殺し屋「標的の心を読んでくれ……」少女「うん、分かった」back

殺し屋「標的の心を読んでくれ……」少女「うん、分かった」


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1:
<ビル>
タッタッタ……
殺し屋「もうすぐ標的の部屋だな……」
少女「うん」
少女「あ、気をつけて。角で二人待ち伏せしてるから」
殺し屋「……了解」
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5:
手下A「もらったァ!」バッ
手下B「死ねえっ!」ババッ
殺し屋「…………」
シュバッ! ザシュッ!
手下A「がは……っ!」ドサッ
手下B「な、んで……?」ドザッ
少女「一人を一刺しずつ。相変わらずすごいナイフ捌きだね」
殺し屋「……ふん」
9:
ボスの部屋――
ボス「ひ、ひいい……まさかたった一人でオレの手下どもを……!」
殺し屋「…………」
少女「失礼ね、二人よ!」
殺し屋「年貢の納め時だな……」チャッ
ボス「ま、待ってくれ!」
ボス「そうだ! 金をやろう! もし見逃してくれるなら、好きなだけ金をやろう!」
11:
殺し屋「こいつの心を読んでくれ……」
少女「うん、分かった」
少女「んーとね、真っ赤なウソ!」
少女「ここさえしのげばこっちのもんだ! 残る手下を集めて八つ裂きにしてやる!」
少女「――なんて思ってるよ。悪い奴だね〜」
ボス「え!?」
少女「あと引き出しに拳銃を隠してるから注意してね。スキを見て撃とうとしてるから」
殺し屋「……分かった」
ボス「なんで!? なんで分かったんだ!?」
13:
殺し屋「本当だったとしても……始末することに変わりはない」
殺し屋「ただし本当だったら、正直への報いとして“楽に”始末してやった……」
殺し屋「つまりウソをついたお前は……」ザッザッ
ボス「いや、やめて……」
ぐえぇぇぇぇぇ……!!!
14:
――
――――
女「……やっと着いたわ」
女「ここが殺し屋のアジト……」
情報屋『ろくに口もきかねえ殺し屋と、心を読めるらしい女の子のコンビだ』
情報屋『変わり種だが、腕はたしかだぜ。へへっ、毎度ありい!』
女(この人たちなら、きっとお父さんの仇を討ってくれる……)
女(入ってみよう!)ザッ
16:
<殺し屋のアジト>
女「こんにちは」ギィィ…
殺し屋「…………」
少女「いらっしゃい! あなたが来るのは分かってたよ!」
女(この人たちが……殺し屋)
女(たしかに男の方は冷酷そうでいかにも殺し屋って外見だけど)
女(こんな女の子が……!?)
少女「アハハ、驚いてる驚いてる」
女「!」ギクッ
女(なんで分かったの!? 努めて冷静に振る舞ってたのに!)
少女「冷静に振る舞っても、あたしには分かっちゃうんだから」
17:
女(どうやら……この女の子の能力は本物のようね)
少女「うん、本物だよ」
少女「ってわけで、依頼内容を聞かせてくれる?」
女「分かったわ」
18:
女「あなたたちに始末して欲しい標的は……大企業、冥王重工の社長よ」
殺し屋「ほう……」
少女「こりゃまた大物だね」
女「奴は企業の新製品開発や生産によって生じた汚水や産業廃棄物を」
女「ある地方の山奥に廃棄していたの」
女「だけど、なにも知らされてない近隣の村人たちは」
女「そのせいで汚染された山菜や魚を口にしてしまい……次々に死んでしまった」
女「もちろん、生き残った人々は裁判を起こしたけど」
女「奴は多方面に金をばら撒き、圧力をかけ、全てをもみ消してしまった」
殺し屋「…………」
少女「ふむふむ」
19:
女「だけど……役場の環境関連の部署に勤めていた父は諦めなかった」
女「動かぬ証拠を掴み、それを大々的に発表すれば、冥王重工に罰を与えられるはずだと」
女「周囲の反対を振り切って、調査を続けてたわ」
女「だけど、そんな父を疎ましく思った冥王重工の社長は……父を殺したの!」
殺し屋「…………」
女「もちろん、警察には話したわ。だけど、まともに取り合ってはくれなかった」
女「結局、汚染のことも、父の死も、全ては闇に葬られてしまった……」
22:
女「私は村人たちを犠牲にし、父をも殺したあの男を許せない!」ギリッ
女「できるならこの手で殺してやりたいっ!」
女「だけど、私にそんな力はない……!」
女「だからお願い! 仇を取ってっ! あの男を殺してっ!」
殺し屋「……どうだ?」
少女「うん、全部本当のことだよ」
少女「お姉さんの怒りと悲しみがあたしの中にどんどん流れ込んでくるもの」
殺し屋「…………」
23:
殺し屋「……引き受けよう」
女「本当ですか!? ――ありがとうございます!」
少女「よかったね! じゃあ、報酬の件についてはおいおい話すということで……」
殺し屋「…………」
女(よかった……本当によかった……!)
