男「魔女?呪いの枕?」back

男「魔女?呪いの枕?」


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1:
男「爺ちゃん何これ…」
祖父が旅先の外国から帰ってきたということで俺はその荷物整理に貴重な仕事の休日を削がれていた。
俺の祖父は70を過ぎてるとは思えないほどかなりアクティブな人でよく海外に旅に出るほどの人だ。
爺「あーそれな、旅先の骨董市で買った土産じゃ。荷物整理の礼じゃ、欲しいなら譲ってやらんこともないぞ」
男「ボロボロのクッション?ってか枕?にしか見えないんだけど。一体今度は何に騙されたの」
爺「フッフッフッ…聞いて驚け男よ…それは昔魔女が使っとったと言われておる呪いの枕らしいぞい」
男「魔女?呪いの枕?」
               
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2:
男「…なんだそれ。また随分と胡散臭いもん掴まされてんな。で、どんな呪いなの?」
爺「なんでも魔女が宿っておってな、それを使って魔女と契約した人間は自らの寿命と引き換えに漠然とした『幸』を得ることできるらしいのじゃよ」
男「…ふーん」
男(おとぎ話の悪魔みたいな感じか?あの、命と引き換えになんでもする的な…)
               
          
3:
爺「おっ!少しは興味が出てきたか?」
男「少しな。で、爺ちゃんはこれ使ったことあんの?」
爺「そ、そんなおっかないもの使ったことあるわけないじゃろ!今わしが使ったら幸せを感じる間もなく死ねるわい!」
男「なんで買ったんだよ…」
爺「まぁノリじゃな」
男「ノリかよ。じゃあこれ貰って行っていいの?」
爺「じゃあ3千円くらいでどうじゃ?」
男「金取るんかい!」
結局俺はしぶしぶ祖父に3千円を渡してその呪いの枕を譲ってもらった。
呪いとか魔女とか信じてないけど、そんなものにも頼りたくなるほどこのときの俺は病んでいたのかもしれない。
               
          
4:
それはある日の会社の友人との会話がきっかけだった。
友「この先、生きててもぜってーいーことなさそうだよな〜。宝くじでも当たらない限り」
男「結婚でもすれば?」
友「ぜってー嫌!結婚とかそれこそ人生の墓場だろ。ただでさえ仕事がおもしろくねーのにその日々のストレスを発散する自由な時間すらも縛られるんだぞ?それ考えてもまだ結婚とか言えるのか?」
男「言いたいことは分かるけど…」
勤務中の昼休み、俺と友はコンビニのベンチで缶コーヒーを飲みながらだらだらとしていた。
               
          
5:
友「やっぱり人生20代くらいまでエンジョイして30入った瞬間死ぬのが丸くね?」
男「まぁ結婚する気ない人はそうかもな。その年になったら考え変わるかもしれないぞ?」
友「そうなってからじゃおっさんだろ。もう可愛い子と結婚なんてできないだろ」
男「だから今から彼女とか作っていくんだろ?」
友「なんでお前そんな上から目線なの?お前も彼女いないじゃん」
男「それをいうなよ」
友「プッ」
男「ハッ」
男・友「「アッハッハッハッハッ!」」
男・友「「ハッハッハッハッ…」」
男・友「「はっはっはっ…」」
男・友「「はぁ〜」」
男・友「「………」」
友「…戻るか」
男「そうだな…」
               
          
6:
仕事を終えて自宅のアパートへと帰る。
疲れた身体で吸い込まれるようにベッドに大の字に転ぶと天井を見上げて一人ぼーっとしていた。
男(そりゃ30来た瞬間コロッと死ねるならな。今のままで全然問題ないけど)
生まれてからずっと人生が楽しいことと幸せなことで埋め尽くされていてそのまま死ぬ人なんてのはいないだろう。
少なくともみんな生きていたらどこかでは絶対辛いしんどい思いをしているはずだ。
ひとたびテレビの電源を入れると人生が輝いてそうな人たちがいっぱい映っているが、その人たちもその場に立つまでにきっと沢山の苦労をしてきているに違いない。
「金メダル〜!金メダルです!」
男「ほー、すげーな」
だから俺程度の20代の若造が今を楽して生きていたいなんていうのは甘えなのだろう。
               
          
7:
本当は世間からしたら今は一生懸命キャリアを積まないといけない時期だ。
そしてその先でいっぱい稼いで、家庭を持って、管理職に就いて、子供の成長を見守り、いつかは孫の顔を見て…
…ってちょっと待て。
男(それ、俺は本当に楽しいか?)
その人生が本当に楽しいとは思えない。
だから20代でマックスエンジョイして30代で死ぬのが丸い。また振り出しに戻ってしまった。
男(無限ループって怖くね?)
男「…んあ?電話だ。誰からだろ」
男「…爺ちゃん?」
               
          
8:
…………
というわけで今に至るわけだが。
男「ほい帰宅っと」
帰りに晩飯のためにスーパーで買ってきた鶏肉やら野菜やら卵やらを冷蔵庫につめると、持って帰ってきた枕を床に放ってじっと見つめ、なんだか冷静になってきてしまった。
男(あのときは勢いでこんなものひき取っちまったけど…これ下手したらボロ雑巾並じゃね?こんな薄汚れたもの頭に敷いて寝ようとか思わねぇし。古すぎてヘタに洗ったら逆にもう使い物にならなくなりそうだ)
               
          
9:
男(うわっ、貴重な休日と三千円を失ったって考えたら急に死にたくなってきた)
男(今同じ心境の友にならまた三千円で売り直せるかもな…なんて)
男「おーい。枕さんやーい俺に幸せを与えてくれよ」
試しにその魔女とやらに語りかけるつもりで枕に言葉を放った。
男「…出るわけないよな。あほくせー。とっとと晩飯食って風呂入って寝よう」
俺は魔女の召喚(?)を諦め晩飯の支度に取り掛かろうと台所に向かった。
               
          
10:
…………
ドラマを見ながら晩飯を食べ終えると風呂に入りベッドで布団に籠る。
ああ、また休日が終わる。
そしてまた仕事が始まる。
抜け出したくてたまらない。この平穏という名の小さな地獄の檻…。
男「はぁあ…」
俺の目の前には黄ばんだ枕がひとつ。
この布と綿の塊に超常的力などないと分かっていながらもベッドの上に置いてしまったのは、やはり心の隅でその効力を期待しているからであろう。
そんな自分が嫌になってまた己の中の何かが曇った。
               
          
11:
寝る前にこういう鬱な気持ちになると決まって思い出すのは中高時代の思い出ばかり…。
それも対して楽しくもなかったのにだ。
男「なんだよ、出てくんなよ」
別に後悔したことなんて一度もない。
大した黒歴史など作った覚えもない。
俺はつまらない人間だったのか、なんとなく中高生時代から黒歴史は作ると後で自分の毒になることを知っていた。
だから穏便に、穏便にその時間を過ごしてきたのだ。
………分かっている。
今はそうしてきたことがかえって自分を蝕む毒になってるってことくらい。
               
