ヨハネ「悪霊祓いのラッキーガールと遭遇しちゃった!」希「邪気を感じるわあ」back

ヨハネ「悪霊祓いのラッキーガールと遭遇しちゃった!」希「邪気を感じるわあ」


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希(さて到着、と。この辺りが邪気の大元やね)
希(しばらく留まるつもりやし、寝泊りできる場所探さないと)
希(誰か地元の人おらへんかな……あ)
希「すみませーん、ちょっといいですか?」
ヨハネ「どうしたの? あなたもヨハネのカンパニーの一員になりたいのね?」
希「おっ?」
ヨハネ「勿論ウェルカムよ! この奇跡の美少女ヨハネと一緒に、どこまでも堕天しましょ♪」
希(ド頭からとんでもガールと遭遇してもた……うん、幸先良さそうやん)
2:
ヨハネ「本当に宿を紹介するだけでよかったの? ヨハネのカンパニーに入ってもいいのよ?」
希「そっちの謎カルトはまた今度にお預けかな。今はちょっと休みたいんよ」
ヨハネ「いいわ、気が向いたらいつでもこのヨハネを呼んでね? いつでも駆けつけてあげるんだからっ」
希「正義の味方みたいなこと言うんやね」
ヨハネ「正義の味方じゃなくて、堕天使の務めよぉ」
希「堕天使ってなんなん?」
ヨハネ「そぉれぇはぁ、余りの美貌の持ち主として生まれ落ちたことで不幸な人生を辿る宿命を帯びたヨハネのこ・と★」
希「なるほどわからへん」
ヨハネ「じゃあね! 天の導きがあったらまた会いましょ!」
希(コミュ強やけどコミュ障みたいな子やったなあ……ちゃんと宿教えてくれるあたりええ子なんやろうけど)
希(さてさて、一休みしたら早悪霊祓いに出向かんとねえ)
4:
――――
ギャァァァァァス
希(ふう、一件落着っと)
希(一日分の悪霊祓いのノルマは達成したし、そろそろ宿に帰ろか)
希(……あれ? あの子って確か……)
希「こんにちはー」
ヨハネ「……あっ! あなた、この前のリトルデーモン候補の人ね?」
希「まーた新しい言葉が出てきよった。学校帰り?」
ヨハネ「そうよ! 今日も一日堕天使としての試練を潜り抜けたところなのっ」
希「大仰且つ的を得ない発言のオンパレードやなあ……ん? 片足どうしたん? 靴履いとらんけど」
ヨハネ「これ? さっき石に躓きかけたら靴が脱げて、履き直す前に犬が咥えて行っちゃったの!」
希「堕天使としての試練に見事引っかかっとるやん……」
5:
ヨハネ「あぁん! やっぱりヨハネは薄幸の美少女なんだわぁ。これもヨハネの魅力に嫉妬した神様の悪戯なのよ!」
ヨハネ「耐えるのよヨハネ、堕天使は簡単に音を上げたりしないんだからっ」
希「この前も不幸な運命を辿る言うてたもんね、可哀想に」
ヨハネ「平気よ! このくらいいつものことなんだから」
希「いつもそんな酷い目に遭っとるん? なんか不憫に思えてきたわ……」
ヨハネ「だぁいじょうぶ! 心配しないで?」
ヨハネ「ヨハネが不幸を引き受ける分、世界中のリトルデーモンのみんなには不幸が訪れないってことなのよ♪」
希(頭のネジ飛んでるけどええ子ではあるんやな)
希「ようし、これも縁ってことで、ええ子のヨハネちゃんにウチが美味しいもの奢ってあげよう!」
ヨハネ「え、ホント!? いいの!? あのねっ、駅前に新しいクレープ屋さんが出来てねっ」
希「急にふっつーの女子高生みたいになったわ……というかその前に靴なんとかしよか」
6:
希「まさかクレープ屋さんの来店一万人記念で料金無料になるとは予想外やん」
ヨハネ「ヨハネのクレープ、チョコバナナなのにバナナが入って無かった……」
希「ウチの幸運とヨハネちゃんの不運で差し引きゼロってところやんな」
ヨハネ「それにしても、クレープだけじゃなくて靴も買ってくれるなんて……あなたもしかして上位堕天使!?」
希「うふっ、なんなんそれ? ウチはただの人間だよ」
ヨハネ「そう、堕天使仲間に会えたと思ったからちょぉっと残念……」
希「ヨハネちゃんは天使とかそういうのが好きなん?」
ヨハネ「そうじゃなくてぇ、ヨハネが堕天使なの★」
希「ふぅん?」
希(これはイタイ子認定したらいけないヤツかな? オモロイから何でもええけど)
ヨハネ「だからね、いつ冥界から悪魔や堕天使がやってきても歓迎できるよう、心の準備はバッチリよ!」
希「悪魔かあ……そんなに良いモノやないけどね」
7:
ヨハネ「あなたはどうしてこんなところに来たの?」
希「仕事の一環だよ」
ヨハネ「お仕事? 何をしている人?」
希「ふっふっふ……ウチの正体はね、悪霊祓いなんよ!」
ヨハネ「あ、悪霊祓いぃぃぃぃぃ!?」
希「あれ? 調子合わせたつもりやったけど想像以上の反応返ってきてもうたわ」
ヨハネ「そんなぁ……堕天使仲間じゃなくて、堕天使のヨハネを滅する為にやって来た人だったなんて……」
希「え?」
ヨハネ「うわぁぁぁぁんごめんなさいぃぃぃぃ! 悪いことなんて一つもしてないけど堕天使でごめんなさいぃぃぃぃ!」
ヨハネ「お母さぁん変な名前付けてセンス無いなんて言ってごめんなさいぃぃぃぃうえぇぇぇぇぇん!」
希「堕天使って悪霊の仲間なん……?」
9:
ヨハネ「ただの人探しのお仕事だったのね」
希(立ち直り早いわこの子。じゃなきゃこんなキャラできひんか)
ヨハネ「いいわよ、靴とクレープのお返しに手伝ってあげる!」
希「助かるわあ。えっとね、この辺りにK村K子ちゃんて人おる?」
ヨハネ「あ、心当たりあるかも。地図だとこの辺りに住んでるはずよ」
希「さっすが地元民、頼りになるやん!」
ヨハネ「この子がなにかしたのね? はっ、まさか今度こそ本物の堕天使仲間!?」
希「残念ながら少し違うかなあ。ヨハネちゃんが興味持ちそうなものやないよ」
ヨハネ「ふぅん? そう、でもいいわぁ。いつか本物の堕天使仲間を実力で見つけてみせるもの!」
希「ようわからへんけど熱い野望やねえ。応援しとるよ」
ヨハネ「ありがとっ♪ お礼にリトルデーモンになってもいいわよ?」
希「それはまた今度にしとくね」
12:
―――
希(この辺りは海があって自然も多くて、いいところやなあ)
希(お役目で来とるわけやけど、せっかくだし、ちょっとくらい羽伸ばしても罰は当たらんよね)
希(何もない海辺に腰掛けて、のんびりお昼ご飯とかええやん)
希(ほら、あそこにもウチと同じように海見ながらお昼食べてる地元民が……おや?)
希「…………あ、やっぱり。ヨハネちゃんやん」
ヨハネ「んぐぅっ!? げほっ、けほっけほっ」
希「あーごめん食べとる最中に声かけて! ほらコレ飲んで!」
ヨハネ「ゴクゴク……むふぅっ!? げほげほげほげほっ!」
希「ああー余計酷くなってもうた! なんでなん!? これがヨハネちゃんが言うてた不幸体質ってことなん!?」
ヨハネ「んむー! んむむっー!」
14:
ヨハネ「…………ご飯は喉に詰まるわ飲み物は気管に入るわ、とんだ災難だったわ!」
希「相変わらずアンラッキーガールやね……いや、今回はウチが悪いか。ヨハネちゃんごめんね」
ヨハネ「平気よ? このヨハネがご飯を喉に詰まらせて死ぬわけないもの」
希「えらい自信満々やね」
ヨハネ「だってそんな死因堕天使として恥ずかしすぎじゃないっ!」
希「そんな根拠なん……」
ヨハネ「ええと、確かお仕事で人探しの為に色んな所を飛び回ってる、探偵さんだったかしら?」
希「んー、探偵ではないかな。あちこち飛び回ってはいるけど」
ヨハネ「じゃあ旅人さん?」
希「そっちの方が近いかも。全国で行ったことのない場所の方が少ないし」
ヨハネ「凄いのね! ヨハネは内浦に舞い降りし伝説の堕天使としてこの地を治める義務があるから、そう遠くへはいけないの」
希「もしホンマにヨハネちゃんが統治者になったらエライ決め事とか作りそうやんな」
ヨハネ「まずは全員に堕天使ネームを名乗ることを義務化するわ!」
希「つら……」
15:
ヨハネ「旅人さん、お仕事はお休み?」
希「たまにはね。今日は休日やからヨハネちゃんもお休みかな?」
ヨハネ「そうよぉ。お休みの日はよく海を見に来るの」
希「ええよね海、綺麗やもん。こんな間近に海を見に来れる立地なのは羨ましいよ」
ヨハネ「海を見てるとついうっとりしてしまうの……」
希(ロマンチストなんやねえ)
ヨハネ「だってまるでヨハネみたいだもの!」
希(ん?)
ヨハネ「壮大で美麗で、全てを包み込む優しさがあって、どこまでも広がる可能性と未来を感じさせる雄大さ!」
ヨハネ「まさに自然に生きるヨハネこと海と呼ぶに相応しいわぁ♪」
希(あえてツッコまんとこ……)
ヨハネ「旅人さんは海は好き?」
希「うん。この綺麗な海は好きだし、そんな海を見れるこの街は良いところやって思うなあ」
ヨハネ「そうね、ヨハネが降り立った聖地ってことを抜きにしても、この街のことは好きよっ」
希(せやからちゃぁんと、ウチがこの街を守らへんとね)
16:
希「ね、最近この辺で話題になったこととかない?」
ヨハネ「この地にヨハネが降り立った以上に話題になることがあるの?」
希「うんまあその次くらいの話題でええんやけど」
ヨハネ「そうねえ……最近色々良くないことが起こって大変ねって話くらいかしら」
ヨハネ「ちょっとしたボヤ騒ぎが続いたと思ったらある日止まって、かと思えば謎の昏倒事件が続いてまたすぐ治まったり!」
希(ボヤ騒ぎも昏倒も両方ウチが祓った悪霊の仕業やん。やっぱり悪影響が出とるんか……)
ヨハネ「だけどそんなもの序の口よ! ヨハネの身に起こる不運に比べたらどうってことないんだから!」
希「そんなに良くない目に遭っとるん?」
ヨハネ「今日は家を出る直前にコーヒーを服に零して、お気に入りの格好で出かけられなかったの!」
ヨハネ「着替えて家出た途端に野良犬に抱き着かれて服が足跡マークの泥だらけ! また着替えて出発一分で転んで砂まみれ!」
ヨハネ「今来てる服で四着目なんだから! もっとオシャレな服で外出したかったわぁ」
希「それは可哀想やけど、今の服も十分可愛い格好だと思うけどね」
ヨハネ「ダメよ! 全っ然堕天使らしさが感じられないもの!」
希「逆に堕天使らしい格好とやらを見てみたいわ……」
17:
ヨハネ「ねえ、格好と言えば前から聞きたかったんだけど」
希「うん?」
ヨハネ「どうして旅人さんはそんなおかしな格好してるの? まるで変装してるみたいよ?」
希(そのつもりなんよ)
希「ほら、人には色んな趣味があるから」
ヨハネ「それもそうねぇ。でも旅人さんだってもっと女の子らしいキラキラでフワフワした格好しないとだめよ?」
希「そういう衣装着ることもあったけどねー」
ヨハネ「あら、そうなの? 可愛い衣装を着るようなことしてたの?」
希「まあね。最近はご無沙汰やけど」
ヨハネ「ふうん。でも旅人さん、バッチリメイクして素敵な衣装を着たら、とぉっても素敵だと思うわよ♪」
希「うふっ、ありがとね」
ヨハネ「是非ともリトルデーモンの広報担当になって欲しいくらい!」
希「そっちは遠慮しとくわ」
18:
希「さぁて、そろそろ帰ろうかな」
ヨハネ「そう。珍しく誰かと一緒に海を見るのも楽しかったわ!」
希(やっぱりボッチなんかなこの子……なんかほっとけんわ)
ヨハネ「たまにはみんなを誘ってみようかしら」
希(おっ? ボッチではないんかな?)
