ヨハネ「もうこれ以上、カゼはひかないんだから!」back

ヨハネ「もうこれ以上、カゼはひかないんだから!」


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ヨハネ「………………」
花丸「どうしたの?渋いお茶を飲んだ後みたいな顔だよ……?」
ヨハネ「そろそろ期末試験の二週間前になるわね……」
ルビィ「う、うん。そうだね……また、点が低いとおねえちゃんに怒られちゃうよぉ……」
ヨハネ「ヨハネも心配だわ…………」
ルビィ「……心配?試験が?でも、ヨハネちゃん、中間はすっごくいい点数で……」
ヨハネ「そう、いい点数。中間はがんばらないといけなかったのよ……保険として!」
花丸「ほ、保険?」
ヨハネ「悪魔のヨハネは天から見放されて――とっても運の悪い薄幸の美少女……」
ヨハネ「だから……だから、期末前は必ずカゼをひくのよ!」
2:
ヨハネ「夏はナツカゼ!だんだん気温が上がり、体力を奪われダウン」
ヨハネ「冬はインフル!霜が降りはじめ、空気が冷えて乾燥しだし……間もなくダウン」
ルビィ「その枕草子みたいな説明はなんなの……?」
ヨハネ「……それもいつも試験直前よ?試験直前!」
花丸「大変なんだね……」
ヨハネ「今年もきっと、病に侵される運命なの……だから、中間で出来るだけ点数を稼いで――」
ヨハネ「こうして、期末が万全に受けられない時の保険にしておくわけ」
――ガララララッ
「話は聞かせてもらったのだ!」
3:
花丸「チカちゃん!」
千歌「大丈夫だよ、よしこちゃん。チカが、ヒケツを教えてあげる!」
ルビィ「ヒケツ?
千歌「うん!なにを隠そう、チカはね――産まれてこの方、病気知らず!」
ヨハネ「病気知らず!?」
ルビィ「すごい……」
千歌「よしこちゃんが病気になりやすくて困ってるみたいだからね」
千歌「チカが、病気にならないためのヒケツを教えてあげる!」
ヨハネ「ホ、ホントに!?……あっ、私はヨハネよ!」
千歌「もちろんだよ、よしこちゃん!」
――ガララララッ
「「話は聞かせてもらったよ!」」
4:
花丸「曜ちゃん!果南ちゃん!」
曜「病気知らずといえば、この曜ちゃんもだよ!」
果南「そして、私も!」
ヨハネ「二人とも…………」
千歌「よぅし、果南ちゃん、曜ちゃん、そしてチカの三人で――」
千歌「よしこちゃんをカゼに負けない子にするよ!」
ヨハネ「だけど、ヨハネはものすっごく運が悪くて……」
ヨハネ「あっ!でもでも、それがアイデンティティっていうか……」
果南「大丈夫。カゼは運の良し悪しじゃないよ。しっかり対策しよ?」
曜「さぁ!ヨハネちゃん!泥船に乗った気持ちでヨーソロー!」
5:
――――――――
――――――
千歌「というわけで、今日から放課後に『カゼにさよなら講習会』を実施したいと思います」
ヨハネ(結局流れで、病気にならないためのヒケツを教わることになったけど――)
ヨハネ(悪魔的な勘かしら、なんだか胸騒ぎがするわ……)
千歌「三人の考えたメニューを毎日ローテーションで、こなしてもらうよ」
ヨハネ「……ええ」
千歌「今日はチカの当番!っていうことで、まずはうちに来てね」
ヨハネ「それはいいけど……結局、ヨハネは何をすればいいの?魔法陣でも描く?」
千歌「今日行う、チカの健康優良児のヒケツは――チカんちで教えるね」
ヨハネ「魔法陣が必要になったら言ってね!最近、コンパスなしできれいな円、作れるようになったから!」
千歌「まほーじん?は必要ないよ。カゼ対策はとっても、とーっても簡単なのだ!」
千歌「はいっ!ここがチカのうちです」
ヨハネ「いい感じの旅館ね…………それで、そのヒケツは?」
千歌「まあまあ慌てない慌てない。とりあえずあがって?」
6:
ヨハネ「………………」ソワソワ
ヨハネ(チカちゃんの部屋に案内されたはいいけど……)
ヨハネ(ヒケツをもってくるから待ってて、って………………)
ヨハネ(もう、30分くらい経ってる……一体全体、何もってくるつもりなの!?)