          
12:
男「…ん?」
瞼を閉じているわけではないのに視界が霞んで安定しなくなった。
男「あー、くそっ…」
目から溢れた液体を頭の下の枕が吸った。
もうむしゃくしゃしてきて目の前の臭そうな布を抱き寄せた。
電気を消した暗闇、埃っぽい臭いがする中、小さく呟いた。
男「はぁ…死にてぇ…」
そのときだった。
               
          
13:
男「ッ!?」
急に枕が白く発光した。
暗い部屋の中の突然の出来事に思わず目を瞑る。
30秒ほどそのままだったが瞼越しに光が落ち着いたのを確認してゆっくりと目を開けた。
すると最初に違和感を感じたのは嗅覚。
先ほどまでの埃っぽい臭いとはかけ離れている、ホットミルクのような優しい香りがした。
続いては目の前に広がる幼めな少女の顔、眠るようにして目を閉じているが高級な西洋人形のようなさらさらとした長い髪に可憐な容姿、暗い部屋の中でも分かった。
そして紺色っぽいローブを身にまとっている。
               
          
15:
男「な、なんだよこれ…」
俺は何故かその子をしっかりと抱きしめていた。
俺がさっきまで抱いていたボロボロの枕はどこにもない。
男「もしかして…」
いや、とても信じられないが…
男「魔女…?」
それしかない。
男「……」
男「…にしても可愛いな」
男(って何考えてんだ俺!こんなの下手したら犯罪だぞ!?)
男(犯罪…?いや、魔女だったらセーフ…?)
男(セーフって何がセーフなんだ?もうなんかいろいろ訳わかんなくなってきたな)
部屋の中で少女のすぅすぅという静かな寝息だけが聞こえる。
息が顔に当たり、どこか変な気分になった。
妙にドキドキする…そんな感じだ。
               
          
16:
「ん、ふぁあ〜…」
男「ひっ!」
謎の少女は目が覚めたようで突然あくびをし始めた。
思わず抱いていた手を離す。
「なんだ…?お前はもしやそういう趣味の者か?」
男「へ?」
意外すぎる第一言目に唖然とするが、少し間を置いて自分にあらぬ疑いがかけられていることに気がついた。
男「い、いやいやいや違う!違うんだって!枕を抱いてたらいきなりお前が出てきて!」
「くっくっくっくっ…おもしろいおもしろい。冗談だ冗談。そんなことは分かっておる」
「そうしなければ私は出てこれんからな」
男「ってことは…やっぱり、魔女?」
魔女「ああそうだ。私がこの枕の中に潜む者、魔女だ」
               
          
18:
どうやら予想は当たってたようだ。
男「マジかよ…でもなんか意外だな。魔女ってもっとしわしわのおばあさんみたいなの想像してたわ」
魔女「まぁ、まともに生きていたらそうなっておったかもな…今は訳あってこんなちんちくりんの子供のような身体だが、本当の私はスタイルにはそこそこ自信のある大人の女性だったのだぞ?」
男「……」
彼女はそう語るが今目の前にあるおうとつの少なそうな華奢な身体からは到底想像もつかない。
魔女「む…ほ、本当だぞ…」
俺の視線を感じ取ったのか魔女は顔をしかめてそう言った。
               
          
21:
男「…まぁそれは置いといて。命と引き換えに幸せをくれるって本当なのか?」
魔女「んー?何故かそう謳われておるな」
男「そうじゃないのか!?」
冗談じゃない。
こっちは仮にもその『漠然とした幸』のために枕を引き取ったというのに。
魔女「今回私を呼んだのはお前だろ?お前にそのつもりがなくとも生命を頂くがな。せっかくの久しぶりの契約者だ、逃すわけにはいかんからな」
男「い、一体どうやって…」
さっきまで残りの人生なんてどうでもいいと思っていたのに、仮にも動物の本能だろうか。急に身体が震えだした。
魔女「そう恐ることはない。目を閉じて、私にその身を委ねよ」
小さな少女の手のひらが俺の目を覆った。
               
          
22:
男(い、一体何が始まるんだ…?)
そうは言われても震えが止まる気配はない。
全身から汗も出だした。
本能は絶えず俺に身を守れと叫んでいる気がする。
魔女「そうだ…そう…そのままでよい…」
魔女の吐息が顔にかかる。
彼女がだんだんこちらへ迫っているのが分かった。
男「っぅ!」
ついに耐えられなくなった動物の本能が俺の意思とはほぼ無関係に動き出し、魔女をベッドから突き落とそうとした!
……が
男「!?」
男(なんだこれっ!身体が動かないっ!)
魔女「むぅ…最初はやはり仕方ないな。すまんが魔法でちとお前の動きを封じた」
魔女「どうか安心してほしい。痛いことはせぬ…」
               
          
23:
魔女「んむっ…」
男「んむぅっ!?」
それは、初めての感触だった。
自分の唇に、自分以外の他人の唇が重ねられている。
魔女「んっ…ちゅっ…」
男「んっ…ふぁ…」
自分の中から何かが吸い取られていく感じがする…だがそれと交換するように入って来るのは頭が真っ白になるほどの快楽だった。
体全体がふわふわして、このままどこかへ飛んでいってしまいそうな…そんな感覚。
男(人間は死ぬ寸前、とんでもない量のドーパミンを分泌するとどこかで聞いたが今俺が感じてるのはその一部なのか?)
一瞬で理解した。
『漠然とした幸』の正体を。
               
          
24:
魔女「ん、ぷはっ…」
男「はぁ…はぁ…」
魔女「ふぅ…これでまた1日はこの姿で生きれる」
男「お、終わったのか…?」
魔女「うむ。これでお前の1年の寿命と引き換えに私は1日この姿で生きることができる」
男「1年!?今ので俺の寿命は1年も縮まったのか!?」
魔女「そうだ。お前くらいの年ならあと2ヶ月もこれを繰り返せばぽっくり逝けるな」
魔女「だがお前もそれを望んでおるのだろ?」
男「……」
どう返していいか分からなかったがとりあえず頷いておいた。
なぜか『そうだよ』と言葉にすることは、どこか自信が持てなくてできなかった。
               
          
25:
魔女「永い時を生きていく中で私もそこそこ有名になったものだ。もう私の仮の姿を抱く者など死を望むものだけとなった」
男「…ということは俺以外にも契約した人が何人もいるってことか?」
魔女「そうだな」
男「なんかただ悪戯に人から命を奪ってるってわけじゃなさそうだな。どうしてそんなことを?」
魔女「お前は死んだらどうなると思っておる?」
男「へ?天国か地獄に行って…転生…とか?」
子供のころ母親に魔女と同じような質問をしたことを思い出した。
そのとき母はそう教えてくれた。
               
          
27:
魔女「私は…そんなものはないと考えておる。死んだら『無』だ」
魔女「死後の世界など誰にも分からぬが、少なくともその天国と地獄とやらは生きておった者らが考えたものだ」
男「それは…そうかもな」
魔女「私は、死ぬのが怖いだけなのだ」
男「死ぬのが怖い?」
魔女「そうだ。だから普通に生きていたときは永遠に生きる方法を研究し続けた」
魔女「そしてやっと辿り着いた答えがこの方法なのだ。まぁ契約者がおらぬあいだは魂を保存する器が必要だからな。あの枕にこもっておるが…枕の中は狭くてな…魂の一部しか保存できんかった」
男「で、そんな姿になったのか」
魔女「この魂保存の術はやはり運命に逆らう魔術。この姿のままなのも、1年の寿命で1日しか生きれぬのもそういうことなのかもしれんな。実は自分では実感がないが精神も一回り幼くなっておるかもしれん」
               
