千歌「二人はさ、卒業したらどうするの?」back

千歌「二人はさ、卒業したらどうするの?」


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曜「え?」
梨子「どうしたの、突然」
千歌「…だってさ、私たちも来年には卒業だよ」
千歌「もうそろそろ、将来のこととか考えないといけないなぁって思って」
曜「そっか、そうだよね…」
千歌「でも、いまいちやりたいことというか、進みたい道っていうのが見つからなくってさ?」
千歌「それで、曜ちゃんと梨子ちゃんは卒業したらどうするのか、聞きたいなって」
2:
曜「うーん、そうだなぁ」
梨子「…私は、やっぱりピアノができるところに行きたいな」
梨子「千歌ちゃんがスクールアイドルに誘ってくれたおかげで、もう一度ピアノが好きになることができたのが嬉しくて」
梨子「またピアノについて、真剣に向き合いたいって思うんだ」
千歌「…そっか。スクールアイドルやってよかったって思ってもらえてたら、私も嬉しいな」
千歌「ピアノ、頑張ってね!応援してる」
梨子「ふふ、ありがとう!曜ちゃんは?」
3:
曜「うーん、私もまだ決めてるわけじゃないんだけど…」
曜「水泳部のコーチからは、体育系の大学に行って水泳やった方がいいって言われてるんだよね」
曜「でも、パパみたいな船長になるために海事系の学校もいいかなって思ってるんだ」
千歌「へぇ?。曜ちゃんもしっかり考えてるんだね」
千歌「…うすうすは思ってたけど。やっぱり、私たち…」
千歌「卒業したら、バラバラになっちゃうんだね」
梨子「…うん」
曜「そうなっちゃう…かな」
4:
梨子「ダイヤさんたちは、同じ学校に行ったんだっけ」
千歌「そうそう!鞠莉さんとダイヤさん頭いいから、果南ちゃん追いつくために必死で勉強してたなぁ」
曜「果南ちゃんも別に勉強できないわけじゃないけど、結構ランク高いところにしちゃったんだよね」
千歌「なんとかギリギリで合格できた?って、3人で泣いて喜んでたね!」
梨子「そうなんだ、良かったね」
千歌「うん…すごく、嬉しそうだった」
曜「千歌ちゃん…」
6:
千歌「こればっかりはしょうがないよね、自分の人生に関わる選択だもん」
千歌「そりゃあ、私たちも一緒に進学できたら楽しいかな、なんてちょっとは考えたけど…」
千歌「みんなそれぞれ進みたい道があるんだから、私はそれを全力で応援したい!」
千歌「『それぞれが好きなことで頑張れるなら 新しい場所がゴールだね』って、μ’sも歌ってたしね」
曜「…千歌ちゃんは、どうするの?」
千歌「…私は…」
7:
千歌「…私は二人みたいに、これだけは負けないっていう特技とか、将来をかけて進みたい道とか、無くって」
千歌「うちの旅館で働くのもアリかなぁって思ってるんだ。仕事は志満ねぇに教えてもらえるし」
梨子「あ、ならアイドルは?スクールアイドルの中には、卒業してもそのままアイドル続ける人もいるって」
千歌「私が!?ムリムリ!みんなとだからなんとかスクールアイドルはできたけど、一人でなんて絶対ムリ!」
曜・梨子(いけると思うけどなぁ…私なら絶対ファンになるんだけど)
10:
千歌「とにかく、二人ともしっかり目標があるみたいだし、私も考えなきゃなあ」
梨子「なにか相談があれば言ってね。出来る限り力になるから」
千歌「うん、ありがとう!」
曜「…千歌ちゃん、あのさ。千歌ちゃんさえよければ…」
千歌「ん?」
曜「…ごめん、やっぱりなんでもない」
千歌「?ヘンな曜ちゃん」
11:
千歌(…なんとなくわかってたけど。やっぱり二人は、私とは違う)
千歌(一緒にスクールアイドルとしてステージに立ってた時は、私も一緒に輝いてるんだ!って思ったけど)
千歌(こうして将来のこととか考えてみると、普通な私とは全然違うんだって、思い知らされる)
千歌(2年生の春からスクールアイドルとして頑張ってきて、それなりの結果は残せたし)
千歌(私の人生の中で、忘れられない大切な思い出や経験になったけど)
千歌(それが将来の役に立つかどうかは、また別の話だよね)
千歌(…曜ちゃんにも、また置いていかれちゃうなぁ…)
12:
千歌「…梨子ちゃん、今頃東京着いたかな」
曜「きっと、部屋について荷解きしてるところじゃないかな」
曜「それにしてもすごいよね、東京の音楽大学に合格しちゃうなんて」
千歌「それ言ったら曜ちゃんだって。東京の体育大学に入っちゃうなんてすごいよ」
千歌「あーあ、二人とも春から東京暮らしかー。いいなー」
曜「あはは…千歌ちゃんは結局、旅館で働くことにしたんだっけ」
千歌「うん。春に退職する人がいて、ちょうど欠員補充するところだったからって」
13:
千歌「…曜ちゃんも、明日には行っちゃうんだっけ」
曜「うん。もうだいたい荷造りはできてるかな」
千歌「…そっか。寂しくなるな」
千歌「3年間なんてあっという間だったな。特に、Aqoursをはじめてからは」
千歌「いろんなことがあって、たくさん笑って、たくさん泣いて…何もかも、あっという間に過ぎていったみたい」
曜「…そうだね」
千歌「Aqoursのみんな、特に曜ちゃんと梨子ちゃんとは、いつも一緒だったから。これから先もずっと一緒なんだって、どこかで思い込んでたから」
千歌「離れ離れになっちゃうなんて、今でも全然実感わかないや」
曜「…そんな、生き別れになるわけじゃないんだから。また遊びに来るよ、梨子ちゃんと一緒に」
千歌「…うん、待ってる。私、ここで待ってるから」
千歌「だから…いつでも帰ってきてね」
14:
千歌(いままでいつも一緒にいた親友が、遠くに行っちゃった)
千歌(毎朝当たり前みたいにおはようって挨拶して、一緒に勉強して、スクールアイドルやってたことが、まるで夢みたい)
千歌(楽しい時間は一瞬で過ぎ去って、まだ先だと思ってたお別れの時間はもうとっくに目の前に来ていた)
千歌(二人はすごいなぁって、心のどこかに距離を感じてたけど)
千歌(住んでる場所まで、遠くなっちゃったんだね)
15:
志満「千歌ちゃん、うちで働きたいって言ってくれたこと、私は嬉しいわ」
志満「でも、従業員として雇って、お給料が出る以上、今までみたいなお手伝いの延長ってわけにはいかなくなるの」
志満「今までより難しい仕事もだんだんやってもらうことになるし、失敗したら当然注意することもあるわ」
志満「家族だからって特別扱いはできないの。でないと、うちで働いてる他の人に示しがつかない…わかるわよね?」
千歌「う、うん。もちろんわかってる」
志満「…仕事中は厳しいことも言うかもしれないけど、千歌ちゃんのためを思ってのことだから。そこだけはわかってちょうだい」
千歌(今までみたいなお手伝い気分じゃいけないってことだよね。頑張らなきゃ!)
