【前編】姉が結婚したので淡々と家族の話していくback

【前編】姉が結婚したので淡々と家族の話していく


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1:
特に大きな事件も落ちもないし、感動もありません
文章下手なので読みにくいと思う
うざかったらスルーしてください
一応まとめたので最後まで書いてみる
2:
うちは父母姉妹俺とばあさんの5人家族
姉は生まれた時子宮と腸が飛び出した状態で生まれたらしい
すぐに大きな病院に移されて手術
そのせいかなんか体の弱い子供だった
たぶん病弱な子供って大人からお姫様扱いされるイメージ
うちの姉もかなり過保護に育てられた
おまけにジジババにとって初孫とあり…小さい頃の写真見ると姉はいつもなんかヒラヒラしたスカートとかブラウス着せられてて、髪も長くてリボン結んで、どっかの令嬢みたいだったw
田舎だったから周りはトレーナーとかジャージっていう子がほとんどで、女の子も泥まみれで外を飛び回ってる感じ
そんな中に一人だけお姫様スタイルの姉w
当然浮きまくりww
姉自身おとなしい性格というか家の中以外ではほとんど喋らない子だったから周りに溶け込めないみたいだった
3:
一方俺は親が姉ばかりかまうので放置されてた
毎日幼稚園から帰ると近所の子達と外を走り回って、それなりに充実した子供時代
だけど姉がちょくちょく入院してたので、その期間だけ母親が家にいなかったのが辛かった
家事はばあさんがしてくれてたけど、はっきり言ってばあさんの飯はまずい
生臭い魚の佃煮とかただ焼いただけで味のない卵焼きとかが食卓に並ぶ
おまけにばあさんは掃除や片付けができない人なので数日で家がごみ屋敷となった
たまにじいさんがキレてばあさんを叱り飛ばしていたけど、改善されなかった
姉が入院中、唯一うれしかったことは姉が幼稚園の俺のクラスに顔を出さないことだった
姉はクラスに友達がいなかったので、遊び相手欲しさによく俺のクラスに来ていたのだが、当時の俺はそれが嫌で嫌で仕方なかった
なんで家の外でも姉の世話をしなきゃいけないのか
それで家に帰ってから何度も姉と喧嘩していた
4:
姉はおとなしい性格だが、家の中では暴君だった
しかも一度キレると手がつけられない
そして姉は陰湿だった
一旦はお開きになった喧嘩でも、いつまでも覚えていて俺が忘れて油断した頃に報復してくる
二人で楽しくトランポリンで遊んでいたと思ったら、笑顔だった姉が急に眉を吊り上げ、鬼の形相で飛びかかってきたこともあった
何かに取りつかれたように一瞬で顔付きが変わるのが怖かった
ちなみにその時俺は結構な高さのトランポリンから突き落とされて頭を打ち、救急車で運ばれた
最初に姉によって病院送りにされたのがこれである
後に姉に斧で爪を割られ、血が止まらなくなって倒れたのが二度目の救急車
あの時は子供ながらに死を予感した
血がドバドバ出て、それがもうマジで恐ろしかった
5:
そんなことが原因かなんだか母親は姉に冷たくなった
たぶん姉が薄気味悪かったのだろう
子供のくせに笑わない喋らない
そして変なタイミングで怒りを露にし、凶行に走る
何考えてんだかちっともわからない子供だったんじゃないかな
なんか顔も同じ年の子供と比べて老けてたし
ちなみに母親は姉を16で産んでるので、その当時20代前半
ばあちゃんに毎日嫁いびりされながらの子育てで疲れてたんだと思う
だけど変なプライドがあって毎日熱心に姉の髪とか服は整えてた
それ以外は基本姉は母から放っておかれてた
友達のいない姉はいつも1人家の中でぬりえを黒く塗りつぶしたり、絵本を糊付けして開かないようにしてみたり、自分なりの遊びを楽しんでいた
6:
16歳でおかあさん
7:
姉が幼稚園の年長、俺が年中になった時、妹が生まれた
そしてそれまで親戚や大人達からチヤホヤされていた姉の時代が終わる
妹はふわふわで栗色の髪をした目の丸いかわいい顔立ちをしていた
