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ポケモンものがたり


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ここはポケモンだけが住む島、ポケモン島。
自然があふれ、たくさんの種類のポケモンがそれぞれの社会を作り生存しています。
そして、ポケモン島の一番南に広がる森の中、サルのポケモンだけが住むおさるの村。
ここに一匹のヒコザルがいました。
しかしこのヒコザルはいつも他のサルポケモンからいじめられています。
あらあらたいへん、また今日もヒコザルはいじめられているようです。
マンキー「おいヒコザル!早くここまで登って来いよ!」
マンキーが一番高い木のてっぺんからそう言います。
ヒコザル「む、無理だよ・・・早く、それ返して・・・」
バオップ「お前、サルのくせに木も登れないのか?」
ヒヤップ「やだ、あいつまた泣くわよ!」
木の上から他のサルポケモンたちが言います。
てっぺんのマンキーの手には、ヒコザルの大事なお守りが握られていました。
星の形をした綺麗なお守りです。
マンキー「返してほしかったら早く登って来い!」
マンキーの言葉にほかのポケモンたちがクスクス笑います。
ヒコザル「か、返してよ・・・」
2:以下、
ヒコザルは泣き出してしまいました。
このヒコザルは、怖がりで、弱虫で、いつもいじめられて泣いてばかり。
マンキー「ほら、返してやるよ!」
そういってマンキーは、ヒコザルのお守りを力いっぱい木の上から放り投げます。
ポイ
お守りは遠く森の向こうまで飛んでいきます。
ヒコザル「あっ!」
ヒコザルは急いでお守りが飛んでいった方へ駆け出しました。
そんなヒコザルの後姿を、マンキーたちは大声で笑いながら見送りました。
3:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:30:12.18 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「どこに行ったんだろう・・・」
飛んでいったお守りを探して、ヒコザルは森を歩きます。
すると、後ろから急に誰かに突き飛ばされてしまいました。
ヒコザル「痛い!」
ヒコザルが後ろを振り向くと、そこにはエイパムとヤナップが立っています。
エイパム「こんなところで何してるんだよ」
エイパムの手には、ヒコザルのお守りが握られていました。
ヒコザル「あ、それ返して・・・」
エイパム「これお前のだったのか?」
ヒコザル「うん・・・」
エイパム「なんでこんなもの投げたりするんだよ!」
エイパムは尻尾を伸ばし、ヒコザルを突き飛ばしました。
4:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:30:41.38 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「違う・・・!投げたのは僕じゃ・・・」
エイパム「言い訳はやめろ!これのせいでヤナップがケガしたんだぞ!」
ヤナップのほうを見ると頭から血が流れています。
ヒコザル「ぼ、僕じゃないよ・・・」
エイパム「嘘つくな!これはお前のなんだろ?!」
ヒコザル「う、うん・・・」
エイパム「ほら見ろ!お前のせいだ!」
ヒコザル「ち、違うよ・・・」
ヒコザルの目から涙があふれます。
エイパム「この泣き虫嘘つき!」
ヤナップ「お父さんに言いつけてやる!」
ヤナップはエイパムからお守りを受け取ると、ヒコザルめがけて投げつけると二匹は帰っていきました。
お守りが頭に当たり、ヒコザルも頭から血を流しながら自分の家に帰ります。
いっぱい泣きながら歩きます。
どうして僕ばっかり・・・みんないなくなっちゃえばいいのに・・・
そんなことを思いながら。
5:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:31:27.20 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「ただいま・・・」
ヒコザルが家の玄関をくぐると、見覚えのある後姿がありました。
さっきのヤナップとお父さんのヤナッキーです。
ヤナッキー「お宅のヒコザルにやられたと言っているんです!どうしてくれるんですか?!」
ヤナッキーはかなり怒っているようです。
その奥でヒコザルのお母さん、モウカザルが何か言っています。
モウカザル「確かにケガをさせたのは謝りますけど、たかだか子供のけんかでしょう?」
ヤナッキー「子供のケンカですって?!危うく死ぬところだったかもしれないんですよ?!」
モウカザル「死ぬってそんな大げさな、かわいい怪我じゃないですか」
ヤナッキー「かわいいってあなたねえ!」
モウカザル「あら、ヒコ。おかえり」
ヒコザル「ただいま・・・」
モウカザル「あら、ヒコも頭に怪我してるじゃない」
ヒコザル「こ、これは・・・」
6:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:32:01.09 ID:sE5+pmBg0
モウカザル「ヤナッキーさん、これはお互い様でしょう?」
ヤナッキー「こんなの自分で頭を打ったに決まっている!」
モウカザル「そうなの?ヒコ」
ヒコザル「これは・・・その・・・」
ヤナップ「絶対言うなよ!」
ヤナップは言った後、ハッとなって口をふさぎました。
モウカザル「どういうことかな?ヤナップ君」
ヤナップは首を横に振ります。
モウカザル「ヤナッキーさん」
ヤナッキー「もういい!!覚えてろ!」
ヤナッキーはヤナップを引っ張りながら家を出ていきました。
7:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:32:54.01 ID:sE5+pmBg0
モウカザル「またずいぶん派手にやったんだねえ」
ヒコザル「ぼ、僕はやってないよ・・・」
モウカザル「わかってるよそんなこと」
モウカザルはにっこり笑うとヒコザルの頭の血をぬぐいました。
ヒコザル「迷惑かけてごめんなさい・・・」
モウカザル「もう気にしないで早く汚れ落としてきちゃいなさい」
ヒコザル「うん・・・」
8:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:33:45.93 ID:sE5+pmBg0
ヒコザルのうちにお父さんはいません。
ヒコザルのお父さん、ゴウカザルはこのポケモン島を守る戦士の一匹だったのです。
そしてまだヒコザルが小さいころに、突然やってきた凶暴なポケモンをこのポケモン島から追い払うために家を出て行ってから帰ってきていません。
そして、その時にゴウカザルから託されたのが、このお守りでした。
これをお前に預ける
大丈夫、何かあったらこのお守りが必ずお前を守ってくれる
ヒコザル「お父さん・・・」
ヒコザルは強くてかっこいいゴウカザルが大好きでした。
お母さんと一緒に今でも帰ってくるのを待っています。
9:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:34:26.87 ID:sE5+pmBg0
もうすぐ夕暮れ。
そんなときでした。
おさるの村の外れから大慌てで走ってくるポケモンがいました。
ヤルキモノです。
ヤルキモノ「た、大変だ!!」
「いったいどうしたんだ?」
村のポケモンたちは一斉に家から顔をだし、ヤルキモノに問いかけます。
ヤルキモノはいったん落ち着くために息を吸い込むと、こう言いました。
ヤルキモノ「アブソルが出た・・・!」
10:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:34:52.91 ID:sE5+pmBg0
アブソルは村の間で災いポケモンと呼ばれて恐れられていました。
大昔からアブソルがその姿を現すと、なにか大きな災いがこの村を襲ってきたからです。
ヤルキモノのその一言で、村の皆は息をのみました。
エテボース「村長を起こそう」
エテボースの言葉で、村の大人たちが一斉に家を出て村長の屋敷へ向かいます。
モウカザル「ヒコはおとなしく待ってるんだよ」
ヒコザル「うん・・・」
ヒコザルのお母さんも例外ではありません。
ヒコザルは初めての出来事に不安で仕方ありません。
ヒコザル(お父さん、早く帰ってきて・・・)
ヒコザルはそう思いながらお守りをぎゅっと握りしめました。
11:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:35:40.69 ID:sE5+pmBg0
エテボース「村長様!村長様!この村に、アブソルが現れました!」
オコリザル「どうか、お目覚めになりお力をお貸しください!」
