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夏の夢みたいな旅の話


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1:
事の始まりはだ2ちゃんの旅スレを見て俺もやってみようと言う事から始まったんだ
pickup
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6:
大学が夏休みになって、俺は地元から東京まで旅をしようと思ったんだ
東京行ったことなかったし、旅スレ見てるとそんな金もかかりそうにないし
つー訳で俺は適当にバッグに荷物を抱えてチャリンコで旅立つ事にした
友達に「がんばれよ」と言う声を背に俺は旅立った
10キロほど走って既に疲れた
7:
こんな感じで大丈夫だろうかと思ったがとりあえず夏休みも長いしゆっくり行こうと思ったんだ
いざとなったらスレ立ててか応援してもらおうとか甘い事考えながら大きい車道の横を走っていた
で、大分疲れてノロノロ走ってた俺なんだが前方に妙な奴がいたんだ
まぁ、簡単に言うとヒッチハイクをしてる女だったんだが
なんか昔テレビとかでやってる手をこう前に出してたんでそう思ったんだ
9:
どうも車はなかなか止まってくれないみたいだけど女もずっと手上げてんのよ
あぁ、この子も旅してきたのかなぁ、って思ってなんか勝手に親近感を感じたのよ
まぁ、まだ10キロしか走ってないけど
なんかやってんのは俺だけじゃないんだなとか思ってちょっと前向きになったのもある
で、旅の恥はかき捨てって言うしさ
ちょっと声かけてみようと思ったんだ
「ヒッチハイクですか?」
10:
そしたらその女が俺のほう胡散臭げな顔して見た
まぁ、普段ならそんな顔されただけでもう逃げ出したいんだがもうちょっとがんばってみた
「俺も自転車だけど旅してるんですよ」
「そうですか」
素っ気ない。マジで素っ気ない
けどふとなんかこいつどっかで見たことある気がするなーとか思ったんだ
12:
で、向こうもなんかちらちら俺の顔見て
「どっかであった事あったっけ?」
って言い出した。そこで俺と同じ大学の子なのかなと思った。
聞いてみたらそうだって。
多分、大学とかですれ違った事があったんだと思う。
でまぁ、ちょっとは気を許してくれたのか少しだけこっちの方見てくれた
「で、ヒッチハイクでどこ行くの?」
「東京」
俺と一緒だがそりゃ、東京まで行く車を見つけるのは大変じゃねーかな、うん
13:
女の子一人でヒッチハイクとか危ないんじゃないかなぁ、とか思ったが彼女さん黙々と車が止まってくれるの待ってんの
で、俺がちょっと口出ししてみた
「あのさ、東京に行きたいって事分かってもらえないと、そういう車なかなか見つけられないんじゃないかな」
て言ったんだが、なんか怒ったみたいに「うるさいなぁ」とか言われた
そうなんだ。さっきからなんかこの子は怒ってんだ
14:
それで「じゃあ、がんばって」って言って離れてしまえばよかったんだけどさ
俺「じゃあ、ちょっとここで待ってて」って言って近くのスーパーに入ったんだ
チャりを駐輪場に止めて荷物抱えて画用紙とマジックを買った
まぁ、ここらへんで俺は色々間違えた
戻ってくると女はそのまんまで車捕まえようとしてた
つかまってたら俺戻ってきた時いなかったかもしれん
16:
画用紙に「東京」って書いてそれを持って道路に立った
行き先書かないとそこらへんに行くための足代わりと思われるかもしれないし
「近場に行きたいだけの足代わりと思われてたんじゃない?」
って言うと「そっか。そうかもね」って言う。
もうちょっと嬉しそうな言葉期待してたんだけどな
がそれでもあんまり止まってくれないので少し話とかした
「俺東京初めてなんだよね。行ったことある」
「あるよ」
「マジで?どこが楽しかった?」
「さぁ」
お前はエリカかと
19:
そんな感じで話してたら、目の前を通り過ぎた車が止まった
おお、と思って二人でそっちに行ってみた
車運転してたのは四十歳くらいのおばさんだった
「すいません。東京まで行きたいんですけど」
って言うと「東京までは行かないけど○○県までなら乗せてあげてもいいよ」って言ってくれた
隣の県だったけど、お願いする事にした
「じゃあ、ちょっと荷物取ってくるんで待っててください」
って女がいって元の場所に戻りながら俺はじゃあ、俺もまたチャりで行くかとか思ってた
20:
「兄弟ってことにした方がいいかな」
って女が言うんだよ。「は?」と思ってなにが?って聞いたら
「男女でヒッチハイクってかけおちみたいじゃない」
みたいなことを言うんだよ。
待て。俺はチャりで旅をするんだ、と思ったがこの子なにを思ったのか
「だからヒッチハイク手伝ってくれてたんじゃないの?」
みたいなことを言う。なるほど。そう言う事になるのか。つか一緒に行ってもいいと思ってくれたんだろうか
いや、全然打ち解けてる気配ないけど
22:
結局なぜか一緒に行く事になってチャりはスーパーに置き去り
俺はまぁ、女の一人旅って危ないし、とか考えながら車に向かった
女はスポーツバッグっていうのか肩にかけるでかいバッグとなんか熊のぬいぐるみを持ってた
ぬいぐるみなんか持ってきてどうすんだろう
おばちゃんがトランク開けてくれて俺らは二人並んで後ろの席に座った
「ありがとうございます」って言ったら「いいええ、家に帰るだけだから」って笑ってくれた
24:
おばちゃんは一人で車に乗ってたから暇だったのかよく喋った
「ヒッチハイクなんてどうしてしてたの?」
「いや、旅行です」
「二人で?」
「はい、私達兄弟なんですけど」
ぱっぱと女が答える。これくらい俺にもぱっぱと喋ってくれればいいのに
しかもなぜか俺が弟扱いされていた
「恋人同士かと思ったわ」
「いや、ちゃいます」
そこは俺が即否定すると女も全然違います、と言う
俺、こいつ嫌いかもしんない
27:
おばさんは実家がこっちらしくて今は家に帰る途中だったらしい
しばらく走ってると少し打ち解けてきて俺の地元の話とかをしていた。おばちゃんと
で名前を聞かれて兄弟って言ってるから苗字一緒じゃないとおかしい事になるんだけど
女が「吉田りさです」って言ったんで俺も適当にあわせた
おばさんは最近は世の中物騒なのにヒッチハイクなんて危ないんじゃないの?と聞かれてその通りだと思った
そんな事話しながらドライブだけどおばさんゆっくり走る人で○○県につく頃にはすっかり夜だった
29:
「買い物したいんだけどちょっとスーパー寄っていい?」
って言われて俺はじゃあ、そこでお別れしようかなと思ったんだけど
「じゃあ、買い物手伝いますよ。荷物とか持ちます」
って吉田が言った。
まぁ、乗せてもらったしそれくらいはありかなぁ、と思って3人でスーパーに入る
おばさんは食料品を買うみたいで俺がカートを押すことにした
吉田とおばさんは食べるものの相談とかしながらまわってた
で、俺がちょっと余所見してカートを壁にぶつけると吉田が「なにやってんの?」としらけた顔をしていた
こいつの俺に対する態度とおばちゃんの態度の違いはなんなのか
おばちゃんは兄弟と言う事で普通のコミュニケーションと思っているのか気にしていないようだった
カーとの籠が埋まる頃におばちゃんが言ってきた
「よかったらご飯家で食べてく?」
31:
「いや、そんな悪いですよ」
って吉田が断ったんだけど「気にしないでいいから」って言うんだよ
俺も「家族の人に迷惑じゃないですか?」って聞いたら「一人暮らしだから」って笑った
要するにこの籠の中身は元々俺らようの食べ物だったみたい
ヒッチハイクなんて危ないね、って言ってたりしてたけどこのおばさんもなかなか危機感薄いかもしれん
がまぁもう夜も遅いし、温かいご飯食べさせて貰えるなんてありがたいなと結局甘える事にした
「嫌いな食べ物ある?」って聞かれて籠に入ってた納豆だと言うと吉田に頭をはたかれた
「なにすんだよ!」と言うと「あんた、気遣い出来ないね」と言われた
33:
おばちゃん家は普通の平屋で一人で住むにはちょっと広そうな感じだった
俺と吉田が「お邪魔します」ってあがる
おばちゃんは「じゃあ、ご飯つくるからちょっと待ってて」と言って吉田も手伝う事になった
俺はリビングみたいなところでぽつんと一人で待ってたんだが隅っこに仏壇があった
あぁ、旦那さん亡くなったのか、と一人暮らしだったのを納得した
34:
作って貰ったのはカレーだった
おばちゃんはカレーなんか作ったの久しぶりだと言っていた
3人でテーブルを囲んでテレビを見ながらカレーを食った。うまかった
「東京は観光で行くの?」
「そうです」
とか大学の事とか話しながらのんびり時間が経ってって、風呂にも入れてもらえることになってまず吉田が入った
おばちゃんと二人でテレビとか見ながら話してると
「なんかこの家に3人もいると懐かしい気分になるわぁ」と言った
一人だけいる息子さんは就職して県外にいるんだって
旦那さんは3年前に事故でなくなったんだそうだ
俺は線香あげていいですか?って言って線香あげて全然知らない人だけどおばちゃんがありがとうと言ってくれた
36:
吉田のあとに俺が風呂入って、その次におばちゃんが入った
で吉田と二人きりなんだが、おばちゃんといたときの方が全然空気がいい
「吉田さあ」
って言うと兄弟なんだから名前で呼べって怒られた
「なんでそんな不機嫌なの?」
「別に」
だからお前は沢尻かと
「別に怒ってないし、逆に不機嫌なの?とか言われると怒りたくなる」
とか言われてなんだそりゃとか思いながら過ごした
まぁ、もしかしたら明日から別行動になるかもしれないし、もう気にしないようにしようかと思った
おばちゃんが風呂から出てきて、今日は泊まっていったら?と切り出してきた
結局その言葉に甘える事にした
35:
納豆はどうした
37:
>>35
俺は食ってない
俺と吉田が同じ部屋で寝ることになった
兄弟って言ったのを吉田は少し後悔したようだった
俺は少し緊張したけど気にせず寝ることにした
吉田が持ってたぬいぐるみは荷物と一緒に部屋の端に置かれていた
てっきりぬいぐるみがないと寝れないとか言い出すのかと思ったがどうやらそうじゃないらしい
で眠って起きて朝おばちゃんがご飯を用意してくれて俺はそれを食べていたんだが
警察が来た
38:
ピンポーンってベルが鳴っておばちゃんが玄関に行って、俺は気にせず飯を食ってるとおばちゃんが戻ってきて、俺と吉田に「ちょっと来て」と手招きした
ついてくと制服を着た警察の人がいておばちゃんはちょっと気まずそうな顔をして下がってった
俺が「え?なに?」と思っていると「家出してるらしい未青年がいるっていうんで来たんです」って言う
あ、俺達に用事ですか
俺らはあっさり交番に連れて行かれた
41:
俺はおかんに連絡を取った
事情を説明するとおかんはかなり怒ってる感じで耳が痛かった
さらにチャりを回収してくれと頼むと更に怒られあんたなにやってんの、と言われる
まぁ、確かに俺もチャりで一人旅をする予定が一日と立たずに破れるとは思っていなかった
それで電話を警察の人に渡して家出じゃないと言う事を説明してもらった
持ってきてた学生証も見せてなんとか信用してもらえたようだった
42:
吉田も家のほうに連絡を取っていた
相手は父親らしい。向こうは俺より少し話が長引いていたけど結局俺と同じように警察に電話を渡し説明してもらったようだった
俺はてっきり吉田は家出をしているんだと思っていたがそうではなかったようだ
じゃあ、なんで東京なんかに一人で行こうと思ったんだろうか
どうせ聞いてもつっけんどんな態度が返ってくるんだろうけど
とりあえずそれで警察の人は納得してくれて、結局兄弟じゃないって事はばれたものの軽い注意を受けるだけで済んだ
俺らは交番から出てため息を吐いた
「参ったなぁ」
と言ってみると「そうだね」と彼女もさすがにちょっと気が抜けたような返事をした
44:
俺らは荷物をおばちゃん家に置きっぱなしにしていた
まぁ、警察に連絡したのはおばちゃんで間違いないだろうから、ちょっと気まずいなぁ、と俺は思った
おばちゃんも一緒にいる間優しくしてくれてたけど家出少年少女と思われてたわけだし
けど荷物は回収しないとどうしようもないから結局行く事になった
吉田は相変わらずツンとしてたからなに考えてるのかよく分からんかった
家の前についてどうしようかな、と俺が悩んでいると吉田があっさりベルを押した
54:
おばちゃんが出てきて、俺らを見るとちょっと気まずそうな顔をして「ごめんね」と言ってきた
俺達が戻ってくるより先に警察から連絡が来て家出じゃなかったと言う事を聞いていたらしい
なんだかものすごく小さくなってしまって、昨日までのやさしいおばちゃんじゃなくなったみたいでちょっと寂しくなったんだけど、俺もなんて言ったらいいのか分からなかったんだ
けど吉田は昨日のおばちゃんと話す時と変わらない態度で「いいんです」って笑って言った
57:
「私も自分達みたいなの見たら家出だって思いますから。おばさんは心配してくれたから警察に連絡したんですよね」
おばちゃんはまだ喋りにくそうにしてたけど
「気にしないでください。それよりご飯とかお風呂とか泊めてくれたりありがとう」
って、うん、俺から見てもなんか凄く優しい感じだった
「ごめんね」
ってもう一度おばちゃんが言って「ううん」って吉田が返して家へとあげてもらった
こういう時っておばちゃんが俺達に気使うようになるのかもしれないけど、吉田は逆だった
おばちゃんも最後には昨日みたいに戻って少し遅めの昼飯を食わしてもらった
俺は食いながらなんだ、こいつ、こう言う事言える奴なんだなーとかぼんやり考えてた
58:
なんかいい話になってきたな
60:
そして昼飯を食って俺達は出て行くことになった
おばちゃんが大きい道路まで車で連れてってあげると言ってくれて俺達はまた車に荷物を乗せた
車の中でおばちゃんが「短かったけど楽しかった」って言ってくれてなんか俺はちょっと切なくなったりして、吉田は「私もです」とか言っていた
少し拓けた道路に出て俺達はここでお別れすることになった
「ありがとうございました」
あんな事があったけど、このおばちゃんに拾ってもらえてよかったなって思った
「東京まで気をつけてね」
て言って俺と吉田はおばちゃんが去っていくのを見送った。吉田も少し寂しそうで、俺はちょっとツンツンしたこいつの違う一面も見れtなぁ、とか思ってた
「じゃあ、これからどうしようか?」
「なにが?」
「だからまたヒッチハイクするんだろ?」
「あぁ、一緒に行くの?」
こいつまたツンツンに戻りやがった
61:
まぁ、俺も昨日は別行動かもしれんと思っていたが
おばちゃんと違って俺と別れることにまったく名残惜しさがなさそうなこいつの言動に俺は泣きそうになった
大体、誰のせいでチャりを地元において移動手段をなくすような事になったのか
「ちょ、おま、ここまで来てそれはねーだろ」
「分かったわよ。じゃあ、あの紙出してよ」
そうやって俺の嘆きをあっさり無視して来るなら来れば?みたいな感じの彼女にまた泣きそうだが俺は言われるままに「東京」と書いた画用紙をバッグから出した
けどまぁ、正直別れる選択肢もなかったわけじゃないよ
でも、あのおばちゃんに対する吉田の態度見てなんか悪い奴じゃないんだろうな、って思ったし、なんかそう言う事がある旅もありかなぁ、と思ってたのも事実だ
65:
やっぱり次の車もなかなか捕まらない
と言うか1時間ほど真夏に立ち尽くしていると言うのはかなり辛かった
俺と吉田は交代で紙持ってジュースを飲んだりしながら車が止まってくれるのを待つ
吉田はなんかこうやって当てもなく待つことにでも慣れてるのか平然としてたけど俺はかなりだれていた
「なあ」
「なに?」
「なんで東京行こうと思ったの?」
俺は世間話の予定だったんだが
「あんたに関係ないでしょ」
と打ち切り宣言のようなものを食らった
67:
「関係ないけど聞くくらいいいじゃん」
「なんでそんな事聞きたいのよ」
なんで、って世間話にそんな深い理由なんかない
「言いたくないならいいけどさ」
俺はちょっとふてくされた。なんでこいつ俺にこんなに冷たいんだろ
紙を吉田に渡して俺は道端に座り込んだ
ふと吉田のバッグの横に置かれているぬいぐるみを見て、ちょっと手を伸ばしてみた
バッグに入らないのかもしれないが、ぬいぐるみを持ち歩くなんて俺にはちょっと恥ずかしい
だがそれに気づいたのか、ぬいぐるみを吉田がぶんどって、あげく触られたくないから取ったのカと思った俺にそのぬいぐるみで頭を叩いた
「勝手に触らないでよ」
「あーあーはいはい。すみません」
68:
そんな感じでもう口喧嘩みたいなやりとりをずっとしてた
俺はかなりイライラしたが、吉田は全然意に介していないらしい
それでも不毛だと思ったらしく「もういいや」とか言っていた
「あんたはなんで東京行く事にしたの?」
「別に行ったことないから行ってみたかっただけ」
「あ、そう」
「・・・・・・」
もっとこう大学一緒だとか偶然だよねとか、東京とか楽しいんだろうな、とか夏暑いね、とか話せばいいのに
そんな事考えてるとトラックが止まった
71:
トラックの運転手は若い兄ちゃんで東京の方向に向かうので乗せてくれることになった
けどトラックって二人乗り分のスペースしかないんだよな
吉田が助手席に座って俺はなんかシートの後ろにある狭い空間に押し込められる事になった
運ちゃんはなんかテンションの高い人で吉田の乗りの悪さも全然気にしないタイプの人みたい
「君ら付き合ってんの?」
って助手席の吉田に尋ねた。どうせ即否定なんだろな
「違います」
ほらね
「私、ちゃんと彼氏別にいますから」
運ちゃんも俺も「え?そうなの?」って感じで吉田を見た
運ちゃんは彼強いるのに他の男と旅してんの?って顔で
俺はこいつ彼氏いるんだ、って・・・・・・あれ?ちょっと残念って思ったのかな?