16:
従業員「千歌さん?茶器の重ね方はこうじゃないって、何度も言ってるわよね?」
千歌「あっすみません…」
従業員「浴衣のたたみ方もなってないし…そんなに難しい仕事じゃないでしょう?」
従業員「そろそろ客室の準備くらい、一人でできるようになってほしいんだけど」
千歌「ごめんなさい…」
従業員「…あなた、それしか言えないの?」
千歌「え…」
従業員「はぁ…もういいわ。このままじゃお客様のチェックインに間に合わないし。廊下の掃き掃除でもしててちょうだい」
千歌「はい…」
17:
千歌(…なかなか、うまくいかないな)
千歌(私なりにがんばってるつもりなんだけど)
千歌(ううん、まだきっと学生気分が抜けきってないんだよね)
千歌(にしたって、あの言い方はないよね!)
千歌(お手伝いしてた時から、結構キツい言い方する人だなぁって思ってたけど)
千歌(言われっぱなしじゃ悔しいし、早くお仕事覚えて見返してやるんだから!)
千歌「明日から、また頑張らなきゃ!」
19:
従業員「じゃあ次、この料理の配膳お願いね」
千歌「はい!」
客「あの?すみませ?ん。このラブカクテルっていうの注文したいんですけど」
千歌「あっはい、ただいま…あっ」
ドテッ
ガシャァァン
千歌「あ…」
客「おいおいおいおい…」
従業員「た、大変失礼致しました!」
20:
客「何やってんだよ…」
従業員「申し訳ありません!ほら、あなたも謝りなさい!」
千歌「あ、す、すみません…」
客「こんなのに配膳やらせてんの?どんだけ人手不足なんだよ」
客「レビューが良かったから来てみたのに、ガッカリだわ」
従業員「申し訳ありません…」
千歌「…」
21:
千歌(…私がしっかりしなきゃ、志満ねぇたちが頑張ってるこの旅館の評判に泥を塗っちゃう)
千歌(私、まだみんなに迷惑しかかけてない…)
千歌(私が新人だとか、ドジだってことも、お客さんには関係ないし)
千歌(とにかく、これ以上迷惑かけないようにしないと…)
ヒソヒソ
千歌(ん?)
22:
従業員A「それにしても、あの高海さんとこの三女…」
従業員B「ああ、千歌ちゃんだっけ?ほんと鈍くさいわね」
従業員A「何度言っても仕事は覚えないし、さっきは配膳中にお客様の前で転ぶしで、本当に迷惑よね」
従業員B「姉の志満さんはすごいしっかりしてるのに、姉妹でここまで違うものかしらね?」
従業員A「志満さんも身内だからってちょっと甘いんじゃない?ここまで使えなかったら普通クビになってもおかしくないわよね」
従業員B「これなら多少ガサツでも美渡さんの方がよっぽど使えるわね」
従業員A「志満さんから仕事覚えさせてって言われてるけど、正直ずっと皿洗いでもやっててもらった方がマシよ」
千歌(…)
24:
千歌(…)ウルウル
千歌(…!泣いちゃダメだ)グッ
千歌(これは、自業自得、私のせいなんだから…)
千歌(志満ねぇ達も、私にはまだ慣れてないだけだって言ってくれてるけど、内心はきっとこう思ってる)
千歌(…これが、社会に出るってことなのかな)
千歌(守ってくれる人もいない、行動と結果だけの中で、自分を認めてもらわなくちゃいけない)
千歌(…辛いなぁ。…厳しいなぁ)
千歌(でも、やっていかなきゃ。自分で選んだ道なんだから)
25:
千歌(…久しぶりに、曜ちゃんたちの声、聞きたいな)
千歌(もう家だよね。電話してみよう)
プルルル…
曜『あ、もしもし千歌ちゃん?』ガヤガヤ
千歌「曜ちゃん…久しぶり!」
曜『久しぶりだね!どうしたの?』ワイワイ
千歌「えっと、ちょっとお話したいなと思って…曜ちゃん、今外にいるの?」
曜『あー、うん…実は今、水泳部の打ち上げやっててさ』ガヤガヤ
千歌「あっそうなんだ…ごめんね、忙しいところに電話かけちゃって」
曜『ううん、こっちこそごめんね。また今度、ゆっくりお話しようよ』ワイワイ
千歌「うん…また、今度ね」
曜『…千歌ちゃん?なんか元気な―』
プツッ
ツー ツー ツー
26:
プルルル…
プルルル…
プルルル…
千歌(梨子ちゃん、出ないな…)
千歌(きっと梨子ちゃんも忙しいんだね)
千歌(ちょっと前まで、ベランダをのぞけば梨子ちゃんがいて、電話すれば曜ちゃんとだっていつでも話せてたのに)
千歌(…なんだか私、ほんとうにひとりぼっちになっちゃったみたい)
千歌「…寂しいよぉ…」
27:
従業員「このお部屋のお客様、14時にはチェックイン予定だから。それまでに準備してちょうだい」
千歌「は、はい」
千歌「…えっと、脇息の位置は、と…」
千歌(注意されたことを書き留めたメモを見ながら、少しずつだけど仕事を覚えてきた)
千歌(それでも、まだまだ怒られっぱなしだし、連休でお客さんがワーッとくる時なんかは、勝手が全然違っちゃって、やっぱり失敗ばっかり)
千歌(それでも、ちょっとずつでも…やっていかなきゃ)
千歌(曜ちゃんと梨子ちゃんだって、きっと今ごろ頑張ってる)
千歌(それに…仕事に集中している間は、寂しさを忘れられるから)
28:
千歌「お料理をお持ちしました」
