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【SS】磯風の料理修行メニュー


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乙です
楽しみにしてます!
108: 以下、

磯飯よりは比叡カレーの方がまだマシな気がする
109: 以下、
乙です。
あくまでイメージだけど、比叡はレシピ通りに作れば普通だけどいつも余計なモノを足したりするタイプ
磯風はレシピ通りに作っていても謎の物体を生み出す錬金術師タイプな感じがする。
110: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:34:36.93 ID:X5Ypwzoq0
戻りました
レスありがとうござします
磯風は、史実では捕虜をもてなしたりとかしていたみたいですね。それがどうして飯マスキャラとなっているのか…
続けます
111: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:35:51.08 ID:X5Ypwzoq0
磯風の料理修業メニュー 五作目
―グラウンド 弓道場前広場 昼―
磯風「さて。今日は待ちに待った火工だ」
浦風「それはええけどのぉ…なんじゃこのテーブルと簡易コンロは。それに場所…」
磯風「これならば、万が一があっても被害はコンロとフライパンで済む。私なりに考えた結果だ」
磯風「そして、今日はよろしく頼む」
瑞鳳「はぁい!卵焼きなら私におまかせ♪二人とも頑張ろうねぇ」
112: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:36:40.87 ID:X5Ypwzoq0
浦風「瑞鳳さん、卵焼き好きじゃねぇ」
瑞鳳「うん。提督が美味しそうに食べてくれるの。それがとっても嬉しくって♪」
磯風「(…やはり誰かに食べてもらうのは、嬉しいことなのだろうな)」
浦風「卵焼き以外は何か作らんのかえ?」
瑞鳳「いろいろ作るよぉ。オムレツ、だし巻き、茶碗蒸し、錦糸。他にもたくさん!」
浦風「卵料理ばっかりじゃねぇ」
瑞鳳「うん。おいしいもん!」
磯風「(…なんだろうな)」
磯風「(気のせいか分からんが、この二人、どこか似ているような…)」
磯風「まぁいいか。それで、瑞鳳。何を作る?」
瑞鳳「うん。私が一番得意なのは卵焼きだから、それを教えようと思ったけどぉ…」
瑞鳳「やっぱりここは、スクランブルエッグがいいかなと思ったの。火加減に集中できるからね」
瑞鳳「というわけで、さっそく作っちゃいます!まずは私の手順を見ててね♪」
113: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:37:20.58 ID:X5Ypwzoq0
?五分後?
瑞鳳「で、これで。ぷるぷるがほどほどに残っているのを確認したら、お皿に移す」
瑞鳳「後はお好みでソースやケチャップをかけて、召し上がれ♪」
瑞鳳「はい、完成です!」
磯風「おぉ…見た目だけで美味しさが伝わるようだな」
浦風「これはもう、プロが作るレベルのそれやねぇ」
瑞鳳「えへへ♪好きこそものの上手なれ、ってね。何度も作れば感覚で分かってくるんだよ」
瑞鳳「注意することは、あんまり火を通しすぎないこと。溶き卵がある程度固まってきたら、あとは余熱でも充分だよ。固まる様子をよく見ててね」
瑞鳳「さ、やってみて!」
磯風「う、うむ…」
114: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:38:06.86 ID:X5Ypwzoq0
磯風「……」
磯風「(こうして、いざコンロの前に立ち、改めて考えてみると…以前の私は、ほとほとヒドい有り様だったな)」
磯風「(焦がすのは序の口、爆発炎上溶解は茶飯事、しまいには変な生き物まで召喚したこともあったな…)」
磯風「(次はなんとかなるだろうと楽観的に捉え、失敗した理由がわからないにも関わらず同じ事を繰り返して、遂に上手くなることはなかった)」
磯風「(それではダメなのだと…気が付くのが遅すぎた)」
磯風「……」ブルブル…
磯風「(はは…腕が震えているではないか…やってやると決意し、こうして再び人を巻き込んでおきながら、なんというザマだ…)」
磯風「(以前にはなかった気持ちだ…失敗するのを、私は恐れているのだ…誰かが私を支えていることに、愚かにも今更気が付いたから…)」
磯風「(私は今、浦風と瑞鳳の時間を貰っている。この卵だって、育てた人、納入した人、管理している人、多くの人間が関わっている。コンロだってそうだ。明石さんにお願いして準備してもらった)」
磯風「(その時間を、労力を…無駄にしたくない)」
磯風「(失敗は…できない…)」
磯風「(失敗したくない…!)」
115: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:38:58.21 ID:X5Ypwzoq0
磯風「……」ブルブル…!
磯風「(ダメだ…意識したら、余計に震えが!)」
磯風「…ちくしょう……!」ギリリ
浦風「磯風」ポン
磯風「!!」ビクン
浦風「落ち着きぃ。そんなんでは、成功するもんも成功せんよ」サスリサスリ
浦風「余計な事は考えたらいかん。今磯風が考えるんは、スクランブルエッグを作ることじゃ」
浦風「失敗したって誰も責めたりはせんよ。次に挑戦すりゃええ。な、瑞鳳?」
瑞鳳「うん♪私だって最初は失敗だらけだったよ。でも挫けずに練習を重ねていったからこそ、今があるの」
瑞鳳「最初から成功する人なんて、地球上でも数えるくらいしかいないよ。だから大丈夫」
116: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:39:42.73 ID:X5Ypwzoq0
磯風「うぅ…でもやっぱり怖いよぉ…浦風ぇ…震えも止まらない…」ブルブル…
浦風「はは。しょうがないねぇ、まったく」
ギュムゥ
磯風「……」
浦風「どうじゃ?少しは落ち着いたかのう?」
磯風「いや…というか何故、お前の胸に抱き寄せる…」
浦風「人は不安な時、温もりを求めるものじゃ。磯風も例外ではないよ」
浦風「ウチに出来るのは、これくらいじゃ。お前さんが泣きそうなとき、挫けそうなとき、恐怖に縛られたとき。こうして抱き締めてやることくらいじゃ」
浦風「けれど、それは必要な事と思う。誰も彼もが一人で戦っているわけではない。安らぎも必要じゃ」
浦風「だから磯風が不安なとき、ウチはこうして抱き締めてあげるけんね」ギュウ
磯風「…子供扱いを…」
117: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:40:28.75 ID:X5Ypwzoq0
