知らないメルアドからある日メールが来た結果・・・・・back

知らないメルアドからある日メールが来た結果・・・・・


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1:
知らないアドレスからメールが来た。
『アドレス変えました』
これだけの本文。
名前も書かれていない電子の文章。
僕「これは……誰からだろう?」
携帯片手に、首を傾げた夜だった。
pickup
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6:
アドレスからは、男性か女性か判断が出来ない。
僕「……まあいいか」
連絡が来るんだから知っている人間なんだろう。
僕「明日の会社で聞けばいい……か」
携帯の電源を切って、そのまま眠りについた。
知らない人からのメール……ただそれだけだ。
4:
よぅ、つかまえてシリーズの人か?
楽しみに支援させてもらうぞ
7:
『……あ、僕ちゃん』
『よう僕。サッカーやろうぜ!』
ここは……小学校?
いや、何だか景色が違う。
緑のフェンスの向こうには、紅葉が舞っていて……そのフェンス寄りかかる形でサッカーゴールが置かれている。
僕「ああ、これは夢なんだ」
周りでは、小学校時代の友人が笑っている。
笑いながら……僕が合流するのを待っていた。
8:
ピピピピ ピピピピ ピピピピ
僕「……」
携帯電話からのアラーム音で、僕は気だるく目を覚ました。
僕「……昔の夢を見るなんて。懐かしいなあ」
地元を離れた今では、昔の友人に会う事はない。
ちょっとだけセンチメンタルになってしまった。
9:
僕「……っと、もうこんな時間か」
しかし数秒もすれば僕の頭は現実……電車に乗る時間に引き戻されて行く。
僕「じゃあ、いってきます」
誰もいない部屋に挨拶をして、僕は朝日の中を歩き出した。
見知らぬメールの事なんて、もう僕の頭の中にはなかった。
10:
僕「おはようございます、っと」
ニ十分程電車に乗って、僕はいつものタイムカードを押す。
僕「……」
あとはただ黙々と仕事をこなすだけだ。
お昼休みまでは四時間程、集中していれば短いものだった。
12:
後輩「先輩〜、お昼行かないんですか〜?」
僕「ん……ああ、もうそんな時間?」
後輩「もう、先輩は真面目すぎますよ〜」
甘えたような声で、小さくクスッと笑う彼女。
大学時代からの後輩で同じ会社に入社した……それだけの関係。
後輩「ささっ、一緒にご飯行きましょう?」
グイッと僕を引っ張る、白く細い腕。
短い髪と小さな体がとても可愛らしい、そんな子だ。
13:
後輩「さ、何食べます〜?」
僕「……刺身定食」
後輩「おとといもそれでしたね。昨日はカツ丼で、それの繰り返し」
僕「いいんだよ、飽きないんだから」
後輩「そんなんじゃあ栄養偏っちゃいますよ? も、もしよかったら私がお……」
店員娘「いらっしゃいませ。また来て下さったんですね」
言葉を遮るように、お店の子が僕たちのテーブルまでやって来た。
14:
後輩「あ……ぅ」
僕「やあ、こんちわ。また来たんだよ」
店員娘「ふふ〜、最近毎日ですね。仲良くお二人で」
若くて愛想のいい彼女の笑顔。
職場ではけっして出会う事のできないこの顔を見るのが、僕は好きだった。
僕「ははっ」
後輩「むぅ〜……」
店員娘「ふふ、では何にしますか? 今日はお刺身ですか?」
メニューのローテーションも、彼女にはお見通しだった。
16:
後輩「……むぅ」
うどんをすすりながら、後輩は終始不機嫌だった。
後輩「先輩って、よくここ来ますよね?」
後輩「あの子の事狙ってるんですか〜?」
後輩「いや、まあ可愛らしい人だとは思いますけどぉ……」
醤油を濃いめにかけても、お刺身が分かりづらい。
僕(悪い子じゃないんだけどなあ……)
ははっと苦笑いしながらご飯を食べるのがいつもの僕らだった。
店員娘「……ふふっ」
そしてそれを遠くから見ている彼女も。
17:
後輩「じゃあ先輩、午後も頑張りましょうね〜」
ヒラヒラと手を振って去っていく彼女。
廊下の角を曲がると、その姿は当然見えない。
僕「……ふう」
また仕事か。
「……おかえりなさい。またあの子と昼食?」
僕「……先輩?」
先輩「誘おうと思ったら机にいないんだもの。まあ、予想した通りだったけど……ね」
18:
僕「あ、すいません」
先輩「謝る事なんてないわよ。勝手に誘おうとしてただけだから、ね」
先輩「……やっぱり責任者になると労働時間がねえ……はぁ」
僕「まだ若いのに、大変ですね」
先輩「他人事みたいな言い方ね……ま、結局は他人事か」
僕が先輩に何かを言う事で、その考え方を変えさせる事が出来るんだろうか。
僕にはそんな自信は……無かった。
19:
先輩「……また、時間ができたら誘うわね。じゃあ……」
返事を聞かずに、先輩もまた仕事場へ戻って行った。
僕「……さて、僕も戻るか」
誰に聞かれるでもなく、僕は一人呟いた。
そうしないと働く気が起きてくれない……ような気がする。
僕の悪い癖だ。
20:
僕「……ただいま」
誰もいない一人部屋。
僕はまた帰ってきてしまった。
僕「……」
何もない。
外ではいつの間にか雨が降り始めたらしい、音がする。
21:
僕「……そうだ、メール」
家で休み、気持ちが落ち着くと、僕は思い出したようにメールを開いた。
『アドレス変えました』
……ピッ、ピッ。
き、み……君

だ、れ……誰?
送信。
……。
ピリリリッ、と携帯が鳴りすぐに返事が来た。
22:
『私は私だよ?』
笑顔の絵文字、短い本文にはやはりこれだけ。
からかわれているんだろうか?
僕「でも、私と言っているからには女性……かな」
フッ、と鼻で笑ってしまう。
なぜだか、そのメールから漂う憎めない雰囲気を感じたせいだろうか。
僕『君は、誰?』
笑う絵文字をくっつけて、再び返事をしてみた。
23:
よかろう。支援してやる
24:
つかまえての人か、支援
25:
『今ゲームやってるんだ〜。楽しいよ〜』
次に返ってきたのは、僕の言葉を全く無視したメールだった。
僕「うう〜ん……誰なんだよ一体」
僕『ゲームか〜。何やってるの?』
……愚痴を言った割に、僕は彼女に自然に返事をしている。
なんとなく不思議な感覚だった。
『パソコンゲーム。寝ないでレベルあげ〜』
27:
僕『寝ないでって。オタクっぽい(笑)』
メールで(笑)などと打ったのは、久しぶりな気がした。
『あははっ、冗談だよ。そろそろ眠るね、おやすみなさい〜』
一方的な内容。
本当にわけが分からない。
僕『……いやいや、だから君は誰なんだってば』
……。
もう返事は来なかった、僕が一人だけ夜に取り残された、そんな気がした。
28:
僕「……不思議な子」
布団の中で僕は携帯電話を見つめていた。
数通、名前の分からない彼女からのメールを。
何度かそれを見直して……そのまま眠ってしまった。
このメールを見ているとなぜか落ち着いた……。
僕「まるで子供みたいだな……」
僕は携帯の電源を落として……静かに眠った。
29:
楽しみにしてたぜ
30:
『……あ、猫だよ猫』
『おいでおいで〜』
『……逃げられちゃった』
『くすっ、猫って気まぐれだよね』
『近付いて甘えてきたと思ったら、そっぽ向いて離れたりさ……』
『でもそんな所が可愛いよね〜』
『ああ、可愛いなあ。私も……私も……』
……。
ああ、これは夢だ。
31:
先輩「……えね……え……ねえってば……」
僕「……あ、先輩。お疲れさまです。どうしたんですか?」
先輩「そっちこそどうしたのよ。何だかボケーッとしてるみたいだけど?」
僕「……ははっ、変な夢を見ましてね」
先輩「へえ、君は寝ながら仕事をするのかな?」
僕「い、いえ、その……」
先輩「ふふっ、冗談だよ。それよりご飯行かない?」
32:
僕「まだお昼にはちょっと早くないですか?」
先輩「いいのよ、外回りとでも行っておけば」
僕「いや、僕営業ではないんですけど……」
先輩「上司の命令だからいいの、ほら。さっさと行くわよ!」
いきなりキリッとした顔でそう言われては……僕も社会人としてのスイッチが入るわけで。
僕(たまにはいい、か)
33:
先輩「で、何の夢を見たって言うのかしら?」
カルボナーラを待つ先輩の興味は、いきなりそんな事を聞いてきた。
僕「え、何がですか?」
先輩「さっき言ってたでしょ。変な夢をって……」
僕「ああ……実はですね」
35:
先輩「猫ねえ、猫。それがどうして変な夢なの?」
僕「……さあ?」
先輩「さあって何よ、さあって?」
僕「いや、なんだか不思議な夢で……猫、猫……」
先輩「それって何かの暗示じゃない?」
僕「暗示、ですか?」
37:
先輩「まあ、夢占いかしらね。その夢が気になるなら、何か本能が訴えているのかも?」
僕「んん〜……」
先輩「私はそういうのよく知らないけどね。気になったなら調べてみたら?」
僕「そう、ですね」
ここまでの会話を終えると、注文したパスタがテーブルに置かれた。
先輩「ふふ、じゃあいただきましょうか」
僕「……いただきます」
少し早い昼食だ、今ごろは会社のみんなが席を立ち始める頃だろうか。
僕は少し贅沢な気持ちでいた。
38:
先輩「ごちそうさま」
僕「あれ、もう行っちゃうんですか?」
先輩「ああ、君はゆっくりでいいよ。私はほら……休み早く取った分働かないと」
僕「そんな事言ったら僕だって……」
先輩「君は、上司に連れて来られただけだからいいんだよ。じゃあ、また会社でね」
僕「あ……」
伝票を持って、先輩はお店を出てしまった。
僕(支払いまで……なんだか悪いな)
僕(今度何かお礼をしないとな)
そんな事を考えながら……会社までの道をゆっくりと歩いていた。
39:
僕「猫ねえ……猫」
それだけではない、何かが足りない気がする……が、僕の足は早々に会社に着いてしまった。
まだ休みが終わるまでは数十分、かなり長く残っている。
僕「……まあ社会人だからな」
ブツブツ言いながらも机に戻ると……そこには。
後輩「あ、先輩〜。外回りお疲れ様で〜す」
40:
僕「あれ、どうしたの?」
後輩「先輩とご飯行こうと思ったら、外回りだって言うから……こうして待ってたんですよ?」
僕「いや、外回りはね……」
後輩「あの女部長さんに言われたんじゃ断れないですよね〜」
僕「ん……先輩に聞いたの?」
後輩「はい。廊下でばったり会ったんで、教えてもらいました〜」
僕(……よく言うよ、あの先輩も)
41:
後輩「で、今回はこれ。じゃ〜ん」
ピンクのハンカチに丁寧に包まれた……これはお弁当?