マジで妹は小さい頃天使みたいだった
こいつが後に悪魔へと変貌するなんてこの時誰が予想しただろうか…
姉は妹がチヤホヤされている状態が気に食わなかったらしく、寝ている妹に鼻くそをつけたりして地味に嫌がらせをしていた
しかしそんな姉にもついに友達ができた
8:
実家の裏に新しく建った家に引っ越してきた家族がいたのだが、そこに姉と同じ年の女の子がいたのだ
都会から引っ越してきた家族らしく、子供だった俺でも感じ取れるくらいおしゃれな雰囲気の一家だった
田舎に突如現れたおしゃれ一家
田舎に似合わぬ小綺麗な娘
当然周りから浮いていて、外れ者同士そこの娘と姉は仲良くなっていった
おかげで幼稚園の俺のクラスに姉が顔を出すことはなくなり、俺はせいせいしていた
9:
友達ができた姉は言葉づかいが生意気になり、ますます母は姉から遠ざかっていったのだが、姉はもうそんなに寂しくなさそうだった
母は妹に夢中になり、姉の時よりさらに甘やかしていた
妹はとてもかしこい子で、大人が喜ぶようなことばかりしていた。
いつも笑顔だし素直だし人に甘えるのがうまくてとても可愛がられた
もちろん俺も妹ラブだったw
姉はいらないからもう1人くらいこんな妹がいてくれたらいいと思って、七夕の短冊にその通り書いたら親父にぶん殴られた
10:
親父は元ヤンで口が悪くすぐに手が出る気の短い男
当時はパンチパーマに柄シャツ着て金のネックレスなんかぶら下げてた
もちろん出掛ける時はセカンドバッグ
たまのおしゃれは紫のスーツw
そんな親父は男の俺には厳しかったが、姉には弱かった
みんなが妹ばかり可愛がる中、親父だけは姉を気にかけていた
姉もどちらかというと母親より親父のほうが好きだったんじゃないかな
俺にとってはただ怖いだけの親父だったけど
そんで友達のできた姉は前より少し明るくなり、無事幼稚園を卒園した
で、小学校の入学式を控えた春休み、俺と姉の乗ったワゴン車にダンプカーが突っ込んだ
11:
母は俺と姉をワゴン車に残して(路駐して)銀行に行っていた
そこに脇見運転のダンプカーが後ろから突っ込んだのだ
唯一の救いはまだ赤ん坊だった妹を家に残して来ていたこと
もし妹が乗ってたら本当にやばかったと思う
俺と姉はシートベルトをしていなくて、衝突の際の衝撃で体が浮いた
で、目を開けた時俺はぐちゃぐちゃになった車内にうずくまっていた
隣で姉は床に横たわり、ぴくりともしていなかった
あ、姉死んだのかも…と俺は思った
なんだか妙に冷静だった
少ししたら半狂乱になった母親が若い男をひきずって車に近づいきて、俺が見ている前で男をボコボコ殴り出した
男は泣きながらひびの入った車の窓ガラスを割り、俺を車外に引っ張り出してくれた
後から知ったのだが、男はダンプカーの運転手だった
12:
読んでますよ
13:
>>12
ありがとう
1人でも読んでくれてる人いるならもう少し続けてみようと思う
14:
助け出された俺は近くの工場から野次馬として出てきたおばちゃん達に囲まれ、体をさすられたり何か色々聞かれたりした
一方母は車内で横たわる姉の名前を何度も叫んでいた
しばらくすると姉は俺と同じように救出された
姉は生きていた
だけど運転手から抱き抱えられ地面に下ろされた時、体がカクッとなって座りこんでしまった
俺を取り囲んでいたおばちゃん達が一気に姉の元に駆け寄る
俺は結局額にたんこぶが出来ただけだった
おばちゃん達に支えられた姉はひたすら立てない、おなか痛いと訴えていた
すぐに救急車が来て、姉は病院に運ばれた
運ばれた病院は事故現場から目と鼻の先だったので俺も後からついて行った
15:
病院について姉の検査が終わるのを待つ間、俺は警察から事故当時のことを色々聞かれた
別に自分は悪くないのに、なんだか妙に緊張したことを覚えている
検査の結果姉は即入院となった
足と内蔵が傷ついてしまったらしい
警察に聞かれた姉は、急に大きな音がして真っ暗なトンネルを走っていたら、お母さんに呼ばれたので引き返した
