高垣楓「二分二十秒の気持ち」back

高垣楓「二分二十秒の気持ち」


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最近はともかく関西じゃペヤングは馴染みが薄かったからしゃーないな
26: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:40:47.17 ID:9gikU85z0
 楓「へえ」
 プロデューサーの、意思の籠もった強い視線を浴びながら、楓はなんでもない様子で返した。
 むしろ、お前の威勢はその程度かと笑い飛ばさんばかりに、逆に彼を見つめ返す。まったくの無表情だった。
 それから、お互いに全く動かず、なにも話さない、完璧な沈黙の時間が降った。
 五分だろうか、はたまたそれ以上だろうか、永遠とも感じられるその静けさを破ったのは、楓だった。
 視線は相手を捉えながら、悠然と佇んでいた姿勢だけを解いて、事務所の奥へと歩を進める。
 プロデューサーも、楓の挙動に追従するように、お互いの距離を一定に保ちながら移動する。
 二人の進む先には、ガラステーブルを挟んで、一対のソファがあった。
27: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:41:41.65 ID:9gikU85z0
 殆ど同タイミングでソファに腰掛けた二人は、改めて面と向かい合う。
 一方の楓はソファに浅く腰掛け、もう一方のプロデューサーは、ソファ中腹に腰掛け、脚を組む。
 P「いいでしょう。こうなればどちらの推しカップ焼きそばが美味しいか、徹底的に討論しましょうよ」
 P「派閥が違う以上、いつか起こるだろう争いは避けられないだろうし」
28: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:45:30.55 ID:9gikU85z0
 自分が、これが一番だといって疑わないものがあったとして、他の全員が全員ともそうだと頷くことは滅多にない。
 別のものを一番だというひとも中にはいるだろう。
 自分が選んだものを指して、少なくともそれは一番ではないというひとも、中にはいるだろう。
 そして、往々にして意見の対立する者同士は、相いれないのだ。
 どちらかが屈服するまで、諍いは続くのだ。
 楓「いいえ」
 しかし楓の言葉は、違った。
29: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:47:07.36 ID:9gikU85z0
 楓「そうじゃありません」
 楓「私達は、そんな無用な争いはしてはいけない」
 プロデューサーは神妙な顔つきのまま、言葉の続きを促した。
 楓「まず最初に、誤解のないように言っておきたいのですけど」
 楓「ペヤングは、美味しいです。とても、とても」
 ほんの微かに、プロデューサーが目を見開いた。
30: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:48:23.23 ID:9gikU85z0
 楓「酸味の効いた、あっさりした味付けが舌に馴染むソースに、細くてつるつると食べられる麺が、たまりません」
 堰を切って楓が話し始める。
 楓「食べるほどに癖になる謎の肉と、瑞々しいキャベツの食感。キャベツに至っては、市販のカップ焼きそばに付属する加薬の中では、トップクラスの満足度です」
 窮屈だった場所からなんとか抜け出すように、言葉は彼女の口から次々に飛び出してゆく。
 楓「コショウも忘れちゃあいけません。ペヤングはスパイスの調合も素晴らしですし、ふりかけの胡麻もきちんと仕事をしている」
 それはまさしく、感情の奔流だった。
 もしも言葉が色彩を持ったとしたら、楓のそれは、燦然と輝いていただろう。
31: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:49:47.51 ID:9gikU85z0
 熱量をもって滔々と語る楓は、プロデューサーを前にして一歩も臆する様子を見せなかった。
 楓「超大盛りになると桁が一つ繰り上がるカロリーだって、人間が生きていくために必要な熱量なわけです」
 楓「夜中に空腹で目が覚めた日などに、人目を憚らずにかきこむペヤングの暴力的な魅力、それは美味しいと評さずにはいられない逸品です」
 話しながらペヤングの味を思い出したのか、楓の口元が微かに緩んでいる。
 しかし同時にどこか、彼女は悲しんでいるようにも見えた。
 P「…………」
