女「いつか前、手に結んだ赤い糸を」back

女「いつか前、手に結んだ赤い糸を」


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1:
僕(こんなバイト先、辞めてやる……)
目の前でニヤニヤと笑いながら僕をお説教する店長を見ずに、僕は心の中でそんな事を考えていた。
僕(荷物が届いたのなんて、深夜番の自分が知るわけないだろうが……)
僕(夕方の勤務の奴に言えよ……)
この店長はいつもそうだ。
何でもかんでも深夜のバイトに責任を押し付ける……素晴らしい店長だった。
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3:
僕(棚の裏に自分で商品隠してさ……何がちゃんと棚を整理しろだよ)
僕(こっちは知ってるんだよ、そっちがネチネチと嫌がらせしているのを……)
そして僕は、お説教が一段落した所で「それなら辞めます」と言ってしまった。
何がそれなら、なのか。
ああそう、と言った具合で切り出された後、人手が足りないとか何とか言っていた気がする。
話を聞く前に、僕は店の外まで足早に逃げていた。
明け方の空気が清々しくて、冷たい。
4:
僕(よく……もったよね)
コンビニで働いていた二年間で、僕が手に入れたのはほんの僅かな貯金だけだった。
大学を卒業したのはいいものの、フリーターとして過ごした二年間。
彼女もいない自分にとっては、バイト先と自宅を往復するだけの面白味のない毎日。
5:
何かいい事無いかな。
毎日そう考えて、ただ無気力に過ごしていた。
気持ちが滅入っている時に、店長からの嫌がらせの連続。
僕(……辞める時期が少し早まっただけだもの)
少しだけど貯金もある、そろそろフリーターは卒業して就活でも始めようか。
僕(だから、今辞めるのはちょうどいい……)
そうでも考えないと、やってられない。
僕「……」
秋風が吹く中、寒いのを我慢しながら……僕は家まで戻ってきた。
7:
大学時代から六年間住んだこの場所が、今の僕の帰る所。
僕「……おやすみ」
帰ってそのまますぐに眠ってしまった。
明日からは何もない、そんな日が始まる。
僕(今はただゆっくり……眠りたい……)
自然と、僕は泣きそうになっていた。
明け方のこんな時間に一人で起きている……それがなんだか寂しかった。
9:
……。
僕「ん……」
意識が戻り目を少し開けると、カーテンの隙間からオレンジの光が見えた。
僕(夕方……四時くらいかな?)
枕元の携帯を見ると、緑のランプが光っている。
これはメールがあった時の光だ。
僕はボーッとする頭で携帯を開いてみる。
僕「……女から?」
メールお昼の時間に送られていた。
携帯の音なんて全部消している僕が、気付くわけはない。
10:
という夢を見た
――――完――――
11:
女『今日はお仕事? 夜暇だったらご飯行かない?』
……。
彼女は僕とずっと仲が良かった。
保育園から高校までを一緒に過ごした幼なじみ。
中学の時に一度だけ付き合ったりもした。
あまり覚えていないけれど、学生の恋愛なんてこんなものか、とイヤに斜に構えた終わり方で離れていったのだけは覚えている。
12:
だからこそ一昨年、大学に通っている中でしていた就活の時、偶然彼女に出会った時は驚いた。
女「……あれ? あれ? もしかして僕ちゃん?」
僕「……?」
女「ほら、近所に住んでいた……」
スーツなんかを着て薄化粧をした彼女を久しぶりに見た時に思ったのは……単純に綺麗だったと言う事。
女「ふふっ、そのスーツ似合ってるよ」
13:
女「そっか、同じ企業受けてたんだね。二人とも内定取れたら……同僚だね」
……優しく言ってくれたこの一言が、不合格の通知を貰ってからしばらくは胸に刺さっていた。
彼女はめでたくその会社に合格し、数年振りに会った僕たちはまた離ればなれに……。
……。
14:
……。
カーテンの向こうのオレンジは、いつの間にか真っ黒になっている。
携帯の光はとっくに消え、部屋の中に明かりはない。
僕(離ればなれに……なりたかった)
住む場所は近かったので、それから何度か会って交流は深めていたけれど……僕の気持ちは落ち込んでいた。
内定が貰えない男。
女「そんな事気にしちゃダメだよ。僕ちゃんならちょっと頑張れば大丈夫だよ!」
そんな風に慰められるのが、余計に惨めだった。
15:
あれからフリーターを続け、そのバイト生活も昨日で終わり。
僕(こんなの、女に言えるか……)
僕は小さなプライドを持ったまま、メールを返す。
僕『ごめん、風邪ひいたからまた今度』
今は誰にも会いたくない気分。
風邪なら無理に誘われる事もないだろう。
僕「……送信と」
16:
僕(……来週の天気は雨が続くかあ)
ワクワクする。
僕(ん)
……返事をしてから十分程でまたランプが光った。
見ていた携帯サイトを閉じ、メールを確認する。
彼女からだった。
女『風邪?! 大丈夫? 食料とかあるの?』
ビックリマークの絵文字が、可愛らしい。
僕『大丈夫だよ。寝てれば治るからさ』
嘘ばかりだ……送信。
17:
……。
二十分程待っても返事は来なかった。
働いている身だ、忙しいんだろう。
僕「お腹空いたな……」
そろそろ夜だ、何か食べる物を買いに行こう。
僕は近くのスーパーに向かった。
僕(……ついでだ、やけ酒でもしようか)
カゴを持って店内へ。
今の僕には、食べる事と眠る事しか楽しみがないんだ。
18:
まずは惣菜コーナーで半額になった惣菜をチェック。
そしてお菓子コーナーでつまみを買って……最後はアルコール類をカゴに大量に入れる。
ビールやらチューハイやらを十本程……ビックサイズで買ったのでそれなりに酔う事はできるだろう。
レジに向かうと、長蛇の列ができている。
しばらく並んで待っていると……ポンと後ろから肩を叩かれた。
僕「ん?」
女「風邪、平気なの?」
スーツを着た彼女が……なぜかそこにいた。
19:
彼女の車に乗りながら、僕たちは家に向かっていた。
車の中は甘いシャンプーのような匂いがした。
彼女の匂いだろうか?
女「……もう、お酒ばっか」
僕「風邪なんてお酒飲めば治るんだよ」
女「電話出ないから心配でわざわざ来たのに、いらない心配だった?」
僕「電話?」
携帯は家に置きっぱなし、それを話すと彼女はまた呆れ出した。
女「ハァ……」
僕「悪かったってば」
何を謝っているのか、自分ではわからない。
20:
いいね
22:
ハッピーエンドでよろ
21:
スーパーから車なら、すぐに家まで着いてしまう。
女「ねえ、車どこに停めればいいの?」
僕「え?」
女「ご飯の間だけなんだけどさ、どっか空いてる場所ある?」
僕「家に上がるの?」
女「当たり前でしょ、そのために買い物だってしたんだから」
僕(あの、ネギや白菜なんかがたくさん入ったカゴ……)
女「風邪で死んじゃう場合もあるんだからさ、心配だったんだよ」
僕(心配、心配ね……)
嬉しいけどそれは口に出せなかった。
今の気持ちで誰かに甘えたら、自分はきっとダメになってしまう。
元気が回復していない僕は、やっぱりどこか病んでいたんだと思う。
23:
女「駐車場は契約してない?」
僕「……車はない」
女「じゃあ近くのお店に停めちゃおうかな。あまり遅くまでいないしね」
僕「そっかそっか」
……と言う前に車はお店の敷地に入っている。
彼女は行動が早い。
女「よし。じゃあ……」
トランクから、彼女は先ほど買ったスーパーの袋を大量に手に持ち出した。
僕「そんなに?」
女「ほら、僕ちゃん風邪だから。病人でしょ?」
僕「……そんなの気にしないでいいの」
袋を奪うように、彼女の手から離す。
女「くすっ、無理しないでいいのに。やっぱり男の子だね」
僕(……本当は風邪なんかじゃないからさ)
心の中で僕は小さく謝ったんだ。
24:
女「おじゃましま〜す」
僕「適当にあがって」
女「あれ、綺麗に片付いてる?」
僕「珍しく掃除したばっかだからさ」
女「あははっ、本当に珍しいね。三年越しくらい?」
僕「……」
女「くすっ、冗談だってば」
僕(……いつも元気だな、女は)
暗い気分の時には、彼女くらいの存在がちょうどいいのかもしれない。
女「じゃあ、支度しちゃうからさ。適当にくつろいでてよ」
僕「まあ、自分の家なんだけどね」
26:
女「あ、暖房付けてくれる?」
僕「……今日はそんなに寒くないから大丈夫じゃない?」
女「風邪ひいてる人がいるんだから、少しでも温かくしないとでしょ?」
僕「……」
僕は黙ってヒーターのスイッチを入れた。
女「ふふっ、ありがとう。じゃあちょっと待っててね」
慣れた様子で、材料を捌いていく彼女。
僕はテレビを見ながら、後ろで包丁がまな板を叩く音を聞いていた。
自分以外の誰かが部屋にいる……それが不思議な感覚だった。
一人に慣れすぎた自分にも、まだ友達がいる。
気持ちが少しだけ暖まり、テレビもちょっとだけ楽しく見る事が出来た。
女「はい、出来たよ〜」
27:
小さな土鍋が運ばれて、テーブルの上にコトリと置かれる。
僕「おお……」
女「やっぱり寒い時は鍋だよね。大丈夫? 風邪でも食べやすいように薄味にしたんだけど……」
僕「……ありがとう」
彼女は優しかった。
いつもそうだ、いつも僕を助けてくれた。
今だってこうして……。
僕「……じゃあいただきま」
女「あ、待って待って。私どこに座ればいいの?」
僕「え?」
女「この部屋……僕ちゃんが座っている布団の上以外だとテレビ見れないじゃん」
28:
積極的なオナゴだな
29:
僕「一人暮らしだから」
布団の周りをテレビとパソコン、そしてテーブルで固めている。
他の誰かを呼んで過ごせる空間では無かった。
女「……ま、いいのかな」
そう言うと、さも当たり前のように僕の布団の上に乗っかってきた彼女。
女「じゃ、食べよっか」
僕「気にしないの?」
女「ん、何が?」
取り皿に入った鶏肉をふーふーしながら僕の方をキョトンと見ている。
僕「……気にしないならいいや」
女「? 変な僕ちゃん〜」
……僕も、鶏肉に噛みついてみる。
熱くて舌を少し火傷した。
31:
熱い具をアルコールで流し込みながら、僕たちの食事は続いた。
女「飲み過ぎじゃない? 明日の仕事に差し支えない?」
僕(仕事なんて、もう無いから)
グイッ、とビールの缶を飲み干す。
なぜか妙に酒がすすむ。
