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提督「初月を拷問する」
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大淀「集積地棲鬼の撃破確認!海域、突破なりました!」
提督「そうか、よくやった」
大淀「ですが……初月、大破です」
提督「大破が出るのは仕方がない。高修復材を使ってやれ」
大淀「はい……その……ですが……」
提督「どうした?」
大淀「初月が命令違反を犯した結果、大破したのではないかとの報告が上がってきております」
提督「なんだと?」
大淀「戦闘前に、初月が食事を拒否。そのため本来の力が出せずに敵機の攻撃をまともに受けてしまったと……」
提督「くっ……愚かな……。入渠後、営倉に叩き込んでおけ!」
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2: 以下、
大淀「……その、曲がりなりにも戦果をあげてきたのですから、もう少し穏当な処分を……」
提督「命令違反は命令違反だ。少し営倉で頭を冷やさせろ」
大淀「ですがそれではあまりにも……」
提督「……よかろう。お前がそこまで言うのだ今回は営倉入りは勘弁してやろう」
大淀「……!ありがとうございます!」
提督「だが」
大淀「えっ!?」
提督「罰が何もなし、というのでは軍規も何もあったものではない」
大淀「ま、まさか……」
提督「修復終了次第、特別室へ連れていけ!私が直々に再教育してやろう」
大淀「お、お待ちください。何をなさるおつもりですか!」
提督「何を?クックックッ……なに、もう二度と命令違反などしたくならない様に、その体にいやというほど分からせてやるだけだ」
大淀「そ、そんな!それではまだ営倉入りの方が……」
提督「秋月を呼べ!」
大淀「提督、お止めください!初月ちゃんはまだ駆逐艦です!」
提督「だからどうした。軍人となったからには、いや、命令に逆らったからには奴も覚悟くらいしているはずだ」
大淀「で、ですが……」
提督「……大淀。貴様も私の再教育を受けたいか」
大淀「ひぃっ!」ガタガタ
提督「ならば早くしろ!」
大淀「…………は……い」
3: 以下、
提督「入るぞ」キィ
初月「……」
提督「それで、何か申し開きはあるか?」
初月「ない。僕は命令違反をし、結果部隊に損害を与えた。だから処罰を受けるのは当然のことだ。むしろ再教育だけなんて、そんな軽い処分でいいものかと思っているぐらいだ」
提督「ほう……。ところで再教育とはどういうものか、聞いていないのか?」
初月「ああ、だがどんなことであろうと甘んじて受け入れるつもりだ」
提督「そうか……」
秋月「……失礼、します」キィ
提督「初月、貴様は食事を拒否したと報告にあった。その理由はわからんだ、とりあえず『いつも』食っている物を用意した。これならば食えるだろう」
初月「ああ、ありがとう。しかし、いいのか?こんなに甘えてしまって……。ありがとう、秋月姉さん」
秋月「…………」カタン
提督「体力を消耗していては、再教育も何もないからな」
初月「……じゃあ、遠慮なく頂くよ。提督と秋月姉さんは?」
提督「私はもう食べたのでな。遠慮しよう」
秋月「私は……もう頂いたわ……。『これ』を」
初月「そうか。なら……いただきます」
初月「うん、やはり麦飯は落ち着くな……」もっきゅもっきゅ
初月「それにお漬物……」ポリポリ
初月「具のないお汁も……」ズズッ
提督「食べながらでいいから答えてほしい」
初月「うん」ふぐふぐ
提督「なぜ、貴様は戦闘食を食べなかったのだ?」
初月「……贅沢は敵だ」
提督「贅沢?なぜだ。たかだかおにぎりではないか」
初月「その具材が問題なんだ!」
初月「三元豚のトロ肉をあぶった物に黒トリュフのソースをかけた具」
提督「甘いと感じるほど柔らかな脂身と、少し焦げたソースが相まって絶品だったな」
初月「博多の粗塩で漬けた紀州南高梅」
提督「ただ純粋に素材の味だけでもってしょっぱくなった梅干しは、やはり日本人の舌に馴染む。しかも50年物だ。その奥深い味わいは、市販品の酢漬けの梅干しもどきとは大違いだったな」
提督「それで?何が問題なんだ?」
