P「真美は合法、亜美は非合法?」back

P「真美は合法、亜美は非合法?」


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「真美は合法、亜美は非合法」
とある掲示板を見ていたら、こんな書き込みを見つけた。
プロデューサーをやっている身としては多少の危機感を覚えなくもない言葉だが、どこか歪んではいるがファンの愛を感じる気もする。
ここのところウチのアイドルたちのメディアへの露出が少しずつ増え、知名度も上がってきている。
それは喜ばしい事だが、知名度が上がればそれに比例してネットでの誹謗中傷まがいの書き込みも増えていくわけで。
今回見つけたこの書き込みはそこまで酷いというわけではないが、こうしたものを極力アイドルたちが目にしないように裏方である俺が注意しなければならないだろう。
3: 以下、
ファン(おそらくファンだと思う)は何を以って真美を合法、亜美を非合法と判断したのだろうか。
現役中学生に、いや、未成年に手を出す事自体が法に触れる事だと思うのだが。
真美の方がお姉さんだからか。
亜美の方が幼く見えるからか。
ニュアンス的にはきっとそんな感じだろうか。
とにかく、ただでさえ多忙で、それでいて多感な年頃の少女たちに余計な心労をかけないために、俺はその書き込みに削除依頼を出す事にした。
4: 以下、
P「……コーヒーでも淹れるか」
朝、まだ誰もいない事務所で一人つぶやいて給湯室へ向かう。
朝の事務所に一人きりというのは珍しい事だ。
いつもなら音無さんか律子のどちらか、もしくはその両方がいて、こんな風に話し相手に困る事はないのだが。
しかし、今日は音無さんは有給、律子は銀行へ寄ってから来ると連絡があり、アイドルたちが来るまで俺は一人ぼっちだ。
既に今日一日の業務の準備はひととおり整ってしまっているので、俺はコーヒー片手に朝の優雅なひとときを楽しむ事にした。
自分の席に戻ってPCの画面を見ると、先ほどのネット掲示板が表示されたまま。
思考は自然とさっきのレスに傾いていく。
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そういえば、ここのところ真美の様子が微妙に変化しているような気がしないでもない。
なんというか、前ほど物理的な接触が減ったというか、恥じらいを覚えたというか。
中学ニ年生といえば、思春期真っ只中だ。
今まで俺みたいなおっさんにベタベタしていた事を急に恥ずかしく感じたんだろう。
ようやく真美も大人の階段を登りはじめた、といったところか。
あまりベタベタされるのも対応に困るのだが、今まであったものが急になくなるとそれはそれで寂しく感じるものだ。
真美の成長を嬉しく思う反面、いつか訪れるであろう巣立ちの時を思うと胸がチクリと痛む。
ふと気づくとカップが空になっていたので、コーヒーのおかわりを求めて再び給湯室へと向かう。
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亜美はどうだろうか。
あいつは今でも所構わず俺にベタベタしてくるし、イタズラをして律子に怒られているところもしょっちゅう見かける。
真美とは違い、まだあまり成長は見られないように思える。
身体の成長は同じ度でも、精神の成長に差が出てきているという事なのか。
つまり、真美は精神的に成長しているので大人と見なして合法、逆に亜美にはあまり成長は見られない子供のままなので非合法。
なるほど、あのレスもなかなか的を射ていると言えるかもしれない。
そんな風に給湯室で考察を続けていると、遠くから勢いよく階段を登ってくる足音が聞こえた。
そしてすぐに事務所のドアが豪快に開け放たれ、
亜美「っはよー! 亜美だよー! ……ってあれ、誰もいないのー?」
静かな朝のひとときをパワフルな声で塗り替えたのは、巷で話題沸騰中の娘さんだった。
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P「おはよう亜美。ここだここ」
給湯室から顔だけ出して亜美に軽く挨拶する。
俺の顔を見るなり亜美は満面の笑みを浮かべ、いつものように腰を低く落としたタックルをかましてきた。
いつからはじまったのかは覚えていないが、毎朝の恒例行事だ。
亜美「兄ちゃんおっはよー! 久しぶりだねー」
P「おっと……いや、昨日会ったばっかりだと思うぞ」
亜美「そーゆーのはいいの! 会えない時間が二人の愛を育むんだからー」
軽い身体を受け止め、まとわり付いた亜美を俺の身体から引き剥がすと、亜美は不満そうな顔で抗議する。
てか、どこのドラマの台詞だそれは。
この場合はもちろん亜美と俺が愛し合っているわけではなく、きっと亜美なりの寂しかったよというメッセージなのだ。
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一種の儀式のような朝の挨拶が終わると、亜美は俺が手に持ったカップを見て言った。
亜美「兄ちゃんおいしそーなの飲んでるね。亜美にもちょーだい」
P「分かった、紅茶でいいよな。ソファで待ってろ」
亜美「了解であります、隊長」
ビシッと敬礼して、亜美は元気よくかけて行く。
給湯室の戸棚で紅茶の茶葉を探しながら思った。
真美は前述の通り、朝の挨拶で猪のように突進してくる事はもうない。
