「艦娘として、生まれて」back

「艦娘として、生まれて」


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1:
艦これSSを2話投稿予定です。
特にその2話に繋がりなどはありません。
ひとつ(不知火)は今から、もうひとつ(日向)は3月中には投稿します。
よかったらお時間下さい。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1458455107
2:
提督「……不知火」
不知火「おや、司令。お疲れ様です」
提督「なにをしていたんだ?」
不知火「いえ。海を見ていました」
提督「海を? 出撃で飽きるほど見てるだろう」
不知火「ええ、まあ。しかし、陸から見る海は、また違うのですよ」
提督「そういうものか?」
不知火「そういうものです」
3:
提督「そうか。提督になると、海に出ることがめっきりなくなったな」
不知火「司令も以前は、海に?」
提督「ああ、まあな。海自だったから」
不知火「では、連中が出る前ですか」
提督「そう。おまえたちが就役する前」
不知火「……提督は、陸から見る海に、何か感じませんか?」
提督「いや。俺にとって、海は恐怖の象徴でしかないからな」
不知火「それは不知火も同じです。出撃の度、死を覚悟して海に出ています」
4:
提督「お揃いだな。俺もおまえたちを失うのが怖くて仕方がない」
不知火「……しかし、不知火にとって、戦いの海と、陸から見る海は、違います」
提督「どういうことだ?」
不知火「それは……艦娘として生まれて、嬉しかったことがみっつ、あるのです」
提督「嬉しかったこと?」
不知火「はい。ひとつは、この日本が、未だあること」
提督「日本がか」
不知火「ええ。『不知火』の最後の記憶は、早霜乗員の救助に失敗し、船員も、この身も、すべてを失った記憶です」
5:
提督「……」
不知火「その後、守るべき国が、いったいどうなったのか、不知火には知る由もありませんでした」
不知火「艦娘としてこの世に生まれ、敗戦を知ったとき――涙が止まりませんでした。守るべき国が、守るべき民が、蹂躙されたのだと」
提督「不知火」
不知火「不知火の、帝国海軍の、力が及ばなかったばかりにです」
提督「おまえのせいじゃない」
不知火「いいえ。不知火のせいだけではないかもしれません。しかし、不知火に責任の一端があることは事実です」
不知火「しかし同時に、日本が、あの頃からは信じられないほど繁栄を遂げていることを、嬉しく思いました」
6:
提督「……そうだな。俺は大戦を知らないが、その頃からは想像もできないだろう」
不知火「はい。これがひとつめです」
提督「ふたつめは?」
不知火「司令は、海自にいらしたのですね。では御存知と思いますが、海自の艦の名です」
提督「ああ。艦娘と同じ名を持つ艦も多いな」
不知火「残念ながら、『しらぬい』はいませんが。妹の『くろしお』を始め、『ゆうばり』、『あたご』、『こんごう』……多くの名が、受け継がれています」
提督「そうだな。俺の乗っていた艦もそのひとつだった」
不知火「名は体を表す、と言いますが、不知火たちが戦ったことが、無意味ではなかったのだと。私たちが守ろうとしたもの……その思いは受け継がれているのだと、実感できます」
7:
提督「当たり前だ。おまえたちの過去が、無意味なわけがあるものか」
不知火「ふふ。司令はお優しいですね」
提督「いい上司だろう?」
不知火「まったくです」
提督「それで、最後のひとつは?」
不知火「ああ、最後のひとつですか」
提督「みっつ、あるんだろう?」
不知火「ええ。みっつめは当然―――」
8:
不知火「―――再び、守るべきもののために、戦えることです」
不知火「もう二度と、負けはしない。……ああ、そうだ、陸から見る海の話でしたね」
提督「そういえば、そうだった」
不知火「こうして陸から海を見ると、守るべきものが見える」
提督「守るべきもの」
不知火「不知火の背中には日本の民が、日本の大地が、日本人の誇りがある。ここから先へ行かせてはならぬと、想えるのです」
提督「そうだな。俺たちが、守らねばならん」
不知火「ええ。司令、よろしくお願いします」
提督「任せておけ」
不知火「……はい。不知火は、司令を信じておりますよ」
9:
以上です。
陽炎型では不知火が一番好きです。
ありがとうございました。
12:
どうもです。投稿します。
