、姉ちゃんと別れちゃうっすよね・・」
僕「まあ、あくまで浮気の可能性だしな。お盆には帰省するから、その時に話し合って考える。」
智也「僕さんは。。。優しいんスね・・」
僕「そんなんじゃないよ」
そんなんじゃない。
僕は、自分が納得して、別れたかった。
それだけだった。
GW明けてから、仕事は混沌としてきた。この頃法改正があり、本社も営業所も大混乱していた。
新入社員は、うちの部署には配属されなかった。
いつしか、営業サポートの仕事は違う部署でやってくれることになった。
専門のグループができ、部署内の数人がそちらに異動。他の部署からのスタッフとともに支援にあたるようになった。
法改正にかかわるメリット・デメリットの資料集めが、僕のルーチンワークになった。
うちの業界のあり方を考える社会問題も発生し、その問題提起への対応も、僕の仕事になった。
課長も、それ関係の出張が増え、週1日くらいしか会社にいなくなった。
仕事は忙しかったが、とてもやりがいを感じた。
おそらく、法改正問題やその手の対応については、その業界で僕が一番詳しかったと思う。
対応について、プレゼンを依頼され、皆の前でプレゼンもするようになった。
新入社員の在り方について、今の社会情勢について、新入社員研修に講師としても呼ばれた。
プライベートの充実度が下がれば下がるほど、会社内での僕の評価が上がる。
いや、会社内での評価じゃない。上司の評価が上がる。
僕は、基本的に会社主催のイベントには参加しない。
優子との時間を優先したからだ。
そんな僕が、偶然、脚光を浴びてしまった。
同期および近い年代の一部から、冷たい視線を浴びるようになったのは、この時くらいからだったと思う。
86: 以下、
色々あるわな
87: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 17:32:05.59 ID:q8PQdfB40
社長は、年始に「ボーナスはない」と仰った。
だが、実際には、(多くはなかったが)ボーナスが出た。
ボーナスの支給額は、人によって違う。そう、査定によって差が出ていた。
本社でS評価だったのはただ一人、沢村さんだった。
そして、同期でただ一人、僕だけがA評価を貰い、あとの同期はBCD評価だった。
「人事部曰く、同期で一人だけAだったやつがいるらしい」
「誰だろうな。営業のやつじゃないか?」
「営業で2年目でA評価ってヤバいだろう。」
まさか、自分が最高評価だとは思わなかった。
きっと、営業支援というのが社長の言いたいことを実現させたということなんだと思った。
僕は、沢村さん以外には誰にも言わなかった。
沢村さんは、じゃあ祝杯をあげようと言ってくれた。嬉しかった。
この評価は、1年続く。同じ働きをすれば、また好評価が出るだろう。
それはつまり、自分が出世コースに乗ったということでもある。
出世。
やってやる。どこまでも昇ってやる。
最初は、優子のためだった。でも今は自分のためだ。自分のために、自分を磨こう。
GW前、懇親会があった。
同じ部署での飲み会であったが、参加したのは初だった。
ここでちょっとした事件があった。
僕のことを面白く思っていない先輩に、取り囲まれた。
88: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 17:35:21.20 ID:q8PQdfB40
河村隆一似、以下河村さん
河村「よお、やっと出てきたか、僕君よ。お前付き合い悪いよな。そんなんで、うまくやっていけると思ってんの?」
伊藤淳史似、以下伊藤さん
伊藤「お前痩せてんな。ちょっと脱いでみろよwいいじゃねえか俺も脱ぐからよw」
鈴木亮平似、以下鈴木さん
鈴木「おっしゃ!俺も脱ぐぞwwそれ!お前もぬーげ!ぬーげ!ぬーげ!」
本人たちは、たちの悪いいたずらのつもりだったろう。
そして、僕の困った姿を見て、笑いたかったのだろう。
きっと、去年の僕なら、そんな反応をしたと思う。
気の毒そうにこちらを見る女性先輩社員。
気にも留めない男性先輩社員。
笑い転げている上司。
僕は、不愉快だった。
ああ。いいさ、受けて立ってやるよ!
僕がサークル時代、どんな感じだったか知らないんだろう。
僕は、真面目くさったボンボンじゃない!
スイッチが入った。
僕「よっしゃ!僕の肉体美、とくと見せてやる!ひょおおおおおおおおっ!!」
河村・伊藤・鈴木「え・・・うおおおお!いいぜその乗りィィィ!!!脱げ脱げ!!」
僕「うわさむっ!こおおおおおおおっ!!」
河村「やっぱガリガリじゃねーかwwwおらこっちこいやマジックで乳首黒く塗ってやる!」
僕「河村さんだって汚いギャランドゥー見せないで下さいよ!伊藤さん、ライター!」
伊藤さんは意図を察して、すばやくジッポーを手渡す。
僕「喰らえ!チ○ゲファイヤー!!」
シュボッ
河村「?!?!あつっ!おまっアチチチ!!」
懇親会は大爆笑に包まれた。
鈴木「お前いいやつじゃねーかwビールついでやるよ飲め!」
僕はそのビール瓶を奪い、瓶のまま一気飲みした
皆が盛り上がってくれ、拍手をしてくれた。
僕「?!ゴフッ。ゲホゲホ。ガボボボボ!!」
僕は失敗し、瓶の中身があふれ、店内は大惨事になった。
店員「お客様?!ちょっと!困ります!」
一時間後、僕と河村さん・鈴木さん・伊藤さんは、上半身裸のまま、課長の前に正座させられていた。
課長「お前たちな・・・週明け、部長に今回の件について、俺が報告することになっちゃったじゃないか・・」
店員さんに、警察を呼ばれてしまった。
僕「すみませんでした。僕が学生の雰囲気のまま飲んでしまいました。」
鈴木「いやいや。僕たちのいたずらが過ぎました。僕君は悪くないので、責任なら先輩の3人で・・・」
課長「まあ、楽しかったからそれはいいさ。監督責任は俺だからな。懇親会で盛り上がりすぎた。今後の仕事で仲良く仕事をして挽回するので勘弁してください。部長への報告はそれでいいな?」
河村「はい。お任せします。申し訳ありませんでした。」
部署内での僕の評価は、よくなったのか悪くなったのかわからない。
すくなくとも、冷たい視線は、なくなった。
それから、なぜか、女子社員とは仲良くなっていった。
近寄りがたい雰囲気がなくなったのは間違いなかった。
90: ◆71vVbFpf.c 2016/12/07(水) 18:03:07.67 ID:DyefMgGCO
訂正です。GW前に懇親会があったと書きましたが、お盆前です。失礼しました。
92: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 09:52:35.91 ID:FHQvacEn0
お盆に帰省するつもりだった。
帰省して、優子としっかり話し合おう。
その返答次第では、優子とはもう会わないでおこう。
そう、心に決めて、優子に電話をした。
優子「もしもしー。久しぶりー。元気だったの?」
僕「ああ。相変わらず、仕事ばかりの毎日さ。そっちは?」
優子「こっちも仕事ばっかりだよ。社会人って、大変ね。」
案外、普通に話せた。
お互い、GWからお盆までにあったことを話し、笑いあった。
ふと、間ができた。
お互い、次の言葉が何になるのか、予想がついた。
僕「とまあ、僕が電話したのは、日常会話がしたかったわけではなく。」
優子「・・・そうだね。こういう話は、男側からするのがいいのかな?」
僕「優子がその方がいいのなら。」
ああ。
そうか。
もう、会って話すまでもない。
なぜ、今、楽しく話せたのか。
僕はもう、優子に興味がないんだ。だから、憎くもない。ただ、普通に、世間話を、楽しくしただけなんだ。
優子「・・・私は、そばにいてほしかった。」
僕「そうだろうね。そこに関しては、謝る。悪かった。」
優子「誕生日も、一緒にいられなかった。私の卒業式も。」
僕「うん。」
優子「卒業式の時、惨めだった。他の友達は、彼氏が迎えに来てくれたのに・・・私だけ一人だった。」
僕「平日だったからね・・・社会人になった今ならまた考えも違うだろうけど、当時は悲しかったろうな。」
優子「うん。今の私なら、理解したかもだけれど、やっぱり当時は許せなかったし、今でもしこりとして残ってる。」
僕「なるほど。」
優子「私が寂しい時、駆けつけてくれなかった。逆に、あなたが寂しい時、すぐには駆けつけられない。」
僕「遠距離だからね・・」
優子「最初は、それなら、そっちに就職して住めばいいと思ってた。」
僕「・・・そう思ってくれる時期があっただけでもうれしいよ」
優子「でも、いざ就職していろいろ考えも変わった。」
僕「お互い、まあ最近は連絡も取ってなかったけれど、もう連絡を取るのをやめようと思う。」
優子「そうだね。別れましょう。」
僕「よくもった方だと思うよ。学生時代のあの感じから。」
優子「・・・はっきり言っていい?」
僕「うん」
優子「あなたと付き合って、後悔してる。付き合わなければよかった。」
僕「そうか・・」
優子「あなたのために就職先を限定しちゃったし、あなたのために貴重な大学生活を使っちゃった。時間を返せと言いたい。」
僕「そっくりそのまま返すよ。僕の社内の評価もむちゃくちゃだ。もっと早く別れてればよかったよ。」
感傷には浸らなかった。
最後まで、喧嘩した。
僕「・・・僕はもう疲れたよ。清々する。次に誰と付き合うかしらないけど、次はもっと合うヤツと付き合いなよ。」
優子「友達にも言われたよ。もっとマシな男と付き合いなさいって。」
僕は、モヤモヤしてる気分のまま、いきなり電話を切った。もういい。
もう飽きた。
優子のことをもう、思い出さなくてもいいんだ。
僕の部屋には、僕と優子が仲良く頬を寄せている写真立てがある。
僕はそれをパタンとたたみ、引出しの中にしまった。
93: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 10:50:08.71 ID:FHQvacEn0
翌日、土曜日。特に予定もない。時間は昼過ぎ。
来週のお盆を控え、堅たちに会うため、旅行の荷物を整理していた。
玄関のチャイムが鳴った。
淳「よお。ちょっといいか?」
淳は、僕と沢村さんのいるマンションに引っ越してきた。
そして隣の部屋に住んでいる。
僕「どうした?」
淳「実はさ、同期の子達と遊びに行った帰りなんだ。」
僕「ほうほう。それで?」
淳「結衣ちゃん(新垣結衣似)と翼ちゃん(本田翼似)いるだろ?俺とお前合わせて4人で、これから出かけないか?」
外には、淳の他に、結衣と翼がいた。
僕「・・・んー、ああ、ちょうど暇だったし、いいよ。」
淳「よし。じゃあ俺はちょっと準備があるから、結衣ちゃんと翼ちゃんを部屋にあげてもらってもいい?」
僕「え・・・お前の部屋でいいだろ。いったんそっちの部屋に集まろうぜ。」
淳「(部屋、片付いてないんだよ!頼むよ!俺が結衣ちゃん好きなの知ってるだろ!)」
僕「(そうだけど、いきなり来るヤツがあるかよ!こっちだって片づけが・・・)」
翼ちゃんが、不審そうな顔をしている。
翼「何コソコソ話してるの?私、淳君の部屋なんて行かないよ?結衣も行かせないよ?僕君は信用できるけど・・・」
僕は苦笑した。前途多難な恋路だ。
僕「わかったよ。翼ちゃん、結衣ちゃん。僕の部屋で待ってなよ。ペットボトルのお茶が何本かあるから、適当に飲んで待ってよう。」
結衣「え?いいの?じゃあお邪魔します!」
翼「おじゃましまーす!わあ、綺麗に片付いてる!っていうか物がない!」
淳「物なさすぎだろ!どうやって生活してるんだここで!」
僕「まあ、基本仕事して帰って寝てるだけだからな・・・てか淳ははやく出かける準備してこいよ・・」
淳「わかってるって!あ、ちょっとこっち来てくれ。」
淳「(なあ、なんとか結衣ちゃんを俺の部屋に来させられないかな。30分くらいで片づけるから、それまで繋いでてくれ)」
僕「(お前は、さっきの会話を聞いてなかったのか?信用させてないのに部屋に上がってくれるわけないだろ)」
淳「(それをできるのがお前だろ?)」
僕「(アホか!そもそも無計画すぎ・・・)」
結衣「・・・淳君、何たくらんでるの?」
結衣が後ろにいた。
94: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 10:52:39.07 ID:FHQvacEn0
淳「いや、あの、その・・・と、とりあえず支度してくるから!」
淳は逃げるように出て行った。
僕「淳にも、困ったもんだな。」
僕は苦笑した。
結衣「ほんとだよね。下心が丸見えというか。悪い子じゃないんだけど、露骨なんだよね・・」
二人で苦笑した。
結衣とはそれなりに仲良くやっていた。
出会いは、入社試験にまで遡る。
その日、試験会場に来ていたのは2人だけ。実は特別採用枠だった。
彼女は美術系の大学出身で、商品展開や初期イメージ図なんかを作りたいと言っていた。PR資料として、大学時代に描いたスケッチや
パースを持参していた。正直、可愛かった。
結衣「お互い入社できたら、仲良くしてくださいね。」
僕「ああ、その時はよろしくね。」
次に会ったのは、内定式の時。
結衣「あ!僕くん!内定貰ったんだね、お久しぶり!」
僕「久しぶり。本当に同僚になるとはw」
ちょっと2人で抜け出し、お互いの自己紹介などをした。
ずっと付き合ってる彼氏がいて、遠距離になる。
自分は一つしか見えなくなるから、振られないか心配。
会社に入るのが不安
そんな感じの話をしたと思う。
新人社員研修では、彼女もまた僕と同じ班だった。翼もだ。
結衣と翼はその後、商品開発部に配属され、2人で深夜まで働いていることは知っていた。
たまに、社内メールをやり取りしていた。
結衣「久しぶりの休みだし、本当はゆっくりしたいんだけど。。」
僕「ゆっくりすれば?僕の部屋・・はちょっとあれだけど、淳なんて放っておいて、適当にドライブとか。あ、体動かすの好きなんだっけ?
近くに打ちっぱなしあるし、行く?」
結衣「ゴルフやったことないw」
僕「え?僕もないよww」
結衣「なにそれww楽しそう。いっちゃう?w」
そんな雑談をしていたら、リビングにいた翼が歓声を上げた。
95: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 10:57:47.17 ID:FHQvacEn0
翼「ああ!これって僕君の彼女??かわいいね!!」
翼は、勝手に引き出しを開け、物色していたのだ。
僕「ええ・・翼ちゃんなにやってるの・・・」
結衣「あ!本当だ!可愛い!この子が、例の彼女?確か、もう少ししたら結婚するんだよね?!」
翼「ええ!そうなの?なに幸せなんじゃん!!」
・・・
僕「・・・あのさ・・何勝手に僕の机を・・・」
結衣「頬なんてくっ付けちゃって、ラブラブなんだね!僕君のイメージにないよww」
僕「・・話を・・聞いてるのか・・・?」
翼「ねー。僕君の写真、ニヤニヤしてるww」
八つ当たり。
本当に、ただの八つ当たりだった。
この2人だって、楽しむネタが欲しかったのだろう。
でもこの時の僕には、この2人が、憎悪の対象に見えてしまった。
僕「人の話をちゃんと聞け!!」
場が凍った。
翼「・・え?何?・・え?」
僕「何勝手に僕の机開けてるんだよ!勝手に触るな!お前は僕のオカンか?え?」
翼「あ、えと・・ごめんなさい・・」
僕「結衣ちゃんも、そんなに僕のプライベートを暴くのが楽しいの?なんなの?放っておいてくれよ!詮索するなよ!」
結衣「・・・すみません。。」
僕「出て行けよ!淳んとこにでも行って来い!」
僕は2人を押し出して、隣の淳の部屋のドアを蹴とばした。
ドン!!
ドン!!