77:
結局吉田はそれ以上なんも説明してくれなくて、なんか変な雰囲気のままドライブが進んだ
トラックの運ちゃんは次第にそれもどうでもよくなったらしく、自分の仕事の話とか奥さんの話とかをしていた
俺はちょっと吉田の彼氏ってのを気にしながら、相槌なんかを打ったりしていた
「奥さんとはどうやって知り合ったんですか?」
「合コンで知り合った。写真見せてやろうか」
つって写真じゃなくてプリクラだけど二人で写っていた
「奥さんかわいいっすね」
「だーろー」
とかそんなデレデレな運ちゃん
吉田もプリクラを受け取って、じっと見ていた
「ラブラブですね」
「だーよー。お前も彼女作った方がいいぞ」
「そうっすね。夏休み旅とかしてる場合じゃなかったな」
って言ったらなぜかまた助手席から手が伸びてきた
条件反射で叩いてるのか、こいつは
80:
トラックは数県またいでいくらしく、東京へとちょこちょこと進んでいた
夜になって銭湯に寄る事になり、俺と運ちゃんは男湯で並んで体を洗っていた
「吉田ちゃんって気つえーなー」
「間違いないっす」
俺はため息交じりに答えた
「まぁ、ああいう子は意外と彼氏の前とかだとかわいらしくなるもんなんだよな」
とか、じゃあ一生俺の前じゃ可愛げなさそうだな、とか思えた
風呂から出てきた吉田は化粧っ気がなかった。おばちゃん家に泊まってる時は「見ないで」と言っていたけどもう気にしないことに決めたらしい。
「彼氏にもすっぴんとか見せないのに」
とか言ってた
運ちゃんは深夜のコンビニの駐車場で寝る事が殆どらしくて、俺は変な姿勢のまま寝たりした
俺は無事な体で東京にたどり着けるだろうか
83:
体が痛くなってきて俺はトラックから出ようと思った
二人を起こさないようにと思ってゆっくり動いたけど吉田が「うーん」とか言って起きてしまった
「なに?」
って寝ぼけてた声はいつものツンツンした感じじゃなくてちょっと可愛らしかったんで俺も「ごめん」と素直に謝った
「ちょっとコンビニ行ってくる」
「じゃ、私も」
って言って2人で外に出た
寝起きが弱いのか吉田はふらふらしてた
しょうがないんで手を引っ張ってコンビニへと連れて行って、俺はジュースを二本買った
コンビニから出てトラックに戻らない俺を見て吉田が「どうしたの?」って聞いてくる
「後ろ狭いから腰痛いんだよ。ちょっとここで休んでくわ」
「じゃ、私も」
つって俺の横に腰を下ろした
88:
吉田は本当に眠そうですわったまんま頭が右往左往していた
「眠たいんだったら無理すんなよ。俺別に一人で大丈夫だから」
「大丈夫大丈夫」
そう言ってるがちっとも大丈夫そうじゃない
完全に寝ぼけている
俺はなんか逆に大人しい吉田になに話したらいいか分からなくなって「静かだな」とか適当な事を言っていた
「そうだね」
「あとどれくらいで東京着くかなぁ」
「どうだろ」
「友達とか今なにしてるかな」
話題もあんまり続かなかったんだけど吉田がいつもより素直なリアクションで俺はちょっと変な感じだった
「けど君も変わってるね」
吉田がそう言ってきたんで「なにが?」って聞くと
「よく怒らないね。私に」
「いや、かなり怒ってるぞ」
そう言うと「ごめん」と聞こえた
結局吉田はここで寝てしまって俺は朝まで駐車場で過ごした
寝れなかった。吉田俺にもたれてたし
そしてなぜかそのことで頭を叩かれた。俺は何もしてないのに
90:
「じゃ、がんばれよ」
運ちゃんは俺の肩を叩いてトラックを走らせていった
多分、東京へと旅をがんばれってことだけじゃないんだろうなぁと思ったが
吉田は、あの夜の態度はどこへやらツンツンしてる
まだ地元出てから一週間も経ってないし、確かに全然他人なんだが
けどまぁ、夜の事意識してないって言ったら嘘だ
92:
二人道端に突っ立ってたが、どうもここでヒッチハイクしても車は止まってくれそうにないような場所だった
「しょうがないからちょっと歩こうか」
「うん」
俺はバッグを背中に抱えて手ぶら
吉田はスポーツバッグを肩にかけて反対側の手でぬいぐるみ
「なぁ、バッグ持ってやろうか?」
「いい」
うん、俺は玉砕しそうだが、なかなか重たそうなバッグだしもう少しねばってみた
「気にすんなよ。重たそうだしさ、俺の荷物そんなにあるわけじゃないから」
「だからいいって」
「・・・・・・まぁ、触られんのがいやならしょうがないけどさ」
あーあ、またツンツンかぁ、と思って少しため息を吐いたんだが、そんな俺に見かねたのか「分かった」と言って差し出してきた
バッグ持ってもらうって言うか、バッグ持たせてあげるって感じだった
そのかわり俺のバッグを彼女が持ってくれた
最初より少しはマシにはなっているみたいだ
95:
結局この日は空振りだった。どんだけ粘っても車は止まらなかった
さて、どうしよう
このままだと旅始まって以来の寝床なしだ
俺は野宿でもよかったけど吉田はさすがに女の子だからそういうわけにもいかんだろう
「ネットカフェででも泊まろうか」
さすがにホテルとかは金銭的にも、それ以外の問題でも無理だ
「そうだね」
と言って、俺達は歩いてネットカフェを見つけブースを借りた
来る前に吉田はどうしても銭湯に行きたがったので、もうすっぴんだった