そうしたら車の中にいたとわけのわからないことを話した
ちょっと怖かった
今思えばあの時姉は三途の川に向かっていたんじゃないだろうか…
18:
母は姉の入院に付き添うことになり、ここからまた俺の地獄の生活がスタートする
母のいない家をばあさんが仕切るようになり、家の中はたちまちゴミ屋敷と化した
酒臭くてしょっぱいだけの煮物やゲロみたいな味噌汁などの食事
それでもいちおう孫ラブなばあさんは張り切ってまだ赤ん坊の妹を世話するわけだが、水と間違えてじいさんの日本酒飲ませてしまったり、散々だった
しかも妹はなぜか家族の中でばあさんだけが苦手で、ばあさんに抱かれるとギャーギャー泣く
そんでじいさんに叱られるばあさん
ついにばあさんは孫である俺の妹を、大嫌いと言い放った
そしてうちに来る近所のばあさん連中に母親の悪口を吹き込みはじめた
ひどいのはその場に俺を置き、俺の口から母の情報を吐かせようとしたこと
その時にはすっかりばあさん嫌いになっていた俺は、何を聞かれても母の好きなところしか言わなかったけど
子供でもやっぱり声や表情から、相手が悪意を持って質問してきてることくらいわかる
19:
入院中、姉の見舞いに何度も親父と病院に通った
いつも母親は不機嫌だった
原因はもちろん姉の入院生活にある
四六時中姉と顔を合わせ、毎晩おねしょをする姉の着替えを手伝う
車椅子の姉をトイレまで連れて行くのが、華奢な母親がには大仕事だったみたいだ
だけど母親が一番苦労していたのは姉の食事だった
姉はおかゆが食べられない
ドロドロしていてゲロを食べているみたいだから気持ち悪いのだと言う
しかし内臓が傷ついている姉に出される入院食は毎日おかゆ
一切食事には手をつけず、毎日病室に来た栄養士とバトっていたらしい
結局姉はそれから許可が下りて、毎日ひとりだけチャーハンを食ってた
20:
そんな日々が続き、ついに地獄のばあさん月間が終わりを告げる
姉が退院する日が来たのだ
退院の日、送りに来てくれた看護師さん達がこころなしか清々した顔をしていた
家の外ではおとなしい姉だったが、入院中は色々とわがままを言っていたらしい
数日して姉はやっと小学校に通いはじめた
そして学校から帰って来ると毎日泣いていた
姉は早くもいじめの標的にされていたのだった
それから中学を卒業するまで姉は延々といじめられ続ける
21:
俺は姉のとばっちりでいじめられたりからかわれたりされないよう細心の注意を図りながら学校生活を送るようにしていた
学校ではいつも姉と関わらないようにした
姉は幼稚園の時のように俺の教室に顔を出すことはなかったので、幸い俺はいじめの標的にはされず、平凡な小学生時代を送る
思えば元々ちょっと歪んだところのある姉だったが、完全に歪んでしまったのはいじめが原因だろう
22:
姉は時々男子に殴られたり蹴られたりして怪我をした
持病もあって学校を休むことが多かったので周りから遅れてしまうことが多いようだった
久しぶりに学校へ行くと係やクラスの決め事が変わっていたりして、そのことを誰も姉に教えてあげないので、そのたび姉は一人だけ間違ったことをして恥をかいた
担任にも放っておかれ(むしろ面倒臭い生徒だと思われ遠ざけられていたっぽい)、掃除の時間に資料室に閉じ込められた姉に六時間目が終わるまで気づかない、一人だけ給食を貰っていない姉に気づきながら何も注意しないというボンクラ教師さえいた
母親の趣味で相変わらずお姫さまスタイルで通学していた姉
文房具などの持ち物もしゃれていたので、よく盗難にあっていた
23:
いじめを煽っていたのは姉の唯一の友達である裏の家に住む娘だった
その子は姉が入院中、クラスの女子のボス的存在となり、いじめの矛先をなぜか友達である姉へと向けたのである
このような話を俺は寝る前に姉から聞かされていた
その頃親父と母親は妹と寝て、俺と姉は2人だけで別の部屋に寝かされていた
俺は姉が嫌いだったので、姉のいじめ話をざまーみろとばかりに面白おかしく聞いていたのだが、姉は本気で悩んでいたようだ