初月「贅沢すぎる!」
秋月「…………」
初月「こんな贅沢をしていては、勝てる戦いも勝てなくなる!」
提督「そうとも限らんとは思うが……」
初月「食料にお金をかけすぎていては、そのほかの物の、例えば銃などの装備にかけられるお金が減ってしまうかもしれないだろう!」
提督「しかし質の高い食事で士気が上がれば、よりよい結果を生むだろう」
初月「それは……一理あるかもしれないが……けど、僕は……!」
提督「いずれにせよ、この鎮守府において最も贅沢な食事をしているお前たち姉妹が言える事ではないがな」
4: 以下、
初月「……?どういうことだ?」
提督「そのままの意味だ。疑問を差し挟む余地すらないほどにな」
初月「何をいっている!……秋月姉さんも何か言ってやってくれ!」
秋月「…………」
初月「姉さん!」
秋月「ごめん……なさい……」ウルウル
初月「……何を……言って……?」
提督「理解できないのか、それともしたくないのか……」
初月「そんな……馬鹿な事を!こんなの、ただの麦飯じゃないか!それがどうして……!?」
提督「クックックッ……その麦飯、美味かっただろう?」
初月「それは秋月姉さんが努力して色んな配合を試しているからで……。だからいつも美味しい麦飯を……はっ!」
提督「ふむ、貴様は察しがよくて助かるな。そうだ、美味かっただろう。毎日、いつも、変わらず」
提督「この麦飯には米粒麦という、麦を一粒一粒削って、米粒と同じ形にしたものが使われている」
提督「つまり、時間経過によって水分が蒸発し、削っている分酸化も早まる。もし既製品なら、日ごとに味が落ちてしまうということだ」
初月「そ、それがないということはつまり…………そんな……」
秋月「て、提督に頼んで、精米所と精麦所を建ててもらったの……」
初月「うえぇぇぇっ」ゲフォッ
提督「ハハハハッ!分かったか、初月!貴様が食べている麦飯は、最新式の設備を以てして作り出される最高級品だったのだ!」
初月「だ、だが一度建ててしまえば……」
秋月「ご、ごめんなさい……。実はこの前新しい機械が発売されたから……」
初月「うわぁぁぁぁっ!」
提督「ちなみに、美味い麦というのはあまり生産されていないからな。秋月は農家と契約して畑ごと購入している」
初月「そんな……そんなぁ!」
初月「で、でも!それ以外はどうだ!?お漬物、お漬物だ!」
提督「ふむ、確か……」
秋月「わさび漬けになります」
初月「そう、わさび漬けだ!僕は知っているぞ!あの独特のアブラナの花の様な匂い!あれはあまり質の良くないわさび独特の匂いだ!つまり、質の良くないわさびを使った物ということで、それは安かったはずだ!」
提督「ああ、確かにあのわさびはお世辞にも質が高いとは言えないな」
初月「ほら!だったら……」
提督「日本の物に比べて、な」
初月「……え?」
提督「わさびというものは、育てるのが非常に難しい。まともに生産できるのは、日本だけと言っても過言ではないだろうな。中国などで育てられているものは、ホースラディッシュであったり、微妙に品種が違ったりと、偽物ばかりだ。採算も合わないだろうし、これは仕方のないことなのだろうな」
初月「なら……!」
提督「しかし、一か国……いや、一か所と言うべきか。本物のわさびの味に感動し、本物のわさびを育て上げる事に成功したのだ。気候も違うだろうに……素晴らしいことだ。その偉業は、国際的にも報道された様だな」
初月「まさか……僕が食べたものは……」
提督「そう、イギリス産わさびだ」
初月「そんな……そんなあぁぁぁ!!」
秋月「それに……ね。輸入してから漬けるのは味が落ちるから……職人さんには直接行ってもらって漬けてもらったの……」
初月「秋月姉さん……僕を騙したのか?」
秋月「そんなことない!私はただ初月に美味しいわさび漬けを食べてほしくて……」
初月「それなら日本産の物を使えばいいじゃないか!どうしてわざわざ英国産の物を……」
秋月「…………ごめん……なさい……。食べて……みたかったの……」
提督「あえて海外の物を、しかもより高品質な物があるのに、それでも手間をかけてより質の低い物を食べる。最上の贅沢だな、なあ初月?」
5: 以下、