希「一緒に海を見に誘ってみたい子でもおるん?」
ヨハネ「そうなのっ! 最近沢山の仲間ができたのよ!」
希「仲間、か……大事だよね、そういうの」
ヨハネ「でも、ただ地元の海を見るだけなのに付き合ってくれるかしら……」
希「そやねえ……ヨハネちゃんは、友達の好きなことを一緒にしてみるのは好き?」
ヨハネ「んー、そうね、好きよ! 友達の好きなことを知るのってなんだか嬉しいじゃない!」
希「だったら平気だよ。きっとヨハネちゃんの仲間たちもそう思ってくれるから」
ヨハネ「そ、そうかしら…………そうだったら、嬉しいわぁ……?」
希「うんうん。勇気出して誘ってみ!」
ヨハネ「あ、じゃあ海に誘うのと一緒に悪魔ガールの話題も」
希「それは言わんとき」
ヨハネ「えぇーどうしてぇ!」
19:
―――
ジュワァァァァ…
希(今日も浄化完了、っと)
希(やっぱりこの辺の地域には悪霊が多すぎやんなあ)
希(地元の山に邪気の溜まり場があるけど、それが理由ってわけでもなさそうやし)
希(うん、普通やあらへん……何か明確な理由か、親玉みたいなのがおるはず)
希(でも悪霊の好きにはさせへんでえ。絶対にこの地域を守るんや)
希(ここにはちょっと言動はおかしいけど、素直でええ子がおるし……うふっ、なんてね)
希(せっかくやからこの辺ぶらついてみよっか。もしかしたらあの子にまた会えたりして)
希(……お? 散策始めたら早お食事券拾ってもうた。変なところにラッキー使っちゃったかも)
希(お食事券だけやのうて、あの子にも遭遇できたらええんやけどねー)
20:
希「ほーら思った通りやん!」
ヨハネ「? あ! 人探しの旅人さん!」
希「ウチの運命力ならこんなもんやって。こんばんはヨハネちゃん!」
ヨハネ「こう何度も巡り会うなんて、旅人さんとは偶然以上の何かを感じるの!」
ヨハネ「ねぇ、やっぱりあなたもリトルデーモンにならない!? 今なら特典もつくのよ!?」
希「特典ってのは興味深いけどまた今度かな」
希「ね、ヨハネちゃんお腹空いとらへん? ちょうどここにお食事券が二人分あるんよ」
希「今日もご飯奢るから、代わりにまた情報が欲しいかなーなんて」
ヨハネ「ご飯!? 今日一日何も食べてなかったからすっごく嬉しい!」
希「え、もう夜なのに? スタイル良いのにダイエット?」
ヨハネ「今日のヨハネの不幸はご飯を逃すことみたいなの」
ヨハネ「朝はアラームの不具合で寝坊して朝食逃して、昼はお弁当落として、夕方には財布を無くしたのよ!」
希「んな立て続けにって、ちょーっと普通の不運な子のレベル逸脱しとるやん……」
ヨハネ「今のヨハネなら堕天使らしからぬ世俗的な供物にも喜んで飛びついちゃうんだから! 早く行きましょ♪」
21:
希「ふむふむ。S山S子ちゃんはこの辺に住んでて、N田N子ちゃんはこの辺の住人なんやね」
ヨハネ「そしてH川H子ちゃんはこっちの区域よ」
希「うん、助かったわあ。次はなるべく同時に探したかった子たちやったから」
ヨハネ「沢山の人を探してるのね。旅人さんも、旅人さんにとってのリトルデーモン候補を探しているの?」
希「前から言うとるけど、リトルデーモンてなんなん?」
ヨハネ「堕天使ヨハネの魅力に惹かれて集いし愛すべき眷属たちの総称よ!」
希「意訳するならファンのことやね。ヨハネちゃん、ファンが集まるようなことしとるん?」
ヨハネ「ファンじゃなくてリトルデーモンっ!」
希(厨二病患者特有の譲れない拘りなんかな……)
希「うんまあそれ、リトルデーモンが集まるような活動でもしとるんやろか」
ヨハネ「ヨハネの美貌があれば何もしなくてもリトルデーモンたちは集まるんだから!」
ヨハネ「でもね、旅人さんの言う通り、最近始めたことがあるの。ヨハネはスクールアイドルになったのよ♪」
希「へえ! そうなん、スクールアイドルとはまた……うふっ」
希(運に対して極端やったり、一人でいることが多いだけやなくて、スクールアイドルまでも同じとは……)
希(つくづく、縁やねえ)
23:
ヨハネ「今日は御馳走様でした!」
希「どーいたしまして。ウチと一緒におると色々美味しいもん食べられてラッキーやろ」
ヨハネ「本当ね! 旅人さんはヨハネのラッキーガールだわ!」
ヨハネ「あ、でもいつも幸運の御裾分けしてもらってばかりだと悪いから、程々にしておかないと」
希(こういうところはやっぱりええ子やんなあ。なのに不幸属性とはかわいそ)
ヨハネ「旅人さんはまだあの宿に泊まってるの?」
希「もうしばらくはおるつもり。ここでの仕事が一段落するまで、かな」
ヨハネ「ならここにいる間に、旅人さんもヨハネの魅力でリトルデーモンにしてあげる♪」
希「諦めないねえ……ま、ヨハネちゃんになら堕とされるのも楽しいかもしれへんけど」
ヨハネ「それじゃあまた今度! 旅人さん、おやすみなさい!」
希「おやすみヨハネちゃん」
希(……ああいうええ子が住んどるんやから、ちゃんとお仕事せえへんとなあ)
希(ちょっとイタイところはあるけど……それもまた可愛げあるってことやん?)
24:
―――
希(この街美味しいもの多いとは思っとったけど、本当に美味しいものだらけやん)
希(どこのお店も美味しいし、名産品も多いし、留まり続けたら太ってまう。はよ悪霊祓ってお別れしないと)
希(別に食べるの我慢すればいいだけの話なんやけど……と言いつつ名産品をパクリ)
ヨハネ「あらっ、旅人さんじゃない!」
希「ん、もぐもぐもぐもぐゴクン。ヨハネちゃんやん、偶然やね」
ヨハネ「よかったぁ、旅人さんのラッキーを分けてちょうだい!」
希「どうかしたん?」
ヨハネ「呪いの果実に魅入られて参ってるの、匿ってぇ!」
希「ようわからへんけど、ウチができることならええよー」
ヨハネ「ってえぇぇぇぇぇ!? その手に持ってるのはなにっ!?」
希「え? ここの名産品のみかんやけど」
ヨハネ「ああっ、地元民じゃない旅人さんなら平気だと思ったのに……っ!」
ヨハネ「奇跡の美少女ヨハネの命運も遂に尽きてしまう時が来てしまったのね……今夜は一晩中嘆きの雨が降るに違いないわ……」
希「漫画以外でヨヨヨとか泣く子初めて見たわ……」
25:
希「そっか、ヨハネちゃんみかん苦手なんやね」
ヨハネ「今日はどこに逃げてもイービルデンジャラスオレンジにまとわりつかれる一日だったの……不運だわぁ」
希「こんなに美味しいのに」
ヨハネ「ヨハネは嫌いなのっ! 平気で食べられる人が信じられない!」
ヨハネ「なのに地元の名産品はみかんだし! 周りもみーんなみかん勧めてくるしっ!」
希「確かにそれはキツイわあ」
ヨハネ「今日なんて仲間たちの中にみかんが好きな子が三人もいることが発覚したのよっ!?」
ヨハネ「いくら何でも過酷な運命すぎるわぁ……本当、ヨハネってば薄幸のヒロインね……」
希「少なくとも三人ってことは、仲間はもっと沢山おるんやね?」
ヨハネ「ええ、ヨハネを入れて九人のグループなのよ」
ヨハネ「大所帯でうるさいし、大変なことも多いけど、でも毎日が楽しいの!」
希「うんうん。友達は大切にせなあかんよ」
希「もしかしたら、人生の中でもとびっきりに特別な相手になるかもしれへんからね」
ヨハネ「……そうね。もしかしたら、そうなれるかも」
ヨハネ「ううん、違うわ、ヨハネたちの力で世界一のグループにしてみせるんだからっ♪」
希「ふふっ、熱いねえ。青春って感じやわあ」
26:
希「ヨハネちゃんは普段何してるん?」
ヨハネ「いつもは悪魔の儀式が主な活動よ!」
希(ブレへんなこの子)
ヨハネ「あとは家でネット見たり、一人で映画見たり、静かに海見たり。それくらいかしら」
希「割と、その……普通やね」
希(危うく地味とかボッチとか言いかけたわ)
ヨハネ「でも最近はそれどころじゃないのよ!」
ヨハネ「さっき言った仲間たちとの練習三昧で、もうくったくたなんだから!」
希「練習……もしかして九人の仲間って、スクールアイドルグループの仲間のことなん?」
ヨハネ「そうよ! 最近じゃずっと一緒で、堕天使としての責務が果たせなくなっちゃう! 困りものだわぁ」
希「はぁー。スクールアイドルだけでなく、九人グループまで同じとは!」
希「こらもう、運命やねえ……」
ヨハネ「何が運命なの?」
希「ん、気にせんでええよ。ウチも応援しちゃうってこと」
27:
ヨハネ「旅人さんは一人で旅をしているの?」
希「そやねえ。この仕事はウチにしかできひんから」
ヨハネ「寂しくない?」
希「小さい頃は一人でいることが多かったから、もう慣れちゃったよ」
ヨハネ「そう……孤独の悲しみや辛さはわかるわぁ」
希(その性格のせいでボッチやからかな……)
ヨハネ「みんなヨハネの悪魔ガールパゥワーについて来れないみたいで、いつも孤高の存在になってしまうのよ」
希(これは前向きなボッチやからまだマシやんな)
28:
希「でもね、ウチには大切な仲間たちがおるん」
ヨハネ「あらっ、それは素敵ね!」
希「きっと一生の中でも特に大切時間を過ごした、最高の仲間たちだよ」
希「ただ一緒にいただけやない。みんなで同じ物を見て、力を合わせて、共に歩み続けたからこそ、大切な存在になった」
希「せやからヨハネちゃんも、スクールアイドルの仲間、大切にするんやで」
希「今後どこまで大切な存在になってくれるかどうかは、今のヨハネちゃんの頑張り次第で決まるから」
ヨハネ「…………不思議。旅人さんの言葉、とても説得力があるの」
希「うふ。人の話も、たまにはちゃんと聞いて損は無いやろ?」
29:
ヨハネ「……最初はね、そんなに嫌いじゃなかったのよ」
希「何が? ああ、みかんの話ね」
ヨハネ「地元の名産品で食べる機会が多いとみんな好きになっちゃうでしょ?」
ヨハネ「周りのみんなと同じ好みってなんだか格好悪いって感じて、それからみかんのこと嫌いになったの」
希「天邪鬼精神もわからんくはないけどねー」
ヨハネ「けど、グループの中にみかんが好きな子がたくさんいるって今日わかって」
ヨハネ「これからは九人力を合わせないといけないから、一々はみ出してばかりじゃダメって思うの」
ヨハネ「無理に好きになる必要は無いと思うけど……でも、食わず嫌いもやめないと」
ヨハネ「だってこれからヨハネたちは、みんなに好きになってもらうスクールアイドルになるんだもの!」
希「そっか」
ヨハネ「でもね、不安なこともあるのよ?」
希「どんなこと?」
ヨハネ「……今更、ヨハネが普通の子みたいなことができるか、わからないの」
ヨハネ「ヨハネはずっと、今のヨハネだったから」
ヨハネ「今になって、みんなと同じ物を好きになれるのか、みんなが好きになってくれる女の子になれるのか、自信がないわ……」
30:
希「……普通やないからこそ、みんなと一緒にいられて、愛されることもあると思うよ」
ヨハネ「そう?」
希「素直な自分のままじゃ相手に近付くことができない。せやから新しい自分の仮面を付ける」
希「それは、誰かと仲良くなりたい、友達になりたいっていう、素直な気持ちの表れやん」
希「確かに一々外れ者を演じたりするのはよくないけど、だからって今の自分を全部否定することもないよ」
希「ヨハネちゃんはヨハネちゃんで、すっごい魅力を持った子なんやから」
ヨハネ「ホントっ!?」
希「ホントホント。こんなスクールアイドル見たことないわ」
ヨハネ「ヨハネの力でヨハネたち最高のスクールアイドルになれるかしら!」
希「それは今後の努力次第やろうけどね。でも、きっとなれるよ」
ヨハネ「そう……無理にヨハネを我慢しないでも、みんなと仲良くなれるのね……!」
希「でも食わず嫌いはあかんよー。ほら、まずはみかんからいってみよ?」
ヨハネ「えぇー!」
希「グループの仲間にみかん好きな子がたくさんおるんやろ?」
ヨハネ「うぅぅ……たっ、食べるわよぅ!」
希「うふっ。その調子で少しずつ距離縮めていけば、今のヨハネちゃんのままで、ちゃぁんと最高の仲間が作れるよ」
ヨハネ「うえぇぇやっぱりみかんはダメぇ! こんなの災厄を呼ぶ地獄の果実よー!」
31:
―――
ヨハネ(はぁ、今日はちょーっとだけ参っちゃったわぁ)
ヨハネ(体育の授業で転ぶし、教室移動で転ぶし、何もない所で転ぶしっ)
ヨハネ(階段から転げ落ちそうになった時は流石にビックリして、反射的に背中から黒い羽が飛び出すところだったじゃない)
ヨハネ(相変わらず不幸の星の下に生まれたヨハネなのね……でもいいわぁ、逆境を乗り越えてこその堕天使なのよ!)