24:
姉はおねしょが長引いた子供だった
中学に入るまでおねしょしていた
持病というのはそれ
姉はあちこちの病院に連れて行かれ、様々な治療法を試したが、一向に治る気配はなかった
ついには山奥の民家で怪しげな気功師に診てもらうなどしたが全然駄目
最後の病院で言われた原因がストレスだった
昼間のストレスが夜間におねしょという形で表れているのだろうという話だった
姉のストレス…それは間違いなく学校でのいじめだった
25:
それまで姉が泣いて訴えても子供同士の喧嘩くらいにしか思っていなかった親父と母親の態度が変わった
それから姉が休みたいといえば学校を休んでもいいということになり、姉はいくらか落ち着いた
少し休むと楽になるらしく、ちょこちょこは学校に通ったりしていた
姉が学校を休んだ時、相手をしてやるのはじいさんの役目だった
じいさんは寡黙な日本男子で子供に媚びるようなことは一切しないが、姉は逆にそこがツボだったらしく、じいさんの後をついて回っていた
じいさんのバイクの後ろに乗って墓掃除に行ったり、にわとりの世話や包丁を研ぐ様子を観察したり、夕方にはじいさんと一緒にこたつで羊羹食いながら水戸黄門を見ていた
そんなことをして過ごした日の夜だけ、姉は明るかった
しかし学校に行けば相変わらずいじめられていて、帰宅後黙々と蜘蛛の巣に蟻を貼り付けたり、羽をもいで逃げられなくしたトンボにカマキリをけしかけ、その様子をじっと見つめる姉の姿を俺は何度も目撃した
26:
あと姉はよく本を読む子供だったのだが、その頃になると世界の悪魔辞典とか黒魔術とか妙なタイトルの本を読むようになった
俺がいまいちわからなかったのは、時々いじめの首謀者である姉の友達がうちに遊びに来ることだった
学校では姉をいじめているくせに、放課後2人きりになると急に優しくなるのだという
俺はそんな奴放っておけと言いたかったが、友達が遊びに来ると姉はうれしそうだった
変な姉だ
いじめられてるのに
29:
そんなふうにして姉の小学校卒業が迫ったある日、じいさんが入院した
家族に暗い雰囲気が漂った
しかしじいさんはすぐに帰って来て、前と同じ生活を送るようになった
姉は安心して小学校を卒業し、中学へ入学した
姉はすぐに別の小学校出身の生徒と仲良くなり、また少し明るくなった
入った部活がクソだったのでやはりいじめられたみたいだが、部活以外の学校生活は友達が出来たおかげで順調だった
親父も母親も安心していた
一方俺は小6
妹とバトルの真っ最中だった
31:
姉以上に甘やかされて育った妹は当時小1
毎朝俺に背負われて登校する
理由は歩くのがかったるいから
世界は自分を中心に回っていると思っているのだ
しかし見た目だけはまだかろうじて可愛かった
中身はマジでクソ
俺が必死こいてやった宿題のノートのページにう○こして閉じて机に放置するようなクソ
朝に慌ててノートをランドセルに突っ込んで登校して、いざ提出しようとしたらう○こでノートのページ開かないwwww
おまけに俺がノートを取り出した瞬間から教室内に漂うう○こ臭wwww
女子から臭いの元を辿られ白い目で見られる俺wwww
あの時は本気で妹殺してやろうかと思った
挙げ句に宿題忘れたと言ったら、本当はやってないから忘れたと嘘ついてんだろと言った担任wwww
提出したくても出来ねんだよwwwwうんこwwww
今思えばあの時しれっとノート提出して担任困らせてやれば良かった
32:
一方姉は時々中学で出来た友達をうちに連れて来ることがあった
姉の友達はブスだった
これまで人生の中で出会った女の子の中であいつが一番のブスだ
とにかく衝撃的なツラと天パ
ミスターポポに似ていた
ポポがうちに遊びに来た時、たまたま居た叔父がポポのツラ見て笑いすぎて呼吸困難起こした
姉曰く、ポポは学校でみんなからピーマンと呼ばれているらしい
しかしブスでも姉の友人だ
俺達家族はポポに優しく接した
