男「俺の能力は“体育の日”!」女「少しは勤労してよ!」back

男「俺の能力は“体育の日”!」女「少しは勤労してよ!」


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1:
― アパート ―
男「腕立て伏せ開始!」
男「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」グッグッグッ…
女「あのさ……」
男「ふんっ?」グッ…
女「筋トレもいいけど、少しは勤労してよ!」
               
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2:
男「してるだろ? たまにお金をもらってスポーツの指導したり……」
女「あんなの不定期すぎて、勤労っていわないわよ!」
男「まあまあ……」
女「“勤労感謝”」
男「ぐおっ!?」ズシッ…
女「あたしの能力“勤労感謝の日”は、働いてる人を応援することができるけど――」
女「まともに働いてないとそうやって、プレッシャーに押し潰されることになるわ」
男「ぐおおおお……!」メリメリ… メキメキ…
               
          
4:
男「ふんっ! ふんっ! ふんっ!」グッグッグッ…
女「おおっ、押し潰されながらも腕立て伏せを続けるなんて、さすがね!」
女「だったらもっと重く――」
男「や、やめてくれ!」
男「よぉーし、ジョギングにでも行くかな!」サササッ
女「ったく、すぐ話をはぐらかすんだから……」
               
          
5:
― 町 ―
男「えっほ、えっほ」タッタッタ…
女「えっほ、えっほ」タッタッタ…
男「よくついてこれるな、俺のペースに」タッタッタ…
女「そりゃ、四六時中あんたみたいな運動バカと一緒にいればね」タッタッタ…
男「――ん?」
男「なんだ、あの三人組は?」
DQN「…………」
ピッチャー「…………」
幼女「…………」
               
          
6:
DQN「テメェら二人……“能力者”だな?」
男「……だとしたら?」
DQN「いくぜっ!」ブオッ
男「うわっ!?(いきなり殴りかかってきた!)」サッ
女「ちょっと! なにすんのよ!」
男「いや、ここは俺一人で十分だ!」
DQN「おいおいナメられたもんだな! だったらタイマンといこうじゃねェか!」
               
          
7:
DQN「オレの能力は“成人の日”!」
DQN「成人式で暴れるワルどものように、暴れることができるのさ!」ブオッブオッ
男「くっ……!」
DQN「だりゃッ!」ブオンッ
バキッ!
男「ぐはっ!」
男(なんてパンチ力だ……並の不良とはケタが違う!)
男(だったら俺も能力を使うしかないようだな……)
男「俺の能力は“体育の日”! 自分の肉体を強化し、さまざまな体育技を操れる!」
               
          
8:
男「前転!」ゴロゴロ…
DQN「うわぁっ!?」ズデェンッ
女「うまい! 暴れる相手の足元に転がることで、足を引っかけて転ばせたわ!」
DQN「ぐ……!」
ピッチャー「次は私が相手だ」
ピッチャー「私は大豆をいくらでも生み出し、相手に投げつけることができる!」パァァァ…
ピッチャー「160km/hの豆まきを喰らえッ!」ビュオッ
バチィッ!
男「あぐっ……!」
男(このピッチャーの能力は“節分”だな……!)
               
          
9:
ピッチャー「そら、そら、そら!」ビュオッ
男「キャッチ!」パシッ
ピッチャー「なに!?」
男「砲丸投げの要領でお返ししてやる! どりゃ!」ビュオオンッ
ドゴォッ!
ピッチャー「まさか、ピッチャー返しされるとは……ッ!」
幼女「うふふ、あたちの出番のようね」
幼女「ひな人形たち、出てらっしゃーい!」ヴンッ
女(この子の能力は、雛人形を具現化させて、敵を襲わせる能力ね! おそらく“桃の節句”!)
               