そういうと、村の大人たちはたくさん集めた木の実を供え、祈りを捧げます。
どれぐらい経ったでしょうか。
すっかり夜も更けたころ。
村長の屋敷の扉がゆっくり開きました。
エテボース「村長様・・・!」
ケッキング「わしの眠りを妨げるとは、なにごとだ・・・」
村長のケッキングがその大きな体を揺らしてみんなの前に姿を現しました。
ケッキングは何年も眠りにつき、村の危機に目覚め、その凄まじい力で何度も村を救ってきました。
ヤルキモノ「村長様、実はこの村にアブソルが!」
ケッキング「アブソルだと・・・そうか。みなのものは、何かあった時のために木の実を持ち、それぞれ持ち場につくのだ」
ケッキングのその一言で、皆それぞれの持ち場へ向かって解散していきました。
12:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:36:20.74 ID:sE5+pmBg0
モウカザル「ヒコ、ただいま」
ヒコザル「おかえり・・・なにかあったの?」
やっと家に帰ってきたお母さんに駆け寄り、不安そうに尋ねます。
モウカザル「いいや、でもまたすぐに出かけなきゃならない」
ヒコザル「え・・・」
モウカザル「大丈夫、またすぐ戻ってくるからね」
モウカザルはヒコザルをやさしく抱き寄せました。
ヒコザル「お母さん・・・?」
いつも元気で頼もしいお母さんのモウカザルが、少し震えてるような気がしました。
モウカザル「あはは!何でもないさ!ちょっと外にいすぎて寒くなっちゃってね」
そういうと尻尾の炎を勢いよく燃え上がらせました。
きれいな炎です。
モウカザル「いいかい?ヒコは絶対何があっても家から出ちゃいけないよ?」
ヒコザル「うん・・・わかった・・・」
ヒコザルは不安でした。
お守りをまた強く握ります。
モウカザル「帰ってきたら晩御飯、ヒコの好きなものを作ってあげるから何食べたいか考えときな」
じゃあ行ってきます。
そういってモウカザルは家を出ていきました。
13:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:37:06.53 ID:sE5+pmBg0
おさるの村の西側。
星空満点の海岸沿い。
ここにはヒヤッキーとヤルキモノが何か異変がないか見回りをしています。
ヒヤッキー「あれは、なにかしら?」
するとヒヤッキーが海の方で何か見つけました。
しかし暗くてまだよく見えません。
ヒヤッキーとヤルキモノは浜辺に流れ着いていたスターミーに協力してもらい、フラッシュで海を照らします。
ヤルキモノ「あれは・・・!」
ヒヤッキー「た、大変!ヤルキモノ!!はやく村長様のところへ」
そう言いかけた途中でした。
当たりが真っ白に染まり、海岸沿いは一瞬にして爆炎に包まれました。
14:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:37:40.70 ID:sE5+pmBg0
それと同じころ、村中を大きな地震が襲います。
オコリザル「なんだ?!地震か?!」
揺れは徐々に大きくなり、村の地面が大きく二つに割れていきます。
割れ目から砂嵐が巻き起こり、あたりは何も見えなくなってしまいました。
エテボース「どうなってるんだ?!」
「ぐあああ!!!」
砂嵐の中、突然誰かの悲痛な叫び声が響きわたります。
バオッキー「どうした?!何があった?!」
バオッキーが声のしたほうへ向かいます。
バオッキー「こ、これは?!」
バオッキーが目にしたものは、傷ついて瀕死の状態で倒れているヤナッキーでした。
バオッキー「なにがどうなって・・・」
そう言いかけ、バオッキーは後ろに何かの気配を感じました。
バオッキー「くっ、かえんほうしゃ!!」
バオッキーは振り向きざまに炎を吹き出し攻撃します。
しかし砂嵐で何もわかりません。
でもバオッキーは次の瞬間、ヤナッキーをこんな風にした犯人を目にしました。
しかし、それを誰にも言えぬまま、意識が遠のいていきました。
15:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:38:27.90 ID:sE5+pmBg0
あちこちで悲鳴が聞こえます。
オコリザル「くそ!!なんなんだいったい!」
ケッキング「みなさがれ!!」
ケッキングの雨乞いによって雨が降り出し、砂嵐が掻き消されて視界が徐々に開けていきます。
ケッキング「!!」
ケッキングやほかの猿ポケモンが目にしたのは驚く光景でした。
地面に何匹ものポケモンたちの傷ついた体が横たわり、その真ん中にその犯人が立っています。
ケッキング「バンギラス・・・」
ヤルキモノ「村長様・・・」
ケッキング「ヤルキモノ!どうしたんだその傷は?お前は海岸の方へ行っていたはず・・・」
ヤルキモノは全身傷だらけです。
16:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:39:03.63 ID:sE5+pmBg0
ヤルキモノ「海から・・・見たことのないギャラドスのようなポケモンが・・・破壊光線で海岸を・・・!」
ケッキング「ギャラドス?!このバンギラスといい、一体どうなっておる・・・」
オコリザル「しかし、まずはこのバンギラスをどうにかしないと!」
ケッキング「いや、ここはわしに任せて、お前たちは海岸の方へ向かってくれ」
オコリザル「しかし、村長様は?!」
ケッキング「バンギラスを倒したらすぐに向かう」
オコリザル「そんなおひとりでは・・・!」
ケッキング「わしもまだ戦えるわい」
ケッキングは拳を固めます。
オコリザル「わかりました・・・どうか御無事で!」
そういうとオコリザルは残っているポケモンたちと海岸へ向かいました。
ケッキング「ゆくぞ・・・アームハンマー!!」
振り上げたこぶしがバンギラスをとらえようとしたその時。
三つの頭がケッキングの体にかみつき、その動きを封じました。
17:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:39:36.69 ID:sE5+pmBg0
ケッキング「サザンドラまでおったのか!」
ケッキングにかみついたのは凶暴ポケモンのサザンドラでした。
サザンドラはかみついたケッキングの拳をバキバキっとかみ砕きます。
拳を潰されたケッキングの表情が悲痛に歪みました。
さらに、身動きの取れない体にバンギラスが鋭く尖った無数の岩を突き立てます。
ケッキング「がぁああ・・・!!」
鋭い岩に体中を貫かれ、サザンドラに噛みつかれたまま膝をつきました。
さらに追い打ちをかけるようにバンギラスもケッキングののど元に噛みつきます。
ケッキングは声をあげることも身動きを取ることもできず、意識を失ってしまいました。
それを確認すると、サザンドラは空へ舞い上がり、火を噴いて村の家を次々に燃やしていきます。
18:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:40:30.33 ID:sE5+pmBg0
家に取り残されたポケモンたちの悲鳴が響き、村は炎に包まれ、村のポケモンがあちこちで倒れています。
モウカザル「ヒコ・・・!」
傷ついた体を引きずりながら、モウカザルはヒコザルの元へ向かいます。
しかし、そんなモウカザルの目の前にサザンドラの姿が。
モウカザル「くっ、そこをどきな!!インファイトオオ!!!」
モウカザルは力を振り絞り、ヒコザルに会うためサザンドラに突っ込んでいきました。
19:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:40:58.88 ID:sE5+pmBg0
朝です。
太陽がまぶしく輝いています。
朝の日差しを浴びて、ヒコザルは目を覚ました。
いつもの朝。
お母さんの作る朝ごはんのにおい。
ヒコザル「違う・・・」
ヒコザルは目を疑いました。
自分の体は倒れた家の壁の隙間に入り、火と煙の臭いが漂っています。
急いで隙間から這い上がり伺う外の様子。
ヒコザル「何・・・これ・・・」
20:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:41:30.89 ID:sE5+pmBg0
自分の家は崩れ落ち、村の家々も崩れ落ち、鋭い岩が転がり、地面は真っ二つ、あちこちで火がくすぶり、黒い煙が漂っています。
ヒコザルは手に握りしめていたお守りと一緒にあたりを歩き出しました。
動いているのはヒコザルと火と煙だけ。
他には誰もいません。
やがて海岸に出ました。
砂浜は瓦礫や崩れた岩で、ヒコザルの知っている景色はどこにもありません。
ヒコザル「お母さん・・・」
ヒコザルは村中歩きまわってお母さんを探しました。
しかし、お母さんはおろか、村にいたポケモンは一匹もいません。
