【リトルバスターズ】理樹「右肩に全力を注げ」back

【リトルバスターズ】理樹「右肩に全力を注げ」


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15分前
理樹「えーっと座れる席は……あった」
理樹(街で買い物に出掛けていると予想以上に時間がかかった。この電車を逃すと危うく寮の門限を過ぎるところだった)
理樹「どっこいしょういち…っと」
「……あら?貴方は確か…」
理樹「えっ?あっ、笹瀬川さん」
佐々美「ご機嫌よう。……なんだか久々に名前を間違えられなかった気がしますわ」
理樹「君も買い物に?」
佐々美「いいえ。グローブの修理ですわ」
理樹(大事そうに抱えていた袋の中身はどうやらそれらしい)
理樹「物持ちがいいね」
佐々美「当たり前ですわっ。投手とグローブは一心同体!他人の入る余地なんてありませんもの」
理樹(笹瀬川さん程の人が言うとやはり違うなぁ)
佐々美「ところで……宮沢様は一緒じゃありませんの?」
理樹「いないよ。今日は1人で来たんだ」
佐々美「ハァ…そうですか。いえ、失礼しました」
理樹(うわぁ、分かりやすい)
佐々美「なんですのその目は?何か文句でもあって?」
理樹「な、ないない!本当にないから!」
佐々美「ふんっ」
3: 以下、
佐々美「すぅ………」
理樹(どうやら寝てしまったようだ。僕もなんだか眠たくなってきちゃったな……)
ピトッ
理樹「!!」
理樹(一瞬飛び跳ねそうになった。肩に何かが触れたからだ)
理樹「えっと………」
佐々美「はっ……」
ピシッ
理樹(その正体は笹瀬川さんの頭だった。笹瀬川さんがついつい僕の肩に頭を乗せてしまったようだ)
理樹(しかしそこは笹瀬川さん。当たった衝撃で軽く目を覚まし、頭を持ち直したようだ。でも、恥ずかしがろうともしない辺りまだまだ睡魔と格闘しているんだろう)
フラッ……
佐々美「ん……」
カクッ……
理樹「っ!!」
理樹(また当たった!こ、これはまずい……思ったより理性が吹っ飛ぶぞ!)
4: 以下、
現在に戻る
理樹(電車で女の人が自分の肩に頭を乗せる。映画や漫画でよくあるシチュエーションだ。しかしそれを実際に体験した人はそこまで存在するだろうか?)
理樹(僕はたった今それを体感している。そしてその輝く体験は電車が駅に着くまでの体感時間をスローにさせた!)
理樹(男には出せないであろうよく分からない良い香りと共に綺麗な人が僕の肩にくっつく。これでときめかない男は居まい。笹瀬川さんが謙吾に執心しているのは分かっているが今だけはそんなこと関係なかった)
佐々美「ふぁ………」
理樹「あ……あ……」
理樹(今度はこれまでで一番長く密着した。電車内だというのに顔が自然とニヤついてしまう。他の人に見られると気持ち悪がられるだろう)
理樹「あ、ふぁああ……」
理樹(誰も見てないだろうけど一応あくびをするフリで口角が上がっていることを誤魔化した。こんな調子で最寄駅まで耐えられるのか!?いや、でもまだまだ着いて欲しくもないような……)
5: 以下、
佐々美「むにゃ………」
理樹「天王寺堺三国ヶ丘鳳和泉府中…」
理樹(冷静になれ冷静になれ冷静になれ。たかが完全に頭を乗せてきただけだ。足を踏ん張り、腰を入れろ。一瞬でも動けばその時点で笹瀬川さんは起きる!1ミリたりとも動いてたまるか!)
