「最弱魔王の決戦」【パート2】back

「最弱魔王の決戦」【パート2】


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3:
?「やっと呼んでくれましたね。何年ぶりの地上でしょう……」
少女「……」ガクンッ
?「おっと……先に願いを叶えましょうか。本当はいけないのですが、今回はそうも言ってはいられません」ギュッ
?「少しだけ、花弁達と待っていてくださいね? ……すぐに終わらせますから」ストンッ スタスタ
僧侶「まだ……まだ……っ」ポタポタ……
?「……私に気がつかない程、必死なのですね」スッ……ポウッ
僧侶「……ッ!」パッ
?「貴女ももう、休んで良いのですよ……今まで良く頑張りました」ギュッ
僧侶「! ……あ……ああ……貴女、は……ッ!」ブルブル
214:
?「待っていてください、こちらが終わったら貴女もすぐ……」
僧侶「わ、わた、私はっ……私は夢をっ……見ているの、ですか……!?」パチパチ
?「ふふっ。もしも夢ならば、貴女の手の痛みはどうなるのです?」
僧侶「ッ! ああ、あ、ではやはり……貴女は……!」ポロポロ
?「……『主の傍に侍りて、我らは世界を何時も見守っている』」
僧侶「う、ぁ……あああ、ッ……神よ……感謝します……」ポタ……ポタ……
僧侶「……嗚呼、信じて……良かっ……」ガクリ
戦士「そ、僧侶! しっかりしろ!」ガシッ
?「大丈夫、気を失っているだけです。今まで張り詰めていたものが緩んだのでしょうね」ポゥッ……
215:
戦士「あ……あんた何者だよ。どうしてそんなに落ち着いていられるんだ!?」
?「……そうですね、この者が目を覚ましたら訊いてみると良いでしょう」
戦士「とぼけるなよ! まあ、見る限り魔物じゃねえみてえだが……」
?「ええ、私は……あの子の願いによって召喚されたしがない召喚獣です。白獣とでも呼んでください」チラッ
戦士「召喚獣って……でもあんた、俺の目がおかしくなければ女の姿を……」マジマジ
白獣「これが私の生前の姿ですからね。勿論、召喚獣としての姿にもなれますが」
戦士「生、前……?」キョトン
白獣「ふふ、こちらの話ですよ……はい、終わりました」スッ
戦士「! 傷が……あんなに流れていた血も消えてる……」
白獣「心臓も元通り動き始めている筈です。確認は……あの子にしてもらいましょう」クルリ
少女「……」
216:
戦士「えっ!? あれ、なんで……」
白獣「簡単な事です。贈り主の命と共に散るのなら……」
少女「……あ」スッ……ペタペタ
少女(髪飾りが……元に戻ってる……!)
白獣「まあ、あれは私が元に戻したんですけどね」クスッ
戦士「おい」
白獣「ですが、贈り主の命が助かった事には変わりありませんよ?」
少女「……」コツ……コツッ……
白獣「お嬢さん、貴女のお名前は?」
少女「……少女」コツンッ……
217:
白獣「では少女さん。髪飾りを外しなさい」
少女「……」スッ……サラッ
白獣「これで……正式に契約は結ばれました」ス……バサッ
少女「!」
戦士「なっ……少女ちゃんの髪が一気に短く……!」
白獣「私達は、召喚主である乙女の髪を代償に力を行使します。今回は順番が逆になってしまいましたが」
白獣「少女さん、意図的ではなかったとはいえ、こちらは貴女の求めに応じて力を示しました……よろしかったですね?」
少女「……」コクリ
白獣「では、私の力を確認なさい」ササッ
少女「……」スッ……ピトッ
側近「」トクン……トクン……
218:
少女「! ……動いて、る……あったかい……」ジワッ
白獣「ふふ、それは良かった。ですが、安心するのはまだ早いですよ?」
少女「……え?」
白獣「幾ら肉体が生きていても、目を覚まして動き始めなければ意味がありません」
戦士「おい、何だよそれ……!」
白獣「この者の肉体にはまだ……心が戻っていません」
少女「!」
戦士「そんな……」
白獣「ですから少女さん、貴女がそれを呼び起こすのです」ジッ
少女「私が……?」
白獣「私は傷は治せても、心までは戻せません。ただ、その手助けはできますがね」
219:
少女「……」
白獣「少し苦しい思いをするでしょうが……どうしますか?」
少女「も、勿論やる!」グッ
白獣「では、この者のすぐ隣に横になってください」
少女「は……はい……」スッ……ピタッ
白獣「その手を繋いで……しっかりと、離れぬように」
少女「……」ギュッ
白獣「後は目を閉じて、この者の事だけをひたすら強く想いなさい」ナデナデ
少女「ん……側近さん……」
少女(待ってて、ね……今、行くか……ら……)スウッ……
220:
白獣「……ここからは先は貴女次第。心の導くままにおやりなさい……そうすれば、きっと……」
白獣(なんたって貴女は私の……嗚呼、許されたと勘違いしてしまいそうですね)
戦士「なあ、1つ訊いて良いか?」
白獣「! ……ええ、答えられる範囲なら。その前にこの者の治療をさせてください」サッ……ポウッ
戦士「あ、そ、そうだな……僧侶、大丈夫なのか」
白獣「こちらは手と心身の消耗以外は目立った外傷もありませんから、じきに目を覚ますでしょう」
戦士「そっか」ホッ
白獣「では改めて、貴方の質問に答えましょう」ニコッ
戦士「……俺の聞き間違えじゃなければ」
白獣「はい」
戦士「あんた……さっき『私達』って言ったよな」
白獣「……」
221:
戦士「俺は馬鹿だし、勇者や魔法使いみたいに魔法も使えねーが、その分体の能力は人並み以上だからな。あ、誤魔化すのはナシな」
白獣「……確かに、言いましたね」
戦士「じゃあ、そいつは今何処にいるんだ?」
白獣「……普段は私が来るだけで事足りるんですがね」
戦士「?」
白獣「今回は極めて稀なケースですから」
戦士「ま、待ってくれ、言っている意味が……」
白獣「ああ、ごめんなさい。貴方の求める答えになっていませんでしたね」クスクス
戦士(美人だけど、ちょっと苦手なタイプかもな……)
222:
白獣「あの方は……私の大切な『半身』は、別の場所にいます」
戦士「別の場所って……」
白獣「少女さんにとって特別な、『もう1人』の所ですよ。今、あそこに必要なのは私よりもあの方ですから」
白獣(ちゃんと加減、してくださいね……?)
――――
――
謁見の間
勇者(兄魔王)「……何だお前は」
?「……」グルルル
魔王「あ……ぇ……?」
223:
魔王(この黒い獣……魔物か? 一体何処から現われたんだ!?)
魔王(全身から尋常でない力を感じるが、何故か恐ろしいと思わない……)
魔王(ってそれよりも姫だ! どうすれば助けられる!? 腕も再び取れて……)
兄魔王「おい、聞いているのか?」イラッ
?「黙れ寄生虫が」
兄魔王「……あ?」ピクッ
魔王「!?」ポカン
?「それ以上気持ち悪い声を出すんじゃない……吐き気がする」フンッ
兄魔王「……ッッッ!」ヒクヒク
224:
?「……おい、こいつは殺して良いのか?」クルリ
魔王「え? ちょ、ちょっと待て、意味が……!」
?「大変不本意だが、契約によりお前達を助けてやると言っているんだ。さっさと理解しろ蕩け脳味噌」
魔王「と、とろけのうみそ……」ガーン
魔王(って落ち込むな魔王! それより契約とは何だ……? とりあえず敵ではないという事か?)
兄魔王「ほう……獣の分際でこの俺を侮辱するのか……」
?「ふん、中途半端な紅獅子頭が言えた義理ではないだろうが。偉そうにするな」
兄魔王「〜〜〜ッ!」ビキィッ
魔王「……知っているのか? 奴の本性を」
?「当たり前だ。私を誰だと思っている」
225:
魔王「……だ、誰だ?」
?「不勉強な奴だな……とりあえず私の事は黒獣と呼べ」
魔王(黒獣……はて、何処かで似た名前を見た覚えがあるような……)
黒獣「さて、私は今機嫌が悪い。とっとと終わらせるぞ」ザッザッ
魔王「ま、待ってくれ、姫が……胸に矢を受けているのだ……!」オロオロ
黒獣「……」ジッ
魔王「頼む、まずは姫の命を……」
黒獣「……お前の目は蓮根か?」
魔王「レンコン……!?」
黒獣「それで魔王とはちゃんちゃらおかしい事だ」
魔王「な、何が言いたいのだ……こ、黒獣よ」
226:
黒獣「そいつの胸元を肌蹴させて……良く見てみろ。躊躇うと噛むぞ」キラッ
魔王「え? あ……す、すまない姫」スッ……グイッ
兄魔王「! な、に……」
魔王「これは……!」
黒獣「……どうやらそいつは、まだ死する運命ではないらしいぞ」
兄魔王(もう1つの……首飾りだと……ッ!?)ワナワナ
姫「ん……」ガラッ……カランッ
魔王「あ、あ……良かった……本当に」ジワッ
魔王(姫の弟君……ありがとう……)
227:
黒獣「……落ち着いたか?」
魔王「! ……ああ。お陰様でな」ゴシゴシ
黒獣「ならばさっさとそいつを隅へ置いてこい。足手まといだ……私は先にこいつと遊んでいるぞ」ギロッ
魔王「……貴方が何者なのかはこの際置いておこう。今はとにかく感謝する」ザッザッ
黒獣「……早く行け。でないと勢い余って殺してしまうかもしれんぞ」
兄魔王「お前達、良い度胸だなあ……この俺を差し置いて!」ダンッ
黒獣「……おい、こいつは脳筋か? 私の力量がわからんとは……」
魔王「!」ブフォッ
黒獣「こういう小物が大物ぶっている光景程、滑稽なものはないな」プッ
兄魔王「」ブチッ
黒獣「いかんいかん、不覚にも笑ってしまった」
兄魔王「……そんなに早くあの世へ逝きたいなら望み通りにしてやろう!!!!」チャキッ
黒獣「ふん……できるものならやってみろ」ニィッ
232:
魔王「……と、やはり片腕では抱えにくいな」ヨロ……ヨロ……
魔王(何故だろう。得体の知れない獣を無意識のうちに信頼している自分がいる……)
魔王「ふう、ここならば大丈夫か。姫、少々荒っぽく扱ってしまった事を許してくれ」スッ……
魔王「……そして、勝手ながらそなたにはしばらくこれを預かっていてほしい」ゴソッ……コテン
魔王(流石に腕は置いてはいけないが……兎なら大丈夫だろう)
姫「……ごめんなさぃ……まお……さま……」ポロ……ポロ……
魔王「……」ナデナデ
魔王「首飾りも一緒に置いて……と。黒獣、待たせてすま」クルリ
黒獣「……」ドスッ ズドンッ
兄魔王「ぐっ……!」ビタンッ ズザザザザ……ッ
魔王「……ないな……」
233:
黒獣「遅いぞのろまめ」ギロッ
魔王(圧倒している……だと……!?)