磯風「でも…温かい…それに、良い匂いがする…紅茶か?」
浦風「金剛姉さんに貰ったやつじゃねぇ。ハーブティー。心を静める作用があるんじゃと」
浦風「今の磯風にぴったりじゃ」
磯風「(…普段は紅茶などまったく飲まないくせに…)」
磯風「(私がこうなるかもしれないと見越して、用意してくれたのか…)」
磯風「……」
浦風「大丈夫…ウチらはずっと、磯風を見守ってるけんねぇ…」ナデナデ
磯風「……あぁ。ありがとう」
磯風「もう、大丈夫だ。というか、子供扱いしてくれるな…」
浦風「ふふ♪さっきの磯風は、誰が見ても子供じゃ。今もそうかのう?」
磯風「ふん。あまり舐めてくれるな。私だって、いつまでも乳飲み子ではない」
磯風「私には、壮大な野望がある。ここで挫けるわけにはいかんさ!」
浦風「…震えは、止まったようじゃねぇ」
118: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:40:58.85 ID:X5Ypwzoq0
磯風「ようし、やるぞ」
瑞鳳「火加減は私も見てるからね。強すぎたらちゃんと言うから、思うようにやってみて!」
磯風「あぁ、よろしく頼む」
浦風「ちゃんと、ここで見てるけんねぇ」
磯風「うむ!」
磯風「よし…焼くぞ!」
119: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:41:49.32 ID:X5Ypwzoq0
黄金色の溶き卵が、一筋の流線形を描いてフライパンに注がれていった。
それは軽やかな焼かれる音を奏で、フライパンの中で渦を巻く。
不定の液体は、やがて緩やかに流れを鈍くしていき、菜箸に固まりを絡ませる。
磯風の定まりきらない想いが、自信や、誇りといった、漠然としたふわふわしたものが、一つの確実な形となって徐々に集中していくように。
溶き卵は、確実に磯風の手で料理へと変貌していった。
磯風「いける…」
じっとりと手のひらに汗が滲む。額や、背中にも、信じられないほどに雫を垂らしていった。
それはきっと、高翌揚感。すぐそこの未来に待ち受けるであろう、ずっと望んでいた光景に出会えるという、興奮の表れ。期待が具現化したもの。鬱陶しいが、嫌ではなかった。
磯風「今度こそ…」
溶き卵の姿は、もう見えなくなった。代わりにとろとろとした、別のなにかがフライパンの上で踊っている。磯風の手で作り上げたものだ。
磯風「いける…!」
120: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:42:41.66 ID:X5Ypwzoq0
瑞鳳「…うん。火を止めて!」
言われるままに、磯風はコンロのつまみを戻した。ガスが遮断され、完全に火が消える。
未だ微かにぬめりけを帯びる卵を、フライパンの余熱で完全に消し去っていく。菜箸を回し続け、焦げ付かぬよう細心の注意を払い、仕上げに取り掛かる。
磯風は、最後の判断を下した。
磯風「よし、皿に盛り付ける!」
あらかじめ用意した厚手の皿に、フライパンの中身を全て盛り付ける。菜箸で形を調え、中央が山なりになるようにした。
磯風「あとは…ケチャップで装飾を…」
何か特別なことを描きたかった。だが磯風は首を振る。今までそうしてきたから、変な事故が起きたのだ。だからここは、無難に波を象るように丁寧に絞っていく。
最後の一滴を出し終えた時、遂にスクランブルエッグは完成した。
121: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:43:18.25 ID:X5Ypwzoq0
磯風「……」ボーゼン
磯風「できた…のか?」
浦風「そうじゃ、磯風!遂にやったんじゃ!」
浦風「磯風が自分の手で、作り上げたんじゃ!」
磯風「…わ、私が、これを?」
瑞鳳「うん!形も綺麗だよ。これなら提督も喜んでくれるよ!」
磯風「…っっ!!」パアアァァ
磯風「やっ……たあああぁぁぁっっ!!」
磯風「やった。やった!やったあぁっ!!できたんだ…初めて、これほど綺麗に作れたぞぉ!!」
浦風「おめでとさん、磯風!今までようやったねぇ!」
瑞鳳「おめでとう!」
122: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:43:50.67 ID:X5Ypwzoq0
磯風「あぁ…ありがとう。本当にありがとう!感謝してもしきれんくらいだ…うぅ…グス…」
浦風「うんうん。今だけは泣いてもえぇよ。本当に頑張ったもんねぇ」ギュ
磯風「うぅ…ありがとう…!」ギュ
瑞鳳「ふふ♪二人は本当に仲良しだねぇ、ちょっと羨ましいなぁ」
123: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:44:54.94 ID:X5Ypwzoq0
浦風「さてさて。温かいうちに、磯風の料理を食べないとねぇ」
磯風「うむ…すまないが、瑞鳳。浦風に先に食べさせてもいいだろうか?」
瑞鳳「うん!もちろんいいよぉ」
浦風「ええんか?うふふ♪ならお言葉に甘えて…」
……グラリ…
___グラグラグラグラ!!!
磯風「っ!!?」
浦風「じ、地震じゃ!?けっこう大きい!」
瑞鳳「わわわわ!?ふ、二人とも伏せてぇ!」
磯風「……あっ!?」
磯風「(テーブルから、皿が落ちそうだ!?)」
スルリ…
磯風「落ちる!?」
磯風「させるかぁっ!!」ガバァ!
磯風「(ここで…ここで終わるわけにはいかない!)」
磯風「(これは私だけで作ったのではない…みなの気持ちが詰まった大事な一品だっ!)」
磯風「間に合ええええええぇぇぇぇぇぇっ!!!」
124: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:45:32.17 ID:X5Ypwzoq0
___ガシャ…アン!!
125: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:46:19.68 ID:X5Ypwzoq0
???????
赤城「わぁっ!?地震です地震です!加賀さんのトラウマが!」
加賀「別に地震程度で乱したりはしません。赤城さんこそ落ち着いて」
飛龍「そう言いながら足がガクブルですよー加賀さん」
瑞鶴「あっははは!その年になって地震苦手なの加賀さぁん!?大丈夫でちゅよ?!私達がついてまちゅからね??♪」
加賀「ぶちギレました。オラァっ!!」
瑞鶴「ぐほぉっ!?ちょ、ギブギブギブ!あああああああああ!」
蒼龍「もう二人とも、なに遊んでるんですか」
翔鶴「ところで、皆さん。なんだか卵の良い匂いがしませんか?」
赤城「くんくん…本当だ!わぁ♪誰かがおやつを作ってるのでしょうか!」
飛龍「あはは、弾けるように笑顔になりましたね♪」
??????
