千歌「果南ちゃんを手ブラで帰すわけにはいかないぞって」back

千歌「果南ちゃんを手ブラで帰すわけにはいかないぞって」


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千歌「だから今日は千歌の部屋に泊まるのだ!」
果南「まさかそのために私の上着とブラをしいたけに食べさせたの?」
千歌「ふふふ」
果南「でも残念でした。私はウェットスーツ持ってきたから」
千歌「ああ!…… そうだった」
果南「千歌、なんでこんなことしたの?」
果南「ただのイタズラだったら怒るよ」
千歌「――だって」
千歌「最近、果南ちゃん全然私に構ってくれなくて」
千歌「寂しかったんだもん……」
果南「千歌……」
果南「……」フゥ
果南「いいよ、おいで」
千歌「え……?」
果南「ハグしてあげる♪」
千歌「わーい!」
 ギュ
 
2:
 
 チュンチュン
果南「んっ――」
果南「もう朝か」
千歌「zzz」スー スー
果南「ふふ」ナデナデ
果南「さて、帰ろうか」
千歌「かなんちゃん……」
果南「ん、千歌、起きてた――」
千歌「zzz」スピー
果南「……寝言か」
千歌「だいすき……」
果南「!」
果南「///」
果南「もうちょっと、寝てようかな……」
千歌「zzz」グー 
果南「ありがと」ナデナデ
 
3:
 
千歌「でね! ここの振り付けは上手くいったと思うの」
果南「へえ、千歌ってばホント真面目にやってるんだ」
千歌「ええー!? それどういう意味!?」
果南「だって、いつも何か思いついては中途半端に投げ出して」
千歌「ひどいよー!」
果南「そうは言うけどね、毎回付き合わされるこっちの身にもなってよ」
千歌「むう……」
千歌「どーせ私は普通どころか半端星人ですよーだ!」
果南「あはは、ごめん。冗談だから怒らない怒らない」
果南「でも良かったね。夢中になれるものがやっとできて」
千歌「え?」
果南「千歌ってば、事あるごとに自分には何もない、何もないって言って」
果南「これでもけっこう、心配してたんだよ」
千歌「そう、なの……?」
果南「頑張りなよ。応援してるからさ」
千歌「……」
千歌「ねえ、果南ちゃん」
果南「ん?」
千歌「――ううん」
千歌「泊まってくれてありがとう」
果南「私も、久々に楽しかったよ」
果南「服なくなったのは痛いけど」
千歌「じゃあ今度お詫びに、いっぱいみかん持っていくね!」
果南「そういう問題じゃ――ま、いっか」
 
4:
 
果南「じゃ、家に帰るよ」
千歌「服、ホントにごめんね」
果南「そう思ってるなら、もう二度としない。いい?」
千歌「うん」
果南「――でも千歌の気持ち、嬉しかったよ」
 ハグ
千歌「えへへ///」
果南「またね」
 ジャバジャバジャバ
千歌「果南ちゃんってば、また泳ぐの早くなってる」
千歌「毎日、お客さん相手に潜ってるからかな」
千歌「本当なら学校に行く時間も、ずっと――」
千歌「……」
千歌(やっぱり、誘えないよね)
千歌(だって、二人暮らししているおじいちゃんが入院して)
千歌(果南ちゃんはいま、ダイビングショップの経営で忙しいんだから)
5:
 
   ※
千歌「それでね! 私たち明日東京行くことになったの!」
果南「へえー」
千歌「『へえ』って、それだけー!?」
果南「いや、凄いことなんだと思うけど、あんまり実感湧かなくて」
千歌「もお」
果南「でも、その日は休日だから、応援どころか見送りにもいけないや」
果南「稼ぎ時だしね」
千歌「う、ううん、気にしないで」
果南「お土産、期待してるよ」
千歌「観光で行くんじゃないよ」
果南「私、ほら、あの『ひよこ』ってのが食べたいな」
千歌「聞いてよー」ユサユサ
果南「楽しみにしてるからねー」ユレユレ
 
