ロック「俺が――」ベニー「あの子たちを養う、か?無理だ」back

ロック「俺が――」ベニー「あの子たちを養う、か?無理だ」


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ラグーン号 甲板
ロック「くそ! くそ! 畜生ッ!!」
ロック「なんて……なんてことだ……あんまりだ……」
ロック「みんなが寄ってたかってあの子たちを虎に仕上げたんだ……! 人食い虎にしちまったんだ! 畜生!!」
ベニー「ロック。ああいうものを真っ直ぐ見るな。ここはそういう場所で、それが一番だ。それしかないんだよ、ロック」
ロック「俺が――」
ベニー「養う、か? 無理だ。あの子たちは殺しをやめられないよ」
ロック「くっ……」
ベニー「誰かがほんの少し優しければあの子たちは、学校に通い、友達を作って、幸せに暮らしただろう」
ベニー「でも、そうはならなかった。ならなかったんだよ、ロック。だから、この話はここでお終いなんだ」
ロック「……」
ベニー「わかったかい?」
ロック「誰かがほんの少し優しければ、結果は違ったのか」
ベニー「ああ」
ロック「なら、俺が優しく接したら、こんなクソみたいな結果は変わるんだな?」
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3: 以下、
ベニー「おかしいな。僕の言ったことが理解できなかったかい。無理なんだ、ロック」
ロック「あの子たちはまだ子供じゃないか。未来がある」
ベニー「その未来はもう血と硝煙に染まって、闇に墜ちた。ロックも見ただろう」
ロック「それでも、まだ時間は十分にある」
ベニー「諦めるんだ。あの子たちは虎だ。マンチカンにはならない」
ロック「トイガーにはなれるかもしれない」
ベニー「誰ができるっていうんだ」
ロック「俺が、してみせる」
ベニー「一つ、聞かせてほしい。ロックはベビーシッターの経験はあるのかい」
ロック「ない。日本ではいつも同じスーツとシャツを着て、目上の人間に頭が落ちるぐらいに下げていた」
ベニー「子どももいないんだろ」
ロック「結婚してないからな」
ベニー「子育ては、航海よりも厄介だ。波はある程度予測できるが、子どもの機嫌の波は予測できない。特にあんな人食い虎はね」
ロック「やってもないのに、無理だと決めつけるのはナンセンスだ」
ベニー「何より君は紛れもなく男だ。家庭を顧みないホワイトカラーじゃないか。そんなロックに子育てなんて、出来るわけがない」
4: 以下、
ロック「確かに……俺一人じゃ無理かもしれない……」
ベニー「分かってくれたか。さぁ、船内に戻ろう。今のロックに潮風は心に毒だよ」
ロック「でも、二人なら」
ベニー「……なに?」
ロック「家庭を守る人間がいるなら、どうだ。虎だって、人間に懐き、喉を鳴らすかもしれない」
ベニー「あの子たちの他に誰を養おうとしている?」
ロック「聞かなくてもわかるはずだ、ベニー。この会社には四人いて、内三人は男だ」
ロック「けど、一人だけいるじゃないか。きちんと部屋の中で全てを守ってくれる、女が」
ベニー「正気かい? 確かに女だが、中身はただの獣だぞ」
ロック「女っていうのは、一瞬で化けるんだよ」
ベニー「既に化けて出てるよ。ゴーストじゃなく、ビーストとして」
ロック「もう一皮剥けば、女神になるかもしれない」
ベニー「賭けてもいい。ありえない」
ロック「分の悪い方に賭けるのも、たまには良い」
ベニー「本気なのかい、ロック。もっと利口だと思っていたよ」
6: 以下、
船内
ロック「今、レヴィがあの子たちを見ているんだろ? 部屋を覗けば、その先にはワンダーランドが広がっているかもしれない」
ベニー「レスリング場になっていると思うけどね」
ロック「分からないさ。もしかしたら、レヴィが二人にグリム童話を読み聞かせているかも――」
レヴィ「もう一回、言ってみな。クソガキ」グイッ
グレーテル「何でもいってあげるわ。おばさん、おばさん、おばさん」
レヴィ「……」
ヘンゼル「やーい、としまー、せいりふじゅーん」
グレーテル「あははは。兄様、それはいいすぎー」
ヘンゼル「そうかなぁ。こんなヒスおばさん、絶対に生理不順おこして――」
レヴィ「ああぁぁあぁあああ!!! てめえら!!! ここで殺してやるぜぇぇ!!! エダのクソ尼とか報酬とかしるかぁぁ!!! てめえらをミンチにして、サメの餌にしてやるぜぇぇ!!!」
グレーテル「きゃー、おばさんがおこったぁ」
ヘンゼル「虐待だー」
レヴィ「こっちはアウシュヴィッツに送られたやつらより愉快な虐待うけてんだよ!!」
ロック「レヴィ!! 子ども相手に何をしているんだ!!」
7: 以下、
レヴィ「ヘイ!! ロック!! こんな奴ら、ここで殺しちまおうぜ!! そのほうがこの世のためだ!!」
ベニー「レヴィが世界平和を願うなんて、世も末だね」
レヴィ「全くだぜ」
ロック「大丈夫だったかい?」
グレーテル「お兄さんっ!」テテテッ
ヘンゼル「お兄さんっ!」ギュゥゥ
ロック「怖かっただろう」
グレーテル「うんっ。私、怖くて、声も出せなかったわ……」
ヘンゼル「この世ではお兄さんだけが、僕たちの味方なんだよ……」
ロック「すまない……少しとはいえ離れてしまって……」
グレーテル「もう、私たちの傍から離れないでね」
ヘンゼル「僕たちのお願いを聞いてくれたら、生きている間に感じられる全ての快楽を与えてあげるよ」
グレーテル「それは良い考えね、兄様」
ヘンゼル「だろ、姉様」
ロック「こんなに気遣いができる子なんだよ。ただ無邪気で、本当は優しい子たちなんだ。ただ、ほんのわずか、道を逸れてしまっただけなんだ」
8: 以下、
レヴィ「そのわずかってのは、何百マイルほどずれてんだよ」
ベニー「地軸自体がずれている気がするけどね」
レヴィ「メテオでも降ってこねえ限り、治りそうもねえな」
ベニー「地球が崩壊するレベルじゃないと無理、か。一理あるね」
ロック「俺は決めたよ」
レヴィ「何をだよ」
ロック「この二人を養う」
レヴィ「おい、仕事中にアルコールでも回したか? それともヤクに漬かったか? どっちでもいいけどよ、あたしに迷惑かけんなよ」
ロック「そして、お前も養うことに決めた」
レヴィ「……は?」
ロック「聞こえなかったか、レヴィ。俺はお前を養うって言ったんだ」
レヴィ「……」
グレーテル「これって、プロポーズかしら!?」
ヘンゼル「そうだよ、姉様! 生のプロポーズだよ!!」
レヴィ「な、なにいってんだよ……ば、ばっかじゃねえの……」
9: 以下、
ベニー「本当にバカな発言だと、僕は思うね」
ロック「いいかい、レヴィ?」
レヴィ「いや、いいもなにも! あたしはてめーみたいな軟弱やろーにはちっとも惹かれねえし! ロックのプロポーズ受けるぐらいなら、キリストに魂とカトラスを売ってもいいぜ!!」
ロック「ダメか……」
レヴィ「ったりめーだろ!! 誰がてめーと一つ屋根の下でよろしくしなきゃいけねーんだよ。虫唾が走るぜっ!!」
ヘンゼル「何、このおばさん。酷い」
グレーテル「こんかに熱いプロポーズをしてくれる男の人なんて、生まれ変わったって出会えないのにね」
ヘンゼル「神様も飽きれて、次はカメムシにしちゃうんじゃないかな」
グレーテル「わぁ、くっさーい」
レヴィ「それを遺言にしてえのかよ!!! てめーらぁ!!!」
ベニー「分かっただろ、ロック。レヴィはそんな言葉じゃ揺らがないさ」
ロック「そうみたいだ。諦めるしか、ないのか」
レヴィ「あー、そうやってすぐ諦めるところは、ホントジャップってかんじだよなぁ。野心がねえっつうかよ」
ロック「望みはあるってことかい?」
レヴィ「あ、あるわけねーだろ!!! ざっけんな!!」
10: 以下、
ロック「はぁ……」
グレーテル「落ち込まないで、お兄さん。私が大きくなったらお嫁さんになってあげるわ」
ヘンゼル「じゃあ、僕は男娼になってあげる」
グレーテル「兄様、ずるーい。それなら、私がなるわ」
ヘンゼル「姉様はそもそもなれないじゃないか」
グレーテル「そっちのほうが楽しそう!」
ヘンゼル「姉様として生まれたことを恨むんだね」
グレーテル「むー!」
レヴィ「ヘイ、クソガキども。あんまりロックの前でおかしなこというんじゃねえよ。その口、二度と塞がらないようにしてやってもいいんだぜ?」
グレーテル「なによ。プロポーズを断ったんなら、いいじゃない」
ヘンゼル「僕たちがお兄さんをどうしようが、関係ないじゃないか」
レヴィ「こいつはウチのなんだよ。てめーらにどうこうできる権利はねえよ」
ロック「そうか……そういうことだったのか……」
ベニー「ロック? また奇策を思いついたのか」
