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曜「ココロのスキマ、お埋めします?」


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私の名は喪黒福造
人呼んで「笑ゥせぇるすまん」
ただのセールスマンじゃございません
私の取り扱う品物はココロ
人間のココロでございます
ホーッホッホッホァーッ!!
この世は老いも若きも男も女も
心のさみしい人ばかり
そんな皆さんのココロのスキマをお埋め致します
いいえ、お金は一銭もいただきません
お客様が満足されたら、それが何よりの報酬でございます
さて、今日のお客様は──
渡辺 曜(16)学生
『幼なじみ』
2:
/1
はあ……今日も千歌ちゃんと梨子ちゃん、すっごく仲良かったなあ……
なんか微妙に疎外感もあるし……あの二人の間に割り込むなんて無理だよ。
曜「私、どうすればいいんだろう」
喪黒「痛っ──」
ヤバっ、ずっと下向いてたからぶつかっちゃった。
曜「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか!?」
喪黒「いえいえ、お気遣いなく……しかしお嬢さん、下を向いてばかりいては危ないですよ〜」
曜「す、すいません……ちょっと考え事してて……」
喪黒「あなたのようなお若い方が悩み事なんていけません。お友達なんかとパ〜っとやって、日頃のストレスを発散されてはいかがです?」
曜「友達、ですか……?今はちょっとそういう気分じゃなくて」
喪黒「なんだかワケありみたいですね〜あっ、そうそう……私セールスマンをやっておりまして──」
曜「……はあ。ココロのスキマ、お埋めします?」
この人ってもしかして……っていうかもしかしなくても怪しい人じゃあ……
喪黒「喪黒福造と申します。学生教育の一環といたしまして、あなたのような悩み多き学生の方にアドバイスする仕事をしているのですが……いかがです?」
曜「私、お金なんか持ってませんけど……いいんですか?」
喪黒「ええ、もちろんです。お金は一銭もいただきません。お客様が満足されたら、それがなによりの報酬でございます」
曜「…………」
3:
/2
とかなんとか言っちゃってる内にバーに連れて来られちゃったけど、大丈夫かなこれ。
曜「私、小さな頃から付き合ってきた仲の良い幼なじみがいるんです。でも、最近その娘とうまくいってなくて」
喪黒「またどうして?喧嘩でもされたんですか」
曜「いえ、別に喧嘩とかじゃなくって……その娘にもっと別の仲が良い娘ができちゃったんです」
喪黒「なるほど〜わかりました。幼なじみに新しいご友人ができて、どう接していいかわからず、関係がぎくしゃくしているんですね〜」
曜「そう、そうなんです!あっ──!?たはは〜なんか人前でこういうこと言うのって恥ずかしいなあ」
喪黒「なにをおっしゃいますか。恥ずかしがることはありません。いつどの時代においても、青春は一度きりです。渡辺さんが悩むのは、それだけご友人のことについて真剣に考えることができている証拠ですよ〜」
曜「えへへ〜照れますよ」
喪黒「あなたは最近の若い方にしては、とても珍しいタイプのお方です。一人のご友人をそこまで大事にできるのは、大変素晴らしいことだと思います」
曜「いやいやそんなことは──」
喪黒「ですが!一人に固執しすぎるのも考えものです。行き過ぎた友情は依存の元……何事も適度が一番ですからねえ〜」
4:
曜「い、依存だなんて……そんな大袈裟な」
喪黒「いいえ、あなたはその幼なじみの方に依存しています。大方、頼りにされることが少なくなってきたあたりから、関係が捻れたのでしょう?」
曜「す、凄い……どうしてわかるんですか!?」
喪黒「ホーホッホッホ。仕事柄沢山の人を見てきましたから、これぐらいは造作もないことです」
ちょっと会話をしただけで見抜いちゃうなんて、やっぱりプロは違うよ。