叔父だけはそれからもポポに会う度、鼻から豆飛ばしてみてくんない?とか言ってたがw
33:
ある時からポポがうちに来なくなった
姉に尋ねると、ポポに彼氏が出来たのであんまり遊べなくなったと言う
家族はちょっと心配したが、姉はそれからも学校に通い続けた
一方俺はというといよいよ小学校卒業
これで学校でも妹の世話をしなくて済むとなると、踊り出したい気分だった
実際ちょっと踊った
うちは母親がよく踊る家庭
34:
踊るといってもちゃんとしたダンスじゃなくて適当な創作ダンス
俺が小学校中学年になったくらいからそれまでばあさんにいびられおとなしかった母親が劇的な変貌を遂げたのだ
金髪網タイツにミニスカという出で立ちでなんか性格もファンキーな人になった
いきなりペットショップで山羊を衝撃買いしてきたり野生のカラスをてなづけて相棒にしたり、猫に落書きしてみたり
あと夕飯がロシアンルーレットおにぎりとかロシアンルーレット餃子とかになった
今考えればあの頃の母親は完全におかしかった
きっとばあさんにいびられすぎて頭がどうかしてたんだと思う
母親が家事の合間に変なダンスを踊るので、姉と妹も巻き込まれて踊っていた
妹のダンスは可愛かったが、無表情で踊る姉は不気味だった
姉のは踊るというよりただツイストしてるだけ
35:
で、俺は晴れて中学進学、姉は中2になった
また同じ校舎に通うことになって、俺はやはり学校で姉と関わることを避けていた
さすがに中学となると部活以外で上の学年と滅多に関わることはないから、姉を避けることは容易だった
部活を始めたり、女子にコクられて付き合ったらなぜか一週間でふられたり、まあそれなりに中学生活を満喫する俺
一方姉はついに例の病が発症してしまった
中2病だ
36:
姉は不登校となり、1日中家でポエムを書いたりして過ごすようになった
ちょうどその時、姉の心の支えであるじいさんが体調を崩して入院してしまったこともあり、姉はほとんど喋らなくなった
だけどたまに妹の宿題を見てやったりはしていて、優しい姉だった
そして年が明けて、じいさんが死んだ
37:
残念ながら連絡を受けて病院に向かった時にはすでにじいさんは天国の住人になっていた
姉はずっと泣いていて、泣きすぎて呼吸困難みたいになった
いつもは意地の悪いばあさんも、別人のように弱々しくなった
だけど家族の中で一番の取り乱していたのは母親だった
母親にとってじいさんは義父である
しかしわけあって天涯孤独だった母親を息子の嫁として迎え入れ、本当の娘のように可愛がってくれたのはじいさんだった
ばあさんにいびられている母親を助けていたのは、親父ではなくじいさん
料理下手のばあさんのせいで、それまでロクな食事をしていなかったじいさん
母親が嫁に来たおかげで食事はだいぶ改善され、母親の作る料理を口下手なりに頑張って誉めていたじいさん
ばあさんの目を盗んでこっそり母親に夕飯のリクエストを伝えにきたりもしていたそうだ
母親にとってじいさんは優しくかわいい義父だったのだ
38:
じいさんの死で、我が家はすっかり暗いムードに包まれた
そんな中、なんと一番に立ち直ったのは姉だった
姉は中3になってまた学校に通い始め、受験勉強も開始した
毎日帰宅するとじいさんの可愛がっていた鴨の世話をし、鴨の卵でじいさん流卵焼きを作り、それを食べると夜遅くまで勉強する
それまでは周囲から馬鹿だと思われてた姉
実は中3まで、姉の同級生はみんな姉を軽度の知的障害だと勘違いしていた
小学校時代は何度か普通学級ではなく、特別学級に通わせようという話も出たらしい
39:
もちろん姉に障害はない
学校を休みがちだったので勉強について行けないだけだったし、とろいから周りと同じことが同じスピードで出来ないだけだ
だからただ集団から外れてしまうだけなんだ
勘違いされていたのは、たぶん姉の態度が原因だったのだろうと俺は思う
姉は他人が怖いので基本目を合わせない
これはいじめを受けた後遺症だろうか?