126: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:47:18.29 ID:X5Ypwzoq0
赤城「こっちかな?♪あら、瑞鳳さん?浦風さんに…地面に伏しているのは磯風さんかしら」
瑞鳳「あ…赤城さん…」
加賀「こんなところで何をしているの」
浦風「いや、ちょっと訳あってここで料理を…」
赤城「?磯風さん…どうしたんですか?」
磯風「………」
赤城「…?」ヒョイ
スクランブルエッグの残骸「」
赤城「おや…もしかして、先程の地震で?」
瑞鳳「う、うん…」
127: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:48:00.52 ID:X5Ypwzoq0
赤城「あー、せっかく作ったのに、それは残念でしたね…」
赤城「でも、大丈夫です。スクランブルエッグなら、もう一度作ればいいのです。これでへこたれてはいけませんよ、磯風さん」ナデナデ
磯風「………」
浦風「赤城さん…これは、磯風にとって本当に特別な料理だったんじゃ…もう一度と言うわけには、いかんのじゃ…」
赤城「えっ、そうなのですか」
磯風「………」
磯風「…は…ははは…」
磯風「笑い声しか…出てこないな、これは…」
128: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:48:57.63 ID:X5Ypwzoq0
磯風「なんなのだ、これは…」
磯風「こんなの、どうしようもないではないか…」
浦風「磯風…」
浦風「だ、大丈夫じゃ!落としただけじゃ!外側を払えば、味見くらいは…」
磯風「いいんだ…」
磯風「お前に、砂だらけの料理を食わすわけにはいかん…」スック
磯風「すまない…今日はもう、終わりにする…」トボトボ…
129: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:50:09.56 ID:X5Ypwzoq0
浦風「あ…磯風!」
赤城「浦風さん。今はそっとしておきましょう」
浦風「うぅ…こればっかりは、磯風が悪いわけではないんじゃが…」
瑞鶴「随分と痛々しい背中ね…」
翔鶴「磯風さん、そういえばここのところ、ずっと修業していると聞きました」
加賀「なんだかよく分かりませんが…そうとう頑張ってたのね?」
浦風「そうじゃ…全身全霊をかけて、頑張ってたんじゃ…それなのに…」
瑞鳳「地震が急に来て、せっかくの料理がテーブルから落ちちゃったの…」
瑞鶴「うわあぁ、悲惨」
赤城「……」
加賀「赤城さん。だからって、食べてはダメですよ」
赤城「あ、やっぱりダメですか…?」
加賀「ダメです」
130: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:51:45.59 ID:X5Ypwzoq0
磯風の料理修業メニュー ?作目
―厨房 夕方―
磯風「……」
磯風「あれから、なんとか立ち直して、再び修業に励んだが…」
磯風「まったくうまくいかないな…」
磯風「指を切るわ、包丁が欠けるわ、敵が急に鎮守府近海に攻めこんでくるわ…」
磯風「こうして振り返ってみると、外的要因もけっこう悪いな…」
磯風「ふっ。それにしても、昨日は恐れていた事が現実になったな」
磯風「魚かと思ったが、手が生えたと思いきや、野菜をそこかしこに投げてくれおって…
大人しい部類だったから何とかなったが」
磯風「あれで何体目だ。二桁はとうに突破しているだろうな」
磯風「……」
131: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:52:42.53 ID:X5Ypwzoq0
磯風「今日は、浦風も谷風もいない。遠征で、二日ほどだったか」
磯風「そういえば、私が最後に遠征に行ったのはいつだったかなぁ…最近こちらにまったく身がはいっていない…命を懸けた戦いだと言うのに…出撃も、いつが最後だったかな」
磯風「なんだか、本来の私の仕事でも、うまくいってないような…編成を決めるのは司令だが…」
磯風「浜風は、この時間から哨戒任務だったか。もう行ったのか、これから行くのか…アイツは優秀だから、多方面で必要とされているよな…」
磯風「努力は実を結ぶ…そんな言葉を残したのは、誰だったか」
磯風「…それともまさか、私の努力は努力でないとでも…」ジワア…
磯風「っ!っ!」ブンブン!
磯風「い、いや!あまり建設的でないことを考えるのはよそう。前を向いていこう…」
132: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:54:25.71 ID:X5Ypwzoq0
磯風「そうだ…冷蔵庫にはなにが入っているだろうか。有るもので作る料理を想像するのも良いと、鳳翔さんが言っていた」ガチャ
磯風「……ベーコン、鮭、マーガリン…ダメだ。全く想像がつかん…」
磯風「使うならば、また卵かなぁ…」スッ
卵「ミギャアアァァっ!」
磯風「!」ビクゥ
磯風「な、なんだコイツは…」
磯風「中から生き物の声が聞こえるな。ていうか殻の色、まるでドラゴンのようではないか…どこから紛れた?」
磯風「……」
卵「ギャアア!ギャアアアアァァっ!」
133: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:55:21.49 ID:X5Ypwzoq0
磯風「水がサビたり」
磯風「コンロが爆発したり」
磯風「虫が知らぬ間に紛れ込んでいたり」
磯風「自然災害に見舞われたり」
磯風「そして今もこうして、手に取ったものが奇怪な生き物だったりする…」
134: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:57:05.44 ID:X5Ypwzoq0
磯風「ふ……はは…ははは」
ぐしゃあ!
卵「ミギッ」
ぼと…ぼと…
磯風「……あぁ、そうか。なるほどな」
磯風「浜風の言っていた通りだな」
磯風「この世には、運の良し悪しがある。一発の被弾もないもの、やたらと敵から狙われるもの。非科学的だが、確かに存在する統計上の偏りだ」
磯風「私は戦闘では運が悪いと感じたことはないが…その代わり、その皺寄せがきているのだな…」
磯風「私は…料理の運がゼロなのか…」
磯風「そう…なのか…」
磯風「料理も、海上戦闘も、同じ。ならば、運だって、存在する」
ずるる…ぺたん
磯風「ははは…成る程なぁ」
135: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:57:54.46 ID:X5Ypwzoq0
磯風「なら私は…もしかしたら、何もしないほうがいいのかもしれんな…そのうち、この厨房をいつ使えなくしてしまうかも分からん」
磯風「あぁ。きっとそうなのだ…」
磯風「私は…料理をしないほうがいいのだ…」
磯風「何もかも、浜風の言う通りだな…」
136: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:58:41.77 ID:X5Ypwzoq0
ガチャ
霞「何をシケたツラしてんのよ」
137: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 17:59:31.87 ID:X5Ypwzoq0
磯風「……霞か…」
磯風「もう一度聞くわよ。何をしょぼくれた顔をしてるのよ」
磯風「ふっ…私はもしかしたら、呪われてるのかもしれん…」
霞「そう」
霞「明日にでも、あの子を追い出そうと思っているわ」
霞「あいにく、あの子が帰ってくるのは四日後だけどね」
霞「浜風との仲直りは、済んだ?」
磯風「……」
138: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:01:05.12 ID:X5Ypwzoq0
磯風「なぁ霞」
霞「なによ」
磯風「私が料理することを、どう思う?」
霞「知らないわよ。勝手にすればって言うしかないじゃない。私はアンタじゃないんだから」
磯風「そうだよなぁ…決めるのは、私なんだよなぁ、やっぱり」
霞「で、私の質問にはいつ答えてくれるの」
磯風「……」
139: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:01:44.91 ID:X5Ypwzoq0
磯風「土下座でもすれば、許してくれるだろうか…」
霞「はぁ?」
磯風「もう無理だ…出来る気がしない…どうやら人には、出来る事と出来ない事があるらしい。私には、料理が出来ないようだ…」
霞「……」
磯風「出来るに決まってるとたんかを切って、あらゆる人間を巻き込んで、なんとか形に至れると思ったら、根本から邪魔をされ崩れさっていく…そんなんの繰り返しだ」
磯風「もう訳がわからん…いっそのこと止めてしまいたい……でも、その勇気がない……」
霞「……」
磯風「あぁ、もう、自分でも何を言っているのか、何を言いたいのかがわからん。頭の中がぐちゃぐちゃで整理が追い付かん……」
磯風「けど、1つだけわかったことがある」
磯風「私は、料理をしないほうがいいかもしれない、と言うことだ…」
140: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:02:57.60 ID:X5Ypwzoq0
霞「……」
ガシッ ぐいっ
磯風「うぉ…かすみ…?」
パアッッッッンッッ!!
磯風「____」
霞「……」ポイッ
どさり!