僕「……女も飲む?」
女「あははっ、私は明日も仕事だから。それに帰れなくなっちゃうし」
……。
女「でも風邪も大した事なさそうだね、よかったよ」
僕「ああ……うん」
笑顔を向けてくれる彼女が、可愛らしく見える。
アルコールのせいだろう……少し冷静にならないと。
僕は窓を開き外の空気を吸う事にした。
32:
空には満月がちょっと欠けただけの……酔った僕にはボヤけて見える月が出ていた。
そして冷たい空気も僕の赤い頬を撫でている。
女「寒くない?」
僕「温かいから大丈夫だよ」
会話になってない、酔っているのは自分でもわかる。
女「……ね、何かあったの?」
背中から急に落ちた声をかけられる。
僕「……」
女「いつもと違って元気ないからさ。お酒のペースだって早いし……あ、もしかしてお目当てのゲームが買えなかったとか? 子供だもんね〜僕ちゃんて」
へこんでる時にからかわれると、心に来る物がある。
僕「……そんなんじゃないの。別に普通だよ」
女「え〜絶対嘘だよ。何かあったでしょ?」
33:
下らないプライド。
彼女に心配はされたくなかった。
なぜ? と聞かれても僕にもわからない。
僕「……何でもないよ。あったらちゃんと話してるから」
だから、酔った振りをして嘘をついて。
彼女をここから追い払ってしまった。
女「……そう。何かあったら相談してね。お姉さんなんでも聞くからさ!」
僕「同い年だろ?」
女「私のがお姉さんだよ。まずはちゃんと風邪を治すんだよ、弟くん?」
もう、風邪の事なんてどうでもよくなっていた。
残った時間も鍋をつついてアルコールを飲んで……日付が変わる前に彼女は帰っていった。
女「また来るからね、おやすみ」
僕が風邪をひいている間は、また来るらしい。
だから僕は寝て起きたら風邪を治す事に決めた。
35:
僕「……ふぅ」
彼女が帰ってからも、僕は一人でテレビを見ながら酒を飲んでいた。
僕「苦いテレビ……何一つおもしろくない」
ぶつぶつと独り言が部屋に響く。
さっきまで布団の上に彼女がいた。
一人になったら急に部屋が寒くなったような……窓はしっかりと閉めたのに。
僕「ぷはぁ……これでお酒は終わり」
最後の一缶を飲み終えると、僕はそのまま布団に倒れ込んだ。
僕(ああ、甘い……女の匂いが残っている……)
酔っている僕は、その布団を思わず抱きしめた。
僕「……寂しいな」
36:
朦朧とした意識の中でも、僕は独り言を頭の中で繰り返していた。
(どうして僕は一人なんだろう)
(なにかいい事ないかな)
(どこかに可愛くて優しい子と……運命的な出会いでも……)
(誰かに聞いて欲しいな、弱音も全部。寄りかかりたい)
(ああ……)
(誰かに会いたいな)
……。
37:
ぐるぐると、自分しか聞いていない弱音が頭に響く。
人間ってこんなもんなんだろう……人前で強がって、一人で落ち込んで。
誰かに弱音を吐ける人間がうらやましかった。
恋人がいる誰かがうらやましかった。
僕(……)
(会いたい……僕の運命、どうなんだよ)
そのどちらもが叶わないから、僕はドロドロした思考の中でただ……眠った。
……。
僕にちょっとしたキッカケが訪れたのは、その次の日だった。
38:
よし、今日はこのスレを見とくか
41:
僕(頭が痛い……時間の感覚も無い……これが二日酔い)
僕(トイレ、起きないと。うっ、いたた……)
歩くたびに頭が痛む。
締め付けられるように、ずっと僕の頭は刺激を受けている。
布団から起き上がろう、そう思って視線を足元に向けた瞬間、目の前に一本の線が伸びているのが見えた。
僕「……?」
その線は、布団の中から生えているように真っ直ぐピーンと、カーテンの表面にくっつくように伸びていた。
僕(なんだこれ)
寝起きと二日酔いの頭では、すぐに理解する事は出来なかった。
僕はしばらくその線を見つめていた。
42:
布団を揺らしてもピクリとも動かない。
最初は目にゴミでも入ったのかと思っていたくらいだ。
僕(気にしても仕方ないか……)
特に動きは無い。
僕は体を起こしてトイレに向かおうとしたが……布団を退けると、初めて違和感に気付いた。
その線は、布団の表を貫通して裏の方まで伸びている。
いや通っていると言った方がいいのか。
布団を間に挟んで一本の線が……全く揺れる事もなく目の前に浮かんでいる。
そして、手元の辺りまで伸びているその線を追ってみると……。
僕「……なんだ、これ?」
僕の右手の小指に、細い赤い糸のような物が結ばれていた。
その糸は、カーテンに向かって真っ直ぐに伸びている物だった。
44:
僕「……こんな糸、家にあったっけ?」
まあいいやとそれを外そうとしたけれども、糸は外れない。
と言うよりも、その糸を手に掴む事が出来なかった。
僕「頭が……そうか、二日酔いのせいか」
いかんせん頭が働かない。
僕はトイレに行こうとする。
その指に巻かれた糸も、僕の小指を離れる事なく付いてきた。
引っ張られる感覚などはなく、ただ糸を手繰っているような。
僕「……」
今の僕には頭痛でそれどころじゃなかったけれども。
45:
ベストエンドで頼む
46:
二度寝をしてしまえば、こんな変な物も消えるだろう。
僕「そう思ったけれども……」
いくらか頭通が楽になった今でも、糸は相変わらず僕の小指に巻かれていた。
眠った時と何も変わっていない。
僕「……一体何から出てる糸なんだろう?」
僕は糸が伸びているカーテンに触れてみた。
カーテンは揺れるけれど、赤い糸は全く動かない。
それを捲ってみると、糸はガラスを貫通して窓の向こう。
そしてベランダの囲いを通り抜け、向かいの景色に見える民家の二階の向こうまで……。
僕「……」
どこまで伸びているのかが、全くわからない状態だった。
47:
僕「……」
部屋の中で一人、僕は悩んでいた。
僕「ハサミで切っても、切れない。何か他の物があっても関係無い」
僕「赤い糸……そういえば、そんな迷信があったじゃないか」
結ばれる者の小指と小指には、赤い糸がお互いの指にある。
僕「も、もしかしてこれが?」
何度引っ張ってみても、指は糸を無抵抗で引き寄せる。
感覚のない不思議さが、その迷信を余計に信じさせる物になっていた。
僕「……よし」
僕は身支度をし、外へ出た。。
48:
僕は自転車を勢いよくこぎ出し、糸の伸びる先へと進んだ。
僕(この先に、運命の人がいるのなら……!)
そう考えると、寒い夜道を走る気力もわいてくる。
僕はそのまま、糸を追いかけた。
夜の中でもその赤ははっきりと目視する事が出来た。
僕は……建物を無視して真っ直ぐに伸びる糸をずっと追いかけていた。
四十分も走っただろうか……。
糸は一向に目的地にたどり着く様子が無く、ピーンと遥か向こうまで伸びたままだった。
僕「……帰る」
自転車では届かない距離だったようだ。
49:
もう四十分かけて家に帰った僕は……すぐにまた支度を始めた。
数日分の着替え、軽い毛布。
携帯の充電器……最低限の旅の荷物だ。
僕「これで、よし」
僕「この糸を……追いかければいい」
僕「電車に乗って、会いに行ってそれから」
僕「一緒に……」
この糸の先に彼女がいる。
僕は布団に入りながら、一人で笑っていた。
僕「優しく頭とか撫でてほしいし、弱音も何でも聞いて……あ、あと風邪をひいたら看病して欲しいな」
50:
僕「旅か……旅」
それは、どこかに逃げ出したいと思っていた、今の僕にはちょうどよかった。
就活して、手に職をつけたらこんな自由な時間は多分もう無いだろう。
だからどこかに行きたかった。
まだ若いと言われるうちに、何かをしたかった。
二年間フリーターをしていた間に、そんな欲望も生まれていたんだろう。
自棄になっていた最近の心情なら、尚更だ。
51:
バイトの疲れが残っていたせいか、その日もすぐに眠る事はできた。
小指から伸びている赤い糸も、感触等は全く無いので気にならなかった。
(おやすみ……)
僕は見えない誰かにおやすみの挨拶をして……眠った。
52:
次の日、始発の電車の中に僕はいた。
糸が伸びている方角に向かって……電車に揺られている。
運転席を突っ切るように、真っ直ぐに糸が張っている。
僕(ああ、いいなあこういうのんびりした時間)
僕(何も考えないでゆっくりできる事なんてしばらくなかったからな……)
ただ赤い糸を追いかける旅、電車に乗っているだけでもただそれが楽しかった。
僕(どこの街まで行くんだろうか……)
電車は相変わらずのんびりとした様子で走っている。
54:
支援 前半ではいろいろ思い出して泣きたくなった
55:
これはいい流れ
56:
乗り換えの悪さも相まって、八時間程電車に乗ったが糸は一向に張りを緩めず、ピーンと伸びている。
僕(近くにその人がいれば弛むと思ったんだけどな……)
僕(そういう仕組みではないのか、それともまだ運命の人が近くにいないのか)
僕「何にしろ、今日はそろそろ泊まる場所を探さないとな」
楽しい電車も、さすがに一日中乗っていては飽きてしまう。
適当な駅で降りて、僕は宿を探す事にした。
57:
夕方の帰宅時とあって、駅の構内では様々な人が行き交っている。
駅の名前なんて知らなかったけれど、人の多い場所だった。
僕(ここにいる誰もが、自分の事なんて知らないんだよな)
そう思うとなんだかひどく安心が出来た。
僕はしばらくベンチに座って、ただ人の波をボーッと見ていた。
この雰囲気がなんだか好きだった。
59:
その駅を歩いているのは、サラリーマンや高校生が主だった。
どこかから遊びに来たような若い人は殆ど見えない。
僕(ここはそういう駅なんだろうなあ。確かに都会ってわけじゃあなさそうだしな)
僕(……お、女子高生。いいなあ、若々しくて、少し地味だけどそれがいい)
三人くらいでおしゃべりをしながら、出口に向かって歩いている女の子たち。
僕の前にある改札に向かって、どんどん近づいてくる。
僕はその中でも、真ん中を歩いている長い髪の女の子に目を惹かれた。
61:
髪型は形の整った綺麗なツインテール、まだ幼さのある可愛らしい顔がそれを引き立たせている。
幼いながらもどこか凜とした雰囲気を持つ彼女に、僕は釘付けだった。
場所が場所なら通報されてもおかしくなかっただろう。
僕「ん……? あれ……」
でもそれ以上に僕の目に入った物は……あの赤い糸だった。
僕(糸が……彼女の左肩辺りに伸びている?)