千歌「よしこちゃん、お待たせ!」
ヨハネ「遅いわ!この悪魔を待たせるなんて……」
千歌「ほらっ!いっぱいもらってきたよ!」
ヨハネ「…………ひっ!……な、なによそれ!」
千歌「なにって――みかんだよ、みかん!健康のヒケツはこれ!みーかーん!」
9:
千歌「さ、よしこちゃん、一緒に食べよ?」
ヨハネ「い、え、遠慮しておくわ…………」
千歌「遠慮なんてしないでよー!ほうらぁ、おいしそうだよ?」
ヨハネ「ひぃ!近づけなくていいから!みかんいらないから!」
千歌「なんでなんで?みかんおいしいよ?」モグモグ
ヨハネ「なんでって…………そ、その前に、なんでみかんを食べなきゃいけないの?」
ヨハネ「そこを説明しなさいよ!」
千歌「ふっふっふ……チカはね、その言葉を待ってたんだよ!」
千歌「みかんには…………みかんには――――」
「ビタミンがたっぷり含まれているのだ!」
10:
ヨハネ「………………」
千歌「それでねー、ビタミンが病気の予防にはいいんだって。チカよくわかんないけど」
千歌「だから、たんとお食べ!」
ヨハネ「………………いやいや、それって栄養をとれって言ってるだけじゃない?」
ヨハネ「別にみかんじゃなくても……」
千歌「でも、みかんはおいしいもん」
ヨハネ「悪魔はね、みかんなんて食べないの。悪魔が食べるのは、イチゴって昔から決まってるのよ!」
千歌「それなら、今日から悪魔もみかんを食べよう!はい、みかん!」
ヨハネ「だからいらないって!し、正直に言うから!私は実はみかんが苦手で――」
千歌「みーかーん!みーかーん!」
ヨハネ「ち、ちょっと!口の中に入れようとしないで!やっ…………んんー!!」
12:
――――――――
――――――
ヨハネ「………………はぁ」
ルビィ「どうしたの?ため息つくと、幸運が逃げちゃうよ?」
ヨハネ「……昨日チカちゃん家に、カゼをひかないヒケツを聞きに行ったんだけど――」
ヨハネ「ひたすらみかんを口に…………うう、まだ感触が……」
ルビィ「みかんを口に?みかん食べるのがヒケツだったの?」
花丸「いいなぁ……オラも一緒にみかん食べたかったずら」
ヨハネ「食べるぅ?そんな生やさしいものじゃなくて!」
ヨハネ「まるで――フォアグラのために、胃にエサを流し込まれるガチョウのようだったわ……」
花丸「それはそれは……ご愁傷様……」
ヨハネ「今日の曜ちゃんのヒケツも、不安しかないんだけど……」
14:
曜「――――はいっ!今日は曜ちゃんの当番だよ!」
曜「まずは、番号!いっち!」
ヨハネ「に…………」
曜「…………声が小さい!」
ヨハネ「……にぃ!」
曜「よし!ちゃんといるね!」
ヨハネ「二人しかいないんだから、点呼とる意味ないよね?ないよね!?」
16:
曜「それで。ちゃんと、水着は持ってきてる?」
ヨハネ「持ってきてるけど…………」
曜「よし、それでは――本日の訓練を始める!」
ヨハネ「は、はい…………」
ヨハネ(訓練……?)
曜「まずは海に移動!ぜんたーい、右へ倣え!」
ヨハネ「だから、二人しかいないんだから、全体も何も……」
17:
曜「……さてと。海に到着、着替えたところで――」
曜「カゼをひかないヒケツを教えるよ。そのヒケツはなんと……」
ヨハネ「泳ぐ」
曜「おお鋭いね!だけどハズレ」
曜「正解は――――あっちを見て!」
ヨハネ「……?」
ヨハネ「…………って、まさか……?」
曜「そう!健康と言えば、飛び込み!」
曜「あの崖は、いい感じの飛込みスポットだよ!」
18:
ヨハネ「ムリムリムリ!」
曜「大丈夫。まずは低い、そうだなぁ……あの辺の崖から練習して――」
曜「何十何百飛び込んで慣れれば、息するように飛び込めるようになるから」
ヨハネ「別に息するように飛び込みたくないから!」
ヨハネ「そもそも、飛び込みがカゼにどう効くの!?」
曜「大声を出して海に飛び込めば、気分爽快」
曜「万病の素と呼ばれるストレスを弾き飛ばすよ!」
ヨハネ「それ、早い話がただのストレス発散!」
曜「さあ、ヨハネちゃん!」ガシッ
ヨハネ「ひっ!」
曜「まずは低目のあの岩から、ヨーソロー!」
曜「いや――ヨハネちゃんだから、ヨーハネーだね!!」
19:
――――――――
――――――
ヨハネ「………………」
ルビィ「どうしたの?死にそうな顔してるよ……?」