 プロデューサーは、組んでいた自分の脚を解いた。
 目線は油断なく彼女を捉え続けたままでいるが、もはや攻撃的な態度は拭い去られていた。
 楓「その美味しさをもってして、プロデューサーさんは世界一と評するわけなんでしょうけど」
 楓の口上はまだ続く。
 しかし彼女の表情はいつの間にか、くすんでしまっている。
32: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:51:07.19 ID:9gikU85z0
 楓「そもそも、私やプロデューサーさんがいう『一番』美味しい、という表現は、各々の私見、つまるところ個人の好みに過ぎないんです」
 当たり前のことを、しかし罪状を言い渡すように、重苦しく楓が呟く。
 なんだそんなこと、と笑われてしまいそうなその言葉は、しかしプロデューサーには響いたようだった。
 楓の言葉を受けて、プロデューサーがその続きを継ぐ。
 P「……だから、どんなに思い入れが強くても、言葉を選ばずにいってしまえば、それは自己満足に過ぎない」
33: 以下、
音声OFFにしてたらすごく真剣な話し合いなんだけどカップ焼きそばなんだよなぁ
34: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:53:59.64 ID:9gikU85z0
 楓「……ええ」
 楓「生まれもった環境やなにを食べて育ったかなんて、星の数だけ人間がいるんだから、好みだって星の数だけ存在するだろうって、それはわかります」
 あまねく人間に味覚というものが備わっており、その人間が七十億も存在する中で、一番うまいカップ焼きそばを、誰もが納得する形で決定することは、不可能だ。
 幾千の美辞麗句を並べ立て、主張を続けたとしても、だからといって絶対的な順序が決まるわけではない。
 これはなにも、カップ焼きそばに限定した話ではない。
 あるものについて、誰かが好きだと主張しても、別の誰かは好きではないというかもしれない。
 といって、多数派であればいいという話でもない。
 人間の感性は、数字によって左右されるはずがない。
35: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:55:01.35 ID:9gikU85z0
 そして人間の感性は、数的な面だけでは観測できない輝きを秘めているのもまた、事実だ。
 アイドルに魅せられるファンがいる。
 ファンに背中を押されて、夢や希望を振り撒くアイドルがいる。
 カップ焼きそばを愛してやまない人間が、いる。
36: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:56:38.11 ID:9gikU85z0
 楓「……それを踏まえてなお、私達が主張したいのは、それを私達がどれだけ好きか、という気持ちの大きさなんです」
 楓「そしてそれは決して、相手を突き落とすための武器になってはいけないんです」
 だから、楓のその言葉には、希望が宿っている。
 自分の好みのカップ焼きそばを堪能し、相手の好みのカップ焼きそばを称え、お互いにその素晴らしさを認め合う。
 人間は途方もない時間をかけて、お互いに共存しあう道を得た。
 時には味を巡って対立してしまうこともあるだろう。
 心ない言葉で相手を傷つけてしまうこともあるだろう。
 彼らはその度に、気付かされるのだ。
 なにかを好きだと主張するということは、簡単な話ではないことを。
 相手の"好き"を認めた先に、自分の"好き"が認められるということを。
37: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 22:58:30.90 ID:9gikU85z0
 P「……今日は、腹を割って語り合いませんか」
 一度、ぴんと背筋を伸ばし、深く呼吸をしてプロデューサーが楓に提案をする。
 語り合う内容は、もはや、自明だった。
 楓も、仕事場で見せる以上に真剣な面持ちになる。
 しかし、色彩の異なる両の瞳は、熱意に煌めいていた。
 楓「プロデューサーさんに残されたお仕事は、消化しなくていいんでしょうか」
 P「そんなものはいつでもできます、でも」
 P「やっと本気で話せるひとに出会えたんだから、いまはただ、話したい。駄目でしょうか」
 楓「いいえ」
 楓の否定は簡潔でいて、とても力強かった。
38: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:00:31.61 ID:9gikU85z0
