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響子「五十嵐響子家事代行サービスです!」


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1:
P「どうしたんだ急に」
響子「最近プロデューサーさんお仕事も大変で家事もロクに出来ないって言っていたじゃないですか。そこで私は考えました! だったらプロデューサーさんの代わりに家事をお手伝いしようと」
P「確かに家に帰っても書類作って寝るくらいしか出来てないから掃除洗濯も溜まっているけど、言って男のひとり暮らしだしそんなに気にすることでもないぞ」
響子「それはダメですよ! 家事を日常的にしておかないと、気がついたときには手遅れになってしまいます」
P「命に関わるようなことでもないと思うけど」
響子「でも想像してみてください。家に帰ってきた時にお部屋も服も綺麗にピカピカで、美味しいご飯が待っていたら嬉しくないですか?」
P「むぅ……それは魅力的ではあるが」
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2:
響子「私、家事には自信がありますから良い奥……じゃなくて家事代行サービスを提供できるかと思いますよ」
P「でもなぁ、流石にそれは……」
響子「何か問題があるんですか?」
P「アイドルを家に上げるのはいかがなものかと思うぞ?」
響子「そんなことですか? 私は気にしませんよ」
P「世間が気にするの!」
3:
P「それなら他の家事代行サービスにお願いするよ。流石にアイドルと学業だけでも大変なのに、これ以上響子の負担を増やすわけにもいかないって」
響子「大丈夫ですよ。アイドルになる前からずっと家事はやってきていましたし、私にとって当たり前のことなんです。それにプロデューサーのためなら無料でやりますし、トラブルも起きないと思います」
P「トラブル?」
響子「留守中なのを良い事にお金を盗まれたり、ってことがあったりするんです。それに、プロデューサーは家でもお仕事していますから、その書類なんかを見られてSNSにあげられたら……もちろん、全部が全部そうとは言いませんが」
P「それは怖いな……。その点響子はそれなりに付き合いがあるし、そんなことする子じゃないって分かっているけど」
響子「じゃあお試しで1日体験コースやってみませんか?」
P「というと?」
4:
響子「一回私に家事を任せてもらって、それで気に入ってくれたのならまたお願いするって形ならどうでしょうか?」
P「しかしだなぁ、現役女子高生アイドルを家に上げるのは色々とまずい気も」
響子「私、来年で16歳です。結婚できる年齢になるんですよ?」
P「そういう意味じゃなくて」
響子「ジー……」
P(ジーっと見つめてきている。言っても聞かないんだろうなぁ。結構頑固なところあるし)
P「じゃあ、一回お願いします」
響子「! 任せてください! プロデューサーの代わりに家事を頑張っちゃいますよ!」
5:
当日
P「さて、響子に家事代行をお願いするわけですが」
響子「はい、お任せ下さい!」
P(流石に学校や仕事をサボらせるわけにも行かなかったので、俺も響子も休みな日曜日にお願いすることにした。勿論、マスコミ対策に変装してここまで来てもらった)
響子「プロデューサーはゆっくりしていてくださいね、私が全部綺麗にしておきますから」
P「にしても……」
響子「どうしました?」
6:
P「エプロン、似合っているね」
響子「これですか? ふふっ、ありがとうございます。いつも使っているやつなんですよ」
P(家庭的な子とは知っていたけど……これじゃあまるで)
P「新妻、みたい」
響子「!!!!!?」
P「えあっ! い、今のは……そう、俺の知り合いに新妻くんっていうそれはもうエプロンがやたら似合うプロレスラーがいて……」
響子「そ、そうでしたかー! プロレスラーでしたかー!」
P(な、何変なこと考えてるんだ俺は……!)
響子「コホン! で、では気を取り直して張り切ってやっていきますっ」
P「お、お願いします」
7:
響子「それじゃあまずはフローリングのお掃除ですね。ちょっと掃除を怠るだけでこんな風に埃がたまってしまうんです、体にも良くありません」
P「こ、こんなに汚かったの……?」
響子「床のホコリはウエットシートを使いますが、毎回買うとお金がもったいないですしイチイチ変えるのも面倒だ、って人も少なからずいるんですよ」
P「多分俺はその人種だと思う」
響子「そんなときは使い古したタイツなんかをつけると便利なんです! こうやって重ね履きさせることで、埃がついたのを上から剥ぐだけで次のタイツがすぐ出てきます。手間も省けちゃいますし……」
P「おおっ、埃が面白いくらいに取れている」
8:
響子「静電気を起こしやすいから埃がくっつきやすいんです。こうやって狭い隙間にも入れて……どうですか? こんなに埃が付けば綺麗になっているぞーって気持ちになりませんか?」
P「確かに達成感はありそうだなぁ。いつも家でもやってるの?」
響子「はい。使わなくなったタイツを再利用して……」
P(……ん? つまりこの黒タイツって……響子が履いていたもの?)
