みほ「河嶋さんってもしかして……ポンコツ?」back

みほ「河嶋さんってもしかして……ポンコツ?」


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1:
大洗女子学園
放課後
桃「今日の練習はこれで終わりだ」
桃「1回戦サンダースを下し、2回戦ではアンツィオに快勝……我々大洗は驚異的な快進撃を続けている」
桃「だが、これにあぐらをかいて腑抜けるなよ! 3回戦は昨年優勝校のプラウダだ!」
桃「心して日々の習練に励むように! 分かったか腰抜けども!」
桃「では解散!!」
ワイワイワイガヤガヤガヤ……
柚子「正直、一番腑抜けてるのは桃ちゃんじゃないかなー……」
桃「桃ちゃん呼ぶなっ……、な、何だと! どういう意味だ!」
杏「確かにねー。低かった命中率がさらに下がったようなー」
桃「か、会長までっ! あれは挑発用の攪乱作戦の為の砲撃で……!」
柚子「家族の皆に自分のおかげで3回戦まで進んでいると吹聴してるらしいよね……」
桃「な、何故それをっ!? お、お母さんまさか柚子ちゃんに連絡を……」アタフタ
2:
モモチャン…
モモチャンイウナー!!
みほ「……」ジー
沙織「どうしたのみぽりん。帰らないの?」
みほ「あっ、ごめんなさい、ちょっと考え事で……」
華「生徒会の皆さんの方向を向いていましたが、何か生徒会にご用ですか?」
みほ「違うの、そういうのじゃなくて……」
麻子「厳密には河嶋さんを見ていたようだ」
優花里「河嶋殿に個人的な用……!?」ピクピクッ!
3:
みほ「うーんと、用っていうか、何ていうか……。大したことじゃないんだけど……ちょっと思っちゃって」
みほ「こんなこと言うの悪い気がするんだけど……」
みほ「もしかして……河嶋さんって、その、ポンコツじゃないかなー……って」
四人「「「「……えっ? 今更?」」」」キョトン
みほ「えぇーーっ!?」ビックリ!!
6:
華「グロリアーナ戦だけが理由じゃないですよね」
みほ「う、うん……あとは……」
みほ「自分の戦術採用されなくて怒っちゃう所とか、サンダース戦でパニックになっちゃった所とか……」
みほ「それでやっぱり『この人って出来る感じがするだけのダメな人じゃないかな』って……」
沙織「気づくの遅いよみぽりーん」
みほ「そっか……私一人でモヤモヤしてたけど、皆とっくに感づいてたんだ……」
麻子「おそらく厳密には気づいてない者が一人だけいるぞ」
みほ「えっ? 私でさえ感じてたのに!? だ、だれっ!?」
麻子「河嶋さん自身だ」
みほ「えー……」
優花里「あの人、自分がポンコツだなんて微塵も思ってなさそうですよねぇ」
みほ「えー……」
7:
みほ「誰か指摘する人とかいなかったの……?」
沙織「生徒会は緩いノリしてるからねー」
みほ「そんな人が副会長で大丈夫なのかな……」
華「 ? 副会長は小山さんですよ?」
みほ「嘘ぉーーーーッ!?」ビックリ!!
みほ「えぇっ!? 副会長じゃないの、あの人!? あんなにいかにも副会長ですって感じの見た目と立ち振る舞いしてるのに!?」
沙織「たしかに私たちも最初はびっくりしたよ」
優花里「世の中の副会長は大抵メガネをかけた冷静沈着の才女っていう固定観念の弊害ですねー」カワシマサンハモノクルデスケド
8:
みほ「じゃ、じゃああの人何してるの……?」
麻子「確か広報だな」
みほ「広報…………」
みほ「広報って……」
華「みほさん、その反応は一種の職業差別に繋がってしまいますよ」
みほ「ご、ごめんなさい……本当にそんなつもりはないの……」
みほ「でも、今まで勝手に副会長だろうと思ってたから……その、ギャップが……」
優花里「なかなかショックを受けていますね」
みほ「はっ……! 私、よく考えたらさっきからすごく失礼なこと言っちゃってる!」
沙織「みぽりん気づくの遅い」アハハ…
麻子「オブラートとか言ってたが厳密に言わんとしている本質は結局のところ失礼極まりないからな」
9:
みほ「こんな陰口みたいなこと言っちゃうなんて……」
優花里「陰口じゃないですよ?、事実なんですから」
みほ「それってよく聞くいじめっ子の主張なんじゃ……」
沙織「待って待って、みぽりん、落ち着いて。私たち誰も河嶋さんを虐めたりしてないよ?」
みほ「え……?」
麻子「河嶋さんを嫌ってる者などいない」
優花里「あのポンコツ具合を含めて河嶋さんの魅力っていうやつですからね」
華「むしろ何だか微笑ましいですよね」
沙織「上級生というよりも……マスコット見てる感じ?」
麻子「大洗のマスコットか」
優花里「なかなか可愛らしいかもしれませんね」
みほ「……そっか、そうだよね!」
みほ「うん、私もあの人に少し困っちゃうことはあっても蔑ろにしようなんて気は起きなかった……」
みほ「あのポンコツぶりも含めて愛されてるんだね!」
10:
みほ「よかったー、私、自分が嫌な子になっちゃったかと思っちゃった」
杏「いやー、いいお話だねー小山」
小山「はい」
みほ「ふえっ!? せ、生徒会の!」
華「あ、あらあら」
優花里「く、件の河嶋殿を除いたメンバーです、いつのまに……」
みほ「もしかしてさっきの話を聞いて……」
杏「うん、バッチシね」ニコッ
みほ「ご、ご、ごめんなさい!! 河嶋さんに対して……こんな……!」
杏「いいのいいのー事実だからねー」
小山「私たちだって思ってることだからね」
みほ「えっ……?」
杏「まあイジメ紛いのことなら見過ごすことは出来ないけど……、愛のある接し方されてるのは話聞いてて分かったからねー」
11:
小山「桃ちゃんは先に帰ってたけど。もし聞いてたら大変だったかもね」
みほ「ほっ、よかった……」
杏「ところでさ……話聞いてて面白いこと考えちゃったんだけどー」ニヤニヤ
みほ「へっ?」
優花里「面白いことですか……?」
小山「会長、まさかアレを……?」
杏「うむっ」
杏「皆、むしろ河嶋をイジメてみない?」
.
