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【ガルパン】秋山優花里「島田殿…!?」


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2:
友情は瞬間が咲かせる花であり、時間が実らせる果実である。
友人は瞬間的には出来ても、真の友情は果実の様に時間をかけねば実らない。
主に18?9世紀に活躍したドイツ人の劇作家、コッツェブーの名言ですね。
同時に…私の敬愛する西住殿の座右の銘であります。
私は西住殿、あんこうチームの皆さんとお会いするまで友達と呼べる存在は殆どいませんでした。
そこに友達という果実を実らせてくれたのは、それを座右の銘とする西住殿であります。
私は「友達とはどういうものか」を教えてくれた西住殿に対し、感謝の念が堪えません。
故に私は西住殿に何かあったら、どんな事があっても粉骨砕身、身を捧げる所存であります。
3:
西住殿は私以外にも色んな場所で友情の果実を実らせている事がわかります。
恐れ多くも西住殿の近くにいる私だからこそわかるんです。
大学選抜戦の時だってそうです。西住殿は戦車道という戦いを通じて
他校の皆さんと友情という果実を結実させている事が本当によくわかりました。
あぁ…西住殿、何と素晴らしい人でしょう。
そういえば…先日、こんな事があったんです。
4:
その日は大洗への帰港日でした。
午後からあんこうチームの皆さんとアウトレットで買い物をする約束をしていましたが
午前中は久々の陸で久々に朝から散歩をしていました。
那珂川の河川敷を散歩していた時でしょうか、見知った人が座り込んでいました。
「…島田…殿?」
何か真剣に考えながら体育座りで項垂れていたのは、先日大洗女子に体験入学した島田愛里寿殿でありました。
大洗女子に入学を考えながらも「みほさんと戦えなくなる」「みほさんとはライバルでいたい」という理由で
大洗女子の入学を取り止めた島田殿が何故、大洗にいるのでしょうか?
私の覚束ない問いかけに対し、顔を膝に埋めていた島田殿は私を振り向きました。
5:
「あ…。あなたは…。えっと…あんこうチームの…」
「はい!装填手の秋山優花里であります!」
私の答えに対し、私を振り向いた時の表情のまま、私を凝視していました。
何というか…私も対人にそこまで慣れているわけではないので…対応に困りました。
「え、えっと…島田殿?きょ…今日は大洗にどの様なご用件で?
 ボコミュージアムにお越しですか?」
元々話し慣れていない人との会話は不慣れで、私自身もこの状況を
如何とすればいいかわかりませんでした。
西住殿?!!この戦局は私には不慣れです!!!助けて下さいーー!
6:
「…わたし…ね…、」
私が島田殿の対応に倦ねていたら、今度は島田殿がゆっくりと開口し始めました。
「…どこに行けばいいか、わからなくなっちゃった…の…
 気がついたらここにいたわ…」
そう言うと島田殿はまた顔を膝に埋めてしまいました。
どこに行けば?人生の岐路に立たされているという事でしょうか?
それとも単純に道に迷ったと言う事でありましょうか?
「え、えぇ…っと島田殿?どういう事でしょうか?」
私の拙い質問に対し、膝を埋めたまま消沈しつつも凛とした声が返ってきました。
7:
「私はどうしたいんだろう?どこに行きたいんだろう?