24:
殺し屋「…………」
女(ところで……この人っていったい何を考えてるんだろう?)
女(私が話してる時も、依頼を引き受ける時も眉ひとつ動かさなかったけど……)
少女「あ、お姉さん、この人の考えてること知りたい?」
女「え、ええ」
少女「教えてあげよっか」
殺し屋「……よせ」
女(いったいどんなことを考えてるんだろう……)ドキドキ…
26:
殺し屋(らめええええええええええええええええええええええええっ!
 教えちゃらめええええええええええええええええええええええっ!
 俺がこの女の人の胸を見て、でけえな、さわりてえな、と思ったこととか、
 あなたの胸がでかいから引き受けますって言おうとしたのをかろうじて自制したこととか、
 標的の悪行聞いて、おのれぇ〜悪党めってなって、俺も殺し屋かって気づいたこととか、
 お父さんの話聞いて、ちょっと泣きそうになったのをこらえたこととか、
 いっちゃらめええええええええええええええええええええええっ!
 俺にもイメージってもんがあるのよ! イメージってもんが!
 少女ちゃん、お願い! あとで肩揉んであげりゅからぁぁぁ!)
少女「やっぱやめとく。きっとガッカリするから」
女「そ、そう」
女(きっと……とてつもない闇を秘めてるに違いないわ……)
殺し屋「…………」
28:
少女「ところで、ターゲットの社長はいつもどこにいるの?」
女「ろくに家にも帰らず、要塞のような本社ビルで酒池肉林の日々を過ごしています」
女「本人も恨みを買ってるのは自覚しているようで」
女「ビルの中には社員に偽装したボディガードを大量に配備してあるとか……」
殺し屋「…………」
女(今の話を聞いても、まったく動じていない……すごい……)
少女「そうでもないけどね」
女「へ?」
殺し屋(会社の社長なんか楽勝だろ、と思って引き受けたらヤバそうすぎるよぉぉぉ!
 なんだよ要塞って! なんだよ社員に偽装したボディガードって! おかしいだろ!
 今からでも遅くない。断ろうかな? いやマジで勇気出して断った方がいいって!
 でも断ったら絶対失望されるよな……ガッカリされるよなぁ。
 さっき引き受けるっていったじゃねーかってブン殴られるかもなぁ。
 それに少女ちゃんに叱られるし……まあ、頑張るしかないか。やるだけやろう。
 もしもの時のために身辺整理はしとくかぁ……短い人生だったなぁ)
30:
女「……よろしくお願いします!」
少女「任せといて! バイバーイ!」
殺し屋「…………」
少女「さてと、じゃあ肩揉んでよね」
殺し屋「……ああ」
33:
翌日――
<冥王重工本社前>
殺し屋「……ここか」
少女「うん、おっきいビルだねー」
殺し屋「…………」
少女「緊張してる?」
殺し屋「……多少な」
 (ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ! 緊張しすぎて吐きそう! 胃液の味する!