          
10:
お内裏様「いくぜよ! おヒナ!」ギュンッ
お雛様「オッケェェェイ!」ギュンッ
ザシュシュシュッ!
男「ぐああっ……!(隙のないコンビネーションだ……!)」
男(――だが、攻撃力は低い! ならばいっそ雛人形は無視して突っ切る!)タタタッ
幼女「きゃっ!」
男「さあ、近づいたぞ」
幼女「はやい……!」
男「目の前で高ラジオ体操をされたくなかったら、大人しく負けを認めるんだ」
幼女「うふふ……あたちたちの負けね」
女(あれ? 案外あっさり負けを認めたわね)
               
          
12:
DQN「へへへ……さすがあのジイさんが見込んだ男だ」
ピッチャー「頼む、我々の力になってくれ!」
男「やっぱり、俺の力を試してるだけだったか……」
女「やっぱりって、どうして分かったの?」
男「彼らの攻撃は強力ではあったが、殺気がなかった」
男「それに本気でもなかった」
男「たとえば、あの女の子の雛人形はもっと大勢の人形を出せたはずだ」
女「なるほど……そういえば三人官女や五人囃子は出さなかったものね」
DQN「全てお見通しだったってわけか……すげえなアンタ」
女(これでちゃんと勤労してくれればねえ……)
               
          
13:
男「ところで、力になってくれ、というのは……?」
DQN「実は今、ある集団が恐ろしい計画を立てていやがるんだ」
女「恐ろしい計画ってなによ」
ピッチャー「日本を滅ぼす計画だ」
男女「日本を滅ぼす!?」
DQN「で、それを察知したオレたちのリーダーであるジイさんは、能力者を集めてるってわけだ」
女「うーん……ちょっと信じられないわ。いくらなんでも突飛すぎるもの……」
男「いや……どうやらその“ある集団”の連中がお出ましのようだ」
女「え!?」
紳士「フッフッフ……」
詐欺師「クックック……」
               
          
14:
ピッチャー「――なぜ!? どうしてお前たちがここに!?」
幼女「あたちたち、ナイショで行動してたのに!」
紳士「我らのボスは、君たちの行動などとうにお見通しだ」
詐欺師「ククク、ここで貴様ら五人まとめて片付けてやろう」
詐欺師「ワタシの能力は詐欺師らしく“エイプリルフール”!」
詐欺師「ワタシが嘘をつくと、それは全て実現するという恐ろしい能力――」
女「詐欺師ですってぇ……?」
               
          
16:
女「真面目に働きなさい! “勤労感謝”!」
詐欺師「ぐええっ!?」ズシッ…
詐欺師「あがっ! ぐげぁぁぁぁぁっ! たしゅけてぇぇぇぇぇ!」メキメキゴキメキ…
DQN「なんてエグイ能力だ……!」
ピッチャー「あれは全身骨折してるな」
幼女「すっごーい!」
男「――さて、お前の相手は俺がしてやる! かかってこい!」
紳士「フフフ、ありがたく先手を取らせてもらうよ」
               
          
17:
紳士「“昭和空間”!」ズアアアッ
男「なんだ……!? 辺り一面が白黒になった……!?」
紳士「もちろん色が変わるだけではない」
紳士「この空間にいる者は皆、“昭和の懐かしさ”に心を奪われることになる!」
男「ふうん」
紳士「なにィ!? なぜ効いてないのだ!?」
男「残念だったな……俺は平成生まれだ! 懐かしみようがない!」
紳士「しまったァ!」
男「平成ジャンプキック!」バッ
ドゴォッ!
紳士「ぐおっ! この私の“昭和の日”の能力が、通用しない、とは……」
紳士「昭和は遠くなりにけり、か……」ガクッ
               
          
19:
紳士「…………」ピクピク…
詐欺師「…………」ピクピク…
男「ふうっ、なんとか倒せたな」
ピッチャー「しかし、情報が漏れてるということは、他にも刺客が来る可能性がある!」
DQN「オレたちの秘密のアジトに案内するぜ!」
男「頼む!」
女「やれやれ、とんでもないことに巻き込まれちゃったわね」
               
          
20:
― 老人ホーム ―
男「ここがアジト……?」
女「ただの老人ホームじゃない」
DQN「こんな場所が秘密のアジトだなんて誰も思わねェだろ?」
ピッチャー「リーダー、新しい協力者を連れてきました」
老人「ほっほ、よく来て下さった」キコキコ…
イケメン「はじめまして」
男(この車椅子に乗ったおじいさんが、リーダーか!)
               