佐々美「ふふふ……」
理樹「あはぁ………」
理樹(変な声が漏れてしまった。でも実際はこうなる!馬鹿なと思った人は一度同じ目に遭ってほしい。絶対こうなる)
「おやおや……」
「おほほっ」
理樹(他の人も僕の状況に気付いたようだ。どうやら僕らのことをカップルかなんかだと思っているんだろう。知り合いがいなくて本当に良かった)
6: 以下、
ガタンガタンッ
理樹(その時、電車が大きく揺れた)
佐々美「……ハッ」
理樹「あっ……」
佐々美「……え、えっと……お、おほほほ…!」
理樹(笹瀬川さんは恥ずかしそうに引き下がった。ああ、無情。神はどこまで悪戯すれば気がすむのか。それにしても……笹瀬川さんの当たっていたところが今も温もりを残している。凄くドキドキする)
理樹(もしも心の声が聞こえていたら生きていけないな。そう思った時だった)
ガタンガタンッ
佐々美「ふむゅ…」
ドサッ
理樹「???っ!!」
理樹(今の衝撃で笹瀬川さんは完全に眠りに落ちたんだろう。僕の方へ寄り被さったが起きる気配は感じられない)
理樹(それより問題は被さってきた場所が僕の足だということだ。これは俗に言う膝枕という奴じゃ……!)
7: 以下、
佐々美「すぅ…すぅ……」
理樹「おほぉ……!」
理樹(は、鼻息がこそばゆい!こ、このままじゃ間違いなくヤバイって!)
ピロリロリン♪
アナウンス『ご乗車ありがとうございました。次は○○、○○です。足元にご注意ください』
理樹「あっ」
理樹(そんな事をしている間にもう駅に着いてしまった。とても恥ずかしいけど仕方がない……)
アナウンス『ドアが開きます。ご注意ください』
佐々美「むにゃ………」
理樹「…………………」
理樹(…………………)
アナウンス『ドアが閉まります。ご注意ください』
理樹(恭介……これで遅刻は確定だけどさ……僕、間違ってないよね?)
佐々美「…………グゥ」
終わり
8: 以下、
電車内
ガタンガタン…….
理樹「今日はいっぱい買ったね」
沙耶「そうね。明日はいよいよ最終決戦、これくらい買い込まないといよいよボスってところでHPが無かったら困るもの」
理樹(謎の『影』との闘いもこれで最後だ。気を引き締めていかないといけないのは分かっているんだけど……)
理樹「このぬいぐるみ達も買い込まなきゃダメだった?」
理樹(もはやリュックには収まりきらなかったので各自大きい物を二つずつ手に持たなければならなかった)
沙耶「そ、それは!……理樹君のいじわる……」
理樹(まあ、沙耶さんの意外な一面を見れたからそれは別にいいけど)
沙耶「ふぁぁ……なんだかこんな物を抱いてたら眠たくなっちゃうわね」
理樹「別に寝ててもいいよ。後で起こすから」
沙耶「ふっ、馬鹿にしないでくれる?一流のスパイって言うのはね、どんな状況にあろうが、それこそ3日続けてライフルの引き金に指をかける事だってあるのよ。絶対に眠りに落ちたりするもんですか!」
10: 以下、
沙耶「すぴー……」
理樹「落ちたね」
理樹(無理もない。ただでさえ沙耶さんははしゃいでたのにこんなフワフワな縫いぐるみまで抱いたまま電車に揺られちゃそうならないほうがおかしい。現に僕も少しウトウトして……)
沙耶「うが…」
コトン…
理樹「!」
理樹(あ、頭が!頭が乗った!沙耶さんのが!僕の肩に!)
沙耶「んふふ……」
理樹(ああ、ヨダレまで垂らしてる……無防備にも程があるんじゃないだろうか?相変わらず抜けてるな沙耶さんは)
理樹「………………」
沙耶「……すぅ………すぅ…」
理樹(やっぱり沙耶さんも黙っていると本当に美人な人なんだな。変な髪飾りだけど金髪だし)
11: 以下、
理樹(そろそろ垂れたヨダレが取り返しのつかないところまで行きそうだったのですかさずハンカチで拭った。緊張感の欠片すらないが一流のスパイというのは適度に気を抜くコツというのがあるのかもしれない。きっとわざとそうしてるに決まってる)
理樹「それとも頼りにされてるとか………あはは!ないない」
沙耶「はぐっ…?」
理樹「おっと…」
理樹(しまった。起きるか?)
