【SS】にこ「あれから五年も経ったのね…」back

【SS】にこ「あれから五年も経ったのね…」


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「っぐすっ…にこちゃ…勉強、出来ないんだからっ、もう一年…居なきゃ、駄目だよっ!」
いつもニコニコと笑っているはずの凛の目から涙が溢れている。
「べ、つに…にこちゃん達が居なくたって、やっていける、わよ…」
俯いている真姫ちゃんの目は前髪で隠れて見えない。声が震え、地面にぽた、と雫が落ちる。
「私っ…にこちゃんの事、凄く尊敬してるんだっ…!
…そのにこちゃんにがっかりされちゃわない様に、部長、頑張るねっ!」
二人の様に涙を流している訳では無いけれど、緑色の瞳には涙の膜が張っている。
「真姫、凛……
ほら、泣かないのっ!このにこにーの次に可愛い顔が台無しでしょ?」
ごしごしと泣いている二人の顔をカーディガンで拭う。
「花陽。…頼りにしてるからね。部長の役目を任せられるのはアンタだけよ。」
「にこちゃ…」
「っ…じゃあね!ダンスの指導でもしに、また遊びに来てあげるわよっ!」
夕陽に向かって足を進める。
私がここでやるべき事は全部終わらせた。
悔いなんて一個も無い。
…なのになんで頬が濡れているんだろう。
あの子達からは見えていないんだろうけど。
家に帰るまでは泣かないって…決めたんだけどね。
「…きて、お…さ……」
6:
「…きて、お…さ……」
「お姉様!起きて下さい!」
「んっ…こころ…ごめんね、寝てた?」
目を開けると見慣れた天井と、夢に出てきた頃よりも成長したこころが映った。
「大丈夫ですよ!それより夜ご飯、出来ましたよ。」
「え!?大丈夫?怪我とかしてない?」
「お姉ちゃん心配し過ぎだよー」
台所からここあが顔を覗かせた。
「そうですよ、お姉様がお仕事をされている時は私達が作ってますし!」
「あ、そういえば……ふふ、ありがとうね」
こころの頭を撫でると、ここあも台所から出てくる。
「もー…お姉ちゃん!作ったのこころだけじゃないからね!」
「分かってるわよ。ありがとう、ここあ。」
ここあの頭を撫でると満足気に目を細めた。
hihihi!ニッコリシテミテヨー!
「ちょっとごめんね。」
仕事の連絡かな…
「…え?」
携帯の画面は懐かしい名前を表示していた。
『もしもし、にこちゃん?穂乃果だよー!久しぶり。元気してる?』
あの頃と変わらない声が心地良い。
「相変わらず元気ね…元気よ。」
『だよね!よくテレビで見てるよー!』
「ありがと。ところで何で電話掛けてきたのよ?」
『あ、そうだった!』
「アンタねぇ…」
これでよく生徒会長を務められたわね…まあ、あの二人のフォローもあったんだろうけど。
『μ'sのメンバーで同窓会しようよ!』
10:
ガヤガヤと騒がしい店内を見渡すとオレンジ色の髪が目に入った。
「あ!にこちゃん!こっちだよー!」
満面の笑みで手を振る穂乃果の元に向かうと、来ていたのは海未と穂乃果、希だけだった。
「にこっち、久しぶりやなぁ…サインくれへん?」
そう言って笑う希は昔と全然変わっていなかった。
あの頃から大人っぽかったのもあるんだろうけどね…
「スーパーアイドルにこにーのサインなんて…ちょーレア物なのよ?そう簡単には書けないにこっ♪」
希の横に腰を下ろす。
「にこ、お久しぶりです。テレビでよく見ます。凄いですね…歌も上達していますし。」
「そう?ありがと。……にしても海未…綺麗になったわね。」
綺麗な青い髪が短くなっていて若々しく感じる。
「そんなこと無いですよ…でも、誉められるのは嬉しいですね。」
「にこちゃん!希ちゃん!海未ちゃんね、お家継いだんだよー!」
「凄いなぁ…ウチはあの神社で働いてるんよ。」
「全然気付かなかったわ…意外と皆近所に居るのね。…そういえば他の皆は?」
「皆さん仕事が忙しいらしく…凛なんかはテストの採点が間に合わないって、とても焦っていました。」
海未が言い終わると同時に、にゅっと顔を出したのはまさに今話をしていた凛だった。
「皆久しぶりー!凛の事呼んだ?」
11:
「凛ちゃん!久しぶりー!テストの採点どう?」
「あ、あはは…日曜日も学校いかなきゃ…」
「新人さんは大変やねー…」
「あれ、海未ちゃん髪切ったんだ。可愛いね!」
「あ、ありがとうございます…凛、猫語は使わなくなったんですか?」
「まあねー…時々出ちゃいそうになるけど。」
「あの頃に比べて随分大人しくなったわね…」
「ふふっ…赤点にこちゃん久しぶりだにゃー!」
そう言って抱き着いてきた凛を引き剥がす。
「どぅわれが赤点よ!回避したわよ!」
「うふふ、それは誰のおかげかしら?」
13:
「えりち!」
「久しぶりー、赤点にこさん?」
今では希より大人っぽくなった絵里に軽くデコピンをされる。
「うぐっ…絵里…ぬぁにすんのよっ!」
「ごめんなさい、つい懐かしくて…」
そう言って笑うと凛が絵里の腕に抱き着いた。
「絵里ちゃん!絵里ちゃんは今何やってるの?」
「凛…にゃーは言わないの?」
「中学校の先生がにゃーにゃー言ってたら怒られちゃうにゃー」
「凛は中学校教師になったのね。私は…アナウンサーの見習いってところかしら。英玲奈さんと同期なのよ。凄くないかしら?」