毎朝のように触れ合いを求めてくるのは、やっぱり亜美はまだまだ子供ってことなんだろう。
これは非合法と言われても仕方ないのかもしれない。
まあ、亜美はウチの事務所の人間なら誰にでも抱きつくので、癖と言ってしまえばそれまでだが。
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ソファへ行くと、亜美はすごい体勢で寝転がって携帯ゲーム機に熱中していた。
毎度の事だがまるで我が家のようなくつろぎ方だ。
P「ほい紅茶。そんな格好してたらパンツ見えるぞ」
亜美「見せてるんだよー。どう、コーフンした?」
P「色気が足りん。出直して来い」
亜美「うそだー、ぜったいやせガマンだよー」
ぶーぶー言いながら大量の砂糖とミルクをカップへ。
茶色く透明だった液体は、すぐにどろりと濁っていく。
P「そんなに入れたら太るぞ?」
亜美「いーの。亜美は成長期だからへーきだもん。それに砂糖とミルクはたっぷり入れた方がおいしーし」
P「……味覚まで子供なのか」
亜美「え? なんか言った?」
P「ああ、なんでもない」
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亜美「あ、それよりもさ」
亜美は一口紅茶を啜ると、ゲーム機の電源を切りソファから降りた。
そしておもむろに俺の目の前でくるりと一回り回った。
亜美「今日の亜美、なかなかイイ感じっしょ?」
一瞬亜美が何の事を言っているのか分からなかったが、亜美の着ている服を見て思い出した。
今日の亜美の服装は、足の露出度が高いのはいつも通りだが、全体的には大人っぽくまとまっていて確かに良い雰囲気だ。
P「その服って確か、この前一緒に買いに行った服か。へぇ、なかなか似合ってるじゃないか」
亜美「えへへっ、でしょー?」
ご満悦の亜美はもう一度嬉しそうにくるりと回った。
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自分のデスクへ戻った俺はPCの掲示板を開いたままだった事を思い出し、慌てて画面を閉じた。
今はまだ亜美しかいないが、そのうち他のアイドルも来るだろう。
アイドルたちのモチベーションの維持の為にも余計な要素は排除しないといけない。
とりあえず始業時間までやる事がないので適当に芸能記事を見ていると、無言で亜美がやってきて俺の膝の上に座った。
無駄のない、流れるような動作だ。
亜美はそのまま何事も無かったように俺の膝の上でゲームを続ける。
亜美「……お、ダイヤ発見。たくさんあるっぽい!」
P「いや、その前に俺の膝は椅子じゃないんですが」
亜美「まあまあ、気にしない気にしない」
P「まったく……ダイヤ取る前に周り掘った方がいいぞ。溶岩流があるかもしれないからな」
亜美「あ、そだね」
と、そこで一旦会話は途絶えた。
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カチカチ、カチカチ。
亜美がボタンを押す音と、俺がマウスをクリックする音。
静かな事務所に響く不規則な音を聞いていると、無言のまま会話をしているような不思議な錯覚に陥る。
膝に乗った体重は軽くもなく重くもなく、丁度良い。
亜美にしては静かなのが少し気になったが、まあこんな時間もたまには悪くないだろう。
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それから少しして、芸能記事に飽きた俺はすぐ目の前の亜美の後頭部を観察してみた。
千早のようなサラサラした髪というよりは、艶とハリのある滑らかな髪質。
手ぐしはなんの抵抗もなく通りそうだ。
今日も今日とて頭頂部よりやや右で結わえられたちょんまげが自己主張している。
この位置だとうなじもよく見える。
亜美の肌はきめ細かく、きっと触れたらぷるぷるのぷにぷにだろう。
肩を見せる服装なので、うなじから肩、鎖骨の方までが丸見えだ。
亜美は年齢の割に身長が高い方だと思うが、こうして改めて近くで見るとかなり華奢なんだと感じる。
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そして鎖骨のさらに先の方には、ささやかな膨らみが二つ、服の隙間からその姿をちらりと覗かせていた。
特別大きいという訳ではないが、中学生でこの大きさならばこれからの成長に大いに期待が持てる。
亜美「ねー兄ちゃん」
P「あああいやこれは日々のケアをちゃんとやってるかのチェックであって決してじろじろ見るつもりはなくてだな」
亜美「? ……なにあせってんの?」
P「な、なんでもない」
危ないところだった。
まだまだ子供だとか言っておきながらその子供の身体を視姦するなんて、ただの変態じゃないか。
ちょっと落ち着こう。
コーヒーを一口啜る。
亜美「『亜美はヒゴーホー』ってどーゆー意味?」
P「ぶふぅっ!?」
あまりのぶしつけな質問に、俺はコーヒーをジェット噴射のように吹き出した。
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盛大に吹いたコーヒーは、目の前の亜美にもれなく吹きかかる。
それを全身で受け止めた亜美の服には、大雨に降られたかのようなシミができた。
亜美「うわあ!? 兄ちゃん汚いよー!」
P「ゲホッ……す、すまん、大丈夫か?」