ロック「ああ。ベニーの言う通り、俺は仕事一筋だった。結婚しても家庭なんて女に任せていればいい。そんなことをどこかで思っていたのかもしれない。最低の屑野郎さ」
11: 以下、
ベニー「何がいいたいんだい?」
ロック「レヴィ」
レヴィ「な、なんだよ。こっち見んなよ」
ロック「俺を養ってくれないか」
レヴィ「……は?」
ロック「俺が、お前の帰る場所になる。それなら、どうだ」
レヴィ「な……」
ロック「お前の生きる理由になる。いや、ならせてくれないか」
レヴィ「や……」
ロック「頼む、レヴィ」
レヴィ「う、うぅ……」
ロック「レヴィ!」
レヴィ「うるせぇぇぇ!!! やめろ!! ちかづくな!!! なぐるぞ!!! おらぁ!!! あぁぁああああ!!!」ダダダダッ
ロック「レヴィ!! 待ってくれ!! 話はまだ終わってない!!」
レヴィ「あたしを追ってきたらぜってえ殺す!!! いや、殺せなくてもあたしが海にダイブしてやるからなぁ!!! ハッハー!!!」
12: 以下、
グレーテル「男に免疫がないのかしらね、兄様」
ヘンゼル「ロアナプラの女ってみんな恋愛とかしてなさそうだもんね、姉様」
グレーテル「滑稽よね」
ロック「レヴィ……」
ベニー「……ロック」
ロック「オーライ。もう諦めるよ。好きにしてくれ。この子たちのかじ取りは、我らのボスに任せる」
ベニー「いや、気が変わった。この賭けは、ロックに分があると見た」
ロック「どういう意味だ?」
ベニー「あるいは、レヴィなら、この二人を救えるかもしれない、そう思っただけさ」
ロック「活路があったのか」
ベニー「それは自分で見つけるべきだ。ロックが自ら選んだ世界なんだから」
ロック「そうだな。こればかりは、誰にも頼めない」
ベニー「健闘を祈るよ」
グレーテル「早く着かないかしら」
ヘンゼル「暇だよね」
13: 以下、
微笑ましい
15: 以下、
ダッチ「ロック、ベニボーイ。飼い虎に何を吹き込みやがった」
ベニー「早、トラブルかい」
ダッチ「ああ。早く手を打たねえと、この船は自沈するぞ」
ロック「どうかしたか」
ダッチ「どうもこうも、レヴィのやつがそこらじゅうのモノに八つ当たりして回ってやがる」
ロック「確かにまずいね」
ダッチ「だが、もっと不味いことがある」
ロック「それは?」
ダッチ「レヴィのやろうが、ずっとにやけてやがる。嵐の前触れかなんかか」
ベニー「誰にも予測できない時化かもしれないね」
ダッチ「やっぱりか。頼むから、船内で花火は打ち上げんなよ。一応、魚雷も積んでるんだからよ」
ベニー「オーライ。僕も機材が壊されないように、部屋に引きこもるとしよう」
ダッチ「保存食でも持ちこんどけよ。誰も安否確認なんてことはしねえぞ、ベニー」
ベニー「覚悟の上さ」
ロック「レヴィに何があったんだ」
16: 以下、
グレーテル「ふふふ、お兄さんって鈍感なのね」
ヘンゼル「そんなことじゃ、このロアナプラでは生きていけないよ」
ロック「まだ馴染んではいないんだろうな」
グレーテル「あのおばさんは――」
ロック「こら。俺のことをお兄さんって呼ぶなら、レヴィのことはお姉さんって呼ぶべきだ」
グレーテル「えー? あんなの、おばさんで十分よ」
ロック「ダメだ。確かに性格も口も悪いけど、それでもおばさんなんて言えば傷つく。レヴィだって、女だ」
ヘンゼル「女かなぁ」
ロック「レヴィのことをおばさんって呼ぶなら、俺のこともおじさんって呼ぶように。いいね」
グレーテル「お兄さんは、お兄さんって感じだから」
ヘンゼル「おじさんなんて、呼べないよ」
ロック「だったら、レヴィのこともお姉さんって呼ぶこと」
グレーテル「ぶー」
ロック「返事は?」
グレーテル「はぁい」
17: 以下、
ダッチ「おーおー。ロック。サーカスで猛獣使いとしてやっていけるんじゃねえか」
ロック「それは無理だ。猛獣は扱えない」
ダッチ「なら、その両脇にいるのは、猫かなんかか」
ロック「外見も中身も気まぐれな猫さ」
グレーテル「どうする、兄様。あの上下のお口から腐臭のする女のことをお姉さんって呼べる?」
ヘンゼル「抵抗はあるけど、お兄さんには叱られたくないよ、姉様」
グレーテル「私もよ。こんなに優しくしてくれた人は生まれて初めてだもの。嫌われたくないわ」
ヘンゼル「嫌われちゃったら、殺しちゃうかもしれないもんね」
グレーテル「ええ。絶対に72時間ぐらい、生きたまま血を流し続けさせちゃう」
ヘンゼル「そんなの、したくないよ」
グレーテル「私もよ」
ダッチ「……悪魔だな」
ロック「本心からは言ってない。こうしたことを言ってしまうのは、俺たちの責任なんだ」
ダッチ「久々に聖書を読みたくなっちまうぜ」
ロック「是非、朗読してくれ。この子たちのためにもなる」
19: 以下、
甲板
レヴィ「くそっ!! くそっ!!!」ガンッ
レヴィ「んだよ、これ……ざけんなよ……くっそ!!」
ベニー「レヴィ」
レヴィ「追ってくるなって、言っただろ」
ベニー「それはロックに対してじゃなかったのか。なら、撃たれても仕方ないね」
レヴィ「ちくしょう……寄ってたかって、あたしをコケにしやがって……マジでむかつくぜ……!!」
ベニー「レヴィ、独り言なら別だけど、何か文句があるならこっちを向いて吐けばいい」
レヴィ「今、誰とも喋る気にはならねえんだよ」
ベニー「理由は、聞いても?」
レヴィ「構わねえが、答えねえ」
ベニー「だろうね。それに訊ねなくても、答えはわかる」
レヴィ「んだと……」
ベニー「顔の筋肉を制御できないんだろ」
レヴィ「……今日は、ひでえ一日になるな」
32: 以下、
船内
ダッチ「今の話はどううけとりゃあいい。イエローフラッグで痛飲しながらのほうがまだ笑い飛ばせたかもしれねえが」
ロック「笑われても構わない。俺が決めたことだ」
グレーテル「お兄さん、私たちを拾ってくれるの?」
ヘンゼル「お兄さん、ホントに良い人だね。けど、いいの? 僕たちは血の臭いも臓物の温かさも人間の悲鳴だって大好きなのに」
ダッチ「リトルデビルの言う通りだ。人間、大好きなものはそう簡単にはやめられねえぞ。たとえ、肉親の言うことだろうが、神のお告げだろうが、手を付けるときは手をつける」
ロック「世界はまだまだ広いんだ。君たちが見てきたものなんて、たった一部でしかない。二人が思っている以上に、朝と昼は長い」
グレーテル「わからないわ。私たちはずっと、ずぅっと、暗い部屋にいたもの」
ヘンゼル「僕たちには夜しか与えられなかった」
ロック「だから、俺が君たちに与えてやるんだ。朝の気持ちよさと、昼にやってくる眠気と、夜の温もりを」
ダッチ「詩人だな、ロック。幻想的な詩だ。だが、幻想はリアルの影でしかねえぞ」
ロック「幻想でも理想でもいいんだ。けど、現実を変えるためには、こうするほかない」
グレーテル「お兄さん、それじゃあ聞かせてほしいな。どうやって、私たちを助けてくれるの?」
ヘンゼル「僕たちの生き方をどうやって変えるつもりなの? 教えてよ、お兄さん」
ロック「ベニーも言っていた。君たちは殺しをやめらないって……。やめようとは思わないかい?」
33: 以下、
グレーテル「やめるとかやめないとかじゃないわ」
ヘンゼル「僕たちはただしたいことをしているだけなんだ」
グレーテル「そうしなきゃいけない、なんて考えたこともないの。ただ、したいだけ、やりたいだけなの」
ロック「そういうことか……」
グレーテル「ふふ。やっぱり、無理なの。ごめんなさい、お兄さん。けど、とっても嬉しかったわ」
ヘンゼル「また、僕たちが生まれ変わったときにでも声をかけてほしいなっ」
ロック「……」
ダッチ「話は終わりか。なら、行儀よく座ってろ。船はいつ揺れるかわかんねえからな」
グレーテル「わかってるわよ、タコぼうずー」
ダッチ「外見以外は可愛くねえガキだ」
ロック「分かった……」
ヘンゼル「お兄さん、悲しまないで」
グレーテル「私たちを救うなんて、誰にもできないことだもの」
ロック「ちょっと待っていてくれ」
グレーテル「えー? お兄さんの膝の上に座っておきたいのにぃ」
34: 以下、
甲板
レヴィ「うっし。リカバリーはできた。顔の締まりは万全だ」
ロック「レヴィ」
レヴィ「お……ふっ……ふふっ……」
ロック「どうした?」
レヴィ「な、なんだよ」
ロック「レヴィに頼みたいことがあるんだ」
レヴィ「誰がてめえの頼みなんて聞くかよ。だ、だいたい、お前は、あたしにこっぴどくフラれてるんだぜ? よく、あたしと喋れるな。根性だけは認めてやってもいいぜ」
ロック「俺はまだ、諦めてないぞ。お前を養うこと、お前に養われることは」
レヴィ「くっ……や、やめろ……それいじょう……ふふっ……い、いうな……こらぁ……」
ロック「……レヴィ、俺のほうを向いてくれないか」
レヴィ「ぜってえ、やだ」
ロック「こっちは真剣なんだ。俺だって、お前の目を見て話がしたい」
