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白菊ほたる「スキヤキソング」


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1:
―――事務所
ちひろ「本当ですか!!?はい……!はい……!分かりました……!直ぐに向かいます…!」
ちひろ「はい……!ありがとうございます……!申し訳ございません……!」ガチャ
P「どうしたんですか、何やら大変な様子で……」
ちひろ「落ち着いて聞いてください、プロデューサーさん」
ちひろ「……茜ちゃんが大道具の下敷きになって怪我をしました」
P「茜が!?」
ちひろ「今病院に向かわせたそうなので私が行きます。プロデューサーさんも心配とは思いますが冷静に」
2:
P「はい……怪我の状態は?」
ちひろ「丈夫な子ですし、そこまで大きな物でもないようです。意識もハッキリとしています」
P「分かりました、ここはちひろさんに任せます」
ちひろ「はい……ですが、もう1つ気がかりな事が」
P「それは?」
ちひろ「怪我をした茜ちゃんの隣にいたのが……ほたるちゃんです」
P「何とも……」
ちひろ「当面の問題は茜ちゃんよりもほたるちゃんのメンタルケアでしょうね……」
3:
―――病院
茜「はい!!私は特に問題ありません!!!」
ちひろ「病室では静かに」
茜「おおっと……!危ない危ない」
ちひろ「一応無事でよかったわ……まあそれでも精密検査をしないと分からない事もあるし、油断は禁物よ」
茜「お仕事の方は……」
ちひろ「少なくとも明日と明後日の分はフォローできる分だけ代役を立てて、できない分はキャンセルね」
茜「うう……」
4:
ちひろ「検査を終えるまでキャンセルの判断を待ってくれてる所もあるみたい。そこは茜ちゃんの勝ち取った信頼ね」
茜「ですが……お仕事に穴を開けた事に変わりは……」
ちひろ「怪我は不可抗力だから仕方がない事よ。それに、トラブルに対応するのは私達大人の仕事。茜ちゃんが気に病む事はないわ」
茜「ありがとうございます……それと……」
ちひろ「ほたるちゃんの事ね……?」
茜「はい……私が病院に連れて行かれる時もずっと泣きじゃくっていたので……」
ちひろ「精神的負担を考えて家に帰してはいるけど……事務所のみんなで支えてあげないといけないわね」
茜「すぐにでもほたるちゃんの家に行って……!」
ちひろ「茜ちゃんは今日は入院」
茜「うぐ……」
5:
―――事務所
真奈美「ほう、茜とほたるが」
茄子「ええ、無事ではいるみたいなんですが……」
真奈美「心配だな……特にほたる。心の傷は検査では分からないものだ」
茄子「ええ……」
真奈美「……」
茄子「……」
真奈美「気になるなら部屋を訪ねればいい」
茄子「えっ」
6:
真奈美「顔に出過ぎだ」
茄子「でも、迷惑にならないかと……」
真奈美「君の幸運が良い方に運んでくれるさ。少なくとも私は行くべきだと思うがね」
茄子「そうでしょうか……」
真奈美「勿論ほたるの為でもあるし、何より君の為にも」
茄子「私の為?」
真奈美「いつまでもそんな不安そうな顔をしていれば仕事にも影響が出る、違うかい?」
茄子「ええ、私……そんな……」
真奈美「自分では気づかないのかもしれないが、とにかくやれる事はやるべきだろう」
茄子「わ、分かりました……とにかく行ってみますね」
7:
―――女子寮、ほたるの部屋の前
茄子「うう、なんだか妙に緊張します……」
茄子「誰かを励ますというのはあまり得意ではないですが……」
茄子「まずはやるしかありませんねっ」
ピンポーン
茄子「ほたるちゃん?私です、茄子です」
茄子「……今日は大変だったみたいですね、でもほたるちゃんに怪我がなくてよかった」
茄子「茜ちゃんも大した怪我はしていないみたいですし、不幸中の幸いです」
茄子「……」
8:
茄子「あの?、もしかしてお留守……?ではないですよね、できれば顔を見てお話したいんですけど……」