ヨハネ(最近はAqoursの練習も上手くいってるし、みんなとも仲良くなってきて、悪い事ばかりじゃないもの!)
ヨハネ(それに、不思議で素敵なお知り合いも一人できちゃったし……あはっ♪)
ヨハネ(大変なことも多いけど、良い事だって沢山あるんだからっ)
ヨハネ(今のヨハネは絶好調……わっ! また転びそうになっちゃった……)
ヨハネ(これも堕天使としての試練なのね。でもヨハネは負けない!)
ヨハネ(今日も元気に、レッツ堕天よ★)
32:
ヨハネ(……あ、あれって)
希「……」
ヨハネ「はぁい旅人さん! またまた偶然ねっ」
希「……ああ……ヨハネちゃんか。いつも元気そうやねえ」
ヨハネ「そんなことないのよ? 今日だってヨハネの身に降りかかる数多の不幸を潜り抜けて……」
ヨハネ「……旅人さん、怪我してる?」
希「んー……まあ、気にせんでええよ」
ヨハネ「ダメダメ! ヨハネの前で怪我を我慢するなんていけないんだから!」
ヨハネ「旅人さんが止まってる宿に行きましょ。ヨハネが看病してあげるっ」
希「そんなええのに……あーでも、この勢いを止められないくらいには、疲弊しとるわあ……」
33:
ヨハネ「これで良し、ね……旅人さん、もう大丈夫よ♪」
希「ありがとねえヨハネちゃん。手当ての手際が随分良いんやね」
ヨハネ「ヨハネはね、怪我することも多いから、自分で手当てするのに慣れちゃったわ」
ヨハネ「最近は特に不運なことが多くなってきたんだから。もう困っちゃう!」
希「不幸から身に着けたスキルとはとことん災難な子やなあ」
ヨハネ「今はヨハネのことはいいのっ。旅人さんはゆっくり休まないと」
希「せやねえ。でもそうは言ってられへん、もう行かへんと」
ヨハネ「ダメよ! この怪我でどこに行くつもり!?」
希「ウチな、今な、途轍もない程の空腹に襲われてるん」
ヨハネ「……くうふく」
希「一日中ずーっとお仕事しとって朝からなんも食べとらん」
希「都合が良いことに、前に仕事で助けた人がこの辺に料亭開いたみたいで、ウチのこと招待してくれたん。ラッキーやろ」
希「ウチは美味しいもん食べに行くけど、ヨハネちゃんも行く? 手当てしてくれたお礼に招待するよ?」
ヨハネ「行く!」
希「うふ、素直でよろしい」
34:
ヨハネ「美味しかったぁ」
希「せやねー」
ヨハネ「こんな素敵な料亭が無料なんて、旅人さんてホントにラッキーなのね」
希「せやろー」
ヨハネ「ねえ、旅人さんは、本当は何をしている人なの?」
希「言った通りだよ。ここには人探しで来とるん」
ヨハネ「でも、さっき見た旅人さんの宿のお部屋……なんだか……」
希「あー……まあ、御札やら縄やら塩やら飾ったり置いたり貼ったりしてたんは、念の為かな」
ヨハネ「前に悪霊祓いって言ってたけど……」
希「うーん、あの時は冗談ってことで流そうと思っとったんやけどねえ……」
希「ウチはね、人に迷惑をかける悪いもの……悪霊を祓うお仕事をしとるんよ」
35:
ヨハネ「本当に悪霊祓いだったの……」
ヨハネ「あ、それならやっぱりヨハネも狙われちゃってる!?」
希「無い無い。ウチが浄化させるんは悪ぅい邪気やから」
希「ヨハネちゃんみたいなええ子は管轄外だよ」
ヨハネ「安心したわぁ、こんなところでヨハネの堕天使としての身分が剥奪されるなんて許されないわよ!」
希「ちなみに堕天使の身分が消えたらどうなるん? 庶民に戻るの?」
ヨハネ「次は冥王あたりに転生するのよっ! それか、妖魔の類に生まれ変わるのも素敵だわぁ」
ヨハネ「そこでも新たなリトルデーモン集めに勤しむんだから♪」
希「どうしてそう悪趣味なモノ好きになっちゃったんやろねえ……まったく、可愛い子やわ」
36:
ヨハネ「悪霊祓いって、怪我とかしちゃう危険なお仕事なのね?」
希「ヨハネちゃんは割と簡単に悪霊祓いの現実を受け入れてくれるんやね」
ヨハネ「だってヨハネのような堕天使が存在するんだから、悪魔みたいな存在も当然いなくちゃいけないわ!」
希(その前向きな姿勢がどうしてイタイ方向に突っ走ってしまったのやら)
ヨハネ「悪霊を祓わないとどうなるの?」
希「そうやねえ……基本的には、その地域の人たちに迷惑がかかるかな」
希「最近この辺りでも良くないことが続いたんやろ? それって大体悪霊の仕業なん」
ヨハネ「イケナイ悪霊ね! 流石悪の名を冠する存在! この堕天使が成敗しちゃう!」
希「場合によると、大量の死人が出る」
ヨハネ「…………人が、死んじゃうの?」
希「そうならへんようウチら悪霊祓いが頑張っとるんよ」
希「せやからヨハネちゃんは心配せんと、今目の前にあるやるべきことを頑張るんやで?」
ヨハネ「うん……はい……」
37:
希「ごめんね、変な話聞かせて。言うべきやなかったね」
ヨハネ「そんなことないわ。話を聞けて良かった!」
希「そう? 怖くない?」
ヨハネ「もし仮に悪霊がやってきたって、堕天使のヨハネのチャームでリトルデーモンにしてあげちゃう♪」
希「いいねえ、その意気が大事なん。ヨハネちゃんみたいな子には、そうやって前向きに生きて欲しいな」
ヨハネ「勿論よ! 毎日不幸なことが重なったって、ヨハネは負けないんだから!」
希「そうやね。さあて、そろそろ帰ろか」
ヨハネ「今日も御馳走様でした! 最近美味しいものばかり食べさせてもらって、し・あ・わ・せ★」
希「不幸属性持ちなんやから、ラッキーなウチと一緒にいる時くらい良い事ないとね」
ヨハネ「きゃっ! 風で飛んできたチラシに足を取られて転びそうになっちゃった」
希「ウチと一緒におっても不運は続くんやねえ……」
38:
―――
ギェピィィィィィィ
希(うーん……邪気を祓うのは順調なんやけど)
希(どうにも敵方の親玉に近付いてる気がせえへんなあ)
希(今までの悪霊の傾向からして、地元民の中に潜伏しとるんやろうけど)
希(だとしても、ここまで大事を引き起こす元凶ならそれなりの邪気を発しとるはず)
希(なのにどこ探してもその気配すら感じられへん……読み違い? なにか見落としとる?)
希(奥の手まで使いたくはないんやけど……むむむ…………)
ヨハネ「あ、旅人さん! 今日もお仕事?」
希「ああ、ヨハネちゃんやん。ちょうど終わったところだよ」
希(ホンマよく会うなあ。内心この子と会いたいって思う気持ちをラッキーパワーで引き寄せとるんかな?)
希(ちょっとおかしな子やけど、この子話してると、悪霊払いで荒んだ精神が穏やかになってくるんよねえ……)
39:
希「ヨハネちゃん、今日は何の帰り?」
ヨハネ「今日は歌とダンスの練習の帰りよ!」
希「そっか、スクールアイドルなんだもんね」
ヨハネ「堕天使とはいえ、今は目の前のやるべきことを頑張らないと!」
希「……うん、そやねえ。そうやって頑張るんが、ヨハネちゃんにとって大事なことに繋がるんよ……」
希「よし! 頑張るヨハネちゃんに今日も美味しいものを奢ってあげよう!」
ヨハネ「ホントに!?」
希「昼に人助けしたお爺さんがレストランのオーナーらしくて招待してもらったんよ。ヨハネちゃんも一緒に行こっ!」
ヨハネ「いやぁん、素敵なラッキーねっ♪ 今日も不幸の連続を耐え抜いた甲斐があったわぁ」
希「まーたアンラッキーな目に遭ってしもたん? 相変わらず可哀想な子やなあ」
40:
ヨハネ「…………でねっ!? その勢いで曲がり角から出たら、目の前を車が猛スピードで通り過ぎたのよ!」
希「それホンマに危ないヤツやん……不運の一言で片づけてええんやろか」
ヨハネ「事故には遭わなかったけど、車のタイヤが小石を弾いて、それが眉間に当たったの! 痛かったわぁ」
希「だから眉間がピンポイントで赤くなってたんやね。お化粧のセンスまで斜め上なのかと思ってたよ」
ヨハネ「あとは、木の下を通れば木の実が頭に落ちてくるし、お気に入りの飲み物は売り切れだし」
ヨハネ「それにね、野球部の子が打った硬球が頭のすぐ横を通って、すごぉくビックリしたんだからっ!」
希「合間合間に笑えんレベルの不幸エピソード挟むのやめてえな……」
希(思ったけど、この子の不運の度合い、ちょーっと行き過ぎやない?)
希(まさかとは思うけど……普通は近付けば邪気の気配がわかるから、もしそうなら気付いとるはずやし……)
希(一応、試しとく……?)
41:
希「ね、ヨハネちゃん、ちょっとコレ持ってくれへん?」
ヨハネ「え? 御札? どうして?」
希「ヨハネちゃんの悪の力を計ってみようかなー、みたいな」
ヨハネ「計れるのっ!? ああぁはあぁ、ヨハネに秘められし悪魔ガールパゥワーが遂に公の下に晒されてしまうのね!?」
希「まあ面白半分ってくらいの気持ちでやってみてよ」
ヨハネ「勿論っ! いくわよぉ……えぇいっ!」
希「いくら力んでも結果は変わらへんけどねえ」
希(で、実際のところはどうなんかな……)
 ヒラ… ヒラ…
ヨハネ「ちょっとだけ御札が揺れてる……」
希(んー、邪気っぽいヤツに反応する御札やけど……仮に悪霊の親玉を宿してる子の反応にしては微弱やね)
希(この程度なら、ホンマにただ不運な子ってだけかな?)