僕「おい淳!!早く出てこい!!」
驚いた淳が、顔を出す
淳「な、なに?どうした・・・」
有無を言わさず、結衣と翼を押しこめ、ドアを閉めた。
そして、僕は自分の部屋に戻り、鍵をかけた。
ふざけるな。
何が幸せそう!だ・・
ふざけるな・・・
ふざけるなよ・・・
何やってるんだろう僕は・・・
その10分後、チャイムが何度か鳴らされた。
ドアスコープ越しに覗き込むと、結衣が、申し訳なさそうに、そこに立っていた。
僕は、無視した。
翼と淳はどうしたのかは知らない。
ただ、結衣は、それから1時間ほど、僕の部屋のドアの前で、立っていた。
気が付くと、もういなかった。
最悪だ。
最悪な人間だ。
最悪な僕。
僕は、最悪な気分のまま、週明けを迎えた。
96: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 11:46:26.39 ID:FHQvacEn0
月曜日、始業前に、僕は開発部に顔を出した。
淳に会った
僕「土曜は悪かったな。」
淳「ん?ああ、いいよ。あの後ちょっと話し込んで、意外と盛り上がってさ。最後は3人で飲みに行ったんだ」
僕「そうか。まあそれならそれで良かったか。」
淳「なんかお前の逆鱗に触れたって言ってたぞw何やったんだよw」
僕「気にするなw」
ああ、気を使わせちゃったな。
なんだかんだ、皆、頭の回転がく、物わかりがいい。
午後の業務前に、商品開発部へ顔を出した。
もちろん、結衣と翼に謝るためだ。
翼はいなかったが、結衣はPCの前で仕様図と睨めっこしていた。
僕「結衣ちゃん。その・・」
結衣「!僕君!この前はごめんね!急にお邪魔しておいて、失礼なことばかりして!」
僕「いやいや・・ちょっといろいろあって、ナーバスな日だったんだ。こちらこそごめん。翼ちゃんは?」
結衣「翼は今日、出張だから、帰ってきたら伝えておくよ。」
僕「そうか。申し訳なかった。また遊んでね。」
結衣「いいの?ありがとう。じゃあ、この案件が終わるのが上期終了くらいだから・・・10月くらいかな?みんなでどこか行こうか。」
僕「いいね。車出すよ。それまで仕事に打ち込もうか。」
結衣「はーい。うーむ。この仕様が分からない。。なんでいきなりこの仕様が追加されたのか・・」
僕「ごめん、その仕様図の追加項目に、僕が口を出すのはあれだけど・・」
結衣「ん?」
僕「それ、誤記だと思うよ・・・僕の方には何件か同じような問い合わせがあったんだけど、だいたいはクライアントの勘違いだったんだ。どこのだれが開いてか知らないけど、一度確認してみなよ。」
それだけ言うと、僕は自分のフロアに戻った。
後で聞いたが、やはりクライアント側の理解不足による仕様追加だった。未然にトラブルが解消できて、とても感謝された。
僕は、人のアラを探すのが得意らしい。
たまに、校正もやった。
鈴木「おまえ・・重箱の隅をつつき過ぎだろ・・・」
僕「でも、ここに矛盾が出ちゃうと、結果的に結論変わっちゃいますよ?事業部長に迷惑が掛かって、部長に降りてきて、この資料作ったの誰だって話になった時、困るのは鈴木さんですよ?」
鈴木「ヌケヌケと涼しい顔して、怖いこと言うなよ!」
僕「今のうちに河村さんのあの資料を使って補足するだけじゃないですか。ちゃちゃっとやっちゃいましょうよ」
鈴木「他の案件もあるんだから、時間がもったいないだろ・・・」
僕「じゃあ、僕がやりますから、データください」
鈴木「お前頑固だな。わかったよやればいいんだろやれば!自分でやるよ・・・ったく・・・」
後ろで、沢村さんがクスクス笑っている。
僕「何ですか沢村さん?」
沢村「いや、お前もすっかり溶け込んだなと思ってただけだよ。」
そういいながら、沢村さんはコーヒーを飲みながら、資料に落書きを始めていた。
僕「ほら、沢村さんもその資料、今日中にやるんですよね?今日中にやらないと、結果的にお盆休みに出勤しないといけなくなりますよ!」
沢村「え?あれ?そうだっけ?俺他の案件抱えてたっけ?」
僕「何言ってるんですか!部長の提案、お盆前までに書類にするって言ってたじゃないですか!まだラフも無いんじゃないですか?」
沢村「ほんとだやべえ!」
経営企画部は、とても優秀な方たちの集まりではあるが、どこかフワフワしていた。
タイムキープという考えが低い。
この頃、大きなプロジェクトの進捗管理は、なぜか僕がすることになっていた。
いつまでに何をするのか。
業界を揺るがした法改正は、確実に変化をもたらせていた。
今までは、出来上がった時が製品・サービスの発売日・開始日だった。
これからは競争がさらに厳しくなる。
開始日は厳守だ。
100の%の完成度の仕事を10日かけていたら、もう間に合わない。
80%の完成度で、6日でやる。こんな感じだった。
それでも業務がこなせたのは、ひとえに先輩方の能力の高さがあったからだと思う。
今思えば、そこまでして必死に業務をこなさなくてもよかったのだと思うが、当時は、必死になって、全員で業務をこなしていた。
97: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 12:54:04.24 ID:FHQvacEn0
お盆に入った。
本当は帰省するつもりだったが、取りやめた。
堅と京介、玲奈、絵里奈とは、別の行楽地で落ち合った。
現地集合で出発。なんだか、社会人という感じだ。
京介は飛行機で。
玲奈と堅は、堅の車で。
絵里奈と僕は新幹線で。
指定の場所で待ち合わせ、堅の車で出発。
ランクルは快適だ。
堅「じゃあ早行こうか。温泉地へ!」
一同「おー!」
堅は運転が好きだ。
だから、最後まで自分で運転すると言ってきかない。
じゃあそれでいいやということで、朝から社内でビールを開ける僕と絵里奈。
3列目で、2人で飲みながら寝た。
気が付くと、最初の観光地についていた。
こう見えて、寺社仏閣に興味がある一同である。
温泉地近くの神社により、ワイワイと散策し、近くのそば打ち道場へ。
堅は几帳面で、生地はボロボロだったが等間隔にそばを切った。
京介は、ゴミを作った。
玲奈は不格好ではあったが、一般的なソバを作った。
絵里奈は、美味しそうなソバ出来上がっていた。
僕のは・・・全員に妨害され、最終的に道場の人に怒られ、没収された。
絵里奈め。あとで(主に夜)仕返ししてやる。
その後チェックインし、絵里奈と怜奈は早風呂へ向かった。
男たちは、売店で買った地酒とおつまみで一杯始めた。
僕「今から飲んで、晩御飯いけるかな・・」
堅「いつもそういいながらおかわりしてるじゃん・・そのくせ太らないという」
京介「俺と同じでヤセの大食いだな。」
僕「お前はもうヤセじゃないだろ・・なんだよそのお腹・・」
僕は京介の腹にボディをかます。
以前なら、硬質な感触が返ってきた。
この時は、柔らかかった。
僕は、普段、食事に時間をかけない。その時間がない。
だから、早めしになってしまった。
当時、体温は35.4度くらいしかなかった。
僕「ま、こういう時くらいはダラダラすごしたいもんだな。」
堅「そういうことだ。まあ飲もう。なくなったら下から買ってこればいいさ。」
女子たちが帰ってくるころには、3人は出来上がっていた。
絵里奈「ええ・・・なんでみんな寝てるの・・・」
堅「ん?・・・・お休み・・・」
玲奈「おいっ!起きてよちょっとこれから散策行くんでしょ!」
京介「行ってらっしゃい・・・」
絵里奈「僕君は・・・僕君は・・・行ってくれるよね・・・?」
僕「ぐーぐー」
ガコっ!
絵里奈は無言で、僕の頭を、躊躇なく蹴った。
僕「えっ・・・ちょ・・・」
絵里奈「起きてるんじゃん。早く行くよ?何?まだ目が覚めない?」
僕「はい起きます起きます!」
絵里奈「堅君は?」
堅「お、起きます!」
京介「俺も起きてるよ!」
絵里奈「お利口さんだね。じゃあ行こう」
気分は最悪だ。
98: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 13:12:54.88 ID:FHQvacEn0
お盆と言っても、滝の近くは涼しくて気持ちがいい。
僕「あー、酔いも冷めた。気持ちいいな。」
絵里奈「でしょ?感謝しなさいよ」
堅「ええ・・感謝って無理やり連れてきて・・」
玲奈「ナ・ニ・カ・イ・イ・マ・シ・タ・カ?」
堅「い、いや・・・あ、イワナ売ってる。食べよう食べよう」
京介「美味そう。お、こっちの混ぜご飯パックもおいしそう。これも食べよう」
僕「美味いじゃんこれ。おかわりも買ってこう。もぐもぐ。あ。もうない。もう一つ買おう。」
堅「もぐもぐ。買い過ぎだろ・・・もぐもぐ。美味いなこれ。おかわり買おう。」
玲奈「・・・これから晩御飯だよ?・・・もぐもぐ。美味しいわねこれ。私もおかわり買おう」
店員「あのう・・・?(多少怒り気味)」
僕「はい?」
店員「うちの商品。。。全部食べちゃいましたよ?」
一同「ええ・・・」
そんなこんなで満腹になって宿に戻った。
僕「ど、どうしようこんな状態で晩御飯食べられないよ・・・」
絵里奈「あの滝横にあった売店がいけないのよ!美味しすぎたのが悪い!」
堅「これは、あの店に損害賠償を請求する必要があるな!」
京介「そうだそうだ!玲奈、お前の事務所でこの案件を受けもて!訴訟だ!」
玲奈は法律事務所で働いていた。
玲奈「・・・冗談はさておき、晩御飯どうしようね・・・」
一同「・・・」
僕「な、何言ってるんだ。僕たちは若い。なせば成る。なさねばならぬ何事も!」
中居さん「お客様、晩御飯の準備ができましたので、別棟の食事場までどうぞ。」
僕たちの決戦は始まった。
出てきたのは、山の幸。
おそるおそる、食べる。いけるのか?本当に?この量を?
僕「もぐもぐ・・うん・・・」
堅「どう思う?この量・・・」
京介「はっきり言おうか・・?」
絵里奈「きっと答えはみんな同じだよ。」
玲奈「そうね。これなら」
一同「完食できる!」
さすがにおかわりはできなかったが、
皆で一気に食べた。美味しかった。
いつもの食事は味気ない。
カロリーを摂取する作業の一環でしかない。
でも、この日の食事は、量は多かったが、
確かにおいしかった。
まあ、残念だったことと言えば、その後にどうしてもアルコールが入らなかったことと、
お腹が苦しすぎて、みな唸りながら何もすることなく寝てしまったことだ。
99: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 13:27:51.76 ID:FHQvacEn0
2日目、グループ行動ではあったが、もはや、堅と怜奈は、隠すこともしなかった。
2人で、手を繋いで歩いていた。
就職先はそれぞれが別の地域なのに、毎週、堅が車で遊びに行っているようだった。
そうか。2人は正式に付き合うことにしたんだな。よかった。
京介は、彼女と遠距離を続けているらしかった。このままいくと結婚するらしい。
となると、僕だ。僕の横には、絵里奈がいる。
絵里奈は、自然と、僕の手を握る。
僕も、気にすることなくそうやって歩く。
きっと、誰が見ても、2人は付き合っているように見えるだろう。
でも付き合っていない。
この時、僕は別れたてだ、じゃあ別れたから絵里奈に「付き合ってくれ」というのも何だかとってつけたような感じがして、言い出せなかった。
今となっては分からないが、絵里奈はこの頃、僕の誘いを待っていたと、信じたい。
この旅行の間は、僕と絵里奈は恋人。
きっと、そんな契約のようなものが、暗黙の了解であったのかもしれない。
この日の夜、僕と絵里奈は、抱き合いながら、キスしながら、眠りについた。
それだけで幸せだった。
いつか、この関係が、発展するのだろうか。
この時は怖かった。
今の関係が後退してしまうことが。
僕にもう一歩踏み出せる勇気があれば、二人の人生は、変わっていただろうと思う。
楽しかった旅行はあっという間に終わり、僕はマンションに帰ってきた。
残りの休みは、一人でぶらぶら過ごした。
お盆明けからはまた激務だ。
秋口までは、もう何もできない。
100: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/08(木) 14:23:02.20 ID:FHQvacEn0
秋口になるまでに、うちの部署では大きな仕事が待っていた。
つまり、今後の短期計画〜中期計画において、商品やサービスの見直しを迫る。
簡単に言えば、売れ筋や金のなるものは残し、不採算のものは切る。
各分野においてのシェア分析もする。
シェアが高くても、赤字な製品もある。
逆にニッチな需要があれば、少数でも利益が出る。
ただ、利益率が高くても、販売数が少なければわが社の屋台骨を支えることはできない。
ある程度不採算でも必要な分野は存在する。
そんなさまざまな製品・サービスを分析し、どれを残すか考える。
また、新たな分野はないのか模索する。
各部署から提案・発売されたものに対して、予測を立て、短期計画に上乗せする。
こうして取りまとめ、経営陣に報告する。
もちろん、その場には他部署の取締役クラスも参加し、また調整し・・を繰り返す。
最終的にまた取りまとめ、販促部・広報部から世間に情報がリリースされる。
その情報をもとに、株価は左右されるし、情報リリース直後は問い合わせが殺到する。
沢村「今回は、お前の慎重さのおかげで、世間からの信用度は上がったな。」
僕「それに気づいたのは沢村さんだし、確固たるソースを用意したのは伊藤さんですよ。」
沢村「まあ、そうだな。それでも、それからの出先・営業所からの対応は迅だったよ。あれは他の会社じゃ無理だろうな。」
ある競合他社が、法改正に絡んだ事案で、先延ばしもしくはごまかしを図った。そして、それが公的機関によってバレた。
当社は、沢村さんや伊藤さんが、部長とタッグを組んで、積極的に前面に押し出した。
そのバックアップは僕がした。沢村さんはもっと華のある内容にしたかったようだが、僕が反対した。
法改正に絡んだ事案なら、僕が一番精通している。沢村さんも折れ、堅実なプランを進めた。
その甲斐あってか、たまたま公的機関のサンプリングに抜擢され、当社の事案が理想モデルとして採用された。
その事案は、その後軌道に乗り、一部は特許化され、登録者名はなぜか僕になっていた。
激動な社会情勢の中、ひとまずの激務は、いったん終了した。
103: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 02:28:56.24 ID:xpSFFwiC0
沢村「はいお疲れさん。」
沢村さんは、ねぎらいの言葉をかけてくれた。
部署内に柔らかな空気が流れる。
年内までは、特に早急の案件はない。
仕事は沢山あったが、納期のために胃が痛くなるようなことはなかった。
この頃、沢村さんと市場調査という名目で様々なところへ出かけた。
どこへ行っても、沢村さんはモテた。
出張中、夜になると、沢村さんはおしゃれなバーに連れて行ってくれた。
そして、女性を確保していた。
爽やかに、女性を釣る。僕は、本当に感心した。
ただ、沢村さんは変態だった。
正直、女性なら誰でもよかったんじゃないかと思えるようなレベルの女性でも、誰でも相手にした。
沢村さんは言う。
沢村「女性は、顔じゃない。」
諸君、勘違いしてはいけない。沢村さんは女性は性格重視と言っているわけではない。
その女性の性癖や胸の大きさ・腹のたるみ具合、乳首の色味やア○ルの拡張具合で女性の魅力が決まると言ってる、ただのド変態だ。
もちろん美しい女性は大好きなようで、そういう女性にたどり着くために、人脈を広げるという目的もあるようだ。
沢村「いいか、ヤれるチャンスがあれば、必ずヤるんだ。それが男だ。」
沢村さんは社内でも有数のイケメンだ。そして、社内で最も優秀な人材の一人だ。
そんな彼は、爽やかに、にこやかな笑顔で、変態行為をしゃべる。
沢村「お前は、マダムキラーだよな。きっと、年上受けするよ。それを生かさない手はないぞ!」
僕「マダムキラーっていうより、若い子は沢村さんが持って行っちゃうから、余った年増の方が僕に来るんじゃないですか!僕は相手にしませんよ!」
沢村「ほらほら!そういうクールな態度が、マダムたちを虜にするんだよ!で、たまに甘えてみろよ。コロっといけるぜ。」
僕「遠慮しときます・・」
沢村さんは、よく、趣味のビデオを貸してくれた。
本当に、変態な内容のものばかりだった。
あの爽やかな笑顔の裏にこの欲望が渦巻いていることに戦慄した。
沢村「お前はまだ若い。もっと年齢を重ねれば、俺の言いたいこともわかってくるさ。」
断言しよう。いくら年齢を重ねても、沢村さんの領域にはたどり着けない。
104: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 02:31:29.43 ID:xpSFFwiC0
ある出張先、2人で、混浴に行った。
おばさまが、一人で入っていた。
沢村さんは、堂々と、隠しもせず、爽やかに挨拶した。
沢村「(爽やかに)こんにちは!いいお湯ですねここ!どちらからいらしたんですか?」
僕「(うわマジかよ趣味悪すぎだろ)こんにちは。僕たちは出張中で、たまたま寄ったんですよ。なんかスミマセンこんな粗末なものを見せてw」
おばさま「あらいやだ//目の保養かしらww」
おばさまもノリノリだ。
成程ね。確かに、ちょっと楽しい。
盛り上がってワイワイしていると、綺麗なお姉さんが入ってきた。
その女性は今でも思い出すくらい、ナイスバディだった。
沢村さんは凄い。ほかの男性客なら絶対に釘付けになるであろう体なぞ見ずに、爽やかに挨拶する。
沢村「(爽やかに)こんにちは!いいお湯ですねここ!どちらからいらしたんですか?」
僕「(マジか本当にすごいわプロだこの人)こんにちはー。なんかスミマセンこの人頭おかしいんです・・」
お姉さん「え?今日はお2人で来たんですか?」
沢村「ええ、そうですよ!ここのおばさまたちとは今知り合ったばかりです!お姉さんもお話ししましょう!」
僕「本当にごめんなさい。この人変態なんです・・・」
なんだかんだ楽しく話した。
お姉さんは、気にしたそぶりも見せず、タオルをハラリと取り、その見事な体を披露し、湯船に浸かった。
おばさま「まあキレイ。いいわねぇ若いって。」
沢村さん「いえいえ。おばさまも十分お綺麗ですって。」
僕「本当にすみませんこの人精神障害なんです。」
お姉さん「あはは。楽しい人ですねw」
僕「まあ、飽きないですけれど・・」
もう本当に理解不能であるが、沢村さんは、おばさまをロックオンしていた。
おばさまと沢村さんは、ちょっと湯船の隅に移動し、なにやらヒソヒソ話を始めた。
僕の目に焼き付けたくない光景が、始まってしまった。
いやまあ、最終的な行為までは行ってないが、まあ、触ったり触られたり。本当に変態だ。
僕とお姉さんは、さらに2人かは距離を取った。
僕「本当にもう・・お姉さんどうか通報したりしないでくださいあんな変態でも会社からいなくなると困るんです。。」
お姉さん「まあ・・ねぇ・・よくもまあこんなところでできるわよね・・」
本当にごめんなさい。僕は、目の前で繰り広げられる光景を見て、横には素敵な女性。興奮しないわけがない。
お姉さんと目が合った。
お姉さんは、目を伏せて、ちょっと、自分の体を隠すようにした。
僕「あ・・スミマセン・・その・・・意識しちゃって・・」
お姉さん「そ、そうね・・・あなたもやっぱりちょっと変な気分に・・なるわよね・・・」
旅の恥はかき捨てないといけない。
あそこまでは大胆にはできないが、僕は、湯船の中で、お姉さんの手に触れた。
お姉さんは、固まっていた。どうしようか、判断に迷っているみたいだった。
僕は、その手を握り、こっちに引き寄せた。
お姉さんがこちらまで引っ張られる。
これはいける。
僕は、その手を、僕の股間へ持って行った。
いきり立った僕のアレに触れる。
お姉さんは少し困った顔をしたが、僕のアレを手で包んでくれた。
僕は、お姉さんの見事なバストを、浴槽の中で、揉んだ。
