【俺ガイル】八幡「恋愛の末路」back

【俺ガイル】八幡「恋愛の末路」


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恋愛とは虚構である。
世間において、恋愛というものは推奨される事である。交際相手や結婚相手を持たない人を哀れみつつも、どこか見下しているような風潮があるのだ。
昔ほどそのような意識が強いわけではないが、依然としてそのような観念に縛られている。
だが、 言ってしまえば性欲と恋愛感情とは何も違わない。
性欲は人間の根源的欲求であり、それを否定する事は種の否定となってしまう。
だが、恋愛感情とは性欲に貼られた綺麗なレッテルに過ぎないのだ。
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2: 以下、
また、前述の「観念に縛られている」というのは中高生において顕著に思える。
彼氏彼女がいないことを恥じ、また性欲というものを抱き始める年頃だ。
そして、往々にして中高生、ひいては社会というのは性的な事をタブー視する。
そのような状況で「恋愛」という建前は非常に有効なのである。
故に恋愛とは虚構であり、私は恋愛感情に行動を縛られるべきではないと考える。
恋愛感情は性的欲求を根底としているのなら、恋愛感情に行動を縛られるというのは理性的な事ではない。
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そして、恋愛というものが最終的に目指しているのは性欲の発散だけではない。
結婚、あるいは交際とはパートナーの存在を前提とする。
そして、そのパートナーの社会的地位、及び容姿や学歴、収入などといったステータスから相手を選ぶというのが常態化しているのだ。婚活サイトの存在などがまさしくそれだ。
この側面から見れば、世の男女は恋愛という建前の下で、自分の「アクセサリー」として相応しい相手を探しているのだ。
詰まる所、恋愛とは性的な欲求、及び社会的な地位を高める為の道具としてのパートナーの発掘なのだ。純粋で清廉なものではない、建前と本音で成り立っている歪んだ物事の代表例である。
だから私は恋愛などするつもりもなく、仮に恋愛感情と思える感情を抱いたとして、それが汚らわしい己の欲望の塊である事がはっきりとわかる。
4: 以下、
平塚「で、これは何だね」
毎度の如く、作文課題に書き連ねた文章を咎められる。
八幡「『恋愛とは』という題に適していると思いますが」
平塚「内容には多少は同意できる、私が結婚できない理由も少しは見えてきた気はするのでな...だがこれを君が提出したという事実が驚きだ。奉仕部で君は何を学んだのだね?」
八幡「別に、俺は奉仕部で恋愛について教えてもらった訳じゃないんで」
どこか勘違いされている節があるが、奉仕部は別に恋愛相談に特化しているわけではない。
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平塚「...好きな女子はいるのか?」
八幡「小町ですかね、あと戸塚」
小町と戸塚さえいれば生きていける、だが男だ(迫真)。
平塚「そういう事ではない、まったく君という奴は」
八幡「まぁ周りの女子が大概ブラックでしてね、好きになる事すらできませんよ」
平塚「君に言わせれば、恋愛とは性欲と社会的承認欲なのだろう?ならば、カーストの高い由比ヶ浜や家が金持ちの雪の下など最適じゃないか、しかもルックスだって上等だ」
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八幡「...確かにあの文章をそのまま受け取ればそうなるかもしれませんが」
平塚「そもそも、あの理論は性格という最も大事な内面性を考慮していない。性格や言動に難があれば、社会的な評価は得られないし、そもそも女性としての魅力を感じられるような内面性を兼ね備えていなければ性欲だって抱けないんじゃないか?」
八幡「...わかりました、書き直します」
平塚「再提出期限は2週間後だ、充実した作文を期待しているよ」
そう言って彼女は立ち上がった。顔に哀れみに近いような感情を浮かべているように感じられたのは、俺の気のせいだろうか。
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今日は奉仕部の活動がないとの事なので、家に直帰する事を決める。急いで下駄箱へ足を運び、蓋をあける。
日常の動作、それはもはや作業とすら呼べるものであったが、そこにあったのは非日常。
八幡「...なんだ、これは」
靴と共に佇んでいたのは、1つの茶封筒。
八幡「なんだよこれ...?」
袋の口を開け、中のプリントを取り出す。そこには、
「話したい事があります。明後日の放課後、屋上に来てください」
と書かれていた。
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いたずら、きっとそうだ。
こんなことは昔からあった事でありふれた事だ。期待すれば、そこに待っているのは失望だ。
...そもそもこれが恋愛絡みだと決まったわけじゃない。あの作文に影響されてしまっているのだろうか。
材木座「はっちまーん!今日は奉仕部とやらはないのか?」
...誰かと思えば材木座だ。いやまて、こいつなら相談相手として役に立つんじゃないか?