          
21:
老人「ワシがこのレジスタンスのリーダーじゃ。能力は“敬老の日”」
イケメン「私は副リーダーです。能力は“文化の日”です」
男「はじめまして。俺の能力は“体育の日”です」
女「あたしの能力は“勤労感謝の日”よ」
男「ところで、ある集団が日本を滅ぼそうとしていると聞いたのですが?」
老人「うむ……さっそく説明を始めよう」
               
          
23:
老人「実は“大晦日”の能力者が、日本中から能力者を集め、能力者集団を結成しておるんじゃ」
イケメン「彼らの狙いは日本を滅ぼし、新たな国を建設することです」
女「なんですって!?」
男(さっきの“エイプリルフール”と“昭和の日”の使い手も、その一味だということか)
老人「だからそれを知ったワシらも、奴らに対抗するため能力者を集めているというわけじゃ」
イケメン「能力者には、能力者でなければ到底太刀打ちできませんからね」
男「なるほど……」
               
          
25:
イケメン「今現在、私たちの戦力はこの通りです」
【リーダー】老人(敬老の日)
【副リーダー】イケメン(文化の日)
【メンバー】DQN(成人の日)、ピッチャー(節分)、幼女(桃の節句)
男「これに俺たち二人を加えるってわけか」
女「ちなみに敵の戦力は? すでに二人倒してるけど……」
イケメン「ほとんど分かっておりません。ですが、我々よりも多いのは確かでしょうね」
男「厳しい戦いになりそうだな……」
赤子「おぎゃあ、おぎゃあ……」
男「赤ん坊がいますけど、あの子は?」
老人「ああ、あの子は――」
               
          
27:
ドガァンッ!!!
登山家「ガハハハ! こんな場所をアジトにしていたとはな!」
サーファー「ハッハー! 探したよ!」
幼女「きゃぁぁぁっ!」
DQN「なんだと!? また刺客……!?」
ピッチャー「なぜこうも、こちらの行動が読まれてるんだ!?」
女「こいつらにはあたしの能力は通じそうにないわね……」
登山家「オレたち二人は、組織の中で最も大規模な攻撃をすることが可能だ!」
登山家「この老人ホームもろとも、貴様らまとめて遭難させてくれるわ!」
               
          
28:
登山家「喰らえ! 地面を自在に隆起させられる“山の日”!」
ドゴォンッ!!!
DQN「うわぁぁぁぁぁっ!」
サーファー「ハッハー! 海水を自在に召喚できる“海の日”!」
ザバァァァッ!
幼女「きゃあああっ!」
ピッチャー「ぐわああああっ!」
女「こいつら……なんて攻撃力なの!? ちょっとした災害じゃない!」
サーファー「隆起した山に突き上げられ、荒れ狂う海に流されるがいいさ!」
登山家「オレたち山海コンビは無敵だ! ガハハハハッ!」
               
          
29:
ザバァァァァァ……
サーファー「ハッハーッ! これでこのレジスタンスは全滅だ!」
登山家「ボスからたっぷりと褒美をもらえるな!」
男「――あいにくだったな。みんな俺の手で避難させているぞ」
サーファー「な、なにっ!?」
登山家「貴様、どうしてこの海と山の中を自在に動けるんだ!?」
男「俺は登山も水泳も得意だからな……」
登山家「そうか……貴様、さては“体育の日”の能力者だな!?」
男「その通り!」
登山家「面白い! 貴様のクライミング&スイミングとオレたちの山と海、どっちが上か勝負だ!」
               
          
30:
登山家「まずは“山の日”の能力で、オレたち二人の位置を高くする!」
ゴゴゴゴゴ……!
サーファー「そして、高くなった位置から波を流す! いや、これは波なんてもんじゃない! 滝だァ!」
ザバァァァァッ!
サーファー「海水に呑まれて、溺れちまいなァ!」
男「なんのこれしき!」ザバッザバッ
サーファー「――ウソだろ! 登ってくるだと!?」
登山家「信じられん! まるで鯉の滝登りだッ!」
               
          
31:
男「うおおおおおおおおおおおおおっ!!!」ザバッザバッ
サーファー「水量を増しても、どんどん登ってくる!」
登山家「お、おのれえっ!」
男「水面から飛び上がってぇ!」ザバァッ
男「とああああっ! ドルフィンキック!」
バキィッ! ドゴォッ!
サーファー「ぐはァ!」ドサッ…
登山家「けるんっ……!」ドサッ…
男「ハァ、ハァ、ハァ……こんなにキツイ運動をしたのは久しぶりだ……」
男「だが、これでひとまず落ち着ける――」ゾクッ…
男(――なんだ、この殺気は!?)
               