沙耶「ううん………」
理樹「……………」
沙耶「ぐぅ………」
理樹「他愛ない」
12: 以下、
理樹(かなりドキドキするけどそういう事なら大人しくする他ない。でも……)
沙耶「……………」
理樹(少し首の角度を変えたら潤っている唇がそこにある。あんぐり開けてなかなか間抜けな口だけど)
沙耶「あへへ……」
理樹「…………な、なにを考えてるんだ…そんな馬鹿な考え…」
沙耶「……………」
理樹(1分経って起きなかったら……いや、30秒起きなかったら……)
理樹「……………ゴクリ」
30秒後
理樹(これは寝ている沙耶さんにキスをするとかそういう事ではない。ただ肩が凝ったから少し首を動かすだけだ。少し右に動かすだけ……)
グググ……
理樹「ハァ…ハァ…!」
沙耶「ん……………」
理樹(行け!大丈夫だ直枝理樹!相手はきっと気付かない!気付いたとしてもどうせ寝起きだし、しかも沙耶さんだし適当に誤魔化せるはずだ!)
理樹「……………!!」
グルッ……
『待て、まだそういうのは早いと思うぞ』
理樹「!?」
理樹(それは僕の目の前に現れた。いつものトレードマークの学制帽を付けた僕らの敵____『影』だ。しかし今回の影はなんだか様子がおかしい。敵意がないというか…頭しか出てきてないし)
影『理樹、お前がやろうとしていることは初めてか?』
理樹(なんで僕の名前を知っているんだろう。それに声がどこかで聞いた事のあるような……)
影『答えろ』
理樹「あっ、はいっ。初めてです……」
理樹(隣の人はイヤホンを付けてるからこの会話には気付くことはなさそうだ)
影『いいか理樹?せっかくのファーストキスがここ味気なくで散っていいと思うか?』
理樹「だ……ダメだと思います」
影『だろ?だいたい近頃の奴は性に関して節操がなさ過ぎる。そういうのはもっと高潔で、大事に取っておくものじゃないか?そういう欲を丸出しにした男達がうちの妹に手を出したりしようとする所をそうぞうするだけでも我慢が………』
理樹「あ、あのー……」
影『??なので、そういうのはまず付き合ってから。お兄さんとの約束だ』
理樹「……………」
理樹(もしかしなくてもこの影かなり厄介だな。というかなんで攻撃してこないんだろう)
影『今日はどうしてもこれを伝えたかった。恋愛は自由だが心の紳士をおざなりにするなよ』
理樹(そのまま影は消えていった。意外といい人もいるのかもしれない)
アナウンス『次は○○、○○駅です。足元にご注意ください』
理樹「……………」
理樹「……沙耶さん。起きてもう駅に着くよ」
沙耶「ううん……あと5分…」
終わり
13: 以下、
続く
次はちゃん美魚
16: 以下、
電車内
理樹「や、やっと乗れた……!」
西園「すいません。今回もまた荷物持ちをさせてしまいました」
理樹「いやいやこれくらい何てことないよっ」
理樹(今さっき言った言葉を早矛盾させたがそんな事を気にする程どちらも子供じゃない。ただ今度からは1日に20冊も買うなんて事は遠慮してもらおう)
西園「…………」
理樹(話すこともないので何気なく西園さんを観察していると小さな変化に気が付いた。目のパチパチする頻度がどんどんくなっているのである)
理樹「西園さん…もしかして眠たい?」
西園「はい……」
理樹「もしよかったら着くまで寝てなよ。僕が起こしてあげるからさ」
西園「申し訳ありません。本当なら直枝さんの方がお疲れのはずなのに…」
理樹「僕だって一応男の子だからね。これくらいへっちゃらさ!」
理樹(あとは西園さんが隣に座っているという事も関係している)
西園「ふふふ…ありがとうございます。それではお言葉に甘えて……」
理樹(そして彼女はうつらうつらしていたまぶたをゆっくり閉じた)
17: 以下、
5分後
西園「すぅ……すぅ……」
こてん
理樹「!」
理樹(西園さんが僕の肩に寄りかかった!それは単に何も考えられないほどの眠りに落ちたのか、それとも僕を身を寄せるほど信頼してくれてのことなのか……どちらにせよ嬉し恥ずかしだ)
西園「直枝……さん…」
理樹「!!」
理樹(い、今僕の名前を……!)