ヨハネ「……昨日、曜ちゃんとカゼをひかないヒケツをしたんだけど――」
ヨハネ「ひたすら海で…………ああ、ざっぱーんって音が耳から離れない!」
ルビィ「海で?海で遊ぶのがヒケツだったの?」
花丸「いいなぁ……オラも一緒に海辺で遊びたかったなあ」
ヨハネ「遊ぶぅ?そんな生やさしいものじゃなくて!」
ヨハネ「まるで――幾度もキャッチアンドリリースされる小魚のようだったわ……」
ルビィ「ど、どういうことなの…………?」
20:
果南「――――今日は私だね」
ヨハネ「…………ええ」
果南「聞いた話だと、チカや曜がいろいろ振り回してたみたいだし……」
果南「軽めにしよっか?」
ヨハネ「……そう!ちょっと、疲れ気味だから猛烈に軽いのでお願い!」
ヨハネ「あ、違うのよ?ヨハネは悪魔だから、人間と違って無尽蔵の体力があるけど、だけど人の世だから――」
果南「そっかそっか!それじゃ、軽くするよ」
ヨハネ「さすが果南ちゃん!」
果南「さて、じゃあまずは練習着に着替えてね」
ヨハネ「えっ……軽め……よね?」
果南「軽めも軽め、天使の羽のように軽いから安心して!」
21:
果南「というわけで、私が思う病気にならないヒケツ」
果南「それは身体を鍛え、体力をつけること――かな」
ヨハネ「………………」
果南「カンタンでしょ?」
ヨハネ「その……悪魔はムッキムキなのとかは、性に合わないって言うか……」
果南「筋肉つけるのは、少しでで大丈夫だよ?」
果南「それでね。今日は軽めに腹筋背筋、腕たて伏せにランニング。それから――」
22:
果南「ほらほら!頑張って!全力はこんなもんじゃないはずだよ!」
ヨハネ「はぁ……はぁ……むり……もうむりぃ…………」
果南「いけるいける!私、ヨハネと初めて会ったときから、スゴイなって思ってたんだよ?」
果南「どう見ても人間なのに、あくまでも悪魔だって貫き通すその根性と気合!」
果南「できるできる!ヨハネならまだ走れるって信じてるよ!」
ヨハネ「はぁ……はぁ……あくまでもって……はぁ……あくまでもじゃなくて、ヨハネはホントに悪魔で……」
果南「ほら、やっぱり元気だね!よし、このまま沼津駅まで行くよ!」
ヨハネ「ぬ、沼津駅って……こっから20km近くあるんで……すけ……ど……」
23:
――――――――
――――――
ヨハネ「………………」
ルビィ「机に突っ伏して動かないよぉ…………」
花丸「きっと毎日のカゼ対策で、ダウンしてるずら……」
ヨハネ「………………」ガバッ
ルビィ「あっ、ヨハネちゃん……だ、大丈夫?」
ヨハネ「…………今日は九時までチカちゃん家で……みかんを……」
ヨハネ「みかんやだ……でもせっかくヒケツを……行かないと……」ブツブツ
ルビィ「………………」
花丸「いやなら行かなければいいのに……」
ルビィ「ヨハネちゃん、いっつも変なこと言ってるけど、根はマジメだから……」
24:
「つまり、みかんなのだ!みかんなんだよ!」
「みかんをたべれば、あたまもよくなるっておねーちゃんがいってた!」
「はい!次は更に高いところから一回まわって飛び込みだよ!」
「かけ声大きく、おなかからすべてを出し切って!はいっ、ヨーソロー!」
「まだできる、まだまだできるでしょ?私は騙されないぞー!」
「お!いいよ、いいファイト!今日は御殿場まで行っちゃお!」
25:
千歌「おつかれさま、よしこちゃん!」
曜「よくぞ、厳しい訓練に耐えきった!毎日毎日夜遅くまでお疲れさま」
果南「成果は出てるはずだよ。ほら、カゼの兆候なんてみじんもないでしょ?」
ヨハネ「ないわ。いまのところ微熱も胸のドキドキも、耳のズキズキもないし」
ヨハネ「喉が痛くなって鼻水が出てきたりだってないんだから!」
千歌「あれだけ頑張ってきたんだから、絶対大丈夫!」
曜「私たちを信じて!」
果南「ヨハネの頑張りを見てれば、運だって味方につけられるよ!」
ヨハネ「ええ!」
―翌日
ヨハネ「ん、んん…………」
ヨハネ「……今何時…………あれ、もう朝じゃない…………あ!」
ヨハネ「今日は試験の日!」
ヨハネ「喉は……痛くない!鼻水もないしだるさもないわ!」
ヨハネ「ふふふっ!やっとこのヨハネにも、運が向いてきたようね!」
28:

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