          
32:
ボス「フハハハハ……」
男(こいつ、とんでもない威圧感だ……! それにどこかで見たことがあるような……)
ボス「ほう……サーファーと登山家を倒したのはキサマか」
男「な、なんだお前は……!?」
ボス「キサマ如きに名乗る必要はない……除夜百八連打!!!」ズァァァァッ
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
男「ぐはぁっ……!」ドザァッ
男「なんて強さだ……!」ガクッ
女「ウソでしょ!? アイツがやられちゃうなんて!」
               
          
35:
ボス「能力者が幾人か集まっているようだが……」
ボス「カスのような能力者をいくら集めても……所詮この私の……“大晦日”の敵ではない」
DQN「なんだあのヤロウは……!」
幼女「あれがてきのボス……!?」
ピッチャー「あの“体育の日”の彼が、相手にもならないなんて……」
イケメン「…………」
老人「みんな、下がっておれ! ここはワシがやる!」
ボス「フハハハ……ここでキサマの首を取り、一気に決着をつけてやろう」
               
          
36:
老人「これまで温存していた力を――全て使う!」
老人「“敬老の日”! ハァァァァァッ!!!」ムキムキッ
ボス「ほう……確か“敬老の日”は他者からの敬意を集めて、パワーアップする能力だったな?」
老人「ゆくぞっ!」
ボス「除夜百八連打!!!」ブァァァァッ
老人「亀の甲より――年の攻ッ!!!」グワッ
ズガガガガガガガッ!
ボス「ぐっ……! なんというラッシュ!」ヨロッ…
ボス「さすがだな……。老いたとはいえ、キサマの部下全員より、キサマの方が強いだろう」
ボス「――だが!!!」
               
          
37:
ボス「ゆく年くる年、という番組を知っていよう……」
ボス「年寄りは逝く運命なのだァッ!」ブワオッ
バキィッ!
老人「ぐほっ……! パワーが集まらん……!」
ボス「今この国は年寄りを敬う人間が減っているからな……まったく愚かな国だ」
ボス「つまり……キサマでは私には勝てん! この国の滅亡は避けられぬ運命なのだ!」
老人「おぬしは……まだ自分の妻が死んだことを引きずっておるのか……」
ボス「そんなことは関係ない」
ボス「私は日本が嫌いだから滅ぼす。それだけだ!」
老人「だが、おぬしの妻は……ワシの娘はおぬしにちゃんと……」
ボス「もういいッ! 妻の話を聞くとイライラしてくる!」
ドシュッ……!
               
          
38:
老人「が、は……っ!」ガクッ
ボス「老いたな……義父上」
ボス「登山家とサーファーがやられたのは予定外だったが、まあ問題ない」
ボス「この老人さえ倒してしまえば、残る能力者は烏合の衆だからな。さらばだ!」
女「逃がさないわ! “勤労感謝”!」パァァァ…
ボス「フッ、感謝してくれてありがとう」
女「えっ!? あ、あなた……マトモに働いてるの!?」
ボス「今の日本で私ほど働いておる者はおるまいよ」
ボス「行くぞイケメン!」バサァッ
イケメン「はっ!」
DQN「――な!?」
               
          
40:
DQN「ちょっと待てや! イケメン、テメェ“向こう側の人間”だったのか!」
イケメン「ええ、そうですよ」
ピッチャー「どうりでこっちの動きが筒抜けだったわけだ……!」
イケメン「ですがこのレジスタンスが崩壊した以上、もはやスパイでいる必要はありません」
イケメン「これからは堂々とボスのために働かせてもらいます」
イケメン「おっと、せっかくだからお土産をもらっていきましょうか」クイッ
女「!」ピクピクッ
女「イケメンさん……好き!」タタタッ
男「えっ……!?」
イケメン「あなたの恋人を私のモノとさせていただきますよ」
男「ふ、ふざけるな! 俺たちは確かによくケンカするけど、ちゃんと愛し合っている!」
男「それなのに……どうして!?」
イケメン「どうして彼女が私に惚れたのか、教えてあげましょうか」
男「なぜだ……!?」
イケメン「不倫は……文化です」ニヤ…
男「これが……“文化の日”の能力……!」
               
          
42:
イケメン「ハーッハッハッハッハ……!」
女「イケメンさん、愛してるわぁ〜」
男「待ってくれ……待ってくれぇぇぇ……!」
DQN「どうやら、オレたちはここまでらしいな……」
ピッチャー「ああ……もうゲームセットだ。命が助かっただけでも良しとしよう」
幼女「うえぇん……」
               