西園「……と、恭介さん…いったい2人して屋上で何を……」
理樹「えっ」
西園「………あっ…き、恭介さん…そんな……直枝さんをそこまで乱暴に……情熱的です」
理樹「なっ!?」
理樹(途轍もなく西園さんの見ている夢が気になる。いや、見たくもないけど……)
西園「あっ…そんなっ、井ノ原さんに宮沢さんも…!」
理樹(本当に何を想像してるの西園さん!?)
西園「えっ…3人で直枝さんの身体を固定して……?」
理樹(こ、固定して…?)
西園「あ…………」
西園「……………ぽっ」
理樹(いやいやいやいやいや!!何が起きたか言ってくれなきゃ逆に怖いよ!いったい何があったっていうのさ!)
18: 以下、
ガタンガタンッ
西園「はっ………」
理樹(電車が大きく揺れて西園さんが目を覚ました)
理樹「や、やあ……」
西園「な…直枝さん………」
理樹(西園さんが赤くなって僕の視線を流し目で逸らした。本来なら彼女の恥ずかしがっているところは可愛いと言えるのにここまで恐ろしくなったのは初めてだ)
西園「あ、あの……デリカシーがありませんでした…ごめんなさい」
理樹(いったいなんの話をしているんだ)
理樹「あ…そう……まだ最寄駅までは時間があるからまだ大丈夫だよ」
西園「は…はい」
理樹(そう言えば本で読んだ事がある。確か眠りの浅い事をレム睡眠と言って、脳が少し働いているので夢を見やすいと。逆に眠りが深いとノンレム睡眠と言うらしいが電車に揺られながら眠るんだから当然なりやすいのは前者だろう)
理樹(西園さんに肩を預けてもらえるのは嬉しいがそれによって見られる夢を聞かされるのは勘弁願いたい。いや、しかし西園さんに耳元で喋られるというのも……くそう、甲乙つけがたい!)
19: 以下、
理樹(だけど仮に夢を見たくないといっても起こすわけにもいかない。やはりここは西園さんが今度こそ夢を見ない事を祈る他ない……)
西園「すぅ……すぅ……」
理樹「…………………」
理樹(西園さん…彼女は結局本当に今、僕と付き合っていてくれているのかな?もちろん他の男の人と扱いが別なのは何となく分かる。それでもいつかは、はっきりとした言葉で彼女との関係を確かめたいものだ)
理樹「西園さん………いつか、また、海にでも行ったらその時は……」
西園「………その時は、私からあなたに言いたいと思います」
理樹「えっ!?」
西園「ふふふっ…」
理樹(西園さんがゆっくり僕の方を見つめた。その唇は僅かに微笑んでいる)
理樹「に、西園さん!まさか!」
西園「ごめんなさい。目を閉じたものの今度は上手く眠れなかったもので……」
理樹(やられた!)