          
29:
魔女「…まだ名前を聞いておらんかったな。名はなんと?」
男「男だけど」
魔女「そうか男か。私は魔女、まぁ好きに呼べ」
男「…ん?」
ふと時計を見ると針はもう深夜0時を回っていた。
男「やばっ!明日…ってか今日も仕事だしもう寝ないと!」
魔女「そうかそうか。ならもう眠るとよい」
男「お、おう。じゃあ、おやすみ」
魔女「ふふ…抱いてもよいぞ」
男「はっ、はぁ!?」
魔女「なに、変な意味はないぞ」
男「っ!」
魔女に妙な煽りを受け、つい契約のときに交わした口づけを思い出した。
魔女「今の私は、所詮枕だからな」
本気で言ってるのか冗談なのか…
どちらにしても少女の姿にしては異常なほどの余裕っぷりだ。
今まで何人もの人間と契約してきたと語っていたが…
やはりああいう経験も豊富なのだろうか…
               
          
30:
男「かっ、からかうなよ!子供に手ぇ出すほど飢えてねーしっ!」
そうはいいつも己の中で見え隠れする劣情がちらつく。
彼女から気をそらすために俺は反対に寝返りをうった。
男「もう俺は寝るからなっ!寝るんだからな!」
俺は瞼をぎゅっと閉じて必死に意識を無きものにしようとした。
だが魔女のさらなる追い打ちがそれを許さない。
彼女は俺の背にぴったりとくっつき、腕を前にまわしてきた。
まるで俺を抱き枕のようにして。
男「なっ、ななな何やってんだよっ!やめろよっ!離せよっ!寝れないだろっ!」
魔女「…そう冷たいことを言うな」
魔女「他人の温もりを感じているとき、私は改めて人間として生きていると感じられるのだ。少しくらいいいだろう?」
ただからかっているのかとも思ったが彼女のどこか寂しそうな声を聞くと
男「そ、そうか…」
強く拒否することもできなくなった。
俺が枕から呼び出したそれは、最初に想像したおとぎ話の悪魔のような存在ではなく、とても人間らしいものであった。
               
          
31:
…………
男「ふぁあ…朝か…」
男「なんか妙に寒いな」
目覚まし時計の音で起きた俺はベッドから降りて仕事に行くため着替え始めた。
いつもの流れだ。
また今日が始まる。
男「ん?」
そこであることに気づく…
男「あれ?魔女?」
魔女の姿がない。
もちろんボロボロ枕もない
               
          
32:
男「あいつどこ行ったんだ?」
着替えて部屋を出ると、台所の方から目玉焼きの乗った皿を持った魔女が出てきた。
魔女「おお起きたか!朝食を作っておいたぞ。食べろ」
男「え…」
俺は朝は食べないタイプだとかまぁそんなことは置いといて。
男「何やってんだ?」
魔女「仮にも契約したのだ。これくらいはな。材料は冷蔵庫にあるものを適当に使わせてもらった」
男(そういうもんなのか?)
男「ってか現代の電化製品とかいろいろ使えるのな。昔の人だからいろいろちんぷんかんぷんかと思ってたが」
魔女「同じような生活環境の人間と何人か契約していたからな」
魔女「まあ、火くらいなら魔法で出せるがな。ほい」
そう言うと彼女は人差し指に火の粉を出して見せた。
               
          
33:
魔女「今まで無意識の内に海を渡りその先々で様々なことを見たり経験したりもしたからな。あらゆる生活にも対応してきた。言語も大抵は読み書きできる」
男(おおすげえ…やっぱ魔女ってすげぇんだな)
男「とりあえず、ありがと…明日からは作らなくていい」
魔女「む、なぜだ!?食べる前からそんなことを言うな!ちゃんと美味いんだからな!味見もしたぞ!」
魔女「何度も言うが私は中身は立派な大人だ!料理くらい…」
男「あーいやそうじゃなくて。俺、朝は食べないタイプだから」
魔女「ふぇ?そうなのか?朝は食べた方がよい。元気が出んからな」
男「別に食べなくても元気だから食べないんだよ」
とりあえず机に魔女から受け取った皿を置いて一口…
男(あっ、おいしい)
普通の目玉焼きだけど。
               
          
34:
魔女「その顔なら味は大丈夫そうだな。明日からも作ってやる」
男「…だから」
魔女「いいか?食は人間にとって生きて行く上で欠かせんことの一つだ。そして人間の生活は基本朝から始まるもの、1日の生活の始まりに朝飯は欠かせん、欠かしてはならないものなのだ!」
男「……」
男(急に歳とったおばあちゃんみたいなこと言いだしたな。…中身はそんなもんか)
魔女「分かったか?」
男「…明日からも頼む」
なんかもういろいろ面倒なのでここは甘えておくことにした。
魔女「うむ、任せろ!お前が死ぬまで朝飯はこの私がつくろう」
               
          
35:
皿の方に向き直りまた目玉焼きを食べ始めると皿が一つしかないことに気がついた。
男「…むしろ魔女は食べないのか?」
魔女「私はよい。お前の生命さえあれば生きていける。どうせ契約者の供給がなければ姿を保てんからな。食べても食べんでも同じだ」
男(人にはああは言うのに自分は大丈夫だと言うところもおばあちゃんっぽい…)
男「ごちそうさま。じゃあ仕事行ってくる」
魔女「うむ」
男「あっ、どうしても腹減ったら適当になんか食っていいからな!」
それだけ告げると俺は家を出た。
魔女「…見る限り追い詰められている様子はないと思えるが」
               
          
36:
…………
昼休み、またコンビニのベンチで俺と友は缶コーヒーをちびちびと舐めながらだべっていた。
男「あのさー…」
友「んー?」
男「例えば悪魔を召喚できるとしてよ?」
友「ブッフォ!」
そこまで言ったところで友は缶コーヒーを吹いた。
               
          
37:
男「俺なんかおかしいこと言ったか?」
友「ゴッホ!ゴッホ!いや、だってお前…悪魔って…」
手元についたコーヒーをコンビニのお手拭きで拭く友の口元はヒクヒクとしていて常に半笑いだ。
友「何?遅れてきた中二病ってやつ?」
男(そうか)
俺が今言っていることは昨日の夜までの俺なら絶対に信じていなかったことだ。
それが昨日の夜の出来事で信じられるようになった。いや、信じざるえなくなったという方が当てはまるか?
とにかくそうなったから今は真顔でこんなことを言えるわけで
もし昨日にでも友が電話でいきなりこんな話をしてきたら友ほどのオーバーリアクションはないにしても『何言ってんだこいつ』くらいには思っていただろう。
男「もしもの話、もしもね?」
               