 あ〜もう一回トイレ行きたい! ……けど、もうなんも出ないよなぁ。
 朝から10回ぐらいトイレこもってるもんなぁ……もはや俺の住所トイレだよ。
 人という字を書いて飲み込むと緊張しなくなるっていうけど、あれマジなのかな。
 ちょっとやってみようかな……でも俺みたいな人でなしがやっても
 絶対効果ないよね、あるわけないよね、そういうもんだよな世の中)
少女「じゃ、行こっか!」
殺し屋「……ああ」
40:
受付――
受付嬢「いらっしゃいませ」ニコッ
少女「どうやら受付で入社カードをもらわないと、入れない仕組みだね」ボソッ
殺し屋「……なら無理矢理手に入れるしかあるまい」
殺し屋「……おい」ガシッ
受付嬢「ひっ!」
殺し屋「社内に入りたい……入るためのカードをよこせ」
殺し屋「よこさなきゃ……」チャッ
受付嬢「きっ、きゃあああああっ!」
42:
受付嬢「これです……!」
殺し屋「……これで中に入れる」
殺し屋「行くぞ……」タッ
少女「うんっ!」タッ
殺し屋(受付嬢さん、首に手をかけちゃったりしてごめんね。泣かせちゃってごめんね。
 俺がこんな稼業じゃなきゃ、絶対ナンパしてるよなぁ……すげえ可愛い。
 まあでも、俺にそんな度胸あるわけないんだけどね。はいはい、口だけ。
 心の中じゃプレイボーイ気取ってるけどナンパなんて絶対無理です。
 って、こんなこと考えてる場合じゃない。やべえ、ホントに吐きそう)
受付嬢「社長っ! 社長っ! 大変です!」ピッポッパッ
44:
社長室――
社長「警察? そんなもん呼ばんでいい」
社長「せっかくの楽しみが台無しになってしまうではないか」
社長「ワシに恨みを持つ者がよこした刺客を返り討ちにする、という楽しみがな」
社長「なにしろ、このオフィス内はワシの国といっていいからな!」
社長「ハッハッハッハッハ!」ガチャッ
傭兵「……相変わらずだな、アンタも。よほど人の死ってもんが好きらしい」
社長「貴様とて戦場に飽いて、敵の多いワシに雇われるようになったほどの戦闘狂ではないか」
社長「頼りにしているぞ」
傭兵「任せておけ」
47:
社内――
ズバッ! ザシュッ! ザクッ!
「ぐええっ!」 「ぐげっ!」 「ぐぎゃっ!」
殺し屋「……敵はあとどれぐらいだ?」
少女「まだまだいるよ! この社内、殺気だらけだもん!」
殺し屋「……そうか」
 (まだまだって嘘でしょ!? もう30人ぐらいやっつけたはずなのに!
 でも少女ちゃんが嘘つくとかありえないからマジなんだろうなぁ、嫌だなぁ。
 しかも一人一人がかなり手強いし! どうなってんだよ、この会社!
 あーあ、今からでも引き返せないかなぁ……。引き返したいなぁ。
 なんでこんなことになっちゃったんだろ)
49:
少女「上から来るよ!」
シュバッ!
殺し屋「!」
ギィンッ! ザシュッ!
黒服「ぐ、はぁ……」ドサッ
殺し屋「……ふん」
殺し屋(あっぶねええええええええええ! 天井から降ってくるとかパズルゲームかよ!
 パズルゲームといえば、久しぶりにぷよぷよやりたくなってきたな。
 でも俺、自力だと3連鎖までしかできないんだよな。4連鎖以上はマグレ頼み。
 少女ちゃんは平気で7連鎖とか8連鎖とかやるけど、あれどうやってんだろ。
 多分、出てくるぷよの色をいじってるんだろうな。そうとしか考えられない)
少女「いじってないよ」
殺し屋「……すまん」
52:
グルグルッ!
殺し屋「!」
ギシィッ……!