12:
翌日
生徒会室
ガチャッ
優花里「失礼します!」
沙織「失礼しまーす」
桃「秋山に武部か。珍しいな貴様らが生徒会室に来るなんて」
桃「会長に何か用か? 生憎、今は席を外していて私一人だ」
優花里「いえ、そうではなくて……」
沙織「私たち河嶋さんにお聞きしたいことがあって!」
桃「私にだと……?」
優花里「はいっ! ちょっと机の方に失礼します!」
バサーッ
桃「おい、勝手に会長の机の上に……なんだこれは」
スッ
桃「参考書……?」
13:
優花里「はい! 実は最近、戦車道に専念するあまり勉学のほうが疎かになっていまして……」
桃「ふむ。それは由々しき事態だな」
沙織「このまま戦車道だけの頭の悪い女子になっちゃったらモテ道なんて夢のまた夢ですよぉ?!」
桃「そ、そうなのか?」
桃「貴様らの学力が芳しくないのは分かった、結局のところ私に何の用だ」
優花里「決まってるじゃありませんか! 河嶋殿に勉学を教えて頂こうと思いまして!」
桃「……ふぇっ?」
.
14:
別室
モニター『わ、私が勉強を……!?』
杏「おー綺麗に映ってるー。さすが秋山さんの潜入用小型カメラだねぇ」
柚子「桃ちゃんさっそく焦ってる」
麻子「河嶋さんの学力はランキング的にかなり下部の方だからな」
華「そこに勉強を教えて欲しいと下級生が襲来……ここからどうなるんでしょうか」
みほ「あ、あのー……」
杏「何、西住ちゃん?」
みほ「本当にこんなことしてもいいんでしょうか……。いくら愛があるからってこんなイジメ……」
杏「イジメってのは物の言い方だよ。ほら、ドッキリだよドッキリ!」
みほ「でも……河嶋さんが可哀想な……」
杏「これは河嶋の為でもあるんだよ」
みほ「え?」
15:
杏「河嶋はさ、戦車道で絶対優勝したいって気持ちが人一倍高いからね(私たちもだけど)」
杏「それで、何とか皆を引っ張って行きたい、鼓舞したいっていう意識が空回りしちゃうんだよー」
柚子「ごめんねー。桃ちゃんのちょっとキツい言い回しはそういう面が強く出ちゃってるの。悪気はないの」
杏「気を張るのは悪くないんだけど、私らとしてはもっとリラックスして取り組んでほしいな?っていうね?」
柚子「正直、桃ちゃんって私たち以外に親しい人少ないから……」
杏「そこでこのドッキリって訳! これを機に皆の距離が縮むっていうかー? 河嶋も皆と親しみやすくなるようにってね」
みほ「うまくいくんでしょうか……」
杏「騙してる間はそりゃあちょっと悪い気もするけど……、ちょっとふざけ合うくらいがいい友人関係ってもんでしょ、多分」
華「ことの成り行きを見守りましょう。まずはこのお二方のドッキリを……」
杏「皆にも出番あるからそのつもりでよろしくー」
みほ(これって皆ただ河嶋さんの困っている姿をみたいだけなんじゃ……)
 桃『そ、そんなの冷泉に聞けばいいだろう! あいつは学年主席らしいじゃないか!』
麻子「動きがあったようだな」
16:
生徒会室
優花里「冷泉殿はやはり天才肌ですからねー」
沙織「『教科書読めば分かる』としか言わないんだもん」
桃「そ、そうか……。だ、だが何故私なんだ、会長や柚子でなく……」
優花里「それはもちろん、河嶋さんから『デキる女』ってオーラが出てるからですよー!」
桃「!!」
桃「ほ、本当か!? 本当にそう感じたか!」ガバッ!
優花里「え、ええ……(でまかせなのにこの食いつきよう……)」
沙織「河嶋さんって、何て言うか、クールビューティー? みたいな?」アハハ…
桃「クール……! ビューティー……! ふっ、ふふふふ、そうかそうか……!」ホクホク
沙織(うわー心が痛くなるくらいの喜びよう……)
桃「まあ当然だな! なんたって私はこの大洗のTOPに君臨する生徒会の一員だぞ!」
桃「会長も私の頭脳明晰さには一目置いているし、柚子だってたまに私が勉強を教えてあげてだな……!」
沙織(嬉しすぎて自分から話にノッちゃったよ……)
優花里(自ら逃げ場を塞いできましたね)
優花里(何でしょう、このドッキリ結構楽しいですね!)
17:
別室
柚子「あぁ……あんな出任せベラベラと……。本当は試験前にいつも私に泣きつくのに……」
杏「これじゃドツボにドボンだねー」
 優花里『それは頼もしいであります! では是非、この数学の公式を!』
 沙織『はーい、私は古文お願いしまーす!』
 桃『……はっ、しまった!』
麻子「今しまったと言ったな」
華「ええ、はっきりと。どんどん顔面が蒼白になっています」
みほ「まるで起きたらバイトの時間過ぎててケータイにバイト先からの着信履歴びっしりだった時の顔……」
 桃『くっ、仕方ない……、ど、どの問題だ』
 優花里『はい、こちらのxの値を求める問題なのですが……』スッ
杏「お、向かっていったねー」
柚子「あの顔……、多分『どうせ2年生の問題だし自分でも解けるだろう、いや解けてくれ、出来ればかなり簡単な問題来てくれ』って顔です……」
18:
 桃(えっ、何これ習ってないよ……、知らないこんな数式……)ガタガタ
 優花里『何故かこちらとイコールの関係にならなくて……、河嶋殿? どうしました?』
柚子「そして『こんなの習ってない!』って顔になっちゃった……」
華「よく分かりますね、まるで河嶋さん博士です」
麻子「付き合いが長いからこその技だろうな」
みほ「あはは……」
柚子「気づいて桃ちゃん! 習ってるのよそれ! 習ってないんじゃなくて2年の時に桃ちゃんが覚える気無くて聞き流してた公式なのよ!」
杏「さあ、どうする河嶋」
 桃『……こんな初歩も分からないとは呆れたな』
 優花里『えー、ちょっとした応用問題で難しいんですよー!』
 桃『これくらい私の教えなくとも自力で解き直せ! 私の時間をこんな問題で奪うんじゃないっ!』ビシッ!