そして姉は周囲の人間と視線が合わないよう、学校にいる間は常に遠い目をしてボーッとした表情になってる
誰かに話しかけられると返事をしないか、返事をしても妙な間があく
これは変なことを言って相手を嫌な気分にさせないよう、よく考えてから言葉を出しているので仕方ない
相手に不快感を与えていじめに発展しないよう、慎重に言動を考えるので、自然と周りから遅れてしまう
かわいそうな奴だ姉
だけど猛勉強の結果、学年で5位以内に入るほど成績を上げた姉は、見事障害に対する疑いを晴らした
40:
そして姉は高校に合格した
なぜか入った高校は地元で有名な底辺高校だった
母親は姉よりも先に高校の制服を着てうれしそうだった
母親は中卒だ
制服に憧れていたのだろう
ちなみに俺の一族はヤンキーばかりなので、親戚も含めて姉が初めての高卒者となる
母親の制服姿を見て、姉は笑っていた
俺も親父も笑った
妹だけはママ可愛いよと言って媚を売っていた
なんだか幸せだった
あのどうしようもなかった姉が、今や女子高校生だ
俺は今度は自分が受験生ということも忘れ、喜んだ
41:
姉の中2病発症、そして復活
後から母親に聞いたのだが、これにはまたもや学校でのいじめが関わっていた
姉は中2になり、またもやポポと同じクラスになった
そしてポポと姉の地味コンビに新しくもう1人が加わった
女が3人集まると、必ずいざこざが起きる
母親がそう説明した
母親はそれが嫌で、というより女同士のネチネチした関係が嫌で友達は一切作らない主義の人
で、なんか3人に問題が起きて、ポポ達から仲間はずれにされ孤立した姉は学校に行くのが辛くなり、不登校となった
ちなみに姉とポポの中に新しく加わった友人はすげー美人
間違いなく学校一の美人
イギリスとのクォーターで、滝川クリステルに似ていた
しかも巨乳だった
この後もちょこちょこ出てくるのでクリステルと呼びます
42:
不登校になった姉を変えたのは、生前じいさんが残したという言葉だった
じいさんは死ぬ直前まで不登校の姉を心配し、頑張って学校に行ってほしいと言っていたのだ
そのことを聞かされた姉は一念発起し学校に復帰
受験勉強に取り組み始めたのだという
俺が学校で友達と馬鹿やったり先輩にいびられたりしている間、姉にそんなドラマがあったとは知らなかった
ほとんど義務教育を受けずにきてしまった姉が独学で高校に合格するなんて奇跡だ
俺は改めてじいさんを尊敬した
あとなんでこんな優しくて立派なじいさんが、がさつで人の悪口ばかり言ってるばあさんを嫁にもらったのか疑問に思った
ばあさんも昔は可憐で奥ゆかしい女性だったのだろうか…
43:
姉は毎朝クリステルと一緒に高校へ通うようになり、クリステルはいつも我が家にいりびたるようになり、いつの間にかクリステルの分の箸と茶碗が食器棚に並べられるようになった
姉は不登校の原因を作ったクリステルを許し、2人はいつの間にか親友になっていた
クリステルは俺の中学で男子生徒憧れの先輩である
そんなクリステルが毎日うちのリビングで夕飯食ってる
たまにクリステルのほうから話しかけて来る
これはもう自慢するしかない
俺は頻繁に友達を家に招くようになった
しかし姉とクリステルは高校生
やはり色々と外へ繰り出したい年頃のわけで、ほどなくして姉とクリステルは家ではなく外で遊ぶようになり、クリステル目当てだった俺の友達もうちに来なくなった
まあいい、俺も受験生だ
勉強しなくては
44:
さっき姉を馬鹿呼ばわりしたけど、実は俺も馬鹿だ
姉ほどではないにしろ、受験はやばい
一応問題集とかやってみるが、成績はなかなか上がらなかった
そこで俺はついに姉を頼る
姉に頼ったのはおそらくこの時が初めて
姉はちょっと先輩面しながら、俺に究極の勉強法を伝授してくれた
だがこの勉強法は俺に真似できそうにない