俺一人だったら風呂くらい一日くらい入らなくても平気なんだけどな
97:
しかし、俺の予定とはずいぶん違う旅になってしまった
本当はもっとのんびり回って県毎の名物を食べたり観光名所をめぐったりと言う予定だったのだが
今のところ車で行ってるせいもありただ移動だけしている
調子に乗って2ちゃんにスレ立てて写真載せようとかも考えてたんだが
「吉田って2ちゃんとか見る?」
「見るよ」
「意外だ」
俺の頭は芸人以下かもしれない
「見るんだ。ちょっと見てみよ」
99:
「2ちゃんとかみて面白い?」
と吉田が聞いてくるので「まあまあ」と返事した
「旅に出て2ちゃんとか」
「うっせーな。俺は元々2ちゃんに絡んだ旅をしたかったんだ」
「なにそれ?」
「本当はチャりでもっと色々見て回ったりする予定だったんだよ。出来たらそれでスレ立てようとか思ってたんだけどな」
「あぁ、そうなの?じゃあ予定狂いまくちゃったね」
誰のせいだと思っているのか
俺達は△△県にいたんだがその県のスレを探してみる事にした
オフ板が一番上に来た
104:
夏に田舎に行って何故か本を読んでる気分だ。
105:
とりあえず見てみた
「おお、今ちょうどオフやってるみたいだ」
「ふーん」
興味なさそうな吉田
俺は他のスレとかも見ながらへーとか言ってたんだが吉田がこんな事を言い出した
「じゃあ、オフにでも出てみる?」
「は?なんで」
「2ちゃんの思い出作りしたいんでしょ?」
いや、俺はオフをしたいわけじゃないんだが
けどなんか吉田なりの気遣いなのかなぁ、とかちょっと考えたんだ
吉田はただただ東京に行きたいだけみたいでそれ以外はどうでもいいみたいなんだけど、俺がそうじゃないって分かって少し自分が出来る事をやろうとしてたのかな
で、それがオフって事になったみたい
「じゃあ、行ってみる?」
「うん、じゃあ出ようか」
オフ板に書き込みをしてみた
待ってるからおいで、とレスがきた
107:
「他人の振りをしよう」
二人でそういう結論に至った。オフとか初参加だったが、オフに知り合い同士で来る奴は信じられない、と書いていたのでそれぞれ他人を装って携帯で書き込むことにした
地元じゃないと言う事もあって店を見つけるのに苦労したがなんとかたどり着き、まずは俺から入る事にした
店員に待ち合わせなんです、と告げて店内をうろつくとスレに書かれていた特長の人達を見つけることが出来た
「あの、すいません。オフの人ですか?」
「そうですそうです。こんばんわ」
と言って男3人、女2人の集団が席を開けてくれた
それから10分ほどして今度は吉田が入ってきた
男3人は俺の時より随分明るい態度だった
108:
女の間に男が座っていたりと元々ごちゃごちゃな席順だったが吉田も男の隣に座る事になった
俺とは少し離れてた
他人の振りをする約束通り、俺らは「はじめまして」とか言い合った
なんか変な感じだったが彼女は、いつもより明るい態度で猫かぶってんなぁ、と一人で考えるとちょっと面白かった
が、面白かったのは最初の方だけだった
俺の隣は男の人だったが、お酒を飲んでてちょっと酔ってたのかぐちるような言い方をしてきた
「君飲まないの?」
「あ、僕未成年なんで」
111:
オフと言っても知り合いの人が多いらしかった
結構固定されたメンバーで集まる事が多いらしい
俺はそうなのかーと思いつつ2ちゃんの話なんかをしていたんだが
「あーあ、また始まった」
そう言って男の人がぼやいていた
「なにがですか?」
「あの女の子はじめて見たけど」
と言って吉田の方を見た
「狙われてるね。間違いなく」
えええ。俺は吉田の隣に座る男を見た
確かに男は俺達の方を見ず吉田の方ばかり見ている
吉田も合わせているのか笑ったりしていた
「出会い厨なんだよなぁ。まぁ、顔がいいから女の子に人気あるみたいだけど」
待て待て待て待て。俺はそんなものを見たくて来たわけじゃない
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116:
つか吉田も俺といる時のあのツンツンは今どこにしまってあるんだ
皆はもうその男が出会い厨と言う事は認めて放置しているようだった
その中で気の合う人と話して楽しんでいると言う感じ
だから雰囲気自体はそんなに悪くなかった
俺も本当に吉田と他人だったら、はーよくやるなーで済ませてたかもしれない
けど実際のところは
てめーなにやってんだこらーって感じだった
あ、うん、俺嫉妬してたみたいなんだ
117:
俺はトイレに行くと言って席を立った
手を洗いながら違う。俺がしたいスレはこんなんじゃないと頭を振る
けど吉田も多分オフの雰囲気悪くしないようにしてるんだろうしなぁ、と思うとちょっとやるせなかった
そう思ってトイレから戻ってくると男が携帯電話をポケットにしまっているのが見えた
しまっていると言う事は携帯電話を取り出したと言う事だ
お前、まさかメアド交換とかしたんじゃねーだろうな、おい
うん、俺はちょっと怒りが沸いてきたみたいなんだ
121:
けど、実際大した事も出来ず、と言うかなんも出来んかった
居酒屋だったんだけどお開きになるまで俺は延々ゲームオタクの奴に薀蓄を聞かされ続けていた