今まで真っ直ぐ、ただ伸びていただけだった糸が彼女の歩調に合わせて、揺れている。
一歩進めば、糸は震え。
僕の方に向かってくる彼女に合わせて、確かに糸は縮まっている。
僕(彼女が僕の……運命の人……)
糸が伸びて繋がっているのが、何よりの証拠だろう。
僕は彼女に声をかける事にした。
62:
三人「……それでね、隣のクラスの子が」
僕「あのさ、ちょっといいかな」
三人「……はい?」
僕「えーっと、ちょっと訪ねたいんだけれども」
三人「……」
僕(頭の中真っ白。どうしよ……改札出る前に声を掛けたはいいけど、話す事考えてなかったよ)
それでも糸はピコピコと、真ん中の少女の辺りで震えている。
僕(繋がっているなら……大丈夫)
僕「えっと、この辺りで泊まるとこってないかな?」
右「え〜、いきなりなんですか〜?」
左「そんなカバン背負って……もしかしてホームレスですか?」
右「あはは〜お兄さんホームレス?」
僕「な……そ、そんなわけないだろ! た、旅してるだけだよ旅」
63:
星の海でつかまえての人か
64:
真ん中「……クスッ、旅人さん? 今時珍しいね」
僕(あ、笑ってくれた……)
それに合わせて、糸がピクリと震えて腕の辺りに伸びる形になった。
会話に必死な僕は糸の動きになんて気付かない。
右「え〜、傷心旅行? フラれたとか〜?」
僕「……旅行じゃないの、旅だよ旅。それにフラれてもないです」
右「一緒じゃん! ブラブラ遊びに来てるだけでしょ〜?」
僕(顔は笑ってるけど、若い子って結構エグいんだな……)
自分も二十代で若いはずなのに、なんとなく歳を感じてしまう。
僕「と、とにかくこの辺りで泊まる場所を探していてさ……」
65:
とにかく何か話が出来て近付ければいい。
そう思って話題を振ってみたが……反応してくれたのは真ん中の彼女だった。
真ん中「あの……アタシの家民宿やってるんですよ。よかったらどうですか?」
僕「み、民宿? 本当に?」
真ん中「はい。今の時期は暇ですから全然大丈夫なはずですよ」
右「ま、この辺は静かな観光地だからね〜。寂れた民宿くらいたくさんあるんだよ」
左「うん、うん」
67:
僕「いやいや、そういう寂れた民宿の方が僕は好きなんだよ。よかった、じゃあ早お店まで……」
真ん中「……寂れてて、悪かったですね!」
右「あ、ホームレスが怒らせた〜」
左「女の子泣かせるなんて最低ですよ」
僕「あ……いや、そういう意味で言ったんじゃないの! ありがたいから、うん。つい嬉しくて……ね?」
真ん中「……ふふっ、本当に変な人」
少し怒った顔の後に、彼女はニコッと笑ってくれた。
周りにいる二人も笑っている。
僕(思いきって話しかけてよかったな……)
真ん中「じゃあご案内しますよ。えっと、私は……冬って呼んで下さい」
名前も可愛らしい。
68:
右「……で、アンタの名前は? ホームレス?」
僕「だから旅してるだけだっての!」
左「よしなよ、本人はそれでカッコいいつもりなんだからさ」
右「そっか〜、ごめんねホームレスさん」
僕「……怒るぞ」
右 左「あはははっ」
冬「……くすくす」
民宿までの道を歩きながら、僕らは四人で笑いあっていた。
景色は暗くてよく見えないが、周りに山があるのだろう。
真っ黒い塊が向こうの方に見えている。
69:
冬「この辺りは紅葉が綺麗なんだよ」
僕「……ああ、観光地って言ってたもんね」
冬「今は時期じゃないけど……代わりにもっと綺麗な」
彼女と話すと、なんだか安心する。
僕「もっと? 何か見えるの?」
冬「ふふっ、それはね……」
右「……ねえねえ、なんか態度違わな〜い?」
後ろからのギザギザとした声が、僕たちの会話を突然終わらせた。
僕「な、なにが?」
右「もしかして、お兄さん惚れちゃった? デレデレしちゃってさ〜……」
左「傷心旅行だもん。女の子に目が行くのは仕方ないよ」
右「でも〜、女子高生狙っちゃうなんてさ〜……ね〜冬?」
冬「え、えっ? わ、私は別に……」
70:
右「おっ、その反応。脈あり? 脈ありなのか?」
冬「そ、そんなんじゃないよ。ただお客さんを案内してる……それだけじゃない……」
左「……その割にはなんかモジモジ?」
冬「し、仕方ないじゃん。男の人となんてあまり話さないんだから……!」
照れているのか、どぎまぎしながら話す様子も、素敵だ。
僕「結構奥手なのかな?」
右「違うよ〜。アタシたち女子高だもん。男がいないんだよ〜」
僕「そっか、それなら納得だ」
右「……お兄さんはなんか話慣れてるよね。意外とプレイボーイ?」
僕「いや、それは……」
パッといつも横にいた女……彼女の顔が浮かんでくる。
僕(布団の上で鍋を食べる仲なら、慣れもするよ)
72:
僕「はっは、大人になると気にならないもんだよ」
右「……大人がこんなとこでブラブラするなよ〜」
僕「ぐっ……た、旅が終わったら就活するんだよ。それまでは、な」
左「旅が終わらかったらずっとブラブラですね〜」
冬「くすくす」
話を聞いて、横から彼女は笑っている。
僕「ああ、それは大丈夫だよ。もう半分は見つけたようなものだからさ」
右「見つけた? 何を?」
僕「え……あ」
糸の事は、なるべく秘密にしたいのに。
つい口が滑ってしまった。
73:
僕「……それは内緒だ」
右「ま、あんま興味ないけどさ〜」
僕「だったら聞くなよ……」
右「そっちが語りだしたんだろ〜! それにどうせ大した物じゃないんだろ〜?」
僕「……まあ、そんなとこだ。さてそろそろ着くかな?」
冬「あ、うん。路地を左に曲がって……」
右「お、おい。二人の世界に入るなよ!」
こういう時はさっさと逃げるに限る。
僕は嘘を言ってこの会話を終わらせた。
僕にとっては大事な物だけど……わざわざそれを言い広める必要はない。
冬「ほら、見えてきたよ」
この糸で結ばれている、大事な人一人が知ってくれていれば……。
75:
右「じゃ、アタシたちは向こうだから帰るけど……冬に変な事するなよおっさん」
僕「おっさんは傷付くな……」
左「ふふ〜、冬ちゃんはおばあちゃんと二人暮らしだから余計に心配なの〜」
僕「……ん、そうなの?」
冬「うん。お父さんもお母さんもいないんだ」
僕「そっ、か」
冬「あ、悪いみたいな顔しないでね。今はそんなに気にしていないから」
玄関の明かりが逆光になり、彼女の項垂れた首を照らしている。
苦しいけれど笑っている、なんとなくそんな様子が垣間見えた。
右「またホームレスが女の子泣かせる」
僕「はいはい、わかったから子供は帰りなさい」
右「べ〜だ。冬、何かあったらすぐ言いなさいよ〜」
左「じゃあ、またね〜」
76:
賑やかな二人が、暗い道の奥に消えていった。
僕たちはそれを見送ってから、玄関の方を向いた。
厚木で作られた看板に、民宿の名前が書かれている。
暗くてそれは読めなかったが……隣に立っている彼女の憂いた表情に、自然と目がそちらに行ってしまう。
冬「……」
僕「どうか、した?」
冬「……いえ、お客さんなんて久しぶりだなって思って」
僕(嘘ばっかり……)
僕「そう、寒いからさそろそろ中に入ろうか」
冬「そうですね。では……あらためて」
冬「いらっしゃいませ」
ふふっ、と笑いながら小さく頭を下げる彼女。
腕の辺りに伸びている赤い糸が、またピクリと揺れた。
86:
GANTZ描いてる奥浩哉の短編集にこんな話あったな
176:
今北支援
>>86
変1巻に収録されてる『糸』のことか
俺の好きな作品の一つだ
92:
つかまえての人?