ほたる『……ごめんなさい』
茄子「ほたるちゃん?」
ほたる『今は誰にも会わせる顔がありません……茄子さんにも、私の不幸が伝染っちゃいます』
茄子「そんな……!」
ほたる『ごめんなさい……』プチッ
茄子「ほたるちゃん……」
9:
・・・・
真奈美「ほたるはそんな事を」
茄子「はい……何て言葉をかけてあげたらいいのかも分からず……」
真奈美「……かけてやるべき言葉が分からない時は、かけたい言葉を放つんだ」
茄子「……え?」
真奈美「君の気持ちがあるなら、それを伝えるべきだろう。時にそれは慰めよりも相手に響く」
茄子「私の、気持ち……ですか?」
真奈美「そうだ。ほたるに会いたいだとか、顔が見れずに寂しいとか、そんな事でいい」
茄子「……」
真奈美「そして幸いにも、ここにはそれを手伝うのにうってつけの仲間がいる」
茄子「それって……」
10:
・・・・
美嘉「アタシ?」
真奈美「そうだ、君の力が必要だ」
茄子「お願いします、ほたるちゃんの為にも」
美嘉「それはもちろん協力するけど、アタシは何をすればいいんですか?」
真奈美「何も難しい事じゃない、持ち前の年下の女の子の扱いで茄子君をアシストしてほしいというわけだ」
美嘉「そこまで持ち前でもないような」
真奈美「伊達に10年以上姉はやっていないだろう?」
11:
美嘉「……まぁ、ほたるちゃんの為なら一肌でも二肌でも脱ぎますよ★」
茄子「頼もしいです、美嘉ちゃん」
真奈美「それじゃあ2人とも、頼んだよ」
茄子「はいっ、今度こそほたるちゃんを元気にしてみせます!」
美嘉「りょーかいです!」
真奈美「私は私で動くとしよう」
茄子「真奈美さんは何を?」
真奈美「……内緒だよ」
12:
・・・・
ピンポーン
茄子「ご、ごめんなさいほたるちゃん、また来ちゃいました」
ほたる『……結局家に居ても誰かに迷惑かけて、やっぱりダメですね、私……』
茄子「ほたるちゃん!?そんなつもりは……」
ほたる『いえ、はっきり言ってもらって構いません……邪魔ですよね、私』
茄子「なんでそんな言い方……!」
ほたる『結局どこに居ても私は誰かに迷惑をかけて……』
ほたる『私、もうここに居ない方が――』
茄子「やめ――」
美嘉「ええいまどろっこしい!!!」
13:
美嘉「ほたるちゃん、美嘉です。先に私が言いたい事言わせてもらうね」
ほたる『……?』
美嘉「アタシはほたるちゃんに会いたい!今すぐ!顔を見たい!」
ほたる『え……』
美嘉「気持ちが昂ぶりすぎて発作が……!発作来た……!今すぐ顔を見ないとヤバい……!!」
茄子「美嘉ちゃん!?しっかり!!」
ほたる『美嘉さん!?』
14:
美嘉「ほたるちゃん……助けてえ!」
ガチャ
ほたる「美嘉さん!大丈夫です――」
美嘉「捕まえたぁ!!」ガシィ
ほたる「ひゃわっ!?」
美嘉「やっと顔が見れたね……!」
ほたる「は、離してください……!!」
美嘉「離さない!!ほたるちゃんが逃げようとするなら!!」
15:
ほたる「み、美嘉さんにもよくない事が起こりますよ……!」
美嘉「たとえば!?」
ほたる「ええーっと、口内炎とか……」
美嘉「野菜食べてるから平気!!」
ほたる「とにかく……私のせいで美嘉さんまで不幸にする訳には――」
美嘉「もしも!!」ギュッ
ほたる「っ」
美嘉「もしもこの後アタシに何か起こったとしても!!」
美嘉「友達の為に傷つく事を不幸だなんて言わないよ!!!」
16:
ほたる「美嘉さん……」
茄子「そうですよほたるちゃん」
茄子「仮に不幸があるとするなら、それはほたるちゃんに会えなくなる事」
茄子「私はそんなの絶対に嫌です。明日も明後日も、ずっと先も、私はほたるちゃんと一緒に居たいです」
ほたる「……」
茄子「……やっと言えました、私の気持ち」
茄子「できれば、ほたるちゃんの気持ちも聞かせてほしいな……って」
17:
ほたる「私は……」
茄子「……」
ほたる「私は、みなさんの事が大切ですし、好きです」
美嘉「……」
ほたる「でも、だからこそ、私の不幸でみなさんを巻き込む事には耐えられないんです……」