八幡「ああそうだよ暑苦しい、...なあ」
9: 以下、
材木座「ん?」
八幡「もし友達の下駄箱に差出人不明の手紙が入れてあったとして、その手紙がその友達を屋上へ呼び出す旨であったならばお前はどうする?」
材木座「我には友達がいないからその問いは愚問だな、強いて言えばお主が唯一無二の存在であろう」
八幡「そういうのいいから」
材木座の俺への愛の強さは異常だが、今はそんなことはどうでも良いのだ。
10: 以下、
材木座「マジレスするとだな、我はその友達とやらに忠告するだろうな」
八幡「忠告?」
材木座「うむ、そもそも下駄箱に無名の手紙が入っているというのは異常で、そいつの身に何かが起こることは必然!友達として心配することは当然のことよ!」
確かにその通りだ。これが恋愛絡みでないならば、それは十中八九奉仕部関係か馬鹿どもの悪戯ということになる。
材木座「まあお主の場合、奉仕部の依頼という線が濃厚だろうな。あのおなごらには話しづらい事情があるのだろう、いやあるに違いない!」
八幡「多分そうなんだろうな」
材木座「ずいぶん素直だな気持ち悪い...さて、我はこの後用事があるのでな、失礼するぞ!」
八幡「ああ」
...こうして1つの問題が片付いたのだが、仮にこの仮説が正しいとするならばそこには新たな問題が発生する。
それは、あいつらには相談できないような依頼である。全く勘弁して欲しい。
11: 以下、
八幡「どうすっかなぁ...」
奉仕部に相談してみるといいのかもしれない。
家に帰って携帯を見ると、1通のメールが届いていた。
八幡「生徒会の手伝いに来て欲しい...?」
どうもおかしい。この時期、生徒会が抱えている仕事は少ない。特に、生徒会長が直々に関わる案件など存在していないはずだ。
八幡「何はともあれ奉仕部経由でやってもらわないとな」
奉仕部に相談しに来るよう返信し、スマホを閉じる。
小町「お兄ちゃん夜ごはん出来たよー!」
八幡「今行く」
馬鹿の考え休むに似たりと言われるが、今は脳に養分を補給することに努めよう。
八幡「...そういえば明後日呼び出されてたんだったな」
面倒な問題がこれで二つ目だ、全く困ったものである。
12: 以下、
風呂に入り、ベッドに入る。
八幡「そうだ、由比ヶ浜にメールしてみるか」
一応、俺はあいつの連絡先を持っている。
とりあえず、無名の手紙の件は相談してみてもいいんじゃないか。
八幡(夜遅いしな、さっさと送ってしまおう)
八幡『なあ、今時間あるか』
返信はすぐに帰ってきた。
結衣『あるよー(*^o^*) 何かあったの?』
八幡『いや、話せば長くなるんだけどな。実は放課後、下駄箱に無名の手紙が入ってたんだ。文面は、明後日の放課後に屋上に来いとか』
結衣『えーっ、それってラブレターじゃんΣ(゚д゚lll)』
八幡『んなわけあるか。お前何か知ってたりしないか?』
結衣『ごめん、知らないかな...orz』
八幡『俺に用があって、尚且つそれはわざわざこのような手段を使ってまで隠密にしたい用事ってことだ。粗方、嘘の告白と言う名の罰ゲームか、奉仕部に依頼したいけどお前ら2人には相談しにくいことを俺に相談したいかのどちらかだろうな』
結衣『私は依頼だといいなぁ(≧∇≦)
何かわかったら教えてね!』
八幡『おう』
13: 以下、
...さて、どうしたものか。
これは、単純に明後日を待つのが望ましいか。下手に探し回っているのを勘付かれてしまえば、迷宮入りの可能性だってあるのだ。
俺は電気を消し、夢の中へと落ちていった。
翌朝。
いろは「せんぱーい!メール見ましたよね?」
八幡「誠に遺憾ながら、な」