磯風「いつっ!!…うぅ…」ヒリヒリ…
霞「私、前に言ったわよね。失望させないでって。もう忘れたの?」
磯風「……」
霞「陽炎が言っていたわよ。アンタは何があろうとも変わらない、鉄の信念を持った強い奴だって。その言葉を裏切るの?」
磯風「……っ」
霞「不知火が言っていたわ。アンタは、どんな状況下に立たされようとも、不遜に笑みを携え、仲間を鼓舞し導いてくれると。あの言葉は嘘だったの?」
磯風「…そ…れは…」
141: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:03:47.37 ID:X5Ypwzoq0
霞「どいつもこいつも、アンタの諦めない姿勢を評価してんのよ。でも、今のアンタからは欠片も見出だせないわね」
磯風「…っ!」
霞「なにか下らないことに惑わされて、自分を見失って、余計な思い込みで塞ぎこんでいく。今のアンタは、ただの負け犬よ」
磯風「うるさい…」
霞「何を考えているのかは知らない。でも、アンタは元々、こうと決めたからこそ、料理をやろうと思ったんじゃないの?なら、諦めずに、最後までやり通しなさいよ!」
磯風「だまれ…っ」
霞「そんな惨めに座り込んで、何をしているの?何をしたいの?何を迷っているの?回遊魚みたいにまっすぐ突き進むのが、アンタなんでしょ」
霞「そのせいで色々と被害が出てることくらい、知ってるわよ。けれど止めようとする奴は少なかった。ひとえに、アンタがひたむきに、前を向いていたからよ」
霞「そのアンタが、何を世迷い言を吐いてるの?大勢の人の気持ちを裏切るの?アンタを信じた人達にどう顔向けするつもりなの?」
霞「そんな事、許されないわ。アンタは一生、その巨大過ぎる罪を背負って生きていくつもり?それでも逃げ出すかしら?」
霞「そんな奴だとは思わなかったわ。どうやら私も、まだまだ人を見る目が甘いみたいね」
霞「一生這いつくばっていなさい。クズが!」
磯風「黙れええええええぇぇぇっっ!!!」ガシャ―ン!!
142: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:04:35.35 ID:X5Ypwzoq0
磯風「私だって!諦めたくない!諦めたくないさ!どこまでもどこまでも進みたい。許されるなら、もう止めろと言われるまで突っ込みたいさ!」
磯風「でも!…でも、ダメなんだ…どうしたって成功しないんだ…理由が分からないんだ…分かっているのは、ただ一つ。私が、料理に関しては絶望的に運が悪いということだ…」
磯風「そんなの、どうしようもないじゃないか!地震も、野菜の中身に虫が紛れ込んでたって、そんなのどうしたって防げないじゃないか!どうやって包丁の刃こぼれを予見する!?砂糖と書いてあるタッパーに、ロウがイタズラで混じってたって、そんなの知らない!知るわけがない!」
磯風「こんなことばっかりだ…もう…たくさんだ…私だって人並みに料理が出来るようになりたいよ…司令に料理を振る舞いたいよ…」
磯風「けどっ!!…まるで、神様がそんなことさせないと悪さをしているようだ…」
磯風「私はどうすればいいんだ、霞!!?どうして成功しない!どうして失敗する!一体何が私には足りないんだ!?」
磯風「もう…これ以上は、どうしようもできないよ…」
磯風「いつ厨房を壊してしまうかもわからん…そうなれば鎮守府全体の士気に関わる…」
磯風「もう私には…これ以上続ける勇気も気力も…根こそぎ奪われてしまったよ…」
143: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:05:28.55 ID:X5Ypwzoq0
霞「……」
霞「アンタに何が足りないかなんて、そんなの私は知らないわ」
霞「私も嗜む程度に料理は作れるけど、そんなところにまで運を持ち出し始めた大バカ者は、アンタが初よ」
霞「全ては実力。運なんて関係ない。アンタはまだ、料理を作れるだけの実力を身に付けていない。それだけの話しだと私は思うわ」
磯風「ならば、私には実力がつかないんだ…」
霞「そんな詰まらない弱音を聞くために、私はここに来たんじゃないわよ」
磯風「では、何のために来た…」
霞「これを見なさい」ペラ
磯風「…?」
144: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:06:18.26 ID:X5Ypwzoq0
磯風「____」
磯風「なんだ、それは」
霞「見ての通りよ」
霞「磯風。浜風に代わり、私が新たな第一七駆逐隊の一人として、アンタを指導するわ」
磯風「はぁ…?なんだ、それは。どういうことだ」
霞「飲み込みが悪いわね。一度で理解しなさいな」
霞「浜風が、一時的な転属願いを、私とあのバカに具申したのよ」
145: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:08:01.34 ID:X5Ypwzoq0
__霞、お願いがあります。
__…はぁ?なにそのお願い。喧嘩売ってんの?
__いいえ。至極全うに、真剣にお願いしています。
__だとしても、私が頷く根拠が見当たらないわね。
__一度は断ると思っていました。でも、なんだかんだで霞は私達を助けてくれます。
__だとしたら、甘く見られたものね。いつから私は便利屋になったの?
__便利屋などではありません。霞は私達の仲間であり、駆逐艦のリーダーです。
__ふん。なら…
__同時に、私達のお母さんでもあります。お母さんは、手のかかる子供を助けてくれますよね。
__アンタ達が勝手に呼んでるだけでしょうが!
146: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:08:33.16 ID:X5Ypwzoq0
磯風「…浜風が…」
霞「アンタ、律儀にあのバカから言われたこと、守ってるんですってね。一七駆逐隊の誰かが、必ず隣にいるようにって」
霞「ただでさえ浜風と喧嘩して、浦風も谷風も常にいるわけじゃないのに、そんなバカな提案をずっと守っているなんてね。言う方もバカなら、守る方もバカ。いや、それ以上ね」
霞「けれど私は、アンタのそのバカな姿勢を買うことにしたわ」
霞「登場人物、揃いも揃ってみんなバカ。ちょうど良いんじゃない?同じあほうなら踊らにゃ損損、ってね」
磯風「…お前も私も司令も、みんな同じバカ、か…」
霞「そうよ」
霞「だから、磯風」
霞「私はアンタに協力するわ」
147: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:09:15.87 ID:X5Ypwzoq0
磯風「……」
磯風「アイツが…」
霞「ん?」
磯風「浜風が、何故、そんなことを…アイツ、
私が料理を作ることに、ものすごく反対していたのに…」
霞「あぁ、それね」
霞「…」
霞「言うなって釘を刺されてるけど、まぁいいわ。別に独り言を禁じられているわけじゃないしね」
霞「いい。一度しか言わないわよ」
148: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:10:23.92 ID:X5Ypwzoq0
霞「______」
霞「_____」
磯風「……」
磯風「えっ」
149: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:10:54.84 ID:X5Ypwzoq0
―鎮守府 連絡通路―
ダッダッダッダッダッ!!