2話予定だったのですが、もう1話投稿しようと思うので、これを投稿した後、そのうちもう1話投稿します。
13:
提督「ん、日向か」
日向「ああ、提督……」
提督「なにをしていたんだ?」
日向「……提督は、私たちをどう思う?」
提督「なんだ、藪から棒に」
日向「艦娘をだよ。いったい、私たちは何のために戦っているのだろうね」
提督「そりゃ……深海棲艦から日本を守るためだろう」
日向「では敵艦隊は? 何のために攻めてくる?」
提督「さあな。連中、恨み言ばっかりで、ろくに会話もできやせん」
14:
日向「私はいつも思うんだ。何のために戦うのか、何のために争うのか」
提督「なんだ、日向には守りたいものはないのか?」
日向「もちろんある。伊勢だって、提督だって、死んで欲しくはない」
提督「それでいいんじゃないか? 俺だって、何だかわからんが攻めてくるから、相手をするだけだ」
日向「……まあ、そうなのだがな。しかし不思議なものだよ」
提督「なにが」
日向「提督は、艦娘の艤装についてどう思う?」
提督「あんなクソ重いもんよく背負える」
15:
日向「そうだな。私も伊勢の艤装を背負おうとしたとき、重くて1ミリも動かせなかった」
提督「なんだ、そうなのか?」
日向「ああ。『日向』以外の艤装を背負おうとすると、私たちの力は、一般女性のそれと変わらない。姉妹艦でさえね」
提督「自分のだと違うのか」
日向「不思議だろう? 『日向』の艤装だけは、私は自分の手足のように扱える」
提督「それが、『在りし日の艦艇の魂』ってやつなんだろ」
日向「……魂か。随分とあやふやなものだよ」
提督「艦娘がわかんねーのに、俺らにわかるもんかね」
日向「『艦娘』について、わからないことが多すぎると思わないか?」
16:
提督「だが戦える。それで充分だろ」
日向「それはそうだが……妖精にしか作れない艤装――艦艇の魂を持たねば扱えない。こんなわけのわからないものに、国家の命運を託しているんだ」
提督「……何が言いたい?」
日向「いや、別に何も。私が言いたいのは、わからないことが多すぎる――それだけだよ」
提督「そうだな。大本営だって、艦娘のすべてがわかってるわけじゃないだろう」
提督「だが、戦える。そんな力に頼らなくちゃいけないくらい、切羽詰ってるんだ」
日向「……そうだな」
-----------------------
17:
日向「金剛、大丈夫か?」
金剛「ちょっとやられましたネー! 日向も艤装、ボロボロになってマース」
赤城「艦載機も限界ですね……今回はこのあたりで撤退でしょうか」
龍驤「んー……あ、提督から通信。撤退やって」
大淀「あら……では、撤退ですね」
日向「……そうか。進路変更、帰投する。私が殿を務めよう」
金剛「Yes……了解しましター」
日向「……ん?」
18:
深海棲艦「……」
日向「さっきの戦闘の……まだ生きているが、虫の息か」
深海棲艦「……ュ、ァ……」
日向「!」
深海棲艦「……ヒ……ゥ……」
日向「おい。なんだ」
深海棲艦「……ヒゥ、ガ」
日向「……おい。待て。なんと言った」
深海棲艦「……」
日向「……ちっ……だめか。もう死んでるな」
金剛「日向ー? なにしてるですカー? 置いてっちゃいますヨー?」
日向「いや、なんでもない。すぐ行く」
大淀「……」
----------------------
19:
日向「伊勢、いるか?」
伊勢「んー? なにさ日向、お風呂?」
日向「いや、今日は入渠があったからもう済ませた。今日の出撃のことなんだが……」
伊勢「あ、そうなの? おつかれさん。撤退だったんだってね」
日向「ああ。それはそうなんだが……伊勢、深海棲艦と喋ったことはあるか?」
伊勢「……は?」
日向「会話じゃなくてもいい。声を聞いたことはあるか?」
20:
伊勢「いや、声って……唸り声みたいなのは聞いたことあるよ。あとはまあ、上位種の連中はちょっとは喋るかな……なに、日向、どうしたの?」
日向「……今日の撤退の際、死にかけの深海棲艦を見た。別に何があったわけでもなく、そいつを見ていたら……そいつが、『日向』、と言ったんだ」
伊勢「名前を呼ばれたってこと? そんな馬鹿な……聞き違いじゃない?」
日向「いや、あれは確かに……」
伊勢「だってねえ……そもそもあいつら、日向の名前なんて知らないよ。偶然じゃない?」
日向「……そうか。そうだな」
日向(あれは……偶然なんかじゃない。確かにあいつは、私を見て……日向、と言った)
日向(私を知っていた……?)