 優花里『いや、ヒントくらい……』
 桃『時間の無駄だ、失せろ失せろ!!』ビシビシッ!
 優花里『えー…』
華「ずいぶん強引な回避の仕方ですね」
麻子「ぜんぜん回避できてないけどな」
19:
 沙織『あのー、私の問題は……』
 桃『ふん、見せてろ』
 沙織『古文なんですけど『ありおりはべりいまそがり』は覚えたんですけど時制の変化がどうも苦手で……』
 桃『き、貴様日本語を話せ!!』
 沙織『一応日本語なんですけど……』
 優花里『待ってくださいよ、教えてください河嶋殿!』ズイ!
 沙織『あっ、今は私の番だよ! 先輩、お願いします!』ズイ!
 桃『あぅぅ……』アセアセ
みほ「完全に囲まれちゃってる」
杏「さっきの逃げ方はもうダメだよ、どうするんだー?」
 桃『……そうだ!』スッ
 優花里『河嶋殿……それは?』
 沙織『ケータイ?』
 優花里『ま、まさか生徒会ともあろう方が問題の答えをググろうなんて魂胆では……』
 桃「だっ、断じて違う! 生徒会との大切な連絡事項を思い出したんだ!! も、問題は手伝ってやるから少し待ってろ……!」ポチポチ
20:
華「ケータイをいじりだしましたね」
杏「生徒会の連絡事項なんてあったっけー?」
柚子「いえ……今日はまだ何も無いはずなんですが……」
 ヴーヴー!
柚子「ん? 私のケータイ……もしかして……」
カチャッ
 差出人:桃ちゃん
 件名:たすけてゆずちやんどうしてもわからないもんだいがあるのすぐにせいとかいしつにきて
 本文:<本文はありません>
.
21:
柚子「…………桃ちゃん」ホロリ…
華「小山先輩に救援を……」
麻子「なんだこの読みにくい文は……」
柚子「桃ちゃん、まだ文字の打ち方がよく分かってないの……」
杏「あちゃー、あれほど言ったのにまだ件名と本文の区別付いてないんだー……」
みほ「うあぁ……」
杏「どうする小山ぁ?」
柚子「これも桃ちゃんの為……! 私、心を鬼にします!」
ポチッ!
みほ「電源落としちゃった!」
麻子「これで援軍は絶望的だな」
 優花里『河嶋殿ーまだですかー?』
 沙織『出来れば早くしてほしいです』
 桃『せ、急かすな!!』
22:
 桃(柚子ちゃん早くして?!! メール見てないの!?)アセアセ
 優花里『河嶋殿?!』
 沙織『せんぱーい!』
 桃『う、うぅぅっ……!』
 桃『わ、分かった……。この問題はだな……』スッ
 優花里『おお、ありがとうございます!!』
華「参考書を手に取りました。教えてますよ」
みほ「ついに観念したんだね」
麻子「だが、河嶋さんにあの問題は解けない代物なんじゃないか。だからこそ小山さんに助けを呼んだ訳で……」
杏「じゃあ、あの子は何教えてるのさ」
柚子「あれはまさか……」
23:
 桃『……こうなって答えはX=38T,45,3102,M3,89だ』
 優花里『……あのー、お言葉ですがどう考えても答えがおかしいような気がするんですけど』
 沙織『TやMはどこからきたの……』
 桃『そしてその古文の現代語訳は『桃ちゃんクールでスマートなブルズアイ』だ』
 沙織『絶対違う……絶対に違うこれ……』
柚子「適当な答えを吐いてる…………!!」
みほ「えぇーー……」
杏「うわーひどい」
麻子「正気か、少し調べたらすぐにバレるじゃないか」
華「もうこの場を切り抜けることしか考えてませんね」
 桃『上級生である私がこうだと言ったらこうだー! もう解いてやったんだから出てけー!!』ジタバタ
 優花里『うわっ暴れ出した!』
 沙織『行こうっ! し、失礼しましたー!』
 ガチャッ!!
 桃『はー、はー……! 危なかったが何とか切り抜けたぞ……』
柚子「き、切り抜けてない……、全くもって切り抜けてないよ桃ちゃん……!」
杏「本人はセーフだと思ってるねー」
24:
ガチャッ
優花里「ただいま戻りましたー!」
沙織「ただいまー」
華「おかえりなさい」
杏「おつかれー」
沙織「河嶋さんには少し悪いけど結構楽しかったよー!」
優花里「アタフタしている姿を見ると飼い主に悪戯されて困惑する犬を見る気分でした!」
みほ(秋山さんがそれ言うんだ……)イヌハドチラカトイウトアナタ…
杏「じゃ、次は誰が行こうかー」
みほ「ま、待ってください、やっぱりやめにしましょうよ」
杏「まだ言っちゃうの西住ちゃーん?」
みほ「ドッキリというのも分かりますけどやっぱりどこかいたたまれなさが……」
麻子「おっ」
華「どうしました?」
麻子「モニターの河嶋さんに変化が」
みほ「えっ?」
25:
.
 桃『……うっ、ひっく……えぐ……』ポロポロ
みほ「な、泣いてる……! やっぱりこれはイジメと同じですよ……! はやく謝りに……!」
柚子「いや……ちょっと待って西住さん……。あれは……」
 桃『うぅ……嘘教えちゃったよぉ……』ポロポロ
 桃『これで秋山達が試験に落ちて留年でもすれば……私のせいだぁ……』ポロポロ
 桃『でも恥ずかしく本当のことなんて言えないし……』
 桃『どうすればいいの……』ポロポロ
柚子「????! もう桃ちゃん純真すぎ!!」
優花里「ま、マジ泣きですかこれ……」
沙織「そ、そんなに泣かなくても」
華「やはりマスコット的ですね」アラアラ
麻子「嗜虐心をくすぐられるというのはこういうことか」
みほ「…………っ!」キュン!