後輩「へへ〜、これ一緒に食べましょう?」
いやあ、さっきお昼ご飯は食べて来てね。
後輩「はいっ、先輩の分。味に自信は無いですけど……が、頑張ったんですよっ!」
とは……彼女の笑顔を見たら言えなくなってしまった。
僕「……いただきます」
二度目の、いただきます。
42:
しえん
43:
後輩「どうですか? 美味しいですか?」
僕「……うん、とっても」
後輩「へへ〜、よかった〜。大学時代から好みが変わってたらどうしようかって思ってたんですけど……」
ミートボールにハンバーグ、卵焼き、ワカメサラダ……。
大学時代に好きなんだよ、と話したような物ばかり。
僕(覚えててくれるもんなんだなあ……)
後輩「ん……美味しい」
44:
大学時代、彼女は僕にお弁当を分けてくれた。
しかし彼女が手作りしたわけではなく……普通に親が作ったお弁当だった。
後輩『む……ぅ』
なぜか彼女が不機嫌になったのが印象に残っている。
それからだろうか、彼女がたまにお弁当を作っては、僕に分けてくれるようになったのは。
僕(そう考えると、後輩のお弁当も……久しぶりだな)
45:
お腹がキツい……。
ざっと二食分が入ったお腹では当たり前か。
後輩「お粗末様。全部……ふふっ♪」
空になったお弁当箱を見て、彼女は機嫌がよさそうだった。
理由はなんとなくわかる。
後輩「明日も作ってきますから! じゃ、またっ!」
元気な彼女……その背中はとってもご機嫌だった。
お腹がいっぱいになった事で得られるエネルギーとは……違うんだろうな。
46:
僕「……夢占いの事、聞いてみればよかったな」
後輩だって女の子だ、もしかしたらそういう事をよく知っていたのかもしれない。
しかし、昼休みが終わった今では……それは何の関係もない事だった。
僕はまた机に向かって、数時間後に家に帰る。
そんないつもの午後が始まるだけだ。
47:
店員娘「あ、おかえりなさい」
帰り道で、いつもの食堂の子とばったり会ってしまった。
僕「ああ、ただいま」
この挨拶は変だっただろうか。
小学生の頃、近所のおばちゃんにおかえりなさい、と言われた時の気まずさを少し思い出してしまった。
店員娘「ふふっ、今日は来てくれませんでしたね」
僕「今日は別のところで、ね」
50:
彼女はしとやかな様子で、お店の外を片付けている。
じゃあ、と別れの挨拶をしようとした……その時。
ニャー。
店員娘「あ、猫ちゃん……」
お店の横から、小さな白い猫がピョコッと顔を出して鳴いた。
僕(猫、か)
少し今朝の夢が甦ってくる。
店員娘「ふふ、可愛いですよね、子猫ちゃん」
僕「猫、好きなの?」
店員娘「ええ。とっても……おいでおいで」
51:
プイッ。
店員娘「あ……嫌われちゃいましたね」
白猫は、路地の奥に消えてしまった。
店員娘「……はぁ、残念」
僕「……猫と言えば、今朝夢を見たんですよ」
店員娘「え、夢ですか?」
僕「ええ。こんな風に誰かと猫を見ていて……」
僕は夢の内容を彼女に話していた。
なぜだろう、少しだけ夢の中の誰かに……彼女が重なって見えたような気がしたから。
そんな些細な理由、だったと思う。
52:
店員娘「へえ……そうなんですか」
僕「ちょっと、気になる夢でしてね。会社の人には夢占いでもしてみればいいって言われたんですが」
店員娘「ちなみにその猫ちゃんはどんな猫ちゃんでしたか?」
僕「……どんなって?」
店員娘「ほら、種類とか色とか」
僕「ん〜……」
店員娘「思い出せませんか?」
僕「……はい」
店員娘「じゃあ猫自体が持つ意味だけで考えてみますか?」
どうやら、彼女は夢占いが出来るみたいだ。
54:
店員娘「結構こういうのはイメージ通りなんですよね」
僕「……と言いますと?」
店員娘「体の通り『しなやかさ』とか。性格の通り『気まぐれ』とか……」
僕(しなやか?)
あまりピンと来ない。
僕「それだったら……」
「ニャ〜」
店員娘「……あ、さっきの猫ちゃん」
「ゴロゴロ」
店員娘「ふふ、いい子いい子」
先ほどまでどこかに消えていた白猫は、いつの間にか。
彼女の足にその体を押し付けては、甘えている。
僕(気まぐれ、ね……)
56:
店員娘「よしよし……いい子いい子」
夕焼けの中、彼女は小さな猫を撫でている。
僕もそろそろ帰らなければ。
僕「教えてくれてありがとうね。じゃあ、そろそろ電車の時間だから……」
店員娘「あ、はい。また来て下さいね、お待ちしてますから!」
ピッと姿勢を直して、僕にお辞儀をしてくれる彼女。
僕「じゃあ、また」
店員娘「はい。あ、また何か夢を見たら教えて下さいね。今度は……」
僕「ん、ちゃんと色と種類を覚えておくよ」
57:
店員娘「はいっ!」
また一つ、元気に返事をする彼女。
僕(……バイバイ)
彼女と、足元の白猫に手を振ってみる。
彼女はニッコリと笑い……猫はまたプイッと何処かへ逃げてしまった。
どうやら、あの白猫は僕に対しては随分と気難しい「気まぐれ」のようだ。
逃げる猫の様子を見て、彼女は苦笑いをしていた。
猫がくっつきたがる理由も、なんだか分かる気がする。
58:
支援せざるをえない
59:
僕「……ただいま」
真っ暗な部屋、独り身だから当たり前か。
家にいる時の生活は、ここ最近何も変わっていない。
シャワーを浴びたらテレビをつけて……冷蔵庫に入っているアルコールと食料を胃に入れる。
つまらない日常だとは思っている。
僕「でもそれが大人なんだからさ……」
いつもこう言って、一日を終える。
今までは、それが「いつも」だった。
でも今は……。
ピリリリリッ。
そのいつもを変えるメールが来るんだ。
60:
『今日のご飯はカップラーメン〜』
相変わらず……変なメールだよ。
僕『ちゃんとご飯食べないと栄養偏るよ?』
これは誰かに言われた台詞だっけ。
まあいい、送信、と。
……。
ピリリリリッ。
『晩御飯はちゃんと食べてるよ〜? お昼がカップ麺だったの。九十円でね、安かったの』
……一体彼女は何を伝えたいんだろう?
62:
僕『へえ〜』
とりあえず一言だけ。
……もう、メールは返ってこないだろうか?
ピリリリリッ。
来た。
『人の心配より自分の心配しなさい。ちゃんとご飯食べてるの?』
心配されてしまった、知らない人なのに。
僕『ちゃんと、食べてますよ〜』
『どうせお菓子とかおつまみでしょ〜?』
ニシシ、と笑う絵文字がムカつくくらいに僕を笑っている。
64:
それでも不思議だ。
やっぱり彼女からのメールは……どこか癒されるような気がする。
『朝もお昼も夜も、ちゃんと食べるんだよ〜?』
僕『……うん』
『くすっ、今日は素直なんだね? じゃあ素直になった所で……おやすみなさい〜』
彼女からの返事が来るのはいつも早かった。
しかも数通でメールが終わるので……いつも何だか、取り残されているような気がする。
66:
メールの彼女がおやすみ、と言ったらメールは終わり。
僕も彼女に合わせるように眠る、それが最近の「いつも」になりつつあった。
まだ彼女とメールをして何日も経っていないけれども……僕は勝手に、それを「いつも」の時間にしようとしている。
僕(……そんな夜でも、いいじゃないか)
夜……。
彼女からメールが来るのは決まって夜だった。
どうして夜なんだろうか?
それを考える前に……僕の意識はまた夢の中に飛んでいった。
68:
後輩「はい、先輩あ〜ん」
僕「い、いや……会社でそれは恥ずかしいって……」
後輩「いいじゃないですか。周りに誰もいないんですから〜。ほらほら〜」
僕「あ、あ〜……」
先輩「邪魔してゴメンね。お二人さん」
ナゲットを口に入れようとした瞬間……背後から尖ったような先輩の声がした。
後輩「っ〜……ぱくっ」
僕の前に差し出しされていたナゲットは、折り返すように後輩の口に運ばれる。
後輩「むぅ……」
モグモグと、不機嫌に口を動かしている。
69:
先輩「ふふ」
そんな様子を見て、先輩は含み笑いをしていた。
僕「何か用事ですか?」
先輩「ああ、たいした事じゃないんだけどね。これ」
僕「……これは書類ですか?」
数枚、A4用紙に印刷された書類を渡される。
先輩「うん。目を通して、ちょっとまとめてくれればいいから。大丈夫?」
僕「まあ、これくらいの枚数ならすぐにでも……」
先輩「あ、あああっ……ち、ちょっと待った!」
僕「……?」
なんだろう、珍しく先輩が慌てている。
70:
僕「ど、どうかしたんですか?」
先輩「い、いや……その、ね」
チラリと目線が後輩の方に向いた。
後輩「?」
先輩「ほ、ほら。今はお昼休みだから……ご飯の時間を削ったらもったいないでしょ?」
先輩「それに急ぎの仕事じゃないから……ね? 後輩さんもそっちの方がいいでしょ?」
後輩「……ふふっ、お気遣いありがとうございます」
先輩「ね?」
僕「まあ、先輩がそう言うなら……」
71:
先輩「じ、じゃあお邪魔虫は消えるから。ごゆっくりね!」
早足で、先輩はその場から消えてしまった。
後輩「……へへっ、いい人だね」
僕「ああ、うん。そうだね」
後輩「じゃあ続き続き、はいあ〜んして?」
言われるままに口を開けて、僕は卵焼きを頬張った。
僕(先輩、どうかしたのかな……?)