          
38:
友「あー、はいはい。で?悪魔がどうしたって?」
男「いや、よくおとぎ話で『お前の寿命と引き換えにお前の願いを叶えてやろう』的な展開あるだろ?」
友「あるな。ま、王道だな」
男「お前ならなにお願いする?」
友「うーん。そんときになってみないと分からないってのが素直なところだが。まぁ、今なら金!女!名声!とか?…なんつって」
男「王様にでもなるつもりかよ。友らしいや」
友「お前は?」
男「俺はなー『幸せが欲しい』…って言ったわけではないんだけどなんか幸せが貰えるらしい」
友「は?なんだそりゃ?」
               
          
39:
男「あーごめん。また変なこと言った」
友「幸せってお前なんかパッとしねーな。んなもんみんな欲しいに決まってるだろ。幸せってのはさー…なんかこう、人それぞれだから、自分で掴みにいくもんじゃね?」
友「でも場合によっては今の自分にはすぐには掴めそうにないから、そのための金と女と名声よ。俺はそれらを使って幸せを掴みにいくってわけよ」
男「なるほど」
友「……」
友「…どした?なんか今日のお前変だぞ?」
               
          
40:
男「あーいや俺実はさ…」
男「……」
友「?」
『あと二ヶ月で死ぬかもしれない』
言えるわけがなかった。
男「ごめんなんでもない」
友「はっはっ、なんか病んでんな」
男「そうかもな」
友「あのさ」
男「ん?」
友「なんかマジで困ったことあったら俺に言えよ?相談ならいくらでも乗るからさ」
いつもへらへらしてる友だったが、そう言った彼の顔は今までにないほど真剣な目をしていた。
               
          
41:
男(やば…なんな変な心配かけちゃったな)
男「まぁ、万が一にでもそうなったらな!今はマジで何もないから!」
友「そうか。ならいい」
男「…戻るか」
友「そうだな」
男(やっぱこのまま死ぬのは…なんかな…)
『魔女との契約は、考え直す必要があるかもしれない』
そう思った。
               
          
42:
…………
男「ただいま」
魔女「おお、帰ったか」
男「風呂入ってくる」
魔女「そうか、なら私は夕食の準備をしよう」
男「そこまでしなくても…」
魔女「よいよい。はよう行ってこい」
俺は魔女に背中を押されるようにして風呂場に連れてこられた。
               
          
43:
男(いくらなんでも優しすぎないか?)
これは何か裏がありそうだ。
そう思うのが自然なくらい。
男(だってお前、いくら契約者ったっていきなり目の前に現れた他人にここまで尽くすか?普通)
本当のところは、理由が必要だった。
契約を考え直す理由が。
               
          
44:
もやもやしながらシャワーを浴びること20分…
いきなり後ろの風呂場の入り口がガチャリと開いた。
男「いっ!?」
魔女「ふっふっふっ、私が背を流してやろう」
そこにはタオル一枚以外何も身にまとっていない魔女の姿があった。
男「どうしたんだいきなり、ってかさっきまで晩飯の準備するって…」
魔女「それならもう終えた」
動揺する俺に落ち着く暇も与えずズカズカと中に入ってくる魔女。
彼女は俺の後ろから小さな両手を俺の両肩にぽんと置くとにやりと笑った。
その微笑は今の俺にはどこか裏のある表情にしか見えない。
男(俺は騙されんぞ)
早探ってみることにした。
               
          
45:
…………
人に背中を流されるのは身内以外では初めての体験だった。
魔女「どうした。さっきからだんまりだぞ?」
魔女「緊張せんでもよいというのに」
男「あの、さ。絶対裏があるよな」
魔女「裏とな?」
男「だっておかしいだろ。昨日会ったばっかの野郎にこんな優しくする理由なんかねーだろ?」
魔女「もし私に裏があるとして、それがどうかしたのか?」
男「…裏の内容によっては契約をやめる」
魔女「ふむ」
               
          
46:
魔女は少し考えてから観念したかのように言った。
魔女「ん…バレてしまっては仕方ないな」
男「やっぱなんかあんのか。おかしいと思ってたんだよ」
先ほどのシャワーで流したばかりの汗が出た。
何か悪いことを企んでいるのならもう少し足掻いてもおかしくはない。
それなのに彼女は簡単に観念した。
男(やばい…契約切るために探ってたのに、ここでワンチャン死んでもおかしくないぞこれ…)
さすがに聞き方が直球すぎた…
               
          
47:
魔女「その、なんだ。契約者から生命を吸い取るときに仮にも接吻するわけだが…」
男「え?あ、ああ…まぁ、まあな」
魔女「人間はあらゆる生物から生命を授かって生きておる。そしてその生命の通り道となるのは飲食で主に使うこととなる口だ」
魔女「あらゆる方法を試してみたが一番手軽で確実なのは口を通すことであった。それは仕方ないとして」
また昨日のあれを思い出してしまった。
男(いかん、今は思い出すな)
今はいろいろマズい。そう、いろいろ…
魔女「ただただ偉そうで嫌味な女とはそんなことしとうなかろう?」
魔女「それだけだ」
男「え?マジでそれだけ?」
               
          
48:
拍子抜けだった。
正直俺は
…………
魔女『バレてしまっては仕方ないな。今ここでお前の生命を全て貰い受ける』
男『うわああああああ!!!!』
…………
みたいなことになるとこまで覚悟していたのに。
魔女「契約者の方から見捨てられ1日も放置されれれば私は終わりだからな」
魔女「いったであろう?私は生きたいだけだと」
男「……」
               
          
49:
魔女「男よ、もしまだ契約を切る気がないならこちらを向け」
男(いやしかし今の魔女はタオル一枚なんじゃ…)
魔女「むぅ…優柔不断な奴め」
魔女は不意に立ち上がると早足で俺の前に来てしゃがんだ。
男「うわぁっ」
魔女「今日はひとまず、よかろ?」
               
          
50:
男「うっ、え、えぇ…?」
小柄な体でうるうるとした上目遣い。
そして、目のやり場に困る格好。
俺の頭は、寿命1年くらいどうでもよくなっていた。
男「あ、あぁ…」
魔女「礼を言うぞ」
魔女はにっこり笑うと俺の首に手を回した。
彼女の笑顔を『可愛い』と思う暇も、タオルから手を離したことによって露わになった彼女の身体をまじまじと見る暇もなく、俺の視界は魔女の顔だけとなった。
               
          
51:
魔女「んちゅ、んっ…ん…ちゅっ…」
あぁ…またこれだ…。
頭がふわふわして…全てがどうでもよくなる…。
魔女「ぷはっ…」
俺と彼女の間で唾液の糸がゆっくりと風呂場のタイルに落ちた。
男「ハァ…ハァ…」
魔女「はぁ、はぁ…」
荒い息を立てて少し蕩けた顔でこちらを真っ直ぐと見つめる魔女…だったが。
魔女「さ、はよう身体を流して夕食を食べよ」
急にいつもの顔に戻ってタオルを拾うと立ち上がった。
男「え?え…?」
魔女「どうかしたか?」
男「あ、いやなんでも…」
俺はどこか悔しくなって風呂場のタイルをコツンと叩いた。
               