喪黒「この際騙されたと思って、ちょっとの間その幼なじみの娘を忘れてしまいなさい」
曜「えっ──!?わ、私が千歌ちゃんを忘れるだなんて……そんなことできるわけないじゃないですか!」
喪黒「いいえ、できます。あなたは幼なじみを想うあまり、新しい友人にさえきちんと向き合えてないのではありませんか?」
曜「うっ……そ、それは……」
喪黒「今の関係を維持するのは苦しい……だからいっそのこと、ゼロからスタートしてしまいたい……内心ではそう思ってるんでしょう?」
曜「そりゃ、できるならやってますよ」
喪黒「なら実践あるのみ、あなたは幼なじみを忘れるだけで構いません。それだけで全てうまくいきますよ。ホーッホッホッホォ!」
曜「千歌ちゃんを……忘れる……」
5:
/3
で、また一人ベランダで黄昏てる……と。
成長しないなあ、私。
けど千歌ちゃんを忘れろだなんて、喪黒さんも無茶苦茶言い過ぎだよ。
『あなたは幼なじみを想うあまり、新しい友人にさえきちんと向き合えていないのではありませんか』
曜「…………」
『あなたは幼なじみを忘れるだけで構いません。それだけで全てうまくいきますよ』
──全てがうまくいく、か。
あの人の言ってることが正しいなら、やってみる価値はあるかも。
忘れるって言っても、これまでの記憶が全部なくなるわけじゃないんだし。
ちょっとだけ千歌ちゃんのことを意識しないようにするだけ。
それ以外はいつもと変わらないように過ごそう。
曜「よーし、明日から早ぅ……全前進、ヨーソロー!」
6:
/4
今日は目覚めも良かったから、実践するにはもってこいの日だよ。
えーと確か……千歌ちゃんを忘れたらいいんだよね。
私は千歌ちゃんのことを忘れた、私は千歌ちゃんのことを忘れた、私は千歌ちゃんのことを忘れたっ!
よし……イケる!
千歌「曜ちゃ〜ん、おはよう!」
曜「……おはよう」
千歌「んん?なんだか今日の曜ちゃん、あんまり元気ないね。なにかあったの?」
曜「別になにもないよ」
梨子「千歌ちゃ〜ん、曜ちゃ〜ん!」
曜「あっ、梨子ちゃん」
梨子「昨日遅くまで起きてたから寝坊しちゃって……ホントにごめんなさい!」
曜「いいっていいって、たまにはそういうこともあるよ〜。さ、早いとこ学校に行こう!」
梨子ちゃんの手を掴んで、半ば強引に歩き出す。
千歌ちゃんもすぐそこにいるけど、今は忘れてるって設定だから、相手にしちゃダメだよね。
梨子「よ、曜ちゃん!?」
千歌「あっ、二人とも待って〜」
7:
うんうん、出だしは結構いい感じ。
体は軽いし、頭もなんかスッキリしてる。
余計なこと考えなくなったからかな。
では私──渡辺曜は、この調子で千歌ちゃん忘れる計画を続行するのであります!
8:
/5
千歌「ふあ〜今日も練習疲れたね〜」
梨子「ラブライブの地区予選も近いから、仕方ないよ」
今日は千歌ちゃんのことで悩まずに済んだおかげで、体の調子がすこぶる良い。
例にあげるだけでも──
授業を集中して聞ける。
食事も捗る。
練習は幾らやっても疲れない。
なにより一番良かったのは、千歌ちゃんと梨子ちゃんが仲良くしてるところを見ても、全然モヤモヤした気分にならないとこだった。
喪黒さんが言ってた『忘れたら全てうまくいく』っていうのはこういうことだったんだ。
ダイヤ「それで結局、新曲の打ち合わせはどこでするんです?」
千歌「あー、それなら大丈夫。みんなでまたうちに来てくれたらいいよ」
曜「私はパス」
千歌「えっ?」
曜「じゃなくて、今日はちょっと用事があるから」
千歌「え〜、せっかくの新曲お披露目なんだから、曜ちゃんも来なくちゃ始まらないよ」
曜「どうしても外せない用事なんだ」
千歌「そこをなんとかできないなあ〜」
10:
うぅ……仔犬みたいなつぶらな瞳。
こんなにストレートに千歌ちゃんからおねだりされたのなんて、いつ振りだろ。
気を抜いたらすぐに心を持ってかれそう。
……でも、ダメ!
せっかくここまで忘れる計画を継続してきたんだから、ちゃんとやらないと……!