殺し屋「これは……ワイヤー……」ギシギシ…
殺し屋「ということは……」ギシギシ…
女暗殺者「うふふ……さすがね。首に巻きつく前にナイフで防御するなんて」シュルンッ
殺し屋「やはりお前か……」
少女「出たね、宿命のライバル!」
55:
殺し屋「お前も……社長に雇われたというわけか?」
女暗殺者「いいえ違うわ」
女暗殺者「私の標的も、あなたと同じなのよ」
殺し屋「…………」
女暗殺者「本来、標的がかち合ったら、殺り合うのが私たちの宿命だけど……」
女暗殺者「依頼人からは殺し方は問わないといわれてるし、この中は敵だらけだし……」
女暗殺者「ここはいっそ手を組まない?」
殺し屋「手を……?」
56:
女暗殺者「ザコは私が引きつけてあげるから、あなたは社長を殺ってくれない?」
殺し屋「…………」
 (なぜか俺が社長を倒す流れになってるけど、できれば俺がザコを引き受けたいなぁ……。
 だって社長のそばって絶対いるじゃん、いわゆるボスキャラってやつが。
 そういうのホント勘弁して欲しい。なんとかしてこの女に社長を押しつけ)
少女「うん、いいよ! 分かった!」
女暗殺者「うふふっ、同盟成立ね」
殺し屋「…………」
58:
女暗殺者「ところで、そっちのあなた」
少女「なぁに?」
女暗殺者「あなた、心を読めるんでしょ?」
女暗殺者「だったら、私の心の内をそいつに伝えてもいいわよ」
少女「ふうん」
59:
女暗殺者(ああんもう、また会っちゃったわ! このニヒルな殺し屋に!
  口数は少ないし、ルックスも渋いし、本当かっこいいのよねぇ〜。
  さっきはかっこつけてワイヤーで攻撃したりしたけど、
  もちろん命を奪うつもりなんて全くないわ!
  だって私、この人に惚れてしまってるんですもの……。
  ああ、この人の夫になって、早く足を洗いたい……。
  というかこの人に体を洗ってもらいたい……。
  だけど、告白する勇気はないから、あの女の子に伝えてもらっちゃおう!)
殺し屋(うへぇ〜……まーたこの女に会っちゃったよ。これで何回目だ?
 グラマーだし間違いなく美女なんだけど、マジで怖いんだよねこの人。
 俺としては同業者同士仲良くやりたいんだけど、まず不可能だよね。
 さっきのワイヤー攻撃も、完全に殺意100%だったし、
 なんつうかもう、絶対分かり合えないよね。水と油、犬と猿だよね。
 今も、顔赤らめて、やたらこっちを睨んできてるし……ひぇ〜おっかねえ。
 俺、この人になんかしたっけ? 少女ちゃんに考えてることを伝えてとかいってるけど
 絶対果たし合いかなんかの誘いだろ。どうやって断ろうかな)
少女「…………」
62:
少女「そういうことはね。自分の口でちゃんと伝えた方がいいよ」
女暗殺者「うぐっ!」
少女「じゃあねー!」タタタッ
殺し屋「…………」タタタッ
女暗殺者(自分の口で伝えられたら苦労しないのにぃっ! ムキーッ!)
63:
少女「あの人が手下を引きつけてるおかげで、近くに殺気がなくなったよ」
殺し屋「よし……一気に社長室へ向かう」
少女「うんっ!」
少女「だけど気をつけてね。社長室の方角からものすごい殺気を感じるから」
殺し屋「…………」
少女「大丈夫だって! さ、レッツゴー!」
65:
社長室――
殺し屋「…………」ガチャ…
傭兵「待っていたぞ」ニヤッ
傭兵「社長はこの奥の部屋にいる。もっとも、貴様はここで死ぬ運命なのだがな」
少女「こいつがボスキャラってやつだね!」
殺し屋「……ああ」
68:
傭兵「ところで……戦いの前にちょいとばかしオレの能力を披露してやろう」
傭兵「オレは戦いの中で、超能力といってもいい洞察力を身に付けた」
傭兵「つまり、オレは他人の心が読める」
殺し屋「ほう……」
傭兵「今の貴様はオレという獲物を見て、血が騒いでいる! ――そうだろう!?」
殺し屋「……ハズレだ。お前の洞察力とやらは眉唾物だな」
少女「うん、全然当たってないもん」
殺し屋(やべーよ、やべーよ、やべーよ! こいつメチャクチャ強そうなんだけど!