後輩「美味しいですか?」
目の前の彼女の笑顔には、適当に何かを答えた。
多分、美味しいとは言ったんだと思う。
72:
終業のベルが鳴る。
さて、今日の仕事の様子なら残業無しで帰る事が出来るのだが……。
僕「あとは先輩に頼まれた分だけか」
今日は数枚余計に書類がある。
僕「まあ、やっちゃうか」
一枚、二枚と書類を捲ってみる……が。
僕「ん……」
最初のニ、三枚こそ仕事の書類(と言っても作業が必要な物ではなく、自分のPCから確認をとればいいだけの物)だったのだが……。
74:
wktk
77:
残りの数枚は、仕事とは全く関係ない……。
僕「夢……占い?」
これはもしかして先輩が?
とりあえず、その書類に目を通してみた。
僕「……なになに、猫が出てくる夢は」
『白猫は希望、黒猫は何かが起こる前触れかもしれません……』
『しかしその黒猫が甘えてくる夢ならば、それは好機が訪れる前触れです』
『基本、猫の夢は気まぐれを表すので何かどう変化するかはわかりませんが……』
78:
僕「先輩、仕事の合間にこんな物を印刷してくれて……」
よく見ると『白猫』『黒猫』などのキーになりそうな単語にマーカーが引いてある。
……先輩のきっちりとした性格は、占いの紙一枚にもしっかりと滲み出ていた。
僕「……ん、何か最後に書いてある」
『流し読みだから必要な情報じゃなかったらゴメンなさいね。またご飯に行きましょう。 先輩』
丁寧な字で、一言添えてある。
僕「先輩……」
79:
……。
先輩「……私のバカ」
先輩「お弁当持ってくるなら、お昼なんて誘えないじゃんか……」
先輩「変な事、書かなきゃよかったかな〜……」
先輩「……ハァ」
先輩「ああ、まだお仕事もあるんだっけ……うん、頑張ろう」
先輩「ご飯……一緒に食べられるなら、それだけで……」
先輩「なんてね。さ、お仕事お仕事〜っと」
先輩「ハァ……」
夜の会社に、彼女小さなため息は尽きなかった。
……。
82:
ピリリリリッ。
僕「ん、来たか」
『面白いテレビ、やってるよ〜』
そのチャンネルなら、ちょうど今合わせている所だ。
僕『見てるよ。ウサギ可愛いね』
『あ、見てたんだ。可愛いよね〜、でも私は猫のが好き〜』
猫……。
僕『話は変わるんだけどさ、ちょっといい?』
それを聞いて、彼女に話してみようと思った。
猫の事や……夢占いの事を。
84:
『夢占いか〜。猫、猫……』
僕『女の子なら、そういうのも詳しいかなって思ってさ』
『あんまりわかんないや〜。でも猫は大好き!』
僕『そっか、白猫と黒猫どっちが好き?』
『三毛猫っ! じゃあ寝るね、おやすみっ!』
僕「……」
猫大好き。
今日の彼女とのメールでわかったのは、それだけ。
癒されるけども……。
僕「やっぱり……もどかしいな」
僕『……おやすみ。また明日ね』
86:
もどかしいと思いながら、僕は彼女におやすみのメールをした。
これでまた、明日の夜まで彼女から連絡は来な……。
ピリリリリッ。
来た。
『ニャ〜』
僕「……」
おやすみと言っても、メールをくれる事はあるみたいだ。
僕『ニャー』
『可愛い可愛い〜。じゃあ、おやすみ』
……やっぱり、彼女からのメールは何だか癒されてしまうんだ。
90:
不思議だった。
名前も顔も知らない、そんな人物と毎晩メールをして……。
僕「なに癒されてるんだろうな……」
もう一度メールを見直してみる。
僕(無邪気? それとも子供なだけ?)
……彼女の事がよく分からない。
僕(女の子とメールするのも……学生の時以来かな。当時は何を話していたっけな)
僕(……ああ、ダメだ。俺、彼女の事知りたくなってる)
93:
僕(ああ……聞けばいいんだ。それだけだ)
眠い目で、僕は携帯見る。
白い光が暗がりに慣れた目には……少し眩しく感じた。
眠気があったせいだろうか、起きている時より素直に……真っ直ぐな文章を作る事が出来た。
『君の事をもっと知りたい』
……送信完了、の文字が出た辺りで僕は眠りに落ちていった。
94:
電車の中で、僕は再び携帯に目を通す。
深夜の三時十二分……彼女からメールが返って来ていた。
気付いたのは朝だったが、そんな時間でも彼女はメールを返してくれるらしい。
そして肝心の内容は、一行。
『眠れない(笑)』
95:
後輩「先輩〜。先輩〜」
僕「ん、今日はちょっと早いね? まだお昼には……」
後輩「ごめんなさい。今日はお弁当無いんですよ〜……ガスコンロが故障したみたいで……」
僕「ああ、そうだったんだ」
後輩「本っ当に……ごめんなさい……」
深々と頭を下げる彼女。
ん〜、まるで自分が後輩を叱っているように見える。
周りの視線が、僕たちに集まっている気がした。
96:
仕事から帰ったら読もう。
97:
僕「き、気にしないでいいから。ほら、久しぶりに食堂に行こうよ」
後輩「あの食堂ですか〜……ぅ〜……」
僕「ダメかな?」
後輩「一緒なら、ダメじゃないですけど……」
98:
僕「よし、じゃあ行こうか」
後輩「え、でもまだ時間が……」
僕(一刻も早くここから逃げ出したいんだよ……ほら)
言葉に出さないまま、僕は外に向かって歩いて行く。
後輩「あ、ま、待って下さいよ〜!」
後ろから……子犬みたいに彼女が僕を追いかけてくる。
たまには、こうして歩くのも……うん。
「いつも」と何だか違う毎日。
99:
店員娘「あ、いらっしゃい。お久しぶりですね」
僕「やあ」
後輩「こ、こんにちは……」
店員娘「メニュー決まったら言って下さいね……あ、は〜い。今行きま〜す」
バタバタと忙しそうに厨房に走る彼女。
そして席には、スーツを来た大量のサラリーマンが。
……この時間なら当たり前の風景だろうか。
この人が多い様子を見ていると、現実を感じる。
僕(やっぱり……そう変わるもんじゃあないのかな)
僕も現実的に、何を食べるかを選ぶ事にした。
100:
店員娘「ね、そう言えばこの前の事どうなりました?」
食事もあらかた食べ終わり、お店も落ち着いた頃。
彼女が僕に話しかけてきた。
後輩「……この前って、なんの事ですか〜?」
お茶を飲む彼女の視線が、何故か痛い。
店員娘「ふふ、ただの夢占いですよ。気になるって言われたものですから……」
後輩「き、気になるって……何がですかっ!」
僕「いや……うん。その時の夢は猫が、ね」
101:
後輩「……なるほど、そういう夢の話をしてたんですね」
僕「まあ、ちょっと気になって。たまたま娘さんに教えてもらっただけで……」
店員娘「あれから、何か夢は見ましたか?」
僕「……いや」
夢みたいな変な体験は、寝る前にしています、とは言えなかった。
こうして昼間にメールの彼女と全く関わらないでいると、夜の出来事は全て夢に思えるくらいだ。
僕「あえて言うなら……メールの夢かな」
店員娘「メール……ですか」
103:
店員娘「そうですね、メールは……やはり『連絡事項』ですかね」
店員娘「相手が何かを伝えたいからメールをするんであって……あ、もちろん本人が何かを伝えたがっている場合もありますけど」
後輩「本人……先輩、誰かに伝えたい事でもあるんですか〜?」
すかさず、キャハッと楽し気な様子で後輩が僕にツッコミを入れてくる。
僕「いや、メールが来たのは彼女からだから……別に自分は」
ハッ。
104:
後輩「か、彼女って誰ですか! 彼女って!」
僕「……いや、夢の話だからさ」
店員娘「差出人は誰かわかりますか?」
僕「全くわかりませんね。これは、占いでは何かあるんですかね?」
店員娘「さあ……差出人不明でしたらメールの内容で判断するとかですかね?」
僕「内容、ねえ……」
カップラーメンを食べた、という内容にどんな意味があると言うんだろうか。
夢占いでわかるなら、是非教えてほしいものだ。
僕(まあ……彼女の場合は夢では無いんだけど、さ)
105:
赤川次郎みたいな臭いがする
支援
106:
店員娘「また、何か見たら教えて下さいね〜」
お店の前で見送りしてくれた店員さん……遠くになっても、やはり笑顔で僕たちを見つめていた。
店員娘「ふふ」
あの笑みも久しぶりだ。
後輩「ん〜……むぅ……」
隣では小さく唸り声を上げる後輩がいる。
後輩「……」
よし。
小さく、そう聞こえた気がした。
……その「よし」の意味は、今夜知る事になった。
108:
後輩『久しぶりにメールしちゃいます。明日はお弁当作ってきますからねっ!』
夜の九時くらいに、後輩からのメールが。
なんて事はない、ただの雑談メール……なんだろうか。
笑顔とキラキラした絵文字が、女の子らしい。
僕『ありがとう、楽しみにしてるよ〜』
僕も無難に返信をする。
後輩『はいっ! あんまり迷惑になっても悪いのでこの辺で……おやすみなさい』
僕『うん、おやすみ〜』
109:
僕「……」
後輩とのメールは終わり。
でも肝心の……彼女からのメールが来ない。
僕「今日はどうしたのかな……」
思わずメールを見返してみる。
『眠れない(笑)』
昨日の深夜に来ていた、これが最後だ。
僕「……」
僕「ん?」
彼女からのメールが最後という事は……。
僕「返事をしていないのは……もしかしてこっちの方か?」
111:
僕『……今夜は眠れそう?』
一応、会話の流れが続くようなメールを返した。
……。
待つこと二十分程、彼女からの返信だ。
『うん、今日は眠れそう。バッチリ一日中起きてたからね!』
……よかった、安心した。
僕『そっか。元気みたいで何よりだ』
『うん、元気元気〜。だから元気に布団に潜るのぉ……』
僕『それは完全に寝るスタイルじゃないか』
『明日またメールしようねえ……おやすみ〜』
112:
僕「……」
なんだろう、いつも彼女とメールをする前にさ。
こういう事を聞こう、質問してみようって……色々考えていたはずなのに。
いざメールをしていると、頭の中で描いている言葉とはどんどんかけ離れていって……。
でも最後には、その人とメールしているという事実だけで僕は嬉しくなって。
僕(……おやすみ)
今日も僕は、満たされた気持ちで眠る、それが幸せだった。
113:
僕『今日会社でさ……な事があってさ』
『そっか〜。それは大変だったね〜』
僕『大変なんだよ〜。ハァ……』
『もう、そんなため息してると幸せ逃げちゃうよ〜?』
あれから、メールの内容は段々と深い物になっていった。