磯風「はぁ…はぁ…はぁ…!」
__霞。私は、磯風にひどい言葉を浴びせてしまいました。
__ずっと努力してきた大切な仲間の想いを、踏みにじってしまったのです。
磯風「はぁ…はぁ…浜風!」
__私は磯風の隣に立つ資格を持ちません。たとえ磯風が許してくれても、私は立てません。
磯風「違う!浜風!」
__いつかは、立てる日が来るかもしれません。でも、それは少なくとも今ではないのです。磯風が始めたこの戦いに、磯風が勝利をおさめるまでは、私は彼女の敵でなければいけないのです。
__そう。磯風が打ち取るべき敵の総大将の首は、私です。私が磯風を助けるわけにはいかないのです。
150: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:11:40.33 ID:X5Ypwzoq0
―鎮守府正面海域 桟橋前通り―
磯風「浜風!私は!」
__彼女は挫けない。何があっても。どんなに打ちのめされようとも、必ず這い上がってくる。泥沼に立たされようとも、あがきもがき手を伸ばし、必ず舞い戻ってくる。
__私はそんな磯風を、誇りに思います。
磯風「許しを乞うのは、私の方だ!浜風っ!!」
__私はそんな磯風を、助けてやりたいのです。
磯風「私はお前を口汚く罵ってしまった!お前はなにも悪くないんだ!!」
__私はそんな磯風が、大好きです。
磯風「私は、誰よりもお前が大切なのに!それなのに!」
__だから、私に出来ることは、これしかありません。
磯風「お前はずっと、私の隣で立ち続けてくれたのに!」
151: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:12:10.20 ID:X5Ypwzoq0
__彼女の遠征・出撃・哨戒任務など、あらゆる長期時間を求められることを、私が引き受けます。
__これなら、磯風はほとんどの時間を料理にあてがえる。
__私の知らないところで、少しずつ上達させていくことでしょう。
__次に会うときを、私は楽しみにしています。
__どういう結果になろうとも、きっと、笑顔で、勝利の冠をその手に掲げているでしょう。
磯風「…ッッ!!」
磯風「浜風えぇっ!!!」
152: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:13:04.75 ID:X5Ypwzoq0
―鎮守府正面海域 桟橋―
そろそろと沈みゆく夕陽は、その場の誰をも等しくオレンジ色に染め上げていく。
川内「よぅっし!それじゃあ哨戒任務、行くよぉ!夜戦だ夜戦だぁっ!」
穏やかな波の揺さぶりを主機が伝え、誰しも今日の任務の平穏無事を予感する。
千歳「哨戒なんですから、夜戦はしませんよ。それより、お酒を飲みながらの任務も、たまには悪くないと思いません?」
いつもと変わらない日常。いつもと変わらない仲間。明日もそこに居てくれるという保証は誰にも出来ないのに、変わらぬ未来を心に抱き、敵を掃討する。
浜風「……」
その願いが叶うならば、どんなに幸せだろう。どんなに嬉しいだろう。共に戦った仲間が、誰しも欠けることなく、酒を酌み交わせるならば。
陽炎「浜風?ボーッとして、どうしたの?」
浜風「あ、いえ。なんでもありません、陽炎」
不知火「おおかた、磯風の事を考えていたのでしょう」
陽炎「あはは♪そうだよねぇ、それしかないっか!」
浜風「ふふ…まぁ、そうです」
人は時に、大切な人と衝突する。
けれどそれは、決裂の争いではない。より相手を理解するための、より相手を思いやるための、一つのコミュニケーションだ。
避けて通ればいいのではない。共に考えるのだ。
霰「三人とも…そろそろ…出る…」
陽炎「はーい♪まぁ、磯風なら心配いらないわ。なんてったって、私の姉妹艦なんだから!」
不知火「その通りです。さ、いきますよ」
夕陽は今日も、変わらずに美しい。
浜風「…えぇ。行きましょう」
153: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:14:23.03 ID:X5Ypwzoq0
―桟橋―
磯風「ぜぇ…はぁ…」
桟橋に着いた磯風は、海に落ちんばかりの勢いで、身を乗り出した
磯風「はぁ…はぁ…」
浜風が、いる。もうだいぶ遠いが、確かに声が届く距離に、浜風が。
磯風「浜風…」
なんと声をかけるつもりだ。
すまなかったと、詫びるのか。
それとも、ありがとうと、叫ぶか。
いいや。そうではない。
海に出向く仲間にかける言葉など、決まっているではないか。
無事に帰ってこい。だ。
磯風「浜風ええええええぇぇぇぇぇッッ!!!!」
かつてないほどの大声量で、磯風はその名を呼ぶ。
浜風「っ!?」
浜風は、振り向いた。
154: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:15:18.63 ID:X5Ypwzoq0
驚愕の顔を浮かべながらも、彼女は徐々に理解した。磯風が出撃などしなくて済むよう浜風が懇願したと、磯風本人に気付かれたことに。
磯風「浜風ええええええぇぇぇぇぇ!!」
もう一度叫ぶ。浜風がその声を聞き逃すはずがあるまいに、磯風は大きな声で呼び続けた。
だから、浜風は手を振った。優しい笑顔で。眩しい笑顔で。夕陽でも隠すことのできない、懐かしい笑顔で。
その笑顔を、磯風が見逃すはずがなかった。
磯風「無事に…帰ってこいよおぉぉぉっ!!」
浜風「アナタの料理を、楽しみにしていますよっ!!」
二人はいつまでもいつまでも、大きく腕を振り続けた。
暁の水平線へと、その姿が消えるまで、いつまでも。いつまでも。
磯風の瞳から、海水ではない一筋の水が流れ、その頬を濡らした。
155: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:16:01.54 ID:X5Ypwzoq0
曙「なにナレーションみたいに喋ってんのよ」
漣「てへ♪」
156: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:16:41.65 ID:X5Ypwzoq0
―桟橋―
磯風「うぅ…浜風ぇ…グス…」
曙「なに泣いてんのよ。今生の別れでもあるまいし」
漣「ていうかむしろ、死亡フラグ立ちまくりでちょー縁起わるーい!って感じ?」
磯風「浜風は…私のことをずっと考えていてくれたんだ…」
磯風「それなのに私は、自分のことばかりで…」
曙「…はぁ」
曙「なら、どうすれば浜風に償いができるか、アンタはもう分かってんでしょ?」
磯風「……あぁ」
157: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:18:16.30 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「ここで挫けるわけにはいかない。私は何度でも、何度でも立ち上がる」
磯風「浜風に、美味い料理をくわせてやる!絶対に!」
霞「はん。やっと元に戻ったわね」
漣「お、かすみん!」
霞「全く遅いったら。とことん手間のかかる奴ね」
霞「まぁでも、これでようやく本格的にエンジンかかってきたんじゃない?」
磯風「あぁ。島風以上のスピードを出せるさ」
霞「暖気に戦艦以上の時間かけたんじゃ、意味ないわね」
磯風「ふっ。任せておけ。島嶼も波頭も捻り潰し、全てを追い越してやるさ」
霞「……そ」
158: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:19:07.83 ID:Bc1ZfOz/0
霞「言っておくけれど、私は前言撤回する気はないわよ」
霞「タイムリミットは、浜風が帰ってくるまで。この四日間のうちに、なんとかするわよ」
磯風「あぁ、よろしく頼む!」
霞「丁度良いわ。曙、漣。アンタたちも手伝いなさい」
曙「はぁ!?」
漣「なんだかよくわからないけど面白そー!是非手伝わせて!」
曙「ちょっと!なに勝手に決めてんのよ。やらないわよ!」
霞「四日間だけ。その間でいいから磯風を手伝いなさい。その後になってから、いくらでも磯風を罵ればいいわ」
曙「コイツに悪口なんて全然利かないじゃない!」
霞「それはアンタが優しいからよ。本能的にブレーキをかけてんの」
曙「意味わかんないし!」
159: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:19:50.49 ID:Bc1ZfOz/0
霞「必要以上に関わらない。けれど困っていれば、助ける。それがアンタだと思ったけど…違った?」
曙「違うし!あーもう、なんなのよ!」
磯風「ふふ。まぁまぁ曙。たった四日ではないか。有意義な時間を過ごすぞ!」
曙「やらないわよ。つーかなんでアンタが偉そうなの!?」
霞「…仕方ないわね」
霞「(…フライパン)」ボソッ
曙「!!?」ビクゥ!