 どうすべきなんだろう…わかんないの…」
「えっと…とりあえず…横、、いいですか?」
島田殿からは答えが返ってこない。
それを無言の容認と受け取り、私は膝に顔を埋めた島田殿の横に座る。
私は塞いだままの島田殿をじっと見つめていました。
正直、何から話していいかわかりませんでした。
そう悩んでいると、島田殿から喋り始めました。
8:
私は塞いだままの島田殿をじっと見つめていました。
正直、何から話していいかわかりませんでした。
そう悩んでいると、島田殿から喋り始めました。
「…大洗を出てから色んな高校に行ったわ。色んな戦車道も観てきた。
 楽しそうな所、興味深い所、厳しそうな所も、、私にはまだ理解出来ない所もあった。」
理解出来ない所…あぁ…えーと。具体例には出しませんが、、
独特な戦車道を展開している高校…ありますよね。あはは…
9:
「…でも、どこに行っても私は「島田流家元の娘」だったの。
 私を島田流の人間として特別視したり、
 学校特有のドクトリンを引き合いに出されて島田流と比較されたり…。
 私は島田愛里寿よ。でも、私が高校に編入したかったのは…」
話しながら頻りに涙声になってくるのがわかりました。
「純粋に高校生活を送りたかったからよ。それだけ…な…のよ…。」
私は、ほぼ嗚咽に近い声になっている島田殿の独白を黙ってきいていましたが…
「私は…高校生活を送っちゃいけないのかな?
 高校で友達は作れないのかな?作っちゃいけないのかな?」
!?島田殿の発言に仰天してしまいました。
「何を言っているんですか!?友達を作っちゃいけない人なんて、この世にいません!」
10:
咄嗟に反論した私を、島田殿がゆっくりと顔を上げて見つめます。
私も島田殿をしっかり見つめます。
「私も、ずっと友達は殆どいませんでした。
 でも、大洗で戦車道が再開されて、戦車道履修者の中に憧れの西住殿がいらっしゃって、、私に声をかけてくれて…
 そして、私の事を恐れ多くも「友達だ」って仰ってくれた…。」
島田殿が私から顔を離しません。
ここまで凝視されると恥ずかしいですし、手前味噌の話をする事自体恥ずかしいですが…
私の気持ちを伝えたかった。
11:
「島田殿と私は、もしかしたらある意味似ている部分があるのかもしれませんね。
 私も西住殿やあんこうチームの皆さんと出会うまで「一生友達なんか出来ないんじゃないか?」って思ってました。
 同じ気持ちだ、と言うのは僭越かとは思いますが…島田殿の気持ち、わかる気がします。」
私は島田殿から顔を外し、流れる那珂川の方を向きました。
見慣れた川ですが、午前中の陽が真上に昇りきらない明るい太陽に照らされて、一層綺麗に見えました。
「島田殿は戦車道でもご立派な方ですが、それを差し引いてもとても魅力的な方であるのは間違いないです。
 私が保証します。きっと西住殿も太鼓判を押してくれるでしょう。
 それに、別の学校に行かれるという事…西住殿も残念がってましたが
 それでも西住殿は島田殿を送り出してくれたじゃないですか。
 それは島田殿を想っての事なんじゃないですかね?」
…しばらく、黙っていた島田殿。「あ…」とか「うぅ」とか唸る言葉は聞こえて来た。
12:
「西住殿が島田殿を想う気持ち。それは…「友達」って言っても過言ではないと、私は思いますよ。
 戦車道を差し引いても、島田殿と西住殿とはボコ仲間。ボコ友達じゃないですか。」
近くにあった石を川に投げる。
島田殿は蹲って小さく唸り声を上げていた。
私は一言だけ、私の理解の範疇を逸した二人の共通の趣味がある事に本音を漏らす。
「…羨ましいな。西住殿と島田殿。」
川の流れと蹲っている島田殿をゆっくり交互に見ながら時間は流れていきました。
口下手な私には、私が思っている気持ちを素直に伝えるしかありません。
それ以上の事を私から言うのは…申し訳ありません、少々難しいです。
「…決めた…」
13:
黙っていると島田殿が囁く程の小さな声で決断の声を上げました。
え?と私が島田殿の方を向くと、埋めていた顔を出して、決意の顔で前を向きました。
「私、やっぱり大洗に転校する!
 みほさんや秋山さんとも友達になりたい!楽しい学校生活を送りたい!!!