一体、何があったのか。
お母さんが家を出た後、しばらくして急に地面が揺れて目の前が真っ暗になって。
それから記憶がありません。
21:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:41:59.34 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「僕が、みんないなくなればいいなんて思ったから?」
ヒコザルは泣き出しました。
自分の家のあった場所に戻り、一匹。
おなかが減りました。
お母さんの手料理が食べたい。
ヒコザル「お母さああん!!」
その泣き声だけがむなしく響きました。
22:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:42:33.23 ID:sE5+pmBg0
どのくらい歩いたでしょうか。
お母さんを探してヒコザルはフラフラ力なくさまよっていました。
ヒコザル「どこだろ・・・ここ・・・」
おさるの村のはずれの森を入っていったところまでは覚えているのですが、どうやら迷子になってしまったみたいです。
辺りは木々が深く生い茂り、まるで夜のように薄暗くて不気味です。
ヒコザル「あっ・・・」
ヒコザルが見つけたのは大好物のオレンの実。
幸い、ヒコザルでも届きそうな位置に実っています。
ヒコザルはもうおなかぺこぺこ。
すぐにオレンの実に手を伸ばしました。
するとその時でした。
つるのむちがヒコザルの体を引っ張りあげ、地面にたたきつけられてしまいました。
23:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:43:09.22 ID:sE5+pmBg0
「この迷いの森で誰に断わって木の実を食べようとしてるんだ?」
ヒコザルの前に三体のポケモンが現れました。
迷いの森にすむ、ウツボット、ドクケイル、そしてペンドラー。
彼らは迷いの森で木の実を独占するポケモンたちでした。
ペンドラー「見たことない奴だな。俺様の森でいい度胸じゃねえか」
どうやらこのペンドラーがリーダーのようです。
ヒコザル「ご、ごめんなさい・・・」
ドクケイル「声が小さくて聞こえないぞ」
ヒコザル「うぅ・・・」
ウツボット「うじうじしてイライラするぜ」
ウツボットは巻き付けていたつるでヒコザルを更に締め付けます。
ペンドラー「こいつは喰ってもまずそうだな」
ドクケイル「違いない」
ウツボット「なら俺がもらうぜ、溶解液で跡形もなく溶かしてやる」
ヒコザルは苦しさと恐怖で気を失ってしまいました。
24:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:43:52.45 ID:sE5+pmBg0
ウツボット「いただきます」
ウツボットがヒコザルの体を口の中に入れようとしたその時。
彼らの横の木がなぎ倒され、また別のポケモンが現れたのです。
ドクケイル「げっ!お前は・・・」
ペンドラーたちは驚いて後ずさり、ウツボットもヒコザルをつい落としてしまいました。
ペンドラー「ゴ、ゴロンダ・・・」
ゴロンダと呼ばれたそのポケモンは、恐ろしい顔でこちらをにらみ、唸り声をあげています。
ペンドラー「くっ、くそ!いくぞ・・・」
どうやらペンドラーたちも、このゴロンダにはかなわないようです。
ヒコザルを置いて森の奥に去っていきました。
ゴロンダ「・・・・・」
25:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:44:28.30 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「んん・・・」
気が付くと、敷き詰められた藁の上に寝ていました。
よく見るとここは洞穴の中みたい。
外は雨が降っています。
ペンドラーたちに襲われて、それから自分はどうなったのだろう。
考えてもよくわかりません。
とにかく助かったようでした。
少しだけ安心すると、ぐーっとお腹の音がしました。
昨日の晩から何も食べていませんから当然です。
ヒコザル「おなかすいた・・・」
そうつぶやくと、バラバラっと頭上から木の実がたくさん振ってきました。
ヒコザル「き、木の実だ・・・!」
ヒコザルが見上げると、ずぶ濡れの大きなポケモンがそこに立っています。
最初は少し怖かったけど、どうやら襲ってくる気配はありません。
それに空腹にはかなわなかったみたい。
ヒコザル「食べても、いいの・・・?」
そう尋ねると、そのポケモンは少しうなずき、背を向け洞穴の入り口あたりに座り込みました。
気を使ってくれたのでしょうか。
ヒコザルは一心不乱に木の実にかじりつきました。
26:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:45:16.60 ID:sE5+pmBg0
お腹いっぱいになって元気になったヒコザル。
思い切ってあのポケモンに近づきます。
ヒコザル「おじさん、ありがとう」
ヒコザル「おじさんは誰?ここで暮らしているの?」
しかし何も答えません。
ただ口に葉っぱをくわえ、雨が降るのを眺めています。
ヒコザルもそのまねをして、木の実の葉っぱを口にくわえて一緒に雨を眺めました。
27:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:45:57.20 ID:sE5+pmBg0
しばらく、ヒコザルはそのポケモンと過ごしました。
そのポケモンは何もしゃべってくれませんでしたが、ヒコザルはそれでも良かったのです。
なぜかはわかりませんが、悪いポケモンだとは思えなかったからです。
そのポケモンも、何もしゃべりませんでしたが、ヒコザルを追い出そうともしませんでした。
二匹は一緒に木の実を食べ、一緒に空を眺め、一緒に藁の上で眠り。
ただそれだけでとっても心地が良かったのです。
そして、あれから三日ほどたったころでした。
ドクケイル「ほら、あの時のちびもいるぞ」
ウツボット「あの時喰いそびれちまったからな」
ペンドラー「ゴロンダめ・・・俺様の怖さを思い知らせてやる」
あの時の三匹でした。
28:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:46:32.09 ID:sE5+pmBg0
ドクケイル「じゃあ俺からいってくるぞ」
そういうとドクケイルは洞穴まで飛んでいきました。
ドクケイル「くくっ、中で仲良く木の実喰ってやがる・・・」
ドクケイルは洞穴の入り口で羽を羽ばたかせます。
ドクケイル「[ピーーー]!ゴロンダ!しびれ粉!!」
ドクケイルのしびれ粉が洞穴に充満していきます。
ゴロンダはヒコザルをかばい、しびれ粉を全部吸い込みました。
ドクケイル「なんてやつだ、だがこれでお前はしびれて動けまい!」
ウツボット「次は俺だ!グラスミキサー!!」
ウツボットから放たれた鋭い葉っぱがゴロンダの全身を切り刻みます。
ヒコザル「お、おじさん!!」
ゴロンダはしびれて動けません。
ペンドラー「とどめは俺だ!メガホーン!!」
ペンドラーの二本の角が、グサリとゴロンダの体を貫きました。
ペンドラー「死んだか?」
29:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:47:12.52 ID:sE5+pmBg0
ゴロンダ「グオオオオ!!」
ゴロンダはまだ生きていました。
ペンドラーの突き刺さった角をつかむと、真っ二つに折ってしまったのです。
ペンドラー「ぐわああああ!!!こいつ!やれ!!殺せ!!」
その言葉でウツボットとドクケイルがいっせいにゴロンダに襲い掛かります。
ウツボット「リーフストーム!!」
ドクケイル「シグナルビーム!」
何度も何度もゴロンダに攻撃が続きます。
もうゴロンダは動きません。
息もしていません。
手足が吹き飛んでも攻撃はやみません。
ヒコザル「やめて・・・もうやめてよ・・・!!」
ヒコザルは勢いよく飛び出しました。
ペンドラー「お前も殺してやる!」
三匹が今度はヒコザルめがけて襲い掛かります。
とても怖かった。
なぜ飛び出したのか。
自分でもわかりません。
でも体が勝手に動いたのです。
不思議と後悔はありませんでした。
30:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:48:28.83 ID:sE5+pmBg0
ヒコザル「うわああああ!!!」
お父さんのお守りを握りしめ、無我夢中で叫びました。
すると、体から勢いよく炎が噴き出し、ヒコザルの体を渦巻いていきます。
ペンドラー「こ、これは・・・火炎車?!」
ドクケイル「ぐわああ!!」
ウツボット「や、やめろおお!!」
炎技はこの三匹に効果抜群です!