ヨハネ「旅人さん、これってどのくらいの悪魔ガールパゥワーなの?」
希「まあ、普通の人なら微塵も揺れないからねえ」
ヨハネ「と言うことは少しでも揺らすことのできたヨハネはやっぱり只者ではないね!? いやぁん、すぅてぇきぃ★」
希(只者レベルじゃない不幸属性ってことなんやけど……当人が幸せそうならええか)
42:
ヨハネ「今日は旅人さんのお陰でヨハネが特別だってことが改めて証明された素敵な日よ!」
ヨハネ「旅人さんと一緒にいると良い事ばっかり。流石はヨハネのラッキーガールねっ」
希「ウチのラッキーは超人並やでえ。アンラッキーなヨハネちゃんに分けてあげたいくらいだよ」
ヨハネ「ダメよ、ラッキーはちゃんと取っておくのよ?」
ヨハネ「旅人さんは大事なお仕事をしてるんだから、そのラッキーな力で世の中を幸せにしてあげてね♪」
希「……ホンマ、ええ子やねえ」
ヨハネ「旅人さんから貰ったハピネスを抱いて、明日からの不運にも負けずに頑張るわよぉ!」
希「不運なことには気を付けるんやでえ。ほなおやすみ、ヨハネちゃん」
ヨハネ「おやすみなさい旅人さん、良い夢見てね?」
希(不運な子かあ……ウチは昔から幸運属性やから、気持ちは汲んであげられへんからねえ)
希(……あ、とか思っとったら早財布拾ったわ。でもラッキーって貰う訳にいかへんし)
希「ってこれヨハネちゃんの財布やん!? おーいヨハネちゃーん! まーた不運発揮しとるよー!」
43:
―――
希「……………………」
ヨハネ「あら旅人さん! 今日も変装みたいなおかしな格好してるのね」
希「いやいやいやどー考えてもヨハネちゃんには負けるわ。なんなんその格好?」
ヨハネ「え? 普段の堕天使ルックよ?」
希「普通て……んなコルセットみたいな真っ黒なボンデージが?」
ヨハネ「普通よ?」
希「悪魔みたいな角生えたカチューシャも、悪魔みたいな尻尾も、悪魔みたいな羽根も? よく見たら首輪まで付けとるよ?」
ヨハネ「だからこそ普通の堕天使スタイルでしょう?」
希「完全に小悪魔娘のコスプレにしか見えへんけど……」
ヨハネ「失礼ねっ! どこからどう見てもセクシー悪魔ガールじゃないの! 可愛いでしょう?」
希(まあそこは否定出来ひん……ウチかて衣装でそういう格好したことあるし……)
希(せやけど肩と脇丸出しなのと、体のラインがバッチリ出る服を日常的にはとても着れへん……)
ヨハネ「んんー、生きてるって感じがするわぁ。やっぱりヨハネにはこの衣装ね♪」
希「ヨハネちゃんのこと侮ってたわ……」
44:
ヨハネ「ああぁ、衣装のせいか、何でもない晴天だけでも素晴らしく思えるわぁ」
ヨハネ「ダメよ太陽さん、そんなに見つめないで? ヨハネの肌が焦げちゃうもの」
希「…………」
ヨハネ「どうしたの旅人さん? ヨハネに見惚れちゃったの?」
希「隣にこんなんがおる現実にちょっとついてけなくてね……」
ヨハネ「遂にヨハネの魅力に堕ちちゃったかしら? 旅人さんもリトルデーモンになる?」
希「それはまた今度で……」
ヨハネ「今日は堕天使の正装で出たけど、みんなの視線を集めちゃって困っちゃうわぁ」
ヨハネ「やっぱりヨハネはイケナイ小悪魔さんなのね♪」
希「そらこんなコスプレ娘が普通に歩いとったらねえ」
45:
ヨハネ「でも良い事ばかりじゃないのよ? 不幸はいつでもヨハネのすぐ隣にいるの」
ヨハネ「今日は邪心に満ちた疎まれし雄たち五人から擦り寄られて、ヨハネを籠絡しようと誘惑してきたんだから!」
希「ただのナンパやん?」
ヨハネ「あのまま連れ去られてたらどうなっていたことか! はぁぁん、堕天使ヨハネ危機一髪よ!」
希「良くも悪くも目立つからねえ……そういえばウチも今日はよく声かけられたわ」
ヨハネ「まあっ! 旅人さんも悪の道に誘惑されちゃったのね? 気を引き締めないとダメよ?」
希「じゃなくて道聞かれまくったん。地元民やないけど、偶然聞かれた場所全部知ってたから助かったわ」
希「お礼にって全員から名産品やら何やら美味しいものたらふく貰っちゃった。ヨハネちゃんも食べる?」
ヨハネ「食べる! ああ、でもどうしてヨハネには不運な声しかかからなくて、旅人さんには幸運な声がかかるのぉ?」
希「今回ばかりはラッキー云々やのうて格好のせいやろ……」
46:
希「服装はアレやけど、髪はいつも通りなんやね」
ヨハネ「そうね、髪型はヨハネの拘りよっ」
希「可愛いよね、頭の右についてるお団子」
ヨハネ「ありがとぉ♪ 旅人さんも顔隠す帽子ばかりかぶってないで、色々お洒落しなきゃダメよ?」
希「前は色々アレンジやら何やらすることも多かったんやけどねー」
ヨハネ「そうなの? まるでスクールアイドルみたいね」
希「いいとこ突いとるわあ」
ヨハネ「ヨハネたちはスクールアイドルだから、髪型も可愛くしなくちゃいけないの」
ヨハネ「仲間のみんなも、髪の片側だけ三つ編みにしてリボン付けたり、ビックリするくらい綺麗な黒髪だったりね!」
希「頑張っとるんやねえ。そういえばウチの仲間にもオモロイ髪の子とかおったわ」
ヨハネ「へえ、どんな子?」
希「例えば、なんかこう、鶏冠としか言いようのない髪してる子とか」
ヨハネ「トサカ? 鳥なの?」
希「うーん、色々と惜しい」
ヨハネ「あっ、もしかして鳥とお話できるの!? さては使い魔ね!? いやぁん、憧れちゃう♪」
希「そういうんやないんやけどねえ」
47:
ヨハネ「ねえ旅人さん、前から聞きたかったことがあるの」
希「どうしたん?」
ヨハネ「旅人さん、本当は悪霊祓いの人なんだから、実は凄い力とかあるんじゃない?」
希「んーどうだかねえ。ヨハネちゃんが好きそうなことはなさそうやけど」
ヨハネ「えぇー? つまらないわぁ。なにかこう、堕天使的なパワーとかは?」
希「強いて言えば、こういうわかりやすいものがウチの力かな」
ヨハネ「御札?」
希「一応ウチの力が篭った特別製なんよ」
ヨハネ「御札を使えば神や悪魔を召喚できるのね!?」
希「無理無理。悪霊の邪気を封印するだけの限定された力やから」
ヨハネ「ふぅん。悪霊祓いも割と不便なのね」
希「便宜性求めてやってるわけやないからねえ」
48:
ヨハネ「ねえ、何か旅人さんの奥の手とかないの?」
希「奥の手かあ……これかな?」
ヨハネ「なぁにそれ? ボロボロの木の棒?」
希「これは元は大幣だったん」
ヨハネ「オオヌサ?」
希「ほら、神主さんがお祓いとかで振る、白い紙が付いた棒があるやろ?」
ヨハネ「あ、見たことわるわ。でもこんなにボロボロになっちゃってる」
希「今までのお仕事で大活躍やったからね、あと一回使えるかどうかって感じかな」
ヨハネ「それを使えば今度こそ神や悪魔がっ」
希「無い無い」
ヨハネ「しょんぼり……」
希「せいぜい邪気を現世に留めるくらいしか出来ひんよ。ま、御札以外の念の為って感じかな」
ヨハネ「それだけで本当に悪霊なんて祓えるの?」
希「基本的にはウチの力で祓ってるからねえ。道具が大事ってわけでもないんよ」
ヨハネ「じゃあ旅人さんが人外な力の持ち主ってことなのね!?」
ヨハネ「わぁぁ、ヨハネったら今、人の理を超えし存在と一緒にいるんだわ……カ・ン・ゲ・キ★」
希「ヨハネちゃんはウチを一体何者にしたいん……?」
49:
ヨハネ「うーん……色々お話を聞いてると、悪霊祓いって言っても結構普通なのね?」
希「あんまり面白そうやないでしょ」
ヨハネ「けど、特別な力を使えるっていうのはやっぱり素敵よ! ヨハネが応援しちゃう♪」
希「ありがとなあ。ウチもヨハネちゃんのこと応援しとるよ」
ヨハネ「頑張って堕天使としての魅力を世界中に伝えるわ!」
希「そっちの応援やなくて、スクールアイドルの方だよ」
ヨハネ「あら、そっちね。勿論スクールアイドルも頑張るわよ! 今一番頑張ってることだもの!」
希「調子はどんな感じ?」
ヨハネ「絶好調よ! 練習も上手くいってるし、上達してる実感もあるわ!」
ヨハネ「それに、みんなと一緒に一つのことを頑張っていることが本っ当に楽しいの!」
希「わかるわあ。毎日が宝物みたいにキラキラ輝いとるやろ」
ヨハネ「正にその通り! はっ、旅人さんったら、密かにエスパーの力でヨハネの心を覗いたのね!?」
希「ちゃうちゃう。ヨハネちゃんの気持ちはよーくわかるってだけだよ」
ヨハネ「ふぅん? まるで経験してきたような言い草ね」
希「うふ、そうかもしれへんねー」
50:
ヨハネ「なんだかね、旅人さんとは不思議な繋がりを感じることがあるのよ」
希「へえ? どんな?」
ヨハネ「ヨハネは絶世の不運持ちだけど、旅人さんは絶世の幸運持ちでしょう?」
希「正反対ではあるけど、運に対して一方向に突出してる意味では同じやね」
ヨハネ「あとはヨハネのことを旅人さんはよぅく理解してくれてる気がするの」
希「うーん、そうかもね。色々と共感や同情しちゃうところはあるかな」
ヨハネ「でしょう? きっとこの出会いは偶然じゃなくて、天が示した運命なのよ!」
希「一大スペクタクルやん。ウチらが出合ったら凄いことでも起こるんかな?」
ヨハネ「堕天使と悪霊祓いが出会ったのよ? もうとっくに大事件よ!」
希「ま、言われてみればそうかも」
ヨハネ「でしょっ!?」
希「それでもいつか、ウチはここを離れなきゃいけないんやけどね」
ヨハネ「……そうね。せっかく仲良くなれたのに、残念だわぁ」
51:
希「大丈夫だよ。ウチとヨハネちゃんには不思議な繋がりがあるんやろ?」
ヨハネ「そうだけど……」
希「信じていればまたどこかで会えるって。そういう運命を信じよ?」
ヨハネ「ヨハネは不幸の下に生まれてきたからとてもそうは思えないわぁ」
希「そこは同意して感動シーンの流れやないんか……変なとこでドライやなこの子」
ヨハネ「いいのよ。堕天使と悪霊祓いの遭遇っていう奇跡の体験をしている、この瞬間を大切にしていくの!」
ヨハネ「だから今日は思いきり遊びましょ、旅人さん♪」
希「そうやねえ……連れの格好が小悪魔ルックやなかったら、諸手上げて賛同するんやけどねえ……」
ヨハネ「細かい事はいいのっ! さ、早く早く!」
希「おっとぉ! せっかちやなあ」
希(まったく……可愛い子やわ。ホンマに、ね)
52:
後編へ
60:
―――
ア"ア"ア"ア"ア"……
希(危なかった……もう少しで悪霊取り逃すところやった)
希(この先は近隣で一番の邪気が篭ってる山やから、逃げ込まれると厄介やったわ)
希(御札貼って邪気祓うにも範囲が広いし……これからは極力悪霊を山に近付けないよう注意するしかないかな)
希(大丈夫、強い邪気を発する悪霊から片づけてるから、後は力の弱い悪霊が僅かに残るだけ)
希(順調にいけばこの地域の浄化もそろそろお終いや)
希(あと憑りつかれとる子の名前はどこやったかな……そうそう、この子や)