……と言うよりは、僕が一方的に自分の事を話す機会が増えた、そんな感じだった。
何度か彼女の事を尋ねてみたけれども、いつも曖昧な返事ばかりで。
それなら、僕の事を話すしかないと思い、話を進めていたのだが……。
114:
『一回の失敗で腐っちゃダメだよ〜。次はその失敗しなければいいだけなんだからさ〜』
彼女の一言一言は、いつも僕を元気付けてくれた。
言っている事は当たり前の、よくあるような言葉。
でも、彼女が僕に投げ掛けてくれるその言葉の一つ一つは……。
僕『うん……ありがとう。こんな深夜まで聞いてくれて、ありがとうね』
『うんっ♪ じゃあ……おやすみぃ……』
どんな言葉でも嬉しかった。
今思えば……僕は彼女に甘え過ぎていただけなのかもしれない。
115:
僕「……おかしいな。メールが来ないや」
いつもの夜、彼女からのメールが来ない。
仕事が終わって、携帯を握りながら家で待つ僕は、独りぼっちだ。
今日はもう、寝る時間……。
僕(寝ないと……明日も早いんだ)
僕(でも彼女とのメールをしないと……僕は眠れそうにないんだ)
僕(……一言でいいから、何か返してくれよ。お願いだから)
僕(それだけで、大人しく眠るからさ……)
深夜三時十二分。
いつかに鳴ってくれた電話は……今はもう鳴らない。
116:
先輩「や、最近どう? 元気?」
僕「あ、先輩……」
先輩「ってわけでもないみたいね。寝不足? 大丈夫?」
僕「ええ、ここが終われば楽になりますから。気合いで乗り切るだけですよ」
先輩「……あまり無理はしないでね。後輩さんだって心配してたのよ?」
僕「……後輩が?」
そう言えば、最近はお弁当を届けてくれるだけで一緒に食事はしていない。
後輩『迷惑になるといけないから……』
昼休みをあまり取らない僕に気を遣ってくれていた、それは何となくわかる。
119:
僕「最近あまり話さないんで……」
先輩「後輩さんの気の遣い方だと、余計に話さないでしょうね。まあ、それだけが気遣いじゃないとは思うんだけどね……」
僕「そんなものですかね?」
先輩「それはそうだよ。何でも素直に言う人もいれば……遠くから見守る人だっているんだからさ」
僕「……」
先輩「今日辺りさ、ちょっとご飯でも誘ってみたら? いい息抜きになるんじゃないの?」
120:
メールの相手は病院のベッドの上とか?
121:
後輩「……あ」
僕「や」
後輩「ど、どうも」
彼女と離れて、一ヶ月くらいだろうか。
忙しさと疲労が重なって……少し痩せたように感じる。
後輩「今日はどうしたんですか? あ、お弁当箱ならいつもみたいに机に置いといてくれれば……」
僕「あ、いや。今日はそういう用事じゃないんだ」
後輩「?」
僕「その……先輩にちょっと言われてさ。一緒にご飯でも行かないかな、って」
後輩「えっと、三人でって事ですか?」
僕「いや……二人で、かな」
後輩「え、それって……」
123:
……。
……。
先輩「ハァ……色んな気の遣い方、ね」
先輩「なんで私だけ好きな人から遠ざかってるんだろ……」
先輩「自分がそうしたからって、理解出来てるはずなのにな…あ…」
先輩「結局自分から離れて、離れたら寂しくなって追いかけて……」
先輩「恋愛なんて、バカみたい」
先輩「……なんでこんな、バカみたいに好きなんだろう」
先輩「つらいなぁ……」
……。
126:
最初しか読んでないけど携帯の電源って切って寝るもの?
電源切った携帯が翌朝にアラームなってるけど
最近のは電源切れててもアラームなるの??
127:
>>126
電源落としてても時間になったら勝手に電源付いて音鳴るよー
128:
後輩「一緒にご飯なんて久しぶりですね〜」
夜の街を、彼女はウキウキした様子で歩いている。
僕「晩ごはんだから余計に久しぶりに思うよ。学生時代に行ったきりだから……」
後輩「数年ぶりですかね〜?」
僕「そうかも、ね」
大学時代から数年……早いものだ。
まだかろうじて若手、というイメージはあるにしても……月日の流れには勝てないんだと思う。
隣で元気に歩いている彼女を見ていると……やはり若さが違うんだ、と実感する。
129:
後輩「じゃあ……いただきます」
僕「いただきます」
僕たちは、以前先輩に連れてこられたイタリアンのお店にいた。
後輩「ピザ美味しい……」
マヨネーズとチーズ、そしてバジルの匂いが漂ってくる。
暖かそうにピザを頬張る彼女は、とても幸せそうだった。
後輩「はい、先輩にも一切れあげますよ」
僕「ん……ありがとう」
130:
後輩「美味しいですか?」
僕「ん、美味しい」
いい匂いから想像できるような、ふくよかな味が口の中に広がる。
後輩「ふふ、今日は誘ってくれて本当にありがとうございました」
空いたお皿を綺麗に重ねながら、彼女は言った。
僕「いや、お礼なんてそんな。こっちこそ付き合ってもらって、ありがとう」
後輩「そ、そんな……私は、先輩と一緒にいられるなら……それだけで……」
131:
後輩の頭をそっと撫でたい
132:
僕たちは、駅に向かって歩いていた。
店員に勧められるままに飲んだワインのせいか……僕と彼女は手を繋いでいる。
右手からは彼女の熱が伝わってくる。
後輩「……」
僕「……」
駅までの道はこんなに遠かったかな。
それとも、どこか曲がる場所を間違えたんだろうか。
しばらく二人で歩いていても……まだ駅には着かない。
後輩「……ふふ、でもよかった」
途中、とても嬉しい様子をした彼女が僕に話し掛けてきた。
133:
僕「よかったって、何が?」
後輩「こうやって先輩といられる事ですよ。はぁ、夢みたい」
僕「夢なんて……そんな大げさだよ」
酔っているせいか、自然と声が甲高くなってしまう。
顔もちょっとだけ含み笑いをしていて……浮かれていたんだと思う。
後輩「大げさなんかじゃないですよ! 先輩の事ずっと考えていたのに……私の事なんてまるで見てくれないから……」
彼女も、少し酔っていたんだと思う。
135:
僕「見てくれない……なんて。そんな事……」
ほぼ毎日お弁当を作ってくれる彼女。
彼女と話せるだけで、ほんの少しだけ元気になれた。
僕(話せるだけで元気、か……)
メールの彼女の事を思い出しそうになったけど、今は我慢した。
後輩「……本当に?」
僕「えっ?」
後輩「本当に……私を見てくれてますか?」
僕「……」
彼女の目は真っ直ぐこちらに向いている。
それだけで……本気なんだ、というのがわかった。
138:
後輩「……いえ、私からちゃんと言います」
後輩「私の事だけを見つめて下さい。他の人は誰も……見ないでいて下さい……」
その言葉を聞いて、アルコールが一気に体に回る気がした。
僕「僕は……」
後輩「私、ワガママです。先輩には他の人を見て欲しくないんです……私だけを……」
僕「……」
体が勝手に動く。
僕の両手は引き寄せられるように……彼女の両肩を掴んでいた。
140:
後輩「あっ……」
本当に、一瞬だけ驚いた彼女。
しかし、すぐに僕の手を掴み……頬を赤らめながら僕を見ている。
後輩「うん……そのまま、私を見つめていて……」
後輩「他の人は、誰もダメなんです……先輩が見つめるのは」
後輩「女部長さんでも……」
僕が今見つめているのは……。
後輩「食堂の娘さんでも……」
後輩「あの……『女』さんでもないんですから……ね」
僕「……!」
141:
後輩「……先輩? どうしたん……ですか?」
『女』
その名前を聞くまで、僕は確かに……目の前にいる彼女の事だけを見つめていた。
多分これからも、そうだっただろう。
でも……。
僕「……」
なんだろう、胸に引っ掛かるようなこの感覚は。
明らかに……名前を聞いた前と後では、違う。
143:
僕「……ゴメンね」
両肩に置いた手を、そっと僕は離した。
後輩「先輩、なんで謝るの……何がゴメンねなの……」
後輩「そんな言葉、聞きたくないよ……わかってたけどやっぱり聞きたくない……」
彼女の赤い頬に、ゆっくりと水滴が流れ落ちる。
僕にそれを止める手段は……何もない。
もう、彼女を見つめる事は出来なくなっている。
これからも、多分ずっと、ずっと……。
145:
後輩「最後に……手だけ繋いで下さい。それで駅まで……それまででいいですから……」
どれくらいの涙を流しただろう。
しばらくそこに立ち止まっていた彼女はそう言った。
僕たちはもう一度お互いの手を握って……駅まで歩き始めた。
……それから、五分も経たずに二人の手は離ればなれになるんだ。
146:
後輩「……」
でも彼女は、時間や距離など関係ないと言った具合に、強く僕の手を握っている。
いつまでも、いつまでも。
こうやって二人歩いた事を忘れないようにと……ただ強く、痛いくらいに僕を見つめていた。
明日になったら、今日の事なんて夢のよう……。
彼女が今日に帰る事が出来たら、きっと全力で僕を抱きしめるんだろう。
その気持ちが痛いほどわかるから……僕も彼女の手を強く握った。
もう、彼女からの握り返す力が、強まる事はなかった。
144:
支援
あんがい短いのか
147:
お仕事行きです。
そんなに長くはありませんので、今日か明日で終わる予定。
「小学校」はいまだに結構反省してます。
148:
2時半からずっと貼りっぱなしだったから寝てないだろうに、これから仕事か
頑張れよ
158:
いい所で切りやがってwwww保守
164:
僕「小学校で」女「つかまえて」
僕「夢の中で」女「つかまえて」
女「星の海で……つかまえて」
だっけつかまえてシリーズ。他にもあったっけか
※僕「小学校で」女「つかまえて」
※女「星の海で……つかまえて」
160:
夢の中で、はどうなったよ
170:
保守ありがとうです。
>>146からの続き。
>>160
「夢の中で」はよそ見してたらdat落ちしていて……今はちょっと書く予定ないです。
また少し時間が開いたら、いつか。
171:
僕「……」
夜を一人で過ごしている。
あれから携帯電話はしばらく鳴っていない。
名前を知らない彼女から、メールが来なくなったんだ。
いや、来なくなったと言っても三日か四日もすればちゃんとメールは来る。
でも明らかにその間隔は広がっていた。
僕(ハァ……なんでこんなにイライラして、寂しいんだろう?)