6:
 
千歌「ただいまー」
果南「千歌、もう帰って来たの?」
千歌「だから観光じゃないって言ったでしょー」
千歌「まあいいや。はい、これ」
果南「『ひよこ』だね。買ってきてくれたんだ」
千歌「あれだけしつこく言ってたからね」
果南「そうだっけ?」
千歌「もー」
果南「なんてね、ありがと千歌」
千歌「あとこれも。――はい!」
果南「……またみかん? それもこんな大量に」
千歌「こないだ言ったでしょ。服ダメにしたお詫びにみかんあげるって」
果南「ああ、そんなこともあったね」
千歌「……果南ちゃん、最近忘れっぽくなってない?」
果南「そうかな? まあ、それだけ仕事に追われてるのかも」
千歌「あ――そうだよね」
果南「それより、せっかく来てくれたんだから、夕食うちで食べてかない?」
千歌「いいの!?」
果南「ちょうど作り過ぎててさ」
果南「それに、千歌の東京遠征ライブの話も聞きたいし」
千歌「!」
果南「千歌?」
千歌「う、ううん、なんでも……」
果南「?」
 
8:
 
 ハハハ
果南「それにしても、Aqoursってホントみんな個性的だね」
千歌「うん!」
果南「曜と2人で始めた時はどうなるかと思ったけど」
千歌「みんないい人でさー」
千歌「こんな私にも、まだついてきてくれて――」
千歌「――!」ハッ
果南「こら、千歌はリーダーでしょ? もっと自信もちなよ」
千歌「う、うん――あ、そういえば東京で曜ちゃんってば巫女さんのコスプレ――」
果南「それで、肝心のイベントはどうだったの?」
千歌「……!」
果南「どうしたの?」
千歌「……話さなきゃ、ダメ?」
果南「だってそれがメインなんでしょ、東京行った」
果南「そりゃあやっぱり聞きたいよ」
千歌「……あのね」
千歌「出場者みんな、とってもすごくて……」
千歌「とくに、セイントス・ノーマン・パーって二人組はプロみたいで……」
果南「へえ、それはまた熱い闘いだったね」
果南「で、結果はどうなったの?」
千歌「うん……で、負けちゃったんだ。大半のグループに」
果南「そっか」
 
9:
 
千歌「……」ギュ
千歌「……なんかね、あんな凄いの見せられて」
千歌「私、ちょっと、自信なくしちゃったっていうか……」
果南「そう」
果南「まあ、現実は厳しいって言うし、仕方ないよ」
千歌「――果南ちゃんだったらどうする?」
千歌「もし、これまでの頑張りが全部否定されて」
千歌「絶対、この人たちには敵わないって、思い知らされて」
千歌「失敗もして、自分たちのパフォーマンスなんか本番じゃ全然できなくて!」
果南「……」
果南「そうだね、私だったら」
果南「すっぱり辞めるかな」
千歌「え……」
果南「自分に才能がないっていう道なら、見切りをつけてあきらめる」
千歌「そっか……ううん、そうだよね」
千歌「それが普通なんだよね」
千歌「なら、やっぱり私も――」
10:
 
果南「千歌、おいで」
千歌「え?」
果南「いいから、おいで」
千歌「……」スッ
 ダキッ ギュッ
千歌「///」
果南「アイドル、辞めたくなったの?」
千歌「!」
千歌「……」
果南「答えて」
千歌「……そんなわけ、ない」
千歌「私、スクールアイドルが大好き」
千歌「Aqoursが、大好きだもん!」
果南「そう、良かった」
千歌「え?」
果南「私も、アイドルやってる千歌が大好き」
千歌「か、果南ちゃん///」
果南「正直ね、驚いてるんだ」
果南「だって、あの千歌がだよ」フフ
千歌「なにそれぇ!?」
果南「あの千歌が、これまで見たことなかったくらい」
果南「どんなアイドルにも負けないくらい」
果南「一生懸命で、わき目も振らないほど夢中で」
果南「輝いてるんだから」
千歌「――!」
果南「そりゃあ見惚れちゃうよ」
果南「まあ、身内のひいき目だと思うけど」
11:
 