 どれがどれより美味しいとか、あれと比べてこれだけ売れてるとか、そんな話は全国中どこでも起こっているだろう。
 二人の対談と、それらの決定的な違いは、そこに宿る愛の大きさである。
 強い"好き"の気持ちをぶつけ合い、確かめ合える相手がいるのも、幸せのひとつの形なのかもしれない。
39: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:02:23.14 ID:9gikU85z0
 楓「一平ちゃんの話をしましょう」
 挑戦的な笑みを浮かべて楓は、プロデューサーを見据える。
 彼もまた、彼女とよく似た表情になる。
 P「一平ちゃんについて俺がまず素晴らしいと感じるのは、からしマヨネーズよりも、麺の食感なんですよ」
 プロデューサーが開口一番にそう言うと、楓の表情がぱっと華やいだ。
 楓「そう、そうなんです。わかっていただけますか」
40: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:05:15.78 ID:9gikU85z0
 P「楓さん、あなたが、お湯を入れて三分で出来上がるタイプのカップ焼きそばを作るとき、お湯はどの時点で捨てますか?」
 楓「通説では二分二十秒台後半が最も美味しい加減にできあがるとされてますよね」
 P「ええ。平均的なラップタイムではそうです」
 楓「私の場合ですと、二分二十秒です」
 楓の言葉に、プロデューサーは小さく指を鳴らした。
 P「一平ちゃんならそのラップタイムで十分なパフォーマンスを約束できます。いやむしろ、それぐらいがいい」
 楓「そうなんです。二十秒の時点で湯切りを始めることで、一平ちゃんの細麺がなんともいえない歯ごたえになるんです」
 両頬に手を当てて、楓が瞳を輝かせる。
 楓「もちろんソースとの絡まり方もあるんでしょうけど、なんであんなに一平ちゃんの麺は美味しいんですかね」
 プロデューサーも興奮気味に頷きながら同意する。
 P「俺もあれは、奇跡を体現した食感だと思います」
41: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:07:55.11 ID:9gikU85z0
 楓「そこにきて、からしマヨネーズだって、革新的な発明だと思います」
 P「焼きそばにマヨネーズだなんて邪道だという意見も少なくはありませんが、俺は有りだと思います」
 それにね、と楓が続ける。
 楓「他社にもからしマヨネーズを小袋に採用している商品はありますが、群を抜いて一平ちゃんのからしマヨネーズが美味しいんですよ」
 P「わかります。辛みの按配がたまりませんよね」
 プロデューサーも、楓の言葉にいたく同意した。
 楓「からしマヨネーズが絡むことで、ぐっと味が引き立つんです」
 P「そうそう。明星の焼きそばは基本的にソースが甘めでパンチが薄いんですけど、一気に味をまとめてくれる」
 お互いの視線がぶつかる。
 どちらからということもなく、ごく自然な流れで二人は手を差し出し、堅い握手を交わした。
42: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:11:28.99 ID:9gikU85z0
 P「こってり甘めのソースと、絶妙な歯ごたえの細麺の親和性」
 楓「そして、麻薬的なからしマヨネーズ」
 P「たしかに素晴らしいカップ焼きそばだといえます」
 楓「明星の系列だと、ごつ盛りも捨てがたいですよ」
 食べたくてたまらないといった表情で、楓が言う。
 P「俺も、あれは食べ応えがあって大好きです」
 楓「一平ちゃんの築いた風土を大切にしつつ、あの容量を実現した明星のホープです」
 二人の夜は、まだまだ深まる。
43: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:14:06.08 ID:9gikU85z0
 楓「オタフクお好みソース味焼きそばはどうでしょう」
 P「いいですね。麺の感じがのっぺりとしていて、それがソースと絡むとまたうまいんです」
 味を思い出したのか、話しながらプロデューサーは目を細めた。
 楓「食感が頼りないと感じてしまいますが、味は流石のオタフクソースですよね」
 P「濃い味のソースにはストレート麺が合いますが、ストレート麺の食感は食べ慣れていないとちょっと拍子抜けするかもしれませんね」
 楓「でも、嫌いではないですよ? ストレート麺は。今後の発展が大いに楽しみです」
 P「ふふん、俺も好きです」
 ふと楓が、疑問に思ったことを口にする。