響子「プロデューサー?」
P(響子の生足を包んでいたタイツで俺の部屋のフローリングがきれいに……なんだ、この背徳的な感覚は)
響子「もしもーし、大丈夫ですか?」
P「えっ! あっ!! だ、大丈夫だよ……」
9:
響子「じゃあ次は窓ガラスの掃除ですね。窓ガラスが曇っちゃうと、折角晴れていてもあまり陽の光が差し込んでこないんです」
P「ほー、だから最近暗く感じていたのか。今日は曇っているけど」
響子「スクイージーを使うやり方が一般的かなと思いますけど」
P「スクイージー? スムージーの親戚?」
響子「高層ビルの窓の掃除なんかで使っているの見たことありませんか?」
P「はいはい、何となくイメージは付いた。でもそんな便利なもの持ってないぞ?」
響子「でも新聞紙なら持っているはずですよ? 古新聞で良いんですけどありますか?」
P「確か向こうに……あったあった」
10:
響子「古新聞は場所を取ってしまいますし、早く廃品回収に出したいって気持ちもあると思いますが、窓掃除にはすごく役立つんですよ」
P「そういや小学校の大掃除の時に新聞使ったような気がする」
響子「丸めた新聞紙をバケツに入れた水で濡らして、と……。新聞紙って実は繊維が細かいみたいで汚れも落ちやすい上に、使っているインクがあるじゃないですか。これには艶を出す効果もあるんです!」
P「へぇ……それは一石二鳥だな」
響子「新聞紙なので余計な費用もかかりませんしね。まさに一石三鳥ですね! あと今日は曇っているのでやりやすいんですよ。湿気が多い分、窓ガラスの汚れも落ちやすくなっています」
P「なるほどなぁ。まるでおばあちゃんの知恵袋だな」
響子「家事にはこだわるタイプですので、いつも色々調べているんですっ」
11:
響子「洗濯機には……よかった、乾燥機もついてます」
P「やっぱりあると便利なんだよなあ。ちょっと乾くまで時間かかるけど」
響子「乾燥時間を短縮できる便利な裏技もあるんですけど、ご存知ですか?」
P「? というと?」
響子「濡れた洗濯物と一緒に乾いたバスタオルを入れるんです。そうすることで」
P「分かった! 水分を吸収してくれるんだ」
響子「ふふふっ。正解ですよ、プロデューサー! 忙しい時なんかに使えば便利ですね」
12:
響子「次はちょっと大変なお風呂掃除ですね。ここに来る前に買っておいた重曹とクエン酸が大活躍します」
P「風呂掃除はなぁ……こっちに引っ越してきてから殆どした記憶がないぞ」
響子「こまめにやっておくと、掃除も楽になるんですよ。鏡や蛇口のような水垢の目立つ場所はクエン酸を溶かしたお湯に浸したキッチンペーパーを貼り付けます。これはすぐに効果が出るわけじゃなくて、数時間かかるので一旦後回しにしますね。次は見るのも嫌だとは思いますが……」
P「排水口、か……」
響子「私も直接触る、となると抵抗がありますけど……そんなときはこれを使います」
P「歯ブラシ?」
響子「はい。これまたリサイクルです」
P(ってことは響子が使っていた歯ブラシか……オークションに出せば言い値で買うんだろうなぁ)
13:
響子「排水口の髪の毛をこれで取って、次に重曹をふりかけてお酢をかけると」
シュワシュワ?