いろは「なんですかそれ...まあいいです、とりあえず何を手伝って欲しいか話します」
早くして欲しいのだが。
いろは「実は、いま奉仕部を生徒会の一部にしようって案があるんですよ〜」
八幡「そんなの聞いてないぞ!?」
いろは「生徒会外部の人に言ったのは先輩が初めてですから、兎に角今日の奉仕部の部活に行くんでそこで説明します!」
そう言うと、彼女は小走りで去っていった。
14: 以下、
八幡「奉仕部が生徒会の一部に...?」
それなら、雪の下のあの時の望みは叶うのだろうか。
これ以上の失敗は許されないんだ、あの空間は俺が求めていた"本物"なのだから。
結衣「ヒッキーやっはろー!」
八幡「おう」
...この安心感である。
八幡「今日の部活だけどな、一色が来るらしい」
結衣「そうなんだ、何か相談かな?」
説明が面倒なので適当にお茶を濁そう。
八幡「わからん、まあ雪ノ下には言っておいてくれ」
結衣「自分でいいなよ...仲直りしたじゃん」
八幡「いや、俺あいつの連絡先持ってないし。それにあいつのクラスって女子多いし」
結衣「はぁ、わかったよ。私から伝えておくから」
八幡「おう、頼むわ」
そうこうしているうちに教室に着く。
1日が、始まろうとしている。
八幡(作文の提出期限まであと13日、か)
...1日が、始まろうとしている。
20: 以下、
更新しますわ
21: 以下、
放課後、奉仕部へと足を運ぶ。
八幡「うーっす」
結衣「あ、ヒッキー!」
雪乃「あら、こんにちは」
八幡「おう」
...部室に一色が来ていない。
八幡「一色はどこに行ったんだ?」
雪乃「一色さんなら、ここに来た後サッカー部に行ってしまったわ」
結衣「もうすぐ大会だからねー、マネージャーも忙しいっぽいよ」
八幡「それなら仕方がないか...ところで、今日は1つ相談したいことがあるんだ」
ここで聞くくらいなら、別に相手に感づかれることもあるまい。
22: 以下、
雪乃「珍しいわね、聞いてあげないこともないわよ」
八幡「そりゃどーも。で、その内容だが...」
案の定、雪ノ下の反応は訝しげなものだった。
雪乃「私としては、その手紙は出し間違えという説が濃厚だと思うのだけれど」
八幡「いや、奉仕部への相談の可能性もあるだろ」
雪乃「それは否定できないわ。でも友達のいないコミュ障の貴方より、快活な由比ヶ浜さんの方が余程相談相手としては向いているのではないかしら」
23: 以下、
八幡「いや、女子には話せないことってあるだろ」
雪乃「そういうことなら、それこそ自分の友達に相談すると思うのだけれど」
八幡(...おかしい。高校生において友達という存在が、深刻な悩みの相談相手として相応しくないのはこいつが一番分かっているはずだ。しかし論理として間違っているのは明確だが、いまそれを指摘するのは間違っているのも明確だ。泥沼になるのが関の山である。)
八幡「なるほどな、わかった。これは多分出し間違いなんだろうな」
24: 以下、
結衣「でも、悪戯の可能性もあるんだよね...?」
雪乃「確かにその可能性もあるわね。でも、どちらにしても比企谷君は屋上に出向く必要性はないのよ」
八幡「その通りだな」
雪ノ下の論理だと確かにそうなるのか。
つまり、こいつは「俺を屋上に行かせたくない」から論理として成り立っているのかわからないような理屈で俺を丸め込もうとしているのだ。俺にはそう思える。
結衣「たしかに!ゆきのんあったまいいー!」
由比ヶ浜が雪ノ下に抱きつく。
雪乃「ちょっと、やめてちょうだい...//」
シリアスからいきなりの百合空間である。なんだこれは、たまげたなぁ...