ペンドラー「こんな技隠し持ってやがるなんて・・・」
炎をまとったヒコザルに近づくことはできません。
ペンドラー「お、覚えてろよ!!」
そういうと三匹は逃げるように去っていきました。
31:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/04(金) 04:49:33.72 ID:sE5+pmBg0
自分が感じたことのない力でした。
自分にこんなことができるなんて。
いつもいじめられて何もできなかったのに。
ヒコザル「あったかい・・・」
ヒコザルをまとっていた炎がさらに強くなっていきます。
自分の中に力があふれていくのがわかりました。
やがて炎が収まり、ヒコザルは自分の姿を見て驚きました。
ヒコザル「あれ・・・?僕・・・進化してる?!」
そうです、ヒコザルはお母さんと同じ姿、モウカザルに進化したのです!
モウカザル「おじさん・・・!」
モウカザルはゴロンダに駆け寄りました。
血まみれで手足は千切れぼろぼろになったゴロンダ。
もう二度と一緒に木の実を食べることも、一緒に昼寝をすることもできない。
そのことはモウカザルにもわかっていました。
でももう泣きません。
モウカザル「ごめんおじさん・・・僕を助けてくれてありがとう」
モウカザルはゴロンダの体を洞穴の近くに埋めました。
くわえていた葉っぱをその上に差して。
つづく
33:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:22:52.44 ID:Oww1VHxd0
ポケモン島。
数多くのポケモンがそれぞれの生態系を築きながら共存するポケモンだけの島。
そのポケモン島の南にあるサルポケモンしかいない不思議な村、おさるの村から少し離れた小さな村。
そこにてんたいポケモン、ゴチルゼルが夜空を見上げながら佇んでいました。
ゴチルゼル「この星の動き・・・」
サーナイト「どうしました?ゴチルゼル」
このポケモンはサーナイトです。
ここはサーナイトとゴチルゼルの種族が暮す、てんたいとほうようの村。
ゴチルゼル「サーナイト、あなたも感じますか?この悪しき気配」
サーナイト「はい・・・はるか北の方から。このポケモン島に大きな災いが降りかかろうとしているかのようです・・・」
ゴチルゼル「星たちも、今夜はいつもより騒いでいます・・・いったい何が起ころうとしているのか」
サーナイト「わかりません、ですが近いうちにこの村にも大きな変化が訪れようとしています」
ゴチルゼル「皆にも注意を呼び掛けておきましょう」
サーナイト「ええ・・・」
そうして次の日の朝。
34:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:24:01.07 ID:Oww1VHxd0
キルリア「ママ!!ママ!!」
この子はキルリア。
サーナイトの進化前のポケモンです。
サーナイト「どうしました?キルリア。そんなに慌てて」
キルリア「村の入り口で変なポケモンが倒れてる!」
サーナイト「へんなポケモン?」
サーナイト(まさか・・・)
サーナイトは昨日のゴチルゼルとの会話を思い出しました。
サーナイト「キルリア、あなたは家にいなさい」
キルリア「えー・・・」
キルリアはご機嫌ななめです。
サーナイト「いいですね?」
キルリア「はーい・・・」
キルリアは少し不機嫌でしたがママのいうことを聞くことにしました。
後でこっぴどく怒られてしまいますからね。
サーナイト(ゴチルゼル、聞こえますか?)
サーナイトはテレパシーでゴチルゼルに話しかけます。
ゴチルゼル(はい、どうしました?)
ゴチルゼルもテレパシーで答えます。
サーナイト(うちのキルリアが、村の入り口でポケモンが倒れているのを見つけたそうです。一緒に来てもらえますか?)
ゴチルゼル(わかりました。皆には外に出ないように言っておきます)
サーナイト(お願いします。先に行っていますね)
ゴチルゼル(私もすぐ向かいます)
そうして、サーナイトは村の入り口へ向かいました。
キルリア「ママにはああ言ったけど、ついていっちゃうもんね」
キルリアはこっそりママについて行くことにしました。
35:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:27:15.54 ID:Oww1VHxd0
村の入り口についたサーナイト。
サーナイト「このあたりですが・・・」
すると、道の端っこでポケモンが倒れています。
よく見るとケガをしているようです。
サーナイト「大変・・・!」
ゴチルゼル「待つのです、サーナイト」
そこへゴチルゼルも到着しました。
ゴチルゼル「まだあのポケモンが安全と決まったわけではありません」
サーナイト「でも・・・」
サーナイトはほうようポケモン。
傷ついたものを放っておくことなどできません。
サーナイト「ならあのポケモンはまだ危険と決まったわけでもないということです」
ゴチルゼル「・・・仕方ありません、ですが危険と分かった場合はすぐにしかるべき処置をとります」
サーナイト「ええ、ありがとうゴチルゼル」
すぐさまサーナイトは倒れているポケモンに駆け寄り、傷口に手をかざしました。
36:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:27:58.96 ID:Oww1VHxd0
するとサーナイトの体が光り輝いていきます。
これはサーナイトの癒しの波動です。
そのポケモンの傷は見る見るうちに消えてなくなり、やがてゆっくりと目を開けました。
「ここは・・・」
サーナイト「具合はどうですか?あなたはここで怪我をして倒れていたのですよ?」
ゴチルゼル「サーナイト、下がってください」
ゴチルゼルが少し厳しい口調でそう言いました。
ゴチルゼル「あなたは何者ですか?なぜここへ?」
「僕は、ヒコ・・・じゃなかった」
僕はモウカザル。
そのポケモンはそう言いました。
モウカザル「僕はお母さんを探しているんです」
数日前にいなくなった僕のお母さん。
今、どこで何をしているんだろう。
変わってしまった僕の姿を見てどう思うのだろう。
サーナイト「お母様がいなくなったのですか?」
モウカザル「はい・・・でもお母さんだけじゃなく、僕の村のポケモン全員いなくなったんです」
ゴチルゼル「どういうことです?」
モウカザル「わかりません・・・」
「わー!尻尾から炎が出てる!!」
モウカザルが肩を落とすのと同時に、後ろから声が聞こえました。
37:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:29:42.85 ID:Oww1VHxd0
サーナイト「こら、キルリア!家にいなさいと言ったでしょう?」
その声の正体はキルリア。
モウカザルの尻尾をつかんでブンブンっと振り回しています。
キルリア「いいでしょ!別に!」
ゴチルゼル「そのポケモンは危険かもしれません!キルリア離れなさい!」
キルリア「大丈夫だよ!ね?」
キルリアはモウカザルに尋ねます。
モウカザル「う、うん?どうだろう・・・?」
まだよくわからない状況にモウカザルは少し戸惑いました。
ゴチルゼル「キルリア、ダメです!」
キルリア「いやだ!この子と遊びたい!」
キルリアは負けじと言い返します。
間に挟まれたモウカザルはもうたじたじ。
モウカザル「あ、あの・・・僕は別にあなたたちに危害を加えるつもりは・・・」
キルリア「ほらね!」
ゴチルゼル「ですが」
サーナイト(ゴチルゼル、もうやめましょう)
その間に入ったのはサーナイトのテレパシーでした。
サーナイト(私たちで見張っておけば大丈夫。それにさっきのこの者の話ももう少し詳しく聞きたいですし)
ゴチルゼル(・・・そうですね、すみません。少し取り乱してしまいました)