          
52:
…………
晩飯を終えて一息つくと俺と魔女はベッドに座っていた。
魔女「少し聞いてもよいか?」
男「なんだ?」
魔女「昨日お前は私に何故こんなことをしておるのかと聞いたな。お前はどうなのだ?何故死にたがる」
魔女「昼に少しばかり部屋を見させてもらったがここに原因はなさそうだったのでな」
男「ちょっと待てよ!勝手に部屋見んなよ!」
何故死にたくなったのかを改めて整理するまえにその言葉がでた。
魔女「その様子だと大した理由はなさそうだな。一度はたった1日で契約を切る方向も考えた者だ。予想はついていたが…まぁ、私としてはその方が困るが」
               
          
53:
男「大したことないなんて…んなことはねぇよ。勝手に決めつけんな」
魔女「ほーう。お前も多大な借金でも抱えておるのか?それとも想い人に裏切られたか?」
彼女が例を挙げた人間は、おそらく彼女が今まで出会ってきた人間だろう。
男「いや、そんなんじゃねーけどさ…」
男「俺だっていろいろ悩んで考えて…先の見えない、暗闇しかなさそうな未来の人生に絶望したんだ」
確かに例を挙げられた人間達よりかは俺の悩みなんてちっぽけで、それこそ鼻クソみたいなものかもしれないが…
社会の物差しで、軽々とはかってほしくはなかった。
               
          
54:
魔女「典型的な人生に何一つ本気になったことのない人間の末路だな」
男「なんだと!」
魔女「折角だ。あと58日、思いっきり本気で生きてみてはどうだ?」
男「は?」
魔女「何に対しても全力を尽くしてみろ、何か見えてくるかもしれんぞ」
男「そんなことして…馬鹿やって失敗したらどうすんだよ」
魔女「そのための私だろう?どうせ58日で死ぬなら関係ないとは思えぬか?」
男「…もしそんなこと言って、途中で俺が死にたくなくなったらどうすんだよ」
俺がそう言うと、魔女は急に俺の膝の上に乗った。
               
          
55:
男「っと…どうしたんだよ…」
魔女「そうならぬように私もお前に本気で尽くそう。お前が死ぬまで手放せぬ枕となろう」
魔女は一息でサラッととんでもないことを言い出した。
男「な、な、な…」
男「お前それ、どういう意味か分かってんのか?」
魔女「私はいつだって生きることに本気なだけだ」
男「あ…」
一度は軽くプロポーズをされたと焦ったが、彼女の言葉を聞くとさっきの言葉の意味はそんなものではないのだなと理解できた。
               
          
56:
男(どっちかっていうと)
男「餌貰うのに必死な野良猫みたいだな」
魔女「むぅっ!野良猫と一緒にするなっ!」
男「なんか膝と腕にすっぽり収まってるのもそれっぽい」
彼女の頭を撫でてやるとより一層猫感が増したような気がした。
魔女「あっ、これっ!猫扱いするなぁ!」
男「あー、なんかいいなこれ」
魔女「あぅ…むぅ…」
ずっとからかわれているように感じたが
ふくれっ面で悔しがる彼女を見ると少し勝った気になれた。
               
          
60:
…………
友「…なんか今日のお前は妙にエネルギッシュだな」
男「やっぱそういうのって見てて分かる?」
友「そりゃいつもあんだけ気だるそうに仕事こなしてりゃな」
男(なんだ。普段がだらしないだけか…)
友「で?今度はどういう心境の変化よ。昨日はまるで末期の病気が発覚したって顔してたくせによ」
男「偶には一日中全力でもいいかなって思っただけだよ」
友「お前…もしかして本当に…」
男「あー!いやいや病気とかじゃないから!」
男「ほら、俺いつもはダラダラしてるけどあれ実はなんの予定も楽しみもないからなんだよ!」
男「2ヶ月後にちょっと楽しみができてさ…それに向けて働こうと思ったらなんかやる気出てきたってだけ」
友「ほーん…そうか」
男「そっ、そうそう」
友は俺の言うことに納得した感じだったが表情は眉間にしわを寄せたまんまだった。
               
          
61:
男(そういうとこ無駄に鋭いよなこいつ…バレないようにしないと…)
友「昨日といい今日といい、とりあえずお前が俺に隠し事をしているのは分かった」
友「そしてなんとなくその隠し事の内容も分かった」
男「いっ…」
友「お前さ…」
男(何を言われても隠し通すぞ俺は…!)
友「女、できたろ」
男「…は?」
友「全くみずくせーなぁ!オイ!」
               
          
62:
…………
魔女「くっくっくっ…あっはっはっはっ!」
男「…笑い事じゃねーよ。お前のせいで変な疑いかけられたじゃねーか」
魔女「ぷっ…ふふ…いや…悪いな…ふふっ…」
男「どうすんだよこれ。どれだけ否定しても信じてくれないし。むしろあいつしょげちゃってさ」
魔女「ならば本当のことにすればよかろう?そういう面でも全力になればよい」
魔女「なあに。人間何事も全力でやれば案外なんでも無理も通るものだ」
               
          
63:
男「あのなぁ」
魔女「現に魂の保存を成し遂げた私からの言葉だ。説得力があろう?」
男「今のままだったら逆に無理だろ」
魔女「何故だ?」
男「もし俺が本当に彼女作ったとして、家に上げることができないだろ」
魔女「いまいち話が見えんな」
男「赤の他人に毎日朝晩作ってもらって背中流してもらってる一般独身男が今のご時世どこにいるよ!」
男「…しっ、しかもキスつきって」
魔女「!」
魔女「んっ…」
契約の接吻を強調すると魔女も恥ずかしそうに目線を下に逸らした。
何度も同じことをしてきたであろう彼女にそんな恥じらいはないと思っていたが…
               
          
64:
魔女「意外だな。お前から見て私など自殺道具としかみられていないと思ったが」
男「お前生きてる人間じゃん?流石に無理あるだろ」
ここまで言えば魔女も理解するだろう。
魔女「心配するな。もしお前が女を連れ込んだときは私はお前の家政婦を演じてやろう」
そんなことはなかった。
男「家政婦雇える奴がこんな仮もんのアパートの一室に住んでないって…」
俺は椅子に座ってやっと同じくらいの背丈になる魔女の頭の上に軽く手を置いてため息をついた。
男「飼い猫にしてはでかすぎるしな」
魔女「あっ…それやめろっ!」
男「あらよっと」
魔女「ふぇっ!お、おい…何を…」
少女の姿のそれを軽々と持ち上げて膝の上に乗せた。
               
          
65:
魔女「…子供に手を出すほど飢えてはないのではなかったのか?まぁ…私は子供ではないが…」
何故か焦り気味の彼女を無視して質問する。
男「なぁ、魔法の力とかで猫の姿にはなれないのか?」
魔女「む…それは無理だ」
男「『何事も全力でやれば無理でも通る』ってのは…誰の言葉だったかね」
魔女「くっ…つまらん揚げ足の取り方をする…」
魔女「むぅ…」
魔女「にゃ、にゃあ〜…」
男「……」
魔女が腕の中でわなわなと震えているのが分かった。
ついでに顔も真っ赤だろう。
魔女「何か反応せんかっ!!!!」
男「ぷっ…ははっ…はいはいよくできましたっと…」
魔女「あっ…これっ!撫でるなぁ」
男(これはいいな。気に入った)
魔女「あぁ…むぅ…」
魔女の頭を撫でるのは俺の日課の一つとなった。
               