軽く、キスだけした。
お姉さん「ハイここまでw」
僕「なんかすんませんww気持ちよかったですw」
僕「変態は放っておいて、僕はもう出ますwちょっと処理してきますw」
お姉さん「若いなw行ってこいw私はしばらく入ってから帰るからw」
まあ、言うほどエロい体験でもなかったが、沢村さんの人となりを知るエピソードを書きたかったので、あえて文章を割いた。
105: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 03:22:44.49 ID:xpSFFwiC0
12月に入り、とあるメーカー主催で、勉強会なるものが開かれた。
そのメーカーの主要取引先である数社が合同で招かれ、そのメーカーの商品の説明や工場見学をし、最後に懇親会をして宿泊し、翌日も勉強会をして帰ってくる。
僕の会社にも声がかかった。
宿泊付の勉強会となると、いくら相手の会社持ちの出張とはいえ、なかなかそこまでの時間が取れない人が多い。
結果、うちからは本社から僕だけが行き、そのメーカーに関係する営業マン数人が、地方営業所から参加することになった。
集合場所は、とある地方。
現地に赴くと、観光バスが出迎えてくれた。
行ってみて、驚愕した。
勉強会とは名ばかりの、接待旅行だった。
メーカーの本社に行き、勉強会が始まる。勉強会は10分で終わり、その後、工場内を30分で見て、もう終了した。
あとは、その地方の高級ホテルに移動し、大広間でひたすら食べて飲むだけ。
昼から、極上の料理と酒がふるまわれる。しかも、メーカー持ちだ。なんという幸せな出張だ。
まず、昼の食事中は、コンパニオンが付いた。
ピンクコンパニオンではないようだった。
何十人といるコンパニオン。その中に、一人だけ、極上に可愛い子がいた。
僕は、その子に目を付けた。
僕「君、可愛いですね。お話ししましょう!」
爽やかに声をかけた。
(山本梓似、以下梓)
梓「可愛いだなんて・・嬉しいですw」
僕「でもさぁ、すごい人数のコンパニオンだよね!大きな会社かな。コンパニオンの派遣会社さんは」
梓「えっと、私たちのほとんどは学生で、アルバイトで今回募集されたんです。だから、私は初めてですね。」
僕「そうなんだ。おっさん相手にお酒注ぐのも大変だなwイヤな思いしないといいけどな。」
梓「それイヤですね・・あの子なんて、完全に絡まれてますよね・・迷惑そうな顔してる。」
そこにいるのは、スケベそうなオヤジだった。
そのブースにいる人たちは、ひときわ目立っていた。
知っている。先ほど、名刺交換した。
僕たちの業界のトップに君臨する、誰もが知っている大企業の人たちだ。
スケベそうなオヤジは、自分の膝に無理やりコンパニオンを乗せ、口移しでエビフライを食べさせようとしていた。
見ていて寒気がした。
106: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 03:24:48.18 ID:xpSFFwiC0
僕「よっしゃ見てな。」
梓「え?」
僕「ちーっす!先ほどはどうもw」
クソオヤジ「ん?ああ、先ほどのw楽しんでますか?w」
僕「楽しんでますよwそちらは?」
クソオヤジ「ああw楽しいわww」
僕「今、カラオケ始まったじゃないですか。○○さん、歌上手そうっすよね。」
クソオヤジ「え?俺?そりゃ上手いよ?スナックで歌いまくってるからな!」
僕「うはw聞かせてくださいよww」
クソオヤジ「え?いいよww歌っちゃう??」
仮にも業界トップのクソオヤジだ。そんな声が出ると、クソオヤジの周りが一斉にヤツを盛り立てた。
「よっ!○○さん!今日も一発聞かせてくださいよ!」
「今日も、始めはあの曲かな?」
その取り巻きも、コンパニオンの苦境を助けたかったが、クソオヤジの機嫌を損ねたくなかったようで、僕の機転に乗ってくれた。
こうして、コンパニオンはそそくさと逃れることができた。
自分のスペースに帰ってきた。
僕「あーすっきりしたw」
梓「やりますねwなんか爽快ですw」
僕「あんなことされたら、君だってイヤだろwしかもバイトでしょ?不憫すぎる。」
梓「確かに、エロそうなオヤジとか、寒気しますw」
僕「なんだそれは。僕だったら大丈夫なのか?ww」
梓「え?いいですよ私は僕さんとならw」
ひょいっと、僕の膝の上に乗った。そして、僕の方に向いた。
梓「ほらw私軽いでしょw」
僕「あ、うん。いやまあ柔らかくて気持ちいいけれどw」
梓「エッチw」
僕は、梓に、フルーツを食べさせた。
梓「あら。これ美味しいですね。どうぞ!」
僕「もぐもぐ。お、本当だ。」
そんな感じで、昼食の間中、梓は僕の膝の上に乗っかっていた。
夕食になった。また、同じコンパニオンが来ていた。
今度は、各ブースに最初からコンパニオンが座っていた。
どうやら、夕食は各会社ごとに担当コンパニオンが決まっているようだった。
梓を探すと、まあ予測できたが、トップ企業の担当だった。そりゃそうだろう。一番かわいかったから。
僕も、業界の人だ。流石に、ここでトラブルを犯すようなことはしない。
梓のことは気になったが、普通に食べて飲んだ。
楽しく飲んでいたが、ふと、梓の方を見た。
あのエロオヤジが、無理やり飲ませていた。
どうしようかと迷った。でも、うーん。
流石に2回邪魔をしたら、何かとマズいよなぁ。
そんなことを考えていたら、また、カラオケタイムが始まった。
エロオヤジは今度、なんと僕のところに来た。
クソオヤジ「おう!さっきはどうも!どうだ、今度は歌ってくれませんか?俺はこいつとデュエットしたかったんだけど、こいつが知ってる曲がないんだ。」
こいつとは、梓のことだった。
僕「あら、そうなんスね!えっと、梓ちゃん?でいいのかな?歌えるデュエットある?僕が知ってるのなら、一緒に歌おうよ。」
クソオヤジ「わははwいいねw歌って歌ってw」
梓はほっとした顔をして、僕とデュエットを歌った。
僕はカラオケが好きだったので、デュエットは大いに盛り上がった。
ついでに、何曲か歌った。
梓は、ずっと近くにいてくれた。
エロオヤジはその頃には、別のコンパニオンに絡んでいた。
歌い終わると、梓は僕のブースに来ていた。
僕「梓ちゃん向こうにいないとまずいんじゃない?」
梓「えーイヤですよあそこw飲むなら僕さんと楽しく飲みたいww」
そういってまた、僕の膝に乗ってきた。
僕「あ、ごめん!ちょっと今は・・・」
梓の太ももが、僕の股間に触れていた。
それで、梓は、何が言いたかったか察知する。
梓「あら・・ひょっとして・・・w」
ニヤリと笑われる。
107: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 03:51:14.97 ID:xpSFFwiC0
隠れて、浴衣の上から、触られた。
梓「(カッチカチじゃん・・・w)」
僕「(梓のせいでしょw)」
梓「(スケベ・・w)」
僕「(男はスケベに決まってるだろwちょっと外行こうw)」
僕はトイレに行く振りをして、外に出た。
梓も、ちょっと間をおいて出てきた。
ちなみに、コンパニオンは、全員チャイナドレスを着ていた。
ホテルの踊り場に、連れ出した。
誰が来るかわからない。
僕は、興奮を抑えきれず、いきなりキスした。
梓「ん?むっ・・・むちゅっ・・・はぁ・・んっ・・レロ・・・」
梓とのキスは、なんだか、スポーツのような感じだった。
酔っているからだろうか、勢いで激しいキスになった。
梓の弾力ある胸を揉みしだきながら、チャイナドレスをスリットからたくしあげた。
梓「やんっ!大胆!」
僕は興奮しながら、ストッキングをパンティーごと引きずり落として階段の手すりに乗っけた。
梓も負けじと僕のベルトを外し、ズボンとトランクスを下した。
キスをやめ、いきなり僕のアレを口に入れた。
上手とか下手とかじゃない。もう勢いだった。勢いのまま、僕のアレをしゃぶりつくした。
僕は、その間中、梓の頭を掴んでいた。そして、そのまま、梓の頭を僕の股間に打ち付ける。
梓「んっ。んんんん!!!。んー!!んんんーー!!! ゲホっ!!ゲホ!!」
イラ○チオをされ、少し恨めしそうな顔を僕に向ける梓。
僕は、そんな梓を手すりにしがみつかせ、アソコを舐めまくった。
梓「やだ・・ちょ・・・あっ・・・くすぐったいから・・・んっ・・・あっ・・ひゃっ・・・」
クチュクチュといういやらしい音が、踊り場に響く。
僕はもう抑えられず、そのまま、ゴムもつけず、一気に挿入した。
梓「ちょっと・・ゴム・・あ・・ないか・・・ティッシュあるから・・・あっ・・・外に出して・・・んっ・・・あっあっあっ」
僕は、バックから、のしかかるように、ズンズンと、腰を、梓の尻に、押し込む。ズン。ズン。
梓「やっぱり・・・こういうことって・・・んっ・・んっ・・よくあるんですか・・・あっ・・・んっ・・・」
僕「さあっ・・・ねっ・・・僕はっ 初めてっ・・・だよっ・・・!」
興奮はすぐに最高潮になり、僕は、直前で引き抜き、階段にまき散らしてしまった。
梓はをれをティッシュで丁寧に拭き取り、僕のアレも拭いてくれた。最後に自分のアソコも拭きとっていた。
梓「はぁーっ。やっちゃった・・・何してんだろ私・・・」
僕「傷つくこと言うなよ・・僕は気持ちよかったよ・・・」
梓「ああそうでしょうね!私も気持ち良かったですけど!」
僕「宴会がお開きになる前に戻ろう・・・」
梓「そうですね。。なんか疲れました・・」
僕「僕も・・」
宴会はちょうどお開きになるタイミングだった。
コンパニオンはそれで帰り、しかし宴会後の2次会・3次会は延々と続いた。
梓に会うことは、二度となかった。
110: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 10:10:35.21 ID:E+Q2IVME0
事業部長「はい。みなさん、今年は激動の一年でした。これから休みに入りますが、あまり無茶しないように。しっかり英気を養って、新年に備えてください。」
そんな〆の言葉とともに、今年の仕事は終了した。
僕「沢村さんは、今年もタイですか?」
沢村「ああ!地元の彼女と会って、こっちの彼女と出かけて、それからタイだな!」
僕「ええ・・・」
淳「お疲れー。お前もこれから行くんだろ?一緒に行こうぜ」
僕「そうだな。いったんマンションに荷物置いてくるだろ?」
淳「もちろん。俺は今日飲めないから、店まで乗っけてってやるよ」
僕「お、ありがとう!」
同期で、お疲れ様会が開かれる。
淳に連れられ、会場に来た。
同期は数百人いた。本社に配属されたのはおぼろげだが100人くらいだったと思う。あとは営業所配属だ。
本社といっても、労務課や人事部もいれば、本社内の工場などに配属された子も入っている。一般事務職の子も多い。
集まる前に調べてみたが、まだ丸2年経っていないが、もうすでに3割ほど辞めていた。
この日集まったのは30〜40人くらいだったか。
みな、社会人の顔つきになっていた。
その地域では知れたホテルの会場。仕切ったのは、生産システムのホープ、豊(竹野内豊似、以下豊)。新入社員研修で同じ班だったヤツだ。
彼は大学・大学院時代に遊びまくっていて、今でもいろいろ手を出している。頭の回転は非常にい。
豊「はいー。みなさん、お疲れ様でしたー。ここには同期しかいません!大いに騒いで結構!今夜は飲みましょう!」
途中からの進行は、僕がした。
ありきたりのビンゴゲームもした。景品は、豊から依頼を受け、僕と翼、結衣の3人で選んで買ってきていた。
ビンゴの器具は、ホテルが無料で貸してくれる。景品を包む作業は、今回の飲み代から経費で外注した。
よくわからないが、飲み代の半分くらいは会社から出ていた。なので、一応会社の行事の一環に近いのだろう。
僕「はい40番。そろそろビンゴ出ますかねー。お!マジか!最初のビンゴは・・・淳!」
淳「よっしゃ!好きなの選んでいいんだよな!」
僕「ああ、どうぞ!」
淳「じゃあこのテーマパークのペアチケット食事券つき!」
僕「はいよ!誰と行く気だー??」
歓声が上がる。
淳「(バ、バカ!煽るな!)」
僕「(いいじゃん!かましてこいww)」
淳「秘密!あとで誘ってくる!!」
僕「今行って来いw」
淳「じゃあ結衣ちゃん!俺と一緒に」
結衣「はいゴメンナサイww!!」
会場は爆笑に包まれた。
つつがなく一次会が終了し、二次会はバラバラに散って行った。
111: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/09(金) 11:39:32.50 ID:E+Q2IVME0
二次会。僕は、新入社員研修の時のメンバーで飲みに行った。
と言っても、本社に残っているのは淳・豊・僕・結衣・翼・あきこ(雛形あきこ似)の6人。
6人が集まるのは、研修以来だった。
あきこ「私はただの事務だから業務内容はよくわからないけれど、」
豊「うん。」
あきこ「みんなの話はちょくちょく聞こえてくるよー」
淳「え?まじで?」
あきこ「淳君は、ミスして異動ww」
淳「wwwあれはビビったwwでも今はそれで良かったと思うぞ。毎日CADと睨めっこさ。落ち着く。」
僕「豊も聞いたよ。この前の発売のやつ。お前が担当したんだってな。」
豊「先輩の万全のサポートの中、名前を出しただけだよあれ。この規模の会社で、俺たちがメインになる仕事なんてないさ。」
僕「そういう意味では、結衣や翼は即戦力だよね。お客さん所に出向いて、自分でプレゼンするんでしょ?」
翼「私達、開発部なのにね・・・でも仕様が一番分かるから。あと、なんだかんだで女性っていうのは武器だよ。」
翼は、地元の超有名校を首席で卒業している。それは会社内では有名な話だ。その分、自尊心が強く、トラブルも多いらしい。
ただ、ハマる仕事にはこの上ない戦力になる。
結衣は、おっとりしたタイプ。誰からも好かれる。ただあまり前に出ないので、案件を抱え過ぎてつぶれてしまうこともあるようだ。
僕「結衣も・・もうすこし他の人を頼った方がいいよ?違うヤツから漏れ聞こえてきたけれどさ・・」
結衣「・・・そうね。でも、自分の仕事は自分で解決したいの。」
僕「そういうところ、僕は嫌いじゃないw」
淳「人の事言ってるけど、一番働いてるのは、お前だろう?お前と沢村さんの話はよく聞こえてくるぞ。」
僕「それはあれだろ。沢村さんが有名だからだ。」
あきこ「沢村さん・・・wうちの先輩に手を出したwwwあの人カッコイイもんねw」
結衣「え・・?うちの先輩も確か・・・」
僕「スミマセン・・・それ系の話は聞かなかったことにしてください・・・」
豊「まあ実際、経営企画室の人たちは、少し浮いてるよな。毛並みがみなさんとは違いますけど?って感じがする。」
僕「それは、まあ、あると思う。ちょっとお高く止まってる気がするよ。」
豊「お前が同期だからこうやって和やかに話しているけれど、できれば経営企画室の人たちにはかかわり合いたくないね。」
あきこ「そうだねぇ。こっちが一生懸命やってることを急に中止にさせたり、全然違う事業を提案したり・・」
耳が痛い。うすうす感じてはいた。
経営という観点と、実際の現場ではずれがある。どっちが正しいかなんて結果論でしかない。
淳「まあまあ、仕事の話はこれくらいにしようぜ。せっかく集まったんだし、楽しく飲もう。俺はこれから車で帰省だから飲めないけどな。」
助かった。淳はこういう所での助け舟が上手い。
淳とあきこが帰り、残るは4人になった。
豊「帰ったか。」
僕「うん。」
豊「じゃあ、今度の旅行の計画を決めようか。」
翼「はーい。楽しみ!」
結衣「淳君にばれると厄介だからね。。」
実は、前々から、4人で遊びに行こうと話をしていた。
結衣に危害があるといけないので、淳には話を持ちかけなかった。
泊りがけの、スキーだ。
結衣「保養所しか抑えてないから、これから決めなきゃね。」
僕「ギリギリすぎるwwもう来週の話なのにw」
豊「まあ車は俺が出すし、もう用品は揃えてあるんだろ?」
何週間か前に、僕と翼でスキー用品店に一式を買いに行った。
豊と結衣は経験者で、僕と翼は初心者だ。
僕「まあね。でもボードとか不安しかない。」
結衣「大丈夫よ!僕君運動神経良さそうだし。」
翼「私は、年内に一回、彼氏に教えてもらうー」
豊「じゃあ完全な初心者はお前だけだな!」
僕「あ、お手柔らかに。。。」
豊「そうだ。俺年末年始暇だから、2人で特訓しに行く?予定は?」
僕「地元に帰る予定はないよ、友達もこっちに遊びに来るし、その遊びの予定以外は何にもない」
豊「寂しいやつだな。じゃあ日程決めて、行こう。」
僕「うん。ありがとう。」
こうして、年末年始の予定は直前に埋まった。
115: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 02:01:33.80 ID:IV3lvoqA0
すみません。僕自身への先入観をなくすために、文章中の僕への呼び名を「僕」としていましたが、無理が出てきました。
そこで、便宜上、僕自身の名前を仮名で付けさせていただきます。
僕の名前: 藤原 竜也
でお願いします。
116: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 02:26:25.04 ID:IV3lvoqA0
僕と豊は、年を越す前に2人でスノボーに出かけた。
当時流行った、ステップインのボード。珍しい、表が緑・裏が白のボードだった。ミリタリーっぽいウェアもなかなかいい感じだった。
豊「お、なかなか決まってるじゃん。形から入るのは大事だな。」
僕「豊もいいね。手練れのボーダーって感じ。」
実際、豊は上手だった。
ハーフパイプには行かず、普通に滑っていた。そして、何気ないコブで180や360を華麗に決める。
そのスキー場はそれなりの規模だったが、豊が一番輝いていた。
豊「じゃ、適当に滑ろう。楽勝だって。」
ただ、相手が男性となると、教え方が致命的に下手だった。
結局、僕は、大きな痣と首の痛みを増やしただけで午前中を終えた。
そして、豊の特訓を拒否した。
僕「もういいよ豊。滑ってきなよ。僕はスクールに入る。」
その日、有料ではあるが、スクールを開催していた。
豊「あー。まあそれも手だな、じゃあ、ちょっと上から滑ってくる。後で合流しよう。」
僕「あいよ。連れてきてくれてありがとうね。」
そうして、僕はスクールに入った。
スクールでは、目から鱗のことばかりだった。
膝を使ってはいけない。
手は進行方向へ。
体重移動のコツ。
片方のビンディングを外したままでの滑り方。
2時間ほどの講習で、初心者コースだけなら問題なく滑ることができるようになった。
教えてくれた先生も、いい人だった。
「スピードだけは、出し過ぎないようにね!ボードとスキーは進行方向が違うから。」
この教えは今でも守っている。
ロッジで休憩しようと、移動した。
すると、ボードを外した豊が、知らない女性2人と立ち話をしていた。
僕「あれ、豊。もう滑らないの?」
豊「ああ。ちょっとボードのメンテしてなくって急に上級者コースに行ったから、途中でビンディングが壊れて外れちゃった。」
僕「うわ。大丈夫だった?」
豊「大丈夫。滑って降りるだけなら、片足で十分滑ってこれるから」
豊「おっと。紹介するよ。こいつがさっき言ってた竜也ね。こいつと2人で来たんだ。よかったらこれからロッジで休憩しよう。奢るよ」
豊はナンパしていた。
女子?「えー。どうしようかな。」
僕「ちょうど僕も休憩したかったから、いいよ。奢るよ。まあ、君たちが来なくても休憩するし。僕今日がボード初めてだからもう滑れない。足腰痛い。」
女子?「あ、私も初めてなんです。頭打ちませんでした?」
僕「打ちまくったwwバカになったら豊とスキー場訴えるww」
女子?「www私も体痛いから休憩しよっかなw」
女子?「ホント、だらしないなぁ。いいよ。じゃあ休憩しよう。一緒に行ってあげるから奢ってよね。」
余談だが、豊は、この女子?と結婚することになる。
女子?のその後?