支援
※僕「小学校で」女「つかまえて」
100:
僕「お邪魔しま〜す」
冬「いらっしゃい。何もないけどゆっくりしてね」
僕「……なんか玄関暗くない?」
オレンジ、というよりは赤黒い光が空間に広がっている。
冬「今はシーズンじゃないから、手抜きしちゃってるんだ。私も普段は学校だからあまり手伝いも出来ないしね……」
僕「そっか、まあ贅沢は言わないよ」
冬「じゃあ案内するから。そこの階段から二階にあがって」
僕は言われるままに、薄暗い廊下と階段を進んだ。
101:
冬「はい、この部屋を使ってね」
僕「和室だね」
冬「民宿なんだから当たり前だよ。あ、お風呂沸かしちゃうから入ってね。それともご飯が先がいい?」
僕(……このやりとりだけだと夫婦みたいだな)
冬「……どうしたの? ボーッとした?」
僕「……お風呂が先でお願いします」
冬「あ、うん。じゃあ呼ぶまでゆったりしててね。浴衣は押し入れにあるし、適当にどうぞ」
僕「う、うん。ありがとう」
102:
一人部屋の中に残った僕は、寝転んで天井を見つめている。
僕(可愛かったなあ、制服で接客してさ。看板娘って感じだよなあ……)
襖の開け方や荷物の置き方、細かい仕草の一つ一つに気品を感じた。
僕(あの子が、この糸の……)
赤い糸はゆらゆらと何かに合わせるかのように揺れている。
今までには見られなかった反応だ。
僕(……くう)
長旅のせいか、僕はそのまま眠ってしまった。
……。
冬「あら?」
106:
冬「もしもし、寝てる?」
僕「……」
冬「お風呂入らないんですか〜?」
僕「くう……」
冬「……」
意識はあるようで無い。
電灯の下に誰かがいて、僕の顔を覗いている。
そんな気がする……だけだ。
冬「ん……」
スッと、僕の右手が暖かい感触に包まれる。
眠りながらでもわかる、これは冬の手だ。
107:
お風呂の支度をしてきたせいか、その手はとてもポカポカしていて。
僕の右手をキュッと締め付けていた。
僕「ん……ふ、冬……ちゃん?」
冬「!」
彼女が後退りをするように、僕から離れた。
眠りから覚めた僕はさっきまでの意識を夢の中に置き去りにしていた。
冬「あ、あの、お風呂沸いたから……その……」
僕「? ああ、うん。わかったよ」
冬「じゃあ、また……」
トタトタと、木造の廊下を駆けて行く彼女。
僕(何か、あった?)
暖かい右手の感触を気にする事もできず、僕は浴場に向かった。
108:
民宿のお風呂と言うだけあって大浴場……まではいかないが大きな浴槽と、小さいながらも露天風呂があった。
僕は外の空気を吸うために露天風呂の方に来ている。
僕「……生き返った気分だ」
垣根の向こうでは明かりに照らされた紅葉が見える。
少し肌寒いくらいの空気と温泉の温かさが僕を暖める。
僕(来てよかったな。あ、あとで女に連絡しないとな……)
電車の途中で彼女からメールが来ていたのを、僕は思い出した。
僕(あとで、あとで……)
僕はまた眠りそうなくらい、気持ちいいお湯に浸かっている。
110:
冬「あ、出たんだ。温度大丈夫だった?」
僕「うん、ありがとう。お陰で生き返ったよ」
冬「良かった〜久しぶりにお湯沸かしたから、水のままだったらどうしようかって思ってたよ」
僕「……冗談でしょう?」
冬「くすっ、ご飯にするから支度出来たら……食堂の向こうの台所に来てね」
僕「台所? ああ、料理を運べばいいのかな?」
冬「一人で食べても寂しいでしょ。家の居間で一緒に食べようよ」
僕「居間?」
冬「民宿とくっついてる、隣が家なんだよ。おばあちゃんにも紹介しておきたいしさ」
僕「おばあちゃん、ね……」
冬「じゃあ、待ってるからね〜」
111:
僕(薄暗い……本当に民宿なのか?)
食堂も和室風の造りで、座敷のスペースが八つ程に別れている。
あまり大人数が入る食堂ではなさそうだ。
僕(……寒い)
暖房も動いている様子もないんだから、当たり前か。
……胡散臭い目で食堂を見て回っていると、奥から扉が開く音がした。
冬「あ、来てたんだ。もうご飯できてるよ」
僕「……」
冬「な、なんですか? そんなにこっち見ちゃって……」
僕「髪、おろしたんだ」
いつの間にか彼女の髪型はツインテールではなく、ただのロングヘアーに変わっていた。
112:
支援
114:
冬「あ、あんま見ないでよ……」
僕「いやあ、可愛らしいからつい」
冬「……何言ってるんですか。子供だからってからかわないでよね」
僕「それ、パジャマ?」
冬「え? ええ、部屋着ですよ」
胴体部分は白布、袖とズボンは桜みたいに淡いピンク色……。
冬「ま、また見てる……?」
僕「女の子のパジャマなんて、ほとんど見たことないからつい」
冬「……じろじろ見るの禁止! こ、こんな人だったら泊めなければよかったかな〜……」
今から追い出されるのは、結構困る。
ここは素直に謝る事にした。
僕「……ごめんなさい」
116:
冬「ふ、ふふん、冗談ですよ。泊めるなんていって追い出したら……嫌な女の子ですもんね〜」
僕「……」
冬「じ、じゃあ仲直りしたところでご飯にしましょう。さ、こっちへ……」
僕「っ、くくっ」
冬「な、なに。ど、どうかしたの?」
僕「いや、何でも……ご飯にしよう。ご飯に」
冬「……もう、本当に変な人」
彼女が背中を向けた途端、僕は一人で小さく笑った。
自分をからかうつもりで反応している彼女、その会話に慣れていないような「ぎこちなさ」が僕にはなんだか面白く感じてしまった。
人と話していて、楽しいと感じたのは……久しぶりだった。
ほんのちょっとだけ、理由のわからない涙が出てきた。
泣きたいからでは、けっしてない。
117:
冬「おばあちゃん、この人がさっき話したお客さんだよ」
お婆「いらっしゃい。珍しいね、こんな季節に来るなんて」
僕「こ、こんばんは。お邪魔してます」
僕(これじゃあ他の家に遊びに来た小学生だよ……)
冬「もう、そんな小学生みたいな挨拶なんていいの。お客さんなんだから」
僕「……はい」
おばあちゃんの前ではあまり荒々しいツッコミも返せない。
僕は大人しくイスに座った。
和風だった民宿とは違い、タイル床に白い壁紙……冷蔵庫や食器棚など随分家庭的な印象だった。
118:
冬「あ、飲み物麦茶でいい?」
僕(寒いこの季節に麦茶?)
僕「……ああ、うん。なんでもいいです」
冬「はい、コップ。それじゃあ……いただきます」
お婆「はいはい、いただきます」
僕「……いただきます」
僕(ひじきに、五目ご飯のいなり寿司、黒豆……すごいおばあちゃんメニューだ)
冬「どう、美味しい?」
僕「好きだよ、こういう味」
これは本音、変に濃すぎる味よりはこういう素朴な味の方が好きだった。
119:
冬「よかった〜。足りなかったらおかわりあるから言ってね」
お婆「ほら、これも食べねえ食べねえ」
僕「あ、ありがとうございます」
冬「……ふふっ」
麦茶の入れ物を傾けながら、笑う彼女を僕は横目に見つけてしまう。
多分、僕も同じような顔になっていたんだろう。
何か……誰かを安心しながら見つめる事ができる。
僕は心の底から安心していた。
この、地味な料理が並んだテーブルとイヤに家庭的なこの空間……そして。
冬「あ、こぼしてるよ。それでも本当に二十歳過ぎ?」
僕の唇をやさしくつまんだ左手。
彼女の手首に巻き付いて見える赤い糸……。
僕はこの空気に溺れていた。
121:
前回のメールのやつも読んだよぉ
楽しみです
※女「メールをするから、つかまえて?」
122:
僕「……ふう」
部屋に戻った僕は、いつの間にか敷いてある布団に寝転がっていた。
僕「静かだ」
目を閉じると音は何もしない。
空気の流れる音……今の僕にはそれだけで満足だった。
僕「まだ七時か……」
テレビの上にある置時計、またそれも妙に古くさい気がした。
僕「携帯、女にメールだけしておくか」
思い出したように僕は携帯電話を取り出した。
僕「……」
123:
女『風邪は大丈夫? また行った方がいい?』
僕『風邪はもう平気だよ。今は家にいないから、それも大丈夫』
数時間してから返事をするのも悪いと思いながら……送信。
僕「さて、これからテレビでも見て……」
トントン。
そう思った矢先、襖を叩く音がした。
糸はピンと襖の辺りまで伸びては微妙に垂れている、きっと冬だろう。
124:
僕「冬? どうかした?」
冬「あ、あの。こんな事言うのもアレなんですけど……」
僕「?」
冬「ひ、暇なんで一緒に……あ、遊びませんか?」
襖に伸びた糸がピクリと動いた。
僕「……とにかく入りなよ」
冬「あ、いえ、あの……」
僕「?」
冬「私のお部屋のが暖かいから……よかったら……」
僕「冬の部屋に?」
冬「う、うん。居間を出た所の階段……二階だから」
女の子からのお誘い……いきなりだった僕はちょっとの間黙り込んでしまった。
少しだけ遠慮がちに口を開いた。
125:
僕「えっと、お邪魔しても大丈夫なの?」
冬「だ、大丈夫だよ。少しお話したいだけだから」
僕「そ、それなら……」
とりあえず彼女の姿を確認したくて、僕は立ち上がり襖を開けた。
しかし、もうそこに冬はいなかった。
赤い糸は、階段の下まで伸びて荒い呼吸のように揺れている。
僕「冬……」
……それを追いかけるように、僕も薄暗い廊下を歩き出した。
127:
薄暗い食堂と居間を抜け、僕は冬に言われた階段を昇る。
左右に扉が二つ見える。