深海棲艦『……ヒゥ、ガ』 
日向(私を……違う。あいつは、私を見て、じゃない……私の……『艤装』を……)
日向(他の『日向』を知っていた……?」
21:
大淀「独り言ですか、日向さん?」
日向「!!」
大淀「え、どうしました……そんなに驚いて……」
日向「ああ、いや……すまない、声に出ていたか」
大淀「ええ、まあ。『他の日向』がどうかしましたか?」
日向「……大淀は、大本営にいたのだったな」
大淀「そうですね。1年ほどですが」
日向「私以外の日向を、見たことはあるか?」
22:
大淀「もちろんありますよ。何度か南方へ遠征したこともありますから、国内外問わず……そうですね、日向さんを含めて4人、会ったことがあります」
日向「それでは、この横須賀に、私以外の日向がいたことはあるか、わかるか?」
大淀「……さて……横須賀に、ですか。すみません、わからないですね」
日向「……そうか……変な質問をしてすまないな」
大淀「いえ。そうですね……資料室か、大本営……提督でも御存知かもしれません。長く横須賀にいらっしゃいますから」
日向「そうだな。他を当たってみよう。ありがとう」
大淀「いえ」
大淀「……」
大淀「ええ、大淀です。彼女、気付いたかもしれません。何がきっかけかは不明ですが……」
大淀「もしかすると、記憶の残る個体と遭遇したのかも。ええ……そうですね、真相に気付くのも時間の問題です」
大淀「そうですね……解体してもいいのですが、艦娘は限りあるものですから。せっかくですから、使いましょう。頼みましたよ――明石」
明石『ええ、お任せ下さい。大淀』
23:
横須賀鎮守府資料室
日向「……ア、カ、サ……ハ……ヒ……あった、日向」
日向「これは……私か。随分と……なんというか……無表情、だな」
日向(……あった!)
日向(私が着任する一年前……現在の所属は……)
日向「轟沈……」
日向(やはり、あれは……前の『日向』を知っていたのか……?」
日向(遺体、艤装ともにサルベージされず……)
日向「む……これは……」
24:
日向(当時の艦隊の集合写真か……日向は……これだな。私というよりは……伊勢に似ている)
日向(隣にいるのが伊勢か……今いる伊勢とは別人だな)
日向(提督は変わらないな。提督の横に、いる……のは……)
日向「大――!!」ドゴォ
日向「ぐっ……あ……!!」
日向(ばかな……奴はは『わからない』と……!)
???「おや、丈夫ですね。さすが戦艦」
日向「おまえ……!!」
???「大丈夫ですよ、ちょっとだけ……」
明石「記憶を失って、性格が変わるだけですから」
25:
日向「……フゥー」
金剛「オーゥ!Congratulation!日向、ナイス改造ですネー!」
大淀「おや……日向さん、改造だったんですね。航空戦艦ですか」
日向「ああ……清々しい気分だ……まるで新しい艤装を装着したばかりの正月元旦の朝のようにな……」
日向「歌でもひとつ歌いたい気分だ……そう……」
日向「瑞雲を讃える歌を」
金剛「えっ」
大淀「えっ」
26:
明石「どうですか、日向さん! 航空戦艦になった気分は!」
日向「明石か! 実にいい気分だ……あとで瑞雲を奢ってやろう」
明石「や、いらないですけど」
日向「なんだ、遠慮をするな……間宮もどうだ?」
明石「本当ですか!? やった、今日の仕事は早く終わりそうですよ!」
大淀「明石」
明石「あ、大淀。どうです、注文通りですよ」
大淀「違うわ」
明石「えっ」
大淀「違う」
明石「えー……」
航空戦艦日向「ああ……瑞雲……いいなあ瑞雲……瑞雲12型(六三四空)欲しいなあ……」
27:
ありがとうございました。
嫁は伊勢です。改二来てから結婚したいのでlv99でずっと待ってます。
伊勢型改二が瑞雲12型(六三四空)を持ってくると信じてます。
次回の投稿は3月中、初月と瑞鶴の話です。艦娘の喫煙描写があるので苦手な方はすみません。
30:
片鱗がビラビラってなんかエロいですね。