          
66:
…………
それから2週間がたった。
魔女「これっ!起きんかっ!」
男「う〜ん…マジで眠い…あと5分だけ…」
魔女「朝から全力を出さんかっ!」
今までより充実した2週間はその倍のはずの今までの1カ月よりも濃く感じた。
               
          
67:
…………
男「やっぱお前だけ食べないってなんかおかしいって」
魔女「む、そんなに言うなら一口だけいただくとしよう」
男「別に一口なんて言わずにもう一食作ればいいのに」
魔女「よいよい。それより…はよう口に入れんか。ん…」
男「は?いや自分で食べろよっ!」
魔女「どうでもよいところでケチな奴だな」
男「…分かったよ。はい、あ、あーん」
魔女「ん…もぐもぐ…うむ。我ながら上出来だ」
男(なんか変な気分だ…)
               
          
68:
…………
友「いや絶対女だろぉ!?」
友「なぁ俺にも紹介してくれよぉ!?」
友「なんか寂しいじゃん…」
男「いや違うから。ってか泣きすがるほどか…」
               
          
69:
…………
魔女「認めてしまえば楽になるぞ」
男「まあ確かに、全国の独身男性に毎日のように背中流してもらってる女がいるってのにそれが彼女じゃないなんて言ったら殴られるかもな」
魔女「ふふん。そうであろう?そうであろう?お前はもっと誇ってよいぞ」
男「はぁ…子供じゃなかったらなぁ…」
魔女「むぅっ…」
魔女「ふんっ!」
男「あだぁっ!?叩くなよ!」
               
          
70:
…………
1ヶ月がたった。
俺は毎日をがむしゃらに生きていた。
変にアツくなったらどこかで失敗したときに恥ずかしい思いをすることになると思っていたが、常に全力でいると自然と失敗することは少なかった。
会社の先輩には肩に力が入り過ぎてるとも言われたが、社内全体の俺の評価はウナギのぼりだった。
               
          
71:
男「なんか最近ずっと調子よくてさ、たった1ヶ月なのに先輩たちが俺を見る目も変わってきてる気がする」
魔女「それは今までが堕落しすぎていたということではないのか?」
男「多分それで合ってる」
魔女「なんだ怒らんのか」
男「怒って欲しかったのか?」
魔女「最初は私が言うこと言うことにいちいち反応して面白い奴だったのに…張り合いがない奴になったものだ」
男「まぁ、大体全部お前様々だしな」
と言いながら俺はまた魔女の頭の上に手を置いた。
日課を超えて癖になりつつある。
               
          
72:
魔女「む…」
男「お前こそ、もう『やめろ』って言わないのな」
魔女「…言っても無駄だと分かったからな」
魔女「さっさと行ってこい。遅刻するぞ」
男「ああ。じゃあ行ってくるわ」
魔女に背を向けて玄関の方へと歩く。
魔女「あ、おい」
男「ん?なんか忘れ物してた?」
魔女「いや…その…」
魔女「今日は魚だ」
男「はいはい」
適当に返事を返すと俺は家を出た。
               
          
73:
魔女「今日も…行ってしもうたか…」
魔女「むぅ…」
魔女「別にっ…寂しくなんかないぞっ…」
魔女「子供じゃあるまいし…」
               
          
74:
…………
先輩「あーおい、今日かなり長めの残業になりそうだが…行けるか?」
男「あ、はい」
男(今までだったらこういうの、適当に理由つけて帰ってたりしてたな…)
男「全然いけますよ」
先輩「おおそうか。悪いな」
男「いえ」
               
          
76:
…………
魔女「うむ、今日も美味そうに焼けた」
魔女「…にしても遅いな。一体何をしておるのだ」
魔女「うーむ…うーむ…」
               
          
77:
…………
先輩「もう上がっていいぞ」
男「お疲れ様でしたっ!お先に失礼します」
友「おつかれー」
男「おう、おつかれ」
男(随分遅くなっちまったなぁ…遅くなるって言ってなかったから魔女のやつ待ちくたびれてるかもな)
男(いや)
あいつに限ってそれはないか。
               
          
79:
…………
男「ただいま」
いつものように玄関に入ると部屋の方から飛び出すようにして魔女が出てきた。
魔女「…随分と遅かったではないか」
男「え…ああ…突然の残業で…」
意外すぎる反応だった。
魔女のことだからあくびでもしながら出迎えてくれると思ったのだが。
男「もしかして結構待ってた?」
魔女「当たり前だ。もう少しで枕の姿に戻るかと思ったぞ」
男(ああ、そういうこと)
魔女「晩飯ならできておる。さっさと食べろ」
男(なんか機嫌悪い?)
               
          
80:
それから俺は用意された晩飯を食べ、風呂に入った。
今日は風呂場まで入ってくることはなかった。
珍しい。
部屋に戻ると魔女が先に布団に包まってベッドを占領していた。
男「あの…魔女さん…?なんか怒ってる?」
ベッドの近くまできて彼女の背中を布団越しにつんつんとつついた。
               
          
81:
魔女「っ!」
男「うわっ!」
魔女が突然勢いよく身体を起こした。
そして少しだけこちらを向くとジト目で口を開いた。
魔女「…今日の分」
男「あ、ああ。そういえばまだだったな」
俺がベッドに腰掛けると彼女は両手でガッチリと俺の顔を固定した。
               
          
82:
男「うむっ?うぇ?」
魔女「……んっ」
そのままいつものように唇を重ねた。
だが、今日はいつもとは何かが違う。
魔女「んっ、んちゅ、ちゅる…」
いつもより、頭がふわふわした。
魔女「ちゅっ…ちゅ…んっ…」
いつもより、どこか求められている気がした。
               
          
83:
魔女「んっ…はぁ…はぁ…」
男「!」
いつもより長めな契約。
やっと口を離した魔女の顔は頬を紅く染めた恍惚な表情をしていた。
男「がっつきすぎ…どんだけだよ…」
じっと見つめていたら心を奪われそうになるような…そんな表情から目線を下にそらして言った。
魔女「す…すまぬ…」
らしくない声を聞いてまた目を合わすと彼女はしゅんとしていてどこか哀しそうな顔をしていた。
男「いや…俺も遅くなったの…ごめん」
何故だろうか…
この瞬間俺たちの契約関係は、どこか破綻してしまったように感じた。
               
          
84:
…………
約1ヶ月と2週間がたった。
俺の寿命も気がつけばもう残り14年となっていた。
そんな毎日にそれは突然訪れた。
男「えっ!?母さんそれ本当か!?」
男「ああ、うん。分かった。俺も仕事早退して行くよ」
友「どうした?すげー青ざめた顔してるけど」
男「俺ちょっと課長に頼んで早退するわ。爺ちゃんが倒れたって…」
               
          
85:
…………
医者「今まで元気だったのが奇跡というくらいです。手はつくしましたが…今夜が山かと…」
信じられなかった。
あんなにも元気だった祖父が、急に死の淵に立たされているという事実が。
男「そんな…」
男「爺ちゃん!爺ちゃん!」
爺「おお…男か…」
男「何やってんだよ…こんなところで…」
               