 お母様や角谷会長には謝って、もう一度大洗に転校をお願いするように、頼む!!」
「おぉぉ!!!」
私は衝動的に島田殿が大洗に来て下さる事に喜んで感嘆の声を上げました。
しかし次の瞬間、私の頭の中で、様々な事が去来しました。
そして「あ…」と自然に口から出て、今度は私の頭が下がりました。
14:
島田殿が大洗に来て下されば、来年の全国大会は間違いなく私達が有利になるだろう。
西住まほ殿、ダージリン殿、アッサム殿、ケイ殿、アンチョビ殿、カチューシャ殿、ノンナ殿、西殿…
今年の三年生が抜けた他校から考えれば、戦力、火力共に変わらず著しく乏しい我が校でも
一度全国大会を勝ち抜いた西住みほ流、そして忍者戦法の島田流のタッグは他校から観ても相当の脅威。
味方からすればこれほど心強い布陣は無い。全国大会二連覇も手中にあるといっても過言ではない。
そして私、秋山優花里。一戦車乗りとして島田流の戦法を知る事は何よりの利!
何よりも…西住殿も喜んでくれるに違いありません。
15:
しかし…しかしであります。
島田殿…いえ、この目の前の少女の悩んだ行く路の結論は本当にそれでいいのでしょうか?
確かに私は島田愛里寿殿と戦車道がしたいです。
しかし島田殿…いえ、この少女は大切な事を忘れている気がしてなりません。
私は…、私は…、この少女に…何と言えば…いいのでしょうか…。
もし私が彼女の立場だったら…私が島田殿だったら……島田殿だったら……だったら…
何を忘れているだろう?
16:
…私の中の長考の間中、島田殿のウキウキした声が横から聴こえます。
「うん!これからみほさんといっぱいボコミュージアムに行けるし、一緒に登校とか出来るかな?
 私、転校生で1年生扱いになるかもしれないけど、勉強とか教えられるかも…!
 うん、楽しみ!!
 
 …あれ?秋山さん?どうしたの?」
私は島田殿の肩を軽くポンと叩いて、ゆっくり顔を上げながら言いました。
17:
「島田殿…。前に言いましたよね?
 私は…島田殿が大洗に来て下さるのであれば、それは本当に嬉しいですし。大歓迎です。
 …ですが、島田殿。。。もう一度、考えてみて下さい。
 貴女が大洗の転校を取り止めたのは何故ですか?」
真剣な表情で私は島田殿を見つめます。島田殿も私を見つめぽかんとしています。
私の中で、島田殿を見つめ続けるのが限界になってしまい、たまらず川の方を向きます。
「…私と島田殿。先程似ていると言いましたね。
 でも、島田殿には私には持っていなくて島田殿だけが今持っている権利が少なくとも1つあります。
 
 それは…西住殿のライバルでいられる事です」
あ…!と島田殿が軽く声を上げました。
18:
「ふふ…ここだけの話ですよ?
 大洗で戦車道が復活し、そして西住殿に出会えたからこそ私は戦車乗りになれました。
 西住殿には感謝をしてもしきれません。
 …しかし、私は戦車乗りになったからこそ、一つだけ願望が出てきてしまいました。」
島田殿は私の言葉を黙って聞いて下さっています。
「それは…「西住殿と真剣勝負をしてみたい」そんな気持ちがいつしか生まれました。
 私の戦車乗りになるきっかけの半分、いやそれ以上は西住殿が作って下さったと言っても過言ではありません。
 だからこそ…私は、戦車乗りとしての私を作って下さった西住殿と真剣に立ち向かって観たいという願望が出てきたんです。
 …そりゃあ、練習中で三突やM3リーの仮車長としてIV号と立ち向かう事はあります。
 でも、それは真剣勝負ではありません。私は大洗女子にいる限り西住殿と真剣勝負をする事はないでしょう」
「…」
19:
「島田殿。貴女は何故、この大洗の転校を止めたんでしたっけ…
 その答えを真っ先に言える貴女が…私は一戦車乗りとして、凄く羨ましいです。」
島田殿は難しい顔をして、また考えてしまいました。
自分で言っておいて何なのですが…その後、私は軽く笑いながら言いました。
「あ!あ!!!でも…!友達として大洗に来て下さったり、私達と遊ぶのは大歓迎ですよ。
 別の学校でも友達にはなれます!!!!他校の方も時々ウチに来てくれますし…、
 それに先の大学選抜の時の皆さんをご覧になったでしょう?