レヴィ「嫌だっていってんだろ!!! ぶっころすぞ!!!」チャカッ
ロック「真後ろに銃を突き付けても、相手には効果が薄いと思うけど?」
36: 以下、
レヴィ「吹くなよ、ホワイトカラー。その青ざめた顔と、縮み上がった金玉が目に浮かぶ」
ロック「別に普通だ。こっちを見ればすぐにわかる」
レヴィ「んなもん、見たくもねえよ、ボケ」
ロック「はぁ……。どうしてレヴィはいつもそうなんだ」
レヴィ「あたしのなにを知ってんだよ。いいから、用件だけ残してあたしの後ろから消えろ」
ロック「1週間でいい。俺と一緒に住んでくれないか」
レヴィ「な……」
ロック「あの子たちも一緒に、だけど」
レヴィ「ヘイヘイ、なに調子に乗ってんだ、ロック。あたしはどっかのクソ尼みたいに、どんな男にでもケツを振るほど出来た女じゃねえのさ」
ロック「だから、レヴィがいいんだ」
レヴィ「そんなションベン以下の価値しかねえ言葉で、あたしをスカウトするなんて無理な話だ。諦めろ」
ロック「俺は絶対に諦めない」
レヴィ「その白いシャツがてめえの血で綺麗に染まることになってもか?」
ロック「1週間後にそうなるなら別にいいさ。そのときは、俺が悪かったってことだろう」
レヴィ「ロック、からかうなら他をあたれ。マジで引き金をひいちまうぞ」
37: 以下、
ロック「頼む、レヴィ」
レヴィ「消えろ」
ロック「レヴィしか、考えられないんだ」
レヴィ「……っ」
ロック「レヴィ!」
レヴィ「うるせぇぇ!! 消えろっていってん――」
ロック「……やっと、こっちを向いたな」
レヴィ「がっ……」
ロック「レヴィ? どうして俺のシャツよりも先にレヴィの顔が赤くなっているんだ」
レヴィ「う……うぅぅ……」
ロック「体調が悪かったのか」
レヴィ「あたしにかまうんじゃねえ!!!」
ロック「待て!!」
レヴィ「ファック!!! どうしていいのかわかんねえだろうが!!!」ダダダッ
ロック「レヴィ……あの子たちのこと、受け入れられないのか……」
38: 以下、
船内
ピピピピ……
ダッチ「ハロー」
バラライカ『私よ、ダッチ』
ダッチ「よぉー、大尉殿。ご機嫌はいかがかな」
バラライカ『あまり宜しくはないわね。――ダッチの行動はどういう意味をもつのか、理解している?』
ダッチ「ああ。だからこうして待っていた。予想よりは随分と遅かったがな」
バラライカ『では、聴こうか。その積荷の行方を』
ダッチ「あんたたちとはこれからも末永く友好関係ではいたいがね。依頼人の荷物をどこに届けるかなんて、バラライカには関係のねえことだ」
バラライカ『その二人が葬った塵芥の生物の中に、我々の同志がいなければ、対岸の火事でしかなかったが、残念だ』
ダッチ「ほんとに残念だぜ。次、海に出るときはミサイル艦にしておくぜ」
バラライカ『――では、健闘を祈る』
ダッチ「ありがとよ」
ベニー「ダッチ」
ダッチ「分かってる。ベトナム海軍がおれたちのケツを執拗に狙ってやがる。どうにかしねえとな」
39: 以下、
ベニー「いや、そっちじゃない」
ダッチ「盛りのウサギのほうか?」
ベニー「ああ。レヴィの反応を見る限り、勝算はあるかもしれない」
ダッチ「困るな。勝算は高くねえと」
ベニー「けど、面白い」
ダッチ「ふっ。全くだ」
ベニー「だから、ここで僕は引き返すという提案をしてみたい」
ダッチ「まぁ、俺らの依頼人は安全な場所まで送ってほしいとしか言ってないしな」
ベニー「今のロックとレヴィの傍ほど、安全な場所はない」
ダッチ「双子にとって身と心の安全地帯ってわけか。しかし、あのレヴィが素直に引き受ける仕事とは思えないが」
ベニー「港に着くまで約2時間か」
ダッチ「狙われているから、多少は前後するな。まっすぐ帰路にはつけねえよ」
ベニー「どちらにせよ、3時間もないか」
ダッチ「その間に、レヴィを説得できるかどうかが、肝だな」
ベニー「どんなに頑丈な壁でも陥落するときは案外あっけないもんだけどね」
40: 以下、
ロック「くそ……」
グレーテル「あ、もどってきた。お兄さん、こっちに座って。私のお尻が冷えちゃったわ」
ロック「ごめんよ」
グレーテル「うふふ。お兄さんに座るの、癖になっちゃいそう」
ヘンゼル「姉様、そんなに具合がいいなら僕にもわけてよ」
グレーテル「いいけど、もう少し待って。私のお尻が温かくなるまでは、ね」
ロック「そういえば、まだ君たちからの答えは聞いてなかったな」
グレーテル「なぁに?」
ロック「君たちを引き取り、養いたい。ダメかな」
ヘンゼル「ううん! お兄さんさえよければ!」
グレーテル「おにいさん、だーいすきっ。ふふっ」ギュゥゥ
ロック「良かった……」
ヘンゼル「けど、きっと苦労するとおもうなぁ。僕たち、育ちがよくないから」
グレーテル「そうよね。最後まで、愛してくれる?」
ロック「勿論だ。俺は中途半端な覚悟で提案したわけじゃないからね」
44: 以下、
グレーテル「それじゃあ、お兄さんに引き取られたあと、私たちがまた誰かを殺したくなったら、どうする?」
ヘンゼル「お兄さんも一緒に殺しちゃう?」
ロック「俺だって、もうこっち側の人間だ。いつ殺す側になってもおかしくはない。けど、君たちと一緒になって殺すことはないと思う」
ロック「いや、あってはならないことだ」
グレーテル「なら、とめるんだ」
ヘンゼル「どうやって、とめるの?」
ロック「君たちはこういった。血の臭い、臓物の温かさ、人間の悲鳴が大好きだって」
グレーテル「ええ。そうよ」
ロック「それは、俺が用意するよ。勿論、本物ってわけにはいかないけど」
ヘンゼル「そんなことができるの?」
ロック「できるさ。試しに見てみるかい?」
グレーテル「見れるの!?」
ヘンゼル「みたい、みたい」
ロック「少し、待っていてくれ。ベニーに頼めば出してくれるはずだ」
グレーテル・ヘンゼル「「はーいっ」」
45: 以下、
ロック「持ってきたよ。これだ」
ヘンゼル「なに、テレビ?」
ロック「ここをつなげれば……。よし。これでいい。ほら、こっちにおいで」
グレーテル「ビデオでもみるの?」
ヘンゼル「僕たちが出演してるビデオかな?」
グレーテル「やだ……ちょっとだけはずかしいわ……」
ロック「そういうのじゃないよ。それじゃあ、再生」ピッ
ヘンゼル「なんだろうね、姉様」
グレーテル「なにかしら、兄様」
ロック「世の中には、君たちと同じような嗜好を持つ人間がいる。けど、多くは君たちのように実行することなんてできない」
ロック「だから、こういうのを見て、欲求を満たすのさ」
『きゃぁぁあああああ!!!!! いやぁあああああ!!!!』
『グシャ!!』
グレーテル「おぉ……」
ヘンゼル「頭がスイカみたいに割れた……。次はこういう風に壊してみようかな」
46: 以下、
レヴィ「ふぅー……。もうネジが緩むことはねえな。ったく、ロックのファッキンジャップが。テキトーなことぬかしやがって、あたしが喜ぶとでも思ってんのかよ」
レヴィ「あー、あー。ぬるま湯に漬かりきったサラリーマンってのは、骨の髄までおめでたいんだな」
レヴィ「……」
レヴィ「ふっ……くっ……くく……」
レヴィ「なんで、笑いがこみあげてくんだよ……くそっ……」
グレーテル「お兄さん、次! 次は!? ねえねえ!」
ヘンゼル「これだけなんて、いわないよね?」
ロック「ごめん、今はこれだけなんだ」
ヘンゼル・グレーテル「「えぇー」」
レヴィ(何やってんだ、あのボケ。ガキと楽しそうにしやがって……)
グレーテル「もっと見たいわ。こんなにドキドキしたものは、初めて見たもの」
ロック「こういったテレビドラマや映画なんかも見たことはなかったのか」
ヘンゼル「僕たちがテレビで見ることができたのは、どこかの風景が延々と流れるものだけだったよ。人が映ってるところなんて、見たことがなかった」
グレーテル「それにテレビよりも死体を見ている時間のほうが長かった」
47: 以下、
ロック「これからは、こうした偽物で満足してくれかい?」
ヘンゼル「面白いから良いよね、姉様」
グレーテル「ええ。こんなに楽しい物をこれからもみせてくれるなら、本物にこだわる必要はないもの」
ロック「そうか……よかった……本当に……良かったよ……」
ヘンゼル「お兄さん? どうしちゃったの?」
グレーテル「泣かないで、お兄さん」
ロック「ああ、ごめんよ。こんなことで泣いてたら、君たちを引き取った後が大変だ」
グレーテル「ふふっ。そうよね。お兄さんは大変よ。とっても」ギュッ
ロック「あ、おい」
グレーテル「だって、今見せたものより、もっと過激なものを私たちに見せなきゃいけない」
ヘンゼル「次はそれよりも過激でなきゃいけない。その次はもっと過激じゃなきゃいけないんだ」
ロック「そうなると、マラソンマンあたりはもっとあとで見せたほうがいいのか」
レヴィ「……」ガンッ!!!