霞「(鳳翔さんが困ってたわよ…愛用のフライパンが見当たらないって。あれ、アンタ達の仕業でしょ?)」
曙「な、な、な、!?」
霞「(アンタだけのせいにしてやっても…いーんだけど?)」
曙「…っ…っ」プルプルプルプル…
160: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:20:17.10 ID:Bc1ZfOz/0
曙「だっーーー!!わーったわよ!やりゃーいーんでしょ、やりゃー!?」
磯風「やってくれるのか?ありがとうぼのぼの!大好きだーっ!」ギュムゥ
曙「抱きつくなー!暑苦しいいぃっ!!」
漣「漣も大好きだよ、ぼのぼのーぅ!!」ギュウ
霞「私も大好きよ。ぼのぼの」
曙「むがーーーーー!!」
161: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:21:09.26 ID:Bc1ZfOz/0
磯風の料理修業メニュー ラストオーダー
―食堂―
磯風「遂にこの日が来た…」
磯風「泣いても笑っても最後だ…」
磯風「浜風はもう帰ってきているらしい。あとは…全身全霊をかけるだけだ」
磯風「よし、やるぞ!」ガララ
162: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:22:02.01 ID:Bc1ZfOz/0
―厨房―
霞「来たわね」
磯風「うむ…。…あ」
浜風「……」
磯風「は、浜風。…よく、無事に帰って来てくれた」
浜風「……」ツーン
磯風「浜風…私はお前に謝らなければ…」
浜風「私たちは今、喧嘩の真っ最中です。口はききません」
磯風「む。そうくるか…」
霞「ほら、込み入った話しは後にしなさい。もう一人来たわよ」
提督「よぉ、お邪魔するぞ」
磯風「おぉ。司令ではないか!」
163: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:22:49.48 ID:Bc1ZfOz/0
提督「風の噂で、誰かさんがとんでもなく美味い料理を作ると聞いてな。こうして誘われた次第だ」
磯風「むぅ。プレッシャーをかけるつもりか?しょうがない奴め」
提督「ははは!まぁ、気負いせず普段通りにやってくれればいいさ」
霞「ほらほら、アンタはさっさと料理の準備をしなさい。二人はテーブルに座ってて」
霞「磯風の料理を食べるのは、アンタ達二人だから。不味くてもちゃんと食べるのよ」
霞「さて…皆!そろそろ始めるわ!」パンパン!
磯風「へ?みんなって、誰が…」
鳳翔「それは、私達のことですよ」
磯風「!」
164: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:23:32.10 ID:Bc1ZfOz/0
鳳翔「こんにちは、磯風さん。この二週間、よくめげずに頑張りましたね」
鳳翔「そんな貴女に、プレゼントです」スッ
磯風「……こ、これは…包丁?」
鳳翔「はい。丁寧に磨いであります。材料が変質することはありません」
鳳翔「これで一つ、貴女を邪魔しようとする凶運は消えましたね」
磯風「!!」
磯風「霞!お前…」
霞「鳳翔さんだけじゃ、ないわよ」チラ
大鯨「えへへ♪私も僭越ながら、ご協力しました」
磯風「大鯨…お前も…」
165: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:24:26.35 ID:Bc1ZfOz/0
大鯨「私は材料を、見させてもらいました。全ての野菜をチェックしてあります。虫一匹たりとも混入していませんよ。安心してください♪」
磯風「そうか…その節は、迷惑をかけたな…」
大鯨「いえいえ。それでですね、その野菜を育ててくれたのが…」
早霜「私達です…」
瑞穂「選りすぐりを提供させてもらってますよぉ」
磯風「早霜、瑞穂…。お前たちには、大切な事も学ばせてもらったな。感謝する」
瑞穂「ふふ♪磯風さんがどんな料理を作るのか、楽しみにしてます」
早霜「その材料を使って…何を作るかというと…」
漣「はいはーい♪漣たちが、レシピを書きました!切り方と炒め方を、一から書いてあるからね♪」
曙「ったく…なんで私がこんな面倒なことを…」
磯風「漣、曙…二人にも、いろいろと世話になったな」
曙「はん!失敗したらしょーちしないわよ」
鳳翔「あぁ、そうだ。磯風さん、曙さん、漣さん♪」
磯曙漣「「「っ!!」」」
166: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:25:13.24 ID:Bc1ZfOz/0
鳳翔「あまり強く言うつもりはありませんが…」
鳳翔「フライパンは、お三方の出世払いということに、しておきますね♪」ニッコリ
磯風「ご、ごめんなさい…」
漣「反省してます…」
曙「……すみませんでした…」
鳳翔「はぁ。まぁなんにしても、怪我がなかったのなら、よかったです」
鳳翔「でも今日は、そんな事にはならないでしょう。ね?」
明石「はい!コンロまわりは全て点検しました!パーツ単位で怪しい部分は交換済みですので、誰が使おうとも事故を起こさせません!」
夕張「水回りと空調設備も、全部見たからね。いくらでも使っちゃって!」
磯風「明石さん、夕張。二人には毎度毎度、苦労をかけさせてしまった。申し訳ない」
明石「あっははは!有害廃棄物がどれだけ発生したことやら。私としては、結構刺激のある日々でしたけどねぇ」
夕張「むしろたくさん部品をいじれたから、楽しかった側面もあったなー。それも今日で終わりかと思うと、寂しいやら嬉しいやら…」
霞「何言ってんのよ。喜ばしいに決まってるわ」
夕張「だよねー♪」
167: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:25:55.65 ID:Bc1ZfOz/0
瑞鳳「お砂糖とかお塩とか、調味料類も全部確認したよ。ちゃんとラベルに書いてある通りのものが出るからね。安心してね」
磯風「瑞鳳。お前から教えてもらったもの、常に活きているよ。今日まで世話になったな」
瑞鳳「うん♪大変だったけど、磯風ちゃんがすごく一生懸命だったから、私も熱が入ったよ。けっこう楽しかった!えへへ♪」
磯風「うん…ありがとう、瑞鳳。ありがとう、みんな。私はこれほど多くの人間から助けを施してもらっていたのだな…本当に、感謝する!」ペコリ
霞「頭あげなさい。キャラに似合わないことをわざわざしなくていいのよ」
霞「アンタは傲岸不遜に腕を組んでいればいいの。それでこそ、磯風よ。ねぇ二人とも?」
浦風「そうじゃ。ウチらが好きにやっていたことじゃからのう。そこまでする必要はないよ」
谷風「そうそう!それに、まだ終わったわけじゃないからねぇ。全部を締め括るのは、料理を作り終わってからでいいんでないかい?」
磯風「うん…そうだな」
磯風「よし、それでは始める!」