サーナイト「キルリア、このモウカザルを私たちのお家へ案内してさしあげて」
キルリア「えー!いいの!?わかった!」
サーナイトの言葉に、キルリアは嬉しそうに飛び跳ね、モウカザルの手を引いて家の方へ向かいました。
38:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:31:35.09 ID:Oww1VHxd0
キルリア「ふふっ、何して遊ぶ?!」
モウカザル「僕は、なんでもいいけど・・・」
誰かと遊ぶなんてこれまでなかったモウカザルは、このキルリアに押されっぱなし。
サーナイト「キルリア、この子と話がしたいから遊ぶのはもう少しだけ後にしてもらえる?」
キルリア「えー何で?!」
サーナイト「ごめんなさい、すぐに終わるから。ね?」
そういってキルリアの頭を柔らかく撫でました。
キルリアはこうやってママに頭をなでてもらうのが大好きです。
キルリア「んーわかった・・・先にゴチミルたちと遊んでくる」
キルリアはしぶしぶそういうと、家を後にしました。
サーナイト「騒がしい子でごめんなさいね、そこへ座って」
モウカザル「いえ・・・大丈夫です」
言われたまま、モウカザルは椅子に腰かけました。
39:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:32:05.45 ID:Oww1VHxd0
ゴチルゼル「話というのは、先ほどの話のことです」
ゴチルゼルとサーナイトも向かいのいすに腰掛けながらモウカザルに尋ねました。
なぜ村の外で倒れていたのか。
そして母親や村のポケモンがいなくなったこと、その時何が起こったのか。
モウカザルは、思い出せる限りのことを話しました。
お母さんが何かのために家を出ていったこと。
そのあと地震が起こったこと。
目が覚めたら村中が崩壊し、お母さんや村のポケモンたちがいなくなっていたこと。
そして、お母さんを探してさまよっていたこと。
ペンドラーたちに襲われたこと。
ゴロンダに助けてもらったこと。
ゴロンダが死んだこと。
モウカザル「それから、あの森を抜けるまでに、何度も危険なポケモンに出会って、なんとかあそこまでたどり着いたんです・・・」
サーナイト「そうだったのですか・・・」
ゴチルゼル「しかし、村中のポケモンをさらうなんて・・・」
ゴチルゼルも、モウカザルを気の毒に思いました。
40:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:32:48.24 ID:Oww1VHxd0
サーナイト(ゴチルゼル、やはりこの者は危険なポケモンではありません・・・なんとかしてあげたいですが・・・)
ゴチルゼル(そうですね・・・しかし、手掛かりが少なすぎて・・・)
キルリア「お話は終わった?!」
そこへ勢いよくキルリアが部屋に飛び込んできました。
サーナイト「ええ、キルリア。この子と遊んできなさい」
キルリア「わーい!一緒にあそぼー!」
サーナイト「ごめんなさいね、この子と一緒に遊んでやって」
そういうとモウカザルはキルリアに手を引っ張られて家を出ていきました。
41:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:33:33.02 ID:Oww1VHxd0
はじめは戸惑ったけど、こんな経験がなかったモウカザルは少し嬉しそう。
誰かと遊ぶのがこんなに楽しかったなんて。
かくれんぼに鬼ごっこ、そしてゴチムやラルトス、ゴチミルなども加わって、皆で楽しく遊びました。
しかし、その様子を何かが村の外で見つめています。
ゴチルゼル「!!」
サーナイト「あなたも感じましたか?ゴチルゼル」
家にいた二体はお互い身を寄せ合って、うなずきました。
サーナイト「何か邪悪なものが近づいてくる」
ゴチルゼル「早く皆を呼び戻さないと・・・!」
そういってゴチルゼルは村中のポケモンにテレパシーを送ります。
キルリア「!」
モウカザル「どうかしたの?」
ゴチミル「皆、戻って来いって」
ゴチム「せっかく楽ちかったのに」
皆がっかりです。
ラルトス「帰ろう・・・」
キルリア「いやだ!まだ遊ぶもん!」
キルリアは駄々っ子。
一度こうなると手が付けられません。
ゴチミル「キルリア、帰らないとまたママに怒られるよ?」
キルリア「いいもん!まだ遊ぶの!」
そういうとキルリアは家と反対方向に行ってしまいました。
ゴチミル「もうどうなっても知らないからね!」
ゴチミルも呆れて家に帰っていきます。
モウカザル「いいの?放っておいて」
ゴチム「いちゅものことだから放っておいていいのでちゅ」
ゴチムもゴチミルの後について帰っていきました。
でもラルトスはちょっと心配そう。
ラルトス「帰ろう」
しばらく考えていたようですが、モウカザルの手を引っ張って帰ることにしたみたい。
モウカザルも少し心配でしたが、ラルトスを連れてサーナイトの家に戻ることにしました。
42:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:34:11.07 ID:Oww1VHxd0
モウカザルとラルトスはサーナイトが待つ家に戻ってきました。
ラルトス「ただいま」
サーナイト「おかえり、あら?キルリアは?」
ラルトスは首を横に振りました。
サーナイト「そんな!大変!」
そういうとサーナイトは急いで家を飛び出しました。
そしてテレパシーを送ります。
サーナイト(キルリア!どこなの!早く帰ってきなさい!!)
しかしキルリアからの返事はありません。
モウカザル「どうかしたんですか?」
サーナイト「この村に邪悪なものが近づいてきているのです」
サーナイトの声は恐怖と不安で少し震えていました。
モウカザル「そ、そんな・・・僕も探すのを手伝います!」
サーナイト「お願い!私もテレパシーであの子の居場所を探ってみます」
43:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:34:36.69 ID:Oww1VHxd0
村の外れ。
キルリアはぶつぶつ言いながら歩いていました。
キルリア「もーママはいつも早く帰って来い早く帰って来いって・・・全然遊べないんだから。今日は絶対に帰らないもん」
そんなキルリアの背後にうごめく影がありました。
その影はすばやくキルリアに近づき、そして・・・。
44:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:35:38.08 ID:Oww1VHxd0
サーナイト「!!」
そのころ、サーナイトがキルリアのテレパシーを感じたようです。
サーナイト「村の外れに!」
モウカザル「わかりました!」
サーナイトたちは急いで村の外れに向かいました。
サーナイト「あれは・・・!」
村の外れに到着したサーナイトたちが目にしたのは、たくさんのうごめく影に襲われているキルリアでした。
キルリア「ママ!!助けて!!」
うごめく影は鋭い刃物のような手でキルリアを襲います。
サーナイト「キルリアから離れなさい!!」
サーナイトがサイコキネシスで影を引き離そうとします。
しかし効果はないようでした。
サーナイト「そんな・・・」
モウカザル「火炎車!」
そこへモウカザルが炎をまとって影の中へ突っ込んでいきます。
どうやらこれは効果抜群!
影たちは一斉にキルリアから離れました。
キルリア「ありがとう!」
しかし、安心するのもつかの間、影たちは見事に統率のとれた動きで、今度はサーナイトへ襲い掛かります。
45:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:36:18.00 ID:Oww1VHxd0
キルリア「ママ!!」
ゴチルゼル「サイコショック!!」
どうやらゴチルゼルも助けに来てくれたようです!