亜美「服が大丈夫じゃない! これじゃシミになっちゃう!」
P「そ、そうだよな。えーと、亜美、着替えあるか?」
亜美「うーんと、ジャージなら一応あるけど……」
P「とりあえず着替えよう。風邪引いても困るし」
亜美「うん、わかった……」
亜美は俺の膝から降り、更衣室へと向かっていった。
突然の事に驚いたとはいえ、何をやってるんだ俺は。
亜美が戻ってきたらもう一度ちゃんと謝らないと。
だが、更衣室から戻った亜美は涙目で、俺は床に正座をさせられて長々とお説教を受けるはめになった。
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その後出勤してきた他のアイドルたちは、みんなそれぞれに状況に戸惑っていた。
春香、やよい、雪歩はなんとか亜美を宥めようと右往左往し、響と真は仕方ないなぁといった感じで傍観し、千早は訝しげな目でこちらを見つめ、伊織は呆れた様子でため息をつき、あずささんは「あらあら」と言うばかり。
そして、貴音はカップラーメンを美味しそうに啜り、美希はソファで幸せそうな夢を見ていた。
お気に入りの服をダメにされた亜美の怒りはかなりのものらしく、俺は他の子に説明することもままならなかった。
ちなみに、ちゃんとした着替えは真美が持ってきてくれたようで、亜美はすでにジャージから着替えている。
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律子「おはようございまーす……って、あら? プロデューサー殿が亜美に説教されているなんて、なかなか珍しい構図ね」
律子が来たところで、ようやく俺は亜美のお説教から解放される事になった。
律子「ほら亜美、時間だからそろそろ出発するわよ」
亜美「ちっ、命拾いしたね兄ちゃん。でも、帰ってきたら罰ゲームだかんね! 忘れないでよ?」
P「お、おう。お手柔らかに頼むよ」
亜美をはじめとした竜宮の面子を引き連れて律子が事務所を出て行くと、やっと足を崩す事ができた。
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なかなか血流の戻らない足を叩いていると、真美が声をかけてきた。
真美「兄ちゃんおはよ。タイヘンだったみたいだねー」
P「はは……面目ない」
真美「まあでも、あの服は亜美のイチバンのお気にだったから、ちかたないね」
P「そうか……。じゃあ今度新しいのを買ってやらないとな」
真美「んー……たぶんそれじゃ意味ないと思うよ?」
P「え? なんで?」
真美「そこは自分で考えて。真美が言うことじゃないもん。ちゃんと亜美のキモチ、考えてあげて?」
P「亜美の、気持ち?」
真美「うん。亜美のキモチを兄ちゃんがちゃんと理解してくれれば、亜美がチョーいい子だってこと、わかってもらえるはずだから」
亜美が悪い子じゃないって事ぐらいわかってるんだけどな……って、多分そういう事じゃないよな、きっと。
真美「……ん、そろそろ時間だ。そんじゃ真美はレッスン行ってくんねー」
真美は手を振りながらやよいの元へかけて行った。
よく分からないが、亜美には亜美のこだわりがあるって事なのか。
何が待ち受けているのか不安だが、罰ゲームとやらは亜美の心ゆくまで付き合うしかなさそうだ。
19: 以下、
夜。今日の仕事がひととおり終わり、アイドルたちが三々五々と家路につく時間。
「お疲れ様でした」の挨拶が事務所のあちこちに飛び交う。
そのちょっとした喧騒の中で、亜美が会議室から俺に手招きしているのが見えた。
悪い事を考えてる時の目をしていたので気づかないフリをしようかとも思ったが、朝の真美との話を思い出して重い腰を上げる。
罰ゲーム……どんなのだろうか。
こないだのは結構酷かったな。
ミックスジュースにまさか鯖が入っているとは思わなかった。
あれを飲まされたおかげでしばらく魚が食べられなかった程だ。
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亜美「逃げようったってそーはいかないよ、兄ちゃん?」
P「俺は逃げも隠れもしないさ」
亜美「シュショーなことだね。だったら今日の罰ゲームはもう一ランク上げてもへーきかなぁ?」
P「あいたたた、急に腹痛が痛くなってきた……」
亜美「もー、意味わかんないこと言ってないでほら、入って入って」
亜美が俺の手を引き、半ば無理やり会議室へと引きずり込んだ。
この部屋が拷問部屋とならない事を切に願う。
21: 以下、
俺が先に入り、後から入ってきた亜美が後ろ手に扉に鍵をかける。
これで俺は亜美を倒す以外にここから出る手段はなくなった訳だ。
冗談でも可愛いアイドルを傷付けるような真似なんてしないが。
P「亜美、本当にすまなかった」
こういう時は、先手必勝。
先に心からの誠意を伝える為、俺は数々の現場でお世話になった必殺の90度謝罪を繰り出した。
これで少しでも罰ゲームに手心を加えてもらおうという、名付けて「うーん大人って汚い作戦」だ。
その姿勢のまましばらく待ったが、なかなか亜美は反応を示さない。
22: 以下、
背筋がプルプルいいはじめたところでようやく、ポン、と俺の頭に小さな手が乗った。
そしてそのまま俺の頬に両手を添えて顔を上げさせる。
対面した亜美の表情は、思いのほか和かだった。
亜美「いーよ、もう。服のことは悲しかったけど、今さら時間は戻せないし、もう亜美は怒ってないよ。……悲しかったけど」