168: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:26:24.31 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「……」
磯風「(ここから先は、一人だ。皆の想いを糧にして、作るだけ)」
磯風「(落ち着こう…手足も震えていない…絶対にやれるさ…)」
磯風「……」
磯風「(だが1つだけ…気掛かりがあるとすれば)」
磯風「(やはり、私の料理での運の悪さだろうか…)」
169: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:27:17.01 ID:Bc1ZfOz/0
浦風「いけるよ…頑張るんじゃ、磯風…!」
谷風「頼むよぉぉぉ…!」
浜風「……」
霞「……」
170: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:28:11.55 ID:Bc1ZfOz/0
霞「磯風」
磯風「…?なんだ」
霞「そこのバカが言っていたでしょ。一七駆逐隊の誰かが隣にいることって。一人で始めるんじゃないわよ」
磯風「あぁ…では霞。頼めるか?」
霞「私はやるつもりはないわ」
磯風「え?では、浦風か谷風に」
霞「ダメよ。二人も今日ばかりは、アンタを遠くから見守る役目に就かせている」
磯風「んーと。では…誰が?…まさか…」
浜風「……」
霞「残念でした。違うわよ」
磯風「えぇ?いや、でも…」
霞「まぁ最後まで聞きなさい」
171: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:29:13.66 ID:Bc1ZfOz/0
霞「アンタ、言ってたわね。自分の運がどうのこうのって」
霞「あまりにバカバカしい話だと今でも思っているわ。けれど、それがもしも本当にアンタを縛り付けているのなら…」
霞「それに対応させる為には、私達ではいけない」
霞「この一品だけは、失敗させるわけにはいかないのよ。アンタに自信を付けさせる意味でもね」
霞「だから、ここの皆に言い回って、可能な限り不確定要素を排除することにつとめた」
霞「そして、アンタの凶運を撃ち破る最後の弾丸を用意したわ」
霞「アナタの隣に立つ一七駆逐隊は、この子よ」
霞「入ってきなさい!」
ガチャ
磯風「……」
磯風「え」
磯風「なぜ、お前が?」
172: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:29:59.13 ID:Bc1ZfOz/0
雪風「はい!雪風、お呼ばれしました!頑張りましょう、磯風さん!」
173: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:31:14.83 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「雪風…」
雪風「はい!よろしくお願いしますね、磯風さん!」
霞「そこのバカが言っていたのは、一七駆逐隊であること。でも、"現役"であれとは一言もなかった。そうよね?」
磯風「その通り…だが」
霞「だから、"元"一七駆の雪風でも、何も問題はないはず。そうでしょ?」
提督「あぁ、異論はない」
提督「いやぁ、済まなかったな。別に破ったところでお咎めは何もなかったんだが…磯風は俺の言うことを、ずっと守っていたんだな」
霞「本当よ。アンタのせいで余計にややこしくなったったら」
174: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:32:42.30 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「……」
雪風「磯風さん。磯風さんが、今まですっごく、すーっごく頑張ってたこと、霞さんから聞きました」
雪風「だから雪風、磯風さんを邪魔する悪いものを、全部防ぎます」
雪風「磯風さんを、お守りします!」
雪風「雪風は、磯風さんの隣で見ているだけです。何も手出しはしません」
雪風「でも磯風さんは、一人ではありません。雪風も、他の皆さんも、磯風さんを見守っています!」
雪風「だから、磯風さん。頑張ってください!」
磯風「___っ」
磯風「ゆき…かぜぇ…」ブワァ…
175: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:33:18.22 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「うん…がんばる…私、頑張るからなぁ…」ギュウ
雪風「はい!絶対に、ぜーったいにお守りします!」ギュウ
磯風「あぁ…ありがとうなぁ…」
雪風「えへへ♪磯風さんの手、すっごく温かいです!」
176: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:34:23.14 ID:Bc1ZfOz/0
霞「(正直、これに関しては二の足を踏まざるをえなかった)」
霞「(言うなればこれは、チート。少し汚い手法よ)」
霞「(本当に磯風のためになるのか、胸を張ってお奨めできるやり方でないのは間違いない)」
霞「(けれど、採択したわ)」
霞「(大事なのは、成功させること。この一品を完成させることができれば、たとえ今後また失敗続きだとしても、彼女は絶対に自信を失うことはない)」
霞「……」
霞「さぁ、私にできることはもうないわ」
霞「幸運の女神様なら、くだらない世迷い言を叩き切ってくれるはず」
霞「雪風。アンタの口づけの力を見せてやってちょうだい」
177: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:35:22.89 ID:Bc1ZfOz/0
磯風は台所の前に立つ。雪風と共に。
磯風「ここまで…長かった」
ザルの中に積まれた野菜を一つ、手にとる。それは大きなナスだった。
磯風「思えば、お前から私の修業は始まったな。お前も待ちくたびれたろう」
それをまな板の上に横たえる。どことなく磯風に似たそのナスは、一瞬だけ日の光を受けて、きらりと反射した。
ナスから始まり、ナスで終わらせる。おたんこなすの自分にできる、最後の戦い。
鳳翔から譲り受けた包丁で。
曙と漣に書いてもらったレシピで。
早霜と瑞穂に作ってもらった野菜で。
大鯨に野菜を選別してもらって。
明石と夕張に点検してもらった台所で。
瑞鳳に確認してもらった調味料で。
そして、霞に。浦風に。谷風に。今もこうして雪風に。
そして、浜風に。
自分の想いを見せるのだ。
178: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:36:38.81 ID:Bc1ZfOz/0
磯風は、料理を作り始めた。
179: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:37:36.13 ID:Bc1ZfOz/0
?二十分後?