曜「ごめん、今日は無理……それじゃ私先に帰るね」
千歌「ちょ、ちょっと待ってよ、曜ちゃ〜ん!」
梨子「今日の曜ちゃん、妙によそよそしかったね」
千歌「私、なにか気に障ることでもしちゃったのかな……」
今、私の中の千歌ちゃんは過去の人。
記憶を忘れて、ゼロからスタートしたばかりの新しい友人。
そういう設定。
どれだけお願いされても、千歌ちゃんのお願いだからと気安く請け負っちゃいけない。
だって私達は今、新しく付き合い始めたばかりの友達なんだから──
後ろから千歌ちゃんの声がしたけど、私は一度も振り返らずにその場を後にした。
11:
/6
曜「喪黒さん!」
喪黒「これはこれは……どうも渡辺さん。そんなに慌ててどうされたんです」
曜「良かった……やっぱりここにいたんだ。凄いですよ、アレ」
喪黒「はて、アレとは?」
曜「とぼけないでください。先日教えてくださった、幼なじみを忘れるって話ですよ」
喪黒「ああ、思い出しました〜、それでどうでしたか……実践のほどは」
曜「成功も成功──もう大成功です!体の調子は良くなるし、二人を見てもモヤモヤしなくて済むし、もう良いこと尽くめ!」
喪黒「そうですか、それは良かった。お役に立ててなによりです」
曜「ただ忘れるだけでうまくいくなら、もっと早くすれば良かったですよ」
喪黒「そうとも限りません……こういうショック療法は時期をしっかり見定めなければ、余計関係を悪くしてしまいますから」
曜「えっ、そうなんですか!?」
12:
喪黒「はい。渡辺さんは現状を打破する方法が思い付かず、心底困ってらっしゃるようでしたので、あの方法を伝授したのです。普通の人にはあまりオススメできません」
曜「ホントは、あまり良くないものってことですよね……」
喪黒「ええ、こういうやり方は人を選びます。なので現状が良くなったと思えた時点で、しっかりとご友人の心のケアをしてあげてください」
曜「心のケア、ですか……?」
喪黒「そうです。あなたの変化に、きっとその幼なじみの方も戸惑っています。だからこそ、今の内にちゃんと関係を修復することが大事なのです。間違ってもこんなやり方を続けてはいけません」
曜「でも、今日は忘れることで悩みが解消できたのに──」
喪黒「で、す、か、ら、忘れるのは今日までにしておいてください。明日になれば必ず、幼なじみの方と仲直りしてあげてくださいね〜」
曜「わ、わかってます。私だって、何日もこんなこと続けられませんから」
喪黒「なら良かった……念を押すようですが、二度と今回のような方法でご友人の気を引こうとしてはいけません……いいですね?」
曜「もちろんです。二度とこんなことはしません」
喪黒「……約束ですよ」
13:
/7
喪黒さんはああ言ってたけど、千歌ちゃんを忘れたままにすることなんてできるわけないんだし、どっちにしたって今日が潮時だ。
早いとこ仲直りして、千歌ちゃん家で新曲のお披露目会をしよう。
今日はお弁当を多めに作ってきたから、それを使って──
曜『千歌ちゃんのために作ったお弁当だよ。さっ、食べて食べて』
千歌『うん、すっごく美味しい!曜ちゃん大好き』
なんてことになるかも。
やることがあるから先に食べておいてと言っておきながらの、途中参加!
実は隠してた弁当を用意してただけだって知ったら、千歌ちゃん驚くだろうなあ……
14:
曜「千歌ちゃ〜ん、一緒にお昼食べ──」
あれ、いない?
あれ、あれあれ?
いつもはこの場所で食べてるはずなのに。
今日は別の場所で食べてるってこと?
もしかして、中庭とかにいるのかな。
あっ、やっぱりいた!