173:
こっちからメールをしても、帰ってくる頻度は変わらない。
返事の貰えない中学生が、一方通行にメールを送るみたいで嫌だったんだが……。
何度か彼女にはメールをしてしまったんだと思う。
その度に、短いメールが来るか最悪は返事が来なくて……えらく落ち込んでいた。
『お仕事終わった〜。晩ごはんいってきま〜す』
だからこそ、たまにこんなメールが来ると僕はえらくはしゃいだ。
それこそ……思春期の男の子みたいにドキドキしていた。
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174:
ある日、僕は彼女にずっと気になっていた事を尋ねた。
後輩が言ってた『女』という名前……。
僕『女、最近元気?』
僕はごく自然にメールに名前を打ち込んでいた。
気持ちの違和感は少ない。
ピリリリリッ。
女『うん、元気〜。僕ちゃんもお仕事ガンバ〜』
ああ、やっぱり彼女は『女』なんだ。
僕(……で、その女って、一体誰?)
次の課題はこれだった。
175:
僕(本人に聞いてみるか……)
僕『ねえ、よければ今から電話しない? 番号忘れたから教えて欲しいんだけどさ……』
女『電話は嫌い〜(笑) メールじゃダメ?』
ダメじゃないけれど、文章では何を伝えられる事が限られてしまう。
僕『それでも大丈夫だよ。うまく言えるかわからないけど』
『うん、お姉さんに何でも話なさい〜♪』
……本当に、中学生になったみたいに緊張しているや。
176:
僕『あのさ、僕たちって知り合いだよね?』
『何を今さら? 姉と弟みたいなものじゃないか〜』
……猫の絵文字、これは機嫌がいいという事なんだろうか。
僕『ああ、そんな感じだったっけな〜』
話がわからないから、とりあえず合わせて話を進めるしかなかった。
女『ふふっ、弟くん』
彼女は僕の、お姉さん的な存在なんだろう……か?
僕(なんだろう、なんかムカつく気がするな)
僕は心の中で笑いながらそのメールを見ていた。
177:
女『くすっ、もしかしてまた何か嫌な事があった? もう……甘えん坊』
僕「……」
ああ、キュンとする。
僕がずっと彼女に感じていたのは……このお姉さん的な包容力?
僕(だから僕は彼女に寄りかかっていて……こうしてメールをしたがっている)
彼女にくっついていたい理由が……わかった気がする。
178:
僕『うん……ありがとう。ちゃんと話すからさ、女には』
女『ん、何でも聞くよ』
……後輩とメールしている時とは違う。
なんで違うんだろう。
今日のメールで、それを知る事は出来なかったけど。
女『じゃあ、おやすみなさい……』
僕はまた、元気に明日をガンバる事が出来るんだ。
179:
僕「あ、おはようございます先輩」
先輩「おはよう。今日はなんだか元気だね」
僕「そうですかね?」
先輩「ふふ、仕事が一段落したからかな。それとも……他に何かいい事でもあったかな?」
くすっ、と笑う先輩。
メールの彼女も、こんな風に優しく笑う大人の女性なんだろう。
僕「何にもありませんよ。じゃあ、そろそろ失礼しますね〜」
先輩「ふぅ。うまくくっついた……のかな?」
後輩「……おはようございますう……」
181:
先輩「あら、おはよう。どうかした? 元気無いみたいだけど」
後輩「何でもないですよ〜……」
先輩(んん〜……?)
先輩(二人がくっついたわけじゃないのかな?)
182:
お昼のベルが鳴る。
僕(後輩は……来ない)
あんな事があった後では当たり前か。
久しぶりに一人のご飯かな、そう考えていると背中をポンと叩かれた。
先輩「呼び出しよ、いつものお店で、ね?」
僕「……はい」
今日のお昼は久しぶりのパスタに、今決まった。決められた。
183:
先輩「あのさ、なんで後輩とくっつかなかったの?」
僕「ぐっ……ゴホッ、な、何がですか……」
先輩「もう……はいお水。口の周り拭いて、ほら」
僕「す、すいません。いきなり変な事を言われたもんで……」
先輩「絶対うまく行くと思ってたんだけどな。仲良かったし……」
僕「……」
先輩「どうして?」
どうして、と聞かれても正直困る。
彼女の事を恋愛的に好きではなかったから……それ以外には何もない。
184:
先輩「……そう。じゃあ聞くけどさ、今好きな人とかいる?」
僕(メールをくれる彼女が……)
僕は何も答えない。
先輩「いないならさ……ほら、とりあえず付き合ってみるのも大人だよ? あ、言い方は悪いけど気にしないでね?」
僕「いえ、なんとなく言いたい事は分かりますから。」
先輩「ん……。あんなに慕ってくれてるんだからさ……それに『好き』と『嫌い』だけで付き合う事を決めるような年齢じゃないでしょ?」
僕「えっ?」
先輩「もう……本当に考えが子供なんだから」
先輩は少しあきれた様子だった。
186:
帰り道の途中、僕はずっと先輩の言葉を繰り返していた。
僕「……好きと嫌い、ね」
昔みたいに、あの人が好きだと言って……それだけで付き合う事になる。
それは学生の恋愛だ。
僕たち大人は……そういう気持ち以外にも、どこか打算的な考えが頭に挟まってしまい……。
昔みたいな純粋な気持ちで恋愛する事が、出来ないんだろう。
僕「それはわかるよ、でも……」
僕はただ、メールの中の彼女だけを追いかけている。
187:
僕『ねえ女、いつ暇? 今度会いたいんだけど』
その日の夜、僕はメールで彼女に会いたいと伝えた。
一度会ってこの気持ちを確かめたい。
周りの女性に抱いている普段の気持ちと、見えない彼女に向けている気持ちの違いを確かめたかった。
ピリリリリッ。
少し間が開いてから、返事が来た。
女『最近お店が忙しいんだよ〜。時間が出来たら、連絡するよ』
断られてしまったようだ。
僕(……お店ってどこだろう?)
188:
次の日、僕はお昼の電車に乗っていた。
休日なせいか多少人が多く感じたが……仕事に向かうのではないから気分は楽だった。
電車は、いつも会社に行くための駅を通りすぎ……そこから更に二十分程進む。
僕(女が言っていた駅は……ここだっけ)
女『うん、前と同じ。あの本屋さんだよ。買いにきてくれていいんだよ〜?』
昨日のメールで……こんな事を言っていた。
前、という事は以前僕は行った事がある?
彼女に関する事、何もわからなかった。
189:
お店に入ると、真っ白い印象を受けた……本屋の景色が広がる。
なかなか大型の本屋だった。
僕(ここに女が……いる?)
店内には何人か店員がいた。
女性は四人程……本屋だからだろうか、多く感じる。
僕(どこにいるのかな……)
190:
女「……あ」
僕「え?」
僕が探すよりも早く、彼女が僕を見つけたようだ。
少し離れた位置にいた彼女は……僕を見つけるとすぐに駆け寄ってきた。
僕も直感的に、あれが彼女なんだと……わかっとしまう。
女「本当に来たんだ、久しぶりだ〜。変わってないね」
僕「ん……ああ、久しぶり」
彼女の姿を見て、僕は思わず口走ってしまう。
僕「女も相変わらず……小さいんだな」
191:
相変わらず?