仕方ないので家庭教師をつけてもらうことにした
家庭教師は男だった
いい人だった
この人のおかげで俺はまあ馬鹿呼ばわりされない程度の微妙な偏差値の高校に入学する
45:
クリステルの影響で髪を染め、化粧をするようになった姉は、すっかり今時の女子高生になっていた
彼氏もできた
姉の彼氏は眼鏡をかけた真面目そうな人で、よくうちに遊びに来ては、その頃まだ小学生だった俺の妹とゲームしてやったりするいい人だった
ただ人見知りみたいで、男の俺には挨拶するくらいだったが
でも俺に対してちゃんと気を遣ってくれてる感じがして、好感が持てた
姉の彼氏が遊びに来るようになる少し前、うちは家を建て直していた
前の家は大工だったじいさんが建てたもので、結構古かった
ただじいさんが生きている間は壊さないと決めていた
じいさんが死んで2年
ついに思い出の残る我が家が取り壊される日が来た
ボロかった家はあっという間にただの瓦礫になった
瓦礫をバックにして家族写真を撮った
みんな泣き笑いみたいな表情をしていた
46:
仮住まいに移るため荷物を整理していたら、ばあさんの箪笥の奥から古い写真が一枚出てきた
まだ青年で髪もふさふさだったじいさんが、赤ん坊だった親父を抱いている写真
じいさんはすごく穏やかな優しい笑顔を浮かべていた
姉はその写真を自分にくれと言ってアルバムに仕舞った
今でも姉はあの写真を大事に持ってる
写真嫌いだったじいさんの数少ない一枚
48:
そんで仮住まいとして、庭にプレハブ小屋を建てた
俺と姉は元々あった離れで生活するようになった
どうしてわかったのか、当時うちで飼っていた猫が、仲間の猫をたくさん連れてくるようになった
たぶん猫は「もうすぐ前の家より広い家が建つんだぜ、だからお前らも住まわしてやるよwww」って感じで仲間を呼んだんだと思う
俺も姉も妹も母親の影響で猫好きだ
親父は犬好きだが猫も嫌いではない
寂しい仮住まい生活で、俺達はひたすら猫を可愛がった
猫は調子に乗った
それからも猫友達を連れて来たり、子猫が産まれたりして、結局我が家の飼い猫は16匹に増えた
母親は両肩に猫を乗せて飯の支度してた
姉は猫16匹とハンモックに乗り、重さに耐えきれなくなったハンモックが切れて腰をしたたか床に打ち付け悶絶していた
49:
そんなある日、事件が起こる
16匹のうちの1匹、姉のお気に入りだったサルティンバンコという名前の猫が死んだ
叔父がうっかり車で轢き殺してしまったのだ
姉号泣
叔父は青い顔でひたすら姉に謝っていた
その光景を見て、ばあさんが信じられない言葉を口にした
ばあ「いいよいいよ。猫畜生なんて全部轢き殺してしまえw」
ばあさんは確かにそう言った
嬉しそうに笑ってた
俺は悪魔って本当に存在するんだって思った
ばあさんは動物嫌い
嫌いなら嫌いで関わらなければいいのに、わざと犬を蹴ったり叩いたり、猫を脅かしてびびる姿を見て楽しんだりするような最低な奴
姉が中3の時可愛がっていた鴨を勝手に処分するという前科のあるばあさん
ついに姉がキレた
51:
いつもは口下手で、小学生の妹と口喧嘩しても勝てないような姉が、般若の形相でまくし立てた
姉は色々とたまっていたのだろう
猫の件から始まり、鴨→ばあさんが母親をいじめること→妹の悪口を近所中に言いふらすこととどんどん内容が発展していった
妹は赤ん坊の頃からばあさんの性格を見抜いていて、まったくなつかないどころか、高学年になり反抗的な態度を取ることも多かったので、ばあさんは妹を嫌っていたのだ
そして姉はばあさんが片付けをしないこと、家事ができないこと、風呂に入らなくて臭いこと、歯を磨かなくて臭いことまで言い出して、ついに言い返すことができなくなったばあさんは姉に掴みかかった
華奢な姉にデブのばあさん
しかもばあさんは趣味の畑仕事とダンス教室で鍛えた強靭な体の持ち主