ほたる「前の事務所でもそうでした……私に優しくしてくれた同僚の方や、厳しいけど色んな事を教えてくれた人や……」
ほたる「私はその人達が大好きでした……なのに、私があの人達の人生を滅茶苦茶にして……!」
ほたる「今度こそは、って思ってこの事務所に来ました。でも結果は同じですね……」
ほたる「私のせいで茜さんは怪我をしました。きっと、次はもっと酷い事になります……」
18:
ほたる「そんな事になるくらいなら、私はもうみんなの元を離れてしまいたい、って思うんです」
茄子「……」
ほたる「だから、茄子さんも私の事は忘れてください……」
茄子「嫌です」
ほたる「っ」
茄子「もう私はほたるちゃんと関わってしまったんです。最初から何もなかった事にはできません」
茄子「たとえこの先に起こる不運を避けられたとして、私の気持ちとほたるちゃんの気持ちは一体誰が守れるって言うんですか」
茄子「私は私の我儘を通したいです」
茄子「ほたるちゃんが嫌なら無理矢理にでも――」
美嘉「ケンカしにここに来たわけじゃないよ?」
19:
茄子「あっ……すいません、少し熱くなってしまいました……」
美嘉「少し歩かない?散歩でもして頭を冷やそ★」
茄子「そうですね、ほたるちゃんも、一緒に行きましょう?」
ほたる「は、はい……」
美嘉「行きたい所とかある?」
ほたる「では……近くの土手まで……」
茄子「よく行くんですか?」
ほたる「はい……落ち込んだ時はよく」
20:
美嘉「何かあるの?」
ほたる「何か……というか、たまに川の反対側で大きな声で歌ってる人がいて……顔は見えないんですけど、声はよく聞こえて」
ほたる「決して上手ではないんですが……その歌を聴いていると元気が出るんです」
茄子「今日もいるといいですね」
ほたる「はい……」
美嘉「ふふっ、ほたるちゃん、少し表情明るくなってきたね★」
ほたる「えっ、あっ……」カァァァ
21:
―――土手
ほたる「今日は……いないみたいですね」
美嘉「歌聞こえないもんね」
茄子「また別の機会に――あれ?」
美嘉「ん?」
茄子「あそこにいるのは、もしかして……」
ほたる「あっ……」
美嘉「智絵里ちゃん!?」
智絵里「ひゃっ」
22:
茄子「どうしてここに?」
智絵里「あ、その、四葉のクローバーを探してたんです」
美嘉「クローバーを」
智絵里「はい、今日あった事を聞いて……それで、ほたるちゃんと茜ちゃんに何か元気づけられる物をあげたいと……」
ほたる「そんな……わざわざありがとうございます……」
智絵里「あ、いえ、その……まだ見つかってないですから……」
23:
美嘉「だったらアタシ達も一緒に探そっか」
茄子「いいですね、それ」
智絵里「あ、ありがとうございます」
美嘉「うんうん、じゃあ二手に分かれようか。ほたるちゃんは智絵里ちゃんと一緒に探しててね」
ほたる「え、あ、はい……」
茄子「私と美嘉ちゃんはあっちを探してみますから、お二人はそっちをお願いします」
智絵里「分かりました、それじゃあ、ほたるちゃん、一緒に」
ほたる「はい……」
24:
・・・・
美嘉「見つかったー?」
茄子「まだですねえ」
ほたる「中々見つかりませんね……」
智絵里「でも、きっとあります」
ほたる「……私、四葉のクローバーを見つけた事って無いんです」
智絵里「……」
ほたる「見つけられたら、私でも幸せになれるんでしょうか……」
25:
智絵里「……一生懸命、幸せを探す人ならきっと見つけらますっ」
智絵里「大切なのは、幸せを感じる心を手に入れる事ですから」
ほたる「心……」
智絵里「確かにそれは簡単に見つかるものじゃないですし、たくさんの人はこの土手をただ通り過ぎて行くだけですけど」
智絵里「でも、四葉のクローバーはきっと探せば見つかるんです。それは幸せも同じだと思います」
ほたる「……はい」
ほたる「見つけましょう、少し、自信が出てきました……」
26:
智絵里「……」ゴソゴソ
ほたる「……」ガサガサ
智絵里「……ここからは受け売りですけど」