希(どこに住んでるか例の如く知らんし、またヨハネちゃんに会ったらこの子の住所とか教えて貰おっと)
希(上手くいけば次あたりで終わって、ヨハネちゃんの住む街の平和も守れるでえ)
希(……未だに元凶となる悪霊の親玉がどこにおるのかわからないのが、不安やけどね……)
61:
希「うん。もうね、そこらへんに繰り出せば当然のように会うと思っとったわ」
ヨハネ「旅人さん! 今日は随分賑やかな場所で会ったわね」
希「ヨハネちゃんはこういう繁華街によく来るん?」
ヨハネ「ここはこの辺りで一番賑やかな場所だもの、ヨハネのような可憐な美少女が出向くのは当然よ♪」
希「女の子はこういう華やかなとこ好きやもんねえ」
ヨハネ「あら、旅人さんだって女の子じゃない。他人事みたいに言ったらダ・メ★」
希「ウチみたいなアウトローな生活しとると、こういうオシャンティな場所からは距離取りがちになってまうんよ」
ヨハネ「あ、その気持ちはわかるわぁ」
ヨハネ「闇に片足を踏み入れ堕天してしまったこの身には、世俗の喧騒は毒になってしまうの」
希「ヨハネちゃんはウチとは違う意味でアウトローやな……」
ヨハネ「けれど大衆が集まる場所からはいつも聞こえるのよ……堕天使ヨハネの降臨を熱望する絶叫が!」
ヨハネ「だから今日も雑多な人波に耐えながらこの地に足を運ぶの! 光と音のシャワーに誘われるままっ!」
希「要はまだ繁華街に慣れてへんからビビりながら歩き回る言うこと?」
ヨハネ「旅人さんの地球語よくわからないわぁ」
62:
ヨハネ「今日はここでお仕事なの?」
希「仕事はもう終わり。こういう場所来たらヨハネちゃんおるかなーって思ってね」
ヨハネ「まぁっ、ヨハネの為にきたの? 嬉しいわ♪」
ヨハネ「じゃあ今日も一緒に遊びましょっ」
希「ええけど、ヨハネちゃんは一人でここに来たん?」
ヨハネ「本当はスクールアイドル仲間の子たちと来る予定だったんだけど、みんなドタキャンしちゃったの」
ヨハネ「酷いでしょう!? ずーっと前から楽しみにしてたのに……ああ、不運だわぁ」
希「それは可哀想に。なら、ウチでいいならご一緒するよ」
ヨハネ「ホントっ!? わぁ、やっぱり旅人さんはヨハネのラッキーガールねっ」
ヨハネ「やっぱりこのままヨハネのリトルデーモンにならない? 旅人さんなら特別会員にしてあげてもいいわよ?」
希「興味はあるけどそのうちってことでね」
63:
希「じゃ、適当にその辺りにでも、」
 ガシャンッ
「キャアァ!」
希「!?」
ヨハネ「悲鳴だわ!?」
希「一体どうしたん……?」
ヨハネ「あっ、見て。あそこの街灯、ライトの部分が取れて落ちたみたい」
希「経年劣化かな……人混みの多い道やから、一歩間違ったら怪我人が出るとこやったね」
ヨハネ「まったく、ポールライトって名前なんだから、ポールとライトが離れちゃったら意味ないじゃない!」
ヨハネ「そんなの堕天使ヨハネが堕天使とヨハネに別れるようなものよ!」
希「ユニークなツッコミの仕方するね」
ヨハネ「でも怪我人がいないならいいわ。いつもならああいう事故が起きるとヨハネが怪我してただけどっ」
希「哀愁漂うセリフやなあ……」
64:
希「壊れた街灯はお役所さんとかが処理してくれるやろうし、気ぃ取り直して、」
 ガシャン! ガシャン! ガシャン!
ヨハナ「きゃっ!? またあっちでライトが落ちたわ!」
希「また……? こんな立ち続けにって、おかしいやろ……」
ヨハネ「みんな大丈夫かしら、怪我してない?」
希(なんや……嫌な予感が…………いや、予感やない。これは……気配?)
希(薄らとやけど邪気を感じる……人混みに紛れとったからなのか、集中せんと気付けなかった)
希(もし悪霊の仕業言うんなら、ホンマに気ぃ付けへんと)
希(特にヨハネちゃんはただでさえ不幸属性の持ち主なんやから……なんて、ね。流石に関係ないかな)
希「ヨハネちゃん、ちょっと場所移して……」
希(あ)
ヨハネ「うん?」
希(ここにも街灯がある! しかもこの位置だと、ヨハネちゃんに、)
 グラッ
希「!? 危ないっ!」
ヨハネ「きゃっ!?」
 ガシャンッ!
65:
希「…………危なかった」
ヨハネ「あ……また、ライトが落ちて……」
希(ホンマにヨハネちゃんは不運を引き寄せるんか……ウチが気付かんかったら脳天直撃してたわ)
希(にしても、ここまで連続して公共物が破損するなんて普通やないね)
希(邪気も段々強まってきた……間違いない。これは完全に悪霊の仕業や)
希「ヨハネちゃん、何か気味悪いから、街灯避けるためにあっちのビルの陰まで避難しとこか」
ヨハネ「うん……なんだか不思議ね? まるで悪魔の力が働いてるみたい」
希(その読み当たっとるんよ……わっ!?)
ヨハネ「ひゃっ!? どうしたの?」
希「ごめんね、ちょっと転びそうになったわ。ヨハネちゃんの服引っ張っちゃったね、皺になってない?」
ヨハネ「大丈夫よ。でも転びそうだなんて、まるでヨハネみたいなことに
 ドンッッッ!!!
ヨハネ「…………え?」
66:
希「…………うわ」
ヨハネ「ナニコレ……看板? 急に地面に生えてきたわ、びっくり」
希「ちゃう、上から落ちて地面に刺さったんや……」
希(……うん。看板、や。避難しようとしたビルに掛かってたでっかい看板が、目の前に降って来た)
希(っていうか、これ、もしウチがヨハネちゃんの服引っ張らずにそのまま歩いとったら、完全に……)
ヨハネ「危なぁい! もうちょっとでヨハネの小さくてプリティな頭が看板に潰されちゃうところだったわよ!」
希(……そうや……本人は軽く言うとるけど、こんな大きな看板が落ちてきたらホンマにヨハネちゃん潰されてた)
希(いつも聞いてる不幸話とは程度が違う。シャレにならへん)
希(ウチが偶然転びそうにならへんかったら……いや、むしろウチのラッキーがあったから回避できた?)
希(ウチの幸運は本物や。せやからヨハネちゃんの不運を上書きできたんか……?)
希「ヨハネちゃん。ウチの側から離れんようにしてな」
ヨハネ「え、うん……」
希「もしかしたらウチの出番かもしれへん。ただ、今ヨハネちゃんと離れるのは良くないかも」
希「せやからちょーっと怖いかもしれへんけど、ウチの側から離れんようにね」
67:
「うわあああっ!」
「街灯だけじゃなくて看板まで……!」
「気味悪い……! 逃げないと……!」
希(立て続けに不可解なことが起きて人だかりがパニックになりかけとる……)
ヨハネ「ねえ旅人さん、ヨハネたちも逃げたほうがいいんじゃない?」
希「せやね……除霊するにしても、こう大勢の人が入り乱れてるとそれだけでも危険やし」
希「一旦街灯の無い方に行こか。ヨハネちゃん、ウチの手離したらあかんよ」
ヨハネ「わ、わかったわ」
 パリン! パリン! パリン!
ヨハネ「きゃあぁっ!」
希(今度は街灯のガラスが破裂した……! しかもこれ、完全にウチらのこと追ってきとるやん)
ヨハネ「どうしよう旅人さんっ、やっぱり世界中の不運はこの薄幸の美少女ヨハネに纏わりついてくるのよ!」
希「これはホンマにそういうことかもしれんね……ヨハネちゃん急ぐよ!」
68:
 ガシャガシャァッ!
希(ビルの陰に逃げたら今度はビルの窓ガラスが割れるんか……っ!)
希「ヨハネちゃん伏せて!」
ヨハネ「いやあああ!」
希「……大丈夫、降ってきたガラスは刺さってへんから。ビルはあかん、行くよ!」
 グラァ ドンッ
希「っと、次は街路樹が倒れよった……!」
ヨハネ「ねえ、まるでこれ、ヨハネたちを逃がさないって道を塞ぐようじゃない!?」
希「そういう意思を感じるね」
希(全体的にヨハネちゃんに引き寄せられるような動きやん)
希(マズいわあ……尋常じゃない不運が悪霊の力にまで及ぶなんて、突飛な考えやと思っとったけど)
希(ここまで来ると、ヨハネちゃんの不運に邪気が引き寄せられとるのは間違いない)
希(悪霊何とかしつつ、ヨハネちゃんも守らな!)
69:
 バリンッ!
「きゃあああ!」
「いやあああ!」
希「あかん、このままじゃ市民に被害が出る……!」
希「ヨハネちゃんついてきて! そこら中片っ端に御札貼って回るから!」
ヨハネ「御札でなんとかなるの?」
希「この異常事態は悪霊が引き起こしとる。せやからウチの御札でなんとかなるはずや」
ヨハネ「だったらヨハネも一緒に貼るわ! 二手に別れましょ!」
希「いや、ウチと離れたらヨハネちゃんが、」
ヨハネ「だぁいじょうぶ! ヨハネは不幸なことに慣れてるもの、これくらい日常茶飯事よ?」
希「普段どんだけ危ない生活送っとるん……?」
ヨハネ「それより急がないとダメでしょ? 人手は多い方がいいんだから、さ、御札ちょうだい!」
希「せやけど……!」
ヨハネ「もうっ、旅人さんの役目はなぁに!? 一人だけ助けたらそれでいいの!?」
希「……じゃあこれ! この御守り渡すから、これだけは絶対手離さんといてな!」
ヨハネ「わあ、綺麗な御守り……! うんっ、わかったわ!」
70:
希「悪霊はそれぞれ特定の悪事しか引き起こせないのが普通なん」
希「前にボヤ騒ぎが続いたとか、昏倒騒ぎが続いたとか、決まった悪事が続く感じにね」
希「今繁華街で暴れとるんは、『落ちる』いうことに関係した悪事を引き起こしとる」
ヨハネ「ランプとか、看板とか、割れたガラスとかが落ちるってことね!」
希「せやから街灯やら街路樹やら建物やら、高さがあって上から物が落ちてくる危険性のあるものに御札を貼ってな」
ヨハネ「わかったわ!」
希「ウチはこの通りを右側から行くから、ヨハネちゃんは左側をお願い」
希「くれぐれも自分の頭上に気を付けて! ヨハネちゃんはタダでさえバッドラックガールなんやから」
ヨハネ「平気よっ! 今はマイラッキーガールの旅人さんと一緒だもの」
ヨハネ「それに、この御守りも貰っちゃったし!」
希「それは特別製なんやから貸しただけ! 後で返してよ!」
ヨハネ「えぇー、貰っちゃダメなのぉ?」
希「ほらふざけてないで、行くよヨハネちゃん!」
ヨハネ「仕方ないわぁ……この堕天使のヨハネが、街のみんなを守ってあげちゃうんだから?」
71:
「きゃー!」
希「みんな焦らないで! あっちに逃げてください! あっちはもう安全ですから!」
「あっち!? どっち!?」
希「あっち! ここから先はもう安全やから! 冷静に! でも急いで!」
 ペタペタ
ヨハネ(この御札凄ぉい……街中の色々なものが落ちたり割れたりしてたのに、貼ったら本当に治まっちゃう)
ヨハネ(それにこんなパニック状態なのに、旅人さんは落ち着いてみんなの避難誘導までしてあげてる)
ヨハネ(やっぱり悪霊祓いって凄いのねぇ……この堕天使のヨハネも感心しちゃう♪)
 ドンッ!