26:
みほ(な、何今の感じ……、すごく心がときめいたっていうか……)
杏「あっ、もしかして西住ちゃんもときめいちゃったんじゃない? 河嶋の小動物的な可愛さに」
杏「西住ちゃんがどうしてもって言うなら私たちも止めるよー。隊長命令だしねー」
みほ「…………」チラッ
 桃『どうしよう?……』ポロポロ
みほ「…………」
みほ「やりましょう」キリッ
沙織「みぽりんいい顔してる……」
優花里「まるで戦車に乗って指揮している時のようです!」
みほ「でもこのままじゃダメですよ! ちゃんと最後にはネタばらしするんですよ!」
杏「分かってるってー」
杏「じゃあ、次の仕掛け人にはこれ配るねー」パラパラ
優花里「さきほど我々にも配ったドッキリの計画書ですね」
27:
杏「はーい、よろしくねー」
華「私の番ですか……?」
麻子「私もか」
柚子「私もですね」
杏「そして私ー、この4人で生徒会室にいくよー。計画書に目を通してねー」
みほ「あれ……、私は……?」
杏「西住ちゃんには取っておきのトリが待ってるからね。まあモニター見て待っててよ」
優花里「生徒会室にも仕掛けておりますが、一応この隠しカメラもどうぞ」スッ
杏「りょうかーい。いってきまーす」
ガチャッ
みほ「つ、次は4人で……どうなっちゃうんだろう」ドキドキ
優花里「西住殿、どうやらドハマりしてしまったようですね」
沙織「私たちも人のこと言えないけどね。私ってもしかしてSだったのかなー、じゃあ付き合うならM目の男の子?」キャーヤダモ-!
28:
生徒会
桃「うぅ……」
ガチャッ
杏「ただいまー」スタスタ
柚子「……」スタスタ
華麻子「「お邪魔します」」スタスタ
桃「はっ……」ゴシゴシッ
杏「どうしたの河嶋ー、目赤いぞー」
桃「か、花粉症なんです!」ゴシゴシッ
杏「へーお大事にねー。そうそう、さっき廊下で秋山ちゃんと武部ちゃんにバッタリ会っちゃってさー」
桃「……えっ?」ビクッ
杏「どうやら難しい問題に悩んでたみたいだけど、答え間違ってたから教えてあげたよ。これも会長の務めって奴かなー」
桃(ちゃんとした答え教えてもらえたんだ……良かったぁ……!)ホッ…
杏「でもよく聞いたら河嶋にあのヘンテコな答え教えてもらったって聞いたんだけどー」ニヤニヤ
桃「あっ、あれは何もかもを先輩に頼るなという教訓としてですねっ……!」アタフタフ
杏「へーなるほどねー」ニヤニヤ
桃「本当ですよ!」
華(さすが会長……、河嶋さんのテンションを見事に元の状態に戻しました)
麻子(ずっとあの塞ぎ込んだ状態だと次のドッキリのやりがいがないからな)
29:
別室
 桃『本当は答えは分かっていましたが、すぐにそれを教えたら奴らの為にならないと思って……!』
優花里「物は言い様ですねー」
みほ「必死に取り繕ってるね」
 桃『そ、そうだ柚子! さっきメールしただろ! 何故返信しない!?』
沙織「あっ、さっきのメールのことで小山さんに噛みついた」
 柚子『…………』
 桃『ゆ、柚子……』
 柚子『…………』
優花里「こ、小山殿、返事しません! これはもしやドッキリネタお約束の……!」
みほ「『○○を無視したらどうなるか?ドッキリ』……!」
 桃『お、おい聞こえてないのか、柚子……』
 柚子『…………』
 桃『柚子……』
 柚子『…………』
 桃『柚子……ちゃん……』ジワッ
30:
沙織「どんどん涙目になっていってるよ!」
みほ「……抱きしめたい」ボソッ
優花里「に、西住殿!?」
みほ「……あっ、ち、違うよ、ほら、愛玩動物的な意味でね!」
優花里「で、ですよね……」
優花里(要注意人物がここで浮上してくるとは……)ゴクリ…
 桃『柚子ちゃん……なんで返事してくれないの……?』ポロポロ
 柚子『…………』
 桃『私……何かした……ねぇ、謝るよ?』ポロポロ
 杏『小山ぁ、弾薬の注文書なんだけどー』
 柚子『はい、こちらにの資料ファイルにまとめてますよ』スッ
 桃『うぅ……なんでぇ……』ポロポロ
 麻子『大丈夫か河嶋さん』
 華『こちらハンカチですよ』スッ
 桃『う……、いらない、見るなっ……』ゴシゴシ
 桃『…………』
 桃『……というか今思うと何で貴様らがここにいるんだ』
優花里「おお、ようやくその疑問が浮かびましたね」
31:
 杏『あー、そのことだけどさぁ。その2人に生徒会に入ってもらうことにしたんだ』
 桃『えっ!?』
 杏『私たちがいつも生徒会の仕事で大変そうだからお手伝いしてくれるって言ってくれてね。試しにちょっとした仕事を押しつけてみたらテキパキこなしちゃってさ』
 麻子『経理関係なんてちょっとした計算問題だからな』
 華『書類整理もお任せください』
 杏『じゃあもう生徒会入っちゃう?ってノリでねー』
 桃『そ、そうなんですか……。た、確かに我々の仕事を分担できるのはいいですね』
 杏『もしかしたこの子達が時期会長副会長になったりしてねー』
優花里「なるほど、今回はこういう設定なのですね」
 桃『やったな柚子! 我々の直属の部下だぞ!』
 柚子『…………』シーン
 桃『うぅ……』
 杏『そんじゃこれから頑張ってねー。広報主任冷泉ちゃん、広報補佐五十鈴ちゃん』
 柚子『分からないことがあったら何でも聞いてね』
 麻子『了解』
 華『はい♪』
 桃『……えっ?』