まだ登場は先になる。
この女子?は、
その後、僕の彼女になる。
そして、僕の人生を左右することになる。
人生を左右する。主に原因は僕にある。彼女になんの罪もない。
117: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 04:01:12.03 ID:IV3lvoqA0
年が明け、僕と豊、結衣、翼はスキー旅行に出かけた。
翼「楽しみ!ちゃんとエスコートしてねー」
豊「あ、うん。一応女子だし、レクチャーはするよ。竜也は多少上達したから、翼も負けんなよ。」
翼「え?そうなの?竜也君ずるい!私、彼氏と喧嘩しちゃって、ボード教えてもらってないんだよ!」
僕「そう言われても・・・まあ、何とかなるって。」
翼「うわ・・あからさまに関わりたくない雰囲気を出してる・・・そんなんで女子に持てると思ってるの?うわー。引くわー」
僕「翼ちゃんにモテたいわけじゃないし・・・僕が教える立場じゃないしなぁ」
翼「え?一緒に上達しようよ!とかないわけー?」
僕「結衣ちゃーん!手取り足取り教えてねー!」
結衣「え?私?・・・そうだね!教えるよ!翼も一緒にね!今日は滑るっていうよりかは、みんなと遊びたいだけだから、みんなと一緒ならなんでもOKだよ!」
僕「ん?結衣ちゃん、・・・うん!楽しく行こう!」
豊「なんだよ竜也。変な間を作るな。」
僕「豊は前見て運転しろ。ちゃんと宿に着いたら労ってやるから。」
豊「はいはいー。」
僕は、結衣の表情が気になった。
彼女は、年末くらいから表情がよくない。仕事だろうか。貯め込む癖があるので、ちょっと気がかりだ。
SAでの休憩の際、少しだけ探りを入れた。
僕「寒いねー」
結衣「ほんと。吐く息が白いね。」
僕「・・・仕事のこと、考えちゃってるの?」
結衣「・・・え?・・んー、あはは。気にしないでw今日は楽しみにしてたんだから、仕事の話は無しで!」
僕「・・・ま、それもいいな。じゃあ、今だけ言っとくね。何かあったら、部外者だからこそ聞ける話もあるよ。頼りないけれど、吐き出したい時は言いなよ。」
結衣「・・・優しいね。竜也君は。」
僕「ほら。笑顔で行こう。仕事だか何だか知らないけど、旅行中は考えたって何にもならないよ。」
結衣「そだね。気分転換!」
翼「そろそろ出発だよー」
結衣「はいはい。行こう!竜也君。」
僕「はいはい。じゃあ出発!」
少しずつ、いろんな歯車が動き出す。
何の関係もない出来事に思われることが、ふとした切っ掛けで、つながることがある。
人生ってそんなものの気がする。
120: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 10:05:25.91 ID:k6IVEhkr0
翼の運動神経は、想像よりも悪かった。いや、運動神経というより、彼女のスノボーに対するセンスは、絶望的に悪かった。
翼「もー何なのよ!このビンディング、雪が詰まって全然セットできないじゃない!」
僕「僕が買いたくても買えないモデルを買ったくせに・・・」
翼は、Burtonの当時の最新モデルだった。僕は高くて全然手が出なかったのに、彼女はそれを買った。
翼「竜也君はいいね!使いやすそうだね!」
僕「たぶんだけど、慣れだよ・・もうちょっと頑張ろう」
翼「もうやだ休憩する」
豊「よし休憩してろ竜也行こう」
僕「さすがにそれは・・」
豊「・・・ったく。じゃあ俺もちょっと休憩するか。」
結衣「竜也君、一緒に滑りに行こう。」
僕「あら付き合ってくれるのありがとう。」
結衣「もう中級コースくらいなら行けそうだね!」
僕「コースよりもリフトに乗るのが怖い!足元が巻き込まれそう!」
結衣「大丈夫だよ。あっちのコースはゴンドラだから、ボードは外して乗れるよ!」
僕「確かにその方が安全だな。じゃあ結衣ちゃんよろしくー」
結衣は上手で丁寧な滑りだった。僕のペースを見ながら、ニコニコしながら後をついてきてくれた。
好きな所へ行っていいよーというスタンスだった。
結衣「やっぱり滑ると気持ちいいね!」
僕「気持ちいけど!足が痛い!頭打った!逆エッジ怖い!」
結衣「あはは!慣れるよそのうち!竜也君上手だよ!2回目なんて思えない!」
僕「ごめんしゃべる余裕がない!!ぎゃーっ!!」
結衣「だ、大丈夫!?きゃー!」
結衣は、急にコケた僕に気を取られ、逆エッジになり、派手に転んだ。
その日は新雪だったので、僕たちの周りに雪が舞った。
僕「はー。ちょっと休憩。」
結衣「そうだね。休憩休憩。」
ペットボトルの水を飲む。
僕「結衣ちゃん上手いねホント。よく来るの?」
結衣「んー、大学が東北だったから。彼とよく行ってたなー。」
彼とは遠距離恋愛。
就職先もかなり離れているらしく、最近はなかなか会えずにいるらしい。
結衣「だから、最近ちょっとさみしい。」
僕「お正月は会わないの?」
結衣「うーん、彼は会いたがってたんだけどね・・・彼の空いてる日程には私の都合がつかなくて。会えるのは2月かな。」
僕「そっかそっか。会えるときに会っておいた方がいいよ。じゃないと、僕みたいになっちゃう。」
結衣「え?!竜也君別れちゃったの?!」
僕「うん・・」
滑りを再開し、かいつまんで話した。
結衣「竜也君モテそうだし、すぐ彼女できるよきっと。」
僕「だといいですけどw」
結衣「・・・私も、遠距離・・・無理なのかな・・・」
僕「・・・・」
結衣「・・・・」
僕「別れちゃった僕が言うのもなんだけど、」
結衣「ん?」
僕「僕以外の友達は、まだ遠距離続いてるんだ。結衣ちゃんもだけど。」
結衣「そうなんだ。」
僕「大学の友達もそう。この春に、結婚する子もいる。」
結衣「そっか。離れて大切さがわかるって感じなのかな。」
僕「きっとそうだね。」
結衣「心細い時、側にいてほしいほしいもんなぁ。彼に。」
僕「そんな時、次に会う時までその思いを大切にしようと思うのか、それとも、別の出会いを求めるようになるのかの違いじゃないかな。別れる別れないって。」
結衣「心に余裕があるときは、良くわかる話ね、でも、やっぱり心細いのには、耐えられない時があるな。」
僕「・・・心に迷いがあると、悪意あるヤツに付け込まれるよ。僕がその悪いヤツかもしれない。気をつけなよ。」
スキー場で良かった。夜、飲みながらこんな話をされたら。。。無理矢理何かしてしまうかもしれない。
結衣「大丈夫よ。竜也君のこと信頼してるから。」
心が痛かった。
僕「はいはい。裏切らないように頑張りますよー。」
結衣「・・・あのね竜也君」
僕「どしたん?」
結衣「・・・今夜、ちょっと相談していいかな・・・?」
僕「ああいいよ。」
その夜の相談内容は、僕の想像を超えるものだった。
121: 以下、
ゴクリ
124: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 17:25:27.65 ID:IV3lvoqA0
なんだかんだナイターまで満喫し、会社の保養施設に帰ってきた。
豊は運転の疲れがあったのか、お風呂に入ってビール一杯で寝てしまった。
翼は彼氏への悪態をつきながら、さんざん絡んできた。でも、早い時間に寝た。彼女は彼女なりに頑張ったのだろう。
そんな醜態を見せられるほど、気の許した同期が僕たちということなのかもしれない。
僕は筋肉痛の体を労わるように、洋酒をストレートでチビチビ飲んでいた。
結衣が、隣に座る。
何とも言えない、気まずい雰囲気が流れる。
僕「・・・今日は楽しかったなぁ・・・体中が痛いよ。」
結衣「・・・私も久々だったから、ちょっと忘れちゃってた。楽しかった、かな。」
結衣は、何から話そうか、悩んでいるようだった。甘いカクテルの缶を飲んでいる。
僕「なんか不思議だよね。同期ってだけなのに、こうやって、保養施設で泊まってるって。」
結衣「そうだね。彼氏には言えないなぁ。怪しまれちゃうよ。でも・・」
僕「でも?」
結衣「現に、私たちはやましい関係じゃないし、本当に変な感じw」
僕「うんwまあ僕も淳には言えないなw殺されるw」
ちょっと談笑して、その当時流行ってたことととかテレビの話とかをした。
と、結衣が、寂しげな表情をした。
結衣「私・・・・私ね・・・・」
表情が、さらに、悲しそうな顔に歪んでいる。
結衣「彼に・・・相談できなくて・・・」
僕「・・・うん。」
結衣「同じ部署の人にも・・言えなくて・・・」
ぽろぽろと涙があふれてきた。
僕は、そっと、近くにあった毛布を肩にかけてやる。
結衣は、僕に寄り添ってきた。
僕「・・・言えなくて?」
結衣「翼には、知られたくなくて・・・・」
僕「知られたくないことがあるんだね。」
結衣「どうしていいかわからなくて・・・」
僕「わからないんだね・・そっかそっか。」
結衣「今も、竜也君に・・・すがりたくて・・でも、言うのが怖い・・」
僕は、そっと抱きしめた。
結衣は、ずっと泣いていた。
10分くらいだろうか。
結衣は、キッとした目をこちらに向けてきた。
結衣「よしっ。」
僕「うん。しゃべっちゃえ。」
結衣「・・・わ・わたし・・・わたしは・・」
声は震えている。
結衣「拒否したのに・・・強く・・・つ、強く、い、言えなくて・・」
僕「誰かに、何か・・・言われたの・・・?」
結衣「わ・・私の体を・・・から。、、体を!」
結衣は、また泣き出した。
僕「もういいよ・・・結衣。結衣は悪くない。悪くないから、目をつむって、こうしてなよ。」
結衣「ひっく・・・ひっく・・・」
もう、言葉にならない声しか出さなかった。
2時間ほどかけて、話してくれた。
結衣は、10歳年上の先輩から、執拗なセクハラを受けていた。
125: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 17:52:43.30 ID:IV3lvoqA0
詳しく聞きすぎると、それはセカンドレイプになってしまう。
断片的な情報をかき集める。
・結衣は、この春から移動してきた10歳年上の会社の先輩(命名:蛇野郎)から、言い寄られている。
・最初は、ニタニタとデートを誘ってくるくらいだった。やんわりと断っていた。
・とある案件で一緒に仕事をした。そこで、結衣が致命的なミスをした。
・蛇野郎は、そのミスをフォローしてくれた。すこし見直した。
・少し気を許してしまったら、残業中に2人きりになった時に、軽くボディタッチされた。やんわりと拒絶したつもりだったが、相手はその気になってしまった。
・以来、事あるごとに一緒に残業をしたがるようになり、2人きりのタイミングを見計らって軽く触られるようになった。
・この年末時期になると、エスカレートしてきた。
・直近では、(おそらく)胸を触られた。しかも(これも推測)ブラウスのボタンを外され、ブラにまで手をかけられ、ホックまで外された。
・必死で抵抗しようとしたが、仕事をフォローしてもらった弱みと、蛇野郎の目が怖くて強く拒否できなかった。
・自分は女だ。何かあれば、首を切られるのは男ではなく女の私だ。
・蛇野郎もいるし仕事もきついから嫌で嫌で仕方がないが、私はこの仕事にやりがいを感じているので、辞めたくはない。でも、誰にも知られたくない。
結衣「ひっく・・・私・・・あの感触が・・・頭から取れないの・・・ひっく・・」
僕「結衣は悪くないよ。悪くない。よく一人で頑張ったよ・・・えらいよ・・・悪くないからね。」
結衣は、僕の胸で、ずっと泣いていた。そして、そのまま寝てしまった。
僕「・・・」
僕は考えていた。
僕にできることってあるのだろうか?