客A「お、今日は随分若い子が運んでくれるんだなぁ」
客B「俺はもーちょいお姉さんな方が好みだけど」
千歌(う…この人たち、お酒くさい…)
客A「…仲居の服ってのは、スタイルがわかりづらくていかんなぁ」
サワッ
千歌「…!」
客A「お?ガキっぽい顔して、意外といい身体してるんじゃないのか?」
千歌「や…やめてください!」バシッ
客A「…あ?なんだ、オイ」
29:
客A「俺は客だぞ?この宿は客に手上げるよう教えられてんのか!?」
千歌「そ、そんな…」
従業員「お、お客様!どうかなさいましたか?」
客A「どうもこうもねぇよ、コイツが俺の手ェ叩きやがったんだよ!」
客B「どうなってんだよこの宿はよ!どういう教育してんだよ!」
従業員「それは…!大変、申し訳ありません!」
千歌「も、申し訳…ありません…」
従業員「…」ギロッ
千歌(えっ…?)
30:
千歌「あの…すみませんでした」
従業員「…あの人に何されたか知らないけどね。あの人はお客様で、私たちは仲居なの」
従業員「立場をわきまえなさい」
千歌「…私が、悪いんですか?」
従業員「は?」
千歌「だってあの人、私の身体触ってきて…!酔っ払ってるからって、そんなの…」
従業員「…仕事はできないクセに、こんなことばっかりは一丁前に…」チッ
千歌「…え」
従業員「減るもんじゃないしそのくらい我慢しなさいよ。腹いせにまたレビューサイトに悪評でも書かれたらどうするつもり?」
従業員「とにかく、もう二度と私の目の前で面倒起こさないでちょうだい!」
千歌「…そんな…」
31:
ガチャ
千歌「…はぁ」
千歌(お客さんには何されても我慢しなきゃいけないのかな)
千歌(そんなの、あんまりじゃない?理不尽だよ、納得できない)
千歌(でも、だからって志満ねぇ達に泣きつくのも、情けない気がするし)
千歌(…なんだか、疲れちゃったな)
千歌(暗くて静かな夜は、一人でいると不安や寂しさが大きくなって)
千歌(何か考え事すると、どんどん悪い方に悪い方に考えちゃう)
千歌「…今日は早く寝ちゃおう…」
千歌「…あれ」
千歌「曜ちゃんから着信、来てたんだ…気付かなかった」
プルルル…
32:
曜『あ、もしもし?千歌ちゃん?』
千歌「曜ちゃん。ごめんね、着信気付かなくって」
曜『ううん、全然。いま大丈夫?』
千歌「うん。どうしたの?何かあった?」
曜『いや、前電話かけてくれた時、私のせいでお話できなかったからさ』
曜『大学入ってからバタバタしてて、電話も掛けられてなかったから、私も千歌ちゃんとお話したいなぁって思って』
千歌「…ありがとう。やっぱり優しいね、曜ちゃんは」
33:
千歌「ね、学校の方はどう?」
曜『うん、充実してるよ。水泳部もレベル高くて、私も負けてられない!って感じかな』
曜『授業も難しくなってきたから、勉強との両立は結構ハードだけど』
曜『いままで水泳やりながらスクールアイドルだってできてたんだし、なんとかなると思う!』
千歌「そうなんだ…曜ちゃんも頑張ってるんだね」
千歌「もう東京には慣れた?」
曜『あはは、まだまだだよ。おっきな駅だと迷子になっちゃったりするし』
千歌「迷子になっちゃうほどおっきな駅があるんだ!すごいなぁ」
曜『それに、周りがビルばっかりだから…内浦の海が恋しくなるな』
34:
曜『千歌ちゃんの方はどう?旅館のお仕事、大変じゃない?』
千歌「もー大変だよ。朝早くから夜遅くまで仕事だし、覚えることも多くって…」
曜『忙しそうだねー。どんなお仕事してるの?』
千歌「これから来るお客さんのお部屋の準備とか、お料理の配膳とかかな。晩ご飯の時なんかすっごい忙しいんだよ!」
曜『千歌ちゃんの仲居姿、一度見てみたいな!旅館の人たちとはどう?仲良くやってる?』
曜『まぁ、志満ねぇたちもいるから大丈夫だと思うけど』
千歌「…」
35:
曜『千歌ちゃん?』
千歌「…うん。うまくやってるよ」
曜『ならいいんだ。そういえば千歌ちゃん、たまにはこっちに来ない?』
千歌「東京に?」
曜『うん。そしたら梨子ちゃんも誘って、また3人で久々に遊ぼうよ』
曜『ちょっとはこっちにも詳しくなったし、案内するよ!』
千歌「…ごめん、お休みが不定期でいつ決まるかわからないんだ」
千歌「それに、土日は仕事だから、基本的に平日がお休みになるし…」
千歌「曜ちゃんたち、学校あるよね」
曜『あ、そうなんだ…残念だな』
37:
千歌「でも、ありがとう。お休みとれそうなら連絡するから、また誘ってよ」
曜『うん、もちろん!』
千歌「…あー、久々に曜ちゃんと話せて、楽しかった」
曜『私も!千歌ちゃん、ちゃんとお仕事できてるみたいで、安心したよ』
千歌「…うん。お仕事は、なんとかできてるかもしれないけど」
千歌「私自身は、ちゃんとできてないかも」
曜『え?』
38:
千歌「最近、夜になると無性に寂しくってさ」
千歌「曜ちゃんも梨子ちゃんも、遠く離れた場所にいるんだって思ったら、なんだかひとりぼっちになっちゃったみたいで」
千歌「夜中、一人で部屋にいると、みんなで遊んだり、スクールアイドルやってたりした時のこと思い出して、すごく寂しい気分になるの」