 ガタイは俺より全然上だし、特に肩幅の広さが半端じゃない! 広場かよ! 
 さいわい心を読む能力ってのは持ってないみたいだけど、
 戦闘力は絶対高いだろうしなぁ……あ〜ホント強敵だわこれ。
 やっぱりさっきの女に社長を押し付けるべきだった……ホント押し弱いな俺。
 それにしても、こいつはマジで強いぞ。俺のナイフ通じるかなぁ……。
 気を緩めると漏らしちゃいそう。つうかちょっと漏れた)
71:
傭兵「なるほど、獲物を前にするとかえって冷静になるタイプか」
傭兵「行くぞ!」ダッ
殺し屋「…………」シュバッ
傭兵「ほう、凄まじいナイフ捌き! 今まで見た中で一番だ! ――だがッ!」
傭兵「戦場で幾多の敵を屠ってきた、我がナックルを受けてみよ!」ブウンッ
ドゴォッ!
殺し屋「…………」ミシッ…
72:
傭兵「今の感触、アバラにヒビが入ったな!」ニヤッ
殺し屋「…………」
 (いでえええええええええええっ!!! いでえええええええええええええええっ!!!
 アバラが粉砕されて、その粉砕した骨が肺に刺さって、しかも貫通して、
 首を通って、脳まで達したぁぁぁぁぁ! 絶対達したぁぁぁぁぁ!
 もう戦うどころじゃないってこれ! でも戦わなきゃ死んじゃうし、
 ええい、急所を狙いまくればなんとかなるはず! 多分ならない!
 痛い、痛い、痛い、痛い、痛いぃぃぃぃぃ! たぁしゅけてぇぇぇぇぇ!)
傭兵(ほとんど表情が変わらない……アバラ程度ではダメージにもならんか)
73:
傭兵「ならばっ!」
傭兵「アバラだけでなく、全身の骨を砕いてくれる!」ブオンッ ブオンッ
殺し屋「…………」
 (首だ! 首しかない! 首狙いまくってやるぅぅぅぅぅぅぅぅ!)シュバッシュバッ
傭兵「こ、こいつ……ッ!」
殺し屋(首、首、首ィィィィィ! アバラ痛いぃぃぃぃぃ! 激痛ぅぅぅぅぅ!
 アバラがバラバラ。あ、ちょっと面白い。痛いぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!)シュバッシュバッ
傭兵(オレの首だけを……正確に……ッ!)
少女「ファイトーッ!」
77:
殺し屋(でやああああああああああああああああああああああっ!)シュバッ
ザシィッ!
傭兵「ぐ、は……!」ヨロ…
傭兵「まさかこうまで執拗に首だけを狙う、とは……殺しに徹する、とは……」
傭兵「戦いを楽しむオレは貴様に比べて、しょせんアマチュアだった、というわけか……」ニヤ…
ドザァッ……
殺し屋「…………」
少女「お疲れさま! あと一息だね!」
殺し屋「……ああ」
78:
社長「ま、まさか……あの傭兵が倒されるなんてぇっ!」
殺し屋「…………」
社長「ひいいいっ! 助けてくれえっ!」
社長「今までの悪事に関してはどんな償いだってする! だから、だからぁぁぁっ!」
少女「さ、どうする?」
殺し屋「……そうだな」
79:
殺し屋「奴の心を読んでくれ……」
少女「うん、分かった」
少女「えーとね……」
少女「あのポンコツ傭兵が! たかが殺し屋などに殺されおって! 口だけの役立たずめ!