ほたる「……?」
智絵里「四葉のクローバーは人がよく通ったり、日差しが少なかったりする場所に多くあるらしいです」
智絵里「若芽の内に踏まれて傷ついたり、日光を浴びれなかったりするとクローバーが四葉になったりするんですけど……」
智絵里「『誰かを幸せにできる』のは、やっぱり、きっと踏まれたり日蔭で過ごしてきた人なんです……」
27:
智絵里「……私もずっと自分を不幸な人間だと思っていました」
智絵里「でも、その言葉を聞いて私は少し前向きになれました、だって、不幸だと思ってた過去が誰かを幸せにできる力になるんですから……」
智絵里「……ほたるちゃんが、もし自分を不幸と思うなら……それはきっと誰かを幸せにできる証拠だと思います……」
智絵里「……す、すみません……なんだか偉そうな事を……」
ほたる「い、いえ……」
ほたる「智絵里さんは、強い人ですね……」
ほたる「私が人を幸せにできるなんて想像もつきません」
ほたる「……でも、智絵里さんの言葉は信じられます」
28:
智絵里「そんな……」
ほたる「本心です……だって、今、智絵里さんが私を幸せにしてくれましたから……」
ほたる「……見つかるんですね、四葉のクローバー……!本当に……!」ヒラッ
智絵里「あっ……!」
美嘉「おっ!見つけたみたいだねー!」
茄子「すごいですねほたるちゃん!」
ほたる「わわ、あ、ありがとうございます……」
29:
美嘉「こっちは全然だったよ?」
智絵里「あと一本、探さなきゃ……」
茄子「それなら大丈夫ですよ」
ほたる「?」
茄子「夕美ちゃんに聞いた事があります。四葉のクローバーを見つけた時は、その周りを探せば他にもあるって」
美嘉「そーなの?ほたるちゃんそれどこにあった?」
ほたる「あ、こ、この辺に……」
美嘉「どれどれ??」
30:
茄子「あ!ありました!」
美嘉「ホントだ!」
ほたる「わぁ……」
智絵里「やりましたね……!えへへ……」
茄子「それじゃあ、こっちをほたるちゃんにあげますね」
ほたる「私に……?」
茄子「ほたるちゃんが見つけた方は、是非ほたるちゃんが茜ちゃんに渡してあげてください」
ほたる「は、はい……ありがとう、ございます……」
31:
ほたる「……」
美嘉「……もしかして、茜ちゃんに会うのが気まずい?」
ほたる「え?あ、あの、その……」
美嘉「茜ちゃんの事なら心配いらないと思うけどねえ」
ほたる「でも、怪我した原因は私で……」
茄子「そんな事でほたるちゃんを責める人じゃないですよ」
ほたる「それは分かってます、だけど――」
智絵里「あ、あの……」
32:
茄子「?」
智絵里「私は、ほたるちゃんの気持ち、分かります……」
智絵里「誰かに迷惑をかけた時、自分が嫌いになって逃げ出したくなる気持ち」
智絵里「でも、そこから逃げたら何時までも自分を好きになれないから……」
智絵里「……1つ、簡単に自信を付ける方法があります」
美嘉「それって?」
智絵里「えっと、違う自分になる事です。それを、助けてくれる人もいます……」
ほたる「助けてくれる人……」
智絵里「今、電話で呼んでみます……」
33:
―――事務所
真奈美「……」
真奈美「私は、何をしているのだろうな」
真奈美「1つ分かるのは、これからする事は間違っているという事くらいか」
真奈美「……君は私を止めるかい?」
真奈美「清良」
清良「……当たり前です」
清良「茜ちゃんを、病室から連れ出そうだなんて……」
34:
清良「あなたのやろうとしている事は分かります、理解できない訳ではありません」
清良「……それでも」
清良「私は止めない訳にはいきません。看過してしまえば私の生き方を裏切る事になります」
真奈美「……無理にでもやると言ったら?」
清良「今、ここで、力づくでも止めます」
真奈美「そうか……なら」
真奈美「やむをえまいよ」
清良「っ!」
35:
真奈美「……」
清良「……」
清良「どうして……」
清良「……頭を、上げてください、どうして」
清良「土下座まで……」
真奈美「……すまない」