一つはトイレだろうか、小窓がくっついている。
僕はもう一つの扉の前に立って、深呼吸をした。
……一息ついてから、僕は。
僕「冬、来たよ」
冬「開いてる、どうぞ」
冷たいドアノブに触れる。
ただの金属なのに、不思議と重く感じてしまった。
僕はそっと中を覗いてみる。
僕「……わ」
冬「寒いから、早く入って入って」
石油ヒーターの匂いが一気に鼻に入る。
それと同時に、ベッドに腰かけている冬の姿も。
129:
冬「廊下寒かったでしょ?」
肩に灰色のブランケットを羽織った彼女が、僕に言った。
僕「まあ、ちょっとね」
冬「毛布いる?」
僕「借りようかな」
冬「はい、これ。私のお気に入り」
僕「ピンク……女の子らしいね」
冬「女の子なんだから、当たり前ですよ〜」
僕「ははっ、誉めてるんだよ」
僕も肩に巻いて、スッと顔を埋めてみる。
僕(……柔らかくていい匂い)
女とはまた違う……なんとも言えない甘い匂いに僕は酔っていた。
冬「あ、あの……さ」
ちょっとした間の後、彼女は僕に話しかけてきた。
130:
支援
131:
僕「ん?」
冬「旅してるんだよね、旅」
僕「いや、旅というか何と言うかさ……ただ電車に乗ってここまで来ただけだよ」
冬「ね、他には?」
僕「他?」
冬「うん。旅をした理由とか、どんな場所に行ったかとか……何でもいいから、聞きたい」
僕「ん〜……」
僕(理由、ね)
右手の小指から伸びる赤い糸を追って、ここまで来た。
半分は自棄で家を飛び出したのと……もう半分は運命の人に会いたかったから。
僕(これだけ……本当にこれだけだ)
冬「もしかして、話したくない事……?」
冬が、少しだけ僕を心配するように見つめた。
僕「あ……いや、その……」
女子高生にそんな顔をされたら、罪悪感も生まれてしまう。
132:
目の前にいるのは、僕と糸が結ばれている彼女だ。
これを話しておく必要はあるのかもしれない。
僕「えっと、それは……赤い糸が」
冬「?」
冬はキョトンとした顔で僕を見ている
僕「ああ、うん。冬は赤い糸のの迷信は知ってる?」
冬「ふふっ、なんですいきなり?」
僕「ほら、恋人同士で言われるアレだよアレ」
冬「えっと、あまり詳しくは知らない……かな。結ばれる二人の小指は赤い糸で結ばれている、アレ?」
冬は遠慮した様子でそれを話してくれた。
133:
僕「そう、それ」
冬「その言い伝えが……何か関係あるの?」
そこから先が、少し言葉に詰まる。
正直に僕と冬がその糸で結ばれている、とすぐに話すのは……緊張してしまう。
僕(告白みたいなものだからなあ……)
冬「ふふっ、でもそんなのが本当にあったら素敵だよね」
僕(本当にあるんだよ。現にこうやって)
冬「お互いの小指から伸びる赤い糸が印なんて……ちょっと憧ちゃう、かも」
僕(僕と冬の小指……)
僕(小指?)
僕の小指から伸びる糸は、冬の左手首に巻き付いている。
指同士で糸がくっついているわけでは、ない。
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135:
僕「あのさ冬」
冬「はい?」
僕「それって確かに小指同士って事だったよね?」
冬「多分、それでいいと思う……よ。何か違ったっけ?」
僕(違うのは、糸が伸びている先なんだよなあ)
冬の手首をじっと見つめる。
糸は確かに巻き付いている。
僕「冬、ちょっとごめん」
冬「え? ち、ちょっと……!」
お互いの糸を重ねるように、僕は右手で冬の手首を掴んだ。
親指に彼女の脈が伝わってくる……それは普通よりも早く感じる。
冬「ね、ち、ちょっとお……?」
僕「赤い糸が、ここにあるんだ」
冬「な、なに……? なんて……?」
137:
糸を手繰るように、そのまま彼女の手首を引き寄せる。
冬「も、もう! あんま乱暴にしない……でっ!」
僕「あ、ま、待った……!」
グイッ、と彼女に手首引っ張られてしまい……僕の体重の向きはそのまま。
バランスが崩れて自然に僕は……冬の上に覆い被さる形になってしまった。
冬「あっ……」
僕「……!」
手首を掴んだまま、僕と彼女の顔は一気に至近距離まで……。
冬「……」
僕「……」
ただ、お互い目を合わせながら重なって……。
彼女の手首は、更に早く脈を打っていた。
冬「な、なに……するの……」
139:
僕(僕はただ糸を……)
指と手首が重なって、肝心の赤い糸は見えない。
冬「バカ……ぁ……」
代わりに僕の目には、これ以上ないくらいに顔を赤くした冬が映っている。
僕「ふ、冬。ちが……」
冬「……」
冬「熱い、ね」
僕「……え?」
冬「手」
僕「手?」
冬「うん、熱い……」
僕「冬……」
冬はそのまま、僕の手を握ってきた。
140:
指と指を絡めるように、僕の右手は彼女に……。
冬「この小指にさ……」
ガタガタと……乾いた風が窓を叩いている。
外は……きっと寒いんだろう。
冬「もし私に赤い糸が見えたら……ううん、見えなくてもいい」
僕「見えなく、ても……?」
冬「うん、いい。私は……自分で赤い糸を結びたいから」
僕「冬……」
冬の右手が僕の頭を抱き寄せて、僕は完全に彼女に覆い被さる形になる。
冬「……ねえ、私はあなたと結ばれている?」
僕「……」
冬「私は、あなたに結んでもらいたいの。それが……本音」
僕「冬、僕は……」
僕は、押し付けられた冬の首筋の……甘美な匂いだけを感じていた。
141:
女とはなんだったのか
142:
きっとまた出てくるさ支援
143:
これからだろう
144:
僕「冬、僕には赤い糸が見える」
僕は、繋がった手を見ずに……彼女だけを感じて話していた。
僕「初めて見た時、糸は確かに冬と繋がっていた」
冬「……指じゃないんだ?」
僕「うん、今は手首に伸びている、とは思う」
冬「くすっ。そんな格好じゃあ見えないもんね」
さっきから、首筋にずっと唇を押し付けている僕には、何も見えていない。
僕はさらに話を続けた。
僕「冬に会うまで糸は伸びたままだったんだ……でも『小指』に伸びているわけじゃ……」
冬「……」
冬「それでも、私はいいよ」
145:
胸がきゅってなる
146:
女の下りって必要だったのか?
149:
>>146
スレタイは誰の台詞か?ってことを考えれば…
147:
人肌恋しい寒さだな…
148:
冬「私は、ね。でもあなたがそれに納得しないなら……私はまだ赤い糸を繋ぎません」
僕「冬……」
冬「……糸、まだ見える?」
僕「この体勢じゃあ、見えないよ」
冬「ね、電気消しても見えちゃうの?」
僕「え?」
冬「あ……明るくてこの格好は恥ずかしいんだけど、さ」
僕「冬……」
冬「ずっとこのままでもいいから、電気……消そう?」
僕は、あまり彼女を見ないまま部屋の電気を消した。
真っ暗な中で、赤く揺らぐ糸をもう一度辿って……彼女の手を握った。
暖かい手と甘い匂いが……僕の刺激に再び飛び込んでくる。
151:
そのまま僕たちは、同じ布団に入って手を握り……たまに唇をくっつけてはまた離して。
寒い夜の時間を一緒に過ごしていたんだ。
窓が軋む音も今は……聞こえない。
僕「……」
冬「……」
抱きしめて、手を握って、くっついて。
ただそれだけでも僕の心は暖まっていった。
久しぶりに、誰かに甘えて抱きついた気がする……。
……。
完全に、僕たちは二人の世界に入っていた。
だからこそ……いきなりドアを開けられた時は本当に驚いた。
右「よ〜っ、遊びにき……」
左「き……」
見られた現場は、明るい部屋の下で膝枕をしていただけだから、まだよかったものの……。
152:
……。
冬「だ〜か〜ら〜、熱くて具合が悪いから膝を貸していただけだって……」
右「って言ってますよ〜」
左「いやいや信じられない〜」
右「で、具合の悪かったお兄さんはどうなんですか〜い?」
僕「……頭が痛い」
僕は必死にいつぞやの二日酔いの感覚を思い出していた。
少しでも、演技になるように。
冬「だ、だいたいなんで二人がいるのぉ……」
冬はもう、涙目になりながらも二人と会話をしている。
右「明日は学校無いしさ〜冬が心配だから来てみれば……」
左「ねえ」
冬「来る時は連絡してよぅ……」
右「あははごめんね〜」
153:
右「まま、いいじゃない。ほら差し入れだって持ってきたんだしさ」
僕「……差し入れって、お菓子はともかく酒も混ざってるじゃないか?」
右「家は酒屋なんだよ。あ、未成年組は飲まないから気にしないでいいよ。お兄さん、お酒飲めるでしょ?」
僕「まあ、飲めるけどさ……」
右「じゃあ、はいこれ。冬にはこっち」
冬「……ありがとう」
左「まだ気にしてる〜?」
冬「ううん、もう平気」
受け取った烏龍茶を一口飲んで、冬は息をついた。
155:
午前になった辺りまで、四人の密かな飲み会は続いた。
僕「……ていう事があってた」
冬「ふふっ、そうなんだ」
右「……ねえやっぱり二人なんかあった?」
二人「え?」
左「距離感が、明らかに違う気がする〜」
言われてみると、僕は自然に彼女の側へ。
彼女もどこか僕に体の向きを合わせていた。
僕「いや、まあ……看病してもらったくらいだしさ」
冬「う、うん。そうだよ」
右「ま……どこでカップルになろうがいいんだけどさ〜」
左「ふふっ、ね〜」
結局、飲み会がお開きになった後も彼女たちは僕らを疑いの目で見ていた。
いじるように笑ってくれていたのがせめてもの救いか。
156:
なんだただの神か
凄まじく?