 楓「……そういえば幸子ちゃんって、カップ焼きそばとか食べるんでしょうか」
44: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:16:24.37 ID:9gikU85z0
 P「聞いたことないですね。あの子、いいとこのお嬢様だから食べたことすらなさそう」
 楓「じゃあ今度聞いてみませんか?」
 P「あわよくばすすめましょう。いや、でも食わず嫌いするかもな」
 楓「それは……どうでしょうか」
 楓が口元に手を当て、考えるポーズを見せる。
 P「いや、あの子って年齢の割にはかなりしっかりしてますし、健康に悪いとか言いそうでしょ」
 プロデューサーがそう言うと、少し呆れたように楓がため息を吐いた。
 楓「あのですね」
 楓「カップ焼きそばというものは、誰かと一緒にじゃなくて、一人で食べるものなんです。それも、カロリーやそれに準じるしがらみから解放された状態で」
 P「それは、そうだと思いますけど」
 P「でもそれは食べ慣れてる俺達の発想でしょう? 幸子だったら敬遠しそうですよ」
45: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:20:13.35 ID:9gikU85z0
 楓「麺のかたさ加減とか、食べるペースとか、食べる時間帯とか、そういうことを誰に気を遣うでもなく、気ままに食べられるところもカップ焼きそばの良いところだと、私は思います」
 楓「それって、私みたいに友達を作るのが下手っぴで、一人で行動しがちな人間とか、普段、周りのひとに振り回されているようなひとにとっては、嬉しいと思うんです」
 楓「だから、意外に幸子ちゃんみたいなタイプがハマっちゃうんですよ」
 もちろん味の方も美味しいんですけど、と楓が小さく付け加えた。
 P「あれ、でも楓さん、一人でどうたらとか言いながら、さっき俺と一緒に食べようって言ってくれたじゃないですか?」
 プロデューサーがそう言うと、楓は微笑みながら、
 楓「他のひとには言えません。プロデューサーさんだから、言ったんですよ?」
 楓「……ああ、いやつまり、それだけ心を許せると言いますか、その」
 楓「えっと……はい、そんな感じです」
 話しながら徐々に勢いがなくなってゆく楓の顔を、プロデューサーがまじまじと見つめる。
 視線に気付いた彼女が、ふいっと目線を逸らす。
 心なしか、頬が紅く染まっている。
 楓「な、なんですか」
 P「楓さんって……」
47: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:22:42.31 ID:9gikU85z0
 P「……今更ですけど、食生活は大丈夫ですよね?」
 楓「……はい?」
 P「あらためて、楓さんはかなりカップ焼きそばに精通してらっしゃると思ったんですが」
 P「もしかして、ご自宅では毎食とはいかないまでも、そこそこ食べているのでは、と」
 P「もしもそうなら、アイドルなので、プロポーションや健康にも気を使っていただかないといけないので、その」
 頬を染めたままの楓が反論をする。
 相変わらず目線は逸らされたまま。
 楓「いまは、そんなに食べなくなったんですけど」
 P「な、なるほど、失礼しました」
48: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:24:54.04 ID:9gikU85z0
 楓「……そりゃあ、モデルのお仕事を始めるにあたって上京してきたときは、初めての一人暮らしでしたし、自炊も下手っぴでした」
 楓「そんなときにお世話になったのがカップ焼きそばで、当時の私がその味にハマってしまったと、言えないこともありません」
 楓「いままで片手で数えられるぐらいの回数しか食べたことがなかったのに、ちょーっと集中的に食べすぎた時期もあったかもしれません」
 楓「でもいまは、違います」
 楓「なぜなら、私はアイドルですから」
 楓「他の一流アイドルを相手取る……ふふ、アイ、ふふふ、アイドルですから」
 P「最後で台無しなんですが」
49: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:25:55.23 ID:9gikU85z0
 楓は、んんっ、と大きく咳払いをして、
 楓「あのですね」
 楓「……そりゃあ、モデ」
 P「やり直さないの」
 楓「むう」
50: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:27:25.58 ID:9gikU85z0
 楓「……でもですね」