はっきり言って、ない。
今の世の中ならば、これは完全なセクハラだし犯罪だ。コンプライアンス云々どころの騒ぎじゃない。
でも、当時はまだそこまでセクハラ・パワハラに対する意識も低い時代だった。
また、10歳も年上の先輩に対して、他部署のペーペーの僕が太刀打ちできる要素は全くない。
僕と同じフロアにいる事業部長の電話が漏れ聞こえたことがある。
事業部長「はい。我々の提案を拒否するということですね。それでよろしいですね?では私はこれから○○と△△と□□の会社に出向いて談合をしてきますので。」
事業部長「は?何言ってるの?おたくはこの条件飲まないんでしょ?いいよ。飲まなくて。徹底的に潰すから。後悔するなよ。」
事業部長「じゃあ、最初から『自分に決定権はありません』て言えよ。こっちは遊びでやってんじゃないんだよ。お前じゃ話にならんよ。上司を今すぐ出せ。出せないならもういい。お前の会社は2か月後にないからな。」
こんな会話が聞こえることは(ごくたまに)あった。
つまり、何が言いたいかというと、世の中、まっとうな会社ばかりではない。会社は不祥事を隠そうとするし、それをもみ消すためなら何でもやる。
だから、歯車である自分が、やれることというのは、何もないのだ。
できること。
それは、結衣を抱きしめてやることだけだった。彼氏の代わりとして。
帰り道、結衣はすっきりした顔をしていた。
結衣「私、頑張ってみる。蛇野郎先輩は2週間くらい出張だから、それまでにいろいろ考えてみる!」
僕「うん。大見得切ったけど、僕には何にもできない。ごめんね。」
結衣「ううん。ありがとう。すっきりしたよ!」
嘘だ。
きっと、会社の女子寮に帰ったら、またきっと悩んで暗くなるんだ。
結衣、なんとかしてやりたい。
僕は、あることを思い出した。
126: 以下、
糞野郎は何処にでもいるな
127: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/12(月) 22:53:41.82 ID:IV3lvoqA0
<ピンポーン>
年末年始の休みが終わる。この日は最終日。
僕は、インターホンを押した。
沢村「はいー。なんだ竜也か。どうした?入れよ。」
僕「すみません突然に。お邪魔します。」
僕は、同じマンションにいる沢村さんに、思うところがあって話をしに来た。
沢村さんの部屋は、同じマンションとは思えない。
壁には自作の棚がはりつけてあり、ネクタイがショップのように陳列してある。
バーカウンターも用意されている。脇には高価な洋酒が何本も置いてあった。
手慣れた手つきで、ショートカクテルを入れてくれた。
僕「いただきます。あ、これどうぞ。」
僕は、手土産に、スキー場の帰りにお土産として買った、新鮮なチーズを取り出した。
沢村「お、いいね。じゃあ俺は白にしよう。確か、辛い奴が一本あったはず。」
そういうと、沢村さんはワインセラーから白ワインを持ってきて、開けた。
僕「この部屋って、すごいですよね。もてなす感が。」
沢村「そりゃそうさ。この印象で、ここに来た子が股を開いてくれるかどうかが決まるからな。」
僕「たぶんですけど、この部屋に来た時点で、相手は開く気満々だと思います。」
沢村「いやいや。違う違う。それは初心者の考えだ。まずは、気軽に誘う。そして、気軽に返す。」
僕「はぁ。」
沢村「俺の家は、誰でも、気軽に入れる。そういうイメージが大事だ。そして、敷居を下げるんだ。」
僕「さすが・・・経験者は語りますね・・」
沢村「蟻地獄の世に・・・ウヒヒ・・・ちょっと・・ウへへ・・足を入れたら・・ヒャヒャ・・・」
僕「・・・帰ろうかな・・」
沢村「まあいい。で、何の話があるんだ?」
僕「単刀直入に聞いていいですか。」
沢村「おう。」
僕「商品開発部に、沢村さんの下僕っています?」
沢村「・・・おいおいww 人聞き悪いこと言うなよww 俺は別に・・・」
僕の顔を見て、茶化すのをやめる
沢村「意図が分からない。」
僕「そうですよね・・・詳しくは言えないのですけれど・・・商品開発部の、蛇野郎という人の弱みが握りたいんです。」
沢村「蛇野郎さんか。知ってる人だな。俺の大学の先輩だ。」
僕「で、どうですか。商品開発部の内情にに詳そうな『お局様』経由で、蛇野郎さんの弱みが握れないかな、と考えたんですが。」
沢村「ふむ。答えはYesだ。だが、俺にものを頼むんだ。『詳しくは言えない』じゃあ話にならん。」
僕「ですよね・・・詳細までは言いません。僕の言葉のニュアンスで察してください。さらっと話します。協力お願いできませんか。」
僕は、少しぼやかして話した。
沢村「だいたいわかった。簡単に言うと、竜也の同期の子が蛇野郎さんにセクハラを受けてるから、撃退してほしいってことだな。でも、同期の子はそれを周りに知られたくないと。」
僕「・・・察しが良すぎます。沢村さん・・・」
沢村「お前が嘘つくのが下手なんだよ。しかし許せんな。セクハラなんてまかり通る時代じゃない。今後、世の中はもっとそういう問題に対して厳しくなる。今のうちに芽を摘んでおいた方がいいかもな。」
僕「しかし、僕たちでは限度があります。」
沢村「ふん。任せておけよ。弱みを握る?探す?面倒だな。弱みなんて作っちゃえばいいんだよ。」
僕「・・・どうやってですか?」
沢村「蛇野郎さん、これから2週間くらい出張じゃないか?」
僕「はい。そういってました。何で知ってるんですか?」
沢村「ああ・・・お前の考えはビンゴだよ。確かに、商品開発部に、俺の『下僕』の一人がいる。俺の言うことならだいたい聞くだろうな。」
僕「こわっ。」
沢村「その下僕が、これから2週間出張って言ってたんだよ。同じ部署の気持ち悪い男の先輩と一緒だって言ってた。きっとそれが蛇野郎さんかなと思ったんだよ。」
僕はひょっとしたら、とんでもないお願いを、沢村さんにしてしまったのかもしれない。
128: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 00:36:25.96 ID:r7ul+eXo0
年始早々、そのニュースは社内に広がった。
なんでも、商品開発部にいる男性社員が、年明けの長期出張の初日に、同行していた女性社員を酔った勢いで押し倒し、出張に居合わせた重役に見つかって謹慎処分を受けたらしい。
これも噂であるが、その女性社員と重役は秘密の関係らしく、自分の女に手を出した男性社員に激怒。二度と出世できないように左遷されるらしい。
沢村「へぇ。世の中には不届きな男性社員もいるもんだな。性の乱れは風紀の乱れ。竜也も気をつけろよ!」
何食わぬ顔で、平然とそう言ってのけた沢村さんに戦慄した。
僕「えっと。。何したんですか沢村さん・・・」
沢村「は?何が?男性社員のことお前知ってるの?」
とぼけているが、表情はにやけている。
つまり、そういうことだ。
きっと、女性社員というのが沢村さんの下僕だ。重役とも関係を持っていたらしい。そして、ハニートラップを仕掛けたのだろう。
世の中には、知らない方がいいこともある。
僕は、結衣にメールをした。
「因果方法ってあるんだろうね。」
返事は、すぐ帰ってきた。
「もう、社内に広まってるんだね・・・」
「ああ。とにかく、これからは仕事に集中できるね。」
あっけなかった。
因果応報。
こんなやり取りの後、僕と結衣の関係は、より親密になっていく。
129: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 00:37:57.06 ID:r7ul+eXo0
結衣の心のうちは、実際は分からない。
でも、僕は心で、いつも言い聞かせていた。
「僕は、結衣にとっての『仮の恋人』」
そう。遠距離恋愛で埋められないものを、僕が埋める。
決して、関係を持ってはいけない。
不思議と、性欲は沸かなかった。同情が強かったのか、彼氏や淳に遠慮したのか。
その週末、結衣に会った。
結衣「ありがとう。」
僕「何が?」
結衣「根回ししたの、竜也君でしょ?」
僕「ちょっと意味が分からないよ。」
結衣「お局に呼ばれたわ。『結衣ちゃん!怖い思いさせてたんだね!もう大丈夫だからね!何かあったらすぐ言ってね!』って言われた。」
僕「冷静に考えなよ・・・お局って誰?僕、その人と接点ないよ・・・」
結衣「あるよ。お局、重役さん以外にも沢村さんとも関係持ってたってこっそり聞いたよ?」
僕「あのね。ドラマじゃないんだから、そんなことがあるわけないでしょ?」
結衣「じー。」
結衣は、本当に可愛い。その大きな瞳で、まっすぐに見つめられると、一瞬で恋に落ちてしまうくらいに。
僕「・・・何、襲われたいの?僕、今けっこうイライラしてるよ?呼び出しておいて、僕を犯人みたいに問い詰めるの?いい加減にしなよ。」
結衣「ごめん。助けてもらったのに詮索しちゃった。本当に感謝してるの。それだけなの。」
僕「感謝される筋合いは、特にないからさ、恩を感じる必要はないよ。結衣は今まで通り仕事に打ち込みなよ。ほら、ご飯さめちゃうよ。食べよう。」
結衣「うん・・・」
帰り際に、言われた。
結衣「やっぱり、貸しは作りたくない。」
僕「頑固だな・・・貸し借りなんでないよ・・」
結衣「私を馬鹿にしないでほしい。私は守られてる子じゃない。ちゃんとした社会人よ?」
僕「・・・」
結衣「社会人として、受けた恩はきっちり返します。」
僕「逆に言うよ。結衣が、僕に返せるものって何?僕は何も望んでないよ。今まで通りに良い同期として付き合ってくれ。それだけだよ。」
結衣「・・・私、自分がモテてる自覚あるよ?」
僕「・・・それで?」
結衣「その・・・お礼としてなら・・・ひ、一晩くらいなら・・」
結衣の顔は真っ赤になっていた。
僕はなんとなく断った。
きっと、結衣のことを何とも思ってなかったのなら、喜んで乗っただろう。
僕にとっては、結衣というのは社会人前からの知り合いなわけで、信頼できる同士でありたいと思っていた。
結衣も、分かってる。僕に恋愛感情なんてないはずだ。
僕「いいよそういうの。彼氏がいるくせに、恥を知れ。」
僕は冷たく言い放った。
結衣「本当だよね・・私何言ってるんだろう・・混乱してるのかな。」
僕「ま、愚痴はいくらでも聞くから、いつでもいらっしゃい。そのかわり」
結衣「そのかわり?」
僕「襲われても文句言うなよw」
結衣「おいwさっきと話が違うだろwwでもその時はその時でどんとこいw」
こうして、不思議なつながりを持つ同期ができた。
結衣は、その後、困難を乗り越え、数年後に遠距離恋愛中だった彼と結婚する。
そして、彼の仕事先の地方に転勤願を出し、その地方で暮らす。
2人だけの秘密。2人だけの関係。
誓って言える。彼女とは、肉体関係はなかった。
しかし、それ以外の確かなつながりが、あった。
132: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 09:30:00.84 ID:ZFEkVD+S0
年始から年度末にかけて、部署内は慌ただしい。僕も(まだまだ分からないことだらけだが)それなりに仕事に慣れ、自分だけの案件も持ち始めていた。
新人研修の時に同じ班だった営業の男がいる。
綾野剛似、以下剛。
剛は、先述したが、新人トップの成績で研修を終えている。
希望の配属先は田舎で、希望通りの営業所に行った。
当時の彼女を配属先に呼び、すぐに結婚した。
以降、特に接点はなかった。
僕「お電話変わりました。」
剛「竜也君?久しぶり。綾野です。元気にしてた?」
僕「剛君か。久しぶりだね。元気元気。そっちは?子供産まれるんだっけ?」
少し、懐かしい話をする。
剛「んで、本題なんだけれど。実は、お客さんの話を聞いてるうちに、ちょっとしたアイデアが浮かんだんだ。」
僕「アイデア?それなら、申請書のフォーマットあるから送ろうか?最近、僕もちょっとした問い合わせ以外は上司に申請出さないと動けないんだ。どんな案か知らないけれど、現場の声は書類で残しておいた方がいい。」
剛「俺も忙しいから、書類となると敷居が高くなるな。できれば、そっちで書いてくれないかな。」
僕「んー、じゃあ、今、話を聞くから、それを聞いて僕が書類に書くべきだと感じたら、現場の声からこんな意見があるよって形で書類にする。それでいい?」
剛「ああいいよ。俺は書類書くより現場でお客さんと話してる方が割に合ってる。」
僕「書類は大事だよ?いざ自分を守るのは、ペラペラの紙1枚だからね。」
剛「まーね。じゃあしゃべるから、竜也君の方で判断してくれ。」
内容は、案としては興味深いものだった。
法改正に絡んだ仕組みは各社作られ、市場は落ち着きつつある。いいこともあったが、一部のお客様にとっては窮屈に感じる事態もあるだろう。
そんな窮屈さを解消する、とてもニッチな商品・サービスだった。
僕の頭の中で、自分の知識と現場の声がリンクする。
直感的に、これは新規分野の開拓として調査くらいならしてもいいんじゃないかと判断する。
僕「それ、うまくいけばモノになるかもしれない。そのままだと微妙だけど、何かと組み合わされば・・・法改正後に生まれる、ちょっとした市場開拓くらいにはなるかも。」
剛「まー、そこまで大それたことじゃないんだけどさ、何かのアイデアの足しにてくれよ。じゃあ、またな。」
電話を切り、僕は、アイデアを具現化するために、企画提案書を作成した。
それは、A4で1枚の、走り書きのようなものだった。自分の中の案件として、仕事のレベルではABCD評価でD。
Aは新規事業開発提案。
Bは事業見直し案。
Cは現行品に企画追加案。
D。それは、「とりあえず調査だけしてみよう」という、片手間に処理する「調査案」
そう、この時は、ただの紙切れ1枚の、市場調査案だった。
まさか、この市場調査案が、僕の環境を一変させる内容に変わるなんて想像もしていなかった。
133: 以下、
小さな事程大切な事が多いよな
135: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 10:12:01.31 ID:ZFEkVD+S0
>>133
確かに。その積み重ねの中に、原石が紛れ込んでいる。そんな気分
134: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 10:10:06.75 ID:ZFEkVD+S0
D案はすぐに終わるため、だいたい申請書が通る。
僕は課長にすぐさま判子を貰い、書類の片隅に入れておいた。
数日後、手が空いたので、ネットで情報を集めてみる。少し興味深い記事が、他分野で出ていた。
社内の意見書がデータベース化されているので、イントラネットで類似の要望がないか検索する。
全く同じ要望はなかったが、うちの商品を提供するにあたってこんなことができたらいいなという要望書に目が止まる。
年末に沢村さんと出かけた展示会に、ある商品が出ていた。その時は気にも留めていなかったが、組み合わせると・・・
僕「沢村さん。ちょっといいですか?」
沢村「ああ。会議があるから、それが終わってからならいいよ。」
僕「はい。えー。じゃあ1時間後ですかね。横の打ち合わせ室予約しときます。」
沢村「あいよ。すぐ終わる?」
僕「30分くらいで。」
沢村「OK」
1時間で、簡単にまとめる。
沢村「お疲れ。どうした?」
僕「実は、こんな案件が出てきたんです。で、この商品とこのサービスを組み込んで、このアイデアを使ったら、ちょっとした市場開拓になりませんかね?」
沢村「・・・ほう。」
沢村さんの目つきが、変わった。
僕「どうですか?面白くないですかこれ。」
沢村「市場規模は不明だが・・・」
僕「ですよね・・・」
沢村「作り手の立場としては、恐ろしくやりがいを感じる内容だな。」
僕「やっぱりそうですか。それでいて、大変な作業の割に、市場の規模が見込めない。」
沢村「なるほどな。でも、だからこそ、大手では手を出さない分野だな。」
僕「そこにチャンスがあるかなと。幸い、法改正に絡んでるので、僕なら詳しいですよこの分野。」
沢村「これは・・D評価か。今すぐ書き直せ。C評価に変更だ。いいクリエイター紹介してやるよ。あ、お前の名前だと他部署が動かないかもしれないな。俺の名前で書き換えとけ。俺も口出しできるし、お前も動きやすいだろう。」
僕は、言われるまま、申請書を書き直し、提案書を添付した。
紹介されたクリエイターは、その業界ならだれもが知る、超大物だった。
クリエイター(柴田恭平似、以下柴田さん)
柴田「お世話になります。ご無沙汰してましたね。」
沢村「いつもお世話になっております。お元気そうで何よりです。」
簡単に僕を紹介してくれる。名刺交換する。
沢村さんは、僕の原案を書き直し、柴田さんに提案書を出した。
柴田「なるほどね。なかなか面白そうじゃない。僕の仕事は何をすればいいわけ?」
沢村「今のところ、ちょっとぼやっとしてるので、具体的に、こんな商品・サービスに具現化できますという何らかの「形」が欲しいですね。イメージ図でもいいので、何か描けないですか。」
柴田「ふむふむ。1週間くらいもらえる?また打ち合わせしましょう。その時に、アイデアをいくつか出してみるよ。それを引き取るなら、アイデア料ね。」
沢村「承知しました。」
こんな感じで、スタートした。
136: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 10:39:01.13 ID:ZFEkVD+S0
柴田さんのアイデアとラフは、この企画を一気に格上げするものだった。
すぐに、課長へ申請書を提出した。
課長は、何も言わずに判子を押してくれた。
課長「正直言うと、それほど需要は見込めないと思う。ただ、君たちがやる気になっているし、投資額は多くなさそうだ。俺の考えが古いのかもしれんから判断できない。お前たちがやりたいなら止めない。部長には話を通しておく。そこから先の他部署への交渉や進捗管理はお前たちがやれ。」
つまり、好きなようにやれというGOサインだった。
僕は、沢村さんの手助けの元、商品開発部に話を通した。
翼「竜也君、沢村さんの案件来たよー。面白そうだね。私も手助けすることになりそう。」
僕「お、そうなんだ。よろしくね。イメージや戦略の資料はそれなりにあるから、送るよ。」
翼「うん。うちの先輩に送ってあげて。あと、社内LANで共有かけておいて」
僕「そうだね。わかった。」
2月半ばになると、設計開発にも話が進んでいた。
淳「沢村さんの案件、こっちまで下りてきたぞ。俺も設計に加わるからな。」
僕「お、いいね。他部署の連携が感じられてうれしい。」
淳「ちょっと仕様がわからないところがあるから補足資料作ってくれ。」
僕「あいよ。あと翼ちゃんも絡んでるから、商品開発部にも確認取りやすいと思う。活用しなよ、横のつながり。」
淳「そうだな。参考にするよ。」
そして、経営企画・商品開発・設計開発が合同で会議し、正式にGOサインが出た。
その次の会議は、広報と生産管理も出席した。
沢村「・・・以上が、今回のプロジェクトの概要になります。」
相も変わらず、沢村さんの提案は全員を魅了した。
この会議には、商品開発の翼と生産管理の豊も、先輩と同行していた。
商品企画「発売日は・・GW前を予定しています。生産管理としてはどうですか。」
生産「ほぼ生産として何かやることはないから問題ないです。ラインナップに関して、現行品の在庫調整や変動が必要な予測ですか?」
広報「大々的に〇〇のラインナップをメインに商品展開していきますので、〇〇の在庫は増やしておいた方がいいかもしれないですね。」
沢村「どれくらいの需要が見込めるかは、今週中にウチの方から展開します。」
商品開発「開発としても、納期に問題はないです。」