32:
 桃『あ、あのー、会長……、こ、広報は私の仕事では……』
 杏『あー、やらしてみたらこの2人結構広報の仕事に向いてるみたいでさ』
 杏『会長特権で広報主任と広報補佐に任めーい』
 杏『まあ広報だけじゃなくて全体の仕事も任せるけどね』
 桃『そ、そんな……では私の仕事は……』
 杏『うーん、じゃあ河嶋は部署変更ねー、えーとじゃあ……』
 杏『広報補佐補佐で』
 桃『ほ、ほさほさぁ……!?』ガーン…
 麻子『よろしくな河嶋広報補佐補佐』
 華『よろしくお願いいたします補佐補佐』
 桃『うぅ、そんなぁ……しかし会長命令……でも私の威厳が……』
 
沙織「うわー、これキツイ。部活で下級生にレギュラーの座を奪われるみたいなもんじゃん……」
優花里「プライドの高い河嶋殿には相当効くのではないでしょうか」
みほ「みるみる内に意気消沈していってるね」
33:
 杏『そんじゃぁ、戦車道の時間までに溜まってる生徒会の仕事終わらすかー』
 麻子『さっそく初仕事か』
 華『お任せください』ウフフ
 柚子『期待してるよ』フフ
 桃『わ、私は……』
 杏『冷泉ちゃんと五十鈴ちゃんがほとんど仕事終わらしてくれるだろうし……補佐補佐までは仕事が回ってこないかな。休んでていいよ』
 桃『えぇ……、な、何故です会長ぉ……。私はもう生徒会にいらなくなったってことですか……?』
 杏『そういう訳じゃないってー、ほら適材適所?』
 桃『そんなのって……。ゆ、柚子ちゃんも何か言ってよ……』
 柚子『……』ツーン
 桃『ふ、ふえぇ……』ポロポロ
優花里「親友の小山殿に無視され、生徒会に自分の場所はなくなる……」
沙織「ひー、私なら絶対学校行きたくなくなるよ?!」ヤダモー!
みほ「この空間とっても居づらいだろうなぁ」
34:
 麻子『ここ、少し計算間違いをしているな。こうすると……ほら備品代が少し浮いた』
 杏『おおー、いいねぇ節約。ありがたいよ冷泉ちゃーん』
 華『リストの整理終わりました』
 柚子『ありがとう五十鈴さん! すごく仕事がくて助かるわ』
 桃『…………』ポツ-ン...
みほ「皆が仕事しているのにやることがなくて端っこで棒立ちになっている……」
沙織「いたたまれない! いたたまれないよ!」
優花里「しかし心が痛いはずなのに何故か見ることを止めれませんね、さすがはマスコット」
35:
 杏『……あっ、そーだ、河嶋ぁ。特別な仕事があるんだけど』
 桃『ほっ、本当ですか!?』ガバッ
 杏『ホントホント。河嶋にしか頼めない仕事なんだよ』
 桃『どうぞ、どんなことでも何なりと!』
 杏『うん、はいこれ』
 チャリン
 桃『……お金? あ、あのこれは一体』
 杏『購買部で干し芋買ってきてよ』
 桃『』
沙織「さらにパシリ……」
優花里「泣きっ面にティーガーですね」
36:
 桃『こ、これが私ににしか出来ない仕事……ですか……』
 杏『うん。干し芋切れちゃってさ。他の皆は仕事で忙しいし、よろしくね補佐補佐ー』
 
 麻子『頑張れ補佐補佐』
 華『ファイトです補佐補佐さん』
 柚子『…………』
 桃『ぅ……うぅっ……いってきましゅ……』トボトボ
みほ「ああ……、何て哀愁を誘う背中……」
沙織「キノコでも生えてきそうな陰鬱なオーラだね……」
優花里「おや、そろそろ戦車道の時間です。ということはこのドッキリを継続して練習になりますね」
37:
ーーーーー
ーーー
ーー
そしてその後の戦車道の時間も…
優花里「河嶋殿! こちらの問題なんですが!」
沙織「河嶋さん! 実はモテる秘訣とか知ってたりするんじゃないですか!?」
桃「い、今は忙しいから……」
桃(また難しい問題だし、モテたことなんてないから分からないよぉ……)
優花里と沙織はしつこく河嶋に(彼女が分からないであろう)問題の答えを尋ね…
桃「も、目標はIII突カバさんチームにするぞ、柚子」
柚子「……」
桃「ふぅぇ……」ジワッ
杏「小山ぁ、カバさんチームを狙おっか」
柚子「了解です♪」ガシャコン
桃「うぅ……」ポロポロ
柚子は無視を続け……
38:
杏「ねえねえ、生徒会だけじゃなくてこっちのチームにも来てみない? 特に砲手の五十鈴ちゃーん!」
華「えーどうしましょう」
麻子「さすがに隊長が許さないだろう」
杏「うーん、残念」
桃(私に聞こえるような大きな声で……。やっぱりも私は要らない子なのか……)
会長は華と麻子を優遇し続け……
桃「ふぅえぇ……」ポロポロ
エルヴィン「なあ、試合でもないのに河嶋先輩がボロ泣きしているぞ……」
左衛門佐「面妖だな……」
カエサル「しかし何というか……」
おりょう「目が離せないぜよ……」
桃は泣きっ面のまま戦車道の時間を終えたのだった
39:
ーーーーー
ーーー
ーー
杏「じゃあ、今日は解さーん!」
「「「「ありがとうございましたー」」」
ザワザワガヤガヤ
杏「ふー、おつかれおつかれー。じゃあ、私たちは生徒会室に戻ろっか」
柚子「はい。いきましょうか、五十鈴さん、冷泉さん」
麻子「了解」ゾロゾロ
華「はい」ゾロゾロ
桃「会長……私は……」
杏「あー、もう今日はいいかな。先に帰っていいよー」
桃「うぅ……はい……」トボトボ…
杏「あっ、そうだ忘れてた、河嶋ぁ!」
桃「……っ! はいっ! 何ですか!?」クルッ!