          
86:
男「冗談だろ?もし爺ちゃんが死んじゃったら…爺ちゃんの家のあの大量のガラクタ土産はどうなるんだよ!あんな趣味悪いもん…身内には引き取り手がいねぇだろ…?」
男「だからさ、もう一度世界を回ってその先であれら全部を欲しがってる人に渡して回ろうよ」
爺「そうじゃなぁ…それはいいかものう…」
男「だろ?だからこんなとこ早く退院しようよこんな清潔感溢れるベッドの上でずっと寝たきりなんて…爺ちゃんには似合わねぇよ…」
爺「失礼なことをいう孫じゃなぁ…」
男「ははっ、人にあんな汚い枕押し付けといてよく言うぜ」
爺「…そのことなんじゃが、実は後悔しとるんじゃ」
               
          
87:
男「は?どうせ死にかけるなら自分が使って死んだ方がよかったってか?ふざけんなよ…」
爺「そうではない…男…お前はあの枕を使ったのか?」
爺「もしあれが本当に呪いの枕で…お前が使ってしまったのならな…成仏しきれんわ…なんたって可愛い孫に早死にをすすめてしまったのじゃからな…」
男「あ…ああ…」
男「……」
男「何言ってんだよ。使ったわけないじゃん。あんな薄汚い布を頭にしこうなんてどうかしてるって」
嘘をついた。
ここで本当のことを言ったら、祖父が俺の心配ばかりをして自分の状態を回復させようとするのを怠るような気がして。
               
          
88:
…だがそれは逆効果だった。
爺「フッフッ…それもそうじゃな…ならいい…わしはこの人生に…何の後悔も…な…い…」
男「爺ちゃん!?爺ちゃん!!」
               
          
89:
…………
男「…ただいま」
魔女「どうした。何か辛いことでもあったか?」
男「ははっ、やっぱ分かるか?」
魔女「仮にも1月以上共に過ごしてきた仲だしな」
男「そうか、そうだよな」
               
          
90:
男「実はな、爺ちゃんが死んだんだ。お前を俺にくれた人だ」
魔女「それは…気の毒だったな」
男「俺、爺ちゃんに嘘ついたんだ。お前と契約してないって」
男「だってさ、そうじゃなきゃ成仏できないってんだぜ?困るよな」
男「こりゃもし天国で会ったらめちゃくちゃに怒られるだろうな」
魔女「……」
魔女は俯いて俺の話を聞いていた。
               
          
91:
男「なぁ、今日の分…」
察した。
さすがにさっきの話を聞いた手前今日ばかりは魔女も自分からは言えないだろう。
俺から契約を誘った。
魔女「いや、後でいい。お前は落ち着くまでゆっくりしていろ。今夕食を用意する」
だが彼女は俺の誘いを断り台所へと消えた。
まるで逃げるように。
残業の日の出来事があってから魔女はどこか変だった。
俺の目からみてどうにも馴れ馴れしさが減った。
風呂場まで入ってくることは全くなくなった。
だがそれと反比例するように契約の口づけはどんどん激しいものになっている気がした。
               
          
92:
なのに今日は契約にすら積極的じゃないって…
男「あれ…?寝てる?」
夕食を終え風呂場から上がるとベッドの上で魔女が小さく寝息を立てていた。
当然今日の契約はまだ交わしていない。
このまま放置されれば枕の姿に戻るというのに…呑気なものだ。
男(もし俺がこのまま寝たらどうするつもりなんだよ)
男「おーい。起きろー。契約は…」
魔女「ん、ううん…」
寝返りをうった幼い寝顔が無防備に仰向けとなった。
               
          
93:
男「起きないな」
男「…俺からでもできるのかな」
試しに顔を徐々に彼女の唇に向けて近づけていく。
すると突然魔女が目をパチリと開いた。
男「うわぁ!!!」
反射的に彼女から顔を離す。
魔女「まさか自分からくるようになるとはな」
男「なんだよ…狸寝入りかよ…」
男「で、どうすんだよ。…いつもの」
再び俺から契約を促すと魔女は信じられないことを言い出した。
               
          
94:
魔女「男、残りの寿命…生きてみる気はないか?」
               
          
95:
男「…は?」
男「どうしたんだよ…いきなりさ…」
男「それ、お前はどうすんだよ」
魔女「また枕に戻るだけだな」
男「何考えてんだか知らないけど…例えお前がまた枕に戻っても、俺がもう一回お前を呼び覚ますだけだからな!」
魔女「このまま死ねばその天国とやらに行った時に祖父に合わせる顔がなさそうだろう?」
男「そんなのたった14年生きたって同じだっての」
男「…何が狙いなんだ?」
魔女「…気にするな。ただ、もう生きている必要もなさそうだと感じておるだけだ」
男「!?」
俺の耳がいかれてるのかと思った。
夢でも見ているのかとも思った。
先ほどに続いて彼女の口からとは思えない言葉が続く。
               
          
96:
男「どういうことだよ…」
男「お前さぁ!あんなに生きることに貪欲だったじゃねぇか!」
男「こんなオンボロ枕にこもって」
男「死ぬことに抗い続けて」
男「こんな…好きでもなんでもない男の俺に尽くして…」
魔女「それは違うぞ…」
男「?」
男「違うって…何が違うんだよ」
魔女「もうよい。もうよいのだ。寝かせてくれ」
魔女は顔を隠すように俺に背を向けて膝を抱えて身体を丸くするとまたベッドで横になった。
男「おい!」
そんな彼女の両肩を強く握って強引に起こす。
               
          
97:
男「納得できねえよ!」
頑なにこちらを向こうとしないので今度は身体を持って無理やりこちらに向けさせた。
男「こっち向けよ!」
ぐいと彼女の顎を上げた。
やっとまともにこちらを見た彼女の顔は…
魔女「っ」
昨日までの、俺を強く求めた契約の後の顔と同じだった。
男「はぇ?」
魔女「やめろ…やめてくれ…」
ぷぃと顔を逸らす彼女はまるで恋する乙女のそれだった。
               
          
98:
魔女「…気づかないふりをしておった」
男「え?」
魔女「私は…お前に手放せぬ枕になることを誓った。だが、気がつけば逆に私がお前を手放せなくなっておった」
魔女「契約相手に尽くすことはいつものことだ。だが、契約相手とそれ以上に親しくなることはなかった」
魔女「当たり前だ。皆、自殺したくなるほど追い込まれておったのだ。やはり私のことなど便利な自殺道具としか思ってなかったのだろうな」
魔女「しかしお前は違った。私を生きている人間として受け入れてくれた」
魔女「近頃な…久しぶりに『生きている』きがするのだ」
魔女「今までもこうして生きていたが、疑問に思ってもいた。無理矢理にでも引き伸ばしているこの人生に意味はあるのかと」
魔女「そんな私にお前は意味をくれたのだ」
魔女はぎゅっと俺に抱きつくと俺の胸に顔を埋めた。
               