大事な事なので二回言いました、ですねわかります。
しかし、果たして誠意が通じたと捉えていいのか。
そうなると今度は俺の方が心が痛んでくる。
汚い作戦なんかに頼らずにちゃんと俺の気持ちを伝えないといけない。
23: 以下、
P「亜美、俺……どんにゃばひゅだっへうへうお。ほええおまえおひあはえうああ……ってええい、人が真面目に話している時に顔をぐにぐにするな!」
亜美「あはは、ごめんごめん。なんか兄ちゃんの顔っていじりやすくって」
そこでやっと亜美は俺の顔から手を離して、くるりと後ろを向く。
その背中はどことなく寂しそうに見えた。
亜美「……兄ちゃんはさ、なんで亜美が悲しかったかわかる?」
P「なんでって……お気に入りの服を台無しにされたからだろ?」
亜美「じゃあ、なんで亜美のお気に入りだと思った?」
P「それは、えーと……よく似合ってたし、亜美も気に入ってるって思ったんだ」
亜美「……はぁ」
肩をがっくりと落とした亜美は再びこちらへ向き直って言った。
亜美「それだけじゃないんだよ。亜美がショックだったのはね、兄ちゃんと一緒に買いに行った服だったから。兄ちゃんとの思い出の服だったから。それがダメになっちゃって、なんか、思い出が減っちゃったっていうか……急にさみしいキモチになっちゃって……」
さっきまで和かだった亜美は、悲しそうな表情に変わっていた。
思い出が減った、か。
亜美も意外と可愛らしいところがあるんだな。
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P「気づいてやれなくてごめん。亜美が俺との思い出の品を大切にしてくれてすごく嬉しいよ。でも、思い出なんてこれからたくさん作れるさ」
少し屈んで亜美と同じ目線で頭を撫でてやると、亜美はちょっとだけくすぐったそうに微笑んだ。
P「よし、じゃあ次は少し遠いところにでも行くか? それこそ、思い出作りにさ」
亜美「ホント? じゃあ亜美、ディ○ニーランド行きたい!」
P「まあ、そう簡単に休みが取れるかというとまた別の話だけど……」
亜美「わかってるよ。次に兄ちゃんと亜美が一緒のお休みになったらね! 約束だよ?」
P「ああ、約束だ」
俺が小指を差し出すと、亜美も小指を絡ませてくる。
ただそれだけの事だが、今は心も通じ合えているような気がした。
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亜美の機嫌も直ったみたいだし、意外と女の子らしい一面も見られた。
これで一件落着だな。
……と思ったら。
亜美「んで、罰ゲームなんだけどさ」
P「……あれ?」
亜美「あれ? じゃないよ兄ちゃん。亜美、もう怒ってないとは言ったけど、罰ゲームやんないなんて一言も言ってないよ?」
言った事をちゃんと実行する亜美は、そこらの政治家よりも数倍誠実だなぁ。
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P「なあ亜美。食べ物系はやめような。俺の味覚がどんどん崩壊していくから」
亜美「こないだのサバミックスのこと? でも、サバって健康にいいらしいよ?」
P「できれば鯖は鯖で別に食べたかった」
亜美「えー、それじゃ罰ゲームになんないじゃん」
P「まあ、そうなんだけどさ」
亜美の罰ゲームは度々悪意の中に善意が紛れているので、ある意味たちが悪い。
一方的な方がまだはっきりと文句が言えるだけマシなんだが。
亜美「ま、罰ゲームの内容はもう決まってるんだけどね」
P「そ、そうなのか。で、俺は何をすればいいんだ?」
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亜美「朝の亜美の質問に答えてよ。『亜美はヒゴーホー』って言葉の意味について」
P「え? それだけでいいのか?」
亜美「うん。亜美の知らないとこでいろいろ言われてるんだなーって思うと、ちょっと気になるし」
亜美にしてみれば当たり前の事だろう。
誰だって自分の評価は気になる。
言葉の意味を説明するというだけなら、今までの罰ゲームを思えば簡単なものかもしれない。
でも、考えようによってはちょっと厄介だ。
果たしてなんて説明していいやら。
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P「うーん……」
なるべく亜美を傷つけないように、言葉を選びつつ説明しないといけない。
ここは慎重にいかないと。
P「もしかしたら解釈の仕方が間違っているかもしれないけど、俺なりに噛み砕いた説明をするぞ」
亜美「うん、わかった」
とりあえず二人してずっとつっ立っているのもあれなので、亜美をソファへと座らせ俺もその向かいに腰を降ろす。
亜美は少しだけ緊張しているように見えたが、多分俺も同じだろう。
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P「まず、非合法っていうのは法律に反しているとかそんな意味だ」
亜美「えっ? 亜美、なんも悪い事してないよ?」
P「もちろんそれはわかってるさ。法律に反しているのは亜美に手を出した人って事だ、きっと」
亜美「うえぇ……なんかヘンタイっぽいよー」
P「そうだな。中学生に手を出したりしたら変態さんだ」