          
43:
男「――くそっ!」ガンッ
男「ボスには完敗して、恋人を奪われて……俺はなんて無力なんだ!」
老人「うう……」
男(まだ息がある!?)
男「しっかりして下さい!」タタタッ
老人「いや……ワシはもうダメ、じゃ……。死ぬ前に伝えておきたいことが……」
男「大丈夫! “体育の日”は応急処置もできるんです!」
男「包帯を巻いて、湿布を貼って、マキロン塗って、オロナイン塗って……と」グルグルペタペタ
老人「おお……どうやら一命を取り留めたようじゃ……」
               
          
44:
老人「じゃが……もはやワシにあのボスに対抗する力は残っておらん……」
老人「DQNやピッチャーたちも、戦意喪失(リタイア)してしもうた……もうこの国は……」
男「だったら……俺がボスを倒します!」
老人「なんじゃと……?」
男「あいつらのアジトは……一体どこにあるんですか! 教えて下さい!」
老人「そうじゃったな、おぬしは恋人をさらわれてもおるんじゃな」
老人「あやつらは……国会議事堂におる!」
男「え!?」
               
          
45:
男「ってことは、まさか……」
老人「そう、ボスの正体は“内閣総理大臣”なのじゃ!」
男(どうりで見たことあるわけだ……! 超有名人じゃないか!)
老人「しかし、今や国会議事堂は機能しておらず、あやつのアジトと化しておる」
老人「それも……幾人もの能力者が待ち受ける“魔窟”じゃ」
老人「いくらおぬしが強くても、死ににいくようなものじゃ……それでも行くのか?」
男「もちろんです」
老人「ならば止めまい……この国の命運、おぬしに託す……!」
               
          
46:
― 国会議事堂 ―
秘書「総理……いえ、ボス。我々に逆らうレジスタンスの強さはいかがでしたか?」
ボス「ふん、しょせんはカス集団よ。他愛ないにも程がある」
ボス「しかし……もしかすると残党どもがやってくる可能性がある」
ボス「念の為、残っている部下と最高幹部≪ゴールデンウィーク≫どもを守備につかせておけ」
秘書「かしこまりました」
               
          
48:
― 国会議事堂前 ―
男「ここが……敵の本拠地。邪悪なオーラで満ちている……」
男「だが、今は前進あるのみ! クラウチングスタートだ!」ザッ
すると――
女子高生「ここは通さないわ! アタシの“バレンタインデー”の能力でね」
飴細工職人「“ホワイトデー”の恐ろしさ、思い知るがいい……」
ヒゲ親父「ほっほっほ、キミに“クリスマスプレゼント”をあげよう! むごたらしい死をねェ!」
男(いきなり三対一か……!)
               
          
49:
女子高生「いくわよぉ! チョコレートで誘惑してあげる!」
飴細工職人「この飴のように溶かしてやる……」ドロ…
ヒゲ親父「ほっほっほ、メリークリスマス! 今日はお肉でパーティーだ! むろんキミの肉でねェ!」
男「そうはいかない!」
DQN「ちょっと待ったァ!!!」
               
          
50:
DQN「こんな下っ端どもはオレたちが相手するぜ!」
男「お前たち、戦意喪失(リタイア)してたんじゃ……」
ピッチャー「たしかに一度は諦めたけど、さすがに君一人に日本の運命を丸投げするほど薄情じゃないさ」
幼女「さ、ここはあたちたちに任せて!」
男「……ありがとう!」タタタッ
DQN「よっしゃ! あの三人はオレらでブッ倒すぞ!」
女子高生「ちっ、とんだ邪魔が入ったわ!」
飴細工職人「まあいい……この三人を飴にしてから、ゆっくり後を追うとしよう……」
ヒゲ親父「トナカイの鼻のように真っ赤にしてあげよう! 血でねェ!」
               
          
53:
― 国会議事堂・内部 ―
男(ボスはどこにいるんだ……)タッタッタ…
男「!」
弁護士「よくここまで来れたものだ。ボスに逆らう愚か者よ」ゴゴゴ…
植木屋「しかし、吾輩たちと出会った以上、貴様には死あるのみ」ドドド…
少年「ボクたち≪ゴールデンウィーク≫が遊んであげるよ!」ズズズ…
男(こいつらのオーラ……! さっきの三人とは比較にならない!)
男(おそらくはボスの部下で最強の三人組に違いない……!)
               