魔王「あ……こ、黒獣、できればもう少し手加減を……」
黒獣「何故だ? こいつはお前の敵なのではないのか?」ガブッ ブンブン
兄魔王「う、がッ……は……っ」ビタンッビタンッ
魔王「頼むから咥えて振り回すのは止めてやってくれ……私がどうにかしたいのはあくまで中身だけだ」
黒獣「……ふん。甘い奴だ」ブンッ
兄魔王「」ドサ……
魔王「……良かった。あんなに叩きつけられた割には外傷は少ないな」ホッ
黒獣「流石勇者と言った所か」フンッ
魔王「……何処まで知っているのだ貴方は」
黒獣「お前に言う必要はない」プイッ
234:
兄魔王「くそっ……何なんだお前はッ……! 何故それ程までの力を……」ギロッ
黒獣「今更気付いたのか間抜けが……そういう存在だからに決まっているだろう。少なくともお前を軽く超える程度の力は持っているぞ」
魔・兄「!」
黒獣「嗚呼、言っておくが私を乗っ取ろうなどとは考えない方が良い。お前の方が消滅するからな」
兄魔王「ッ……!」ギリ……ッ
黒獣「ところでお前」クルリ
魔王「え?」
黒獣「何時までそれを未練たらしく持っている」カプッ
魔王「あっ」
黒獣「どうせくっつかないのなら持っていても邪魔なだけだろうが」ポイッ……ゴトン
魔王「わ、私の腕が……!」
235:
黒獣「……後で白娘に治してもらえば良い。本当はさせたくないが」ボソッ
魔王「白……娘?」
黒獣「! ……今はこいつをどうにかするんだろうが」ノソッ
魔王「それはそうだが……」
魔王(白い娘に……黒獣……もしや……)
黒獣「どうした。平和ボケした面がますます際立っているぞ」
魔王「……そうか。貴方の正体は……」
ガチャッ
魔法使い「はあっ……はあっ……やっと着いた……」ゼエゼエ
236:
黒獣「……何だこのちんちくりんは」
魔王「! お前は確か……魔法使いだったか?」
魔法使い「気安く、呼ぶなっ……それより勇者と……お姫様、は……無事、なんでしょうね……?」ギロリ
魔王「あ、ああ……姫ならあそこに」スッ
魔法使い「……どうやら無事みたいね。で、勇者は……」チラッ
黒獣「……倒れているな。何時の間にか」ツンツン
魔王「!」
魔法使い「勇者っ!」タタタッ
魔王「で、では奴は出ていったのか……? 何故……」
魔法使い「しっかりしなさいよっ……勇者ぁ……!」ギュウッ
237:
黒獣「ぎゃあぎゃあ喚くな。手加減は(多分)したから気を失っているだけだろう」
魔王(多分……)
魔法使い「ゆ、勇者にもしもの事があったら……絶対に許さないからっ……!」ギョロンッ
黒獣「……全く、幼児体型な魔改造小娘は良く吠えるな」フッ
魔法使い「うるさい、人が密かに気にしてる事を言うんじゃないわよ! ……って何この喋る獣!!」ビクッ
魔王「い、今更気付いたのか……!?」
魔法使い「でもこの気配は……まさかあの女、本当に召喚したの……!?」マジマジ
魔王「え? ……召喚?」
魔法使い「……いや、条件を揃えていても早過ぎる……それに僧侶の言葉が正しければ、喚べるのは一方だけじゃ……」ブツブツ
魔王「お、おーい、あの女とは少女の事か? この黒獣は少女が喚んだのか?」
魔法使い「黙りなさい。でないと今すぐありったけの攻撃魔法をぶちかます」ギンッ
魔王「……」シュン
238:
黒獣「……私は白娘の所へ行く」クルリ
魔王「……その、白娘とやらもここに喚ばれているのか?」
黒獣「気安く呼ぶな。彼女をその名で呼んで良いのは私だけだ」ギロリ
魔王「ッ……」ゾクッ
黒獣「先程呟いた分には目を瞑るが……これ以上は許さん」
魔王「で、では何と呼べば?」
黒獣「……白獣。または……『白神獣』」
魔王「! ならばやはり貴方は……」
黒獣「話は後だ。もう行く」タンッ……
魔王「あっ……」
黒獣「……目的地はお前と一緒の筈だ。あまり遅れるなよ」ダダダダダッ
魔王「……行ってしまった」
239:
魔王(一先ず私も行くか。ほんの少しだが魔力も戻って来た……私と)チラッ
姫「……」
魔王(姫だけならばどうにか転移できるか?)コツッ……コツッ……
勇者「……」グタッ
魔法使い「勇者……」
魔王(……あちらはしばらく放っておいた方が良さそうだな……ん?)キョロキョロ
魔王(おかしいな、確かこの辺にあった筈なのに……何処に消えたんだ?)
240:
――――
――
少女(……)パチッ
少女(ここは……そうだ、側近さんの心を取り戻すために私……!)フワフワ
少女(って事は今いる空間は……側近さんの中、なのかな……)
少女(うーん……真っ暗で何も見えな……え?)サラッ ペタペタ
少女(さっき白獣さんに切られた筈の髪が戻ってる……なんで?)
少女(髪飾りもつけてるし……ここでは何時もの私に近い姿になるのかな)
少女(ってこうしてる場合じゃないよ!)ブンブン
少女(とにかく進まないと……えっと、こっちかな?)フワフワ
241:
『……ぁ』
少女(! 今、何か聞こえた)
『ゃ……やめ……』
少女(あっち……? とりあえず行ってみよう)スーッ……
『うぁ……おね、が……やだ……』
少女(光が……声も大きくなってるし、あれを目指せば良いの?)
少女(声もどんどん大きくなって――)
『止めて、もう止め……あああぁぁぁあああああァァァッッッ!!!!』
少女(……え……?)
242:
すみません、>>241訂正です。
『……ぁ』
少女(! 今、何か聞こえた)
『ゃ……やめ……』
少女(あっち……? とりあえず行ってみよう)スーッ……
『うぁ……おね、が……やだ……』
少女(光が……! あれを目指せば良いの?)
少女(声もどんどん大きくなって――)
『止めて、もう止め……あああぁぁぁあああああァァァッッッ!!!!』
少女(……え……?)
243:
『もう、五月蠅いわねぇ……たかが全身の骨を砕いた位で』
『ふふっ、それともこの前みたいに首をもいで、ボールみたいに蹴ってあげた方が良い?』クスクス
『あがッ……ぁ……』ビクッ……ビクッ……
『心臓にさえ手を出さなければ何やっても死なないんだからなあ……凄いよな、俺達の体は』
少女(……これ、は……何……?)カタカタ……ギュウッ
少女(3人が、1人に……寄ってたかっ、て……)
少女(……なんて酷い……!)ジワッ
『ぎゃはっ。ほら、続けるぞ』グイッ
『ぎぃッ……!』
『次は私よ〜……せー、のっ』グチュ……ッ
『ひっ……ぎゃあああああああああっ!!!!』
244:
少女(……それに、良く見たら……)
『ひぐっ……あああぁぁぁぁああああああっ!!!!』
『相変わらず叫び声だけはご立派ね♪』
少女(背も風貌も、私とあまり変わらない位になってるけど……)ガタガタ
少女(間違いない……痛めつけられてるあの人は……)
『う、うぇぇっ……ゲホッ……』ビチャッ
『また吐くのぉ? あんたも飽きないわね……』
少女(側近、さん……!)ポロポロ
245:
少女(じゃあこれは……側近さんの過去……?)
『ねえ、そろそろこの子に拘束魔法をかけ続けるのも疲れてきたんだけど……夜ももう遅いし』フアァ……
『それもそうねぇ。あたしも防音魔法かけ続けるの飽きちゃったあ……兄上?』
『ちっ、今日も駄目だったか……おい』グイッ
『ぅ……っ』
『この事をあいつにバラせばどうなるか……わかっているな?』
『……ァ……ッ』コク……
少女(あいつって……魔王様の事?)
『ね、自分をこんな目に遭わせるあたし達が憎いでしょ? 殺してやりたいでしょ?』
『早くこっちに来なさいよ……あんたはあたし達と同じ、魔王の子供なんだからあ』
『生まれながらにあの出来損ないと同じ欠陥を抱えているなんて……本当に可哀想』
246:
『でも大丈夫よ。これからも姉上達がこうやって……』ニィッ
『矯正に協力してあげるからねぇ』ニヤァ
少女(側近さん、魔王様の知らない所で……こんな……!)ガクガク
『全く、お前にはさっさと覚醒してもらわないと困るんだよ……末子だろ? これ以上手間をかけさせるな』
少女(末子……?)
『今のあんたを食べてもその力が手に入らないのはもどかしいわね……まあ、下ごしらえも楽しいから良いけど』
『何言ってるの? この子を食べるのはあたしよお?』
『はあ? あたしでしょ』ギロッ
『おい、もう休みたいんじゃなかったのか。さっさと行くぞ』クルッ
『……ちっ。わかってるわよ』タタタッ
『じゃあ、続きはまた明日ねぇ〜』スタスタ
『ふん。魔王の子でありながら力を拒むとは……本当に愚かな奴だ』バタンッ
247:
『……』
少女(そ……側近さん……)ボロボロ
『……うう』ジクッ……ボコッ ボコッ
少女(! 体が……少しずつ再生してる?)
『ぐ……あ……』
少女(これが過去の事なら、私には何も……こんなに苦しんでいるのに)ギュッ
『……しい』
少女(え?)
『苦しい……モういやだ……』ドクンッ……ブワッ
少女(!)ゾクッ
『こンナ事が、毎晩続く位なラ……』ズズズッ……
少女(何……? 側近さんの様子が……あの黒い靄は一体……)ブルッ
248:
『あニうえ……ゴメん、ナさ……い……』グルルルル……
少女(! そんな……駄目だよ側近さん……)
『僕ハ弱いカら……モウ……』ブツブツ
少女(何故こう思うのか、わからないけど……)
少女(それ以上は……駄目ッ……戻れなくなる!!)フワッ タタタッ
少女「側近さん!!」ギュウッ
『……え……!?』ポカン
少女(! さわ、れた……? さっきまで見ている事しかできなかったのに)
『き、君は……? 一体、何処から……』キョロキョロ
249:
少女(……考えるのは後。せっかく側近さんにも私が見えてるんだもの)
少女(それで私にできる事をするのが先だよ……『心の導くまま』に)グッ
少女「……」ギュ……ッ
『わわっ、何……!? は、放して……っ』アワアワ
少女「駄目。しばらくこのままで……ね?」ナデナデ
『うひゃあっ! あ、あ……顔に柔らかいものがっ……ふああああ……!』カアッ
少女(……昔の側近さん、ちょっと可愛いかも)クスッ
『ど、どうしてこんな……って駄目だ!』グイッ
少女「……え?」
250:
『き、君がその……どうして僕にこんな事をするのかわからないけど……』ドキドキ
少女「あ……ごめんね。やっぱり嫌だったよね……?」
『あああそうじゃなくて! そ、そりゃあ確かに最初はびっくりしたけどさ……』
『今は寧ろもっと……って何言ってるんだ僕は! そうじゃなくて!』ブンブン
少女「?」
『……僕の血がついて……君まで汚れちゃう、から』
少女「! ……やっぱり、貴方は優しいね」
『えっ?』
少女「……じゃあ、これだけ聞いて?」ジッ
『わっ、ち、近いよ……!』
251:
少女「今は、辛い事ばかりかもしれないけれど……どうか、希望を持って」
少女「ずっと未来で……待ってる、から」ニコッ
『!? それってどういう……ッ!』ドクンッ
少女「……あれ?」サラサラ……
『あ……』ドクン……ドクン……
少女(私の体が透けていってる……)
『……ッ!』ググッ……グググッ
少女(これで、良かったのかな……?)
『……ふう……そうか。そういう事か』ギュッ……
252:
少女「わぷっ……え?」ポカン
『あの時の女の子はお前だったんだな……少女』
少女「あ……なんで……」
『何故今まで忘れていたんだろうな……』ナデナデ
少女(何時もの、側近さんの姿だ……!)