広報「プロモーションは4月頭には行いますので、CGでも結構ですので3月20くらいまでには資料が欲しいです。」
・・・
商品企画「では、納期はシビアですが、『先んずれば制す』です。このプロジェクトは、市場に出したもの勝ちです。迅にやりましょう。以上です。」
会議は終了した。
137: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 11:21:00.92 ID:ZFEkVD+S0
事業部長に、うちの部長・課長が呼ばれたらしい。
課長「事業部長に呼ばれたよ。」
僕「何か言われましたか?」
課長「『この忙しい時期に、開発費をかけて無駄な投資をし、見込めない需要の商品展開をするとは何事だ。』だとさw」
僕「・・・じゃあ、プロジェクトは中止ですかね・・・」
課長「いや、ちゃんと君たちの資料を見せて通したよ。」
僕「ありがとうございます。なんか済みません・・」
課長「『こんなもの、月に5セット売れれば俺の負けだ』が捨て台詞だったw何としても月に5セット以上売ってくれw」
5セット。少ないと感じるかもしれない。
ちなみに、5セット売ると5万ほどの利益にしかならない。
しかし、この商品は特殊で、これ単品を購入しても意味がない。当社のラインナップを導入して初めて利用価値が出る。
つまり、5セット商品が売れると、当社のシステムが5件採用されることになる。
5件採用されると、純利益は100万にも上る。
だが、ライフサイクルを考えれば、会社を動かして展開するには少なすぎる額だ。
GW、A4用紙1枚で始まった案件が、プロジェクトとなり、商品として具現化し、発売された。
その発売は、業界に一石を投じることとなった。
法改正があって1年。市場が動いた。
前年に、公的機関から「理想モデル」と評された事案があったが、そのラインナップと今回の商品は抱き合わせで展開された。
広報「今回の販促費は、過去最高額だったよ。商品サンプルが高額過ぎた。」
沢村「そのかわり、反響も大きかったんじゃないですか?」
広報「ああ。初めてだよ。お客様から直接電話がかかってきて『こういうものを待ってた!』と喜ばれたのは。」
事業部長の予測は外れた。この商品発売前、展開していた事業のラインナップは月に50件程度の採用だった。商品発売後に問い合わせが殺到し、
ラインナップは月に平均300件以上売り上げるものとなる。
実際にその商品を組み込むお客様は月に100人ほど。その商品を組み込まなくてもいい。組み込めるよという対応力が受けた。
他社も、これから開発費と研究費をかけて追随するだろうと、うちの部長が言った。だがもう遅い。これから、価格競争が始まるだろう。
僕たちの商品は、先に発売し、他社が発売するまで、利益を貪る。
他社が同じものを出しても、うちと同じ金額では販売できない。また、割愛するが、他社では絶対に安くできない秘密の強みがあった。
完全に独占。鑑賞だった。
沢村さんの評価が、また上がった。
僕もうれしかった。
沢村「この案件はドル箱だったな。」
僕「そうですね。沢村さんはやっぱり凄いです。」
沢村「俺は今回手助けしただけだ。これはお前の仕事だと言っていいよ。」
僕「実際、僕が展開したら失敗してますよでも。」
沢村「ま、会社っていうところはそういうところだ。」
こうして、些細な提案は、当社の屋台骨を支える一環となった。
余談であるが、課長はこの案件が評価され、数年後に他の事業部へ「部長」として昇進する。
そして、沢村さん。
沢村さんは、この案件がきっかけで、
他業種から引き抜きを受けることになる。
138: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 11:56:48.78 ID:ZFEkVD+S0
話は遡り、2月。
残業は慢性的であったが、週末はしっかり休めていた。
僕はスノボーにはまり、豊達と毎週出かけていた。もちろん、翼や結衣、淳とも滑りに行っていた。
僕「翼ちゃん、上手になったよね。中級くらいなら全然問題ない」
淳「そうだね。あーあ。俺も一緒にお泊りしたかったな!なんで内緒だったんだよ!」
僕「根に持つなって。下心丸見えのやつなんて呼べるかよ。」
結衣「あはは。それから何回か一緒に滑りに行ってるから許してよーw」
翼「私の目の黒いうちは、お泊り厳禁だよ!」
豊「あー。今日も楽しかったな。また滑りに行こうな。」
帰り際、相変わらず車を出してくれた豊が、そう言った。
僕「いつもありがとう。楽しかったよ。」
豊「あ、そうだ。あとで時間ある?」
僕「うん。解散後?」
豊「そう。」
僕「あるよ。じゃあコーヒーでも飲みながら。」
豊「OK奢るよ。」
僕「どした?」
豊「去年、ナンパした子覚えてる?」
僕「そういえば、そんなことしたな。」
豊「また会おうってことになった。」
僕「・・・すごいね。よくやるね。で、僕も誘ってくれるのかな。」
豊「そうなんだけど」
僕「そうなんだけど?」
豊「今から飲みに行くことになった」
僕「早いよ展開が!これから?!いいねそういう無茶振り大好き!」
土曜深夜23時。スノボー帰りに、その2人に会った。
上村愛子似(以下愛子)、広末涼子似(以下涼子)
豊「愛子ちゃん久しぶり!!」
愛子「久しぶりー。意外と近くに住んでてびっくりした。」
豊「運命だねきっとw」
愛子「はいはいw急に来てくれてありがとうねwあの日以来に涼子ちゃんと遊びに出かけて、今飲んでたの。」
僕「それで、あの日の話題になって、連絡くれたのかな?」
涼子「うん。ごめんなさい。愛子ちゃん、言ったらきかなくて・・」
僕「いいよいいよ。覚えていてくれてありがとう。
涼子「うん・・」
愛子は、よくしゃべる。そしてノリが良かった。
豊もよくしゃべる。明らかに愛子狙いだった。
2人は意気投合し、とても楽しそうだった。
反して、涼子はそれほど乗り気ではないようだった。
あまり表情を変えない。
涼子は背が高く、色白の美人だった。ただ、美人。それだけ。
僕は、差しさわりのない会話をしたと思う。
よく覚えていない。
少なくとも、盛り上がらなかった。
でもまあ、会社の話とかはした。
朧げに覚えているのは、彼女が個人経営に近い事務所の事務をしていて、とても優秀で、難関の国家資格取得に向けて勉強しているということだったと思う。
美人ではあったけれど、対して興味も湧かなかった。
相手も、楽しそうじゃなかった。
そして、その日は終了した。
だから、その翌日、涼子から「また時間が合ったらどこか行きませんか」というお誘いメールが来るなんて、想像もしていなかった。
139: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 12:27:56.67 ID:ZFEkVD+S0
お互いに忙しい身だ。
2週間後くらいに再会した。
近くのマックで軽く食べ、当時流行っていた映画でも見ようという話になった。
僕「本当に近くに住んでるんだね。30分くらいで会えちゃうんだ。」
涼子「そうみたいですね。びっくりしました。」
涼子は、本当に美人だ。
その小さな口で、ポテトだけをつまんでいた。
僕「ポテトだけ食べるの?そっちのハンバーガーは残しちゃうの?」
涼子「うん。そんなにお腹が空かない人なんです。」
僕「さすが女子。ていうか、ハンバーガーもったいない・・」
涼子「ポテトだけ頼むのも、なんだか申し訳ないので。」
僕「あの、もったいないので、僕が食べてもいいかな?口つけてもいないみたいだし。」
涼子「え?・・・ええ。どうぞ。ファストフードでも、やっぱり捨てるのはもったいないですか。」
僕「もったいないよ。どんな調理過程でも、どんな内容物でも、やっぱり、頼んだ以上は残さない。僕はそうしてる。」
涼子「・・・そうですか。」
ちょっと、涼子の性格がわかった気がした。
僕「映画、好きなんだね。」
涼子「はい。大学時代から、文学として興味があります。」
僕「エンターテイメント性は求めないんだね。」
涼子「どちらかというと、フランス映画のような作品が好きです。」
僕「うーん、見たことがないから分からないなぁ」
涼子「あの、良くわからないエンディングがたまらないんです。」
僕「ふーむ?」
涼子「有名な映画だと・・・」
いくつか知っている作品を列挙してくれた。
僕「ああ、意外と知ってるもんだなぁ。ほら、この作品て彼女の出世作だよね?あのシーン、良かったよね。ここのセリフとか。」
涼子「??藤原君て、意外と物知りなんですね・・私もあのシーン、好きですよ。」
何というのか。
お互いの休息。
静かな時間だった。
雑踏の中、周囲のざわめきを気にせず、何気ない風景になる2人。
涼子とは、月に数回、ちょっとした息抜きで、一緒に食事や休息を取る。そんな関係になった。
別に、彼女自体にはそれほど興味はなかった。
恋愛の対象には見えなかった。自分も忙しく、あまり恋愛に時間をかけたくない時期でもあった。
涼子も、それを望んでいるようには見えなかった。
食事の時は、涼子はあまり食べなかった。
だから、涼子の食事の半分は僕が食べた。
回数を重ねると、涼子は最初から自分の分を取り分けて、残りは僕にくれるようになった。
あの数か月は、僕にとっても涼子にとっても、平穏で安らげる空間を作り上げていた。
春を迎え、また涼子と会った。
涼子「すみません。花粉症なんです。」
その抜群のスタイルとセンスある服装。モデルのような体型でマスクをすると、芸能人であるように錯覚する。
会うたび、涼子はさらに綺麗になっていた。
その日は、夕方に会った。
そして、ちょっとオシャレなビルで、食事をした。
食事の際、ちょっと飲んだ。
2人で、並んで座っていた。
いつもと少し違う、物静かなレストラン。
お互い、特に会話もしない。それが少しだけ心地よかった。
開放的な窓から、夕日が差し込む。
いつしか、夕日が沈もうとしている。
とてもロマンチックで、とても静かな時間だった。
僕の腕が、涼子の腕に触れた。
涼子は、僕の手を、握ってきた。
僕は、自然と、手を握り返した。
涼子の頭が、僕の肩に乗せられる。
その瞳が、僕の瞳を追った。
僕と涼子は、レストランの風景のように、その場で、優しく、キスをした。
141: 以下、
映画のワンシーンみたいじゃないか
142: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 22:27:50.49 ID:r7ul+eXo0
涼子とキスした。
そうは書けないかもしれない。
涼子と、キスをしてしまった。
感覚的にはこう書いた方がいい。
現に、なぜだか後悔しかない。
学生時代に自分で言った言葉。
「男女間で友情は成立しない」
社会人になって、男女の友情を目の当たりにすることがある。
僕は、男女の友情が羨ましかったのかもしれない。
結局、なぜキスしたのか。答えが出ない。
「好き」じゃない。相手も、特にそんな素振りを見せたことがない。
場の雰囲気に流された。
涼子とは、GWまで会わないことにした。
GWに入った。
大学時代のサークル友達に会った。なんだか、学生時代に戻った気分だった。
友人の一人が言った。
友人「そういえば、元カノの栞里ちゃん、今度、○○さんと結婚するらしいよ。」
僕「あー、そうなんだ。良かったじゃん。2人は大学時代から仲良かったし、お似合いだよ。」
○○さんというのは、栞里が「親友と呼べる男友達がいる」と豪語していた人物だ。
友人「感傷に浸ったりする?」
僕「それはないよ。幸せにはなってほしいとは思うよ。」
祐希「竜也君は、その後、どうなの?」
僕「んー、ぼちぼちかな。今は仕事が忙しくて、彼女とかいらないし。本気で仕事と結婚してる状態。」
祐希「私も。まだ3年目なのに、既にお局様とか姉さんとか言われてる。」
僕「祐希らしいよ。充実しているようで何より。」
軽く飲んで、皆と別れた。
祐希「あの」
僕「!!びっくりした!帰ったんじゃなかったの?」
祐希は、引き返してきたみたいだ。
祐希「良かったら、飲み直さない?」
僕「え?ああいいよ。」
祐希とは、たまにメールでやり取りしていた。
お互い、会うのは追い出し会以来だ。
薄暗いバー。
僕はブランデーをダブルのストレート。
祐希はドライマティーニ。
社会人になってからの、再会。
あの頃とはすこし違う2人。
143: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 22:28:17.29 ID:r7ul+eXo0
祐希「あの頃は、子供だった。」
僕「それはそうさ。社会に出て、視野が広がったろ?」
祐希「うん。いいことも悪いことも、いろいろ見えてきちゃった。」
僕「社会人ってしんどいね。」
祐希「だねぇ。学生時代の、何にも知らない頃に戻りたい。」
祐希もまた、葛藤があったのだろう。
祐希「あのね。お願いがあるの。」
僕「・・・どんな?」
祐希「私は、あの日から、前に進めていない気がする。」
僕「追い出し会のこと?」
祐希「うん。」
僕「祐希は、立派な社会人だと思うよ?」
祐希「でも、狡賢い大人には、なり切れない。」
僕「狡賢くなる必要があるの?」
祐希「あるよ。それが大人の世界だもん。私は強くなって、この世界で生きていきたい。そして」
僕「そして?」
祐希「結婚もしない。一人で生き抜いて、一人で生涯を終える。」
僕「・・・まあ、いろんな生き方があるさ。」
祐希「強くなりたい。そのために、私のお願いを聞いて。」
僕「願い事によるけれど。」
祐希「私を、抱いて。」
祐希は単刀直入だった。
僕は、グラスに残ったブランデーを一気に飲み干す。喉が、焼ける。
僕「それは、できないな。」
祐希「どうして?私は、何の見返りも求めないよ?」
僕「自分を大切にしなよ。」
祐希「初めてを、あなたに捧げたいの。私は、その思い出だけで生きていけるの。」
そうじゃない。そうじゃないんだ。
僕「違うんだよ・・・僕は・・僕はそんな男じゃない。」
そんな男じゃない。
僕は、ただの、クズだ。
祐希は、泣きながら、帰った。
やっぱり、僕は、クズだ。
144: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/13(火) 23:47:56.47 ID:r7ul+eXo0
GWも後半に差し掛かり、僕は絵里奈と2人で会った。
僕「元気だった?」
絵里奈「元気だよ。でもお金がない・・・」
絵里奈は、保険のセールスレディだ。契約が取れないと、給与は低い。
決して、保険の契約を迫られたことはないが。
僕「大変だよね。ノルマ制は。」
絵里奈「明るさには自信あったんだけど。いざ契約ってなると、足元見られるのよね。」
僕「そっか。僕は会社から保険が斡旋されるし、さすがに入ってあげられない。」
絵里奈「そういうのは、求めてませんけど?」
そうだよね。
絵里奈は、以前より、大人びた。ぐっと、色気が出てきた。
僕「何か、心境の変化があったみたいだね。」
絵里奈「・・・うん。私ね。」
僕「だいたい察しが付くけど、どうした?」
絵里奈「彼氏が出来そう。いい人よ。誠実で。私と大違い。」
絵里奈に彼氏ができる。
当たり前だ。絵理奈はいい子だ。世間の男子が放っておくわけがない。
僕「そっか。良かったね。」
絵里奈「それだけ?」
僕「他に何を言えと。」
絵里奈「別に、何というわけでも。」
僕「僕は、うーん、うまく言えないや。」
僕「こうやって、互いに暇な時に、気軽にご飯を食べてくれる人がいなくなるのは、寂しいなと思っただけだよ。」
精一杯の嘘。
絵里奈「なにそれ。私は今まで通りでいいよ?私に彼氏が出来たって、竜也先輩に彼女が出来たって。同じようにしてくれれば。」
同じように。同じように。
僕は、いつも、絵理奈に、このセリフを言われる。
『同じようにしていいよ。キスまではしていいよ。それ以上はダメ』と言っているように聞こえる。
僕「そうだね。また連絡するよ。」
僕は、この関係を壊したくない。
今だから思う。
絵里奈も、関係を壊したくなくて、もう一歩先に進めたくなかったのだろう。
もう、絵里奈のことを忘れたい。
忘れられない。
でも、忘れたい。
GW最終日、僕は、勤務先に戻ってきた。
そして、涼子に、メールを入れた。
「付き合ってください。」
返事は、「会ってお話ししましょう」
だった。
146: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/14(水) 00:05:46.11 ID:YGBVGcJs0
涼子「私、忙しい人です。それでもいいですか?」
僕「僕も忙しいから、お互いそんなに会えないかもしれない。」
涼子「仕事以外に勉強もしてます。支障が出ない程度の付き合いになるかもしれません。」
僕「その時は邪魔しないよ。僕も勉強したいことはたくさんあるから、その時は僕も勉強してるよ。お互い切磋琢磨しよう。」
なぜ、僕は涼子と付き合おうと思ったんだろう。
会社でもない。旧知の知り合いでもない。
だからこそ、自分の逃げ場が欲しかったのかもしれない。
涼子「・・・今、ここで、キスできますか?」
僕「この、コーヒーショップの、この椅子に座って?」
涼子「はい。」
僕は、特に気にせず、キスをした。
涼子「・・・本当にするとは思いませんでした。」
表情を変えず、涼子は言った。
僕「イヤなら、始めからそういう無茶ぶりはしないでほしい。」
涼子「いえ。そういう意味ではないです。ごめんなさい。」
僕「あ、ああ。」
涼子の考えることはわからない。表情に起伏が低い。
涼子「5月いっぱいは身動きが取れないので、6月からでいいですか。藤原さんのお宅にお邪魔したいです。」
僕「んー、そうだねそうしよう。僕も、新商品発売後で、問い合わせやプロモーションで忙しいんだ。あと、新人研修の資料も用意しなくちゃいけない。」
涼子「ちゃんと働いているんですね。意外です。」
僕「なんだよそれw僕が忙しい振りしてるとでも?w」
涼子「私の知ってる男子は、忙しい振りをする人が多いです。」
僕「あー、それはわかる気がするな。忙しい俺ってカッコイイ的な。」
涼子「それです。大して働いてないのにエラそうな人ってニガテなんです。」
僕「そんな人間、スキなやついないってw」
6月、涼子と僕の奇妙なカップルが誕生した。
147: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/14(水) 00:46:18.77 ID:YGBVGcJs0
感情の起伏が少ない涼子であったが、意外な面もあった。
まず、僕の家に来ると言い、着てすぐ、豪快に脱いだ。
あっけにとられるくらい、あっさりと。
涼子「・・・あまりジロジロ見られると、照れます。」
涼子は、本当に美しい。端正な顔立ち。すらりと伸びた肢体。大きくはないが、形の良い胸。
うっすらとした茂み。透き通るように白い肌。
表情は、特に変わらない。
僕「あ、ああ。ごめん。キレイだったから、見とれちゃった。」
涼子「お世辞でもうれしいです。」
涼子は、自分の脱ぎっぷりとは裏腹に、僕の服を、恐る恐る脱がせた。
時間がかかっていたので、僕はいきなり涼子を抱きかかえ、ベッドに放り投げた
涼子「えっ?」
涼子は、何が起こったかわからない感じだった。
僕「いいから。目をつむりなよ。」
涼子は、恐る恐るといった感じで目をつむった。
僕は、優しくキスをした。
涼子「ん・・・藤原さんのキス・・・・ん・・・好きです・・」
キスはやがて、頬になり、耳になり、首筋になり、肩へと移動していく。
涼子は表情を変えることはないが、びくっ。びくっと体をよじる。
僕「どこが気持ちいいとか、あるの?」
涼子「ごめん・・・なさいっ・・ん・・・よく。。。わからないです・・」