投稿します。先にも書きましたが喫煙描写あるので、苦手な人はお気を付け下さい。
31:
瑞鶴「あ、初月」
初月「おや、瑞鶴」
瑞鶴「あんた、いつ来てもいるわね、喫煙所」
初月「そうかな。駆逐艦寮から近いのがここくらいしかなくてね」
瑞鶴「ふーん……去年までは、そこら中にあったんだけどね、灰皿。あたしもわざわざ空母寮からここまで来てるわよ」
初月「そうなのか? もう鎮守府内で吸えるのはここと……運動場と……執務室の近くにひとつあったか。あとは食堂の手前にもあったな」
瑞鶴「実は軽巡寮と潜水寮には喫煙室があるわ」
初月「差別だな」
瑞鶴「ま、建物の構造的に仕方ないわ。こっちは工廠寄りだしね」
初月「ああ……火器厳禁」
32:
瑞鶴「そうよ。明石が死にそうな顔で工廠から出てくるもの。ちょうど礼号が始まる前かな……上がクリーンだ分煙だなんだ言い出してから、どんどん減っちゃった」
瑞鶴「執務室なんて凄かったんだから。執務机なのに書類より灰皿が多かったわよ」
初月「大淀と明石だろう? あの二人はひどいな」
瑞鶴「まったくねえ……ま、あたし達が言えた義理じゃないけど。明石の仕入れには助かってるし」
初月「それは確かに。金鵄を置いてくれるともっといいが」
瑞鶴「金鵄て……ゴールデンバットって言うのよ、今は……というかあんた、あんなの吸うの?」
初月「吸えればなんでもいいんだよ、僕は。安ければ安いほど助かる」
33:
瑞鶴「変わってるのね……大淀なんて、買いだし担当がソフトとボックス間違えただけで私にくれるけど。銘柄一緒だから間違えろっていつも祈ってるわ」
初月「売店に置いてある一番安いのがこれなんだよ。どうせならもっと安い金鵄を置いてほしい」
瑞鶴「エコーでしょ。神通がエコー好きなのよ。古株だから、昔から置いてあるみたい」
初月「明石に聞いたよ。僕と神通くらいしか買わないらしい」
瑞鶴「でしょうね……美味しいの、それ?」
初月「さあ?」
瑞鶴「さあ、ってあんた……なんで吸ってんのよ」
初月「瑞鶴は美味しいから吸ってるのか?」
瑞鶴「まあ、一応……出撃終わりとか、何よりも先に吸いたくなるわね」
34:
初月「報告より?」
瑞鶴「それはもともと行きたくないわよ」
初月「それもそうだ。そうか、美味しいから吸ってるのか」
瑞鶴「なに、あんた。違うの?」
初月「……まあ、違うな」
瑞鶴「なんで吸うのよ?」
初月「……こんな話、瑞鶴にする話じゃないが」
瑞鶴「いいわ。聞かせてよ」
初月「煙草を吸うときに、火を着けるだろう」
瑞鶴「そりゃね。そうしなきゃ吸えないわよ」
初月「吸い終わったら、火を消すだろう」
瑞鶴「いつまでも燃えてる煙草があるなら、1本欲しいわね」
35:
初月「それがいい」
瑞鶴「は?」
初月「……こんな風に、簡単に火を消すことができたなら、ってさ」
瑞鶴「……ああ、なるほどね」
初月「それだけだよ。ああ、なんというか、女々しいな、我ながら」
瑞鶴「いいんじゃない。むしろサイコーよ、吸う理由として」
瑞鶴「仲間を失った記憶なんて、簡単に消えるものじゃないわ。たとえ在りし日の記憶だったとしてもね」
初月「……そうかな」
瑞鶴「そうよ。きっとね」
初月「……ああ、もうひとつあった」
瑞鶴「吸う理由?」
36:
初月「ああ」
瑞鶴「なによ」
初月「贅沢してる、って感じがするだろ?」
瑞鶴「……ふふ、なにそれ」
初月「案外、これが大きいかもしれないな」
瑞鶴「葛城が吸うのもそのせいね」
初月「間違いない。贅沢を本能が求めているんだ」
瑞鶴「ねえ、じゃあ、もっといいの吸いなさいよ」
初月「一理ある。せっかく、今度はお金を自由に使えるわけだしね」
瑞鶴「ザ・ピースでも買おっか」
初月「いいな。値段が4倍だ」
瑞鶴「4倍長く燃えるのかしらね?」
初月「いや……きっと、すぐに消えてくれるさ」
瑞鶴「そうね。そのほうが、ずっといいわ」
37:
ありがとうございました。
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