『お前にこうして救われるのは、2度目だよ』
少女「え、それってどういう……!」サラサラ……フワッ
――パアアッ……
253:
――――
――
少女「……」パチッ
少女「……あ……!」ガバッ ペタペタ
少女(戻って、来たんだ……側近さんは!?)グルンッ
側近「……っ」パ チ……ッ
少女「!」
側近「……しょう、じょ……」
少女「あ……」ジワッ
側近「どうやら、お前を……悲しませて、しまった……ようだな」スッ
少女「うっ……ううっ……」ギュウッ ポタッ……ポタリ
側近「その……伝えるべき事は色々とあるが。とりあえず……ただいま、少女」
少女「……あ、あ……うわあああああああん!!!!」ボロボロ
257:
側近「……」ナデナデ
少女「ひっく……ぅあ……っ……」ポロポロ
側近「……髪」スッ
少女「!」
側近「……あの、髪飾りが……とても、映えていたのに」
少女「そんなの……別にどうでも良いよ……側近さんが、助かったから」
側近「良く、ない……髪は女の……命、だぞ……」
少女「馬鹿っ! 側近さんの命の方が大事だよ……!」ポカッ
側近「ッ……」
少女「馬鹿……側近さんのばかっ……!」ポカッ ポカッ
側近「……少女」
258:
少女「うう……ばかあっ……」ポカッ……ポカッ……
側近「……それ以上は、傷に障る」
少女「え!? まだ何処か痛むの!?」バッ
側近「……冗談だ」
少女「! 側近さん……」ジトッ
側近「す、すまない……正直、まだ実感が湧かないのかもしれん」
少女「あ……」
側近「死ぬ一歩手前だったのは、間違いないからな……あっちで、母上と妙な死神にも会った」
少女「えっ!?」
側近「お前の事を知っているようだったが……心当たりはないか?」
259:
少女(もしかして……)
側近「少女……?」ジッ
少女「……さあねー」ギュウッ
側近「!」
少女「とにかく、側近さんが目を覚ましてくれて……本当に良かった」
側近「少女……」
少女「さっきは言えなかったけど……おかえり、側近さん」ニコッ
側近「……ああ」
戦士「あの〜……お2人さん? 感動の再会に水を差しちまって本っ当に悪いんだが」
側・少「!」バッ
260:
戦士「落ち着いたら、ちょっとあれをどうにかしてくれねえか?」クイッ
少女「……あ、そうそう。あの僧侶さんと、白獣さんっていう女の人が助けてくれたんだよ?」
側近「あ、ああ……ってどういう状況だあれは」ムクッ
戦士「僧侶の奴、目を覚ましてからずっとあの調子なんだよ……」
白獣「そ、僧侶さん……そろそろ頭を上げてください」オロオロ
僧侶「……いいえ、それはできません」
僧侶「貴女様は神と同じく我が教会の信仰対象です。しかもそのような御方に畏れ多くも傷を癒して頂き……何故平伏せずにおられましょうか」
白獣「そんな、私は主から一時的に力をお預かりしている身に過ぎませんよ……?」
僧侶「それでも、貴女方のお陰で私は……」
261:
少女「僧侶さん……もう傷は大丈夫?」タタッ
僧侶「! その声は少女さん! ということは側近さんも気が付かれたのですか!?」バッ
少女「うん、お陰様でね。さっきは本当にありがとう……手、痛かったよね?」ジワッ
僧侶「あああ少女さん、私は大丈夫ですし大した事は……!」アワアワ
白獣「ふふ、ようやく立ち上がってくれましたね。安心しました」ニコニコ
僧侶「あ……!」
少女「そ、そうだ、白獣さんもありがとう! 2人がいなかったら私……!!」ガバッ
白獣「私はただ、貴女に喚ばれて為すべき事をしたまでです。それに……」
少女「?」
262:
白獣「貴女が礼を言うべき相手は私ではありません。そもそも私達がこれ程早く来られたのも、あの者あってこそ……」スッ
僧侶「そう言えば……少し不思議に思ってたんです。本来はもう少し時間がかかる筈ですよね? あ、勿論少女さんの起こす奇跡を信じていなかった訳ではありませんよ!?」
少女「時間がかかる……? あの、者……?」
白獣「……お出でなさい」パアアッ……
少女「……え!?」
僧侶「まあっ」
戦士「うおっ!?」ビクッ
側近「どういう、事だ……? 何故……」
白獣「我らが親愛なる……小さき勇者」
妖精「……♪」パタパタ
少女「妖精さん……どうして?」パチパチ
267:
白獣「順を追って説明していきますね。まずはご存じでない方のために私の自己紹介から」スッ
側近「……俺の心臓を治した力や僧侶の反応を見る限り、貴女は……」
白獣「ええ。私は……主である神の御許に侍りし神獣の片割れです」
少女「神、獣……」
側近「少女、少し前にお前にせがまれて読み聞かせただろう? 都の教会に伝わる伝説を」
少女「うん」
側近「その中に登場する『しょうじょ』が……この方だ」
少女「……え?」
白獣「ふふ、私達の事がどう書かれているのか少し気になりますね。機会があれば見せてもらえますか?」
僧侶「よ、よ、喜んで!」
268:
少女「で、でも側近さん、信じられないよ……そんな人(?)が目の前にいるなんて」
側近「……お前は冒頭の伝説しか知らないだろうが、聖書にはこう記されている」
側近「『白き神獣は生き物の負うあらゆる傷や病を癒し、また壊れた物をも復元させる』……とな」
僧侶「じ、実は教会の中に神獣様方の像もあるんですが……」ドキドキ
白獣「まあ、そうなんですか?」ニコニコ
少女「それって……」
側近「簡単に言えば、死んでさえいなければどんな傷や病気でも治せるという事だ」
少女「じゃあ、本当に……?」
側近「ああ。だがそのようなとんでもない力を持つ存在だ……容易に喚ぶ事が出来ないという事はわかるな?」
少女「う、うん……」
269:
側近「そこで……神獣の力を求める者に対して、神によりある一定の召喚条件が設けられたとされている」
少女「条件……」
側近「その最たる物が……」
僧侶「少女さんのその髪飾りですっ!」ビシッ
少女「!?」
僧侶「あ、す、すみません! 教会の者としてつい……」
側近「……引き続き、任せても? その間俺はこいつをどうにかする」
戦士「」チーン
白獣「あらあら……」
少女「せ、戦士さん!?」
側近「大方、話についていけずに思考を停止してしまったという所か」
270:
僧侶「戦士さんは聖書を読んでませんからね……では改めて」ゴホン
僧侶「その髪飾りが、贈り主にとって最も大切に思っている人に贈られる物だという事はご存知ですか?」
少女「うん」
僧侶「では、贈られた方の義務は?」
少女「それも……大丈夫」
僧侶「良かった……実はそれ、意外と売れないんですよね。他の品は結構売れるのに……」ブツブツ
少女「そうなの?」
僧侶「ええ。それは誓いの証であると同時に魔具でもありますから」
少女「あ……」
僧侶「魔力によって積年の想いと共に成長していく花……人によっては不気味に感じられるでしょうね」
少女「……そういうものなのかな? 私は素敵だと思うけど」
僧侶「ありがとうございます。そう言っていただけるだけで教会の者として喜ばしく思います」ニコッ
271:
妖精「……」グイグイ
側近「小妖精。戦士の髪をそんなに引っ張っては……」
妖精「!」ベーッ
側近「……」ピキッ
白獣「ふふ、お話に聞いた通りとても仲が良いんですね」ニコニコ
側近「いや、全然」
妖精「〜〜〜!」キーキー
僧侶「……そして髪飾りに込められた魔力には、花の成長の他にもう1つの役割があります」
少女「それがあの……白獣さんを喚ぶ事?」
僧侶「はい。ですが側近さんが仰ったように、召喚のために更に幾つかの条件があるんですよ」
272:
少女「……結構複雑だね」
僧侶「本当に特別な存在ですからね……どれ程力ある魔術師でもこれを満たさない限り召喚できません」
少女「でも私、心当たりないなあ……何か凄い事をしたわけでもないのに」
僧侶「少女さんに心当たりがなくとも、条件を満たしていた事は事実ですよ」
少女「うーん……一応、それを教えてもらえる?」
僧侶「わかりました。まず、少しでも『成長』した髪飾りを持っている事」
僧侶「次に、髪飾りで纏められる位髪を伸ばしている事。聖書で神獣の伝説を知り、彼らの気持ちに少なからず共感している事」
僧侶「ああ、聖書以外の書物で神獣の存在を確認するというのもありますね。そして最後に……」
僧侶「ただ純粋に、大切な人を救いたいという気持ちを持っている事」
少女「……!」
273:
僧侶「どうですか? 心当たりはありましたか?」
少女(……ああ、そうだ……貰った髪飾りをつけたくて髪を伸ばして)
少女(聖書の伝説は、側近さんに読んでもらって……)
少女(死神さんの本を探している時に、偶然見つけた本にその姿を見つけて……!)
少女(全部、全部繋がっていた……! この日を迎えるために)
僧侶「偶然と必然は紙一重……まさに神の御導きだと私は思いますよ。そしてそれを更に強固にしたのが」チラッ
妖精「」ペチンペチン
側近「小妖精、いい加減にしろ……!」
白獣「ふふっ……」クスクス
僧侶「……あの、小妖精ではないでしょうか」
274:
少女「妖精さん……」
妖精「!」パタパタパタ……ピトッ
側近「ッ、おい……!」
白獣「まあまあ、今はこの者を正気に戻すのが先でしょう?」
側近「それはそうだが……」
少女「ねえ、妖精さんは知ってたの? こうなる事を」ナデナデ
妖精「……?」スリスリ
側近「とぼけおって……」ミシミシ
戦士「」ブクブク
白獣「側近さん、そんな事をしてはその者の魂が離れてしまいますよ」
黒獣「白娘えええええええ!!!!」バタンッ
『!?』
275:
白獣「貴方! お勤めお疲れ様です」パアアッ
黒獣「お前……またその姿になっているのか! 何故主から賜った姿にならないんだ!?」ガバッ
白獣「だって、この方が相手もリラックスしてくれますし」
黒獣「私の気も知らないで……ッ! お前のその姿を見る男は私だけで良いのに!!」スリスリ
白獣「ん……もう、貴方ったら、人前でそんな……あ」
少女「わ……!」ポカン
妖精「……」ケッ
側近「」……ポロッ
戦士「」ドサッ ゴツン
僧侶「く、く、黒神獣様……!? まさかお二方が揃われるなんて……」
僧侶(しかも白神獣様との生いちゃつきまで……もう、死んでも良い)ハァハァ……ジュルリ
276:
少女「あ、の……僧侶さん?」