一方姉は運動嫌いでひょろひょろの体つき
ディズニーランドを一日歩き回っただけで寝込むような虚弱体質
勝敗は目に見えている
52:
慌てて仲裁に入る親父
俺も姉からばあさんを引き離すのに手を貸した
庭で喧嘩してたので近所からは丸見え
見栄っ張りで自慢話ばかりしている嘘つきばあさんは、とんだ恥をかかされたと姉をなじった
そして近所中に聞こえる大声で、「この孫は昔から頭のおかしな子なんです。あたしは危うくこの子に殺されかけた」と言い放つ
姉はショックで呆然としていた
53:
その後、家が建つまでばあさんは従兄弟の家に暮らすことになり、少しの間平穏が戻ったが、姉は常にイライラしていた
そしてある時、俺と姉がそれぞれ学校から帰って来ると、妹が大泣きしていた
わけを聞くと、ばあさんが来て猫を全部捕まえ、どこかに連れて行ってしまったという
母親も落ち込んでいて、ずっと暗い顔をしていた
すぐに追いかけたけど、猫達はもう手の届かないところに行ってしまっていた
簡単に言うと、ばあさんは猫を閉じ込めた段ボールを川に投げ捨てたのだった
今まで動物嫌いでもそこまではしなかったばあさん
これは間違いなく姉への当て付けだろう
姉は責任を感じたのか、その日は夕飯を食べずに寝てしまった
54:
マジで老害だな
55:
完全にキチガイだなBBA
昔はこういうBBAやGGIけっこういたよな
56:
そして翌朝、姉はざんぎり頭で家族の前に現れた
なぜかその頭を見て妹がギャン泣きした
昨日までロングのストレートだった姉が、朝になったら失敗した木村カエラのような頭になっていたのだ
母親が気を利かせて美容師の叔母を呼び、なんとか姉を人前に出られる髪型にした
理由を聞くと、ばあさんのことでむしゃくしゃした姉は深夜に工作用のハサミで髪を切り刻んだのだという
この一件でそれまでばあさんに対して強く言えなかった親父がキレてくれた
ばあさんはおとなしくなった
57:
感心したのはいきなり似合わないベリーショートになった姉を見ても彼氏の態度が変わらなかったこと
俺はなんとなく、この人が将来の義兄さんかぁwwwとさえ思っていた
しかし高校卒業後、姉の彼氏は激変する
姉は高校卒業後、就職を勧められたが断り、近くのスーパーでレジ打ちパートを始めた
ちなみにクリステルはキャバ嬢になったw
で、姉の彼氏はというと都会のおしゃれなパスタ屋に就職した
それでも姉達の交際は続いていた
ここまでで俺は何をしていたかというと、高校では部活に入らず適当にバイトしてみたりそのバイトをバッくれてみたり彼女が出来たり振られたりしてました
58:
うちに遊びに来る姉の彼氏はだんだんあか抜けて来て、チャラくなってきた
眼鏡がいつのまにかおしゃれ眼鏡になり、ファッション誌のストリートスナップに出たりした
そしてある時から姿を見なくなった
何の気なしに「姉ちゃんの彼氏最近どうしてるの?」って聞いたら、姉はあっさり別れたよと答えた
別れた原因はデート中、胃腸炎になった姉を置き去りにして彼氏がおしゃれブランドのショップを探しに行ってしまったからだという
姉の彼氏はいつの間にか中身まで軽薄な男へと成り下がっていた
そのデートの少し前から、姉は彼氏の変化が許せなかったのだという
それまでは優しくて人の悪口なんか言わなかった彼氏が、就職して少し経った頃から道ですれ違った人に対して「あいつブスじゃね?」とか「だせぇwww」とか言うようなったらしい
俺はその話を聞いて別れて正解だと思った
姉も清々しているようだった
引用元: ・姉が結婚したので淡々と家族の話してく【後編】姉が結婚したので淡々と家族の話していく
※12:24 公開予定
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