亜美「……あれ? ねえ、じゃあ真美は? なんで真美はゴーホーなの?」
P「……問題はそこなんだけどな」
ここからが難しい。
本当に気をつけないと、亜美の心に傷を残しかねない。
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俺は一旦頭の中で少し整理し、改めて亜美に向き直って話し始めた。
P「手を出していい……というか、普通そういう関係になっていいのは大人になってからなんだ」
亜美「そーゆー関係って?」
P「つまり、その……恋人って事だ」
亜美「こ、コイビトかぁ。ふーん」
やっぱり亜美もこういう話題は興味があるのか、「恋人」という単語に反応して頬を赤くするのがなんだか可愛らしい。
亜美「でも、真美もまだ大人じゃないよね? なのになんで?」
P「最近の真美ってさ、なんだか大人っぽくなったと思わないか?」
亜美「んー……。亜美はあんまりわかんないや」
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P「亜美は真美といつも一緒だからな。細やかな変化に気づけないのも無理はない。でも、周りの人たちからすると分かるんだ。仕草とか行動とか、ああ、成長してるなぁって」
亜美「……なんかそれ、亜美は成長してないって言ってるみたいでヤな感じだね。亜美だってちゃんと成長してるんだよ?」
P「亜美の言う通りだ。亜美が成長しているのは俺もちゃんと分かってる。ただ、真美の方が亜美より少しだけ成長が早いって話なんだよ」
亜美はどこか不満そうな表情で俺の話を聞いている。
そんな亜美を見ているとやはり心が痛むが、よく考えるとこれはいい機会なのかもしれない。
この話がきっかけで亜美が自分の内面を見つめ直し、それが成長の糧となってくれれば幸いだ。
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P「亜美、忘れるなよ。ゆっくりだけどちゃんとお前が成長してるって分かってる人は分かってるんだから。あの掲示板に書き込んだ人はさ、きっと亜美の事をちゃんと見てない人なんだよ」
亜美「むー……」
P「って事で、理解したか?」
依然として亜美は難しい顔で何かを考えているようだ。
すぐに理解しろというのは厳しいかもしれない。
だけど、この件について俺から言える事はもうないだろう。
話をどう切り上げようか考えていると、亜美がポツリと零した。
亜美「……ねえ兄ちゃん。兄ちゃんはさ、真美とコイビトになりたいって思う?」
P「ん? なんでそんな事を俺に聞くんだ?」
亜美「いいから答えて」
亜美はいつになく真剣で、顔は少しも笑っていない。
こんな真剣な亜美を見たのは、もしかしたら初めてかもしれない。
P「真美と恋人になる、か。考えた事もなかったなぁ」
亜美「それは、真美とコイビトになりたくないって事?」
P「十年後ならわからないけど、今はそういう気持ちにはならないかな」
「そっか」と、分かったような分からないような返事をして、亜美は再び考え込む。
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亜美「じゃあ……亜美とは? 兄ちゃんは、亜美ともコイビトになりたいとは思わない?」
P「亜美も同じだよ。真美も亜美も、二人とも俺の大切なアイドルだ。それ以上でも以下でもない」
亜美「……亜美のプロデューサーはりっちゃんだもん」
今度は少し拗ねたような表情。
亜美は表情がころころ変わるから見ていて本当に飽きないな。
でも、フォローは一応しておいた方が良さそうだ。
P「亜美も真美も、人を惹きつける魅力をちゃんと持ってる。ただ俺とじゃ年齢的にも釣り合わないって話なんだよ」
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P「……さて、随分話し込んじゃったけど、時間的にもうそろそろ帰った方がいいだろ。ご両親も心配してるだろうし」
亜美「竜宮のお仕事があったって言えば、パパとママはおそく帰ってもなんにも言わないよ」
P「え?」
亜美「亜美、決めた。兄ちゃんに亜美だってもうちゃんとオトナなんだってこと、教えたげる!」
P「…………はい?」
自分ではうまく諭したつもりだったが、なんだか話がおかしな方向へと進んでいた。
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亜美「……ねえ兄ちゃん、どうかな。ドキドキする?」
P「いや、別に」
亜美「なんでー!? こんなにくっついてんのにー!」
P「そう言われてもなぁ」
亜美は今、俺の隣に座ってぴったりと身体をくっつけてきている。
一応亜美なりの色仕掛けのつもりらしいが、年中亜美のボディアタックを受けている身としてはむしろ物足りないくらいだ。
亜美「ま、まだだよ。まだ亜美のせくしーさはこんなもんじゃないんだかんね!」
亜美の言う「オトナ」とは、色気。
どうにかして俺をドキドキさせて自分を「オトナ」だと認めさせたいらしい。
その後も腕を絡ませてきたり、肩を組んだりといろいろやってはいたが、俺の心拍数が上がる事はなかった。
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P「なあ、もういいだろ? 俺は亜美がセクシーだってちゃん分かってるからさ」