157:
なんという急展開
158:
僕「じゃあ、おやすみ」
右「ん〜……」
左「くう」
冬「すぅ〜……」
眠る彼女たちを部屋に残し、僕は元の民宿の方まで戻ってきた。
僕「……ふう」
酔っていた僕は、糸なんか気にせずすぐに布団に潜った。
僕「あ」
意識を落とす前に、僕は枕元で緑色に光る携帯を見つけた。
メールだ。
そう言えば、彼女にメールをしてから……ここに携帯を置き忘れていたのか。
重いまぶたを開きながら、真っ白に光る画面を見つめた。
160:
メールはやはり女からだった。
時間は、僕がメールを返してからおよそ三十分後くらいだった。
女『お家にいないなんて、病み上がりなんだから無理しちゃダメだよ〜! つい、栄養あるものでもあげたくなっちゃうよ……』
僕(僕は犬か……さすがにこの時間に返事するのはまずいよな)
僕はそのまま携帯を閉じて、眠ろうとした。
……。
お酒を飲んだから、程よく眠気がくるはずなのに。
僕(眠れない、変に頭が冴えたのかな)
だんだんと意識がはっきりしてきた。
いつの間にか……僕は、さっきまでの彼女との会話を思い出していた。
161:
……。
右「はい? 赤い糸〜?」
冬「うん、信じる派?」
左「甘酸っぱい恋愛の話〜?」
僕「……占いみたいなもんだよ。僕もさっき聞かれたからさ」
右「へえ〜。じゃあ、お兄さんはそれ信じてるの?」
僕「まあ……どっちかといえばね」
右「あら〜ロマンチック。アタシは目に見えないものはあまり信じないかな〜」
左「迷信とか占いには興味あるけど、私にはあまり関係ないから信じない〜」
冬「二人とも、信じない派かあ〜」
右「冬は?」
冬「私は……その」
チラッと、赤くなりながら僕の方に視線が向いた。
僕(……ああ、そりゃあ疑われるわけだ)
布団の中で一人振り返っていて、そう思った。
162:
右「でもさ〜そんなので人生決めたくはないよね〜」
僕「ん、そうか?」
右「だって決められた人生なんて嫌じゃん」
左「それが幸せな人生だとわかったら?」
右「それは……それでいいかも」
僕「女の子は現実主義だもんな」
右「とにかく、アタシはそんなの『だけ』で生きたくはないっ!」
左「おお〜パチパチ」
右「そうだよお〜、苦しいからこその人生なんだよ〜」
僕「……年下にこんな場所でお説教されるとは思わなかったよ」
右「でしょお〜、アタシは〜、ヒック」
冬「……ヒック?」
左「あ、チューハイ缶……」
163:
この人の小説毎回読んでて楽しい
164:
僕「おい、結局飲んでるじゃないか!」
右「ええ〜。こんなの酒屋の娘ならあたりまえ〜ヒック」
冬「きゃ、ちょっと、そんなに腕振り回したらあぶな……」
右「んん〜?」
左「落ち着いて、落ち着いて」
僕「……はあ、全く」
右「あはは〜、アタシは迷わない人生歩くからいいんだ〜いヒック」
右「それより〜、冬ちゃんと部屋の中でなにあってたんですか〜いヒック」
僕「そ、その話題は終わっただろ!」
右「まあ〜だまだ〜、何も聞いてないし。ほら〜、膝枕以外に何したって? え? え?」
僕「こいつは……」
165:
冬「な、何にもないの! ただ看病してただけなの!」
右「いや〜真っ赤だね〜。あはは、可愛い可愛い」
冬「もう……」
左「また酔っぱらって、ふぅ」
僕「よくある事?」
左「そこそこに」
三人「……」
右「はは〜ヒック、あ〜楽しい〜」
……。
167:
布団の中で、僕の意識がまた回っている。
その考えが三週程巡った所で、僕にもようやく眠気がやって来た。
僕「……」
眠る前に最後に僕は一つだけ。
一言だけ呟いて。
僕「本当に……これでいいのかな」
僕は眠った。
168:
……。
寒い。
足下を襲う冷気で目が覚める。
今は何時だろう、あの人がいたベッドの中で私は眠っている。
昨日の出来事は全部夢?
冬(違う……)
キュッと枕を抱きしめると、彼の匂いが蘇る。
あの人は確かにここにいた。
この布団の中で私を抱きしめながら、私と唇をくっつけながら……。
右「んん〜……」
ベッドにもたれ掛かる友人が、私の布団を引っ張っては、くるまっている。
寒さの正体はこれだった。
冬(全く……)
時計を見ると、朝の六時半。
普段ならそろそろ起き出して、学校にいく準備を始める頃だった。
169:
冬(お布団、返してね)
毛布を友人にかけ直し、私はもう一度ベッドに潜った。
朝の静かな空気の中で……眠りの世界へ。
冬(……)
「……になりました」
「も……かい?」
「はい、また……」
冬「?」
廊下の奥から声が聞こえる。
おばあちゃんの甲高い声と……男の人の声?
170:
「……」
しばらく会話が続いた後に、玄関が閉じるような音。
冬(あ……)
朝のしん、とした空気に寂しさが混ざったのがわかった。
冬(離れてく、なんで……?)
意識を飛ばし、私は夢中になってベッドから起き上がった。
冬(彼が、遠くにいってしまう)
無意識にブランケットを掴み、階段を駆け降りる。
背中でおばあちゃんが何かを話し掛けてきた。
それを聞く前に、私は家の外へ早足で出ていく。
少し前に行われた学校のマラソン大会なんかより、一生懸命に私は走った。
駅に続くただ一本の道を……私は追いかける。
171:
冬「はあっ、はあっ……」
僕「冬……」
やっと追い付いたその背中は、朝日に照らされれいて。
昨日までの彼とは、少し違うように思えた。
冬「はあ……はあ、はあっ……」
呼吸を整えるまで、彼は私を待ってくれていた。
ただ名前を呼んで私を見ていた。
その見つめる先に……赤い糸は繋がっているのでしょうか?
冬「……なんで、いきなり出ていっちゃうんですか」
僕「……」
冬「私の事、嫌いなんですか? それとも、もう赤い糸が見えないとか……」
不安だから、どんどん言葉が出てきてしまう。
彼を責めるつもりなんて全くないのに……。
174:
僕「……見えなくなったんだ」
冬「えっ?」
僕「朝起きたら、いつもの僕の指になっていた。今は冬の体に巻かれていた赤い糸も見えないんだよ」
冬「そう……なんですか……。じ、じゃあどうして? 糸が無くなったら私たちは……さよならなんですか!」
僕「……違う」
冬「違うって……」
僕「赤い糸は確かに冬に巻かれていた。昨日の……くっついた事が原因か、話をした事が原因なのか、理由はわからないけど……」
冬「……何か、きっかけが?」
175:
僕「わからない、だから、探しに行くんだ」
冬「……どこに?」
僕「……以前糸が伸びていた、北の方かな。あてのない旅だけどさ」
冬「……」
キュッと、唇を噛みしめる。
冬(赤い糸なんか見えなくても私は……)
冬(私は……)
でも、それが言えなかった。
そんな物がなくても、私はあなたが好き。
冬(それだけじゃあ……ダメなの?)
私は……誰にも聞かれる事のない言葉を叫んでいた。
心の中で、静かに、痛い程、強く。
177:
冬はこういう雰囲気の小説が面白く感じるんだよな
支援
179:
冬「……私も」
僕「ん?」
冬「私も行きます。一緒に旅をして……あなたと二人で……」
僕「冬、それは……」
冬「……」
断られるのは、わかっている。
私には学校もあるし家族もいる。
今日のお休みだけで終わる程の、そんな旅じゃない事は……わかっている。
冬(だから、余計に寂しいんだ……)
180:
冬「うん……」
私は震えながら、すごく情けない顔をしていたんだと思う。
涙を流していないのが不思議なくらいだった。
僕「……じゃあ僕は行くよ」
冬「うん……気をつけて、ね」
僕「うん、冬も風邪とかひかないようにさ」
冬「そう言えば、少し寒いや」
精一杯の笑顔を作ってみる。
僕「ちょっと、待ってて」
冬「?」
彼は持っていた大きめのカバンから、何かを取り出そうとしていた。
僕「あ、あった。はい、これ」
冬「……マフラー?」
181:
藍色をした、小綺麗なマフラー。
彼は笑顔でそれを私に巻いてくれた。
冬「赤い……方がいい」
僕「あははっ、ごめんね赤はないんだよ」
冬「……ふんだ」
僕「拗ねないの。ほら、風邪ひかないうちにさ」
冬「待って。これで、最後だから……」
マフラーを巻いてくれた腕の中に、私はそのまま飛び込んだ。
お別れの前くらいは、ギュッてしてほしい……私はどんどんワガママになっていった。
182:
僕「……」
冬「……そのまま」
僕「ん?」
冬「そのままさ、山の方見てみてよ……」
僕「山の?」
一緒に、その景色は見たくない。
私は胸に顔を埋めたまま……。
冬「ほら、紅葉より綺麗な景色って言ってたよね」
僕「あ、ああ」
冬「見える?」
僕「……見える」
冬「そう。よかった……」
僕「冬は、見ないのか?」
冬「私はこうしている方がいい」
僕「そう、か」
183:
>>1がんば
185:
長くなりそうだな
186:
彼が昨晩、私の赤い糸を見ないでいようとした気持ちと同じ。
目視してしまい、確かめるのが怖かった。
冬(この季節の山には……たくさんの雪が降って)
冬(この辺りの山はみんな、真っ白に覆われて)
冬(朝の澄んだ空気と冬の透明な冷気の中で、すごく綺麗に見えるんだよ……)
僕「……綺麗だな」
冬「でしょ。好きなんだよ、この景色」
目の前は真っ暗で、寒いのか暑いのかなんて、体では感じなくて。
冬(ばいばい……)
歩く彼の背中も見ないで、いつの間にか私たちは、離ればなれになっていた。
187:
……私は、ただマフラーと一緒に道を歩いていただけ。
帰ってからは、起きていた友達二人に私が泣いている理由を聞かれて。
悲しいけど、頭はどこか冷静だった。
マフラーだけが私の手元に残って……これが私と彼を繋いでくれる糸なんだ、と。
私のある休みの一日は、こうして終わっていった。
冬(……)
冬(来週くらいには雪が降りだすのかなあ……)
私はマフラーを抱きしめて、風に軋む窓の音だけを聞いていた。
……。
189:
なぜか泣けてくるぞ…
?