25: 以下、
八幡「もう一つの件についてなんだが...」
結衣「いろはちゃんの話?結局何の用だったの?」
雪乃「比企谷君がしっているのかどうかはわからないのだけれど、ね。知っているなら教えて頂戴」
八幡「今朝あいつから聞いたんだが、どうも生徒会が奉仕部を吸収しようとしているらしい」
結衣「えっ!なにそれ!てゆーかさっき、ヒッキーわからないって言ってたよね...?」
こちらを睨むな。
八幡「あ、いやその、いきなりお前が話しかけてきたんですっかり忘れてしまってな」
結衣「ふーん...」
すっかり拗ねてしまった由比ヶ浜は放っておいて、とりあえずは固まってしまった雪ノ下だ。
26: 以下、
八幡「なあ雪ノ下。お前はどう思う?」
雪乃「いえ、私は...私は、独立したままにすべきだと思うわ。生徒会の一部門となれば会則を改正しなければならないし、これは部活動としてやっているからこそ意味があるのよ。その方が相談者が気軽にこれるじゃない」
八幡「そういう一面があることも否定しないが、今の奉仕部の活動は生徒会のそれの範疇に含まれるんじゃないか?」
雪乃「それは否定しないのだけれど...」
なぜこいつは、先程からやたらと噛みついてくるのか。
27: 以下、
結衣「でも生徒会の一部になれば有名になるし、相談したい人にも知ってもらえるんじゃないかな?」
...由比ヶ浜、なかなか賢いじゃないか。
雪乃「それはメリットかも知れないけれど、そうなれば新規加入者も増えるかもしれないわ。それによって質の低下が起こるかもしれないじゃない」
八幡「...それは、なかなか傲慢な発言だな」
雪ノ下は能力があるのは知っているが、こいつは現在の奉仕部の質が他所より高いと思っていたのか。
28: 以下、
八幡「新規加入者がそれを下げると考えるのも傲慢だし、それを抜きにしても簡単に下がるとは思えない。そもそも生徒会活動をやろうとするやるなんて余程意識が高いのだから、あとはやり方さえ教えてやれば伸びると思うのだが」
俯いて、何かを堪えるようにしている雪ノ下は、やがて無表情ながらもこういった。
「一色さんが来てから、続きを話しましょう」
八幡「まて、それはただの先延ばしじゃないか」
...その言葉は、早足で退出した彼女には届かなかった。
結衣「...ゆきのん怒らせちゃったね、でも今回はちょっとゆきのんおかしいと思うなぁ」
八幡「とりあえず一色を呼ばないと話にならん」
29: 以下、
そうだ、ついでに一色にあの手紙の件を相談してみればいいんじゃないか?
八幡「俺から連絡しとくから、お前は雪ノ下を宥めるなりなんなりしといてくれないか」
結衣「オッケー!私に任せといて!」
随分と威勢がいいじゃないか、それなりに期待しているぞ。
八幡「あいつもどっか行っちまったし、今日はお開きだな。俺は一色を探しに行ってくる」
結衣「じゃあ私はゆきのんだね!」
八幡「ああ、頼んだぞ。じゃあ行ってくるわ」
30: 以下、
扉を開け、とりあえずグラウンドに向かう。
その道中のことだ。
平塚「おお比企谷、ちょうど話したいことがあったんだ」
平塚先生とばったり会ってしまった。
八幡「生徒会への吸収の件ですか?」
平塚「一色から聞いていたなら話は早い。私としてはあれには賛成なのだが、君たちはすでに話し合ってはいるかね?」
八幡「ええ...雪ノ下は否定的でしたど、しかも普段の冷静を失っているような感じで」
31: 以下、
平塚「ふむ、それは生徒会への劣等感、というか敗北感があるのかもな。あいつは生徒会長になりたかったのだろう?それなのに、仮に吸収されてしまえば立場は一色より下になる。プライドの高いあいつの事だからな」
確かにそういう可能性もあるのか、やっぱりなんだかんだで顧問だな。
八幡「その可能性は考慮していませんでした。でも、その場合俺らはどうすればいいんですか?」
平塚「雪ノ下次第だからな、それは。由比ヶ浜と君は、雪ノ下がそれを乗り越えられるようにしなければならないんじゃないか?その方法は自分たちで考えたまえ。」
八幡「...わかりました。俺はとりあえず一色を探しに行きます」
平塚「ああ、頑張りたまえ。それでは、失礼するぞ」
...なるほど。一度由比ヶ浜と一色と3人で話し合う必要があるな。