 急に楓の声が、消え入るようなものになる。
 楓「アイドルになっていなくて、あのままモデルを続けていたら、いまもまだ私は一人のままだったかもしれません」
 P「……楓さん」
 話す言葉の一文字さえも、慎重に選りすぐるようにして、楓は丁寧に話す。
 楓「一人でいるのは、たしかに楽です」
 楓「アイドルを始めるまではそう思っていました」
 楓「でも、一人だと、楽しくないです」
51: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:33:45.35 ID:9gikU85z0
 楓「誰かを幸せにして、自分も幸せになれるこの仕事が好きです」
 楓「色んなアイドルがいて、お互いを認め合えるこの事務所も好きです」
 楓「毎日が充実していて、まるで夢みたいで、」
 楓「……あと、好きなものについて熱く語れる相手もできましたし」
 楓「これからも、ご迷惑をおかけしますが、お世話になります」
 幸せを噛みしめるような楓の言葉が、プロデューサーに届く。
 しんと静まり返った事務所に、二人の息遣いだけが宿る。
 押し黙った楓は俯いていて、その表情をプロデューサーが窺うことはできない。
 P「……あー、楓さん」
 楓「……はい」
 P「俺、いまから酒買ってきます。今日は飲み明かしましょう」
 楓「えっ?」
 プロデューサーの声が、僅かに震えている。
 顔を上げた楓の瞳に移ったプロデューサーの目元には、小さな涙が浮かんでいた。
52: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:35:01.95 ID:9gikU85z0
 P「だから、一緒に乾杯しましょう」
 楓「でも、なにに?」
 困惑した表情で、楓はプロデューサーに尋ねた。
 P「それはもちろん、愛するカップ焼きそばに」
 P「と、言いたいところですが」
53: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:35:50.66 ID:9gikU85z0
 P「楓さん、他ならないあなたに」
 そう言ってプロデューサーは、屈託のない笑みを浮かべた。
54: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:37:40.77 ID:9gikU85z0
 P「移籍したてのあなたは、どこか息苦しそうでした。あんまり自分を出さない印象もあって、なんとなく遠慮がちで」
 P「うちのアイドル達の多くは、うるさ、元気なひとが多いから、だから、ちょっとだけ心配でした」
 P「でもそれは杞憂だった。いまや楓さんも、うるさ、いやまあ、アイドルを楽しんでいただけているようで」
 楓「……プロデューサーさん?」
 P「と、とにかくですね、俺が言いたいのは」
 P「こちらこそ、これからもよろしくお願いします、ってことです」
 P「あなたがシンデレラになるまで。そして、シンデレラになってからも」
55: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:39:36.65 ID:9gikU85z0
 P「勝手に感極まっちゃってごめんなさい、要するに、諸々の前祝いみたいなものです」
 照れたように笑いながら買いに出るプロデューサーの背中を、楓は静かに見送る。
 その目はどこまでも優しく色づき、口元には柔らかな笑みがたたえられている。
 彼女は既に勘付いている。
 彼女の、彼に対する想いと、
 彼の、彼女に対する想いの種類の違いを。
56: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:42:00.83 ID:9gikU85z0
 楓「ふふっ」
 それでも楓は、幸せそうに笑う。
 今日この瞬間だけは、プロデューサーを独り占めできるのだから。
 お互いだけを見て、二人だけで話して、酌み交わすことができる。
 それだけで、十分すぎるほどに満足だった。
 楓「さて、と」
 やがて楓もソファから立ち上がる。
 もうすっかり冷めてしまったお湯を、沸かしなおさなければならない。
57: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:45:22.63 ID:9gikU85z0
 それから少しして、プロデューサーが購入したつまみを二人でつつきながら、
 楓「いまさらなんですけど、私がこんなにカップ焼きそばが好きなことは、恥ずかしいので誰にも言わないで下さいませんか?」