僧侶「……はっ! な、何でしょう少女さん」ゴシゴシ
少女「白獣さんとじゃれ合ってる(?)あの真っ黒な獣って……」
僧侶「……ええ。白神獣様の半身たる黒神獣様であらせられます。伝説の中の『まもの』ですよ」
少女(『まもの』……)ジッ
黒獣「……」ギロリ
少女「!?」ビクッ
黒獣「……厚顔無恥にも程がある。白娘にあのような仕打ちをしておいて」ボソッ
白獣「黒様、お止めになって。この者は何も知らないのですから」
黒獣「だが……!」
白獣「黒様」ジッ
黒獣「ッ、ぐ……」ペタン
白獣「ふふ、わかってくださって嬉しいですよ」ナデナデ
僧侶(お二方の間の呼び名……萌えますねえええええ!!!!)グッ
277:
少女「あの、白獣さん……今大丈夫?」オズオズ
白獣「はい、何でしょう?」
少女「妖精さんとは、どういう繋がりが……? 凄く気になるんだけど」
白獣「! そうでしたね。すっかり言いそびれてしまっていました」ポン
黒獣「……」プイッ
妖精「」パタパタ
白獣「とは言っても、特別な事は何もないんですけどね。住む世界だって同じですし……ね?」ツンツン
妖精「」コクン
少女「え、そうなの?」
僧侶「あ、聞いた事があります……神獣様方が住まう場所は、他の召喚獣達と同じく異界だと」
白獣「あそこだとこの姿は目立つので、あの方と同じく神獣の姿でいる事が多いですね」
278:
少女「で、でも妖精さん、何時の間に……長い間ずっとここにいたでしょ?」
妖精「」チッチッチ
白獣「ふふ……少女さん、この者はきちんと帰っていましたよ? 自身の故郷へ」
少女「う、嘘……一体何時?」
白獣「この者が眠っている時です」
少女「眠っている時って……」
白獣「召喚獣は本来、長時間この世界へいる事はできません。空気の質が根本から違いますからね」
白獣「私達のような存在でもない限り、無理にこちらへ留まろうとすれば強制的に還されます」
少女「そんな……!」
白獣「その者はそうなる事を防ぐために、就寝時に一時的に精神のみを異界へ還していたのですよ」
少女「……そうだったの? 妖精さん」
279:
白獣「まあ、私達が関わりを持ったのはそれよりも前の事ですけど」クスッ
少女「?」
白獣「少女さん、貴女にとってこの者は、生まれて初めて召喚した特別な存在ですよね?」
少女「うん。その時はすぐに還されちゃったけどね」
妖精「」プクーッ
白獣「あらあら、まだご立腹なんですねえ……」ヨシヨシ
少女「それから1年近く会えなかったからね……今、こうして一緒にいられて嬉しいよ」
妖精「!」ニコーッ
白獣「ふふ、貴方も同じ気持ちなんですねえ……あの時手助けした甲斐がありました」
少女「え?」
白獣「少女さんはこの者と再会した時、丁度あの方からこの髪飾りを贈られたでしょう?」
少女「あ……」
280:
白獣「実はその時、異界からそれを通してそちらへ送り出したんですよ。初めての試みでしたが、成功して良かった」
少女「!」
妖精「」ウンウン
白獣「……思えば、異界の湖のほとりでしょんぼりしている貴方を見かけたのが始まりでしたね」
白獣「会う度にお話を聞くうちに、力になってあげたくなって……私の『半身』からは良い顔はされませんでしたけど」
白獣「異界の水鏡で幼い少女さん達を見つけて……時折共にそれを眺め」
白獣「……あの日、物は試しと思い切ってお花と一緒に送り出しました」ニッコリ
僧侶「白神獣様……そのようなお力もお持ちで……!?」
白獣「自分でもできるとは思わなかったんですよ? ……その後も、会うたびに少女さん達のお話をたくさん聞きました」
白獣「時にはお花も持たせてやりました……するとある時から、1つの頼み事をされるようになりました」
白獣「それが、私達がここにいる事に繋がります」スッ
281:
少女「……」ジワッ
白獣「少女さん……自分の大切な友が私達の力を必要とする時、もし条件を満たしていたら」
白獣「できるだけ最優先で手を差し伸べてあげてほしい……と」
少女「……」ポロ……ポロ……
白獣「私は構わなかったんですけど、黒様が……『半身』が中々許してくれなくて」
白獣「そしたら眠る時間を増やしてまで頼みに来るんですもの。異界にいても何時会えるかわからないから、と」
白獣「そこまでされたら……折れないわけにはいきませんよね?」クスッ
少女「……妖精、さん」キュッ
妖精「」ジーッ
少女「私なんかのためにそこまで……全然、知らなかったよ」
282:
白獣「この者は見かけによらず相当度胸がありますよ。僧侶さん、あの方の力はご存知ですよね?」
僧侶「は、はい……『黒き神獣はあらゆる物を破壊し、存在すらも永久に抹消させる』ですよね」ゴクリ
白獣「そう……下手をすれば、私が見ていない所で消されていたかもしれないのに」
妖精「」ブイッ
少女「もうっ……無茶、し過ぎだよ……!」ゴシゴシ
白獣「それ程、貴女の力になりたかったのですよ……初めて自分を必要としてくれた存在だから」
288:
少女「……そう言えば」
白獣「はい?」
少女「今までの事って、妖精さんが白獣さん達に話したの?」
白獣「そうですよ」
少女「妖精さんって……話せるの?」ジッ
妖精「……」チラッ
白獣「! ああ、その事ですね。いえ、異界の妖精は本来こうして普通に話す事はできません」
少女「じゃあ、どうやって?」
白獣「互いに自分の思念を送り合って会話をするんです」
少女「へえ……」
289:
白獣「まあ、例外として……妖精達の長などといったごく僅かな者は音のある会話をする事ができますが」
黒獣「白娘。幾らなんでもベラベラと話し過ぎではないか?」
白獣「あらいけない。少女さん、この事は他言無用でお願いしますね……僧侶さんも」シー
僧侶「はい! 仰せのままに!!」
少女「わ、わかった」コクン
黒獣「ふん……」
戦士「うう……ん」パチッ
側近「気が付いたか……これで借りは返したからな」
戦士「あれ? 俺……」ムクッ
白獣「! あの者も気が付きましたね」
黒獣「……白娘が来た時に近くにいた男か」ジッ
戦士「んああ!?」ビクッ
290:
黒獣「……」ノソノソ……ズイッ
戦士「な、な、何だこいつ……白獣、あんたの連れか?」ブルブル
白獣「そうですよ。だからどうか怖がらないで……敵とみなされなければ何もしませんから」
黒獣「白娘に少しでも色目を使ってみろ……その時点で存在を消し去るからな」ボソッ
戦士「ひいいっ」
白獣「もう、黒様! いい加減になさって!!」
僧侶「黒神獣様……何だか楽しそうでいらっしゃいますね」
少女「そ、そうなのかな?」
側近「少女……」ザッザッ
少女「! 側近さん」
妖精「」チッ
291:
側近「……」カァッ
少女「?」
側近「! その、今更だが……お前には見られてしまったな」ササッ
少女「何を?」
側近「俺の……記憶の一部を」
少女「……あ」
妖精「」ギリギリギリ……ッ
側近「生の実感が戻ってきてから……改めてそれを考えると……」ゴニョゴニョ
少女「側近さん、私は気にしてないから……」
側近「……だが、怖かっただろう? それに……みっともなかっただろう? 昔の俺は」
少女「そ、そんな事ないよ! 寧ろ昔の側近さんが見られて良かったかなって……」
側近「……!」
292:
少女「だから側近さん、もう顔を隠さないで……」オロオロ
側近「いや……しばらくこのままでいさせてくれ。頼むから」
少女「ええ? どうして?」
側近(あの時……『夢で』見た少女が俺の初恋の人だったから、だが……)
側近(そんな事言える訳がないだろう……ッ!)バクバク
僧侶「まあ、これは……うふふふふっ……」ニヤニヤニヨニヨ
妖精「〜〜〜!!」ジタバタ
僧侶「こらこら妖精さん、邪魔をしてはいけませんよ」
側・少「!」ハッ
僧侶「あ、私達の事はお気になさらず……さあ続きを! どうぞ!!」ズイッ
293:
側近「……み、見世物ではないぞ!」プイッ
少女「そ、そうだよ!」
僧侶「あら……残念ですね」
側近「……そう言えば、神獣が来るまで俺の傷を癒し続けてくれたのだったな。それに関しては礼を言わせてもらう」
僧侶「お礼を言われる程の事ではありませんよ。私自身、力不足でしたし……」
側近「いや、そんな事はない……俺はあの時、自分が死ぬと信じて疑わなかった。だが、貴女はそれを覆した」
僧侶「……本当に、息を吹き返されて何よりです」ニコッ
妖精「」ムスッ
少女「側近さん……もう、あんな風になっちゃ嫌だよ?」ギュウッ
側近「少女……」
少女「……今度あんな事があったら私も死ぬから」ボソッ
側近「ッ……!」
僧侶(嗚呼、本当に助かって良かったですっ……ふふっ、うふふふふ……!)ハァハァ
妖精「」ゾワワワワ……
294:
少女「あ、そう言えば側近さん、1つ気になった事があるんだけど」
側近「?」
少女「側近さんの記憶を見た時に聞いた……」
魔王「はあ、はあ……弟よ、生きているか……!?」シュンッ スタッ
姫「……良かった。大丈夫みたいですね」スタッ
魔法使い「ふんっ」トンッ
勇者「……」スタッ
白獣「あらあら皆さんお揃いで」
戦士「お前ら……心配したぜ……! 姫様は特にな!!」
妖精「!」
僧侶「皆さん……無事だったんですね!」ホッ
295:
黒獣「ふん……遅いぞ」
魔王「本当はもう少し早く転移する筈だったんだが……先に姫と行こうとしたら魔法使いに阻まれてな」ボロッ
魔法使い「当たり前じゃない。短い間でもお姫様をあんたなんかと2人っきりになんてさせると思う?」ジロッ
勇者「……用心していた筈のあれに乗っ取られるとは……我ながら情けない」
側近「! 兄上、その腕は……!?」
姫「……」キュッ
少女「お姫様……?」
魔王「はは、気にするな……それよりも弟よ、無事であったか……」ザッザッ
側近「あ……」
魔王「ではとりあえず……歯ぁ食いしばれええええええええい!!!!」バキィ……ッ!
『!?』
296:
少女「ま、魔王様!?」
側近「ぐ、ッ……」ズザザザザ……
魔王「兄上を刺し、兎を傷つけ、勝手に死に急ぎ……そして何より一時でも少女を悲しませたその罪は重いッ!!!!」ビシッ
側近「……それは……」ムクッ
魔王「あ?」
側近「……アンタも同じだろうがああああああ!!!!」ダダダッ……ドゴォッ……!