杏「干し芋のお釣り返して」スッ
桃「」
桃「………………はぃ」グスッグスッ
チャリーン
杏「ん、確かに。じゃお疲れ?」
桃「」フラフラ…
40:
優花里「さすが会長殿! 最後に見事に上げて落としましたね!」
杏「んっふっふ?、まああの子の扱いは慣れてるもんねー」
沙織「さあ、いよいよ最後のドッキリ……みぽりんの番だよ!」
麻子「これが終わればいよいよネタばらしか。出来れば1週間くらい続けたい面白さだが流石にそれは気の毒だな」
柚子「最後だから遠慮せずにやっちゃっていいからね!」
みほ「は、はい……」
華「緊張していらっしゃるのですか?」
みほ「それもあるんだけど……、このドッキリ絶対にしないといけない?」
杏「あれー西住ちゃん、まさか今更止めるなんて言わないよねー」
みほ「いえ……その、ドッキリをするのはいいんです。正直ああいう河嶋さんの姿をもっと見たいっていうか……」
みほ「でもその、ドッキリの内容が……」ペラッ…
杏「指示書が気に入らない? でもー、このドッキリはかなり河嶋も困った顔見せてくれると思うよー?」
みほ「……」
41:
杏「今回のドッキリは無理矢理泣かすようなものでもないし。大丈夫、ちゃんと時間になったら私たちが『ドッキリ大成功ー!』って押し掛けるから!」
みほ「……わ、分かりました! 私、思い切ってやってみます!」
みほ「行ってきます!」ダッ
麻子「健闘を祈る」
沙織「頑張ってねー!」
優花里「……会長殿、一体どういう内容のドッキリなんですか?」
杏「んー? それは後のお楽しみだよー?」
杏(秋山ちゃんに知られたら中止にされそうだしねーふふふ)
杏「さあ、私達は西住ちゃんと河嶋をこっそりストーキングだぁー」
柚子「桃ちゃん……一体どんな顔見せてくれるのかしら」ドキドキ
42:
校門
桃「はぁ……」トボトボ
みほ「河嶋さーん!」タッタッタ…
桃「西住……? 何か用か……?」
みほ「はぁ、はぁ……良かった間に合った……。よければ一緒に帰りませんか?」
桃「私とか……? お前にはあんこうチームのメンバーがいるだろ」
みほ「華さんと麻子さんは生徒会室に行っちゃって……、他の皆も散り散りに解散になっちゃったんです」
みほ「それで、河嶋さんが一人で歩いてるのを見て……」
桃「……」
桃「私を笑いにきたのか」
みほ「えっ……?」
桃「五十鈴と冷泉に広報の座を追われ……生徒会から蹴り出されて一人哀れに帰る私を……」
桃「笑いに来たんだろ!」
みほ「そ、そんな……私はそんなんじゃ……」
43:
柚子「ああ、怒りを西住さんに向けちゃってる」コソコソ
優花里「むむむ、爆発していますね」コソコソ
桃「貴様はいいよな……、技術もあるし才能もある。あの西住流で、あの黒森峰の副隊長……」
桃「私には……何もない……」
みほ「そ、そんなことないですよ……。人にはその人それぞれの持ち場ってものが……」
桃「月並みの言葉なんていらない! 私には何もないんだ……」
桃「何も、何もないから……」ポロポロ
桃「柚子ちゃんにも無視されて……会長に愛想尽かされちゃったんだぁ……!」ポロポロ
みほ「河嶋さん……」
麻子「やはり慕っていた生徒会に蔑ろにされたのは辛かったようだ」
柚子「桃ちゃん……」キュン…
杏「うーん、ネタばらしした後にヨシヨシしてあげなきゃねー」アハハハー…
44:
みほ「な、泣かないでください」
桃「だ、だってぇ! もう私要らない子だもん! 生徒会でも戦車道でも要らない子なんだもん!!」ピエェン!
そど子「ちょっとそこ! 何の騒ぎ!?」
みほ「あっ、風紀委員の……!」
そど子「まさかイジメじゃないでしょうね!? ちょっと話を聞かせてもらうわよ!」
みほ「河嶋さん、こちらに!」ガシッ
河嶋「うぅぇぇん……!」
杏「お、思ったより早く場所替えになったね! 追うよー!」ダッ
沙織「わ、結構早い! やだもー!」ダッ
優花里(場所替え……? まさか)
45:
ーーーーー
ーーー

みほルーム
みほ「落ち着きましたか?」
桃「……迷惑かけたな」
みほ「いえ、大丈夫ですよ」

 ケータイ『紅茶でも飲んでゆっくりしていってください』
杏「うーん、流石に画質や音質は悪いけど無いよりマシだねー。あらかじめ西住ちゃんに小型カメラ渡しておいて良かった良かった」
優花里「な、何故西住殿のお部屋に……! これはどういうことですか、会長殿!」
杏「まあまあ、これも演出の一環だから」
沙織「ちょっと皆引っ付き過ぎ! 痛い!」ギュウギュウ!
麻子「引っ付かなければ見えないんだから致し方あるまい」ギュウギュウ!
柚子「画面が小さいからね……」ギュウギュウ!