 みんな西住殿や大洗の事を想って、あの戦地に集結して下さったんです。
 友情は、同じ学校じゃなきゃ作れないなんて事はありません!他の学校で、戦いを交えたからこそ実る果実もあります!
 もし島田殿が別の学校に行かれても、また島田殿が大洗に来て下さるのであれば
 西住殿も…あ、あ!もちろん!私も!喜んで島田殿を歓迎しますよ?
 また、皆でボコミュージアムいきましょうよ!」
難しい顔をしていた島田殿の顔は心なしかゆっくり柔和になり。次第にわかる程度に微笑んでいきました。
「そっか…、一緒の学校じゃなくてもみほさんとは友達でいられるもんね。
 それに、他の学校で戦車道していればライバルでもいられるもんね…そうだよね…」
20:
「すいません、、せっかく大洗に戻ってきて下さったのに、また難しい選択をさせてしまって…。
 それに島田殿が考えた末にやはり大洗が良いと言うのであれば…」
「ううん。ありがとう秋山さん。私…もう一度探してみる!
 私なりの高校生活、みほさんのライバルとしていられる学校をもう一度探してみる!」
「あ…そうですか。あはは…島田殿がそう決心されたのであれば…
 また勝負する時はお手柔らかにお願いします…」
僭越ながら自分が説いたにも関わらず、やはり島田殿が大洗に来て下さらない事を残念な矛盾に満ちた私は
軽く冗談を言う程度しか出来ませんでした。
そうすると、島田殿はすくっと立ち上がったと思うと
私に向かい…
21:
「うぅん。手加減なんかしないんだから!みほさんも貴女も今度こそ倒してあげるわ…。
 本気で勝負よ…優花里さん…!!」
そう言って…えぇっと…あの…
私をぎゅっと抱きしめたかと思うと…
22:
「ありがとー!頑張って私の学校探すよー!
 また来るねー!またねー優花里さん!」
さっきの消沈していたのとはうって変わって
抱きしめていた私を解いて、幼子の様にぴょんっと軽く跳ねて私から一歩離れ
島田殿本来のにこやかな笑顔で私から去っていきました。
…私は、その場からしばらく動く事が出来ませんでした。
23:
??????
午後
「あれーゆかりんどうしたの?何かいつもより心ここに有らずって感じだねー?」
「優花里さん。どうしたの?何かあったの?大丈夫?」
午後のアウトレットでの皆さんとのショッピングでも
私は未だに島田殿の言動を尾に引いていました。それ故にいつも以上にぼけっとしていたんでしょう。
武部殿も西住殿も心配して下さってます。
「いやー、大丈夫です。大丈夫ですよー。アハハハ。」
何て説明したらいいかわからず、とにかく空元気で返します。
24:
「何か悪い事でもあったか?またテストの点が悪かったのか?
 というよりも…まるで、失恋した女子…みたいだな。」
「あらあら!」
冷泉殿の鋭い突っ込みは…外れているんですが、少し当たっているというか…。
…アクティブな事に敏感な五十鈴殿は興味津々で…困りました。
しかし、今の私には何と返せばいいやら…やはりわかりません。
西住殿?!!この戦局も私には不慣れです!!!助けて下さ…
あぁ、西住殿は目の前にいましたね…。ダメだダメだ…私なりに考えなきゃ…。
25:
「いや、あのー。失恋した…というか私がフったというか…。
 何て言えばいいんでしょうかね…」
「えええええええええ!?ゆかりん!フったの!?
 もしかしたら未来の旦那様かもしれないのに!?何で!?どーして!?
 ってゆーか、そんな人いたの!?」
「いやいや、違うんですよー。武部殿が考えている様な事じゃないんですよー!!」
「じゃあ、何なのさ?友達として、しっかり説明してくれなきゃ納得しないんだから!」
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