なんで今日に限って珍しい場所で食べてるんだか。
梨子「どうかな?」
千歌「うん、この卵焼きすっごく美味しい!梨子ちゃん料理上手だね」
梨子「そんなことないよ。千歌ちゃんのお弁当の方が美味しそうに見えるわ」
千歌「ふふ、では卵焼きのお礼にこの肉じゃがをプレゼントしましょう。ほら、あ〜んして」
梨子「えっ?ちょっとやだ……恥ずかしい」
千歌「照れない照れない。はい口開けて、どうぞご賞味あれ〜」
梨子「あむっ……うわ〜美味しい!どうやって作ったのこれ」
千歌「美渡ねえから教わったんだあ〜。結構自信作なんだよ」
梨子「千歌ちゃんはきっと将来、良いお嫁さんになれるわ」
千歌「そ、そうかな〜。でも、そう言ってもらえると嬉しいな」
15:
なにアレ。
なんで二人とも、あんなに仲よさそうにしてるの?
私のことなんて、微塵も頭に残ってなさそうじゃん。
曜「……くっ」
思わずその場から走り去ってしまった。
これ以上二人の親密そうな光景を目の当たりにしていたら、わざわざ早起きして作った弁当をゴミ箱に投げ捨ててしまいそうだったから。
千歌「それにしても曜ちゃん遅いなあ〜。このお弁当、曜ちゃんに喜んでもらうために作ったのに──」
梨子「そうだね……曜ちゃん、一体なにしてるんだろう」
16:
忘れろ、忘れろ。
今見た光景は全部忘れろ。
二人が仲が良いことぐらい知ってたんだから、あれぐらいで動揺するな。
そう思えば思うほど、どつぼにはまる。
曜「なんでなの……梨子ちゃんなら良くて……私じゃダメな理由ってなに……?もうなんにもわかんないよ……!」
どうすればあの二人の間に入っていけるの?
どうすれば千歌ちゃんは私を見てくれるの?
どうすれば……
──そうだ。
私にはまだ一つだけできることが残ってる。
忘れたらいいんだ。
17:
そうすれば異変に気がついた千歌ちゃんは、否が応でも私の方を見ることになる。
けど、この方法は良くないものだって喪黒さんも言ってたはず。
『今の内に関係を修復することが大事なのです。間違ってこんなやり方を続けてはいけません』
それでも……
『念を押すようですが、二度と今回のような方法でご友人の気を引こうとしてはいけません』
私は……
『……約束ですよ』
千歌ちゃんの傍にいたいんだ。
18:
/8
果南「はいっ、いちにっ、いちにっ……ルビィちゃん、少しステップずれてるよ」
ルビィ「ふゆ……ごめんなさい」
果南「はい、そこまで。じゃあ15分だけ休憩にするね」
善子「あ〜もう足が動かない〜」
花丸「善子ちゃん、疲れでキャラが崩れてるずら」
善子「善子じゃなくてヨハネ!いい加減覚えなさいよ!」
花丸「ふふふっ、善子ちゃんが次の練習でも頑張れたら考えてもいいよ」
善子「こ、この堕天使ヨハネに向かって交渉を持ちかけるとは……ずら丸、恐ろしい娘──!」
花丸「交渉なんてとんでもないずら。ほら、アレを見て」
善子「ん、アレってなによ」
曜「あははは〜まだまだ全然踊り足りないよ〜!さあみんな、明日に向かってぇ……全力全開ヨーソロー!」
善子「……なにアレ」
花丸「元気いっぱいずら〜」
19:
凄い、凄いよこれ。
千歌ちゃんを意識しないようにするだけで、こんなに体が軽くなるなんて思わなかった。
今なら一日中踊り明かせそう。
千歌「曜ちゃん、あんまり無理しない方がいいよ」
曜「全然無理なんかしてない」
千歌「でも今日は朝から様子がおかしかったから、私心配で……」
千歌ちゃんが私の心配してくれてる?
やっぱり忘れる作戦、効果てきめんみたいだ。
曜「いいから放っておいて。ペース配分ぐらい自分でできるから」
梨子「──!?そんな言い方しなくてもいいじゃない!曜ちゃん、昨日からなんだか変よ。千歌ちゃんにこんな冷たく当たるなんて──」
千歌「待って、梨子ちゃん!ねえ、曜ちゃん……私、なにか気に障ることしたかな」
20:
千歌ちゃん……目に涙を溜めて、今にも泣きそうな顔をしてる。
流石にこれはやり過ぎかな……
いや、ダメダメダメ!