ゴチルゼルの攻撃が影を吹き飛ばしますが、効果はいま一つのよう・・・
ゴチルゼル「この者たちはコマタナ・・・、悪タイプでミラクルアイを使わなければエスパー技は効きません。しかし、あまり効果があるようには見えませんね・・・」
サーナイト「なぜこんなポケモンがここへ・・・?」
コマタナたちは体勢を立て直すと、誰かの指示を受けているかのように見事な連携攻撃を仕掛けてきました。
多勢に無勢、どんどんゴチルゼルたちは追い詰められていきます。
モウカザル「やめろ!火炎車!」
モウカザルの攻撃も、よけられるようになってしまいました。
そしてコマタナたちはモウカザルの体に張り付き、鋭い腕で全身を突き刺していきます。
モウカザル「ぐああああ!!」
サーナイト「ああ!」
一瞬のスキが生まれました。
サーナイトがモウカザルに気を取られた瞬間、ほかのコマタナたちがいっせいにサーナイトにとびかかります。
ゴチルゼル「危ない!!」
しかし、コマタナたちの攻撃を受けたのはサーナイトをかばって飛び出したゴチルゼルでした。
46:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:37:08.21 ID:Oww1VHxd0
ゴチルゼル「きゃああああ!!」
ゴチルゼルはコマタナたちの連続切りで全身を切り裂かれてしまいました。
サーナイト「ゴチルゼル!!!」
ゴチルゼルはその場で崩れ落ちると、意識を失ってしまいました。
サーナイト「いますぐ癒しの波動を・・・」
「そうはさせるか」
次の瞬間、コマタナたちの間から別のポケモンが飛び出してきました。
コマタナたちよりも大きく、鋭い刃物を全身に構えたポケモンです。
サーナイト「キリキザン、ですね・・・」
キリキザン「そうさ」
キリキザンはそういうと、コマタナたちに指示をだします。
コマタナ達はサーナイトを取り押さえ、メタルクローで突き刺していきます。
サーナイトはサイコキネシスやムーンフォースなど、得意のエスパー技やフェアリー技を繰り出し応戦しますが、コマタナやキリキザンには大した効果はないようでした。
そうして、動けなくなったサーナイトにキリキザンが近寄ります。
47:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:37:42.66 ID:Oww1VHxd0
キリキザン「止めだ」
そういってキリキザンは鋭い腕でサーナイトの体を引き裂きました。
真っ赤な血を噴き出してサーナイトは気を失い、その場で倒れこみました。
キリキザン「連れて行け」
キリキザンの命令でコマタナたちはサーナイトの体を持ち上げ、どこかへ運んでいきます。
キルリア「マ、ママから離れて!どこへ連れていく気なの?!」
キリキザン「失せろ!」
キリキザンの怖い顔ですっかりおびえて恐怖にのまれてしまったキルリアはその場に力なく座り込むしかできません。
そうして、キリキザンたちはサーナイトを連れてどこかへ消えてしまいました。
48:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:38:17.00 ID:Oww1VHxd0
「起きて!」
「ねえってば!!」
何かに揺り起こされてモウカザルは目が覚めました。
モウカザル「あれ・・・?僕は一体・・・」
モウカザルが起き上がると目の前にキルリアの顔が。
キルリア「どう?目が覚めた?!癒しの波動で怪我を治してあげたの!じゃあ早く行こう!!」
言うや否やキルリアはモウカザルの腕を無理やり引っ張っていこうとします。
何が何だかわかりません。
モウカザル「ちょっと待ってよ、行くってどこに?」
キルリア「決まってるでしょ?!ママを助けに!!」
そういえば自分はコマタナたちと戦っていたはず。
でもコマタナたちに攻撃されてから記憶がありません。
モウカザル「あの後どうなったの?」
キルリア「ママが連れ去られたの!!だから早く助けに行かなきゃ!!」
サーナイトが?
連れ去られた?
どうして・・・
まさか僕のお母さんを連れて行ったのもあいつら・・・?
49:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:38:51.12 ID:Oww1VHxd0
モウカザル「ま、待って!でも君、女の子・・・だよね?そんなの、危ないよ・・・」
キルリア「えー?!女の子?!何言ってるの?!ボクはオスだよ!!オスのキルリア!!」
そう、この子は男の子。
モウカザル「え?!そうなの?!ご、ごめん・・・」
通りでこんなに元気いっぱいなわけです。
キルリア「ボクのせいでママは連れていかれちゃったんだもん・・・ボクがあの時すぐ帰っていれば・・・」
キルリアは今にも泣きそうなのをぐっとこらえてモウカザルを見つめます。
キルリア「君もママがいなくなったんでしょ?もしかしたら同じやつかもしれない!だから一緒に行こう?!」
モウカザル「で、でもどこを探せばいいのか・・・」
キルリア「大丈夫!テレパシーで大体のママの居場所はつかめるから!君のママも同じところにいるかも!」
そういうと更にモウカザルの腕を強く引っ張りました。
ゴチルゼル「それは、なりません・・・」
すると入り口にはゴチルゼルが立っていました。
50:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:39:32.71 ID:Oww1VHxd0
しかし、傷が深く、まだ癒えていないのか少しふらついています。
ゴチルゼル「あなたたちだけで行かせるわけには・・・うぐっ・・・」
ゴチミル「ママ、大丈夫?」
ゴチミルも不安そうです。
キルリア「だってじゃあ他に誰がママを助けに行くの?!ゴチルゼルもそんな怪我じゃ助けに行けないでしょ?!」
ゴチルゼル「しかし・・・!」
キルリア「それにボクはママの子供なんだから!」
そういうとエッヘンと腕を腰に当てるポーズをとりました。
ゴチルゼル「キルリア・・・」
キルリア「お願いゴチルゼル!ママをボクに助けさせて!!」
キルリアはまっすぐにゴチルゼルの瞳を見つめます。
ゴチルゼル「・・・わかりました」
キルリアのまっすぐな瞳にゴチルゼルも根負けしたようです。
ゴチルゼル「しかし、無理をしてはダメ。居場所を探り当てるだけです」
キルリア「で、でも!」
ゴチルゼル「キルリアがサーナイトの居場所を見つけてくれたら、私に知らせてください。必ず助けに行きますからそれまで戦ったりしてはいけません」
キルリア「んー・・・」
コマタナやキリキザンに手も足も出なかったことを思い出し、少し悔しくなりました。
確かに自分が戦ってもあいつらには勝てない。
ママを救えない。
キルリア「わかった・・・」
51:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:40:24.08 ID:Oww1VHxd0
ここはゴチルゼルの言う通りにするしかありませんでした。
出発は明日の朝です。
今日は明日に備えてもう眠ることにしました。
モウカザル「ねえ、キルリアはその・・・怖くないの?」
キルリア「え?何が?」
ベッドの上でモウカザルが尋ねます。
モウカザル「もしかしたらあんなポケモンがいっぱい出てくるかもしれないのに・・・」
キルリア「まあ確かに怖いけど、でも怖がってたらママを助けられないもん!」
モウカザル「そっかぁ・・・強いんだね、キルリアは・・・僕はいつも泣いてばかりなのに・・・」
キルリア「ボクはこの村でたった一匹のオスだからね!オスは泣いちゃダメなんだー!」
モウカザル「・・・」
キルリア「モウカザルは、ママを助けたくないの?」
モウカザル「・・・助けたい・・・よ」
大好きなお母さん。
いじめられてもお母さんがいてくれたからこうして生きてこられたのです。
絶対に助ける。
モウカザルはお父さんから託されたお守りを強く握りしめました。
キルリア「なーにそれ?」
モウカザル「お守り。お父さんから預かってるんだ」
キルリア「へー、とっても綺麗!んー・・・でも、ママも似たようなの、持ってた気がするなあ・・・」
モウカザル「そうなんだ・・・」
キルリア「うん・・・さあ、もう寝よう・・・明日は、とっても、早く、起きな、きゃ・・・」
そういうと、すでにキルリアは寝息を立て始めていました。
モウカザルもお母さんとお父さんの顔を思い浮かべながら寝むりにつきました。
52:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/05(土) 04:41:27.65 ID:Oww1VHxd0
出発の朝。
昨日と同じく、モウカザルはキルリアに慌ただしく起こされました。
あまりに強く引っ張られたので、ベッドから落ちて打った頭がまだ痛みます。
ゴチルゼル「くれぐれも、無理はしないこと!いいですね?」
ゴチルゼルが心配そうにキルリアとモウカザルを抱きしめます。
キルリア「大丈夫だよ!絶対無理はしないから!」
ゴチミル「早く戻ってきてね」
ゴチム「気をちゅけるでちゅ」
ラルトス「お兄ちゃん、気を付けて」
皆でキルリアたちを見送ります。
キルリア「うん!ママと一緒にすぐ戻ってくるから!!」
行ってきます!