32: 以下、
とりあえずグラウンドに来たわけだが、一色がいない。
休憩中の葉山を見つけたので、一応聞いてみる事にした。
八幡「なあ、一色を知らないか」
葉山「いろはなら今日は早退したぞ。どうも熱を出したらしくてな」
八幡「そうか、わざわざ済まんな」
葉山「大丈夫だよ。じゃあ僕は練習に戻るね」
どうしたものか。
困ったので、俺は由比ヶ浜にコンタクトを取る事にした。雪ノ下の件についても聞きたいしな。
33: 以下、
八幡「とりあえず部室に戻るか...」
そこに由比ヶ浜達がいるかもしれないからな。いなければメールで連絡すればいい。俺は元々、メールやSNSといったものが嫌いな人間なのだ。
部室のドアを開ける。
八幡「うーっす」
「やっときましたか、せんぱい」
...そこにいたのは、早退したはずの一色。彼女はたった一人で椅子に座っていた。
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八幡「なぜお前がここにいる、早退したんじゃないのか?」
一色「一回家に帰ったんですけどねー、体調良くなったんで戻ってきました☆」
一々可愛く振舞う彼女に多少の苛立ちを感じつつも、しっかり約束を守ろうとするその姿勢に俺はそれなりに感銘していた。
八幡「で、本題だ。そもそもの話を聞かせてもらおうか」
いろは「そんなにがっつかないでくださいよ、ちゃんと話しますから」
35: 以下、
一色によると、事の顛末はこうだ。
まず、生徒会副会長がこんな事を言ったらしい。
「奉仕部は大変素晴らしい働きをしてくれた、とても助かった。ああいう部門が生徒会にあってもいいんじゃないか?」
これに対して出された意見は殆どが賛成のものだった。だが、
「一から作るとすれば人材面において不安がある」
という否定も少なからずあったようだ。
そこで生徒会長様が言ったのは、
「じゃあ奉仕部を吸収すればいいんじゃないですか?」
...驚く事に、これに殆どの生徒会役員が賛成したのだ。
あいつらはどうも俺たちを有能な便利屋のように錯覚してしまったようなのだ。
36: 以下、
いろは「奉仕部的にも、これはいい話なんですよ?生徒会の一部になれば、ちゃんと予算がつきます。実績に応じた予算額を好きに使えるんですよ?」
驚いた、こいつがまともな交渉をしてきた。
八幡「それは確かにメリットだが、こちらには一つ問題があってな...」
俺の説明を聞いた一色は、
「プライド高すぎませんか?別に、私から活動に介入したり、予算を盾に脅したりなんてしませんよ〜、ほんとですよ?それに、うちの生徒会ってそれぞれの部門の自治が結構強いんで」
と、またまた驚く事にちゃんと説明をしてきたのである。
37: 以下、
八幡「いや、多分雪ノ下は部門の自治云々についても知ってると思うぞ。その上で、あいつは独立を主張しているんだ」
いろは「うーん...じゃあ生徒会の外局機関っていうのはどうですか?正式な生徒会部門ではないですけど、生徒会の仕事を請け負ったり、その代わりある程度の予算を回して貰って、それで活動できますよ?」
八幡「外局機関か、考えたな」
いろは「そして、これが重要なんですけど...」
一色は言葉を区切って、こう言い放った。
38: 以下、
いろは「外局機関ってことは、建前上生徒会から独立した一機関なんです。つまり、奉仕部のトップと生徒会長は同等の立場になるんです」
八幡「うまいことやるなぁ...」
だが、一つ疑ってしまうのは黒幕の存在である。
一色がこれだけ練った案を作れるとは思えない、大方他の生徒会の連中が吹き込んだんだろうな。
八幡「で、この案自体に生徒会全体の賛成は得られているのか?」
いろは「もちろん!しっかり根回しはしてあるんで、あとはそちらの問題です。雪ノ下先輩が反対なのはわかりましたけど、由比ヶ浜先輩と先輩はどうなんですか?」
39: 以下、
...わかりづらいな。
八幡「俺は正直嫌なんだがな、仕事が増える。そもそも、今回の件は仕事をこちらに押し付けたいお前らの陰謀にしか思えないんだが」
いろは「やだなー、先輩も知ってるように今は大して活動がないんです」
八幡「だったら今、現在吸収の話をもちだす必要がないだろ」