ロック「レヴィ!?」
レヴィ「ヘイヘイ、ロック。随分と楽しそうじゃねえか。あたしにフラれたショックでガキに溺れたのか? なら、次に見るのはローワンとこにあるスペシャルキッズポルノかい?」
48: 以下、
ロック「そんなわけないだろ」
レヴィ「ふぅん。こんなフェイクよりもノンフィクションで映画以上に過激なもんを拝ませてやってもいいんだぜ?」
グレーテル「貴方に何かを見せて欲しいなんて、言った覚えはないわ」
ヘンゼル「どっか行ってよ。おば……お姉さん」
レヴィ「んだと……?」
ロック「待て、レヴィ。今、この子たちには別の趣味を持ってもらおうって思っているところなんだ」
レヴィ「ぬるいこといってんじゃねえぞ、ロック。こいつらが見てきたことは、こんなB級スプラッタームービーなんかはるかに凌駕するもんだろ」
レヴィ「今更、くっそつまんねえもんみせても、リアルに勝てるわけねえだろ。こいつらが出演してるホームビデオを流してやった方が迫力も臨場感もあるだろ」
ロック「やめろ、レヴィ」
レヴィ「間違ってるか?」
ロック「間違っているんだ。今は」
レヴィ「聞かせろよ、ロック。お前の答えをよ。どうやって、こいつらを、世界の外を回ってるこいつらを、あたしらの立っている場所に戻すんだ?」
ロック「レヴィ、何か持っていないか」
レヴィ「……ちょっと待ってろ。クソガキ共、ロックにそれ以上、近づくんじゃねえぞ」
グレーテル「なによ、おば……お姉さん。エラソーね」
49: 以下、
レヴィ「あたしの一押しだ」
ヘンゼル「面白いの?」
レヴィ「見てから文句言えよ。ま、余裕でいられるのも今の内だな。ケツから中身をぶちまけないようにだけはしとけよ。もし床を汚したら、てめえで舐めとってもらうからな」
グレーテル「まぁ、怖いわ。それじゃあ、汚すのは床じゃなくて、お兄さんにしておこうかしら」ギュッ
ロック「それはすごく困るんだけどな」
グレーテル「あら、私のじゃ嫌?」
ロック「誰のだってかなりの抵抗があると思うんだけどな」
レヴィ「おい、こら。ロックの上に座るんじゃねえよ」グイッ
グレーテル「あんっ」
ヘンゼル「それじゃあ、僕が座るね」ギュッ
ロック「あ、こら」
レヴィ「てめえも近づくな!! むしろ、てめえが近づくな!!」グイッ
ヘンゼル「はなしてー」
グレーテル「やったー、わたしがすわろっと」
レヴィ「だぁぁ!!! どっちもすわるんじゃねえよ!!!! てめえらには鉄の床で十分なんだよ!!!」
50: 以下、
三人とも可愛い
51: 以下、
もうずっとこうしてればいいんじゃないかな
52: 以下、
間をとってレヴィが膝に座ればいいのでは?
57: 以下、
『ファック!! ファック!!』
『イィガァァァァ!!!』
レヴィ「どうだ。これはあたしが初めてみた映画だ。最初に見たときはマジのスナッフムービーだと思ったぜ」
ロック「なんてものを最初に見るんだ。普通、トラウマになるだろ」
レヴィ「これぐらいで砕けちまう心臓なら、ブタにやったほうがマシだ」
ロック「ただ気分が悪いだけじゃないか」
レヴィ「バァーカ。こういった映画はな、どれだけ見てるやつの反吐を誘うかが肝心なんだよ。ストーリーなんざ邪魔なだけ」
グレーテル「面白くないわね、兄様」
ヘンゼル「そうだね、姉様。ただ人間を解体するだけの映像なんて見せられても、僕たちが満足するわけないのにね」
グレーテル「お兄さんが見せてくれた映画にはメッセージ性があったからこそ面白いって感じたのね」
ヘンゼル「僕もそう思うよ」
レヴィ「なにがメッセージ性だよ。けっ! たかが一本みただけで評論家気取りかよ、あぁ?」
グレーテル「面白くないものを面白くないっていっただけじゃない」
ヘンゼル「そーだ、そーだ」
レヴィ「こ、の、クソガキ……!! 下手に出ればつけあがりやがって……!! てめえらで万人がイッちまうようなスナッフポルノを撮ってやってもいいんだぜ?」
59: 以下、
ロック「レヴィ、大人げないことはやめてくれ」
レヴィ「こいつらに対して、人間の礼は不要だろうが」
グレーテル「お兄さん、こんな腸の中で腐敗しきったクソにも劣る映画なんて、私見たくないわ」
ヘンゼル「もっと、楽しいものをみせてよ」
ロック「そういわれてもな……」
レヴィ「んだよ、てめえらぁ!! お前らみたいなガキはアホ面さげてアニメでもみてろ!! ファック!!」
ロック「アニメか。それもいいかもな」
レヴィ「ヘイヘイ、ロックさんよ。頼むぜ。人肉をミキサーしてたようなガキが夢見る国を信じてるとでもおもってんのか? どんだけ頭にお花を植えてんだ?」
ロック「そもそも二人はテレビというものを殆ど知らないんだ。見せてみれば、何か違った反応を得られるかもしれない」
レヴィ「ありねえなぁ。米ドルかけてもいいぜ」
ロック「でも、手ごろなアニメなんて、流石にないよな」
レヴィ「……ベニーならもってんじゃねえか」
ロック「そうか。ありがとう、レヴィ」
レヴィ「ふん」
グレーテル「アニメってどんなのかしら?」
61: 以下、
ロック「ベニーが凄く良い物をもってたよ。日本のアニメだ。俺たちらしく海賊版だけどね」
レヴィ「なんでファッキンジャップのアニメを見なきゃいけねえんだよ。ちゃんと字幕はついてんだろうな」
ロック「ああ、日本版じゃなくて欧米版だ。字幕はないけど、きちんと吹き替えてある」
ヘンゼル「早く、みたいなー」
グレーテル「お兄さん、はやくぅ」
ロック「はいはい。ちょっと待っていてくれ」
レヴィ「あーあ、かったりぃなぁ」
グレーテル「嫌なら見なくてもいいのよ」
レヴィ「あぁ? どこにいようがあたしの勝手だろ」
ロック「それじゃあ、流すよ」ピッ
『それいけ! アンパンマン!!』
レヴィ「だははははははは!!! なんだこのくそだせぇやつ!!」
ロック「日本ではかなり有名なんだよ」
『ぼくのかおをおたべ』
グレーテル「兄様、この人、頭が取れるみたい」
63: 以下、
『やめろ!! ばいきんまん!!』
『ハヒフヘホー!! きょうこそはやっつけてやるぞ、アンパンマン!!』
グレーテル「まけるなー! あんぱんまーん!」
ヘンゼル「ばいきんまんなんてやっつけろー!」
レヴィ「くだらなすぎて、死にそうだな。どーせ、このパンのモンスターが勝つんだろ」
ロック「けど、二人は楽しんでる。こういった勧善懲悪の受けがいいのは万国共通なんだろうな」
レヴィ「正義とかロアナプラじゃ、ドブネズミすら見向きもしねえな。ここにあるのは欲望と暴力だけだ」
『アーンパーンチ!!!』
『バイバイキーン!!』
グレーテル「おぉー」
ヘンゼル「アンパンマンが勝ったよ、姉様」
ロック「どうだった?」
グレーテル「あの頭がすげかわるシーンがとてもよかったわ」
ヘンゼル「頭が欠けたシーンが印象に残ったかな」
ロック「そ、そうか。もう一本、みてみるかい? こっちは長編の映画みたいだけど」
65: 以下、
『アンパンマン!! なにをやっているんだ!!』
『ばいきんまん!? どうしてきみがぼくのことを……』
『おまえはおれさまがたおすんだ! こんなところでまけるな、アンパンマン!!』
『ありがとう、ばいきんまん!』
『うるさいうるさいうるさーい!! おれさまは、おれいをいわれるのがだいっきらいだー!!』
レヴィ「おぉ……」
グレーテル「ばいきんまんがかっこいい……く、くやしい……」
ヘンゼル「がんばれー、ばいきんまーん!」
ロック(三人とも、釘づけだな)
『アーンパーンチ!!!』
グレーテル「やったわ! アンパンマンが悪のボスをたおしたー」キャッキャッ
ヘンゼル「こんなに面白いのがあったなんて、全然しらなかったよ」
レヴィ「ちっ……こういうのって、あれだよな……卑怯だよな……」
ロック「楽しんでもらえたなら、なんだかこっちも嬉しくなるな」
レヴィ「あ、あたしは別になんともおもってねえからな!! こういうのは三流脚本家が苦し紛れに作ったもんだろ。歯が浮くどころか、飛び上がっちまうぜ。くっそつまんねえもんみせんなよな、ロック」
67: 以下、
グレーテル「お兄さん、もっとないの!? アンパンマン、もっとちょうだい!」
ヘンゼル「アニメって何話ぐらいあるの? 今日一日で見ることはできるかな!?」
レヴィ「ヘイヘイ、ファッキンキッズ。上映会はこれで終わりだよ。航海の余興にしちゃあ、出来すぎだ。満足しとけ」
グレーテル「なによぉ! おば……お姉さんになんの権利があるっていうの」
ヘンゼル「そーだ、そーだ」
レヴィ「うっせ! これは全部没収だ」
グレーテル「アンパンマンをもっていかないでー!」ピョンピョン
ヘンゼル「かえしてー!」ピョンピョン
レヴィ「これ以上の接待は料金に入ってねえんだよ。みたきゃ払うもん、払え」
ロック「どうしてそんなことをするんだ」
レヴィ「お前も甘いぜ、ロック。こんなことして情でも移ったら、終わりだぞ」
ロック「情を移すためにやってるところもあるんだ」
レヴィ「悪魔の権化と死ぬまでタンゴでも踊るか? 笑えねえよ」
ロック「そのダンスにはレヴィにも入ってもらうつもりだ」
レヴィ「お手て繋いで輪を作ろうって説法は、硝煙の臭いがひとっつもない世界でやりやがれ」
68: 以下、
ロック「何度も言うけど、俺は本気だ」
レヴィ「あん?」
ロック「レヴィと一緒に住む。レヴィを養うか、レヴィに養ってもらう」
レヴィ「……っ」
ロック「この子たちと一緒に」
グレーテル「私はお兄さんだけで十分よ?」
ヘンゼル「僕もっ」