          
54:
弁護士「ではまず小生から……」
男(なにが来る!?)
弁護士「破アアアアアッ」ドガガガガガッ
男「これは……拳法!?」
弁護士「小生の能力は“憲法記念日”! 憲法とは……イコール拳法!」
弁護士「“力の象徴”なのだよ!」シュバッ
バキィッ!
男「がはぁっ!」ドサッ
男(く……! 今の突き……見えなかった!)
               
          
57:
植木屋「吾輩の能力は“みどりの日”……植物を自在に操る!」ウネウネウネ…
グルグルグルッ!
男「ぐぅぅっ……! ツタに絞めつけられる……!」ギリギリ…
少年「アハハッ、いいザマだね、お兄さん!」
少年「トドメはボクの“こどもの日”の能力で刺してあげるよ!」
少年「無数の鯉を召喚して――お兄さんにぶつけてあげる!」カァァァァァプッ
ズガガガガガガガッ!!!
少年「アハハハ、お兄さんの体がこいのぼりみたいに吹っ飛んだよ! ゲームオーバーだ!」
植木屋「ふん、あっけなかったな」
弁護士「しょせんは三流能力者……小生たち≪ゴールデンウィーク≫の敵ではない」
               
          
58:
男「ま、まだだ……!」ググッ…
少年「え!? コンティニューするつもり!?」
男「俺も一度お前たちのボスに敗れて、“超回復”しているからな……」
男「だけどもう、二度と負けるわけにはいかない!」
植木屋「しぶとい奴め……」
弁護士「ならばドイツ式拳法“ワイマール拳法”で、あの世に送ってやる!」ブオッ
男「反復横跳びでかわす!」ササッ
弁護士「なにっ!?」
男「ラジオ体操、弐式ッ!」イッチニーサンシ
ズドォッ!!!
弁護士「が、がはっ……!(幻のラジオ体操第二を、ここまで使いこなせる、とは……)」
ドサッ……
               
          
60:
植木屋「よくも弁護士を! この植木バサミで切り裂いてやる!」ジャキジャキ
男「ハサミには拳ッ! ボクシングパンチ!」
ドゴォッ!
植木屋「ぐげっ……!」ドザァッ…
男「さあ、残るは君一人だ……」
少年「ふん、あの二人がいなくたってお兄さんぐらい倒せるさ!」
男「逆上がり!」グルンッ
少年「す、すっげぇ〜! かっこいい〜!」
男「スキあり! 首筋チョップ!」トンッ
少年「うーん……」ドサッ
男(華麗な逆上がりは……いつだって子供の憧れだ!)
男(さあ先に進もう!)
               
          
61:
先に進むと――
男「――お前はッ!」
イケメン「あなたの進撃はここまでです。ボスのもとには行かせませんよ」
男「“文化の日”の能力でお前自ら戦うのか?」
イケメン「まさか! 文化人は戦いなどしません」
イケメン「文化人はいつだって、代わりの人間を戦わせるのです」サッ
女「イケメン様はあたしが守る!」
男(やはり彼女が相手か……!)
               
          
62:
イケメン「さあ、あなたの“勤労感謝の日”で、ヤツを倒すのです!」
女「はいっ!」
イケメン「そうしたら、私はあなたのヒモになってあげますよ!」
女「……ヒモ?」ピクッ
イケメン「え?」
女「あんた、イケメンっていったっけ?」
イケメン(あれ!? おかしい! ――彼女にかけた洗脳が解けている!?)
女「ちゃんと勤労しなさい! “勤労感謝”!」ズンッ
イケメン「ぐわあああああああああ!!!」ベキゴキメキボキ…
男「…………」
               
          
63:
女「あれ? あたし……なんでこんなところに?」
男「イケメンの“文化の日”の能力で、ヤツの手下にされてたんだよ」
女「えっ、ホント!? 全然記憶にないわ……あたしとしたことが情けない」
男「まあ、結局イケメンは君が倒しちゃったけどね」
女「ふうん……で、残る敵は誰なの?」
男「おそらくあとは……ボスだけだ!」
女「よっしゃ! なら二人でボスを倒しましょ!」
男「ああ、日本は俺たちが守るんだ!」
               