店を出て、これからどうしようかってなった
吉田の隣に座っていた男が「もうちょっと遊ばない?カラオケとか行こうよ」とか言い出した
周りは「まぁ、暇だし行こうか」なんて雰囲気になって俺は内心うえーと思っていた
「ごめんなさい。私今日は帰ります」
って言ったのは吉田だった。
ナイスだ。吉田。
俺も「今日は帰ります」と言った。男は残念そうな顔をして吉田に「また来てね」とか言っていた
カラオケの言いだしっぺなだけに吉田を送ろうとか言い出すことがなくてよかった
うん、俺は思った。地元だとしてももうこねーよ
122:
オフ板なんてそんなもんだ
124:
「楽しんだ?」
吉田がそう聞いてきたが「あんまし」と答えた
俺はちょっといつものペースに戻った吉田を懐かしく思った
「つかさぁ」
「なに?」
俺はこれを言ったらなんて言われるだろうかと悩んだが言う事にした
「メアドとか交換してた?さっき見たんだけど」
あー。うん。とか言われたらやだな。よくよく考えたら俺知らないじゃん
つか、そんなのあんたに関係ないじゃん、とか言われたらもうどうしようもないな
けどこいつの性格だったら言いそうなんだよな
123:
二人の容姿とお前の性癖kwsk
125:
>>123
俺普通
吉田ショートカット
性癖ニーソックス大好き
127:
>>125
固い絆を感じた
131:
「あぁ、見てたの」
「まぁ、偶然」
「交換しない?って言われた」
「だろうね。出会い厨らしいから」
俺は出会い厨に力を込めた
「そうなの?つか断ったよ」
ナイスだ。吉田。俺はそう思った
「て言うか」
と吉田が言った。なんだろう。なんか男にいやな事でもされたんだろうか。
愚痴なら聞いてやろうと思った
「そんなのあんたに関係なくない?」
それかよ!結局それ言うのかよ!と俺は内心突っ込んだ
134:
「ちょっとどっか寄ろうか」
吉田がそう言ってきた
俺はなんか意外だったけど頷いた
もうそこそこ遅い時間だったからあんまりなかったけど二人でうろうろしてラーメン屋を見つけた
二人でラーメンを食ってると
「2ちゃんでスレでも立てたほうがよかったね」
と吉田が言った
多分、2ちゃん的な楽しみをしたかった俺にあわせてくれたみたいなんだがオフが期待外れだったと彼女も感じてみるみたいだった
「まぁ、別に旅が楽しかったらそれでいいとも思うんだ」
「楽しいの?」
あーここで楽しいって言ったらこいつどう思うかなー
「まあまあ」
「ふーん」
素っ気ない返事。「お前は?」って聞くと「別に」って言われた
だからお前は沢(r
「まぁ、一人で行くよりはよかったかな」
だって
136:
ラーメン屋を出て帰ることにした
東京に着いたらお別れかと思ってそういえば大学一緒じゃんと思い出した
「お前大学でもそんなツンツンしてんの?」
と聞くと「別にツンツンしてない」と言った
明らかにツンツンしてるようにしか見えないんだが
「してるよ」
と小さく呟いたが聞こえてたみたいで後ろから頭を叩かれた
俺は多分報われない旅をしている
夏は諦めて秋を待ったほうがいいかもしれない
137:
ネットカフェに戻って寝ることにした
シートを思いっきり倒して天井を見ながらぼんやりしてた
吉田はもう寝てるみたいだった
ちょっと寝顔を見て、おばちゃん家の事とかコンビニの事を思い出した
まぁ、抵抗なく一緒に寝るようになったしいいか、と思った
138:
朝になって俺が先に起きた
ドリンクバーから自分と吉田の分のジュースをくんだ。
返ってくると物音で起きたみたいで寝ぼけた感じの彼女に渡すと「ありがとう」と言っていた
寝ぼけている時の彼女だけが素直だ
ネットカフェから出て今日こそは車を捕まえようと気合を入れた
そのおかげかわずか10分で止まってもらえた
その人は東京の手前まで行くと言うので俺達はラッキーだった
140:
その運転手さんに乗せられて俺達は□□県までやってきた
東京までもうあと少しだ
俺は夏休みもまだまだ残っているし、東京についたらゆっくり出来そうだな、とか考えた
時間はもう夜になってしまっていて運転手さんにお礼を言って別れてから今日はここらへんで休もうとなった
とりあえず飯を食おうと言う事になって近くのファミレスへと行く事にした
俺は彼女の荷物を持って、彼女は俺の荷物を持った
142:
ぬいぐるみも持ってた
俺らは席について注文して飯を食った
東京に着いたらとりあえずお別れする事になるんだろうなぁ、と思うと時間がもうあんまりないと言う事に気がついた
俺はずっと気になってた事を聞いてみる事にした
「なぁ、彼氏さんってどんな人?」
「なんで?」
「まぁ、関係ないかもしれないけど聞いてみたくて」
一応先回りしておいた
145:
「普通に働いてる社会人」
「仲いいの?」
「普通じゃない?」
「俺と一緒に旅とかして怒らないの?」
「さぁ、どうだろ」
「けどさ」」
「うるさいなぁ、もう」
なんでかな。もう慣れたと思ったんだけどな
この時だけ今まで一番イライラきて、イライラだけですまなかった
147:
「なんだよ、それ!」
飲食店だったけどあんま気にせず大きい声を出してしまった
「だから関係ないじゃん」