レヴィ「なら、これはいらねえよな」
グレーテル「アンパンマンはおいていってー!」
レヴィ「地獄の沙汰も金次第。いくらだすよ」
ロック「レヴィ!」
レヴィ「あたしに近づいてくんな!」
ロック「いくらなんでもやりすぎだ。そのアンパンマンは置いて行ってくれ」ガシッ
レヴィ「あ……。や、やめろよ。いてぇだろ」
ロック「あ、ごめん」
71: 以下、
レヴィ「だ、大体よ、こんなでけえ瘤つけてロアナプラは歩けねえぞ。百歩譲って、ロックとは住めても、こいつらを養う自信はねえからな」
ロック「だったら、俺が面倒を見る。レヴィに食事と寝床の心配はさせないよ」
レヴィ「お前みたいなホワイトカラーに貢がれるのは嫌な気分じゃねえけど、悲しくならないか?」
ロック「どういう意味だ?」
レヴィ「どんなにあたしに金を振りまいたって、こっちがお前の上で腰を振ることはないんだからよ」
ロック「……」
レヴィ「ロックにだってあんだろ? 男としてのプライドってやつがよ。ま、埃にもならねえぐらいに小さいだろうけどさ」
ロック「……それでも、レヴィと一緒に住みたい」
レヴィ「な……に……」
ロック「レヴィが一緒なら、それだけで十分だ」
レヴィ「が……」
グレーテル「私も言われたいわ。お兄さん、私が大きくなったら、私にも同じセリフを言って欲しいなぁ」
ヘンゼル「僕にも言ってね。いっぱい、気持ちいいことしてあげるから」
ロック「マッサージでもしてくれるのかい?」
レヴィ(わらうな……ぜってぇわらうなよ……ここでわらったら……まけだ……かんぜんにあたしの……まけになる……わらってた、まるか……よ……)プルプル
73: 以下、
レヴィ「ふっ……くっ……う……ふふ……」
グレーテル「どうかしたの、お姉さん?」
ヘンゼル「虫歯? だったら、抜いてあげるよ? 抜歯器具も持ち歩いてるよ」
ロック「やめるんだ。あとが怖いし、なにより、君たちの面倒をみてくれる、いわば継母になってくれるかもしれない相手だ。歯抜けの母親は見たくないだろ」
ヘンゼル「ママが間抜けな顔で街を歩いてると思うと、悲しくなるね……」
グレーテル「そんなママなんて嫌だわ」
ロック「だろ? まぁ、他人にだってそういうことはしちゃいけないけど」
ヘンゼル「はーい」
ロック「いい子だ」
レヴィ「ふー……ふー……。おい、ロック」
ロック「なんだ?」
レヴィ「ふっ……ふふっ……くっ……ふっ……」
ロック「レヴィ? 何がおかしいんだ」
レヴィ「や、いまは、ちょっと、時間をくれ……ア、アンパンマン、返すから、今は、あたしをジロジロみんな……」
グレーテル「わーいっ。アンパンマンがもどってきたわー。もう一回、みなきゃ!」キャッキャッ
74: 以下、
『いくぞぉ! ばいきんまん!!』
ヘンゼル「いけー、アンパンマーン」
グレーテル「アンパンマンって、頭を爆散させるシーンがあればもっと面白くなりそうね」
ロック「本当に気に入ってくれてるな。あんなに夢中になって……。こうしてみている分には、純粋な兄妹にしかみえない」
レヴィ「……」
ロック「答えをそろそろ聞かせて欲しい。いつまでも海の上にいられるわけでもないし。時間が来たら、陸に上がらないといけない」
ロック「陸に上がったら、そのまま……」
レヴィ「い、色々、考えたんだけどよ……」
ロック「どうした?」
レヴィ「共働きとかじゃだめなのか? どっちかが、家にこもってたら、仕事中とかどうやっても顔をあわせられねえじゃねえか」
ロック「共働きだと、この子たちの面倒は誰がみるんだ。夜遅くまで帰られないときだって多々あるのに」
レヴィ「そのときは、首に鎖でもつけてひっぱってきたらいいんじゃねえか? こいつらは曲がりなりにもこっちの世界で綱渡りしてきたんだ。多少の戦力にはなるし、うちの社長も働き手が増えてオールハッピーだろ」
ロック「子どもに海賊をさせるつもりなのか」
レヴィ「あたしはガキのときから銃を握ってたし、血だって浴びてたぜ? ガキだからなんて、理由にもクソにもなんねえよ」
ロック「うーん……けど……」
86: 以下、
レヴィ「はっきりしろよ。てめえが言い出したことだろうが。こっちはしっかりケツを持ってやるっていってんだ。何を迷うことがあんだよ」
ロック「この子たちには普通の生活を送ってほしいんだ」
レヴィ「わかってねえ……。わかってねえよ、ロック。普通だぁ? ここがどこか忘れたのか?」
レヴィ「ナイフで滅多刺しにされた死体を見て、指差してざまぁねえと笑われる場所なんだよ。手を汚さずに生きるには無理なほど空気は真っ黒に染まってる」
レヴィ「そんな場所でガキに普通の生活を送らせるなんて、無理に決まってんだろ」
ロック「それは……」
レヴィ「自分の故郷にでも戻るか? 日本はここよりも間抜け面で歩けるんだろ」
ロック「……レヴィ、それは日本に嫁いでくれるってことかい」
レヴィ「バッ……!? ばかやろう!! あたしは毎日ホワイトカラーまみれのトレインで出荷されるような国になんていかねえからな!!!」
ロック「だろうな。やっぱり、ここで生きていくしかないんだよな」
レヴィ「簡単に諦めんなよ」
ロック「このロアナプラで生きていくには、普通ではいられない、か」
ヘンゼル「姉様、次はこの劇場版を見ようよ」キャッキャッ
グレーテル「いいわね。私も気になっていたの兄様」キャッキャッ
ロック「いや、ここがどこでもいいのかもしれない。日本だろうと、ロアナプラだろうと、関係はないんだ」
87: 以下、
レヴィ「あ? お次は神のお告げでも頭ン中に降って湧いたか?」
ロック「俺とレヴィの教育次第ってことさ」
レヴィ「言っとくけど、あたしはガキの面倒なんかごめんだからな。お前が勝手に引き取るって言いだしたんだ。てめえでやれ」
ロック「今、ケツは持つって言ってくれたじゃないか」
レヴィ「持つのはロックのだけだ。あたしの手じゃ三人ももてねえよ」
レヴィ「拾ったのはお前だろ。あたしにまで虎を押し付けるな。無理なら元の場所に捨ててこい」
ロック「それはできない。もう、拾い上げたんだ」
レヴィ「だったら、一人でなんとかするんだな。ま、金次第じゃ、やってやらないこともねえけど」
ロック「……ねえ、二人とも」
ヘンゼル「なぁに?」
グレーテル「どうしたの、お兄さん?」
ロック「港に着いたら、一緒に住むことになる。それはもう承諾してくれたってことでいいかい?」
ヘンゼル「うん。僕は問題ないよ」
グレーテル「私もよ」
ロック「だったら、一緒に住むにあたって、家族の決まりを作ろうと思う」
89: 以下、
ヘンゼル「きまり?」
ロック「ああ、やっぱり一緒に住むといってもここにいる4人は赤の他人だ。血のつながりはない」
ロック「きっと些細なことで諍いが生まれることだってある」
グレーテル「そこのお姉さんは、きっと理不尽なこと言ってくるものね」
レヴィ「お前らがあたしの言うことをきちんと聞けば、カトラスから硝煙の臭いがすることはねえけどな」
グレーテル「こっちだって、BARが怒鳴ることもないんだけどね」
レヴィ「おっもしれえ。ここでどう喚くかきいてやってもいいぞ、このクソガキ」
グレーテル「ジャムおじさんに代わりの顔を用意しておいたほうがいいんじゃない、お姉さん」
レヴィ「いい度胸だ、立ちやがれ!!」
グレーテル「いやよ。お兄さんの膝の上にすわろーっと」ギュッ
レヴィ「立てっていったんだよ!!! ボケぇ!!!」
ロック「毎日、こんなケンカは聞きたくないだろう?」
ヘンゼル「そうだね。お兄さんが苦労するのは見たくないかな」
ロック「だからこそ、ルールは必要になる」
レヴィ「あたしが得するルール以外は却下だからな」
90: 以下、
>>89
グレーテル「ジャムおじさんに代わりの顔を用意しておいたほうがいいんじゃない、お姉さん」

グレーテル「ジャムおじさんに代わりの顔を用意してもらったほうがいいんじゃない、お姉さん」
91: 以下、
ロック「それぞれをどう呼ぶか、決めておいた方がいい。呼び方ひとつで関係は変わってくる」
グレーテル「私と兄様はお兄さん、お姉さんって呼ぶけど」
ロック「それでもいい。けど、君たちのその、親代わりになるっていう決意もしたんだ。だから、えっと……」
ロック「俺のことは、お父さんって呼んでくれないか」
ヘンゼル「お、とうさん……」
グレーテル「だったら、お姉さんは、お母さんって呼ぶの?」
ロック「そういうことになる」
ヘンゼル「うぅ……」
ロック「やっぱり、嫌かな?」
ヘンゼル「僕たち、両親のことなんてあんまり覚えないし……顔だって、はっきりしないぐらいなんだけど……」
グレーテル「ホントにいいの? そういうふうに呼んでしまえば、お兄さんは私たちから逃げられなくなるわ」
ヘンゼル「嫌になったとき、僕たちを見捨てなきゃいけなくなったとき、辛くなるはず」
グレーテル「そうよね。私たちにそこまですることはないわ。人を拾ったって考えないで、捨て猫を拾ったって考えないと」
ロック「何度も言う。もう俺は君たちを拾ったんだ。二度と、元の場所へは戻さない。だから、二人も覚悟を決めてほしい。俺とレヴィに育てられるってことを」
ヘンゼル「そ……そういわれても……急におとうさんとおかあさんができても……はずかしいな……」モジモジ
92: 以下、
ロック「そんな風に態度に出されると、こっちも気恥しいな……」
グレーテル「お、おとうさん……」
ロック「うん?」
グレーテル「大切に……してくれるの……」