亜美「なんか言い方が投げやりだよー。ダメ、これも罰ゲームのうちなんだから兄ちゃんに拒否権はないの!」
P「ええぇ……」
亜美「……あ、そうだ、いいこと思いついた」
亜美はソファから立ち上がり、おもむろに俺の膝の上に乗っかってきた。
それだけならいつもの事だが、今回は俺の方を向いている。
所謂、対面座位というやつだ。
37: 以下、
P「あ、亜美……」
近い。めっちゃ亜美の顔が近い。
その距離約十センチ。
亜美との触れ合いに耐性のある俺でもこれにはドキドキする。
亜美「うぅ……いきおいでやったけど、ちょっとはずかしーね」
亜美は顔を真っ赤にして俯いて、所在なさげに手を遊ばせている。
亜美「ど、どーかな、兄ちゃん。これでもドキドキしない……?」
不安そうな上目遣いで俺を見上げ、右手で俺のシャツをキュッと掴んだ。
物理的な距離感ももちろんあるが、さっきから亜美の仕草や表情がコンボで多段ヒットで俺の心をノックアウトだった。
年下には興味ないつもりだけど、亜美を「可愛らしい」ではなく「魅力的」だと思いはじめている自分がいた。
38: 以下、
P「俺だってドキドキしてるよ。……ほら、触ってみれば分かるぞ」
俺は亜美の右手を掴んで自分の心臓の辺りへ持ってくる。
亜美「……わ、ホントだ。兄ちゃんの鼓動、すっごい早いね」
P「ああ。これで満足だろ? 俺はもう亜美の魅力にメロメロだ」
亜美「……えへへ、やったぁ」
恥ずかしそうに、でも嬉しそうに亜美は微笑った。
39: 以下、
亜美「……えっと、そんじゃ、最後の罰ゲームね?」
何が? と聞き返す前に、亜美が俺の胸にしな垂れかかってきた。
ふわっ、と甘い匂いと柔らかい感触が俺を包む。
この体勢でさらに密着するとかもういろいろ大変になるんだけど、顔を見なくていい分だけ少しはマシか。
亜美は俺の胸に耳を当て、心臓の鼓動を聴いているようだ。
亜美「とくん、とくんって音がする……。えへへ、兄ちゃんが亜美のことをオトナって認めてくれたショーコ、だね」
亜美としては、手段はともかく一応目的が果たせた形にはなったのだろうか。
文字通り心臓に悪い罰ゲームだったけど、亜美が満足してくれるならまあ、悪くはないか。
40: 以下、
亜美「……ねえ兄ちゃん、もう少しだけこのままでいてもいい?」
俺の胸に耳を寄せたまま亜美は言った。
P「少しだけな。あと少ししたらちゃんと家に帰るんだぞ? 送ってくから」
亜美「うん……ありがと」
亜美の腕が俺の背中へと回される。
抱きつかれて身体が密着した事で、亜美の温もりがよりはっきりと伝わってくる。
どうせ俺の手もやり場に困っていたので、亜美の背中に回して軽く抱きしめてやる。
すると、それに反応して亜美の腕にも少し力が入った。
そうして俺と亜美は、しばらくの間温もりを分け合っていた。
41: 以下、
次の日の朝。
小鳥「おはようございまーす。昨日はすみません、お休み頂いちゃって」
律子「いえ、たまにはいいじゃないですか。それよりちゃんとゆっくり休めました?」
小鳥「それが、自分の用事を済ませた後で舞さんに捕まっちゃって……」
律子「あー……もしかして朝までコースですか?」
小鳥「いや、さすがに舞さんも一児の母ですからね。適当な時間でお暇しましたよ」
律子「ふふ、なんだかんだで小鳥さんって舞さんと仲良しですよね」
小鳥「まあ、付き合いはそこそこ長いですからねー」
今朝の事務所は昨日と違って賑やかだ。
やはり女性がいると自然と姦しくなるものだ。
それにしても、俺も何度か舞さんと飲んだ事はあるが、あの人のペースに付いていけるのはおそらく小鳥さんくらいだろう。
あの人と飲んだ時はいつも俺は潰されてたからなぁ。
遠い目で嘔吐物にまみれた記憶を思い起こしていると、遠くから勢いよく階段を登ってくる足音が聞こえた。
そして、すぐに事務所のドアが豪快に開け放たれ、
亜美「っはよー! 亜美だよー!」
今日も今日とて元気いっぱいのパワフル娘が出勤してきた。
42: 以下、
小鳥「あら、亜美ちゃんおはよう」
亜美「あ、ピヨちゃんだー。生きてたんだねー」
小鳥「生きてるわよぅ! 亜美ちゃんヒドイ!」
亜美「いやーごめんね。なんか久々だからさー」
そう言って亜美はハンカチで涙を拭う音無さんの頭を撫でている。
亜美にとっては一日顔を合わせないだけで久々なんだろうか。
いつも俺に対しても同じ事を言っているが、少し大げさな気もする。
43: 以下、
亜美「……あ、兄ちゃん発見!」
P「亜美、おはよう。今日も朝から元気だな」
亜美が次の標的を俺に定めて突撃の構えを取ったので、俺も咄嗟に身構える。
律子「ちょっと亜美、事務所で走らないのよ」
そして律子が亜美に釘を指す。
しかし……
律子「……あら?」
小鳥「え?」
亜美は普通にゆっくりと俺の方へ歩いてきて、そのまま俺にそっと抱きついた。
亜美「……おはよ、兄ちゃん。久しぶりだね」
P「あ、ああ……」
このパターンは予想していなかったので、俺も律子も音無さんも言葉を発する事ができなかった。
44: 以下、
律子「な、何? どうしたの亜美は」
小鳥「……まさか、ついに亜美ちゃんの時代が来た……?」
順応の早い音無さんは置いといて、さすがの律子も亜美をどう注意していいか分からないみたいだ。
かく言う俺も、ぴったりとまとわりついた亜美への対応に困る。
まるで昨夜の再現のようだ。
P「……なあ亜美、今日はなんか控えめなんだな」