キルリアとモウカザルは元気いっぱい、村から旅立っていきました。
つづく
53:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:04:08.93 ID:HGcxxDWk0
モウカザル「どう?お母さんのテレパシーは感じる?」
旅立って二日目の朝です。
昨晩はてんたいとほうようの村から少し離れた河原で野宿。
モウカザルの尻尾の炎で温かく眠ることができました。
そして今、キルリアは高い岩の上でサーナイトのテレパシーを探っているところです。
キルリア「・・・ダメ。昨日は少しだけ感じられたのに」
モウカザル「そっか・・・」
キルリア「でも昨日のテレパシーで大体の方角はわかったよ!」
そういってキルリアは北の方角を指さしました。
おさるの村から出たことがないモウカザルにはその方角に何があるのか全く見当もつきません。
でも、きっとこの方角にお母さんがいる。
そう思うとちょっとだけ不安が紛れて、元気になれました。
それに今はキルリアという騒がしいけど頼もしい仲間もいます。
キルリア「さあ!早く行こう!早く早く!」
キルリアも初めての外の世界にいつもより元気いっぱい。
モウカザルの手を思いっきり引っ張って歩き出します。
見たことのない景色、見たことのないポケモン、モウカザル達にとって見たことのないものばかりです。
54:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:04:59.24 ID:HGcxxDWk0
キルリア「見てみて!!あれなんていうポケモンだろう?!綺麗!!」
二匹の前にはビビヨンやバタフリー、アゲハントたちの群れが飛んでいます。
モウカザル「キルリア!そっちは逆方向だよ・・・」
蝶々ポケモンたちに見とれてついついキルリアはついていっちゃったみたい。
キルリア「ちょっとだけならいいでしょ?!ほらモウカザルもおいでよ!!ボクもあんな風に飛んでみたいなあ!」
すっかりキルリアはビビヨンたちに夢中です。
モウカザルも仕方ないなあと肩をすくめてキルリアに引っ張られてついていきました。
キルリア「待って待ってー!!」
ビビヨンたちを追って緑の木々が生い茂る森に差し掛かったころです。
これまでゆっくり漂っていたビビヨンたちの群れでしたが急に何かから逃げるようにスピードを上げ、あっという間に空の彼方に消えて見えなくなってしまいました。
キルリア「もー待ってよー!!」
モウカザル「どうしたのかな・・・?」
その時。
55:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:05:38.56 ID:HGcxxDWk0
上空でバサバサっという羽音が響きました。
モウカザル「な、なに・・・?!」
見上げると、黒い翼を広げた鳥ポケモン達が羽ばたきながら地面の方に降りていくところでした。
キルリア「あいつらのせいで逃げちゃったんだ」
ビビヨンたちの天敵ポケモンが近くにいたみたいですね。
キルリア「ん?待って、こっちで何か感じる!」
キルリアは頭の赤い触覚をピクピクっと動かすと、指さしたほうへ駆け出しました。
モウカザル「ま、待ってよ・・・!」
モウカザルもそのあとに続きます。
草木をかき分け、森を抜けたところでした。
黒い翼の鳥ポケモンの群れが、何やら地面に集っています。
何かを啄んでいるようにも見えます。
キルリア「モウカザル!見て!あそこで何か倒れてる!!」
キルリアが指差した場所を見ると、確かに白い毛が見えました。
鳥ポケモンたちはどうやらそれを襲っているようです。
キルリア「大変だよ!!助けないと!!」
モウカザル「う、うん!」
そういうとモウカザルは火炎車で鳥ポケモンたちの群れに飛び込みました。
56:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:06:12.01 ID:HGcxxDWk0
鳥ポケモンたちは急に飛び込んできた炎の塊に驚き、散り散りに飛び上がっていきます。
その鳥ポケモンたちは、バルジーナ。
悪タイプの鳥ポケモン達です。
バルジーナたちは上空で体勢を立て直すと、モウカザルめがけて突っ込んできます。
キルリア「モウカザル!逃げて!!」
モウカザル「だ、ダメだ・・・早すぎるよ・・・!」
ものすごいさでバルジーナたちが襲ってきます。
キルリア「モウカザル伏せて!」
キルリアは急いで群れの前に飛び出しました。
キルリア「マジカルシャイン!!」
そう叫ぶとキルリアの体からまばゆい光が発せられ、バルジーナたちが地面に落下していきます。
どうやら効果抜群だったみたい!
モウカザル「す、すごい!」
キルリア「ママから教わったんだ!」
バルジーナたちも観念したみたいです。
ふらつきながらどこかへ飛んで行ってしまいました。
57:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:07:59.32 ID:HGcxxDWk0
モウカザル「ありがとうキルリア」
キルリア「いいの、いいの!そんなことよりこのポケモン・・・ひどい怪我!」
バルジーナたちに襲われていたこのポケモン。
白い体毛が血で赤くなり、片目はつぶれ、頭の角も折れてしまっています。
キルリア「待ってて、今癒しの波動で治してあげる!」
キルリアの癒しの波動で、みるみる怪我が治っていきます。
しかし深く傷ついてつぶれた片目と、折れてしまった角は無理だったみたいです。
キルリア「血は止まったけど、目を覚ますかな?」
モウカザル「どうだろう・・・かなりひどくやられてたみたいだし・・・」
すると、倒れていたポケモンがゆっくりと目を開けました。
赤くて綺麗な目です。
キルリア「ああ!よかった!元気になった?!」
そのポケモンはキルリアとモウカザルの顔を交互に見ると、ふらつきながら立ち上がります。
モウカザル「む、無理しないほうが・・・」
キルリア「オボンの実食べる?!」
二匹の言葉を無視して、そのポケモンは背を向けて歩き出しました。
キルリア「あ、ちょっと待ってよ!!」
キルリアが駆け寄ろうとしたその時です。
そのポケモンが振り向き、恐ろしい咆哮をあげると、そのまま近くの崖を一っ跳びで飛び越えてどこかへ行ってしまいました。
キルリア「な、なにあのポケモン!せっかく助けてあげたのに!」
モウカザル「ま、まあいいじゃない・・・元気になったみたいだし」
キルリア「うーん・・・そうだね。じゃあそろそろママを探しに行こう!」
さあ、再びお母さん探しの始まりです。
58:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:09:21.32 ID:HGcxxDWk0
キルリア「んー・・・」
モウカザル「キルリア?どうかしたの・・・?」
いつも先頭に立ってモウカザルを引っ張っていくキルリアが、今回はなぜか立ち止まって動きません。
どうしたんでしょう?