確かに僕はそう言った。
知っていた。
女「うるさい、バカ! 弟のくせに……うるさいよ全く!」
僕「……つい」
想像していたお姉さんの姿とはずいぶん違う、小さな小さな彼女がそこにいた。
女「もう。あ、あと少しで休憩だからさ、お店の裏で待っててよ?」
僕「あ、う、うん。わかったよ」
あまり気にしない様子で僕に話してくれる彼女。
こんな会話を、昔もしていた気がする……。
彼女と離れて、僕はお店の裏で待つ事にした。
192:
女「お待たせ〜」
僕「うん、大丈夫だよ。はい、お茶」
女「あ、ありがとう〜。でも私ココアの方がよかったな〜」
僕「……」
女「なんてね、いただきま〜す」
彼女が言うと、何でも許せてしまう。
女「ふふっ、お茶も美味しいね」
それは多分、彼女から悪意を感じないから?
僕(それとも……)
僕(僕が彼女を……好きだから?)
女「……んっ?」
僕「な、何でもない……」
横顔すらまともに見る事が出来ず、僕は視線をそらしたんだ。
194:
女「……」
僕「……」
会話はあまり弾まない。
でも、彼女と一緒にいるこの空気は……嫌じゃない。
何も話さなくても……安心する。
僕(メールの事……聞かなきゃ)
僕「あのさ女」
女「ん〜?」
僕「メールくれてたの、女だよね?」
女「うん、もちろん」
僕「……なんでメールをしてくれるの?」
女「楽しいからだよ〜」
僕「楽しいって?」
女「……メール、好きなんだよ。たまに返すの忘れちゃうけどさ」
195:
僕(僕が聞きたいのはそういう事じゃなくて……)
女「くすっ、前も聞いたよね。その質問」
僕「そ、そうだっけ?」
女「うん。忘れんぼ〜、甘えんぼ〜」
僕「……うるさいな、覚えてないんだよ」
女「そう、覚えてないんだ……ね」
彼女の顔が、沈んだように見えた。
僕(傷……つけてしまった?)
胸が……チクッとする。
196:
女「……あ、そろそろ休憩終わるからさ。またね〜」
僕「ん、もうそんな時間か。またメールするよ」
女「ん……」
言葉小さく、彼女はまたお店の中に入ってしまう。
笑ってはいたけれど、どこかに引っ掛かりのあるような笑顔。
僕は彼女のあんな表情も、よく知っている気がする。
僕(気がする……そんなのばっかじゃないか)
彼女に近付こうとすると、彼女は僕から遠ざかる。
僕(探さないと……見つからないみたいだな)
197:
なんか不思議な感じだなぁ
199:
まずは彼女。
僕も彼女もお互いの事は知っている……んだろう。
僕(でも、僕は彼女の事を忘れている)
たまに……頭の引き出しが独りでに開いて、彼女に関する言葉が出てくる。
僕(女……)
名前を思い出したあの日から、僕は無意識に彼女の名前を読んでいた。
僕(昔から……)
ずっとそんな気がする。
ああ、頭がモヤモヤする。
僕は彼女のいたお店を後にして……再び電車に飛び乗った。
201:
次は僕の事……。
と言っても僕には何もない。
ただ彼女の事をたまに思い出す……それだけ。
そして多分、彼女の事が好きなんだ。
僕が開けている引き出しは、きっと彼女の情報がつまった……そんな入れ物なんだろう。
202:
僕(じゃあ、その引き出しを全部開ける事ができたら……思い出せるのか?)
電車に揺られながら、僕はそんな事を考えていた。
心の仕組みなんてわからないけれど、僕は彼女の事を知りたい。
それだけが、僕の体を動かしている。
僕(……で、その引き出しってどう開ければいいんだろ?)
心の問題?
僕にそんな知識は無い。
僕(こういうのは心理学や精神科医……かな?)
203:
僕は電車を降り、会社に向かって歩いていた。
僕(ちょっと、調べものに使わせてもらうくらいいいよね?)
フラフラと歩く僕の前には、いつもの食堂がある。
僕「ん……あれ?」
外の掃除をしている、いつもの娘の姿が見えてくる。
店員娘「あ、こんにちは〜」
僕「や、相変わらず元気だね」
店員娘「ふふっ、それだけが取り柄ですから。今日はお休みですよね、どうしたんですか?」
僕「ん……ちょっと調べる事が出来てね」
店員娘「そうなんですか〜、お疲れ様です」
205:
店員娘「じゃあ、頑張って下さいね」
別れ際、僕の頭にある考えがよぎる。
僕(……彼女なら何かわかるかも?)
夢占いにも詳しかった彼女だ。
僕「あのさ、ちょっといいかな?」
店員娘「はい?」
僕「聞きたい事があるんだけどさ」
店員娘「ん、また夢のお話ですか?」
僕「いや、それに関係はあるんだけど……その」
店員娘「……なんだか複雑な事情みたいですね?」
206:
しかし鈍い
207:
僕「うん、少しね」
店員娘「じゃあ、ゆっくり話せた方がいいですよね。今日はあと二時間でアガリなんで……それからでもいいですか?」
二時間といったら、調べものをするのに丁度いい時間だ。
よかった、一人で悩み考えるよりはずっといいだろう。
話を聞いて貰えるのは、単純に嬉しい。
僕は彼女と会う約束をして、会社に向かった。
208:
好意を持ってる奴を振り回し、利用するとか・・・
209:
>>208
好意を持ってくれる人がいない僕たちには酷な話だね・・・
213:
僕「うう〜ん……」
パソコンを立ち上げて一時間。
何をすればいいのかわからないながらも、気になるワードを打ち込んでは調べている。
僕「記憶、断片、精神的……」
……。
……。
『記憶は資料のようなものです』
『その人に必要だからこそ、記憶は頭の中に残ります』
僕「そんな抽象的な事ばかり言われてもな……」
僕はさらにページを進めて読んでみた。
214:
『しかし、頭に残る記憶のすべてが果たして必要なのでしょうか?』
『人間の記憶できる量には限界があります。不要な記憶を削除して、また新しい情報を頭に入れる』
『人間はそれを繰り返して、頭の中の記憶の容量を使っているのです』
僕「……」
僕「もう……そろそろ時間か」
僕はそこでパソコンを閉じて、会社を出た。
215:
店員娘「……あ」
僕「やあ、おまたせ」
店員娘「いえ、今終わった所ですから。どこでお話しますか?」
僕「ん〜、お腹空いてる?」
店員娘「ご飯はさっき食べたんで、大丈夫ですよ。お腹空いてます?」
僕「ん、僕も平気だよ。じゃあ喫茶店にでも行こうか?」
店員娘「はい。ふふっ」
エプロンを着ていない彼女が……笑う。
なんだか新鮮だ。
216:
店員娘「何にしますか?」
僕「……コーヒー。君は?」
店員娘「私はアイスティーでお願いします」
僕「ん、わかったよ」
お昼のパスタよりは早く来るだろう。
店員娘「……で、お話ってなんですか?」
メニューが来る前に話を進めてしまうのがいいか。
僕「えっと……今回は夢の話じゃないんだけどさ……」
217:
店員娘「……そうなんですか」
僕は彼女に……メールの事や名前を忘れていた女の事を話した。
店員娘「ん〜……」
アイスティーにガムシロップを二つ入れながら、クルクルとかき回す彼女。
その目は何かを考えているようだ。
店員娘「ん〜、その人と何があったかはわかりませんけど。お互い知り合いではあるんですよね?」
僕「どうやら、そうではあるみたいだけど……」
店員娘「じゃあその人の、何を覚えていますか?」
なんだか、カウンセリングを受けているようだった。
218:
僕「覚えているっていうよりは、フッと思い出す感じかな。引き出しが突然開くっていうか……」
それ以外に例えようがないんだ。
店員娘「ん〜……じゃあ無意識の中に彼女はいるんですね」
僕「無意識……」
店員娘「意識して彼女の事を思いだそうとしても、無理ですか?」
僕「……ほとんど出てこないよ」
店員娘「そうですか。ん〜……」
219:
店員娘「……こんな事言って、不快にさせたらごめんなさいね」
アイスティーを飲み終えた彼女は、いきなり僕の方を向いて言った。
僕「ん……?」
店員娘「その人の事、本当に好きですか? 大切に思っていますか?」
僕「……」
僕「好きだよ」
一呼吸置いて、僕は言葉を吐いた。
少し間が空いたのは……単純に聞かれて驚いたからだ。
店員娘「そう、ですか……でも話を聞いていると私には……」
彼女の次の言葉が、怖い。
220:
店員娘「話を聞いただけですから、あまり変な事は言えません」
店員娘「……でも、私にはあなたがその人を好きになる理由がわかりません」
店員娘「彼女の何が……そんなに好きなんですか?」
僕(彼女の何が……好き?)
僕「そんな理由なんて、考えた事ないよ」
店員娘「……理由が無いのに、好きなんですか?」
僕「……」
人を好きになるって、そういう事じゃないのか?
222:
僕「……理由は、多分あったんだと思うよ。昔はね」
店員娘「昔、ですか?」
僕「うん。消えてる頭の中に入っているのかもしれないけど……きっかけは何かあったんだと思うよ」
僕「それが何かは思い出せないけどさ」
店員娘「……」
僕「うん……思い出せない。でも、やっぱり好きなんだよ」
店員娘「……ふふっ」
僕「?」
沈む僕を、彼女は笑った。
いつものお昼ご飯を食べる、昔の僕らを見るような……遠い笑顔で。
店員娘「思い出せないなんて……嘘ばっかり。その気持ちだけで充分じゃないですか」
223:
僕「……理由なんて聞かれたからさ」
店員娘「ふふ、恋愛に理由なんていりませんよ。好きだから追いかける、好きだからお話したい」
店員娘「結構、根本にあるのはそれだけのような気がします。もちろん、それだけが恋愛だとは思いませんけど……」
柔らかく笑う彼女を前にして、僕も少し腰が砕ける感覚だ。
僕「はは、いきなりあんな話をされてビックリしたよ」
店員娘「……あながち、冗談ていうわけでもないんですけどね」
僕「それは、どういう意味?」
225:
店員娘「好きになったきっかけも、彼女との思い出も……ほとんどが抜けている」
店員娘「無くても困らない毎日。その記憶は……本当に必要な記憶なんですかね?」
僕「……いらないから、僕の頭は忘れている?」
店員娘「そこまでは言いません。でも、変じゃないですか……無意識に思い出すくらい好きだった人を忘れるなんて」
店員娘「そんなの、悲しすぎると思いますよ……」
僕「……」
227:
店員娘『今日はありがとうございました。また……お店に来て下さいね』
そうして彼女と別れたのが三十分前。
僕は電車を降りて、家に向かっている。
僕「……」
彼女から聞いた話を、僕は思い返していた。
僕「彼女の記憶がいらない?」
『そんなの、悲しすぎると思いますよ……』
……僕もそう思う。
228:
ピリリリリッ。
だって、こうしてメールが来るだけで……。
女『お仕事おわった〜。ココアが飲みたいな♪』
心臓がとても強く……鼓動する。
嬉しいんだよ、悲しすぎる事なんてない。
僕自身はそう感じている。
でも、頭の中の『僕』は……それを忘れて拒否している?