いろは「...それは、そうですね。でも、私達は奉仕部を吸収したいと思ってます。そうすることで、いざという時の保険になると思うんです」
八幡「そっちは保険を獲得し、こちらは一定の予算を手に入れる、か。検討はしてみるが、雪ノ下の説得にはお前も協力するんだぞ?」
いろは「ってことは、先輩は賛成してくれるんですね!?言質とりましたからね??」
八幡「あくまで検討だからな?勘違いするなよ」
いろは「はいはいわかりました、じゃあ私は生徒会に戻るんで」
...面白いことになってきたな。
51: 以下、
更新します
52: 以下、
一色との話を終え、下駄箱へ向かいつつ由比ヶ浜に
『現在地と、もし帰宅していたならば結局どうなったか教えてくれ』
とメールを送信する。
八幡「そろそろ帰るか...」
と靴を履いて踏み出そうとしたその時。
53: 以下、
由比ヶ浜「ヒッキー!......よかった、間に合った」
八幡「今までどこにいたんだ?」
俺の質問に、由比ヶ浜は顔を歪めた。
八幡「......雪ノ下は見つかったのか?」
しかし、彼女は何も答えてくれないのだ。
由比ヶ浜「やっぱり、私じゃダメだね、うん、ほんとそうだよ」
何がどうなったのか、それが聞けずに俺もイライラしていたのかもしれない。声が自然と荒立つ。
八幡「質問に答えろ、雪ノ下はどうした?どこであいつと話していた?」
由比ヶ浜「ごめんね、ヒッキー」
54: 以下、
「ゆきのん、今生徒会室にいるんだ」
「生徒会の役員の人達と激論してる」
「もう見てられないよ......多勢に無勢っていうか、ゆきのん頭いいし議論とか凄くできるけど、何人も相手がいて、あれだけプレッシャーかけられて、不憫すぎるよ......」
目に涙すら浮かべる由比ヶ浜だが、その説明を聞く限り、雪ノ下は単身生徒会に乗り込みに行ったようだ。そしてそれは身を結んではいないのだろう。
55: 以下、
だが、そのやり方は、最も彼女が忌み嫌ったものではないのか。俺に対してあれだけ止めるように言ってきた事じゃないのか。
八幡「あれだけ自己犠牲をやめろと言っておきながら、あれだけ俺のやり方を批判しておいて自分が同じ轍を踏むのか」
やり場のない怒りは押さえ込まれ、そしていつか暴発するのだ。俺はそれを必死に食い止め、由比ヶ浜に告げた。
八幡「行くぞ、生徒会室に。一色がいない今、そもそもあいつの議論自体が不毛じゃないのか?......なあ、今誰が生徒会室で議論しているんだ?」
由比ヶ浜「副会長と、会計と、書記の人と、......平塚先生。生徒会の人達はゆきのんと議論してて、先生はただ眺めてるだけ」
......あの人は何を考えているのか。何故ここで彼女が?
56: 以下、
八幡「つまり、今生徒会室には生徒会役員連中と平塚先生と雪ノ下がいるってことか?」
由比ヶ浜「うん、そんな感じ。そんなことより早く行こう!ゆきのんを助けなきゃ!」
果たして、俺はどちらの立場なのだろう。由比ヶ浜はどちらの立場なのだろう。
生徒会室への道中、俺は問う。
八幡「なあ、お前はどう思ってる?吸収された方がいいのか、独立がいいのか。折衷案もあるみたいだけどな......」
手短に、先ほど一色から聞いた話を伝える。
57: 以下、
八幡「つまり、今生徒会室には生徒会役員連中と平塚先生と雪ノ下がいるってことか?」
由比ヶ浜「うん、そんな感じ。そんなことより早く行こう!ゆきのんを助けなきゃ!」
果たして、俺はどちらの立場なのだろう。由比ヶ浜はどちらの立場なのだろう。
生徒会室への道中、俺は問う。
八幡「なあ、お前はどう思ってる?吸収された方がいいのか、独立がいいのか。折衷案もあるみたいだけどな......」
手短に、先ほど一色から聞いた話を伝える。
58: 以下、
由比ヶ浜「あたしは、皆で奉仕部やれて、なるべく多くの人を助けられればいいかなって」
八幡「端的に言え、お前は賛成か?反対か?妥協か?」
由比ヶ浜「まだわからないよ......私には難しすぎて、どうしてこんなに揉めてるの?ゆきのんはどうして反対なのかだって知らないもん!」
八幡「そうか、そうだな。その通りだな」
本当、どうしてしまったというのだろうか。
由比ヶ浜「着いたよ、生徒会室」
外からでも過熱する議論が聞こえる。
59: 以下、