西園「でも…直枝さんの気持ちがなんとなく伝わったので思わぬ収穫でした。盗み聞きしてしまってすいません」
理樹「いや、まあ……」
理樹(かなり恥ずかしい。完全に油断していた。……でも、どうせこんなこと普段の西園さんに直接言える訳もないし…)
アナウンス『次は○○、○○駅です。足元にご注意ください』
西園「……ちょうど着きましたね」
理樹「そ、そうですね……」
理樹(今日は帰ってシャワーを浴びたらベッドに直行しよう。そして海に誘うタイミングでも考えながら寝よう)
20: 以下、
終わり
21: 以下、
電車内
理樹「どっこいしょういちっと」
来ヶ谷「今日は雨が降らなくて良かったな」
理樹「そうだね。別に雨は嫌いじゃないけどこんな日にも傘を持ち歩くのは面倒だし」
理樹(今日は来ヶ谷さんと映画を観に行った。ひたすらジャガイモが食べたくなる映画だった。それにしてもあの人いつも星に取り残されてるな)
来ヶ谷「……それにしても一日中街にいたからやや眠たくなってきたな」
理樹「そうだね」
来ヶ谷「君は眠るといい。私が着いた時に起こしてやる」
理樹(…………………)
理樹「え、遠慮しておくよ」
来ヶ谷「そうか?」
理樹(このまま来ヶ谷さんの言う通り眠っていたら何されるか分からない。なんとなく嫌な予感がする)
来ヶ谷「そうか?なら、私は眠らせてもらおう。なに、駅に着いたら勝手に起きる」
理樹「それでも一応起きておくよ」
来ヶ谷「用心深いな、君は」
理樹(来ヶ谷さんに対してね)
22: 以下、
数分後
理樹「………………」
来ヶ谷「………………」
理樹(そういえば…来ヶ谷さんの眠っているところなんてこれが初めてなんじゃないか?つまり今の状況はかなりレアってことなんじゃ!)
理樹「…………ゴクリ…」
理樹(無防備な来ヶ谷さん……いったいどんな感じなんだろう。ひょっとすると新たな一面が見られたりして!)
トサッ
理樹「!!」
理樹(それ見たことか!来ヶ谷さんが、あの来ヶ谷さんが僕の肩に頭を乗せたぞ!)
理樹(良い匂いがする……女の人には詳しくないから分からないけどこれは香水でも使ってるんだろうか?今度モテモテで有名なポピュラリティー斎藤君に聞いてみよう)
来ヶ谷「理樹君………」
理樹「な、な、な……」
理樹(まさか次は寝言かっ!?もしかして明日は雪でも……)
来ヶ谷「あぁん…そんな…大胆過ぎるぞ少年……」
理樹(いや、やっぱりこれ絶対起きてる)
26: 以下、
悪魔理樹『慌てるな!これは何かの罠だ!』
理樹(もう1人の僕!)
天使理樹『いやいや、来ヶ谷さんはきっと平気なふりして本当に眠たかったんだよ』
理樹(更にもう1人の僕!)
悪魔理樹『ええい黙れ!あの来ヶ谷さんが本当に僕らへ隙を見せるとでも思っているのか!』
天使理樹『で、でも来ヶ谷さんだって人間さっ。普段はからかっているんだろうけど今日くらいはそんなに警戒しなくても……きっと来ヶ谷さんは僕らを信頼してるのさ』
来ヶ谷「…………むにゃ…」
理樹's「!」
理樹(果たしてこれがたとえ僕をからかうための罠だとしても来ヶ谷さんがこんな事を言うだろうか?いや、罠だったとしても男にはあえて踏み抜いていかなければならない時がある!)
理樹(そうさ。ここで変に動揺しなくてもいい!流れに身を任せろ!)
こてっ
来ヶ谷「スゥ………」
理樹「………なんだと……?」
理樹(これが本当に狙わずやったと言うならなんという偶然。そこまでして僕をあせらせたいのか。来ヶ谷さんが僕の肩に頭を乗せた。もはやキャラが崩壊していると言っても過言じゃない)
理樹(もし来ヶ谷さんが起きていたなら……)
来ヶ谷『ふっ…やはり理樹君はむっつりだな。そのまま女の子とくっつくのがそれほど嬉しかったのか?』
理樹(みたいな事を言うだろう!でも本当に寝ているならこのままで差し支えない…!というかそれがベスト…!!)