ロック「するさ。子どもを愛せない親なんていない」
ヘンゼル「姉様……いいんだよね……」
グレーテル「兄様……良いと思うわ……」
ヘンゼル・グレーテル「「おとーさーん」」ギュゥゥゥ
ロック「こらこら、どうしたんだ」
ヘンゼル「おとうさんっ、おとうさんっ」
グレーテル「私、大人になったらおとうさんと結婚するっ」
ロック「ちょっと、待ってくれ。それは話が飛躍しすぎてる」
グレーテル「今更遅いわ、お父さん」
ヘンゼル「僕もお父さんと結婚するー」
グレーテル「二人一緒に結婚しましょ、兄様。私たちはいつだって一緒だものね」
93: 以下、
レヴィ「あーあ、仲のいいことでー。ロックひとりでなんとかなるんじゃないのか」
ロック「そんなわけないだろ」
レヴィ「そうやって孤児を集めて、アメフトチームでも作れよ、ビッグダディ」
ロック「レヴィ」
グレーテル「おかあさん」
レヴィ「……」
ヘンゼル「お母さんになってくれるんでしょ」
レヴィ「まだそんな歳じゃねえよ」
ロック「そうか? もう産んでいてもおかしくないだろ」
レヴィ「こんなでけえ奴があたしの股のからでてきたのかよ!? あぁ!?」
グレーテル「おかあさん、下品よ。仮にも私のお母さんになるなら、もっと上品になってくれないと困るわ」
ヘンゼル「そうだね。ちゃんと歯も磨いて、煙草もやめてくれないと、僕たちに悪影響だよ、お母さん」
レヴィ「おかあさん、おかあさんっていうな!!! てめえらのママになった覚えなんてねえんだよ!!!」
グレーテル「え……そう……そうよね……ごめんなさい……」
ヘンゼル「お父さんができただけでも奇跡だって思わないと、姉様」
94: 以下、
レヴィ「あ、おい」
ロック「なんてことを言うんだ、レヴィ」
レヴィ「んだよ。ちょっとはこっちのことも考えろ。いきなりお母さんって言われたら、ビビるだろ」
ロック「情けないな。俺を拾い上げてくれたときのレヴィはもっとかっこよかったのに」
レヴィ「それとこれとは全然状況が違うだろ!!!」
ロック「ほら、レヴィ」
レヴィ「あぁ……?」
ヘンゼル「姉様、ほら、アンパンマンを見よう」
グレーテル「そうね」
ロック「次はレヴィの番だ。二人は俺たちを受け入れたんだ」
レヴィ「ちっ……くっそ……。今回だけだからな!!!」
レヴィ「お、おい、お前ら」
グレーテル「なに、お姉さん?」
レヴィ「い、いまのは、いいすぎた……。まぁ、その、家の中限定で、お、おかあさんって呼ぶのは、別にかまわねえ」
ヘンゼル「おかあさん!」
96: 以下、
レヴィ「おい、くっつくな!! 鬱陶しい!!」
グレーテル「おかあさん!」ギュゥゥ
ヘンゼル「これがお母さんの匂いなんだね」
グレーテル「血の臭いがするけど、むしろそのほうが落ち着くわ」
ヘンゼル「そうだね、姉様」
レヴィ「離れろ!! 暑苦しいんだよ!!」
グレーテル「お母さんはまず、口調から直していかないとダメね」
ヘンゼル「鬱陶しいとか、子どもは傷つくよ」
レヴィ「知るかよ!! なんでお前らに指図されなきゃいけねえんだ!! あぁ!?」
グレーテル「もー、お父さんからも注意して」
ヘンゼル「お父さん、このお母さん、怖いなぁ」
ロック「それぐらいにしておいてくれ、レヴィ。二人が怯えてるじゃないか」
グレーテル「バーカ、アーホ、せいりふじゅーん」
ヘンゼル「あのお母さん、涙見せたらすぐに堕ちるね。単純だね」
レヴィ「おい、ロック。そいつらを八つ裂きにして魚雷に括りつけて発射するからよこせ」
97: 以下、
ロック「それじゃあ、次のルールを決めようか」
グレーテル「はぁーい」
ヘンゼル「次はどんなルールをつくるの?」
レヴィ「おい、ロック!! こっちの話はまだおわってねえんだよ!! きっちり始末つけさせろ!!」
ロック「勿論、家の中での役割さ。働かざるもの食うべからずともいうからね」
ヘンゼル「僕と姉様は掃除が得意だよ」
グレーテル「吐瀉物とかクソ尿とかは勿論、壁に染み込んだ血だって綺麗にする自信があるわ」
ロック「そこまでのものを掃除する機会はないと思うけどな」
レヴィ「いーや、あるかもしれねえぞ。掃除するのはてめえらの臓物かもしれねえけどな」
グレーテル「お母さんの内臓だったら、冷凍保存してあげてもいいわよ」
レヴィ「このやろう……!!」
ロック「とにかく、二人は家の掃除、洗濯係ってことでいいかい?」
ヘンゼル・グレーテル「「はぁーい」」
ロック「よしっ。料理は……俺がする」
レヴィ「まて、何で即決してんだよ。まずはあたしにも話を振れよ」
98: 以下、
ロック「え? レヴィ、自炊するのか」
レヴィ「これでも一人でいた時期のほうがなげえからな」
グレーテル「どうせ民家に押し入って、出来てるもの食べてただけでしょ」
ヘンゼル「そんな感じがするね」
レヴィ「うっせえなぁ。てめえも一緒に煮込むぞ」
ベニー「見てみなよ、ダッチ。これがロアナプラの光景かい」
ダッチ「いいや。俺はどこか長閑な公園にしかみえねえよ」
ベニー「奇遇だね。僕もさ」
ダッチ「気が合うな」
ベニー「じゃなきゃ、この船には乗っていないさ」
ダッチ「だな。なにはともあれ、賭けはベニボーイの勝ちだ」
ベニー「いいや、まだ結果は出ていない」
ダッチ「そうだったな。港に着けばきっと歓迎セレモニーが待ってる」
ベニー「どう切り抜けるつもりだい」
ダッチ「それは神のみぞ知る、だな」
99: 以下、
ロック「俺たちは基本的に仕事でいないから、掃除と洗濯は毎日してほしい。勿論、休みの日は手伝うけどね」
グレーテル「いいわ。綺麗なものを綺麗にするだけなら、苦じゃないもの」
ヘンゼル「そうだね。お父さんのシャツなんて、いつも綺麗だ」
ロック「いいや。汚れているさ。この場所で色んなことがあったから」
グレーテル「そんなことないわ。とっても綺麗。まるで、晴れた空のようにね」
ヘンゼル「うん。けど、お母さんの下着は汚れてそう」
グレーテル「きっとヘドロがついているわね。特にショーツの真ん中とかに」
レヴィ「言いたい放題いいやがって!!! んなによごれてるわけねえだろ!!!」
グレーテル「おとーさーん、おかあさんがおこったー」
ヘンゼル「うわーん」
ロック「レヴィ、落ち着け。まだこの子たちは言葉の選び方を知らないだけなんだ」
グレーテル「お母さんの下着を洗うときはゴム手袋をして、塩素水につけて洗ったほうがいいわね」
ヘンゼル「うん。僕もそう思うよ」
レヴィ「選び方は十分に知ってるだろ」
ダッチ「――ファミリーの団欒に割り込んですまないが、そろそろ港につくぞ。準備してくれ」
101: 以下、
甲板
レヴィ「……」
ロック「レヴィ? どうした」
レヴィ「ほらよ。双眼鏡で見てみろ。レンズの先に地獄が広がってやがる」
ロック「あれって……」
ダッチ「ホテル・モスクワだ、ロック。それ以外に何がある」
ベニー「海は広いようで狭い」
ダッチ「あんだけ派手に逃げ回れば、そりゃ袋小路に迷い込む」
レヴィ「最初から、逃げ場はなかったってことか」
ダッチ「あの双子にはな。仕方ねえさ。クイーンの近衛兵を殺しちまったんだからな」
ロック「説得をする。あの二人はもう人食い虎なんかじゃないんだ」
レヴィ「んなこと、姉御が信じるか? いや、信じたところで、あいつらに飛んでくるものは変わらねえさ」
ロック「けど!!」
レヴィ「楽しかっただろ、ロック? 良い夢を見た後は、コーヒーでも飲んで目を覚ませ」
ロック「くっ……」
102: 以下、

バラライカ「遅かったわね」
レヴィ「よう、姉御。どうしたんだ? こんな寂れた港くんだりまで。側近も一緒に釣りでもするのか」
バラライカ「釣りは終わったわ。大物を引き上げたのよ。我が同志たちと共にね」
レヴィ「クジラでも釣ったか」
バラライカ「いいや、ただの虎よ」
レヴィ「そうかい。シャチってことか」
バラライカ「出してもらおうか」
レヴィ「金ならないぜ。給料日前だからな」
ボリス「……」チャカ
レヴィ「やるかい」チャカ
バラライカ「やめなさい、レヴィ。こちらにはお前たちを殺す理由がない」
レヴィ「あたしにだってねえさ」
バラライカ「では、その銃口は誰のために向けている?」
レヴィ「自分以外のために、この鉛玉をつかったことはねえよ。今まではな」
103: 以下、
船内
ベニー「ロック、時間はない」
ロック「分かってる」
グレーテル「どうしたの、お父さん? 港についたんでしょ? ほら、早くいきましょう」
ヘンゼル「たのしみだなぁ。どんな家なんだろう」
ロック「……予定が変わった」
グレーテル「え?」
ロック「しばらく、ここに居てほしい」
グレーテル「どうして?」
ヘンゼル「お父さん?」
ロック「すぐに戻ってくるから。絶対に、ここを動かないで」
グレーテル「嫌よ。もう、閉じ込められるのは」
ヘンゼル「お父さん、おいていかないで」
ロック「戻ってくる。大丈夫だから。君たちを見捨てたりなんかしない」
ベニー「行こう、ロック」
104: 以下、

ダッチ「バラライカ、手を引いてはくれねえか。こっちも依頼を遂行する義務がある。安全な場所へ運んでほしいって言われてる。それができなきゃ、運び屋としての沽券にかかわる」
バラライカ「その失態はもみ消す。そして、依頼料の200%をこちらから払ってもいい」
レヴィ「いい条件だな。ダッチ、呑んじまうか?」
ダッチ「金で信頼を買おうと思っても、中々上手くいかねえことぐらいこういう商いをしていると分かってくるもんだ」