          
64:
― 国会議事堂・本会議場 ―
バァンッ!
男「ボス! お前の野望もここまでだ!」
女「覚悟しなさい!」
ボス「ようこそ……≪ゴールデンウィーク≫やイケメンを破るとは大したものだ」
ボス「どうやら私はキサマらを見くびっていたようだ」
               
          
65:
男「戦う前に聞いておきたい」
男「お前はなぜ、この国を滅ぼそうとする?」
ボス「……かつて私は愛する妻と二人暮らしをしていた」
ボス「だが、妻が妊娠しこれからという時に、私は不況でリストラされ、生活が苦しくなった……」
ボス「必死に職を探すも、なかなか再就職のメドは立たず、満足に食べられない日々が続いた」
ボス「生活保護を申請しようとしても、どうせ大して貧乏じゃないんだろと決めつけられ、却下され……」
ボス「やがて妻は出産する寸前に衰弱死し……私は怒り狂い、気づいたら総理大臣になっていた!」
ボス「そして誓ったのだ……私は総理という地位と“大晦日”の能力を使ってこの国を滅ぼすと!」
女「滅ぼした後はどうするつもりよ!」
ボス「むろん、新しい国を作るのだ。秘書の“建国記念の日”の能力でな」
男「アンタの境遇には確かに同情すべきものがある……だが、国を滅ぼすなんてのは許せない!」
男「勝負だ!」
ボス「来るがいい……!」
               
          
66:
ボス「除夜百八連打ァ!」ブァァァァァッ
ドガガガガガガガガッ!
男「なんの!」
男「ラジオ体操・零式!」ゴーロックシチハチ
ズガガガガガガガガッ!
ボス「ほう、やるではないか! 老人ホームの時とはまるで別人だ!」
男「超回復と強敵たちとのバトルで、俺も成長したからな!」
               
          
67:
ボス「だが、“大晦日”の能力はこんなものではないぞ」
ボス「右手に紅(ファイア)!」ボワァッ
ボス「左手に白(スノウ)!」シンシン…
ボス「紅白歌合戦(ファイアスノウ・ブリザード)!」ビュゴァァァァァッ
男「俺はスキーだって得意なんだ!」シャァァァァァ
ボス「炎の雪の上を滑るか……!」
男「K点越えキック!」ブオッ
ボス「ふん」ガッ
男(あっさりガードされた!?)
ボス「私は格闘技も得意なのだよ。かつて格闘技は年末の定番だったしな……」
               
          
68:
男「応援ボイス! フレーフレーッ!」フレェェェ
ボス「なんの! レコード大賞!」レコォォォォド
ボス「年越し蕎麦ウィップ!」ヒュババババッ
男「縄跳びの要領で攻略!」ピョンピョンッ
男「ボルトダッシュ!」タタタタタッ
ボス「師走!」タタタタタッ
女「すごい……! まったくの互角だわ……!」
秘書「フフッ、それはどうでしょうか?」
女「――え!?」
               
          
69:
男「ハァ、ハァ、ハァ……」
ボス「嬉しいぞ、私とここまでやり合える能力者がまだいたとはな」
ボス「だが、今は戦いを楽しんでいるヒマはない……本気を出させてもらう」
ボス「煩悩開放!!!」ズアッ
男「な……!?」
ボス「除夜の鐘は煩悩を打ち消しているわけではなく、実際には鐘の中に吸収しているだけなのだ」
ボス「そして今、私はその煩悩を全てこの体に取り入れた!」
ボス「もはやキサマに勝機はない!」ピシュンッ
ドガガガガッ! ガガガッ! ズガァッ!
男「ぐふうっ! ……ゲホッ!」
女「そんな……! あいつがついていけないさなんて……!」
秘書「ボスが本気になった以上、この戦いはもうお終いです」
               
          
70:
ボス「除夜百八連打ァ!」
ドゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!!!
男「が、は……っ!」ドサァッ
秘書「ふふふ、さすがボス……」ウットリ…
女「くっ……だったらあたしも切り札を使うわ!」
女「あたしの全パワーを使って……“勤労感謝”!!!」
               