理樹「はぁ……はぁ……!」
来ヶ谷「ん……すぅ……」
理樹(現状維持していつ起きだすかずっとビクビク待っているのか、それともさっさと起こして身の安全だけ確保するのか…それが問題だ)
27: 以下、
数十分後
理樹(……やっぱり起こそう。名残惜しい気もするが危険を冒すわけにはいかない。僕はそんな命知らずじゃ…)
アナウンス『次は○○、○○駅です。足元にご注意下さい』
理樹(なんて考えている間に着いてしまった!………いや、待てよ?『着いた』ってことは来ヶ谷さんは最後まで寝て…?)
ムクッ
来ヶ谷「着いたな」
理樹「うわぁっ!」
来ヶ谷「なんだ急に…耳元で大声を上げるな」
理樹(来ヶ谷さんがなんの前触れもなく僕の肩から首を起き上がらせた。結局最悪の流れとなってしまった!)
理樹「く、来ヶ谷さん…こ、これは違うんだ!実はさっきから起こそうと……!」
来ヶ谷「ん?なんの話だ?」
理樹「えっ?」
理樹(き、気付いてない?さっきは寝ぼけながら起きたのか?)
理樹「あ……あはは…いや、なんでもない…うん、なんでもないよ。それじゃ行こっか…!」
理樹(やれやれ、いざ終わってみれば肩透かしだった。どうせ気付かないまま帰れるなら道中、邪なことを考えずにいれば……)
来ヶ谷「あ……そうだ少年よ」
理樹「?」
来ヶ谷「君の肩は快適だったよ」
理樹「え……」
理樹(それは、つまり、どういう事なんでしょうか。その場にいる人は誰も答えてくれなかった)
終わり
28: 以下、
電車内
クド「………すぅ……」
理樹(クドは、買い物の帰りの電車であっという間に寝てしまった。昼はあんなにはしゃいでたし無理もない)
クド「……わふー……リキがお犬さんになってしまいました…」
理樹「どんな夢を見てるんだか…」
こてんっ
「うぉっ」
理樹「ん?」
理樹(クドの隣にいる人が突然変な声をあげた。いったい……ハッ!)
クド「すぅー……すぅー……」
「ドキドキ……」
理樹(隣の人に頭を預けちゃってる!?)
理樹(何をしてるんだクド!それなら僕にやってくれてもいいのにっ……じゃなくて!)
理樹「ご、ごめんなさい…!」
クド「わふ?……?」
理樹(慌ててクドの身体を起こした)
理樹「やれやれ……」
ススス……こてんっ
理樹「!」
理樹(今度は僕の方に乗っかってきた。背が低いから僕の肩まで頭は届かないけどそれでも凄い破壊力だ。まさに小さなビッグバン)
理樹「………………」
理樹(このままで良いんだ。そう、このままで。他人に迷惑がかかるくらいなら僕が進んで肩を貸せばいい。さあお休みクド。このまま駅に着くまで……)
ガタンッ
クド「わふ?……」
こてっ
「うぉっ」
理樹(くそっ!なんでまたそっちへ行ってしまうんだ!)
36: 以下、
理樹「ごめんなさい!」
理樹(クドを無理やり肩に乗せた。なんだってここまで僕を拒否するんだ!)
クド「わふー……」
「くっ……」
理樹(ハハハッ!悔しいでしょうねえ!僕は知り合いだからこそクドに誘導させてもそこまで違和感はない!このまま駅まで頭を預けてもらうのは僕だ!)
ガッタンッ
クド「わふっ」
「うぉっ!」
理樹(ムキーーーッ!!)