亜美「うん、名ピッチャーはストレートとチェンジアップの使い分けがうまいんだってやよいっちが言ってたんだ」
だから今日はチェンジアップという訳か。なるほどわからん。
しばらく抱きついて満足したのか、亜美は俺から離れてソファへと向かった。
小鳥「プロデューサーさん、私がいない間に亜美ちゃんとナニがあったんです!?」
律子「ええ、それ、私も詳しく聞きたいです」
興奮気味の音無さんと目がすわっている律子に詰め寄られたが、昨日の出来事をそのまま話すのは憚られたので、二人には掻い摘んで話した。
45: 以下、
律子「……ふーん、亜美が大人にねぇ」
小鳥「亜美ちゃん、ついに目覚めたのね」
P「亜美も難しい年頃だからさ、二人とも対応には気をつけてな」
それからしばらく俺たち三人の会話は亜美の話題で持ちきりだったが、俺は一人で考え事をしていた。
亜美は大人に見てもらいたいから色気に走った。
それは昨夜の事で分かったが、大人に見てもらいたいなら真美のようにもう少し行動に落ち着きを持ってもいいものだ。
亜美の意図がいまいち読み取りにくい。
それに、いつからだかもう忘れたが、朝の挨拶の度に「久しぶり」と付け足すようになったのも気になる。
思春期の子供ってこんなに分かりにくいものなのか。
いろいろ考えていると、アイドルたちが出勤してきて途端に事務所は騒がしくなり、俺は頭を仕事へ切り替えた。
47: 以下、
夜になり、今日も一日が終わった。
事務所ではアイドルたちが何人かで集まり歓談に興じている。
黄色い声の飛び交う中で、会議室からまたもや亜美が俺に手招きしているのが見えた。
今日は罰ゲームを受けるような事はなかったはずだが、いったい何だというのだろう。
無視するのも可哀想なので、素直に会議室へと向かう。
亜美「待ってたよ、兄ちゃん」
P「どうしたんだ? 今日も何かあるのか?」
亜美は俺の目をじっと見つめてからこう言った。
亜美「今日は、兄ちゃんに話したいことがあるんだよ」
48: 以下、
俺と亜美は会議室へと入り、ソファに向かい合わせで座った。
少し緊張した面持ちの亜美は、紅茶の入ったカップをじっと見つめている。
P「それで、話したいことってなんだ?」
亜美「……うん、あのね」
亜美は紅茶を一口飲み、それからこう言った。
亜美「その前に、昨日みたく、今日もまた兄ちゃんにくっついてもいいかな?」
断る理由は特にない。
ただ、今日は亜美の態度が変なのが気になる。
俺はとりあえず、「おいで」と言って亜美を迎えた。
49: 以下、
昨日と同じように俺と向かい合わせに亜美が膝に乗り、遠慮がちに抱きついてくる。
ドアに鍵をかけているからいいものの、冷静に考えるとこんな状況を誰かに見られたら通報されかねないな。
亜美「えへへ、あったかいね」
今日も亜美は俺の心臓に耳をぴったりとくっつけて鼓動を聴いている。
もしかしてそういうフェチなんだろうか。
昨日ほどはドキドキしていないが、年頃の女の子にこんな事をされるのは俺も恥ずかしい。
亜美「……こうしてると、すっごい安心する」
父親の温もりみたいなものか。
まだそんな歳じゃないんだが。
大人に見られたいと言いつつもやっぱりまだまだ子供なんだなぁと思っていると、亜美が話をはじめた。
50: 以下、
亜美「亜美と真美はね、毎年夏になったらおじいちゃんの家に遊びに行くんだ」
P「おじいちゃん……父方のか? それともお母さんの?」
亜美「パパのパパだよ。双海病院をつくったすっごくエライ人。今はもう病院をパパにまかせて、遠くのいなかで暮らしてるの。畑をやるのが夢だったんだって」
P「ふーん……」
病院を設立って相当な事じゃないだろうか。
偉大な人なんだな。……医大だけに。
亜美「おじいちゃんちはホントにチョーいなかでさ、近くに海も山もあるし、どこに行っても遊び場なんだ」
P「いいところに住んでるんだな。俺も行ってみたいなぁ」
その言葉には反応せず、亜美は話を続けた。
53: 以下、
亜美「おじいちゃんは遊びに行くと、亜美と真美にいろんなことを教えてくれたんだ。海や山での遊び方だったり、おいしい食べ物だったり、つまんない雨の日のすごし方だったり。いつも真美と二人で『夏が楽しみだね』って話してたんだよ」
二人のお父さんには何度かお会いした事があるが、とても気さくでユーモア溢れる人だった。
亜美も真美もお父さんも、そのおじいさんの血を色濃く受け継いでいるのかもしれない。
なんにせよ、二人にたくさんのものを与えてくれたおじいさんには感謝しなくてはならないな。
しかし、亜美は声のトーンを落として言った。
亜美「……でも、もう会えなくなっちゃった」
P「……え?」
亜美「去年の終わりにね、急におじいちゃんが倒れたって電話があって、それで……そのまま……」
亜美の肩は、小さく震えていた。
去年の終わりといえば、真美の態度が変わりはじめたのもちょうどその時期だった気がする。
まだ幼い二人には、親しい者との別れはとても辛かっただろう。
亜美と真美の気持ちを思うと、胸が痛い。
俺は亜美の震えを止めるため、華奢な肩をそっと抱きしめた。
54: 以下、
亜美「……ねえ、兄ちゃん」
P「うん、聞いてるよ」
亜美「亜美がね、兄ちゃんとかみんなにいつも抱きつくのは、シンアイのキモチ? っていう意味もあるんだけど」
亜美の話、というか告白は続いた。
亜美「一番の意味は、みんながちゃんとここにいるんだって確かめたいからなんだ」