魔王「ふぐぅッッ!?」ゴロゴロゴロ……
側近「大体、先に馬鹿みたいにかっこつけて自分だけ死のうとしたのはそっちだろう!? 少女の記憶まで消そうとした癖に!!!!」
魔王「だ、だからといってお前まで自殺行為をして良いという理由にはならぬぞ!」ガバッ
側近「うるさい! このネガティブ鈍感阿呆ロン毛が!!」
魔王「何だと!? ではお前は命知らずで鬼畜変態の大馬鹿者だ!!」
側近「鬼畜変態!? 何故そうも言われねばならん!?」
297:
魔王「しらばっくれるか愚弟!! 自制できずに少女の血を飲んでおっただろうが!!!!」
側近「そ、それは……というか何故それを!?」
少女「ちょ、ちょっと2人とも……!」オロオロ
姫「魔王様、そんなに動かれては……!」
妖精「」ワーワー
少・姫「妖精さんも煽らないで!」
魔法使い「……何あれ。仲間割れ?」
戦士「お、俺にはただの兄弟喧嘩にしか見えねえけどな……」
僧侶「あわわわわ……」
勇者「……丁度良い。今のうちに手短に話しておこう……あいつらの事について」
魔・戦・僧「!」
勇者「ついでに、俺の目的もな……」
僧侶「……ではその後は私が、ここで起きた事をお話しましょう」
勇者「ああ。頼む」
298:
白獣「妖精さん……貴方、そんなにあの者が」
黒獣「おい、私達はまだ還れないのか?」イライラ
白獣「もう……そんなに慌てて還らなくても良いではありませんか」
黒獣「……私はお前と違ってこの世に思い入れなどほとんどないからな」スリスリ
白獣「黒様……」ナデナデ
姫「ま……魔王様!」タタタッ……ヒシッ
少女「お姫様!?」
魔王「なっ……姫! 危ないではないか!!」
側近「! っ、と……」
姫「貴方は……腕を切られてしまったのですよ!? 私のせいで……」ポタッ……
魔王「姫、だから私は気にしていないと……」
姫「そうはいきませんわ! まずは一刻も早く腕をどうにかしなければ……!!」
299:
魔王「……はあ。姫よ」スッ
姫「あ、貴方は何ともないように仰いますけど、腕がなくなるというのは一大事で……!」
魔王「……」ギュウッ
姫「……ぇ」パチクリ
側・少「!」
妖精「!?」
白獣「あら」
黒獣「……」
僧侶(キタアアアアッッッ!!!! 『魔王と姫』……この王道な組み合わせがこの目で拝めるとはあああああああ!!!!)グッ
魔法使い「お、お……お姫様に何やってんのよあんたぁ!!!!」バチバチ
戦士「止めろ魔法使い! その魔法は流石に全員ヤバイ事になるから!!」ガシッ
勇者「……話を続けて良いか?」
300:
姫「あ、ぅ……ふあああ……ッ」ドキドキドキ……
魔王「……聞こえるか? 私の心臓の音が」ドクッ……ドクッ……
姫「はわ、はわわわわ……!」
魔王「これさえ無事であれば、私達は死なぬ」ナデナデ
姫「あッ……」ビクンッ
魔王「故に、心臓を損傷した弟にああして呼びかけていただろう? ……って姫?」
姫「はうう……」クタッ……
魔王「ひ、姫? どうしたのだ!?」ユサユサ
少女「お姫様!」
側近「……全く。これだから鈍感は」ハァ……
妖精「〜〜〜!」オロオロ
301:
僧侶(ほう、頭皮の調教とは……中々マニアックですねえ……!)ハァハァ
勇者「……僧侶。次はお前の番だぞ」
戦士「その前にこいつをどうにかしてくれ!!」
魔法使い「今できる……最大の魔法をォ……!」フシュー……フシュー……
白獣「まあ、とても楽しそうですこと」クスクス
黒獣「何処がだ白娘……嗚呼、そうだ魔王」
魔王「姫、しっかりするのだ! ……って何だ黒獣よ。というかやはり貴方は神獣であったのだな」
黒獣「今更か。それよりもお前……自分の腕はどうした?」
魔王「……え?」
305:
黒獣「お前……まさかそのままで良いと本気で思っているのか?」
魔王「な、何を言っておるのだ? 私は貴方がこっそり持って行ったとばかり……」
黒獣「何故私がお前のためにそんな事をせねばならん」フンッ
魔王「だ、だが私が見た時には何処にも……!」
黒獣「私は床に投げ捨てた後は一切触れていない。断じてな」
魔王「ッ……! で、では一体何処に」チラッ
魔法使い「あたしは知らないわよ」フンッ
勇者「……同じく」
306:
魔王「姫は……首飾りと兎以外は持っていないようだな」
側近「兄上、一体何があったのだ」
少女「魔王様……」
魔王「……そうだな。お前達にも簡単に話しておこう。勇者達もそうしておるようだしな……」
勇者「……」
――――
――
魔王「――その後、寸での所で現れた黒獣に助けられたのだ」
黒獣「随分と無様だったな。あの時のお前は」
白獣「黒様!」
307:
魔王「……返す言葉もない。だが」ジッ
少女「!」
魔王「彼らを召喚したのは……少女、お前だったんだな」ナデナデ
少女「あ……」
魔王「無茶をして……だが、お陰で助かってしまったのも事実だ」フッ
少女「で、でも、神獣さん達が早く来てくれたのは妖精さんのお陰で……だから……」
魔王「そうか? だがな、お前が喚べなければ小妖精の努力も水の泡だったのだぞ?」ツンツン
妖精「」ドヤッ
魔王「本当にありがとう、お前達」
少女「魔王、様……」
側近「……」
308:
魔王「……弟よ」
側近「何だ、兄上」
魔王「もう命を粗末にするんじゃないぞ」
側近「……貴方に言われたくはない」
魔王「! ……それもそうだな」フッ
白獣「まあ、余程剣の切れ味が良かったのですね……切り口がとっても綺麗」ジッ
魔王「! は、白獣、何時の間に」
少女「白獣さん! 魔王様の腕、元通りに治せる?」
白獣「うーん……このままでは難しいですね」
309:
姫「な、何故、ですか……白神獣様……」ググッ……
魔王「姫……気が付いたか」ホッ
姫「復元や治癒に、これ以上ない程長けていらっしゃる貴女様ならば……造作もない、筈では……」ジッ
白獣「……突然ですが姫さん。『物』と『生き物』の違いはわかりますか?」
姫「? それは……自分の意志で動くかどうか……後は、生死の概念の有無、などでしょうか」
白獣「それらも間違いではありませんが……最も大きな違いは『唯一無二であるか否か』という面ですね」
姫「唯一、無二……」
白獣「勿論例外もありますがね……例えば姫さん。貴女が大切な人を喪ってしまったとして」
姫「!」
白獣「……私が、その人の外見や中身をそっくりそのまま持っている存在を生み出せるとします」
白獣「生き返らせるのではなく、あくまでそれに近い生き物であるというだけですが……貴女はそれを手放しに喜べますか?」
姫「そ、それは……多分無理ですね」
310:
白獣「あら、何故ですか?」
姫「その人の代わりなどいません……どんなに似ていても、私にとってその存在は全くの別人ですわ」
白獣「……そうですね。私が言いたかった事はそれですよ。そしてそれは部分的な物でも同様」
白獣「私の力は『物』の場合は復元ですが、『生き物』の場合はとにかく『生かす』事に重きを置いているのです」
少女「あ……側近さんの心臓を治した時、心は戻せないって言ってたのも?」
白獣「ええ、同じ原理です。あの時少女さんが失敗していたら、あの者は……息をするだけの屍と化していたでしょうね」
少女「……ッ!」ゾッ
側近「……それはそれで辛いな」
白獣「このように、『生き物』の傷を癒す事はできても……欠けた部分の復元はできないのです。繋ぐお手伝いならば可能ですが」
311:
魔王「では私の腕は何処にいったというのだ?」
黒獣「知らん」
魔王「うう……」
勇者「魔王」
魔王「何だ勇者」
勇者「ふと思ったんだが……いや、あり得ないならそれに越した事はない」
側近「……何が言いたい?」
勇者「俺やあの子の体を乗っ取っていた奴は……ひょっとすると『一部分』のみそうする事もできるのではないか、とな」
魔・側「……ッ!!!!」バッ
少女「え、どういう事……?」
312:
白獣「多分、貴女を乗っ取っていた存在が、今はあの者の切り落とされた腕を乗っ取って動かしているのでは、という事でしょう」
黒獣「迂闊だったな」
姫「そ、そんな……!」
魔王「くっ……何故今まで思い至らなかったのだ!?」ギリッ
側近「そうだな、俺も悪かった……」
魔王「考えたくはないが、奴の執念ならば……ッ!」
側近「念のために探して来よう。例の場所もな」ザッザッ
魔王「弟、私も行くぞ!」
側近「兄上は魔力の回復に努めてくれ。その方が……万が一の時にも……」
313:
魔王「! ……わかった。だが、それはあくまで最後の手段だからな」
側近「ああ」ザッザッザッ……
少女「側近さん!」タタタッ
妖精「」パタパタパタ……
側近「少女……」
少女「さっき言った事……!」
側近「心配するな、もう死ぬつもりはない……信用してもらえるかはわからんが」ポン
少女「本当……?」ジッ
側近「ああ。だが……」
少女「?」
側近「……後は、兄上に訊いてくれ」クルッ
314:
妖精「」ジロッ
側近「……ふん。やはり貴様も感づいていたか小妖精」
少女「側近さん……」ス……チュッ
魔・側「!」
妖精「!?」
少女「えと……何にもできない代わりに、おまじない」カアッ
側近「……」ポカン
少女「無事に……終わらせられるっていう、ね」
側近「……こ、これは心強いな」バクバク
僧侶「〜〜〜〜ッ!!!!」ビクンビクン
戦士「しっかりしろ僧侶おおおおおおお!!!!」ユッサユッサ
魔法使い「本当に……何なのよこの茶番は」
勇者「……」
315:
少女「……気をつけて」ジッ
側近「ああ……行って来る」ザッザッザッ
魔王(弟よ……兄上もすぐに行くからな)
姫(側近さん……どうかご無事で)
少女「……」ギュッ
側近「」ギイイッ……バタン
勇者「……戦士、僧侶。念のため後を追ってほしい」
戦士「え!?」
僧侶「ハッ! ……で、でも」
勇者「見る限り、俺達の中で最も消耗が少ないのはお前達だ。あいつのサポートを頼む」
白獣(確かに僧侶さんの力も回復させましたが……よく見抜きましたね)
魔法使い「待って勇者。あたしは納得してないわよ」
勇者「……魔法使い」
316:
魔法使い「なんであんたはあいつの言う事を鵜呑みにできるわけ?」
勇者「俺が信頼に足ると確信したからだ。危険なあれの事も教えてもらっただろう?」
魔法使い「確かにあれはヤバかったけど……それもあいつらが操っているとしたら?」ギロッ
勇者「腕を犠牲にしてまでは流石にしないだろう」
魔法使い「ふん、どうかしらね。魔物の考える事はおぞましいから」
勇者「……俺が信じられないか」ジッ
魔法使い「! べ、別にそう言ってるわけじゃ」
勇者「それとも……俺が、魔王に操られているとでも?」
魔法使い「ッ……」
魔王(今の私にはそんな事できないぞ……)
勇者「……あの時の、俺を信じてついて行くと言った言葉はうs」
魔法使い「んあああああ! わかったから、信じるからそれ以上はッ……!!」カアッ
勇者「そうか。なら良い」
僧侶(魔法使いさん、隙がなさそうに見えて案外ちょろい所ありますね〜)
317:
戦士「じゃあ、本当に良いんだな? その……あいつらを信用しても」チラッ
勇者「ああ。姫の態度と……この状況で側近をここから離れさせたのが証拠だ」
僧侶「そして何より神獣様がいらっしゃいますしね! 悪しき者が召喚できる存在ではありませんもの!!」グッ
魔法使い「あっそ……ブレずに信じられる物があって本当に羨ましいわ」
僧侶「ふふふ、今からでも遅くありませんよ! 魔法使いさんも是非……!」ズイッ
魔法使い「あんな事をされてなかったら少しは考えたかもね」
勇者「では、頼んだ。俺達もすぐに行く……何かあったら互いに連絡だ」
戦士「ああ!」ダッ
僧侶「なるべくお早くお願いしますね!」タタタッ
僧侶(本当はもっと神獣様方や魔王さん、姫様の絡みを見ていたいですが……仕方ありませんね)
318:
少女「あの……白獣さん。黒獣さん」
白獣「何でしょう少女さん」
少女「そ、その、2人の力で……今のうちに全部解決する事はできないの?」
白獣「……残念ですが、それはできません」
少女「! どうして……?」
白獣「貴女の願いは『自分の大好きな人達を助けて欲しい』……でしたね」
少女「」コクン
白獣「私達は喚ばれた状況から、それを『彼らの窮地を救って欲しい』と解釈しました」
少女「だったら……!」
白獣「ですが、現時点では目に見える脅威は見当たりません」
姫「つまり、力を持っていても……願いの内容により、力を貸す時はどうしても後手に回ってしまうという事ですの……?」
319:
白獣「そうなりますね。『あれを倒す』という願いであれば話は簡単だったのですが」
少女「!」
魔王「仕方あるまい、あの時は少女も弟を救うのに必死であっただろうからな」ナデナデ
白獣「ええ……私もこの選択は間違いではないと思いますよ。それに……」スッ……キラッ
魔王「む、これは……」ポウッ……
魔法使い(嘘、魔力が回復した……!)バッ
勇者「傷が消えたな。体力も……」ワキワキ
白獣「……こうして次なる窮地へ備える事はできます」ニッコリ
少女「白獣さん……!」パアッ
320:
黒獣「おい白娘、幾らなんでもこれは……!」
白獣「ふふ、主の許可は得ていますよ? 直接手を出さなければ良いと」
黒獣「なッ……!?」
白獣「とりあえず、今の私達にできる事はここまでです。後は貴方達次第」
魔王「……ありがたい」