八幡「さあ入ろう、ここでケリをつけたいが、一色がいなければ交渉妥結は厳しいだろうな」
扉に手をかけて引くと、そこにいたのは憔悴しきった雪ノ下であった。
雪ノ下「貴方も、来たのね」
平塚「やっと君のお出まし、か」
八幡「とりあえず状況を説明してもらわないと、な」
生徒会の書記が口を開く。
書記「私達が業務を行っていたところ彼女が訪れ、併合の件について詰問して来たんです」
書記「ここにいる副会長と会計と共に応対していたところですね」
60: 以下、
雪ノ下「ふざけないで!勝手にそんな事を進めるというのは自立的な部活動の侵害よ」
書記「先ほどから言っているようにそれは間違っています。そのようなことが無いように併合を進めてまいりますし、仮に外郭団体とする場合も貴方達の残存は保証します」
副会長「そもそもどうして反対なのか、その理由を聞きたいね」
憎々しげに煽る彼はなかなかの
興奮状態にいるようで、この場にいるほぼすべての人間がその毒にやられてしまっているようだった。
雪ノ下「まず、部活動の自立という根幹的な理念に反するということ。また、併合に関する手続きや、その定義自体が会則で定められていないこと。そして、外郭団体とするというのも、健全な部活動運営、また予算の透明性という面から反しているわ」
61: 以下、
書記「そもそも、部活動の自立を規定する会則だってありませんよ。そして組織系列上、各部活動は生徒会に属する機関とみなす、これは会則に保障されています。また併合に関する手続きがないとの事ですが、そういった記載されていない事に関する事態が発生した時は、その時の会長以下の判断によって対応を検討する事ができます。これも会則に保障されている事です。」
雪ノ下「......選挙で選ばれた生徒会の活動は前提として少なくとも総生徒の過半の賛成が得られている必要がある、この認識は間違っているかしら」
書記「私達はそれを理念としては理解していますが、あくまで努力目標であると認識しております。会則には個々の活動に関して選挙を必要とする、ということは定められていません。このことからもお分かりいただけるかと」
......堂々巡りどころか劣勢じゃないか。
62: 以下、
八幡「なあ、そもそもどうしてあんたらは併合したいんだ」
書記「現奉仕部の活動は、そもそま生徒会が行うべきものであるのではないか、我々はそのように判断致しました」
八幡「現生徒会にそのような部門を作ればいいんじゃ?その上で奉仕部と競争させれば互いの向上に繋がると思うんだが」
副会長「それは違うね。そもそも新設する場合は、そこに所属する人達の育成が必要となる。とりわけ経験を獲得することが求められると考えている。だが、これまでも似たような活動をしてきた奉仕部が存在する限り仕事の出来は明らかに劣るものとなり、依頼者は来ない。依頼者がこないと経験が得られず、そしてさらに経験を得続ける奉仕部との差は拡大する......そしてただのお荷物となるのは明白じゃないか」
八幡「...あと、折衷案だがこれに関して平塚先生は知っているのか?」
63: 以下、
平塚「ああ知っているとも。そしてそれがなんら会則違反はしていないという意見に同意だ。......さて君達、もう帰りたまえ。そろそろ下校時刻だ。戸締りは私がしておく」
副会長「わかりました」
書記「また明日」
会計「明日は結構立て込みそうなんであんま来ないでほしいけどね」
3人が退出する。
数十秒後、平塚先生は口を開いた。
平塚「これで、奉仕部メンバーだけで話ができるな」
八幡「大概あなたも狡猾というかなんというか......」
64: 以下、
平塚「なに、生き延びるためには必要なことだよ」
ずっと黙っていた由比ヶ浜が口を開く。
「ヒッキーでも論破できないなんて......」
別に俺は議論が得意なわけではないんだがな。
八幡「それは置いといて、まずは事情聴取だ。雪ノ下、なぜ単身乗り込んだんだ?俺のやり方を忌み嫌ったのはお前じゃないのか?」
雪ノ下「......あなたにはわからないわ、この感情は。由比ヶ浜さんにもね」
何か吹っ切れたような気がする。