          
71:
男「!」ドクンッ
ボス「む?」
男「…………」ドクンッドクンッドクンッ
男「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」メキメキメキ…
ボス「な、なに!? この男は定職についてないのに“勤労感謝”!?」
ボス「そうか、戦いを“勤労”と見なすことで、パワーアップさせたのか……!」
ボス「面白いッ! ――しかし、煩悩を味方につけた私には勝てんッ!」
ボス「年を終わらせる“大晦日”のように、キサマの人生と日本を終わらせてくれるわ!」
男「あいにく……そうはならない!」
男「だって大晦日の後には……楽しいお正月が待ってるからな!」
               
          
72:
男「今の俺なら……四年に一度だけ使えるあの奥義をフルパワーで出せる!」ジャキッ
ボス「両手をくっつけて、輪っかの形にした……!?」
男「五輪(オリンピック)!!!」リオッ
ドドドドドッ!!!
ボス「ぐは……! 私の胸に、五輪のアザが……!」メキメキ…
ボス「ごふうっ……やるでは、ないか……“体育の日”……!」
ドザァッ……
               
          
73:
――
――――
ボス「うう……」
秘書「ボス、しっかりして下さい!」
ボス「私は敗れたのか……」
ボス「もはや私に生きる意味はない……いさぎよく忠臣蔵のように切腹を……」
秘書「そ、そんなっ! やめて下さい! あなたに死なれたら、私はっ!」
男「死ぬな!」
女「そうよ、死んで何になるっていうのよ!」
老人「やめるんじゃ……!」
               
          
74:
ボス「お、お義父さん……。なぜ、ここに……?」
老人「この子には……おぬしが必要なんじゃよ」スッ
赤子「だー、だー」キャッキャッ
ボス「この女の子は……?」
老人「ワシの娘の……忘れ形見じゃよ。つまり……おぬしの子じゃ」
ボス「!」ハッ
老人「ワシの娘は死んでしまったが……お腹にいた赤ん坊は生きて産まれることができたのじゃ」
老人「もっともおぬしは娘が死んですぐ失踪してしまったから、気づかなかったようじゃがな」
ボス「そうだったのか……!」
               
          
75:
赤子「だーっ!」パァァァァァ…
老人「おおっ、この子の力で太陽が昇っていく……」
男「まるで初日の出だ!」
女「ホントだ! キレ〜イ!」
秘書「分かりましたわ、この子の能力は……“元日”!」
ボス「“元日”……!」
老人「おぬしは、日本に新しい時代をもたらすこの子を、立派に育て上げねばならんのじゃ!」
ボス「…………!」
               
          
76:
国会議事堂の外では――
DQN「ふぅ、ふぅ、激戦だったがどうにか勝てたぜ……」
幼女「あたち、つかれたぁ……!」
ピッチャー「あの日の出……どうやら国会議事堂での戦いも終わったようだな」
DQN「ああ……オレたちの勝利だ!」
               
          
78:
老人「この子のためにも生きるんじゃ! やり直すんじゃ!」
秘書「私もついていますから! お願いします!」
ボス「ありがとう……」
ボス「私はこの国を立て直す! 総理大臣として!」
女「なんかすっかり蚊帳の外だけど、めでたしめでたしみたいね」
男「ああ……これで日本は救われる!」
男「さあ、ランニングで帰宅だ!」タッタッタ…
女「マジで!? どんだけ体力あんのよ、あんた!」
               
          
79:
― アパート ―
女「今日は本当にお疲れ様!」
男「ありがとう」
男「大変だったけど、おかげでたっぷり報奨金ももらえたし、結果オーライだな」
女「そりゃあ、一国の滅亡を救ったんだもん。あれぐらいお金もらって当然よ」
女「でも臨時収入が入ったからって浮かれないで、ちゃんと働いてよね」
男「うっ……分かってるよ」
               
          
80:
女「でも今日だけは――」
女「ほっぺに“勤労感謝”してあげる」チュッ
男「おお、久々のキス……」
女「じゃあこのまま……夜の“体育”しちゃう?」
男「夜の体育? たしかに夜の方が交通量が少なくてジョギングしやすいな! さあ行こう!」
女「アホかっ!!!」
― おわり ―
               
          
81:
おつ
               
          
83:
乙!!
面白かった
映画化待ってる
               
          
84:
綺麗に終わったな
乙!
               
          
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彡(^)(^)「失礼します、○年○組○○です、○○先生に用があって来ました!」「・・・・・」

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