理樹「ごめんなさい、ごめんなさい!」
理樹(何故僕の肩を離れてしまうんだクド!そんなに僕が嫌いだっていうのか!僕はこんなにクドを求めているのに!)
「ふふふ……」
理樹(これ見よがしに隣人は思い通りにならない僕を笑った。ちくしょう、少し電車の揺れでそっちへ行ったくらいで調子に乗るな!僕を見くびるな!)
理樹「クドーっ、ちょっと足に載せるよー」
クド「ん……リ、リキ…?」
理樹(クドを膝の上に乗せた。そして腰に手を回し揺れが来ても離れないようガードする)
理樹(まるで娘を寝かせるお父さんのような気持ちだがこれで他の人に渡すことはない!)
「くぅ……!」
理樹(この勝負、僕の勝ちだ!フハハハハーーっ!!)
…………………………………
………………

アナウンス『次は○○、○○駅です。足元にご注意下さい』
理樹「…………ハッ!」
クド「あっ、リキ、ちょうど起きましたねー」
理樹「へっ?あ、え?」
クド「もしかして夢でも見ていたんですか?」
理樹(………………)
理樹「ね、ねえクド……もしかして僕今まで寝てた?」
クド「はいっ!それはもう私がリキに肩を貸すほどぐっすりと!………も、もう少し寝てても良かったんですけど……ゴニョゴニョ…」
理樹「あ……あ……あ……」
理樹(恥ずかしぃぃぃいいっ!!ゆ、夢とはいえあんな事を僕が………)
クド「さ、降りましょうリキ」
理樹「そ、そうだねクド……」
理樹(今度からはもう絶対に早めに帰るようにしよう)
終わり
37: 以下、
電車内
ガタンガタン…
理樹(僕は鈴に例のごとく第3日曜にあるモンペチセールに付き合わされた。今日は他にも色々回って結局こんな時間に帰る事となったが今回は果たして門限に間に合うだろうか…)
理樹「………………………」
鈴「………………………」
理樹(近頃話し合うことがないせいか遊びの日に限らず無言で帰ることが多い。しかし、僕らは気にしない。無言が気まずいと思うような仲でもないからだ。まるで家族みたいだ)
鈴「………ん……」
理樹「鈴、どうしたの?」
鈴「眠い……ふあぁ……」
理樹(そう言って鈴は大きく口を開けて大きなあくびをした。それが閉じる頃には目に軽く涙が浮かんでいた)
理樹「電車は後ちょっとだけど眠る?」
鈴「うん。そーする」
理樹(鈴は目を閉じた)
41: 以下、
鈴「すぅ……すぅ……」
理樹「ふふっ……」
理樹(鈴が寝ている姿を見るのは久しぶりだ。そこだけは相変わらず小さい頃と変わらない。見ているこっちが脱力してしまいそうな寝顔だ)
ススス……こてっ
理樹「おっとっと…」
理樹(鈴がこちらにずれてきた。両手は荷物で塞がってるのですかさず肩でキャッチした)
鈴「ふにゃ…………」
理樹「………………っ…」
理樹(鈴の髪の毛が猫のおひげのように僕の顔をくすぐる。ちょっとでも動かれるとかなりくすぐられている気分だ)
理樹「しょうがない…」
理樹(僕も鈴の方へ逆にもっと頭を寄せた。これなら中途半端に触れることはなく、お互いが支えあっているようになる。僕自身ちょっと疲れていたし良いアイデアだ)
鈴「ん………」
理樹「ふぅ………」
理樹(向かいのお婆さんがこちらを笑っている。微笑ましいんだろう。少し恥ずかしいけど、またわざわざ体勢を直すほどの体力は残されていなかった。今はただただ眠たい)
理樹「少しぐらい…いいよね……」
理樹(…………………)
鈴「……………」
理樹「……………」
アナウンス『次は○○、○○駅です………….』
本当の本当に終わり(∵)
43: 以下、

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