磯風「……」
コトッ
浜風「……」
磯風「できた…ぞ。ラタトゥイユ…というのか」
磯風「私が作った…試食してみてくれ」
提督「浜風。先に食べるか?」
浜風「…いえ。同時に食べましょう」
浜風「では…頂きます」
提督「いただきます」
浜風「…」パクッ
提督「…むぐむぐ…むぐむぐ…」
180: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:38:27.19 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「……」
磯風「…どうだ?」
浜風「……」ヒョイパク…ヒョイパク…
提督「どうだ、浜風?」
浜風「……もぐもぐ…」ヒョイパク…ヒョイパク…
磯風「浜風?」
浜風「…だまっへへふらはい。まだたふぇふぇまふ」モグモグ
磯風「う、うむ…」
181: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:39:26.57 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「もぐもぐ…ごくん…」
浜風「……」コトッ
磯風「どうだ?」
浜風「……」
浜風「……」
浜風「まだまだ味が濃いです」
磯風「う、そうか…」
浜風「まったく。自分は薄味が好みと言っておきながら、なんなんですか」ガシッ
浜風「……」ヒョイパク…ヒョイパク…
磯風「(司令の分の皿も…)」
浜風「……もぐもぐ」ヒョイパク…ヒョイパク…
182: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:40:23.51 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「……」コトッ
浜風「ご馳走さまでした」
提督「お粗末さまでした」
磯風「…」
浜風「……」
浜風「…」
浜風「ずっと、見てきました。隣で」
磯風「!」
浜風「だから、どれだけアナタが努力してきたのか、手に取るようにわかります」
浜風「頑張りましたね、磯風」ニコ
183: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:41:02.97 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「…浜風っ!」ウル
浜風「ですが、これで満足してもらっては困りますよ」
浜風「まだまだ人に対して出せるレベルには達しておりません。材料も、大きさにばらつきがあります」
浜風「だから」
浜風「アナタにはまだまだ、隣に立っている人間が、必要のようですね」
磯風「!」
浜風「いえ、別に!?私である必要なんて…どこにもありませんが…というか私は、追い出された身ですし…」
浜風「ですが…」
浜風「磯風さえよければ、また私が、アナタの面倒を見てやってもいいです」
184: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:41:33.79 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「??っ!」
磯風「は、浜風!」
浜風「なんですか?」
磯風「私はお前に…言わなければならないことがある…聞いてくれ」
185: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:42:22.62 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「私は、お前にひどい言葉を浴びせてしまった。お前を追い出してしまった」
磯風「お前が居なくなってから、多くの人が私を助けてくれたよ。懇切丁寧に切り方、炒め方、味付けを、私が余計な事をしないように見張りながら、教えてくれた」
磯風「本当に、ありがたいことだ。感謝の言葉が見当たらないよ」
磯風「でもっ!」
磯風「やっぱり、違うんだ。どこか違うんだ。優しくも、厳しくも、私を想って皆は教えてくれた。でもやっぱり、心のどこかで、一抹の寂しさを感じていたように思う」
浜風「……」
186: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:43:07.77 ID:Bc1ZfOz/0
磯風「失ってから、大切なものに気が付けた」
磯風「浜風」
磯風「私には、やはりお前が必要だ。お前の助けが必要だ。お前の手で助けてほしい」
磯風「お前の声が聞こえると落ち着く。お前の顔を見ると安心する。隣に立っていてほしい。側にいてほしい!」
磯風「ずっと、ずっと!私を見ていてくれ。私の手を握っていてくれ。私の料理を食べていてくれ。私と同じものを心に刻んでくれ!」
磯風「正直なところ…お前に謝罪の言葉か、感謝の言葉か、どちらを送ればいいのかわからない。どちらも必要かもしれないし、どちらも必要じゃないかもしれない」
磯風「でも、たった一つだけ、絶対に言えることがある」
磯風「私は、浜風!お前の隣に立っていたい。お前の声を聞きたい。顔を見たい。激励も、叱咤も、罵倒も、お前の全てが愛おしいんだ!必要なんだ!」
磯風「だから浜風!」
磯風「私の隣に…帰って来てくれ!」
187: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:43:51.20 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「……」カアアァァ
浜風「よ、よくもまあ、そんな言葉を恥ずかしげもなく堂々と…」
浜風「まるで、プロポーズではありませんか…」マッカッカ
浜風「皆が見ているというのに…」
磯風「私は、伝えたい想いを伝えただけだ。そこに恥じらいを感じた事などない」
浜風「えぇ、そうでしょうとも。アナタはそういう人です」
浜風「真っ直ぐに前を見据え続ける…そんなことは、とうの昔から知っています」
浜風「はぁ…」
188: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:45:07.35 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「……」
浜風「浦風。谷風」
浦風「なんじゃ?」ニヤニヤ
谷風「いやぁ、良い景色だねぇ」
浜風「まったく…」
浜風「丁度いいですね。アナタたちも、一蓮托生です。逃げることは許しません」
浜風「一七駆逐隊のみんなで、料理をしましょう」
浦風「もちろんえぇよ。でもその前に、な?」
谷風「返事はまだかーい?」
浜風「…返すのですか?」
浦風「あったりまえじゃ!」
189: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:46:03.70 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「えー…えーと、磯風」
磯風「あぁ」
浜風「まぁ…私も、色々と言いたいことはあります。伝えたい気持ちがあります。でも、わざわざ今言わなくても、いずれアナタに伝わるでしょう」
浜風「余計な事は…たくさん言ってますけど…まあいいです」
浜風「真っ直ぐに視線をぶつける磯風には、やはりストレートに言葉をぶつけるのがいいですね」
浜風「……」
190: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:46:47.19 ID:Bc1ZfOz/0
浜風「…喜んで。アナタの隣に帰ってきましょう。磯風」
191: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:47:43.65 ID:Bc1ZfOz/0
?????????????
192: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:48:49.23 ID:Bc1ZfOz/0
磯風の料理修業メニュー 開店準備
―食堂―
赤城「へぇ?。それで、磯風さん。あんなにはつらつとしているんですねぇ」
霞「そうよ。まったく本当に、手が掛かってしょうがなかったわ」
赤城「なんにしても、元気が戻ったならよかったです。一時期は本当に心配してたんです」
霞「あぁ、地震でスクランブルエッグを落としたんですってね。それは確かに、運が悪いと思うわ」
赤城「今も磯風さんは、料理を?」
霞「当然よ。失敗はまだまだするけど…三回に一度くらいは、成功するようになったわ」
わーはははは!見ろ浜風!ジャガイモが全て煮崩れたぞ!
これのどこが肉じゃがですか!?あ、ていうかこれ、豚肉じゃなくて鶏肉を使ったんじゃ…
まぁまぁ、なんか別の料理と思えば、まだまだ食べられるよ
はは!臨機応変も大切だねぇ
霞「…ま、聞いての通りよ。失敗したって、うちひしがれることはもうないわ」
赤城「ホントですねぇ」
193: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:52:40.86 ID:Bc1ZfOz/0
霞「ま、私がこれ以上口出しする必要はないわね」
赤城「寂しいですか?」
霞「まっさか。お役御免できてせいせいしたわ」
赤城「うふふ♪さすがは駆逐艦のお母さんですねぇ。お疲れ様でした」
霞「……それ、空母の間でも広まってんの?」
赤城「はい。ぴったりだと思いますよ」
霞「……ふん」
赤城「それじゃあ、磯風さんの勝利を祝って、乾杯といきましょうか」
霞「…そうね。ついでだから、今あの子が作ってるもの、食べていきなさい。世にも珍しい料理が出てくるわよ」
赤城「そうですね。是非、ご相伴に預からせていただきます♪」
霞「それじゃあ…愛すべきバカの、磯風に」
赤城「乾杯!」
 チンッ!
194: 天津風大好き連装砲くん ◆E7idzvHwo6 2016/10/02(日) 18:56:08.07 ID:Bc1ZfOz/0
終わりです
ここまでありがとうございました
話の中では雪風を元・一七駆逐隊としていますが、史実の方では未来の一七駆逐隊ですね。そこが変更点です
依頼を出してきます
またいつか、別のお話を投稿できればと思います
195: 以下、

十七駆はもちろん霞ちゃんママもカッコいい…
199: 以下、

瑞鳳がかわいくて萌え死んだ
200: 以下、
いい話でした
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/test/read.cgi/news4ssnip/1475382867/
艦隊これくしょん -艦これ- 「駆逐艦 磯風 -Ceylon Tea Party-」 フィギュア
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