八幡「ふざけんじゃねえぞ。お前な、ここで完全に言い負かされたらあいつらの思う壺だ。そうなれば、ここであいつらが述べた論理がすべて成り立つことをお前が認めたことになってしまう、わからないのか?」
由比ヶ浜「ゆきのん、おかしいよ......さっきだって途中で逃げ出しちゃうし、今だっていつもみたいに冷静じゃないよ」
雪ノ下は俯き、そしてなにも答えない。
65: 以下、
平塚「君達の関係というのも大概歪かつ閉鎖的であってな、そこに新しい人間が入ることもいいんじゃないかと思っている。私としては併合には賛成だ。そして、外郭団体とするという案自体は非常に面白いと思っている。奉仕部と生徒会間の繋がりを強固にできるというのは、奉仕部にとってもいいことじゃないのか?」
八幡「確かに、生徒会への相談者をこちらに回してもらったり、生徒会の業務をアウトソーシングしたり......あいつらは楽できますよね」
平塚「そして君達は身に余る予算額を手に入れ、かつ生徒会員でないのにも関わらず生徒会業務に介入できる、というわけだ」
雪ノ下「そんなことは明らかに理念に反するわ。部活動は須く生徒会などからある程度独立すべきで、予算につられて接近するなんてことはあってはならないじゃない」
由比ヶ浜「でもさ、別にその理念に反したって困る人はいないよね?もちろん貰える予算額が少し減っちゃう部活はあるかもだけど、それよりも相談者を斡旋してもらえたりする方が活動理念としては正しいよね」
静寂が訪れる。そろそろ帰りたくなってきたんだけどな。
66: 以下、
みんなそう思い始めていたのだろうか、唐突に平塚先生が口を開いた。
平塚「とりあえず今日は帰りたまえ、そして考えを整理するんだ。明日君達の意見を聞こう」
雪ノ下「わかりました。では私は帰りますので」
立ち去ろうとする彼女の背中に浴びせられようとしていた言葉は、多分飲み込まれたのだろう。
八幡「由比ヶ浜、帰ろう」
由比ヶ浜「......そうだね」
平塚先生「気をつけて帰りたまえよ」
67: 以下、
......扉を開けると、そこには重々しい表情を浮かべる一色の姿があった。
いろは「せんぱい久しぶりです」
八幡「......俺はこいつと話してくから、とりあえず先帰っててくれ」
由比ヶ浜「ふーん......まあいいや、じゃあ帰るね」
八幡「おう」
由比ヶ浜と別れ、一色と話してみることにした。
いろは「私、あのあと一回教室寄ってから生徒会室に行こうとしたんですけどね......まあご存知の通りいろいろ揉めてたんで、まあ適当に暇つぶししてたんですよ」
68: 以下、
八幡「で、もう終わったかと思ってのこのこ生徒会室を訪れたというわけか」
いろは「言いたい事があるのはわかります。でも、平塚先生が言ってたように、とりあえず明日に持ち越しませんか?そこである程度の決着はつけようと思ってます」
八幡「...ああ、そうだな」
いろは「一つ言わせてもらうと、予算が増えれば組織としての重要性が増しますからね、なかなか潰しにくくなるわけですよ。外郭団体にしてお金流せば、それこそ一蓮托生ですからね」
八幡「あいつらは、 お金を流すことを合法だと認識していたぞ?」
いろは「ええ、解釈上は合法でしょうね。でも、公になれば生徒からの批判は免れません。それは、奉仕部も同じでしょう?」
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八幡「こちら側のメリットをまとめると、生徒会との関係強化、相談者斡旋、予算拡大で組織としての重要性を高められる、仮に合併するなら人員確保もやりやすくなる、ということか?」
いろは「デメリットは、ばれた時のリスクや独立性が損なわれること、ですかね。どうします?」
八幡「まあその辺は明日な。とりあえず俺は帰る」
いろは「......お疲れ様です」
家に着き、飯を食べ、風呂に入り、床に着く。
精神的疲労は絶頂に達し、もはや明日自分が屋上に呼び出されていることすら忘れそうな勢いであった。
八幡「結局誰なんだろうな、あれは」
...その問いの答えがわかるまで、あと十数時間。今はただ、明日の「意見表明」に備えて疲れた頭を動かすだけだ。
70: 以下、

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