キルリア「ここどこ?北ってどっち?!」
そう、キルリアたちはビビヨンたちを追いかけて、方角がわからなくなってしまったのです。
モウカザル「ええ?!わからないの・・・?」
キルリア「うん・・・」
困りました。
サーナイトのテレパシーを感じることができない以上、どっちに進めばいいのかわかりません。
キルリア「迷子になって、ボクたちこのまま帰れないかもぉ・・・」
キルリアはまたモウカザルを脅かすように囁きます。
モウカザル「そ、そんなぁ・・・」
「オッホッホー、おチビさん達、こんな所で何をしておるのかのぉ?」
背後で急に声がしました。
59:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:10:03.92 ID:HGcxxDWk0
モウカザル「ぎゃあああああああ!!!!」
キルリア「ひゃあああああああ!!!!」
突然のことにお互い抱き合い叫ぶ二匹。
「ホッホー、すまん、すまん。そんなに驚くとは思わんでな」
キルリア「ど、どこにいるの?!」
「ここだよ。お前さんら頭の上を見てごらん」
そう言われ、声のしたほうを見上げると、木の枝に一羽のポケモンがとまっています。
そのポケモンは首をくるくると動かしながらこちらを見下ろしていました。
キルリア「何?!ボクたちは食べてもおいしくないよ!!」
「オッホッホ!誰もお前さんらを取って食ったりせんよ」
そのポケモンは頭のてっぺんと顎がひっくり返った状態で笑い声をあげました。
キルリア「じゃあ何?!おじさん誰なの?!」
「わしはヨルノズク。この森で迷ったものの道案内をしておる」
頭をまたくるっと回し、普通の位置に戻しながらそのヨルノズクというポケモンが言いました。
ヨルノズク「どうやらお前さんらは迷子のようだからのぉ。オッホッホ」
キルリア「そ、そうなんだ。なあんだ!びっくりした!じゃあ早教えて?北ってどっち?!」
ヨルノズク「まあまあ、落ち着きなされ。それより先にそちらの小僧を起こさなくてもよいのかのぉ?ホッホー」
キルリアが隣を見ると、モウカザルはすでに驚いたショックで気を失っていました。
60:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:10:56.46 ID:HGcxxDWk0
気絶したモウカザルをなんとか起こすと、再びヨルノズクに北の方角を訪ねることにしました。
ヨルノズク「ホッホー。お前さんら、なにをしに北へ行くのかのぉ?」
キルリア「ボクたちのママを探しに行くの!」
ヨルノズク「母親をか?それはまたなにゆえかのぉ?」
ヨルノズクは不思議そうに頭をくるくると回転させます。
キルリア「悪いポケモンに連れていかれちゃったの!だから早く探しに行かないと」
ヨルノズク「なんと、それは奇妙な話だのぉ」
どんどん頭を回し、見ているこっちの目が回りそうです。
モウカザル「どういうことです・・・?」
ヨルノズク「数年前の出来事以来、北の大地は今や誰も近寄らぬ枯れ果てた土地になっておる。誰もおるはずないんだがのぉ」
モウカザル「数年前の出来事・・・?」
モウカザルは首をかしげました。
一体数年前に何があったのでしょう。
ヨルノズク「まあお前さんらはまだ子供、知らんで当然かのぉ。そうあれは今から5年程前だったかな・・・」
61:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:11:40.68 ID:HGcxxDWk0
突然、どこからともなくこのポケモン島に巨大な翼をもったポケモンが現れた
そのポケモンは、このポケモン島一緑あふれる北の大地に降り立つとその場のありとあらゆる命を吸い取っていった
大地も、水も、草も木も、そして、ポケモンの命さえも・・・
このままではこのポケモン島のすべての命が奪われてしまう
そうなる前に、この島の戦士たちがそのポケモンを追い払うために北の大地へ集められた
そのポケモンとの死闘は三日三晩続き、そして、ようやくそのポケモンの力を抑えることができた
しかし追い払うことはできず、傷を負ったそのポケモンは自ら繭となり、その地で眠りについたのだ・・・
ヨルノズク「それ以来、あの土地は命が芽吹かず、枯れ果てた土地となってしまった。それに、いつあのポケモンが目を覚ますやもしれんので誰も近づかないんだよ」
キルリア「そんなことが・・・」
モウカザル「あ、あの・・・」
モウカザルはヨルノズクに尋ねます。
その戦士たちはどうなったのかと。
ヨルノズク「わしにもわからん。あの後戦士たちがどうなったのか・・・その姿を見たものは誰もおらんのぉ」
62:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/06(日) 13:13:45.96 ID:HGcxxDWk0
それを聞いて、モウカザルは肩を落としました。
キルリア「どうかしたの?」
モウカザル「僕のお父さん・・・戦士だったんだ」
キルリア「え?!」
モウカザル「お母さんがいつも話してた・・・お父さんは立派な戦士で、凶暴なポケモンを追い払うために今は遠くへ行っているって・・・」
モウカザルはお守りを握りしめ涙を流しました。
キルリア「大丈夫だよ!パパはきっと無事だよ!!」
キルリアはそっとモウカザルの肩に手をかけました。
キルリア「そこへ行けば、パパともママともきっと会えるよ!ね?!」
モウカザル「そう、かなぁ・・・?」
ヨルノズク「可能性はなくはないのぉ。北の大地は誰も近づかぬ不毛の土地。目的はわからんが連れ去ったポケモンを隠すにはうってつけの場所だからのぉ」
ヨルノズクも頭をくるくる回してそう言いました。
モウカザルは涙を拭うと少しだけ希望があるような気がしました。
キルリア「行こう!北の大地へ!!」
ヨルノズク「北の大地へ行くにはこの道をまっすぐ行けばよい」
ヨルノズクが翼を片方広げ、進む方向を教えてくれました。
キルリア「ありがとう!」
モウカザル「ありがとうございます・・・」
ヨルノズク「くれぐれも気を付けるんだぞ。北の大地までの道のりは険しい。それに恐ろしいポケモンが眠っておるんだからのぉ。ホッホー」
そうして、ヨルノズクに見送られながらモウカザル達は再び北の大地へ向かって歩き出しました。
つづく
64:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/07(月) 20:41:15.53 ID:iHGSaMmQ0
とある崖の見える丘。
月明かりの中、そのポケモンはずり落ちる自分の皮をつかみながらそろそろと崖を下っていました。
「あそこだな・・・」
その後から小さな姿もついていきます。
崖の下は月明かりがあまり届かないうす暗なところです。
「ズルル!あそこだッグ・・・」
「静かにしろ!逃げちまうだろ!」
「ズル!お前のほうがうるさいッグ!」
言い合いになってしまいました。
すると、崖の下の洞穴からすうっと不気味な黒い影が・・・
ジュペエエエエ!!
「で、でたあああああ!!!!」
「ズ、ズルウウウウウ!!!!」
黒い影に驚き、そのポケモンたちはずり落ちる自分の皮を必死で抑えながら走って逃げていきました。
65:pppp ◆1V4CaE0ZHE 2016/11/07(月) 20:42:05.46 ID:iHGSaMmQ0
ヨルノズクと別れ、あれから数日。
サーナイトのテレパシーもたまにしか感じることができず、居場所がなかなかつかめずにいました。
しかし、感じるテレパシーは徐々に強くなってきているのです。
サーナイトが北の方角にいるのは間違いありません。
キルリア「今日はこの前よりずいぶん強く感じるよ!もしかしたら近いのかも!」
キルリアの言葉に、モウカザルも大喜びです。
モウカザル「今日はもう寝るところを探そう」
キルリア「そうだね!この辺は崖も多いし、岩場ばっかりで寝られる場所が少なそう」
ここは岩でできた崖が立ち並ぶだけの少し寂しいところです。
キルリア「ほら見て!崖の下真っ暗!お化けでもでそうだよぉ」
モウカザル「や、やめてよぉ・・・!」
相変わらずモウカザルは怖いのが苦手。
もう崖の下を見れません。
ジュペペペペ・・・!
モウカザル「?!何?!キルリア何か言った?!」
66:以下、

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