千歌「だから今日、曜ちゃんが電話してきてくれて、すごく嬉しかった」
曜『千歌ちゃん…』
千歌「私、自分で思ってたより寂しがり屋さんみたい。…また、電話してよ」
曜『…千歌ちゃん。もうすぐ秋の連休だけど、そういう時ってやっぱり旅館も忙しいの?』
千歌「え?うん、そうだね。予約はほぼ満室かな」
曜『わかった。じゃあ、またね!』
千歌「?あ、うん。またね」
39:
千歌「…」
志満「あら、予約の確認?感心ね」
千歌「あ、志満ねぇ。やっぱり連休は全部満室だね」
志満「そうね、また忙しくなるわ。千歌ちゃんもよろしくね」
千歌「うん、頑張らなきゃ!」
志満「…でも、とっても心強い『助っ人』が来てくれることになってるから。なんとかなるんじゃないかしら」
千歌「助っ人?」
志満「えぇ、すっごく頼りになるわよ」
千歌(誰だろう?臨時のアルバイトさんかな。お盆の時も来てたし)
40:
志満「では、朝礼を始めます」
志満「本日から連休に入り、昨日の時点でかなり多くのお客様がお泊りになってます」
志満「忙しくなりますが、おもてなしの心を忘れず、真心をこめた接客を心がけましょう」
志満「…それと、連休に合わせて、アルバイトの子が入ってくれることになりました」
志満「では、自己紹介を。…って言っても、みんな知ってるわよね」
曜「お世話になります!渡辺曜です!短い間ですが、よろしくお願いします!」
千歌「…よ、曜ちゃん!!??」
41:
千歌「曜ちゃん、一体どうしたの!?」
曜「えへへ、驚いた?千歌ちゃん」
千歌「驚いたも何も…全然知らなかったから…」
曜「千歌ちゃん驚かせようと思って、志満ねぇにも内緒にしてもらってたんだ、アルバイトに来ること」
曜「千歌ちゃん、ビックリしてくれたみたいでよかった♪」
千歌「もー!来てくれるなら言ってよ!」
千歌「心強い助っ人って、曜ちゃんのことだったんだね!」
42:
千歌「それにしても、何でうちでバイトなの?」
曜「あー、うん。前電話した時さ、千歌ちゃん、なんだか珍しく弱気な感じだったから」
曜「一人で寂しいって言ってたし、気になっちゃって。志満ねぇに相談して、アルバイトとして来ることになったんだ」
千歌「曜ちゃん…もしかして、私を心配して来てくれたの?」
曜「まぁ、私も千歌ちゃんに会いたかったっていうのもあるんだけど…」
曜「ほら、高校生の時、夜中なのに千歌ちゃんわざわざ自転車で私の家まで来てくれたことあったでしょ?」
曜「あの時、千歌ちゃんが来てくれて、私も本当に救われたっていうか、嬉しくって…だから、その恩返しがしたいなって、ずっと思ってたんだ」
曜「だから、私がこうしてアルバイトとして来て、少しでも千歌ちゃんの助けになれたら嬉しいな」
千歌「曜ちゃん…!」
43:
曜「あ、それと」
千歌「?」
曜「仲居さんの仕事って朝早いんでしょ?沼津の実家からでも時間掛かっちゃうし」
曜「しばらく千歌ちゃんの部屋に泊めてもらえたらって思うんだけど」
千歌「え゛っ!?」
曜「…ダメ、かな」
千歌「う、ううん!全然大丈夫だよ!」
曜「ほんと!?よかったー♪」
44:
曜「千歌ちゃん、お布団ここに敷けばいいの?」
千歌「うん!大丈夫?重くない?」
曜「全然平気だよ!伊達に鍛えてないからね」
千歌「曜ちゃん、テキパキしてて力仕事もできるし、すごいなぁ」
千歌「曜ちゃんが来てくれたことだけでも嬉しいのに、お仕事まで本当に助かっちゃうよ」
曜「えへへ!千歌ちゃんが喜んでくれるなら、来たかいがあったよ」
千歌「うん、なんだか昔を思い出しちゃう。曜ちゃん、うちに遊びにきてた時、よく仕事手伝わされちゃってたよね」
曜「あはは…でも、その時の経験がいま活きてるって思えば、無駄じゃなかったし!」
曜「さぁ、もうちょっとでお部屋の準備終わるし、ちゃっちゃとやっちゃおう!」
千歌「うん!」
45:
曜「あ?、さっぱりした!相変わらずいい温泉だね!」
千歌「まずは一日目お疲れ様、曜ちゃん」
曜「思ってたよりハードだね、旅館のお仕事って。これを毎日やってるなんて、やっぱり千歌ちゃんはすごいよ」
千歌「まぁ、私もまだまだ失敗ばっかりだけどね。慣れちゃうもんだよ」
曜「でも、終わった後の温泉は格別だね?!」
千歌「…それも、慣れちゃったかな、さすがに。あはは…」
47:
曜「…千歌ちゃんの部屋も、変わらないね。懐かしい」
曜「Aqoursやってた頃は、毎日のようにここに集まって、作詞したり、衣装作ったり、振り付けの相談したりしてたよね」
千歌「うん…みんなとの思い出がたくさん残ってる場所だから。ふとした時、思い出しちゃうんだよね」
千歌「あの頃は楽しかったなぁって。もちろん、いまが楽しくないわけじゃないんだけど」
千歌「そんな時、私一人だとどうしようもなく寂しくなっちゃって。ノスタルジック、って言うのかな」
千歌「…でも、今日は大丈夫。曜ちゃんがいてくれるから」
曜「千歌ちゃん…」
曜「…私もね。時々思うことあるんだ」
千歌「え?」
48:
曜「昔から、学校でも放課後遊ぶ時も水泳やってる時も、そばには千歌ちゃんがいて…それが私の当たり前になっちゃってたんだよね」
曜「だから東京の学校へ行って、千歌ちゃんがいない学校で勉強して、千歌ちゃんがいないところで水泳やって…」
曜「充実してるはずなのに、何か違うなって思う時が、時々あるんだ」
曜「だから…私も、千歌ちゃんとおんなじかも」
千歌「そっか…曜ちゃんもおんなじだったんだ。へへ」
千歌「曜ちゃん、昔は泣き虫だったんだから。寂しくて泣いちゃったりしてない?」
曜「な、泣いてないよ!私だってもう大学生なんだから!」
曜「もう!明日も早いんでしょ?早く寝ちゃおう!」
千歌「う、うん。お休み、曜ちゃん」
49:
志満「ふぅ…あとは夕食の食器を片付ければ、今日は終わりね」
曜「うん。いや?働いた?!」
志満「お疲れ様、曜ちゃん。連休の間、ほんとに助かったわ」
曜「ううん。私の方こそ、急にバイトやらせてなんて、無理言ってごめんね」
志満「どうせ、誰かしら雇うつもりだったから。それと、千歌ちゃんのことも、ありがとう」
曜「千歌ちゃんの?」
50:
志満「うん。あの子、曜ちゃんが来てから目に見えて明るくなったわ。それまでは、どこか元気なさそうだったから」
志満「慣れない仕事で疲れてるんじゃないかしら、とは思ってたけど。曜ちゃんと一緒ならそんなの吹き飛んじゃうみたいね。幼馴染パワーって偉大だわ」
曜「いやぁ、えへへ…」
志満「…曜ちゃんにこんなこと言うと、困らせちゃうかもしれないけど。千歌ちゃんには、やっぱり曜ちゃんが必要なのかもしれないわね」
曜「…」
51:
千歌「曜ちゃん、お疲れ様!」
曜「千歌ちゃんも、お疲れ!」
千歌「ほんとに助かったよ?!ありがとね!」
曜「ううん、大変だったけど、楽しかったよ!短い間だけど、お世話になりました!」
千歌「…曜ちゃん、明日の朝には東京に帰っちゃうんだよね」
曜「うん。朝一の新幹線に乗れば、ギリギリ講義に間に合うかな」
千歌「曜ちゃんのお泊りも、今日で終わりかぁ」
52:
千歌「水泳、頑張ってね。私もここから応援してるから。梨子ちゃんにもよろしくね」
曜「うん…ねぇ、千歌ちゃん」
千歌「ん?」
曜「ちょっとした、確認なんだけどさ」
千歌「なぁに、もったいぶって」
曜「千歌ちゃん、このお仕事辞めたいとか、思ってない?」
千歌「…え?」
53:
千歌「えっと…それは…」
曜「…どう?」
千歌「…よくわかんないけど、今のところ、思ってない、かな」
千歌「自分で決めたことだから。ちょっと思い通りにいかないからって、投げ出したくない」
千歌「ようやく仕事も覚えられてきたところだし。辞めたいとかは、考えてないよ」
曜「…そっか。だよね。千歌ちゃんなら、そう言うと思った」
千歌「え?」
曜「なんでもないの。今の、忘れて」
千歌「え?気になるなぁ」
千歌「なんでそんなこと聞いたの?」
54:
曜「い、いいから!もう寝よ!」
千歌「なんでなんでなんで??」
千歌「教えてくれるまで今夜は寝かさないよ!」
曜「Zzz…」
千歌「寝たフリしたってダメだよ!お?し?え?て?!」
曜「…かなって」
千歌「え?」
曜「千歌ちゃん、東京で一緒に住まないかなって、思って」
千歌「…ほぇ?」
55:
曜「もし、千歌ちゃんが今の仕事にこだわらないんだったら、東京で仕事探して、一緒に住めたら、楽しいかなって…」
曜「ほんとは高3の時から考えてたんだけど。千歌ちゃんの将来にも関わることだから、なかなか言えなくて」
曜「でも、千歌ちゃん今の仕事続けるって言ってたから。だから、忘れて」
千歌「曜ちゃん…そんなこと考えてたんだね」
千歌「たしかに、こんな感じで曜ちゃんと毎日一緒だったら、すごく楽しいかも」
千歌「でも、ごめんね。私まだこの仕事辞めたくない」
曜「うん、それでいいと思う!」
曜「お仕事、頑張ってね。また会いに来るから」
千歌「うん!また、いつでも来てね」
56:
プルルル…
千歌「もしもし?」
梨子『あ、もしもし千歌ちゃん?』
千歌「梨子ちゃん、久しぶりだね!どうしたの?」
梨子『この間、電話かけてくれたでしょ?ごめんね!出られなくって』
千歌「あ、もしかして掛け直してくれたの?」
梨子『うん。コンクールの練習で、ここのところ気付いたら深夜ってことが多いから』
梨子『日中は千歌ちゃんも忙しいだろうし、なかなか掛けるタイミングが無くって』
千歌「ひゃ?、夜遅くまでピアノの練習してるんだ!すごいね」
57:
梨子『まぁ、夢中になっちゃってて、ふと周りを見たらすっかり真っ暗!とか…そんな感じ』
梨子『それで、何かあったの?』
千歌「あー、うん…なんていうか、人恋しくなっちゃってさ。ちょっとお話したいなーって思って」
梨子『…そうなんだ』
千歌「あ、でもね!この連休、曜ちゃんが泊まり込みでアルバイトに来てくれてたんだ」
梨子『曜ちゃんが?』
千歌「うん!曜ちゃん、昔からうちの手伝いやらされちゃってたから、勝手もわかってたし、すっごく助かっちゃった」