ヨハネ「わっ!?」
ヨハネ(……危なぁい。また看板に潰されちゃうところだったわぁ)
ヨハネ(だぁけぇどぉ、大丈夫よ★ 今は旅人さんの御守りが付いてるものっ)
ヨハネ(この調子で御札貼っていって、堕天使にして救いの女神にランクアップしちゃうんだから♪)
72:
「うえぇぇぇぇん!」
ヨハネ(誰か、泣いてる……?)
ヨハネ(あっ! 大変! ちっちゃな子が倒れた木の下敷きになってるわ!)
ヨハネ「大丈夫!? 挟まれて出られないの?」
「でれないぃぃぃ!」
ヨハネ「待ってて、すぐに出して、」
 ガゴンッ
ヨハネ「!? どこっ!? 何の音っ!?」
ヨハネ(……『落ちる』! 頭上!)
ヨハネ(……あれは……ビルの高い所にある看板が取れかけてる)
ヨハネ(え……待って、この場所……このままじゃこの子の上に落ちちゃう!)
ヨハネ「ダメえぇぇぇぇ!」
ヨハネ「御札……! 間に合って……っ!」
73:
 バシッ! ジョワァァァァ……
ヨハネ「はぁっ、はぁっ……!」
ヨハネ(……看板、落ちてこない……よかった、御札が間に合ったのね)
ヨハネ「はぁっ……!?」
 グラァ…… グラァ……
ヨハネ(外れかけた看板が揺れてる……今にも落ちそうよ……!)
「うわあぁぁぁぁん!」
ヨハネ「っ……待ってて! 木をどかすから!」
ヨハネ「……っ……お、もい……!」
ヨハネ(ダメ……一人じゃ持ち上げられない……でももうみんな逃げちゃって誰もいない……!)
ヨハネ(このままじゃ看板がこの子に落ちてきちゃう……どうしよう……!)
ヨハネ「……………………そうよ」
ヨハネ(ヨハネなら……この子を……)
ヨハネ「……ね、あなた。コレを持ってて? 離しちゃダメよ?」
「うぇぇ……なにコレぇ……」
ヨハネ「とっておきの御守りよ。これがあれば、危ないことはなぁんにも無いんだから」
ヨハネ「それにね……世の中の不運なことはぜぇんぶ、この堕天使のヨハネが引き受けてあげる!」
74:
ヨハネ(よぅし…………この辺かしら……もっとこっち…………?)
 グラッ グラッ
ヨハネ(うん……ここなら、看板が落ちてもあの子に危険は無いはずよ)
ヨハネ(大丈夫、あんなに激しく揺れてるんだから、看板が外れるタイミング次第で落ちる場所は大きく変わるわ)
ヨハネ(ヨハネが子供から離れた場所に立っていれば、きっとこっちに落ちてくるはず)
ヨハネ(だってヨハネは、余りの美貌の持ち主に生まれて神様に嫉妬された、不運の美少女なんだから……!)
 グラァッ グラァッ
ヨハネ「…………っ」
「おねぇちゃぁん……」
ヨハネ「! …………大丈夫よ? 心配しないで?」
ヨハネ「あなたのことは、このヨハネが、絶対に守ってあげるんだから♪」
 ガコンッ
75:
希「そのヨハネちゃんを守ってあげるんは誰かなあああああ!?」
ヨハネ「うひゃあっ!?」
 ドンッッッ!!!
希「…………ふう。テンプレ通りの間一髪やわ」
ヨハネ「いたたた……あらっ、旅人さん?」
希「あらっ、じゃないやん! 御守りは手離さんようにって言うたやろ!?」
ヨハネ「ごめんなさい。でもあの子を守る為に仕方なかったのよ?」
希「……ま、そうみたいやね。落ちた看板は案の定ヨハネちゃんの方に、か」
ヨハネ「当然よっ!」
希「威張ることなん?」
「ふえぇぇぇぇぇぇ!」
ヨハネ「はぁい、もう平気よ? 今助けてあげるわ。旅人さん、木をどかすの手伝ってくれる?」
希「ええよ。せーのっ」
 ズズズ
ヨハネ「うんっ、よく頑張ったわね、偉いわぁ。怪我は無い?」
「へいき……うぇぇぇ……」
76:
ヨハネ「ほら、泣いちゃダメよ? あなたのことはヨハネが守ってあげるって言ったでしょ?」
「…………うん……」
ヨハネ「ね? 言った通り、今はもう安全なんだから。怖いことなんてどこかに行っちゃったわ」
「……うんっ!」
ヨハネ「はぁい、良い笑顔ね♪ これからも大変なことがあっても、負けちゃダメよ? ヨハネとの約束なんだから」
「わかった。おねえちゃん、これありがとっ!」
ヨハネ「御守り、効果あったでしょ?」
「あった! でもおねえちゃんのほうがもっとあった!」
ヨハネ「あはっ♪ その通りよぉ。はい、じゃああっちの方から回って、お家に帰るのよ?」
「うん! ばいばい!」
ヨハネ「じゃあねっ」
希「……やるやん。身の安全だけやなくて、あの子の笑顔まで守ったね」
ヨハネ「勿論よ! だってヨハネはスクールアイドル、みんなを笑顔にするのが役目なのよ♪」
希「…………せやね。その通りや!」
77:
希「辺り一帯に御札は貼り尽くしたから、もう大丈夫なはずだよ」
ヨハネ「街の人もみんな避難したみたいだし、怪我人も見えないし……よかったわぁ」
希「これもヨハネちゃんが手伝ってくれたお陰やね、助かっ、」
 ゾワワワワワワワワ
希「……? なんか、空気が……」
ヨハネ「はぁぁん! 良い事して気分が良くて、胸が軽くなって、まるで本当に体が浮かんでるような気分だわぁ」
希「またそんなこと……え? は? ホンマにヨハネちゃん浮いとるんやけど!?」
ヨハネ「あら本当、足が地面に付かない! 勝手に体がフワフワ浮いてるわ! きっと天が祝福してくれてるのよ!」
ヨハネ「神様に見初められてこぉんな祝福してもらえるなんて、ホンット奇跡の存在ね♪」
希「っていうかヨハネちゃんの背中から羽生えとるんやけど! 絶対それのせいやん!」
ヨハネ「え? ……わぁお♪ ヨハネったら、本当に黒い羽が生えちゃった!」
ヨハネ「やぁん? 遂に本物の堕天使として覚醒しちゃったのねぇ?」
希「んなこと言うとる場合やあらへんからー!」
78:
『スキヲミセタナ アクリョウバライ』
希「え? ヨハネちゃん何か言った?」
ヨハネ「ヨハネはこんな野太いデスボイスじゃないわよっ!」
ヨハネ「ほら、ちゃんと聞いて? 誰もが聞き惚れちゃう甘ロリボイスよ♪」
希「そういうの自分で言える胆力は尊敬するわ……じゃあ今のは誰なん?」
『フダヲ ツカイスギタナ アクリョウバライ』
希「やっぱりヨハネちゃんの方から聞こえる……ってどこまで浮かぶつもりなん!? 早よ下りな!」
ヨハネ「せっかく黒曜の翼が生えたのに、ヨハネの力じゃ制御できないみたいなの。残念だわぁ」
『ムスメハ ヤドヌシトシテ モラッテイクゾ』
希「宿主て……いやまあ、こんなアホなこと出来るんは悪霊の仕業やてわかってはいたけど」
希「でもこの前チェックした時、ヨハネちゃんの中に悪霊はいなかったはずやん……!」
80:
『オノレノフシアナヲ ナゲクガヨイ アクリョウバライ』
ヨハネ「きゃー! どこまでも飛んでいくわぁ! このまま天上の世界まで招かれるのかしら?」
希「ってこらどこ行くねーん!」
ヨハネ「いやぁん下りられなぁい! 旅人さぁん!」
希「ヨハネちゃーん! …………うわ、どっか行ってもうた……」
希(っていうかこれホンマにマズイんと違う? 悪霊に連れ去られたで?)
希(どないせよ。なんとかせな。このまま放っといたらヨハネちゃんに取り返しのつかないこと起こるわ)
希(考えるんや……ヨハネちゃん、どこに連れ去られてしもたん)
希(さっきのは一体何者で、なにをするつもりで、どこに向かったんや)
希(ウチが助けなきゃヨハネちゃん大変な目に遭ってまうんやからしっかりせな……!)
希(考えろー考えろー考えろー……………………ん?)
希「そうかっ!」
81:
―――
ヨハネ「……あら? 降りるのはここでいいの? 地元の山の上じゃない」
『ココハ ジャキノタマル アクリョウノ セイチダ』
ヨハネ「聖地って響きは良いけど、見慣れた地元の山じゃつまらないわぁ」
ヨハネ「もっと天界や地獄みたいな堕天使に相応しいところに連れてってくれると思ってたのにぃ」
『イマカラ ヤドヌシトシテ ソノカラダヲ ウバウ』
ヨハネ「体を奪うの? ダメよ! ヨハネは今スクールアイドルとして一生懸命練習してるんだから!」
ヨハネ「この体は歌って踊る為に必要なの! 今ヨハネがいなくなったら仲間のみんなが困るでしょ!?」
『ゴタクハイイ サッサトヨコスノダ ムスメ』
ヨハネ「っ……! ぁ…………んぅっ…………っ!」
『ヤドヌシノカラダ イタダクゾ』
82:
希「そうはさせへんでー!」
『ナニ ……』
ヨハネ「ぷはぁ……っ……はぁっ、はぁっ」
希「おおー、困った子の前に颯爽と駆けつけるなんて、まるでウチ正義の味方みたいやね」
『ナゼ ココガワカッタ アクリョウバライ』
希「ウチを誰だと思っとるん? 泣く悪霊も黙る悪霊祓いやで?」
希「ここら辺で一番邪気の集まる場所くらいウチが知らんはずないやん!」
ヨハネ「……っ……旅人さん、来てくれたのね……っ!」
希「そらそうや。ウチは正義の味方やないけど、必要な時に表れるんが悪霊祓いの務めやからね!」
『ムスメノ ジャキニキヅカヌ アクリョウバライガ キイテアキレル』
希「そうやねえ……完全に騙されてたわ」
希「まさかヨハネちゃんの不幸属性を隠れ蓑にして、その実密かに邪気の力を溜めてたとは」
希「悪霊にしては計画的やん。なあ、悪霊の親玉さん?」
83:
ヨハネ「ヨハネを隠れ蓑にってどういうことなの? 堕天使として備えられていた不運な天命が関係していたのっ!?」
ヨハネ「ああっ、ヨハネは本っ当に罪な美少女なのねっ……!」
希「大体あってるけどなんか違う……まあつまり、ヨハネちゃんは悪霊に良いように使われてしもたんよ」
希「なあ親玉さん。あんたの正体、言うならば……例えは悪いけど、エイズウイルスみたいなもんやろ」
『ニンゲンノ カンガエデハ テキセツナ ニンシキダ アクリョウバライ』
ヨハネ「ええっ!? ヨハネってばエイズに罹ってたの!? 心当たりなんてないのに!」
ヨハネ「はっ!? まさか、これがかの有名な、処女懐胎っ!? いやぁん///」
希「ヨハネを名乗るだけあってその手の知識は豊富なんやね……ごめんごめん、例えがアレだったかな」
希「つまりね、ヨハネちゃんに憑りついた親玉さんは、悪霊に対する潜在的な免疫力を低下させる力を持つんよ」
希「免疫力下げて憑りついた人のマイナスな力を引き出して、それを利用して悪事を働くわけ」
『ヨクゾミヤブッタ アクリョウバライ』
ヨハネ「マイナスな力?」
希「ヨハネちゃんで言うなら、生まれつきの不運のことやね。最近不運の度合いが強まってきてたんやろ?」
ヨハネ「そうよ、もう毎日大変だったんだから!」
希「生まれ持った不幸属性が親玉さんの邪気で助長された結果、エライ目に遭ってたんやねえ」
84:
希「別に親玉さんをエイズだって言ったんは嫌味とかじゃなくて、性質がそっくりなんよ」
希「例えばエイズがそれ単体で害を起こさないように、ヨハネちゃんに纏わりついた親玉さん自体はそう有害な悪事を引き起こしはしない」
希「せやから前にヨハネちゃんの中に邪気があるか御札で確認した時も、ほんの少ししか反応しなかったわけや」
ヨハネ「あれってヨハネの悪魔ガールパゥワーを計る為じゃなかったの!?」
希「ごめんね、実は違ったんよ」
ヨハネ「そんなぁ……ヨハネは特別な子じゃなかったなんてぇ……ガクリ」
希「まあそんなわけで、邪気は弱くても、悪霊としては厄介な存在やった」
希「潜伏しながら周囲に邪気を振り撒いて、新たに憑りつかれた人のマイナスな部分を助長する形で悪事に利用してたんやね」
希「そういう意味で、ヨハネちゃんに憑りついた親玉さんはこの地域における悪霊の大元、根源……正に親玉と言える存在やった」
ヨハネ「大物に目を付けられるあたり流石は堕天使のヨハネと言うべきね!」
希「悪霊が利用したくなるくらいの不運な子って意味やけどね……」
『イゴゴチノヨイ ヤドヌシデアッタゾ』
85:
希「てっきりラスボスイコール邪気が強いっていう思い込みがいけなかったわあ。お陰で今まで気付かんかった」
希「あと、悪霊に憑かれた子の名前は情報として知ってても、顔を知らなかったのがいけなかったかな」
希「ヨハネちゃん、か……そら本名やないとは思っとったけど、ちゃんと名前を聞いておけばよかったね」
ヨハネ「ほほほ本名!? そんなものないわよ!? ヨハネの名前はヨハネなんだからねっ!?」
希「うん、こういう性格も迷彩に拍車をかけたんよねえ……致し方無し」
『イマサラワカッテモ スデニオソイ アクリョウバライ』
希「表立って悪事働き始めたいうことは、もう潜伏期間は済んで力溜めちゃった感じかな?」
『ソレダケデハナイ オマエノフダモ スデニツキタ アクリョウバライ』
希「そやねえ、御札は使い果たして、確かに今は無防備かなー」
『サラニ ココハ ジャキノタマル アクノセイチダ』
希「ここにはなるべく近づけたくなかったんやけどねえ」
『コノジョウキョウデ ナニガデキルノダ アクリョウバライ』
希「じゃあ逆に聞くけど、親玉さんの力でウチに何を出来るん?」
『キサマニトリツキ アクノチカラヲ ハッキサセルノダ アクリョウバライ』
86:
希「まあね、親玉さんに憑りつかれたら、悪霊に対する免疫力を下げられるのは避けられないかな」
希「せやけどその後はなんやったっけ? ウチの中にある、マイナスの力を発揮させるって?」
『ソウシテ キサマノカラダモ ウバウノダ アクリョウバライ』
希「さあて……果たして上手くいくのかな?」
『ツヨガロウトモ イミハナイ アクリョウバライ』
『キサマデハ イマノワタシヲ トメルコトハデキナイ』
 ヴォォォォォォォン!