白獣「ちょっとしたサービスですよ♪ ……腕、無事だと良いですね」
魔王「ああ……なるべく早く弟が見つけてくれれば良いのだが」
姫「……」ギュッ
321:
――――
――
ズズッ……ズルッ……
(クク……やはり封印主の一部に入り込んだのは正解だったな。巧妙に隠していたようだが、それももう終わりだ)
(魔力の繋がりでようやく見つけた……全く、随分と手こずらせてくれたな……)
(動かし方も慣れてきたし……先程の忌々しいダメージも大分回復した)
(どれ……少し急ぐか。この状態では転移もままならんしな)ズザッ……ザザザザザ……
327:
――――
――
魔王「……」ジャラッ
少女「! 魔王様、それ……」
魔王「ん? ……ああ、少女には言っていなかったな。これは私の持つ唯一の武器だ」
少女「そうなの?」
魔王「今まで黙っていてすまないな。封印が解けてようやく再び使えるようになったのだ」
少女「……」
魔王「うむ。そろそろ行くとするか……」ザッ
勇者「待て、魔王」
魔王「?」
勇者「その前にもう1つ、お前に訊いておきたい事がある」
魔王「何だ? 急いでいるからできれば後に……」
328:
勇者「『末子』とは何だ」
魔王「!」
勇者「お前達が腕輪越しに側近に呼びかけていたあの時……確かにその言葉を言ったな」
魔王「……」
勇者「ただの弟に対する言葉にしては不自然だ。俺の持つ魔王関係の情報にもないが……」
魔王「……そうであろうな。何せ魔王の家系の中でのみ伝わってきたものだからな」
勇者「!」
魔王「ふむ……話しておいた方が良いかもしれん。どの道『魔王』は私の代で終わるのだ」
姫「魔王様、それって……」
魔王「万が一という事もあるしな……その代わり、これを聞いたら今度こそ私達に協力してくれるか?」
勇者「……約束する」
329:
魔法使い「ちょっと勇者、本気で……!?」
勇者「魔法使い、さっきも言っただろう」
魔法使い「そうだけど……」
勇者「それとも、ここで待っていたほうが良いか? こちらとしてはお前がいた方が助かるが……」
魔法使い「冗談! お姫様はともかくこんな異端者と一緒にいるなんてまっぴらごめんよ」
少女「っ……」ズキッ
魔王「魔法使いよ。あまり少女を傷つけるのは止めてもらおうか」
魔法使い「うるさい。あたしに指図するな」
姫「魔法使いさん、貴女……!」
勇者「止めろ魔法使い」
魔法使い「でも……!」
勇者「生きてここから出たければな」
魔法使い「ッ! ……ちっ」ジロッ
勇者「……すまない。続きを話してもらえるか」
魔王「う、うむ……」
330:
――――
――
側近「……」ザッザッザッ……
側近(……魔力にはこれと言った匂いがない)
側近(故に、己で知覚する以外に探す方法がない……それがこれ程厄介だとは思わなんだ)ギリッ
側近「……」スッ
少女『おまじない』
側近(……少女、そして兄上のためにも)ギュッ
側近(間に、合え……ッ!)ザザザザッ……
331:
――――
――
魔王「『末子』は……その名の示す通り魔王の末の子供を指す。こいつは血筋の中で極めて重要な位置にいるのだ」
勇者「それは……強さに関する事か?」
魔王「簡単に言えばそうだな。魔王の末の子供として生を受けた者は、兄弟の中で最も強い力を持っていると言われている」
魔法使い(あの時感じたおぞましいものの正体は……多分それだわね)ブルッ
勇者「その根拠は?」
魔王「家系図の記述によれば、歴代魔王のゆうに八割近くが『末子』とあった。先代である我が母もそうだ」
勇者「純粋に強い者が魔王を継承する……か」
魔王「うむ。そして特に女の魔王から生まれた『末子』は、母体に残留する他の兄や姉の力を吸収して更にその傾向が強くなるという」
勇者「……という事は」
魔王「ああ。我が弟の潜在能力はまず間違いなく奴をも凌ぐ事になるだろう」
332:
魔法使い「……だったらどうしてあたし達をここに誘き寄せたのよ。そんな力があるんならさっさと使えば良いじゃない」ギロリ
魔王「それは……弟が『末子』の力を思うように使えぬからだ」
魔法使い「何それ。大層な力を持っててそれはないでしょ……とんだお笑い草ね」
魔王「仕方のない事だ。魔族の本来の性質に依る物だからな……姫」
姫「は、はい!」
魔王「貴女の父君から、我が母……先代魔王による侵略の模様は聞いた事があるか?」
姫「はい……何でも、言葉にするのも憚られる程凄惨極まりないものだったとか」ブルッ
少女「お姫様……」
魔王「ああ……もしも貴女の都が『聖都』でなければ、周辺諸国と同じ運命を辿っておっただろうな」
少女「え?」
333:
魔王「守られていたのだ。ここにいる神獣達によって」
白獣「……その通りです」
黒獣「……」
魔王「彼らの加護によって、魔王やその手の者は一切都を害する事ができなかった」
白獣「遥か昔、教会設立の折に我らが施しておいた結界が機能したのです。ただ、純粋に守るための力が……」
魔王「生前母上はよく言っておった……『目と鼻の先にあるあれに手出しできないのが何よりも悔しい』とな」
魔法使い「……ずるいわね。そこだけ守られているなんて」
魔王「他の国や都の中で、最も魔王城から近い場所に位置しておるのだ。そのような措置も頷ける」
姫「そのお陰で多くの難民を保護したり、食糧などの物資を他国へ送る事ができたとも聞きました」
白獣「主はそれも見越しておられたんでしょうね……人類にとってわかりやすい希望として」
勇者「……それが『末子』と何の関係がある」
334:
魔王「まあ聴け。我らから見ても、母上の都への執念は本当に深かったように思える……それ程の破壊衝動と共に、その力は母上の中に在り続けた」
魔王「己の欲望のままに殺し、奪い、蹂躙した……魔王として誰よりも魔族らしい方だったのだ」
魔王(それでも一応、次期魔王の母としての務めは果たしていたがな。今更信じてはもらえぬだろうが)
勇者「つまり……先代の魔王は、力に振り回されていたと?」
魔王「いや。力に身を委ねていたからこそ、逆にそれを使いこなせていたという事だ」
魔王「しかも、上にいる兄や姉が多い程『末子』の力は強まる……母上は13人兄弟の中の『末子』だった」
魔王「1人の魔王にこれ程多くの子供がいた例は他になかった。故に歴代でもトップクラスの実力者であっただろうな」
魔法使い(魔王の言っている事が本当なら……そんな化け物に先代勇者は……)ゴクリ
勇者「……」
魔王「そして弟には……そんな力の制御ができない」
335:
――――
――
僧侶「側近さん……脚、お早いですね」
戦士「おい僧侶、だからって何で俺にお前を背負わせるんだ……!」ゼエゼエ
僧侶「え? そんなの戦士さんの方が体力があるからに決まっているじゃないですか」
戦士「あのな……」
僧侶「ほらほら、後でちゃんと回復して差し上げますから脚を動かして下さい。でないと……『蝕んじゃいますよ?』」ニコッ
戦士「うぐっ……それだけは勘弁だ」ダダダダッ
僧侶「……ところで、戦士さんにも聞こえていますよね? これ」スッ
戦士「ん? ……ああ。情報共有のためとはいえちょっとあれだけどな」
僧侶「仕方ありませんよ。恐らくこのためにも敢えて私達をこちらへ向かわせたのだと思います……1つだけならばれるリスクも低いですしね」
戦士「……全く便利な腕輪だぜ。使い方次第で盗聴器にもなっちまうとは」
僧侶「そうですね。あ、側近さんに追いつきそうになったらすぐに切りましょうね」
戦士「当たり前だ。側近に悪いしな……自分の秘密を勝手に知られるのは誰だって良い気はしねえよ」
336:
――――
――
勇者「……力を使うために、魔族として残虐になる事ができないからか」
魔王「」コクリ
魔王「だが、だからと言って力が全く使えぬわけではない。現に私は弟の中に眠る『末子』の力の片鱗を何度か見た事がある」
魔王「……大半は、封印の際に我が魔力と共に封じた筈だがな。皮肉にもそれで封印の強度は高まった」
勇者「そんな事も出来るのか」
魔王「ああ。弟の強い希望でな……だが時間と共に少しずつ綻び、本来の主の許へ戻ったのだろう」
勇者「そして今回、あれの魂の解放と共に力はほぼ完全に側近へと戻った……」
魔王「そうなるな。後はそれを使う引き金を引くだけだ……魔族らしい、負の心を持つという、な」
少女(だから側近さんはあんな目に……! 魔族らしくなるのって、そんなに大事な事なの……!?)ジワッ
337:
勇者「成程。ではもしそうなったら側近は元には戻らないのか?」
魔王「それは……わからない。だが場合によっては奴以上の脅威になるという事だけは言える」
妖精「ッ!」ギリッ
少女(妖精さん……凄く怖い顔してる……)
魔王「その表情……小妖精、もしやお前は気付いておったのか? だからあんなに弟に……」
妖精「……」ツーン
少女「魔王様……側近さん、大丈夫だよね? もうあんな事にはならないよね!?」
魔王「まあ、命はもう捨てはしないだろうが……その代わり」
少女「その代わり……?」
魔王「……奴を殺すために心を捨てるかもしれん」
少女「……!!!!」
338:
魔王「勿論、そうならぬよう私も最善は尽くすがな。正気に戻るまで鎖でふん縛るなどしてな」
少女「……どうして」
魔王「!」
少女「そんな大切な事、今まで黙ってたの……? 私達、家族なのに」ギュウッ
魔王「……最初、あのように言ったのは、お前に怖がられたくなかったからだ」
魔王「あの時のお前の怯え様を目の当たりにしては……とても真実など」
少女「……私の事、信じられなかった……?」
魔王「そんな事はない! 何時かは思い切って話そうとは互いに思っていたが……そのうち言うタイミングを逃してしまった」
魔王「ただでさえあのおぞましい過去をお前に打ち明けたのだ。これ以上に我らに対してお前が怯えの念を抱くのが……怖かったんだろう」
少女「……理由はそれだけ? 本当に?」
魔王「本当だとも」グッ
妖精「……」ジーッ
姫(魔王様。あなた方兄弟は……少女さんにすら明かせない苦悩を、その胸に一体どれ程抱えておられるのですか……?)
魔王「……なあ少女。こんな臆病な我らでも変わらずに……家族でいてくれるか?」
339:
――――
――
戦士「! ……おーい側近!」ダダッ
側近「……戦士! 僧侶も……」
僧侶「やっと追い付きました……! お手伝いいたしますよ側近さん」
戦士「おい、いい加減降りろ」グイッ
僧侶「わかってますよ〜」ピョンッ……タタッ
側近「お前達、俺の事は良いから今すぐ戻るんだ! もしもの事があれば本当に危険なんだぞ!?」
戦士「そうはいかねえよ。勇者からの指示だしな」
僧侶「一応結界とかも張れますし、足手まといにはなりませんよ! それに、そのもしもの事があった時に連絡が取れた方が良いでしょう?」
側近「……そのような余裕があれば良いがな」ボソッ
僧侶「え? 何か言いました?」
側近「いや……では、これだけは約束してくれ。ここから先はこれ以上ない位用心していてほしい」
僧侶「それは勿論です」
340:
側近「後、万が一の話だが……もしも俺が豹変してお前達に剣を向けるような事があれば」
僧侶「?」
側近「その時は迷わず逃げろ。間違っても戦おうなどとは考えるな……!」
戦士「……了解。でもよ、また俺がぶん殴って目を覚まさせても良いんだろ?」
側近「……できるものならな」
僧侶(ば、ばれてませんよね? 腕輪の事……)ドキドキ
僧侶「あ、そ、そう言えば側近さん。私達は今何処へ向かっているんですか?」
側近「……宝物庫だ」
戦士「宝物庫ぉ!? そりゃ楽しみだ、心が躍るぜ!」
側近「響きだけを聞けばな。だがそこに奴の……最後の封印がある。くれぐれも気を抜くな」
戦・僧「……」コクッ
344:
――――
――
少女「……そんなの、決まってる」
魔王「少女……」
少女「でも、今は教えてあげないから」
魔王「!」
少女「答えは、側近さんも揃った時にね」ニコッ
魔王「……ああ」
少女「だから、ちゃんと帰って来てね? 約束だよ?」ジッ
魔王「うむ。約束だ」
魔法使い「……嗚呼、不愉快。気持ち悪い」ボソッ
少女「!」ビクッ
魔法使い「勇者、訊く事訊いたでしょ? さっさと行くわよ。これ以上ここにいるのは耐えられない」クルッ
勇者「……ああ。魔王、その封印の場所に案内してもらえるか」
魔王「わかった……任せておけ」
345:
魔法使い「……ねえ、もしあいつが『末子』の力とやらでおかしくなってたら」
少女「?」
魔法使い「ぶち殺しちゃって構わないでしょ?」ギョロンッ
少女「!」
魔王「どうしようもない時はやむを得んが……あくまでそれは最後の手段だ」
魔法使い「……ふん」スタスタ
少女「あ……待っ……」
勇者「魔法使いが暴走しそうになったら俺が止める」ボソッ
少女「ゆ、勇者様……」
勇者「だから、どうか安心してほしい」ザッザッ
少女「……ありがとう。お願いします」ペコッ
妖精「」ジーッ
346:
姫「あ、あ……」
姫(どうしましょう、私も魔王様にお声を……! 早くしないと行ってしまわれますわ!!)オロオロ
姫(何かないかしら、魔王様を元気づけられそうな事……)
姫「ま、魔王様!」
魔王「ん?」
姫「あの……その……」モジモジ
姫(さ、流石に少女さんみたいに頬に口付けなどはできませんわ! 他には……)
魔王「どうしたのだ? 姫」コテン
姫(首を傾げられている魔王様も素敵……ではなくて!)