192:
……。
電車は、また知らない土地へ僕を運んでいる。
向かいの窓から射し込む朝日が眩しい。
僕はただ下を向いて、揺られているだけだ。
僕「……」
別れの中で、僕は彼女に嘘をついた。
僕の小指からは、変わらない様子で赤い糸が真っ直ぐに伸びている。
真っ直ぐ……糸の先は、冬に向かってはいない。
また遠くのどこかに伸びていたんだ。
僕(冬……)
誰かの言葉が僕の気持ちの中の何かを変えたのか。
彼女に触れた事によって、何かが変わってしまったからなのか……。
それだけは本当にわからなかった。
僕(だから、僕は)
195:
僕(……)
糸はまだ、ピンと進行方向に張って伸びている。
僕(まだしばらくは大丈夫、か)
昨日の睡眠不足のせいか、僕は……またすぐに眠ってしまった。
僕(本当に、何のために旅してるかわからないな)
余裕が出来たら、少し適当な場所を観光でもしてみようか。
僕(糸にばかり……とらわ、れ……すぅ)
196:
『次は〜……次は〜……』
僕「……ん」
相変わらず知らない地名が僕の耳に入ってくる。
僕(あと二駅で乗り換えか……)
僕(あ、そういえば女にメールしないと)
僕(えっと。なんて来たんだっけか?)
僕(ああ、栄養、ね)
僕『最近はちゃんと健康的に食べてるから平気だよ。家には……しばらく帰ってないんだけどさ』
送信、少し時間が開いてしまったけど大丈夫だろう。
199:
僕(またしばらくすれば返事は来るだろう。さて、次の目的地は……あれ?)
赤い糸は、ぐるりと180度反対の……今通ってきた道に対してまっすぐに伸びている。
寝過ごしている間に、糸の角度が変わってしまうような場所を通過したんだろう。
僕(……次の駅で戻ろうか)
200:
普通列車を乗り継ぎ、数駅前に戻るだけでもずいぶんと時間をとってしまった。
糸の弛み具合から、目的地に近付いている事はわかったが……時間がかかりすぎた。
今日はこの駅で泊まる場所を探して、明日また出かけようと思った。
僕(日が沈むのが早いからな……宿は確保しないと)
降りた町は、どうやら温泉街のようだった。
駅の名前を聞いてもピンと来なかったので有名な場所ではないらしい。
201:
僕「……ここでいいか」
赤い糸の通り道にある、こじんまりした旅館に目をつけた。
泊まり料金もそんなに高くない、手頃な場所だった。
僕「すいませ〜ん」
奥から、は〜いと言った声を出しながら女将さんらしき人がやって来る。
泊まりたいと伝えると、すぐに部屋に通された。
昨日泊まった……冬の民宿よりかは、少しだけ立派な造りをしていた。
部屋には座椅子や窓際のテーブルセットなど、一通りの備品はあるようだった。
203:
荷物を置き、僕は温泉街を少し歩く事にした。
僕「足湯に、居酒屋……昔ながらの遊戯場。なんかすごい所だな」
駅の近く、中心部にはお店も固まっていて出歩く人も何人か見えた。
が、少し中心からはずれると目の前にいきなり大きな橋と深い川が見えた。
そして、橋の周辺には民家の明かりが見当たらない。
僕「……まあ、よくある風景だよね」
橋の辺りで僕は一休みをする事にした。
携帯をチェックしてみるけれど……彼女からの返事がなかった。
僕「珍しい事も、あるもんだな……」
少しだけ、川から吹き上げる風を寒く感じた。
204:
僕(仕事が忙しいんだっけ? いや、家族の用事があったっけ?)
僕(……最近、話してないからわからないや)
ランプの光らない携帯電話をで見ていた僕は、このまま橋の近くで一人取り残されてしまいそうな気がした。
夜の山と森が怖くなった僕は、足早に町の中心部まで戻ってきたんだ。
一人でのんびりご飯を食べて、温泉に入って……あとは旅館に帰って、眠るだけ。
幸せって、こういう気持ちなんだろうな、と僕は思った。
205:
僕(……)
眠れない。
もう日付は変わったというのに、電車の中でずっと眠っていた僕に眠気はこない。
僕(何か飲み物買ってこよ……)
僕はフロントにある自販機を目指して歩き出した。
長い廊下を抜けて、フロントやカウンターの並ぶ正面玄関ロビーへ出た。
『……こんばんは、夜のニュースを……』
僕「?」
ソファーの近くに設置されていたテレビから音がする。
光がロビーを弱々しく照らして、微弱な空間を作り出している。
僕(誰かがソファーに座っている……?)
207:
「……」
薄暗いロビーでテレビを見つめていたのは、茶髪……だろうか、光の具合でそう見えた。
顔は間違いなく女性だった。
綺麗な顔立ちをしているが、小柄な体のせいか幼い印象を受ける。
身長がもう少しあれば、キャバクラのお姉さんと勘違いしていたのかもしれない。
それくらいはっきりとした顔立ちだった。
「……あ、こんばんは」
僕「こんばんは」
目が合うと、彼女は驚く様子もなく挨拶をしてくれた。
208:
「君もテレビを見に?」
僕「……ちょっとジュースを買いに」
「ああ、ね」
僕「……」
「……」
彼女に対して糸が伸びているわけでもない。
けれども僕は彼女の不思議な雰囲気に少しだけ惹かれてしまった。
恋愛的な意味は全く無かったけれど……純粋に、何か話をしたいと思った。
僕「やっぱり、テレビ見てもいいですかね?」
「ん、どうぞ〜」
彼女は自然な様子で僕に手招きをした。
どういう、人なんだろう。
209:
テレビの中では、ニュースが終わりいつのまにか深夜映画が始まっている。
吹き替えなので画面に集中しすぎる必要は無かった。
僕「……あの、いいですか?」
「はい?」
僕「ここには旅行ですか?」
「ええ、旅行で来たんですよ。君も?」
物腰が柔らかい様子だ。
僕「はい、ちょっと一人旅をしてるんですよ」
「ああ〜若いっていいね。傷心旅行とか?」
僕(……またそれですか)
211:
「あ、それとも自分探しとかって方かな?」
僕「……まあそっちの方が近いとは思いますよ」
「そっかそっか〜」
映画は、男女が静かに語り合っているシーンになっている。
生き方や人生論、自分の哲学を語り合っている様子だった。
男『それが俺の運命だったんだから、仕方ないだろう!』
男『努力はしたさ。でもこうなる事が決まってたんだよ!』
「……ね、これどう思う」
僕「え? なにがですか?」
「運命って……君は信じてる?」
212:
僕(赤い糸が運命ならば……)
僕「僕は信じる方ですかね」
「そっか〜……」
僕「……あ、えっと名前教えてくれませんか。なんて呼べばいいのか」
「あ、好きな名前で呼んでいいよ」
僕「好きって……どういう事ですかそれ」
「私、源氏名たくさん持ってるからさ〜。何かそれらしい名前なら大抵当たるよ」
僕「水商売の方ですか?」
「もう全部辞めちゃったけど。人間関係が嫌々になってね」
僕「そう、ですか」
「あ、運命の話だったね。私は信じたくないんだよね」
213:
僕「どうしてですか?」
「例えば……『初めて会った瞬間からこの人と結婚するんだって思った』これどう思うかな?」
僕「ああ、たまにそんな話は聞きますね」
「お客さんで多くてさ、そういう人。私の大嫌いな言葉なんだよね」
僕「大嫌い……なんですか?」
「そういう人って大抵、結婚を意識し出した年齢にいい人が現れただけ……ううん、いい人っぽいのが現れただけなのよね」
僕「?」
214:
「考えてみなよ。三十近くになって付き合ってる人がいない、これは焦るよね」
僕「まあ……」
「出会いなんて二十歳を過ぎたらどんどん少なくなってさ……確実に恋愛する機会なんて減っているわけよね」
「そこに少しでも良さそうな人が現れれば……必死になって物にしようとするでしょう。はい、運命の人の出来上がり」
僕「……」
彼女の考えも、今はなんとなくわかる気はする。
これが高校時代の自分だったら絶対に共感はできなかっただろう。
215:
「……その人がさ、例えば初恋の人だったり早い時期で結婚したりしたら、それは運命の人かもしれないよ?」
「でも男なんて、大抵はその場だけ誤魔化して次の日にはポイ。そうやって都合のいい女の子探して……いつの間にかおじさんになってくのよね」
僕(少し耳が痛いけれど……)
何か、男性に対して過去によくない事があったみたいだ……。
「……まあ、グチグチ言っちゃったけどさ」
僕「?」
「君はまだ若いんだからさ、まだ悩めるだけ贅沢だって事よ?」
216:
なんかこうキュンと来るな
217:
見てますぞ
218:
「正確には……悩むだけの選択肢があれば贅沢、って事かもね」
僕(選択肢も何も、僕には糸があるから……)
僕(糸? また僕はこの赤い糸だけを頼りに旅をする?)