千歌「また来てくれるって言ってくれたし。寂しさは、なんとなく紛らわせられたかも」
梨子『そっか。良かったね、千歌ちゃん』
58:
梨子『私も久しぶりに千歌ちゃんに会いたくなっちゃった』
梨子『コンクールが終わったらちょっと余裕できると思うから、そうしたら私もそっちに行くね』
千歌「ほんと!?いつでも来てよ、おもてなししてあげるから!」
梨子『ふふっ。ありがとう、楽しみにしてるね』
千歌「…電話、ありがとね。梨子ちゃんとお話できて、楽しかった」
梨子『私も、千歌ちゃんの声が聞けてよかった。それじゃ、おやすみ』
千歌「うん、おやすみ」
60:
従業員「志満さん、先日お電話のあった入社希望の方がお見えになりました」
志満「あら、ありがとう。じゃあ履歴書をお預かりして、事務所にお通しして」
従業員「はい。では、こちらへ」
「…失礼します」
志満「…えっ?」
61:
千歌「はぁ?、午前中のお仕事はとりあえず一段落かな」
千歌「お客さんのチェックインまでまだ時間あるし、お部屋でゴロゴロか、たまにはみとしーに…」
だから…
でも…
千歌「ん?事務所にお客さんかな?珍しい…」
志満「…親御さんは、なんて?」
曜「最初はやっぱり反対されたよ」
曜「でも、一日じっくり話し合って、今では賛成してくれてる」
千歌(…え?曜ちゃん!?)
63:
志満「でも、うちで雇ってくれ、なんてねぇ…」
志満「こう言ったらなんだけど、曜ちゃんには他にもいい道がたくさんあると思うの」
志満「水泳だってそうだし、昔はお父さんみたいな船長さんになりたいって言ってたじゃない?」
曜「うん…でも、自分で考えて決めたことだから。学校だって、もう辞めてきちゃったし」
千歌「そっ…そんなのダメだよ!!」
曜「千歌ちゃん!?」
志満「あら、聞いてたの?」
64:
千歌「廊下歩いてたら聞こえちゃって…曜ちゃん、学校辞めたって、どういうこと?」
曜「…そのままの意味だよ。学校辞めて、今日はここの面接に来たの」
曜「私、ここで働かせてほしいんだ」
千歌「そんな…どうして」
曜「…それは…」
千歌「もしかして、私のせい?」
曜「え?」
65:
千歌「私が、ひとりじゃ心配だから?また寂しがるんじゃないかって思ったから?」
千歌「だから、せっかく受かった学校まで辞めて、来てくれようとしてるの?」
千歌「だとしたら…余計ダメだよ、そんなこと」
千歌「私のせいで曜ちゃんが夢を諦めなきゃいけないなんてこと、絶対ダメだよ!」
千歌「…私、また曜ちゃんの足、引っ張っちゃってるの…?」
曜「違うの、聞いて千歌ちゃん!」
66:
曜「確かに、水泳選手だったり、船長さんだったり、将来”やりたいこと”はいろいろあった」
曜「でもね。この間のアルバイトが終わって、寮に帰ってからじっくり自分の将来についてもう一度考えてみたの」
曜「そしたら、私が何をしていても、そばにはいつも千歌ちゃんがいて、お互い支え合って暮らしていく…そんな未来ばっかり考えちゃう」
曜「それで私、気付いたんだ。本当にやりたいことって、水泳選手でも船長さんでもなくて」
曜「…千歌ちゃんのそばにいることなんだって」
千歌「…曜ちゃん…」
志満「あら?」
67:
曜「だからね。私、夢を諦めたわけじゃない。本当の夢に気が付いただけなんだ」
曜「もちろん、千歌ちゃんさえよければ、だけど…」
千歌「…本当に、いいの?私なんかで」
曜「千歌ちゃんじゃなきゃダメだよ。千歌ちゃんがいい」
千歌「うぅ…曜ちゃぁん…!」
曜「そんなわけで、ここで働かせてもらいたいんだけど…ダメかな?」
志満「うーん、親御さんも納得してるって言うし、そんな熱いプロポーズ見せられちゃね…」
曜「ぷ、プロポーズ!?」
志満「あら、自覚なかったの?どう聞いてもプロポーズだったわよ。ね、千歌ちゃん?」
千歌「…///」コク
曜「…///」
68:
志満「まぁ、いいんじゃないかしら。曜ちゃんならお仕事の方も問題ないだろうし」
志満「千歌ちゃんのこともらってくれそうなの、曜ちゃんくらいしかいないものね」
千歌「ひ、ひどいよ志満ねぇ!」
志満「女の子同士でどうこうっていうのも、まぁ当人たちが納得していれば、私は反対しないわ」
志満「…私もあんまり、人のこと言えないし…」
曜「え?」
志満「…なんでもないわ。それじゃ、これから十千万のこと、千歌ちゃんのこと、よろしくね。曜ちゃん」
曜「…うん!ありがとう、志満ねぇ」
千歌「えへへ…これからよろしくね、曜ちゃん」
曜「うん…///」
69:
千歌「…あ」
曜「え、どうしたの千歌ちゃん」
千歌「そういえば、曜ちゃん泊まるところどうしよっか。また泊まり込みになるんだよね?」
曜「うん、そのつもりだけど」
千歌「社員用の寮も近くにあるけど…」
千歌「わ、私はもし曜ちゃんが良いって言うなら、また私の部屋でも…」
曜「えぇ!?さすがにずっとは迷惑じゃないかな」
千歌「むぅ…私が良いって言ってるんだからいいの!それとも、曜ちゃんは寮の方がいいの!?」
曜「そ、そんなことないよ!私も千歌ちゃんの部屋がいい!」
千歌「…///」
