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ノキアがスマホ市場に再参入。勝算と見通しを探る:山根博士の海外スマホよもやま話


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ノキアからブランドライセンスを受けたHMD Globalは、中国で「Nokia 6」を販売すると発表した。
スマートフォン市場から約2年間遠ざかっていたノキアブランド・スマートフォンの再登場を歓迎する声も多く聞かれる。しかしこの2年間でスマートフォン市場のパワーバランスは大きく変わった。果たしてノキアの再参入は成功するのだろうか?
▲再参入最初のモデルとなるNokia 6。中国で先行販売される
Nokia 6のスペックは、Snapdragon 430、RAM4GB、ROM64GB、5.5インチFHDディスプレイ、メインカメラ1600万画素、フロントカメラ800万画素。
通信方式は中国3キャリアそれぞれの主要周波数に対応しており、中国移動、中国聯通、中国電信の各社のSIMカードが利用できる。価格は1699元(約2万7900円)。販売は中国のEC大手のJD.com(京東商場)のみで、キャリアや家電量販店などでの店舗販売は未定である。
アルミニウム合金製のボディーにホームボタンを兼ねる指紋認証センサーを搭載、カメラの明るさはF2と明るく、ドルビーアトモスを搭載。これらの付加機能を見ると、Nokia 6はミッドレンジモデルとしてやや上位に位置する製品と見られる。
とはいえ中国市場では同程度のスペックの製品が1000元(約1万6400円)以下で販売されている。
例えばファーウェイの「Honor 5X Play」はSnapdragon 616、1300万画素カメラなどのスペックで999元だ。また200元(約3300円)ほど追加すれば、Snapdragon821搭載のシャオミ「Mi5s」を買うことも出来る。それらと比べると、Nokia 6の価格は割高感すらあるだろう。
しかしHDM Globalが競争の厳しい中国市場で、あえてこの価格設定で新製品を投入する意図は、ノキアのスマートフォンを単なる価格競争に巻き込ませるのではなく、他のメーカーとは一定の距離を置いた、ブランド力のある製品として展開していこうと考えているからだろう。
実際にここ数年の中国市場の各社の動きを見ると、価格を売りにしていたメーカーは皆業績が悪化している。今や500元(約8000円)程度のスマートフォンでも必要十分なスペックを揃えた製品が数多く出ており、価格だけでは他社との競争に打ち勝てないのだ。それは「低価格」を売りにしていたシャオミの急落ぶりを見れば一目瞭然でもある。価格で製品を選んだ消費者が、次も自社製品を買ってくれるとは限らない。
▲ミッドレンジモデルに付加機能を追加。デザインはややオーソドックス
今の中国市場を見てみると、成功しているメーカーは(1)製品数が多く毎月のように新製品を投入しているファーウェイと、(2)特定の機能をアピールし高価格な製品を筆頭にブランド力を高めたオッポ(OPPO)とビボ(Vivo)の3社、2グループに絞られている。
世界市場を席捲していた頃のノキアは、今のファーウェイと同じポジションで中国でも圧倒的なシェアを誇っていた。だが再び市場に参入する今回はオッポなどと同じ戦略を採り、ブランド力を復活させることで復活を図ろうとしているのだろう。
ノキアのスマートフォンは2017年中に複数モデルが登場する予定だ。高画質カメラに高解像度ディスプレイを搭載したフラッグシップモデルや、低スペックなエントリーモデルなどの存在がリークされている。しかし今やノキアのライバルとなるのはサムスンやアップルではなく、前述したファーウェイやオッポ、さらには各国で次々と生まれる新興メーカーだ。
ライカと協業したファーウェイは「カメラスマートフォンメーカー」としての名を高め、オッポはセルフィーカメラでアジアで人気を高めている。そして新興国では地場メーカーが低価格スマートフォンを何十機種以上も投入しているのが今の市場の実情だ。
▲ライカとのコラボはファーウェイの「カメラスマホメーカー」としての認知度を上げた
ガートナーなど調査機関のスマートフォン販売数のデータを見ると、世界シェア1位、2位のサムスンとアップルは成長に陰りが見えている。両メーカーとも主力戦場は先進国であり、その先進国ではもはやスマートフォンを毎年買い替えるユーザーの数は減っている。
アメリカではキャリアが2年縛りで端末割引販売をやめたことから、端末の価格に敏感になっている層も増えている。ましてや2年前のハイエンドスマートフォンは、今でも十分使い物になるのだ。一方、シェアを伸ばしているのはファーウェイやオッポなど、新興国を主戦場としているメーカーだ。
ではノキアのスマートフォンはどの市場をターゲットとするのだろうか。すでに多くの消費者がノキアの名前を忘れ、また若い世代はノキアの名前すら知らないだろう。
とはいえほかの新興メーカーと違い、ノキアには過去に世界各国で高いシェアとブランド力を持っていたという背景がある。また販路を一から再構築するにしても、どこの誰ともわからぬ信用のおけないメーカーの製品ではない。
▲新興国ではまだノキアの中古や再生品も出回っている
ノキアとしては、まずは新興国で安定した販売数を確保することが先決になるだろう。ハイエンド端末の販売数はあまり伸びないだろうが、新生ノキアの「顔」としてブランド力を高める役割は果たしてくれる。東南アジアやインドなどの新興国なら、ミッドレンジやエントリーレベルのモデルはどのメーカーにもボリュームを出せるだけの市場規模が残っている。新興市場で安定した販売数を維持できれば、新製品開発の余裕も生まれてくるだろう。
一方先進国にはハイエンド端末だけを投入し、プレミアム感のあるメーカーとして再出発する戦略を採るだろう。低価格モデルで数を出したところで、ブランドへのロイヤリティーを高めることは難しい。
他社のハイエンドモデルを超える、超ハイスペックかつ高品質な製品を出せるかどうか。先進国市場で存在感を表すためには、気合を入れた製品の投入は必須だろう。4Kディスプレイ、2000万画素以上のデュアルカメラなど、まだどのメーカーが手掛けていないようなハイスペック端末が開発されることに期待したい。
▲新興市場、先進国、マーケットごとの戦略は重要だ
古くからのノキアファン、ノキアマニアでもある筆者は、ノキアにはギミックを多用した「持つだけで楽しめる」ような、ワクワクできる製品の開発も願いたいところ。だがそのような製品を出すためには、まず市場で一定のシェアを確保する必要がある。2017年はその下地作りの年となり、来年以降も製品を継続して出せるかどうかは、今年1年の動向が大きなカギとなってくる。
スマートフォンはもはや本体のデザインや機能だけで差別化を図ることは難しく、価格競争では地場メーカーには勝てない。ノキアのブランドをどこまで再認識してもらえるか。ノキア復権はそこがカギとなる。但し既存メーカーもノキアの動き黙って見ているとは限らない。ノキアの再参入により、2017年のスマートフォン市場は新たな競争が各国で繰り広げられることになるかもしれない。
▲2010年2月にノキア本社(ヘルシンキ)を訪問した時の1枚。ギミック端末の復活も期待

関連キーワード: Marketing, mobile, nokia, Nokia 6, smartphone
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