僕は、自分の服を脱ぐ。
涼子は、僕と同じ動作でキスを真似た。
涼子「あの・・・」
僕「・・うん?」
涼子「実は、・・・よくわからないです。」
僕「何が?」
涼子「どうしたらいいか、よくわからないです。」
僕「したことがないってことかな?」
涼子「いえ・・・すみません。経験はありますが・・その・・・以前の彼氏は、私の体を貪るだけで、私から何かをしたことがないんです。」
僕「ああ。そういうことね。うーん。そう言われてもなぁ。」
僕は、涼子の手を、僕の股間に誘導した。
148: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/14(水) 00:48:39.59 ID:YGBVGcJs0
涼子「あっ。どうしたらいいですか・・」
僕は、その手を僕のアレにあてがい、ストロークさせた。
みるみる、僕のアレが大きくなる。
涼子「あ、大きく・・・少しベトベトします・・」
僕「ちょっと実況しないでw」
涼子は、恐る恐るといった感じで、玉を撫でた。
ひんやりとした手が気持ちいい。
僕はそのまま涼子にキスをし、頭を抱いた。
涼子は目を閉じて、少し気持ちよさそうにしていた。
おもむろに僕は中腰になる。
意図が分からないといった表情の涼子の顔前に、僕のアレを見せつけた。
涼子「ああ。そういうことですか。やったことがないのでうまく行かないかもですがいいですか」
僕「だから、実況やめなさいw」
涼子「はむっ」
戸惑うことなく、僕のアレを口に含んだ。
僕「舌は使わなくていいからね。歯も当てないようにね。ただ口を開けて、僕のアレを包み込む感じで。」
涼子は、言われた通りにした。
僕は、涼子の頭を両手で抑え、腰を少しだけ動かした。
涼子「んっ・・・んっ・・・んっ・・・んっ・・・」
涼子は、特に表情を変えることなく、僕の行動をできるだけサポートできるように努めていた。アレを口から抜く。
涼子「んはっ・・・はぁ・・はぁ・・息が・・・苦しいです・・」
僕「あったかくて、気持ちいいんだこれ。」
涼子「そうなんですね。つぎはもっと長くできるようにがんばります。」
涼子は、今度は玉を口に含もうとしてきた。
僕「生卵を口に入れたつもりで。」
涼子「(はい)」
僕「その生卵の黄身を、潰さないように、舌で転がすイメージで。」
涼子「レロ・・・ん・・・ペロ・・・ん・・・」
すぐにひっこめた
僕「ごめんw涼子ちゃんのせいじゃないんだけど、やっぱり怖いから玉はナシでw」
涼子「・・・はい。ごめんなさい。」
僕は、今度は涼子のアソコに指を入れた。
涼子「はぁ・・・・ん・・・あっ・・・・指・・・指が入ってます・・・」
形の良い眉が、少しゆがむ。
僕は、その指を2本にする。
涼子「んんん・・・・!広がって・・・刺激が・・・んっ。んっ。」
僕の腕を涼子が抱きしめる。
僕は太ももに舌を這わせ、そのまま涼子のアソコを舐める。
涼子「んっ・・・あん・・・ああっ・・!」
涼子の顔が苦悶のそれになる。
ビクンと、のけ反る。
涼子「ご、ごめんさない・・・ちょっと、敏感な状態になって・・・少し待ってください・・・少し・・あっ・・ちょっと・・あっ・・・」
また、ビクンとのけ反る。
僕は、いきり立ったアレにゴムを付け、そのまま挿入した。
涼子「ちょっと休憩・・あっちょっと・・・あっあっあっ・・・」
ビクン・ビクン・ビクン。
のけ反るのと当時に、腰を打ち付ける。苦悶の表情を見せる涼子だが、ぼくはそれを見ながら、意外と冷静だった。
僕は、なぜ涼子を抱いているんだろう。なぜ、付き合っていきなりこんなことをしているんだろう。
疑問は尽きない。
行為の後、僕はシャワーを浴びる。
涼子は、特にシャワーを浴びることなく。そそくさと服を着た。相変わらず、表情は薄い。
涼子「じゃあ、ご飯を食べに行きましょうか。」
僕「あ、ああ。」
僕と涼子は、付き合っていきなり事を成して始まった。思えば、この最初から違和感しかなかった。
気軽に、付き合ってしまい、気軽に関係を持ってしまった。
今でも、後悔している。
151: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/14(水) 13:26:27.78 ID:sj/LjXhp0
7月に入り、経営企画室に、新人が2人配属された。
大柄な男(ガリガリガリクソン似、以下ガリ君)
無口な男(栗原類似、以下ルイ君)
ガリ君は、経営企画室の番長こと河村さん・鈴木さんの部下的立ち位置。ルイ君は、沢村さん・僕の部下的立ち位置の配属だった。
なんでも、経営企画的な考えをレクチャーすればいいだけらしい。2人とも優秀で、半年後には他部署に異動。他部署の幹部候補として活躍が見込まれているらしい。
僕「ああ、ルイ君。よろしくね。新人研修でとても優秀だったのを覚えてるよ。そうか。ここで少し勉強して、〇〇支社のお抱えになるんだね。」
ルイ「・・・よろしくお願いします・・」
僕「う、うん。でもあれだよ?配属された以上は、戦力として頑張ってもらうからそのつもりでね?勉強会のつもりで来たのかもしれないけど。」
ルイ「・・・貴重な場ですので、しっかり・・・頑張ります・・・」
支社のお抱えになる。きっと、重役のサポートとして、寡黙な仕事を要求されるのだろう。当然、経営の観点で物事を考えなければいけない。
僕は、利益計算、商品企画から発売・商品の廃止までの流れ、実際製造現場はどう考えて仕事をしてるのか、サービス提供の理想と現実など、多角的に会社を考えられるような資料を集めてもらった。自分で考えて、自分でまとめてもらった。
ルイ「・・・藤原さんのおっしゃる通り、結論は理解できます。しかし、・・・そこに至るまでの・・過程が納得できません・・」
僕「それは、ルイ君がまだ、『結論に至るまでの過程を、真に理解していない』からだよ。」
ルイ「藤原さん、意見が抽象的すぎます。」
僕「ここは学校じゃないんだ。書類も、教科書じゃない。数学の教科書みたいに、懇切丁寧に公式や定義が書いてあるわけじゃない。」
ルイ「その通りです。」
僕「その資料で、わからない単語にチェックしてみて。」
ルイ「・・・・この3か所でしょうか。」
僕「じゃあ、今チェックした3か所以外で、ここの「リスクを考え」という文言の意味は?」
ルイ「リスク、ですから・・・危険性、マイナス要素、でしょうか?」
僕「うん。通常だとそうだよね。でも、為替変動や生産性などを考えた時には、プラスに変動することも『リスク』だと考えるものなんだ。」
ルイ「?そうですか?なぜです?」
僕「円安になって海外でバカ売れして、生産が追い付かなくなって、国内が品薄になったら、どうなる?」
ルイ「・・・」
僕「利益は短期的に上がるよ?生産稼働率も上がるよ?いいことだらけかな?」
ルイ「国内が品薄になれば、生産設備の整っている大手が、国内市場を独占すると思います。」
僕「賢い。だったら、それもリスクだよね。」
ルイ「そうですね・・」
僕「まあそこまで深読みしなくても、売れすぎたら生産がパンクする。だから、生産能力には余裕を持たせなきゃいけないってことはリスク管理だね。」
ルイ「分かりやすいです。」
僕「ちょっと話がずれちゃったけど、つまり、ルイ君は、まだこの書類の文言を理解できてないんだ。それは、ルイ君が悪いんじゃない。まだ業界の知識が十分じゃないんだ。」
ルイ「はい。なんとなくわかってきました。」
僕「僕はともかく、この部署の人たちが作る書類には、この業界で生き抜いていくための情報があふれてる。まずは、その書類の情報を正確に把握できるようになることだ。」
ルイ「はい。そのために資料を自分で作って、自分の中の理解不足を補えと。」
僕「・・・ルイ君、ものわかりがいいね・・・頭の出来がいい子はちがう・・」
実際、ルイ君は優秀だった。ただ、PCでの作業は苦手なようだった。当時のOSはまだまだ発展途上で、利便性を上げるためには自分なりに工夫がいる時代。
彼にとっては、慣れが必要だ。
ルイ「藤原さんは、非常に優秀です。凄いです。知識が豊富で、しかも話が分かりやすいです。PCにも強い。」
僕「うーん、あれかな。大学時代、家庭教師をしててね。0の子に1を教える苦労を知ってるからかも。あと、ルイ君が賢いからだよ。PCだって、実際は沢村さんの足元にも及ばないよ。提案力なんて月とありんこだよ。」
ルイ「沢村さんは別次元の提案力ですが、僕からすると、藤原さんの方が凄いですよ。なんでも一人でできてしまう器用さがあります。」
僕「買いかぶりすぎだよ。あと3年経てば、きっとルイ君の方が凄くなってる。」
この頃、仕事は本当に上手く回っていた。慢性的な残業はあったものの、仕事の仕組みが分かり、自分の立ち位置が確立され、教える人もいる。
ちょっとした休息には、涼子がいる。僕は、日ごろのストレスのはけ口を求めるように、涼子に発散した。
涼子は、特に表情を変えることなく、僕の欲を、受け止める。
そして、受け止めた後、落ち着いて、こう言うのだ。
涼子「じゃあ、ご飯に行きましょうか。」
僕は聞けなかった。
「こんな関係、楽しいの?」
なんのために、涼子は付き合ってくれているのか。
なんのために、涼子はそのすらりと美しい肢を開き、どんな気持ちで受け入れてくれているのか。
お盆前、涼子が、また僕の部屋に来た。
相変わらず、綺麗な顔立ち。
いつものように、いきなり、服を脱ぐ。
その時、ふと気づいてしまった。
あれ?僕は、涼子のこと、好きなの?
そこにいるのは、確かに美しい女性だ。
しかし、なんの感慨もない。
頭の中で起きた混乱は、ぐるぐる回り、めまいを起こす。
涼子「?どうしました。。?」
僕「・・・いや。うん。なんでもない。」
突然だった。
僕は、突然、涼子を抱けなくなった。
152: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/14(水) 13:41:44.26 ID:sj/LjXhp0
僕「あはは・・なんだろう。上手くいかない。疲れてるのかな。」
涼子「・・・別に、私は気にしませんけれど。」
ショックだった。
いざという時に、維持できない。
涼子が口でしてくれたときは、僕のアレははち切れんばかりになる。
でも、いざ、挿れようとすると、元気がなくなる。
何を迷ってるんだ。涼子が待ってる。お前は挿入れたくないのか?そうじゃない。
でも、挿れてしまっていいのか?何のために挿れて、それが涼子にとって幸せなの?
僕は、何の感慨もなく、一人の女性を、満足させられるほど、立派な人間なの?
でも、涼子は待ってる。頑張らなきゃ。
でも・・・
ぐるぐる考え出したら、パニックになった。
初めてだった。
涼子「まあ、よくわかりませんけれど、ご飯に行きましょうか。」
お盆直前にも、会った。
また、出来なかった。
涼子「なんだか・・すみません。私の魅力が、足りないのかもしれませんね。」
僕「いや・・そうじゃないと思うんだけれど・・」
涼子「私は、こう、抱きしめてもらえているだけでも、十分ですが・・・」
罪悪感が強くなる。
僕「ごめん。今日は、帰ってくれないかな。疲れてるみたい。寝るねもう。」
涼子、「・・・お盆は、会えますか?」
僕「うーん、1日くらいなら。」
涼子「・・・わがまま、言っていいですか?」
涼子が、初めて、自己主張をした。
僕「どうしたの?」
涼子「泊りがけで、出かけたいです。いいですか。」
僕「あ、ああ。これから宿なんて取れるかな・・・」
涼子「愛子と以前泊まった所なら、いけると思います。予約しますので。」
僕「・・・そこまで言うなら。」
僕は、涼子と付き合うことに、限界を感じていた。
涼子に、申し訳ない。
そんな気分だった。
153: 以下、
みんな色々あるよな
155: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 10:06:46.51 ID:MVK382n60
お盆に入り帰省し、大学時代のサークル友達と会った。
友1「久しぶりwたまには俺の勤務先(横浜)の方にも遊びに来いよ。」
僕「そうだね。中華街もたまには行きたいな。年末にでも行くよ。」
友2「お、いいね。俺も行きたい。」
友3「えーいいな。私も行く!」
友4「じゃあ私もー。」
こうして、年末は横浜で過ごすことになる。
友1「最近、調子はどうよ。」
僕「良くも悪くも。」
友1「彼女できた?」
僕「うーん。出来たけど・・・」
僕「別に好きでもない子と付き合ってる・・・かな。」
「「「ええええええ!!」」」
その後、質問攻めにあった。
そして、怒られた。
酷い。ただのセフレじゃないか。相変わらずお前は冷たいやつだ。
言われて、反省した。
僕「やっぱり、まずいよなぁ。関係をはっきりさせてみる。」
友2「まあお前の人生だから好きにすればいいけれど、人の道を外すことはないようにな。」
身に染みた。
156: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 10:28:26.30 ID:MVK382n60
京介、堅、絵里奈、怜奈とも会った。
でも、涼子のことは言えなかった。
京介は、彼女を連れてきた。綺麗な子だった。気立てもよかった。
京介「ここで発表があります!」
堅「お、なんだなんだ。」
京介「俺たち、結婚します!」
一同「おおー!」
京介は幸せそうだった。
式は挙げず、入籍だけとのこと。京介らしい。
それを見ていた玲奈は、すこし羨ましそうだった。
堅は、遠い目で見ていた。
玲奈「いいなぁ。私も結婚したい。」
堅「ふーん。そうなんだ。」
玲奈「・・・何その言い方?」
堅「・・・別に・・・」
僕「そこ!めでたい時に不穏にならない!」
堅「・・・帰るわ。」
玲奈「帰れば?」
堅「いちいち突っかかるなよ。」
僕「あのー。」
玲奈「竜也先輩ー飲みましょー」
絵里奈「玲奈、ちょっと。」
堅「じゃあな。また連絡するわ。竜也。京介もごめんな。新居決まったら教えてくれ。竜也と遊びに行くから。」
僕達は、先輩であり、後輩であり、学生の時から遊んで、社会人になっても遊ぶ、友達だった。
時間の流れは、いろんな出来事を生む。
僕「じゃあ僕も帰るよ。」
玲奈「一緒に帰りましょー?」
僕「何言ってるの玲奈。玲奈と一緒にいたくないから帰るんだよ。玲奈と堅なら、僕は堅を取るよ。」
玲奈「うわホ〇だ。」
僕「玲奈、ちょっと頭を冷やせ」
絵里奈「玲奈、何があったかしらないけど・・・」
玲奈「絵里奈には関係ないよ。」
この日、気まずい雰囲気の中、解散した。
きっと、この5人という、狭くも心地いいコミュニティの中に、京介の奥さんという要素が入り、無意識に不安が生まれたからだと思う。
人は、安定を求める。心のよりどころのバランスが崩れる、漠然とした不安。
僕「みんな大人になったんだよなぁ。どんどん、変わっていく」
絵里奈「そりゃあそうよ。変わらないものなんて、ないよ。」
帰り道、絵里奈と帰った。
絵里奈の手は、温かい。
不意に、絵里奈を抱き寄せる。
絵里奈「んっ・・・・暑いw」
僕「絵里奈も、変わったの・・・?」
少し、強引にキスをする。
絵里奈「んむっ・・・・ちゅっ・・・どうかな。同じようで、変わったのかも。変わらないのは・・」
僕「変わらないのは?」
絵里奈「私と竜也の、仲だけよきっと。」
駅まで送り、改札で、キスして別れた。
いや、「キスだけをして」別れた。
変わらない関係。
終わらない関係。
157: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 11:07:38.36 ID:MVK382n60
憂鬱な日。
涼子と会う日。
2人で、山の方へドライブ。
今までも、ドライブに出かけたことはある。特に、道中で話はしない。
今までは気にしなかったが、その日は、気まずさが際立った。
涼子「・・・特に、話すことないですね。」
僕「そうだね。んー、お盆直前にも会ってるし。あ、お盆出かけた?」
涼子「出かけてないです。」
僕「まさかとは思うけど、仕事?」
涼子「いえ。勉強を。」
僕「ああそうか。進んだ?」
涼子「・・・藤原さんと、次に会ったら、何の話をしようか・・・悩んでいました。」
僕「・・・どういう意味かな?」
涼子「藤原さんの方が、わかっているかと思いますが・・・」
涼子は、賢い。
僕の考えていることくらい、分かるんだろう。
僕は逆だ。
涼子の考えていることなんて、まったくわからない。
いや、分かろうとする努力が、足りない。
僕「鋭い。さすが。」
僕は、この旅行が終わったら、涼子と別れるつもりでいた。
涼子「じゃあ、旅行が終わったら、話し合いましょうか。」
僕「・・・うん。旅行を楽しもう。あれ?楽しめるのかなこれって。」
涼子「え?ええ。私は楽しいですよ?」
僕「そうなんだ。いつも、こう、表情がないというか、淡々としてるから、楽しくないのかと思ってた。」
涼子「ああ。まあそう見えますよね。よく言われます。楽しくなさそうだって。」
僕は、努めて明るくした。
涼子は、相変わらずだった。
宿に着いた。ロッジ風の、素敵な所だった。
チェックインをする。
部屋に入ると、ツインのベッド。温かい基調で統一されたところだった。
涼子は、おもむろに、服を脱いだ。
そして、僕の服に手をかける。
僕「もう、やめよう。こういうこと。」
涼子「・・・」
涼子は、手を止めない。
僕「涼子、やめよう。」
僕は、語気を強くした。
涼子の手が止まる。
涼子「だめですか。」
僕「うん。きっと、上手くできないよ僕。もう無理なんだ。」
涼子「なぜですか?」
もう、止まらない。
僕「旅行が終わるまでは、言わないでおこうって決めたのに、やっぱり、無理だよ。」
涼子「そう決めたのなら、旅行が終わるまでは、今までどおりに行きましょう。」
僕「もう、耐えられない。罪悪感しかない。付き合った時からそうだった。僕は・・・」
涼子「・・・わかりました。今聞きます。」
僕「ごめんなさい。僕は、最初から、涼子のことを、好きじゃなかったみたいだ。」
言ってしまった。
158: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 11:33:51.88 ID:MVK382n60
涼子「最初から、ですか。」
僕「たぶん・・・」
涼子「今聞くのもどうかと思いますが、なぜ、私と付き合いたいって言ったんですか?」
僕「ごめんなさい。」
涼子「謝罪が聞きたいのではなくて・・・素朴な疑問です。」
僕「んー、強いて言えば、んー、一緒にいる時間が、心地よかったからかな。でもやっぱり、好きって感情が持てなかった。あと、」
涼子「あと、なんでしょう。」
僕「あのレストランから見た夕日が、ロマンチック過ぎた。」
涼子「ああ。本当ですよね。あの夕日が、2人の距離を縮めました。私も、あの時は流されました。」
僕「今はもう、会うたび、罪悪感しかない。涼子も、そんなに楽しくなさそうだし、2人で会う意味はあるのかなと考えてしまって・・」
涼子「ええと・・はい。一応聞きますが、別れたいという結論は、もう出てしまっているのですか。」
僕「うん。ごめんなさい。涼子はいい子だとは思う。でも、好きじゃない。別れたい。」
はっきり言った。
涼子「もう、結論の出ている人に、何を言っても無駄なことはよく知っています。わかりました。別れましょう。」
僕「宿は、どうする?無理して泊まらなくてもいいし、帰ってもいいよ。ちゃんと送る。」
涼子「いえ。大丈夫です。あ、提案があります。」
僕「なんでしょう。」
涼子「この旅行中、私のいうことを聞いてください。そうしてくれたら、別れます。」
僕「抱いて、は無しでお願いします。」
涼子「はい。服着ますね。」
僕「何を命令されるのやら。」