初月「ぐぐぐ……。そうだ、お吸い物だ!具すらないお吸い物だぞ!これはもうただのダシ汁と言っても過言じゃないはずだ!これなら……」
提督「あまいなぁ、初月ぃ」ニヤリ
提督「その汁には、二種類のダシが使われている。わかるか?」
初月「……キノコ系のダシと……肉……?そうか、今流行の鹿節ってヤツだな!また海外産とでも言うんだろう!残念だったな、鹿節は日本では作られて……」
提督「それは鹿節ではない。もっと古くから日本にある、肉系の節……鴨節だ!」
提督「鹿やカツオより、さらにうま味成分が豊富に含まれている。しかも肉から出るダシはキノコ類のダシと相性が良い」
初月「ふ、ふん……だからってそこまで高級品ってわけではないはずだ!確かに多少贅沢ではあるかもしれないが……それでもこの鎮守府で一番ってほどじゃないはずだ!違うか!?」
提督「ああ、違う。間違いなく、お前たちが一番の贅沢をしている」
初月「なん……だって……?」
提督「初月、これが何かわかるか?」ゴソゴソ
初月「それは……ま、松茸!?まさか!!」
提督「フフフ……初月、貴様、この松茸を煮て出したダシと勘違いしてはいないだろうな?」
初月「そ、それ以外にどんな方法が……」
提督「この松茸、最高級の赤松茸はな。あぶっている最中、ほんの数滴だがしずくが落ちる」
初月「い……いやだ……そん……そんな……」
提督「一本焼くのに数滴、せいぜいティースプーン一杯程度か。そうだな、赤松茸20本程度も焼けば、その椀一杯分にはなるだろうな」
初月「あき……づき……ねえ……」
秋月「……今日の物は少し量が取れなかったので、初月のために23本使用しました……」
初月「嘘だぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
初月「そ……んな……贅沢は敵、贅沢は敵なのに……」ブツブツ
秋月「初月……!しっかりして!」ユサユサ
初月「節約……節制しなくちゃ……節制……ふひひ……」ブツブツ
6: 以下、
提督「初月、いい方法があるぞ」
初月「え?」
提督「私は色々なところで節約していたんだぞ」
初月「そんなの……信じられるわけ……」
提督「例えば、だ。トリュフは白が最上とされ、その後に黒、通常と続く。例のお前が拒否したおにぎりに使っていたトリュフは何色だったか覚えているか?」
初月「……黒、だ」
提督「そうだ。最上の白ではなく、等級を落として節約しているのだ」
初月「あ、ああ……」
提督「梅干しにしてもそうだ。100年物という更なる贅沢品があるというのに、それを50年物に落としている。わかるか?」
初月「そんな……それじゃあ提督は……」
提督「ああ、きちんと節約できるところはしていたんだ!」
初月「提督……君って奴は……。きちんと僕の事も想ってくれていたんだな」
提督「ああ。そうだ、今日の晩飯は、神戸牛の最上級サーロインステーキを節約して松坂牛にしよう!」
初月「それはとてもいい考えだな」
提督「その後に開ける酒は、響50ではなく響30で我慢しよう」
初月「そんな、君に無理させるつもりじゃ……」
提督「私が初月一人に苦行を背負わせるわけないだろう」
初月「提督……!わがままを言って、ごめん」
提督「つまみにするつもりだった蟹は、タラバガニではなくズワイにして節約だ!」
初月「ああ……そんなに……じゃあ僕も付き合って、チョコレートをゴディバからレオニダスに落として節約するよ!」
提督「初月、こんな風にお前の事も考えているんだ、私は。だから今後、おにぎりを食べない様なことは……」
初月「ああ、しないよ。約束する」
提督「うむ、では話は終わりだ。晩飯までの間、菓子でもつまむとしよう。付き合え、初月」
初月「いいけれど……軽い物がいいな」
提督「安心しろ、sterikschipsというただのポテトチップだ」
>>5枚で約60ドル(6000円近く)の商品
初月「それなら安心だね」
提督「ハッハッハッハッ……」
秋月「…………………節約?」
7: 以下、
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秋月「今日は奮発して肉じゃがにしましょう!」
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