          
99:
魔女「男、私はお前といると楽しい。逆に、お前がいないと…こんな子供じみた感情は認めたくはないが…寂しい…」
魔女「私は…おそらくお前を好いておる」
唖然としていた。
俺は彼女のおかげで今の充実した生活があると思っていた。
逆に彼女に何かを与えているつもりは何もなかったのに…。
魔女は、こんなにも俺を思っていてくれたのか。
魔女「私は今の生活が幸せだ。この先もお前と共にいたいとさえ感じている」
魔女「だが今私がこの世に存在し続けるのは、同時にこの世に今存在するべきお前をこの世から消し去ることに繋がっている」
魔女「自分の生が自分の愛した者の死へ繋がっておるのだ。こんなにも残酷なことがあるか?」
魔女「私は、お前には生きていて欲しい」
魔女「ならせめて…この世に矛盾をもたらしておるこの私は…もう消えるべきなのだろう」
               
          
101:
魔女「丁度、時間切れか」
彼女の全身が光に包まれた。
契約が途切れ、枕に戻ろうとしているのだろう。
あの日、契約が破綻したと感じた理由を知った。
魔女が俺を好きになってくれていたから。
…そして俺もまた
男「…ばーか」
魔女「あ…」
とっくの昔に、彼女に惚れていたから。
魔女「お、おぃ…」
優しく彼女を抱き寄せると彼女の激しい心臓の鼓動を感じとった。
今、彼女はこの世界で生きている。
間違いない。
               
          
102:
魔女「おいっ!はなさんかっ!んっ…んむぅ!?」
魔女「んっ…んん…ちゅ…」
彼女から光が消えた。
男「ぷはっ…」
魔女「おい…お前…なんてことを…」
男「……」
…………
『もしあれが本当に呪いの枕で…お前が使ってしまったのならな…成仏しきれんわ…なんたって可愛い孫に早死にをすすめてしまったのじゃからな…』
…………
男「…だってさ、今のお前の話聞いてたら、好きな人が自殺しようとしてるのを…黙って見過ごせる奴なんていないってことだろ?」
男「俺も同じだよ」
魔女「っ〜!!」
魔女「こっ、このっ!馬鹿者がぁ!」
               
          
103:
魔女「グスッ…ヒック…うぇ…」
魔女「うえええん!!」
あれだけ自分が子供であることを否定し続けた魔女がまるで自分が子供であることを肯定しているかのように俺の胸の中で泣き続けた。
そのまま泣き疲れて眠るさまは
魔女「んっ…すぅ…すぅ…」
男「やっぱり子供じゃん」
まさに子供だった。
               
          
104:
…………
男「ぐぅぐぅ…ん…むにゃ…」
魔女「…はっ!」
魔女「もう朝か…」
魔女「そうか…私は昨日…」
男「んぁ…お、い…魔、女…むにゃ…」
魔女「礼を言うぞ男…こんな私を受け入れてくれたことを」
魔女「だが、やはり駄目だ。元々ただの憂鬱で私を呼び出したお前のことだ。この世はきっとまだお前を必要としてくれておる人間が沢山いるに違いない」
魔女「本当は私がお前を独り占めしていたいが…それはきっと許されないことだ」
魔女「だが完全に諦めたわけではない。私も…お前の言っていた天国とやらを信じてみることにした」
魔女「それとも運命に抗った私は地獄とやらに落ちるだろうか」
魔女「そのときは、地獄まで私を追ってきてくれるか?」
男「んー?むにゃ…」
魔女「とにかく、しばしの別れだ男よ…また会おう」
               
          
105:
…………
男「んー?朝か…」
男「あれ?」
ベッドから起き上がり隣を見ると魔女の姿がなかった。
男「もう朝飯作ってんのか」
部屋をでるといつもはいい匂いがするが今日はなんだか焦げ臭い。
男(なんか焦がしたのか?あいつもそんな失敗するんだな)
男「何焦がしたんだ?」
声を出しながら台所を覗いたがそこに魔女の姿はなかった。
代わりにラップのしてある目玉焼きが乗った皿があった。
               
          
106:
男(作り置き?…別にこれは焦げてないな。作り直したのか。で、あいつは何処にいるんだ?)
男(ってかなんか寒いな。窓空いてんのか?)
キッチンからは焦げた臭いがしないので食べ物を焦がしたわけではなさそうだった。
男(なんだこれ)
よく見ると皿の横に置き手紙が置いてあった。
手にとって開いてみる。
男「は…?え…?」
               
          
107:
臭いを辿るとそれはベランダ窓の空いたベランダからだった。
まだ焦げ臭さを放つ黒い塊が一つ転がっていた。
               
          
108:
男「っ!?」
男「これ…もしかして…」
もうほとんど形も残っていない炭だったが、直感で分かった。
…………
『まあ、火くらいなら魔法で出せるぞ。ほい』
…………
それは俺が祖父から貰った。
ボロボロの枕だった。
               
          
109:
男「嘘だろ…?」
男「なんでだよ…」
               
          
110:
男へ。
これは私の作る最後の朝食だ。
味わって食べろ。
頬が落ちるほど美味いかもしれんが、くれぐれもこれが恋しいからといって早死にしたいなどと思わんようにな。
冗談はここまでにしておいて…
やはり、私はお前には生きていて欲しいと思っておる。
だがあまりにもお前が私を使って生き急ごうとするので私は先に天国とやらでお前を待っておることにした。
お前は年齢に反して先は短か過ぎるかもしれんが、残された時間を全力で生きろ。
そしてその間であった出来事を向こうで私に語ってくれ。
私の願いはただそれだけだ。
あと…私はお前を愛しておるが…
これ以上お前の人生を縛る鎖になるつもりはない。
想いの者に出会ったそのときは存分にその者を愛せ。
分かったな?
では、しばしの別れだ。
               
          
111:
男「なんでだよぉぉぉ!!!」
男「くそっ!!!」
男「ふざけんなよぉ!!!」
男「ああああああああああ!!!」
               
          
112:
…………
母「ぐすっ…お父さん…」
男「…爺ちゃん」
周りの人が泣きながら棺を囲む中、棺の中で眠る祖父に話しかけた。
男「俺さ…爺ちゃんみたいになりたいんだ」
男「生きてることに全力でいっつも楽しそうで元気だった爺ちゃんみたいに」
男「なれるかな?」
男「いや…ならないとな」
男「あっちであいつに面白い話聞かせるためにも」
…………
               
          
113:
「続いてのニュースです」
「『孤独死か?アパートの一室で外傷無しの独身男性の遺体を発見』」
「一昨日の午前9時、アパートの一室で独身男性の会社員の遺体が発見されました」
「外傷は特に見られず、彼は病気にかかっているわけでもなかったそうで、孤独死とみられています」
彼と親しかった会社の友人はー。
「彼は生き生きとした奴でした。昔はそうでもなかったんですけどね」
「社内では仕事もできるし人当たりもいいしで人気者でした」
「ずっと独身だったのは不思議でしたけどね。後輩の女性社員たちからは特に人気で…結婚なんてしようと思えばいつでもできるような奴でしたよ」
「今回のことは非常に残念ですけど…あいつはあいつなりに幸せな人生だったんじゃないかなって思うんですよね」
               
          
114:
…………
「……来たか」
「待ちくたびれたぞ。少し後悔すらしたな。もう少し削っておくべきだったかとな」
「じょっ、冗談だ。そのような怖い顔をするなっ…」
               
          
115:
「…では、聞かせてくれるか?」
おわり
               
          
116:
これにておしまいです
ここまで読んでくださった方は
ありがとうございました(-ω-)
               
          
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