涼子「変な命令はしません。普通に過ごしてほしいだけです。あそこの美術館に行って、あそこのお寺に行って、一緒にご飯を食べ、同じ部屋で寝て、同じ車で帰って、さようならをしてほしいだけです。」
僕「わかったよ。涼子がそう望むなら。」
涼子の表情は、変わらなかった。
159: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 12:05:33.19 ID:MVK382n60
涼子は、本当にいつもと変わらなかった。
帰りの道中も、いつも通りだった。
僕「お腹空いたな。SA寄っていい?」
涼子「え、まだ食べるんですか。いつも思ってましたが、あんなに食べて、太らないんですね。」
僕「普段は、あまり食べないから。ゆっくり食べる時間もないし。涼子と食事に出かけるときは、食が進んだなぁ。」
涼子「え・・えと・・あ、はい。そうですか。私の分も食べてくれましたものね。」
僕「美味しい料理が多かったな。下調べしてくれてたんでしょ?いろんなお店が知れて嬉しかったよ。」
涼子「・・はい・・・」
僕「僕が具合悪くて、隠してたのに、あの日、涼子は、良く休憩をとったよね。頻繁にトイレに行ってた。僕の体調に気づいてさりげなく席を外してくれたんだよね。気が利く子だなと思ってた。」
涼子「・・気づかれてましたか。」
僕「だから、よけいにわからない。なんのためにそこまでするのか。疑問だった。」
涼子「表情に出ないだけですよきっと。よく言われます。藤原さんとは、いつも楽しく過ごしてましたよ。」
そういう表情は、淡々としていた。
SAで、串物を何か頼んだ。
僕「涼子も食べる?」
一口勧める。
涼子「・・・いえ、お腹はそんなに空いてないです・・あ、やっぱり、一口だけ頂きます」
僕「なかなか美味い。不味いんだけど、美味い。不思議だよね。」
涼子「SAだから許される不味さですよね。」
そう言うと、涼子は踵を返し、こう言った。
涼子「そろそろ行きましょうか。」
僕「あ、ああ。行こう。」
僕のマンションに着いた。
涼子は、部屋まで入ってきた。
涼子「では、これで最後です。最後のお願いです。」
僕「・・・うん。」
涼子「正座してください。」
僕「え?正座?はい。」
なんとなく予想がついた。
涼子「私が今から何をしても、怒らないでください。」
僕「・・・はい。」
涼子「私が、いいというまで。。。。いい・・いいというまで、目を・・瞑ってて。」
僕「わかりました。」
僕は、目を、ギュッと瞑った。
これは、バカな僕でもわかる。あの淡々とした顔、端正な顔は、冷酷なまでに無表情だった。
バイオレンスな事態が起こるんだ。
僕は、正座をし、背を正し、来たるべき痛みに備えた。
160: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 12:48:40.54 ID:MVK382n60
5分だろうか・・・
10分だろうか。
僕「・・・あの・・・」
涼子「黙ってて!」
僕「はいごめんなさい。」
何も起きない。
そう、何も起きないのだ。
ただ、僕が正座をし、目を瞑り、それだけ。
静寂が僕の部屋を支配し、僅かに、時計のカチコチという音だけが聞こえる程度。
意味が分からなかった。僕は、ひたすら耐えるしかない。
涼子の、来たるべき鉄拳制裁は、来なかった。
もう無理だ。
僕は、目を、恐る恐る・・開けた。
号泣だった。
涼子は、その端正で美しい顔をぐしゃぐしゃにして、涙もその他の液体も垂れ流しながら、声を押し殺して、ただただ泣きじゃくっていた。
涼子「目を瞑って!そう言ったじゃないですか!」
僕「涼子・・・ごめんなさい。」
涼子「約束破ったから、別れるのはナシ!そうですよね!私、別れません!うわああああああ!!!!」
恥も、外聞もなかった。
ただただ号泣していた。
僕はタオルを濡らし、固く絞って、涼子に渡した。ぐしゃぐしゃになった顔を拭く。
声にならない声だった。
涼子「ずっと、大好き・・・いやだ・・・別れないで・・・」
涼子は、今までのことを、堰が切れたように話し続けた。
美味しそうに食事をする姿が好きで、いつも取り分けて食べてもらっていた。
何気ない気遣いが、うれしかった。
仕事のことを話す姿が、とても格好良かった。
勉強の応援をしてくれた。頑張れた。
緊張しっぱなしだった。ドキドキした。
好きでいてもらえるよう、綺麗になる努力をした。
薄々気づいていた。好かれていないと。でも、会いたかった。
繋ぎとめる手段が、抱かれることだと思っていた。それで良かった。
泣きながら、延々と、繰り返し、別れたくないと言われた。
162: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 13:01:20.81 ID:MVK382n60
僕は、さらなる罪悪感に襲われた。
僕「ごめんなさい。」
涼子「嫌です!」
僕「僕は、涼子のそんな気持ちもわからない、愚かな人間なんです。」
涼子「でも!今!知りましたよね?!じゃあいいじゃないですか!」
僕「僕は、涼子が思うような、いい人じゃないんだ。ごめんなさい。別れて。」
涼子「嫌です!悪いところは直します!やり直します!」
僕も涼子も、疲れ果てていた。
涼子は、最後まで、抵抗した。でも、その抵抗が無意味であると、悟った。
涼子「・・・帰ります。さようなら・・・」
トボトボと、部屋を、出ようとする。
何も言わず、玄関まで送る。
涼子「そう言うところです。最後まで・・捨てる女にまで、優しくエスコートするところが・・相手を・・その気にさせるんですよ・・・」
僕「・・・気を付けて帰って。帰ったら、帰ったことを、連絡して。」
涼子「・・・連絡はもうしません。子ども扱いしないでください。」
僕「おやすみ。」
涼子は、抱きついてきた。そして、涙を流して、キスをしてきた。
僕が経験した中で、最も長く感じられた、最も悲しいキスだった。
164: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 14:00:19.39 ID:MVK382n60
お盆明け、沢村さんに呼ばれた。
沢村「竜也、時間取れるか?」
僕「10時まででしたら。」
沢村「OK。打ち合わせ室取っておいてくれ」
僕「はい。」
沢村「お前、この前の査定はどうだった?」
僕「・・・ありがたいことに、A判定でした。沢村さんのおかげだと思います。」
沢村「俺もAだ。今回もなかなかいい査定だったよ。お前の案件があったからなんとか行けたんだと思う。」
僕「そんなことないですよ。むしろ、沢村さんはSじゃないんだとびっくりです。」
沢村「S評価は、滅多に出ないんだよ。前回はまぐれさ。」
僕「それで・・?」
沢村「他の人は、BとCだ。この意味は分かるか?」
僕「僕が沢村さんのおかげで高評価ということくらいですかね。わかるのは。」
沢村「そんなわけないだろう。3年目でAが二回のヤツなんて、聞いたことがない。たぶん、この秋、少なくとも来春には、お前は副主任に昇格だ。」
ちなみに、沢村さんは主任だ。
僕「・・・にわかには信じられませんが。」
沢村「お前は優秀だよ。もう、お前に教えることなんて特にない。」
僕「え?いつも教えてもらってばかりですよ?」
沢村「それは、知識だ。知識なんて、長くやれば勝手に増えてくる。」
僕「すみません。話の内容が見えてこないですが・・」
沢村「おお。そうだな。実は・・・」
僕「はい」
沢村「全く別の業界から、俺に、引き抜きの話が来ている。俺は、その話に乗ろうと思ってる。まだ誰にも言ってない。お前に最初に話してる。」
頭が、真っ白になった。
165: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 14:18:08.96 ID:MVK382n60
僕「えと・・・話は分かりましたが。。。突然ですね。」
沢村「ああ。お前の案件、手助けしたろ?あれに俺の名前を使ったからな。『以前から目をつけていたけれど今回の件で引き抜こうと決めた』と言われたよ。」
僕「実際、沢村さんの案件みたいなものですしね。」
沢村「堂々巡りだな。とにかく、」
沢村さんは、ポンっと僕の肩をたたいた。
沢村「お前は、もう一人前だよ。俺がいなくてももう大丈夫。俺は会社を去るが、お前がいれば安心だよ。」
違う。買いかぶりだ。
僕は知っている。沢村さんの凄さを。
僕にはサポートが合っている。
僕「去る者は追わず、ですね。違う分野でも、頑張ってください。」
沢村「ああ、当たり前だよ。9月いっぱいまでは引き継ぎをするために残るから。お前が全部やるわけじゃないだろうが、頼んだよ。」
僕「きっと河村さんや鈴木さんが引き継ぎそうですよ。」
沢村「かもな。残り少ない期間だが、出来るだけ財産は残していくからな。」
沢村さんは、数多くの財産を残していった。
9月まではあっという間に過ぎ、上期が終わった。
部署内も、つかの間の休息が訪れる。
沢村さんは、退職した。
そして、辞令が通達された。
僕には、副主任という役職が付いた。
166: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 15:09:07.91 ID:MVK382n60
いつも、沢村さんを追いかけていた。
クローゼットの中は、色物や柄物のYシャツになっていた。
ネクタイも、カフスも増えた。
靴は、名のある革靴になった。
髪は、行きつけの美容院で手入れしていた。
車は、燃費の悪いスポーティなものに変わっていた。
部屋には、専門書や洋酒が並ぶようになった。
全部、沢村さんが教えてくれたものだ。
皆、僕を見ていない。
僕を通して、沢村さんを見ているのだ。
攻めるべき矛がなく
守るべき盾がない。
副主任と言っても、やることは今までと変わらない。
だが、周りの反応は、冷ややかだった。
部長・課長は「沢村がいなくても、お前がいれば別になんとかなるだろう。実務はお前がやってたんだから」というスタンス。
鈴木さんや河村さん、伊藤さんは「まあ、大変だろうが頑張れや」というスタンス。
その他の人は、「なんであいつが副主任?」だった。
僕と沢村さんはよく一緒に仕事をしたが、事務の女性が一人サポートをしてくれていた。
なので、3人での仕事が多かった。
3人での仕事が、2人になった。
僕「この資料が明後日までに必要なのですが、用意をお願いします。」
事務の女性「できません。」
僕「・・・えっ?」
事務の女性「ですから、できません。」
僕「えと・・理由を教えてください。」
事務の女性「残業しないと間に合わないので、できません。」
当時、事務職の人は、残業代を出さない方針だった(今の社会なら違法ですよね)
でも、今までは残業をしてくれていた。
『あなたのために、残業してまで働く気はありません』
そう言っているのだ。
僕「分かりました。自分でやりますので、他の仕事をお願いします。」
事務の女性「なにそれ。私に対するあてつけですか?副主任?」
僕「・・え?いえ。そういうつもりではないです。すみません。」
事務の女性「もう行っていいですか?やることあるので。」
この女性は、10月いっぱいで退職した。
3人でやっていた仕事は、僕一人でやることになった。
167: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 16:46:54.49 ID:MVK382n60
僕は、沢村さんじゃない。
僕は、沢村さんじゃない。
誰もが、僕に、沢村さんの後釜を求めた。
「こんなの作ってね。今日中に何とかお願い」
「あー、悪いんだけどさ、営業所の問い合わせで・・・」
「この案件だけど・・・」
僕は、定時に出社し、昼食の時間まで仕事。食堂で10分で食事をして仕事。
午後はずっと会議と来客。
夕方から仕事。また食堂で10分で食事をして仕事。日によってはそれすらもできない日がある。
そして、メールを各部署に送って仕事。22時を回ると、フロアに残るのは数人。
24時を回ると、誰もいなくなる。
2時になり、仕事を終え、フロアを消灯。
たまに、警備のおじさんが見回りに来て、差し入れで総菜パンをくれる。それがありがたかった。
2時半に帰宅、その姿のまま就寝。
翌朝、4つの目覚ましで起き、シャワーを浴びてコンビニで栄養ドリンクを買い出勤。
土曜も終日出勤。日曜は半日出勤。残りの半日で洗濯やクリーニングや買い出し。
こんな生活が、年末まで続いた。
残業は、休日出勤含めて200時間を超えた。
僕の残業代は計上されなかった。基準に収まる程度の、微々たるものだった。
ただただ、仕事をこなすだけの毎日。
罰だ。
これは、僕が今までしてきた行ないへの罰なんだ。
12月に入ると、自然と、涙が出るようになった。
メールの回数がめっきり減り、皆から心配のメールが来る。それを、確認することもなくなった。
年の瀬。もう数日でやっと今年が終わる。
僕の生活は、奇妙なほど規則的。規則的に不規則だった。
朝、シャワーを浴びる。ふと、鏡を見た。
そこには、別人がいた。
あれ?これ、誰の顔だ?
僕って、こんなに老けてたっけ。
体重計に乗った。
60キロあった体重が、50キロに迫る勢いだった。
最近撮った写メを見る。
痩せてはいたが、よく知る、自分の顔だった。
大丈夫。
大丈夫だ。あと数日したら休みだ。長期休暇だ。
横浜に行って、美味しいものを食べて、バカ騒ぎして、帰省して、絵里奈に会って、新年を迎えて、豊とスノボーに行けるんだ。
僕は、コンビニに寄って栄養ドリンクを買い、その場で飲む。
少しスッキリする。
出社し、デスクに座る。
朝一から会議、か。
席を立ち、会議室へ向かう。
異変は、その時に起きた。
168: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 16:57:26.85 ID:MVK382n60
急に、目の前が、眩しく光り輝いた。
え?何?
頭のてっぺんから、むず痒い、ムズムズした感覚が、広がっていった。
むず痒さは、やがて、脳を覆っていく。
と、視界が、すこしずつ、暗くなっていった。
やばい。
これはやばい。
僕は、右足を、前に出そうとした。
思うように、足が出ない。
がんばれ、頑張れ、僕の右足!
僕は、右手で、思いっきり頭を殴った。
視界がクリアになる。
今度は、両手で自分の頬を叩いた。
鈴木「ん?どうした?藤原?」
意識がはっきりしてくる。
僕「ああ、すみません。大丈夫です。会議に行ってきます。」
鈴木「おう。行ってきな。」
足を動かす。動く。大丈夫だ。
目の前には階段。
明るいフロアから、少しだけ薄暗くなる。
その瞬間。
一気に来た。
一気に、視界が暗くなった。
マズイ。会議に行かなきゃ。
自分がやらなきゃ。
今目を閉じたら、きっと、人生が終わる。
目を開けたい。前に進みたい。今、目を閉じたら、もう、一生目を覚まさない。
よろよろ、かろうじで、あるこうとする。
階段にたどり着く前に、僕は、崩れ落ちた。
固い踊り場の床。
とっさに、頭を守った。
ふわっとする感覚が、自分を包んだ。
あれ。
床って柔らかいんだな。
冷たくて気持ちいい。
ああ。
もういいんだ。
もう頑張らなくてもいいんだ僕。
好きなだけ寝ていいんだ。やった。
もう、どうでもいいや。
僕、頑張ったよね?
涼子、ごめんね。泣かせちゃった。
絵里奈、さようなら。
祐希、頑張れよ。
結衣、元気かな。
・・・
・・・
僕の意識は、ここで途絶えた。
169: テスト ◆71vVbFpf.c 2016/12/15(木) 17:26:30.52 ID:MVK382n60
肌寒い感覚で、目を覚ました。
病院だった。
目の前には、特に誰もいない。
現状を把握する。
よく、起きた瞬間はぼうっとしているとか、しばらく記憶がないとかいろいろ言われるが、そんなことはなかった。
僕はすぐ、倒れたことを思い出し、病院にいることで現状をほぼ把握した。
右手には点滴。近くにはナースコール。
なんにせよ情報収集だ。僕はナースコールを押してみた。
すぐにナースが来る。
ナース「藤原さん、目が覚めたみたいね。気分は?」
僕「・・・特に問題ないと思います。えと、鏡ありますか?僕のスーツの上着に入っていたかと思うんですが。」
手鏡を受け取る。顔色は、いい。怪我も見受けられない。腕が少し痛むぐらいだ。
ナース「自分のお名前、わかります?」
僕「はい。藤原竜也です。おそらく、会社の階段付近で気を失って倒れたんだと思います。」
ナース「あら。意外と軽傷なのかしら。今、先生呼んできますね。えと、上司の方にも、連絡を入れておきます。」
僕「助かります。」
簡易的に先生があれこれチェックしてくれた。
先生「とにかく、栄養失調だよキミ、しばらく安静にしないと。あと、脳のダメージがあるといけないから、数日は検査入院ね。」
僕「仕事があるんですが・・」
先生「あのねぇ。藤原さん?あなた、死にかけてたんだよ?自分の命と仕事、どっちが大事なの?」
僕「ですが・・・休んだ分だけ自分に返ってきてしまうので・・・」
先生「これは命令だよ。検査しなさい。」
僕「しかし・・」
先生「あなたの上司には、私から言うから。あなた、仕事中に倒れてるんだよ?あなたに何かあったら、最悪、会社に業務停止命令が出るよ?その意味わかる?」
僕「逆に迷惑がかかりますね。わかりました。」
夕方、課長がやってきた。
僕「すみません。ご迷惑をおかけします。」
課長「本当に迷惑だよ、君は。」
僕「すみません・・・」
課長「そうじゃない。なんでもっと早くサインを出さないんだ。君は、「大丈夫です」しか言わない。」
僕「・・・」
課長「助けてのサインを出さないと、逆に、皆に迷惑がかかる。それだけは覚えておいてくれ。」
僕「おっしゃる通りです。申し訳ありませんでした。」
課長「それと・・・ここまで放っておいて、すまなかった。誰もが、お前の境遇を知ってたのに。。手助けできなかった。」
僕「うっ・・・うう・・・」
僕は、課長の前で、泣いた。
課長「とにかく、年内は休め。年明けからは、事務の子だけれど、2人付くから。」
僕「・・・そうだったんですね。」
課長「え?お前にも言ったはずだが・・・」
僕「聞いたのかもしれませんが、忘れてたんだと思います・・」
課長「・・親御さんに連絡しないとな。」
僕「いえ、結構です。やめてください。」
課長「身の回りの世話や、泊まるんだから準備もあるだろう。どうするんだ。」
僕「つてがあるので、そちらをあたります。」
課長「そうか。とにかく安静にな。」
僕「はい。ご迷惑をおかけしました。」
僕は、淳に連絡を取り、着替え等を持ってきてもらった。翼と結衣も一緒だ。
淳「社内は騒然だぞ。過労死したかと思った。」
意外と元気そうな僕を見て、淳はほっとしていた。
結衣「びっくりさせないで・・心臓泊まるかと思ったよ・・・」
僕「よせ。縁起でもないw」
翼「あなた副主任なんでしょ?しっかりしなよ。」
僕「しっかり頑張ろうとした結果がこれさ。」
翼「・・・ごめん。」
僕「なーんか、頑張ってみたけど、無理だ。僕には。」
結衣「・・・うん。」
僕「僕は、沢村さんにはなれないや。部署内も、他部署も、誰も僕の仕事なんて信用してない。誰も動いてくれない。」
翼「え。そりゃそうよ。まだ3年目が会社を動かせるわけないじゃん。」
僕「本当だw悩んで損したww」
淳「お前は頑張りすぎるんだよ。気軽に行こうぜ。」
僕「・・・・ありがとう。」
結衣「また寄るね。困ったことがあったら言ってね。」
僕「みんなありがとう。みんなしか頼れないから、頼らせてもらうよ。」
170: 以下、

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