 こんなクズどもに殺されてたまるか……! なんとしても生き延びて、
 これからもムシケラどもを踏み台にして冥王重工を発展させてやるぅぅぅぅぅ!
 そのためなら命乞いでもなんでもしてやるわ、ぐっへっへっへっへ!
 ――って思ってるよ」
社長「なんで分かったの!?」
殺し屋「……そうか」
80:
社長「ま、待ってくれっ!」
殺し屋「……じゃあな」
 (あの胸の大きい依頼人のお父さんを殺した恨み、このナイフで晴らしてやる!
 これできっとあの人も喜ぶぞ! ついでにデートに誘ってみよっかな!
 なーんてそれは調子に乗りすぎかな、さすがに。どうせフラれるし。
 さてと、あんまり血を噴き出さないように死んで下さい、マジで。
 あと化けて出てこないで下さい、ホントに。ナムアミダブツ。
 アンタも悪いこといっぱいしてきたんだし、これも運命だと思って諦めて下さい。
 じゃあ正義の鉄槌を喰らえッ!)
ドシュッ……!
81:
女暗殺者「終わったようね」ザッ
殺し屋「……お前か」
女暗殺者「それじゃ、また会いましょ。といっても次会った時は殺し合う時かもね」
殺し屋「…………」
女暗殺者(キャーッ、私ったら心にもないことを!
  今度会った時こそ、絶対好きですって伝えてみせるんだから!)シュタタタッ
少女「あのお姉さんも相変わらずだね〜」
少女「それじゃ、帰ろっか!」
殺し屋「……ああ」
82:
本社ビルの外――
少女「あ! 依頼人さん!」
女「……どうやら、やってくれたようですね」
殺し屋「ああ……仕事は果たした」
 (キツイ仕事だったよ、ホント。あのガタイいい人、メチャクチャ強かったし。
 胸でかいなぁ〜、ちょっとさわっていいですかっていったらOKしてくれるかな?
 いや多分無理だろうな。というか絶対無理。
 殴られて痴漢呼ばわりされて、おまわりさんに捕まる。よし、やめとこう)
女「父の無念を晴らして下さり、ありがとうございました!」
殺し屋「……仕事をしただけのことだ」
少女「そうそう!」
84:
女「あ……あのっ!」
殺し屋「……なんだ?」
女「今、私は環境関連の事業を興し、なんとか成功しています!」
女「よかったら殺し屋なんかやめて、私の仕事を手伝って下さいませんか?」
女「私、あなたは本当は優しい人のような気がしてならないんです!」
殺し屋「…………」
85:
殺し屋「生憎だが、俺の手は血にまみれすぎている……断る」
女「そうですか……仕方ありません」
女「お二人とも、お元気で! 本当にありがとうございました!」
殺し屋「……ああ」
少女「じゃあねー!」
殺し屋「…………」
 (あの人、ちゃんと俺のこと分かってくれてて嬉しいィ〜〜〜〜〜!
 しかもやっぱり胸でかい! せめて連絡先だけでも交換を……
 でもダメだよな。俺って人を殺しすぎてるし、そんな権利なんかない。
 俺が殺した人らが迷わず俺を恨めるためにも、俺は足を洗っちゃいけないんだ。
 でも化けて出てくるのはやめて下さい。お願いします、ホント。幽霊はマジ無理。
 って、アバラ痛めてたの忘れてた! 痛い痛い痛いィ!
 だけどここで泣いたら、今まで表情出さずに我慢してきたの台無しィ!
 耐えてやる! 耐えてみせる! あいたたたたたたたたたたた! ぴぎゃぁ!)
86:
少女「終わったね」
殺し屋「…………」
少女「アバラ痛いの、よく我慢したね」
殺し屋「まあな……」
少女「じゃ、まずは病院に行って、それから新しいパンツを買って帰ろっか」
殺し屋「……ああ」
― 完 ―
87:
おつ
89:

また機会あったら書いてくれ
93:
良かった
10

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