「関係ないかもしれないけど、聞きたいんだよ!」
「答えてるじゃん」
「そんなの答えになってねーよ!」
なんつーか、鳥肌が立ったときみたいな気持ち悪い感じが体中に走ったみたいな感じで俺は首を上下させた
「なんであんたに言わなきゃいけないのよ!」
吉田も切れた
二人で切れた
「少しくらい一緒に旅してきたんだから少しくらいお互いの事聞きたくなるのが普通だろうが!」
「聞きたいのはあんただけでしょ!」
151:
俺はその言葉を聞いてかなり寂しくなった
あー知りたいの俺だけかよ。けど実際白熱してたからもう止まらんかった
「お前ツンツンしすぎなんだよ!俺がどんだけ耐えてると思ってんだよ!」
そう言うと彼女も黙り込んで俯いた
俯いてプルプル震えだした
やべ、泣いたのかな、と思って一瞬気を抜いた瞬間
バチーンと顔面に平手打ちを食らって、前のめりになって倒れは後ろにぶっ倒れてそうしている間に
「もういい!あんたとの旅ももう終わり!勝手にしたら!」
とか言って自分の荷物を抱えて店から出て行った
191:
荷物引きずるようにして出て行く吉田を慌てて追いかけて全然飯食ってないが、会計をして慌てて俺も追いかけた
やっぱ荷物が重いからかあんま遠くまで行ってなかったんですぐ追いつけた
出来ればそこで落ちついた感じを言えばよかったのかもしれないけど俺はまだ落ち着いてなかった
「待てこらああああああああああああああああ!」
と叫んだ
199:
叫んで普通の女ならびびったりして立ち止まるもんなんだが
吉田は更にそれで不機嫌になったらしくて立ち止まりはしたんだが
そこで追いついた俺におもっくそぬいぐるみで頭をぶったたいてきた
「うっさい!もう!」
「つか殴るんやめろ!」
つって俺はぬいぐるみを払おうと手を振り回した
そうやって店の外で暴れて、疲れ果ててしまった
208:
なんで俺はこんな女にときめいたりしていたんだろうか
俺の中でものすごいテンションが駄々下がりになってきてしまっていた
けど一応地元からこうやって旅してきたし、少しくらいちゃんと話そうと思った
「とりあえず座ろう」
と言って二人でそこら辺の道端に腰掛けた
「ごめん。言い過ぎた」
ととりあえず謝ったら彼女も「もういいよ」と言ってきた
謝らないなぁ、と思ったがもういいか、と俺も思った
「なんかお前俺の事嫌いみたいだし、無理やりついてきてるみたいな感じになっちゃったし」
もう、あんまり考えすぎない方がいいな、と思った
「じゃ、ここでお別れって事で」
「え?」
「まぁ、東京まで女一人危ないかもしれないけど気をつけていけよな」
俺は荷物を抱えた
「バイバイ」
216:
そう言って俺は本気でお別れしようとした
もうなんか報われないかもしんないし
なんかちょっと前まであったときめきもちょっと冷めてしまった
「ごめん」
って言われて振り返ったら吉田が荷物抱えてついてきていた
「私が悪かった。ごめん。東京まで一緒に行ってほしい」
俺、悩んだ。ちょっとだけ
けどいいよ。行こうかって言った
別にまたときめいたって訳じゃないんだけど、女の子一人で危ないし、一人旅よりはいいかなって思ったくらいだったけど
222:
いい展開
223:
冷めちゃったから、逆に一緒に行く事に抵抗がなくなったみたいで
東京に行ったらお終いだしさ
そういうわけで俺らは今日の夜も一緒に過ごして次の日の朝にまた二人でヒッチハイクを始めた
吉田も昨日までよりちょっと元気なくて、けど以前よりなんでか口数は増えた
俺も相槌を打ちながら車が止まってくれるのを待った
225:
「東京まで行くから乗せてあげてもいいよ」
って社会人らしいお姉さんとお兄さんがそう言ってくれた
俺は頭を下げて荷物を運びながら
「これで東京だな」って吉田に言うと「うん」って頷いた
お姉さんとお兄さんは仕事で□□県まで来ているんだそうだ
日帰りだったらしい、社会人って大変なんですね
とか話しながら「ヒッチハイクも大変でしょ?」と運転をしてたお姉さんに笑われた
232:
東京に入った
元々東京に来るまでにも思っていたけど地元と比べて街も大きいし人も多かった
俺は初めて来た東京に「すげー」とか言いながら街の外を眺めていた
お姉さんとお兄さんが東京のお勧めとか教えてくれて、お姉さんが「仕事じゃなかったら案内してあげるんだけど」と言っていた
とりあえず俺のひとまずの目的はこれで達成された
「ところで会社に戻る前にご飯食べに行くんだけど一緒に行く?」
とお兄さんが言ってきた。お姉さんもそうしなよと言ってくれて俺と吉田はじゃあそうしますと言って車がレストランに入った
234:
なんか読んでるだけとは言え、目的地に着くと寂しくなるな
235:
スーツのお兄さんとお姉さんはともかく俺と吉田はちょっと浮いた格好になるようなレストランだった
4人で適当にご飯を食べながらお姉さんが俺の地元の話とかを聞いてきた
そうやって話している途中で吉田がトイレに行くと言った
お兄さんが「じゃあ俺も」と言って席を立った
お姉さんと2人だけになって、俺は東京っていいですねとか言っていたんだが
「じゃあ、今度一緒に遊びに行く?」
と言われて
「マジですか」
と返した
236:
なん…だと…?