ヨハネ「きゃあああ! ヨハネの漆黒の翼が大きなモヤモヤになってくわ! こんな格好悪い翼なんてイヤぁ!」
希「凄い邪気やねえ……今まで隠れて力溜め込んだだけはあるんかな」
希「さ、じゃあそれで、ウチのこともヨハネちゃんみたいに取り込んでみたら?」
『ワタシノチカラデ ツツンデヤロウ アクリョウバライ』
 ゴオオオオオオオオ!
ヨハネ「わっ!? あっ、あっ…………旅人さあぁぁぁぁん!」
87:
 ヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォンヴォン
ヨハネ「やめてぇ……旅人さんが、邪気っぽい何かに食べられちゃうわよぅ……」
 ゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ
ヨハネ「…………た、旅人さぁん……返事してぇ……」
『………… ナゼダ』
ヨハネ「え?」
『ナゼ キサマヲ トリコメナイ アクリョウバライ』
希「そらウチの中にマイナスな邪気が存在せえへんからやろ」
ヨハネ「ええっ!? 旅人さん!? 平気なの!? 黒い靄が喋ってるみたいで気持ち悪いわよ!?」
希「失礼やな……まあでも平気だよ、湯気に包まれてるくらいの感覚やから」
『ジャキガ ソンザイシナイ ダト』
希「ね、ヨハネちゃん。ウチはさっき、親玉さんはヨハネちゃんの何の力を利用したって説明したか覚えとる?」
ヨハネ「え? ヨハネの、マイナスの力……不運なところ?」
希「そうそう、物覚えが良いね。じゃあヨハネちゃん、ウチは一体何ガール?」
ヨハネ「…………! 旅人さんはヨハネのラッキーガールよ!」
希「大正解!」
希「はてさて、天下のラッキーガールであるウチに、利用できるだけの邪気は存在するんかな?」
88:
『………… チカヨルナ アクリョウバライ』
希「無理無理。近づかへんと親玉さん浄化できひんもん」
『ヤメルノダ』
希「そう言われてやめる展開はどんなお話にもないやん?」
『ヤメロ』
希「長引かせるのもヨハネちゃんに悪いし、さっさと終わらせるね」
『ヤメ
希「ばいばーい」
 ジュオォォォォォォォォ
 ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!
希「はい、おしまい」
ヨハネ「やっと体が動くわぁ……あ! ヨハネの翼も消えちゃった! ちょっとだけ残念……」
希「それは諦めてね。ヨハネちゃんお疲れさま、もう大丈夫だよ」
ヨハネ「ええ! ありがとう旅人さん! 全然そんな気はしなかったけど絶体絶命を助けて貰った気がするわ!」
希「全然そんな風に思えへんかったやろうけど、ま、その通りやねえ」
89:
『マダダ』
 ズボォ!
ヨハネ「ひゃあっ!? なにっ!? 膝まで地面に埋まっちゃったわ!?」
希「親玉さんの声が……! 浄化したはずなのに……!」
『ワタシハ ジョウカサレタ モウ ショウメツスル』
『ダガ ソノマエニ ヤドヌシヲ ショウメツサセル』
希「宿主、て……ヨハネちゃんのこと!?」
ヨハネ「足が抜けないぃぃ! 旅人さん引っ張ってぇ!」
『ワタシノ チカラハ ≪おちる≫ ヲ ツカサドル チカラ』
『ヤドヌシヲ ソノチニ ≪おちる≫ サセタノダ』
希「こんなん落ちるやのうて埋まっとるやん! んー抜けへーん!」
ヨハネ「いたいいたいいたい! もっと優しく引っ張ってよぅ!」
90:
希「ん???! どんだけしっかり埋まっとるんや……!」
ヨハネ「あっ、旅人さん! 周りの木が!」
希「ん? 木?」
 ズボッ ズボッ フワァァァァァァァ
希「なんなん……? 周囲の大木が何本も地面から抜けて、浮いとる……?」
『ワタシノ ≪おちる≫ ノ チカラヲ サイゴニ アジアワセル』
希「いや、落ちるどころか木ぃ浮かんどるんやけど。むしろ超高で飛び上がってくんやけど?」
『≪おちる≫ マエ ニ タカク タカク モチアゲル ノダ』
希「落ちる前に……ん!? まさかっ!」
『≪おちる≫ ニ ツブ サレ キエル ガ ヨイ ヤド ヌシ』
希「あかん! ヨハネちゃんはよ地面から抜け出さな!」
ヨハネ「なに!? どういうこと!?」
希「親玉さん、大量の大木を高く持ち上げてから、動けないヨハネちゃんに向けて落とす気や!」
ヨハネ「ええっ!? そんなことされたら潰されるじゃない!」
『タカク タカク  アガル ノダ ……』
『サイゴ ノ ワタシ ノ ≪おちる≫ ノ  チカラ ヨ …………』
『…… … ………  … ……   … 』
91:
希(……あ。親玉さんの邪気が消えてまう)
希(今消えたら大木の浮力も同時に消えて、ヨハネちゃんの上に落ちてくる!)
希「……仕方ない、奥の手やっ! せいっ!」
ヨハネ「あっ、あの、なんとかっていう木の棒!」
希「大幣や、お・お・ぬ・さ!」
希「これの力使って邪気を現世に定着させて、浮力維持して大木落ちてこないようにするんや!」
希(ようし、これでもうしばらくは時間を稼げる……え?)
希(ちょ……どんだけ空高く持ち上げたんや。あんなに立派だった大木が、豆粒程のサイズも見えへんやん)
希(せやけど、あんな高さから落とされたら、ひとたまりもない……!)
ヨハネ「旅人さんっ」
希「わかっとる!」
希「今は大幣の力で喰い止めとるけど、じきにヨハネちゃん目がけて木が落ちてくる! その前に抜け出さな!」
ヨハネ「ヨハネのことはいいから早く離れて!」
希「……はあっ!?」
92:
ヨハネ「こんなにしっかり埋められたらすぐには出られないもの。埋められた身としてよぅくわかるわ」
ヨハネ「旅人さんだって、ホントはわかってるでしょ?」
希「んなこと言うても……!」
ヨハネ「じゃあもう無理よ。だってほら、ヨハネなんだもの」
ヨハネ「ヨハネは絶世の美少女にして、世紀の不運持ちなんだから」
ヨハネ「だからね、不幸な運命を辿るヨハネには、この危機を抜け出すことなんてもう無理なのよ」
希「だからって諦めるんは違うやん!」
ヨハネ「そうじゃないの……諦めるとか、そういうことじゃないのよ」
ヨハネ「そうじゃなくて……ヨハネの不運に、ヨハネのラッキーガールである旅人さんを巻き込みたくないの……」
ヨハネ「だから旅人さんは逃げて、お願いよぉっ!」
希(……こんなときまで……こんの、ええ子ちゃんがあっ!)
93:
ヨハネ「ああ、天空から終幕を告げるオブジェたちが降ってくる未来が見えるわぁ……」
ヨハネ「あれが木じゃなくて神槍か何かだったらそこそこ神秘的な最期だったのに……がっかりよ」
希「余裕綽々やん……ふぬー! 抜けてやー!」
ヨハネ「時間が無いわ。はい、返すわね、特別な御守り」
希「……ヨハネちゃん……」
ヨハネ「本当だったら、千の煌めく言葉を紡いで旅人さんに感謝の気持ちを伝えたいのよ?」
ヨハネ「でも時間が無いから。一言だけで許してね?」
希「そんなん聞きたいわけないやろ!」
ヨハネ「旅人さんをヨハネのリトルデーモンにさせられなかったことが、ちょぉっと心残りよ?」
希「しかも最後に残すんが怨み言かいっ!」
94:
ヨハネ「……」
希「ほら黙ってないで! 最後まで頑張らな!」
ヨハネ「……あーあっ!」
ヨハネ「ほんっっっとうに、ヨハネってば不幸の星の下に生まれてきたのねぇ」
ヨハネ「いくら不運で死んじゃうにしても、まさかこんなタイミングで死ぬだなんて」
希「泣き言なんて言ってないで! もっと踏ん張り!」
ヨハネ「せーっかく、毎日がキラキラしてきたのにっ」
ヨハネ「大切な仲間たちができて、大きな目標見つけて、みんなで頑張ってたのにっ」
ヨハネ「歌もダンスも上手になってきて、いつか沢山のリトルデーモンたちの前で披露してあげたかったのにっ」
ヨハネ「……旅人さんにも、見せてあげたかったのに」
希「……ヨハネちゃん……」
ヨハネ「あーあ。ホント……」
ヨハネ「…………ごめんね……みんな……」
ヨハネ「…………………………ぐすっ」
希「……。…………」
95:
希「よいしょっと」
ヨハネ「……!? ちょ、何で座ってるの!? 早く逃げないと!」
希「あ、大幣の効果消えてもうた。あー、空から木が落ちてくるわー」
ヨハネ「ほら時間切れよ! あっち行けぇ!」
希「親玉さん、木ぃ持ち上げる間は邪気の力使ってても、その先まで力は及ばんはずや」
希「持ち上げてる間はヨハネちゃんの上に狙い付けてたとして、後のことはわからへんて」
ヨハネ「ねえ聞いてよ! あんなのに潰されたら死んじゃうんだからぁ!」
希「あーんな高くまで持ち上げたら、落ちてくる間に空気抵抗とか風の抵抗とかあるやろ」
希「あとウチがここにおれば、ようわからんラッキーが働いて、勝手に狙いが逸れるに決まっとる」
ヨハネ「そんな運任せで決めつけちゃダメよぅ!」
希「……運やないか」
ヨハネ「え?」
希「ウチが運で助けられないなら意味ないやんかっっっ!!!」
96:
希「ウチはただの悪霊祓い!」
希「超能力で木の軌道逸らすことも出来なければ、超腕力でヨハネちゃんを引き抜くことも出来ひん!」
希「せやけど運だけならウチの持つ絶対の力やっ!」
ヨハネ「……」
希「ヨハネちゃんも言うとったやん。ウチは、ヨハネちゃんのラッキーガールなんやろ?」
ヨハネ「…………無理よ……だって……」
ヨハネ「ヨハネは……ヨハネは絶対的な不運の持ち主なんだからぁ!」
希「だったら勝負しよか?」
ヨハネ「え?」
希「ヨハネちゃんの絶対的なアンラッキーと、ウチの絶対的なラッキー」
希「ヨハネちゃんはどっちを信じるん?」
97:
ヨハネ「……そんな……そんな勝負、最後にするなんて」
希「ほら、時間がないんやろ。木、落ちてくるで」
希「落ちてくる前に聞かせてよ。ヨハネちゃんは、どっちを信じるの?」
ヨハネ「…………ヨ、ヨハネ、は、」
希「あー時間が無いわーあと何秒かなー」
ヨハネ「だっ! だってっ!」
ヨハネ「ヨハネは本当、今までずーっと不運なことばっかりでっ!」
ヨハネ「ホントにこんな不運な人今まで見たことも聞いたこともないくらいに不運な人生送ってきてっ!」
ヨハネ「ヨハネはっ……!」
希「……うん?」
ヨハネ「……………………」
ヨハネ「たびびとさ
 ドドドドドドドンッッッッッ
98:
????????????