曜「あ…///」
千歌「えへへ、じゃあ決まりだね!」
70:
千歌「さて、あとは寝る場所だけど…」
曜「普通にお布団でいいんじゃない?」
千歌「1日2日泊まるだけならともかく、ずっと暮らすんだし、それじゃダメだよ」
曜「うーん、じゃあお金ためてベッドをもうひとつ買って、置かせてもらうとか…」
千歌「…このベッドに二人じゃさすがに狭いかな…」ボソッ
曜「えっ///」
千歌「…あっ。もしかして今の、口に出てた?」
曜「小学生の頃ならともかく、さすがに今は狭いと思うよ…それに、その」
曜「かなり、密着することになりそうだし…///」
千歌「あ、あはは…だよね?」
千歌「…い、今のナシでッ!!」
71:
千歌「曜ちゃんには悪いけど、今日の所はとりあえずはお布団でいいかな」
曜「うん、私は全然気にしないから」
千歌「…はぁ、なんだかドキドキしちゃうな」
曜「ドキドキ?」
千歌「前に曜ちゃんが泊まり込みでバイトしてた時も思ったけど、曜ちゃんと二人きりでお泊りって、実はあんまりやったことなかったよね」
曜「そういえば…小さい頃はよくやってたけどね。大きくなってからは、Aqoursでの合宿とかだったから」
千歌「うん。だから、曜ちゃんと二人きりなんだって思ったら、なんだかドキドキしちゃって」
千歌(…さっき、あんなこと言われたせいかも///)
曜「私もそうだよ。でも、慣れなきゃ。これからずっと一緒に暮らすんだから」
千歌「…そう、だね///」
曜「改めてよろしくね、千歌ちゃん」
千歌「…こちらこそ///」
72:
曜「千歌ちゃん急いで!このままだと新幹線の時間、ギリギリだよ!」
千歌「よ、曜ちゃん引っ張らないでよ!あわわわわ」
曜「あ、バス来ちゃった!千歌ちゃん早く!」
志満「もう社員なんだから、そっちの玄関使わないでちょうだい!」
千歌・曜「ごめんなさ?い!!」
曜「あ、バスの運転手さん、待って?!」
千歌「乗りますよ?!!」
志満「まったく…学生の頃と全然変わらないんだから」
74:
曜「ふぅ…なんとか間に合った…」
千歌「危なかった?、この次のバスだと新幹線も一本遅れちゃうから、梨子ちゃんのコンクール間に合わなかったかも」
曜「これでも結構ギリギリだけどね…乗り換え間違えないようにしないと」
千歌「それにしても、二人そろってお休みもらえて良かったね!」
曜「うん、都合つけてくれた志満ねぇには感謝しないと。ピアノコンクール、楽しみだなぁ」
千歌「調べたら、音楽関係の偉い人たちが来て、審査する大会なんだよね」
千歌「そんなところに梨子ちゃんが出るなんて、ほんとすごいよ!」
曜「うん、さすが梨子ちゃんだよね」
75:
千歌「う?ん、着いた!」
曜「やっぱり沼津から東京は遠いね…」
千歌「会場はここで合ってるかな?」
曜「うん、意外と街中にあるんだね。この中のホールでやるみたい」
千歌「梨子ちゃん、着いたら連絡してって言ってたけど…」
梨子「あ、千歌ちゃん!曜ちゃーん!」
千歌「あ、梨子ちゃん!」
曜「久しぶり!」
梨子「うん、久しぶり!ありがとう、わざわざ見に来てくれて」
千歌「わぁ、キレイなドレス…!」
曜「すっごく似合ってるよ!」
梨子「ふふ、照れちゃうな」
76:
梨子「来てもらってすぐで申し訳ないけど、私そろそろ受付があるから、行くね」
千歌「あ、そうだよね。着いたのギリギリになっちゃったから…がんばってね!」
曜「梨子ちゃんなら大丈夫だよ!ヨーソロー!」
梨子「うん…!ありがとう、行ってきます!」
77:
曜「もうすぐ梨子ちゃんの番だね…」
千歌「うぅ、自分が出るわけじゃないのに緊張してきた…」
曜「そんなんでよくスクールアイドルやってたよね…」
千歌「だって、会場の雰囲気が全然違うから…」
曜「あ、梨子ちゃん出てきた!」
千歌「…すごい、全然緊張してなさそう」
曜「余裕ある表情だね。あれ、こっち見てる?」
梨子「…」ニコッ
千歌「…///」キュン
曜「…ちょっと、千歌ちゃん」
千歌「へ?あ、いや、なんでもないよ、なんでも…」
曜「もー!ほら、演奏始まるよ!」
78:
?♪
千歌「わぁ…」
曜「すごい…」
千歌「私、音楽なんて全然素人だからよくわからないけど…なんだか、目の前に情景が広がっていくみたい」
曜「うん、わかる。ただ上手なだけじゃなくて、表現力がすごいんだね」
千歌「…なんだかすごすぎて、遠い人みたいに思えちゃうね」
曜「そんなことないよ。梨子ちゃんだって、頑張ってるんだから」
千歌「そういえば、毎日夜遅くまでピアノの練習してるって言ってたっけ」
曜「…私たちも、負けてられないね」
千歌「うん!また頑張ろうって思えてきた」
79:
千歌「…今日は、来られてよかったな」
千歌「梨子ちゃんの頑張ってるところ見られたし。曜ちゃんとデートもできたし」
曜「で、デート!?」
千歌「あれ、違った?」
曜(そういえば、あれから忙しくって、休みも合わないし、千歌ちゃんと二人で出かけたことってなかったっけ…)
曜「う、ううん。合ってるよ。デートだね、デート」
千歌「うん…///」