真奈美「だが私はこうするしかない、これ以外に筋を通す方法はない」
真奈美「ほたるを助けてやりたい、きっと彼女は今戦っている」
36:
清良「……」
真奈美「茜の方からほたるに会わせる、ほたるが自分を許す為にはそうしなければならない……!」
清良「……私だって」
清良「私だって、信用してない訳ではありません。真奈美さんも茜ちゃんも」
真奈美「責任は私が持つ、そして……」
真奈美「君がもし生き方に恥じるというなら、その帳尻は絶対に合わせる!」
真奈美「信じてくれ……!」
清良「……」
清良「1つ、条件があります」
37:
―――土手
雪菜「ごめんね、おまたせ♪」
美嘉「雪菜ちゃん?」
智絵里「すみません、急に呼んだりして……」
雪菜「いいのいいの、素敵に変身したい女の子の為ならへっちゃらだよぉ!」
ほたる「これは……」
雪菜「大体の事情は把握してるよ!今から私がほたるちゃんをメイクアップするからね!」
美嘉「ここで?」
雪菜「もちろん♪その為のこれ!ポータブルコスメセット??!」
38:
茄子「ほたるちゃんって、お化粧はします?」
ほたる「いえ、自分ではあまり……」
美嘉「まだ13歳だしねえ、すっぴんでも十分可愛いけど」
雪菜「うんうん、確かにやるとしてもナチュラル系なんだけど……私が手を加えるのは……」サワッ
ほたる「ひゃんっ」
美嘉(……)
雪菜「眉毛かなぁ」
39:
雪菜「チャームポイントと言えばそうなんだけどねぇ?変わりたいならそこに思い切って手を加えてみるのもいい方法だよ」
美嘉「眉を描くって事?」
雪菜「そうだよぉ」
美嘉「うーん……まあ、メイクの事に関しては雪菜ちゃんに任せるよ」
雪菜「ありがとぉ♪」
ほたる「あの……」
雪菜「心配しないで、すこーし眉をハッキリさっせるだけだから」
40:
・・・・
雪菜「アーニャ、アーニャ、アーニャンニャン♪」
ほたる「……」
雪菜「よぉし、できた♪」
雪菜「はい、鏡」
ほたる「えっと……」
美嘉「印象変わるねー」
茄子「なんだか自信がありそうに見えますよ」
ほたる「そうでしょうか……」
41:
雪菜「……大人になりたい女の子はルージュをひいて」
雪菜「誰かに見て欲しい女の子はアイシャドウとマスカラを」
雪菜「可愛く見せたい子はチークを塗るのよぉ」
雪菜「お化粧はね、なりたい自分になるためのお助けアイテムなの」
雪菜「ほたるちゃんの見た目に私は自信を付けたよ」
雪菜「あとは、ほたるちゃん次第」
雪菜「ほたるちゃんが自信満々な自分を演じれば、それが変身なの」
42:
ほたる「私は……自信満々……」
美嘉「そうだよそうだよ、ほら自分の顔を見てみて」
ほたる「なんだか、やれそうな気がしてきました……」
茄子「いいですよほたるちゃん!」
ほたる「私は自信がある……!自信がある……!」
智絵里「その調子です」
ほたる「元気があれば何でもできる……!」
雪菜「あと一息だよぉ!」
44:
ほたる「行ける……行きます!」
美嘉「よっしゃーー!」
真奈美「何をやっているんだ……」
美嘉「うわわっ!」
茄子「真奈美さん!」
真奈美「探したよ、まったく」
茄子「どうしたんですか?」
真奈美「……ほたるに会いたい子がいるそうだ」
美嘉「それって……」
45:
清良「大丈夫?無理しないでね?」
茜「問題ありません!!!!!」
茄子「茜ちゃん!?どうして!?」
ほたる「……!」
茜「あ!いました!!ほたるちゃん!!!!」
清良「走っちゃダメ!」
真奈美「……ほたると話がしたいそうだが、聞いてやってくれるかい?」
ほたる「は、はい……!」
46:
茜「……」
ほたる「……あ、あの」
茜「怪我はありませんでしたか!!!!?」
ほたる「え……あ、はい、私は……」
茜「それならよかったです!!!」
ほたる「で、でもそのせいで茜さんは……」
茜「私は心配いりません!!!ほたるちゃんが無事ならそれで!!!」
ほたる「だけど……!」
茜「私は今とっても幸せです!!!」
ほたる「えっ……?」
47:
茜「私は病院に運ばれる時に、『嬉しい』と思いました!!!」
茜「怪我をしたのがほたるちゃんでなくて私だったからです!!!」
茜「大切な友達を庇えたからです!!!」
茜「同じくらい『悲しい』と思いました!!!」
茜「最後に見たほたるちゃんが大泣きしていたからです!!!」
茜「でも、今はもうほたるちゃんは泣いていないから!!!」
茜「私は『嬉しい』だけなんです!!!!」
48:
茜「巻き込まれる事なんて気にしていません!!!」
茜「巻き込まれたくないならほたるちゃんとお話しなんてしません!!!」
茜「何があってもいいんです!!ほたるちゃんと友達でいられるから!!」
茜「ごめんなさい!!!私は人の話を聞く事が苦手なので!!!言いたい事だけ言わせて貰いました!!!」
ほたる「……」
茜「ほ、ほたるちゃん」
ほたる「ありがとうございます……!」
ほたる「これだけは伝えないと駄目だと思いました……」
49:
ほたる「……1人で部屋に籠っていた時はずっと、何て謝ればいいのかだけを考えていました」
ほたる「だけど、茄子さんがドアを叩いてくれたから、美嘉さんが外に連れ出してくれたから」
ほたる「智絵里さんが幸せを分けてくれたから、雪菜さんが自信をくれたから、今は違います……」
ほたる「ありがとうございます、茜さん」
ほたる「あなたのお陰で私は助かって……その、今こうしています」
ほたる「私は、幸せです……」
ほたる「お礼……と言ってはなんですが……これを、受け取ってください」
茜「……ハイッ!!」
50:
茄子「フグゥ……うっ……」
智絵里「茄子さん……?」
茄子「よかったですねぇほたるちゃん??!」メソメソ
ほたる「きゃっ……」
茄子「事務所やめるとか言いそうだった時はもう、ウッ、私どうしようかと……」
ほたる「す、すみません……あの時は……御迷惑を……」
茄子「よかったです本当に……こんな素敵な人達がいる事務所で……」
ほたる「……はい、私もそう思います」
51:
美嘉「ほたるちゃん」
ほたる「あっ、はい」
美嘉「分かったでしょ?ここに居る人達はみーんなほたるちゃんのお姉ちゃんなの」
美嘉「迷惑なんて苦労なんていくらでもかけていいんだから、その代わり心配はかけちゃだめ!分かった?」
ほたる「はいっ、分かりました……」
真奈美「フフッ、丸く収まってよかったよ」
真奈美「今しがた加奈から連絡があった」
清良「あら、準備ができたの?」
真奈美「ああ、そのようだ」
真奈美「帰ろうみんな、今夜はスキ焼きだ」
おわり
52:
おまけ1
加奈「はい、ほたるちゃん!お肉もう少しいる?」
ほたる「あ、いえ、それくらいで大丈夫です」
加奈「だめだめ!成長期なんだからもっと食べなきゃ!」
清良「加奈ちゃんの方が小さいじゃない」
美嘉「小っちゃいままでいいんだよ★」
雪菜「しめってご飯?うどん?」
智絵里「私はうどんがいいです……」
真奈美「アルコールも開けたいがこうも未成年が多いとな」
茄子「そうですねえ」
53:
清良「開けましょうよ、酒癖悪い人もいませんし」
真奈美「……それもそうか、ビールでいいかな」
清良「はいっ♪」
茄子「わーい♪」
真奈美「物欲しそうな顔をしても駄目だぞ未成年諸君、これは大人の特権だ」
美嘉「せめてジュースくださいよジュース」
真奈美「はいはい、少し待っていてくれ」
54:
・・・・
加奈「ほたるちゃんジュース注いであげるよ!」
美嘉「いや、ほたるちゃんにはアタシが注ぐ」
雪菜「ここは私が注ぐよぉ」
智絵里「じゃ、じゃあ私が……」
ほたる「自分でできますから?……」
真奈美「楽しそうじゃないか」
茄子「そうですね、賑やかで」
真奈美「君の事さ」
茄子「えっ?」
55:
清良「混ざってきたら?」
真奈美「そうだ、それがいい」
茄子「もう、二人とも酔ってますね??」
真奈美「フフ、そうかもしれないな」
清良「ほらほらいっちゃっていっちゃって?」
茄子「分かりましたよもう?」
ドーモ。ホタルチャン。カコデス
アイエエエ!?ナスサン!?ナスサンナンデ!?