「自分に話しかけてくれる人がいるうちは、幸せよね。本当の一人になったら……私みたいに全部捨てて故郷に帰るしかなくなるんですもの」
僕(この数日間、僕はこの糸しか見ていなかった)
僕(確かに、糸は僕を導いてくれるのかもしれない。冬にも会えた、僕を暖かい気持ちにしてくれた)
僕(でも……)
219:
僕(僕は結局、冬の事なんて見ていなかった。女だって……ただ糸が伸びていないだけで何も関係ない、みたいな扱いしちゃってさ)
僕(……そうだよ、女の事だからあれから一回は僕の家に来たのかもしれない。彼女は僕を病み上がりだとずっと思っている)
僕(病気になんてなってないのに……)
僕(冬だって……僕は彼女を泣かせる事しかできなかった。糸が見えなきゃだめなのかよ、そんな物が無くちゃ……恋愛できないのかよ)
僕「僕は……」
「君は……まだ若いんだから」
220:
「その選択が正しいか、間違ってるかなんて誰もわからないよ」
「長く人生を謳歌してさ、死んじゃいそうになるちょっと前に後ろを振り返ればいいじゃない」
「あ、間違った道にいったら早めに振り返るんだよ。私みたいに……周りが敵ばっかにならないうちに、ね」
僕「お姉さんも、まだ故郷に帰ってやり直せるなら頑張れば……」
「ね。私も振り返るのはもうちょっとだけ……」
221:
おもしろい、支援
222:
「ん、部屋に帰っちゃうの?」
僕「はい、明日早く出ないといけないので」
「そう。予定なんてそんなものよね」
僕「ですね」
「映画どうするの。まだまだ途中だよ?」
僕「いいんですよ、僕は結果を知りたいわけじゃないんですから」
「ふふっ……じゃあ、おやすみ」
僕「はい、おやすみなさい」
……。
先ほどまで語り合っていた男女は、今ではお互いを抱きしめあい眠っている。
この後、過去の男と関係を持った人物が現れるのだが……僕が見た場面は、そこまでの事しか知らない。
その映画の結末を……僕が知る事は、なかった。
223:
……。
冬「いってきます」
あれから二日が過ぎた。
少しだけ寒さの増した通学路を、藍色のマフラーをして歩いていた。
冬「……」
朝学校に行って、夕方にまたこの町に帰ってくる。
それだけの道……のはずだった。
冬「あ……」
一目だけで、私の全てを奪っていくあの人が現れなければ。
今日の通学路も、平凡なままで……終わってくれていたのに。
226:
「見つけたんだ」
うん、なんとなくわかるよ。
顔付きが違っているもの。
「冬には、言っておかないといけない気がしてさ」
そんな事気にしないでいいのに。
早く電車に乗って……私の元から離れてよ。
「……風邪ひかないでさ。マフラー、それはあげるから」
ありがとう。
まだ私に、繋がりを残してくれるんだね。
マフラーを見るだけで泣きそうなのに。
これをあなたに返したいから、毎日学校にしていこうって決めたばかりなのに。
228:
「じゃあ……元気で。ありがとう冬」
「私の方こそ、素敵な冬の思い出をありがとう。一緒に……食べたご飯、と……ても……美味し……」
「冬……」
「バカ……バカ……バカぁ……」
最後でいいから、抱きしめて下さい。
最後でいいから、このマフラーに少しでもあなたの匂いを残して下さい。
最後でいいから私とこの景色を見て……。
最後なのに……私は何も言えませんでした、ただ泣いて彼を困らせていただけでした。
彼が残したマフラーを首に巻きながら、今日も私は彼がこの町に帰って来るのを……待っています。
229:
……。
ピンポーン。
ピンポーン。
女「僕ちゃん〜。いる〜」
ガチャッ。
僕「お、おんなああぁ……たすけて……」
女「言ったでしょ! 病み上がりで遊び回っちゃダメだって! バイトはどうしたの?」
僕「バ、バイトはや、やめたから平気……あ、あたまいたい……」
女「ほらほら、暖かくして。今お粥作るからさ」
僕「あ、ありがとう……」
女「ふう……風邪ひきっぱなしだね、僕ちゃんは」
230:
女「はい、あーんして」
僕「あー……」
女「早く元気になってね? あ、当分外出だよ。一人旅行に行ってたなんて、全く……」
女「仕事が忙しい時に限って連絡してくるんだもの。もう、ワガママ僕ちゃん」
僕「……ワガママは、やっぱ嫌?」
女「ううん、大変な時は言ってくれていいんだよ。今まで殆どそんな事話してくれなかったからさ」
僕「女……」
女「えへへっ、だから今は嬉しいんだよ。素直に話してくれる僕ちゃんがいて」
女「私も、たまには……辛い事吐いちゃうかもしれないから、ちょっと不安だけどさ……」
232:
僕「ねえ、女はどうしてそんなに優しくしてくれるの?」
女「……素直にお話できる人がいるって幸せなんだよね。その感謝を少しでも伝えたいから」
僕「僕は何もしていないよ……」
女「こうやって話せるだけで幸せなんだよ」
僕「……」
女「ね?」
僕「うん……そうだね」
女「……ふふっ。ね、小学校の頃、遊んだ話覚えてる?」
僕「……?」
233:
なんかいいな
235:
女「忘れちゃった? ほら、昔指切りが流行った時期があってさ」
僕「何かあったっけ?」
女「女の子の間で、指切りする時に赤い糸を巻くと恋愛が叶うって……」
僕「赤い……糸?」
僕の小指から、糸が見える事はもうなくなっていた。
最後に冬と会った時には、もう確実に見えなくなっていたのを覚えている。
女「私、僕ちゃんにおまじないしたんだけどな〜。ね、ね、覚えてない?」
僕「……忘れたよ」
女「むう〜……」
彼女が幼い頃に、僕の指に糸を巻き付けたから?
赤い糸が消えた僕にとって、それはもうどうでもいい事だった。
236:
僕(赤い糸や運命なんて見えなくても)
僕「ねえ女。もう一回指切りしようよ」
女「え? 今?」
僕「うん、赤い糸なんか見えなくてもさ」
女「そ、そう……だね」
僕「……はい小指」
女「ん、なんか改めてすると恥ずかしいかもね」
237:
僕「じゃあ、はい。指切りげんまん……」
二人の小指が優しく絡まって、指の表面に……赤い、糸のような物体が浮かんだ、ように見えた。
僕はその赤を見ていた。
彼女は僕の顔を見つめている。
大切な人はここにいる。
ニ十年近く前のおまじないを思い出しながら……。
僕たちは、見えない赤い糸を……結んだ。
238:
あ、今気づいた。今回もちゃんとスレタイにつかまえてが入ってるんだな
支援
269:
>>238
ほんとだ、すげえ
256:
>>238
ほんとだ。
気づかなかったわ。内容がつかまえての人、みたいだとはおもってたけど。
239:
二年後
……。
冬「ふう」
右「冬〜。帰ろう帰ろう」
左「帰りに喫茶店行かない?」
冬「あ、ごめんね。私これからバイトあるからさ」
右「またバイト〜? 大学の授業だってまだ楽じゃないんだからさ〜……バテるよ?」
冬「いいの。今は元気なんだから、体調悪くなったら休むの」
左「そっか、無理しないでね?」
冬「うん、ありがとう」
右「じゃあアタシたちは帰るからさ、またね〜」
左「バイバイ〜」
241:
また冬が来ました。
あなたがいなくなってから、二度目の冬です。
私はマフラーのお陰で風邪をひくことなく元気に過ごしています。
今は大学に通いながら、アルバイトでお金を貯める日々を過ごしています。
私もあなたみたいに、一人で旅をしてみたいから。
何かを探して、見つけたよ、と言ったあなたの顔がいまだに頭から離れてくれません。
243:
お酒を飲めるようになってから、あなたが話してくれたように、大量(私にとっては)のお酒を飲んでみましたが……赤い糸なんかは現れませんでした。
変わりに二日酔いと言うものを経験出来たので、お酒をたくさん飲む人の気持ちを少しは理解できたのかな、とも思います。
あと一年か二年するまでは……今のままの生活を頑張りたいと思っています。
もう一度会えた、その時は……。
こんな風に、たまに書いている手紙を渡す機会なんかが出てくるかもしれませんね。
もう、マフラーだけを抱きしめて待っている日は……終わりです。
244:
……。
冬「今日はこんなとこかな」
冬「明日も頑張ろう……会いにいくからね。おやすみ……なさい」
冬(彼からうろ覚えで聞いた駅……)
冬(住んでいた街の名前)
冬(絶対、もう一度……少ない手がかりだって)
冬(私は……彼に、会いたい)
……。
眠った彼女の右手の小指から、ゆっくりと赤い糸が伸び出している。
それは真っ直ぐに……彼女が会いたい彼の元を目指していた。
僕が次はいつ、どうやって彼女と会う事になるのか……。
それは、赤い糸を見る事が出来るようになった、彼女だけが知っている。

247:
おつ、今回も良かったよ
248:
おつ
小説の結果を求めてしまうがそれは多分野暮なんだろうな
次回あったら期待
246:

ところで、幼馴染の女と男はどうなったんだ?
249:
読んでくれた人、保守してくれた人ありがとう。
>>246
仲良くやってます。
冬に気をとられて、書かないまま終わってしまいました。
250:
おつ
いいもの読ませてもらいました
252:

なんか久しぶりにほっこりした
254:
終 → 糸 + 冬
つまり、赤い糸は冬に繋がってたってことだ
268:
これ読んで胸がキュンってなった
おかげで仕事に手がつかない、どうしてくれる
恋してえなあ
274:
>>1
「つかまえて」以外でなんか書いてた?
雰囲気にたやつ見た気がするんだがおもいだせん・・・
276:
>>274
少女「ねえ、雨って好き?」
女「余ったお金でガチャガチャやっていい?」
どっちも短いのです。
262:
おい
今から会社飛び出して旅したくなったぞどうしてくれる
26

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