 スッ
果南「――さ、湿っぽい話は終わり。早くご飯食べちゃおう」
果南「せっかくの手料理、冷める前に食べてよ――」
 ギュ
果南「千歌?」
千歌「がなんぢゃーん」ズビー
果南「ちょ! 鼻水、服に鼻水があ!」
千歌「ありがどーー!」ズビー
果南「分かった、分かったから! はい、どうどうどう」ナデナデ
千歌「ふん!」チーン
果南「ハァ……」
果南「みかん、またいっぱい持ってきてよね」
12:
 
 チュンチュン
果南「んー、今日もいい天気」
 カナンチャーン
果南「あの声は――」
千歌「おはよーう!」ダダダ
果南「千歌! うん、おはよう」
千歌「はあ、はあ」
果南「どうしたの? こんな朝早く?」
千歌「果南ちゃんにお願いがあるの!」
果南「お願い? なに?」
千歌「私たちと一緒に、スクールアイドルになってください!」
果南「!」
千歌「分かってるよ。ショップで忙しくて、そんなことやってる暇ないことくらい、分かってる」
千歌「でも、私は果南ちゃんと一緒にやりたい!」
千歌「本当は、ずっと言わないつもりだった」
千歌「でも昨日、やっと分かったの。私にはやっぱり果南ちゃんが――」
果南「千歌、ダメだよ」
千歌「……そう、だよね」
果南「私を頼りにしようなんて、そんなのはダメ」
千歌「え?」
果南「ちゃんと引っ張ってよね。リーダーは千歌なんだから」
千歌「じゃあ、果南ちゃん……」
果南「かわいい幼馴染みの頼みでしょ? そりゃあ手伝わなきゃね!」
13:
 
千歌「でも、お仕事が――」
果南「ダンスの自主練は夜にでもできる」
千歌「疲れてないの?」
果南「全然」
千歌「あう……」
果南「というか、なんで最初に誘ってくれなかったの? けっこうショックだったよ」
果南「ずっと、待ってたんだからさ」
千歌「うう……」ジワ
千歌「がなんぢゃーん」ズビー
 ダキッ スカッ
千歌「ええ!? 避けられた!」
果南「服を守りたいからね」
千歌「ひどいよぉー」
果南「じゃあ、続きは――」
14:
 
志満「あら、果南ちゃん。いらっっしゃい」
果南「お邪魔します」
美渡「どうしたの? こんな時間に」
果南「実は、今日千歌の部屋でアイドル活動について泊まり込みで話そうと」
美渡「え? 果南もアイドルやるの!?」
果南「ま、まあ」
美渡「うわ、意外」
果南「――だよね」
 
15:
 
千歌「見てみて、一番星だよ」
果南「ほんとだ」
千歌「なんて名前だっけあれ」
果南「ベガ」
千歌「そうそう、デガ」
果南「わざとやってる?」
千歌「えへへ」
果南「はあ、まだまだ子どもだね、千歌」
千歌「純真を忘れないのがアイドルだよ」
果南「そうかな?」
千歌「そうかなん?」
果南「それより、私の振り付け部分なんだけど――」
千歌「あー、無視したー! 今のは果南ちゃんと疑問のかな――」
果南「説明しなくていい」
16:
 
果南「――で、この曲の場合は」
千歌「ねえ、果南ちゃん」
果南「なに?」
千歌「あのぉ、大変言いにくいんですけどぉ」
果南「どうしたの、改まって?」
千歌「そろそろ、け、今朝の続きを……///」
果南「……」
果南「……」フゥ
果南「ハグしたいの?」
千歌「///」コクン
果南「いいよ、おいで♪」
千歌「わーい!」
 ギュ
果南「ふふ///」
千歌「えへへ///」
 
17:

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千歌「果南ちゃんを手ブラで帰すわけにはいかないぞって」

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