 そう言って楓は照れたようにはにかんだ。
 P「やっぱり女性的にはまだまだハードル高い食べ物ですもんね」
 楓「ええ、残念ながら……あ、そこの塩辛取って下さいな」
 P「任せて下さい。二人だけの秘密にしましょう。はい、塩辛どうぞ」
 楓「……」
 P「あれ、楓さん?」
 楓「ずるいなあ、プロデューサーさんは」
 P「なにかおっしゃいましたか?」
 楓「大したことじゃありません」
 P「気になるじゃないですか、教えて下さいよ」
58: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:49:09.42 ID:9gikU85z0
 ご多分にもれず、アイドルである楓にとって、恋愛事はご法度である。
 楓だって、そのことはもちろん理解している。
 隠さなければならない感情も、普段はおくびにも出すことはない。
 でも、稀に彼女の中の悪魔が甘言を囁いて、思わず思いの丈をぶつけてしまいそうになることもある。
 その度に、甘く、柔らかく伸びきって、融けてしまいたくなる欲望を堪えて、また、その感情を大切にしまいこむのだ。
 ガラスの靴を履ける、その日まで。
 楓「二分二十秒ぐらいが、一番いいんです」
 楓「うっかり気を抜くと、伸びてしまいますから」
59: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:51:57.97 ID:9gikU85z0
 これでおしまいです。
 最後まで目を通していただきました方に、感謝いたします。
60: 以下、
おつ
カップ焼きそばはやきそば弁当が最高なので北海道に来た時はどうぞ
61: ◆K5gei8GTyk 2016/06/25(土) 23:55:45.38 ID:9gikU85z0
 やき弁は細麺が最高に美味しいので大好きです!
 依頼出してきます
62: 以下、
この時間に飯テロはヤメロォ!!
色々良かった乙
64: 以下、

カップ焼きそばの中じゃ BAGOOOONが絶対一番
他の焼きそばはBAGOOOONの前では
…俺グルメじゃねぇかぁ…(馬鹿力並感)
63: 以下、
おつおつ
明日の昼飯はカップ焼きそばにするか
元スレ
http://ex14.vip2ch.com/news4ssnip/kako/1466/14668/1466859487.html
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一方通行「あァ!? 意味分からねェことほざいてンじゃねェ!!」黄泉川ァアアアアアアアアアア!!
さやか「さやかちゃんイージーモード」オナ禁中のリビドーで書かれた傑作
まどかパパ「百合少女はいいものだ……」君の心は百合ントロピーを凌駕した!
澪「徘徊後ティータイム」静かな夜の雰囲気が癖になるよね
とある暗部の軽音少女(バンドガールズ)【禁書×けいおん!】舞台は禁書、主役は放課後ティータイム
ルカ子「きょ、凶真さん……白いおしっこが出たんです」岡部「」これは無理だろ(抗う事が)
岡部「フゥーハッハッハッハ!」 しんのすけ「わっはっはっはっは!」ゲェーッハッハッハッハ!
紅莉栖「とある助手の1日ヽ(*゚д゚)ノ 」全編AAで構成。か、可愛い……
岡部「まゆりいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!」SUGEEEEEEEEEEEEEEEEE!!
遊星「またD-ホイールでオナニーしてしまった」……サティスファクション!!
遊星「どんなカードにも使い方はあるんだ」龍亞「本当に?」パワーカードだけがデュエルじゃないさ
ヲタ「初音ミクを嫁にしてみた」ただでさえ天使のミクが感情という翼を
アカギ「ククク・・・残念、きあいパンチだ」小僧・・・!
クラウド「……臭かったんだ」ライトニングさんのことかああああ!!
ハーマイオニー「大理石で柔道はマジやばい」ビターンビターン!wwwww
僧侶「ひのきのぼう……?」話題作
勇者「旅の間の性欲処理ってどうしたらいいんだろ……」いつまでも 使える 読めるSS
肛門「あの子だけずるい・・・・・・・・・・」まさにVIPの天才って感じだった
男「男同士の語らいでもしようじゃないか」女「何故私とするのだ」壁ドンが木霊するSS
ゾンビ「おおおおお・・・お?あれ?アレ?人間いなくね?」読み返したくなるほどの良作
犬「やべえwwwwwwなにあいつwwww」ライオン「……」面白いしかっこいいし可愛いし!
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