姫「ま……魔王様、の……」
魔王「うん?」
姫「……お好きな、お料理は何ですか……?」プルプル
347:
魔王「……」
姫(ああああ何を言っているんですか私は……! 魔王様も呆れていらっしゃいますわ!!)カアッ
魔王「……もしもそれに答えたら、貴女は作ってくれるか?」
姫「あ……は、はいっ! 少女さんに教えてもらいましゅっ……!!」
姫(おまけに噛んでしまいました……! なんて恥かしい……)
魔王「……シチュー」
姫「え?」
魔王「クリームシチュー……だな。南瓜をたっぷり入れた」
姫「!」
魔王「楽しみにしても……良いか?」
姫「……はい。ですからどうか、御無事で」
魔王「うむ。貴女もな」
姫「……」ニコッ
348:
少女「お姫様……」
魔王「神獣達、少女達の事を……」
白獣「ええ。任せてください」
黒獣「全く面倒な……」
白獣「黒様、そのような事を仰らないでくださいな」ムッ
魔王「……では、行ってくる」ザッザッ
少・姫「……」ギュッ
白獣「お気をつけて」
黒獣「……」
妖精「」ヒラヒラ
ギイイッ……バタン
349:
少女「……本当に、大丈夫かな」
姫「今はただ、皆さんを信じましょう。私達にできる事はそれだけですわ」
少女「それはわかっているんだけど……」
白獣「嗚呼、そういえば少女さん。これは貴女が持っているべきですね」スッ
少女「! これって」
白獣「ずっと地べたに置かれているのが可哀想だったので、思わず拾い上げたのは良いんですが……」
黒獣「返しそびれたのか。全くうっかりしているな」スリスリ
姫「猫さんのぬいぐるみ……少女さんが側近さんに作ってあげた物ですか?」
少女「うん。ずっと大切にしてくれてた……ここに穴が開いちゃったけど」ナデナデ
350:
姫「ふふ、この兎さんと同じですね」スッ
妖精「!」
少女「あ……魔王様も、持ってたんだ」
姫「初めて作ったんですよね? それにしては中々……」マジマジ
少女「もう、あんまりジロジロ見ないでよ〜」
白獣「ふふふ、良いではありませんか。可愛いですよ?」ツンツン
少女「白獣さんまで!」
姫「……私は、すべてが終わった後に魔王様にこれをお返ししたい」
少女「お姫様……」
姫「勿論、汚れを落として穴も繕った状態で、ですが……少女さんはどうですか?」
少女「……うん。私もだよ」ギュウッ
353:
――――
――
側近「……もうすぐ着く」ダダダッ
戦士「大丈夫なのか? もしも手遅れだったらどうすんだよ……」
側近「心配するな、封印の際に防衛の術もかけてある。兄上が生きている状態でそこに異変があれば……」
?「キャアアアアアア誰かああああああああ!!!!」
戦士「」
僧侶「」
側近「このようにすぐにわかるようになっている。急ぐぞ」
戦士「……おい、どう思う?」ヒソヒソ
僧侶「……こ、ここは側近さんを信じましょう」ヒソヒソ
側近「何をしている? 置いて行くぞ」クルッ
戦士「! ま、待ってくれ!!」ダダダッ
僧侶「すみません、すぐ行きまーす!」タタッ
354:
宝物庫
謎箱(封印箱)「アタシ開けられちゃうううううこのままじゃ開けられちゃうのおおおおおおおおお!!!!」ガタガタ
魔王腕(兄魔王)「耳障りだな……静かにできないのか」
封印箱「魔王さまだけど魔王さまじゃない奴に開けられちゃうううううう!!!!」
兄魔王「ふん、全く厄介な仕掛けを施してくれたものだ……まあこうなってしまえば無駄な足掻きだがな」
封印箱「駄目なのおおおおおお開けちゃ駄目なのよおおおおおお!!!!」
兄魔王「いい加減に大人しくしろ。お前の中にある物の本来の所有者様だぞ」ズズズ……
封印箱「イヤアアアアア助けて側近さまあああああああああ!!!!」ゴトンゴトン
側近「封印箱! まだ開けられていないか!?」バタンッ
封印箱「側近さまあああああ!!!!」
兄魔王「! ……何だ、お前生きていたのか」
355:
戦士「あのガタガタ動いてる箱が封印か?」
僧侶「みたいですね。行きましょう!」タタッ
封印箱「嬉しいわっアタシのために来て下さったのねえええええ!!!!」
側近「遅くなったな。今助けるぞ!」ダッ
兄魔王「助ける? ただのモノに向かって助けるだと? ふざけた事を……」ガサガサ
側近「黙れ! 貴様はここで始末する」ジャキッ……ブンッ
兄魔王「はっ、何処を狙っている」ザザザッ
戦士「あの腕……めっちゃ素早く動き回ってんだけど……」ブルッ
僧侶「何を怯えているんですか! 情けない」
戦士「そ、僧侶は怖くねえのか!?」
僧侶「だって正体がわかっているんですよ? 怖がる理由がありません」
戦士「そりゃそうかもしれねえけど……」
356:
側近「くそっ……ちょこまかと!」ザンッ
兄魔王「ぎゃははっ! どうした? お前の大事な兄の腕は斬れないのか?」ヒュンッ スカッ
僧侶「側近さん! 浄化魔法で援護します!」スゥゥ……
側近「頼む! 腕の安否は心配せず、あくまで奴を消し去る事を最優先にしてくれ!!」ブォンッ
僧侶「わかりました……!」カッ
兄魔王「ほう、俺を消し去ろうというのか……面白い!」ヒョイッ
僧侶「外した……っ!」ギリッ
戦士「そ、側近! こいつは動かせるのか?」
封印箱「あらああああああ良い男ねええええええ!!!!」カタカタ
戦士「ひっ」ビクッ
357:
側近「生憎そいつはそこからは動かせん! だから奴を近付けるな!!」
戦士「マジかよ!? しょうがねえな……」スッ
封印箱「お願いいいいいい守ってねえええええええ!!!!」
戦士「ま、守ってやるから静かにしててくれ!」
兄魔王「ふん。虫けらが幾ら集まった所で……」ザザザザッ
側近「来るぞ!」
戦士「うわあああやっぱり気持ち悪い!」
僧侶「戦士さん! いい加減に腹を括りなさい!!」
兄魔王「同じ事だ」ゴオッ
戦士「!」
僧侶「戦士さん!」ポウッ……バシュンッ
戦士「す、すまねえ僧侶!」
358:
側近「! 結界か……」ホッ
戦士「くっそー……こんな事なら魔法使いにアレを出しといてもらうんだったぜ……」
僧侶「今更そんな事を言っても仕方ありませんよ!」
兄魔王「まだまだ、こんなものではないぞ!」ボボボッ
戦士「ええい、こうなりゃ自棄だ! こいやあっ!!」シャキンッ
側近「馬鹿、無闇に向かって行っては……!」
戦士「てえりゃっ!」ブンッ スパンッ
側近「!」
兄魔王「ほう、貴様も魔力の塊を斬るか」
戦士「俺は力でゴリ押しする事しかできねえからな……!」
僧侶(ですが、たったあれだけでもう対魔剣があんなに……やはりアレでなければ厳しいですか……!)
359:
兄魔王「ならこれはどうだ」ドドドドドッ
戦士「うっ……うおおおおお!!!!」ガガガガッ
僧侶「戦士さんっ!」キィンッ
戦士「はあっ……はあっ……」ポタッ……ポタッ……
側近「すべては防げなかったか……!」ギリッ
兄魔王「無様だなあ人間。たったこれだけでへばるのか?」クックッ
戦士「う……まだ、まだ……!」
僧侶(……私達は、それなりに強いと思っていました。竜も倒せる位だし、これなら魔王も倒せるんじゃないかとも……)
側近「貴様っ!」ザシュッ
兄魔王「おっと危ない。魂にまで手が届くその剣は得体が知れないからな……」ヒョイッ
僧侶(でも、甘かった……やはり先代の頃と今とじゃ、全然……!)
360:
側近「僧侶! 何をしている!!」
僧侶「え?」
兄魔王「まず1人」ゴゥッ
僧侶「! きゃ……っ」キンッ……ボシュッ
戦士「僧侶……!」
僧侶「だ、大丈夫です……」シュウウウウ……
兄魔王「至近距離にも関わらず、結界と相殺したか……少し厄介かもしれんな」
僧侶「……そんな事、思っていもいない癖に……っ」
兄魔王「ぎゃはっ! 当然だ」
僧侶「……こうなったら、奥の手を使うべきですかね」スッ
361:
戦士「! 馬鹿、それはお前の消耗が……っ」
僧侶「側近さんの許可もありますし、ここで使えばすべて終わらせられます……腕1本位なら大丈夫ですよ」
兄魔王「何をするつもりなのかは知らないが……まあ、死ぬ前に精々足掻くが良い」ズズ……
戦士「や、止めろ、早まるな僧侶……!!」
側近「……ならば使わせるわけにはいかないな」ザクッ
僧侶「! 側近さん……」
兄魔王「ぐがっ……!」
側近「もっと自分を大事にした方が良い……お前達の人生はまだまだこれからだろう?」ググッ
僧侶「あ……」ドキッ
側近「その油断が命取りだったな……これでとどめだ!」ズブッ……
兄魔王「お、おのれっ……うあ、あああああああ……!!!!」シュウウ……
362:
側近「……兄上、腕を取り戻せなくてすまないな」スッ
僧侶「あの……終わったのですか?」
側近「その筈だ」
側近(あまりにも呆気なかったが……まあ、こんなものだろう)
僧侶「で、では早く戦士さんの治療を……」クルッ
封印箱「い……いやあああああああああ助けあひゅっ!」グチャッ
戦士「」ビタッ……ズルリ
側近「!」バッ
僧侶「……ど、どうして……」
363:
兄魔王「お前の結界と我が術が相殺したあの時、発生した煙に紛れて分身とすり替わったのだ」ググッ……
側近「馬鹿な……あんな短時間でそんな真似が……!」
兄魔王「ふん、我が魔力を持ってすれば造作もない事だ。それにここは宝物庫だぞ? 隠れる場所なら腐る程ある!」ドクン……ドクン……
僧侶「あ……嘘……」ガクン……
兄魔王「ククク……どうやら油断したのはそっちの方だったようだな」コォォォ……
側近(近付こうにも……奴の魔力の渦が邪魔を……!)グッ
兄魔王「嗚呼、俺がどれ程この瞬間を待ち侘びたか……お前達にはわかるか?」ズズ……ズズズッ……
側近「……最悪だ……」ギリッ
兄魔王「ぎゃははっ……ぎゃははははははは!!!!」スタッ……バサリ
僧侶「そんな……私の、せい……?」
兄魔王「恐れよ人間! 平伏せ魔物!! 今日は魔王復活の記念日であるぞ!!!!」
374:
――――
――
少女「……」
姫「……」
妖精「」パタパタ
白獣「……黒様、やはりここで本来の姿に戻るつもりはありませんか?」
黒獣「無論だ。大体お前がその姿でいる事の方がおかしいのだぞ」
白獣「それはそうですが……私は、何時もの貴方の方が好きです」
黒獣「……お前達、しばらく耳を塞いで後ろを向いていろ」ジロッ
少女「えっと、どれ位?」
黒獣「何、ほんの5時間ばかr」
白獣「黒様、あんまり冗談が過ぎると嫌いになりますよ?」ニコッ
黒獣「私が悪かった」ズザザザザッ
375:
姫(あの黒神獣様が……あんなに頭を擦りつけて許しを請われていらっしゃる……!)