ナスジャナクテカコデスヨ‐
真奈美「……そろそろおじやを作るかな」
56:
おまけ2
矢吹可奈「太った時の?美奈子さんの?♪」
可奈「『可奈ちゃんはそのままでいいよ』って言った時の顔が?♪」」
可奈「ちょっと本気っぽくで怖かった?♪」
千早「あら、矢吹さん今日も歌ってるのね」
可奈「ああっ!千早さん!おはようございます!」
千早「矢吹さんはとても楽しそうに歌うわね、素敵だと思うわ」
可奈「いえそんな!千早さんに比べたら全然下手ですし……!」
千早「こういうのは上手い下手じゃないと思うわ、矢吹さんの歌は春香の歌みたいに暖かいもの」
可奈「ほ、褒められてる?!」
57:
千早「近くの土手でも歌ってると聞いてるのだけど」
可奈「それが千早さ?ん、最近忙しくて中々そんな暇がなくて?……」
千早「そうなの、それを楽しみにしている人がいたら残念ね」
可奈「そんな人いる訳ないですよ?」
千早「そんな事はないわ、歌が大好きな人の歌は誰かを元気にする力があるから」
千早「きっと、矢吹さんの歌に前向きな気持ちを分けてもらってる人がいる筈よ」
可奈「なんか……そんな事言われると幸せで気絶しそうです……」
千早「ふふっ、それじゃあ一緒に歌いましょうか、今の『太った君にフォーリンラブ』」
可奈「何ですかそのタイトル」
58:
おまけ3
茜「エグッ……フグゥ……」
茜「すき焼き……食べたかったのに……!」
茜「『茜ちゃんは病院直行ね』とかひどすぎます……!!」
茜「病院食は物足りません……!!」
茜「フグゥ???うぇえええええん」メソメソ
59:
お婆ちゃん「あらぁ小っちゃくて可愛い子がおんしゃあね」
茜「はいぃ……!日野茜17歳です……!!」メソメソ
お婆ちゃん「どうしたとねそげん泣きんしゃって」
茜「お腹がすきました……!!」メソメソ
お婆ちゃん「そうね、そしたらこのお握りでも食べんね」
茜「お、お婆ちゃん!本当にいいんですか!!!?」
お婆ちゃん「よかよか、うちの爺様が持ってきんしゃったけど、婆ちゃんこげん食い切らんもん」
茜「お、お米だ????!!!!」
60:
お婆ちゃん「子供はお腹いっぱいにならんといかんよ」
茜「ありがとうございます!!!!ありがとうございます!!!!!」ムッシャムッシャ
お婆ちゃん「美味しそうに食べよらすねぇ」
「なんねなんね、せからしかねえ」
「あら、あらあら、可愛い子やねえ」
「お腹が減ってるのかえ?」
「息子が持ってきた果物さあるけ、これ食いね」
茜「ハッ!!気付けばたくさんのお婆ちゃんたちが差し入れを!!!」
茜「ありがとうございます!!!!今とても幸せです!!!!!次のライブはみなさんの為に歌いますよ!!!!!」
61:
おまけ4
莉嘉「お姉ちゃんご飯食べないの?」
美嘉「食べたいよ……食べたいけど……」
莉嘉「?」
美嘉「口内炎が……」
莉嘉「えーどしたの?野菜食べてる?」
美嘉「食べてるよ……」
莉嘉「じゃあなんで」
62:
美嘉「フッ……フッフッ……」
莉嘉「えっ、なに?急に」
美嘉「考えてみればこれは思われニキビならぬ思われ口内炎……!」
美嘉「見ててねほたるちゃん……!お姉ちゃんはこんな痛み乗り越えてみせるよ……!!」
美嘉「ああ幸せ!!痛い!痛い!幸せ!!」
莉嘉「お母さーーん!!またお姉ちゃんがおかしくなったーー!!」
63:
おまけ5
ほたる「……あっ」
ほたる「茶柱……」
おわり
65:
終わりです!!!!!
茜ちゃんを書くと元気になれますね!!!!!
たまには行儀がいい話も書きたくなるんです!!!!!
過去作は
西園寺琴歌「激論!朝までそれ可愛い」
姫川友紀「冬の朝にキャッチボールを」
城ヶ崎美嘉「これ入れ替わってるー!?」
北条加蓮「正妻選手権だって」
多田李衣菜「事務所で一番可愛い子って」
木村夏樹「だりー、ライブどうだった?」
です!!!
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