みんなの存在を確かめる……。
当たり前のようにみんながいる毎日は、おじいさんを亡くした事によって、亜美にとって不確定なものになってしまったという事だろう。
P「じゃあ、毎朝『久しぶり』って言うのはもしかして……」
亜美「おじいちゃんにはずっと会いに行けなかったから。亜美と真美が、ずっとずっとおじいちゃんを待たせちゃったから」
すすり泣き混じりで亜美は言葉を紡いでいく。
亜美「亜美にとっては、たった一日でもホントに長い長い『久しぶり』なんだよ。もう、誰も待たせたくないから。……誰にも亜美のそばからいなくなってほしくないから」
そこまで話したところで、亜美は俺の胸に顔を埋めて泣いた。
俺は亜美の泣き声が漏れないように、その頭を強く抱きかかえた。
55: 以下、
P「……少しは落ち着いたか?」
亜美「……うん、ごめんね兄ちゃん。ありがと」
ひとしきり泣いた後、亜美は俺の胸から顔を離し、涙混じりの照れ笑いを見せてくれた。
ハンカチで亜美の涙を拭いてやる。
P「二人とも大変だったんだな。真美もそうだけど、亜美の行動にそんな理由があったなんて」
亜美「……真美はね、すごくガンバってると思う。おじいちゃんがいなくなって亜美が泣いてばっかりだったから、自分がしっかりしなきゃって、ムリして大人ぶって。……ホントえらいよ、真美は」
亜美は俺の膝から降りて、隣に腰掛けた。
亜美「亜美はダメダメだよね。いつまでも子供のまんまで、さびしがりやだし、みんなに甘えてばっかだし……」
確かに、あの年齢で亜美のために大人になる事を決めた真美は偉いと思う。
けど、違う。
だって真美は、あの時……。
56: 以下、
P「なあ、亜美。昨日俺がお前の服をダメにした時、『思い出が減っちゃう気がして悲しかった』って言ったよな?」
亜美「え? うん、言ったけど……」
P「俺はその言葉が本当に嬉しかったし、そういう、人との小さな繋がりをちゃんと大事にする亜美がすごいなって思った」
亜美は少し驚いた顔で俺を見つめていた。
真美が言ってた「亜美のホントの気持ち」っていうのは、多分この事なんだ。
P「亜美は自分が子供っぽいところを気にしているのかもしれないけど、それが亜美の良さなんだと思う。これまでの話を聞いて俺はそう思ったよ」
亜美「兄ちゃん……」
P「寂しがりやでも甘えんぼでもいいじゃないか。そういう人は、相手を思いやる事ができる人なんだぞ?」
亜美はただの子供じゃない。
そこらの大人よりもよっぽど大人だ。
亜美「……でも、亜美も早くみんなにオトナって認められたいよ」
P「大丈夫、ゆっくり大人になっていけばいいさ。人それぞれ歩くペースは違うんだから」
57: 以下、
気づけば会議室の外の騒がしさは聞こえなくなっていた。
みんなはもう帰ったのだろうか。
P「……さ、そろそろいい時間だ」
俺はソファから立ち上がり、亜美に手を差し出した。
亜美は俯いたまま、膝の上で手をぎゅっと握りしめている。
P「……亜美?」
しばらく亜美は俯いていたが、大きくため息をついてから顔を上げた。
その表情は寂しそうで、悲しそうで、でも少しだけ嬉しそうだった。
亜美「……あーあ、亜美はけっきょく子供のままかぁ。いつになったらオトナになれるのかなー」
声にはいつもの調子が戻っているようで、少し安心した。
亜美「亜美思うんだけど、亜美が子供のままなのは兄ちゃんのせいでもあるんだよ?」
P「俺のせい?」
58: 以下、
亜美「兄ちゃんが亜美を甘やかすから、亜美はずーっとずーっと成長できないままなんだよ?」
俺をじっと見る目は怒っているようにも見えたが、多分これは大丈夫なやつだ。俺にはわかる。
P「じゃあ、律子みたいに厳しくした方がいいか?」
亜美「うわあ、それだけはカンベンしてよー。鬼軍曹が二人に増えたら亜美のカラダがもたないよー」
そして、俺が差し出した手を握って立ち上がり、こう言った。
亜美「兄ちゃん、こんなヒゴーホーな亜美ですが、これからもよろしくお願いします」
にかっと笑う亜美の笑顔は、見る人に元気と安心を与えてくれる。
そして小さな手の温もりは暖かく、俺の手をしっかりと握り返してくれた。
P「……バカ、何言ってんだよ……」
亜美の笑顔を見られてなんだか胸がいっぱいになり、俺は亜美の頭をくしゃっと撫でた。
59: 以下、
次の日の朝、俺は自分のデスクでこないだの掲示板にひとつ書き込みをする事にした。
これまで掲示板を覗く事は度々あったが、こうして自分で書き込むのは初めての事だ。
カタカタと短い言葉を打ち込み、ページを更新して自分の書き込みが反映されているのを確認し、作業終了。
P「……これでよし、と」
そこへ、コーヒーカップを持った音無さんがやってきた。
小鳥「プロデューサーさん、コーヒーどうぞ。……ってあら? 何を見てたんですか?」
P「あ、ああ、いえ、特に面白いものじゃないですから」
俺が制止するよりも早く音無さんは画面を覗き込む。
小鳥「どれどれ……」
画面には、こんな短い言葉が表示されていた。
60: 以下、
「真美は合法、亜美も合法」
62: 以下、
終わり
亜美メインのSSをあまり見かけないので書いてみたかった
投下した後で22日に投下すればよかったと後悔した
読んでくれた人ありがとう
63: 以下、
おつ
やっぱりロリコンじゃないか
65: 以下、

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