僕『……さっきまで、喫茶店にいたよ』と。
頭を空にするために、僕は彼女とメールを始めた。
これでいいんだ……もうすっかり暗くなった帰り道を。
携帯の光だけを見ながら歩いている。
僕は彼女が好きなんだから、これで幸せ。
僕の頭は、いつもそこで思考が止まる、ただそれだけの事だった。
231:
良スレみつけた
>>1の過去を探る作業に入る
233:
先輩「これ、お願いね。また残業になっちゃうけど……大丈夫?」
僕「あ、はい。もう最近は慣れましたから」
先輩「ありがとうね。多分私も同じくらいに終わるから……よかったらご飯でも行く?」
僕「ええ、じゃあ場所は……いつものですか?」
先輩「それでいいわよ。それじゃあまた」
会社は、また忙しい時期を迎えていた。
僕の机には山積みの書類がたまっている。
最近は毎日が残業だ。
235:
先輩「お待たせ、さ、行きましょう?」
忙しさのせいで、最近は先輩と帰宅時間が重なる事が多くなった。
少し遅い夕ご飯を食べて、帰る。
そして明日からはまた忙しい日々……これの繰り返しだ。
僕(この店も何回目だろう。先輩もよく飽きないな……)
今日は何のパスタにしようか。
236:
先輩「美味しい?」
僕「ええ、何度きても美味しい物は美味しいです」
先輩「ふふっ、よかった。デザート何か食べる?」
僕「いえ、僕は特には……」
先輩「遠慮しないでいいのよ?」
僕「だってまた先輩が支払いするんでしょう? 遠慮もしちゃいますよ」
先輩「部下にお金なんて出させるものじゃないのよ。本当にデザートいらない?」
僕「はい、大丈夫ですよ」
先輩「ん、そう……か」
メニューを戻す手が、寂しそうに伸びていた。
そう感じたのは、どうしてだろう。
239:
僕「……そろそろ帰りますか? 明日も早いですし」
先輩「ん〜……」
カチャカチャとグラスに入った氷を鳴らす先輩の表情は……何かを考えているようだ。
僕「先輩?」
先輩「ちょっとだけ、場所を変えてお話しましょう。言っておきたい事があるの」
僕「?」
ここでは言いにくい事なんだろう。
先輩「さ、行きましょう?」
やっぱり伝票を持った先輩は、僕を引っ張るような足取りでレジに向かって行く。
僕たちは店を出て……静かな場所を探し歩いた。
240:
先輩「静かね……ちょっと肌寒いくらいに、静かな夜」
街の真ん中にある、大きな公園のベンチに僕たちはいた。
中央の小さな池を囲うように、白色の街灯がいくつも照らしてある。
その光に、たまに落ちる紅茶葉が重なって……。
感じた通り、肌寒い夜だった。
僕「お話って、なんですか?」
先輩「……ん」
会話を始める前に……先輩は僕に身を寄せて来た。
左腕に当たる風が、気持ち減少したように思う。
僕「ど、どうしたんですかいきなり……」
驚きながら、僕は先輩に話しかけた。
241:
先輩「ん、寒い」
か細く、それだけを言うと先輩はもっと僕との距離を縮めた。
もう左腕には、暖かささえ生まれている。
僕「……」
僕には何も言えなかった。
先輩「……ねえ、私ってどんな印象かな?」
僕「え?」
先輩「聞いておきたいんだよ。どんな印象?」
僕「えっと……頼りになる上司、ですかね」
先輩「……」
キュッと、僕の腕を締め付ける。
左腕は、完全に抱きしめられてしまう。
243:
先輩「それだけ?」
僕「……」
他に何を答えればいいんだろう。
先輩「そっ、か。じゃあ別の聞き方するね。私の事……意識の中にありますか?」
僕「えっ……」
先輩「私の意識は、あなたの事でいっぱいです。毎日とても悩むくらい……好きなんです」
先輩「ね、教えて? 私は……女性として、あなたの中に存在していますか?」
僕「……」
僕「僕の中には……もう、一人の女性がいるんです」
245:
先輩「……そう。やっぱり、そうだよね」
僕「……」
先輩「変な事言って、ごめんなさいね。くすっ、フラれちゃった」
少しだけ、明るく振る舞いながらも……僕の腕を握る力は強くなっている。
先輩「何となくね、フラれるのはわかってたんだよ。でも、毎日毎日君の事ばかり考えて……胸がずっと痛くて」
先輩「気持ちを伝えれば楽になる……かなって……思って」
ズッ。
僕「……?」
なんだろう、今一瞬……心臓がえぐられるような痛みがした……。
僕はそのまま、先輩の言葉を聞いている……。
247:
やべー、初めてリアルタイムで見れた
テンションあがるわー?
248:
先輩「……私って、年上で上司だからさ。君に弱い顔なんて見せられないんだよ……」
先輩「本当はこうやってたくさんくっついて、甘えたい願望ばっかなのに……お昼の太陽のせいで、私はそんな気持ちは忘れるの」
ズキッ。
胸が、痛む。
先輩「でもお家に帰ると……急に君の事考えちゃって、何か連絡が欲しくなるの。君を感じる何かを……」
先輩「……私たち、仕事のメールはたくさんしたけどさ。プライベートなメールなんて殆ど無かったよね」
先輩「でも嬉しいんだよ……好きな人からメールが来るだけで。内容なんて、どうでもいいの……」
251:
先輩「ふふっ、たまにね。デートのメールとかも……突発的に送りたくなるんだよ」
先輩「デートだけじゃない。今日の晩ごはんや、買い物した事、新しい洋服を買ってはしゃいでる事……なんだか、話したくなるんだよ」
……話が進むたびに、僕の心臓が一刺し、また一刺し。
何かでくり貫くような痛みが襲うんだ。
僕(なんでこんなに痛いんだ……)
だんだん、僕の顔が沈んでいく。
252:
支援
なんだろうこの嫉妬の嵐
253:
くそっ!くそっ!
死ねよ男!!!!
さるよけ支援
254:
だがそれがいい
255:
僕(ぐっ……)
心臓の痛みが……ピークを迎える。
叫び声をあげる事も出来ない。
痛い、痛い……クラクラする。
頭の中が、グチャグチャにかき回されている。
『女には、話しておきたいんだ』
『僕が考えている事を……女には知っておいてほしい』
『……恋愛って、こんなつらいもんだったっけ?』
『一人でバカみたいだ……』
『女の事なんて、嫌いになりたいのに』
『女の事を忘れられたら……どんなに幸せなんだろう』
『忘れたい……もうつらいのは嫌なんだ……』
忘れたい……?