239:
「しばらく東京いるんでしょ?」
「そうですね」
「じゃあ、今度遊びに行こうよ」
どうやら本気のようだった。どうやら俺もまだまだ捨てたもんじゃないらしい
お姉さんが携帯電話を取り出した
「赤外線通信できる?」
と言って携帯を操作してる
俺もそれで携帯電話を取り出そうとした時に吉田が戻ってきた
吉田は連絡先を交換しようとしている俺達に気が付いたようだった
248:
「今度遊ぶんですか?」
そう吉田がニコって笑った
お姉さんは若干気まずさを感じたのか笑って交わそうとしてたが
「弟のこと可愛がってあげてください」
と言った。その設定まだ生きてたのか。と俺は思った
お姉さんは俺達が兄弟って事に驚いたみたいで
「似てないね、あんまり」
「よく言われます」
と俺は苦笑い
吉田はなに考えてるんだろう
元々俺に興味ないしどうでもいいのかな
それとも俺に気使ってるんだろうか
俺はポケットから手を抜いた
250:
「俺今充電切れてるんですよね。ごめんなさい」
そう笑ってみた
お姉さんは「そうなの?」と残念そうに言ったがポケットからメモを取り出して番号を書いて俺に手渡した
吉田の事を兄弟と分かると気まずさはどっか行ったようだった
「じゃあ、落ち着いたら連絡します」
ってそのメモをポケットにしまった
横目で吉田を見ると、なんかつまらなさそうな顔をしていた
お兄さんが帰ってきてお姉さんは何事もなかったように会話を再開した
253:
何を隠そう俺はこの吉田のような女好きだ
254:
オフでメアド聞かれた時吉田はどんな事を考えたんだろう
「じゃあ」
って俺と吉田はレストランの外で二人と別れる事にした
お姉さんは俺に笑顔を向けてくれた。
笑顔っていいなー
「東京ついたなー」
そう吉田に言うと「そうだね」ってちょっと暗い声を出した
つか元々吉田は東京に来てからちょっと暗くなってた
そういえば吉田はなんで東京に来たのか俺は知らなかった
けどとりあえず俺はポケットからお姉さんに貰った連絡先を書いたメモを取り出した
で、取り出して破って捨てた
吉田がちょっと驚いた顔して俺も「あーもったいねー」とか考えてるうちに千切れた紙は飛んでった
265:
「酷くない、それ?」
「あ、やっぱり?まぁ、どうせ夏だけだしな、東京にいるの」
「けどそれなら最初から断ればよかったのに」
「お前が交換したらいいみたいな雰囲気にするからだろ」
そうやって俺はちょっと言い訳して寝床探しを始めた
24時間カラオケなんてものがあるのが俺には衝撃だったがせっかくなんで行ってみる事にした
案の定吉田は歌わんかった
まぁ、俺も好奇心だけだったし寝て朝が来るのを待った
275:
その日はいい天気で、俺と吉田は外に出て東京観光しようかって話になった
俺はもう人の多さにもビルのでかさにも参った
吉田は東京に来た事があるらしくて色々彼女に案内してもらった
彼女も以前ほどツンツンではなくなっててそれが遠慮なのか気を許したからなのかって言ったらどっちも微妙だけど
そんなふうに過ごしながら夜になって
「ちょっと行きたいところがあるんだけど」
って吉田がなんか真剣な感じで言ってきた
俺はもうどこに行くの?とか質問せずにいいよって言った
280:
吉田に連れて行かれたのは普通のアパートだった
知り合いでも住んでいるんだろうか
彼女についていってエレベーターに乗る
「なぁ、知り合いのところ行くんだったら俺いないほうがいいんじゃない?」
「うん。けどごめん。一緒にいてくれたらうれしいかな」
なんか俺はこうやって荷物を持ってエレベーターなんかに乗ってると家に帰ってきたみたいな気分
エレベーターを降りてある部屋のドアの前に立った
吉田は俺のバッグを俺に手渡すとぬいぐるみだけ持って軽く深呼吸してピンポンした
287:
ドアが少しだけ開いて、相手は少しびっくりしたみたいだった
「うお」とか男の声が聞こえた
そんで俺は間違いなくその「うお」に対して「どしたの?」って言う女の声を聞いた
チェーンロックが外されてドアが開いて男が通路に出てきた
吉田が「久しぶり」って言った
男が「なに?なんでいきなり東京にいるの?」って言った
「彼氏の家にいきなり来ちゃダメ?」
って吉田が言った
296:
「そういう訳じゃないけど」
俺はぽかーんとして吉田の彼氏らしい男を見ていた
で、向こうも俺に気が付いて似たようにぽかんとしていた
「やっぱり浮気してたんだ」
吉田だけが気にしないで続けた
彼氏はそれで吉田の方に視線を戻した
「ごめん」
あっさり認めた
あっさりすぎて、許して貰おうって感じじゃないって言うのは俺にも分かった
「りさの彼氏?」
「ううん、友達」
「そっか」
彼氏さんはもう一回「ごめん」と言った
吉田は「うん、まぁ、そうかなと思ってたし」と言ってぬいぐるみを彼氏さんに渡した
「返す」
「うん」
298:
「お別れ言おうと思って」
「それだけで東京来たの?」
「一応一目くらい見たかったし」
「あぁ」
それでしばらく沈黙が続いたんだけど、結局吉田が「じゃあ、行くね」と言った
彼氏さんがちょっと待ってって言って部屋に入って戻ってきた
そんで吉田に「はい」って5万円を差し出した
「いらないよ」って吉田は言ったけど「旅費とかかかったろ。いいから取っといてくれ」
って彼氏さん、つか元彼さんは無理やり渡して「じゃあね」って言って部屋に戻った
ポツンって俺と吉田が取り残された
305:
「いこっか」
吉田がそう言ってきて俺はぽかんとしたままエレベーターに戻って下へと降りた
下へと降りても無言でしばらく二人で歩いて、黙ったまんま歩いて
しばらくして吉田が泣き出した
316:
吉田はずっと地元から東京に来るまで怒ってた理由はこれだったのか、と俺もさすがに分かった
しかも元々勘付いていたんだろうけど浮気相手がいるところまで見てしまった
地元から東京まで来る間色々考えてたんだろと思う
そりゃ、ナンパみたいなことしてる俺に冷たくなるのも分からなくもなかった
俺は吉田に近づいて肩を軽く叩いた
吉田がびくっとして固まった
俺は「お疲れ」って言った
「うっさい!」
頭を叩かれた
319:
吉田…
我慢してたんだな
331:
公園のベンチに座ってジュースを飲んで一息吐いた
吉田も落ち着いて「あー終わっちゃったなー」とか言っていた
「けど思ったより楽しい旅立ったな」
と吉田が言ってきたので
「楽しかったの?」
と尋ねると「楽しかったよ」と言った
そうか。楽しかったのか。俺はなんでか嬉しくなった
吉田はベンチから足を伸ばしてぷらぷらさせながら
「この5万円どうしよっかなぁ」
と言っていた
「好きに使えば?地元に帰っても少しあまるだろ」
「そうだよね」
と言って四万円を財布にしまい、一万円だけ手元に残した
「じゃ、早これ使っちゃおう。二人で」
って言った
二人で。って言った
346:
で、まぁ、俺の旅も終わった
俺はしばらく東京観光して地元に帰った
地元に帰ってからはあーまた東京いきてえなあとかそんな事を思う
そんな夢を今日思い浮かべた。乙
38

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