華「み、見えませーん」アタフタ
46:
みほルーム
桃「……色々すまない」
みほ「いいんですよ、あのまま放っておくことなんて……」
桃「今日のことだけじゃない……」
みほ「へっ?」
桃「その……西住、貴様には色々と、強く当たってしまって」
桃「私は、どうしても全国大会優勝したいんだ……。だが、私の思いと皆の思いはズレがある」
桃「戦車道を強くしたい……しかし、私には悔しいが力がない」
桃「だからからか……、私には出来ないこと出来るであろう貴様に『何とかしろ』だとか『隊長だろ』だとか……」
みほ(良かった、内心自覚はあったんだ……)
みほ「そんなこと気にしていませんよ。……っていうか黒森峰にいた時の方がプレッシャーが大きかったですしね」
桃「貴様は……憎らしいほど人間ができているな。私と違って」
47:
桃「このままでは、私は皆が思っているほど完璧じゃないとバレてしまうな」フッ…
みほ(えっ)
みほ(皆そんなこと思ってないし、バレる以前に周知の事実なんだけどなぁ……)
桃「しかし、やはりもう私に居場所はないのか……」
みほ「そんなことないですよ! 小山さんや会長がどのような思惑かは知りませんけど……」
みほ「要らない人間なんて1人だっていません! 戦車道も生徒会も友情だって、誰か1人でも欠けたらダメなんですよ!」
桃「え……」
みほ「きっと生徒会の皆さんにも何かあった筈です。明日にはきっと、やっぱり河嶋さんがいないとダメだった、って謝ってくれます!」
桃「に、西住……!!」ジーン…!
48:

麻子「流石は西住さん。こんなにうまいこと話を良い方向にまとめるなんてな」
華「私も不覚ながら感動してしまいました……!」
優花里「しかし、このままではただの感動小話ですね。一体どこにドッキリ要素が……」
杏「ふっふっふ。ここからだよ、面白いのは……!」
みほルーム
桃「ありがとうな、西住、ずいぶんと気が楽になった」
桃「今日は世話になりっぱなしだな……さすがは隊長と言ったところか」
みほ「いえいえ、元の調子に戻ったみたいで安心しました」
みほ「それにしても……」
桃「ん?」
みほ「ちょっと失望ですよね……やっぱり河嶋さんがこんな」
みほ「ポンコツだなんて」
桃「……ふぇっ?」ビクッ
みほ「最初はモノクルしたデキる女って感じだったのに……広報だなんて正直がっかりですよ」
桃「に、西住……?」
49:
みほ「聖グロリアーナの時、私達の戦車を撃ちかけましたよね。あれ、当たったらどうするつもりだったんですか」
桃「あ、あれは緊張しすぎて……つい戦車が見えたから」
みほ「ついで撃つんですか? 戦車道でオウンゴールとか笑い話にもなりませんよ? まあ、河嶋さんのノーコンだったら万に一つも当たりませんからそこは安心ですけどね」
桃「うぅ……っ!」
みほ「ノーコンといえばその後0距離で外していましたよね。あれもう一種の才能ですよ」
みほ「帽子のない次元大介なんですか? もしかしてそれ、モノクルじゃなくて元はメガネですか? 片方失くしたからノーコンなんですか? じゃあ今すぐ失くしたもう片方探してきて次元大介になってください」
桃「そ、そんなにヒドいこと……」
みほ「ヒドい? ヒドいのは河嶋さんの生き様じゃないですか? 気に入らないことが起きたらすぐにヒステリー起こして喚いて落ち込むと泣き叫ぶなんて」
桃「うぅ……もうやめてぇ……」ポロポロ

柚子「ど、怒濤のドSモード……!」
杏「まさかここまで様になるなんてね……!」
華「凄い勢いですね……」
優花里(い、いいなあ……)ドキドキ
50:
みほ「やっぱり会長達は本当に愛想を尽かしたのかもしれませんね」
桃「さ、さっき貴様はそんなことないって……!」
みほ「考えが変わったんですよ。河嶋さんのポンコツ具合を見てたらね」
桃「ひぃ……」ポロポロ
みほ「だってこんなにノーコンでポンコツでヒステリックで泣き虫で広報な河嶋さんなんて」
桃「うぐっ……」ポロポロ
みほ「だーれも慕ってくれる人いませんもんね」
桃「うえええぇーーーん!」ポロポロ!
みほ「……でも、すごく可愛い」
桃「……ふぇっ?」ポカン
51:
みほ「あぁ……可愛い」スッ
みほ「有能ぶっちゃうけど肝心のところで失敗してすぐに泣いちゃう河嶋さん……すごく可愛いですよ」
桃「に、西住……!?」
みほ「ねぇ河嶋さん、私のモノになりません? 私だけのモノにね」
桃「な、何を言っているんだ……」
みほ「前から思っていたんですよ、河嶋さんがすごく可愛いって……」
みほ「これって恋なんじゃないかな」
桃「ほ、本当に何を言っているの……!?」
みほ「河嶋さん、居場所がないんでしょ? 私ならいつまでも可愛がってあげるよ」
みほ「会長や小山さんになんて渡さない……、私だけの可愛い可愛い河嶋さんにするんだ」
桃「こ、怖いよぉ……目がマジだよぉ……」ガタガタ
52:

優花里「な、な、な、何ですかこれーーー!?」ガガーン!
杏「『悩みを可決してくれたチームメイツがもしもドSメンヘラガチレズだったら』ドッキリだよー」
杏「でも想像以上に役にハマってるねー、あの子意外とソッチの素質あるんじゃない?」
優花里「ななななな!? そんなの認めませーん!」
沙織「ま、まあ落ち着いてゆかりん、これはドッキリだからみぽりんもお芝居だよ!」
優花里「し、しかし容認デキません!」
杏「皆、秋山ちゃん確保して」
柚子「はいっ」ガシッ
麻子「恨むなよ」ガシッ
華「ごめんなさい」ガシッ
優花里「うわー! 離してください! 小山殿はまだしも、冷泉殿や五十鈴殿まで何故!?」ジタバタ
麻子「面白そうだから続きをみたいんだ」
華「優花里さんを放置していると部屋に乗り込んでドッキリ中止になりそうですからね」
優花里「そんなー!」
杏「さあ、どんどん面白くなっていくよ!」
53:
修正

優花里「な、な、な、何ですかこれーーー!?」ガガーン!