????????
????
希「うん」
希「ウチもヨハネちゃんとおんなじだよ」
ヨハネ「………………………………ぁ…………あぁぁ…………」
希「だって、アンラッキーよりもラッキー信じた方が、人生楽しいやん?」
ヨハネ「い、生きてる…………まだ生きてるぅぅぅぅうわぁぁぁぁぁん!」
希「うふふふっ。この勝負、ラッキーガールの勝利やでえ」
99:
―――
希(……うん。振り返ってみれば、結構大変なお役目やったね)
希(せやけど大元を完全に断つことができた。これでもうこの地域は安泰や)
希(ウチの悪霊祓いとしての実績がまた一つ増えてしもたわー)
希(さて、秋葉原に戻って、本部に報告して、そしたら少し休養期間貰おっか)
希(最後はなんだかんだで命懸けやったし、ご褒美の一つくらい貰ってもええやろ)
希(この期間中、やけにみんなのこと思い出したし、久しぶりに会いに行ってもいいやんな)
希(……思い出させてくれたんは、あの子のお陰やね)
希(スクールアイドル真っ最中の、九人組の一人)
希(今が楽しくてしょうがないはずなのに、自分が死にそうな時にまでウチのこと守ろうとしよって……)
希(ホント、救いようのない程に不運で、可愛い子やったなあ)
100:
希「……おっ?」
ヨハネ「はぁい♪ 堕天使のヨハネよっ」
希「相変わらずやねえ。お見送りに来てくれたん?」
ヨハネ「そうよっ。旅人さんはヨハネの大切なラッキーガールだもの!」
希「うふっ、ヨハネちゃんにそう言われると、ウチも自分のことラッキーガールって思えるわ」
ヨハネ「当然よ! だぁって、このヨハネのアンラッキーにも勝っちゃうんだから!」
希「自慢になるんかなーそれ」
ヨハネ「これからどこに行くの?」
希「一旦本拠地に戻ってから、次のお仕事現場かな」
ヨハネ「じゃあ、もう、ここには来ないのね?」
希「ん……この地域の邪気は祓い尽くしたからね」
ヨハネ「そう……」
101:
希「大丈夫だよ」
ヨハネ「……なにが?」
希「ウチ、ラッキーガールなん。自分でもちょっと信じられないくらいにね」
希「例えば、また会いたいなーって思う人がいたら、望み通りに再会できるくらい」
希「せやからヨハネちゃんとは、また絶対に会えるよ」
ヨハネ「え、じゃあ旅人さん、ヨハネにまた会いたいって思ってくれてるのっ? そんなにヨハネのことが好きなのねっ!?」
希「んー……」
ヨハネ「どうしてそこで黙るのよぅ!」
希「……リトルデーモン、やっけ? ヨハネちゃんのファン、じゃなくて、集いしなんちゃらの眷属の名前」
ヨハネ「え? そうだけど……」
希「うふっ……ウチな、もうとっくに、リトルデーモンに堕ちちゃってるよっ!」
ヨハネ「え……ええっ!? だ、だってっ、今までずっと、あんなに勧誘したのに、」
希「はい時間切れー電車やーん。じゃあねヨハネちゃん!」
ヨハネ「ああっ! …………あっ、えっ、あっ」
希「元気でね」
ヨハネ「……た、旅人さん! ありがとう! ヨハネも旅人さんのこと大好きよっ!」
 プシュー ガタンゴトン
ヨハネ「……………………さようなら……旅人さん」
102:
希(ふふっ……『も』、て)
希(ウチ、リトルデーモンになったとは言っても、ヨハネちゃんのこと大好きとは言うてへんのやけど)
希(……ええ子やったなあ、ホンマ)
希(不運にめげず、礼儀正しく、他人思いで、素直で元気な、スクールアイドルの卵)
希(ま、ちょーっとイタイ子やったけど?)
希(あーんな、どこ行っても忘れられそうにないオモロイキャラして、個人的にも繋がりを感じちゃう子)
希(…………そんなん、大好きにならないわけないやんっ!?)
希「くっくっくっくっ……」
希(まったく。結局堕とされちゃったね、あの子に)
希(……じゃあね、じゃなかったかな)
希(また今度、やね……)
希「うふっ♪」
103:
―――
ヨハネ(色々あってAqoursとしてスクールアイドルの大舞台に立つことになったわ!)
ヨハネ(万の言葉を並べたって記しきれない程の紆余曲折を経て、今、ヨハネ達はとんでもない祭典を前にしているの!)
ヨハネ(これもひとえに、世界中が羨む美貌の持ち主にして薄幸に負けない努力と膂力を備えた、堕天使ヨハネの力のお陰ねっ!)
ヨハネ(……それは違うかも)
ヨハネ(ここまで来れたのは、九人で力を合わせて、一緒に頑張って来れたから……!)
ヨハネ(ああでも、今だけはそんな感傷に浸る余裕もないくらい緊張しちゃうわぁ!)
ヨハネ(大舞台ってこともそうだけど、それだけじゃないんだもの)
ヨハネ(だぁって、今日はあの伝説のスクールアイドルグループが、この日の為だけに再集結してくれたのよ!?)
ヨハネ(あの、伝説のスクールアイドル……みゅっ、μ'sの九人がっ!)
ヨハネ(もう大興奮で昨夜は一睡もできないし、お陰で大事な日なのに体調最悪だし)
ヨハネ(足元ふらついて外では犬のウ○チ踏んじゃうし、屋内では誰かが捨てたガム踏んじゃうし!)
ヨハネ(本っ当にヨハネってばアンラッキーだわぁ)
ヨハネ(……でもいいわ。ちょっとくらい不運でも、今のヨハネは、すーっごい幸せだもの♪)
104:
ヨハネ「…………!? ……………………!?!?!? ……? ……??? …………????????」
希「どうもどうもー」
ヨハネ「…………たび、」
希「ちゃうちゃう。今はあの時と同じ変装スタイルしとるだけで、ほら、衣装でわかるやろ? キラキラのフリフリやでえ」
ヨハネ「……………………すくーるあいどるぐるーぷの、」
希「元、ね」
ヨハネ「……………………もと、すくーるあいどるぐるーぷの、」
希「元μ'sのメンバー、東條希です!」
ヨハネ「」
希「まあね、そりゃあ結構な変装しとったから、同一人物とは思わへんよね」
ヨハネ「…………ホントに?」
希「ホントホント」
ヨハネ「……………………」
ヨハネ「えええぇぇぇぇぇ?????????????!!!」
希「予想通りの反応すぎて楽しいわあ」
105:
ヨハネ「だって、だって、」
希「言うたやろ? また会えるって」
ヨハネ「……あ……」
希「初めまして、Aqoursのメンバーさん。よかったら、名前、本人から直接聞きたいな」
ヨハネ「名前っ……!」
希「うん。聞きたいなあ」
ヨハネ「…………え、っと……津島、ヨ……ハネ……」
希「ん?」
ヨハネ「……………………あのっ!」
希「うん」
ヨハネ「わ、私っ! スクールアイドルグループAqoursのメンバー、津島善子です!」
ヨハネ「私達ずっとμ'sさんに憧れていました! 目標でした!」
ヨハネ「今日は、μ'sさんに会えるって聞いて、とても楽しみにしていました!」
ヨハネ「本日はよろしくお願いしますっ!」
106:
希「うん。よろしくね、善子ちゃん」
希「……善子ちゃん、か」
ヨハネ「は、はい……」
希「……良いね。名前から、ええ子なんやなってことがすっごい伝わってくる」
希「ウチは善子って名前、好きだよ」
ヨハネ「! ……///」
希「あれからアンラッキーは少しは治まった?」
ヨハネ「あっ、えっと……最近はずっと練習三昧で、あまりそういうことは考えてなくて……」
希「そうだよね。一生懸命な時って、それだけでいっぱいになっちゃうもんね」
希「でもそれって、気にならないくらいには不運じゃなくなったってことかな?」
希「あるいは……それ以上に、幸せな毎日を過ごしているか」
ヨハネ「……毎日、大切な仲間と一緒に、同じ目標を目指して頑張ることができて」
ヨハネ「凄い、楽しい……!」
希「……うん。そうだよね」
107:
希「不運でも大丈夫だよ。周りを見れば、そんな不運を吹き飛ばしてくれる仲間たちがおるんやから」
希「それに、今日はこのウチがついとる」
希「ヨハネちゃんのラッキーガール、リトルデーモンがね」
ヨハネ「!」
希「せやから精一杯頑張ってね。応援してるよ!」
ヨハネ「……あ、ありがとう、ござい、……」
ヨハネ「…………任せてっ!」
ヨハネ「リトルデーモンのみんなを楽しませるのが、堕天使であるヨハネの役目なんだからっ!」
希「うんうん、その調子。じゃあそんなヨハネちゃんに餞別をあげよう」
ヨハネ「? あっ! これ、あの時の綺麗な御守り……」
希「再会の記念と、ここまで来れたことのお祝いとして、プレゼントだよ」
ヨハネ「くれるの? 特別なものなんでしょう?」
希「そうだよ? とっくべつで、たぁいせつなモノ。だからあげるんよ」
ヨハネ「…………ありがとぉ……!」
希「それがあれば今日の舞台、絶対成功するでえ」
ヨハネ「うんっ! 頑張るわ!」
希「ヨハネちゃんのこと見てるから。楽しみにしとるよ!」
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平成の次の元号を真面目に予測するスレ

記者「なぜ怪我をしないんですか?」イチロー「僕いくらもらってると思います?」←これ

おい、オメーら!ちゃんと仕事しろwwwwww

【悲報】Twitter女子「新しい年号は『初めてのキスから』にしてほしい。なんか甘酸っぱいし」

渓流釣り師だが渓流竿の名前が面白すぎるので上げていく

店員さんがドアのところで蹴躓いてドリンクがこぼれるまで、すべてがスローモーションに見えた

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憲法改正「よいと思う」8割を超える 天皇陛下の御言葉受け、国民の大多数が改憲容認へ

日本柔道「銅で申し訳ない」「金じゃないと意味ない」

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