絵里は楽しそうに話してから穂乃果に目を向ける。
「今日の事…企画してくれてありがとう。何か頼んだ?」
「ううん。まだだよ!皆が集まってから乾杯したくて!」
個室のドアが勢い良く開かれる。
「お、お待たせしましたっ!」
23:
「って、あれ?私、最後じゃなかったんだ…」
はぁはぁと息を切らしている辺り走ってきた事が伺える。
「花陽。久しぶり!」
「かよちん!一緒に座ろ!」
「うん。ありがとう、凛ちゃん。ふぅ…皆久しぶり!」
「久しぶり?…今は何してはるん?」
「保育士だよ。皆可愛いんだ?」
幸せそうな笑顔を浮かべた花陽はあの頃と変わっていないメンバーの一人かな、何て思いながら話を進めていった。
「そういえば!…に、にこちゃん…あのね…?」
鞄から何か取り出したかと思えばそれを渡された。
「サイン下さいっ!」
「ふふ、花陽もアイドル好きだものね。いいわよ。部長を務めたご褒美にこっ☆」
花陽の顔がパアッと明るくなった。
「ありがとう、にこちゃん!」
サラサラとペンを走らせる。
背後に足音が聞こえたかと思うと、勢い良く扉が開いた。
「やんやん遅れそうです…遅れてごめんなさいっ!」
26:
「ことり、久しぶり。」
「久しぶり?…あれ…?真姫ちゃんは?」
ことりはデザインの道に進んだ。私もことりがデザインした服をいくつか持っている。
…恥ずかしくて今日は着て来れなかったけど。
「真姫ちゃん、お医者さんになるための勉強忙しいんだって!大変だよねー…」
ことりが入ったきり開けっ放しになっていた扉から最後の一人が入ってきた。
「皆、お待たせ。久しぶりね。」
「真姫ちゃん久しぶりにゃー!」
凛が猫語を使っている横で花陽が苦笑いを浮かべる
「凛ちゃん…猫語…」
「あっ!またやっちゃた…真姫ちゃん久しぶり!」
「久しぶり。皆何も頼んで無いの?」
「うん!皆で乾杯したくて!」
穂乃果がじゃあ皆何飲むー?とメニューを手渡す。
「凛はウーロン茶でいいかな。あんまり飲んじゃうと明日大変な事になっちゃうし…」
「私もウーロン茶でいいよ。二日酔い大変だもんね…」
「二人とも真面目やね?…ウチはビールいっちゃおうかな?」
「にこはぁー、酔ってますます可愛いくなっちゃってるプライベート写真を撮られたら困っちゃうからぁ、お酒は飲まないにこっ☆」
記憶が無い時に撮られてると厄介だしね。
「そう言って飲みたくなっちゃうんじゃない?あ、私はワイン。」
「私もワインで。明日勉強出来なくなったら大変だし。」
「私はウーロン茶でお願いします。」
「ことりはジュースで割ってるのなら何でもいいよ?」
「半分がウーロン茶なのー?穂乃果はビールにしよーっと」
穂乃果が廊下側に頭を出す。
「すいませーん!注文お願いします!」
すぐに店員さんがやって来て注文をすると、お辞儀をした後足早に出ていった。
27:
昔の思い出や今の職業について…色々な事を語っている間に飲み物が運ばれた。
「皆いい?せーのっ」
「「「「「「「「「かんぱーいっ!!!」」」」」」」」」
ビールを頼んだ二人はゴクゴクと飲み進めてる。
「ねえ、また集まったりせえへん?来月でも、五年後でも。」
ビールを半分も減らした希が頬杖を付きながら語りかける。
「それ良いわね。その頃には医者になれてるといいけど…」
ワインを置き、目を細めた真姫に海未が声を掛けた。
「真姫ならできますよ。頑張って下さい。」
「ええ…ありがとう。」
「なあ、えりち?」
「何?」
希の顔がほんのり紅くなっている。
「ウチな、こうして集まれたの、凄く嬉しいんよ。…えりちはどう思う?」
「私だって嬉しいわよ。こうして…また集まれるなんて、思って無かったもの。」
「やっぱえりちもそうなんやねー…」
懐かしいなー…そういって伸びをする希は自由気ままな猫の様だと思った。
「かよちんの働いてる保育園の子が凛の働いてる中学校これたらいいねー」
「そうだねー…でも凛ちゃん、中学校の先生大変じゃない?」
「全然大変じゃないよー!皆可愛いにゃ♪」
「ねえ、にこちゃん。」
「っへ?」
自分に話し掛けられるとは思って無かった。
思わず声が上擦ってしまって恥ずかしい。
「あのね、にこちゃん…私…にこちゃんの衣装を作りたい!デザインだけじゃなくて、一から作りたいの!」
ダメ…かな?そう言って見つめてくることりに返事をし、トントン拍子で話が進んだ。
「次のライブ、どんな曲やるの?」
「次は可愛いじゃなくて格好いいを目指そうと思ってるの。いける?」
「うん!全然大丈夫!」
なんだかあの頃に戻ったような気がした。
28:
「…さて、もう帰る時間、ですね…」
「穂乃果ちゃん、起きて?!」
「帰りたく無いなぁ…」
「あはは…私もそうかも…」
「…楽しかったわね。」
「希ちゃんが言ってたようにさ、また集まろ!…ね?」
「それいいわね。」
明日になれば、また仕事が待っている。
でもその仕事も…
「ねえ、希。耳貸して?」
「ん??」
「私、次のライブが終わったら、アイドルのマネージャーに転職しようかと思ってるの。」
end
29:

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