杏「『悩みを解決してくれたチームメイトがもしもドSガチレズだったら』ドッキリだよー」
優花里「ななななな!? そんなの認めませーん!」
沙織「ま、まあ落ち着いてゆかりん、これはドッキリだからみぽりんもお芝居だよ!」
優花里「し、しかし容認デキません!」
杏「皆、秋山ちゃん確保して」
柚子「はいっ」ガシッ
麻子「恨むなよ」ガシッ
華「ごめんなさい」ガシッ
優花里「うわー! 離してください! 小山殿はまだしも、冷泉殿や五十鈴殿まで何故!?」ジタバタ
麻子「面白そうだから続きをみたいんだ」
華「優花里さんを放置していると部屋に乗り込みそうですからね」
優花里「そんなー!」
杏「さあ、どんどん面白くなっていくよ!」
54:
みほルーム
桃「に、西住しゃん……正気に戻って……!」ガタガタ
みほ「正気? 私はいつだって正気ですし本気ですよ」
みほ「もう居場所がないんだから学校行かなくてもいいですよね。この部屋で一緒にずっと楽しく暮らしましょうよ、ね? いいですよね?」
桃「ひぃぃ……!」ガタガタ
みほ「私だけがあなたを必要とするの。私がいないと生きていけなくしてあげる」ズズズ
桃「もう、嫌だ、助けて柚子ちゃぁん……!」
みほ「あぁ、本当に可愛いよ河嶋さん……」スッ
チュッ…
桃「」
55:

優花里「あああああああああああああ!! き、きききすききキスぅーーー!?」ジタバタ!
沙織「落ち着いて、ゆかりん、オデコだから! ノーカンノーカン!」
優花里「でもオデコキッスバージンが河嶋殿にぃーーーー!!」
沙織「何そのバージン!? 聞いたことないよ!?」
杏「ほー、一応指示書に書いたけど本当にやっちゃうなんてね」
柚子「会長、そろそろネタばらしのタイミングですね」
杏「うん、じゃぼちぼち行きますかー」
麻子「……なんか河嶋さんの様子がおかしいぞ」
杏「えっ?」
56:
みほルーム
みほ(は、恥ずかしいなぁ……、でもこれで完璧な演技が出来たよね?)ドキドキ
みほ(オデコちゅーはファーストにならないよね、うん……!)
桃「」
みほ(あっ、放心してる……?)
桃「ふぇっ」
桃「ふぇえええええええぇぇーーーーん!!!!」
びえーんびえーん!
桃「西住ぃぃぃぃぃぃ!!」ウェェェン!
みほ「っ! あ、ご、ごめんなさい、もうすぐにネタばらしが……!」
桃「き、き、き、貴様ちゃんと責任取るんだろうな!?」ウェェン!
みほ「……えっ? 責任?」
みほ「な、何の責任を……」
桃「決まってるだろう!」
桃「赤ちゃんだ! き、き、キスをすると赤ちゃんデキちゃうんだぞぉ!!」
みほ「え」
57:

全員「え」
 ケータイ『フエエエェェェーン!』
全員「……」
華「か、河嶋さん……」
麻子「まさかここまでポンコツなんて……」
沙織「女子高生の知識じゃないでしょ……小学生レベルだよ……」
柚子「そういえば、桃ちゃん保健の授業はいつも恥ずかしがって顔伏せてたなぁ。話も聞いてなかったのね……」
杏「可愛らしいけど……高校生としてどうよ」
優花里「……はっ! 早くネタばらしに行きましょう!」バッ
58:
みほルーム
桃「ちゃんと責任取ってよぉぉーーー!! 男の子なら『小次郎』で、女の子なら『すもも』だよぉーーー!!」フェェェン!
みほ「待って、河嶋さん落ち着いて!」
桃「河嶋さんじゃなくて『桃ママ』でしょーーー!!」ウエェェン!
みほ「えー……」
みほ(本当に何だろう、この可愛らしい生き物は……)
この後めちゃくちゃネタばらしした
59:
翌日
生徒会室
桃「……」ムスー
杏「まだ怒ってんのー? ごめんってば河嶋ぁ」
桃「今回はさすがの『仏の河嶋』も怒っています」プイッ
杏(何だその2つ名……欠片も聞いたことないな……)
杏「まあまあ、これであんこうチームとも親しくなったじゃん。作戦会議とか少しはやりやすくなったんじゃない?」
杏「これも長い目で見れば優勝に繋がって学園艦の存続にも繋がるわけだしさー」
桃「た、確かにそうかもしれませんが……」
桃「柚子! お前ももうあんなことに手を貸すなよ!」
柚子「……」
桃「……柚子?」
柚子「……」
60:
桃「お、おい……まだやってるのか? いい加減怒るぞ」
柚子「……」
桃「……」
柚子「……」
桃「……ね、ねぇ柚子ちゃん?」
柚子「……」
桃「ねぇってば……もうドッキリ終わったんでしょぉ……? 返事してよぉ……」ポロポロ
杏「あー、どうやら小山はまだ続けたいみたいだね……」
桃「ど、どうしてですか! 私の哀れな姿を見てそんなに楽しいということですか!?」
杏「いやー、可愛い所みたいってのもあるかもしれないけどー。これ見て」
スッ
桃「何ですかこの紙……」
桃「『河嶋桃砲撃命中率調査書』……?」
61:
杏「うん、ちょっと小山が個人的に調べててさ。ここ見て今までの訓練と試合を含めた命中率」
桃「うっ」
杏「すっごい低いじゃん? んでここ、昨日の練習のデータね」
桃「……命中率80%? ……ふぇっ!?」
杏「昨日、河嶋はドッキリのせいで塞ぎ込んでたから気づかなかったかもだけど、ほぼ全部の的当ててたんだよねー」
桃「わ、私がですか……」
杏「そ! 私もビックリだよー」
杏「どうやら、河嶋は普段の調子(に乗っている状態)だと命中率が低くて」
杏「逆に鬱気味だと上がっちゃうみたいなんだよねーこれが」
桃「………まさか柚子ちゃん?」
柚子「……」
杏「うん。『これから決勝までずっと桃ちゃんを無視します!』って息巻いてたよ」
桃「そ、そんなぁーーーッ!!」ウエェェン!
柚子(桃ちゃんの可愛い姿も見れて命中率もアップ……最高♪)ウフフ
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