ダッチ「積まれた金は裏切らねえが、積んだ人間は平気な面で後ろから突いてきやがる」
バラライカ「では、聞こうか。お前たちが匿うことになんのメリットがある」
ダッチ「全くねえな」
バラライカ「では、引き渡してもらおう」
レヴィ「荷物を勝手に持っていく気か、姉御」
バラライカ「何故、そこまでする?」
ロック「――あの子たちは、もう人食い虎じゃないんです」
バラライカ「……」
レヴィ「バカ、なんで出てきたんだよ」
ロック「隠れたって、どうにもならないだろ。それなら、せめてレヴィの隣で二人を守ってやりたい」
105: 以下、
レヴィ「ぜんぜん、かっこよくねえからな」
ロック「レヴィの隣なら怖くないってことだ」
レヴィ「ふっ……ふっ……んっ……」プルプル
ロック「なにがおかしいんだ?」
レヴィ「ちょ、こっち、みんなよ……バカ……ふふっ……」
ベニー「お熱いことで」
バラライカ「あの者たちが何をしたのか、知っているはずだな」
ダッチ「ああ。運ぶものはきちんと調べるようにしている。動かすと火を噴くようなもんがあったら面倒だからな」
ベニー「あの双子はシチリアで変態御用達のスナッフポルノ撮影所で働いていて、そこで人間ではとても正気じゃいられないほどの狂気を浴びている」
ベニー「同室にいた同年代が出演し、目の前で殺され、そしてその死体をあの二人は処理をしていた。迫りくる自分の命日に怯えながら」
バラライカ「そうだ。そして追い込まれた虎は遂に行動を起こした。隙を見て、撮影所の光景をマスコミに送り付けた」
ロック「そのニュースは日本で聞いたことがありました。残忍な人間たちにより、保護された子供がいると」
バラライカ「だが、それで話は終わっていない。後日談のほうが、むしろ双子にとってはメインとなる」
ダッチ「保護された先でも大人を信じられず、逃げ出したんだったな」
バラライカ「その後の双子は人食い虎と化したわけだ」
106: 以下、
>>105
ロック「そのニュースは日本で聞いたことがありました。残忍な人間たちにより、保護された子供がいると」

ロック「そのニュースは日本で聞いたことがありました。残忍な人間たちから逃れ、保護された子供がいると」
107: 以下、
ダッチ「巡り巡って、ホテル・モスクワの二人がその餌食になった……」
バラライカ「我が同志たちが食い物にされては、黙っているわけにはいかない。分かるわね」
ダッチ「よぉくわかる。それでバカがどう消えたのかもしっかり脳裏に焼き付いてる」
バラライカ「そのバカの仲間入りするつもりかと聞いている」
ロック「バラライカさん。けれど、経緯を知れば、あの子たちばかりを責めることはできないはずです」
バラライカ「こちらも非は認めている。しかし、落とし前はつかさせてもらう」
ダッチ「ドローってわけにはいかねえのか」
バラライカ「あら、ダッチ。私たちに引き分けがあるとでも? ここにいるのは、死者かそれ以外の者だけのはず」
ダッチ「ちがいねえ」
レヴィ「やるしか、ねえか」
ベニー「もう少し、生きたかったな」
ダッチ「辞世の句にしちゃ、安っぽいな。ベニー」
ベニー「まだどうしても諦められなくてね」
レヴィ「ごちゃごちゃうっせえぞ、ベニー。死にたくねえなら、海にでも潜れ。そのまま遠泳すりゃあ、どっかの岸には辿りつくだろ」
バラライカ「無論、それは死体としてだけどね」
108: 以下、
ロック「レヴィ、すまない。俺の所為で」
レヴィ「全くだぜ。まずはお前から殺すか」
ロック「待ってくれ。殺すのはあとにしてくれ」
レヴィ「金輪際、てめえのケツはふかねえからな!!! 覚えてろよ!!!」
ロック「ああ、ちゃんと覚えておく。死ぬまではね」
レヴィ「よく言うぜ」
バラライカ「撃鉄を起こせ」
ダッチ「来るぞ!!」
レヴィ「どこまでやれるか、試してやるぜ!!!」
バラライカ「悪いが、すぐに終わる」
ボリス「……」チャカ
グレーテル「待って!!」
ヘンゼル「おかあさんを撃たないで!!」
レヴィ「な……!?」
ロック「ど、どうして!?」
109: 以下、
ボリス「大尉殿」
バラライカ「ああ。自分から出てくるとは、行儀が良いわね」
グレーテル「おばさんの狙いは私たちでしょ。おかあさんとお父さんは殺さないで」
ヘンゼル「僕らが死ねば満足なんでしょ」
バラライカ「ああ。文句はない」
ロック「どうしてでてきたんだ!!」
グレーテル「ごめんなさい……だって……お父さん……泣きそうな顔をしてたから……」
ヘンゼル「きっと何かあるんだって、姉様と話し合って……」
レヴィ「これだからガキは嫌いなんだよ」
ロック「じっとしていてくれっていったのに……」
バラライカ「私たちもケジメさえつけられるのであれば、他を撃つ理由もない」
ロック「待ってください!! 今の発言を聞いたでしょう!? この子たちは人間を取り戻している!! これからは全うに生きていける!!」
バラライカ「調べているのなら、当然、双子がどうやって今日まで生きながられて来たか、知ってるはずよ。そうよね、ダッチ」
ダッチ「……」
バラライカ「ロック。騙されるな。それがその双子の生きる術だ」
110: 以下、
ロック「うっ……」
バラライカ「この双子は大人への不信感から孤児院を抜け出し、文字通り体一つで世俗の隙間を縫ってきた」
バラライカ「双子は共に一人の大人に近づき、言葉巧みに誘惑し、人気のない場所で……」
ロック「やめてくれ……」
バラライカ「相手の性癖に合わせて、片方が服を脱ぎ、そしてもう片方はカメラを構える。相手が喰いついてきたところで悪魔はいつも微笑む」
バラライカ「言い逃れはできない鮮明な証拠をカメラで映し、二人は獲物の金と名誉と地位を奪い去る」
バラライカ「獲物が抵抗を見せれば、斧とBARを突きつけ、動けなくする」
バラライカ「その後、獲物となった者は皆、世間の晒し者になる。ただの変態としてな」
グレーテル「ふふ。そうね。おばさんの仲間も情けない声で言っていたわ。「大尉殿だけにはいわないでくれ?」って」
ヘンゼル「間抜けだったよね。自分が僕たちで気持ちよくなろうとしたのが悪いのにね」
グレーテル「そうよね。ただの変態なのは事実なのに」
バラライカ「同志メニショフと同志サハロフは今や、顔を出して街を歩けない状態だ」
グレーテル「当然よ。百歩譲って私ならまだしも、兄様の裸に興奮してたんだから」
ヘンゼル「気持ち悪かったよ。だから、殺してやったんだ。この社会からね」
バラライカ「幾多の人間をそうやって葬ってきたんだな。お前たちは。もう、戻れはしない」
112: 以下、
バラライカ「ロック。この二人はこういう人間だ。誰も信じず、人を食い物にすることでしか生きてはいけない」
バラライカ「お前を慕うような言葉は全て偽り。次はお前が殺されるだけだ」
ロック「けど……だけど……」
レヴィ「姉御。だったら、その心配はいらねえよ。こいつらはロックの前で肌を晒してねえ」
バラライカ「あなたも気を付けることね。男ばかりが被害を受けているわけではないから」
レヴィ「ガキには興味ねえよ」
バラライカ「双子の牙にかかる前は皆そういう」
グレーテル「私たちのお父さんとお母さんになってくれるって言った人は、今までに一人もいなかったわ」
ヘンゼル「みんな、僕たちの体しか見てなかった。でも、お父さんとお母さんは、僕たちを拾ってくれたんだ」
ロック「二人とも……」
グレーテル「裏切らないわ。お父さんとお母さんを裏切ることなんてできないもの」
レヴィ「……」
ベニー「良い話だけど。相手が悪すぎるな」
ダッチ「家族愛で揺らいでくれるなら、この街で幅を利かせてはいねえからな」
バラライカ「その言葉が信頼に足るものか、見極めさせてもらおう。――同志軍曹、準備はいいか」
114: 以下、
ボリス「はっ」チャカ
ロック「やめろ!!」
ヘンゼル「お父さん、いいんだ」
ロック「良いわけない!! 君たちは今から殺されるんだぞ!?」
グレーテル「見て、お父さん」
ロック「え……」
グレーテル「お空が綺麗よ」
ヘンゼル「綺麗な空。見ることが出来たね」
グレーテル「綺麗な海も見たかったけど」
ロック「見れる……見れるよ……」
グレーテル「お父さん。ありがとう。私たちのために泣いてくれて」
ヘンゼル「生きるために変態たちを殺してきたのは本当だから」
ロック「けど、命は奪っていないじゃないか」
ヘンゼル「死んだ方がマシだって、よく言われたよ」
グレーテル「それだけ悪いことをしてきたの。だから、温かいスープも、温かいベッドも、いらないって思ってた」
115: 以下、
ロック「待ってくれ……!」
ヘンゼル「けど、もっと温かいものをお父さんとお母さんから貰った気がする」
グレーテル「もう思い残すことはないわ」
ロック「いいかげ――」
レヴィ「いい加減にしやがれ!!」
ヘンゼル「お母さん……」
レヴィ「勝手な事ぬかして勝手に消える気かよ!! ふざけんじゃねえ!! ぜってえゆるさねえぞ!!」グイッ
グレーテル「ぐっ……」
レヴィ「お前らはあたしたちに依頼したんだろ? 荷物がわがまま言うんじゃねえよ。黙ってコンテナの中で揺られてればいいんだよ」
グレーテル「けど……」
レヴィ「掃除係はてめえらの仕事だろうが。あたしは絶対に手伝わねえからな」
バラライカ「前に出てくることは何を意味するか分かっているか」
レヴィ「徹底抗戦だ。たとえ姉御だろうが、あたしらの仕事の邪魔はさせねえからな」
ボリス「……」スッ
グレーテル「だめっ!」
116: 以下、
バァン!!!