ここでやめたら、また昼休みみたいな光景を見せつけられるんだ。
曜「なにもしてない」
千歌「なら、どうして……!」
曜「別に気にしてないから、練習続けよ」
梨子「……いい加減にして!こんなの誰がどう見たっておかしいわ!一体なにが不満なの!」
曜「だから不満なんてないって──」
梨子「嘘よ!不満がないなら、千歌ちゃんに冷たく当たることないじゃない!」
曜「それは……」
千歌「梨子ちゃん、私は大丈夫だからもうそのへんで──」
梨子「ダメよ。こういうことは絶対に先送りにしちゃいけない……きっちり終わらせておかないと、余計悪くなるばかりなんだから」
21:
鞠理「ンン〜、あまり穏やかじゃないみいね」
ダイヤ「何事ですか、いきなり声を荒げて……」
騒ぎを聞きつけたみんなが、私達の元に集まって来る。
みんなに訳を聞かれたら、絶対に事情を説明することになる。
最後には千歌ちゃんを忘れようと意識していたことだって、告白することになっちゃう。
そうなったら私──
もうAqoursにいられない。
曜「ごめん、みんな……ちょっと体調悪くなってきちゃったから、私帰るね」
返事も聞かず、自分の荷物を掴んで全力で走り出す。
私はただ、ほんのちょっとだけ忘れようとしただけなのに──
どうしてこんなことになっちゃったの。
22:
/9
練習着のまま、力なく帰路につく。
携帯の電源は途中で切った。
だって、そうしないと永延に着信を放置することになるから。
もう、家にも帰りたくない。
今日はずっと一人でいよう。
曜「なんでこんなことになっちゃったんだろう」
意味もなく呟く。
理由はわかってる。
私が喪黒さんとの約束を破っちゃったからだ。
23:
喪黒「……渡辺さん」
曜「うわっ!?ビックリした……喪黒さん、いるならいるって言ってくださいよ」
喪黒「あなた、約束を破りましたね」
曜「ど、どうしてそれを──!?」
喪黒「私、言いましたよね〜。二度と同じ方法を使って気を引こうとしてはいけないと……」
曜「で、でもしょうがないじゃないですか!こうでもしないと、私が千歌ちゃんの気を引くなんてできません!」
喪黒「できます。あなたは真の意味でゼロからのスタートをしてはいないのです」
曜「わ、私は──」
喪黒「あなたは変わります!全てを忘れて、ゼロからやり直すのです!」
喪黒「ドーン!!!!!!」
曜「ひえええええええええ!!!!」
24:
/10
千歌「見て、曜ちゃん……内浦の海……今日も綺麗だよ」
曜「…………」
彼女はいつも、車椅子を押してこの場所まで連れて来てくれる。
だけど私は、彼女のことをよく覚えていない。
小さな頃からの付き合いだって聞かされも、さっぱりだ。
梨子「ええ、とても綺麗……」
長髪の彼女も付き添いとしてよく見舞いに来てくれる。
なんでも私達三人は、浦の星でスクールアイドルをしていたらしい。
にわかには信じられない話だ。
千歌「ねえ、曜ちゃん」
曜「………………」
千歌「私達、やり直せるかな」
曜「………………」
千歌「この内浦の海みたいに……素直な気持ちで、笑ってお喋り……できるかな」
曜「………………」
25:
良い返事は、できない。
何故なら、私は彼女のことを知らないから。
曜「ごめんなさい……なにも思い出せない」
千歌「そっか、そうだよね……変なこと言っちゃってごめん」
曜「………………」
寄せては返す波の音が聞こえる。
静かだけど、確かで穏やかな音。
耳を傾けていると、どこか懐かしい気分になる。
千歌「……待っててくれるかい?もっとステキになりたいよ……」
梨子「千歌ちゃん……」
千歌「……だから……まだまだ知りたいな……いろんなこと、知りたい」
曜「………………」
千歌「あこがれを……みつめて……追い、かけ……うっ……うぅ……」
27:
手の甲に一粒の水滴が落ちる。
雨でも降ってきたんだろうか。
不意に空を見上げようとして、顔を上げた。
どうやら私の手に落ちてきたのは、雨ではなかったらしい。
彼女は泣いていた。
顔をくしゃくしゃにして、必死で涙を堪えようとしていた。
私は──その顔を知っていた。
30:

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