256:
僕(……ああ、僕は忘れる事が出来なかったんだ)
先輩「君には……知っていてほしいんだよ」
僕(はい、わかります……先輩の言いたい事は。もうわかってしまいましたから)
先輩「私の事で、何を考えて話しているか……うん。君にだけは……それを知っていてほしい」
僕(だから僕は……)
先輩「だから私は……」
先輩「こうやって、君に話をしたんだよ……」
僕(あの日、女に話をしたんだ……)
258:
鳥肌が立った
259:
……。
女「……」
僕「ごめんね、急に」
女「ん……話って何?」
僕「……」
僕「僕は女の事が、好きなんだ」
女「え……でも私、他に付き合ってる人がいるんだよ……」
僕「……知ってる」
女「……」
フラれるのは、わかっていた。
それでも、僕は彼女に想いを伝えた。
数年前……春風が強く吹いていた、午後の話だ。
262:
女「ねえ僕ちゃん、一緒にご飯食べよう?」
フラれた次の日、そう声をかけてきたのは彼女の方からだった。
僕「あれ……彼氏は?」
この時の僕は、ちょっと嫌な男だったんだと思う。
女「今日は誰もいないみたいでさ。ね? ダメかな?」
僕「ダメ……じゃあないけどさ」
女「ふふっ、やった〜。じゃあ早く行こうよ。食堂、満席になっちゃうよ!」
僕「は、走らないの。ほら……」
女「えへへ〜、子供じゃないから転ばないもん〜」
僕「まったく……」
264:
……確か、その日はご飯を奢ってあげたんだっけ。
女はとても遠慮がちにそれを断ろうとしたけど、僕が半ば強引に。
一緒にご飯を食べて喜ぶ姿は、とても可愛くて……デザートにアイスまで買ってあげたっけ。
彼女の好きな物が……だんだんとわかり始めてきた。
それは、僕の中でけっして無駄な記憶にはなっていない。
大切に頭の中にしまっていた……彼女との記憶だ。
その辺りからだろうか、よくメールをするようになったのは。
266:
女『今日はゲーセン行ったよ。久しぶりだからすごく楽しい』
女『眠れない〜……ちょっと読書してくる』
女『見てみて、アイス当たった〜』
メールの内容に意味なんてない。
ただ、僕に何かを話してくれる。
それだけで嬉しかった。
彼氏がいるせいなのか、近付くのが怖くなってしまったからなのか……僕はただメールの返事をするだけ。
いつの間にか、それが僕のいつも、になっていた。
267:
僕『見てみて女、猫の写メール!』
……。
……。
……。
いつからだろう、彼女からのメールがパッタリの来なくなったのは。
268:
女『見て〜、この映画すっごく面白くてね……DVD借りちゃった』
僕『そうなんだ、じゃあ今度見てみるよ』
そして、たまにくれるメールで僕は舞い上がって。
本当に、バカみたいだったと思う。
僕「えっと、タイトルはと……」
そのまますぐに着替えて、DVDを借りに走った。
ドキドキしながら生きていた毎日が、つらい時間に変わるまで……六年くらいだろうか。
近付いては離れて、離れては近付いてくる……そんな彼女の接し方に、僕は少しだけ疲れてしまったみたいだ。
272:
……。
先輩「今日はありがとう、本当にごめんね」
僕「謝らないで下さいよ、何も気にしてませんから」
先輩「うん……また明日ね。バイバイ」
僕「ええ、さよなら先輩」
先輩「うん……明日からは、またいつも通りだから、ね」
その言葉が、また胸に新たな針を刺した。
でも、もう僕たちは何も言葉を交わさずにお互いの家へ帰って行った。
僕たちは、また一人一人になるんだ。
274:
切ないな
275:
僕はその夜、彼女にメールをしなかった。
僕「……会いたいなら、会いにいけばいいんだ」
コンビニ袋にたくさん入ったお菓子を持っていって。
休憩時間はいつかって、彼女に聞いて。
それまで僕は彼女を待っていて……一緒に雑談する。
僕「今は、それだけがしたい……」
僕はとても久しぶりに携帯の電源を切って眠った。
メールが来ても、今日と明日は関係ない。
278:
女「……前もさ、こんな風にお菓子持ってきてくれた事があったよね」
ホットココアを幸せそうに飲みながら、彼女は袋をブラブラと遊ばせている。
僕「ん、そうだっけ?」
女「……ほら、私が一人ぼっちになっちゃった時にさ。わざわざバイト先まで慰めに来てくれたじゃん」
僕「……」
僕「忘れた」
女「……私の事忘れるなんて、お菓子だけ置いてさっさと帰ってよね?」
僕「ほ、本気ですか?」
女「くすっ、嘘だよ嘘。休憩終わるまで一緒にいていいよ」
しばらく前までは、女の事は丸ごと忘れいたなんて……言えるもんじゃないな。
280:
女「ね、この後さ、ご飯行かない?」
僕「ご飯?」
女「うん。お腹すいちゃうからさ、私ハンバーグが食べたいな」
僕「まあ、食べたいなら付き合うけどさ」
女「わ〜い。じゃあ早くバイト終わらせるからさ、待っててね!」
僕「いやいや、バイトは早くは終わらんでしょうが……」
女「えへへ〜、じゃあそろそろ行くね」
僕「うん、頑張って」
女「……あ、猫だよ猫」
「ニャ〜」
282:
女「おいでおいで……くすっ、可愛いね〜」
猫は甘えるように、女の足首に頭を押し付けている。
女「ふふっ、よしよし……」
彼女の姿を見ながら、僕は二人で食べる晩ごはんの様子が頭に浮かんだ。
僕は彼女に何でも話してしまうから……。
忘れていた時の事だって、きっといつか。
今日か明日か、いつかはわからないけれどそれを彼女に話してしまうんだろう。
彼女にはわかっていて欲しいから。
僕の事を……他の誰でもない、君に聞いてもらいたいんだ。
286:
女「……あ、三毛猫ちゃんだ」
通りに面した道路の脇から、模様の混じった猫が顔を出した。
「ニャ〜」
女の足元で甘えていた白猫は、ピクッとしてそっちを向いたかと思うと。
僕「あ……」
二匹は体を寄せあったまま走りだし、道路の向こうへ消えてしまった。
女「……行っちゃった。あんなに甘えてたのに」
僕「ほら、気まぐれだからさ、猫って」
女「ん〜、違うな〜。あれは気まぐれとかじゃないんだよ〜、きっと」
僕「……?」
女は、僕に何も詳しい事を話してはくれない。
それはこの数年間、いつもそうだった。
今回だって……。
287:
僕「ね、それってどういう意味?」
女「え? ふふん……内緒」
鼻で笑う彼女は何も答えてくれない。
女「じゃあ、ご飯の約束忘れないでね。楽しみにしてるよ〜」
僕「……うん」
彼女の顔を見たら、他の全てはどうでもよくなる。
女「これ、ありがとうねっ!」
僕「……」
以前持ってきたお菓子と同じ、彼女の好きな物ばかりが入った袋だ。
僕(もう、忘れないんだよ)
僕には忘れる事が出来ないんだ。
289:
ここから史上最凶級の鬱エンドが待っているとは、予想できなかっただろう
290:
心の中でそう思った後、僕はすっかり冬の色になった街並みを見つめて、息を吐いた。
白いモヤが僕の口の周りを漂っては、透明に染まっていく。
寒くても、あと数分もすれば君に会えるから……。
僕「……ん」
待っている途中、お店の裏に猫が入っていった……気がした。
女「……や、お待たせ。じゃあ行こうよ」
彼女は僕の手を掴んで、昔と変わらない笑顔で走り出した。
離れないように、ギュッと彼女の手をつかまえながら。
292:
あれから、僕は何度か彼女がいる休憩所に通った。
なかなか時間はできなかったけれども、メールだけじゃなくて。
今度は会うようにして、気持ちの距離を縮めていった……つもりだった。
女「くすっ、いつもありがとう」
またいつか、彼女は僕から気まぐれに離れてしまうかもしれない。
それでも……今こうして隣で笑っている、僕たちの「いつも」を大事にしていきたい、そう思う。
女「……最近さ、あの猫ちゃんたち見ないよね」
二匹の猫は、もう二度と僕たちの前に現れる事はなかった。

293:

296:
え?
ナニコレ?
298:
これで終わり。
誤字はごめんなさい、保守、読んでくれてありがとう。
一時間くらいしたら、ちょっと解説だけ書いて、それで本当に終わりです。
300:
一気に読んでたらちょうど終わってた
バイト中のいい息抜きになった
おもしろかった乙
302:
乙。vipでこんなものが読めるとは思ってなかった。
303:
表題のセリフ出てないよ?
どの伏線もオチ付いてないよ?
話自体が完結してないよ?
ネコはなんだったの?
解説なんか要らんから話の中で完結させて?
316:
解説(笑)とか言ってみただけです、すいません。
適当に答えて行きます。ネタバレ。
>>303
>表題のセリフ出てないよ?
「女」は「僕」に何も話してくれない。
でも「内緒」の部分では表題みたいな事を考えてたり。
まあ、相手から動くように仕掛けるような、したたかでしなやかな子という設定。
> どの伏線もオチ付いてないよ?
全体で関係がある話を多目にしました。
伏線というよりは土台かも。伝わりきらなかったら、ごめんねレベルで。
> 話自体が完結してないよ?
> ネコはなんだったの?
僕「白猫、黒猫どっちが好き?」
女「三毛猫っ!」
最後に現れた三毛猫は、女(ポジションの)猫。
最初の方の猫は、本当に土台。
304:
おつ
お菓子好きっていう設定はマストなのか?
324:
ネタバレ
>>304
お菓子好きな子は、与える雰囲気=可愛らしい子
というイメージ。
細かく言うと「小学校で」に出てきた女が「星の海で……」にも出てきましたが。
「小学校で」→駄菓子好き→本当に子供
「星の海で」→お菓子好き→普通の子
で一応わけて書きました。
306:
解説見るまでワカランのは俺だけか?
女の名前が後輩の口から出たのはなんで?
>>306
大学で男、女、後輩は一緒で知り合い。
男の好物をよく知っているくらいの後輩だから、恋愛話は特に知っている、くらいで。
三人を直接絡ませるとこ書かなかったんで、わかりにくかったかも。
308:
>>306
同じ大学行ってたからだろ
つーかお前ちゃんと読んでないだろwwwwwwwwwww
318:
超絶乙!
またいいものを読んでしまった
327:
ネタバレ
・男
大学時代、女の事がすごい好きだけど、男からは気まぐれに見える女の行動が嫌。
忘れたい→脳が引き出し隠す。防衛的なアレ。
他の子に言い寄られても、やっぱり女が好き。
・女
彼女だけは何も知らない。
ただ猫みたいに男に甘えては離れてた、だけ。
でも、男の気持ちをわかりすぎているためか、たまに意地悪にメールをする。
最初の名無しメールだって「どうせ返事くれるんでしょ」くらいに思ってる部分があったり。
330:
ネタバレ
後輩
大学時代から男が好き。
別に追いかけて同じ会社に入ったわけでは、ない。
告白した時、女の名前を出さなければ何も変わらなかった。
先輩
男と全く同じ恋愛感覚を持っていて、考えてる事もほとんど同じ。
だから、先輩の言葉を聞いて引き出しが開かれっぱなしに。
ご飯を奢ったりしてあげたのも、同じ。
考えが全く同じなので、男が女と付き合った後も……メールなんかが送られてきたら、彼女はきっと喜んでしまう。
多分、あまりよくない方向な。
333:
ネタバレ
店員娘
彼女は別に、男の事が好きってわけではないです。
ただ、幸せそうにご飯を食べる二人(主に後輩)を見るのが好きだっただけ。
優しいお姉さん。
最初の女の夢→猫になりたいなあ
猫の夢→気まぐれな女の事
もやもや、分かりにくすぎるってよく言われるので今回は最後に解説だけ。
336:
その子とメールをするだけで、あるいは話すだけで元気が出るような。
彼女はそんな人。
これで、終わりです。
335:
このあと男と女はつきあうって事で良い?
347:
>>335
はい
最後の猫が、それです。
343:
いつもよりわかりにくかったとこはあるけど
相変わらずミステリアスで飲み込まれた
おつです
346:
乙!こういうのもあった方が一辺倒にならなくて良いと思うんだがな。面白いと思ったし
348:
リアルタイム感動!
盛大にくっそくっそ乙!
379:
まぁ、自分にはちょっと難しかったかな。
352:
おもしろかった!
GJ
36

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