ロック「なっ……!?」
グレーテル「あ……ぅ……」
ロック「おい!! しっかりするんだ!!」
レヴィ「姉御……!!」
バラライカ「遅いな」
バァン!!!
ヘンゼル「あ……ぁ……」
レヴィ「……!?」
ボリス「完了しました」
バラライカ「ご苦労。引き上げるぞ」
ダッチ「終わりか、バラライカ?」
バラライカ「ああ。人食い虎の最後は、呆気なかったわね」
ダッチ「ベニー、カンバスを持って来いよ。死体にかけなきゃな」
バラライカ「その必要はない」
117: 以下、
ロック「おい、しっかりするんだ!!」
グレーテル「お、とうさん……きれいだわ……そら……」
ロック「ああ……綺麗だ……海も……綺麗な海も……見るんだろう……」
グレーテル「みたかった……な……あたらしい……おうち……」
ロック「ああ……みせてやる……みせて……」
グレーテル「おとうさん……ありが……と……」
ロック「おい……ダメだ……これからなんだ……!! まだ……君たちは何も……知らない……じゃないか……!!」
レヴィ「……」
ヘンゼル「おか……さん……」
レヴィ「情けねえな。簡単にやられやがって」
ヘンゼル「ごめん……なさい……」
レヴィ「謝んなよ」
ヘンゼル「うれし……かった……おかあさん……が……できて……。ひど、い……こともいったけ、ど……おかあさん……す……き……」
レヴィ「分かったから、喋るな。死ぬぞ」
ヘンゼル「ごめんね……おか……さ……」
118: 以下、
ダッチ「行くぞ」
ベニー「ロック、もう終わりだ」
ロック「結局、こうなるのか」
ベニー「……」
ロック「変えられなかった。この子たちの未来を……」
レヴィ「ロアナプラはこういうところだ。明日には死んだ人間のことなんて誰も覚えちゃいねえのさ」
ダッチ「二人に何かかけてやる言葉はあるか、ご両人」
ロック「少しの時間だったけど、本当に楽しかった」
レヴィ「……」
ダッチ「レヴィは?」
レヴィ「まぁ、一緒に住めなかったのは残念だったな。別に、嫌いじゃなかったぜ」
ダッチ「……」
ベニー「くっ……」
ダッチ「ベニー、こらえろ」
ベニー「ごめん、ダッチ……くっ……うぅ……ククッ……」プルプル
119: 以下、
バラライカ「起きなさい。全て、終わった」
ロック「え?」
レヴィ「なに?」
グレーテル「あー、驚いちゃった」
ヘンゼル「すっごく痛かったから撃たれたかと思った」
バラライカ「我々のケジメはこれでつけたわ」
ダッチ「この結末でよかったのか」
バラライカ「我々は同志を葬った虎を撃ち殺したと判断した。心臓を撃ち抜き、夥しい出血も確認している。即死でないにしろ、致命傷になっている」
ダッチ「なるほど。もし双子が生きながられていても、おたくたちの処刑は終わったから関係ねえってか」
バラライカ「死体には興味ないわ。煮るなり焼くなり好きにしたらいい」
ダッチ「そっちに非があるって認めてたもんな」
バラライカ「だが、報復は必要だ」
ダッチ「あんたらしいぜ」
バラライカ「またね、ダッチ」
ダッチ「今後ともご贔屓に。女王様」
120: 以下、
ロック「これ、血糊だったのか」
グレーテル「あー!? お気に入りだったのにぃ。ぶー」
ロック「騙すなんて酷いな」
ヘンゼル「本当に死んだって思ったよ?」
グレーテル「お父さん、新しいお洋服、買ってほしいなぁ」
ロック「ああ、そうだね。でも、その前に……」
ヘンゼル「え?」
レヴィ「……」
ロック「お母さんを宥める方法を考えてくれ」
ヘンゼル「あ、嬉しかったよ。あの言葉」
グレーテル「そうね。――別に、嫌いじゃなかったぜ」キリッ
ヘンゼル「そんな感じだったね、姉様」
グレーテル「ええ、似てるでしょう? お母さんの愛をかんじちゃったっ」
レヴィ「遺言は……それでいいな……おまえら……」プルプル
ロック「火に油を注ぐなよ……」
121: 以下、
レヴィ「殺す!!! ぜってぇ殺してやる!!!! 死ね!!! ファック!!!」
グレーテル「きゃー」
ヘンゼル「おかあさんがおこったー」
ロック「レヴィ!! ストップ!!!」
レヴィ「お前らだけは生かしちゃおかねえぞ!!!! 今すぐ地獄に落ちて死ね!!!!」
グレーテル「こわーい」
ヘンゼル「うわーん」
レヴィ「あぁぁああああああ!!!!! だれがてめらの面倒なんかみるかぁぁ!!!」
ベニー「あはははは。ふぅ……。こみ上げる笑いをこらえるのが難しかったよ」
ロック「二人も言ってくれたらいいのに」
ダッチ「俺たちだって確認はしておきたかったからな。あの双子の言葉に偽りはねえかどうか」
ロック「どこで気が付いたんだ」
ダッチ「双子が顔を出したときに、一度銃弾を全部詰め替えているのが見えた。そのときだな」
ロック「それで、テストのほうは」
ダッチ「このロアナプラに身を挺して親を庇おうとする子どもなんて、あの天使たちぐらいだろ。大切にしてやれ。あと、うちの会社であの双子が働きたいっていうなら、考えてやってもいい」
122: 以下、
数日後 社内
ロック「おはよう……」
ダッチ「よう、ロック。目覚めは最悪って感じだな」
ロック「今日は朝から一悶着あってね」
ベニー「はい、コーヒー。大仕事でもあったのか」
ロック「ああ。朝起きたら俺の両脇に二人が寝ていて、それをみたレヴィがカトラス振り回し始めたんだ」
ダッチ「おうおう。惚気話を聞いたつもりはなかったが」
ロック「そういうのじゃないって」
ダッチ「他にどう聞こえた、ベニボーイ」
ベニー「いや、分からないね」
ロック「本当に大変なんだよ。毎日、ケンカするしさ」
ダッチ「いいんじゃねえか。それで、レヴィはどうした」
ロック「まだ自宅で戦闘中だと思うよ」
ダッチ「んじゃ、あと1時間はこねえな」
ベニー「来るまでにできる限りの準備はしておこうか。今日も忙しくなるだろうしね」
123: 以下、
自宅
レヴィ「早く食えよ!! ロックはもう行っちまったんだぞ!!」
グレーテル「お母さんが朝から暴れた所為で朝ごはんおくれたのにー」
ヘンゼル「そーだ、そーだ。お母さんがわるいー」
レヴィ「お前らがロックの傍らで寝息立ててたからだろうが!!」
グレーテル「お父さんと一緒に寝て何がダメなの?」
レヴィ「お前らのことを信じたわけじゃねえんだよ。いつロックが喰われるかわかんねえからな」
グレーテル「お母さんよりも先に私たちが食べちゃったら問題だもんね」
ヘンゼル「あ、それ面白そうだね、姉様。今度、お父さんと一緒にお風呂入ろうか」
グレーテル「いい考えね、兄様」
レヴィ「もう一回、死ぬかぁ?」チャカ
グレーテル「嫌なら奪えばいいでしょ。ここは屑が揃うロアナプラなんだから」
レヴィ「あぁ!! さっさと朝飯食えよ!!!! 食ったら行くぞ!!!」
ヘンゼル・グレーテル「「はぁーい、おかーさーん」」
レヴィ(くっそ……想像してたのと違うじゃねえかよ……。ま、いいけどな。これはこれで)
おしまい。
125: 以下、

良かった。ポカポカした
131: 以下、

説得力あってよかった
楽しかった
126: 以下、
おまけ漫画として収録されていても違和感ないレベル

元スレ
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