千歌「…改めて意識すると、なんか照れるね///」
曜(…やばい、かわいい…)
80:
千歌「あ、梨子ちゃーん!」
梨子「千歌ちゃん、曜ちゃん!待っててくれてたんだ」
曜「当たり前だよ!久々に会ったんだし、この後ご飯でもどうかなって」
千歌「梨子ちゃんお疲れ様?ってことで、私たちがおごるからさ!」
梨子「そんな、悪いよ!」
曜「いいって!私たちがしたいんだから」
梨子「…それじゃ、お言葉に甘えようかな。二人とも、ありがとう!」
81:
梨子「それにしてもビックリしちゃった、コンクール見に行くよ、なんてメールが昨日届くんだもん」
千歌「あはは、お休みが不定期な仕事でさ…」
曜「今日休めるって決まったのも、つい昨日なんだよね」
梨子「そうなんだ。旅館、忙しそうだもんね」
梨子「…あれ?そういえば曜ちゃんって今なにしてるの?」
曜「うっ…」
梨子「前に学校やめようかな、って相談してたよね」
千歌「あれ、梨子ちゃんに言ってないの?」
曜「いや、なんか恥ずかしくってさ…はは」
82:
梨子「…?恥ずかしいことなの?」
千歌「実はね、先月からうちの旅館で働いてるんだ」
梨子「え゛っそうなの!?全然知らなかった」
梨子「だから今日も一緒に来てたんだ」
曜「まぁ、そういうことで…」
梨子「…あれ、待って。通勤はどこから?」
曜「ギクッ」
梨子「旅館の仕事って朝早いって聞くけど。沼津の曜ちゃん家からだと大変じゃない?」
千歌「今は私の部屋に泊まってるよ」
梨子「あっ。ふーん…」
83:
曜「…梨子ちゃん。今なに察したの」
梨子「いえ、なんでも。お幸せにね、曜ちゃん」
曜「ちょっと、梨子ちゃん!///」
千歌「ほぇ?」
梨子「まさか、水泳よりそっちを選ぶとはね」
梨子「まぁ、曜ちゃんならやりそうだったけど」
曜「???!!!だから梨子ちゃんには内緒にしてたのに!」
千歌「なになに、何の話??」
84:
千歌「は?、すっかり遅くなっちゃったね」
曜「うん…なんだか無駄に疲れたよ…」
千歌「?なんだかくたびれてるね、曜ちゃん」
曜「あはは、ちょっとね…」
千歌「でも、久しぶりに梨子ちゃんと会えて楽しかった」
曜「…うん、そうだね。今度はAqoursのみんなで集まれたら、楽しそうだな」
千歌「それ良い!やろうよ!みんなに声かけて、お休み合わせて集まれたら、絶対楽しい!」
曜「おっ千歌ちゃんやる気だね!」
千歌「帰ったら、さっそくみんなに相談しよう!志満ねぇにまたお休みもお願いしないと」
曜「それじゃ、お休みもらうためにも一生懸命お仕事頑張らないとね!」
千歌「もちろん!頑張ろうね、曜ちゃん♪」
85:
志満「千歌ちゃーん、取材の方いらっしゃったわよ!」
千歌「は、はーい!あわわ、どうしよう…」
曜「千歌ちゃん、スクールアイドルのライブ以外だとほんとに緊張しいだよね」
千歌「だって、テレビの取材なんて受けるの初めてで…スクールアイドルの時だって、雑誌のインタビューがせいぜいだったのに」
曜「ああ、あの時もすっごい緊張してたよね…」
曜「テレビって言っても静岡のローカル局だから、そんなに硬くならなくても」
86:
千歌「や、やっぱり曜ちゃんも一緒にいて!」
曜「えぇ!?千歌ちゃんの取材なんじゃないの?」
千歌「そうだけど、私一人だと変なこと口走っちゃいそうだし…」
千歌「曜ちゃんが近くにいると、安心するっていうか…」
曜「…///」キュン
曜「ま、まぁそこまでお願いされちゃったら、仕方ないかなぁ」
千歌「ほんと!?ありがとう?!」
87:
リポーター「こんにちは!私は今、静岡県は沼津市にある、内浦に来ています!」
リポーター「今週は静岡県内の老舗旅館特集としていろいろな宿をご紹介していますが、本日はここ!」
リポーター「あの小説家も宿泊したことで知られる有名旅館「十千万」をご紹介します!」
リポーター「なんでも、つい一昨年までスクールアイドルだったという若い仲居さんも働いているということで、今までと違った客層のファンの方なども足を運んでいるようです」
リポーター「それでは、そんな元スクールアイドルの仲居さん・高海千歌さんにお話を伺いたいと思います!」
千歌「こ、こんにちは」
リポーター「こんにちは!おや、隣の方は…」
曜「こんにちは!千歌さんの幼馴染で、一緒に働いてる渡辺曜です!」
リポーター「こんにちは!元気ですね?、ガッチリ腕まで組んで、とっても仲良しみたいです」
千歌「…///」
88:
リポーター「それでは高海さん、この旅館のPRポイントはどんなところでしょう?」
千歌「は、はい!築80年の歴史ある建物は、国の有形文化財にも登録されていて、お泊りになったお客様にぬくもりとやすらぎを感じていただいています」
千歌「また、お部屋からは目の前に広がる駿河湾の眺望が楽しめ、地元の新鮮な海の幸を活かしたお料理もご好評いただいています」
曜(…なんだ。千歌ちゃん、一人でもバッチリじゃん)
89:

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