P「おお! なんか泡立ってきた!」
響子「こうすることで汚れが浮き上がってきます。後でシャワーで強く流すと綺麗な排水口になるんです! ところでプロデューサーさん、お風呂のカビ掃除って何回もやるのは大変なんですよ。きれいにしてもすぐに生えてきちゃいます」
P「床にカビキラーを撒けばいいんじゃないのか?」
響子「実はこれ、下を磨くよりも天井を磨いたほうが効果的なんですよ。天井にあるカビが胞子を撒き散らしちゃうから、お風呂場全体にカビが生える原因になるんです」
P「なるほど。上をきれいにしないと下も綺麗にならないのか」グゥ
響子「手間はかかりますが、そうすることでカビ掃除の頻度も減るので結果的に楽ができるんです……プロデューサーさん、お腹すきました?」
P「あははは……聞こえちゃった?」
14:
響子「ちょうどいい時間ですし、お昼ご飯作りましょう。プロデューサーはゆっくりしていてくださいね」
P「手伝わなくていいのか?」
響子「今日はお休みなんですから。家事なら私に任せてくださいね」
P「じゃあお言葉に甘えて……ふわぁーあ」
響子「よーし! 頑張らないと! フンフンフーン♪」
P「すぅ……」
響子「プロデューサー、お疲れだったのかな。ソファで寝ちゃって、風邪ひいちゃいますよー?」
P「うぅん……」
響子「せめて毛布だけでもかけてあげないとダメだよね」
15:
P「ふわぁ……寝ちゃっていたのか……。結構時間経っている、響子には悪いことした」
響子「すぅ……」
P「……ん? んん!?」
響子「おかえりなさぁい……お風呂にします? ご飯にします? それともふにゅぅ……」
P(目が覚めると毛布がかかっていて、響子が俺の隣で寝ていた)
P「いやいやいやいや! 俺何もしてないよね!? ねぇ!?」
響子「ん……あれ? 私寝て……」
P「オ、オハヨ……」
響子「え、えーっと……オハヨウゴザイマス」
16:
P「……」
響子「……」
P(気まずい)
響子(ちょっと暖かそうだったから潜り込んだらそのまま寝ちゃうなんて……でも、心地いい夢見れたなぁ)
P「あ、あの! お腹すいたしお昼ご飯食べようか」
響子「は、はい! カレーを作ったんですけど、温め直しますね」
P「う、うん」
17:
響子「ふぅ。どうぞ、食べてみてください」
P「いただきます……っ! こ、これは……」
P(響子は俺が寝る前に作り始めたんだよな? なのに……)
P「まるで1晩寝かせたみたいなコクだ……!」
響子「時間をかけずに作った一晩寝かせた風味のカレーなんです。野菜とお肉をミキサーで細かくして、それを煮込む際にりんごジュースを混ぜました。カレールゥにはピーナッツバターを入れることで濃厚なコクと甘みを持つカレーが出来上がるんですよ!」
P「流石にこれは驚いたなぁ。毎週金曜日食べたいくらいだ」
18:
響子「! そ、それって……」
P「えっ? あっ、そのだなぁ……後でレシピを教えてくれよ。俺も自分で作ってみたいし」
響子「え? はい、いいですよ」
響子(プロデューサーさんのためなら毎日でも作ってあげるのになぁ)
P(やばいぞ……胃袋からなにまで響子に管理されてしまいそうだ……まだ響子には未来があるんだ、俺が潰してしまえば本末転倒じゃないか)
19:
P(そんなこんなで家事代行サービス一日体験は終了した)
P「ありがとうな響子。おかげで家も綺麗になったし、色々と勉強になった」
響子「喜んでもらえたのなら何よりです! どうですか? 本格的に雇ってみませんか?」
P「正直、そうしたい気持ちはある」
響子「本当ですか!?」
P「……でも、俺が甘えきってしまいそうなんだ」
響子「それ、どういう」
20:
P「響子に家事を手伝ってもらえて、すごく助かった。きっと響子と結婚する人は幸せになるだろうなって思えるくらい」
P「だけどずっと響子に甘えて身の回りのことを全部してもらってばかりだと……俺にとっても響子にとっても悪い気がしたんだ」
響子「そんな。私は気にしないのに」
P「アイドルだからとかそういうのじゃなくて、女の子に甘えてばかりってのが……その男として情けなく思えたというか。むしろ響子には俺の前くらいでは甘えて欲しいくらいなんだ」
響子「プロデューサー……」
P「だから。また教えてくれないか色々と。むしろ響子の代わりに家事ができるくらいになりたいんだよ」
2

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