少女(黒獣さんの本当の姿……ちょっと気になるかも)
妖精「……」ハァ……
白獣「もう、黒様ったら……ッ!」バッ
黒獣「! この気配は……」
少女「……!」ガクンッ
妖精「!」フラッ……ペタン
姫「少女さん、妖精さん!」
少女「こ……これって……まさか」ブルブル
白獣「……やはり、貴女にもわかりますか」ギュッ サスサス
376:
少女「あ、ありがとう……」
姫「白神獣様、一体何が……!」
黒獣「ふん、あの阿呆……目覚めおったか」チッ
姫「え……?」
妖精「……」パタパタ……ピトッ
少女「妖精さん……大丈夫、大丈夫だからね」ギュッ
少女(……側近さん……魔王様……皆……ッ!)
377:
――――
――
側近「……」ジリッ
僧侶「あ……ぅあ、あ……」カタカタ
兄魔王「本当に最高の気分だな……この腕、脚……仮初めではない、すべて俺の物だ……!」グッ
側近「……ッ」ダッ
兄魔王「さて、早復活後の最初の食事と行きたいところだが……その前に」ピタッ……
側近「!?」
僧侶(指1本で剣を……ッ!)
兄魔王「準備運動だな」トンッ
側近「……ッがあっ!」ズダンッ ズルリ……
378:
僧侶「あ……側近さ……」ブルブル
兄魔王「くく、お前は中々良い表情をするなあ。その忌々しい力さえなければ、メインディッシュにはもってこいだろう」ザッ……ザッ……
僧侶「い、嫌……来ないで……」
兄魔王「良いぞ、ゲテモノなりにもっと怯えて俺を楽しませるんだ……!」ゲラゲラ
魔王「弟ッ!」バタンッ
魔法使い「! あんた……僧侶から離れろっ!!」チャキッ
僧侶「あ……魔法使い、さん……私……」
兄魔王「ちっ、邪魔が入ったか」
魔王「貴様……ついに封印を……!」ギリッ
勇者「あれがお前達の言っていた?」スラリ
魔王「……そうだ。そしてお前を乗っ取っていた奴だ」
勇者「……」
379:
兄魔王「おお弟よ、この姿では久しぶりだなあ……すっかり大きくなって」ニヤニヤ
魔王「ふざけた事を……!」
兄魔王「嗚呼、魔王としてお前達を葬るにはここは相応しくないな……先に行って待つとしよう」シュンッ
魔法使い「待ちな……!」タタタッ
勇者「止めろ魔法使い。もういない」
魔王「僧侶、怪我はないか!?」
僧侶「わ、私の事は良いから……あの2人を……」
側近「ぅ……」ヨロッ……
魔王「弟、しっかりしろ!」ガシッ
側近「兄上……すまない。俺達が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」
僧侶「側近さんのせいではありません……私が、もっと強い結界を張れていれば……」
380:
すみません、修正です。
側近「兄上……すまない。俺達が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」

側近「兄上……すまない。俺が不甲斐ないばかりに奴の復活を許してしまった」
381:
魔法使い「全く、アレで復活したてなのが信じられないわ! ……なんて魔力よ」ブルッ
勇者「……戦士は気を失っているだけのようだな。頭から出血しているせいで酷い怪我に見えるが」
魔法使い「あいつ……一体何処に行ったのよ!?」ダンッ
魔王「大方見当はつく。魔王である事に拘る奴の事だ、辿り着く場所は1つしかない」
側近「……ああ」
戦士「うう……俺は……」パチッ
勇者「戦士、気が付いたか」
戦士「勇者か……あいつは、どうなっ……痛っ……!」ズキンッ
勇者「あまり無理に動くな。今僧侶に診て……」
僧侶「ごめんなさい……本当にごめんなさいっ……!!」ポロポロ
魔王「今更、目覚めてしまったものは仕方がない。こうなった以上は全力で奴を倒すまでだ」
382:
僧侶「ですが……実の兄弟、なのでしょう?」
側近「種違いではあるがな。それに覚悟はとっくにしている」
魔王「こうしている間にも、奴はどんどん以前の力を取り戻していくだろう……ならば、今は一刻も早く奴の元へ行くべきだ」
僧侶「うぅっ……はい!」ゴシゴシ
勇者「……僧侶。戦士の傷を」
戦士「なあ僧侶、俺も油断しちまったのは同じだ。だからそんなに自分ばっか責めるなよ」ポンポン
僧侶「戦士さん……」ポウッ……
383:
側近「……いや、寧ろ封印の前で気を抜いていた戦士の方に非が」
戦士「うおおいそこ! 何気に俺に全部おっ被せようとすんな!!」
側近「冗談だ」
戦士「おいおい、その顔でかよ……」
側近「失礼な奴だな。俺だって冗談位言う時もある」
魔法使い「ねえ。何時までそんな茶番を演じてるつもり……?」ゴゴゴゴゴ……
側・戦「……すまない(悪い)」
僧侶「……終わり、ました」
勇者「よし」
魔王「では改めて……行くぞ!」ザッ
388:
――――
――
白獣「……あら」ピクッ
少女「どうしたの?」
白獣「少女さん、姫さん……勿論妖精さんも。絶対に私達から離れてはいけませんよ?」
姫「白神獣様……?」
黒獣「ちっ……来るぞ」
バタンッ……ズズズッ……
『……ァア……』ゾロゾロ
『ウゥ……グガァ……』ゾロゾロ
少女「な、何……これ」
妖精「!」ギュウウッ
姫「い、一体何が起こっているんですの……!? この者達は……」
389:
黒獣「見ればわかるだろう。こいつらは既にこの世の者ではない……あの馬鹿の仕業だろうな」ギロッ
白獣「哀れな死者に……なんと心ない仕打ちを」ポロッ
少女「こっちに……来る……っ」カタカタ
黒獣「ふん。何のために我らがいると思っている」
白獣「この結界がある限り、彼らはこちらに指1本触れる事は叶いません」フワッ……
『……! ……!!』バンバン
少女「こんなに沢山、何処から……?」
黒獣「……恐らく、過去にこの城で散った者達だ」
少女「え?」
白獣「ここは魔王城です。遥か昔から続く魔王と勇者の戦いで多くの命が消えた場所……」
姫「あ……」
白獣「力を、よりによってこんな事に使うなんて……っ」ポロポロ
390:
黒獣「白娘……」スリッ
少女「ひ、酷い……」ジワッ
妖精「!」オロオロ ナデナデ
姫「皆さん……大丈夫でしょうか……」ギュッ
姫(魔王様……!)
――――
――
魔王「こ、こ奴らは……!」
魔法使い「嫌ッ……! 何なのよこれ!?」
戦士「ま、ま、魔法使い、しっかりしろ!!」ガクガク
魔法使い「震える声で言わないでよ!!」
391:
勇者「こいつら……死霊の類か?」
僧侶「お、恐らくは……ここで死んだ者達が強制的に実体化されているのだと……」ブルブル
側近「奴は……何処まで……ッ!!」ギリッ
戦士「おい、転移はできねえのか!?」
魔法使い「無理よ! さっきよりも妨害が酷くなってる!!」
魔王「……悔しいが私もだ。恐らく奴が完全復活した事が影響しておるのだろう」
魔法使い「何ですって!?」
勇者「……ではこいつらを蹴散らしながら進まなければならないという事か」スッ
側近「! お前、斬るというのか!? 1度死んだ者達を再び!!」
勇者「そうしなければ奴の元へ行けないのならやむを得ないだろう」
僧侶「ま、待って下さい!」
魔王「僧侶……」
僧侶「ここは……どうか私に任せてください」
397:
魔法使い「……悔しいけど、確かにこういうのはあんた向きよね」
僧侶「ええ。ですがそれ以上に、このような事態の引き金を引いてしまった責任もあります」
側近「僧侶、だから気にするなと……」
僧侶「そう簡単に気持ちを切り替える事なんてできません!」
魔王「しかし……」
僧侶「それに、今ここで戦って皆さんが消耗してしまう方が痛手になると思います」
勇者「……確かにそれは一理ある。だが……」
僧侶「大丈夫です。奥の手を使う事に比べれば……こちらの方が本来の私の役割ですしね」ニコッ
398:
戦士「勇者、どうする?」チラッ
勇者「……迷っている暇はないな。僧侶、頼む」
僧侶「はい」スッ
魔王「……死者を傷つけずに済むならそれに越した事はない、が」
側近「くれぐれも、無理はしないで欲しい」
僧侶「ふふ、ご心配なさらず。では……」
僧侶「これより彼らの浄化に入ります。皆さん、ほんの少しだけ力を貸してください!」キッ
399:
魔王「僧侶、我らは何をすれば良いだろうか?」
僧侶「浄化を邪魔されないように私を守ってください。結界などを張って貰えれば手っ取り早いのですが……」
側近「……兄上」チラッ
魔王「うむ、それならお安い御用だな」スッ
勇者「魔法使い。お前も協力しろ」
魔法使い「あたしはこういうの不得手だって知ってるでしょ?」
勇者「俺はお前以上に不得手だ。だから個々の消費を少しでも抑えるために魔王に協力して欲しい」
魔法使い「冗談じゃないわ! 只でさえこの状況に耐えられないのに……!」
勇者「ぐずぐずしていたらもっと長引くぞ」
魔法使い「それは……っ」
400:
魔王「結界位なら私だけでも十分だが……」
勇者「お前は戦力の1人だ。ここで余計に消耗させるわけにはいかないだろう」
戦士「な、なあ、俺は魔法が使えねえから下がってて良いんだよな?」
僧侶「……そうですね。彼らを闇雲に傷つける訳にもいきませんし」
側近「俺も兄上達の援護をした方が良いだろうか」
僧侶「側近さんは、もしもの時のために勇者さん達と下がっていてください」
側近「わかった」
勇者「頼む、魔法使い」
魔法使い「……これっきりだからね」
勇者「ああ」
僧侶「準備は宜しいですか? では……行きます!」
401:
――――
――
魔法使い「僧侶、余力は?」タッタッタッ
僧侶「まだまだ大丈夫です!」グッ
勇者「僧侶の浄化が効いたのは幸いだな」タタタッ
戦士「おい……何でまたお前を背負わないといけないんだよ」
僧侶「魔王さん達を除けば、この中では戦士さんが1番スタミナがあって私がないんですよ? 当然の結果です」
戦士「いや、おかしいだろ!」
僧侶「ですが、現にそうやって突っ込みながら走る余裕があるじゃないですか」
魔法使い「あんた、さっきは震えてばっかりで何にもやってないじゃない。これ位は役に立ちなさいよ」ジロッ
戦士「うぐ……っ」
402:
魔王「……彼らは、救われたのだろうか」タタタッ
側近「兄上、浄化された彼らは安らかな顔をしていただろう? きっとそうだ」
魔王「ん……そうだな」ホッ
僧侶「……本当に、情の深い方々です」
魔法使い「ふん、偽善者共が」ボソッ
勇者「魔王、あとどれ位で着く?」
魔王「もう少しだ、この階段を下りれば……ッ!」ピタッ
?「……ふうん、ちゃんと成長はしてるんだぁ」クスクス
?「当たり前でしょ。あれから随分経っているんだから」
側近「兄上……!」
魔王「ま……まさか……嘘だろう」ブルッ
403:
魔法使い「……何、あいつら」チャキッ
?「だって、あいつに喰われて以来よぉ? 地上に戻って来るのは」
?「それでも少しは察してよ。だから私より先に食べられちゃう……なっさけない」
?「あはぁ。そっちだってあの後すぐに食べられた癖にぃ」
?「……喧嘩売ってる?」
?「だったら何よぅ」
側近「何故ここに……姉上達が……」
僧侶「姉? この方達がですか!?」
魔法使い「へえ、じゃあ中々骨がありそうじゃない。勿論やっちゃって良いんでしょ?」スッ
側近「……ああ」ギリッ
魔王(……自分が喰った者達まで駒にするか……!)ワナワナ
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